(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】有害廃棄物の回収方法、再利用材の回収方法及び有害廃棄物回収システム
(51)【国際特許分類】
B09B 5/00 20060101AFI20220906BHJP
B03B 5/28 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
B09B5/00 M ZAB
B03B5/28 Z
(21)【出願番号】P 2018238689
(22)【出願日】2018-12-20
【審査請求日】2021-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】518452560
【氏名又は名称】小倉商事株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】小倉 清和
(72)【発明者】
【氏名】安田 柾義
【審査官】岩下 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-291747(JP,A)
【文献】特開2007-130626(JP,A)
【文献】特開2000-271561(JP,A)
【文献】特開平04-018974(JP,A)
【文献】特開平01-315381(JP,A)
【文献】特開2009-078926(JP,A)
【文献】特開2007-107359(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B5
B03B5
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成材と有害廃棄物とで構成された廃材を細分化し、
細分化された前記構成材と細分化された前記有害廃棄物とが混在する細分化廃材に、循環水を吹き掛けて、前記構成材と前記有害廃棄物とに分離し、
分離された前記有害廃棄物を前記循環水とともに第1貯水槽に回収するとともに、回収した前記循環水を循環させて前記廃材に吹きかける、あるいは、
所定の条件に基づいて、前記有害廃棄物及び前記循環水を回収した前記第1貯水槽において前記有害廃棄物が沈降した上澄み水を第2貯水槽に移動し、前記第1貯水槽に沈降した前記有害廃棄物を回収
し、
前記第1貯水槽を、
前記循環水を直接貯水する循環水槽と、
該循環水槽より大きな補助貯水槽とで構成し、
前記循環水槽の水量が減ると、前記補助貯水槽から前記上澄み水を給水し、
前記循環水槽に関する所定の条件に基づいて、前記循環水槽から前記補助貯水槽に前記循環水を移動させ、
前記補助貯水槽において、前記有害廃棄物を沈降させてから前記上澄み水を前記第2貯水槽に移動し、
前記補助貯水槽において沈降した前記有害廃棄物に吸水性ポリマを添加して回収する
有害廃棄物の回収方法。
【請求項2】
前記有害廃棄物及び前記循環水を前記第1貯水槽に回収する前に、
前記有害廃棄物と前記循環水とに分別し、
分別された前記有害廃棄物を回収するとともに、
前記有害廃棄物と分別されたものの、前記有害廃棄物が含有されている前記循環水として前記第1貯水槽に回収する
請求項1に記載の有害廃棄物の回収方法。
【請求項3】
分別された前記有害廃棄物に付着する前記循環水を分離して前記第1貯水槽に回収する
請求項2に記載の有害廃棄物の回収方法。
【請求項4】
前記第1貯水槽の上澄み水を前記第2貯水槽に移動させた後、前記第1貯水槽に沈降した前記有害廃棄物に吸水性ポリマを添加して回収する
請求項1乃至請求項3のうちのいずれかに記載の有害廃棄物の回収方法。
【請求項5】
前記構成材が再利用可能な再利用材であり、
請求項1乃至請求項4のうちいずれかに記載された有害廃棄物の回収方法を行い、
前記再利用材を回収する
再利用材の回収方法。
【請求項6】
構成材と有害廃棄物とで構成された廃材を細分化し、細分化された
前記構成材と細分化された
前記有害廃棄物とが混在する細分化廃材に、循環水を吹き付ける噴水部が備えられ、前記構成材と前記有害廃棄物とに分離し、前記有害廃棄物を回収する分離回収部と、
前記噴水部から吹き付けられるとともに、分離された前記有害廃棄物とともに流れる前記循環水を回収し貯水する第1貯水槽と、
前記第1貯水槽に回収した前記循環水に含有されている前記有害廃棄物が沈降した上澄み水を移動可能な第2貯水槽とで構成され、
前記第1貯水槽は、
前記循環水を直接貯水する循環水槽と、
該循環水槽より大きな補助貯水槽とで構成され、
前記循環水槽は、前記循環水槽に関する所定の条件に基づいて、前記補助貯水槽に前記循環水を移動させる循環水送水部が備えられ、
前記補助貯水槽は、
前記循環水槽の水量が減ると、前記上澄み水を前記循環水槽に給水する給水部と、
前記補助貯水槽において沈降した前記有害廃棄物に吸水性ポリマを添加して回収できるように、前記有害廃棄物が沈降した前記補助貯水槽の前記上澄み水を前記第2貯水槽に移動する上澄送水部とが備えられ、
前記有害廃棄物及び前記循環水を回収した前記第1貯水槽において前記有害廃棄物が沈降した前記上澄み水を、前記循環水として循環させて前記廃材に吹きかける、あるいは、
所定の条件に基づいて、前記上澄み水を
前記第2貯水槽に移動させる
有害廃棄物回収システム。
【請求項7】
前記分離回収部に、
前記有害廃棄物と前記循環水とに分別する分別部と、
前記有害廃棄物と分別されたものの、前記有害廃棄物が含有される前記循環水を前記第1貯水槽に送水する送水部とが備えられた
請求項6に記載の有害廃棄物回収システム。
【請求項8】
分別された前記有害廃棄物に付着した前記循環水と、前記有害廃棄物とを分離する分離部が備えられた
請求項7に記載の有害廃棄物回収システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、有害廃棄物を含む廃材から有害廃棄物を分離して回収する有害廃棄物の回収方法及び有害廃棄物回収システム、あるいは有害廃棄物と再利用材とで構成された廃材から有害廃棄物を分離して、再利用材を回収する再利用材の回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ゴミ問題の観点から、廃材を処理する場合、廃材を構成する構成材を分離し、利用できる構成材は再利用するとともに、構成材が人体に害を及ぼすような有害廃棄物や通常の廃棄物の場合にはそれぞれ適法な方法で廃棄している。
【0003】
このような廃材を構成材に分離して回収する様々な選別器が提案されており、例えば、比重の大きい重量物を上方に、比重の小さい軽量物を下方に分離移動できる選別多孔振動板を傾斜させて設けるとともに、選別多孔振動板に高圧水流を噴射する高圧洗浄手段が備えられた選別器が特許文献1に開示されている。
【0004】
特許文献1によると、振動させた選別多孔振動板に、比重の異なる構成材が混在している廃材を投入することで、比重の大きい重量物を上方に、比重の小さい軽量物を下方に分離移動させることができるとともに、廃材が投入される選別多孔振動板を高圧水流で洗浄できるとされている。
【0005】
しかしながら、例えばアスベストのように、健康被害の原因となる有害廃棄物が含む廃材を処理する場合、選別多孔振動板を洗浄する高圧水流が分離された有害廃棄物を含んだ状態で流されるため、洗浄水を外部に排出することもできない。このため、洗浄水ごと有害廃棄物を回収して、処理する必要があり、時間と手間を要することとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の問題に鑑み、前記有害廃棄物を外部に流出させることなく、前記有害廃棄物を前記廃材から効率的に分離して回収できる有害廃棄物の回収方法及び有害廃棄物回収システム、あるいは有害廃棄物が分離された再利用材の回収方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、構成材と有害廃棄物とで構成された廃材を細分化し、細分化された前記構成材と細分化された前記有害廃棄物とが混在する細分化廃材に、循環水を吹き掛けて、前記構成材と前記有害廃棄物とに分離し、分離された前記有害廃棄物を前記循環水とともに第1貯水槽に回収するとともに、回収した前記循環水を循環させて前記廃材に吹きかける、あるいは、所定の条件に基づいて、前記有害廃棄物及び前記循環水を回収した前記第1貯水槽において前記有害廃棄物が沈降した上澄み水を第2貯水槽に移動し、前記第1貯水槽に沈降した前記有害廃棄物を回収し、前記第1貯水槽を、前記循環水を直接貯水する循環水槽と、該循環水槽より大きな補助貯水槽とで構成し、前記循環水槽の水量が減ると、前記補助貯水槽から前記上澄み水を給水し、前記循環水槽に関する所定の条件に基づいて、前記循環水槽から前記補助貯水槽に前記循環水を移動させ、前記補助貯水槽において、前記有害廃棄物を沈降させてから前記上澄み水を前記第2貯水槽に移動し、前記補助貯水槽において沈降した前記有害廃棄物に吸水性ポリマを添加して回収する有害廃棄物の回収方法であることを特徴とする。
【0009】
またこの発明は、構成材と有害廃棄物とで構成された廃材を細分化し、細分化された前記構成材と細分化された前記有害廃棄物とが混在する細分化廃材に、循環水を吹き付ける噴水部が備えられ、前記構成材と前記有害廃棄物とに分離し、前記有害廃棄物を回収する分離回収部と、前記噴水部から吹き付けられるとともに、分離された前記有害廃棄物とともに流れる前記循環水を回収し貯水する第1貯水槽と、前記第1貯水槽に回収した前記循環水に含有されている前記有害廃棄物が沈降した上澄み水を移動可能な第2貯水槽とで構成され、前記第1貯水槽は、前記循環水を直接貯水する循環水槽と、該循環水槽より大きな補助貯水槽とで構成され、前記循環水槽は、前記循環水槽に関する所定の条件に基づいて、前記補助貯水槽に前記循環水を移動させる循環水送水部が備えられ、前記補助貯水槽は、前記循環水槽の水量が減ると、前記上澄み水を前記循環水槽に給水する給水部と、前記補助貯水槽において沈降した前記有害廃棄物に吸水性ポリマを添加して回収できるように、前記有害廃棄物が沈降した前記補助貯水槽の前記上澄み水を前記第2貯水槽に移動する上澄送水部とが備えられ、前記有害廃棄物及び前記循環水を回収した前記第1貯水槽において前記有害廃棄物が沈降した前記上澄み水を、前記循環水として循環させて前記廃材に吹きかける、あるいは、所定の条件に基づいて、前記上澄み水を前記第2貯水槽に移動させる有害廃棄物回収システムである。
【0010】
前記廃材は、通常の廃棄物として処理できる通常廃棄物と前記有害廃棄物とで構成された場合や、リサイクルのために回収する再利用材と前記有害廃棄物とで構成された場合を含む。
前記循環水は、純水や水道水の他、水にアルコールや化合物などの他の物質が含まれている場合、分離及び回収に用いることができる液体を含む。
【0011】
前記有害廃棄物とは、例えば人体の健康被害が生じるおそれがあるものや環境汚染の原因となるものを含み、具体的には、健康被害を生じるアスベストなどや、ポリ塩化ビフェルニ、ポリ塩化ビフェルニが付着したPCB汚染物などを含む。
【0012】
上述の所定の条件とは、前記第1貯水槽に貯水された前記循環水に含有される前記有害廃棄物濃度が所定の割合を越えたときや、分離された前記有害廃棄物の回収作業時間が所定の時間を越えた場合などを含む。
【0013】
具体的には、測定して得られた前記循環水に含有されている前記有害廃棄物濃度が所定の割合以上である場合や、前記第1貯水槽に貯水された前記循環水の濁度や粘度などが所定の値を超えた場合、前記循環水を目視やセンサにより観察し、一定量以上の前記有害廃棄物が含有されていると判断した場合などを含む。
【0014】
また、上述の分離された前記有害廃棄物の回収作業時間が所定の時間を越えた場合とは、日中に前記構成材と前記有害廃棄物との分離及び回収作業を行った場合や、前記構成材と前記有害廃棄物との分離及び回収作業を行った延時間が所定の時間を越えた場合などを含む。
【0015】
上述の前記第1貯水槽に沈降したとは、例えば硫酸アルミニウムなどの沈降用添加剤を投入して前記有害廃棄物を人為的に沈降させた場合や、時間経過により前記有害廃棄物を自然に沈降させた場合を含む。
【0016】
なお、上述の沈降した有害廃棄物とは、前記第1貯水槽に沈降された前記有害廃棄物のみならず、前記上澄み水を前記第2貯水槽に移動させた後に、前記第1貯水槽に残っている残留水含んだ前記有害廃棄物も含む。
【0017】
この発明により、前記有害廃棄物を外部に流出させることなく、前記有害廃棄物を前記廃材から効率的に分離して回収できる。
詳述すると、前記細分化廃材に吹き付けられた前記循環水を前記第1貯水槽に回収して貯水し、循環させて再び前記細分化廃材に吹きかけることができる。このように、循環する前記循環水を前記細分化廃材に吹き付けることにより、前記廃材に含まれている異物を取り除くことができるとともに、細分化された前記廃材に含有されている前記有害廃棄物が空気中に飛散することを防止しながら、前記有害廃棄物を含有している前記循環水が外部に流出することを防止できる。また、前記有害廃棄物と前記構成材との分離に前記循環水を再利用することができる。
【0018】
さらにまた、例えば前記循環水に含有されている前記有害廃棄物の濃度が、所定の濃度を超えた場合などに、前記有害廃棄物を沈降させて得られる上澄み水を前記第2貯水槽に移動させることができる。これにより、第1貯水槽において、前記循環水を循環させるごとに濃度が濃くなっていく前記有害廃棄物を容易に回収できるとともに、沈降させることで余分な水分を減らした状態で前記有害廃棄物を回収できる。
【0019】
さらには、前記第2貯水槽に移動させた前記上澄み水を循環水として用いることができるため、前記第1貯水槽に沈降した前記有害廃棄物の回収作業を行いながら、前記第2貯水槽の上澄み水を前記循環水として前記廃材に吹きつけ、前記廃材から前記有害廃棄物を分離及び回収できる。これにより、前記有害廃棄物の回収を効率よく行うことができる。
【0020】
また、前記循環水槽に貯水されている前記循環水を用いて前記有害廃棄物の分離及び回収できるため、前記補助貯水槽に貯水されている前記循環水に含有されている前記有害廃棄物を自然沈降させることができる。そのため、前記循環水槽に貯水されている前記循環水の水量が減った場合に、前記有害廃棄物の濃度の薄い前記上澄み水を前記補助貯水槽から前記循環水槽に供給することができる。これにより、効率よく前記有害廃棄物の分離及び回収できる。
【0021】
また、前記循環水槽に貯水されている前記循環水が所定の条件となった場合には、前記循環水槽から前記補助貯水槽に前記循環水を移動させ、前記補助貯水槽において、前記有害廃棄物を沈降させてから前記上澄み水を前記第2貯水槽に移動し、前記補助貯水槽において沈降した前記有害廃棄物に吸水性ポリマを添加して回収できる。これにより、前記補助貯水槽に沈降した前記有害廃棄物を残った循環水ごと確実に回収できる。また、前記循環水槽に循環水を給水することで、前記補助貯水槽にて前記有害廃棄物を回収しながら、前記有害廃棄物の分離及び回収できる。
【0022】
この場合において、前記循環水槽の水量が減ったとしても、前記第2貯水槽に貯水された前記上澄み水を前記循環水槽に給水することができるため、前記有害廃棄物の分離及び回収を継続することができる。
【0023】
上述の有害廃棄物の回収方法の態様として、前記有害廃棄物及び前記循環水を前記第1貯水槽に回収する前に、前記有害廃棄物と前記循環水とに分別し、分別された前記有害廃棄物を回収するとともに、前記有害廃棄物と分別されたものの、前記有害廃棄物が含有されている前記循環水として前記第1貯水槽に回収してもよい。
【0024】
また上述の有害廃棄物回収システムの態様として、前記分離回収部に、前記有害廃棄物と前記循環水とに分別する分別部と、前記有害廃棄物と分別されたものの、前記有害廃棄物が含有される前記循環水を前記第1貯水槽に送水する送水部とが備えられてもよい。
【0025】
前記分別部とは、所定の大きさを有する前記有害廃棄物と液体である前記循環水とを分別できる構成をさし、例えば編み目構造や多孔質構造をしたフィルタ、化学的に前記有害廃棄物を吸着して濾過する吸着濾過部材、遠心分離など機械的に分離できる構成などを含む。
【0026】
この発明により、前記有害廃棄物(分別有害廃棄物)が分別された後の前記循環水(分別循環水)を循環させることができるため、前記循環水が所定の条件に達しにくくすることができる。これにより、単に前記循環水から分別された前記分別有害廃棄物を回収できるだけでなく、前記第1貯水槽に回収されて蓄積される前記有害廃棄物の量を減少させることができる。
【0027】
詳述すると、前記第1貯水槽に回収する前に、サイズの大きな分別有害廃棄物と分別循環水とを分別することで、前記分別循環水に含有されている有害廃棄物をサイズの小さな微粒有害廃棄物とすることができる。これにより、前記分別循環水を循環させたとしても、前記分別循環水に含有されている前記微粒有害廃棄物が所定の条件になるまでの循環させる回数を増やすことができるため、前記第1貯水槽において前記微粒有害廃棄物を沈降させ、前記第2貯水槽に前記上澄み水を移動させる頻度を削減できる。
したがって、前記有害廃棄物を循環水と分別して回収できるとともに、前記循環水を用いて前記有害廃棄物を効率よく回収できる。
【0028】
また、上述の有害廃棄物の回収方法の態様として、分別された前記有害廃棄物に付着する前記循環水を分離して前記第1貯水槽に回収してもよい。
また、上述の有害廃棄物回収システムの態様として、分別された前記有害廃棄物に付着した前記循環水と、前記有害廃棄物とを分離する分離部が備えられてもよい。
【0029】
この発明により、分別された前記有害廃棄物(分別有害廃棄物)に付着した前記循環水(付着水)を分離させた前記分別有害廃棄物を回収することができるため、精度よく前記有害廃棄物を回収することができる。また、前記付着水が付着した状態に比べて前記分別有害廃棄物の質量を軽減できる。
【0030】
また、表面張力などにより分別された前記分別有害廃棄物に付着している前記付着水を前記分別有害廃棄物から分離した場合、前記付着水には微粒有害廃棄物が含まれている。この前記微粒有害廃棄物を含む前記付着水を、前記有害廃棄物と分別された前記分別循環水が回収された前記第1貯水槽に回収することで、前記第1貯水槽において前記分別循環水及び前記付着水に含まれている前記微粒有害廃棄物を沈降させることができ、より効率よく前記有害廃棄物を回収できる。
【0031】
このように、分別された前記有害廃棄物に付着した前記循環水を外部に流出させることなく、精度よく前記分別有害廃棄物を回収できるとともに、前記分別循環水と前記付着水とに含有されている前記微粒有害廃棄物を、別々に回収する場合に比べて効率よく回収できる。
【0032】
また、上述の有害廃棄物の回収方法の態様として、前記第1貯水槽の上澄み水を前記第2貯水槽に移動させた後、前記第1貯水槽に沈降した前記有害廃棄物に吸水性ポリマを添加して回収してもよい。
前記吸水性ポリマは、前記第1貯水槽に沈降させた前記有害廃棄物とともに残った前記循環水を、前記有害廃棄物とともに回収しやすい状態にする物質をさし、例えば、前記有害廃棄物とともに残った前記循環水をゲル状にする吸水性ポリマなどを含む。
【0033】
この発明により、前記第1貯水槽に沈降させた前記有害廃棄物とともに残った前記循環水をゲル状にすることができ、前記循環水を前記有害廃棄物とともに容易かつ確実に回収することができ、前記有害廃棄物を含有する前記循環水が外部に流出することを確実に防止できる。
【0034】
またこの発明は、前記構成材が再利用可能な再利用材であり、上述の有害廃棄物の回収方法を行い、前記再利用材を回収する再利用材の回収方法である。
前記再利用材は、例えば銅や鉄、鉛などの金属類の他、建材として利用される木材やガラス材、鉄筋などの鉄鋼材なども含む。
【0035】
この発明により、前記有害廃棄物と前記再利用材とを分離し、前記有害廃棄物を含有する前記循環水を外部に排出することなく、前記有害廃棄物を回収するとともに、前記再利用材を回収できる。したがって、前記有害廃棄物を適切に廃棄するとともに、前記有害廃棄物を含まない前記再利用材を回収して再利用することができる。
【発明の効果】
【0036】
この発明により、前記有害廃棄物を外部に流出させることなく、前記有害廃棄物を前記廃材から効率的に分離して回収できる有害廃棄物の回収方法及び有害廃棄物回収システム、あるいは有害廃棄物が分離された再利用材の回収方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図2】アスベスト処理システムにおける分離回収部の概略図。
【
図4】アスベスト及び銅の回収方法のフローチャート。
【
図5】アスベスト及び銅の回収方法のフローチャート。
【
図6】アスベスト及び銅の回収方法のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0038】
この発明の一実施形態を以下図面とともに説明する。
図1はアスベスト処理システム1の概略平面図を示し、
図2はアスベスト処理システム1における分離回収部3の概略図を示し、
図3は貯水部4の概略図を示す。
【0039】
図4~
図6はアスベスト処理システム1を用いたアスベストA及び銅Cの回収方法のフローチャートを示す。詳述すると、
図4はアスベスト処理システム1を用いたアスベストA及び銅Cの回収方法の全体像を示すフローチャートを示し、
図5は循環水槽部60に貯水されている循環水Wに含まれているアスベストAの濃度が所定の濃度以上である場合における、循環水槽部60の濃度調整を示すフローチャートを示し、
図6は第1補助貯水槽部70に貯水されている循環水Wに含有されているアスベストAの濃度が所定の濃度以上である場合における、第1補助貯水槽部70の濃度調整を示すフローチャートを示す。
【0040】
図7及び
図8は、循環水Wに含まれているアスベストAの回収方法を示す。詳述すると、
図7(a)は第1補助貯水槽71に沈降用添加剤である硫酸アルミニウムXを添加した状態の第1補助貯水槽71及び第2補助貯水槽81の概略図を示し、
図7(b)は硫酸アルミニウムXを添加した後の第1補助貯水槽71及び第2補助貯水槽81の概略図を示し、
図8(a)は第1補助貯水槽71から第2補助貯水槽81に上澄み水Sを移動させた状態の第1補助貯水槽71及び第2補助貯水槽81の概略図を示し、
図8(b)の第1補助貯水槽71に残ったアスベストAに対して吸水性ポリマYを添加した状態の第1補助貯水槽71及び第2補助貯水槽81の概略図を示す。
【0041】
アスベスト処理システム1は、再利用可能な銅Cと人体の健康被害の原因となるアスベストAが混在した廃材Kを、銅CとアスベストAとに分離して、銅CとアスベストAとをそれぞれ回収するシステムである。
【0042】
このアスベスト処理システム1は、
図1に示すように、密閉された密閉空間Rの内部に設置されている。密閉空間Rは、図示しない減圧装置により、室内の内圧が外圧よりも低くなるように調整されている。これにより、アスベストAが密閉空間Rから外部に漏れることを防止している。
【0043】
また、出入り口には、外部と閉鎖されているとともに、四方八方から空気を吹き付けるエアーシャワールームEが設けられている。このエアーシャワールームEにより、作業者は密閉空間Rで作業する作業者の体に付着したアスベストAをエアーシャワールームEにおいて落としてから外部に出ることができるため、アスベストAが密閉空間Rから外部に漏れ出ないようにすることができる。
【0044】
アスベスト処理システム1は、
図1に示すように、細分化された廃材Kをさらに細分化する細分化部2と、細分化された廃材Kを銅CとアスベストAとに分離し回収する分離回収部3と、アスベストAの分離に用いる循環水Wを貯水する貯水部4とで構成されている。
【0045】
細分化部2は、細分化された廃材Kを後述する粉砕機12に投入させる投入コンベア11と、廃材Kをさらに細分化して細分化廃材Mとする粉砕機12と、銅CとアスベストAとが混在する細分化廃材Mを分離回収部3に送るブロウ13とで構成されている。
【0046】
分離回収部3は、ブロウ13により送られてきた細分化廃材Mを銅CとアスベストAとに分離する選別機20と、細分化廃材Mから分離されたアスベストAを分別して回収する掻出部30と、細分化廃材Mから分離された銅Cを回収する再利用材回収部40とで構成されている。
【0047】
選別機20は、物質の比重の差を利用して混在している物質を選別する選別機であり、
図2に示すように、傾いて配置された直方体状の選別機本体21と、選別機本体21を上下方向に振動させるコイルバネ22と、選別機本体21の両側面外側に設けられた支持部23とで構成されている。
【0048】
選別機本体21は、斜めに傾いて配置された筐体であり、
図2に示すように、上方が開口するとともに、上方側端部及び下方側端部にそれぞれ第1開口部211及び第2開口部212が設けられている。この第2開口部212には、下方側に向けて延出する回収用配管24が取付けられている。
【0049】
コイルバネ22は、上下方向に振動する振動支持板25にと選別機本体21の底面(底面213)とを連結している弾性材であり、
図2に示すように、選別機本体21の傾きと同じ方向に傾いている。このように傾けられたコイルバネ22は、振動支持板25を振動に合わせて傾き方向に沿って弾性運動をすることとなるため、選別機本体21を振動させることができる。
【0050】
支持部23は、傾いて配置された選別機本体21の両側面の外側において、選別機本体21に沿って配置された棒状体であり、上端部分は選別機本体21の上端部分よりも高い位置となるように配置されている。この支持部23には、選別機本体21の長手方向に沿って6本の循環水用配管26が並列配置されている。
【0051】
循環水用配管26は内部に循環水Wが通っている中空状の円筒であり、それぞれの循環水用配管26には、選別機本体21の幅方向に沿って等間隔に並んだ複数本の中空状の噴出部27が下方に向けて突出している。この噴出部27の内部空間は循環水用配管26の内部空間と挿通されており、循環水用配管26の内部に流れる循環水Wを噴出部27から噴き出すことができる。
【0052】
なお、細分化廃材Mを運搬するブロウ13の下端は、
図2に示すように、下方側から2本目の循環水用配管26(循環水用配管26a)と下方側から2本目の循環水用配管26(循環水用配管26b)との間に配置されている。
【0053】
掻出部30は、アスベストAを基端から先端に向けて搬送する搬送機であり、上下方向に対して傾いて配置された外装部31と、外装部31の内部に設けられ、アスベストAを搬送する搬送部32とで構成されている。
【0054】
外装部31は、上方が開口した中空状の略直方体形状をしており、長手方向が選別機本体21の長手方向と同方向となるように形成されている。この外装部31は、底面を形成する底面部311と、底面部311の長手方向の上端及び下端において外装部31の幅方向に沿った側面を形成する先端面部312及び基端面部313と、外装部31の長手方向に沿った側面を形成すると側面部314とで構成されている。
【0055】
先端面部312は、底面部311の上端において、底面部311に対して直交するように立設しており、基端面部313は、底面部311の下端端において、底面部311に対して直交するように立設している。この基端面部313は、先端面部312よりも上方側に延びており、回収用配管24の先端を固定する固定部(図示省略)が備えられ、回収用配管24から流れてくる循環水Wを外装部31の内部に流すことができる。
【0056】
そして、底面部311の上端には、底面部311の一部分を開口させた廃棄物排出部315が設けられ、基端面部313の下端側には、基端面部313の一部分を開口させた循環水排出部316が設けられている。
【0057】
搬送部32は、外装部31の長手方向に沿って所定の間隔を隔てて配置された2本の回転軸部321,321と、回転軸部321の幅方向の両端側に備えられた回転歯車322と、それぞれの回転軸部321に備えられた回転歯車322同士を繋ぐチェーン323と、チェーン323に固定された複数の掻出面324とで構成されている。
【0058】
回転軸部321は、中空状に形成された外装部31の高さ方向中央部分において、外装部31の幅方向に沿って側面部314,314を連結するように設置した円柱状に棒状体である。この回転軸部321は、底面である円の中心軸を回転軸として、図示しないモータにより、
図2中における時計回りに回転可能に構成されている。
【0059】
このように棒状体に形成された回転軸部321の両端側には、回転軸部321とともに回転可能に構成された回転歯車322が備えられている。この回転歯車322の外周面には、径外側に突出する複数の歯が一定間隔で並んでいる。
【0060】
チェーン323は、長手方向に対して対応する回転歯車322の外周面に並んだ歯に嵌合させることで、長円状に形成されている(
図2参照)。このように構成されたチェーン323は、回転軸部321の回転に伴って動くこととなる。
【0061】
また、回転軸部321の両端側に設けられた回転歯車322同士を連結しているチェーン323は、外装部31の幅方向に沿って所定の間隔を隔てて2本並んで配置されており、2本並んだチェーン323を跨ぐように複数の平板状の掻出面324が取り付けられている。
【0062】
この掻出面324は、チェーン323に取り付けられていることから、チェーン323の移動に伴って回動する。なお、回動している掻出面324は、外装部31の下端側に配置されたときに、チェーン323に固定されている端部と反対側の端部が基端面部313と接するように取り付けられている。
【0063】
なお、掻出面324は、チェーン323に固定されている側の端部が、回動方向に向けて突出しているとともに、チェーン323に固定されている側と反対側の端部も回動方向に向けて屈曲している。
【0064】
選別機20に対して掻出部30と反対側に設置されている再利用材回収部40は、細分化廃材Mから分離された銅Cを脱水する脱水機41と、脱水機41を通過した銅Cを乾燥させる乾燥機42と、乾燥機42で乾燥された銅Cを回収する製品ドラム43とで構成されている。
【0065】
この製品ドラム43には銅用のフレキシブルコンテナバック(銅回収用フレコン44)が設置されており、脱水機41と乾燥機42とで脱水、乾燥された銅Cが銅回収用フレコン44に再利用用材料として回収される。
【0066】
貯水部4は、
図1~
図3に示すように、廃棄物排出部315の下方に配置された廃棄物回収部50と、循環水排出部316の下方に配置された循環水槽部60と、循環水槽部60に循環水Wを供給する第1補助貯水槽部70と、第1補助貯水槽部70と同じ構成である第2貯水部80とで構成されている。
【0067】
廃棄物回収部50は、上方が開放された中空状の筐体である廃棄物回収用筐体51と、廃棄物回収用筐体51に被せるように設置された廃棄物用フレコン52とで構成されており、廃棄物回収用筐体51に貯められた循環水Wを第1補助貯水槽部70に送水する付着水送水路53とを備えている。
【0068】
廃棄物用フレコン52は、液体を濾過できるような材質で構成された包袋である。
付着水送水路53は、図示しないポンプで廃棄物回収用筐体51の底部に貯まった付着水Waを第1補助貯水槽部70送水できるように構成されている。
【0069】
循環水槽部60は、循環水排出部316から流れてくる循環水Wを貯水する貯水槽である循環水槽61と、循環水槽61の上方に設置されたフィルタ62と、循環水槽61と循環水用配管26とを連結する循環送水路63とで構成されている。また、循環水槽部60に貯まった循環水Wを第1補助貯水槽部70に移動させることができる循環水送水部64が備えられている。
【0070】
循環水槽61は、中空状の有底筐体であり、貯水できる内容量が1m3である。
フィルタ62は網目構造をしており、循環水排出部316からこぼれてきたアスベストAが循環水槽61に落下することを防止することができる。
【0071】
循環送水路63は、
図1に示すように、ポンプPと連結されており、循環水槽61に貯まった循環水Wを循環水用配管26に送水できる。
循環水送水部64は、付着水送水路53と同様に、図示しないポンプを用いて循環水槽61に貯まった循環水Wを第1補助貯水槽部70に送水できるように構成されている。
【0072】
第1補助貯水槽部70は、循環水Wを貯水する第1補助貯水槽71と、第1補助貯水槽71の中央部分に設けられた第1給水部72とで構成され、第1補助貯水槽部70に貯水された循環水Wに含有されているアスベストAを沈降させて得られる上澄み水Sを第2貯水部80に送水できる上澄送水部73が備えられている。
【0073】
第1補助貯水槽71は貯水できる内容量が3m3であるノッチタンクであり、循環水Wを貯水してある。
第1給水部72は、第1補助貯水槽71から循環水槽61へと循環水Wを送水するための送水路であり、循環水槽61に浮かしてある浮き袋の高さ(循環水槽61に貯水されている循環水Wの水位)に応じて開け閉めできるように構成されている。これにより、循環水槽61の水位に応じて第1補助貯水槽部70に貯水されている循環水Wを循環水槽61に循環水Wを給水することができる。
【0074】
第2貯水部80は、第1補助貯水槽71に対応する第2補助貯水槽81と、第1給水部72に対応する第2給水部82とで構成されている。なお、第2貯水部80は、第1補助貯水槽部70と同じ構成であるため、詳細な説明を省く。
【0075】
このように構成されたアスベスト処理システム1を用いた銅CとアスベストAが混在している廃材Kから銅CとアスベストAを分離して回収する回収方法について、
図4~8に基づいて簡単に説明する。
【0076】
はじめに、銅CとアスベストAが混在している廃材Kをカッターなどで所望の大きさに細分化し、この細分化された廃材Kを投入コンベア11に載せて、投入コンベア11を作動させる。これにより、投入コンベア11に載せられた廃材Kが粉砕機12に投入されてさらに細分化され(ステップs1)、ブロウ13を通して、選別機20に搬送される。
【0077】
そして、循環水槽61に貯水されていた循環水Wが循環水用配管26を介して噴出部27から吹き出されている選別機本体21に(ステップs2)、廃材Kがさらに細分化された細分化廃材Mが投入される(ステップs3)。
【0078】
ここで、振動支持板25の上下方向の振動がコイルバネ22を介して選別機本体21に伝達し、選別機本体21はコイルバネ22の傾きに沿って振動する。これにより、細分化廃材Mに混在している銅CとアスベストAのうち、比重の大きな重量物である銅Cは上方に、比重の小さな軽量物であるアスベストAは下方に移動し、細分化廃材Mに混在している銅CとアスベストAとを分離することができる(ステップs4)。
【0079】
このように分離された銅CとアスベストAのうち、比重の大きな銅Cは、第1開口部211を通って脱水機41に投入されて脱水されたのち、乾燥機42にて乾燥されて、製品ドラム43に設置された銅回収用フレコン44に回収される(ステップs5)。なお、噴出部27から吹き出された循環水により、ごみなどの異物が流されるため、高純度の銅Cを分離し回収できる。
【0080】
一方、比重の軽いアスベストAは噴出部27から吹き付けられる循環水Wとともに下方側に移動され、第2開口部212から回収用配管24を通って外装部31に搬送される(
図2参照)。このとき、アスベストAの上方から循環水Wを吹き付けていることにより、軽量物であるアスベストAが空気中に舞い上がることを防止できる。
【0081】
掻出部30は、回転軸部321を回転させることにより、チェーン323に固定された掻出面324がチェーン323の移動に伴って回動している。この掻出面324は外装部31の下端側に配置されたときに、掻出面324の端部が基端面部313の内壁と略接するように構成されているため、循環水Wとともに外装部31に搬送されたアスベストAのうち、一定以上の大きさを有するアスベストA(大別アスベストAf)は掻出面324により掻き出され、掻出面324の回動に伴い上方に搬送される。このとき、大別アスベストAfと分別された循環水W(分別循環水Wf)は、下方側に流れることとなるため、大別アスベストAfは分別循環水Wfと大別された状態で上方に搬送される。
【0082】
そして、掻出面324により搬送された大別アスベストAfは、上端側の旋回運動により、廃棄物排出部315から排出され、廃棄物排出部315の下方に設置された廃棄物用フレコン52に回収される(ステップs5)。
【0083】
さらに、液体を濾過できるような材質で構成された廃棄物用フレコン52により大別アスベストAfが濾過され、表面張力などにより大別アスベストAfに付着していた付着水Waが廃棄物回収用筐体51に貯水される。このように、廃棄物用フレコン52により精度良くアスベストAを回収できるとともに、アスベストAから濾過された付着水Waを廃棄物回収用筐体51に貯水できるため、循環水W(付着水Wa)が外部に流出することを防止できる。
【0084】
また、アスベストAとともに回収用配管24を通って外装部31に流れてきた循環水Wは、循環水排出部316を通って循環水槽61に貯水される。ここで、循環水槽61に流れる循環水Wはフィルタ62を通って循環水槽61に流れるため、掻出面324により回収されなかった一定以上の大きさを有する大別アスベストAfはフィルタ62で回収できる。
【0085】
このように、一定以上の大きさを有する大別アスベストAfと大別された循環水W(分別循環水Wf)は、循環水槽61に貯水され、ポンプPにより循環送水路63を介して循環水用配管26に送水される。これにより、循環水槽61に回収した循環水Wを循環させて循環水用配管26に送水し(ステップs2)、ブロウ13から投入された細分化廃材Mに吹き付けることができる。
【0086】
このようにアスベストAや銅Cを回収する工程において、循環水槽61に回収されて貯水されている循環水Wが所定量あるか確認する(ステップs6)。
具体的には、循環水槽61には、循環水槽61に貯水されている循環水Wの水位に応じて第1給水部72の開閉と連動する浮き袋(図示省略)が備えられて、循環水槽61に貯水されている貯水量が所定量以上である場合には(ステップs6:Yes)、第1給水部72が閉じられたままであるが、循環水槽61に貯水されている貯水量が所定量未満となると(ステップs6:No)、すなわち浮き袋が所定の高さ未満となると、第1給水部72が開放され、第1補助貯水槽71に貯水している循環水Wの上澄み水Sが循環水槽61に供給されることとなる(ステップs7)。
【0087】
このように、循環水槽61に所定量以上の循環水Wを貯水しておくことで、細分化廃材Mに吹き付ける循環水Wを継続的に供給することができ、細分化廃材Mとともに投入されるごみを洗い流すとともに、アスベストAが舞い上がることを防止しながら、銅C及びアスベストAを回収できる。
【0088】
次に、循環水槽61の貯水されている循環水Wに含有されているアスベストAの濃度を確認する(ステップs8)。循環水槽61の回収されている循環水Wには、掻出面324及びフィルタ62で回収されなかった微粒なアスベストA(微粒アスベストAm)が含まれているため、循環水Wを循環させて使用することで、循環水Wに含有されているアスベストAの濃度が濃くなっていく。このアスベストAの濃度が濃くなることにより、循環水用配管26を介して噴出部27から循環水Wが吹き出されなくおそれがあるため、循環水Wに含有されているアスベストAの濃度は所定の濃度以下にする必要がある。
【0089】
なお、循環水槽61に含有されているアスベストAの濃度は、濃度計で測定しても良いし、圧力計や流速計などで間接的に測定してもよい。また、実際に濃度を数値として計測するのではなく、例えば目視やセンサにより濁度などを確認してもよい。
【0090】
循環水槽61の濃度が所定の濃度以上の場合(ステップs9:Yes)、循環水送水部64を用いて循環水槽61に貯水されている循環水Wをポンプアップし(ステップt1)、第1補助貯水槽71に移動させるとともに、第1補助貯水槽71に貯水されている上澄み水Sを、第1給水部72を介して循環水槽61に供給する(ステップt2)。
【0091】
なお、循環送水路63を用いてポンプアップされる循環水Wは、循環水槽61の底部からポンプアップし、第1補助貯水槽71の底部へと移動させることが好ましい。また、循環水槽61への上澄み水Sを移動は、上述のように浮き袋を用いて循環水槽61の水位と連動させてもよいし、水位と関係なく第1給水部72を開放して給水してもよい。
【0092】
このように循環水槽61に上澄み水Sを供給し、循環水槽61に貯水されている循環水Wに含有するアスベストAが所定の濃度未満とすることにより(ステップs9:No)、確実に循環水Wを循環させることができる。
【0093】
また、第1補助貯水槽71に貯水されている循環水Wに含有されているアスベストAの濃度も確認する(ステップs10)。第1補助貯水槽71に貯水されている循環水Wは、所定の濃度以上である循環水Wが循環水槽61からポンプアップされているとともに、循環水槽61に給水するためのものであるため、所定の濃度以上である場合には、循環水槽61からのポンプアップや循環水槽61への給水が非効率となるためのである。
なお、第1補助貯水槽71に貯水されている循環水Wに含有されているアスベストAの濃度の確認は、循環水槽61と同じ方法でも違う方法でもよい。
【0094】
第1補助貯水槽71に貯水されている循環水Wに含有されているアスベストAの濃度が所定の濃度以上である場合(ステップs11:Yse)、
図7(a)に示すように、第1補助貯水槽71に沈降用添加剤供給部Dから硫酸アルミニウムXを投入して(ステップu1)所定時間放置して、アスベストAを沈降させる(
図7(b)参照)。
【0095】
次に、第1補助貯水槽71に貯水された循環水Wのうち、
図8(a)に示すように、アスベストAが沈降して得られた上澄み水Sを、上澄送水部73を用いて第2補助貯水槽81に移動させる(ステップu2)。これにより、第1補助貯水槽71には沈降したアスベストAとわずかな循環水Wが残留し、第2補助貯水槽81にはアスベストAがほとんど含まない上澄み水Sが貯水されることとなる。
【0096】
そして、第1給水部72と循環水槽部60との連結を解除するとともに、アスベストAをほとんど含まない上澄み水Sが貯水された第2貯水部80における第2給水部82を循環水槽部60と連結することで(ステップu3)、第1補助貯水槽部70の代わりに第2貯水部80を用いることができる。これにより、第2貯水部80に貯水されている上澄み水Sを循環水Wの代わりとして循環水槽部60に給水することができる。なお、第1補助貯水槽部70の代わりに第2貯水部80を用いることで、付着水送水路53及び循環水送水部64も第2貯水部80にポンプアップできるようにする必要がある。
【0097】
また、第1補助貯水槽71に沈降しているアスベストAに対して、ポリマ添加部Gを用いて吸水性ポリマYを添加して混ぜることで(ステップu4)、アスベストAをゲル状にして、アスベストAを回収する(ステップu5)。これにより、アスベストAを効率よく回収することができる。
【0098】
なお、第1補助貯水槽部70のアスベストAを沈降させて、上澄み水Sを第2貯水部80に移動させる場合には、一時的に循環水槽部60への給水ができなくなるため、アスベスト処理システム1による銅CとアスベストAとの分離及び回収を一時的に停止してもよい。
【0099】
また、本実施形態では、第1補助貯水槽部70の代わりに第2貯水部80を利用しているが、必ずしもこの方法である必要はなく、第2貯水部80に一時的に上澄み水Sを貯水し(ステップu2)、第1補助貯水槽部70に沈降したアスベストAを回収した後に(ステップu5)、第2貯水部80に貯水した上澄み水Sを第1補助貯水槽部70にポンプアップして移動させてもよい。
【0100】
このように構成されたアスベストAの回収方法は、銅CとアスベストAとで構成された廃材Kを細分化し、細分化された銅Cと細分化されたアスベストAとが混在する細分化廃材Mに、循環水Wを吹き掛けて、銅CとアスベストAとに分離し、分離されたアスベストAを循環水Wとともに循環水槽61と第1補助貯水槽71に回収するとともに、回収した循環水Wを循環させて細分化廃材Mに吹きかける、あるいは、所定の条件に基づいて、アスベストA及び循環水Wを回収した第1補助貯水槽71においてアスベストAが沈降した上澄み水Sを第2補助貯水槽81に移動し、第1補助貯水槽71に沈降したアスベストAを回収することにより、アスベストAを外部に流出させることなく、アスベストAを廃材Kから効率的に分離して回収できる。
【0101】
詳述すると、
図1及び
図2に示すように、細分化廃材Mに吹き付けられた循環水Wを循環水槽61に回収して貯水し、循環させて再び細分化廃材Mに吹きかけることができる。すなわち、循環水Wが循環する回路を形成し、循環水Wを細分化廃材Mに吹き付けることにより、細分化廃材Mに混在しているアスベストAが空気中に飛散することを防止しながら、アスベストAを含有している循環水Wが外部に流出することを防止でき、かつ、アスベストAと銅Cとの分離に循環水Wを再利用することができる。
【0102】
また、循環水Wに含有されているアスベストAの濃度が所定の濃度を超えた場合に、アスベストAを沈降させて得られる上澄み水Sを第2補助貯水槽81に移動させることができ、第1補助貯水槽71に沈降しているアスベストAを容易に回収できる。したがって、循環水槽61と第1補助貯水槽71において、循環水Wを循環させるごとに濃度が濃くなっていくアスベストAを容易に回収するとともに、沈降させることで余分な水分を減らした状態でアスベストAを回収できる。
【0103】
さらには、第2補助貯水槽81に移動させた上澄み水Sを循環水Wとして用いることで、第1補助貯水槽71に沈降したアスベストAの回収作業を行いながら、第2補助貯水槽81の上澄み水Sを循環水槽61に移動し、循環水Wとして廃材Kに吹きつけ、廃材KからアスベストAを効率よく分離及び回収できる。
【0104】
また、アスベストA及び循環水Wを循環水槽61と第1補助貯水槽71に回収する前に、アスベストAと循環水Wとを分別し、分別されたアスベストA(大別アスベストAf)を回収するとともに、大別アスベストAfと分別されたものの、アスベストA(微粒アスベストAm)が含有される循環水Wを循環水槽61に回収することにより、大別アスベストAfと分別された循環水W(分別循環水Wf)を再び循環水用配管26に循環させることができる。これにより、分別循環水WfにおけるアスベストAの濃度が所定の濃度に達しにくくすることができ、単に循環水Wから分別された大別アスベストAfを廃棄物回収部50に効率よく回収できるだけでなく、循環水槽61と第1補助貯水槽71に回収されて蓄積されるアスベストAの量を減少させることができる。
【0105】
詳述すると、循環水槽61と第1補助貯水槽71に回収する前に、サイズの大きな大別アスベストAfを循環水Wから分別することで、循環水Wから分別された分別循環水Wfに含有されているアスベストAをサイズの小さな微粒アスベストAmとすることができる。これにより、分別循環水Wfを循環させたとしても、分別循環水Wfに含有されているアスベストAが所定の条件(濃度)になるまでの循環数を増やすことができる。したがって、循環水槽61と第1補助貯水槽71においてアスベストAを沈降させ、第2補助貯水槽81に上澄み水Sを移動させる頻度を削減できる。
【0106】
さらにまた、分別されたアスベストAに付着する循環水Wを分離して循環水槽61と第1補助貯水槽71に回収することにより、分別されたアスベストA(大別アスベストAf)に付着した循環水W(付着水Wa)を分離させた状態で大別アスベストAfを回収することができるため、精度よくアスベストAを回収することができる。また、付着水Waが付着した状態に比べて、廃棄するアスベストAの質量を軽減できる。
【0107】
また、表面張力などにより分別された大別アスベストAfに付着している付着水Waを大別アスベストAfから分離した場合、付着水Waには微粒アスベストAmが含まれている。この微粒アスベストAmを含む付着水Waを、付着水送水路53を用いてポンプアップし、アスベストAと分別された分別循環水Wfが回収された第1補助貯水槽71に回収することで、第1補助貯水槽71において分別循環水Wf及び付着水Waに含まれている微粒アスベストAmを沈降させることができ、より効率よくアスベストAを回収することができる。
【0108】
このように、分別された大別アスベストAfに付着した付着水Waを外部に流出させることなく、精度よく大別アスベストAfを回収できるとともに、分別循環水Wfと付着水Waとに含有されている微粒アスベストAmを、別々に回収する場合に比べて効率よく回収できる。
【0109】
また、第1補助貯水槽71の上澄み水Sを第2補助貯水槽81に移動させた後、第1補助貯水槽71に沈降したアスベストAに吸水性ポリマYを添加して回収することにより、第1補助貯水槽71に沈降させたアスベストAとともに残った循環水Wをゲル状にすることができ、循環水WをアスベストAとともに容易かつ確実に回収でき、アスベストAを含有する循環水Wが外部に流出することを確実に防止できる。
【0110】
また、循環水Wを直接貯水する循環水槽61と、循環水槽61より大きな第1補助貯水槽71とを備え、循環水槽61の水量が減ると、第1補助貯水槽71から上澄み水Sを給水し、循環水槽61に関する所定の条件に基づいて、循環水槽61から第1補助貯水槽71にアスベストAを含む循環水Wを移動させ、第1補助貯水槽71において、アスベストAを沈降させてから上澄み水Sを第2補助貯水槽81に移動し、循環水槽61と第1補助貯水槽71において沈降したアスベストAに吸水性ポリマYを添加して回収することにより、循環水槽61に貯水されている循環水Wを用いてアスベストAを分離及び回収できる。このため、第1補助貯水槽71に貯水されている循環水Wに含有されているアスベストAを自然沈降させて、循環水槽61に貯水されている循環水Wの水量が減った場合に、アスベストAの濃度の薄い上澄み水Sを第1補助貯水槽71から循環水槽61に供給し、効率よくアスベストAの分離及び回収できる。
【0111】
また、循環水槽61に貯水されている循環水Wが所定の条件となった場合には、循環水槽61から第1補助貯水槽71に循環水Wを移動させ、第1補助貯水槽71において、アスベストAを沈降させてから上澄み水Sを第2補助貯水槽81に移動し、第1補助貯水槽71で沈降したアスベストAに吸水性ポリマYを添加し、アスベストAを確実に回収できる。また、第2補助貯水槽81の上澄み水Sを循環水槽61に循環水Wとして給水することで、第1補助貯水槽71にてアスベストAを回収しながら、細分化廃材Mに混在するアスベストAを分離及び回収できる。
【0112】
この場合において、循環水槽61の水量が減ったとしても、第2補助貯水槽81に貯水された上澄み水Sを循環水槽61に給水することができるため、アスベストAの分離及び回収を継続することができる。
【0113】
また、銅Cが再利用可能な再利用材であるため、アスベスト処理システム1は、アスベストAと再利用材である銅Cとを分離し、アスベストAを含有する循環水Wを外部に排出することなく、アスベストAを回収するとともに、銅Cを回収することができる。したがって、アスベストAを適切に廃棄するとともに、アスベストAを含まない銅Cを回収して再利用することができる。
【0114】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
構成材は、銅Cに対応し、
有害廃棄物は、アスベストAに対応し、
第1貯水槽は、循環水槽61と第1補助貯水槽71に対応し、
第2貯水槽は、第2補助貯水槽81に対応し、
補助貯水槽は、第1補助貯水槽71に対応し、
噴水部は、噴出部27に対応し、
有害廃棄物回収システムは、アスベスト処理システム1に対応し、
分別部は、掻出面324に対応し、
送水部は、循環水排出部316に対応し、
分離部 廃棄物用フレコン52に対応するが、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【0115】
例えば、本実施形態において、廃材Kは、リサイクルのために回収する再利用材である銅Cと、アスベストAとで構成されているが、例えば再利用しないで廃棄する廃棄物とアスベストAとで構成されもよい。
また、循環水Wについては、特に限定してないが、純水や水道水であってもよいし、アルコールや化合物などの他の物質を混合した液体や、分離及び回収に用いることができる液体であってもよい。
【0116】
また、本実施形態において、有害廃棄物としてアスベストAとしているが、選別機20を用いて分離できるものであればどのようものでもよい。例えば、アスベストのように人体の健康被害が生じるおそれがあるものの他、環境汚染の原因となるもの等の分離回収にも利用できる。
【0117】
なお、選別機20は比重の差を用いて選別しているため、仮に廃棄する有害廃棄物の比重が大きい場合には、選別機20の傾きを逆にするなど、状況に合わせて構成を変更してもよい。
また、選別機20の代わりに、遠心分離や科学的な方法により再生部材と有害廃棄物とを分離できる他の選別機を用いてもよい。
【0118】
また、第1補助貯水槽71に貯水された循環水Wに含有されたアスベストAの濃度を判断基準としているが、例えばアスベスト処理システム1を作動させた作動時間(延時間)が所定の時間を越えたとしてもよい。
【0119】
さらにまた、第1補助貯水槽71においてアスベストAを沈降させるため、硫酸アルミニウムXを添加しているが、害なく有害廃棄物を沈降できればどのような沈降用添加剤でもよい。また、必ずしも沈降用添加剤を加えてアスベストAを人為的に沈降させる必要はなく、時間経過によりアスベストAを自然に沈降させてもよい。
なお、第1補助貯水槽71に貯水された循環水Wに含まれているアスベストAが完全に沈降している場合のみならず、上澄み水SにアスベストAが含まれていてもよい。
【0120】
さらにまた、選別機20を用いてアスベストAと銅Cとを分離させているが、例えば、化学的にアスベストAを吸着したのちに濾過できる吸着濾過部材を用いたり、遠心分離など機械的に分離する遠心分離機などを用いたりしてもよい。
【0121】
なお、第1補助貯水槽71に貯水された循環水Wが所定の条件を越えた場合に、他の貯水槽(第2補助貯水槽81)に循環水W(上澄み水S)を移動させるとともに、アスベストAを回収して空になった第1補助貯水槽71に第2補助貯水槽81から上澄み水Sを給水してもよい。
【0122】
さらにまた、本実施形態では、細分化された廃材を細分化部2によりさらに細分化しているが、必ずしもアスベスト処理システム1を用いて細分化する必要はなく、例えば他の場所で細分化された細分化廃材Mを選別機本体21に投入してもよく、また細分化部2の前に細分化する裁断機を備えてもよい。すなわち、細分化廃材Mの細分化方法はどのようなものであってもよい。
上述の構成は、本発明の目的を達成できうる範囲において、適宜組み合わせを変更できる。
【符号の説明】
【0123】
1 アスベスト処理システム
4 貯水部
27 噴水部
324 掻出面
316 循環水排出部
52 廃棄物用フレコン
61 循環水槽
71 第1補助貯水槽
81 第2補助貯水槽
A アスベスト
C 銅
K 廃材
M 細分化廃材
S 上澄み水
W 循環水
Y 吸水性ポリマ循