(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】デフレクタ装置
(51)【国際特許分類】
B60J 7/22 20060101AFI20220906BHJP
【FI】
B60J7/22
(21)【出願番号】P 2018119216
(22)【出願日】2018-06-22
【審査請求日】2021-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】河上 充佳
(72)【発明者】
【氏名】加藤 由博
(72)【発明者】
【氏名】市毛 敬介
(72)【発明者】
【氏名】中川 雅樹
(72)【発明者】
【氏名】村田 收
(72)【発明者】
【氏名】入谷 昌徳
(72)【発明者】
【氏名】松井 智和
(72)【発明者】
【氏名】大江 健司
(72)【発明者】
【氏名】酒井 信治
【審査官】久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-119335(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第01977923(EP,A2)
【文献】国際公開第2007/076800(WO,A1)
【文献】特開2012-245973(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102010033584(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のルーフパネルに形成された開口の車両前方部で、前記開口を開閉する可動パネルの開閉動作に応じて上下移動すると共に、車両幅方向に延びているフレームであって、上方向に移動した状態で、前記ルーフパネルの上方に配置され、車両幅方向から見て車両前方に対して斜め上方を向く傾斜面と、前記傾斜面の下端に接続された前方に凸となる湾曲面を含んで形成された接続面とを有する前記フレームと、
前記フレームが上方向に移動した状態で、車両前方から見て前記フレームと前記ルーフパネルとの間に配置され、前記フレームの前記接続面に上端が取り付けられ、車両幅方向から見て車両前方に対して斜め上方を向くように傾斜しているシート状の
メッシュ部材であって、第一領域と前記第一領域と比して圧力損失係数が大きい第二領域とが形成され、前記第一領域は前記第二領域に対して上方に配置されている前記
メッシュ部材と、を備え、
車両幅方向から見た前記第一領域の面沿い寸法L1は、前記フレームの断面高さH1の0.5倍以上1以下とされているデフレクタ装置。
【請求項2】
車両のルーフパネルに形成された開口の車両前方部で、前記開口を開閉する可動パネルの開閉動作に応じて上下移動すると共に、車両幅方向に延びているフレームであって、上方向に移動した状態で、前記ルーフパネルの上方に配置され、車両幅方向から見て車両前方に対して斜め上方を向く傾斜面と、前記傾斜面の下端に接続された前方に凸となる湾曲面を含んで形成された接続面とを有する前記フレームと、
前記フレームが上方向に移動した状態で、車両前方から見て前記フレームと前記ルーフパネルとの間に配置され、前記フレームの前記接続面に上端が取り付けられ、車両幅方向から見て車両前方に対して斜め上方を向くように傾斜しているシート状の
メッシュ部材であって、第一領域と前記第一領域と比して圧力損失係数が大きい第二領域とが形成され、前記第一領域は前記第二領域に対して上方に配置されている前記
メッシュ部材と、を備え、
前記第一領域の圧力損失係数は、1.0以上4.5以下とされており、前記第二領域の圧力損失係数は、5.5以上12.0以下とされているデフレクタ装置。
【請求項3】
前記第一領域の圧力損失係数は、1.0以上4.5以下とされており、前記第二領域の圧力損失係数は、5.5以上12.0以下とされている請求項1に記載のデフレクタ装置。
【請求項4】
前記第一領域の圧力損失係数は、2.0以上4.0以下とされており、前記第二領域の圧力損失係数は、7.0以上10.0以下とされている請求項2又は3に記載のデフレクタ装置。
【請求項5】
前記第一領域及び前記第二領域は、車両幅方向の全域に亘って形成されている
請求項1~4の何れか1項に記載のデフレクタ装置。
【請求項6】
前記第一領域及び前記第二領域は、前記
メッシュ部材において、少なくとも車両幅方向の中央側の部分に形成されている
請求項1~4の何れか1項に記載のデフレクタ装置。
【請求項7】
車両のルーフパネルに形成された開口の車両前方部で、前記開口を開閉する可動パネルの開閉動作に応じて上下移動すると共に、車両幅方向に延びているフレームであって、上方向に移動した状態で、前記ルーフパネルの上方に配置され、車両幅方向から見て車両前方に対して斜め上方を向く傾斜面と、前記傾斜面の下端に接続された前方に凸となる湾曲面を含んで形成された接続面とを有する前記フレームと、
前記フレームが上方向に移動した状態で、車両前方から見て前記フレームと前記ルーフパネルとの間に配置され、前記フレームの前記接続面に上端が取り付けられ、車両幅方向から見て車両前方に対して斜め上方を向くように傾斜しているシート状の
メッシュ部材であって、第一領域と前記第一領域と比して圧力損失係数が大きい第二領域とが形成され、前記第一領域は前記第二領域に対して上方に配置されており、
圧力損失係数が前記第二領域と同様の一対の第三領域が前記第一領域及び前記第二領域を車両幅方向から挟むように配置されている前記
メッシュ部材と、
を備えるデフレクタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両ルーフ用のデフレクタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ルーフ開口の前側エッジに沿って配置され、ルーフ外側輪郭まで引っ込められた非動作位置と、上方へチルトアップした動作位置との間で移動可能な車両ルーフ用ウインドデフレクが記載されている。このウインドデフレクタにおいて、走行風を受ける作用面は、空気を通過させる網と、上側の枠部材と、下側の枠部材とで形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2006/012861号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のデフレクタ装置(ウインドデフレクタ)を搭載した車両が、ルーフに形成された開口を開放させた状態で走行すると、メッシュ部材(網)に空気が当たる。そして、メッシュ部材に当たった空気の一部分は、メッシュ部材の上端を支持する共に車両幅方向に延びたフレーム(上側の枠部材)側に流れる。フレーム側に流れた空気がフレームから一度剥離して再度フレームに付着すると、再付着した部位で圧力変動が生じ、高周波狭帯域の空力音(所謂「笛吹き音」)が発生する。
【0005】
本発明の課題は、メッシュ部材の全ての部位で圧力損失係数が同じ場合と比して、ウインドスロッブの発生を抑制した上で、メッシュ部材の上端を支持する共に車両幅方向に延びたフレームから、高周波狭帯域の空力音が発生するのを抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様に係るデフレクタ装置は、車両のルーフパネルに形成された開口の車両前方部で、前記開口を開閉する可動パネルの開閉動作に応じて上下移動すると共に、車両幅方向に延びているフレームであって、上方向に移動した状態で、前記ルーフパネルの上方に配置され、車両幅方向から見て車両前方に対して斜め上方を向く傾斜面と、前記傾斜面の下端に接続された前方に凸となる湾曲面を含んで形成された接続面とを有する前記フレームと、前記フレームが上方向に移動した状態で、車両前方から見て前記フレームと前記ルーフパネルとの間に配置され、前記フレームの前記接続面に上端が取り付けられ、車両幅方向から見て車両前方に対して斜め上方を向くように傾斜しているシート状のメッシュ部材であって、第一領域と前記第一領域と比して圧力損失係数が大きい第二領域とが形成され、前記第一領域は前記第二領域に対して上方に配置されている前記メッシュ部材と、を備えることを特徴とする。
【0007】
上記構成によれば、デフレクタ装置を搭載した車両が走行すると、ルーフパネルのルーフ面に沿って車両前方から後方へ流れる空気は、メッシュ部材に当たる。ここで、メッシュ部材には、第一領域と第一領域と比して圧力損失係数が大きい第二領域とが形成され、第一領域は第二領域に対して上方に配置されている。
【0008】
このため、メッシュ部材の第二領域に当たった空気の一部分は、第二領域に当たって進行方向が変えられ、上方の第一領域側へ流れる。また、メッシュ部材の第一領域に当たった空気の大部分、及び第二領域から第一領域側に流れた空気の大部分は、メッシュ部材を通過して車両後方へ流れる。ここで、メッシュ部材の全体を通過する空気の量は、メッシュ部材の全体が第一領域の圧力損失係数と同じ部材で形成されている場合と比して少ない。
【0009】
さらに、メッシュ部材の第一領域に当たった空気の一部分、及び第二領域から第一領域側に流れた空気の一部分は、フレーム側に流れる。ここで、フレーム側に流れる空気の量は、メッシュ部材の全体が第二領域の圧力損失係数と同じ部材で形成されている場合と比して少ない。このため、フレーム側に流れた空気は、フレームの接続面に沿って傾斜面側へ流れる。そして、傾斜面側へ流れた空気は、フレームから剥離しようとせず、傾斜面に沿って流れる。このため、高周波狭帯域の空力音の発生が抑制される。
【0010】
このように、メッシュ部材の全ての部位で圧力損失係数が同じ場合と比して、ウインドスロッブの発生を抑制した上で、メッシュ部材の上端を支持する共に車両幅方向に延びたフレームから、高周波狭帯域の空力音が発生するのを抑制することができる。
【0011】
本発明の第2態様に係るデフレクタ装置は、第1態様に記載のデフレクタ装置において、前記第一領域及び前記第二領域は、車両幅方向の全域に亘って形成されていることを特徴とする。
【0012】
上記構成によれば、第一領域及び第二領域は、車両幅方向の全域に亘って形成されている。このため、第一領域及び第二領域が、車両幅方向の一部にのみ形成されている場合と比して、車両幅方向の全域に亘って高周波狭帯域の空力音が発生するのを抑制することができる。
【0013】
本発明の第3態様に係るデフレクタ装置は、第2態様に記載のデフレクタ装置において、前記第一領域と前記第二領域との境界部は、前記フレームに沿って形成されていることを特徴とする。
【0014】
上記構成によれば、第一領域と第二領域との境界部は、車両幅方向に延びたフレームに沿って形成されている。このため、第一領域となる帯状のメッシュと、第二領域となる帯状のメッシュとを繋ぎ合せることで、メッシュ部材を容易に製造することができる。
【0015】
本発明の第4態様に係るデフレクタ装置は、第1態様に記載のデフレクタ装置において、前記第一領域及び前記第二領域は、前記メッシュ部材において、少なくとも車両幅方向の中央側の部分に形成されていることを特徴とする。
【0016】
上記構成によれば、第一領域及び第二領域は、メッシュ部材において、少なくとも車両幅方向の中央側の部分に形成されている。ここで、デフレクタ装置の車両幅方向の外側の部分では、車両の走行時に流れる空気が乱れるため、高周波狭帯域の空力音が発生しない場合がある。一方、デフレクタ装置の車両幅方向の中央側の部分では、車両の走行時に流れる空気が乱れることが少ない。
【0017】
前述したように、第一領域及び第二領域は、メッシュ部材において、少なくとも車両幅方向の中央側の部分に形成されている。このため、車両幅方向の外側の部分だけに第一領域及び第二領域が形成されている場合と比して、高周波狭帯域の空力音の発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、メッシュ部材の全ての部位で圧力損失係数が同じ場合と比して、ウインドスロッブの発生を抑制した上で、メッシュ部材の上端を支持する共に車両幅方向に延びたフレームから、高周波狭帯域の空力音が発生するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本第1実施形態に係るデフレクタ装置のメッシュ部材及びフレーム本体を示した拡大断面図である。
【
図2】本第1実施形態に係るデフレクタ装置を示した斜視図である。
【
図3】本第1実施形態に係るデフレクタ装置であって展開状態を示した断面図である。
【
図4】本第1実施形態に係るデフレクタ装置であって収納状態を示した断面図である。
【
図5】本第1実施形態に係るデフレクタ装置(サンルーフ)が搭載された車両のルーフであって、デフレクタ装置の展開状態を示した斜視図である。
【
図6】本第1実施形態に係るデフレクタ装置(サンルーフ)が搭載された車両のルーフであって、デフレクタ装置の収納状態を示した斜視図である。
【
図7】本第1実施形態に係るデフレクタ装置を示した平面図である。
【
図8】本第1実施形態に対する第1比較形態に係るデフレクタ装置のメッシュ部材及びフレーム本体を示した拡大断面図である。
【
図9】本第1実施形態に対する第2比較形態に係るデフレクタ装置のメッシュ部材及びフレーム本体を示した拡大断面図である。
【
図10】本第2実施形態に係るデフレクタ装置(サンルーフ)が搭載された車両のルーフであって、デフレクタ装置の展開状態を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態に係るデフレクタ装置の一例について
図1~
図9を用いて説明する。なお、図中に示す矢印Hは車両上下方向(鉛直方向)を示し、矢印Wは車両幅方向(水平方向)を示し、矢印Lは車両前後方向(水平方向)を示す。
【0021】
(全体構成)
自動車等の車両100のルーフパネル110には、
図5、
図6に示されるように、矩形状の開口110Aが形成されている。さらに、ルーフパネル110には、この開口110Aを開閉するサンルーフ装置10が搭載される。
【0022】
サンルーフ装置10は、
図7に示されるように、可動パネル14、一対のガイドレール16、フロントハウジング18、シール部材20(
図4参照)、デフレクタ装置30、及び図示せぬ駆動機構を備えている。なお、デフレクタ装置30については、詳細を後述する。
【0023】
可動パネル14は、矩形状のガラス板で、駆動機構からの駆動力を受けて車両前後方向へ移動して開口110Aを開閉するようになっている。そして、可動パネル14は、開口110Aを開放する開放位置(
図5参照)と、開口110Aを閉塞する閉塞位置(
図6参照)とに移動するようになっている。
【0024】
一対のガイドレール16は、アルミ材料により形成されており、車両前後方向に延び、開口110Aの車両幅方向の両側でルーフパネル110(
図5参照)に取り付けられている。そして、一対のガイドレール16は、可動パネル14の車両幅方向の両端部に取り付けられた図示せぬ支持部材と接触して、可動パネル14を車両前後方向に案内するようになっている。
【0025】
フロントハウジング18は、樹脂材料により形成されており、一対のガイドレール16に対して車両前方に配置されており、車両幅方向に延びている。そして、フロントハウジング18の車両幅方向の両端部には、一対のガイドレール16の前端部が取り付けられている。
【0026】
図4に示すシール部材20は、ゴム材料により形成されており、閉塞位置に配置された可動パネル14の外周部と、ルーフパネル110の開口110Aを形成する縁部とに接触するように配置されている。そして、シール部材20は、ルーフパネル110と、閉塞位置に配置された可動パネル14との間をシールしている。
【0027】
(要部)
次に、デフレクタ装置30について説明する。デフレクタ装置30は、ルーフパネル110のルーフ面に沿って車両前方から後方へ流れる空気を上方へ跳ね上げることで、車両室内への風の巻き込みを抑制し、ウインドスロッブの発生を抑制する部材である。なお、ウインドスロッブとは、ルーフパネル110の開口110Aを開放して走行したときに発生する低周波数の音である。
【0028】
このデフレクタ装置30は、
図5に示されるように、開口110Aの前端縁に沿って、車両幅方向に延びるように配置されている。そして、デフレクタ装置30は、
図2に示されるように、ロアフレーム32、アッパフレーム40、一対の板バネ50、及びメッシュ部材60を備えている。メッシュ部材60は、通気部材の一例である。
【0029】
〔ロアフレーム32〕
ロアフレーム32は、樹脂材料によって形成されており、
図2、
図4に示されるように、開口110Aの前端縁に沿って、車両幅方向に延びており、ルーフパネル110のルーフ面に比して下方で、かつ、開口110Aの前端縁に比して後方に配置されている。
【0030】
このロアフレーム32の両端部には、車両後方に延びている一対の取り付け部32Aが形成される。また、ロアフレーム32の両端部には、車両幅方向の外側(デフレクタ装置30の車両幅方向の中心部に向かう側とは反対側)に突出する突起32Bが夫々形成される。そして、ロアフレーム32は、夫々の突起32Bをフロントハウジング18に形成された図示せぬ円孔に挿入することで、フロントハウジング18に支持されるようになっている。
【0031】
〔アッパフレーム40〕
アッパフレーム40は、樹脂材料によって形成されており、
図2、
図3、
図4に示されるように、開口110Aの前端縁に沿って、車両幅方向に延びているフレーム本体42を有している。また、アッパフレーム40は、
図2に示されるように、フレーム本体42の車両幅方向の両端部から車両後方に延びている一対のアーム部56と、アーム部56の先端から車両幅方向の内側(デフレクタ装置30の車両幅方向の中心部に向かう側)突出する一対の軸部58とを有している。フレーム本体42は、フレームの一例である。
【0032】
-フレーム本体42-
このフレーム本体42は、
図4に示されるように、可動パネル14が閉塞位置に配置された状態で、ルーフパネル110のルーフ面(ルーフパネル110の外表面)に比して下方に配置されている(以下「デフレクタ装置30の収納状態」)。具体的には、デフレクタ装置30の収納状態で、車両幅方向から見て、フレーム本体42は、ロアフレーム32の車両後方に配置されている。
【0033】
また、フレーム本体42は、
図3に示されるように、可動パネル14が開放位置に配置された状態で、ルーフパネル110のルーフ面に比して上方に配置されている(以下「デフレクタ装置30の展開状態」)。具体的には、デフレクタ装置30の展開状態で、車両幅方向から見て、フレーム本体42は、ロアフレーム32の車両後方で、かつ、ルーフパネル110のルーフ面に比して上方に配置されている。換言すれば、フレーム本体42が上方向に移動した状態で、フレーム本体42は、ロアフレーム32の車両後方で、かつ、ルーフパネル110のルーフ面に比して上方に配置されている。
【0034】
また、フレーム本体42は、
図1に示されるように、デフレクタ装置30の展開状態で、車両幅方向から見て車両前方に対して斜め上方を向く傾斜面44と、車両前方に対して斜め下方を向く下向き面46とを有している。また、フレーム本体42は、傾斜面44の下端と下向き面46の前端を連結する連結面48とを有している。
【0035】
この連結面48は、車両幅方向から見て車両前方に対して斜め下方を向く傾斜面48Aと、傾斜面48Aの上端に接続された凸状の湾曲面48Bとを有している。
【0036】
そして、連結面48と下向き面46とで、傾斜面44の下端に接続され、前方に凸となる湾曲面48Bを含んで形成されると共に、後述するメッシュ部材60の上端が取り付けられた接続面52が形成されている。
【0037】
本実施形態では、デフレクタ装置30の展開状態で、アッパフレーム40の断面高さ(
図1の長さH1)は、一例として、13〔mm〕とされている。また、デフレクタ装置30の展開状態で、車両幅方向から見て、傾斜面44と水平面との成す角度(
図1の角度θ1)は、30〔度〕とされている。
【0038】
-アーム部56、軸部58-
一対のアーム部56は、
図2に示されるように、フレーム本体42の車両幅方向の両端部から車両後方に延びている。そして、長手方向に対して直交する面で切断した切断面は、車両上下方向に延びた矩形状とされている。
【0039】
一対の軸部58は、円柱状とされ、夫々のアーム部56の先端部から車両内側に突出している。この軸部58は、ガイドレール16に形成された図示せぬ円孔に回転可能に支持されている。
【0040】
そして、アッパフレーム40は、図示せぬ規制部材によって回転範囲が規制され、軸部58を中心として、デフレクタ装置30が展開状態となる展開位置と、デフレクタ装置30が収納状態となる収納位置とに回転するようになっている。
【0041】
〔板バネ50〕
板バネ50は、ばね鋼板によって形成されており、
図2に示されるように、一対設けられ、アーム部56の下方に夫々配置されている。具体的には、板バネ50は、アーム部56と、ガイドレール16(
図7参照)に取り付けられた図示せぬ支持部材とで車両上下方向に挟まれている。
【0042】
そして、板バネ50は、板面が車両上下方向に向き、上方から見て、車両前後方向に延びている矩形状とされている。また。板バネ50の車両後方部分は、ガイドレール16に回転不可能な状態で取り付けられており、板バネ50の車両前方部分は、アーム部56の下面に接触している。そして、板バネ50は、アッパフレーム40が展開位置へ移動するように付勢している。
【0043】
この構成において、可動パネル14が閉塞位置から開放位置へ移動した場合には、板バネ50のアッパフレーム40に対する付勢力によって、収納位置のアッパフレーム40が展開位置へ移動して、デフレクタ装置30は、展開状態となる。
【0044】
これに対して、可動パネル14が開放位置から閉塞位置へ移動した場合には、移動する可動パネル14が、一対のアーム部56を前方に向けて押し付ける。アーム部56が前方に向けて押し付けられると、板バネ50の付勢力に対抗して、アッパフレーム40が、軸部58を中心に回転する。これにより、展開位置のアッパフレーム40が収納位置へ移動し、デフレクタ装置30は、収納状態となる。
【0045】
〔メッシュ部材60〕
メッシュ部材60は、樹脂製の繊維を網目に織ることで形成されたシート状の部材であり、
図2に示されるように、フレーム本体42の接続面52(
図1参照)に上端が取り付けれ、ロアフレーム32に下端が取り付けられている。本実施形態では、一例として、フレーム本体42を成形する際に、メッシュ部材60の上端をフレーム本体42にインサートすること(所謂インサート成形)で、メッシュ部材60の上端が、フレーム本体42に取り付けられている。さらに、ロアフレーム32を成形する際に、メッシュ部材60の下端をロアフレーム32にインサートすること(所謂インサート成形)で、メッシュ部材60の下端が、ロアフレーム32に取り付けられている。
【0046】
そして、デフレクタ装置30の展開状態で、メッシュ部材60は、車両幅方向に延びる矩形状となる。また、この状態で、メッシュ部材60は、
図3に示されるように、下方部分を除いて、ルーフパネル110のルーフ面に比して上方に配置されている。さらに、車両幅方向から見て、メッシュ部材60の上端が下端に比して車両後方に配置されることで、メッシュ部材60は、前方に対して斜め上方を向くように傾斜している。
【0047】
これに対して、デフレクタ装置30の収納状態で、メッシュ部材60は、
図4に示されるように、車両幅方向から見て、折り畳まれ、全体がルーフパネル110のルーフ面に比して下方に配置されている。そして、メッシュ部材60の全体が、閉塞位置に配置された可動パネル14の下方に配置されている。
【0048】
ここで、このメッシュ部材60には、
図2に示されるように、第一領域62と第一領域62と比して圧力損失係数が大きい第二領域64とが形成されている。そして、第一領域62は第二領域64に対して上方に配置されている。
【0049】
具体的には、第一領域62及び第二領域64は、車両幅方向の全域に亘って形成されている。そして、第一領域62と第二領域64の境界部66は、車両幅方向に延びたフレーム本体42に沿って形成されている。さらに、第一領域62の上端が、フレーム本体42の接続面52における下向き面46に取り付けられており、第二領域64の下端が、ロアフレーム32に取り付けられている。そして、デフレクタ装置30の展開状態で、第二領域64の少なくとも一部が、ルーフ面の上方に配置されている。
【0050】
本実施形態では、第一領域62の圧力損失係数は、1.0以上4.5以下とされている。なお、後述する空力音(笛吹き音)対策を考慮すると、第一領域62の圧力損失係数については、2.0以上4.0以下が好ましく、3.0がより好ましい。また、第二領域64の圧力損失係数は、5.5以上12.0以下とされている。なお、後述する空力音(笛吹き音)対策を考慮すると、第二領域64の圧力損失係数については、7.0以上10.0以下が好ましく、9.5がより好ましい。
【0051】
この圧力損失係数については、日本ブロアー株式会社のフィルター試験装置FTS-300MSを用いて測定することができる。
【0052】
さらに、車両幅方向から見た第一領域62の面沿い寸法(
図1に示す寸法L1)は、フレーム本体42の断面高さ(
図1に示す高さH1)の0.5倍以上1以下とされている。本実施形態では、第一領域62の面沿い寸法L1は、6.5〔mm〕以上13〔mm〕以下とされている。
【0053】
(作用)
次に、デフレクタ装置30の作用について、第1比較形態に係るデフレクタ装置230、及び第2比較形態に係るデフレクタ装置330と比較しつつ説明する。先ず、デフレクタ装置230の構成、及びデフレクタ装置330の構成について、デフレクタ装置30と異なる部分を主に説明する。
【0054】
-デフレクタ装置230、デフレクタ装置330-
第1比較形態に係るデフレクタ装置230は、
図8に示されるように、メッシュ部材260を備えている。このメッシュ部材260は、第一領域と第二領域とに分けられておらず、メッシュ部材260の圧力損失係数については、5.5以上12.0以下とされている。つまり、メッシュ部材260の圧力損失係数は、デフレクタ装置30のメッシュ部材60における第二領域64の圧力損失係数と同様とされている。換言すれば、メッシュ部材260の圧力損失係数は、デフレクタ装置30のメッシュ部材60の第一領域62の圧力損失係数と比して大きくされている。
【0055】
第2比較形態に係るデフレクタ装置330は、
図9に示されるように、メッシュ部材360を備えている。このメッシュ部材360は、第一領域と第二領域とに分けられておらず、メッシュ部材360の圧力損失係数については、1.0以上4.5以下とされている。つまり、メッシュ部材360の圧力損失係数は、デフレクタ装置30のメッシュ部材60における第一領域62の圧力損失係数と同様とされている。換言すれば、メッシュ部材360の圧力損失係数は、デフレクタ装置30のメッシュ部材60の第二領域64の圧力損失係数と比して小さくされている。
【0056】
そして、第1比較形態に係るデフレクタ装置230を搭載した車両が、開口110Aを開放して60〔km/h〕で走行すると、ルーフパネル110のルーフ面に沿って車両前方から後方へ流れる空気は、
図8に示されるように、メッシュ部材260に当たる。ここで、メッシュ部材260の圧力損失係数は、前述したように、5.5以上12.0以下とされており、デフレクタ装置30のメッシュ部材60における第二領域64の圧力損失係数と同様とされている。
【0057】
このため、メッシュ部材260に当たった空気の大部分は、メッシュ部材260に当たって進行方向が変えられ、フレーム本体42側へ流れる。なお、メッシュ部材260に当たった空気の一部分は、メッシュ部材260を通過する。
【0058】
さらに、フレーム本体42側へ流れた空気は、下向き面46及び連結面48に沿って傾斜面44側へ流れる。そして、傾斜面44側へ流れた空気は、連結面48と傾斜面44との境界部分で、フレーム本体42から剥離し、渦となって上方へ流れる。さらに、渦となって上方へ流れた空気は、乱流に遷移して傾斜面44の上端部(図中部位M1)に再付着する。これにより、部位M1で圧力変動が生じ、この圧力変動によって、高周波狭帯域の空力音(所謂笛吹音)が発生してしまう。
【0059】
また、第2比較形態に係るデフレクタ装置330を搭載した車両が、開口110Aを開放して60〔km/h〕で走行すると、ルーフパネル110のルーフ面に沿って車両前方から後方へ流れる空気は、
図9に示されるように、メッシュ部材360に当たる。ここで、メッシュ部材360の圧力損失係数は、前述したように、1.0以上4.5以下とされており、デフレクタ装置30のメッシュ部材60における第一領域62の圧力損失係数と同様とされている。
【0060】
メッシュ部材360に当たった空気の一部分は、フレーム本体42の下向き面46及び連結面48に沿って傾斜面44側へ流れる。そして、流れる空気の量が少ないため、傾斜面44側へ流れた空気は、傾斜面44に沿って流れる。このため、第1比較形態で説明した高周波狭帯域の空力音の発生は抑制されている。
【0061】
-デフレクタ装置30-
これに対して、本実施形態に係るデフレクタ装置30を搭載した車両が、開口110Aを開放して60〔km/h〕で走行すると、ルーフパネル110のルーフ面に沿って車両前方から後方へ流れる空気は、
図1に示されるように、メッシュ部材60に当たる。ここで、メッシュ部材60の上側部分の第一領域62の圧力損失係数は、1.0以上4.5以下とされており、メッシュ部材60の下側部分の第二領域64の圧力損失係数は、5.5以上12.0以下とされている。
【0062】
このため、メッシュ部材60の第二領域64に当たった空気の大部分は、第二領域64に当たって進行方向が変えられ、上方の第一領域62側へ流れる。
【0063】
また、メッシュ部材60の第一領域62に当たった空気の大部分、及び第二領域64から第一領域62側に流れた空気の大部分は、メッシュ部材60の第一領域62を通過して車両後方へ流れる。さらに、メッシュ部材60の第一領域62に当たった空気の一部分、及び第二領域64から第一領域62側に流れた空気の一部分は、フレーム本体42側に流れる。
【0064】
ここで、メッシュ部材60の第一領域62は、メッシュ部材60の上方部分にのみ形成されているため、メッシュ部材60の全体を通過する空気の量は、第2比較形態に係るデフレクタ装置330のメッシュ部材360の全体を通過する空気の量と比して少ない。
【0065】
また、フレーム本体42側に流れる空気の量は、第1比較形態に係るデフレクタ装置230のメッシュ部材260に当たってフレーム本体42側に流れる空気の量と比して少ない。このため、フレーム本体42側に流れた空気は、フレーム本体42の下向き面46及び連結面48に沿って傾斜面44側へ流れる。そして、流れる空気の量が少ないため、傾斜面44側へ流れた空気は、フレーム本体42から剥離しようとせず、傾斜面44に沿って流れる。このため、高周波狭帯域の空力音の発生が抑制されている。
【0066】
なお、第一領域の圧力損失係数を、第二領域の圧力損失係数と比して大きくするメッシュ部材を用いることも考えられるが、第一領域の圧力損失係数が大きいと、フレーム本体42側に流れる空気の量が多くなり、高周波狭帯域の空力音が発生してしまう。
【0067】
(まとめ)
以上説明したように、デフレクタ装置30では、メッシュ部材60が圧力損失係数の異なる第一領域62と第二領域64とを有している。このため、メッシュ部材の全ての部位で圧力損失係数が同じ場合と比して、ウインドスロッブの発生を抑制した上で、フレーム本体42から、高周波狭帯域の空力音が発生するのを抑制することができる。
【0068】
また、第一領域62及び第二領域64は、車両幅方向の全域に亘って形成されている。このため、例えば、第一領域62及び第二領域64が車両幅方向の一部にのみ形成されている場合と比して、フレーム本体42から高周波狭帯域の空力音が発生するのを抑制することができる。
【0069】
また、第一領域62と第二領域64との境界部66は、車両幅方向に延びたフレーム本体42に沿って形成されている。このため、第一領域62となる帯状のメッシュと、第二領域64となる帯状のメッシュとを繋ぎ合せることで、メッシュ部材60を容易に製造することができる。
【0070】
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態に係るデフレクタ装置の一例について
図10を用いて説明する。なお、第2実施形態については、第1実施形態と異なる部分を主に説明する。
【0071】
第2実施形態に係るデフレクタ装置130のメッシュ部材160には、第一領域162と、第一領域162と比して圧力損失係数が大きい第二領域164と、圧力損失係数が第二領域164と同様の一対の第三領域180とが形成されている。メッシュ部材160は、通気部材の一例である。
【0072】
具体的には、第一領域162及び第二領域164は、メッシュ部材160の車両幅方向の中央側の部分に形成されている。そして、第一領域162が第二領域164に対して上方に配置されている。また、一対の第三領域180は、第一領域162及び第二領域164を車両幅方向から挟むように配置されている。ここで、車両幅方向の全域を100とした場合に、第一領域62及び第二領域64が占める領域は、60以上とされている。なお、第二領域164と第三領域180とは一体的に形成されている。
【0073】
また、本実施形態では、第一領域162の圧力損失係数は、1.0以上4.5以下とされている。なお、空力音(笛吹き音)対策を考慮すると、第一領域162の圧力損失係数については、2.0以上4.0以下が好ましく、3.0がより好ましい。また、第二領域164の圧力損失係数は、5.5以上12.0以下とされている。なお、空力音(笛吹き音)対策を考慮すると、第二領域164の圧力損失係数については、7.0以上10.0以下が好ましく、9.5がより好ましい。
【0074】
ここで、デフレクタ装置130を搭載した車両が、開口110Aを開放して60〔km/h〕で走行すると、ルーフパネル110のルーフ面に沿って車両前方から後方へ流れる空気ついては、車両幅方向の外側の部分では、流れが乱れることが多い。このため、デフレクタ装置130において車両幅方向の外側の部分には、第一領域162及び第二領域164が形成されていないが、車両幅方向の外側の部分では空気の流れが乱れているため、高周波狭帯域の空力音の発生が抑制されている。
【0075】
これに対して、車両幅方向の中央側の部分では空気の流れが乱れることは少ない。しかし、デフレクタ装置130において車両幅方向の中央側の部分には、第一領域162及び第二領域164が形成されている。このため、高周波狭帯域の空力音が発生するのを抑制することができる。換言すれば、少なくとも車両幅方向の中央側の部分に第一領域162及び第二領域164を形成させることで、車両幅方向の外側の部分だけに第一領域及び第二領域を形成させる場合と比して、高周波狭帯域の空力音が発生するのを抑制することができる。
【0076】
なお、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態をとることが可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、上記実施形態では、メッシュ部材60、160は、樹脂製の繊維を網目に織ることで形成されたシート状の部材であったが、表裏を貫通する複数の孔が形成されているシート状の部材であればよい。例えば、シート状の部材に貫通孔が加工されたパンチングメタルのような部材であってもよい。
【0077】
また、上記実施形態では、スライド式のサンルーフを用いてデフレクタ装置30、130を説明したが、脱着式のサンルーフであってもよく、開口が開放された状態で、デフレクタ装置30、130が展開状態となればよい。
【0078】
また、上記第1実施形態では、第一領域62と第二領域64の境界部66は、車両幅方向に延びたフレーム本体42に沿って形成されたが、例えば、車両前方から見て境界部が湾曲していてもよい。しかし、この場合には、境界部66がフレーム本体42に沿って形成されることで奏する作用は奏しない。
【0079】
また、上記実施形態では、接続面52は、連結面48と下向き面46とで形成されたが、凸となる湾曲面48Bと下向き面46とで接続面52が形成されていればよく、メッシュ部材60の上端が取り付けられた下向き面が、車両前方に対して斜め下方を向く面であればよい。
【符号の説明】
【0080】
14 可動パネル
30 デフレクタ装置
42 フレーム本体(フレームの一例)
44 傾斜面
48B 湾曲面
52 接続面
60 メッシュ部材(通気部材の一例)
62 第一領域
64 第二領域
66 境界部
110 ルーフパネル
110A 開口
130 デフレクタ装置
160 メッシュ部材(通気部材の一例)
162 第一領域
164 第二領域