IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社コバヤシの特許一覧

<>
  • 特許-光硬化性組成物 図1
  • 特許-光硬化性組成物 図2
  • 特許-光硬化性組成物 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】光硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/44 20060101AFI20220906BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20220906BHJP
   H01G 9/20 20060101ALI20220906BHJP
   C08F 20/00 20060101ALN20220906BHJP
【FI】
C08F2/44 A
C09K3/10 E
C09K3/10 Q
H01G9/20 303A
C08F2/44 C
C08F20/00 510
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020182737
(22)【出願日】2020-10-30
(65)【公開番号】P2022072999
(43)【公開日】2022-05-17
【審査請求日】2022-02-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591161623
【氏名又は名称】株式会社コバヤシ
(74)【代理人】
【識別番号】100147865
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 美和子
(72)【発明者】
【氏名】大橋 侑利
(72)【発明者】
【氏名】星野 勇門
(72)【発明者】
【氏名】原田 航
【審査官】尾立 信広
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-045030(JP,A)
【文献】特開2011-173414(JP,A)
【文献】特開2006-176576(JP,A)
【文献】国際公開第2019/221196(WO,A1)
【文献】特開2011-219651(JP,A)
【文献】特開2019-014873(JP,A)
【文献】特開2017-218591(JP,A)
【文献】国際公開第2011/040490(WO,A1)
【文献】特開2016-199670(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00-2/60
C08F 6/00-246/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光硬化性アクリル樹脂成分と、粘土鉱物粉体と、熱可塑性エラストマー、テルペン系樹脂及び石油系樹脂からなる群から選択される1種又は2種以上の熱可塑性樹脂とを含有し、
前記粘土鉱物粉体は、第一粉体とこれよりも平均粒子径D50が大きい第ニ粉体とから構成される粉体を含み、当該第一粉体の平均粒子径D50は0.1~2.5μmの範囲内、当該第二粉体の平均粒子径D50は3~20μmの範囲内であり、当該第一粉体と当該第二粉体との質量比率は、1~10:10~1であり、当該粉体の含有量は、光硬化性アクリル樹脂成分100質量部に対して、10質量部以上150質量部以下であり、
前記熱可塑性樹脂の含有量は、光硬化性アクリル樹脂成分100質量部に対して、10質量部以上100質量部以下である、
光硬化性組成物。
【請求項2】
前記粘土鉱物粉体は、タルク及び/又はマイカである、請求項1に記載の光硬化性組成物。
【請求項3】
太陽電池を封止するためのものである、請求項1又は2に記載の光硬化性組成物。
【請求項4】
電子デバイスを封止するためのものである、請求項1又は2に記載の光硬化性組成物。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の光硬化性組成物の硬化物。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の光硬化性組成物の硬化物を封止材として含む太陽電池。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の光硬化性組成物の硬化物を封止材として含む電子デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
光硬化性組成物は、例えば、太陽電池、又は電子デバイスの封止材として使用されている。太陽電池として、例えば、シリコンや無機化合物材料を用いた太陽電池、光吸収層に有機化合物を用いた太陽電池が開発されている。そして、有機化合物を用いた太陽電池には、色素増感型太陽電池、有機薄膜型太陽電池が開発されている。
【0003】
色素増感型太陽電池は、色素を利用して光エネルギーを電気に変換する太陽電池であり、次世代型太陽電池として注目されている。色素増感型太陽電池は、一般に2枚の導電性基板の間に電解液が封入された構造を有する。当該電解液の封入は、色素増感型太陽電池の耐久性にとって重要である。当該電解液の封入に関して、これまでいくつかの技術が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、(A)分子内に炭素数10~20の直鎖脂肪族炭化水素を有する(メタ)アクリレート100重量部、(B)脂環式(メタ)アクリレート5~15重量部、(C)特定の一般式で示されるスチレン系熱可塑性エラストマー10重量部以上、及び、(D)光重合開始剤を主成分とする光硬化性の色素増感型太陽電池用シール剤が開示されている。また、特許文献2には、特定の単官能(メタ)アクリレート、飽和熱可塑性エラストマー、及び光重合開始剤を含有する光硬化性組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-302564号公報
【文献】特開2010-180324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
太陽電池の耐久性向上にとって、電解液を封入するために用いられる封止材の性能を高めることは重要である。例えば、外部の水蒸気が封止材を透過して電解液と接触すると、光エネルギーの電気への変換効率が低下する。そのため、当該封止材の透湿性は低いことが要求される。
【0007】
電子デバイスにとっても、素子を封入するために用いられる封止材は重要である。例えば液晶及び有機ELなどの電子デバイスは、素子が樹脂組成物中に封入されている構造をとり、当該素子は水蒸気と接触しないことが望ましい。そのため、水蒸気から素子を保護するために、素子の封入のために用いられる封止材の透湿性は低いことが要求される。
【0008】
以上を踏まえ、本発明は、透湿性が低い封止材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討した結果、光硬化性アクリル樹脂成分と粘土鉱物粉体とを含有する光硬化性組成物の硬化物は透湿性が低く、優れた封止材として利用できることを見出した。
【0010】
すなわち、本発明は、 光硬化性アクリル樹脂成分と、粘土鉱物粉体と、熱可塑性エラストマー、テルペン系樹脂及び石油系樹脂からなる群から選択される1種又は2種以上の熱可塑性樹脂とを含有し、
前記粘土鉱物粉体は、第一粉体とこれよりも平均粒子径D50が大きい第ニ粉体とから構成される粉体を含み、当該第一粉体の平均粒子径D50は0.1~2.5μmの範囲内、当該第二粉体の平均粒子径D50は3~20μmの範囲内であり、当該第一粉体と当該第二粉体との質量比率は、1~10:10~1であり、当該粉体の含有量は、光硬化性アクリル樹脂成分100質量部に対して、10質量部以上150質量部以下であり、
前記熱可塑性樹脂の含有量は、光硬化性アクリル樹脂成分100質量部に対して、10質量部以上100質量部以下である、光硬化性組成物を提供する。
記粘土鉱物粉体は、タルク及び/又はマイカであってもよい。
発明の一つの実施態様に従い、前記光硬化性組成物は、太陽電池を封止するためのものであってもよい。
本発明の一つの実施態様に従い、前記光硬化性組成物は、電子デバイスを封止するためのものであってもよい。
また、本発明は、前記光硬化性組成物の硬化物を提供する。
また、本発明は、前記光硬化性組成物の硬化物を封止材として含む太陽電池を提供する。
また、本発明は、前記光硬化性組成物の硬化物を封止材として含む電子デバイスを提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、透湿性がより低い封止材に用いうる光硬化性組成物を提供することができる。
なお、本発明の効果は、ここに記載された効果に必ずしも限定されるものではなく、本明細書中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】色素増感型太陽電池の構造の例を示す図である。
図2】電子デバイスの構造の例を示す図である。
図3】色素増感型太陽電池の製造方法の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について、詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、本発明はこれらの実施形態のみに限定されるものでない。
【0014】
1.光硬化性組成物
本発明は、光硬化性アクリル樹脂成分と粘土鉱物粉体とを含む光硬化性組成物を提供する。当該組成物の硬化物は、より低い透湿性を有する。このため、前記光硬化性組成物は、例えば、太陽電池及び電子デバイスなどにおける封止材として用いるために適している。以下で、太陽電池及び電子デバイスの具体的な構造の例を示しつつ、本発明の効果をより詳細に説明する。
【0015】
1-1.太陽電池及び電子デバイスの具体的な構造例
太陽電池のうち色素増感型太陽電池の基本的な構造の模式図を図1に示す。図1は、色素増感型太陽電池の断面の一例を模式的に示す図である。図1に示される色素増感型太陽電池100は、透明導電膜(Transparent Conducting Oxide、TCO)102を積層された透明基板101を有する。透明導電膜102の、透明基板101との接触面と反対側の面に、金属酸化物半導体粒子104から形成される多孔質な金属酸化物半導体層103が形成されている。金属酸化物半導体層103は、例えば多孔質酸化チタンなどの金属酸化物半導体粒子を焼き付けることにより形成されうる。金属酸化物半導体粒子104には色素105が吸着している。また、透明基板101と向かい合うように、基板106が配置され、基板106の透明基板101側の面に導電膜107が積層されている。透明導電膜102と導電膜107との間の空間108が、電解液により満たされている。当該電解液を空間108内に封入するために、封止材109が設けられている。封止材109は、透明導電膜102及び導電膜107に接着されている。
【0016】
色素増感型太陽電池100に照射された光は、透明基板101及び透明導電膜102を透過して、金属酸化物半導体層103に到達する。当該光は、金属酸化物半導体層103の色素105により吸収され、色素105から電子が放出される。当該電子は、金属酸化物半導体層103に移動し、透明導電膜102を伝わり、そして、回路110を通って、対極の導電膜107に到達する。当該電子によって還元反応が起こり、電解液中に例えばヨウ化物イオン(I-)が生成される。当該ヨウ化物イオンは、色素105に電子を渡して、再度酸化される。以上のサイクルが繰り返されることで、光エネルギーが電気エネルギーに変換される。
なお、電解液の代わりに、固体の電解質が用いられてもよい。固体の電解質を用いた色素増感型太陽電池は、全固体型の色素増感型太陽電池とも呼ばれる。
【0017】
色素増感型太陽電池100において、外部の水蒸気が封止材109を透過して電解液と接触することは、光の電気への変換効率の低下をもたらすので望ましくない。外部の水分の前記透過は、色素増感型太陽電池が全固体型であっても望ましくない。このため、より低い透湿性を有する封止材が望まれている。
本発明の光硬化性組成物の硬化物は、当該光硬化性組成物の成分として光硬化性アクリル樹脂成分と粘土鉱物粉体とを含有させることで、より低い透湿性を有する。そのため、本発明の光硬化性組成物は、色素増感型太陽電池などの太陽電池の封止材形成用として使用するために適している。
【0018】
有機EL及び液晶などの電子デバイスの素子は、しばしば封止材によって封入されている。封止材は、電子デバイスの素子を外部から保護するために、例えば水蒸気から素子を保護するために用いられる。電子デバイスの素子の封入パターンの例を図2に示す。
図2の(A)において、外部から保護されるべき素子201は、例えばガラス又はフィルムなどの1対の基板202及び203により挟まれており、且つ、素子の側面が封止材204によって囲まれている。図2の(A)は、いわゆる枠封止と呼ばれる方式による素子の封止であるが、これに限定されない。
図2の(B)において、素子211が1枚の基板212上に載せられ、且つ、素子211の基板と接している部分以外の全てが、封止材213によって封止されている。図2の(B)は、いわゆる全面封止と呼ばれる方式による素子の封止である。
図2の(C)は、図2の(B)に示した全面封止構造の封止材223に、さらに基板224が積層されている封止方式である。すなわち、素子221が1枚の基板222上に載せられ、素子221の基板と接している部分以外の全てが封止材223によって封止されており、且つ、基板222と対向するように、基板224が封止材223に積層されている。
電子デバイスにおいても、外部の水分が封止材を透過して素子と接触することは望ましくない。例えば、有機ELパネルにおいて、水蒸気が封止材を透過して素子に接触することにより、その発光領域が縮小する。そのため、電子デバイスの素子においても、封止材は、透湿性が低いことが望ましい。
本発明の光硬化性組成物の硬化物は、当該光硬化性組成物の成分として光硬化性アクリル樹脂成分と粘土鉱物粉体とを含有させることで、より低い透湿性とを有する。そのため、本発明の光硬化性組成物は、電子デバイスの封止材として使用するために適している。
【0019】
1-2.光硬化性組成物の各成分
以下で、本発明の光硬化性組成物に含まれる光硬化性アクリル樹脂成分及び粘土鉱物粉体等について、それぞれ説明する。
【0020】
[光硬化性アクリル樹脂成分]
本発明に係る光硬化性組成物は、光硬化性アクリル樹脂成分を含む。当該光硬化性アクリル樹脂成分は、特に限定されず、例えば、単官能(メタ)アクリレートモノマー、多官能(メタ)アクリレートモノマー、及び光硬化性オリゴマー等から選択される1種又は2種以上であることが好ましい。用いられる光硬化性アクリル樹脂成分は、公知の製造方法にて製造することができ、また、市販品を用いることができる。
本発明の光硬化性組成物は、(メタ)アクリレートモノマーを含むことが好ましく、より好適には単官能(メタ)アクリレートモノマーを少なくとも含み、さらに多官能(メタ)アクリレートモノマー及び/又は光硬化性オリゴマーを含んでもよい。
本発明において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート若しくはメタクリレート又はこれらの混合物を意味する。
【0021】
<単官能(メタ)アクリレートモノマー>
本発明の光硬化性組成物に含まれる光硬化性アクリル樹脂成分は、単官能(メタ)アクリレートモノマーを含むことが好ましい。
本発明において、単官能(メタ)アクリレートモノマーとは、1つの分子が光重合性の炭素-炭素二重結合を1つ有することを意味し、すなわちアクリロイル基又はメタクリロイル基(以下、「(メタ)アクリロイル基」ともいう)を1つ有することを意味する。
単官能(メタ)アクリレートモノマーの全炭素数は、好ましくは13以上であり、より好ましくは13~16である。これにより、硬化物の低透湿性の向上に寄与することができる。
【0022】
単官能(メタ)アクリレートモノマーは、脂環式単官能(メタ)アクリレートモノマーが好ましいが、これに限定されない。
本発明において、脂環式とは、1つの分子内に1つの脂環式炭化水素基を有することを意味する。すなわち、脂環式単官能(メタ)アクリレートモノマーは、エステル残基〔-C(=O)ORのR〕が脂環式炭化水素基である単官能(メタ)アクリレートモノマーである。当該脂環式炭化水素基は、置換基を有さなくともよく、本発明の効果が損なわれない範囲で、置換基を有してもよい。
【0023】
脂環式単官能(メタ)アクリレートモノマーは、好ましくはジシクロペンタニル構造、ジシクロペンテニル構造、アダマンチル構造、又はイソボルニル構造等を有するものであり、より好ましくはジシクロペンタニル構造、アダマンチル構造、又はイソボルニル構造を有するものである。すなわち、当該モノマーが有する脂環式炭化水素基は、好ましくはジシクロペンタニル基、ジシクロペンテニル基、アダマンチル基、又はイソボルニル基である。脂環式単官能(メタ)アクリレートモノマーに含まれる脂環式炭化水素基がこれらの構造のいずれかであることが、硬化物の低透湿性の向上に寄与することができる。
なお、脂環式単官能(メタ)アクリレートモノマーは、本発明の効果が損なわれない範囲内で、極性基又は加水分解性シリル基を、硬化物の接着性の向上の観点から、有していてもよい。当該極性基として、例えば、カルボキシル基、リン酸基、水酸基及びアミノ基等から選択される1種又は2種以上が挙げられる。
【0024】
脂環式単官能(メタ)アクリレートモノマーは、より具体的には、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート及び/又はジシクロペンテニル(メタ)アクリレートがより好ましく、さらに好ましくはジシクロペンタニル(メタ)アクリレートであり、さらにより好ましくはジシクロペンタニルアクリレートである。
【0025】
上述した「単官能(メタ)アクリレートモノマー」の化合物からなる群から選択される1種又は2種以上を用いてよい。
【0026】
<多官能(メタ)アクリレートモノマー>
本発明の光硬化性組成物に含まれる光硬化性アクリル樹脂成分は、多官能(メタ)アクリレートモノマーを含むことが好ましい。これにより、硬化物の強靭性を向上させることができる。
本発明において、多官能(メタ)アクリレートモノマーとは、1つの分子が光重合性の炭素-炭素二重結合を2つ以上有することを意味し、すなわち(メタ)アクリロイル基を2つ以上有することを意味する。当該多官能(メタ)アクリレートモノマーにおける「多官能」とは、(メタ)アクリロイル基の数が、例えば2つ以上、より2つ~10つ、さらに好ましくは2つ~6つを有することを意味する。
【0027】
多官能(メタ)アクリレートモノマーのうち、2官能(メタ)アクリレートモノマーが、好ましく、より好ましくは2つ以上の(メタ)アクリル酸と多価アルコール(より好適に2価アルコール)とのエステル化合物である2官能(メタ)アクリレートモノマーである。
このうち、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート及び/又はトリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートが、硬化物の低透湿性の向上の観点から、好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0028】
本発明の光硬化性組成物に含まれる多官能(メタ)アクリレートモノマーは、上述した「多官能(メタ)アクリレートモノマー」の化合物からなる群から選択される1種又は2種以上であってよい。
【0029】
なお、多官能(メタ)アクリレートモノマーは、硬化物の低透湿性の向上及び接着性の向上の観点から、極性基を有していてもよい。当該極性基の構成は、上記単官能(メタ)アクリレートモノマーで述べた極性基の構成を、本発明の効果が損なわれない範囲内で適宜採用することができる。
【0030】
<光硬化性オリゴマー>
本発明の光硬化性組成物に含まれる光硬化性アクリル樹脂成分は、光硬化性オリゴマーを含むことが、硬化物の強靭性向上の観点から、好ましい。
【0031】
光硬化性オリゴマーとして、オリゴマー分子構造中に(メタ)アクリロイル基の数を1つ又は数個を含む(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。
(メタ)アクリレートオリゴマーは、(メタ)アクリレートモノマーと、当該(メタ)アクリレート以外のモノマー又はオリゴマーとの共重合体であることが好ましく、当該(メタ)アクリレート以外のモノマー又はオリゴマーとして、例えば、カルバメート等が挙げられるがこれに限定されない。
【0032】
(メタ)アクリレートオリゴマーは、例えば、ウレタン骨格、エポキシ骨格、アクリル骨格、エーテル骨格、ブタジエン骨格、イソプレン骨格、エステル骨格等から選択される1種又は2種以上の骨格を有する(メタ)アクリレートオリゴマーであってもよい。このうち、ウレタン骨格、ブタジエン骨格、イソプレン骨格から選択される1種又は2種以上が好ましく、さらに、ウレタン骨格を有する(メタ)アクリレートオリゴマーがより好ましい。光硬化性組成物の原材料として(メタ)アクリレートオリゴマーを用いることで、硬化物の強靭性等を向上させることができる。
【0033】
(メタ)アクリレートオリゴマーは、オリゴマー分子構造中に(メタ)アクリロイル基の数を、好ましくは1つ以上、より好ましくは1つ~20つ、さらに好ましくは、1つ~10つを有することが好ましい。(メタ)アクリレートオリゴマーは、置換基を有していてもよい。
【0034】
(メタ)アクリレートオリゴマーとして、例えば、ポリエーテル系ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリウレタン系(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル系(メタ)アクリレートオリゴマー(好適には、ポリエステル系ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー)、ポリエポキシ系(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル系(メタ)アクリレートオリゴマー、シリコン系(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリブタジエン若しくは水添ポリブタジエン(メタ)アクリレートオリゴマー(好適にはポリブタジエン系ウレタン(メタ)アクリレート)オリゴマー、及びポリイソプレン系(メタ)アクリレート(好適にはポリイソプレン系ウレタン(メタ)アクリレート)オリゴマー等を挙げることができるが、これらに限定されない。これらのうち、ポリウレタン系(メタ)アクリレート、ポリブタジエン系(メタ)アクリレート、及びポリイソプレン系(メタ)アクリレートから選択される1種又は2種以上が好ましく、さらにポリイソプレン系ウレタンアクリレート及び/又はポリブタジエン系ウレタンアクリレートがより好ましい。
【0035】
本発明の光硬化性組成物に含まれる光硬化性オリゴマーは、上述した光硬化性オリゴマーの化合物からなる群から選択される1種又は2種以上であってよい。
【0036】
(メタ)アクリレートオリゴマーの重量平均分子量としては、GPC法(カラム温度40℃)により測定した標準ポリスチレン換算の値において、好ましくは500~30,000、より好ましくは1,000~10,000、さらに好ましくは1,500~10,000である。
【0037】
光硬化性アクリル樹脂成分は、上記以外の単官能若しくは多官能(メタ)アクリレートモノマー、又は光硬化性オリゴマー等を、本発明の効果を損なわない範囲で含んでもよい。上記以外の単官能若しくは多官能(メタ)アクリレートモノマーとして、例えば、ビニルエーテル基、エポキシ基、及びオキセタニル基からなる群より選ばれる少なくとも1種又は2種以上の官能基を有する(メタ)アクリレートモノマーを含んでもよい。
【0038】
本発明の光硬化性組成物に含まれる光硬化性アクリル樹脂成分100質量部中に占める単官能(メタ)アクリレートモノマーの割合は、特に限定されないが、下限値として、好ましくは50質量部以上、好ましくは60質量部以上、より好ましくは70質量部以上、さらに好ましくは80質量部以上、さらにより好ましくは90質量部以上、より好ましくは95質量部以上であり、上限値として、好ましくは100質量部以下、より好ましくは98質量部以下である。
【0039】
光硬化性アクリル樹脂成分中に、単官能(メタ)アクリレートモノマーに加えて、さらに多官能(メタ)アクリレートモノマー及び光硬化性オリゴマーを光硬化性アクリル樹脂成分として含む場合には、光硬化性アクリル樹脂成分100質量部中に占める単官能(メタ)アクリレートモノマーの割合は、下限値として、50質量部以上であってもよく、好ましくは60質量部以上、より好ましくは70質量部以上であり、上限値として、より好ましくは90質量部以下、さらに好ましくは85質量部以下、さらにより好ましくは80質量部以下である。これにより、硬化物の低透湿性の向上に寄与することができる。
なお、本発明の光硬化性組成物に含まれる、単官能(メタ)アクリレートモノマー、多官能(メタ)アクリレートモノマー及び光硬化性オリゴマーの合計量を、光硬化性アクリル樹脂成分100質量部とする。
【0040】
光硬化性アクリル樹脂成分100質量部に占める多官能(メタ)アクリレートモノマーの割合は、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下であり、また、より好ましくは3~8質量部である。
光硬化性アクリル樹脂成分100質量部に占める光硬化性オリゴマーの割合は、好ましくは3質量部以上、より好ましくは5質量部以上であり、また、好ましくは30質量部以下であり、また、より好ましくは5~25質量部である。
光硬化性アクリル樹脂成分100質量部に占める多官能(メタ)アクリレートモノマー及び光硬化性オリゴマーの合計割合は、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、さらに好ましくは15質量部以上であり、また、好ましくは30質量部以下、より好ましくは25質量部以下であり、また、より好ましくは15~25質量部である。
【0041】
[粘土鉱物粉体]
本発明の光硬化性組成物は、粘土鉱物粉体を含む。当該粘土鉱物粉体を光硬化性組成物に含ませることで、硬化物を通過して内部に侵入する水分を防ぐことができる。このように粘土鉱物粉体を含ませることで、当該組成物の硬化物の透湿性をより低下させることができる。
本発明における粘土鉱物として、層状ケイ酸塩鉱物が好ましい。粘土鉱物の例として、例えば、タルク、マイカ、カオリン、スメクタイト、及びバーニュライト等を挙げることができるが、これらに限定されない。本発明における粘土鉱物は、これらから選択される1種又は2種以上であってよい。
このうち、タルク及び/又はマイカが、硬化物の低透湿性の向上の観点から、好ましい。硬化物の透湿性をより低下させる観点からはマイカが良好であり、硬化物中での分散性をより良好にする観点からはタルクが良好であり、硬化物の分散性の向上及び低透湿性の向上の観点からは、より好ましくはタルクである。
【0042】
粘土鉱物粉体の平均粒子径(D50)は、特に限定されないが、その好適な下限値として、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上であり、その好適な上限値として、好ましくは20μm以下、より好ましくは15μm以下、さらに好ましくは10μm以下である。当該好適な数値範囲として、より好ましくは0.5~10μmである。光硬化性組成物に含有させる平均粒子径の大きさを調整することで、硬化物の透湿性をより低下させることができる。
【0043】
本発明の光硬化性組成物は、平均粒子径(D50)の異なる2種以上の粘土鉱物粉体を含むことが好ましい。単独の粘土鉱物粉体を用いた場合よりも、異なる平均粒子径の粘土鉱物粉体を2種以上組み合わせて用いた方が、さらに硬化物の透湿性をより低下させることができる。平均粒子径が異なる2種以上の粘土鉱物粉体を光硬化性組成物に含ませる場合、複数の粘土鉱物粉体をそれぞれ別々に光硬化性組成物に添加してもよいし、複数の粘土鉱物粉体を混合させた混合粉体を光硬化性組成物に添加してもよい。さらに、異なる粉体同士の平均粒子径の差は、好ましくは1~5μm、より好ましくは2~4μmである。
【0044】
また、平均粒子径の異なる2種以上の粉体が、第一粉体とこれよりも平均粒子径が大きい第二粉体とから構成される粉体である場合、第一粉体と第二粉体との質量比率は、好ましくは1~10:10~1、より好ましくは1~7:7~1、さらに好ましくは1~5:5~1、さらにより好ましくは1~3:3~1、より好ましくは1~2:2~1である。また、これらの平均粒子径(D50)が第一粉体<第二粉体である場合、この2つの粒子径比は、第一粉体(D50):第二粉体(D50)が、好ましくは1:1~10、より好ましくは1:1~7、さらに好ましくは1:1~5である。
第一粉体の平均粒子径は、好ましくは0.1~2.5μmの範囲内、より好ましくは0.5~2μmの範囲内である。また、第一粉体よりも平均粒子径が相対的に大きい第二粉体の平均粒子径は、好ましくは0.5~20μmの範囲内、より好ましくは3~20μmの範囲内、さらに好ましくは3~6μmの範囲内、より好ましくは4~5μmの範囲内である。使用する粘土鉱物粉体の粒度分布を調整することで、硬化物の透湿性をより低下させることができる。
【0045】
本発明の平均粒子径は、「粒子径(D50)」のことである。当該粒子径(D50)は、体積で重みづけされた体積基準のメジアン径(D50)であり、JIS Z8825に従い測定されるものである。粒子径は、レーザー回折式粒度分析測定法に従い測定することができ、例えば粒度分析測定装置(SALD-2200、株式会社島津製作所)を用いて測定されうる。
【0046】
粘土鉱物粉体の粉体形状として、例えば、球状、塊状、棒状、板状等が挙げられるが、これらに限定されない。これらから選択される1種又は2種以上を用いることができる。このうち、板状が好ましい。
【0047】
粘土鉱物粉体は、粘土鉱物を原料として合成化、粉体化等処理による公知の方法にて製造することができ、また、市販品を用いてもよい。さらに粘土鉱物粉体は、複合化又は表面処理されたものが、硬化物の低透湿性の向上及び分散性の向上の観点から、好ましい。
さらに、原料粉体から一般的な表面処理方法にて表面処理された粘土鉱物粉体が、硬化物の低透湿性の向上の観点から、より好ましく、さらに、表面疎水化処理された粘土鉱物粉体がさらに好ましい。当該表面処理剤として、例えば、油剤、シリコーン系化合物、フッ素系化合物、カップリング剤、N-アシル化アミノ酸、及び金属石鹸等が挙げられるが、これらに限定されない。これらから1種又は2種以上を選択することができる。
このうち、カップリング剤が好ましく、当該カップリング剤として、例えば、パーフルオロアルキルアルコキシシラン等のフッ素系化合物;アルキルトリアルコキシシラン等のシランカップリング剤;長鎖アルコキシチタン等のチタンカップリング剤等が挙げられるが、これらに限定されない。これらから選択される1種又は2種以上を用いることができる。このうち、シランカップリング剤がより好ましい。
【0048】
本発明の光硬化性組成物に含まれる粘土鉱物粉体は、上述した「粘土鉱物粉体」の化合物からなる群から選択される1種又は2種以上を用いてよい。
【0049】
粘土鉱物粉体における光硬化性組成物中の含有量は、特に限定されないが、光硬化性アクリル樹脂成分100質量部に対して、この好適な下限値として、好ましくは1質量部以上、好ましくは5質量部以上、さらに好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上、より好ましくは30質量部以上、より好ましくは50質量部以上、より好ましくは60質量部以上、より好ましくは70質量部以上であり、また、この好適な上限値として特に限定されないが、好ましくは150質量部以下、より好ましくは120質量部以下、さらに好ましくは100質量部以下である。当該好適な数値範囲として、より好ましくは30~100質量部、さらに好ましくは50~100質量部である。これにより、硬化物の低透湿性がより向上することができる。
【0050】
[熱可塑性樹脂]
本発明の光硬化性組成物は、熱可塑性樹脂を含むことが、硬化物の強靭性向上の観点から、好ましい。熱可塑性樹脂は、硬化物の強靭性向上のために用いてもよい。
熱可塑性樹脂として、熱可塑性を有する樹脂であれば特に限定されないが、例えば、熱可塑性エラストマー、テルペン系樹脂、石油系樹脂、脂肪族炭化水素樹脂等が挙げられるが、これらに限定されない。当該熱可塑性樹脂は、水添物であることが好ましく、当該水添物として、例えば、水添熱可塑性エラストマー、脂肪族飽和炭化水素樹脂等が挙げられるが、これらに限定されず、このうち、水添熱可塑性エラストマー及び/又は脂肪族飽和炭化水素樹脂がより好ましい。熱可塑性樹脂は、公知の製造方法にて製造し用いてもよく、また、市販品を用いてもよい。
【0051】
熱可塑性エラストマーとして、例えば、ポリスチレン系、オレフィン/アルケン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系等及びこれらの水添物等が挙げられるが、これらに限定されない。このうち、水添スチレン系熱可塑性エラストマーが好ましい。
【0052】
テルペン系樹脂としては、例えば、テルペン樹脂、変性テルペン樹脂、水添テルペン樹脂等が挙げられる。テルペン類とは、イソプレン則に基づく一連の化合物のグループであり、イソプレン単位((C:nは構造単位)を含む化合物の総称である。ロジンには、イソプレン4単位(C20)から構成される化合物(具体的には三環形のジテルペン)のカルボン酸であるロジン酸類が含まれ、当該ロジン酸類は広義においてテルペン類に含まれる。このため、本明細書において、テルペン系樹脂には、ロジン系樹脂が含まれうる。当該ロジン系樹脂としては、例えば、ロジン樹脂、ロジンエステル樹脂、水添ロジン樹脂、水添ロジンエステル樹脂、重合ロジン樹脂、重合ロジンエステル樹脂、及び変性ロジン樹脂等が挙げられる。これらから選択される1種又は2種以上を用いてもよい。これらのうち、水添テルペン樹脂及び/水添ロジン樹脂がより好ましい。
石油系樹脂としては、例えば、脂肪族又は芳香族の石油樹脂、水添石油樹脂、変性石油樹脂、脂環族石油樹脂、クマロン・インデン石油樹脂、スチレン樹脂等が挙げられる。これらから選択される1種又は2種以上を用いてもよい。これらのうち、水添石油樹脂がより好ましく、さらに水添芳香族系石油樹脂がさらに好ましい。
【0053】
上記脂肪族炭化水素樹脂の化合物のうち、水添テルペン樹脂及び/又は水添石油樹脂が、硬化物の低透湿性の向上の観点から、より好ましい。
【0054】
熱可塑性樹脂が熱可塑性エラストマーの場合、当該熱可塑性エラストマーのMFR(230℃、2.16kg)は、好ましくは50g/10min以下、より好ましくは30g/10min以下、さらに好ましくは20g/10min以下、さらにより好ましくは10g/10min以下、より好ましくは5g/10min以下である。熱可塑性樹脂のMFRを調整することにより、硬化物の低透湿性をより良好することができる。
本発明において、MFR(Melt flow rate)は、単位:g/10minで表示され、JIS K7210に準拠して、230℃、2.16kg荷重、10分間の条件で測定される。
【0055】
熱可塑性樹脂が脂肪族炭化水素樹脂の場合、当該樹脂のTgは、この好適な下限値として、好ましくは100℃以上、より好ましくは105℃以上、さらに好ましくは120℃以上、より好ましくは125℃以上であり、また、この好適な上限値は特に限定されないが、例えば260℃以下、230℃以下又は200℃以下等であってもよい。熱可塑性樹脂のTgを調整することにより、硬化物の低透湿性をより良好にすることができる。
本発明において、Tgは、1つの樹脂成分のみから構成されるポリマーのTgであり、示差走査熱量計(DSC)により測定される。
【0056】
なお、上述した「熱可塑性樹脂」の化合物からなる群から選択される1種又は2種以上を用いてよい。
【0057】
熱可塑性樹脂における光硬化性組成物中の含有量は、特に限定されないが、光硬化性アクリル樹脂成分100質量部に対して、この好適な下限値として、硬化物の低透湿性及び強靭性向上の観点から、好ましくは10質量部以上、より好ましくは15質量部以上であり、また、この好適な上限値として、特に限定されないが、100質量部以下、90質量部以下、80質量部以下、又は70質量部以下等でもよい。
【0058】
また、熱可塑性エラストマーにおける光硬化性組成物中の含有量は、特に限定されないが、光硬化性アクリル樹脂成分100質量部に対して、この好適な下限値として、硬化物の低透湿性及び強靭性向上の観点から、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは3質量部以上、さらにより好ましくは5質量部以上であり、また、この好適な上限値として、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下である。
【0059】
また、脂肪族炭化水素樹脂における光硬化性組成物中の含有量は、特に限定されないが、光硬化性アクリル樹脂成分100質量部に対して、この好適な下限値として、硬化物の低透湿性及び強靭性向上の観点から、好ましくは40質量部以上、より好ましくは50質量部以上、さらに好ましくは60質量部以上であり、また、この好適な上限値として、特に限定されないが、100質量部以下、90質量部以下、又は80質量部以下や70質量部以下等でもよい。
【0060】
[任意成分]
本発明の光硬化性組成物には、例えば、接着性付与剤、無機又は有機の充填材、重合開始剤、消泡剤、界面活性剤、硬化剤、難燃剤等の光硬化性組成物に用いられる任意成分を、本発明の効果を損なわない範囲内で、含有させてもよく、これらから選択される1種又は2種以上を用いることができる。
【0061】
<接着性付与剤>
接着性付与剤として、特に限定されないが、例えば、極性基を有する(メタ)アクリレート、粘着付与樹脂、カップリング剤等が挙げられ、これらから選択される1種又は2種以上を用いることができる。これにより硬化物の接着性を高めることができる。
【0062】
極性基を有する(メタ)アクリレートは、上記単官能若しくは多官能の(メタ)アクリレートモノマー以外のものであり、当該極性基は、例えば、カルボキシル基、リン酸基、水酸基、及びアミノ基から選択される1種又は2種以上である。
【0063】
カップリング剤として、特に限定されないが、例えば、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、アルミニウムカップリング剤等が挙げられ、これらから選択される1種又は2種以上である。
【0064】
接着性付与剤の量は、特に限定されないが、光硬化性アクリル樹脂成分100質量部に対して、好ましくは0.1~10質量部、より好ましくは0.1~5質量部の含有割合で含まれてもよい。また、極性基を有する(メタ)アクリレート1質量部に対して、カップリング剤1~5質量部の含有割合で含まれてもよい。
【0065】
また、接着性付与剤として粘着付与樹脂を用いる場合、粘着付与樹脂の量は、光硬化性アクリル樹脂成分100質量部に対して、好ましくは0.05~5質量部、より好ましくは0.05~4質量部、さらに好ましくは0.1~2質量部である。この範囲内にすることにより、硬化物の接着性がより向上することができ、これにより透湿性が低くかつ接着性に優れた封止材を提供することができる。
【0066】
<添加剤>
添加剤として、例えば、界面活性剤、消泡剤等を含有させることができる。
界面活性剤として、例えば、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、アルキル系界面活性剤、及びポリアクリレート系界面活性剤等が挙げられるがこれらに限定されない。このうち、ポリアクリレート系界面活性剤が好ましい。
消泡剤として、例えば、ジメチルシリコーン、アルキル変性シリコーン、フェニル変性シリコーン、フッ素変性シリコーンなどのシリコーン系消泡剤や、ポリアクリレート系消泡剤等が挙げられるが、これらに限定されない。このうち、シリコーン系消泡剤が好ましい。
【0067】
添加剤の量は、特に限定されないが、添加剤は、光硬化性アクリル樹脂成分100質量部に対して、好ましくは0.1~10質量部、より好ましくは1~5質量部の含有割合で含まれてもよい。また、界面活性剤1質量部に対して、泡沫剤0.5~5質量部の含有割合で含まれてもよい。
【0068】
<充填材>
本発明の光硬化性組成物は、上記粘土鉱物粉体以外の充填材を含んでもよい。充填材の量を調整することによって、光硬化性組成物の粘度を調整することができる。当該充填材は、例えば、無機フィラーが好ましく、当該無機フィラーとして、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、炭酸カルシウム、窒化ホウ素、及び窒化アルミ等が挙げられるがこれらに限定されない。例えば100~500m/g、好ましくは200~400m/gの比表面積を有するフュームドシリカ(例えば、疎水性フュームドシリカ、親水性フュームドシリカ)が、本発明の光硬化性組成物の充填材として好ましい。
【0069】
充填材の量は、例えば充填材の種類又は求められる光硬化性組成物の粘度に応じて、当業者により適宜選択されてよい。充填材(好適にはフュームドシリカ)は、光硬化性アクリル樹脂成分100質量部に対して、好ましくは1~10質量部、より好ましくは2~9質量部、さらに好ましくは3~8質量部の含有割合で含まれてよい。上記含有割合によって、本発明の光硬化性組成物が封止材として利用しやすい粘度を有する。
上述した「充填材」の化合物からなる群から選択される1種又は2種以上を用いてよい。
【0070】
<光重合開始剤>
本発明の光硬化性組成物は、光重合開始剤を含んでもよい。
光重合開始剤として、好ましくはアシルフォスフィンオキサイド系、α‐アミノアセトフェノン系、α‐ヒドロキシアセトフェノン系、又はオキシムエステル系の光重合開始剤が用いられ、より好ましくはα‐アミノアセトフェノン系の光重合開始剤を用いられる。
アシルフォスフィンオキサイド系の光重合開始剤として、例えばビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド及び2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド等を挙げることができる。
α‐アミノアセトフェノン系の光重合開始剤として、例えば2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、及び2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、4,4′-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等を挙げることができる。
α‐ヒドロキシアセトフェノン系の光重合開始剤として、例えば1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、及び2-ヒロドキシ-1-[4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル]-2-メチル-プロパン-1-オン等を挙げることができる。
オキシムエステル系の光重合開始剤として、例えば1.2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]、及び、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(0-アセチルオキシム)等を挙げることができる。
【0071】
上述した「光重合開始剤」の化合物からなる群から選択される1種又は2種以上を用いてよい。
【0072】
光重合開始剤の量は、光硬化性アクリル樹脂成分100質量部に対して、好ましくは0.01質量部~10質量部、より好ましくは0.1質量部~8質量部であり、さらに好ましくは0.2~5質量部の含有割合で含まれてよい。
【0073】
[硬化手段]
【0074】
本発明において、光硬化性組成物とは、当該組成物に光を照射することにより硬化する性質を有する組成物である。本発明の光硬化性組成物を硬化させるために照射される光は、例えば紫外線、電子線(ベータ線)、ガンマ線、又はアルファ線であり、より好ましくは紫外線及び電子線であり、さらにより好ましくは紫外線でありうる。
光を照射するための装置は、照射される光の種類により当業者により適宜選択されうる。当該装置として市販入手可能なものが用いられてよい。例えば、電子線を照射するには、通常20~2000kVの電子線加速器から取り出される加速電子線を照射する。電子線の照射線量は、例えば1~300kGyであり、好ましくは5~200kGyでありうる。また、紫外線を照射するために、殺菌灯、紫外用蛍光灯、カーボンアーク、キセノンランプ、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、及び無電極ランプなどのUV照射装置が用いられてよい。照射される紫外線の波長は、例えば200nm~400nmでありうる。
【0075】
1-3.本発明の光硬化性組成物の用途
【0076】
本発明の光硬化性組成物は、例えば封止材として用いられてよく、封止材を形成する際に用いられてもよい。当該光硬化性組成物の硬化物は、透湿性がより低いため、封止された内部を外部の水蒸気から保護することができるために適している。すなわち、本発明は、本発明の光硬化性組成物の硬化物も提供することができる。
【0077】
本発明の一つの好ましい実施態様に従い、本発明の光硬化性組成物は、太陽電池を封止するために用いられてよく、より特には太陽電池を構成する電解液又は電解質を封止するために用いられてよい。当該太陽電池は、好ましくは色素増感型太陽電池、ペロブスカイト太陽電池、又は有機薄膜太陽電池であり、特に好ましくは色素増感型太陽電池でありうる。本発明の光硬化性組成物の硬化物は、色素増感型太陽電池の電解液又は固体型電解質を封止するのに特に適している。
【0078】
本発明の他の好ましい実施態様に従い、本発明の光硬化性組成物は、電子デバイスを封止するために用いられてよい。前記電子デバイスは、好ましくは液晶パネル又は有機ELパネルでありうる。本発明の光硬化性組成物の硬化物は、液晶パネル又は有機ELパネルの素子を封止するのに特に適している。
【0079】
[製造方法]
【0080】
本発明の光硬化性組成物は、本発明の属する技術分野において既知の撹拌手段を用いて製造されてよい。例えば、本発明の光硬化性組成物に含まれる光硬化性アクリル樹脂成分及び粘土鉱物粉体等を容器内で撹拌機により撹拌することによって、当該光硬化性組成物を製造することができる。撹拌機として、当技術分野で既知の装置が用いられてよい。例えば撹拌時間及び撹拌時の温度などの撹拌条件も、当業者により適宜設定されてよい。
【0081】
[使用方法の例]
【0082】
本発明の光硬化性組成物の使用方法の1例を、図3を参照しながら以下に説明する。
まず、図3(a)に示されるとおり、基板301上に、本発明の光硬化性組成物302が塗布される。当該塗布は、例えば光硬化性組成物302によって所望の領域を囲むように行われうる。次に、図3(b)に示されるとおり、基板303が、光硬化性組成物302を挟んで基板301と向かい合うように重ねられる。その後、図3(c)に示されるとおり、光(例えば紫外線)が光硬化性組成物302に到達するように照射される。当該照射によって、光硬化性組成物302が硬化する。その結果、基板301及び303並びに光硬化性組成物302の硬化物によって規定された空間が形成される。
例えば色素増感型太陽電池を製造する場合は、基板301及び303は、例えば導電膜を積層された基板であり、光硬化性組成物は当該導電膜上に塗布される。そして、当該導電膜及び当該光硬化性組成物の硬化物によって規定された空間に電解液が封入されて、フレキシブルな色素増感型太陽電池が製造される。本発明の光硬化性組成物の硬化物は、低透湿性に優れている。そのため、本発明の光硬化性組成物は、封止材として使用するのに適している。
また、他の種類の太陽電池(例えばペロブスカイト太陽電池又は有機薄膜太陽電池)又は電子デバイスにおいても、本発明の光硬化性組成物が封止材として使用されてよい。
【0083】
2.太陽電池
【0084】
本発明は、本発明の光硬化性組成物の硬化物を含む太陽電池も提供することができる。当該硬化物は、低透湿性が向上している。当該太陽電池において、当該硬化物は、好ましくは封止材として含まれており、より好ましくは電解液又は固体電解質を封止するための封止材として含まれている。当該太陽電池は、好ましくは色素増感型太陽電池、ペロブスカイト太陽電池、又は有機薄膜太陽電池であり、より好ましくは色素増感型太陽電池である。これらの太陽電池において本発明の光硬化性組成物を封止材として用いた場合、本発明の効果がより顕著に奏される。
【0085】
本発明の色素増感型太陽電池は、例えば上記「1.光硬化性組成物」にて説明された図1に示すとおりの構造を有しうる。以下、図1に示された構成要素のそれぞれについてより詳細に説明する。
【0086】
透明基板101としては、透明なガラス板又はプラスチックフィルムが用いられてよい。プラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが用いられてもよく、又は、透明で耐熱性のある他のフィルムが用いられてもよい。
【0087】
透明導電膜(透明電極)102として、例えば酸化インジウムと酸化スズとを含むITO膜が用いられてよい。酸化インジウム及び酸化スズの質量割合は例えば、それぞれ90~99質量%及び10~1質量%であり、好ましくは92~98質量%及び8~2質量%でありうる。また、透明導電膜として、酸化スズにフッ素をドーピングした膜(FTO)が用いられてもよい。
透明導電膜102の対極基板を構成する基板106として、例えばガラス又はガラス板又はプラスチックフィルムが用いられてよい。導電膜107は、透明導電膜102と同様に、ITO膜又はFTO膜であってよい。
【0088】
金属酸化物半導体層103を形成する金属酸化物半導体として、例えばチタン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、亜鉛、インジウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、又はタングステンの酸化物が挙げられる。これらのなかでも二酸化チタンが特に好ましい。金属酸化物半導体として、より好ましくは直径が10~30nmである超微粒子の二酸化チタン粒子が用いられる。当該二酸化チタン粒子によって、色素を吸着させるのに適した広大な比表面積を有する二酸化チタン膜を形成することができる。
【0089】
色素105として、例えば金属含有色素又は有機色素など、当技術分野で既知の色素が用いられてよい。色素105として、例えばルテニウム錯体〔RuL(NCS)、L=4,4′-ジカルボキシ-2,2′-ビピリジン〕、ポルフィリン系色素、シアニン系色素、C60誘導体、スチリルベンゾチアゾリウムプロピルスルフォネート(BTS)、及び植物の色素などを挙げることができる。
【0090】
空間108を満たす電解液は、電解質を有機溶剤に溶解又は分散した溶液でありうる。当該電解質として、ヨウ素/ヨウ素化合物及び臭素/臭素化合物などの酸化還元対(レドックス系)が用いられてよく、ヨウ素/ヨウ素化合物の組み合わせが特に好ましい。
当該電解質を溶解又は分散させる有機溶剤として、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ポリエチレングリコール、アセトニトリル、若しくは3-メトキシプロピオニトリル、又はこれらの2種以上の混合物などが用いられてよい。
前記電解液には、電解質及び溶媒に加えて、当技術分野で用いられる各種添加剤が含まれてもよい。添加剤の例として、例えば増粘剤、粘性を低下させてイオンの拡散を円滑にするための常温溶融塩(例えば1-プロピルー2,3-ジメチルイミダゾリウムイオダイドなど)、及び逆電流を防ぎ開放起電力を高めるための4-tert-ブチルピリジンなどを挙げることができる。
本発明の特に好ましい実施態様に従い、前記電解液は、ヨウ素とヨウ化リチウムとを含有するアセトニトリル/エチレンカーボネート溶液でありうる。
【0091】
本発明の色素増感型太陽電池は、当業者に既知の製造方法により適宜製造されてよい。本発明の色素増感型太陽電池は、例えば、以下の工程を含む製造方法により製造されうる。
【0092】
2-(1)光硬化性組成物塗布工程
当該工程において、透明基板層、透明導電膜層、及び色素を吸着した金属酸化物半導体層がこの順に積層された導電性基板、又は、導電膜層及び基板層がこの順に積層された導電性基板に、本発明の光硬化性組成物が塗布される。当該塗布は、例えばスクリーン印刷又はディスペンサーなどの塗布手段により行われてよい。当該塗布される場所は、封止されるべき電解液又は固体電解質が配置される位置に応じて当業者により適宜設定されうる。本発明の光硬化性組成物の塗布パターンは、例えば環状、長方形、又は正方形など、製造されるべき色素増感型太陽電池の形状に合わせて決定されてよい。例えば、本発明の光硬化性組成物は、電解液又は固体電解質が配置される位置を囲み且つ幅0.5mm~1mmの線を形成するように塗布されうる。
【0093】
2-(2)貼り合わせ工程
当該工程において、前記2つの導電性基板が貼り合わせられる。貼り合わせ後の封止材の厚みが例えば5μm~100μm、より好ましくは20μm~50μmとなるように、前記塗布工程において塗布される量が設定されうる。
【0094】
2-(3)硬化工程
当該工程において、本発明の光硬化性組成物に光が照射される。当該光の照射によって、本発明の光硬化性組成物が硬化する。光は、透明基板層、透明導電膜層、及び金属酸化物半導体層が積層された前記導電性基板を透過させて照射されてよく、又は、前記2つの導電性基板の間を光が通るように照射されてもよい。
【0095】
2-(4)電解液封入工程
当該工程において、電解液が、硬化した本発明の光硬化性組成物及び前記2つの導電性基板により規定された空間内に封入される。
当該封入を行うために、基板の一部に開口部が設けられてよく、又は、開口部が形成されるように本発明の光硬化性組成物が塗布されてもよい。当該開口部から、前記空間内に電解液が注入されうる。当該注入後、当該開口部は、本発明の光硬化性組成物により封止し、そして、当該光硬化性組成物に光を照射して硬化することにより、封止されうる。又は、当該開口部は、他の常温硬化性接着剤を用いて封止されてもよい。
なお、固体電解質が用いられる場合は、前記貼り合わせ工程の前に、当該固体電解質が前記2つの導電性基板の間に配置される。そして、当該配置後に、貼り合わせ工程及び効果工程が行われて、本発明の色素増感型太陽電池が製造される。
【0096】
3.電子デバイス
【0097】
本発明は、本発明の光硬化性組成物の硬化物を含む電子デバイスも提供することができる。当該硬化物は、低透湿性が向上している。当該電子デバイスにおいて、当該硬化物は、好ましくは封止材として含まれており、より好ましくは素子を封止するための封止材として含まれている。当該電子デバイスは、好ましくは液晶パネル又は有機ELパネルである。これらの電子デバイスにおいて本発明の光硬化性組成物を封止材として用いた場合、本発明の効果がより顕著に奏される。これらの電子デバイスにおいて本発明の光硬化性組成物を封止材として用いた場合の封止方式は、例えば、上記で説明したとおり、枠封止方式であってよく、又は、全面封止方式であってもよい。封止方式は、これらに限らず、保護されるべき素子の少なくとも一部が、本発明の光硬化性組成物の硬化物によって接触していればよい。
【0098】
本発明の電子デバイスは、当業者に既知の製造方法により適宜製造されてよい。例えば、電子デバイスの素子の少なくとも一部が、本発明の光硬化性組成物と接触するように当該素子と当該光硬化性組成物とを配置すること、そして次に、当該光硬化性組成物に光を照射して当該光硬化性組成物を硬化させることを含む。当該素子及び当該光硬化性組成物の配置の仕方として、例えば上記で説明した枠封止方式又は全面封止方式が採用されてよい。
【実施例
【0099】
以下、実施例等に基づいて本技術をさらに詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例等は、本技術の代表的な実施例等の一例を示したものであり、これにより本技術の範囲が狭く解釈されることはない。
【0100】
(1)製造方法
以下の表1~5に示されるとおりの組成となるように、表1~5に示される各成分を計量しそして撹拌機にて30分間撹拌して、実施例1~17及び参考例1の光硬化性組成物を得た。表1~5中の数値の単位はいずれも質量部である。
本実施例に示される材料の化合物名は以下のとおりである。なお、以下の、MFR、Tg、平均粒子径(D50)、重量平均分子量等の測定方法は、上記「1.光硬化性組成物」に記載の各測定方法に従って、行った。
【0101】
〔熱可塑性樹脂〕
水添スチレン系熱可塑性エラストマーA(MFR 5g/10min(230℃、2.16kg荷重)
水添スチレン系熱可塑性エラストマーB(MFR <0.1g/10min(230℃、2.16kg荷重)
水添芳香族系石油樹脂C(Tg125℃)
水添テルペン樹脂D(Tg105℃)
水添テルペン樹脂E(Tg125℃)
水添テルペン樹脂F(Tg150℃)
〔オリゴマー〕
オリゴマーA:ポリイソプレン系ウレタンアクリレート(重量平均分子量約8,000~10,000)
オリゴマーB:水素化ポリブタジエンの両末端に、ウレタン結合を介して(メタ)アクリル基を有したポリブタジエン系ウレタンアクリレート樹脂
〔単官能モノマー〕
ジシクロペンタニルアクリレート(C1318)(Tg120℃)
〔多官能モノマー〕
トリシクロデカンジメタノールジアクリレート
ノナンジオールジアクリレート
〔接着性付与剤〕
接着性付与剤A:極性基を有する(メタ)アクリレート
接着性付与剤B:シランカップリング剤
粘着付与樹脂C:テルペンフェノール樹脂(水酸基価75、SP値8.8、少なくともケトン系溶剤又は酢酸エステル系溶剤に可溶(20~30℃))
〔フュームドシリカ〕
フュームドシリカA:ジメチルシリル(ジメチルジクロロシラン)で表面処理した疎水性フュームドシリカ(比表面積 300m/g)
フュームドシリカB:DDS(ジメチルジクロロシラン)で表面処理した疎水性フュームドシリカ(比表面積 130m/g)
フュームドシリカC:親水性フュームドシリカ(比表面積 300m/g)
〔粘土鉱物粉体〕
FG-15表面処理品(日本タルク製):板状タルク(シランカップリング剤処理):1.5μm(レーザー回折式粒度分析測定法:D50)
P-4表面処理品(日本タルク製):板状タルク(シランカップリング剤処理):4.5μm(レーザー回折式粒度分析測定法:D50)
PDM-5B(トビー工業製):板状合成マイカ:6μm(レーザー回折式粒度分析測定法:D50)
ナノエースD-600表面処理品(日本タルク製):板状タルク(シランカップリング剤処理:N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラ:KBM-573表面処理):0.6μm(レーザー回折式粒度分析測定法:D50)
〔重合開始剤〕
α‐アミノアセトフェノン系化合物
【0102】
(2)透湿性の評価方法
透湿性については、JIS Z 0208 防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法)に従って、製造された光硬化性組成物の硬化物を測定した。すなわち、テフロン(登録商標)コーティングされた金属板上に光硬化性組成物を100μm(±20μm)の厚みで塗布し、メタルハライドランプで積算光量が3,000mJ/cmとなるように紫外線を照射して当該光硬化性組成物を硬化させた。得られた硬化物が、前記基準が指定する形状にカットされ、そして、塩化カルシウム約5gを計量した容器にセットされた。60℃/90%RH雰囲気の恒温恒湿器内に、当該容器を24時間保管し、保管前後の重量差から水蒸気透過度(g/m・day)を算出した。硬化物の透湿度が100g/m・day以下である場合に、当該硬化物は、透湿度の観点から良好な性能を有していると判定することができる。本実施例の測定結果は、以下の表1~5に示されている。
【0103】
(3)T型剥離接着試験方法
JIS K 6854-3 準拠(90℃剥離試験またはT型剥離試験)に従い、製造された光硬化性組成物の硬化物のT型剥離接着強さを測定した。すなわち、25mm×70mmのITO膜付きPETフィルム2枚の間に光硬化性組成物の塗布面積が25mm×45mm且つ塗布厚が100μmとなるように塗布及び貼り合せを行い、メタルハライドランプで積算光量が6,000mJ/cmとなるように紫外線を照射し、当該光硬化性組成物を硬化させた。作製した試験片を、引張試験機を用いて試験速度10mm/minで引張り、T型剥離接着強さ(平均試験力:[N/25mm])を測定した。T型剥離接着強さが5[N/25mm]以上である場合に、当該光硬化性組成物の硬化物は、良好な性能を有していると判定された。さらに、剥離後の剥離面の破壊状態について目視にて確認した。本実施例の測定結果は、以下の表5に示されている。
【0104】
<実施例1~4及び参考例1>
光硬化性アクリル樹脂成分に粘土鉱物粉体(タルク)を含有させた実施例1の組成物の硬化物の透湿性は、粘土鉱物粉体を含有させていない参考例1の組成物の硬化物の透湿性と対比すると、約半分以下の透湿度となった。よって、硬化物に粘土鉱物粉体が含まれることで硬化物中を通過して侵入する水分を防ぐことができる。このように、粘土鉱物粉体を材料として含有させることで、優れた低透湿性を有する光硬化性組成物の硬化物を得ることができた。これにより、透湿性がより低い封止材に用いうる光硬化性組成物を提供することができた。
さらに、実施例1~4の結果から、光硬化性アクリル樹脂成分100質量部に対し、粘土鉱物粉体を30質量部から100質量部と増量するほど、より低い透湿性を有する光硬化性組成物の硬化物を得ることができた。また、粘土鉱物粉体(タルク)10質量部の場合でも、粘土鉱物粉体を含有させていない場合よりも、より低い透湿性を有する光硬化性組成物の硬化物を得ることができた。これらの透湿度の結果からすると、80質量部ぐらいから透湿度の低下率が少なくなったことより、コスト等を考慮すると、30~80質量部の範囲が好ましいと考えた。
【0105】
【表1】
【0106】
<実施例5~10>
実施例5及び6の組成物において、粘土鉱物粉体(タルク)の平均粒子径(D50)のサイズを変えても、優れた低透湿性を有する光硬化性組成物の硬化物を得ることができた。
また、タルクに代えてマイカを含有させた場合(実施例10)でも、優れた低透湿性を有する光硬化性組成物の硬化物を得ることができた。マイカ及びタルク共に組成物調製時の分散性は良好であったが、タルクを含有させた場合の方がマイカを含有させた場合よりも、得られた硬化物の低透湿性が若干優れていた。
また、実施例5~9の結果から、平均粒子径が異なる2種以上の粉体を含ませることで、単独の粉体を含有させた場合よりも、粉体量が同量であっても、硬化物の透湿度は半分以下となった。このように、光硬化性組成物に、平均粒子径が異なる2種以上の粘土鉱物粉体を含有させることで、優れた低透湿性を有する光硬化性組成物の硬化物を得ることができた。
【0107】
【表2】
【0108】
<実施例11~13>
実施例11~13の組成物において、光硬化性アクリル樹脂成分と、粘土鉱物粉体と、熱可塑性樹脂(水添テルペン樹脂)を含有させた場合、熱可塑性樹脂(水添テルペン樹脂)の軟化点が高いほど、より優れた低透湿性を有する光硬化性組成物の硬化物を得ることができた。また、実施例11の組成物の水添テルペン樹脂に代えて、水添石油樹脂を含有させた場合でも、同様に優れた低透湿性を有する光硬化性組成物の硬化物を得ることができた。このことより、水添テルペン又は水添石油樹脂の脂肪族飽和炭化水素樹脂を含有させることで、より優れた低透湿性を有する光硬化性組成物の硬化物を得ることができた。
また、実施例1~4で含有させたタルクの平均粒子径が、1.5μmと4.5μmであること、実施例11~13で含有させたタルクの平均粒子径が、0.6μmであること、また、実施例10で含有させたマイカの平均粒子径が6μmであることから、0.5~10μm程度の平均粒子径を有する粘土鉱物粉体であれば、優れた低透湿性を有する光硬化性組成物の硬化物を得ることができる。
なお、実施例11~13の組成物において、光硬化性のオリゴマーを含有させることで、樹脂強靭性を向上させることができた。
【0109】
【表3】
【0110】
<実施例14~16>
実施例14~16の組成物から、光硬化性アクリル樹脂成分と、粘土鉱物粉体と、熱可塑性樹脂とを含有させた場合、光硬化性アクリル樹脂成分100質量部に対して熱可塑性樹脂を20又は40質量部からさらに60質量部まで増量することで、より優れた低透湿性を有する光硬化性組成物の硬化物を得ることができた。
【0111】
【表4】
【0112】
<実施例17>
【0113】
【表5】
図1
図2
図3