(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】導光装置及びレーザ加工装置
(51)【国際特許分類】
G02B 26/12 20060101AFI20220906BHJP
G02B 26/10 20060101ALI20220906BHJP
B23K 26/082 20140101ALI20220906BHJP
B23K 26/046 20140101ALI20220906BHJP
【FI】
G02B26/12
G02B26/10 Z
B23K26/082
B23K26/046
(21)【出願番号】P 2018119598
(22)【出願日】2018-06-25
【審査請求日】2021-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】中澤 睦裕
(72)【発明者】
【氏名】大串 修己
【審査官】佐藤 洋允
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-116488(JP,A)
【文献】国際公開第2012/120892(WO,A1)
【文献】特開昭64-024217(JP,A)
【文献】特開2004-093680(JP,A)
【文献】特開平11-149052(JP,A)
【文献】特開2018-097055(JP,A)
【文献】米国特許第06144397(US,A)
【文献】中国特許出願公開第103119512(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 26/10 - 26/12
B23K 26/00 - 26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から照射された光を反射して導く第1導光部と、
回転可能に構成されており、回転軸方向で見たときに正多角形状
に配置された複数の反射部を有しており、前記第1導光部により導かれた光を回転しながら当該反射部で反射するポリゴンミラーと、
前記ポリゴンミラーの前記反射部で反射された光を反射して、当該反射部毎にそれぞれ光が被照射物に照射されるように光を導く第2導光部と、
前記第1導光部に含まれる光学部品の位置及び向きの少なくとも一方を変化させることで、前記ポリゴンミラーに入射される光の光軸の前記回転軸方向における位置を調整する調整部と、
を備え、
前記ポリゴンミラーの前記反射部
には2つの反射面が含まれており、当該2つの反射面で光がそれぞれ反射されることにより、反射部に入射した光の光軸
が前記回転軸方向にオフセットして反射
され、
前記ポリゴンミラーに入射される光の光軸の前記回転軸方向における位置を前記調整部が調整することで、前記被照射物に照射される光の線幅方向の位置を変化させ、前記被照射物に照射される光の線幅方向の位置を変化させながら光を照射することを特徴とする導光装置。
【請求項2】
請求項1に記載の導光装置であって、
前記調整部は、前記ポリゴンミラーに入射される光の光軸の前記回転軸方向における位置を、予め設定された値に基づいて変化させることを特徴とする導光装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の導光装置であって、
前記調整部は、前記ポリゴンミラーに入射される光の光軸の前記回転軸方向における位置を周期的に変化させることを特徴とする導光装置。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載の導光装置と、
レーザ光を発生させる前記光源と、
を備えることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項5】
請求項4に記載のレーザ加工装置であって、
前記被照射物は板状であり、
前記被照射物には、照射領域が線幅方向で重なるようにレーザ光が複数回照射され、
前記被照射物の加工溝の深さに応じて、前記レーザ光の焦点位置を前記被照射物の照射位置に相対的に近づけることを特徴とするレーザ加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、複数の反射面を有する鏡を用いて光を走査する導光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、光源からの光を直線状の走査線に沿って走査する技術が、画像形成装置やレーザ加工装置等に広く利用されている。特許文献1及び2は、この種の装置に備えられる光走査装置を開示する。
【0003】
この特許文献1の光走査装置は、投光手段と、光反射手段と、を備えている。投光手段はポリゴンミラーを有しており、所定の方向から入射された光を回転するポリゴンミラーの正多角形の各辺の反射面で反射することにより、当該ポリゴンミラーが回転しながら光を放射する。光反射手段は、投光手段から放射された光を複数の反射部により反射し、所定の走査線上の任意の被照射点に導く。
【0004】
特許文献2の光軸補正装置は、ポリゴンミラーを用いて光を走査するとともに、照射される光の光軸の位置を補正する機能を有する。具体的には、この光軸補正装置は、ポジションセンサと、駆動ミラーと、制御部と、を備える。ポジションセンサは、照射される光の光軸のズレを検出する。駆動ミラーは、ミラーの角度を変化させることで、ポリゴンミラーに入射される光の光軸の位置を変化させる。制御部は、ポジションセンサで検出された光軸のズレに基づいて、当該ズレが少なくなる方向に駆動ミラーの角度を変化させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5401629号公報
【文献】特開平5-307148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、照射領域が円状/点状となるように光を照射して被照射物に加工を行ったり、被照射物の情報を読み取ったりする場合等において、被照射物を移動させることなく、照射領域の位置を分散させる(オフセットさせる)ことが望まれる場合がある。この点、特許文献1では、この種の構成は開示されていない。また、特許文献2は光軸のズレを補正することが目的であるため、特許文献2には、この目的に適した構成は開示されていない。
【0007】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、被照射物を移動させることなく、照射領域の位置を線幅方向に分散させることが可能な導光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0009】
本発明の観点によれば、以下の構成の導光装置が提供される。即ち、この導光装置は、第1導光部と、ポリゴンミラーと、第2導光部と、調整部と、を備える。前記第1導光部は、光源から照射された光を反射して導く。前記ポリゴンミラーは、回転可能に構成されており、回転軸方向で見たときに正多角形状に配置された複数の反射部を有しており、前記第1導光部により導かれた光を回転しながら当該反射部で反射する。前記第2導光部は、前記ポリゴンミラーの前記反射部で反射された光を反射して、当該反射部毎にそれぞれ光が前記被照射物に照射されるように光を導く。調整部は、前記第1導光部に含まれる光学部品の位置及び向きの少なくとも一方を変化させることで、前記ポリゴンミラーに入射される光の光軸の前記回転軸方向における位置を調整する。前記ポリゴンミラーの前記反射部には2つの反射面が含まれており、当該2つの反射面で光がそれぞれ反射されることにより、反射部に入射した光の光軸が前記回転軸方向にオフセットして反射される。前記ポリゴンミラーに入射される光の光軸の前記回転軸方向における位置を前記調整部が調整することで、前記被照射物に照射される光の線幅方向の位置を変化させ、前記被照射物に照射される光の線幅方向の位置を変化させながら光を照射する。
【0010】
これにより、反射部に入射される光の光軸の回転軸方向における位置が異なる場合、被照射物に照射される光の幅方向の位置も異なる。そのため、被照射物を移動させることなく、照射領域の位置を幅方向に分散させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、被照射物を移動させることなく、照射領域の位置を幅方向に分散させることが可能な導光装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係るレーザ加工装置の斜視図。
【
図2】レーザ発生器から照射されたレーザ光がワークに照射されるまでの光路を示す図。
【
図3】ポリゴンミラーの偏向中心、第1照射ミラー、第2照射ミラー、及び走査線の位置関係を示す概略図。
【
図4】ポリゴンミラーへ入射されるレーザ光の光軸を回転軸方向に沿って変化させる構成を示す断面図。
【
図5】ポリゴンミラーへ入射されるレーザ光の光軸を回転軸方向に沿って変化させることにより、入射光に対する反射光のオフセット量が変化することを示す図。
【
図6】レーザ光の見かけ上の線幅が広くなることを説明する図。
【
図7】ワークの加工状況に応じてレーザ光の焦点の位置を板厚方向に変化させることを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。初めに、
図1を参照して、レーザ加工装置1の構成を説明する。
図1は、レーザ加工装置1の斜視図である。レーザ加工装置1は、ワーク(被照射物)100にレーザ光を照射することで、当該ワーク100を加工する装置である。
【0014】
本実施形態のワーク100は板状であり、例えばCFRP(炭素繊維強化プラスチック)である。なお、ワーク100は他の材料であってもよい。また、ワーク100は板状に限られず、例えばブロック状であってもよい。なお、ワーク100の厚み方向を板厚方向と定義する。
【0015】
本実施形態のレーザ加工装置1は、レーザ光を照射することでワーク100を蒸発させて加工するアブレーション加工を行う。なお、レーザ加工装置1はレーザ光の熱によりワーク100を溶融させて加工する熱加工を行う構成であってもよい。また、レーザ加工装置1はレーザ光によりワーク100を切断する加工を行う。レーザ加工装置1がワーク100に対して行う加工は切断に限られず、例えばワーク100の表面を所定形状に沿って除去する加工であってもよい。
【0016】
なお、レーザ光は可視光であってもよいし、可視光以外の波長帯の電磁波であってもよい。また、本実施形態では、可視光だけでなく、それより波長帯が広い様々な電磁波を含めて「光」と称する。
【0017】
図1に示すように、レーザ加工装置1は、搬送部11と、レーザ発生器(光源)12と、導光装置13と、を備える。
【0018】
搬送部11は、ベルトコンベアであり、載置されたワーク100を所定の方向に搬送する。搬送部11は、ワーク100を搬送方向に搬送できるとともに、所定の位置で停止させることができる。搬送部11は、ワーク100を搬送して、レーザ加工を行うための位置で停止させる。なお、搬送部11はローラコンベアであってもよいし、ワーク100を把持して搬送する構成であってもよい。また、搬送部11を省略し、動かないように固定されたワーク100に対して、レーザ光を照射して加工することもできる。
【0019】
レーザ発生器12は、パルス発振により時間幅が短いパルスレーザを発生させる。パルスレーザの時間幅は特に限定されないが、例えばナノ秒オーダー、ピコ秒オーダー、又はフェムト秒オーダー等の短い時間間隔でレーザ光を発生させる。なお、レーザ発生器12は連続波発振によりCWレーザーを発生させる構成であってもよい。
【0020】
導光装置13は、レーザ発生器12が発生させたレーザ光を導いてワーク100に照射する。導光装置13は、ワーク100の表面に集光したレーザ光が照射されるように当該レーザ光を導くことで、ワーク100を切断する。
【0021】
以下、
図2及び
図3を参照して、この導光装置13について詳細に説明する。
図2に示すように、導光装置13は、第1導光部20と、ポリゴンミラー30と、第2導光部40と、を備える。なお、これらの光学部品の少なくとも一部は、導光装置13の筐体の内部に配置されている。
【0022】
第1導光部20は、レーザ発生器12が発生させたレーザ光をポリゴンミラー30まで導く光学部品から構成されている。第1導光部20は、レーザ光の光路に沿ってレーザ発生器12側から順に、導入レンズ21と、導入プリズム22と、第1導入ミラー23と、第2導入ミラー24と、を備える。
【0023】
導入レンズ21は、レーザ発生器12が発生させたレーザ光を焦点において収束させる。導入プリズム22、第1導入ミラー23、及び第2導入ミラー24は、導入レンズ21を通過したレーザ光をポリゴンミラー30へ導く。また、導入プリズム22、第1導入ミラー23、及び第2導入ミラー24は、ポリゴンミラー30よりも光路上流側で、ワーク100の表面上に焦点を位置させるために必要な光路長を確保するために光路を折り曲げる光学ユニットを構成する。本実施形態で示した第1導光部20を構成する光学部品は適宜省略可能であるし、他のプリズム又はミラーが導入レンズ21とポリゴンミラー30との間に適宜追加されてもよい。
【0024】
図2に示すように、ポリゴンミラー30は、全体として正多角形状(本実施形態では、正八角形状)に形成されている。また、ポリゴンミラー30は図略の電動モータからの動力が伝達されることで、例えば等角速度で回転可能に構成されている。ポリゴンミラー30の回転軸方向と、
図2の視点方向(即ちポリゴンミラー30が正多角形状となる視点方向)と、は同じである。
【0025】
レーザ発生器12が発生させてポリゴンミラー30で反射したレーザ光は、第2導光部40によって導かれてワーク100に照射される。このとき、レーザ光の照射位置は、ポリゴンミラー30の反射面の角度に応じて変化する。言い換えれば、ポリゴンミラー30が回転することで、レーザ発生器12からのレーザ光が偏向されて当該ポリゴンミラー30でのレーザ光の反射角が変化する。これにより、レーザ光が、ワーク100上で走査される。走査とは、レーザ光等の光の照射位置を所定方向に変化させることである。本実施形態では、レーザ光が走査されることで、複数のレーザ光を合わせた照射領域が所定方向に広がることになる。以下では、レーザ光の走査方向を単に走査方向と称する。ワーク100は走査方向に沿って切断される。
【0026】
ポリゴンミラー30は、回転することにより、第2導入ミラー24によって導入されたレーザ光を等速で角移動させるようにして放射する。第2導光部40は、ポリゴンミラー30から出射した光を反射し、走査線91に導く。ポリゴンミラー30の回転角が変化することにより、照射位置は、ワーク100上の走査線91に沿って走査方向に順次移動する。
【0027】
第2導光部40は、複数の反射面を有しており、ポリゴンミラー30で反射されたレーザ光を適宜反射させて、ワーク100の表面に導く。第2導光部40は、複数の第1照射ミラー41と、複数の第2照射ミラー42と、を備えている。
【0028】
以下、
図3を参照して、第2導光部40の配置及び機能について説明する。
図3は、偏向中心Cと、第1照射ミラー41と、第2照射ミラー42と、走査線91と、の位置関係を示す概略図である。
【0029】
仮に第2導光部40が存在しない場合、レーザ光の焦点(光に沿ってレーザ発生器12から一定距離離れた点)は、
図3の上側に示すように、ポリゴンミラー30の回転角が正多角形の一辺に相当する分だけ変化するのに伴って円弧状の軌跡を描く。この軌跡の中心は、ポリゴンミラー30によってレーザ光を偏向させる偏向中心Cであり、その軌跡の半径は当該偏向中心Cから焦点までの光路長である。一方、走査線91は、円弧状の軌跡と異なり、走査方向に直線的に延びる。すると、走査線91上の照射位置から焦点までの距離が、当該照射位置に応じて変わってしまう。よって、上記の偏向中心Cから走査線91上の任意の照射位置までの光路長を考えると、当該光路長は一定とならず、当該照射位置の位置に応じて変化することになる。
【0030】
第2導光部40は、この課題を解消するために備えられており、ポリゴンミラー30からのレーザ光を少なくとも2度反射してからワーク100(走査線91)に導く。第2導光部40は、ポリゴンミラー30の反射面からワーク100上の走査線91上の任意の照射位置までの光路長が全ての照射位置で略一定となるように、それぞれ配置されている。
【0031】
本実施形態に係る第2導光部40は、ポリゴンミラー30からのレーザ光を反射する第1照射ミラー41と、当該第1照射ミラー41からのレーザ光を更に反射する第2照射ミラー42とを有し、ポリゴンミラー30からのレーザ光を2度反射する。第2導光部40は、これら第1照射ミラー41と第2照射ミラー42とにより構成される。ただし、第2導光部40では、レーザ光が3回以上反射されるように光学部品が配置されていてもよい。
【0032】
上述したように、仮に、第1照射ミラー41及び第2照射ミラー42が存在しなければ、レーザ光の焦点は、光の出射角が変化するのに伴って、偏向中心Cを中心とした円弧(以下、仮想円弧)を描くこととなる。仮想円弧の半径Rは、偏向中心Cから焦点までの光路長である。第1照射ミラー41及び第2照射ミラー42は、偏向中心Cから焦点までの光路を折り曲げ、それにより仮想円弧をワーク100上で概ね走査方向に直線状に延びるように変換する。詳細に言えば、仮想円弧を分割した分割円弧DA1,DA2,・・・の位置は、その各弦VC1,VC2,・・・の向きが走査線91とほぼ一致するように、第2導光部40によって変換される。
【0033】
即ち、第1照射ミラー41及び第2照射ミラー42はそれぞれ複数の反射面を有しており、レーザ光のポリゴンミラー30からの出射角の範囲が複数に分割された分割角度範囲ごとに、光に沿ってレーザ発生器12から一定距離離れた点(焦点)が当該分割角度範囲において光の出射角が変化するのに伴って描く軌跡である分割円弧DA1,DA2,・・・の弦VC1,VC2,・・・が、走査方向と同じ方向となるように(走査方向に並ぶように)、光を複数回反射させる。
【0034】
仮想円弧の位置を走査線91に一致させるように変換するための具体的な方法について簡単に説明すると、まず、仮想円弧を等間隔に分割することにより複数の分割円弧DA1,DA2,・・・を得る。そして、複数の分割円弧DA1,DA2,・・・のそれぞれに対応した複数の仮想弦VC1,VC2,・・・を得る。そして、複数の仮想弦VC1,VC2,・・・がワーク100上で走査方向に順次に直線状に並ぶように、第1照射ミラー41及び第2照射ミラー42がそれぞれ有する反射面の位置及び向きを定める。
【0035】
このように走査線91を形成すると、分割円弧DA1,DA2,・・・の両端2点が走査線91上に再配置され、分割円弧DA1,DA2,・・・(即ち、当該2点を繋ぐ曲線)が、走査線91よりも光軸方向下流側へと再配置される。レーザ光の焦点は、このように位置が変換された分割円弧DA1,DA2,・・・に沿って移動する。
【0036】
仮想円弧を分割して複数の分割円弧DA1,DA2,・・・を得ると、分割円弧DA1,DA2,・・・はこれに対応した仮想弦VC1,VC2,・・・に良好に近似する。このため、ポリゴンミラー30の偏向中心Cから走査線91上の任意の照射位置までの光路長は、全ての照射位置にわたって略一定となる。分割円弧DA1,DA2,・・・は、対応する仮想弦VC1,VC2,・・・と良好に近似しているので、それぞれの分割円弧DA1,DA2,・・・における焦点の挙動は、走査線91に沿う等速直線運動と良好に近似する。
【0037】
分割円弧DA1,DA2,・・・の分割数が増えれば増えるほど、仮想弦VC1,VC2,・・・の中点と分割円弧DA1,DA2,・・・の中点との間の距離が小さくなり、焦点の軌跡が仮想弦VC1,VC2,・・・に近づく。このため、光路長の一定性を高く保つことができる。分割数は、導光装置13に許容される誤差に応じて適宜に定めることができる。
【0038】
このように、第2導光部40により、レーザ光の焦点がワーク100の表面上に位置するため、ワーク100の表面を適切に加工できる。
【0039】
ここで、本実施形態では短パルスのレーザ光でワーク100を加工するので、エネルギーを集中させるために加工点でのビーム径が非常に小さくなる。そのため、ワーク100の材料及び厚みによっては、同じ位置にレーザ光を複数回照射する必要がある。しかし、この場合、レーザ光によりワーク100に形成される溝の形状が湾曲し、加工飽和が起こって切断ができなくなる可能性がある。
【0040】
以上を考慮し、本実施形態では、導光装置13によってレーザ光の照射位置である走査線91を分散させて、ワーク100の加工を行う。以下、この構成について
図4及び
図5を参照して説明する。
図4は、ポリゴンミラー30へ入射されるレーザ光の光軸を回転軸方向に沿って変化させる構成を示す断面図である。
図5は、ポリゴンミラー30へ入射されるレーザ光の光軸を回転軸方向に沿って変化させることにより、入射光に対する反射光のオフセット量が変化することを示す図である。
【0041】
図4に示すように、ポリゴンミラー30は、回転軸31と、複数の支持体32と、複数の反射部33と、を備える。
【0042】
回転軸31は、上述したようにポリゴンミラー30を回転させるためのシャフト等である。回転軸31は、上述した図略の電動モータによって、回転軸線L1を回転中心として回転駆動される。また、回転軸線L1及びそれに平行な方向を回転軸方向と称する。
【0043】
複数の支持体32は、回転軸31に固定されており、回転軸31と一体的に回転する。ここで、回転軸線L1を中心に放射状に外側に広がる方向を径方向と称する。また、径方向のうち、回転軸線L1から離れるように広がる側を径方向外側と称し、回転軸線L1に近づく側を径方向内側と称する。支持体32は、回転軸方向で見たときに、径方向外側の端部が正多角形の各辺を構成するように並べて配置されている。即ち、支持体32は、ポリゴンミラー30の正多角形の頂点と同数設けられている。また、支持体32の径方向外側の端部には、
図4及び
図5に示すように、三角状の溝部が形成されており、この溝部に反射部33が配置されている。
【0044】
反射部33は、底角が45度の直角二等辺三角形状のプリズムである。反射部33は、入射されるレーザ光と斜辺が垂直となるように配置されている。また、反射部33の斜辺を挟む2辺は、それぞれ第1反射面34及び第2反射面35として機能する。
【0045】
この構成により、反射部33に入射されるレーザ光は、
図4に鎖線で示すように反射することで進行方向が変化する。なお、ここの説明では、レーザ光の進行方向の変化のうち、走査方向における方向変化の説明を省略する。
図4に示すように、反射部33に入射されるレーザ光は、径方向内側に進行し、第1反射面34で反射することで、進行方向が90度変化して第2反射面35へ向かう。そして、このレーザ光は、第2反射面35で再び反射することで、進行方向が更に90度変化する。つまり、このレーザ光の入射光と反射光は平行であるとともに、回転軸方向の位置が異なる。
【0046】
ここで、本実施形態のレーザ加工装置1は、ポリゴンミラー30(第1反射面34)へ入射される光の光軸の回転軸方向の位置を調整可能に構成されている。具体的には、
図4に示すように第2導入ミラー24は、第1ベンドミラー24a及び第2ベンドミラー24bを含んで構成されている。
図4において(即ち走査方向で見たときにおいて)、第2ベンドミラー24bの配置角度は、第1反射面34と平行となるように、言い換えれば、板厚方向及び回転軸方向の両方に対して45度をなすように配置されている。また、第1ベンドミラー24aの配置角度は、第2ベンドミラー24bの配置角度に対して垂直となるように配置されている。
【0047】
第1ベンドミラー24aには、第1導入ミラー23から出射したレーザ光が入射される。このレーザ光は、第1ベンドミラー24aで反射されることで、進行方向が90度変化して第2ベンドミラー24bへ向かう。そして、このレーザ光は、第2ベンドミラー24bで再び反射することで進行方向が更に90度変化する。つまり、第2導入ミラー24へ入射されるレーザ光と、第2導入ミラー24で反射されたレーザ光は、互いに平行であるとともに回転軸方向の位置が異なる。
【0048】
ここで、本実施形態では、第2ベンドミラー24bを回転軸方向に移動できるように構成されている。具体的には、
図4に示すように、レーザ加工装置1は調整部60を備えている。調整部60は、駆動部61及び動力伝達部62を備えている。駆動部61が発生させた動力が動力伝達部62を介して第2ベンドミラー24bに伝達されることで、第2ベンドミラー24bが回転軸方向に移動する。
【0049】
第2ベンドミラー24bの回転軸方向の位置が変化することで、回転軸方向における、レーザ光が反射される位置が変化するため、ポリゴンミラー30(第1反射面34)に入射される光の光軸の位置も変化する。具体的には、
図5に示すように、回転軸方向における第2ベンドミラー24bの位置が一側(
図5の右側)に距離L変化した場合、第1反射面34への入射位置は一側に距離L変化する。そのため、第2反射面35の反射位置は他側に距離L変化する。このように、第2ベンドミラー24bを回転軸方向に移動させることで、ポリゴンミラー30(第2反射面35)から出射されるレーザ光の光軸の回転軸方向の位置を変化させることができる。
【0050】
ポリゴンミラー30の回転軸方向は、ワーク100に照射されるレーザ光の照射領域の線幅方向と同じである。従って、反射部33の位置が異なる場合、線幅方向で分散した(位置が変化した)位置にレーザ光が照射されることとなる。
【0051】
具体的には、
図6の上側の図に示すように、ポリゴンミラー30の1つの反射部33で反射されたレーザ光の各パルスの照射領域は円状である。これらの円状の照射領域を同じ方向に重ね合わせることで、所定方向に直線状に広がった照射領域が実現されている。
【0052】
ここで、第2ベンドミラー24bを回転軸方向に移動させることで、
図6の下側の図に示すように、ワーク100に照射されるレーザ光の線幅方向の位置が変化する。そのため、レーザ光の照射領域の見かけ上の線幅を広くすることができる。これにより、加工幅を広くすることができる。また、同じ位置のみにレーザ光が連続して照射されることを防止できるので、上述した加工飽和が生じにくいので、ワーク100を短時間で確実に切断することができる。
【0053】
ここで、第2ベンドミラー24bを移動させるタイミング及び移動量については様々な態様が考えられるが、例えば以下のようにすることができる。即ち、レーザ加工装置1に予め加工幅を設定しておき、上記の見かけ上の線幅が加工幅に一致するように、第2ベンドミラー24bを移動させる。このとき、例えば周期的に第2ベンドミラー24bを移動させることで、ワーク100を均等に加工することができる。周期的とは、ポリゴンミラー30の回転位相又は時間に応じて、予め定められた移動量で第2ベンドミラー24bを移動させ、それを繰り返し行うことである。
【0054】
なお、本実施形態の目的は、照射されるレーザ光の位置を揃えることではない(ズレを修正することではない)ため、特許文献2とは異なり、レーザ光の位置を検出するセンサは不要である。調整部60は、ポリゴンミラー30の回転位相と同期させて(即ち、予め作成されたプログラムに従って)反射部33に入射されるレーザ光の回転軸方向における位置を調整する機能のみを有する。言い換えれば、レーザ加工装置1は、センサに応じてレーザ光の位置を変化させる特許文献2のような機能を有していない。
【0055】
また、第2ベンドミラー24bが高速で移動可能であって、かつ、位置制御を正確に行うことができる場合、ポリゴンミラー30の反射部33毎に、第1反射面34に入射されるレーザ光の光軸の位置が設定されていてもよい。具体的には、ポリゴンミラー30の1つの反射部33でレーザ光を反射させた後に、第2ベンドミラー24bを移動させて、次の反射部33でレーザ光を反射させる。このような機能は、任意のパス数(任意のタイミング)でのレーザ光の幅方向の位置を設定可能なプログラムにより実現することができる。
【0056】
次に、
図7を参照して、ワーク100の加工状況に応じて、レーザ光の焦点位置をワーク100の加工位置に相対的に近づける構成について説明する。
【0057】
図7に示すように、レーザ光によりワーク100を蒸発又は溶融させて除去することで、ワーク100の表面の位置(即ち加工位置)が変化する。具体的には、加工位置は、板厚方向であって、詳細にはレーザ照射方向の下流側に変化する。
【0058】
そのため、本実施形態では、ワーク100の加工位置に対するレーザ光の焦点位置の相対位置を変化させて、焦点位置と加工位置とを相対的に近づける。なお、レーザ光の焦点位置の相対位置の変化方法としては、例えば、ワーク100をレーザ照射方向の上流側に移動させる方法等がある。これにより、レーザ光を加工位置で収束させることができるので、ワーク100を効率的に加工できる。
【0059】
ここで、従来のようにレーザ光の照射領域を線幅方向で変化できない構成では加工溝の幅が狭いため、焦点位置を変化させたときに、加工溝が深くなると、エッジ部Eにレーザ光が当たる可能性がある。この場合、このエッジ部Eでエネルギーが消費されるので、焦点位置での熱密度が低下し、加工飽和が生じて加工が困難になる可能性がある。
【0060】
この点、本実施形態ではレーザ光の照射領域を線幅方向で変化させているため加工溝の幅を広くでき、かつ、レーザ光の照射領域の見かけ上の線幅を調整できる。従って、焦点位置を変化させることにより、見かけ上の線幅の中央部のビームはエッジ部Eの影響を受けにくい。その結果、加工飽和の発生を防止し、加工を適切に継続できる。
【0061】
ここで、ワーク100の加工溝の深さに応じて、レーザ光の焦点位置をワーク100の加工位置に相対的に近づける制御を行うためには、ワーク100の現在の加工溝の深さを推定又は検出する必要がある。具体的には、レーザの照射回数、及び、加工開始からの経過時間等に基づいて、ワーク100の加工溝の深さを推定することが可能である、あるいは、光又は音波等によってワーク100の形状を検出することにより、ワーク100の加工溝の深さを検出することもできる。このようにして得られた加工溝の深さを用いることで、加工溝の深さに応じて、レーザ光の焦点位置を調整できる。また、1回のレーザ加工(本実施形態では1枚のワーク100の切断)に対して、焦点位置の変更回数は1回であってもよいし、複数回であってもよい。
【0062】
以上に説明したように、本実施形態の導光装置13は、第1導光部20と、ポリゴンミラー30と、第2導光部40と、調整部60と、を備える。第1導光部20は、レーザ発生器12から照射されたレーザ光を反射して導く。ポリゴンミラー30は、回転可能に構成されており、回転軸方向で見たときに正多角形状の反射面が構成されるように配置された複数の反射部33を有しており、第1導光部20により導かれたレーザ光を回転しながら当該反射部33で反射する。第2導光部40は、ポリゴンミラー30の反射部33で反射されたレーザ光を反射して、当該反射部33毎にそれぞれレーザ光がワーク100に照射されるように光を導く。調整部60は、第1導光部20に含まれる光学部品の位置及び向きの少なくとも一方を変化させることで、ポリゴンミラー30に入射される光の光軸の回転軸方向における位置を調整する。ポリゴンミラー30の反射部33は、入射した光の光軸を回転軸方向にオフセットして反射するように構成されている。ポリゴンミラー30に入射される光の光軸の回転軸方向における位置を調整部60が調整することで、ワーク100に照射される光の線幅方向の位置を変化させ、ワーク100に照射される光の線幅方向の位置を変化させながら光を照射する。
【0063】
これにより、反射部33の回転軸方向における位置が異なる場合、ワーク100に照射されるレーザ光の線幅方向の位置も異なる。そのため、ワーク100を移動させることなく、レーザ光の照射領域の位置を線幅方向に分散させることができる。
【0064】
また、本実施形態のレーザ加工装置1において、調整部60は、ポリゴンミラー30に入射されるレーザ光の光軸の回転軸方向における位置を、予め設定された値に基づいて変化させる。
【0065】
これにより、要求される仕様に応じて、必要とされる見かけ上の線幅で、レーザ光を照射することができる。
【0066】
また、本実施形態のレーザ加工装置1において、調整部60は、ポリゴンミラー30に入射される光の光軸の回転軸方向における位置を周期的に変化させる。
【0067】
これにより、見かけ上の線幅の照射領域に対して、均等にレーザ光を照射することができる。
【0068】
また、本実施形態のレーザ加工装置1は、導光装置13と、レーザ発生器12と、を備える。レーザ発生器12は、レーザ光を発生させる。
【0069】
これにより、照射領域の位置を線幅方向に分散させたレーザ光を照射できるので、様々な材料を効率良く加工できる。
【0070】
また、本実施形態のレーザ加工装置1において、ワーク100は板状である。ワーク100には、照射領域が重なるようにレーザ光が複数回照射される。レーザ加工装置1は、ワーク100の加工溝の深さに応じて、レーザ光の焦点位置をワーク100の加工位置に相対的に近づける。
【0071】
これにより、ワーク100の加工作業が進んで加工溝が深くなった場合であっても焦点位置を加工位置に近づけることができる。
【0072】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0073】
上記実施形態では、ポリゴンミラー30が備える全ての反射部33について、回転軸方向における位置を調整可能な構造であるが、実際には全ての反射部33の位置までは調整しない。ただし、全ての反射部33の回転軸方向の位置を調整してもよい。
【0074】
本実施形態では、第1導光部20のうち第2導入ミラー24の位置を調整することで、ポリゴンミラー30に入射されるレーザ光の光軸の回転軸方向における位置を変化させている。これに代えて、第2導入ミラー24とは異なる光学部品(導入プリズム22、第1導入ミラー23、及びそれ以外の光学部品)の位置又は向きを変更して、レーザ光の光軸の回転軸方向における位置を変化させてもよい。
【0075】
本実施形態では、反射部33はプリズムであるが、第1反射面34及び第2反射面35に相当する位置にそれぞれミラーが配置された構成であってもよい。
【0076】
上記実施形態では導光装置13をレーザ加工装置1に適用する例を説明したが、例えば画像形成装置等の他の装置に導光装置13を適用することもできる。なお、画像形成装置とは、感光ドラムに光を照射してトナー像を形成する装置である。この場合、光源としてレーザ光以外の光源(例えばLEDランプ)を用いることができる。
【符号の説明】
【0077】
1 レーザ加工装置
12 レーザ発生器(光源)
13 導光装置
20 第1導光部
30 ポリゴンミラー
31 回転軸
32 支持体
33 反射部
40 第2導光部
60 調整部
100 ワーク(被照射物)