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特許71365273-[(3S)-7-ブロモ-2-オキソ-5-(ピリジン-2-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-[1,4]-ベンゾジアゼピン-3-イル]プロピオン酸メチルエステルの調製方法及びその方法に有用な化合物
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  • 特許-3-[(3S)-7-ブロモ-2-オキソ-5-(ピリジン-2-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-[1,4]-ベンゾジアゼピン-3-イル]プロピオン酸メチルエステルの調製方法及びその方法に有用な化合物 図1
  • 特許-3-[(3S)-7-ブロモ-2-オキソ-5-(ピリジン-2-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-[1,4]-ベンゾジアゼピン-3-イル]プロピオン酸メチルエステルの調製方法及びその方法に有用な化合物 図2
  • 特許-3-[(3S)-7-ブロモ-2-オキソ-5-(ピリジン-2-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-[1,4]-ベンゾジアゼピン-3-イル]プロピオン酸メチルエステルの調製方法及びその方法に有用な化合物 図3
  • 特許-3-[(3S)-7-ブロモ-2-オキソ-5-(ピリジン-2-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-[1,4]-ベンゾジアゼピン-3-イル]プロピオン酸メチルエステルの調製方法及びその方法に有用な化合物 図4
  • 特許-3-[(3S)-7-ブロモ-2-オキソ-5-(ピリジン-2-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-[1,4]-ベンゾジアゼピン-3-イル]プロピオン酸メチルエステルの調製方法及びその方法に有用な化合物 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】3-[(3S)-7-ブロモ-2-オキソ-5-(ピリジン-2-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-[1,4]-ベンゾジアゼピン-3-イル]プロピオン酸メチルエステルの調製方法及びその方法に有用な化合物
(51)【国際特許分類】
   C07D 401/04 20060101AFI20220906BHJP
   C07D 213/50 20060101ALI20220906BHJP
   C07D 487/04 20060101ALI20220906BHJP
   A61K 31/5517 20060101ALN20220906BHJP
   A61P 21/02 20060101ALN20220906BHJP
   A61P 23/00 20060101ALN20220906BHJP
   A61P 25/00 20060101ALN20220906BHJP
   A61P 25/20 20060101ALN20220906BHJP
   A61P 25/22 20060101ALN20220906BHJP
   A61P 25/28 20060101ALN20220906BHJP
【FI】
C07D401/04
C07D213/50 CSP
C07D487/04 154
A61K31/5517
A61P21/02
A61P23/00
A61P25/00 101
A61P25/20
A61P25/22
A61P25/28
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020504174
(86)(22)【出願日】2018-07-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-10-08
(86)【国際出願番号】 EP2018070414
(87)【国際公開番号】W WO2019020790
(87)【国際公開日】2019-01-31
【審査請求日】2021-02-12
(31)【優先権主張番号】P201730986
(32)【優先日】2017-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】ES
(73)【特許権者】
【識別番号】520027187
【氏名又は名称】モエス、イベリカ、ソシエダッド、リミターダ
【氏名又は名称原語表記】MOEHS IBERICA S.L.
(74)【代理人】
【識別番号】100107342
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 修孝
(74)【代理人】
【識別番号】100155631
【弁理士】
【氏名又は名称】榎 保孝
(74)【代理人】
【識別番号】100137497
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 未知子
(74)【代理人】
【識別番号】100207907
【弁理士】
【氏名又は名称】赤羽 桃子
(72)【発明者】
【氏名】カルレス、サンチェス、カザルス
(72)【発明者】
【氏名】アリシア、ドバロ、ロドリゲス
【審査官】阿久津 江梨子
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-505207(JP,A)
【文献】THEODORA W. GREENE et al.,CHAPTER 10: REACTIVITIES, REAGENTS, AND REACTIVITY CHARTS,PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS, THIRD EDITION,JOHN WILEY & SONS, INC.,1999年,pp. 701-707, 736-739
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 401/04
C07D 213/50
C07D 487/04
A61K 31/5517
A61P 21/02
A61P 23/00
A61P 25/00
A61P 25/20
A61P 25/22
A61P 25/28
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(D)の3-[(3S)-7-ブロモ-2-オキソ-5-(ピリジン-2-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-[1,4]-ベンゾジアゼピン-3-イル]プロピオン酸メチルエステル
【化1】
を調製する方法であって、
式(I-C)の(4S)-4-アミノ-5-[4-ブロモ-2-(ピリジン-2-カルボニル)アニリノ]-5-オキソ-ペンタン酸メチル臭化水素酸塩
【化2】
を塩基と反応させる工程を含み、
式(I-C)の前記化合物を、(4S)-4-(ベンジルオキシカルボニルアミノ)-5-[4-ブロモ-2-(ピリジン-2-カルボニル)アニリノ]-5-オキソ-ペンタン酸メチル(I-B)
【化3】
と臭化水素酸とを反応させることにより調製することを特徴とする、方法。
【請求項2】
式(I-B)の(4S)-4-(ベンジルオキシカルボニルアミノ)-5-[4-ブロモ-2-(ピリジン-2-カルボニル)アニリノ]-5-オキソ-ペンタン酸メチルを、式(A)の化合物
【化4】
と(2S)-2-(ベンジルオキシカルボニルアミノ)-5-メトキシ-5-オキソ-ペンタン酸とを、カップリング剤の存在下で反応させることにより調製することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
式(F)の3-[(4S)-8-ブロモ-1-メチル-6-(ピリジン-2-イル)-4H-イミダゾ[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-4-イル]-プロピオン酸メチルエステル
【化5】
を調製する方法であって、
a)請求項1に記載の方法で得られた式(D)の化合物
【化6】
を、リチウムジイソプロピルアミド(LDA)及びビス-モルホリノホスホリルクロリド(BMPC)と反応させて、式(E1)の化合物
【化7】
を得る工程と、
b)工程(a)で得られた式(E1)の前記化合物を、(R)-1-アミノ-2-プロパノールまたは(S)-1-アミノ-2-プロパノールと反応させて、式(EM)の化合物
【化8】
を得る工程と、
c)工程(b)で得られた式(EM)の前記化合物をデス・マーチン・ペルヨージナン酸化剤と反応させる工程と、を含むことを特徴とする、方法。
【請求項4】
式(D)の前記化合物を、請求項1に記載の方法による式(I-C)の化合物から得ることを特徴とする、請求項に記載の式(F)の化合物を調製する方法。
【請求項5】
式(I-C)の前記化合物を、請求項に記載の方法による式(I-B)の化合物から得ることを特徴とする、請求項に記載の式(F)の化合物を調製する方法。
【請求項6】
式(I-B)の前記化合物を、請求項に記載の方法による式(A)の化合物から得ることを特徴とする、請求項に記載の式(F)の化合物を調製する方法。
【請求項7】
式(I-C)で表される(4S)-4-アミノ-5-[4-ブロモ-2-(ピリジン-2-カルボニル)アニリノ]-5-オキソ-ペンタン酸メチル臭化水素酸塩
【化9】
の、式(F)で表される化合物
【化10】
の調製のための使用。
【請求項8】
式(F)の前記化合物を、請求項に記載の方法により化合物(I-C)から得ることを特徴とする、請求項に記載の使用。
【請求項9】
式(I-B)で表される(4S)-4-(ベンジルオキシカルボニルアミノ)-5-[4-ブロモ-2-(ピリジン-2-カルボニル)アニリノ]-5-オキソ-ペンタン酸メチル
【化11】
の、式(F)で表される化合物
【化12】
の調製のための使用。
【請求項10】
式(F)の化合物を、請求項に記載の方法により化合物(I-C)から得ることを特徴とする、請求項に記載の使用。
【請求項11】
式(I-B)
【化13】
で表される(4S)-4-(ベンジルオキシカルボニルアミノ)-5-[4-ブロモ-2-(ピリジン-2-カルボニル)アニリノ]-5-オキソ-ペンタン酸メチル。
【請求項12】
式(I-C)
【化14】
で表される(4S)-4-アミノ-5-[4-ブロモ-2-(ピリジン-2-カルボニル)アニリノ]-5-オキソ-ペンタン酸メチル臭化水素酸塩。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(2-アミノ-5-ブロモ-フェニル)-ピリジン-2-イル-メタノンから3-[(3S)-7-ブロモ-2-オキソ-5-(ピリジン-2-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-[1,4]-ベンゾジアゼピン-3-イル]プロピオン酸メチルエステルを調製する方法、及びその方法において中間体として有用な新規化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第WO00/69836号には、カルボン酸エステル部分を含みかつ非特異的組織エステラーゼ類によって不活性化されている、短時間作用型の[1,4]-ベンゾジアゼピン類が記載されている。器官に依存しない排出機構がこのベンゾジアゼピン類の特徴であると考えられており、予測しやすく再現性の高い薬理学的プロファイルを提示している。この化合物は、催眠鎮静、抗不安、筋肉弛緩、抗痙攣といった治療目的に適するものである。この化合物は短時間作用型の中枢神経抑制薬であり、以下の臨床状況において、静脈内投与するのが有用である。臨床状況として、周術期には術前鎮静またはICU鎮静、不安緩解、及び健忘症に使用し、短期診断処置、手術処置、または内視鏡処置の間には意識下鎮静に使用し、他の麻酔剤または鎮痛剤の投与前及び/または投与と同時の場合には全身麻酔を導入及び保持するための成分として使用する状況が挙げられる。
【0003】
国際公開第WO00/69836号の書類の実施例Ic-8には、式(D)で表されるラクタムから、式(F)の3-[(4S)-8-ブロモ-1-メチル-6-(ピリジン-2-イル)-4H-イミダゾ[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-4-イル]-プロピオン酸メチルエステルなどのベンゾジアゼピン誘導体を調製する一般的な方法が記載されている。
【化1】
【0004】
また、上記明細書には、前駆体(A)からラクタム(D)を調製する方法も記載されている。該方法には、式(A)の(2-アミノ-5-ブロモ-フェニル)-ピリジン-2-イル-メタノンと、(2S)-2-(フルオレニル-9-メトキシカルボニルアミノ)-5-メトキシ-5-オキソ-ペンタン酸クロリドとを反応させて、式(B1)のアミドを得ることが含まれている。
【化2】
【0005】
この書類が教示するのは、B1をジクロロメタン中でトリエチルアミンと処理して、続いてジクロロメタン中で酢酸と処理することで、該ラクタムである式(D)の3-[(3S)-7-ブロモ-2-オキソ-5-(ピリジン-2-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-[1,4]-ベンゾジアゼピン-3-イル]プロピオン酸メチルエステルが得られることである。
【化3】
【0006】
国際公開第WO00/69836号によると、(F)を得る方法は、式(D)の化合物をTHF中でNaH懸濁液と反応させ、反応混合物をTHF中のビス-モルホリノホスホリルハイドロクロリド(BPMC)で処理し、反応混合物をろ過し、そのろ液をDL-1-アミノ-2-プロパノールと反応させ、得られたアルコール付加物を精製し、その精製したアルコール付加物をジクロロメタン中中のDMSOと塩化オキサリルとの混合物で処理し、その反応混合物をトリエチルアミンで処理し、酢酸エチルで希釈し、水溶液で洗浄し、濃縮して泡状物を得、その泡状物を触媒量のp-トルエンスルホン酸で処理し、その溶液を炭酸水素ナトリウムで中和し、式(F)の化合物を単離することからなる。
【0007】
しかしながら、この方法は数多くの工程を含んでおり、種々の工程で得る化合物の光学純度が不十分になり、全体収率の低下を招く。こうした理由から、国際公開第WO00/69836号に記載された方法は、工業レベルでの生産には不十分である。
【0008】
国際公開第WO2011/032692号には、式(D)のラクタムから、式(F)の[1,4]-ベンゾジアゼピンとそのベンゼンスルホン酸塩を合成する方法が記載されている。
【0009】
この場合、式(D)で表されるラクタムの合成経路は、式(A)の(2-アミノ-5-ブロモ-フェニル)-ピリジン-2-イル-メタノンから開始するが、(A)をtBoc(tert-ブチルオキシカルボニル)保護グルタメートと反応させて、式(B)の(4S)-4-(tert-ブチルオキシカルボニルアミノ)-5-[4-ブロモ-2-(ピリジン-2-カルボニル)アニリノ]-5-オキソ-ペンタン酸メチルを得ている。式(B)のアミドの脱保護をHClで処理することによって行い、式(C)の(4S)-4-アミノ-5-[4-ブロモ-2-(ピリジン-2-カルボニル)アニリノ]-5-オキソ-ペンタン酸メチル塩酸塩を得る。
【化4】
【0010】
国際公開第WO2011/032692号では、(C)を塩基で処理することによって式(D)の環化化合物、すなわち、ラクタムである3-[(3S)-7-ブロモ-2-オキソ-5-(ピリジン-2-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-[1,4]-ベンゾジアゼピン-3-イル]プロピオン酸メチルエステルを得る。式(D)のラクタムを、リチウムジイソプロピルアミド(LDA)とビス-モルホリノホスホリルクロリド(BMPC)と反応させて、式(E1)の3-[(3S)-7-ブロモ-2-(ビス-モルホリノホスホリルオキシ)-5-(ピリジン-2-イル)-3H-[1,4]-ベンゾジアゼピン-3-イル]-プロピオン酸メチルエステルを得る。後者を非プロトン性溶媒中で(R)-1-アミノ-2-プロパノールまたは(S)-1-アミノ-2-プロパノールと反応させて、式(EM)の3-[(S)-7-ブロモ-2-((R及び/またはS)-2-ヒドロキシ-プロピルアミノ)-5-(ピリジン-2-イル)-3H-[1,4]-ベンゾジアゼピン-3-イル]-プロピオン酸メチルエステルを得る。
【化5】
【0011】
式(F)の3-[(4S)-8-ブロモ-1-メチル-6-(ピリジン-2-イル)-4H-イミダゾ[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-4-イル]-プロピオン酸メチルエステルを得るために、国際公開第WO2011/032692号の書類には、式(EM)の化合物を酸性媒体中で酸化剤と反応させることが記載されている。
【発明の概要】
【0012】
本発明者らは、当該技術分野で報告されている方法よりも、式(D)の中間体を有意に高い反応収率で合成し、かつより高い純度を持つ生成物を与える新規な方法を開発した。
【0013】
したがって、本発明の第1の態様は、式(D)の3-[(3S)-7-ブロモ-2-オキソ-5-(ピリジン-2-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-[1,4]-ベンゾジアゼピン-3-イル]プロピオン酸メチルエステル
【化6】
を調製する方法に関し、式(I-C)の(4S)-4-アミノ-5-[4-ブロモ-2-(ピリジン-2-カルボニル)アニリノ]-5-オキソ-ペンタン酸メチル臭化水素酸塩
【化7】
を塩基と反応させる工程を含むことを特徴とするものである。
【0014】
第2の態様では、本発明は、式(F)の3-[(4S)-8-ブロモ-1-メチル-6-(ピリジン-2-イル)-4H-イミダゾ[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-4-イル]-プロピオン酸メチルエステル
【化8】
を調製する方法に関し、
a)本発明の第1の態様に記載の方法で得られた式(D)の化合物
【化9】
を、リチウムジイソプロピルアミド(LDA)及びビス-モルホリノホスホリルクロリド(BMPC)と反応させて、式(E1)の化合物
【化10】
を得る工程と、
b)工程(a)で得られた式(E1)の化合物を、(R)-1-アミノ-2-プロパノールまたは(S)-1-アミノ-2-プロパノールと反応させて、式(EM)の化合物
【化11】
を得る工程と、
c)工程(b)で得られた式(EM)の化合物をデス・マーチン・ペルヨージナン酸化剤と反応させる工程と、を含むことを特徴とするものである。
【0015】
第3の態様では、本発明は、式(I-C)の(4S)-4-アミノ-5-[4-ブロモ-2-(ピリジン-2-カルボニル)アニリノ]-5-オキソ-ペンタン酸メチル臭化水素酸塩
【化12】
を、式(F)の化合物
【化13】
の調製のために使用することに関するものである。
【0016】
第4の態様では、本発明は、式(I-B)の(4S)-4-(ベンジルオキシカルボニルアミノ)-5-[4-ブロモ-2-(ピリジン-2-カルボニル)アニリノ]-5-オキソ-ペンタン酸メチル
【化14】
を、式(F)の化合物
【化15】
の調製のために使用することに関するものである。
【0017】
本発明の第5の態様及び第6の態様は、式(I-B)の化合物(4S)-4-(ベンジルオキシカルボニルアミノ)-5-[4-ブロモ-2-(ピリジン-2-カルボニル)アニリノ]-5-オキソ-ペンタン酸メチル
【化16】
と、式(I-C)の化合物(4S)-4-アミノ-5-[4-ブロモ-2-(ピリジン-2-カルボニル)アニリノ]-5-オキソ-ペンタン酸メチル臭化水素酸塩
【化17】
とに関するものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、(2S)-2-(ベンジルオキシカルボニルアミノ)-5-メトキシ-5-オキソ-ペンタン酸の1H-NMRを示す図である。
図2図2は、式(I-B)で表される化合物の1H-NMRを示す図である。
図3図3は、式(D)で表される化合物の1H-NMRを示す図である。
図4図4は、式(I-C)で表される化合物の質量を示す図である。
図5図5は、式(B1)で表される化合物の1H-NMRを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の第1の態様は、式(D)の3-[(3S)-7-ブロモ-2-オキソ-5-(ピリジン-2-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-[1,4]-ベンゾジアゼピン-3-イル]プロピオン酸メチルエステル
【化18】
を調製する方法に関し、式(I-C)の(4S)-4-アミノ-5-[4-ブロモ-2-(ピリジン-2-カルボニル)アニリノ]-5-オキソ-ペンタン酸メチル臭化水素酸塩
【化19】
を塩基と反応させる工程を含むことを特徴とするものである。
【0020】
本明細書及び添付の特許請求の範囲全体を通して、「塩基」という用語は、プロトンを受容することができ、溶液のpHを上昇させる任意の物質を表すのに使用されている。水性媒体では、該物質は該媒体にOHイオンを供給する。塩基の強度はpKb定数から算出することができ、塩基強度が強いほどpKb値は小さくなる。
【0021】
したがって、本発明の第1の態様では、式(I-C)の化合物を、塩基の存在下で式(D)の化合物に変換する。本発明の好ましい実施形態では、化合物(I-C)を化合物(D)に変換するのに用いる塩基は、8.0未満のpKbを持つ塩基である。使用することができる塩基の非限定的な好適例として、NaOHもしくはKOHなどのアルカリ性水酸化物、炭酸水素ナトリウムもしくは炭酸水素カリウムなどの炭酸塩、またはトリエチルアミン(EtN)もしくはN,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)などの非求核性アミン類がある。使用する塩基は、好ましくは炭酸水素ナトリウムである。
【0022】
一般的に、式(I-C)の化合物から式(D)の化合物を形成する反応は、pH値が3~8、好ましくは3~5、より好ましくは3.5~4.5、さらにより好ましくはpH値が3.8~4の水性媒体中で行われ得る。
【0023】
特定の実施形態では、(I-C)を(D)に変換する反応を行うことができる溶媒は、水及びアルコール、好ましくは、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、及びブタノールから選択されたものであり、さらに好ましくは水である。
【0024】
別の特定の実施形態では、(I-C)を(D)に変換する反応は、0℃~40℃、好ましくは20℃~30℃、さらに好ましくは20℃~23℃の温度で行われる。
【0025】
別の特定の実施形態では、(I-C)を(D)に変換する反応は、溶媒として水を用いて、かつ20℃~30℃の温度で行われる。
【0026】
一般的に、(I-C)を(D)に変換する反応は、酸-塩基平衡を用いて行われるため、ほぼ直ちに引き起こされる。したがって、特定の実施形態では、(I-C)を(D)に変換する反応は、式(I-C)の化合物を上述のpH値に曝すことにより開始し、その反応は1時間未満で、好ましくは30分未満で、より好ましくは15分未満で、さらにより好ましくは5分未満で終了すると考えられる。
【0027】
式(D)の化合物は、少なくともアルキルエステル類、トルエン、メチルテトラヒドロフラン、及びジクロロメタンに可溶である。したがって、特定の実施形態では、式(I-C)の化合物の酸性水性溶液に塩基を添加することによって上述のpH値に調整した後に、例えば、ジクロロメタンを該酸性水性溶液に添加することにより式(D)の化合物を単離することができる(液液抽出)。ジクロロメタンを蒸発させることにより、固体状態の式(D)の化合物を得る。
【0028】
特定の実施形態では、前段落で得られた式(D)で表される化合物の固体を、再結晶法により、好ましくは、該化合物(D)の溶解度が高くなる溶媒、好ましくは溶解度が1g/L以上となる溶媒を用い、かつ貧溶媒、すなわち化合物(D)の溶解度が低くなる溶媒、好ましくは溶解度が1g/L以下となる溶媒を添加して行う再結晶法により、精製することができる。好ましい溶媒として、特にケトン類及びアルコール類、好ましくはアセトン及びイソプロパノールが挙げられる。好ましくは、式(D)の化合物をイソプロパノールに溶解し、溶解液を還流温度で加熱する。好ましい貧溶媒として、水、アルカン類及びエーテル類、好ましくはn-ヘプタンまたはメチルtert-ブチルエーテルが挙げられる。好ましくは、水またはn-ヘプタンを、式(D)の化合物を再結晶化するための貧溶媒として選択する。通常、式(D)で表される化合物の純度は、核磁気共鳴(NMR)法または液体クロマトグラフィー法により測定することができる。
【0029】
好ましい実施形態では、式(I-C)の化合物を、式(I-B)の(4S)-4-(ベンジルオキシカルボニルアミノ)-5-[4-ブロモ-2-(ピリジン-2-カルボニル)アニリノ]-5-オキソ-ペンタン酸メチル
【化20】
と臭化水素酸とを反応させることにより調製する。
【0030】
式(I-B)で表される中間体は、低温度、例えば10℃~20℃、好ましくは10℃~12℃などで氷酢酸に溶解することができる。この酸性溶液に臭化水素酸(HBr)を加えて、CBz基を脱離させることでアミンの脱保護を行い、式(I-C)の化合物を得ることができる。
【0031】
特定の実施形態では、式(I-B)で表される中間体は、酢酸、ジクロロメタン、トルエン、またはメチルtert-ブチルエーテルに、好ましくは氷酢酸に溶解することができる。別の特定の実施形態では、式(I-B)で表される中間体は、上述の溶媒のいずれかに10℃~20℃、好ましくは10℃~12℃の温度で溶解することができる。
【0032】
特定の実施形態では、式(I-B)の化合物から式(I-C)の化合物を形成する反応は、上述の通り酢酸に前もって溶解した(I-B)の溶液に、氷酢酸に溶解したHBrを徐々に添加することによって、10℃~20℃の温度で行われる。HBrの添加が終了した時点で、特定の実施形態では、温度を15℃~25℃、好ましくは20℃に上げたままにする。特定の実施形態では、得られた酸性溶液を1時間~3時間、好ましくは2時間攪拌し続ける。
【0033】
特定の実施形態では、結果として形成された式(I-C)の化合物を単離せずに、得られた酸性媒体を前述のpH値に達するまで直ちに中和する。特定の実施形態では、該得られた酸性媒体を、式(I-C)で表される化合物の酸性水性溶液に炭酸水素ナトリウムを加えることで中和することができる。該中和は、前述の酸性媒体の中和であり、式(I-C)の化合物を式(D)の化合物に変換する反応を引き起こすものである。
【0034】
別の方法として、式(I-C)の化合物を、該当反応物を好適な有機溶媒で、好ましくは酢酸アルキル、より好ましくは酢酸イソプロピルで処理することによって単離して、ろ過し、固体を得ることができる。
【0035】
別の好ましい実施形態では、式(I-B)の(4S)-4-(ベンジルオキシカルボニルアミノ)-5-[4-ブロモ-2-(ピリジン-2-カルボニル)アニリノ]-5-オキソ-ペンタン酸メチルを、式(A)の化合物
【化21】
と(2S)-2-(ベンジルオキシカルボニルアミノ)-5-メトキシ-5-オキソ-ペンタン酸とをカップリング剤の存在下で反応させることにより調製する。式(A)の化合物(2-アミノ-5-ブロモ-フェニル)-ピリジン-2-イル-メタノンは、当該技術分野で既知であり、その調製については、例えばLeganza A.らによる文献「European Journal of Organic Chemistry, 2006, 13, 2987-2990」に記載されている。また、この化合物についてはCAS登録番号1563-56-0で確認することもできる。
【0036】
(2S)-2-(ベンジルオキシカルボニルアミノ)-5-メトキシ-5-オキソ-ペンタン酸は、以下の構造式
【化22】
により表すことができ、実施例1に記載の方法により、(2S)-2-アミノ-5-メトキシ-5-オキソ-ペンタン酸をクロロギ酸ベンジルで保護して得ることができる。
【0037】
当業者は、本文脈でアミノ酸カップリング剤を指すカップリング剤の趣旨を理解しているであろう。NH基とCOOH基との反応によるアミド基形成を促進することができるカップリング剤の例として、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(DCI)またはN,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)がある。
【0038】
好ましい実施形態では、式(A)の化合物と(2S)-2-(ベンジルオキシカルボニルアミノ)-5-メトキシ-5-オキソ-ペンタン酸とのカップリング反応は、カップリング剤の存在下、ジクロロメタン中で行われる。別の好ましい実施形態では、式(A)の化合物と(2S)-2-(ベンジルオキシカルボニルアミノ)-5-メトキシ-5-オキソ-ペンタン酸とのカップリング反応は、カップリング剤の存在下、ジクロロメタン中で-10℃~15℃の間の温度で行われる。さらに別の好ましい実施形態では、カップリング剤を-10℃~25℃の間の温度で、好ましくは20℃~25℃の間の温度で添加し、添加が終了した時点で、その反応温度を保持する。別の好ましい実施形態では、カップリング剤はDCIである。好ましくは、式(I-B)の化合物を形成する反応を、約1日~3日間、より好ましくは1日~2日間、さらにより好ましくは約24時間攪拌することにより行う。反応生成物をろ過及び再結晶化により精製することができる。式(I-B)の化合物を再結晶化させるのに有用な溶媒として、C~Cアルカノール(C2n+1OH)、C~Cカルボン酸(C2n+1-COOH)とC~Cアルカノールとのエステル、C~C11ケトン(C2n+1-CO-C2m+1)、メチルtert-ブチルエーテル、またはトルエン、好ましくはイソプロパノールとメチルtert-ブチルエーテルが挙げられる。
【0039】
本発明は、式(D)の化合物を、式(I-B)と式(I-C)とで表される中間体を介して合成する新規方法であって、当該技術分野で報告されている方法で得られる収率よりも有意に高い収率を有する該方法に関する。このことは、本開示全体を通して、特に実施例の結果として明らかになる。また、結果として得られた式(D)の化合物は、式(F)の3-[(4S)-8-ブロモ-1-メチル-6-(ピリジン-2-イル)-4H-イミダゾ[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-4-イル]-プロピオン酸メチルエステルの合成に用いることができる。
【0040】
したがって、本発明の第2の態様は、式(F)の3-[(4S)-8-ブロモ-1-メチル-6-(ピリジン-2-イル)-4H-イミダゾ[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-4-イル]-プロピオン酸メチルエステル
【化23】
を調製する方法に関し、
a)本発明の第1の態様に記載の方法で得られた式(D)の化合物
【化24】
を、リチウムジイソプロピルアミド(LDA)及びビス-モルホリノホスホリルクロリド(BMPC)と反応させて、式(E1)の化合物
【化25】
を得る工程と、
b)工程(a)で得られた式(E1)の化合物を、(R)-1-アミノ-2-プロパノールまたは(S)-1-アミノ-2-プロパノールと反応させて、式(EM)の化合物
【化26】
を得る工程と、
c)工程(b)で得られた式(EM)の化合物をデス・マーチン・ペルヨージナン酸化剤と反応させる工程と、を含むことを特徴とするものである。
【0041】
デス・マーチン・ペルヨージナン酸化剤は、CAS登録番号87413-09-0の化合物であり、その式は以下に示す通りである。
【化27】
【0042】
工程(a)、工程(b)、及び工程(c)については、すでに国際公開第WO2011/032692号に記載されているが、異なるのは、工程(a)において、本発明の対象の方法とは異なる方法で得られた式(D)の化合物を用いている点である。
【0043】
したがって、本発明の特定の実施形態は、上述の第2の態様に記載した方法による式(F)の化合物を調製する方法に関し、式(D)の化合物が、本発明の第1の態様に記載した方法による式(I-C)の化合物から得られたものであることを特徴とする。
【0044】
別の特定の実施形態では、本発明は、上述の第2の態様に記載した方法による式(F)の化合物を調製する方法に関し、式(D)の化合物が、本発明の第1の態様に記載した方法による式(I-C)の化合物から得られたものであることを特徴とし、また、式(I-C)の化合物が、式(I-B)の化合物を臭化水素酸と反応させることにより得られたものであることを特徴とする。
【0045】
本発明の別の特定の実施形態は、上述の第2の態様に記載した方法による式(F)の化合物を調製する方法に関し、式(D)の化合物が、本発明の第1の態様に記載した方法による式(I-C)の化合物から得られたものであることを特徴とし、式(I-C)の化合物が、式(I-B)の化合物を臭化水素酸と反応させることにより得られたものであることを特徴とし、また、式(I-B)の化合物が、式(A)の化合物を(2S)-2-(ベンジルオキシカルボニルアミノ)-5-メトキシ-5-オキソ-ペンタン酸とカップリング剤存在下で反応させることにより得られたものであることを特徴とする。
【0046】
式(I-C)の化合物と式(I-B)の化合物は、本開示で初めて述べられるものである。該化合物は式(F)で表される化合物の合成に有用な中間体である。したがって、本発明の第3の態様は、式(F)の化合物を調製するための、式(I-C)で表される(4S)-4-アミノ-5-[4-ブロモ-2-(ピリジン-2-カルボニル)アニリノ]-5-オキソ-ペンタン酸メチル臭化水素酸塩の使用に関するものである。特定の実施形態では、該使用は本発明の方法を用いて行われる。
【0047】
本発明の第4の態様は、式(F)の化合物を調製するための、式(I-B)で表される(4S)-4-(ベンジルオキシカルボニルアミノ)-5-[4-ブロモ-2-(ピリジン-2-カルボニル)アニリノ]-5-オキソ-ペンタン酸メチルの使用に関するものである。特定の実施形態では、該使用は本発明の方法を用いて行われる。
【0048】
上述した通り、式(I-C)の化合物と式(I-B)の化合物は、本開示で初めて述べられるものである。したがって、本発明の第5の態様は、式(I-B)の化合物(4S)-4-(ベンジルオキシカルボニルアミノ)-5-[4-ブロモ-2-(ピリジン-2-カルボニル)アニリノ]-5-オキソ-ペンタン酸メチル
【化28】
に関するものである。
【0049】
第6の態様では、本発明は、式(I-C)の化合物(4S)-4-アミノ-5-[4-ブロモ-2-(ピリジン-2-カルボニル)アニリノ]-5-オキソ-ペンタン酸メチル臭化水素酸塩
【化29】
に関するものである。
【実施例
【0050】
実施例1.(2S)-2-(ベンジルオキシカルボニルアミノ)-5-メトキシ-5-オキソ-ペンタン酸の取得
(2S)-2-アミノ-5-メトキシ-5-オキソ-ペンタン酸(Glu(OMe)-OH)22.4g(139mmol)をジクロロメタン420mlと混合した。この混合物を0℃で冷却し、塩化トリメチルシリル30.2g(278mmol)を加え、温度を0℃~5℃に保持した。次に、N,N-ジイソプロピルエチルアミン45.3g(350mmol)を徐々に加えて、温度を0℃~5℃に保持した。得られた混合物を還流温度まで加熱し、1時間30分攪拌し続けた。その反応混合物を0℃で冷却し、クロロギ酸ベンジル20ml(23.9g、140mmol)を0℃~5℃で加えた。得られた反応混合物をその温度で30分間保持した後、約25℃で2時間保持した。
【0051】
反応混合物を減圧濃縮し、8%の炭酸水素ナトリウム水溶液295mlと、酢酸イソプロピル280mlとを加えた。水相をデカンテーションにより分離し、37%HCl水溶液でpHを約2まで酸性化した。得られた水相を酢酸イソプロピル(3×100ml)で抽出した。溜まった有機相の溶媒を、減圧により蒸留し、99.0%を超える純度を有する白色固体40.7g(99.0%)を得たが、この固体は(2S)-2-(ベンジルオキシカルボニルアミノ)-5-メトキシ-5-オキソ-ペンタン酸(Cbz-Glu(OMe)-OH)に相当するものであった。得られた生成物の純度は、超高速液体クロマトグラフィー法を用いて、可変波長検出器と、カラム用温度制御オーブンとを備えたWaters Acquity H-Class装置で分析した。図1に1H-NMRスペクトルを示す。1H-NMR(CDCl、400MHz):7.26(5H、m)、5.47(1H、d)、5.04(2H、s)、4.37(1H、m)、3.59(3H、s)、2.3(2H、m)、2.18(1H、m)、1.96(1H、m)。
【0052】
実施例2.(4S)-4-(ベンジルオキシカルボニルアミノ)-5-[4-ブロモ-2-(ピリジン-2-カルボニル)アニリノ]-5-オキソ-ペンタン酸メチル(I-B)の取得
式(A)の(2-アミノ-5-ブロモフェニル)-ピリジン-2-イル-メタノン38.6g(139mmol)と、(2S)-2-(ベンジルオキシカルボニルアミノ)-5-メトキシ-5-オキソ-ペンタン酸45.2g(153mmol)とをジクロロメタン200mlに約15℃の温度で溶解した。その溶液を-10℃で冷却し、ジクロロメタン65mlにN,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド32.2g(156mmol)を含む前もって調整した溶液を、上記温度で徐々に加えた。反応混合物を攪拌しながら約-10℃の温度に48時間保持した後、約15℃での反応から得られた塩をろ過した。
【0053】
反応溶媒を減圧蒸留により最高温度25℃で除去し、メチルtert-ブチルエーテル250mlを加えた。得られた混合物を50℃で加熱した後に、約25℃の温度までゆっくりと冷却した。得られた固体をろ過し、オーブンを用いて50℃で乾燥した。この方法で、式(I-B)の(4S)-4-(ベンジルオキシカルボニルアミノ)-5-[4-ブロモ-2-(ピリジン-2-カルボニル)アニリノ]-5-オキソ-ペンタン酸メチルに相当するわずかに黄色味を帯びた固体72.3g(93.6%)を得た。得られた生成物の純度は、超高速液体クロマトグラフィー法を用いて、可変波長検出器と、カラム用温度制御オーブンとを備えたWaters Acquity H-Class装置で分析した。図2に1H-NMRスペクトルを示す。1H-NMR(CDCl、400MHz):11.43(1H、s)、8.73(1H、d)、8.56(1H、d)、8(1H、d)、7.93(1H、s)、7.92(1H、s)、7.67(1H、dd)、7.52(1H、m)、7.35(5H、m)、5.71(1H、d)、5.04(2H、m)、4.45(1H、m)、3.65(3H、s)、2.50(2H、m)、2.31(1H、m)、2.07(1H、m)。
【0054】
実施例3.式(D)の3-[(3S)-7-ブロモ-2-オキソ-5-(ピリジン-2-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-[1,4]-ベンゾジアゼピン-3-イル]プロピオン酸メチルエステルの取得
式(I-B)の(4S)-4-(ベンジルオキシカルボニルアミノ)-5-[4-ブロモ-2-(ピリジン-2-カルボニル)アニリノ]-5-オキソ-ペンタン酸メチル35.0g(63mmol)を氷酢酸70mlに溶解した。温度を10℃~12℃に保持し、前もって調製したHBrの33重量%氷酢酸溶液45.7ml(61.9g、253mmol)を徐々に加えた。添加が終了した時点で、得られた混合物の温度を約20℃まで上げ、攪拌しながら15℃~20℃で2時間保持した。
【0055】
上述のように保持した後、水120mlとジクロロメタン50mlとを加えた。式(I-C)の(4S)-4-アミノ-5-[4-ブロモ-2-(ピリジン-2-カルボニル)アニリノ]-5-オキソ-ペンタン酸メチル臭化水素酸塩を含む水相を分離し、炭酸水素ナトリウムを約25℃で加えることによって、そのpHを3.8~4の範囲に調整した。ジクロロメタンを加え、式(D)の3-[(3S)-7-ブロモ-2-オキソ-5-(ピリジン-2-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-[1,4]-ベンゾジアゼピン-3-イル]プロピオン酸メチルエステルに相当する反応生成物を含む有機相を分離した。有機溶媒を減圧蒸留し、得られた残渣にイソプロパノール50mlを加えた。得られた混合物を還流温度(約82℃)で加熱した後、n-ヘプタン50mlを加えた。混合物を約20℃まで徐々に冷却し、得られた固体をろ過してからオーブンで乾燥して、最終的に、式(D)の3-[(3S)-7-ブロモ-2-オキソ-5-(ピリジン-2-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-[1,4]-ベンゾジアゼピン-3-イル]プロピオン酸メチルエステル22.4g(88.2%)を99.0%の純度で得た。得られた生成物の純度は、超高速液体クロマトグラフィー法を用いて、可変波長検出器と、カラム用温度制御オーブンとを備えたWaters Acquity H-Class装置で分析した。図3に1H-NMRスペクトルを示す。1H-NMR(CDCl、400MHz):9.01(1H、s)、8.59(1H、m)、8.05(1H、d)、7.81(1H、m)、7.58(1H、m)、7.5(1H、d)、7.36(1H、m)、7.02(1H、d)、3.74(1H、m)、3.67(3H、s)、2.67(2H、m)、2.50(2H、m)。
【0056】
実施例4.式(I-C)の(4S)-4-アミノ-5-[4-ブロモ-2-(ピリジン-2-カルボニル)アニリノ]-5-オキソ-ペンタン酸メチル臭化水素酸塩の取得
式(I-B)の(4S)-4-(ベンジルオキシカルボニルアミノ)-5-[4-ブロモ-2-(ピリジン-2-カルボニル)アニリノ]-5-オキソ-ペンタン酸メチル35.0g(63mmol)を氷酢酸70mlに溶解した。温度を10℃~12℃に保持し、前もって調製したHBrの33重量%氷酢酸溶液45.7ml(61.9g、253mmol)を徐々に加えた。添加が終了した時点で、得られた混合物の温度を約20℃まで上げ、攪拌しながら15℃~20℃で2時間保持した。粗反応生成物の4mlアリコートを室温で酢酸イソプロピル20mlと共に混合し、ろ過により分離して固体を形成した。得られた固体を、超高速液体クロマトグラフィー-質量分析(UPLC-Mass)法を用いて、Xevo G2 Tof YCA290 CL22ID検出器に連結されたWaters AcquityのUPLC装置で分析した。図4は、分子式C1819Brに相当する420.0550のモノアイソトピック質量値m/zにおいて、シグナルが高い割合で得られたことを示している。
【0057】
実施例5.(4S)-4-(ベンジルオキシカルボニルアミノ)-5-[4-ブロモ-2-(ピリジン-2-カルボニル)アニリノ]-5-オキソ-ペンタン酸メチル(I-B)の取得
式(A)の(2-アミノ-5-ブロモフェニル)-ピリジン-2-イル-メタノン60.0g(217mmol)と、(2S)-2-(ベンジルオキシカルボニルアミノ)-5-メトキシ-5-オキソ-ペンタン酸70.4g(238mmol)とをジクロロメタン120mlに約20℃の温度で溶解した。N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド30.7g(243mmol)を、温度を20℃~25℃の間に保持しながら徐々に添加した。添加終了後、反応混合物を攪拌しながら前記温度に22時間保持した後、その反応から得られた塩をろ過した。
【0058】
ろ過後に得られた反応混合物を、NaHCOの8%水溶液100mlの2つの分画で洗浄した。その溶媒を減圧蒸留により最高温度25℃で除去し、イソプロパノール115mlを加えた。得られた混合物を70℃で加熱した後、その溶液にメチルtert-ブチルエーテル180mlを徐々に加えた。得られた反応混合物を0℃~5℃まで冷却し、攪拌しながら2時間その温度に保持した。得られた固体をろ過し、オーブンを用いて50℃で乾燥した。この方法で、式(I-B)の(4S)-4-(ベンジルオキシカルボニルアミノ)-5-[4-ブロモ-2-(ピリジン-2-カルボニル)アニリノ]-5-オキソ-ペンタン酸メチルに相当するほぼ無色の固体109.2g(91.0%)を得た。得られた生成物の純度は、超高速液体クロマトグラフィー法を用いて、可変波長検出器と、カラム用温度制御オーブンとを備えたWaters Acquity H-Class装置で分析した。
【0059】
比較例1.(2S)-2-(フルオロフェニルメトキシカルボニルアミノ)-5-メトキシ-5-オキソ-ペンタン酸の取得
(2S)-2-アミノ-5-メトキシ-5-オキソ-ペンタン酸(Glu(OMe)-OH)15.5g(96mmol)をジクロロメタン220mlと混合した。この混合物を0℃で冷却し、塩化トリメチルシリル20.9g(192mmol)を加え、温度を0℃~5℃に保持した。次に、N,N-ジイソプロピルエチルアミン25.0g(193mmol)を徐々に加えて、温度を0℃~5℃に保持した。得られた混合物を還流温度まで加熱し、1時間30分攪拌し続けた。その反応混合物を0℃で冷却し、フルオレニルメチルクロロギ酸24.9ml(96mmol)を0℃~5℃で加えた。得られた反応混合物をその温度に30分間保持した後、約20℃の温度で1時間30分保持した。
【0060】
反応混合物を減圧濃縮し、8%の炭酸水素ナトリウム水溶液160mlと、酢酸イソプロピル160mlとを加えた。水相をデカンテーションにより分離し、37%HCl水溶液でpHを約2まで酸性化した。得られた水相を酢酸イソプロピル(3×100ml)で抽出した。その溶媒を減圧により蒸留し、イソプロパノールで結晶化させて残渣を得、(2S)-2-(フルオロフェニルメトキシカルボニルアミノ)-5-メトキシ-5-オキソ-ペンタン酸(Fmoc-Glu(OMe)-OH)に相当する、99.1%の純度を有する白色固体35.0g(94.9%)を得た。得られた生成物の純度は、超高速液体クロマトグラフィー法を用いて、可変波長検出器と、カラム用温度制御オーブンとを備えたWaters Acquity H-Class装置で分析した。
【0061】
比較例2.(2S)-2-(フルオレニル-9-メトキシカルボニルアミノ)-5-メトキシ-5-オキソ-ペンタン酸クロリドの取得
(2S)-2-(フルオレニル-9-メトキシカルボニルアミノ)-5-メトキシ-5-オキソ-ペンタン酸18.0g(47mmol)をジクロロメタン126mlに溶解した。この溶液を20℃で冷却し、DMFの0.25mlと、塩化チオニル6.7g(56mmol)とを加えた。得られた溶液を攪拌しながら15℃~20℃に3時間保持した。次に、得られた混合物を減圧濃縮して、実質的に定量的な方法で、(2S)-2-(フルオレニル-9-メトキシカルボニルアミノ)-5-メトキシ-5-オキソ-ペンタン酸クロリドに相当する白色固体19.5gを得、これを次の反応に直接用いた。
【0062】
比較例3.(4S)-4-(フルオレニル-9-メトキシカルボニルアミノ)-5-[4-ブロモ-2-(ピリジン-2-カルボニル)アニリノ]-5-オキソ-ペンタン酸メチル(B1)の取得
前の工程で得られた(2S)-2-(フルオレニル-9-メトキシカルボニルアミノ)-5-メトキシ-5-オキソ-ペンタン酸クロリド19.5g(47mmol)をジクロロメタン90mlに溶解し、前もって調製した式(A)の(2-アミノ-5-ブロモフェニル)-ピリジン-2-イル-メタノン13.0g(47mmol)のジクロロメタン40ml溶液を0℃~10℃の温度で加えた。得られた混合物を攪拌しながら還流温度で30分間保持した。
【0063】
反応が終了した時点で、8%の炭酸水素ナトリウム水溶液100mlとジクロロメタン100mlとを約20℃の温度で加えた。有機相を分離し、減圧濃縮して残渣を得、それにイソプロパノール150mlを加えた。混合物を約15℃で冷却し、得られた固体をろ過して、(4S)-4-(フルオレニル-9-メトキシカルボニルアミノ)-5-[4-ブロモ-2-(ピリジン-2-カルボニル)アニリノ]-5-オキソ-ペンタン酸メチルに相当する固体27.5g(91.7%)を得た。得られた生成物の純度は、超高速液体クロマトグラフィー法を用いて、可変波長検出器と、カラム用温度制御オーブンとを備えたWaters Acquity H-Class装置で分析した。
【0064】
図5に1H-NMRスペクトルを示す。1H-NMR(CDCl、400MHz):11.41(1H、s)、8.62(1H、m)、8.50(1H、d)、7.93(1H、d)、7.72(2H、m)、7.68(2H、m)、7.61(1H、d)、7.59(1H、d)、7.54(1H、d)、7.40(1H、m)、7.31(1H、t)、7.21(1H、t)、5.77(1H、d)、4.41(2H、m)、4.26(1H、t)、4.18(1H、t)、3.63(3H、s)、2.43(2H、m)、2.27(1H、m)、2.04(1H、m)。
【0065】
比較例4.(4S)-4-(フルオレニル-9-メトキシカルボニルアミノ)-5-[4-ブロモ-2-(ピリジン-2-カルボニル)アニリノ]-5-オキソ-ペンタン酸メチルからの式(D)の3-[(3S)-7-ブロモ-2-オキソ-5-(ピリジン-2-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-[1,4]-ベンゾジアゼピン-3-イル]プロピオン酸メチルエステルの取得
(4S)-4-(フルオレニル-9-メトキシカルボニルアミノ)-5-[4-ブロモ-2-(ピリジン-2-カルボニル)アニリノ]-5-オキソ-ペンタン酸メチル16.8g(26mmol)をジクロロメタン80mlに溶解し、トリエチルアミン48.8g(482mmol)を添加した。添加が終了した時点で、得られた混合物を一晩攪拌しながら40℃~45℃の温度に保持した。
【0066】
上述した状態を保った後、反応混合物を減圧濃縮して残渣を得、これにアセトン40mlを加えた。還流温度に加熱し、約20℃の温度に冷却して、均一な混合物を得た。得られた固体をろ過し、アセトンで洗浄して、式(D)の3-[(3S)-7-ブロモ-2-オキソ-5-(ピリジン-2-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-[1,4]-ベンゾジアゼピン-3-イル]プロピオン酸メチルエステルを62%含む生成物を得た。この固体をイソプロパノールで再結晶化して、所望の生成物4.2g(40%)を94%の純度で得た。得られた生成物の純度は、超高速液体クロマトグラフィー法を用いて、可変波長検出器と、カラム用温度制御オーブンとを備えたWaters Acquity H-Class装置で分析した。
図1
図2
図3
図4
図5