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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】半導体増幅器
(51)【国際特許分類】
   H03F 3/195 20060101AFI20220906BHJP
【FI】
H03F3/195
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018131324
(22)【出願日】2018-07-11
(65)【公開番号】P2020010242
(43)【公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000154325
【氏名又は名称】住友電工デバイス・イノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【弁理士】
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124800
【弁理士】
【氏名又は名称】諏澤 勇司
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 直行
【審査官】工藤 一光
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-85613(JP,A)
【文献】特開2016-19068(JP,A)
【文献】国際公開第2005/015636(WO,A1)
【文献】特開2000-209038(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F3/189-3/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の底板と、前記底板上に載置された矩形の第1の開口を有する絶縁性の矩形の回路基板と、前記回路基板上の周縁部に載置され、前記第1の開口より大きく前記第1の開口全体を内部に囲む矩形の第2の開口を有する絶縁性の側壁部と、前記側壁部上に載置された蓋部とを有し、前記第1の開口及び前記第2の開口によって形成された空間を封止するパッケージと、
前記空間内の前記底板上に並んで搭載された第1のトランジスタ、第2のトランジスタと、
前記空間内の前記底板上の前記第1のトランジスタと前記第2のトランジスタとの間に搭載され、第1のトランジスタのドレインと第2のトランジスタのゲートとの間に接続された第1の整合回路と、
前記空間内の前記底板上の前記第2のトランジスタに対して前記第1のトランジスタの反対側に隣り合って搭載され、第2のトランジスタのドレインに接続された第2の整合回路と、
前記回路基板の一方の辺の中央に設けられ、前記第1のトランジスタのゲートに接続された入力端子と、
前記回路基板の前記一方の辺に対向する他方の辺の中央に設けられ、前記第2のトランジスタのドレインに前記第2の整合回路を介して接続された出力端子と、
前記回路基板の前記入力端子あるいは前記出力端子の一方を挟んだ位置に設けられ、前記第1のトランジスタのゲート及び前記第2のトランジスタのゲートにそれぞれ接続された第1のゲートバイアス端子及び第2のゲートバイアス端子と、
前記回路基板の前記入力端子あるいは前記出力端子の他方を挟んだ位置に設けられ、前記第1のトランジスタのドレイン及び前記第2のトランジスタのドレインにそれぞれ接続された第1のドレインバイアス端子及び第2のドレインバイアス端子と、を備え、
前記第1のトランジスタ、前記第1の整合回路、前記第2のトランジスタ、及び前記第2の整合回路は、前記入力端子と前記出力端子との間に直線的に配置されている、
半導体増幅器。
【請求項2】
前記入力端子及び前記出力端子は、それぞれ、前記第1のトランジスタのゲート及び前記第2の整合回路にそれぞれ接続された前記回路基板上の入力配線及び出力配線と、前記回路基板を貫通するビアホールによって接続されている、
請求項1記載の半導体増幅器。
【請求項3】
前記第1のゲートバイアス端子、前記第2のゲートバイアス端子、前記第1のドレインバイアス端子、及び前記第2のドレインバイアス端子は、それぞれ、前記回路基板上に設けられた配線部と、前記回路基板の側面に埋め込まれた金属を介して接続されている、
請求項1又は2に記載の半導体増幅器。
【請求項4】
前記回路基板上には、前記回路基板の側面及び前記第1の開口を形成する内壁において前記底板と接続されたグラウンド配線が形成され、
前記グラウンド配線は、前記入力端子あるいは前記出力端子と、前記第1のゲートバイアス端子、前記第2のゲートバイアス端子、前記第1のドレインバイアス端子、及び前記第2のドレインバイアス端子との間のそれぞれにおいて、前記底板と接続されている、
請求項1~3のいずれか1項に記載の半導体増幅器。
【請求項5】
前記回路基板は、前記一方の辺及び前記他方の辺を接続する二辺に第1の開口を形成する切込み部をそれぞれ有する、
請求項1~4のいずれか1項に記載の半導体増幅器。
【請求項6】
前記グラウンド配線は、前記空間において、前記入力端子に接続される入力配線、及び前記出力端子に接続される出力配線をそれぞれ挟み、前記第1のゲートバイアス端子及び前記第2のゲートバイアス端子に接続される配線部、あるいは前記第1のドレインバイアス端子及び前記第2のドレインバイアス端子に接続される配線部によって挟まれており、
前記グラウンド配線上には、前記第1のゲートバイアス端子及び前記第2のゲートバイアス端子に接続される配線部をバイパスする2つのキャパシタと、前記第1のドレインバイアス端子及び前記第2のドレインバイアス端子に接続される配線部をバイパスする2つのキャパシタと、が搭載されている、
請求項4に記載の半導体増幅器。
【請求項7】
前記第2の整合回路は、前記第2のトランジスタのドレインに接続され、前記入力端子と前記出力端子とを結ぶ仮想線に対して対称に配置された一対の回路要素を含み、
前記第2のドレインバイアス端子に接続される前記配線部は、前記一対の回路要素のそれぞれの前記仮想線側に、同一の長さのワイヤを介して接続されている、
請求項3に記載の半導体増幅器。
【請求項8】
前記第2のトランジスタのドレインと前記一対の回路要素とは、複数のワイヤを介して接続されており、前記複数のワイヤの長さは、前記仮想線から離れるにしたがって長く設定されている、
請求項7に記載の半導体増幅器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体増幅器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高周波信号を増幅する装置としては、絶縁基板上に複数のメタライズ面を設け、これらの1つに1つのトランジスタチップを載置し、絶縁基板上の別の接地メタライズ面に入力整合回路を載置したものが知られている(下記特許文献1参照)。この装置においては、絶縁基板の一方の辺に入力端子が設けられ、絶縁基板の他方の辺に出力端子が設けられている。
【0003】
また、2つのトランジスタを多段接続した高周波増幅器の構成として、パッケージ内の回路基板上に2つのトランジスタと整合回路とが載置されたものが知られている(下記特許文献2参照)。この増幅器においては、回路基板の第1の辺に、1段目のトランジスタのゲートに整合回路を介して入力信号を入力するための端子、1段目のトランジスタのゲートに整合回路を介してバイアスを供給するための端子、及び2段目のトランジスタのゲートに整合回路を介してバイアスを供給するための端子がこの順で設けられ、回路基板の第1の辺に対向する第2の辺に、1段目のトランジスタのドレインに整合回路を介してバイアスを供給するための端子、及び2段目のトランジスタのドレインに整合回路を介してバイアスを供給するための端子、及び2段目のトランジスタのドレインから整合回路を介して出力信号を出力するための端子がこの順で設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平5-243871号公報
【文献】特開2016-19068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献2に記載の高周波増幅器では、2つのトランジスタに対するバイアス供給用の端子が隣り合っているためにバイアスの干渉が生じてしまう。そのため、出力信号を安定して生成できない場合があった。
【0006】
そこで、本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、多段のトランジスタにおけるバイアスの干渉を防止して、安定した出力信号を生成する半導体増幅器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一側面に係る半導体増幅器は、金属製の底板と、底板上に載置された第1の開口を有する絶縁性の回路基板と、回路基板上の周縁部に載置され、第1の開口より大きく第1の開口を囲む第2の開口を有する絶縁性の側壁部と、側壁部上に載置された蓋部とを有し、第1の開口及び第2の開口によって形成された空間を封止するパッケージと、空間内の底板上に並んで搭載された第1のトランジスタ、第2のトランジスタと、空間内の底板上の第1のトランジスタと第2のトランジスタとの間に搭載され、第1のトランジスタのドレインと第2のトランジスタのゲートとの間に接続された第1の整合回路と、空間内の底板上の第2のトランジスタに対して第1のトランジスタの反対側に隣り合って搭載され、第2のトランジスタのドレインに接続された第2の整合回路と、回路基板の一方の辺の中央に設けられ、第1のトランジスタのゲートに接続された入力端子と、回路基板の一方の辺に対向する他方の辺の中央に設けられ、第2のトランジスタのドレインに第2の整合回路を介して接続された出力端子と、回路基板の入力端子あるいは出力端子の一方を挟んだ位置に設けられ、第1のトランジスタのゲート及び第2のトランジスタのゲートにそれぞれ接続された第1のゲートバイアス端子及び第2のゲートバイアス端子と、回路基板の入力端子あるいは出力端子の他方を挟んだ位置に設けられ、第1のトランジスタのドレイン及び第2のトランジスタのドレインにそれぞれ接続された第1のドレインバイアス端子及び第2のドレインバイアス端子と、を備え、第1のトランジスタ、第1の整合回路、第2のトランジスタ、及び第2の整合回路は、入力端子と出力端子との間に直線的に配置されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、多段のトランジスタにおけるバイアスの干渉を防止して、安定した出力信号を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る半導体増幅器の斜視図である。
図2図1の半導体増幅器のパッケージを構成する底板及び回線基板の裏面図である。
図3図1の半導体増幅器のパッケージを構成する底板及び回線基板の平面図である。
図4図1の半導体増幅器のパッケージを構成する側壁部の平面図である。
図5図1の半導体増幅器から蓋部を取り除いた状態を示す平面図である。
図6図1の半導体増幅器の内部における回路素子の搭載状態を示す平面図である。
図7図1の半導体増幅器1の回路構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一側面に係る半導体増幅器は、金属製の底板と、底板上に載置された第1の開口を有する絶縁性の回路基板と、回路基板上の周縁部に載置され、第1の開口より大きく第1の開口を囲む第2の開口を有する絶縁性の側壁部と、側壁部上に載置された蓋部とを有し、第1の開口及び第2の開口によって形成された空間を封止するパッケージと、空間内の底板上に並んで搭載された第1のトランジスタ、第2のトランジスタと、空間内の底板上の第1のトランジスタと第2のトランジスタとの間に搭載され、第1のトランジスタのドレインと第2のトランジスタのゲートとの間に接続された第1の整合回路と、空間内の底板上の第2のトランジスタに対して第1のトランジスタの反対側に隣り合って搭載され、第2のトランジスタのドレインに接続された第2の整合回路と、回路基板の一方の辺の中央に設けられ、第1のトランジスタのゲートに接続された入力端子と、回路基板の一方の辺に対向する他方の辺の中央に設けられ、第2のトランジスタのドレインに第2の整合回路を介して接続された出力端子と、回路基板の入力端子あるいは出力端子の一方を挟んだ位置に設けられ、第1のトランジスタのゲート及び第2のトランジスタのゲートにそれぞれ接続された第1のゲートバイアス端子及び第2のゲートバイアス端子と、回路基板の入力端子あるいは出力端子の他方を挟んだ位置に設けられ、第1のトランジスタのドレイン及び第2のトランジスタのドレインにそれぞれ接続された第1のドレインバイアス端子及び第2のドレインバイアス端子と、を備え、第1のトランジスタ、第1の整合回路、第2のトランジスタ、及び第2の整合回路は、入力端子と出力端子との間に直線的に配置されている。
【0011】
このような半導体増幅器によれば、パッケージの空間内の底板上におけるパッケージの一方の辺の中央部に設けられた入力端子と他方の辺の中央部に設けられた出力端子との間には、第1のトランジスタ、第1のトランジスタのドレイン出力を受ける第1の整合回路、第2のトランジスタ、及び第2のトランジスタのドレイン出力を受ける第2の整合回路が、この順で直線的に並んで搭載されている。また、第1及び第2のトランジスタのゲートにバイアスを供給するための2つのゲートバイアス端子が、パッケージの端部において入力端子あるいは出力端子を挟んだ位置に設けられ、第1及び第2のトランジスタのドレインにバイアスを供給するための2つのドレインバイアス端子が、パッケージの端部において入力端子あるいは出力端子を挟んだ位置に設けられる。このような構成おいては、入力端子から入力された入力信号が2段構成のトランジスタによって増幅されることによって出力信号が生成され、出力信号が出力端子から出力される。この際、第1及び第2のトランジスタが第1及び第2の整合回路とともに入力端子と出力端子との間で直線上に並んでおり、第1及び第2のトランジスタには入力端子あるいは出力端子を挟んだ2つの端子からバイアスが供給されるので、第1及び第2のトランジスタ間でのバイアスの干渉が防止される。その結果、多段のトランジスタにおけるバイアスの干渉を防止して、安定したレベルの出力信号を生成することができる。
【0012】
上述した半導体増幅器においては、入力端子及び出力端子は、それぞれ、第1のトランジスタのゲート及び第2の整合回路にそれぞれ接続された回路基板上の入力配線及び出力配線と、回路基板を貫通するビアホールによって接続されている、ことが好適である。このような構成では、入力端子及び出力端子とパッケージ内の底板上の第1のトランジスタ及び第2の整合回路とを、短い距離の配線によって接続することができる。その結果、出力信号の劣化を防止できる。
【0013】
また、第1のゲートバイアス端子、第2のゲートバイアス端子、第1のドレインバイアス端子、及び第2のドレインバイアス端子は、それぞれ、回路基板上に設けられた配線部と、回路基板の側面に埋め込まれた金属を介して接続されている、ことも好適である。この場合、2つのゲートバイアス端子及び2つのドレインバイアス端子と2つのトランジスタとを、短い距離の配線によって接続することができる。その結果、出力信号のレベルをさらに安定化できる。
【0014】
さらに、回路基板上には、回路基板の側面及び第1の開口を形成する内壁において底板と接続されたグラウンド配線が形成され、グラウンド配線は、入力端子あるいは出力端子と、第1のゲートバイアス端子、第2のゲートバイアス端子、第1のドレインバイアス端子、及び第2のドレインバイアス端子との間のそれぞれにおいて、底板と接続されている、ことが好適である。この場合、回路基板上のグラウンド配線と底板との電気的接続を確保することができ、出力信号の劣化をさらに防止できる。
【0015】
また、回路基板は、一方の辺及び他方の辺を接続する二辺に第1の開口を形成する切込み部をそれぞれ有する、ことも好適である。かかる構成を採れば、2つのドレインバイアス端子が接続される回路基板上の配線部と、2つのゲートバイアス端子が接続される回路基板上の配線部とをアイソレートすることができ、多段のトランジスタにおけるバイアスの干渉を防止して、安定したレベルの出力信号を生成することができる。
【0016】
また、グラウンド配線は、空間において、入力端子に接続される入力配線、及び出力端子に接続される出力配線をそれぞれ挟み、第1のゲートバイアス端子及び第2のゲートバイアス端子に接続される配線部、あるいは第1のドレインバイアス端子及び第2のドレインバイアス端子に接続される配線部によって挟まれており、グラウンド配線上には、第1のゲートバイアス端子及び第2のゲートバイアス端子に接続される配線部をバイパスする2つのキャパシタと、第1のドレインバイアス端子及び第2のドレインバイアス端子に接続される配線部をバイパスする2つのキャパシタと、が搭載されている、ことも好適である。この場合、各バイアス端子に接続されるバイパスキャパシタを同等のインダクタンス成分を含む配線部を介してグラウンドに接続することができ、このインダクタンス成分に起因する共振を防止するための設計条件を各バイアス端子間で共通化することができる。その結果、半導体チップおよび受動部品の実装設計が簡略化される。
【0017】
さらに、第2の整合回路は、第2のトランジスタのドレインに接続され、入力端子と出力端子とを結ぶ仮想線に対して対称に配置された一対の回路要素を含み、第2のドレインバイアス端子に接続される配線部は、一対の回路要素のそれぞれの仮想線側に、同一の長さのワイヤを介して接続されている、ことも好適である。こうすれば、サイズの比較的大きい第2のトランジスタの出力特性を安定化することができるとともに、第2のトランジスタのドレインに供給されるバイアスも安定化することができる。その結果、安定した出力信号を生成することができる。
【0018】
さらに、第2のトランジスタのドレインと一対の回路要素とは、複数のワイヤを介して接続されており、複数のワイヤの長さは、仮想線から離れるにしたがって長く設定されている、ことも好適である。かかる構成を採れば、第2のトランジスタと出力端子間とを接続する複数のワイヤ間で実効的なインダクタンス成分を同等とすることができ、安定した出力信号を生成することができる。
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
[半導体増幅器の構成]
【0020】
図1は、実施形態に係る半導体増幅器の斜視図、図2は、半導体増幅器のパッケージを構成する底板及び回線基板の裏面図、図3は、パッケージを構成する底板及び回線基板の平面図、図4は、パッケージを構成する側壁部の平面図、図5は、半導体増幅器から蓋部を取り除いた状態を示す平面図である。実施形態に係る半導体増幅器1は、8.5~10.1GHz等のXバンドの周波数帯を対象とする増幅器であり、例えばレーダー等の装置に内蔵されて使用される。
【0021】
図1に示すように、半導体増幅器1は、金属製(例えば、銅製)の底板2、配線基板3、側壁部4、及び蓋部5の4層構造を有するパッケージ6内に回路素子が収容されて構成される。図2及び図3に示すように、配線基板3は、アルミナ等の絶縁性材料からなる矩形平板部材であり、中央部が略矩形の開口7を有する。この配線基板3は、開口7が底板2で覆われた状態で底板2と接合されている。この配線基板3の底板2と反対側の面10の周縁部には、図4に示すような開口7より大きい開口8が形成された矩形リング状の絶縁性材料(アルミナ等)からなる側壁部4が、開口8の内部に開口7全体を囲んで接合される(図5)。この側壁部4の配線基板3と反対側の面には、金属製のシールリングが設けられており、そのシールリングには、絶縁性材料(アルミナ等)からなる矩形平板状の蓋部5が開口8を覆った状態で固定される。このような構造、すなわち、配線基板3、側壁部4、及び蓋部5が、底板2上にこの順で載置された構造によって、開口7及び開口8によって形成される底板2上の空間が封止される。
【0022】
パッケージ6のサイズは特定のサイズには限定されないが、例えば、その水平サイズが8.7mm×8.3mmであり、底板2の厚さが約0.5mm、配線基板3及び側壁部4を合わせた厚さが約0.8mmである。
【0023】
また、パッケージ6の底面、すなわち、配線基板3の裏面11には、第1の辺3aの中央にその辺3aに対して垂直に延びる導電性の入力端子TINが設けられ、その第1の辺3aの入力端子TINを挟んだ両端部には、2つのゲートバイアス端子T1G,T2Gが設けられている。また、裏面11には、第1の辺3aに対向する第2の辺3bの中央にその辺3bに対して垂直に延びる導電性の出力端子TOUTが設けられ、その第2の辺3bの出力端子TOUTを挟んだ両端部には、2つのドレインバイアス端子T1D,T2Dが設けられている。入力端子TINは、入力信号を外部から入力するための端子であり、出力端子TOUTは、外部に増幅された信号を出力するための端子であり、2つのゲートバイアス端子T1G,T2Gは、パッケージ6内の2つのトランジスタにゲートバイアスを供給するための端子であり、2つのドレインバイアス端子T1D,T2Dは、それらのトランジスタにドレインバイアスを供給するための端子である。
【0024】
さらに、底板2には、配線基板3の2つの辺3a,3bを接続する第3の辺3c及び第4の辺3dのそれぞれの中央部において、それらの辺3c,3dに垂直に延びるグラウンド端子TGNDが形成されている。加えて、底板2には、第1の辺3aにおける入力端子TINと2つのゲートバイアス端子T1G,T2Gのそれぞれとの間に、その辺3aから垂直に突出する2つの突出部9が形成され、第2の辺3bにおける出力端子TOUTと2つのドレインバイアス端子T1D,T2Dのそれぞれとの間にも、その辺3bから垂直に突出する2つの突出部9が形成されている。グラウンド端子TGNDは、底板2をグラウンドに接続するための端子であり、突出部9は、底板2と配線基板3上の配線部とを電気的に接続するための接続部材である。
【0025】
ここで、配線基板3の構成についてより詳細に説明する。
【0026】
配線基板3に形成される開口7は、第3の辺3cの中央部に向かって突出する凸状の切込み部7aと、第4の辺3dの中央部に向かって突出する凸状の切込み部7bとを有している。そして、配線基板3の底板2と反対側の面10において、切込み部7aと第1の辺3aとの間には導電性の配線部L2Gが形成され、切込み部7aと第2の辺3bとの間には導電性の配線部L2Dが形成されている。同様に、面10において、切込み部7bと第1の辺3aとの間には導電性の配線部L1Gが形成され、切込み部7bと第2の辺3bとの間には導電性の配線部L1Dが形成されている。これらの配線部L2G,L2D,L1G,L1Dは、それぞれ、配線基板3の側面に設けられた窪み部12に埋め込まれた金属を介して、ゲートバイアス端子T2G、ドレインバイアス端子T2D、ゲートバイアス端子T1G、及びドレインバイアス端子T1Dと電気的に接続されている。例えば、配線基板3に回路素子をソルダリングした際に、半田フィレットが窪み部12に形成され、配線部L2G,L2D,L1G,L1Dと、ゲートバイアス端子T2G、ドレインバイアス端子T2D、ゲートバイアス端子T1G、及びドレインバイアス端子T1Dとのそれぞれが接続される。
【0027】
また、面10上において、開口7と第1の辺3aの中央部との間には、開口7近傍から辺3aの手前まで辺3aに垂直に伸びる直線状の導電性の配線部LINが形成され、開口7と第2の辺3bの中央部との間には、開口7近傍から辺3bの手前まで伸びる直線状の導電性の配線部LOUTが形成されている。これらの配線部LIN,LOUTは、それぞれ、配線基板3を貫通するビアホール13を介して入力端子TIN及び出力端子TOUTと電気的に接続されている。
【0028】
さらに、面10上において、開口7と第1の辺3aとの間には、開口7から辺3aに至るまで、2つの配線部LGNDが形成され、開口7と第2の辺3bとの間にも、開口7から辺3bに至るまで、2つの配線部LGNDが形成されている。これらの4つの配線部LGNDは、それぞれ、配線部L2Gと配線部LINとの間、配線部L1Gと配線部LINとの間、配線部L2Dと配線部LOUTとの間、及び配線部L1Dと配線部LOUTとの間において形成されている。それぞれの配線部LGNDは、配線基板3の側面に設けられた窪み部14に埋め込まれた金属及び突出部9を介して、底板2と電気的に接続されると同時に、配線基板3の開口7の内壁に形成された窪み部15に埋め込まれた金属を介して、底板2と電気的に接続されている。これにより、配線部LGNDが接地される。例えば、配線基板3に回路素子をソルダリングした際に、半田フィレットが窪み部14,15に形成され、各配線部LGNDと底板2とが接続される。
【0029】
上述したように、側壁部4の上面にはシールリングが配置されている。このシールリングは、側壁部4の外側の側面に形成された窪み部16及び配線基板3の窪み部14に跨って埋め込まれた金属と突出部9とを介して、底板2に電気的に接続されるとともに、側壁部4の内側の側面に形成された窪み部17に埋め込まれた金属及び配線部LGNDを介して、底板2に電気的に接続される(図5)。これにより、側壁部4のシールリングが接地される。例えば、配線基板3に回路素子をソルダリングした際に、半田フィレットが窪み部16,17に形成され、シールリングと底板2とが接続される。
【0030】
上述した構造のパッケージ6内には、開口7と開口8とで形成される空間内に各回路素子が搭載される。以下、図6、及び図7を参照しながら、半導体増幅器1における回路素子の搭載形態及び回路構成について説明する。図6は、半導体増幅器1内部における回路素子の搭載状態を示す平面図、図7は、は半導体増幅器1の回路構成を示す回路図である。 半導体増幅器1のパッケージ6内には、3個のバイアス用の抵抗素子R11,R12,R2、8個のキャパシタC1,C3,C21,C22,C41,C42,C61,C71,C72、2段のトランジスタ21a,21b、及び2つの整合回路22a,22bが搭載されている。これらのうち前段のトランジスタ21a、整合回路22a、後段のトランジスタ21b、整合回路22bは、パッケージ6内の底板2上において、入力端子TINと出力端子TOUTとの間にこの順で直線的に並ぶように配置される。
【0031】
2段のトランジスタ21a,21bは、例えば、主にGaN系材料で構成されるHEMT(High Electron Mobility Transistor)等の電界効果型トランジスタであり、開口7の内側の底板2上に並んで配置されている。トランジスタ21bのサイズはトランジスタ21aのサイズより大きく、トランジスタ21aとトランジスタ21bとのサイズ比は例えば1:5である。前段のトランジスタ21aは、開口7内の縁部の配線基板3上の配線部LINの近傍に配置され、そのゲート23aが配線部LINにボンディングワイヤにより電気的に接続される。後段のトランジスタ21bは、開口7内の中央部において整合回路22aを挟んでトランジスタ21aから配線部LOUT側に分離して配置されている。
【0032】
キャパシタC1,C3,C21,C41,C61,C71は、配線基板3上の配線部LGND上に裏面が直接接触した状態で搭載されるダイキャパシタである。キャパシタC22,C42,C72は、開口7内の底板2上に裏面が直接接触した状態で搭載されるダイキャパシタである。
【0033】
抵抗素子R11,R12は、底板2上においてトランジスタ21aに配線基板3の辺3d側に隣接して配置され、抵抗チップ上で互いに直列に接続されて構成される。抵抗素子R11,R12は、表面に複数の電極を有する抵抗チップ上で直列に接続され、抵抗素子R11側の端子が、底板2上に配置されたキャパシタC22の表面を経由してボンディングワイヤによって配線部L1Gに接続され、2つの抵抗素子R11,R12の中間点の端子が、トランジスタ21aのゲート23aにボンディングワイヤによって接続され、抵抗素子R12側の端子が、配線基板3上のキャパシタC3の表面に接続される。さらに、配線部L1Gは、配線基板3上のキャパシタC21の表面にボンディングワイヤにより接続され、配線部LINは、配線基板3上のキャパシタC1の表面にボンディングワイヤにより接続される。さらに、入力端子TINにはパッケージ6外部においてカップリングキャパシタが接続される。
【0034】
このような構成により、トランジスタ21aのゲート23aには、ゲートバイアス端子T1Gから抵抗素子R11を経由してゲートバイアスが供給可能とされると同時に、カップリングキャパシタを経由して入力端子TINから入力信号が供給される。また、このゲート23aは、抵抗素子R12、キャパシタC3を経由して接地される。さらに、ゲートバイアス端子T1Gは、キャパシタC21及びキャパシタC22により高周波的にバイパスされる。
【0035】
後段のトランジスタ21bにおいては、ゲート23bが抵抗素子R2を介してキャパシタC42の表面を経由したボンディングワイヤによって配線部L2Gに接続される。さらに、配線部L2Gは、配線基板3上のキャパシタC41の表面にボンディングワイヤにより接続される。このような接続により、ゲート23bには、ゲートバイアス端子T2Gから抵抗素子R2を経由してゲートバイアスが供給可能とされる。また、ゲートバイアス端子T2Gは、キャパシタC41及びキャパシタC42により高周波的にバイパスされる。
【0036】
前段のトランジスタ21aにおいては、ソースはビアホール(図示せず)によって底板2に接続される。また、トランジスタ21aのドレイン24aは、底板2上の整合回路22aの表面電極及びキャパシタC72の表面を経由したボンディングワイヤによって、配線部L1Dに接続される。また、配線部L1Dは、配線基板3上のキャパシタC71の表面にボンディングワイヤにより接続される。このような接続により、ドレイン24aには、ドレインバイアス端子T1Dからドレインバイアスが供給可能とされる。また、ドレインバイアス端子T1Dは、キャパシタC71及びキャパシタC72により高周波的にバイパスされる。
【0037】
整合回路22aは、底板2上において2段のトランジスタ21a,21bの間に搭載され、ダイキャパシタであるマッチング回路25a上にダイキャパシタであるキャパシタC5が、キャパシタC5の裏面がマッチング回路25aの表面に接触するように搭載された構成を有する。この整合回路22aは、トランジスタ21bのサイズに対応して、入力端子TINと出力端子TOUTとを結ぶ仮想線L0に対して対称な一対の回路要素を有し、それぞれの回路要素にマッチング回路25a及びキャパシタC5を含む。このような二分された構成により、仮想線L0に対して垂直な方向に広く配置された後段のトランジスタ21bの各フィンガー電極に対して、初段のトランジスタ21aの出力を電気的に均等に出力することができる。この2つのキャパシタC5の表面は、ボンディングワイヤによって前段のトランジスタ21aのドレイン24aが直接接続され、2つのマッチング回路25aの表面には、複数のボンディングワイヤによって後段のトランジスタ21bのゲート23bが接続されている。
【0038】
このような整合回路22aの構成では、前段のトランジスタ21aのドレイン24aとキャパシタC5との間のボンディングワイヤに含まれるインダクタンス成分、マッチング回路25a、及びマッチング回路25aと後段のトランジスタ21bのゲート23bとの間のボンディングワイヤに含まれるインダクタンス成分によってT型LCL回路が構成される。これにより、インピーダンス変換によって、ドレイン24aから見えるインピーダンスを出力インピーダンスに近づけることができ、効率的な信号増幅が可能となる。また、前段のトランジスタ21aのドレイン24aにキャパシタC71,C72が直接接続されているが、キャパシタC72とキャパシタC5とを接続するボンディングワイヤのインダクタンス成分によって、ドレイン24aとドレインバイアス端子T1Dに接続される電源とは高周波的にアイソレートされる。
【0039】
後段のトランジスタ21bにおいては、ソースはビアホール(図示せず)によって底板2に接続される。また、トランジスタ21bのドレイン24bは、底板2上の整合回路22bの表面電極を経由したボンディングワイヤによって、配線部L2Dに接続される。また、配線部L2Dは、配線基板3上のキャパシタC61の表面にボンディングワイヤにより接続される。さらに、トランジスタ21bのドレイン24bは、整合回路22bの表面電極を経由したボンディングワイヤによって、配線部LOUTにも接続される。加えて、出力端子TOUTにはパッケージ6外部においてカップリングキャパシタが接続される。このような接続により、ドレイン24bには、ドレインバイアス端子T2Dからドレインバイアスが供給可能とされる。また、ドレインバイアス端子T2Dは、キャパシタC61により高周波的にバイパスされる。さらに、トランジスタ21bによって生成される出力信号は、ドレイン24bから整合回路22bを経由して出力端子TOUTに出力される。
【0040】
整合回路22bは、底板2上において後段のトランジスタ21bに隣接して出力端子TOUT側に搭載されたダイキャパシタであるマッチング回路である。この整合回路22aは、トランジスタ21bのサイズに対応して、入力端子TINと出力端子TOUTとを結ぶ仮想線L0に対して対称な一対の回路要素26x,26yを有する。一対の回路要素26x,26yは、それぞれ、後段のトランジスタ21bのドレイン24bに、仮想線L0に沿った複数(例えば、4本)のボンディングワイヤによって接続され、これらのボンディングワイヤの長さは、仮想線L0から離れるにしたがって長くなるように設定される。また、2つの回路要素26x,26yは、それぞれ、回路要素26x,26yの表面電極上の仮想線L0寄りに接続点を有する複数(例えば、2本)のボンディングワイヤによって、配線部L2Dに接続され、これらのボンディングワイヤは、同一の長さとなるように設定される。このような二分された構成により、仮想線L0に対して垂直な方向に広く配置された後段のトランジスタ21bの各フィンガー電極から出力端子TOUTまでの距離の差を小さくすることができる。
【0041】
このような整合回路22bの構成では、後段のトランジスタ21bのドレイン24bと整合回路22bとの間のワイヤリングに含まれるインダクタンス成分、整合回路22b、及び整合回路22bと配線部LOUTとの間のボンディングワイヤに含まれるインダクタンス成分によってT型LCL回路が構成される。これにより、インピーダンス変換によって、ドレイン24bから見えるインピーダンスを出力インピーダンスに近づけることができ、効率的な信号出力が可能となる。また、後段のトランジスタ21bのドレイン24bにキャパシタC61が直接接続されているが、配線部L2Dと整合回路22bとを接続するボンディングワイヤのインダクタンス成分によって、ドレイン24bとドレインバイアス端子T2Dに接続される電源とは高周波的にアイソレートされる。
【0042】
本実施形態の半導体増幅器1においては、パッケージ6の空間内の底板2上における辺3aの中央部に設けられた入力端子TINと辺3bの中央部に設けられた出力端子TOUTとの間には、トランジスタ21a、整合回路22a、トランジスタ21b、及び整合回路22bが、この順で直線的に並んで搭載されている。また、2段のトランジスタ21a,21bのゲート23a,23bにバイアスを供給するための2つのゲートバイアス端子T1G,T2Gが、パッケージ6の端部において入力端子TINを挟んだ位置に設けられ、2段のトランジスタ21a,21bのドレイン24a,24bにバイアスを供給するための2つのドレインバイアス端子T1D,T2Dが、パッケージ6の端部において出力端子TOUTを挟んだ位置に設けられる。このような構成おいては、入力端子TINから入力された入力信号が2段構成のトランジスタ21a,21bによって増幅されることによって出力信号が生成され、出力信号が出力端子TOUTから出力される。この際、2段のトランジスタ21a,21bが2つの整合回路22a,22bとともに入力端子TINと出力端子TOUTとの間で直線上に並んでおり、2段のトランジスタ21a,21bには入力端子TINあるいは出力端子TOUTを挟んだ2つの端子からバイアスが供給されるので、2段のトランジスタ21a,21b間でのバイアスの干渉が防止される。その結果、多段のトランジスタにおけるバイアスの干渉を防止して、安定したレベルの出力信号を生成することができる。
【0043】
また、半導体増幅器1においては、入力端子TIN及び出力端子TOUTは、それぞれ、前段のトランジスタ21aのゲート23a及び整合回路22bにそれぞれ接続された配線基板3上の配線部LIN及び配線部LOUTと、配線基板3を貫通するビアホールによって接続されている。このような構成では、入力端子TIN及び出力端子TOUTと、パッケージ6内の底板2上のトランジスタ21a及び整合回路22bとを、短い距離の配線によって接続することができる。その結果、出力信号の劣化を防止できる。
【0044】
また、ゲートバイアス端子T1G、ゲートバイアス端子T2G、ドレインバイアス端子T1D、及びドレインバイアス端子T2Dは、それぞれ、配線基板3上に設けられた配線部L1G,L2G,L1D,L2Dと、配線基板3の側面の窪み部に埋め込まれた金属を介して接続されている。この場合、2つのゲートバイアス端子T1G,T2G及び2つのドレインバイアス端子T1D,T2Dと2つのトランジスタ21a,21bとを、短い距離の配線によって接続することができる。その結果、出力信号のレベルをさらに安定化できる。
【0045】
さらに、配線基板3上には、配線基板3の側面及び開口7を形成する内壁において底板2と接続された配線部LGNDが形成され、配線部LGNDは、入力端子TINあるいは出力端子TOUTと、ゲートバイアス端子T1G、ゲートバイアス端子T2G、ドレインバイアス端子T1D、及びドレインバイアス端子T2Dとの間のそれぞれにおいて、底板2と接続されている。この場合、配線基板3上の配線部LGNDと底板2との電気的接続を確保することができ、出力信号の劣化をさらに防止できる。
【0046】
また、本実施形態では、バイアスを供給するためのゲートバイアス端子T1G、ゲートバイアス端子T2G、ドレインバイアス端子T1D、及びドレインバイアス端子T2Dに接続されるバイパスキャパシタC21,C41,C71,C61が、パッケージ6内の配線基板3上に搭載され、これらのバイパスキャパシタC21,C41,C71,C61にはワイヤを介してバイアス端子が接続されている。この接続構成は、各バイアス端子において共通である。すなわち、キャパシタC21,C41,C71,C61が、直接グラウンドに接続される底板2上ではなく、配線基板3の配線部LGND上に搭載されている。この配線部LGNDは、配線基板3の側面を経由して底板2に接続されていることから、キャパシタC21,C41,C71,C61の搭載位置から底板2までの間には僅かながらインダクタンス成分が存在している。それゆえに、インダクタンス成分が必然的に生じたとしてもその成分は各バイアス端子において同等であるため、このようなインダクタンス成分に起因する共振周波数を、半導体増幅器1の動作帯域外に設定する条件を共通化することができる。あるバイアス端子について高周波信号の影響を回避する条件を見出せば、その条件を他のバイアス端子についても適用することが可能となり、半導体チップおよび受動素子の実装設計が簡略化される。
【0047】
また、ドレインバイアス端子T2D以外のバイアス端子T1G,T2G,T1Dには、追加のキャパシタC22,C42,C72が、上記のバイパスキャパシタC21,C41,C71と並列に接続される。そして、このキャパシタC22,C42,C72は、底板2上に直接搭載され、ボンディングワイヤの影響が低減されている。そして、このキャパシタC22,C42,C72を、開口7の切込み部7aの内側に搭載することにより、底板2上の実装尤度を拡大させている。また、この切込み部7aの存在により、バイアス端子T1Gとバイアス端子T1Dとの間、およびバイアス端子T2Gとバイアス端子T2Dとの間におけるアイソレーション効果も高められている。トランジスタ21a,21bはパッケージ6の中央に搭載されているので、各バイアス端子からの配線がパッケージ6の中央まで伸びている。その結果パッケージ6の中央部では配線部間の距離が狭くなるので、バイアス端子間に切込みを設け、そこに底板2に直接搭載されるキャパシタを配置することにより、バイアス配線の間を電気的に分離することができる。その結果、トランジスタ21a,21bにおけるバイアスの干渉を防止して、安定したレベルの出力信号を生成することができる。
【0048】
さらに、整合回路22bにおいては、一対の回路要素26x,26yが、同一の長さの複数のボンディングワイヤを介して配線部L2Dに接続されている。こうすれば、チップサイズが大きくゲート幅が大きいトランジスタ21bの出力特性を安定化することができるとともに、トランジスタ21bのドレイン24bに供給されるバイアスも安定化することができる。その結果、安定した出力信号を生成することができる。
【0049】
また、トランジスタ21bのドレイン24bと一対の回路要素26x,26yとは、複数のボンディングワイヤを介して接続されており、複数のボンディングワイヤの長さは、仮想線L0から離れるにしたがって長く設定されている。このような構成により、トランジスタ21bと出力端子TOUT間とを接続する複数のボンディングワイヤにおいて実効的な相互インダクタンス成分を同等とすることができ、安定した出力信号を生成することができる。
【0050】
以上、好適な実施の形態において本発明の原理を図示し説明してきたが、本発明は、そのような原理から逸脱することなく配置および詳細において変更され得ることは、当業者によって認識される。本発明は、本実施の形態に開示された特定の構成に限定されるものではない。したがって、特許請求の範囲およびその精神の範囲から来る全ての修正および変更に権利を請求する。
【0051】
例えば、上記実施形態の半導体増幅器1においては、ゲートバイアス端子T1G,T2Gが出力端子TOUTを挟んだ位置に設けられてもよいし、ドレインバイアス端子T1D,T2Dが入力端子TINを挟んだ位置に設けられてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1…半導体増幅器、2…底板、3…配線基板、3a,3b,3c,3d…辺、4…側壁部、5…蓋部、6…パッケージ、7,8…開口、7a,7b…切込み部、13…ビアホール、21a,21b…トランジスタ、22a,22b…整合回路、23a,23b…ゲート、24a,24b…ドレイン、26x,26y…回路要素、C1,C3,C21,C22,C41,C42,C61,C71,C72…キャパシタ、L0…仮想線、L1G,L2G,L1D,L2D…配線部、LGND…配線部(グラウンド配線)、LIN…配線部(入力配線)、LOUT…配線部(出力配線)、T1D,T2D…ドレインバイアス端子、T1G,T2G…ゲートバイアス端子、TIN…入力端子、TOUT…出力端子。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7