IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社フジキンの特許一覧

<>
  • 特許-流体駆動弁 図1
  • 特許-流体駆動弁 図2
  • 特許-流体駆動弁 図3
  • 特許-流体駆動弁 図4
  • 特許-流体駆動弁 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】流体駆動弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 37/00 20060101AFI20220906BHJP
   F16K 31/122 20060101ALN20220906BHJP
【FI】
F16K37/00 J
F16K31/122
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019526856
(86)(22)【出願日】2018-06-22
(86)【国際出願番号】 JP2018023761
(87)【国際公開番号】W WO2019004071
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2021-04-09
(31)【優先権主張番号】P 2017129667
(32)【優先日】2017-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100060874
【氏名又は名称】岸本 瑛之助
(72)【発明者】
【氏名】北野 太一
(72)【発明者】
【氏名】谷川 毅
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第203604777(CN,U)
【文献】実開平04-049281(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 37/00
F16K 31/12-31/165
F16K 31/36-31/42
F15B 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体通路が設けられたボディと、操作流体の導入又は排出によって前記流体通路を開閉するアクチュエータとを備え、前記アクチュエータは、ピストンの一側に設けられて前記操作流体が導入されることで受圧空間とされる操作流体導入室と、前記ピストンの他側に設けられて前記操作流体が入ってこない非受圧空間とを有している流体駆動弁において、
前記操作流体はガスであり、前記操作流体の圧力が作用する前記操作流体導入室の圧力を検知する受圧面圧力センサと、前記操作流体の圧力が作用しない前記非受圧空間の圧力を検知する非受圧面圧力センサとが設けられていることを特徴とする流体駆動弁。
【請求項2】
前記操作流体の導入又は排出によって移動するピストンと、前記ピストンと一体に移動し弁体を開または閉方向に移動させる弁棒と、前記弁棒および前記ピストンを収納するケーシングとを備えており、前記弁棒または前記ピストンの位置を検知する位置センサがさらに設けられていることを特徴とする請求項1の流体駆動弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、操作流体の導入又は排出によって流体通路を開閉するアクチュエータを備えた流体駆動弁に関し、特に、異常検出が可能な流体駆動弁に関する。
【背景技術】
【0002】
操作流体の導入又は排出によって流体通路を開閉するアクチュエータを備えた流体駆動弁における異常検出を検知するセンサとしては、アクチュエータの作動を検知するものが知られている。
【0003】
また、特許文献1には、異常検出が可能な流体駆動弁(エアオペレートバルブ)として、AEセンサを設けたものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-117330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
流体駆動弁の使用に際しては、操作流体の漏洩が早期に発見されることが好ましいが、アクチュエータの作動を検知するセンサを備えたものでは、たとえばシリンダキャビネットなどの密閉された空間で流体駆動弁が使用される場合において、若干の漏洩があっても、アクチュエータが駆動できる場合には、発見が遅れ、アクチュエータが作動しなくなり、初めて異常が検知されるケースがある。アクチュエータが作動しなくなると、バルブ及び周囲の配管には、流体が残留した状態になり、たとえば半導体製造プロセスで使用されるような、外部漏えいが許されない有害なガスが排気できずに残留する懸念がある。
【0006】
特許文献1の流体駆動弁では、適宜な時期に異常検出のための検査を実施することが必要であり、常時監視を続けることが困難という問題がある。
【0007】
この発明の目的は、常時監視を続けることが容易で、アクチュエータからの操作流体の漏洩をアクチュエータの作動が行われている場合であっても検知することができる流体駆動弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明による流体駆動弁は、流体通路が設けられたボディと、操作流体の導入又は排出によって前記流体通路を開閉するアクチュエータとを備え、前記アクチュエータは、ピストンの一側に設けられて前記操作流体が導入されることで受圧空間とされる操作流体導入室と、前記ピストンの他側に設けられて前記操作流体が入ってこない非受圧空間とを有している流体駆動弁において、前記操作流体はガスであり、前記操作流体の圧力が作用する前記操作流体導入室の圧力を検知する受圧面圧力センサと、前記操作流体の圧力が作用しない前記非受圧空間の圧力を検知する非受圧面圧力センサが設けられていることを特徴とするものである。
【0009】
流体駆動弁は、操作流体の圧力によってピストンを駆動することで流体通路を開閉するバルブで、従来、このようなバルブにおいて圧力を検出することは行われていなかった。
【0010】
この発明の流体駆動弁では、操作流体の圧力が作用するアクチュエータ内部の受圧面および操作流体の圧力が作用しないアクチュエータ内部の非受圧面のそれぞれに圧力センサが設けられていることで、常時監視を続けることが容易であり、アクチュエータの作動が行われている場合であってもアクチュエータからの操作流体の漏洩を検知することができ、早期に異常を発見することができる。
【0011】
前記操作流体の導入又は排出によって移動するピストンと、前記ピストンと一体に移動し弁体を開または閉方向に移動させる弁棒と、前記弁棒および前記ピストンを収納するケーシングとを備えており、前記弁棒または前記ピストンの位置を検知する位置センサがさらに設けられていることが好ましい。
【0012】
位置センサがさらに設けられていることで、アクチュエータの作動が正常に行われているかどうかを直接検知できるので、受圧面および非受圧面のそれぞれに設けられた圧力センサと組み合わせて、異常の場合分けが可能となり、より精度のよい異常検知が可能となる。
【0013】
受圧面および非受圧面を形成している部材としては、ピストン、弁棒、ケーシングなどがあるが、圧力センサは、どの部材に設けてもよい。例えば、前記圧力センサは、前記ピストンの受圧面および前記ピストンの非受圧面に設けられていることがある。また、前記ケーシングは、前記ボディに固定された下部ケーシングと、前記下部ケーシングにねじ合わされた上部ケーシングとからなり、前記圧力センサが前記上部ケーシングの受圧面と非受圧面とにそれぞれ設けられていることがある。
【0014】
位置センサを設ける部材としては、ピストン、弁棒、ケーシングなどがあり、位置センサは、どの部材に設けてもよいが、例えば、前記位置センサが前記上部ケーシングに設けられて、弁棒の上端部に臨まされているようにすればよく、このようにすることで、弁体を開閉させる弁棒の位置の検知が可能となり、好ましいものとなる。
【0015】
上記の流体駆動弁は、パソコンなどを備えた監視装置と組み合わせてバルブ監視システムとすることが好ましく、この場合、監視装置は、前記各センサからの信号を受信する通信部と、前記各センサから受信した信号より合否を判定する判定部と、前記判定部で判定された結果を記憶する記憶部とを有するものとされる。
【発明の効果】
【0016】
この発明の流体駆動弁によると、常時監視を続けることが容易であり、アクチュエータの作動が行われている場合であってもアクチュエータからの操作流体の漏洩を検知することができ、早期に異常を発見することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、この発明による流体駆動弁の1実施形態を示す一部を切り欠いた正面図である。
図2図2は、この発明による流体駆動弁を使用したバルブの監視システムを示す図である。
図3図3は、この発明による流体駆動弁の他の実施形態を示す一部を切り欠いた正面図である。
図4図4は、この発明による流体駆動弁の圧力センサから得られる信号の1例を示すグラフである。
図5図5は、この発明による流体駆動弁の位置センサから得られる信号の1例を示すグラフである。
【符号の説明】
【0018】
1:流体駆動弁
2:ボディ
3:アクチュエータ
7:ケーシング
8:弁棒
9:ピストン
11:下部ケーシング
12:上部ケーシング
17:操作流体導入室
19:非受圧空間
20:センサ装置
21:受圧面圧力センサ
22:非受圧面圧力センサ
23:位置センサ
【発明を実施するための形態】
【0019】
この発明の実施の形態を、以下図面を参照して説明する。以下の説明において、上下・左右は、図1および図3の上下・左右をいうものとする。この上下・左右は、便宜的なものであり、上下が逆になったり、上下が左右になったりして使用されることもある。
【0020】
図1は、この発明による流体駆動弁の1実施形態を示しており、流体駆動弁1は、流体通路が設けられたボディ2と、操作流体の導入又は排出によって流体通路を開閉するアクチュエータ3と、流体駆動弁1の異常を検出するセンサ装置20とを備えている。
【0021】
操作流体としては、多くは空気が用いられるが、N2やAr等様々なガスを用いることが可能である。
【0022】
ボディ2内には、図示省略するが、流体通路を開閉する弁体が設けられており、これがアクチュエータ3の作動によって移動させられることで流体通路が開閉させられる。ボディ2の左面には、流体流入通路に通じる入口継手4が設けられ、ボディ2の右面には、流体流出通路に通じる出口継手5が設けられている。ボディ2の上方に、ボンネット6を介してケーシング7が取り付けられている。
【0023】
アクチュエータ3は、ケーシング7内に配置されて上昇または下降することにより弁体を開または閉方向に移動させる弁棒8と、弁棒8に一体に設けられたピストン9と、弁棒8を下向きに付勢する圧縮コイルばね(付勢部材)10とを備えている。
【0024】
ケーシング7は、ボンネット6に固定された下部ケーシング11と、下部ケーシング11にねじ合わされた上部ケーシング12とからなる。上部ケーシング12の頂壁には、操作流体を導入する配管が接続される雌ねじ部13が形成されている。
【0025】
ピストン9は、下部ケーシング11に沿って移動する大径部9aと、大径部9aの上面に連なり大径部9aよりも外径が小さい中間径部9bと、中間径部9bの上面に連なり中間径部9bよりも外径が小さい小径部9cとからなる。上部ケーシング12の頂壁には、雌ねじ部13の下側に連なるように、円筒状の案内部14が形成されており、ピストン9の小径部9cは、案内部14に沿って移動するように案内部14に嵌め入れられている。大径部9aの外周には、環状の凹所が設けられて、ここに、下部ケーシング11の周壁の内周面との間をシールするOリング15が配置されている。また、小径部9cの外周には、環状の凹所が設けられて、ここに、案内部14の内周面との間をシールするOリング16が配置されている。
【0026】
ピストン9には、小径部9cの中央部および中間径部9bの中央部を貫通して、ピストン9の大径部9aの下面と下部ケーシング11の底壁上面との間に形成された操作流体導入室17に連通する操作流体通路18が形成されている。
【0027】
圧縮コイルばね10は、ピストン9の大径部9aの上面に設けられた環状の凹所と上部ケーシング12の頂壁の下面に設けられた環状の凹所とによって受け止められている。圧縮コイルばね10は、ピストン9を下向きに付勢しており、弁棒8が下方に移動させられることで、流体通路は、常時閉の状態とされている。そして、操作流体導入室17に操作流体が導入されると、ピストン9および弁棒8が一体で上方に移動させられ、流体通路が開の状態が得られる。
【0028】
ピストン9の大径部9aの上面と上部ケーシング12の頂壁の下面との間は、操作流体が入ってこない非受圧空間19となっている。
【0029】
センサ装置20は、2つの圧力センサ21,22と、1つの位置センサ23とを有している。
【0030】
第1の圧力センサ(以下「受圧面圧力センサ」と称す)21は、操作流体導入室17、すなわち、受圧空間の圧力を検知するように、ピストン9の大径部9aの下面に設けられている。第2の圧力センサ(以下「非受圧面圧力センサ」と称す)22は、非受圧空間19の圧力を検知するように、ピストン9の大径部9aの上面に設けられている。位置センサ23は、ピストン9の大径部9aの下面の位置(位置センサ23設置位置からの距離)を検知するように、下部ケーシング11の底壁上面に設けられている。
【0031】
操作流体を導入してアクチュエータ3を作動させた場合、受圧面圧力センサ21は、操作流体導入室17内の圧力上昇に伴って上昇し、非受圧面圧力センサ22は、ピストン9によって非受圧空間19が圧縮されるので、圧力が若干上昇する。位置センサ23は、ピストン9が上方に移動することで、値が大きくなる。そして、一定の操作流体が導入されている間は、各センサ21,22,23の指示値は、同じ値に維持される。
【0032】
図2は、上記のセンサ21,22,23を内蔵する流体駆動弁1と監視装置40とを備えた監視システムの1実施例を示す模式図である。
【0033】
設備やプラントに備え付けられる数多くの流体駆動弁1のうちの1つを図示しているが、各流体駆動弁1には、その識別番号が書き込まれた電子タグの一つであるRFIDが取り付けられる。このRFIDは電池を内蔵したアクティブタイプでもよく、電池を内蔵していないパッシブタイプでも良い。RFIDがパッシブタイプの場合は、監視装置40から電波でRFIDに電源供給を行ってRFIDの電力とすることができる。
【0034】
RFIDから無線で監視装置40に向けて流体駆動弁1の識別番号が送られ、その識別番号は受信部42の受信アンテナ41で受信され、判定部43に一旦格納される。
【0035】
次に、流体駆動弁1のセンサ21,22,23からの信号が信号線(符号なし)を経由して監視装置40の受信部42に入って、判定部43に送られる。有線の信号線を経由する信号伝達以外に、無線による信号伝達方法によっても良い。
【0036】
判定部43では、流体駆動弁1からの信号が、合格信号なのか不合格信号なのか判定し、その判定結果と識別番号は対になって記憶部44に保存される。
【0037】
この対となった情報は、監視装置40の表示部(図示せず)に表示させて確認することができる。
【0038】
さらに、バルブの監視システムは、この対となった情報を発信部45に送り、発信アンテナ46からインターネットネットワーク47に電波発信して、集中管理サーバ48に送ることができる。
【0039】
集中管理サーバ48は、設備やプラントの全バルブの識別管理が行われており、異常が認められるバルブを即座に発見して、警告を発することができる。
【0040】
センサ装置20が受圧面圧力センサ21、非受圧面圧力センサ22および位置センサ23を有していることで、これら3つのセンサ21 22 23から得られる信号を利用して流体駆動弁1の異常検知を行うことができる。
【0041】
例えば、図4において、受圧面圧力センサ21が実線で示す設定値に到達した後、破線で示すようにその値を維持しているにもかかわらず、非受圧面圧力センサ22の値が破線で示すように徐々に増加していく場合、操作流体導入室17内の操作流体が非受圧空間19内に流入(漏洩)していると考えられる。したがって、非受圧面圧力センサ22に対して閾値を設定しておいて、これを超えた場合に警報を出力することで、初期漏洩のうちに発見でき、重大な故障が発生する前に異常を検知することができる。
【0042】
位置センサ23については、図5に示すように、設定値に到達するまでの時間が長い場合や、設定値に到達しない場合などがあり、これらについて。閾値を設けておくことで、ピストン9が完全に動かなくなる前に異常を検知することができる。
【0043】
さらに、受圧面圧力センサ21の信号、非受圧面圧力センサ22の信号および位置センサ23の信号のそれぞれがどのような状態を示しているかを検知して総合的に判断することで、異常の重要度や異常への対応の緊急性などが分かり、早期の異常発見、早期の対応を実施することができる。
【0044】
なお、図1において、操作流体導入室17の圧力を検知する受圧面圧力センサ21は、下部ケーシング11の底壁の上面に設けてもよく、非受圧空間19の圧力を検知する非受圧面圧力センサ22は、上部ケーシング12の周壁の内周面に設けてもよく、上部ケーシング12の頂壁の下面に設けてもよい。また、位置センサ23は、ピストン9の大径部9aの下面または上面に設けてもよく、下部ケーシング11の周壁の内周面に設けてもよく、上部ケーシング12の頂壁の下面に設けてもよい。このように、各センサ21,22,23は適宜な箇所に設置できるが、好ましい1例を図3に示す。
【0045】
図3において、受圧面圧力センサ21および位置センサ23は、上部ケーシング12の頂壁の下面の弁棒8の上端面を臨む位置に設けられており、非受圧面圧力センサ22は、上部ケーシング12の頂壁の下面のピストン9の大径部9aを臨む位置に設けられている。弁棒8は、弁体を直接開閉させる部材であるので、弁棒8の位置および弁棒8に作用する圧力を検知することで精度を向上させることができる。受圧面圧力センサ21および位置センサ23は、弁棒8の上端面に設けることもできるが、全てのセンサ21,22,23を上部ケーシング12に設けることで、センサ21,22,23の設置が容易となる。
【0046】
上記流体駆動弁1において、ピストン9の数は、1つとされているが、複数とされることもある。ピストン9は、弁棒8と一体でもよく、別体でもよい。ピストン9の数の増加に応じて、操作流体導入室17の数が増やされるとともに、各操作流体導入室に操作流体が送られるようになされる。
【0047】
また、上記の流体駆動弁1は、付勢部材10で弁棒8を常時閉位置にあるように付勢する常時閉型とされているが、付勢部材で弁棒を常時開位置にあるように付勢する常時開型の流体駆動弁であっても、同様に早期の異常検出が課題となっており、上記のセンサ装置20は、常時開型の流体駆動弁にも適用される。
【産業上の利用可能性】
【0048】
この発明の流体駆動弁によると、操作流体の導入又は排出によって流体通路を開閉するアクチュエータを備えた流体駆動弁において、早期に異常を発見することができるので、これを使用する装置の安全性向上に寄与できる。
図1
図2
図3
図4
図5