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特許7136484アイスのベース材及びその製造方法並びにアイスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】アイスのベース材及びその製造方法並びにアイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23G 9/00 20060101AFI20220906BHJP
   A23K 20/28 20160101ALI20220906BHJP
   A23K 10/30 20160101ALI20220906BHJP
【FI】
A23G9/00 101
A23K20/28
A23K10/30
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020122947
(22)【出願日】2020-07-17
(65)【公開番号】P2022019227
(43)【公開日】2022-01-27
【審査請求日】2020-07-22
(73)【特許権者】
【識別番号】520266672
【氏名又は名称】有限会社たまごの郷
(74)【代理人】
【識別番号】100085291
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥巣 実
(74)【代理人】
【識別番号】100117798
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 慎一
(74)【代理人】
【識別番号】100166899
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥巣 慶太
(74)【代理人】
【識別番号】100221006
【弁理士】
【氏名又は名称】金澤 一磨
(72)【発明者】
【氏名】中里 彰夫
(72)【発明者】
【氏名】竹内 建吾
(72)【発明者】
【氏名】井内 彩加
(72)【発明者】
【氏名】湯谷 綾那
(72)【発明者】
【氏名】飯田 恵理香
【審査官】村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-201914(JP,A)
【文献】特開2007-135405(JP,A)
【文献】特開2020-103098(JP,A)
【文献】特開2020-080717(JP,A)
【文献】特開2020-028238(JP,A)
【文献】特開2010-284086(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23G、A23K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
牛乳、生クリーム、卵黄、糖類を含むアイスのベース材であり、
前記卵黄が、6.00~9.00重量%の範囲配合されており、
前記牛乳が、50.00~60.00重量%の範囲で配合され、
前記生クリームが、4.00~6.00重量%の範囲で配合され、
前記糖類が、15.00~20.00重量%の範囲で配合され、
乳脂肪分が3%以上8%未満である、
前記卵黄、穀物4~65重量%、植物性油かす類20~26重量%、そうこう類1~8重量%の割合で含む配合飼料に対し、ゼオライト、海藻、木酢精製液、ヨモギを含む混合飼料を0.7重量%添加したものを食した鶏が産卵したものであることを特徴とする、
アイスのベース材。
【請求項2】
乳固形分が10%以上15%未満であり、
請求項1記載のアイスのベース材。
【請求項3】
前記卵黄が、7.00~8.00重量%の範囲で配合されている、
請求項1または2記載のアイスのベース材。
【請求項4】
前記卵黄が加糖卵黄である、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のアイスのベース材。
【請求項5】
牛乳、生クリーム、卵黄、糖類を含むアイスのベース材の製造方法であり、
前記卵黄を6.00~9.00重量%の範囲配合し、前記牛乳を50.00~60.00重量%の範囲で配合し、前記生クリームを4.00~6.00重量%の範囲で配合し、前記糖類を15.00~20.00重量%の範囲で配合し、これらを攪拌する工程を備え、
前記卵黄または全卵は、穀物4~65重量%、植物性油かす類20~26重量%、そうこう類1~8重量%の割合で含む配合飼料に対し、ゼオライト、海藻、木酢精製液、ヨモギを含む混合飼料を0.7重量%添加したものを食した鶏が産卵したものであることを特徴とする、アイスのベース材の製造方法。
【請求項6】
前記ベース材を乳固形分が10%以上15%未満、乳脂肪分が3%以上8%未満とする、請求項5記載のアイスのベース材の製造方法。
【請求項7】
前記卵黄を7.00~8.00重量%の範囲で配合する、
請求項5または6記載のアイスのベース材の製造方法。
【請求項8】
前記卵黄が加糖卵黄である、
請求項5乃至7のいずれか1項に記載のアイスのベース材の製造方法。
【請求項9】
前記牛乳、前記生クリーム、前記卵黄、前記糖類を攪拌する工程は、
攪拌温度が3度以上50度以下であり、攪拌時間が2分以上30分以下である、
請求項5乃至8のいずれか1項に記載のアイスのベース材の製造方法。
【請求項10】
前記牛乳、前記生クリーム、前記卵黄、前記糖類が攪拌された混合物をパッキングする工程と、
パッキングされた前記混合物を加熱温度58度以上70度未満、加熱時間20分以上120分以下の範囲で、湯煎するか又はバッチタンクで加熱する工程と、
湯煎又は加熱された後の前記パッキングされた混合物を冷却する工程と、を備える、
請求項5乃至9のいずれか1項に記載のアイスのベース材の製造方法。
【請求項11】
冷却後の前記パッキングされた混合物を冷凍する工程をさらに備える、
請求項10記載のアイスのベース材の製造方法。
【請求項12】
請求項11記載の製造方法により製造された冷凍後のアイスのベース材を解凍する工程と、解凍後のアイスのベース材をアイス製造用のフリーザーに投入する工程とを備える、
アイスの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アイスの素となるアイスのベース材及びその製造方法、並びにアイスの製造方法に関するものであり、特に従来よりも卵黄を多く含むアイスのベース材に関する。
【背景技術】
【0002】
業務用など販売目的でアイスを製造するときには、ある程度の量の確保と、販売ごとに味や食感が変わらないように、味や成分の均一性が求められる。
【0003】
そこで、業務用等のアイスにおいては、アイスの素となるアイスのベース材を利用してアイスを作ることが一般的である。ベース材とは、アイスの基本的な材料を混ぜ合わせて製造されるもので、これをアイスメーカーなどのアイスの製造装置に投入してアイスを製造する。そして、このベースに様々な味や風味を加えることで、様々な味や風味のアイスに仕上げることができる。また、さまざまな旬の果物などを加えたアイスとすることもできる。
【0004】
ところで、このようなアイスのベース材には、卵を使用していないミルクを主材とするベース材と卵を使用したベース材がある。また、卵を主原料として利用したシャーベット、アイスクリームが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平7-59515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願の発明者らは、卵を使用したアイス及びアイスのベース材について、今までにない卵の特徴を押し出したものを提供できないかと研究を重ね、卵黄の配合量を変えることで、卵黄のコクや濃厚なうまみによって風味が変化することがわかり、卵黄を用いることによる独特の風味を向上させたアイスのベース材とそれを用いたアイスを開発した。
【0007】
本発明は、卵の風味や特徴を向上したアイスのベース材及びその製造方法、アイスの製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一の態様にかかるアイスのベース材は、牛乳、生クリーム、卵黄、糖類を含むアイスのベース材であり、前記卵黄が6.00~15.00重量%の範囲で、又は全卵として18.0~45.0重量%の範囲で配合されており、前記牛乳が30.00~60.00重量%の範囲で配合され、前記生クリームが4.00~16.00重量%の範囲で配合され、前記糖類が10.00~20.00重量%の範囲で配合され、前記卵黄又は全卵は、穀物4~65重量%、植物性油かす類20~26重量%、そうこう類1~8重量%の割合で含む配合飼料に対し、ゼオライト、海藻、木酢精製液、ヨモギを含む混合飼料を0.7重量%添加したものを食した鶏が産卵したものである、ことを特徴とする。
【0009】
このようにすれば、従来の卵黄が使用されたベース材は、卵黄が3%程度であったところ、卵黄を6%以上配合することで卵黄のコクや濃厚なうまみによる卵の風味や特徴をより向上させることができる。
【0010】
ここで、卵黄を6.0~15.0重量%の範囲又は全卵を18.0~45.0重量%の範囲とするのは、卵黄6.0重量%未満又は全卵として18.0重量%未満であると、従来と差異のある卵黄のコクやうまみが表現できず、また卵黄15.0重量%又は全卵として45.0重量%を超えると卵の臭みが強くなること、凝固しやすくなり最終製品のアイスも固くなる。
【0011】
また、卵を上記分量として卵の風味や特徴を出したアイスとして成立させるためには、その他の牛乳や生クリーム、糖類を上記の範囲内で配合することが必須である。また、前記牛乳が35.00~55.60重量%、前記生クリームが5.00~15.00重量%、前記糖類が16.2~19.25重量%の範囲で配合されていることがより好ましい。なお、アイスには、アイスクリームの他、アイスミルク、ラクトアイスが含まれる。
【0012】
また、このアイスのベース材は、前記卵黄が6.00~9.00重量%の範囲で配合され、乳固形分が10%以上15%未満であり、乳脂肪分が3%以上8%未満であることが望ましい。このようにすれば、卵黄のコクや濃厚なうまみによる卵の風味や特徴をさらに向上したアイスミルクのベース材とすることができる。
【0013】
また、この場合、前記牛乳が50.00~60.00重量%の範囲で配合され、前記生クリームが4.00~6.00重量%の範囲で配合され、前記糖類が15.00~20.00重量%の範囲で配合されていることが望ましい。上記の範囲内で配合することで、より従来と差異のある卵黄のコクやうまみが表現できる。
【0014】
また、さらに卵黄のコクや濃厚なうまみによる卵の風味や特徴をさらに向上するために、前記卵黄が7.00~8.00重量%の範囲で配合されていることがさらに望ましい。
【0015】
また、このアイスのベース材は、前記卵黄が、12.00~15.00重量%の範囲で配合され、乳固形分が15%以上であり、乳脂肪分が8%以上とする構成とすることもできる。このようにすれば、卵黄のコクや濃厚なうまみによる卵の風味や特徴をさらに向上したアイスクリームのベース材とすることができる。
【0016】
この場合、前記牛乳が30.00~40.00重量%の範囲で配合され、前記生クリームが10.00~16.00重量%の範囲で配合され、前記糖類が14.00~18.00重量%の範囲で配合されていることが望ましい。上記の範囲内で配合することで、さらに卵黄のコクやうまみを向上できる。
【0017】
また、上記において、さらに卵黄のコクや濃厚なうまみによる卵の風味や特徴をさらに向上するためには、前記卵黄が12.00~13.00重量%の範囲で配合されていることが望ましい。
【0018】
また、このアイスのベース材は、前記卵黄が、7.00~13.00重量%の範囲で配合されていて、乳固形分が10%以上であり、乳脂肪分が3%以上である。
【0020】
このようにすれば、鶏の飼料を工夫することで卵の卵黄のコクや濃厚なうまみを高め、ベース材及びこれを用いたアイスの卵の風味や特徴の向上に有効である。また、このアイスのベース材は、前記卵黄が加糖卵黄であることが望ましい。
【0021】
本発明の一の態様にかかるアイスのベース材の製造方法は、牛乳、生クリーム、卵黄、
糖類を含むアイスのベース材の製造方法であり、前記卵黄を6.00~15.00重量%の範囲で、または全卵として18.0~45.0重量%の範囲で配合し、前記牛乳を30.00~60.00重量%の範囲で配合し、前記生クリームを4.00~16.00重量%の範囲で配合し、前記糖類を10.00~20.00重量%の範囲で配合し、これらを攪拌する工程を備え、前記卵黄または全卵は、穀物4~65重量%、植物性油かす類20~26重量%、そうこう類1~8重量%の割合で含む配合飼料に対し、ゼオライト、海藻、木酢精製液、ヨモギを含む混合飼料を0.7重量%添加したものを食した鶏が産卵したものである、ことを特徴とする。
【0022】
また、このアイスのベース材の製造方法は、前記卵黄を6.00~9.00重量%の範囲で配合し、前記ベース材を乳固形分が10%以上15%未満、乳脂肪分を3%以上8%未満とすることが望ましい。
【0023】
この場合、前記牛乳を50.00~60.00重量%の範囲で配合し、前記生クリームを4.00~6.00重量%の範囲で配合し、前記糖類を15.00~20.00重量%の範囲で配合することが望ましい。
【0024】
また、さらに卵黄のコクや濃厚なうまみによる卵の風味や特徴をさらに向上するために、前記卵黄が7.00~8.00重量%の範囲で配合されていることがより望ましい。
【0025】
また、このアイスのベース材の製造方法は、前記卵黄を12.00~15.00重量%の範囲で配合し、前記ベース材を乳固形分が15%以上、乳脂肪分が8%以上とする構成とすることもできる。
【0026】
この場合、前記牛乳を30.00~40.00重量%の範囲で配合し、前記生クリームを10.00~16.00重量%の範囲で配合し、前記糖類を14.00~18.00重量%の範囲で配合することが望ましい。
【0027】
また、上記において、さらに卵黄のコクや濃厚なうまみによる卵の風味や特徴をさらに向上するためには、前記卵黄を12.00~13.00重量%の範囲で配合することが望ましい。
【0028】
また、このアイスのベース材は、前記卵黄が、7.00~13.00重量%の範囲で配合されていて、乳固形分が10%以上であり、乳脂肪分が3%以上である。
【0030】
このようにすれば、鶏の飼料を工夫することで卵の卵黄のコクや濃厚なうまみを高め、ベース材及びこれを用いたアイスの卵の風味や特徴の向上に有効である。また、このアイスのベース材は、前記卵黄が加糖卵黄であることが望ましい。
【0031】
また、このアイスのベース材の製造方法は、前記牛乳、前記生クリーム、前記卵黄、前記糖類を攪拌する工程が、攪拌温度が3度以上50度以下であり、攪拌時間が2分以上30分以下であることが望ましい。このようにすれば、卵黄の凝固を抑え、かつ、卵黄の風味を損うことのないベース材を製造することができる。
【0032】
また、このアイスのベース材の製造方法は、前記牛乳、前記生クリーム、前記卵黄、前記糖類が攪拌された混合物をパッキングする工程と、パッキングされた前記混合物を加熱温度58度以上70度未満、加熱時間20分以上120分以下の範囲で、湯煎するか又はバッチタンクで加熱する工程と、湯煎又は加熱された後の前記パッキングされた混合物を冷却する工程と、を備える。
【0033】
このようにすれば、パッキングされたベース材の殺菌が可能となる。具体的には、58度未満であると十分な殺菌ができず、70度以上であると卵黄が凝固するおそれがあり、加熱温度58度以上70度未満、加熱時間20分以上120分以下とすることで、卵黄の凝固を抑えて十分な殺菌が可能となる。なお、冷却の工程は、例えば10度以下の冷水で20分~60分程度行う。
【0034】
また、このアイスのベース材の製造方法は、冷却後の前記パッキングされた混合物を冷凍する工程をさらに備える。このようにすれば、冷凍によりベース材を固化して、取り回しがよいこと、品質保持をすることができる。
【0035】
本発明の一の態様にかかるアイスの製造方法は、前記した冷凍後のアイスのベース材を解凍する工程と、解凍後のアイスのベース材をアイス製造用のフリーザーに投入する工程とを備える。このようにすれば、前記したアイスのベース材を用いてアイスを製造することで、卵黄のコクや濃厚なうまみによる卵の風味や特徴をさらに向上したアイスとすることができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明は、従来にない卵黄のコクや濃厚なうまみにより卵の風味や特徴を向上したアイスのベース材とできる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の一実施形態にかかるアイスのベース材の製造方法を説明するが、本発明は下記実施形態に限定されるものではない。
【0038】
<実施形態1のベース材>
本発明にかかる実施形態1のアイスのベース材は、牛乳、生クリーム、卵黄、糖類を含むもので、一例として卵黄を7.0~8.0重量%の範囲で配合したものである。なお、卵黄に代えて全卵を使用する場合、21~24重量%の範囲で配合してもよい。また、卵黄のコクによるうまみや特徴を引き出すだめ、牛乳を50~60重量%の範囲、生クリームを4.00~7.00重量%の範囲で配合され、糖類を18~20重量%の範囲で配合している。
【0039】
そして、これらを攪拌機に入れて攪拌し、乳固形分を10%以上15%未満、乳脂肪分を3%以上8%未満としたものである。なお、本実施形態のベース材の一例として、具体的には卵黄、牛乳、その他材料を表1の配合比率とした。
【0040】
【表1】
【0041】
このようにして作られたアイスのベース材は、卵黄のコクや濃厚なうまみ、風味が増し、ベース材の卵黄の風味や特徴を向上させることができる。そして、牛乳、生クリーム、糖類などを上記の範囲で配合しているので、ベース材をアイスにした時の風味や食感も損なわれることなく確保することができる。
【0042】
また、発明者らは、上記の効果を確保可能な範囲について検討を重ねたところ、卵黄の配合比率を6.0重量%以上、牛乳を30.00~60.00重量%の範囲、生クリームを4.00~16.00重量%の範囲、糖類を10.00~20.00重量%の範囲で配合することが重要であることがわかった。なお、卵黄が6%未満であると、従来と差異のある十分な卵黄のコクやうまみを得ることができなかった。
【0043】
<実施形態2のベース材>
次に、上記した実施形態1よりも卵黄の配合を多くした実施形態2のベース材について説明する。
【0044】
本発明にかかる実施形態2のアイスのベース材は、牛乳、生クリーム、卵黄、糖類を含むもので、一例として卵黄を12.0~13.0重量%の範囲で配合したものである。なお、卵黄に代えて全卵を使用する場合、36~39重量%の範囲で配合してもよい。また、卵黄のコクによるうまみや特徴を引き出すため、牛乳を30~40重量%の範囲、生クリームを12~16重量%の範囲で配合され、糖類を15~18重量%の範囲で配合している。そして、これらを攪拌機に入れて攪拌し、乳固形分を15%以上、乳脂肪分を8%以上としたものである。なお、本実施形態のベース材の一例として、具体的には卵黄、牛乳、その他材料を表2の配合比率とした。
【0045】
【表2】
【0046】
このようにして作られた実施形態2のベース材は、実施形態1のベース材よりも卵黄のコクや濃厚なうまみ、風味が増し、ベース材の卵黄の風味や特徴を更に向上させることができる。そして、牛乳、生クリーム、糖類などを上記の範囲で配合しているので、ベース材をアイスにした時の風味や食感も損なわれることなく確保することができる。
【0047】
また、発明者らは、上記の効果を確保可能な範囲について検討を重ねたところ、卵黄の配合比率を15.0重量%未満、牛乳を30.00~60.00重量%の範囲、生クリームを4.00~16.00重量%の範囲、糖類を10.00~20.00重量%の範囲で配合することが重要であることがわかった。なお、卵黄15.0重量%を超えると卵の臭みが強くなり、凝固しやすくなり、最終製品のアイスも固くなることがわかった。
【0048】
そして、以上の実施形態1及び2のベース材の研究結果と、発明者らの更なる検討を重ねたところ、卵黄のコクや濃厚なうまみ、風味などの特徴を向上させるためには、卵黄を6~15重量%の範囲、牛乳を30~60重量%の範囲、生クリームを4~16重量%の範囲、糖類を10~20重量%の範囲で配合されていることが重要であることがわかった。
【0049】
また、実施形態1及び2で用いた卵黄には、丹波の鶏が産卵した卵の卵黄を使用した。この卵は、穀物4~65重量%、植物性油かす類20~26重量%、そうこう類1~8重量%の割合で含む配合飼料に対し、ゼオライト、海藻、木酢精製液、ヨモギなどを含む混合飼料を0.7重量%添加したものを食した鶏が産卵したものである。このように鶏の飼料を工夫することで卵黄のコクや濃厚なうまみを高め、ベース材の卵風味の向上に有効である。
【0050】
また、この丹波の鶏は、複数種類の成鶏飼育用配合飼料(丹波の郷19 日和産業株式会社:レイヤーK16~19 中部飼料株式会社)を日齢や季節によって使い分けてあたえられている。表3~表7に成鶏飼育用配合飼料(丹波の郷19 日和産業株式会社)、成鶏飼育用配合飼料(レイヤーK16~19 中部飼料株式会社)の原材料を示す。
【0051】
【表3】
【0052】
【表4】
【0053】
【表5】
【0054】
【表6】
【0055】
【表7】
【0056】
そして、前記成鶏飼育用配合飼料に対し、混合飼料(地養卵の素「クロスジェイ」 農研テクノ株式会社製造)を0.7重量%混ぜて与えている。この混合飼料(地養卵の素「クロスジェイ」 株式会社技研食品)の原材料は、ゼオライト、海藻、木酢精製液、桑の葉、ぶどう搾りかす、オリーブ油かす、植物発酵粉末、ヨモギ、モンモリロナイト、プロピオン酸カルシウム(プロピオン酸として0.3%)である。
【0057】
<ベース材の製造方法>
続いて、ベース材の製造方法について説明する。なお、上記した実施形態1のベース材も実施形態2のベース材も製造方法は同様である。
【0058】
(攪拌工程)
ベース材の原材料(例えば表1,表2参照)と水を攪拌機に投入する。そして、攪拌機を作動して、これら原材料を常温の状態で攪拌する。なお、攪拌機を加温や冷却して攪拌してもよく、約3~50度の範囲であればよい。また、卵黄は、予め卵黄に加糖した加糖卵黄を用いることもできる。この工程により、ベース材を構成する原材料がミックスされたベースミックスが形成される。
【0059】
(濾過工程)
原材料の配合時に混入する可能性のある不純物を取り除くために、ベースミックスを濾過する。なお、この工程は必須の工程でない。
【0060】
(殺菌工程)
次に、上記で製造したベースミックスを所定量ずつパッキングし、パッキングされたベースミックスを殺菌する。殺菌の工程は、パッキングされたベースミックスを加熱温度58度以上70度未満で、加熱時間20分以上120分以下の範囲で、湯煎により行うか又はバッチタンクでの加熱により行う。
【0061】
(冷却工程)
そして、殺菌されたベースミックスを10度以下で所定時間冷却する。10度以下とするのは微生物の増殖を抑えながら冷却するためである。また、冷却はエージングの効果もある。エージングにより、ベース材の質感を滑らかにするため、乳化剤が油滴の表面に充分に吸着したり、脂肪を固形化するのを促進させることができる。これらにより、ベース材の製造が完了する。なお、成分、有害物、微生物等の検査を行ない、不良品がないかチェックされる。
【0062】
(冷凍工程)
そして、冷却後のパッキングされたベースミックスを冷凍する。なお、この工程は必須ではないが、冷凍によって固化することで、取り回しのよさや品質保持を図ることができる。このように製造されたベース材は、ジェラート販売店や工場などに出荷される。なお、冷凍して個体状のベース材か、冷凍しない液状のベース材かは、販売店等の要望に応じる。
【0063】
(アイスの製造)
そして、販売店や工場などにおいて、適宜ベース材を解凍し、解凍後のアイスのベース材をアイス製造用のフリーザーに投入してアイスを製造する。また、アイスを製造する際、ベース材に、チョコレート、ストロベリー、マンゴなどの味や風味を加えて、アイスに仕上げることもできる。また、果物などを加えてもよい。
【0064】
以上のとおり、本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。