IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ カーディバスキュラー・ラブ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ・オ・ブレヴェメンテ・シーブイ・ラブ・ソチエタ・ペル・アツィオーニの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】多層の管腔内プロテーゼおよび製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/852 20130101AFI20220906BHJP
   A61F 2/966 20130101ALI20220906BHJP
   A61F 2/07 20130101ALI20220906BHJP
【FI】
A61F2/852
A61F2/966
A61F2/07
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019547990
(86)(22)【出願日】2018-03-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-03-26
(86)【国際出願番号】 IB2018051424
(87)【国際公開番号】W WO2018163055
(87)【国際公開日】2018-09-13
【審査請求日】2021-03-04
(31)【優先権主張番号】102017000024729
(32)【優先日】2017-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(31)【優先権主張番号】102017000024763
(32)【優先日】2017-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】519314098
【氏名又は名称】カーディオバスキュラー・ラブ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ・オ・ブレヴェメンテ・シーブイ・ラブ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
【氏名又は名称原語表記】CARDIOVASCULAR LAB S.P.A. o brevemente CV LAB S.P.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100136777
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 純子
(72)【発明者】
【氏名】アレッサンドロ・サント・ボルトーネ
【審査官】二階堂 恭弘
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2016-0133388(KR,A)
【文献】特表2015-513931(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0180392(US,A1)
【文献】特表2002-508209(JP,A)
【文献】特表2015-504773(JP,A)
【文献】特開2006-158968(JP,A)
【文献】特表2005-503881(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/852
A61F 2/966
A61F 2/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも部分的にプロテーゼ内腔(2)を画定し、少なくとも1つの病理部分(13)を含み且つ少なくとも1つの空洞(4)を少なくとも部分的に規定する解剖学的構造(3)内に留置するのに適した管腔内プロテーゼ(1)であって、
前記管腔内プロテーゼ(1)は2つ以上の層(5、6、7)を含み、前記2つ以上の層(5、6、7)のうちの少なくとも2つの層(5または6または7)は、そのうちの少なくとも1つの層(5または6または7)限定的に交絡された(limitedly interlaced)鎧装部(9)を形成している、少なくとも1つの糸状要素(8)を含み、
前記管腔内プロテーゼ(1)は、解剖学的構造(3)の空洞(4)の壁の解剖学的部分(11)への固定に適した少なくとも1つの固定部分(10)と、解剖学的構造(3)の病理部分(13)への対面に適した少なくとも1つの作用部分(12)とを含み、
前記2つ以上の層(5、6、7)は、管腔内プロテーゼ(1)の少なくとも前記作用部分(12)において互いに分離され、よって、管腔内プロテーゼ(1)の少なくとも前記作用部分(12)において、1つの層(5または6または7)と少なくとも1つの隣接層との間の接続要素は設けられておらず、
前記2つ以上の層(5、6、7)は、互いに幾何学的に同一であり、各層(5、6、7)の鎧装部(9)の前記少なくとも1つの糸状要素(8、38、48)は、プロテーゼ内腔(2)を解剖学的構造(3)の病理部分(13)と流体連通させるのに適した、複数の窓(15)を規定し、
各層(5、6、7)の前記少なくとも1つの作用部分(12)は、変形していない状態のとき、少なくとも1つの固定部分(10)の前記長手方向(X-X)に直交する半径方向R-Rの伸長部または直径(D4)よりも小さい、前記長手方向(X-X)に直交する半径方向R-Rの伸長部、または直径(D1、D2、D3)を有し、
前記少なくとも1つの固定部分(10)は、前記少なくとも1つの作用部分(12)よりも大きい口径を有し、および、
管腔内プロテーゼ(1)は、2つの対向する端部(26、27)の間に長手方向に挿入される管腔内プロテーゼ(1)の部分より大きい対向する端部(26、27)を含み、
前記端部(26、27)に位置する前記固定部分(10)は、円筒の形状を有し、
前記固定部分(10)において、前記2つ以上の層5、6、7は互いに隣り合っている、管腔内プロテーゼ(1)。
【請求項2】
前記少なくとも1つの固定部分(10)は、前記2つ以上の層(5,6,7)の間の接続デバイス(24)を少なくとも1つ含む、請求項1に記載の管腔内プロテーゼ(1)。
【請求項3】
前記少なくとも1つの作用部分(12)に対して長手方向に対向する、少なくとも2つの固定部分(10)を含む、請求項1または2に記載の管腔内プロテーゼ(1)。
【請求項4】
各層(5、6、7)の鎧装部(9)の前記少なくとも1つの糸状要素(8、38、48)は、プロテーゼ内腔(2)を解剖学的構造(3)の病理学的部分(13)と流体連通させるのに適した複数の窓(15)を規定する、請求項1~3のいずれか一項に記載の管腔内プロテーゼ(1)。
【請求項5】
前記2つ以上の層(5、6、7)のうちの少なくとも1つの層(5または6または7)は、単一の糸状要素(8、38、48)を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の管腔内プロテーゼ(1)。
【請求項6】
前記鎧装部(9)が、交絡された鎧装部である、請求項1~5のいずれか一項に記載の管腔内プロテーゼ(1)。
【請求項7】
前記2つ以上の層は、まさに3つの層(5、6、7)であり、および、
前記2つ以上の層は同軸であり、および、
前記2つ以上の層は、第1層の所定の公称口径(nominal caliber)(D1)を有する第1層(5)、第1層の前記公称口径(D1)よりも小さい第2層の所定の公称口径(D2)を有する第2層(6)、および第1層の公称口径(D1)および第2層の公称口径(D2)の両方よりも小さい第3層の所定の公称口径(D3)を有する第3層(7)を含み、および、
前記管腔内プロテーゼ(1)は、前記3つの層(5、6、7)を形成する3つの鎧装部(9)を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の管腔内プロテーゼ(1)。
【請求項8】
前記第1の糸状要素(28)と前記第2の糸状要素(29)は、管腔内プロテーゼ(1)の長手方向の軸に対して、交差角度(α)を形成し、および、
前記交差角度(α)は40°から50°の間であり、および/または、
前記交差角度(α)は実質的に45°に等し、請求項1~7のいずれか一項に記載の管腔内プロテーゼ(1)。
【請求項9】
1つの層の少なくとも1つの糸状要素(8、38、48)によって形成された鎧装部(9)は、2つの連続する交差部位(30)間の円周距離よりも小さい所定の調整量により、および/または、2つの連続する交差部位(30)間の円周距離の3分の1よりも小さい調整量により、1つまたは複数の隣接する層の鎧装部に対して円周方向に調整される、請求項1~8のいずれか一項に記載の管腔内プロテーゼ(1)。
【請求項10】
前記少なくとも1つの糸状要素(8、38、48)は超弾性材料で形成されており、および/または、
前記少なくとも1つの糸状要素(8、38、48)は少なくとも部分的にニチノールで形成されており、および/または、
前記少なくとも1つの糸状要素(8、38、48)は、所定の形状の記憶を維持し、熱変化および/または機械的応力を受けたときに形状を再取得するのに適した材料で形成されており、および、
管腔内プロテーゼ(1)はグラフトでないステント(stent-no-graft)であり、および、
前記作用部分(12)は実質的に円錐台形状を有し、および、
前記管腔内プロテーゼ(1)はプロテーゼ内腔(2)の分岐部を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の管腔内プロテーゼ(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管腔内プロテーゼのアセンブリに関する。
【0002】
特に、本発明は、多層の管腔内プロテーゼに関する。
【0003】
本発明の管腔内プロテーゼは、動脈瘤の治療に特に適しているが、これに一義的に意図されない。
【背景技術】
【0004】
管腔内プロテーゼは、動脈瘤などの心血管疾患の治療に使用される。動脈瘤は、動脈瘤嚢と呼ばれる嚢の形成のための、血管の一部、例えば心血管系の主要な動脈である大動脈などの、動脈の部分の病理学的拡張から実質的になる。血行力学的な観点から、通路部分のそのような拡張での血流は、健康な血管に見られるものと比較して、乱流状態で流れる傾向があり、同時に、血管壁に増大した圧力をかける傾向がある。このことは、前記壁の厚さの減少に応じて、血管の断面において止まることなく増加し、よってラプラスの法則に従い、血管壁の破裂につながり得る動脈瘤嚢の慢性的な拡大を引き起こす。
【0005】
特に、壁の張力が動脈瘤嚢において発生し、この張力は、同じ圧力でも、健康的な血管よりも高くなり、ラプラスの法則によれば、嚢の半径と、層流ではなく乱流である流量の2倍に反比例し、大動脈から隣接する血管への層流と共に、動脈瘤嚢の周囲の血管からの血液の流入を生じさせる旋回効果を有している。これが動脈瘤の膨張を過度に進め、外膜にもはや含まれていない血管張力による大動脈の破裂を引き起こす。これは、筋弾性を有する中膜がすでに変性しており、動脈瘤の拡張自体を引き起こしているためである。
血管内に管腔内プロテーゼを留置することにより、血管内部の流体力学に局所的に影響を与えることが可能であり、したがって、血流の乱流を低減することが可能である。この現象は、フロー転換(flow diversion)として知られている。既知の構造的特徴によれば、管腔内プロテーゼは、動脈瘤嚢からの血流を除いた血流を設けることができる。これによれば、血流による嚢内への輸送現象が実質的になくなり、同時に、動脈瘤嚢の壁に血液によって与えられるストレスが減少し、それによって、嚢壁の破裂を防ぎ、動脈瘤嚢に血液の塊が徐々に充填する。
【0006】
既知の管腔内プロテーゼは、動脈瘤を排除する動脈瘤嚢の入口カラー(collar)にまたがる血流のための管(duct)を再構築するため、通常、動脈瘤嚢の入口カラーにまたがる血管の内腔に管腔内プロテーゼを挿入および配置するためのリリースシステム、動脈瘤の影響を受けた血管の壁を押すことで、それ自体を固定することができる自己拡張型の金属鎧装(metal armor)(ステント)、および管腔内プロテーゼ管腔内プロテーゼの壁を形成するための組織(移植片)を含む。このタイプの管腔内プロテーゼは、例えば、文献EP-2397112とUS-2015-282967に記載されている。
【0007】
既知の種類の管腔内プロテーゼは、さまざまな形状を示している。例えば、文献WO-90-04982およびUS-5354309により、管腔内プロテーゼの中心部分よりも大きな口径の近位端および遠位端を有する管腔内プロテーゼが知られている。管腔内プロテーゼは、形状記憶合金シートから始まるステッチのレーザー切断によって、または、例えば文献US-5718159に記載されているように、スピンドルの周りの複数の金属またはポリマーの糸を用いて製造することができる。
【0008】
管腔内プロテーゼは、心周期中に拍動流況(pulsatile flow regime)にさらされ、通常は湾曲した、時には曲がりくねった経路を描く変形可能な血管壁を含む、通常は、大動脈などの動脈である血管内に留置されたままである。この現象は、特に、大動脈の下方に伸びた動脈瘤(aneurysms of the descending stretch)、すなわち大動脈弓部の遠位にあり、大動脈峡部、胸部大動脈、および分岐した腹部大動脈および側副血管を含む大動脈動脈の部分の治療に関連する。大動脈の血流は、左心室から出てくる血液が運ばれる動脈であり、通常の生理学的条件では乱流現象によって影響を受ける可能性があり、通常、実質的にらせん状の前進運動によって特徴付けられる。そして、それに対応して、血管の展開(development)の長手方向に対して傾斜した方向において、大動脈壁の内皮細胞の整列が生じる。
【0009】
動脈の壁には3つの層がある。いわゆる「血管の血管(vasa vasorum)」によって供給される最も外側の層である外膜、血液循環を促進するための収縮波(systolic wave)による拡張後の公称口径(nominal diameter)への弾性復帰に利用する筋肉弾性繊維によって形成された中膜、および内腔と中膜の間の栄養素の拡散を促進するのに適した最も内側の層である内膜である。したがって、心周期の間、動脈壁は通常、その公称口径(nominal diameter)の膨張と収縮のサイクル、および空間の三次元における屈曲-ねじり変形を受ける。
【0010】
例えば、文献US-8192484、EP-1357857およびUS-8048139は、交互に配置された多層の金属鎧装部のみを含む管腔内プロテーゼの解決手段を示している。ここで、各層は、複数の金属フィラメントの交互配置により形成されており、また、各層のフィラメントは、隣接する層のフィラメントと交差しており、それにより、管腔内プロテーゼの前記鎧装部のさまざまな層の間で、広範囲の統合または相互貫通が生じている。
【0011】
いくつかの観点、特に、血流の乱流を局所的に低減する能力においては有利であるが、これらの解決手段にはかなりの欠点があり、問題を完全には解決しない。
【0012】
実際のところ、多層構造は、ステントが血管の内壁に及ぼす半径方向の圧力を増加させることができるが、相互侵入層(interpenetrated layers)を有するこのような構造は、非常に剛性が高いため、血管における湾曲または柔軟な(compliant)部分の壁に対して有効に接着させるには不向きである。言い換えると、脈動し柔軟なシステムである大動脈において、硬い構造物である管腔内プロテーゼを留置することは、少なくとも留置後の最初の期間において、管腔内プロテーゼの動脈壁への接着が不十分という不適合が必然的に生じ、早期の留置の不具合および管腔内プロテーゼの望ましくない移動といったリスクを伴う。
【0013】
さらに、このような管腔内プロテーゼによる解決手段における相互侵入層は、固定を上手に達成すると、動脈壁の血管内皮細胞の再生のための理想的な基質となり、その結果、前記層が動脈壁に組み込まれ、また、しばしば動脈瘤嚢に面する管腔内プロテーゼの部分的な層が動脈壁に組み込まれ、そして、動脈瘤嚢を血流から排除し、また、留置部位において動脈から分岐する側副血管を閉塞する。ある散発的な症例では、管腔内プロテーゼの鎧装部上での血管内皮細胞の成長により、幸いなことに動脈瘤嚢に面する管腔内プロテーゼの全体を覆うことが避けられ、特に大口径の場合、側副血管の開通性が維持される。
【0014】
他の管腔内プロテーゼによる解決手段は、WO2016124235A1、US2016/0158037、EP1946721 A1、US2015/216684、US2013/218255、US2013/245745、US2009/270974、US6 689 162およびBR202013033688-U2において知られている。
【0015】
特に、これまでに提案された解決手段は、屈曲-ねじり力の最適な伝達に適合しない、交互に配置された(interleaved)剛性のマルチステントシステムによって形成されるため、血管壁と流れの間に不一致が生じ、したがって層流の再形成がなされず、血栓症を招き、側副血管の灌流が不足する。
【0016】
留置先の血管が生理学的に変形する中においても、該血管の壁に接着できる管腔内プロテーゼの解決手段を提供する必要性が強く感じられる。
【0017】
さらに、血流の迂回を可能にし、その乱流を大幅に低減でき、そして同時に、管腔内プロテーゼが制御され予測可能な方法で(in a controlled and predictable manner)留置された血管から分岐する側副血管の開通性を維持できる、管腔内プロテーゼの解決手段を提供する必要性が感じられる。
【0018】
上記タイプの既知の管腔内プロテーゼは、血管の病理学的部分、例えば動脈瘤を実質カプセル化し、管腔内プロテーゼの内腔に運ばれる血流から、それを隔離する障壁を形成する。臨床的見地から、これらの管腔内プロテーゼの効果は、動脈瘤嚢内への血栓の蓄積を促進することにある。
【0019】
したがって、既知の管腔内プロテーゼの解決手段は、動脈瘤などの病的状態に影響される血管機能の進行性回復を促進できる管腔内プロテーゼの解決手段を提供する必要性を、明確に認識していない。
【0020】
同時に、管腔内プロテーゼを留置することにより、健康的な壁の作用に回復させる必要性が感じられる。
【0021】
さらに、血管の構造および動力の損なわれた場所に介入して、それを回復するために、病的状態の影響を受けた血管壁の動的および構造的挙動を回復する必要性を強く感じられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明の目的は、上述の先行技術の欠点を除去し、先行技術を参照して言及した要望に対する解決手段を提供することにある。
【発明の効果】
【0023】
この目的および他の目的は、請求項1に記載の管腔内プロテーゼによって達成される。
【0024】
いくつかの有利な実施形態は、従属請求項の要件にある。
【0025】
本発明の一態様によれば、管腔内プロテーゼは、少なくとも部分的にプロテーゼ内腔を画定し、少なくとも1つの病理部分を形成し、少なくとも1つの空洞を少なくとも部分的に規定する解剖学的構造に留置するのに適している。この管腔内プロテーゼは、2つ以上の層の管腔内プロテーゼを含む。前記2つ以上の層における少なくとも1つの層は、フレームワークまたは鎧装部を形成する少なくとも1つの糸状または糸状要素(filiform or threadlike element)を含む。
【0026】
前記管腔内プロテーゼは、解剖学的構造の空洞の壁の解剖学的部分への固定に適した、少なくとも1つの固定部分と、解剖学的構造の病理部分への対面に適した少なくとも1つの作用部分とを含む。
【0027】
有利には、前記2つ以上の層は、管腔内プロテーゼの少なくとも前記作用部分で互いに分離され、よって、1つの層(5または6または7)と少なくとも1つの隣接層との間の接続要素の設置を避ける。
【0028】
多層の管腔内プロテーゼまたはデバイスは、適合性または非常に柔軟であるという利点を有し、したがって、血管の湾曲の任意のタイプに対し留置することができるという利点を有する。その構造は、前記層、例えば、3つの空間軸で形成された3つの層で形成された層の常時摺動により、新しい中膜が再生し、そして通常の屈曲-ねじり力を、最適な方法で復元し伝達するようになっており、それにより、デバイスにも動脈瘤嚢にも血栓症を生じることなく、大動脈内だけでなく該大動脈から分岐した側副血管内においても層流を再形成する。そして全ての側副血管における層流と、内皮自体の正常な内分泌および抗血栓機能とを可能にする、スピン形状デバイスの内皮化(endothelialization)により、減圧と、収縮と呼ばれる動脈瘤の再吸収と線維化が生じる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
本発明に関する管腔内プロテーゼおよび方法のさらなる特徴および利点は、添付の図面を参照して、非限定的な例としてのみ提供される、好ましい実施形態例の以下の説明から容易に明らかになるであろう。
【0030】
図1は、管腔内プロテーゼの側面図または垂直図を示している。
【0031】
図2A、2Bおよび2Cはそれぞれ、多層管腔内人工器官の層の垂直立面図を示す。
【0032】
図3は、オペレーターにより柔軟に変形された多層管腔内プロテーゼを示す。
【0033】
図4は、多層の管腔内プロテーゼの一部の縦断面を示す図を示す。
【0034】
図5は、病理部分を含む留置部位に留置された管腔内プロテーゼを示す。
【0035】
図6は、一実施形態における、管腔内プロテーゼの垂直立面図を示す。
【0036】
図7および8は、病理部分を含む留置部位における、管腔内プロテーゼの送達および送達のプロセスのいくつかの可能なステップを概略的に示す。
【0037】
図9、10、11、および12は、可能な動作モードによる、管腔内プロテーゼの製造方法のいくつかの可能なステップを概略的に示す。
【0038】
図13は、一実施形態における、多層の管腔内プロテーゼの層の鎧装部の一部を示す。
【0039】
図14は、一実施形態における、管腔内プロテーゼの一部を示す。
【0040】
図15、16、17および18は、可能な動作モードによる、管腔内プロテーゼの製造方法のいくつかの可能なステップを示す。
【0041】
図19は、半径方向に収縮した形態の管腔内プロテーゼの層の鎧装部を取り付けるためのリリースデバイスを受け入れる支持デバイスの断面図を示す。
【0042】
図20は、一実施形態における、管腔内プロテーゼの垂直立面図を示す。
【0043】
図21は、可能な動作モードにおける、管腔内プロテーゼの製造方法の可能なステップを明確にするための部分的な断面部分を有する等角図を示す。
【0044】
図22は、一実施形態における、管腔内プロテーゼの接続要素を概略的に示す。
【0045】
図23は、可能な動作モードにおける、管腔内プロテーゼの製造方法の可能なステップを概略的に示す。
【0046】
図24は、可能な動作モードにおける、管腔内プロテーゼの製造方法の可能なステップを、明確にするため部分的に断面部分を示した状態で、概略的に示している。
【0047】
図25は、管腔内プロテーゼの層の鎧装部の形成に用いられる糸状要素の断面の5つの例を示す。
【0048】
図26は、第2の材料で覆われた第1の材料のコアを含む糸状要素のさらなる断面を示す。
【0049】
図27は、前記交絡(interlacing)の2つの実施形態における、その交絡で前記鎧装部を形成する糸状要素で、作られた鎧装部の2つの詳細を示す。
【0050】
図28は、前記交絡の一実施形態における、それらの交絡で前記鎧装部を形成する2つの糸状要素で作られた鎧装部の詳細を示す。
【0051】
図29は、前記交絡の実施形態における、管腔内プロテーゼの2つの異なる時点での、2つの糸状要素で作られた鎧装部であって、それらの交絡により形成された前記鎧装部の詳細を示す。
【0052】
図30は、管腔内プロテーゼの層の縦部分であって、糸状要素で作られた鎧装部の詳細が示され、相互に異なる巻き付け角度で交絡して、前記鎧装部が形成されている。
【0053】
図31は、管腔内プロテーゼの全体的な多孔性を形成する3つの重ねられた層の窓を示す。
【0054】
図32は、アセンブリの2つの異なる時点での、2つの糸状要素からなる管腔内プロテーゼの全体的な多孔性を形成する、3つの重ねられた層の窓を示す。
【0055】
図33は、1つの層と隣接層との間に異なる隙間または空洞を作り出す、異なる横断寸法の3つの層で作られた管腔内プロテーゼアセンブリの、4つの異なる縦断面の概略図を示す。
【0056】
図34は、1つの層と隣接層との間に異なる隙間または空洞を作り出す、異なる横断寸法の3つの層で作られた管腔内プロテーゼアセンブリの、3つのさらなる異なる縦断面を概略的に示す。
【0057】
図35は、1つの層と隣接層との間に隙間または空洞を作り出す、異なる断面の3つの層で作られた管腔内プロテーゼの、長手方向の軸の断面図を概略的に示す。
【0058】
図36は、2つの互いに入れ子式の構成要素を有する層で作られた管腔内プロテーゼと、入れ子式の管腔内プロテーゼの所望の長さを、シースの連続的な開口で調節することにより、血管内に前記管腔内プロテーゼを送達する、ステント送達システムとを概略的に示す。
【0059】
図37は、同一の形状を有する層で作られた管腔内プロテーゼの縦断面図を示す。
【0060】
図38は、一実施形態における、糸状要素で作られた鎧装部であって、その交絡により形成された前記鎧装部の詳細を示す。
【0061】
図39は、前記鎧装部を形成する交絡の窓の展開図(development)の中心における角度が示されている、前記管腔内プロテーゼの層の長手方向の伸張(longitudinal stretch)の等角図を概略的に示す。
【0062】
図40および図41は、動脈瘤の病理を有する血管の流れ試験を示しており、図40では、最初に管腔内プロテーゼが存在しておらず、管腔内プロテーゼが図41では存在しており、流れの強い減少と規則化を強調している。
【発明を実施するための形態】
【0063】
一般的な実施形態によれば、管腔内プロテーゼ1が提供される。
【0064】
好ましい実施形態によれば、前記管腔内プロテーゼ1はステントを含む。
【0065】
好ましい実施形態によれば、前記管腔内プロテーゼはステントである。
【0066】
前記管腔内プロテーゼ1は、少なくとも部分的にプロテーゼ内腔2を画定し、少なくとも1つの空洞4を少なくとも部分的に規定する解剖学的構造3内に留置するのに適している。一実施形態によれば、前記解剖学的構造3は、血管、例えば動脈、例えば大動脈であり、前記空洞4は、前記血管の血管内腔であり、前記管腔内プロテーゼ1は、血管内の留置に適した血管管腔内プロテーゼである。一実施形態によれば、前記管腔内プロテーゼ1は、実質的に管状の形状を有する。
【0067】
前記管腔内プロテーゼ1は、動脈瘤17の治療に特に適しているが、これに一義的に意図されない。一実施形態によれば、前記管腔内プロテーゼ1は、特に、大動脈弓18、または下行大動脈19、例えば、胸部大動脈20、腹部大動脈21、または大動脈峡部22の動脈瘤の治療に特に適しているが、これに一義的に意図されない。
【0068】
変形実施形態によれば、前記解剖学的構造3は食道であり、前記空洞4は食道の内腔である。
【0069】
前記管腔内プロテーゼ1において、長手方向X-Xは、前記管腔内プロテーゼ1の展開部(development)の長手方向軸と実質的に平行または一致すると規定され、長手方向X-Xに直交する半径方向R-R、および、前記長手方向X-Xと半径方向R-Rの両方に直交する、円周方向または接線方向が規定される。径方向に沿って、管腔内プロテーゼ1の展開部(development)の長手方向軸から半径方向に沿って離れる方向である外側径方向REと、前記外側径方向REと反対の内側径方向も規定される。
【0070】
前記管腔内プロテーゼ1は、多層の管腔内プロテーゼであり、2つ以上の層5、6、7を含む。
【0071】
好ましい実施形態によれば、前記2つ以上の層は、まさに3つの層5、6、7である。
【0072】
好ましい実施形態によれば、前記管腔内プロテーゼ1は、前記3つの層5、6、7を形成する3つの鎧装部9を備える。
【0073】
前記層は、例示であって必須ではないが、管腔内プロテーゼまたはデバイスが作られる3つの層であって、一実施形態によれば、例えば病的領域に面した部分においてそれらは互いに分離され、例えば静止状態または規準状態(nominal conditions)で、各層の間で、例えば0.1mmと3mmの間で可変の、空間または所定の距離を有し、これにより、健常者の中膜で起こるように、それらの間での連続的な振動と往復スライドを許容できる。前記空間は、少なくとも管腔内プロテーゼの作用部分12全体に沿って中断のない空間である。一実施形態によれば、層間距離は、内皮細胞が層の間に決して接着しないよう、またそれらの圧縮を防ぐために、それらが層間に橋のような接続を形成することを防ぐように規定され、それによって、大動脈から分岐する側副血管の流れが阻害されるのを回避でき、また常にこれらの側副血管の開通性が確保される。
【0074】
好ましい実施形態によれば、前記2つ以上の層は、第1層の所定の公称口径D1を有する第1層5、第1層の前記公称口径D1よりも小さい、第2層の所定の公称口径D2を有する第2層6、および、第1層の公称口径(D1)および第2層の公称口径D2の両方よりも小さい第3層の所定の公称口径D3を有する第3層7を含む。一実施形態によれば、前記2つ以上の層は同軸である。
【0075】
前記2つ以上の層5、6、7の少なくとも1つの層5、6または7は、鎧装部9を形成する少なくとも1つの糸状要素8、38、48を含む。一実施形態によれば、前記2つ以上の層5、6、7の各層5、6または7は、前記少なくとも1つの糸状要素8を含む。
【0076】
一実施形態によれば、前記第1層5は第1糸状要素8を含み、前記第2層6は第2糸状要素38を含み、前記第3層は第3糸状要素48を含む。
【0077】
好ましい実施形態によれば、前記2つ以上の層5、6、7の少なくとも1つの層5、6または7は、鎧装部9を形成する単一の糸状要素8、38、48を含む。このように、単一の糸状要素8、38、48で層を作成することが可能である。一実施形態によれば、前記2つ以上の層5、6、7の各層5、6または7は、単一の糸状要素8、38、48を含む。
【0078】
好ましい実施形態によれば、前記鎧装部9は、格子を形成する交絡された鎧装部である。
【0079】
一実施形態によれば、前記少なくとも1つの糸状要素8、38、48は、前記鎧装部9において実質的に螺旋状に展開する。
【0080】
一実施形態によれば、前記鎧装部9は織物で形成され、交絡された鎧装部であり、一実施形態によれば、横糸および縦糸タイプの織物、または前記少なくとも1つの糸状要素8、38、48の2つの対向する端部28、29が交差部位30で交互に交差するオープンメッシュタイプの織物で形成され、交絡された鎧装部である。一実施形態によれば、幾つかの交差部位30は、第2の糸状要素端部29に対して半径方向外側に配置された第1の糸状要素端部28を有する。また、幾つかの交差部位30は、第1の糸状要素端部28に対して半径方向外側に配置された第2の糸状要素端部29を有する。
【0081】
一実施形態によれば、前記第1の糸状要素端部28と前記第2の糸状要素端部29は、管腔内プロテーゼ1の長手方向軸に対して交差角度αを形成する。一実施形態によれば、前記交差角度αは30°と60°の間である。一実施形態によれば、前記交差角度αは40°と50°の間であり、一実施形態によれば、前記交差角度αは実質的に45°に等しい。前記交差角度αを設けることにより、例えば生来の大動脈の一部の、生来の血管壁の内皮細胞の整列を模倣することが可能である。実際に、知られているように、生来の血管壁の内皮細胞は、収縮期中の平均血流方向に沿って整列し、収縮期中の血流は実質的にらせん状に進むことができる。
【0082】
一実施形態によれば、単一の糸状要素8、38、48の前記2つの対向する端部28、29は、端部接続デバイス25によって互いに接続される。一実施形態によれば、前記端部接続デバイス25は、前記2つの対向する端部28、29間に強固な接続を形成するのに適している。
【0083】
前記管腔内プロテーゼ1は、解剖学的構造3の空洞4の壁の解剖学的部分11に固定するのに適した、少なくとも1つの固定部分10を含む。前記固定部分10は、足場と同様に、新しく形成された血管内皮組織の接着に有利な基材を形成するのに適している。
【0084】
前記管腔内プロテーゼ1は、解剖学的構造3の病理部分13への対面に適した少なくとも1つの作用部分12を含む。例えば、前記病理部分13は動脈瘤嚢である。
【0085】
少なくとも1つの固定部分10および少なくとも1つの作用部分12を設けることにより、前記管腔内プロテーゼ1は、解剖学的構造13の、実質的に健康な部分に固定することができる。少なくとも1つの固定部分10および少なくとも1つの作用部分12を設けることにより、前記管腔内プロテーゼ1は、前記病理部分に沿ってふくらみ、前記作用部分12は管腔内プロテーゼの留置される血管の健康な直径に等しい口径を再形成する。
【0086】
一実施形態によれば、前記固定部分10は、前記作用部分12から長手方向に分離されている。言い換えると、前記管腔内プロテーゼに沿って長手方向に移動すると、最初に前記固定部分10、次に前記作用部分12に遭遇する。
【0087】
有利には、少なくとも2つの層5、6、7は、管腔内プロテーゼ1の少なくとも前記作用部分12において、半径方向に分離された実施形態によれば、互いに分離されている。これにより、1つの層5または6または7と隣接する層との間の前記作用部分12に、接続要素は設ける必要がない。
【0088】
一実施形態によれば、前記作用部分12は、半径方向に応力がかかっていない場合、留置される予定の対応する解剖学的部分の健全な直径D1と同様または等しい直径、または口径D1を有する。例えば、前記管腔内プロテーゼは、動脈瘤が大動脈のこの部分に設けられるときに、管腔内プロテーゼが留置されなければならない大動脈の健康な部分の内部平均直径D1に等しい半径方向直径、または口径D1を有する作用部分を有する。
【0089】
このような管腔内プロテーゼ1を設けることにより、前記作用部分12において互いに実質的に独立している2つ以上の層5、6、7を形成することが可能になる。一実施形態によれば、少なくとも1つの固定部分10において、前記2つ以上の層5、6、7は互いに隣り合っており、1つは少なくとも他の1つに拘束されている。
【0090】
前記作用部分12において互いに分離された2つ以上の層5、6、7を設けることにより、隣接する層の間の空間16を設けることができ、これは、隣接する2つの層5、6、7の間の、たとえば血液などの流体の、少なくとも実質的に長手方向X-Xにおける流れができることに適している。一実施形態によれば、隣接する層間の前記空間16は、2つの隣接する層によって画定され取り囲まれた、実質的に環状で円筒の形状(annular cylindrical in shape)である。
【0091】
前記作用部分12において、互いに分離された2つ以上の層5、6、7が設けられていることにより、管腔内プロテーゼ1の留置後であっても、前記2つ以上の層5、6、7の間の相互移動が許容される。このようにして、血管内皮細胞の接着および成長は、管腔内プロテーゼ1の作用部分12の、少なくともより小さな口径D2、D3を有する1つ以上の層6、7において、一実施形態によれば全ての層5、6、7において、防止される。例えば、前記作用部分12で互いに分離された前記2つ以上の層5、6、7は、互いに対して長手方向および円周方向および半径方向のいずれにも移動することができる。これにより、管腔内プロテーゼ1の、ねじれの柔軟性を含む、柔軟性が改善される。このようにして、既知の解決手段と比較して、長寿命化が可能となる。
【0092】
前記作用部分12において、互いに分離された2つ以上の層5、6、7を設けることにより、改善された柔軟性を有する管腔内プロテーゼ1が提供され、これは、例えば大動脈峡部22のような、蛇行した解剖学的構造3における留置に適している。
【0093】
一実施形態によれば、このような管腔内プロテーゼ1は、既知の解決手段と比較して、増大した長手方向の伸長部(increased longitudinal extension)を有する実施形態に適している。
【0094】
一実施形態によれば、前記少なくとも1つの糸状要素8は、超弾性材料(superelastic material)で形成されている。一実施形態によれば、前記少なくとも1つの糸状要素8は、所定の形状の記憶を維持し、熱変動および/または機械的応力を受けたときに、それを再取得するのに適した材料で作られる。一実施形態によれば、前記少なくとも1つの糸状要素8は、少なくとも部分的にニチノールで形成されている。一実施形態によれば、前記少なくとも1つの糸状要素8は、少なくとも部分的に、加熱および/または機械的応力が加えられたときに所定の形状を再取得するのに適したニチノールで形成されている。一実施形態によれば、前記少なくとも1つの糸状要素8は、管腔内プロテーゼ1と留置する解剖学的構造3の壁との間の、生物学的相互作用を調節するのに適したコーティングを含む。
【0095】
好ましい実施形態によれば、各層5、6、7の鎧装部9の前記少なくとも1つの糸状要素8、38、48は、プロテーゼ内腔2を解剖学的構造3における動脈瘤嚢などの病理部分13と流体連通させるのに適した、複数の窓15を規定する。
【0096】
一実施形態によれば、1つの層の少なくとも1つの糸状要素8、38、48によって形成される鎧装部9は、1つ以上の隣接する層の鎧装部に対して、2つの連続する交差部位30間の円周方向の距離よりも小さい所定のオフセット量により、一実施形態によれば、2つの連続する交差部位30間の円周方向の距離の3分の1よりも小さいオフセット量により、円周方向または角度的に調整(offset)される。このようにして、1つの層の前記複数の窓15は、1つ以上の隣接する層の複数の窓15と実質的に調整されるが、同時に、隣接する層の窓15は、実質的に整列され、それにより、前記管腔内プロテーゼ1は、前記プロテーゼ内腔2を解剖学的構造3の病理部分13と流体連通させるのに好適となる。一実施形態によれば、隣接する層の窓15の間の整列は、より大きいサイズの要素、例えば血栓を、それらが、対流または拡散により、プロテーゼ内腔から病理部分13、例えば動脈瘤嚢の方向へ移動することを防止するため、濾過するように選択される。
【0097】
一実施形態によれば、隣接する層16の間の前記空間は、隣接する層16の間の前記空間の半径方向内側の層6、7の複数の窓15を通して、前記プロテーゼ内腔2と流体連通している。このようにして、流体、例えば血液の流れは、プロテーゼ内腔2から病理部分13、例えば動脈瘤嚢へ、および反対に、病理部分13、例えば動脈瘤嚢から、プロテーゼ内腔2へ向かうことができる。
【0098】
前記作用部分12において、互いに分離された2つ以上の層5、6、7を設けることにより、生来の血管の中膜構造の挙動を模倣または再現することが可能である。
【0099】
このような管腔内プロテーゼ1の提供により、動脈瘤嚢内の血流の乱流を非常に減少させ、動脈瘤嚢の壁への圧力を減少できる、フロー転換(flow diversion)を形成することが可能である。これによって、動脈瘤嚢の壁の破裂を防ぎ、動脈瘤の再吸収が促進される。前記複数の窓15を設けることにより、動脈瘤嚢内への血流を実質的に層状にすることができ、同時に、動脈瘤嚢の開通性と、そこから遠位に分岐する側副血管23(存在する場合)の維持とを可能にする。このようにして、弱体化した方法ではあるが(albeit in a weakened manner)、動脈瘤嚢に面している生体組織に依然として栄養を与えることが可能である。
【0100】
一実施形態によれば、前記少なくとも1つの固定部分10は、前記2つ以上の層5、6、7の間に、少なくとも1つの層接続デバイス24を含む。一実施形態によれば、前記2つ以上の層5、6、7の間の前記層接続デバイス24は剛性接続を形成し、よって、前記固定部分10において、隣接する層の間の相互移動を行うことには適していない。一実施形態によれば、前記層接続デバイス24および前記端部接続デバイス25は、同じ接続要素24、25、例えば金属要素、例えば圧力または圧着接続のためのスリーブ(sleeve)である。一実施形態によれば、前記層接続デバイス24および前記端部接続デバイス25の少なくとも1つは、放射線不透過性材料で作られる。それによって、管腔内プロテーゼ1を、生体内画像取得機器、例えば放射線機器によって、解剖学的構造3に留置後に検出できる。
【0101】
一実施形態によれば、前記管腔内プロテーゼの前記少なくとも1つの固定部分10は、少なくとも2つの、一実施形態によれば少なくとも3つの、円周方向に等間隔に配置され、かつ長手方向X-Xに沿って実質的に同じ高さに配置された、接続要素24、25を含む。
【0102】
好ましい実施形態によれば、前記管腔内プロテーゼは、前記少なくとも1つの作用部分12に対して長手方向に対向する少なくとも2つの固定部分10を含む。一実施形態によれば、前記少なくとも2つの対向する固定部分10は、前記管腔内プロテーゼ1の対向する端部26、27に位置する。前記対向する端部26、27は、近位端26と遠位端27を含む。好ましい実施形態によれば、前記少なくとも1つの固定部分10は、前記作用部分12に対してより小さな長手方向の伸長部を有する。
【0103】
好ましい実施形態によれば、前記少なくとも1つの固定部分10は、前記少なくとも1つの作用部分12に対してより大きい口径を有する。好ましい実施形態によれば、前記少なくとも1つの固定部分10の全ての層5、6、7は、前記少なくとも1つの作用部分12に対して、より大きい口径を有する。
【0104】
前記固定部分10を設けることにより、管腔内プロテーゼ1を留置される解剖学的構造3の位置に維持する径方向の推力が、解剖学的部分11の壁に作用する。一実施形態によれば、前記少なくとも1つの固定部分10は、解剖学的部分11の壁に半径方向の予荷重(preload)を加えるのに適したサイズおよび材料のものである。
【0105】
好ましい実施形態によれば、前記管腔内プロテーゼ1は、実質的に犬の骨のような形状を有し、前記2つの対向する端部26、27の間に長手方向に挿入される管腔内プロテーゼ1の部分よりも大きい、対向する端部26、27を含む。
【0106】
一実施形態によれば、前記作用部分12は、実質的に円錐台形状を有する。このようにして、前記管腔内プロテーゼ1は、遠位方向に縮小された口径を有する血管、例えば動脈の、壁の形状を模倣するのに適している。一実施形態によれば、前記遠位端27は、前記近位端26よりも小さい口径を有する。
【0107】
一実施形態によれば、前記固定部分10は、管腔内プロテーゼ1の端部に向かって増加するテーパーを有する、実質的に円錐台形状を有する。
【0108】
一実施形態によれば、前記少なくとも1つの糸状要素8、38、48は糸である。
【0109】
一実施形態によれば、前記少なくとも1つの糸状要素8、38、48は実質的に、その厚さよりも著しく大きい横断面寸法を有するテープまたはストリップの形態である。
【0110】
一実施形態によれば、前記管腔内プロテーゼ1はグラフトでないステント(stent-no-graft)である。言い換えれば、それは、織物繊維(textile fibers)のない管腔内プロテーゼである。
【0111】
実施形態の変形例によれば、前記2つ以上の層5、6、7の少なくとも1つの層は、前記管腔内プロテーゼ1の少なくとも一部を形成するためのグラフト織物を含む。一実施形態によれば、前記グラフト織物は、層の鎧装部9に関連付けられる。一実施形態によれば、前記グラフト織物は、少なくとも1つの接続要素24、25によって前記固定部分10に関連付けられる。
【0112】
一実施形態によれば、前記管腔内プロテーゼ1は、プロテーゼ内腔2の分岐部を含んでおり、それによって、例えば下行大動脈の遠位にある腸骨動脈の分岐部などの、分岐部が設けられた病理部分13を含む解剖学的構造3における留置に適している。
【0113】
好ましい実施形態によれば、前記管腔内プロテーゼは自己拡張型である。前記管腔内プロテーゼ1は、放射状に収縮した形態で取り付けられたリリースデバイス31、例えばカテーテルにより、前記解剖学的構造3内の所定の留置部位に送達され、解放されるのに適している。例えば、前記リリースデバイス31は、前記管腔内プロテーゼ1の少なくとも1つの層の鎧装部9と、前記管腔内プロテーゼ1を収容するのに適した、ガイド要素41と装填カニューレ46とを含む。
【0114】
前述の実施形態のいずれか1つによる多層の管腔内プロテーゼの製造方法を以下に説明する。
【0115】
多層の管腔内プロテーゼ1を製造する方法は、少なくとも以下のステップを含む。
【0116】
A.少なくとも1つのスピンドル14を含む作業台を配置する。
【0117】
B.前記少なくとも1つのスピンドル14の周りに、前記少なくとも1つの第1の糸状要素8を繰り返し巻き付けて、前記第1層5の鎧装部9を形成する。
【0118】
C.前記第1層5の鎧装部9を、前記少なくとも1つのスピンドル14から分離する。このステップは、例えば、鎧装部9を弾性変形させることにより実行することができる。
【0119】
D.前記少なくとも1つのスピンドル14の周りに、前記少なくとも1つの第2の糸状要素38を繰り返し巻き付けて、前記第2層6の鎧装部9を形成する。一実施形態によれば、前記第2層6の鎧装部9を織り交ぜるために使用されるスピンドル14は、前記第1層5の鎧装部9を形成するために使用されるスピンドルよりも小さいキャリパー(caliper)を有する。しかし、例えば、オーバースピンドル(over-spindle)を除去することで、口径適合機能を備えた同じスピンドル14にすることもできる。
【0120】
E.前記第2層6の鎧装部9を前記少なくとも1つのスピンドル14から分離する。このステップは、鎧装部9を弾性変形させることで実行できる。
【0121】
F.前記第1層5の鎧装部9を、前記第2層6の鎧装部に取り付ける。
【0122】
可能な動作モードによれば、ステップCの前に、熱処理を施すことによって、前記第1層5の鎧装部9に、スピンドル上での形状の記憶を獲得させることが可能である。
【0123】
可能な動作モードによれば、ステップEの前に、前記第2層6の鎧装部9がスピンドル上での形状の記憶を確実に獲得するように熱処理を施すことが可能である。
【0124】
可能な動作モードによれば、前記方法は、第3層7についてステップBからFを繰り返すステップを提供する。
【0125】
可能な動作モードによれば、前記ステップFは、以下のサブステップの少なくとも1つ、または全てを含む。
【0126】
G.リリースデバイス31または展開デバイスにより、支持デバイス32における前記第1層5の鎧装部9は、少なくとも部分的に、しかし例えば全体的に、第1層5の鎧装部9を接着させるのに適した、支持壁を有している。一実施形態によれば、前記支持デバイス32は、可逆的閉鎖手段45を含む開放可能な支持デバイスである。例えば、前記支持デバイス32は、層5、6、7の鎧装部の形状を複製するよう有利に形成されたデバイスキャビティ(device cavity)を画定するスリーブであり、それによって、支持デバイスキャビティから、2つ以上の層5、6、7の鎧装部の抽出を容易にできる。一実施形態によれば、前記支持デバイス32は実質的にカップ形状であり、リリースデバイス31のガイド要素41の一部を受け入れるのに適した、センタリング穴(centering hole)40を備えた底壁36を有する。それによって、支持デバイス32内のリリースデバイス31の半径方向の位置決めを確実に実現する。一実施形態によれば、前記ガイド要素41は、支持デバイス32内のリリースデバイス31の長手方向の確実性を得るために、センタリング穴40よりも大きな口径を有する停止部37を含む。それによって、支持デバイス32内のリリースデバイス31の半径方向の位置決めを確実に実現する。さらなるステップによれば、前記支持デバイス32における前記第1層5の鎧装部9を解放する。
【0127】
H.前記第1層5の鎧装部9が収容されている前記支持デバイス32に、前記第2層6の鎧装部9をリリースデバイス31により搬送する。
【0128】
さらなるステップによれば、前記第1層5の前記鎧装部が既に存在する前記支持デバイス32において、前記第2層6の鎧装部9を解放する。
【0129】
I.例えば調整デバイス33、例えば光学手段により、前記第1層5および前記第2層6の鎧装部9の糸状要素8、38の相対位置を、前記支持デバイス32へのそれらの解放前に調整する。例えば、前記調整デバイス33は、前記リリースデバイス31に設けられたインジケーター35と協働する、前記支持デバイス32に設けられた目盛り付き要素34を含む。例えば、前記ステップIにより、2つの隣接する層5、6、7の鎧装部9を、所定の角度量だけ角度的または円周方向に調整することができる。
【0130】
J.一実施形態であって必ずしも必須の圧着ではないが、例えば、少なくとも1つの作用部分12と少なくとも1つの固定部分10との間の接続部において、前記第1層5の鎧装部9の糸状要素8の少なくとも1つのストレッチと、前記第2層6の鎧装部9の少なくとも1つの糸状要素8とを一緒に接続する。これによって、少なくとも1つの固定部分10を形成する。一実施形態であって必ずしも必要ではないが、このステップは、圧着工具39を使用することにより実行される。
【0131】
可能な動作モードによれば、前記ステップJは、前記支持デバイス32を開き、少なくとも2つの相互に関連する層を抽出することにより実行される。一実施形態によれば、少なくとも2つの相互に関連付けられた層の抽出は、リリースデバイス31に関連付けられた拡張可能な要素38、例えばステント用のバルーンに、少なくとも2つの層を取り付け、一時的に固定した後に実行される。
【0132】
一実施形態によれば、前記ステップBは、前記スピンドル14に対して移動可能であって、前記少なくとも1つの糸状要素8、38、48に関連付けられた、少なくとも1つの戻し巻き取りデバイス(return and winding device)42を使用することによって実行される。例えば、前記戻し巻き取りデバイス42は、前記スピンドル14に対し、少なくとも長手方向および円周方向への移動に適したシャトルである。一実施形態によれば、前記戻し巻き取りデバイス42は、互いに独立して移動可能であり、かつ、前記スピンドル14に対して、少なくとも長手方向および円周方向に移動可能である、少なくとも2つの別個のシャトルを含む。一実施形態によれば、前記スピンドル14は、例えば、その縦軸の周りを回転するのに適した可動要素である。一実施形態によれば、前記戻し巻き取りデバイス42は、前記スピンドル14に対して移動可能な支持構造46と一体的に関連付けられている。
【0133】
一実施形態によれば、前記ステップBは、単一の糸状要素8、38、48の2つの対向する端部28、29を巻き付けることにより実行され、これにより、交互配置された鎧装部9を形成する。
【0134】
一実施形態によれば、前記ステップBは、単一の糸状要素8、38、48の2つの対向する端部28、29を、円周方向にて反対方向に巻き付けることにより実行され、これにより、横糸-縦糸タイプの織物を形成するインターリーブ型の鎧装部9を形成する。
【0135】
一実施形態によれば、前記スピンドル14は、例えば犬の骨の形状であって、そこから戻りフィンガ44が片持ち状に突出しており、少なくともステップBおよび/またはステップDにおいて、少なくとも1つの糸状要素8、38、48の戻り要素(return elements)としての作用に適しているスピンドルステム43を含む。
【0136】
そのような方法により、予測可能かつ正確な方法で、前記2つ以上の層を互いに適合させることができ、かつ、2つ以上の同軸層を有する管腔内プロテーゼ1を実現することができる。
【0137】
当業者は、掲げる請求項の範囲から逸脱することなく、付随的および特定のニーズを満たすために、上述の実施形態と機能的に同等である他の要素と、いくつかの調整および交換を行うことができる。
【0138】
一実施形態によれば、管腔内プロテーゼ1は、少なくとも部分的にプロテーゼ内腔2を画定する。この管腔内プロテーゼは、少なくとも1つの空洞4を少なくとも部分的に規定し、かつ少なくとも1つの治療部分13を含む解剖学的構造3における留置に適している。
【0139】
一実施形態によれば、前記管腔内プロテーゼ1は、同軸に配置され、変形していない状態で、長手方向X-Xに沿った広い伸長部を有し、かつ前記長手方向X-Xと直交する半径方向R-Rと、前記長手方向X-Xおよび半径方向R-R方向と直交する、環状または実質的に円周方向C-Cとを規定する、少なくとも3つの層5、6、7を含む。
【0140】
一実施形態によれば、各層5または6または7は、変形していない状態で、隣接する層5、6、7に実質的に完全に重ねられる。
【0141】
一実施形態によれば、前記3つの層5、6、7の各層5または6または7は、前記少なくとも1つの層5または6または7に限定的に交絡された(limitedly interlaced)鎧装部9を形成する、少なくとも1つの糸状要素8を含む。
【0142】
一実施形態によれば、前記管腔内プロテーゼ1は、解剖学的構造3の少なくとも治療部分13への対面に適した、少なくとも1つの作用部分12を含む。
【0143】
一実施形態によれば、前記管腔内プロテーゼ1は、解剖学的構造の空洞4の壁の解剖学的部分11に固定するのに適した、少なくとも1つの固定部分10を含む。
【0144】
一実施形態によれば、前記少なくとも3つの層5、6、7は、互いに幾何学的に同一である。
【0145】
一実施形態によれば、前記少なくとも3つの層5、6、7は、管腔内プロテーゼ1の少なくとも前記作用部分12において互いに分離され、したがって、1つの層5または6または7と少なくとも1つの調節層との間の接続要素の設置を避ける。
【0146】
一実施形態によれば、前記少なくとも1つの作用部分12は、その交絡(interlacement)またはインターリーブにより前記鎧装部9を形成し、かつ隣接する層(adjacent layers)との接続を避けて同じ層5または6または7内にのみ留まる、前記少なくとも1つの糸状要素8のみを含む。
【0147】
一実施形態によれば、各層5または6または7の前記作用部分12は、隣接する層5または6または7への半径方向R-Rにおける可能な支持を除いて、管腔内プロテーゼが変形していないとき、隣接する層5または6または7に対して自由に移動できるように、隣接する層5または6または7から構造的および幾何学的に分離されている。
【0148】
一実施形態によれば、各層5、6、7の鎧装部9の前記少なくとも1つの糸状要素8、38、48は、プロテーゼ内腔2を解剖学的構造部分3の治療部分13と流体連通させるのに適した、複数の窓15を規定する。
【0149】
一実施形態によれば、各層5、6、7の前記少なくとも1つの作用部分12は、変形していない状態のとき、実質的に互いに同一かつ全ての層5、6、7において互いに同一の、前記複数の窓15を有する。
【0150】
一実施形態によれば、各層5、6、7の前記少なくとも1つの作用部分12は、変形していない状態のとき、少なくとも1つの固定部分10の前記長手方向X-Xを横切った伸長部、またはD4よりも小さい、半径方向R-Rまたは前記長手方向X-Xを横切った伸長部、または直径D1、D2、D3を有する。
【0151】
一実施形態によれば、前記少なくとも3つの層5、6、7は、変形していない状態のとき、前記長手方向X-Xの周りで、前記円周方向C-Cに沿って、相互に調整される。
【0152】
一実施形態によれば、各層5、6、7の前記少なくとも1つの固定部分10は、隣接する層5、6、7の隣接する固定部分10に接続される。
【0153】
上述の実施形態により、動脈瘤領域内で、血流の規則化が誘発され、留置直後に動脈瘤壁へのストレスの低減、および中長期的には動脈瘤壁自体の改造(remodel)がもたらされる。
【0154】
一実施形態によれば、各層5、6、7の前記少なくとも1つの作用部分12は、前記複数の窓15を有する。前記複数の窓15は、前記管腔内プロテーゼが変形していない状態のとき、前記層5、6、7の各層において、形状およびサイズが同一である。
【0155】
一実施形態によれば、前記少なくとも3つの層5、6、7は、変形していない状態のとき、前記半径方向R-Rに沿って、横方向寸法もD1=D2=D3で同一である。その結果、一方が他方に嵌め込まれる場合、実質的に互いに静止し、もし支持するものがない場合、実質的に半径方向R-Rの動きが回避される結果となる。したがって、互いに対して少なくとも前記長手方向および円周方向X-X、C-Cに沿って、実質的に自由に移動する。
【0156】
一実施形態によれば、前記少なくとも3つの層5、6、7のうちの少なくとも1つは、変形していない状態にあるとき、非円形形状47であるその長手方向X-Xを横切る断面を有する。
【0157】
一実施形態によれば、前記少なくとも3つの層5、6、7のうちの少なくとも1つは、変形していない状態で、その長手方向X-Xを横切る断面が、楕円形またはレンチキュラー形状(lenticular shape)、または三葉(trilobed)49、または四葉(quadrilobed)である。それによって、その円周伸長部C-Cの部分を、少なくとも1つの隣接する層5、6、7から、分離および引き離した状態を維持できる。
【0158】
一実施形態によれば、変形していない状態のとき、非円形であるその長手方向X-Xを横切る断面を有する、前記少なくとも3つの層5、6、7の前記少なくとも1つの層は、その角度方向または角度位相を層の長手方向の延長X-Xに沿って変更し、それにより、長手方向の延長X-X全体に沿って、または、少なくとも作用部分12における長手方向の延長X-Xに沿って、各層の間に存在するクリアランスを正確に規定する横断面を有する。
【0159】
一実施形態によれば、前記少なくとも3つの層5、6、7の少なくとも1つは、変形していない状態のとき、前記層5、6、7の長手方向伸長部X-Xに沿って可変寸法である、長手方向X-Xを横断する断面を有する。
【0160】
一実施形態によれば、前記少なくとも3つの層5、6、7は、変形していない状態のとき、前記円周方向C-Cに沿って角度的に整列し、プロテーゼ内腔2を解剖学的構造3の治療部分13と流体連通にするのに適した複数の窓15を整列させる。それによって、治療される血管に留置された管腔内プロテーゼの変形状態下で、窓が各層の間で調整され、管腔内プロテーゼの所望の多孔性を確保する。
【0161】
一実施形態によれば、前記糸状要素8は、その長手方向の伸長部50を横断する円形断面を有する。
【0162】
一実施形態によれば、前記糸状要素8は、その長手方向の伸長部51を横切る楕円形断面、または楕円の対角線が実質的に管腔内プロテーゼの円周方向C-Cに向けられた楕円形セクション51、または正方形のセクション52、または長方形セクション53、または、長方形の長辺が、管腔内プロテーゼの実質的に円周方向C-Cに向けられた長方形セクション53、または、例えば六角形54の多項式セクション(polynomial section)を有する。
【0163】
一実施形態によれば、前記糸状要素8は、各層が異なる材料でできている多層体を有する。
【0164】
一実施形態によれば、前記糸状要素8は多層体を有し、最内層またはコアは、例えばニチノール(登録商標)などの、例えば超弾性材料で作られるなど、金属材料55で作られ、最外層56は、例えば生体吸収性または生体侵食性材料で作られた、異なる材料のものである。
【0165】
一実施形態によれば、前記糸状要素8は、その少なくとも一部のニチノール(登録商標)を含む。
【0166】
一実施形態によれば、前記糸状要素8は、その少なくとも一部のクロム-コバルト合金を含む。
【0167】
一実施形態によれば、前記糸状要素8は、その少なくとも一部のMP35Nを含む。
【0168】
一実施形態によれば、前記糸状要素8は、その少なくとも一部のエルジロイ(登録商標)を含む。
【0169】
一実施形態によれば、前記糸状要素8は、その少なくとも一部のポリマー材料を含む。
【0170】
一実施形態によれば、前記糸状要素8は、その少なくとも一部の生体侵食性ポリマー材料を含む。
【0171】
一実施形態によれば、前記糸状要素8は、その少なくとも一部として、例えばポリマーマトリックスに1つ以上の薬剤が分散されるといった、薬剤の充填された(loaded)生体侵食性ポリマー材料を含む。
【0172】
一実施形態によれば、糸状要素8の交互配置された前記鎧装部9は、糸により得られる横糸と縦糸の交互配置パターンであって、各糸8が、前記糸状要素8に沿って、前記糸状要素8が交差する糸の上それから下を通過することによるシンプルな交互配置を有する。
【0173】
一実施形態によれば、糸状要素8と交互配置された前記鎧装部9は、単一の糸で得られる横糸と縦糸の交互配置パターンであって、各糸8が、前記糸状要素8に沿って、前記糸状要素8が交差する糸の上それから下を通過することによるシンプルな交互配置を有する。
【0174】
一実施形態によれば、糸状要素8と交互配置された前記鎧装部9は、糸で得られる横糸と縦糸の交互配置パターンであって、各糸8が、前記糸8に沿って交差する糸の上を2回それから下を2回通過することによる交互配置を有する。
【0175】
一実施形態によれば、糸状要素8と交互配置された前記鎧装部9は、第1の糸よりも大きい断面を有する第2の糸57と交互配置された第1の糸8で得られる、横糸と縦糸の交互配置パターンを有する。
【0176】
一実施形態によれば、糸状要素8の交互配置された前記鎧装部9は、第2の糸57と交互配置された第1の糸8で得られる横糸と縦糸の交互配置パターンを有し、前記第2の糸58は、その少なくとも一部に生体侵食性材料を含む。
【0177】
一実施形態によれば、糸状要素8と交互配置された前記鎧装部9は、前記管腔内プロテーゼが変形していない状態にあるとき、糸の引っ張り(thread stretches)の一定の交互配置角度(interleaving angle)で交互配置された第1の糸8によって得られる、横糸と縦糸の交互配置パターンを有する。
【0178】
一実施形態によれば、糸状要素8と交互配置された前記鎧装部9は、前記管腔内プロテーゼが変形していない状態にあるとき、周方向C-Cに対して45°の、糸の引っ張りの一定の交互配置角度で交互配置された少なくとも1本の糸8によって得られる、横糸と縦糸の交互配置パターンを有する。
【0179】
一実施形態によれば、糸状要素8と交互配置された前記鎧装部9は、前記管腔内プロテーゼが変形していない状態にあるとき、周方向C-Cに対して45°よりも小さい、糸の引っ張りの一定の交互配置角度で交互配置された少なくとも1本の糸8によって得られる、横糸と縦糸の交互配置パターンを有する。
【0180】
一実施形態によれば、糸状要素8と交互配置された前記鎧装部9は、前記管腔内プロテーゼが変形していない状態にあるとき、周方向C-Cに対して45°よりも大きい、糸の引っ張りの一定の交互配置角度で交互配置された少なくとも1本の糸8によって得られる、横糸と縦糸の交互配置パターンを有する。
【0181】
一実施形態によれば、糸状要素8と交互配置された前記鎧装部9は、管腔内プロテーゼが変形していない状態にあるとき、長手方向X-Xに平行な方向の所定の幅が3mmの複数の窓15を画定する、少なくとも1本の交互配置された糸8によって得られる、横糸と縦糸の交互配置パターンを有する。
【0182】
一実施形態によれば、少なくとも3つの層5、6、7の前記管腔内プロテーゼは、それぞれ、糸状要素8の交互配置された前記鎧装部9を含み、少なくとも1本の交互配置された糸8によって得られる横糸と縦糸の交互配置パターンを有しており、多数の窓15を形成し、3つの層が重ねられて変形されていない状態のとき、長手方向X-Xに平行な方向に1mmの管腔内プロテーゼの全自由幅(overall free width)を有する重ねられた複数の窓15を形成する。
【0183】
一実施形態によれば、層5、6、7の管腔内プロテーゼは、それぞれ、糸状要素8の交互配置された前記鎧装部9を含み、少なくとも1本の交互配置された糸8によって得られる横糸と縦糸の交互配置パターンを有しており、多数の窓15を形成し、前記層が重ねられて変形されていない状態のとき、所定の長手方向X-Xに平行な方向に管腔内プロテーゼの全自由幅(overall free width)を有する重ねられた複数の窓15を形成する。ここで、単一層5、6、7において、単一層の窓15の数は、次の関係によって与えられる。
Ncl=πΦ/Nl×Dcおよび
Sl=360/Ncl×Nl
ここで、
Ncl:単一層5、6、7の窓15の数
Φ:管腔内プロテーゼの作用部分12の直径
Nl:管腔内プロテーゼを形成する層5、6、7の数
Dc:層の重ね合わせと角度調整(angular offset)により生じる窓の対角線
Sl:管腔内プロテーゼにおける層間の角度調整量(angular offset)
【0184】
一実施形態によれば、糸状要素8の交互配置された前記鎧装部9は、少なくとも1本の交互配置された糸8によって得られる、横糸と縦糸の交互配置パターンを有しており、前記交互配置は、少なくとも幾つかの交互配置において、製織中に、糸8を引っ張ることによって得られる。
【0185】
一実施形態によれば、前記層5、6、7の少なくとも1つの層は、長手方向X-Xに相互に移動可能な第2伸縮層部分60に収容された第1伸縮層部分59を含む。
【0186】
一実施形態によれば、層の形成に用いられる糸は、円形断面によって特徴付けられる。円形以外の断面の様々なタイプは、層またはそれらの一部に、半径方向または軸方向のより大きな剛性、血管の表面または動脈瘤との境界面のより広い範囲、特定の流体力学的効果などのような、特定の機能を付与するよう設定されうる。
【0187】
一実施形態によれば、糸の特徴的要素は、それを形成する材料にある。好ましい解決手段は、ニチノール(登録商標)糸の使用によりもたらされる。以下が代替材料として考えられうる。すなわち、他の高弾性金属合金(CoCr合金、MP35N、エルジロイ(登録商標)など)、ポリマー、生体侵食性ポリマー、または薬剤を充填した生体侵食性ポリマーである。
【0188】
層は、特定の機能的性能を得るために、異なる材料の糸で形成することができる。特に、1つまたは複数の層、または層の一部を作成するために、生体侵食性ポリマー糸を導入することにより、経時的に可変の多孔性を備えたアセンブリを提供することができる。この観点から、糸を作るための特に興味深い形状は、例えば、生体侵食性ポリマーでコーティングされた金属コアを提供するものである。
【0189】
一実施形態によれば、ポリマーマトリックス中に分散された薬剤の採用により、多様化かつカスタマイズされた治療解決手段を実現することができる。
【0190】
一実施形態によれば、好ましい実施形態における糸の交互配置は、単一の糸で得られ、管腔内プロテーゼの長手方向軸に対して45°で交差する、シンプルな横糸と縦糸の交互配置パターンによって特徴付けられる。
【0191】
糸の交互配置とその機能は、広い意味で、デバイスの多孔性と適合性(conformability)を定義するための基本的な要素である。可能性のある確認される変動要因は、
製織スキーム、および/または、
交互配置された糸の直径および形状、および/または、
織り糸の材料、および/または、
交互配置された糸の交差角度、および/または、
交互配置された糸の張力、および/または、
前述の要因の2つ以上の混合である。
【0192】
一実施形態によれば、層の形成に採用される交互配置パターンは、糸の直径および材料が同じである管腔内プロテーゼに、特に、適合性(conformability)および血流にさらされたときに糸が微小運動を行う可能性に関する、特定の機械的特徴を与えることができる。これら2つの機能は、常に交互配置パターンを形成しつつ、等方性または異方性とする方法(isotropic or anisotropic way)により得ることができる。
【0193】
一実施形態によれば、異なる直径および/または形状の糸の使用は、特定の適合性(conformability)および特定の多孔性の層をもたらし得る。これらの実施形態は、全体の層を形成する単一の糸を有するという選択において異なる。
【0194】
一実施形態によれば、ポリマーメッシュの溶解により増加することを意図して初期の低い多孔度を得るために、変動的に交差する金属糸が生分解性ポリマーの糸と交互配置される解決手段が採用される。
【0195】
一実施形態によれば、多孔性および適合性を等方性および/または異方性に変化させるための、別の設計手段(design lever)は、糸の交差角度によって示される。非常に大きいまたは非常に小さい管腔内プロテーゼの長手方向の軸に対する巻き角は、低い気孔率を与える(他の要素は等しいとき)。小さい巻き角では、大きな巻き角とは反対に、半径方向の抵抗が低くなる。
【0196】
一実施形態によれば、製織時に糸に付与される張力は、低い適合性(conformability)および糸の移動の可能性により特徴付けられる、より張力のかかった糸を有する層を得ることを可能にする。
【0197】
一実施形態によれば、上記の交互配置の変形の組み合わせにより、優れた設計柔軟性が与えられる。特に興味深い例は、半径方向においてより剛性の高い端部とより適合性の高い作用部分のために、変動する角度の交互配置によるか、または、動脈瘤部において多孔性の低い中央領域の形成(おそらくは生分解性糸を使用)による、解決手段によって与えられる。
【0198】
一実施形態によれば、管腔内プロテーゼの好ましい設計は、円周方向の角度において互いに等しく調整された3つの等しい層の使用によって与えられる。
【0199】
一実施形態によれば、デバイスの基本的なパラメータは、複数の等しい層を重ね合わせた結果としての、管腔内プロテーゼまたはステントの単一の窓またはセルの対角線Dcの測定値である。この対角線Dcは、デバイスの多孔性を測定するため重要である。それは基本的に管腔内プロテーゼの好ましい多孔性を表している。
【0200】
一実施形態によれば、単一の窓または大きなセルからなる多くの層、または、個々の小さなセルからなるいくつかの層を重ね合わせることによって、対角線Dcの同じ値を得ることができる。
【0201】
これらの幾何学的形状を制御する基本的な関係は次のとおりである。
単一の層のセルの数:
Ncl=πΦ/(Nl×Dc)
完全なデバイスの層間の角度調整:
Sl=360/(Ncl×Nl)
ここで:
Ncl:単一の層のセルの数
Φ:完全なステントの作用部分の直径
Nl:完全なステントを形成する層の数
Dc:層の重ね合わせと調整により生じるセルの対角線
Sl:完全なデバイスにおける層間の角度調整量(angular offset)
【0202】
一実施形態によれば、Dcは1mmであり、Nlは3であり、Φは20mmであり、Ncl=20およびSl=6°である。
【0203】
Dcの同じ値は、4つの層で得ることができるが、Ncl=16およびSl=5.6°を有する。
【0204】
より厚いメッシュを有する少ない層よりも、緩いメッシュの多数の層で、同じ最終の多孔度値Dcを達成することにより、ステントに、より大きな適合性および個々の糸の動きの可能性を付与できるが、曲がりくねった領域において不均一性となるリスクが高まる。
【0205】
層上で形成可能な設計の別の変形は、軸に沿って、より多くのまたはより少ない層を有するゾーンを作成する可能性によって表される。
【0206】
一実施形態によれば、メッシュの厚さ、糸の直径および形状、糸の材料、糸の巻き角が異なる層を使用することにより、製品の十分な柔軟性を実現できる。これらのバリエーションにより、機械的挙動と適合性の観点において、性能の多くの微妙な差異を実現することができる。
【0207】
この観点から、ステントに経時的に可変の多孔性を与えるために、生体侵食性ポリマー層を導入する可能性は、特に興味深いと思われる。
【0208】
一実施形態によれば、個々の層は、カールさせた継手(crimped bushings)によって、または、基本設計のように、カールさせたバンド、溶接、ひも、専用の固定システムによって互いに接続することができる。
【0209】
一実施形態によれば、接続点の数は変えることができる。「リンク」層が多いほど、硬く、弾力的に硬くなり、適合性の低いステントとなり、糸の可動性は低くなるが、多孔性についてはより正確かつ均質なものとなる。接続の効果は、達成する機能に応じて、適切に与えられる。
【0210】
層間の相互接続パターンに基づく、興味深い実装オプションは、以下の通りであり得る。もしも、さまざまな層が、好ましい設計のように、互いに対して大型化することなく、端部のみにおいて互いに接続されている場合、作用領域の層は、ある程度の相対的な円周方向の自由度を有する。この自由度により、特に曲がりくねった状態や巻線状の留置の状態において、結果として多孔性の局所的な変化が生じる。特に、3つの調整層を有する基本設計では、少なくとも初期の多孔性を最小限に抑えるために、曲線とねじれによって生じる変化は、変形していない状態(より広いメッシュ)に対して不可避的に高い局所的な多孔性をもたらす。この観察を覆す、つまり、端部でのみ層間の接続を維持するが、完全に位相調整された層では、大きなメッシュで最初に変形を受けていない状態のものがある。曲がりくねった状態(tortuous or winding conditions)では、結果として生じる層間の相対的な動きにより、必然的に、結果としてより小さなメッシュ、すなわちより低い多孔性となる。そのようなデバイスは、外弧側(extrados)の動脈瘤を伴う、湾曲した留置用のデバイスとして有用でありうる。その理由として、動脈瘤自体に面する領域の多孔性が元の多孔性よりも小さく、よって、所望の流れの層流効果を高めることができるからである。
【0211】
好ましい設計では、3つの層は互いに「穏やかに接触している」、すなわち、半径方向の力の大きな授受がなされることなく互いに接触している。層間の直径の違いを利用することにより、特定の機能をステント全体に付与することができる。大幅な半径方向の力の授受に関わる層は、非接触層とは反対に、より硬く、適合性の低いステントを生成し、血流の作用下にある個々の糸の微動の可能性が小さい。考えられうる幾つかの変形をここに示す。
【0212】
層は、直径の違いによってのみ、またはセパレータによって互いに分離することができる。
【0213】
セパレータを使用することなく、安定した制御された距離で、分離した層を有するための、特に興味深い解決手段は、多角形である1つまたは複数の層を有することからなる。たとえば、3層バージョンでは、中央の層が漠然とした三角形の形状をしている。この三角形化(triangularization)の大きさを利用することにより、外側と内側の層の間で異なる距離を得ることができる。他の多角形でも上記目的を達成することができる。
【0214】
層の間で接触する母線(generatrixes)は、直線状、すなわちステントの軸に平行であるか、または、特定の形状、例えばらせんをたどって、層内の血流に特定の軌道(particular trajectories)を与えることができる。
【0215】
層の軸方向の形状は、特定の機能性を得るため、例えば、留置後の端部での「犬の骨」効果を回避するための革新的な湾曲(progressive curvature)、または、特殊な流体効果を形成するための中間の湾曲層を得るために、変動が生じてもよい。
【0216】
好ましい設計は、層で構成されているが、全体として一体化した(monolithic)ステントを提供する。長めの病変部の最適な網羅を達成するため、留置用の2つの伸縮式ステントを使用した解決手段を想定することができる。
【0217】
上記の解決手段により、管腔内プロテーゼは複数の臨床応用に適用できる。
a)大動脈伸展性における動脈瘤の治療
b)末梢血管の動脈瘤の治療
c)大動脈解離の治療
本明細書の開示内容は、以下の態様を含み得る。
(態様1)
少なくとも部分的にプロテーゼ内腔(2)を画定し、少なくとも1つの病理部分(13)を含み且つ少なくとも1つの空洞(4)を少なくとも部分的に規定する解剖学的構造(3)内に留置するのに適した管腔内プロテーゼ(1)であって、
前記管腔内プロテーゼ(1)は2つ以上の層(5、6、7)を含み、前記2つ以上の層(5、6、7)のうちの少なくとも2つの層(5または6または7)は、前記少なくとも1つの層(5または6または7)に限定的に交絡された(limitedly interlaced)鎧装部(9)を形成している、少なくとも1つの糸状要素(8)を含み、
前記管腔内プロテーゼ(1)は、解剖学的構造(3)の空洞(4)の壁の解剖学的部分(11)への固定に適した少なくとも1つの固定部分(10)と、解剖学的構造(3)の病理部分(13)への対面に適した少なくとも1つの作用部分(12)とを含み、
前記2つ以上の層(5、6、7)は、管腔内プロテーゼ(1)の少なくとも前記作用部分(12)において互いに分離され、よって、1つの層(5または6または7)と少なくとも1つの隣接層との間の接続要素は設けられておらず、
前記2つ以上の層(5、6、7)は、互いに幾何学的に同一であり、各層(5、6、7)の鎧装部(9)の前記少なくとも1つの糸状要素(8、38、48)は、プロテーゼ内腔(2)を解剖学的構造(3)の病理部分(13)と流体連通させるのに適した、複数の窓(15)を規定し、
各層(5、6、7)の前記少なくとも1つの作用部分(12)は、変形していない状態のとき、少なくとも1つの固定部分(10)の前記長手方向(X-X)を横切る伸長部または直径(D4)よりも小さい、半径方向(R-R)または前記長手方向(X-X)を横切る伸長部、または直径(D1、D2、D3)を有する、管腔内プロテーゼ(1)。
(態様2)
前記少なくとも1つの固定部分(10)は、前記2つ以上の層(5,6,7)の間の接続デバイス(24)を少なくとも1つ含む、態様1に記載の管腔内プロテーゼ(1)。
(態様3)
前記少なくとも1つの作用部分(12)に対して長手方向に対向する、少なくとも2つの固定部分(10)を含む、態様1または2に記載の管腔内プロテーゼ(1)。
(態様4)
各層(5、6、7)の鎧装部(9)の前記少なくとも1つの糸状要素(8、38、48)は、プロテーゼ内腔(2)を解剖学的構造(3)の病理学的部分(13)と流体連通させるのに適した複数の窓(15)を規定する、態様1~3のいずれか一つに記載の管腔内プロテーゼ(1)。
(態様5)
前記2つ以上の層(5、6、7)のうちの少なくとも1つの層(5または6または7)は、単一の糸状要素(8、38、48)を含む、態様1~4のいずれか一つに記載の管腔内プロテーゼ(1)。
(態様6)
前記鎧装部(9)が、交絡された鎧装部である、態様1~5のいずれか一つに記載の管腔内プロテーゼ(1)。
(態様7)
前記2つ以上の層は、まさに3つの層(5、6、7)であり、および/または、
前記2つ以上の層は同軸であり、および/または、
前記2つ以上の層は、第1層の所定の公称口径(nominal caliber)(D1)を有する第1層(5)、第1層の前記公称口径(D1)よりも小さい第2層の所定の公称口径(D2)を有する第2層(6)、および第1層の公称口径(D1)および第2層の公称口径(D2)の両方よりも小さい第3層の所定の公称口径(D3)を有する第3層(7)を含み、および/または、
前記管腔内プロテーゼ(1)は、前記3つの層(5、6、7)を形成する3つの鎧装部(9)を含む、態様1~6のいずれか一つに記載の管腔内プロテーゼ(1)。
(態様8)
前記第1の糸状要素の端部(28)と前記第2の糸状要素の端部(29)は、管腔内プロテーゼ(1)の長手方向の軸に対して、交差角度(α)を形成し、および/または、
前記交差角度(α)は0.05mmから0.3mmの間であり、および/または、
前記交差角度(α)は40°から50°の間であり、および/または、
前記交差角度(α)は実質的に45°に等しく、および/または、
1つの層の少なくとも1つの糸状要素(8、38、48)によって形成された鎧装部(9)は、2つの連続する交差部位(30)間の円周距離よりも小さい所定の調整量により、および/または、2つの連続する交差部位(30)間の円周距離の3分の1よりも小さい調整量により、1つまたは複数の隣接する層の鎧装部に対して円周方向に調整される、態様1~7のいずれか一つに記載の管腔内プロテーゼ(1)。
(態様9)
前記少なくとも1つの固定部分(10)は、前記少なくとも1つの作用部分(12)よりも大きい口径を有し、および/または、
管腔内プロテーゼ(1)は、実質的に犬の骨のような形状を有し、2つの対向する端部(26、27)の間に長手方向に挿入される管腔内プロテーゼ(1)の部分より大きい対向する端部(26、27)を含む、態様1~8のいずれか一つに記載の管腔内プロテーゼ(1)。
(態様10)
前記少なくとも1つの糸状要素(8、38、48)は超弾性材料で形成されており、および/または、
前記少なくとも1つの糸状要素(8、38、48)は少なくとも部分的にニチノールで形成されており、および/または、
前記少なくとも1つの糸状要素(8、38、48)は、所定の形状の記憶を維持し、熱変化および/または機械的応力を受けたときに形状を再取得するのに適した材料で形成されており、および/または、
管腔内プロテーゼ(1)はグラフトでないステント(stent-no-graft)であり、および/または、
前記作用部分(12)は実質的に円錐台形状を有し、および/または、
前記管腔内プロテーゼ(1)はプロテーゼ内腔(2)の分岐部を含む、態様1~9のいずれか一つに記載の管腔内プロテーゼ(1)。
【符号の説明】
【0218】
1 管腔内プロテーゼ
2 プロテーゼ内腔
3 解剖学的構造
4 解剖学的構造の空洞
5 第1層
6 第2層
7 第3層
8 糸状要素、または最初の糸状要素
9 鎧装部(Armor)
10 管腔内プロテーゼの固定部分
11 解剖学的構造の解剖学的部分
12 管腔内プロテーゼの作用部分
13 解剖学的構造の病理部分
14 スピンドル
15 窓
16 隣接する層間のスペース
17 動脈瘤
18 大動脈弓
19 下行大動脈
20 胸部大動脈
21 腹部大動脈
22 大動脈峡部
23 側副血管
24 層接続デバイス、または接続要素
25 端部接続デバイス、または接続要素
26 近位管腔内プロテーゼ端
27 遠位管腔内プロテーゼ端
28 第1の糸状要素の端部
29 第2の糸状要素の端部
30 交差部位
31 リリースデバイス
32 支持デバイス
33 調整デバイス
34 調整デバイスの目盛り付き要素
35 調整デバイスのインジケーター
36 支持デバイスの底壁
37 停止部
38 第2糸状要素
39 圧着工具
40 センタリング穴
41 調整デバイスのガイド要素
42 戻し巻き取りデバイス
43 スピンドルステム
44 スピンドルフィンガ
45 可逆的閉鎖手段
46 支持構造
47 単層の長手方向の伸長部での円形断面
48 第3糸状要素
49 単層の長手方向の伸長部での三葉の断面
50 糸の円形断面
51 糸の楕円断面
52 糸の正方形断面
53 糸の長方形断面
54 糸の六角形断面
55 糸の金属コア
56 糸の生体侵食性材料である外層
57 第1の糸よりも大きい第2の糸
58 生体侵食性材料の第2の糸
59 第1伸縮層部分
60 第2伸縮層部分
61 ステントデリバリーシステム
62 第1リリースシース
63 第2リリースシース
Ncl 単一層の窓の数
φ 管腔内プロテーゼの作用部分の直径
N1 管腔内プロテーゼを形成する層の数
Dc 層の重ね合わせと角度調整により生じる窓の対角線
Sl 管腔内プロテーゼにおける層間の角度調整量
D1 第1層の口径または公称直径
D2 第2層の口径または公称直径
D3 第3層の口径または公称直径
D4 固定部分の口径または公称直径
X-X 長手方向
R-R 半径方向
C-C 円周方向
RE 外径方向
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40
図41