(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】建物ユニット
(51)【国際特許分類】
E04B 1/348 20060101AFI20220906BHJP
【FI】
E04B1/348 H
(21)【出願番号】P 2022086636
(22)【出願日】2022-05-27
【審査請求日】2022-05-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522211139
【氏名又は名称】株式会社シンユー
(74)【代理人】
【識別番号】100087826
【氏名又は名称】八木 秀人
(74)【代理人】
【識別番号】100168088
【氏名又は名称】太田 悠
(72)【発明者】
【氏名】川原 悟
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-245501(JP,A)
【文献】特開2016-223111(JP,A)
【文献】特開2000-027312(JP,A)
【文献】特開2002-038596(JP,A)
【文献】特開平10-280553(JP,A)
【文献】特開平09-060127(JP,A)
【文献】特開2015-187382(JP,A)
【文献】特開平11-264195(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/348
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
四隅に配置された柱と、前記柱の上下端部に設けられたダイアフラムと、前記ダイアフラムに接続された床梁および天井梁と、からなる直方体のフレーム体を備える建物ユニットにおいて、
前記柱は角柱で、前記床梁および前記天井梁は断面溝型に構成され、外方向にのみ溝の開口部を向けるように配置され、
前記床梁および前記天井梁の上フランジおよび下フランジには、前記床梁および前記天井梁の各梁端部から部材長手方向やや部材中央側の位置に、連結孔が設けられている
ことを特徴とする建物ユニット。
【請求項2】
前記上フランジおよび前記下フランジの前記連結孔は、同軸上に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の建物ユニット。
【請求項3】
前記連結孔からさらに前記部材長手方向やや部材中央側の位置には、前記上フランジと前記下フランジの間に、前記床梁および前記天井梁のウェブ部のウェブ面と直交する面を持つ補強プレートが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の建物ユニット。
【請求項4】
前記柱は角型鋼管で、前記床梁および前記天井梁は溝形鋼で、
前記床梁および前記天井梁のウェブ部のウェブ高は前記ダイアフラムの外形長さと略同じで、前記上フランジおよび前記下フランジのフランジ幅は前記柱の辺サイズに対して短く、前記床梁および前記天井梁の前記梁端部は前記ダイアフラムの外方向側に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の建物ユニット。
【請求項5】
少なくとも前記天井梁の、少なくとも長辺側のものは、前記補強プレートからさらに前記部材長手方向やや部材中央側の位置に、V字に折り曲げ加工した取付プレートを備え、
前記取付プレートは、一方の面は前記ウェブ面と直交して前記上フランジと前記下フランジの間に設けられ、他方の面は前記ウェブ面と平行かつ外方向に現れるように設けられ、前記取付プレートの前記他方の面には、少なくとも一つの多用途孔が設けられていることを特徴とする請求項
3に記載の建物ユニット。
【請求項6】
前記建物ユニットの天井の表層は、前記フレーム体を覆い隠すサイズの防水シートであることを特徴とする請求項1に記載の建物ユニット。
【請求項7】
請求項1に記載の前記建物ユニットを重ね合わせおよび/または隣り合わせ、一対配置する前記連結孔をボルトナットで締結することで、上下および/または側方四方に連結された、連結ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組み立て容易な建物ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
住宅、店舗、または事務所としての利用で、コンテナハウスやトレーラーハウスが近年注目されている。このような建物ユニットには、運搬可能で設置や移設が簡易的であること、設計に自由度があること、内部空間の居心地の良さが求められており、海上コンテナを改造したものも多く見られる。例えば特許文献1には、側面開放可能で、二棟を上下に連結可能な建物ユニットが開示されている。特許文献2には、車輪が容易に取り付け可能で、二棟の長辺側を側方に連結可能な建物ユニットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6433611号
【文献】特許第6698980号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
海上コンテナを改造した建物ユニットでは、元々の海上コンテナが金属合板を溶接しただけのものであることから、建物として強度計算をすることができず、それを改造したものに対しては、建築基準法に基づく構造計算を示すことは困難である。このために、コンテナの中に鉄骨を組むことが考えられるが、コンテナ内で鉄骨を組むのは作業空間が狭いため手間とコストがかかり、何より鉄骨の分だけコンテナ内の有効空間が狭まるという問題がある。また、特許文献1や2では、二棟より複数棟を連結させるアイディアについては開示されていない。
【0005】
本発明は、前記の課題を解決するためになされたものであり、構造計算ができ、有効空間が広くコストダウンも図れ、連結棟数の拡張可能な建物ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様の建物ユニットは、四隅に配置された柱と、前記柱の上下端部に設けられたダイアフラムと、前記ダイアフラムに接続された床梁および天井梁と、からなる直方体のフレーム体を備える建物ユニットにおいて、前記柱は角柱で、前記床梁および前記天井梁は断面溝型に構成され、外方向にのみ溝の開口部を向けるように配置され、前記床梁および前記天井梁の上フランジおよび下フランジには、前記床梁および前記天井梁の各梁端部から部材長手方向やや部材中央側の位置に、連結孔が設けられている。
【0007】
第2の態様の建物ユニットでは、第1の態様において、前記上フランジおよび前記下フランジの前記連結孔は、同軸上に設けられているのも好ましい。
【0008】
第3の態様の建物ユニットでは、第1または2の態様において、前記連結孔からさらに前記部材長手方向やや部材中央側の位置には、前記上フランジと前記下フランジの間に、前記床梁および前記天井梁のウェブ部のウェブ面と直交する面を持つ補強プレートが設けられているのも好ましい。
【0009】
第4の態様の建物ユニットでは、第1~3のいずれかの態様において、前記柱は角型鋼管で、前記床梁および前記天井梁は溝形鋼で、前記床梁および前記天井梁のウェブ部のウェブ高は前記ダイアフラムの外形長さと略同じで、前記上フランジおよび前記下フランジのフランジ幅は前記柱の辺サイズに対して短く、前記床梁および前記天井梁の前記梁端部は前記ダイアフラムの外方向側に接続されているのも好ましい。
【0010】
第5の態様の建物ユニットでは、第3の態様において、少なくとも前記天井梁の、少なくとも長辺側のものは、前記補強プレートからさらに前記部材長手方向やや部材中央側の位置に、V字に折り曲げ加工した取付プレートを備え、前記取付プレートは、一方の面は前記ウェブ面と直交して前記上フランジと前記下フランジの間に設けられ、他方の面は前記ウェブ面と平行かつ外方向に現れるように設けられ、前記取付プレートの前記他方の面には、少なくとも一つの多用途孔が設けられているのも好ましい。
【0011】
第6の態様の建物ユニットでは、第1~5のいずれかの態様において、前記建物ユニットの天井の表層は、前記フレーム体を覆い隠すサイズの防水シートであるのも好ましい。
【0012】
第7の態様として、第1~6のいずれかの態様の建物ユニットを重ね合わせおよび/または隣り合わせ、一対配置する前記連結孔をボルトナットで締結することで、上下および/または側方四方に連結された、連結ユニットも好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、構造計算ができ、有効空間が広く、コストダウンも図れ、連結棟数の拡張可能な建物ユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第一の実施形態に係る建物ユニット1(完成形)の外観斜視図である。
【
図2】
図1の建物ユニット1の(a)正面図、(b)背面図、(c)左側面図、(d)右側面図、(e)平面図、(f)底面図、(g)断面図、(h)壁板材25の好適な形状例、(i)天井40の好ましい変形例である。
【
図3】
図1の建物ユニット1をフレーム体10のみとした状態の外観斜視図である。
【
図4】
図1の建物ユニット1から外壁21、22、23、24、天井40、床30を取り除いた状態の外観斜視図である。
【
図5】柱11と天井梁14の接続部分の拡大図である。
【
図6】
図5のVI‐VI線の位置から見た断面図である。
【
図8】
図7のVIII-VIII線から見た断面図である。
【
図9】フレーム体10をパターン1で連結した連結ユニット101の図である。
【
図10】フレーム体10をパターン2で連結した連結ユニット102の図である。
【
図11】フレーム体10をパターン3で連結した連結ユニット103の図である。
【
図12】フレーム体10をパターン4で連結した連結ユニット104の図である。
【
図16】本発明の第二の実施形態に係る建物ユニット1´のフレーム体10´の外観斜視図である。
【
図17】第二の実施形態に係る天井梁(長辺)141´の外観斜視図である。
【
図18】
図17のXVIII-XVIII線における断面図である。
【
図19】取付プレート20の好適な使用例1を示す図である。
【
図20】取付プレート20の好適な使用例2を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の好適な実施の形態について図面に基づき説明する。なお、図面において、建物ユニットの上下、左右、前後方向を、それぞれ矢印で示す。
【0016】
1.第一の実施形態
図1は本発明の第一の実施形態に係る建物ユニット1の完成形(1ユニット)の外観斜視図であり、
図2は
図1の建物ユニット1の(a)正面図、(b)背面図、(c)左側面図、(d)右側面図、(e)平面図、(f)底面図、(g)断面図である。(g)の断面図は、(a)のg-g線における断面図である。(i)と(h)については後述する。
【0017】
建物ユニット1は、完成形において、フレーム体10と、側方四方の外壁21、22、23、24と、天井40と、床30を備える。建物ユニット1の正面にある外壁21(
図2a)と、左側面にある外壁22(
図2c)と、背面にある外壁23(
図2b)は、構造用合板6(
図2g)を備え、このような下地材に、海上コンテナの金属合板(波板)を模してプレス加工した壁板材25(
図1)が取り付けられている。
図2hは、壁板材25の好適な形状例であり、
図1に示す状態での壁板材25の横断面図(一枚分)である。壁板材25は、一方の端部に雌側端部、他方の端部に雄側端部を備え、一枚目の壁板材25の雌側端部をビス等の止具を用いて壁面の下地に固定して、二枚目の壁板材25の雄側端部を一枚目の雌側端部に挿入する、を繰り返しながら、順次接続することで、壁21,22,23を装飾することができる。右側面にある外壁24(
図2d)は、プレスにより海上コンテナの扉を模した鉄板と軽量鉄骨鋼を溶接して作成されたドアとなっており、フレーム体10の四隅に取り付けられたヒンジによって、中央観音開きで開閉可能である。天井40(
図2e)は、構造用合板7(
図2g)を備え、一番上(表層)に、フレーム体10を覆い隠すサイズの防水シート41が張られている(
図2e、
図2g)。床30(
図2f)はタール仕上げの構造用合板8(
図2g)を備えている。建物ユニット1では、フレーム体10と、これに取り付けられた外壁21、22、23、24、天井40、床30により、内部空間U(
図2g)が形成されている。本明細において「外方向」とは、内部空間Uから外に向かう方向を意味するものとする。
【0018】
図3は建物ユニット1をフレーム体10のみとした状態の外観斜視図であり、
図4は
図1の建物ユニット1から外壁21、22、23、24、天井40、床30を取り除いた状態の外観斜視図である。
【0019】
図3に示すように、フレーム体10は、直方体で、柱11、床梁13、天井梁14により、20fまたは40fの海上コンテナを模した大きさで形成されている。フレーム体10は、長辺の天井梁14および床梁13と、短辺の天井梁14および床梁13を持つ。以降、長辺のものと短辺のものを書き分けたい場合、長辺の床梁の符号を131、長辺の天井梁の符号を141、短辺の床梁の符号を132、短辺の天井梁の符号を142とする。
【0020】
柱11は角形鋼管からなる角柱で構成され、上下の各端部には、柱11と同じ辺サイズのダイアフラム12が溶接されている。柱11は好ましくは断面形状が正方形であるが、目的とする強度に応じて断面形状が長方形のものが選択されてもよい。床梁13と天井梁4はC溝鋼(Cチャンネル)で構成され、建物ユニット1の外方向にC溝の開口部を向けて配置されている。天井梁14および床梁13は、ダイアフラム12のリブ121に対し外面合わせで溶接され、柱11と接続している。
【0021】
建物ユニット1は、以上の構成からなるフレーム体10により、X方向およびY方向で鉄骨造ラーメン構造を有し、建築基準法に基づく構造計算はフレーム体10において算出される。外壁21、22、23、24、天井40、および床30は、構造計算に影響せず、任意の材料、任意の形状で、フレーム体10に取り付けることができる。従って、建物ユニット1では、外壁21、22、23、24の配置変更は自由であるし、外壁21、22、23、24においてドアや窓の配置や数も自由である。また、外壁21、22、23に取り付ける壁板材25を変えれば、外装のデザインも自由である。
【0022】
次に、
図4は、外壁21、22、23、24、天井40、および床30をフレーム体10に取り付けるための構造の一例である。床30には、強度補強のブレース2を二組、フレーム体10に溶接し、根太3をフレーム体10の短辺方向に橋渡して溶接し、構造用合板8がネジ止めできるように構成される。外壁21、22、23には、胴縁4を壁板材25(
図1)の長手方向と直交する方向に橋渡してフレーム体10に溶接し、構造用合板6がねじ止めできるように構成される。天井40には、強度補強のブレース2を二組、フレーム体10に溶接し、母屋5をフレーム体10の短辺方向に橋渡して溶接し、構造用合板7がネジ止めできるように構成される。天井40の防水シート41は、構造用合板7に、例えば固定ディスクを使用して固定される。
図2iは、天井40の好ましい変形例である。母屋5と構造用合板7の間には、例えば断熱材、防音材、遮熱材など、目的に応じた性能材9を入れることができる。また、構造用合板7は、符号7-1と符号7-2に示すように、市松に配置することで、より強度を上げることができる。
【0023】
ここで、柱11と梁13,14の好適な構成について説明する。
図5は柱11と天井梁14の接続部分の拡大図であり、
図6は
図5のVI‐VI線の位置から見た断面図である。柱11には、柱11の辺サイズ(W11×W11)と同サイズのダイアフラム12が溶接されており、ダイアフラム12は、やや外に張り出す矩形のリブ121を上下に備えている。天井梁14のウェブ部w14のウェブ高wL14(
図6)は、ダイアフラム12の外形長さL12(
図6)と略同じであることが好ましく、天井梁141の上フランジuf14と下フランジbf14のフランジ幅fL14(
図6)は、柱11の辺サイズW11に対して短く、2分の1以上3分の2以下、であるのが好ましい。そして、天井梁14の梁端部14´は、ダイアフラム12の外方向側に接続されることが好ましい(
図6)。図では天井梁(長辺)141を用いて説明したが、短辺142側でも、また床梁13においても、同様である。
【0024】
このように構成することで、第一に、フランジ幅fL14を短くした分、フレーム体10の重量を減らすことができ、コストダウンが図れる。第二に、フランジ幅fL14を短くしダイアフラム12の外方向側に接続したことで、建物ユニット1の内部空間Uをより広くとることができる。改めて、建物ユニット1の断面図(
図2g)を見ると、建物ユニット1の内部空間Uは、フレーム体10で構成される内部空間に対して、構造用合板6、7、8の厚み分が内に張り出すだけであって、建物内の空間を有効に活用できることが分かる。これらの理由から、床梁13および天井梁14は溝形鋼(C形鋼)であることが好ましい。床梁13および天井梁14をH形鋼とすると、内方向に向くフランジによって内部空間Uが侵食される上、フレーム体10の重量も増し、運搬の手間やコストが上がるためである。
【0025】
そしてさらに、建物ユニット1は、次に説明する「連結孔15」を備え、上下および側方に、棟数の拡張が可能である。
【0026】
図7は天井梁141(長辺)の斜視図であり、
図8は
図7のVIII-VIII線から見た断面図である。図において、符号d141は天井梁141の部材長手方向を示すものとする。なお、床梁131(長辺)は天井梁141(長辺)と同一の構成で、天井梁142(短辺)と床梁132(短辺)は天井梁141(長辺)と部材長手方向の長さを変えるだけの構成であるため、天井梁141(長辺)をもって説明を省略する。
【0027】
図7に示すように、天井梁141の上フランジuf14と下フランジbf14には、それぞれ、天井梁141の梁端部14´から部材長手方向やや部材中央側の位置に、連結孔15が開けられている。連結孔15は、上フランジuf14と下フランジbf14において、同軸上に設けられる。連結孔15は、連結孔15の穿孔による天井梁141の強度影響をより少なくする観点から、
図8に示すように、天井梁141の梁端部14´から連結孔15までの距離ℓ1は、柱11の辺サイズW11の3分の1以上かつ2分の1以下に設定するのが好ましい。
【0028】
連結孔15からさらに部材長手方向やや部材中央側の位置には、上フランジuf14と下フランジbf14の間に、補強プレート16が設けられている。補強プレート16は、平らな金属プレートであり、連結孔15による天井梁141の強度減少を補うために、プレート面がウェブ部w14のウェブ面と直交するように溶接されている(
図8)。また、連結孔15から補強プレート16までの距離ℓ2は、連結孔15での工具の取り回しを考慮して、距離ℓ1と同程度あけられるのが好ましい。
【0029】
このように、フレーム体10には、連結孔15が、天井梁141、142および床梁131,132のそれぞれに、上下に2つずつ、同軸に形成されている。これらの連結孔15によって、建物ユニット1は、上下および側方四方に、棟数を拡張させることが可能である。代表的な4つのパターンについて、
図9~
図12を用いて説明する。
【0030】
(1)パターン1:上下連結(段繋ぎ)
図9はフレーム体10をパターン1で連結した連結ユニット101の図であり、(a)は連結ユニット101の正面図、(b)は連結ユニット101の左側面図、(c)は連結ユニット101のユニット連結部18の、(a)および(b)に示すC1線とC2線の断面図であり、(d)は(a)に示すd-d線の断面図であり、(e)は(a)に示すユニット境界部19の連結箇所を示す図である。連結ユニット101は、フレーム体10が、2ユニット上下に連結されており、一段目のフレーム体10-1と二段目のフレーム体10-2を有する。連結ユニット101では、上下で一対配置する、一段目のフレーム体10-1の天井梁14の上フランジuf14の連結孔15と、二段目のフレーム体10-2の床梁13の下フランジbf14の連結孔15とを、ボルトナットで締結する(
図9c)ことにより、フレーム体10が上下方向に連結する。ここで、連結ユニット101では、
図9dに示すように、2ユニットの内部空間Uを一体化することができる。すなわち、一段目のフレーム体10-1の天井40を取り付けず、二段目のフレーム体10-2の床30を取り付けないことで、ユニット境界部19を吹き抜けにすることができる。なお、連結は、
図9eの×印で示す最大8箇所で行うことができるが、目的とする強度に応じて一部の連結が省略されてもよい。
【0031】
(2)パターン2:側方連結(並列繋ぎ)
図10はフレーム体10をパターン2で連結した連結ユニット102の図であり、(a)は連結ユニット102の平面図、(b)は連結ユニット102の左側面図、(c)は連結ユニット102のユニット連結部18の、(a)に示すC線の断面図であり、(d)は(a)に示すd-d線の断面図であり、(e)は(a)に示すユニット境界部19の連結箇所を示す図である。連結ユニット102は、フレーム体10が、2ユニットの長辺が並ぶように連結されており、一つ目の(前に設置された)フレーム体10-1と、二つ目の(後ろに設置された)フレーム体10-2を有する。連結ユニット102では、前後で一対配置する、一つ目のフレーム体10-1の後ろ側の天井梁(長辺)141の上フランジuf14および下フランジbf14の連結孔15と、二つ目のフレーム体10-2の前側の天井梁(長辺)141の上フランジuf14および下フランジbf14の連結孔15とを、連結プレート17(
図10c)を介してボルトナットで締結し、同様に一つ目のフレーム体10-1の床梁(長辺)131と二つ目のフレーム体10―2の床梁(長辺)131もボルトナットで締結することにより、フレーム体10が並列に連結する。ここで、連結ユニット102では、
図10dに示すように、2ユニットの内部空間Uを一体化することができる。すなわち、一つ目のフレーム体10-1の後ろ側外壁23を取り付けず、二つ目のフレーム体10-2の前側外壁21を取り付けないことで、ユニット境界部19を吹き抜けにすることができる。なお、連結は、
図10eの×印で示す最大8箇所で行うことができるが、目的とする強度に応じて一部の連結が省略されてもよい。例えば、あるユニット連結部18において、上下の連結孔15のうちどちらか一方を連結するだけでもよい。
【0032】
(3)パターン3:側方連結(縦繋ぎ)
図11はフレーム体10をパターン3で連結した連結ユニット103の図であり、
図11(a)は連結ユニット103の平面図、(b)は連結ユニット103の正面図、(c)は連結ユニット103のユニット連結部18の、(a)に示すC線の断面図であり、(d)は(a)に示すd-d線の断面図であり、(e)は(a)に示すユニット境界部19の連結箇所を示す図である。連結ユニット103は、フレーム体10が、2ユニットの短辺が並ぶように連結されており、一つ目の(左に設置された)フレーム体10-1と二つ目の(右に設置された)フレーム体10-2を有する。連結ユニット103では、左右で一対配置する、左のフレーム体10-1の右側の天井梁(短辺)142の上フランジuf14および下フランジbf14の連結孔15と、右のフレーム体10-2の左側の天井梁(短辺)142の上フランジuf14および下フランジbf14の連結孔15とを、連結プレート17(
図11c)を介してボルトナットで締結し、同様に、左のフレーム体10-1の床梁(短辺)132と右のフレーム体10―2の床梁(短辺)もボルトナットで締結することにより、フレーム体10が縦長に連結する。ここで、連結ユニット103では、
図11dに示すように、2ユニットの内部空間Uを一体化することができる。すなわち、左のフレーム体10-1の右外壁24を取り付けず、右のフレーム体10-2の左外壁22を取り付けないことで、ユニット境界部19を吹き抜けにすることができる。なお、連結は、
図11eの×印で示す最大8箇所で行うことができるが、目的とする強度に応じて一部の連結が省略されてもよい。例えば、あるユニット連結部18において、上下の連結孔15のうちどちらか一方を連結するだけでもよい。
【0033】
(4)パターン4:側方連結(四方繋ぎ)
図12はフレーム体10をパターン4で連結した連結ユニット104の図であり、(a)は連結ユニット104の平面図である。(b)については後述する。連結ユニット104は、フレーム体10が、前後左右に4ユニット連結されており、一つ目の(左前に設置された)フレーム体10-1、二つ目の(右前に設置された)フレーム体10-2、三つ目の(左後ろに設置された)フレーム体10-3、四つ目の(右後ろに設置された)フレーム体10-4を有する。一つ目のフレーム体10-1と三つ目のフレーム体10-3、二つ目のフレーム体10-2と四つ目のフレーム体10-4は、それぞれパターン2の側方連結(並列繋ぎ)で連結され、一つ目のフレーム体10-1と二つ目のフレーム体10-2、三つ目のフレーム体10-3と四つ目のフレーム体10-4は、それぞれパターン3の側方連結(縦繋ぎ)で連結されている。図示を略するが、同様に、連結ユニット104でも、それぞれのユニット境界部19を吹き抜けにすることができ、4ユニットの内部空間Uを一体化することができる。また同様に、目的とする強度に応じて一部の連結が省略されてもよい。
【0034】
(5)応用パターン
図13に、その他の連結パターンをいくつか示す。
図13に示す連結ユニットは、上記の代表的な4パターンの連結を組み合わせることで実現できる。なお、図の(i)~(iv)は平面図、(v)~(vi)は正面図で、丸印はユニット連結部18である。これらの配置例では、連結孔15を使用した連結と、内部空間Uの一体化が可能である。
【0035】
(6)その他の配置パターン
また、建物ユニット1は、1ユニットでも建物として成立するため、連結孔15を使用しない様々な配置も可能である。
図14に、その配置パターンをいくつか示す。例えば、ユニット同士をTの字に配置したり、ユニット同士を鋭角または鈍角で配置したり、ユニット同士を規則的または不規則的に並べて配置したり、またはユニット同士を離間させて配置することが可能である。
【0036】
なお、
図9~
図14に示した例は、本実施形態の建物ユニット1の使用形態の一例であり、本発明を限定するものではない
ここで、20fコンテナと同等サイズとした場合の建物ユニット1の、柱11床梁13、および天井梁14の好適な部材規格について説明する。
柱11:角型鋼管 150×150×4.5mm
(※上下連結とする場合は、下段を150×150×6mmに変更)
床梁13・天井梁14:溝形鋼 200×90×8×13.5mm
ダイアフラム12:150×150×4.5mm
ダイアフラムリブ121:板厚 16mm
補強プレート16:板厚 12mm
連結プレート17:板厚 9mm
距離ℓ1:50mm
距離ℓ2:50mm
以上の部材規格でフレーム体10を構成すると、建物ユニット1は次の耐荷重性能を備え、建物ユニット1の用途を拡張できる。
【0037】
(積雪荷重)
図15(a)に示すように、建物ユニット1は積雪160cmに耐えうる。また、前述した通り、建物ユニット1の屋根は防水シート41であるため、雪下ろし作業で屋根(シート)に穴が開いても、補修作業が簡単である。建物ユニット1は、積雪量の多い寒冷地での利用に非常に適している。
【0038】
(ソーラーパネルの設置)
図15(b)に示すように、建物ユニット1では太陽光発電のためのソーラーパネルの設置が容易である。一般的なコンテナハウスやトレーラーハウスでよく見られる、金属合板からなる天井では、ソーラーパネルの重量に耐えることができないが、建物ユニット1は、フレーム体10の強度でソーラーパネルを支持することができる。さらに、一般的に、ソーラーパネルは図示のような架台によって設置されるため、建物にソーラーパネルを設置する際には、建物の屋根に架台設置用の穴を開け、穴からの雨漏りを防止するために表層に防水層を設ける工法が採られる。これに対し、建物ユニット1では、天井40に、先の
図2iのような構成が容易に採れるため、性能材9(断熱材)の層に架台脚を組み込み、表層に防水シート41を備える工事が容易である。
【0039】
(テラスの設置)
図15(c)に示すように、建物ユニット1は屋上テラスの設置が容易である。建物ユニット1は、フレーム体10で目的の強度が出せるため、屋上テラスや屋上緑化の要望にも迅速に対応することができる。
【0040】
以上、本形態の建物ユニット1によれば、第一に、フレーム体10で構造が成立するから、建築基準法に基づく構造計算が示せる。第二に、フレーム体10に外壁21、22、23、24を後付けする構成であるので、設計、外装内装の自由度が高い。第三に、建物外殻の中に内部鉄骨を組んで強度を持たせる構成に比べて、建物内の内部空間Uを広く採ることができるため、空間の居心地の良さを向上させられるとともに、内部鉄骨の組み立ての手間とコストを削減することができる。
【0041】
さらに、第四として、本形態の建物ユニット1は、天井梁14および床梁13に同軸に設けられた連結孔15により、上下および側方四方の連結が可能となり、棟数を自由に拡張することができる。また、必要に応じて、それぞれの内部空間Uを一体化することも容易に実現できる。
【0042】
また、本形態の建物ユニット1では、防水シート41が屋根となり、天井40への防水シート41の設置が容易であることも特徴の一つである。屋根を防水シート41とすることで、漏水対策が簡易に実現可能であるとともに、屋根に穴が開いた場合はその穴を塞ぐように追加の防水シートを張りつけることで屋根補修が簡便にでき、
図15で示した通り、建物ユニット1の用途の拡張も可能となるからである。さらに、建物ユニット1を側方連結した場合は、天井40(屋根)も容易に連結することができる。パターン4の場合で説明する。
図12(b)は連結ユニット104の完成形の平面図である。それぞれのフレーム体10-1~10-4には、天井40の表層に、
図2eに示すように防水シート41が設置されている。側方連結の場合、さらに、ユニット境界部19を跨ぐように、長尺の防水シート411(着色で示す)を張ることにより、非常に簡便に、屋根同士も連結することができ、棟数を拡張しても漏水対策が容易である。
【0043】
2.第二の実施形態
次に、本発明の第二の実施形態について述べる。第一の実施形態と共通する構成については、同一の符号を用いて、説明を割愛する。
【0044】
図16は本発明の第二の実施形態に係る建物ユニット1´のフレーム体10´の外観斜視図、
図17は第二の実施形態に係る天井梁(長辺)141´の外観斜視図、
図18は
図17のXVIII-XVIII線における断面図である。第二の実施形態に係るフレーム体10´の天井梁(長辺)141´は、部材長手方向二箇所に、取付プレート20を備える。取付プレート20は、平らな金属プレートを直角V字に折り曲げ加工したものであり、内側プレート202(一方の面)と外側プレート201(他方の面)を備える(
図18)。取付プレート20は、補強プレート16からさらに部材長手方向やや部材中央側の位置に、上フランジuf14と下フランジbf14の間で、内側プレート202がウェブ部w14のウェブ面と直交し、外側プレート201がウェブ面と平行かつ外方向に現れるように、溶接されている(
図18)。内側プレート202は補強プレート16の強度補強をさらに補強するように機能する。補強プレート16から取付プレート20(内側プレート202)までの距離ℓ3は、取付プレート20での工具の取り回しを考慮して、距離ℓ1と同程度あけられるのが好ましい。また、
図18で示すように、外側プレート201の外方向に現れる表面204は、上フランジuf14と下フランジbf14の外方向側端面fPLと面一に設けられる。外側プレート201には、少なくとも一箇所に、多用途孔203が設けられる。
【0045】
図19は、取付プレート20の好適な使用例1を示す図である。取付プレート20の多用途孔203には、クレーン用シャックルを取り付けるための吊りプレート50を取り付けることができる。吊りプレート50は、取付プレート20の多用途孔203に一致する固定孔(図示略)と吊り部52を有しており、ボルトナットで着脱可能に取付プレート20と一体化することができる。建物ユニット1´のフレーム体10´は、取付プレート20に吊りプレート50を固定したのち、吊り部52にシャックルを取り付けてワイヤーロープで吊り上げ、吊り作業終了後に吊りプレート50を取り外すことで、トラックや船への載せ降ろしが可能である。
【0046】
一般的なコンテナハウスやトレーラーハウスでは、建築部材を現地に持ち込み、現地でフレームから組み立てを行うか、工場で略完成形としたものに運搬治具を取り付けて現地に運搬する方法がよく見られる。運搬治具を取り付ける場合は、屋根などに一時的に穴を開けなければならない場合も多く見られる。これに対し、本形態の建物ユニット1´は、フレーム体10´までを工場で組み立てたのち、取付プレート20を利用して、フレーム体10´を吊ることが可能であるから、建物ユニット1´に穴を開けることなく、また、吊りプレート50を介することからフレーム体10´に歪みをもたらすことなく、運搬することが可能である。なお、多用途孔203は、吊り作業のバランスの観点から、点対称または左右線対称に二つ設けることが好ましく、さらには上下連結(
図9)をする際は、下段のフレーム体10´の支持強度の観点から、点対称に四つ設けることが、より好ましい。また、取付プレート20は、少なくとも天井梁(長辺)141に設けるものとするが、天井梁(短辺)142に設ける変形を行っても良い。
【0047】
図20は、取付プレート20の好適な使用例2を示す図である。取付プレート20の多用途孔203は、
図10に示す側方連結をする際に、ユニット境界部19の連結箇所を増やす追加連結孔として使用することができる。すなわち、一つ目のフレーム体10-1´の後ろ側の天井梁(長辺)141の取付プレート20と二つ目のフレーム体10-2´の前側の天井梁(長辺)141の取付プレート20を相対させ、前後で一対配置する多用途孔203をボルトナットで締結することで、連結が強化できる。この時、取付プレート20の表面204(外側プレート201の外方向に現れる表面204、
図18参照)は、フレーム体10´の端面(上フランジuf14と下フランジbf14の外方向側端面fPL)と面一であるため、追加連結が連結孔15の連結に干渉することは無い。また、取付プレート20を、天井梁(短辺)142、床梁(長辺)131、床梁(短辺)132に設け、追加連結孔を増やす変形を行うのも好ましい。
【0048】
以上、本形態の建物ユニット1´によれば、天井梁(長辺)141´に、多用途孔203を有する取付プレート20を備えているので、クレーンでの吊り作業が容易に可能であり、建物ユニット1´を欠損させることなく運搬が可能である。また、取付プレート20の多用途孔203は、建物ユニット1´の連結強化に使用することもできる。
【0049】
以上、本発明について、好適な実施の形態および変形例を述べたが、これらは本発明の一例であり、各形態および各変形を当業者の知識に基づいて組み合わせることが可能であり、そのような形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0050】
1、1´ 建物ユニット
6,7,8 構造用合板
9 性能材
10、10´ フレーム体
11 柱
W11 辺サイズ
12 ダイアフラム
121 リブ
L12 ダイアフラム外形長さ
13 床梁
131 床梁(長辺)
132 床梁(短辺)
14 天井梁
14´ 梁端部
141 天井梁(長辺)
142 天井梁(短辺)
w14 ウェブ部
uf14 上フランジ
bf14 下フランジ
fPL フランジ外側端面
wL14 ウェブ高
fL14 フランジ幅
15 連結孔
16 補強プレート
17 連結プレート
18 ユニット連結部
19 ユニット境界部
20 取付プレート
201 外側プレート(他方の面)
202 内側プレート(一方の面)
203 多用途孔
21、22、23、24 外壁
25 壁板材
40 天井
41 防水シート
30 床
50 吊りプレート
101、102、103、104 連結ユニット
【要約】
【課題】構造計算ができ、有効空間が広くコストダウンも図れ、連結棟数の拡張可能な建物ユニットを提供する。
【解決手段】上記課題解決のために、建物ユニット(1)では、四隅に配置された柱(11)と、前記柱の上下端部に設けられたダイアフラム(12)と、前記ダイアフラムに接続された床梁(13)および天井梁(14)と、からなる直方体のフレーム体(10)を備え、前記柱は角柱で、前記床梁および前記天井梁は断面溝型に構成され、外方向にのみ溝の開口部を向けるように配置され、前記床梁および前記天井梁の上フランジおよび下フランジには、前記床梁および前記天井梁の各梁端部から部材長手方向やや部材中央側の位置に、連結孔(15)が設けられている。
【選択図】
図3