(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】歯科用インプラント
(51)【国際特許分類】
A61C 8/00 20060101AFI20220906BHJP
【FI】
A61C8/00 Z
(21)【出願番号】P 2019538226
(86)(22)【出願日】2018-01-15
(86)【国際出願番号】 KR2018000695
(87)【国際公開番号】W WO2018131974
(87)【国際公開日】2018-07-19
【審査請求日】2020-12-25
(31)【優先権主張番号】10-2017-0006426
(32)【優先日】2017-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518013431
【氏名又は名称】デンフレックス カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヒョン ウ
【審査官】沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-500957(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0029191(KR,A)
【文献】米国特許第05782918(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯槽骨に植立されて人工歯根を形成するフィクスチャー(fixture)と、上端部は補綴物(クラウン(Crown)または入れ歯(Denture))に結合され、下端部はフィクスチャーの軸孔に弾性結合される弾性レッグからなるアバットメントとを含む歯科用インプラントであって、
前記アバットメントの弾性
レッグは、中心軸方向への弾性たわみと復元力によってアバットメントをフィクスチャーに締結させる機能を行う弾性締結レッグと、アバットメントとフィクスチャーとの直接締結に関与しない非締結弾性支持レッグとからなり、
前記フィクスチャーの軸孔の内側面の一定位置から外側方向に陥没した締結溝のよう
な凹部からなる第1締結部が備えられ、前記アバットメントの前記弾性締結レッグの外周面には、前記フィクスチャーの軸孔の内側面に形成された第1締結部に相補的に結合される締結突起からなる第1対応締結部が形成され、
前記第1締結部は、フィクスチャーの軸孔の内側面の円周方向に沿って少なくとも一つ形成されるが、円周方向全体にわたってリング状に形成されておらず、その結果、アバットメントをフィクスチャーに押し込んで締結させるときにアバットメントが一定の角度でのみフィクスチャーに締結され、アバットメントを円周方向に一定以上の回転力で回転させるときにはアバットメントの第1対応締結部が第1締結部から離脱することができるように構成され、
前記第1締結部(150)と第1対応締結部(130)との相補的結合によって前記アバットメントがフィクスチャー内に結合された状態で、一定以下の回転力ではフィクスチャーに対してアバットメントの回転を防止する機能を行い、一定以上の回転力では前記アバットメントの弾性締結レッグが内径方向に弾性的に撓み、前記アバットメントが円周方向に回転して前記第1対応締結部の締結突起が第1締結部の締結溝から離脱するようになり、フィクスチャーとアバットメントとの締結が分離され
、
前記アバットメントの非締結弾性支持レッグは、その下部外側面には下方に傾くように傾斜面を形成し、フィクスチャーの軸孔の内側面にも前記非締結弾性支持レッグの傾斜面に対応する対応傾斜面を形成することにより、アバットメントに加わる咬合力を効果的に緩衝させることを特徴とする歯科用インプラント。
【請求項2】
前記弾性締結レッグに形成された第1対応締結部と前記フィクスチャーの軸孔の内側面に形成された第1締結部との相補的結合により、一定以下の回転力に対してアバットメントの回転防止機能を行うとともに、フィクスチャーからアバットメントの垂直離脱防止機能も行うことを特徴とする請求項1に記載の歯科用インプラント。
【請求項3】
前記第1締結部が形成されるフィクスチャーの軸孔の内側面は、外側方向に陥没した第1締結部部位を除いた部位が下部に行くほど軸孔の内径が連続的に縮小する傾斜面をなし、前記アバットメントが円周方向に回転して前記第1対応締結部の締結突起が第1締結部の締結溝から離脱すると、前記第1対応締結部の締結突起が前記フィクスチャーの軸孔内側面の傾斜面との弾性反発作用によってアバットメントをフィクスチャーから上部側に押し上げてアバットメントとフィクスチャーを自動的に分離させるように構成されたことを特徴とする請求項1に記載の歯科用インプラント。
【請求項4】
前記非締結弾性支持レッグの傾斜面は、前記フィクスチャーの軸孔内側面の対応傾斜面に接した状態で相互締結された構造をなすことにより、アバットメントに咬合力が加えられたときにアバットメントの非締結弾性支持レッグの傾斜面がフィクスチャーの軸孔内側面の対応傾斜面に沿ってスライドしながら緩衝作用をすることを特徴とする請求項
1に記載の歯科用インプラント。
【請求項5】
前記非締結弾性支持レッグの傾斜面の外径は、同一の垂直的位置で、それに対応するフィクスチャーの軸孔内側面の傾斜面の内径よりもさらに大きく構成され、フィクスチャーにアバットメントが締結されたときにフィクスチャーに対してアバットメントを常に一定の力で上方に押し上げる力が作用し、その結果、フィクスチャーに対してアバットメントが常に一定の位置に堅固に位置するように構成されたことを特徴とする請求項
1に記載の歯科用インプラント。
【請求項6】
アバットメントの上端と第1締結部との間に、横断面からみたときに横断面を複数個に分割しながらアバットメントの上下方向に直線形または螺旋形を成す切開部を有することを特徴とする請求項1に記載の歯科用インプラント。
【請求項7】
歯槽骨に植立されて人工歯根を形成するフィクスチャー(fixture)と、上端部は補綴物(クラウン(Crown)または入れ歯(Denture))に結合され、下端部はフィクスチャーの軸孔に弾性結合される弾性レッグからなるアバットメントとを含む歯科用インプラントであって、
前記アバットメントの弾性レッグは、中心軸方向への弾性たわみと復元力によってアバットメントをフィクスチャーに締結させる機能を行う弾性締結レッグと、アバットメントとフィクスチャーとの直接締結に関与しない非締結弾性支持レッグとからなり、
前記フィクスチャーの軸孔の内側面の一定位置から外側方向に陥没した締結溝のような
凹部からなる第1締結部が備えられ、前記アバットメントの弾性締結レッグの外周面には、前記フィクスチャーの軸孔の内側面に形成された第1締結部に相補的に結合される締結突起からなる第1対応締結部が形成され、
前記第1締結部は、フィクスチャーの軸孔の内側面の円周方向に沿って少なくとも一つ形成されるが、円周方向全体にわたってリング状に形成されておらず、その結果、アバットメントをフィクスチャーに押し込んで締結させるときにアバットメントが一定の角度でのみフィクスチャーに締結され、アバットメントを円周方向に一定以上の回転力で回転させるときにはアバットメントの第1対応締結部が第1締結部から離脱することができるように構成され、
前記アバットメントの下部締結軸部の一側に形成された弾性締結レッグの外周面には、外径方向に突出するように形成され、アバットメントがフィクスチャーから垂直方向に離脱することを防止する機能を行う係止突起からなる第2対応締結部がさらに備えられ、前記フィクスチャーの軸孔の内側面には、前記第2対応締結部に対応して結合されるように外側方向に形成された係止段からなる第2締結部がさらに備えられ、
前記第1締結部と第1対応締結部とが相互結合されると、前記第2対応締結部と第2締結部とが同時に相互結合されてアバットメントとフィクスチャーとの軸方向の結合力を補強させ、前記アバットメントが円周方向に回転して前記第1対応締結部が第1締結部から離脱すると、前記アバットメントの弾性締結レッグが内径方向に弾性的に撓むことにより、前記第2対応締結部がフィクスチャーの軸孔の内側面に形成された第2締結部から自動離脱して、フィクスチャーとアバットメントとの締結が分離され
、
前記アバットメントの非締結弾性支持レッグは、その下部外側面には下方に傾くように傾斜面を形成し、フィクスチャーの軸孔の内側面にも前記非締結弾性支持レッグの傾斜面に対応する対応傾斜面を形成することにより、アバットメントに加わる咬合力を効果的に緩衝させることを特徴とする歯科用インプラント。
【請求項8】
前記第1締結部が形成されるフィクスチャーの軸孔の内側面は、外側方向に陥没した第1締結部部位を除いた部位が下部に行くほど軸孔の内径が連続的に縮小する傾斜面をなし、前記アバットメントが円周方向に回転して前記第1対応締結部の締結突起が第1締結部の締結溝から離脱すると、前記第1対応締結部の締結突起が前記フィクスチャーの軸孔内側面の傾斜面との弾性反発作用によってアバットメントをフィクスチャーから上部側に押し上げてアバットメントとフィクスチャーを自動的に分離させるように構成されたことを特徴とする請求項
7に記載の歯科用インプラント。
【請求項9】
第2締結部は、フィクスチャーの軸孔内側面の垂直的一定位置で円周方向全体にわたってリング状の係止段で形成されるか、或いは、円周方向全体にわたってリング状の係止段で形成されず、一定の部位でのみ外側方向に陥没した締結溝のよう
な凹部で形成されたことを特徴とする請求項
7に記載の歯科用インプラント。
【請求項10】
前記非締結弾性支持レッグの傾斜面は、前記フィクスチャーの軸孔内側面の対応傾斜面に接した状態で相互締結された構造をなすことにより、アバットメントに咬合力が加えられたときにアバットメントの非締結弾性支持レッグの傾斜面がフィクスチャーの軸孔内側面の対応傾斜面に沿ってスライドしながら緩衝作用をすることを特徴とする請求項
7に記載の歯科用インプラント。
【請求項11】
フィクスチャーの軸孔内側面の第1締結部の上方には、第1対応締結部の外径よりも小さい直径が形成されないようにして、第1対応締結部が別の抵抗なしに第1締結部へ進入することができるようにすることにより、フィクスチャーとアバットメントとの締結角度位置を容易に見つけることができるようにすることを特徴とする請求項
7に記載の歯科用インプラント。
【請求項12】
アバットメントの上端と第1締結部との間に、横断面からみたときに横断面を複数個に分割しながらアバットメントの上下方向に直線形または螺旋形を成す切開部を有することを特徴とする請求項
7に記載の歯科用インプラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯槽骨に植立結合される人工歯根を形成して歯補綴物を固定する歯科用インプラントに係り、さらに詳細には、歯科用インプラントのフィクスチャー(fixture)とアバットメント(abutment)との結合構造を改善して、アバットメントをフィクスチャーから分離させるときに容易に分離することができるようにし、垂直咬合力を受けたときにさらに効率よく緩衝させることができるようにした歯科用インプラントに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、インプラント(Implant)は、喪失した自然歯の代替物自体を意味するか、或いは、フィクスチャーを顎骨に植えて所定の期間顎骨と融合するようにした後、その上に締結部材と人工歯などの補綴物を固定することにより、歯の本来機能を回復させる歯科的施術を意味する。
【0003】
一般補綴物や入れ歯は、時間が経過すると、周囲の歯と骨が損傷してしまうが、インプラントは、周囲の歯の組織を損傷しないようにし、天然歯と機能や形状が同じでありながらも虫歯が生じないため、長期間使用することができるという利点がある。
【0004】
また、インプラントは、単一欠損歯を修復するだけでなく、部分無歯および完全無歯患者に義歯の機能を増進させ、歯補綴修復の審美的な面を改善させる。ひいては、周囲の支持骨組織に加えられる過度な応力を分散させるのはもとより、歯列の安定化に役立てる。
【0005】
このようなインプラントの場合は、顎骨にフィクスチャーが植立され、前記フィクスチャーの上部の軸孔にアバットメントの締結部が結合され、前記アバットメントの上部には補綴物が固定される構造である。
【0006】
従来のインプラント構造は、フィクスチャーとアバットメントとがねじ式で結合されるねじ式結合構造、または、フィクスチャーの締結溝とアバットメントの締結突起とが雌雄間で相補的に結合される弾性結合構造である。
【0007】
従来のねじ式結合構造は、施術者が食べ物を咀嚼して摂取する行為などによって口腔内での持続的な荷重が繰り返される場合、スクリューが微細振動し、振動幅が漸次大きくなることにより自体の回転が行われてねじ結合状態が緩くなる。これは、フィクスチャーとアバットメントとの間に遊隔を発生させるので、アバットメント、すなわち人工歯が揺れて患者は食べ物を円滑に咀嚼することができなくなり、人工歯の周辺に望ましくない咀嚼圧を誘発させるという問題があった。
【0008】
また、上述したような従来技術は、フィクスチャーにアバットメントを締結するとき、正確な締結位置を取っていない状態でスクリュー締結が行われる問題が発生するおそれがあり、これにより、人工歯と歯槽骨が損傷してしまう問題が発生することがあった。
【0009】
また、上述した従来技術のような構造を持つインプラントユニットは、狭い口腔内の空間でスクリューを締結するのに多くの困難さがあり、特に施術部位が奥歯側に位置しているか或いは口を大きく広げることができない患者の場合には、さらに施術が難しいという問題があった。
【0010】
かかる従来の問題点を解消するための先行技術としては、韓国登録特許第10-0668368号の歯科用インプラントが提案されている。
【0011】
このような従来技術は、上部に軸孔を形成し、顎骨に植立されるフィクスチャーと、下部に前記軸孔に挿入される形状記憶合金の締結レッグを形成し、前記締結レッグを介して前記フィクスチャーとアバットメントとを弾性結合で連結させて食べ物を咀嚼することができるようにするアバットメントとを含む歯科用インプラントに関する。
【0012】
このような従来のフィクスチャーとアバットメント間の弾性結合構造は、ねじ式結合構造の問題点を効果的に改善させて多くの技術的な進歩をもたらしてきており、実際の使用上でフィクスチャー内にアバットメントを挿入させると、締結レッグの締結突起が弾性的にフィクスチャーの締結溝に自動的に結合されるので、使用上非常に便利である。
【0013】
しかし、このような従来のフィクスチャーとアバットメントとの弾性結合構造は、フィクスチャーからアバットメントを分離させようとする施術の場合には、多少の不便さがあり、垂直咬合力が加えられたときに効果的に緩衝機能を行うことができないという問題点があった。
【0014】
すなわち、フィクスチャーからアバットメントを分離させるためには、アバットメントをフィクスチャーに対して上部側に強制的に引っ張って、締結レッグに形成された締結突起または締結溝が、フィクスチャーの軸孔の内側面に対応形成された締結溝または締結突起から離脱するように上部方向に強制的に引っ張って分離させる施術を行わなければならなかった。
【0015】
ところが、このようにアバットメントをフィクスチャーに対して上部側に強制的に引っ張ることは、フィクスチャーを介して患者の歯槽骨にも大きな力を加えることになり、結果的に患者の歯槽骨に無理な力を与えて損傷させるリスクが大きいという問題点があった。また、アバットメントとフィクスチャーの軸孔の内側面に形成された締結突起と締結溝からなる対応締結部と締結部とが反復着脱によって摩耗して結合力が減少するという問題点があった。さらに、フィクスチャーの上端面が歯茎の奥深くに植立されている場合には、韓国登録特許第10-1309417号に記載されているような取出機構を使用してこそ、フィクスチャー、アバットメント及び歯槽骨に損傷を加えることなくフィクスチャーからアバットメントを分離させることができたが、もしフィクスチャーが歯槽骨の上端から深く植立されている場合には、このような機構を適用させることができないという問題点があった。
【0016】
また、このような従来技術では、アバットメントをフィクスチャーに対して上部側に強制的に引っ張る過程で、施術者は大きな力を必要とし、このような施術はインプラント施術者に少なからぬ心的負担として作用する問題点もあった。
【0017】
また、このような従来技術では、側方の圧力に対する緩衝機能はあるものの、垂直咬合に対する緩衝機能はほとんど期待することができない構造であるという問題点があった。よって、垂直咬合圧を効率よく緩衝させることが可能な構造が求められた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は、かかる従来の問題点を解消させるためになされたもので、その目的は、アバットメントをフィクスチャーから分離させる過程でアバットメントを円周方向に回転させて、アバットメントの下部締結軸部に形成された対応締結部が、フィクスチャーの軸孔の内側面に対応形成された締結部から少ない力でも互いに分離されるようにし、たとえ多くの力を与えて回転させても、再び一定の角度を回転してフィクスチャーとアバットメントとが再締結されることが起こる可能性が低く、反復着脱にも拘わらず垂直方向の離脱防止のための締結力が減少せず、アバットメントをフィクスチャーから非常に少ない力で上部側に引っ張って容易に分離させることができるように改善された歯科用インプラントを提供することにある。
【0019】
また、本発明の他の目的は、アバットメントを回転させてフィクスチャーから分離すると、アバットメントが上部側に自動的に押し上げられることにより、施術者がアバットメントとフィクスチャーの分離状態を容易に直感することができ、それによるインプラント施術を心的負担感なく容易に行うことができるように改善された歯科用インプラントを提供することにある。
【0020】
また、本発明の別の目的は、アバットメントの非締結弾性支持レッグの下部外側面に傾斜面を形成するとともに、フィクスチャーの軸孔の内側面にも非締結弾性支持レッグの傾斜面に対応する対応傾斜面を形成することにより、アバットメントに咬合力が加えられたときにアバットメントの非締結弾性支持レッグの傾斜面がフィクスチャーの軸孔の内側面の対応傾斜面に沿ってスライドしながら緩衝作用をすることができる歯科用インプラントを提供することにある。
【0021】
また、本発明の別の目的は、フィクスチャーに結合されるアバットメントの上端と下端との間の一部分に直線形または螺旋形の切開部を形成して、アバットメントがインプラントへの咀嚼圧力を含む大きい外力に対して緩衝機能を持つようになり、アバットメントに加わる応力が全体にわたって分散されるようにし、アバットメントの一部分で応力集中が起こることを効果的に防止し、分散させることができ、インプラント歯の咀嚼感覚と耐久性を大幅に向上させることができるように改善された歯科用インプラントを提供することにある。
【0022】
また、本発明の別の目的は、アバットメントの締結軸部に別途の回転防止形状を付与しなくても、フィクスチャーの軸孔内で一定以下の回転力に対して回転が防止される改善された歯科用インプラントを提供することにあり、さらに別の目的は、歯槽骨の上端からフィクスチャーが奥深く植立されている場合でもフィクスチャーとアバットメントとの脱着が容易である歯科用インプラントを提供することにある。
【0023】
また、本発明のさらに別の目的は、垂直咬合力を効果的に緩衝させることができるように改善された歯科用インプラントを提供することにある。
【0024】
以下では、説明の便宜のために、一定以下の回転力については、アバットメントがフィクスチャーに対して回転することを防止する機能を「回転防止機能」、アバットメントがフィクスチャーから垂直方向に離脱することを防止する機能を「垂直離脱防止機能」と簡略に定義する。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上記の目的を達成するために、本発明の一実施形態は、歯槽骨に植立されて人工歯根を形成するフィクスチャー(fixture)と、上端部は補綴物(クラウン(Crown)または入れ歯(Denture))に結合され、下端部はフィクスチャーの軸孔に弾性結合される弾性レッグからなるアバットメントとを含む歯科用インプラントであって、前記アバットメントの弾性レッドは、中心軸方向への弾性たわみと復元力によってアバットメントをフィクスチャーに締結させる機能を行う弾性締結レッグと、アバットメントとフィクスチャーとの直接締結に関与しない非締結弾性支持レッグとからなり、前記フィクスチャーの軸孔の内側面の一定位置から外側方向に陥没した締結溝のような凸凹部からなる第1締結部が備えられ、前記アバットメントの前記弾性締結レッグの外周面には、前記フィクスチャーの軸孔の内側面に形成された第1締結部に相補的に結合される締結突起からなる第1対応締結部が形成され、前記第1締結部は、フィクスチャーの軸孔の内側面の円周方向に沿って少なくとも一つ形成されるが、円周方向全体にわたってリング状に形成されておらず、その結果、アバットメントをフィクスチャーに押し込んで締結させるときにアバットメントが一定の角度でのみフィクスチャーに締結され、アバットメントを円周方向に一定以上の回転力で回転させるときにはアバットメントの第1対応締結部が第1締結部から離脱することができるように構成され、前記第1締結部150と第1対応締結部130との相補的結合によって前記アバットメントがフィクスチャー内に結合された状態で、一定以下の回転力ではフィクスチャーに対してアバットメントの回転を防止する機能を行い、一定以上の回転力では前記アバットメントの弾性締結レッグが内径方向に弾性的に撓み、前記アバットメントが円周方向に回転して前記第1対応締結部の締結突起が第1締結部の締結溝から離脱するようになり、フィクスチャーとアバットメントとの締結が分離されることを特徴とする歯科用インプラントを提供する。
【0026】
本発明の他の実施形態によれば、歯槽骨に植立されて人工歯根を形成するフィクスチャー(fixture)と、上端部は補綴物(クラウン(Crown)または入れ歯(Denture))に結合され、下端部はフィクスチャーの軸孔に弾性結合される弾性レッグからなるアバットメントとを含む歯科用インプラントであって、前記アバットメントの弾性レッグは、中心軸方向への弾性たわみと復元力によってアバットメントをフィクスチャーに締結させる機能を行う弾性締結レッグと、アバットメントとフィクスチャーとの直接締結に関与しない非締結弾性支持レッグとからなり、前記フィクスチャーの軸孔の内側面の一定位置から外側方向に陥没した締結溝のような凹凸部からなる第1締結部が備えられ、前記アバットメントの弾性締結レッグの外周面には、前記フィクスチャーの軸孔の内側面に形成された第1締結部に相補的に結合される締結突起からなる第1対応締結部が形成され、前記第1締結部は、フィクスチャーの軸孔の内側面の円周方向に沿って少なくとも一つ形成されるが、円周方向全体にわたってリング状に形成されておらず、その結果、アバットメントをフィクスチャーに押し込んで締結させるときにアバットメントが一定の角度でのみフィクスチャーに締結され、アバットメントを円周方向に一定以上の回転力で回転させるときにはアバットメントの第1対応締結部が第1締結部から離脱することができるように構成され、前記アバットメントの下部締結軸部の一側に形成された弾性締結レッグの外周面には、外径方向に突出するように形成され、アバットメントがフィクスチャーから垂直方向に離脱することを防止する機能を行う係止突起からなる第2対応締結部がさらに備えられ、前記フィクスチャーの軸孔の内側面には、前記第2対応締結部に対応して結合されるように外側方向に形成された係止段からなる第2締結部がさらに備えられ、前記第1締結部と第1対応締結部とが相互結合されると、前記第2対応締結部と第2締結部とが同時に相互結合されてアバットメントとフィクスチャーとの軸方向の結合力を補強させ、前記アバットメントが円周方向に回転して前記第1対応締結部が第1締結部から離脱すると、前記アバットメントの弾性締結レッグが内径方向に弾性的に撓むことにより、前記第2対応締結部がフィクスチャーの軸孔の内側面に形成された第2締結部から自動離脱して、フィクスチャーとアバットメントとの締結が分離されることを特徴とする歯科用インプラントを提供する。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、アバットメントの下部締結軸部の対応面には、回転防止機能が主機能である第1対応締結部が形成され、フィクスチャーの軸孔の内側面には、前記第1対応締結部と対応する位置で前記第1対応締結部と相補的に結合される第1締結部が形成される。したがって、本発明によれば、アバットメントをフィクスチャーから分離させる過程で、アバットメントをフィクスチャーに対して回転させると、第1対応締結部が第1締結部から離脱しながら、アバットメントがフィクスチャーから締結解除され、その状態でアバットメントをフィクスチャーに対して上部側に軽く引っ張って容易に分離させることができる。
【0028】
また、本発明によれば、前記第1締結部が形成されるフィクスチャーの軸孔の内側面は外側方向に陥没した第1締結部部位を除く部位が下部に行くほど軸孔の内径が連続的に縮小する傾斜面をなし、前記アバットメントが円周方向に回転して前記第1対応締結部の締結突起が第1締結部の締結溝から離脱すると、前記第1対応締結部の締結突起が前記フィクスチャーの軸孔の内側面の傾斜面との弾性反発作用によってアバットメントをフィクスチャーから上部側に押し上げてアバットメントとフィクスチャーを自動的に分離させることができる。また、本発明は、アバットメントをフィクスチャーに対して回転させると、アバットメントが自動的に上部側に押し上げられるため、さらに回転しても再び締結されることを防止することができる。
【0029】
また、本発明によれば、アバットメントをフィクスチャーから分離させる過程で、アバットメントをフィクスチャーに対して回転させると、アバットメントがフィクスチャーから分離されて上部側に自動的に突出することにより、施術者がアバットメントとフィクスチャーとの分離状態を容易に直感することができ、それによるインプラント手術を心的負担感なく容易に行うことができるので、非常に便利に施術することができる。また、本発明によれば、アバットメントに別途の回転防止のための多角形の形状を付与する必要がない。また、本発明によれば、アバットメントに垂直咬合力が加えられたとき、傾斜面によってより効率よく垂直咬合力に対する緩衝機能を行うことができる。
【0030】
また、本発明によれば、アバットメントの非締結弾性支持レッグの下部外側面に傾斜面を形成するとともに、フィクスチャーの軸孔の内側面にも前記非締結弾性支持レッグの傾斜面に対応する対応傾斜面を形成することにより、アバットメントに咬合力が加えられたときにアバットメントの非締結弾性支持レッグの傾斜面がフィクスチャーの軸孔内側面の対応傾斜面に沿ってスライドしながら緩衝作用をすることができる。
【0031】
また、本発明によれば、フィクスチャーに結合されるアバットメントの上端と下端との間の一部分に形成された直線形または螺旋形の切開部によって、アバットメントがインプラントへの咀嚼圧力を含む大きい外力に対して緩衝機能を持つようになり、アバットメントに加わる応力が全体にわたって分散されるようにし、アバットメントの一部分で応力集中が起こることを効果的に防止し、分散させることができ、インプラント歯の咀嚼感覚と耐久性を大幅に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明に係る歯科用インプラントにおいてアバットメントが締結レッグタイプでフィクスチャーに結合される構造を示す外観斜視図である。
【
図2】本発明に係る歯科用インプラントの切開断面を示す切開断面図である。
【
図3(a)】本発明に係る歯科用インプラントにおいて回転防止機能を主機能とする第1対応締結部の平断面図であって、
図2のA-A線に沿った平断面図である。
【
図3(b)】本発明に係る歯科用インプラントにおいて回転防止機能を主機能とする第1締結部の平断面図であって、
図2のB-B線に沿った平断面図である。
【
図4(a)】本発明に係る歯科用インプラントにおけるアバットメントとフィクスチャーとの結合中間状態の縦断面図である。
【
図4(b)】本発明に係る歯科用インプラントにおいてアバットメントとフィクスチャーとが結合された状態の縦断面図である。
【
図5(a)】本発明に係る歯科用インプラントにおけるアバットメントとフィクスチャーとの結合中間過程を示す平断面図である。
【
図5(b)】本発明に係る歯科用インプラントにおいてアバットメントとフィクスチャーとが結合された状態の平断面図である。
【
図6】本発明に係る歯科用インプラントのアバットメントに螺旋形の切開部が形成された構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の好適な実施形態を添付図面を参照してより詳細に説明する。
【0034】
本発明に係る歯科用インプラント100は、
図1及び
図2に示すように、歯槽骨(図示せず)に植立されて人工歯根を形成するフィクスチャー(fixture)110と、上端部は補綴物(クラウン(Crown)または入れ歯(Denture))に結合され、下端部は前記フィクスチャー110の軸孔に弾性結合される弾性レッグ122、124からなるアバットメント120とを含むように構成される。
【0035】
ここで、前記アバットメント120の弾性レッグは、中心軸方向への弾性たわみと復元力によってアバットメント120をフィクスチャー110に締結させる機能を行う弾性締結レッグ122と、アバットメント120とフィクスチャー110との直接締結に関与しない非締結弾性支持レッグ124とからなる。特に、本明細書では、説明の便宜のために、前記弾性レッグが一つの弾性締結レッグ122と一つの非締結弾性支持レッグ124とからなる図面を参照して説明したが、当業者であれば、前記弾性締結レッグが多数から構成でき、さらには前記非締結弾性支持レッグも多数から構成できることを明確に認知することができる。よって、本発明の権利範囲を解釈するにあたり、弾性締結レッグおよび非締結弾性支持レッグの形成数に制限されるように解釈されてはならないことを明らかにしておく。
【0036】
前記弾性締結レッグ122は、中心軸方向への弾性たわみと復元力によってアバットメント120がフィクスチャー110に締結される場合、アバットメント120がフィクスチャー110の軸孔内で円周方向に回転するか或いは上部方向に離脱することを制限する機能を有する弾性レッグであるのに対し、前記非締結弾性支持レッグは、アバットメントとフィクスチャーとの直接締結に関与しないので、上述したような機能を持たない弾性レッグである。
【0037】
図2及び
図3に示すように、前記フィクスチャー110の軸孔112の内側面の一定位置から外側方向に陥没した締結溝152のような凹凸部からなる第1締結部150が備えられ、前記アバットメント120の前記弾性締結レッグ122の外周面には、前記フィクスチャー110の軸孔の内側面に形成された第1締結部150に相補的に結合される締結突起132からなる第1対応締結部130が形成される。
【0038】
図5(a)に示すように、アバットメント120をフィクスチャー110の軸孔112に挿入した状態でアバットメント120を回転させると、
図5(b)に示すように、アバットメント120の前記弾性締結レッグ122の外周面に形成された締結突起132が、フィクスチャーの軸孔の内側面から外側方向に陥没するように形成された締結溝152に相補的に結合されながら、アバットメントがフィクスチャーに嵌合される。
【0039】
前記第1締結部150は、フィクスチャーの軸孔の垂直中心軸に対する直角方向の横断面からみたとき、少なくとも一部位が外側方向に陥没した形態を持つように構成される。すなわち、
図2及び
図5に示すように、第1締結部150は、フィクスチャーの軸孔の内側面の円周方向に沿って少なくとも一つ形成されるが、円周方向全体にわたってリング状に形成されないように構成される。したがって、前記第1締結部150は、円周方向の一定の角度範囲で少なくとも一つ形成された構造を持つため、アバットメント120をフィクスチャー110に押し込んで締結させるときにアバットメントが一定の角度のみでフィクスチャーに締結され、アバットメントを円周方向に一定以上の回転力で回転させるときにはアバットメントの第1対応締結部130が第1締結部150から離脱することができる。このとき、第1対応締結部の垂直長さと第1締結部の垂直長さとが互いに異なり得るが、円周方向の水平距離は数値的に機械的許容誤差内で一致しなければならない。これにより、一定以下の回転力に対する過度なマイクロ動揺が起こらない。
【0040】
このような第1締結部150は、軸孔の内側面で前記第1対応締結部130の締結突起132に対応して相補的に結合される締結溝152で形成できる。このとき、締結溝や締結突起の形状は多様であり、各締結レッグに形成されたそれぞれの第1対応締結部の形状が同一でなくてもよい。これにより、第1対応締結部に相補的に結合される第1締結部の形状もそれぞれ異なり得る。
【0041】
前記第1締結部150と第1対応締結部130との相補的結合によって前記アバットメント120がフィクスチャー110内に結合された状態で、一定以下の回転力ではフィクスチャーに対してアバットメントの回転を防止する機能を行い、一定以上の回転力では前記アバットメントの弾性締結レッグが内径方向に弾性的に撓み、前記アバットメントが円周方向に回転して前記第1対応締結部130の締結突起132が第1締結部150の締結溝152から離脱するようになり、結果的にフィクスチャー110とアバットメント120との締結が分離される。
【0042】
一方、より好ましくは、フィクスチャーの軸孔の内側面に、その内側面の垂直方向の一定位置から下部に行くほど内径が連続的に縮小するようにフィクスチャーの軸孔の内側傾斜面を形成することもできる。すなわち、このようなフィクスチャーの軸孔の内側傾斜面140は、フィクスチャー110の軸孔の内側面の一定位置から下部へ上広下狭状に連設される円錐形構造である。
【0043】
好ましくは、前記第1締結部が形成される部位と同じ垂直的位置の軸孔の内側面に、第1締結部を除く部位は軸孔の下部側に行くほど連続的に直径が減少する傾斜面を形成することができるが、この場合には、アバットメント120をフィクスチャー110から分離させる過程で、アバットメント120をフィクスチャー110に対して回転させると、第1対応締結部130が第1締結部150から離脱しながら傾斜面140との弾性反発作用によってアバットメント120をフィクスチャー110から上方に押し上げてアバットメント120とフィクスチャー110をより容易に分離させることができる。
【0044】
図1及び
図2に示すように、前記アバットメント120の非締結弾性支持レッグ124は、その下部の外側面には下側方向に傾くように傾斜面126を形成し、フィクスチャーの軸孔の内側面にも前記非締結弾性支持レッグの傾斜面に対応する対応傾斜面136を形成することにより、アバットメントに加わる咬合力を効果的に緩衝させることができる。
【0045】
すなわち、前記非締結弾性支持レッグ124の傾斜面126は、前記フィクスチャーの軸孔の内側面の対応傾斜面136に接した状態で相互締結された構造をなすことにより、アバットメントに咬合力が加わったときにアバットメント120の非締結弾性支持レッグ124の傾斜面126がフィクスチャーの軸孔の内側面の対応傾斜面136に沿って微細にスライドしながら緩衝作用をする。
【0046】
この場合、前記非締結弾性支持レッグ124の傾斜面126の外径は、同じ垂直的位置で、それに対応するフィクスチャーの軸孔内側面の対応傾斜面136の内径よりもさらに大きく構成され、フィクスチャーにアバットメントが締結されるときにフィクスチャーに対してアバットメントを常に一定の力で上方に押し上げる力が作用し、その結果、フィクスチャーに対してアバットメントが常に一定の位置に堅固に位置するように構成される。
【0047】
好ましくは、前記弾性締結レッグ122に形成された第1対応締結部130と前記フィクスチャー110の軸孔の内側面に形成された第1締結部150との相補的結合によって、一定以下の回転力に対してアバットメントの回転防止機能を行うとともに、フィクスチャーからアバットメントの垂直離脱防止機能も同時に行うことができる。
【0048】
これに対し、本発明の他の実施形態によれば、前記第1対応締結部130の下側または上側に、アバットメント120の外径方向に突出して垂直離脱防止機能を主な機能とする第2対応締結部160をさらに含むことができる。ただし、第2対応締結部160は、第1対応締結部130よりも締結レッグの下端部に位置することが好ましい。
【0049】
このような垂直離脱防止機能を主機能とする第2対応締結部160は、
図2に示すように、アバットメント120の外径方向に突出した締結突起の上端面は第2対応締結部締結平面162を形成し、このように締結突起からなって垂直離脱防止機能を主機能とする第2対応締結部の縦断面は、下部に行くほど半径が減少する断面とすることができる。
【0050】
また、前記フィクスチャーの軸孔の内側面には、外側方向に陰刻の形で形成され、前記第2対応締結部160に対応して結合される係止顎からなる第2締結部170をさらに含むことができる。
【0051】
このような第2締結部170は、固定体の軸孔の内側面の垂直的一定位置から円周方向全体にわたってリング状の係止段で形成されるか、或いは、第1締結部のように円周方向全体にわたってリング状の係止段で形成されず、一定の部位でのみ外側方向に陥没した締結溝のような凸凹部で形成され得る。
【0052】
また、前記第1締結部と第2締結部を一つの締結部に統合して構成することもできる。
【0053】
このような係止顎からなる第2締結部170は、前記垂直離脱防止機能を主機能とする第2対応締結部160の第2対応締結部締結平面162に対応する第2締結部締結平面172を含む構造である。
【0054】
このような第2対応締結部160と第2締結部170は、前記第1対応締結部130が第1締結部150から離脱分離された状態では、弾性締結レッグ122の内径方向への弾性たわみによって前記第2対応締結部160が第2締結部170から自動的に離脱した状態である。
【0055】
しかし、前記第1対応締結部130と第1締結部150とが相互結合されると、
図4(b)に示すように、第2対応締結部160と第2締結部170は、同時に相互結合され、アバットメント120とフィクスチャー110との軸方向の結合力を補強する。このような作用により、垂直離脱を防止する機能を主な機能とする第2対応締結部と第2締結部は、反復脱着にも拘らず、損傷することなく垂直離脱防止結合力を維持し続けることができる。
【0056】
上述のように構成された本発明の歯科用インプラント100は、アバットメント120をフィクスチャー110に結合しようとする場合には、 アバットメント120をフィクスチャー110の軸孔112に完全に押し込んでアバットメント120を円周方向に回転させる。
【0057】
したがって、アバットメント120のそれぞれの弾性締結レッグ122に形成された第1対応締結部130は、その締結突起132が、フィクスチャー110の軸孔の内側面に形成された締結溝152に対応して結合される。
【0058】
これとは逆に、アバットメント120とフィクスチャー110とが結合された状態から、アバットメント120をフィクスチャー110から分離させようとする場合、アバットメント120をフィクスチャー110内で円周方向に回転させる。
【0059】
すなわち、本発明の歯科用インプラント100は、前記アバットメント120がフィクスチャー110内に結合された状態で、前記アバットメント120を円周方向に回転させると、前記第1対応締結部130が第1締結部150から円周方向に抜けて離脱し、同時に垂直離脱防止機能を主な機能とする第2対応締結部160も第2締結部170から自動的に抜けてしまう。
【0060】
このように、フィクスチャーに対してアバットメントの円周方向への回転に対して回転防止機能を主な機能とする第1対応締結部130が一定以上の回転力によって第1締結部150から円周方向に回転して離脱すると、垂直離脱防止機能を主な機能とする第2対応締結部160も第2締結部170から離脱する。この状態でアバットメントを上方に引っ張ってフィクスチャーから容易に分離させることができる。
【0061】
したがって、本発明は、アバットメント120をフィクスチャー110に対して少ない力でも分離させることができ、患者の歯槽骨に従来のように大きな引力を作用させないことができ、また、反復着脱にも拘わらずフィクスチャーに対するアバットメントの垂直離脱防止結合力の減少が起こらない。
【0062】
このように、本発明によれば、インプラント施術の際に患者の負傷のリスクを最小限に抑えることができるのはもとより、アバットメントを回転させる作業のみでアバットメント120がフィクスチャー110から離脱することができるので、施術者がアバットメント120とフィクスチャー110の分離状態を容易に直感することができ、それによるインプラント施術を心的負担感なく容易に行うことができるため、非常に便利に施術することができる。
【0063】
好ましくは、施術の際にフィクスチャーとアバットメントとの締結位置をより容易に見つけることができるようにするために、第1締結部150は、フィクスチャーの軸孔内側面の最上端から始まって下方に続く締結溝152からなることができる。すなわち、フィクスチャーの軸孔内側面の第1締結部150の上方には、第1対応締結部の外径よりも小さい直径が形成されないようにして、第1対応締結部130が特別な抵抗なく第1締結部に進入することができるようにする。さらに、前記第1締結部150は、フィクスチャーの軸孔内に挿入されるアバットメントの第1対応締結部130の締結突起132をガイドするので、施術者は、アバットメントの締結突起132がフィクスチャーの第1締結溝152に対応するように合わせた後に押し込む方式でフィクスチャーとアバットメントとの締結角度位置を容易に見つけることができる。
【0064】
一方、
図6に示すように、アバットメントの上端と第1締結部との間には、横断面からみたときに横断面を複数個に分割しながらアバットメントの上下方向に直線形または螺旋形をなす切開部をさらに備えてもよい。
【0065】
すなわち、
図6に示すように、螺旋形の切開部260は、切開部の上端箇所から下端箇所までアバットメントを左右に貫通して水平の横断面を複数個に分割し、アバットメントの外側面からみたとき、アバットメントの上下方向に連続的に螺旋形をなしている。
【0066】
このような構造では、アバットメント120に外力が加わる場合、前記螺旋形の切開部260によってアバットメント120で緩衝性能を得ることができ、歯槽骨に結合されるフィクスチャー110には、衝撃がより少なく与えられるようにすることができ、さらには、インプラント患者が食物を咀嚼する場合、微細な緩衝性能を感じることができて咀嚼感覚を著しく改善することができる。
【0067】
一方、本発明の実施形態に係るフィクスチャー110は、
図2に示すように、フィクスチャー110の軸孔112の最下端部に水平方向の横断面からみたとき、多角形をなす締結凹溝部115をさらに備えてもよいが、これは、施術者がフィクスチャー110を患者の歯槽骨に植立するときに歯科用器具の一端をフィクスチャー110の締結凹溝部115に挿入してより容易に施術することができるようにするためである。
【0068】
ひいては、本発明の歯科用インプラントにおいて、アバットメントとフィクスチャーとが締結される前には、フィクスチャーの軸孔の上端部に対応するように結合されるアバットメントの外径がフィクスチャーの軸孔の上端部の内径よりも大きく形成されるが、アバットメントをフィクスチャーの軸孔に挿入して結合する場合、アバットメントに形成された切開部によってアバットメントの中心軸に向かって放射状に収縮され、その結果、収縮された前記アバットメントの外径がフィクスチャーの軸孔の上端部の内径と互いに対応しながらアバットメントがフィクスチャーの軸孔に堅固に結合され得る。結合された後は、収縮されたアバットメントが弾性復元されながらフィクスチャーの軸孔の内面に対抗して外側方向に押して支持させるので、より堅固な結合を実現することができる。このような構造による場合、アバットメントとフィクスチャー間の結合部における密閉性を大幅に向上させることができるため、前記結合部におけるマイクロ間隙またはギャップ(gap)の発生を最小化することができ、その結果、外部からフィクスチャーの内側へ細菌または病原菌が侵入する問題点を根本的に解決することができる。
【0069】
本発明は、図面を参照して特定の実施形態について詳細に上述したが、本発明は、このような特定の構造に限定されるものではない。当該分野における通常の知識を有する者であれば、以下の特許請求の範囲に記載された本発明の技術思想および権利範囲を逸脱することなく、本発明に多様な修正または変更を加えることができるだろう。例えば、フィクスチャーの軸孔の内側面または下面に多角形状を形成させて歯槽骨へのフィクスチャーの植立の際に強い回転力をフィクスチャーに伝達するようにすることができる。例えば、第1締結部と第2締結部の機能を統合した一つの締結部のみ形成することもできる。この時、変わりのない構造は、フィクスチャーとアバットメントとの締結状態でフィクスチャーからアバットメントを回転させたとき、アバットメントの下部締結軸部に形成された対応締結部が、フィクスチャーの軸孔の内側面に形成された軸孔の内側傾斜面に接触して、弾性反発作用でアバットメントを上部側に押し上げてフィクスチャーからアバットメントの分離を容易に行うことができるように構成される。さらに、回転防止機能を主な機能とする第1締結部と第1対応締結部の形状が100%対応しないことがある。すなわち、第1締結部と第1対応締結部の形状が100%相補的に対応しなくても、一定以下の回転力に対して回転防止機能を行うことができればよい。別の例は、それぞれの弾性締結レッグに第1及び第2対応締結部を全て形成しなくてもよい。すなわち、一部の弾性締結レッグにのみ形成させてもよい。さらに別の例は、第1締結部や第1対応締結部は、円弧形ではなく、他の形態を備えてもよい。また、前記弾性締結レッグ122は、図面上で1つからなるものと例示されているが、1つ~6つ、またはそれ以上の多数からなり、それぞれの弾性締結レッグ122に第1対応締結部130が形成され、これに対応して第1締結部150が形成されることも可能である。また、第2締結部は、垂直中心軸に対して様々な締結角度と形態に変形できる。すなわち、第2対応締結部の締結平面を平面に形成せず、緩やかな傾斜を持つように形成してもよい。そして、さらに別の例は、第1締結部が形成される傾斜面を連続した面ではなく、階段式で形成してもよい。一方、アバットメントがフィクスチャーに結合される方式がどの方式であれ、締結突起および締結溝の弾性反発作用によって互いに弾性結合される方式で締結された状態で、フィクスチャーに対してアバットメントを回転させると、アバットメントの下部締結軸部上に形成された対応締結部の締結突起とフィクスチャーの軸孔の内側面に形成された傾斜面との弾性反発作用によってアバットメントをフィクスチャーから上部側に押し上げてアバットメントとフィクスチャーを容易に分離させることができる構造であれば、本発明の権利範囲に含まれるものと解釈されるべきである。すなわち、アバットメントと弾性結合されるフィクスチャーの軸孔内側面の傾斜面に締結溝からなる第1締結部を備え、アバットメントにこれに対応する第1対応締結部が形成されており、アバットメントとフィクスチャーとの締結状態でフィクスチャーに対してアバットメントを回転させると、フィクスチャーの軸孔内側面の傾斜面とアバットメントの下部締結軸部に形成された第1対応締結部とが弾性的に相互作用して、アバットメントをフィクスチャーから上部側に押し上げてアバットメントとフィクスチャーが容易に分離されるようにすれば、いずれも本発明の権利範囲に属する。さらに、本発明の技術的特徴を含み、単に設計変更された構造もすべて本発明の権利範囲内に属することを予め明らかにしておく。