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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】耐油紙
(51)【国際特許分類】
   D21H 19/82 20060101AFI20220906BHJP
   D21H 19/18 20060101ALI20220906BHJP
   D21H 19/20 20060101ALI20220906BHJP
   D21H 19/84 20060101ALI20220906BHJP
   D21H 21/14 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
D21H19/82
D21H19/18
D21H19/20 A
D21H19/84
D21H21/14 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018220213
(22)【出願日】2018-11-26
(65)【公開番号】P2020084368
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 智弘
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 慶一
(72)【発明者】
【氏名】井上 英知
【審査官】川口 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-144693(JP,A)
【文献】特開2009-209508(JP,A)
【文献】国際公開第2012/091022(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21H 19/82
D21H 19/18
D21H 19/20
D21H 19/84
D21H 21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材と、下塗り層と、上塗り層と、を有する耐油紙であって、
パラフィンワックスを含有する前記下塗り層は、前記紙基材の両面に備え、
スチレン-アクリル共重合樹脂を含有する前記上塗り層は、前記下塗り層上に一方の面にのみ備え、
前記パラフィンワックスの含有量は、固形分換算で、前記紙基材の片面あたり0.4g/m以上2.5g/m以下であり、
前記スチレン-アクリル共重合樹脂の含有量は、固形分換算で、前記紙基材の片面あたり0.8g/m以上3.8g/m以下であることを特徴とする耐油紙。
【請求項2】
前記上塗り層の表面を測定面とした、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法 No.41:2000に準じて測定したキット値が5以上であり、
JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法 No.5-2:2000に準じて測定した王研式透気度が10000秒以下であることを特徴とする請求項1に記載の耐油紙。
【請求項3】
前記紙基材が20g/m以上150g/m以下の坪量を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の耐油紙。
【請求項4】
更に、前記上塗り層と前記下塗り層の3か所のうち、少なくとも1か所がデンプンを含有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の耐油紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐油紙に関する。
【背景技術】
【0002】
耐油紙は、油分や水分を多く含むファーストフードや揚げ物、焼き物といった調理済の食品、チョコレート等の油脂を多く含む食品に対する包装用紙や包装容器、あるいは食品トレイ等の紙製敷物として広く利用されている。
【0003】
一般的に、紙に耐油性を付与する耐油剤としては、フッ素樹脂系耐油剤が汎用されており、例えば、紙基材表面にフッ素樹脂系耐油剤を塗工して耐油層を設けた耐油紙や、紙基材にフッ素樹脂系耐油剤を内添させた耐油紙が知られている。しかし、フッ素樹脂系耐油剤を使用した耐油紙は、燃焼時に発生するハロゲン由来の不活性ガスの取り扱いが困難であり、フッ素樹脂系耐油剤を含まない耐油紙が求められていた。
【0004】
フッ素樹脂系耐油剤を含まない耐油紙として、例えば、特許文献1には、紙基材の少なくとも片面に、下塗り塗工層と上塗り塗工層とを有する耐油紙であって、上記下塗り塗工層は、酸化デンプンと、脂肪酸サイズ剤およびアルキルケテンダイマーの少なくとも1つとを含有し、上記上塗り塗工層は、酸化デンプンおよびスチレンブタジエン共重合体の少なくとも1つを含有する耐油紙が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、紙支持体の少なくとも片面に少なくとも1層のアクリル系樹脂を主成分とする耐油層を設けた耐油紙であって、該アクリル系樹脂の重量平均分子量が5万~200万、かつ酸価が50~200mgKOHである耐油紙が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-119921号公報
【文献】特開2012-067402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、デンプンやアクリル系樹脂の耐油剤は、その耐油性の発現のために紙基材にピンホールがないように塗膜するので、通気性が不十分となり、包装した食品から発生した水蒸気が耐油紙から外部に抜けにくく、食品の風味や保存性が低下するといった難点があった。
【0008】
したがって、本発明は、以上の課題に鑑みてなされたものであり、高い耐油性と高い通気性とを併せ持つ、非フッ素樹脂系の耐油紙を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の発明者は、上記課題に鑑み、鋭意研究を行った。その結果、紙基材の両面にパラフィンワックスを含有する下塗り層を備え、下塗り層上に一方の面にのみスチレン-アクリル共重合樹脂を含有する上塗り層を備え、パラフィンワックス及びスチレン-アクリル共重合樹脂の塗工量を所定の範囲とすることで、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0010】
(1)本発明の第1の態様は、紙基材と、下塗り層と、上塗り層と、を有する耐油紙であって、
パラフィンワックスを含有する上記下塗り層は、上記紙基材の両面に備え、
スチレン-アクリル共重合樹脂を含有する上記上塗り層は、上記下塗り層上に一方の面にのみ備え、
上記パラフィンワックスの含有量は、固形分換算で、上記紙基材の片面あたり0.4g/m以上2.5g/m以下であり、
上記スチレン-アクリル共重合樹脂の含有量は、固形分換算で、上記紙基材の片面あたり0.8g/m以上3.8g/m以下である耐油紙である。
【0011】
(2)本発明の第2の態様は、(1)に記載の耐油紙であって、上記上塗り層の表面を測定面とした、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法 No.41:2000に準じて測定したキット値が5以上であり、
JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法 No.5-2:2000に準じて測定した王研式透気度が10000秒以下であることを特徴とするものである。
【0012】
(3)本発明の第3の態様は、(1)又は(2)に記載の耐油紙であって、上記紙基材が20g/m以上150g/m以下の坪量を有することを特徴とするものである。
【0013】
(4)本発明の第4の態様は、(1)から(3)のいずれかに記載の耐油紙であって、更に、上記上塗り層と上記下塗り層の3か所のうち、少なくとも1か所がデンプンを含有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、高い耐油性と高い通気性とを併せ持つ、非フッ素樹脂系の耐油紙を提供することができる。
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について、詳細に説明する。
【0016】
本実施形態に係る耐油紙は、紙基材と、下塗り層と、上塗り層と、を有する。下塗り層は、紙基材の両面に備えられており、上塗り層は、その下塗り層上に一方の面にのみ備えられており、食品と接する層である。
【0017】
(下塗り層)
下塗り層は、パラフィンワックスを含有する。パラフィンワックスは、原油の減圧蒸留留出油部分から、結晶性の良い炭化水素を分離・精製したものであり、主として直鎖状の炭化水素(ノルマルパラフィン)で構成されており、紙基材に耐油性を付与する。
【0018】
下塗り層の成分として塗工されたパラフィンワックスは、紙基材の両面の下塗り層の表面近くに局在する。そのため、紙基材の中央部付近の多孔質構造が維持され、紙基材に高通気性を付与することができる。
【0019】
本実施形態に係るパラフィンワックスとしては、融点が40℃以上70℃以下の物であれば特に限定はなく、例えば、カルボキシ変性パラフィンワックス、アクリロニトリル変性パラフィンワックス等の変性パラフィンワックスも使用することができる。
【0020】
パラフィンワックスの含有量は、固形分換算で、紙基材の片面あたり0.4g/m以上2.5g/m以下である。0.4g/m未満であると、耐油性が不十分であるため、上塗り層のスチレン-アクリル共重合樹脂の含有量を増やす必要があり、通気性を損なう。一方、2.5g/mを超えると、パラフィンワックスが紙基材の中央付近まで浸透し、通気性が不十分となる他、下塗り層がスチレン-アクリル共重合樹脂をハジキ易くなる。
【0021】
下塗り層には、パラフィンワックスの他に、デンプンを含有することが好ましい。デンプンは、下塗り層に保湿性を付与することができる。本実施形態に係るデンプンとしては、特に限定はなく、例えば、トウモロコシデンプン、ポテトデンプン、タピオカデンプン、酸化デンプン、リン酸デンプン、エーテル化デンプン、ジアルデヒド化デンプン、エステル化デンプン等の変性デンプン等を挙げることができる。
【0022】
下塗り層におけるデンプンの含有量は、固形分換算で、紙基材の片面あたり0.05g/m以上3.0g/m以下であることが好ましい。
【0023】
下塗り層には、発明の所望の効果を損なわれない範囲で、更に、分散剤、保水剤、消泡剤、着色剤等を必要に応じて適宜選択して使用することができる。
【0024】
(上塗り層)
上塗り層は、スチレン-アクリル共重合樹脂を含有する。スチレン-アクリル共重合樹脂は、耐水性がすぐれ、また、下塗り層の耐油性に対して向上効果をもたらす。本実施形態に係るスチレン-アクリル共重合樹脂としては、特に限定はなく、公知の物を使用することができる。
【0025】
スチレン-アクリル共重合樹脂の構成モノマーとしては、少なくともスチレン系モノマーと、アクリル系モノマーを含む。スチレン系モノマーとしては、特に限定されず、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、α-エチルスチレン、α-ブチルスチレン、4-メトキシスチレン、ビニルトルエン等を挙げることができる。アクリル系モノマーとしては、特に限定されず、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類、3-エトキシプロピルアクリレート、3-エトキシブチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタアクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル誘導体、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレート等のアクリル酸アリールエステル類及びアクリル酸アラルキルエステル類、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリンのような多価アルコールのモノアクリル酸エステル類等を挙げることができる。
【0026】
また、共重合樹脂のモノマー組成を満たす限りにおいて、必要によりスチレン-アクリル共重合樹脂の構成モノマー成分と共重合可能なその他のモノマーを併用することができる。
【0027】
スチレン-アクリル共重合樹脂の重量平均分子量は、10000以上15000以下であることが好ましい。上記の範囲内であると、通気性と耐油性のバランスを両立させることができる。
【0028】
また、スチレン-アクリル共重合樹脂のガラス転移点は、-50℃以上30℃以下であることが好ましい。上記の範囲内であると耐油性が優れる。
【0029】
上塗り層には、パラフィンワックスの他に、デンプンを含有することが好ましい。デンプンは、上塗り層に保湿性を付与することができる。本実施形態に係るデンプンとしては、特に限定はなく、例えば、トウモロコシデンプン、ポテトデンプン、タピオカデンプン、酸化デンプン、リン酸デンプン、エーテル化デンプン、ジアルデヒド化デンプン、エステル化デンプン等の変性デンプン等を挙げることができる。
【0030】
上塗り層におけるデンプンの含有量は、固形分換算で、0.05g/m以上3.0g/m以下であることが好ましい。また、デンプンは、上記上塗り層と上記下塗り層の3か所のうち、少なくとも1か所で含有することが好ましい。
【0031】
上塗り層には、発明の所望の効果を損なわれない範囲で、更に、分散剤、保水剤、消泡剤、着色剤等を必要に応じて適宜選択して使用することができる。また、フッ素樹脂を含有しないことが好ましい。
【0032】
(紙基材)
本発明で用いる紙基材は、特に限定されず、用途に応じて適宜選択して使用することができ、例えば、晒又は未晒クラフト紙(酸性紙又は中性紙)、上質紙、中質紙、微塗工紙、塗工紙、ライナー、セミグラシン紙、グラシン紙、片艶紙、パーチメント紙板紙、白板紙等を挙げることができる。
【0033】
紙基材を構成するパルプとしては、例えば、木材パルプ、非木材パルプ、古紙パルプ、合成繊維パルプ等を挙げることができる。木材パルプとしては、例えば、針葉樹や広葉樹の化学パルプや機械パルプ等が挙げられる。非木材パルプとしては、例えば、ケナフパルプ、バガスパルプ、ラグパルプ、リネンパルプ、麻パルプ、楮パルプ、三椏パルプ、雁皮パルプ、藁パルプ、竹パルプ等が挙げられる。古紙パルプとしては、例えば、雑誌古紙、チラシ古紙、色上古紙、新聞古紙、ケント古紙、上白古紙、コート古紙、複写古紙、損紙古紙等が挙げられる。合成繊維パルプとしては、例えば、レーヨン樹脂、ビニロン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリバラフェニレン樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。
【0034】
これらの中でも、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹晒サルファイトパルプ(LBSP)、針葉樹晒サルファイトパルプ(NBSP)等の化学パルプを含有することが好ましい。
【0035】
紙基材には、発明の所望の効果を損なわれない範囲で、慣用の添加剤、例えば、サイズ剤(アルキルケテンダイマー系、アルケニル無水コハク酸系、高級脂肪酸系、石油樹脂系、ロジン系等)、紙力増強剤(デンプン、ポリアクリルアミド、ポリアミドアミンエピクロロヒドリン等)、歩留まり向上剤、濾水性向上剤、硫酸バンド、pH調製剤、消泡剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤等を必要に応じて適宜選択して使用することができる。
【0036】
紙基材の坪量は、20g/m以上150g/m以下であることが好ましい。坪量とは、JIS P 8124:2011の坪量の試験方法に基づいて測定した数値である。坪量が20g/mより少ないと、耐油紙の強度が不足する恐れがあり、一方、150g/mを超えると、コスト高につながる恐れがある。また、紙基材の厚さは、50μm以上130μm以下が好ましい。
【0037】
紙基材のステキヒトサイズ度は、5秒以上であることが好ましい。ステキヒトサイズ度とは、ステキヒト法によるサイズ度(水の浸透抵抗度)を測定するものであり、JIS P 8122:2004に基づいて測定した数値である。5秒未満であると、パラフィンワックス等の下塗り層に含有する成分の紙基材への浸透度が不十分となり、パラフィンワックスを多く含有させる必要が生じる。ステキヒトサイズ度の上限は、特に限定されないが、下塗り層の塗工性の観点から、120秒以下が好ましく、60秒以下がより好ましい。紙基材のステキヒトサイズ度は、例えば、抄造条件、内添サイズ剤の種類や含有量等によって制御することができる。
【0038】
紙基材の製造方法は、公知の方法を用いればよい。例えば、針葉樹パルプと広葉樹パルプを所定の質量比で水に分散し、これを叩解機で所定の叩解度に叩解したパルプスラリーを得る。次いで、得られたパルプスラリーに、所望により添加剤等を添加する。調製したスラリーを長網抄紙機、円網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機等の公知の抄紙機を使用して抄紙し、紙基材を得ることができる。また、抄紙方式は、特に限定されず、酸性抄紙又は中性抄紙のいずれも選択できる。
【0039】
下塗り層を形成させる方法としては、紙基材の抄紙後に塗布・含浸させる外添法が好ましい。例えば、下塗り層形成用塗工液を固形分濃度0.01質量%以上30質量%以下の水分散液とし、紙基材の表裏両面に、バーコーター、ダイコーター、グラビアコーター、ロールコーター、ブレードコーター、エアナイフコーター、サイズプレスコーター等の塗工機を用いて下塗り層を形成することができる。下塗り層の成分を紙基材の表面により局在化させることができることから、エアナイフコーター又はサイズプレスコーターが好ましい。
【0040】
上塗り層を形成させる方法としては、下塗り層と同様、外添法が好ましく、例えば、上塗り層形成用塗工液を固形分濃度0.01質量%以上10質量%以下の水分散液とし、下塗り層の一方の面に、バーコーター、ダイコーター、グラビアコーター、ロールコーター、ブレードコーター、エアナイフコーター、サイズプレスコーター等の塗工機を用いて上塗り層を形成することができる。均一な塗工膜を形成し易くなることから、バーコーター又はエアナイフコーターが好ましい。
【0041】
また、塗工後には、マシンカレンダー、熱カレンダー、スーパーカレンダー、ソフトカレンダー等のカレンダー装置を用いて、耐油紙にカレンダー加工をしてもよい。
【0042】
本実施形態に係る耐油紙の紙厚は、20μm以上150μm以下が好ましい。上記の範囲内であると、食品包装用の基材として使用するのに、十分な強度と耐油性を有することになる。
【0043】
(耐油度)
上塗り層の表面を測定面とした耐油紙の耐油度は、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法 No.41:2000に準じて測定したキット値で5以上であることが好ましい。キット値が5以上であれば、耐油紙として十分に使用可能な耐油性を有する。
【0044】
(透気度)
上塗り層の表面を測定面とした耐油紙の透気度は、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法 No.5-2:2000に準じて測定した王研式透気度で10000秒以下であることが好ましい。王研式透気度が10000秒を超えると、耐油紙の通気性が悪く、食品の風味や保存性が低下する等の問題が生じる。
【0045】
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明は、これらに何ら限定されるものではない。なお、%及び部は、特に断りのない限り、質量%及び質量部を表す。
【0046】
[実施例1]
針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)25質量%と広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)75質量%からなるパルプをショッパーリグラー法による叩解度が35°SRとなるように叩解処理し、パルプスラリーの濃度が約2.7質量%となるように水に分散してパルプスラリーを得た。このパルプスラリー中のパルプ100質量部に対して、サイズ剤(荒川化学工業株式会社製、商品名:サイズパインN-775、固形分50質量%)を1.5質量部、デンプン(ジー・エス・エルジャパン株式会社製、商品名:ジェルトロン245)を0.6質量部、湿潤紙力剤(星光PMC株式会社製、商品名:紙力WS-4020、有効成分25質量%)を1.3質量部、硫酸アルミニウム(朝日化学工業株式会社製、液体硫酸バンド)を4.0質量部添加し、長網多筒式抄紙機を用いて厚さ60μm及び坪量40g/mの紙を抄紙した。
【0047】
得られた紙の表裏両面にサイズプレスにてデンプン(日本コーンスターチ株式会社製、商品名:コーンスターチSK-20)を2質量部、パラフィンワックス(近代化学工業株式会社製、商品名:ペルトールRP-907N、固形分50%)を21質量部、水を77質量部とした下塗り層用の塗工液を下塗り層の両面併せての塗布量が20g/mとなるようにして、紙に塗布した。この際のパラフィンワックスの含有量は両面併せて1.0g/mであった。続いて、エアーナイフにて、スチレン-アクリル共重合樹脂(ヘンケルジャパン株式会社製、商品名:ヨドゾールGD900、固形分48質量%)を35質量部、デンプン(昭和化学株式会社製、商品名:マーメイドMC-3000)を2質量部、水を63質量部とした上塗り層用の塗工液を塗布量が20g/mとなるようにして、紙の下塗り層の一方の面にのみ塗布した。この際のスチレン-アクリル共重合体樹脂の含有量は1.0g/mであった。その後、紙の厚みが60μmとなるようにカレンダー処理を行い、サンプルを得た。
【0048】
[実施例2~4、比較例1~3]
実施例2~4及び比較例1~3は、表1に示す下塗り層のパラフィンワックスと、上塗り層のスチレン-アクリル共重合樹脂の含有量を変更した以外は、実施例1と同様に耐油紙を作製した。
【0049】
得られた各耐油紙について、以下に示す方法により評価を行った。結果を表1に示す。
【0050】
(耐油度)
上塗り層の表面を測定面とした耐油紙の耐油度は、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法 No.41:2000に準じて測定した。
【0051】
(透気度)
上塗り層の表面を測定面とした耐油紙の透気度は、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法 No.5-2:2000に準じて王研式透気度を測定した。
【0052】
(上塗り層の状態)
上塗り層を上にして、耐油紙を平らで水平な台上に固定し、上塗り層の表面を目視で観察した。全面にわたってハジキが見られない場合は「良好」、一部でもハジキが見られ、塗膜の形成が不十分である場合は「ハジキ」として表示した。
【0053】
【表1】
【0054】
以上、本発明について、実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記の実施形態の範囲には限定されないことは言うまでもなく、上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが特許請求の範囲の記載から明らかである。