(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】測定装置、測定プログラム及び測定方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/1473 20060101AFI20220906BHJP
A61B 5/1486 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
A61B5/1473
A61B5/1486
(21)【出願番号】P 2018123516
(22)【出願日】2018-06-28
【審査請求日】2021-04-20
(31)【優先権主張番号】P 2017131323
(32)【優先日】2017-07-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000141897
【氏名又は名称】アークレイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126505
【氏名又は名称】佐貫 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100105407
【氏名又は名称】高田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】清水 威志
【審査官】▲高▼ 芳徳
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/035021(WO,A1)
【文献】特開2004-237089(JP,A)
【文献】特開平11-076215(JP,A)
【文献】特開2017-083433(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/06 - 5/22
A61B 5/00 - 5/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの体内に留置されるセンサと、
前記ユーザの動き量、前記センサの姿勢、前記ユーザの体温、前記ユーザの脈波、及び前記ユーザの血圧値の少なくとも一つに基づいて、前記センサの設置位置を識別する識別部と、
前記センサからの信号に基づいて、試料に含まれる特定物質の濃度を算出する算出部と、
複数の演算情報を記憶する記憶部と、
を備え、
前記算出部は、前記識別部にて識別した前記センサの設置位置に基づいて、前記記憶部から1つの演算情報を選択し、当該演算情報を用いて前記試料に含まれる前記特定物質の濃度を算出する、
測定装置。
【請求項2】
前記複数の演算情報は、複数の検量線データを含み、
前記算出部は、前記識別部にて識別した前記センサの設置位置に基づいて、前記記憶部から1つの検量線データを選択し、当該検量線データを用いて前記試料に含まれる前記特定物質の濃度を算出する、
請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記複数の演算情報は、複数の測定アルゴリズムを含み、
前記算出部は、前記識別部にて識別した前記センサの設置位置に基づいて、前記記憶部から1つの測定アルゴリズムを選択し、当該測定アルゴリズムを用いて前記試料に含まれる前記特定物質の濃度を算出する、
請求項1又は2に記載の測定装置。
【請求項4】
前記センサにより前記信号が連続的に測定される、
請求項1から
3の何れか一項に記載の測定装置。
【請求項5】
前記試料は、間質液である、
請求項1から
4の何れか一項に記載の測定装置。
【請求項6】
前記体内に薬剤を投与するための投与部を制御する制御部を備え、
前記記憶部は、複数の投与アルゴリズムを記憶し、
前記制御部は、前記特定物質の濃度及び前記センサの設置位置に基づいて、前記記憶部から1つの前記投与アルゴリズムを選択し、当該投与アルゴリズムを用いて前記薬剤が前記体内に投与されるように前記投与部を制御する、
請求項1から
5の何れか一項に記載の測定装置。
【請求項7】
コンピュータに、
ユーザの体内に留置されるセンサの設置位置を
、前記ユーザの動き量、前記センサの姿勢、前記ユーザの体温、前記ユーザの脈波、及び前記ユーザの血圧値の少なくとも一つに基づいて識別する処理と、
前記センサの設置位置に基づいて、複数の演算情報を記憶する記憶部から1つの演算情報を選択する処理と、
選択された前記演算情報を用いて、前記センサからの信号に基づいて試料に含まれる特定物質の濃度を算出する処理と、
を実行させ
る測定プログラム。
【請求項8】
コンピュータが、
ユーザの体内に留置されるセンサの設置位置を
、前記ユーザの動き量、前記センサの姿勢、前記ユーザの体温、前記ユーザの脈波、及び前記ユーザの血圧値の少なくとも一つに基づいて識別する処理と、
前記センサの設置位置に基づいて、複数の演算情報を記憶する記憶部から1つの演算情報を選択する処理と、
選択された前記演算情報を用いて、前記センサからの信号に基づいて試料に含まれる特定物質の濃度を算出する処理と、
を実行する測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定装置、測定プログラム及び測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、自己の血糖値(血液中のグルコース濃度の値)を測定するための様々な血糖値測定装置が市販されている。例えば、血糖値測定装置として、血糖自己測定(SMBG:Self-Monitoring of Blood Glucose)を行うためのSMBG装置や、持続グルコース測定(CGM:Continuous Glucose Monitoring)を行うためのCGM装置が知られている。SM
BG装置では、穿刺器具を用いて指先などから採取した血液を、測定器に装着した試験片に付着させて血糖値の測定を測定する。また、CGM装置では、電極とグルコースに反応する酵素を含む微小センサを皮下に留置し、間質液中のグルコース濃度を持続的に測定する。CGM装置では、数日~数週間程度に亘りセンサを皮下に留置し、数十秒~数分間隔毎に血糖値が連続的に測定される。患者の痛みの軽減等を考慮して、患者の身体におけるCGM装置の設置箇所が検討されている。センサを、被験者の腹部、上腕、腿等の複数の部位に配設することが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、CGM装置が、患者の上腕部、腹部、臀部等の部位に設置され、CGM装置によって間質液中のグルコース濃度が測定される。血糖値と間質液中のグルコース濃度値との間にはタイムラグが存在する。すなわち、間質液中のグルコース濃度値が、血糖値を反映するまでには一定時間が掛かる。間質液中のグルコース濃度値が、血糖値を反映するまでに掛かる時間は、患者に対するCGM装置の設置位置によって異なる。例えば、検量線を用いて、測定された電流値をグルコース濃度値に変換する場合、
図9に示すように、CGM装置の設置位置によって検量線が異なる。
図9の検量線Aは、例えば、患者の上腕部にCGM装置を設置した場合の検量線であり、
図9の検量線Bは、例えば、患者の腹部にCGM装置を設置した場合の検量線である。しかし、患者がCGM装置を設置する位置は任意であり、CGM装置の設置位置を考慮せずにCGM装置による測定が行われると、CGM装置における測定精度が低下する。本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、試料中の特定物質の濃度値の測定精度を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、体内に留置されるセンサと、前記センサの設置位置を識別する識別部と、前記センサからの信号に基づいて、試料に含まれる特定物質の濃度を算出する算出部と、複数の演算情報を記憶する記憶部と、を備え、前記算出部は、前記識別部にて識別した前記センサの設置位置に基づいて、前記記憶部から1つの演算情報を選択し、当該演算情報を用いて前記試料に含まれる前記特定物質の濃度を算出する、測定装置である。
【0006】
上記態様によれば、複数の演算情報のうちからセンサの設置位置に対応する演算情報が選択される。選択された演算情報を用いて、センサからの信号に基づいて、試料に含まれる特定物質の濃度値が算出される。センサの設置位置毎に異なる複数の演算情報のうちから選択された演算情報を用いて、センサからの信号に基づいて試料に含まれる特定物質の濃度値が算出されるため、試料に含まれる特定物質の濃度値の測定精度を向上することが
できる。
【0007】
測定装置において、複数の演算情報は、複数の検量線データを含み、算出部は、識別部にて識別したセンサの設置位置に基づいて、記憶部から1つの検量線データを選択し、検量線データを用いて試料に含まれる特定物質の濃度を算出する。測定装置において、複数の演算情報は、複数の測定アルゴリズムを含み、算出部は、識別部にて識別したセンサの設置位置に基づいて、記憶部から1つの測定アルゴリズムを選択し、測定アルゴリズムを用いて試料に含まれる特定物質の濃度を算出する。
【0008】
測定装置において、識別部は、ユーザの動き量を検出し、ユーザの動き量に基づいて、センサの設置位置を識別する。測定装置において、識別部は、センサの姿勢を検出し、センサの姿勢に基づいて、センサの設置位置を識別する。測定装置において、識別部は、体温を測定し、体温に基づいて、センサの設置位置を識別する。測定装置において、識別部は、脈拍数、心拍数又は脈波を測定し、脈拍数、心拍数又は脈波に基づいて、センサの設置位置を識別する。測定装置において、識別部は、血圧値を測定し、血圧値に基づいて、センサの設置位置を識別する。測定装置において、センサにより信号が連続的に測定される。測定装置において、試料は、間質液である。
【0009】
上記態様は、プログラムがコンピュータによって実行されることによって実現されてもよい。即ち、上記態様は、コンピュータに実行させるためのプログラム、或いは当該プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体として特定することができる。また、上記態様は、コンピュータが実行する方法として特定することができる。更に、上記態様は、測定装置を含むシステムとして特定されてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、試料中の特定物質の濃度値の測定精度を向上することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る測定システムの構成図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る送信装置のブロック構成図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係る受信装置のブロック構成図である。
【
図4】
図4は、ユーザの上腕部の皮下に測定センサが留置された場合における活動因子データの値と、ユーザの腹部の皮下に測定センサが留置された場合における活動因子データの値とを示す図である。
【
図5】
図5は、記憶部に記憶されている複数の検量線データの一例を示す図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態に係る測定処理の一例を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、第2実施形態に係る測定処理の一例を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、記憶部に記憶されている複数の測定アルゴリズムの一例を示す図である。
【
図10】
図10は、第3実施形態に係る測定システムの構成図である。
【
図11】
図11は、第3実施形態に係る投与装置のブロック構成図である。
【
図12】
図12は、第3実施形態に係る測定処理の例を示すフローチャートである。
【
図13】
図13は、第3実施形態に係る測定処理の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下の各実施形態は例示で
あり、本発明は以下の各実施形態の構成に限定されない。
【0013】
〈第1実施形態〉
図1は、第1実施形態に係る測定システムの構成図である。
図1に示す測定システムは、送信装置1及び受信装置2を備える。送信装置1は、体内における試料中の特定物質(測定対象物質)の濃度を連続的に測定し、測定結果を受信装置2に送る。送信装置1は、ユーザ(患者)の上腕部、腹部、臀部、脚部等の部位に取り付けて使用することが可能である。送信装置1は、持続グルコース測定を行うためのCGM装置であってもよい。体内における試料として、例えば、間質液等の体液がある。特定物質として、例えば、間質液に含まれるグルコースがある。特定物質は、グルコース以外の物質であってもよい。
【0014】
受信装置2は、送信装置1から測定結果を受信する。受信装置2は、無線により送信装置1との間でデータ通信を行う。また、受信装置2は、有線により送信装置1との間でデータ通信を行ってもよい。第1実施形態において、送信装置1及び受信装置2が別々の機器として構成されているが、これらが一体に構成されていてもよい。
【0015】
〈送信装置〉
送信装置1は、ユーザの皮下に植え込んで使用する測定センサ10を備える。送信装置1は、粘着テープ等によってユーザの皮膚に貼り付けられ、あるいはベルト等に取り付けられることで、ユーザに装着される。測定センサ10は、電気化学的反応を利用して試料中の特定成分(例えば、特定物質の濃度)を測定する電気化学センサである。例えば数日~数週間程度の連続測定期間に亘って測定センサ10を皮下に留置させ、送信装置1が連続的に間質液中のグルコース濃度を測定する。「連続的」の意味は、測定センサ10を皮下に留置させた状態で、送信装置1が継続的にグルコース濃度を測定することを意味し、送信装置1が所定時間毎にグルコース濃度を測定する態様が含まれる。送信装置1に対してグルコース濃度の測定頻度を任意に設定することができる。例えば、送信装置1が数十秒~数分間に一回の頻度でグルコース濃度を測定するように、送信装置1に対してグルコース濃度の測定頻度を設定してもよい。
【0016】
図2は、第1実施形態に係る送信装置1のブロック構成図である。送信装置1は、受信装置2に各種のデータを送るトランスミッターである。送信装置1は、センサ部11、測定部12、制御部(演算部)13、記憶部14、通信部15、アンテナ16及び検出センサ17を備える。センサ部11は、グルコースオキシダーゼ(GOD)、グルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)等のグルコース酸化還元酵素、作用極や対極、参照極等の複数の電極を有する。センサ部11は、
図1に示す測定センサ10の先端側に設けられている。センサ部11は、配線18を介して測定部12に電気的に接続されている。
【0017】
測定部12は、センサ部11に電圧を印加し、信号値(例えば、応答電流値)を測定する回路である。センサ部11の電極間(作用極と対極との間、又は作用極と参照極との間)に電圧が印加されると、センサ部11は、体液中のグルコースの濃度に応じた応答電流値を出力する。測定部12は、センサ部11の電極間に印加する電圧を制御して、センサ部11から出力された応答電流値を測定する。センサ部11の電極間に電圧が印加されると、グルコース酸化還元酵素によって体液中のグルコースが酸化され、これによって取り出された電子が作用極に供給される。測定部12は、作用極に供給された電子の電荷量を応答電流値として測定する。また、測定部12は、応答電流値を応答電圧値に換算し、作用極に供給された電子の電荷量を応答電圧値として測定してもよい。以下では、測定部12が、応答電流値を測定した場合について説明する。測定部12によって測定された応答電流値は、制御部13に伝わる。
【0018】
制御部13は、測定部12、記憶部14、通信部15及び検出センサ17を制御する。
制御部13、記憶部14及び通信部15は、送信装置1に設けられたCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)等
を含むコンピュータ、各装置及びコンピュータ上で実行されるプログラム等によって実現することができる。CPUは、プロセッサとも呼ばれる。CPUは、単一のプロセッサに限定される訳ではなく、マルチプロセッサ構成であってもよい。
【0019】
制御部13は、応答電流値を記憶部14に記憶すると共に、応答電流値を通信部15に送る。通信部15は、アンテナ16を介して応答電流値を受信装置2に送る。通信部15は、制御部13から送信された応答電流値を受信装置2に送ってもよいし、記憶部14に記憶された応答電流値を受信装置2に送ってもよい。
【0020】
検出センサ17は、送信装置1が装着されたユーザの活動因子を検出し、ユーザの活動因子に応じたシグナルを出力する。また、検出センサ17は、測定センサ10の動き量や姿勢を検出し、測定センサ10の動き量や姿勢に応じたシグナルを出力する。送信装置1はユーザに装着されているため、検出センサ17はユーザに設置されている。検出センサ17は、モーションセンサ、姿勢センサ及びバイタルセンサのうちの少なくとも一つを有する。モーションセンサは、送信装置1が装着されたユーザの部位の動き量を検出する活動センサであり、モーションセンサとして、例えば、加速度センサが挙げられる。また、モーションセンサは、測定センサ10の動き量を検出してもよい。姿勢センサは、送信装置1が装着されたユーザの部位の姿勢(方向)を検出する活動センサであり、姿勢センサとして、例えば、ジャイロセンサが挙げられる。また、姿勢センサは、測定センサ10の姿勢を検出してもよい。バイタルセンサは、送信装置1が装着されたユーザのバイタルデータを測定する活動センサであり、バイタルセンサとして、例えば、温度センサ、脈拍センサ、心拍センサ、脈波センサ及び血圧センサ等が挙げられる。温度センサは、送信装置1が装着されたユーザの体温を測定する。脈拍センサは、送信装置1が装着されたユーザの脈拍数を測定する。心拍センサは、送信装置1が装着されたユーザの心拍数を測定する。脈波センサは、送信装置1が装着されたユーザの脈波を測定する。血圧センサは、送信装置1が装着されたユーザの血圧値を測定する。
【0021】
検出センサ17が検出したユーザの活動因子は、活動因子データとして通信部15に伝わる。通信部15は、アンテナ16を介して活動因子データを受信装置2に送る。活動因子データは、動き量データ(加速度データ)、姿勢データ(角速度データ及び角加速度データ)、体温データ、脈拍数データ、心拍数データ、脈波データ及び血圧値データのうちの少なくとも一つを含む。
【0022】
〈受信装置〉
図3は、第1実施形態に係る受信装置2のブロック構成図である。受信装置2は、送信装置1から各種のデータを受信し、表示する。受信装置2は、制御部(演算部)21、記憶部22、通信部23、アンテナ24、表示部25及び操作部26を備える。制御部21は、記憶部22、通信部23及び表示部25を制御する。制御部21、記憶部22及び通信部23は、受信装置2に設けられたCPU、RAM及びROM等を含むコンピュータ、各装置及びコンピュータ上で実行されるプログラム等によって実現することができる。
【0023】
表示部25は、ディスプレイを有し、ディスプレイに各種の情報及びメッセージを表示する。また、表示部25は、ディスプレイに測定結果やエラーを表示すると共に、設定時における操作手順や操作状況等を表示する。表示部25のディスプレイは、例えば、液晶表示装置、プラズマディスプレイパネル、Cathode Ray Tube(CRT)又はエレクトロルミネッセンスパネル等である。表示部25は、音声を出力する音声出力部を有していてもよい。操作部26は、各種の操作ボタン、タッチパネル等を有し、ユーザから各種の情報の入力を受け付ける。
【0024】
通信部23は、アンテナ24を介して送信装置1から応答電流値及び活動因子データを受信し、応答電流値及び活動因子データを制御部21に送る。制御部21は、受信した応答電流値及び活動因子データを記憶部22に記憶する。制御部21は、応答電流値から間質液中のグルコース濃度値を算出するための検量線データを用いて、応答電流値から間質液中のグルコース濃度値を算出する。応答電流値は、「信号」の一例である。制御部21は、「算出部」の一例である。検量線データは、「演算情報」の一例である。記憶部22には、複数の検量線データが記憶されている。検量線データは、応答電流値と、間質液中のグルコース濃度値との対応関係を示している。検量線データは、例えば、数式や対応テーブルとして、記憶部22に記憶されている。
【0025】
例えば、ユーザの上腕部に送信装置1が装着されている場合、ユーザの上腕部の皮下に測定センサ10が留置されている。例えば、ユーザの腹部に送信装置1が装着されている場合、ユーザの腹部の皮下に測定センサ10が留置されている。ユーザの上腕部の皮下に測定センサ10が留置された場合における活動因子データの値と、ユーザの腹部の皮下に測定センサ10が留置された場合における活動因子データの値とが異なる。このように、ユーザの体内に留置された測定センサ10の設置位置(以下、「センサ設置位置」とも表記する。)毎に、活動因子データの値が異なる。
図4は、ユーザの上腕部の皮下に測定センサ10が留置された場合における活動因子データの値と、ユーザの腹部の皮下に測定センサ10が留置された場合における活動因子データの値とを示す図である。ユーザの上腕部(
図4では「位置A」と表記)の皮下に測定センサ10が留置された場合における活動因子データの値が、
図4のグラフAに示されている。ユーザの腹部(
図4では「位置B」と表記)の皮下に測定センサ10が留置された場合における活動因子データの値が、
図4のグラフBに示されている。
図4に示すように、ユーザの上腕部の皮下に測定センサ10が留置された場合における活動因子データの値と、ユーザの腹部の皮下に測定センサ10が留置された場合における活動因子データの値とが異なっている。
【0026】
センサ設置位置毎の活動因子データの値と、活動因子データの値に対応するセンサ設置位置に関する情報とが、記憶部22に予め記憶されている。例えば、送信装置1及び受信装置2を初期化する際、センサ設置位置毎の活動因子データの値及び活動因子データの値に対応するセンサ設置位置に関する情報が、送信装置1から受信装置2に送られ、記憶部22に記憶されてもよい。センサ設置位置に関する情報は、上腕部、腹部、臀部、脚部等の身体の部位情報を含む。制御部21は、送信装置1から取得した活動因子データの値と、記憶部22に記憶されている活動因子データの値とを比較する。制御部21は、送信装置1から取得した活動因子データの値に基づいて、センサ設置位置を識別(判定)する。制御部21は、送信装置1から取得した活動因子データの値に基づいて、ユーザに対する検出センサ17の設置位置を識別してもよい。制御部21は、送信装置1から取得した活動因子データの値に基づいて、ユーザに対する送信装置1の設置位置を識別してもよい。制御部21は、「識別部」の一例である。
【0027】
活動因子データが動き量データを含む場合、制御部21は、動き量データの値に基づいて、センサ設置位置を識別する。すなわち、制御部21は、測定センサ10の動き量又はユーザの部位の動き量に基づいて、センサ設置位置を識別する。例えば、単位時間あたりにおけるユーザの上腕部の動き量と、単位時間あたりにおけるユーザの腹部の動き量とが異なる。そのため、ユーザの上腕部に送信装置1が装着された場合における動き量データの値と、ユーザの腹部に送信装置1が装着された場合における動き量データの値とが異なる。制御部21は、送信装置1から取得した動き量データの値と、記憶部22に記憶されている動き量データの値とを比較することにより、センサ設置位置を識別する。ここでは、検出センサ17が測定センサ10の動き量又はユーザの部位の動き量を検出する場合について説明したが、第1実施形態はこの例に限定されない。検出センサ17が、送信装置
1の動き量又は検出センサ17の動き量を検出してもよい。制御部21は、送信装置1の動き量又は検出センサ17の動き量に基づいて、センサ設置位置を識別してもよい。
【0028】
活動因子データが姿勢データを含む場合、制御部21は、姿勢データに基づいて、センサ設置位置を識別する。すなわち、制御部21は、測定センサ10の姿勢又はユーザの部位の姿勢に基づいて、センサ設置位置を識別する。例えば、ユーザの上腕部は、様々な姿勢をとる傾向にあり、ユーザの腹部は、同じ姿勢が一定時間継続する傾向にある。そのため、ユーザの上腕部に送信装置1が設置された場合における姿勢データの値と、ユーザの腹部に送信装置1が設置された場合における姿勢データの値とが異なる。制御部21は、送信装置1から取得した姿勢データの値と、記憶部22に記憶されている姿勢データの値とを比較することにより、センサ設置位置を識別する。ここでは、検出センサ17が、測定センサ10の姿勢又はユーザの部位の姿勢を検出する場合について説明したが、第1実施形態はこの例に限定されない。検出センサ17が、送信装置1の姿勢又は検出センサ17の姿勢を検出してもよい。制御部21は、送信装置1の姿勢又は検出センサ17の姿勢に基づいて、センサ設置位置を識別してもよい。
【0029】
活動因子データが体温データを含む場合、制御部21は、体温データに基づいて、センサ設置位置を識別する。すなわち、制御部21は、ユーザの体温に基づいて、センサ設置位置を識別する。例えば、ユーザの上腕部の表面温度と、ユーザの腹部の表面温度とが異なる。そのため、ユーザの上腕部に検出センサ17が設置された場合における体温データの値と、ユーザの腹部に検出センサ17が設置された場合における体温データの値とが異なる。制御部21は、送信装置1から取得した体温データの値と、記憶部22に記憶されている体温データの値とを比較することにより、センサ設置位置を識別する。
【0030】
活動因子データが脈拍数データを含む場合、制御部21は、脈拍数データに基づいて、センサ設置位置を識別する。すなわち、制御部21は、ユーザの脈拍数に基づいて、センサ設置位置を識別する。例えば、ユーザの上腕部で測定された場合のユーザの脈拍数と、ユーザの腹部で測定された場合のユーザの脈拍数とが異なる。そのため、ユーザの上腕部に検出センサ17が設置された場合における脈拍数データの値と、ユーザの腹部に検出センサ17が設置された場合における脈拍数データの値とが異なる。制御部21は、送信装置1から取得した脈拍数データの値と、記憶部22に記憶されている脈拍数データの値とを比較することにより、センサ設置位置を識別する。
【0031】
活動因子データが心拍数データを含む場合、制御部21は、心拍数データに基づいて、センサ設置位置を識別する。すなわち、制御部21は、ユーザの心拍数に基づいて、センサ設置位置を識別する。例えば、ユーザの上腕部で測定された場合のユーザの心拍数と、ユーザの腹部で測定された場合のユーザの心拍数とが異なる。そのため、ユーザの上腕部に検出センサ17が設置された場合における心拍数データの値と、ユーザの腹部に検出センサ17が設置された場合における心拍数データの値とが異なる。制御部21は、送信装置1から取得した心拍数データの値と、記憶部22に記憶されている心拍数データの値とを比較することにより、センサ設置位置を識別する。
【0032】
活動因子データが脈波データを含む場合、制御部21は、脈波データに基づいて、センサ設置位置を識別する。すなわち、制御部21は、ユーザの脈波の波形に基づいて、センサ設置位置を識別する。例えば、ユーザの上腕部で測定された場合のユーザの脈波の波形と、ユーザの腹部で測定された場合のユーザの脈波の波形とが異なる。そのため、ユーザの上腕部に検出センサ17が設置された場合における脈波データの値と、ユーザの腹部に検出センサ17が設置された場合における脈波データの値とが異なる。制御部21は、送信装置1から取得した脈波データの値と、記憶部22に記憶されている脈波データの値とを比較することにより、センサ設置位置を識別する。また、制御部21は、ユーザの脈波
の波形を周波数解析してユーザの脈拍数を算出し、ユーザの脈拍数に基づいて、センサ設置位置を識別してもよい。
【0033】
活動因子データが血圧値データを含む場合、制御部21は、血圧値データに基づいて、センサ設置位置を識別する。すなわち、制御部21は、ユーザの血圧値に基づいて、センサ設置位置を識別する。例えば、ユーザの上腕部で測定された場合のユーザの血圧値と、ユーザの腹部で測定された場合のユーザの血圧値とが異なる。そのため、ユーザの上腕部に検出センサ17が設置された場合における血圧値データの値と、ユーザの腹部に検出センサ17が設置された場合における血圧値データの値とが異なる。制御部21は、送信装置1から取得した血圧値データの値と、記憶部22に記憶されている血圧値データの値とを比較することにより、センサ設置位置を識別する。
【0034】
検量線データとセンサ設置位置に関する情報とが対応付けられた状態で、複数の検量線データ及び複数のセンサ設置位置に関する情報が、記憶部22に記憶されている。制御部21は、センサ設置位置に基づいて、記憶部22に記憶されている複数の検量線データのうちの一つを選択する。
図5は、記憶部22に記憶されている複数の検量線データの一例を示す図である。
図5に示す例では、センサ設置位置Aと検量線データAとが対応付けられており、センサ設置位置Bと検量線データBとが対応付けられている。
図5の検量線データAと検量線データBとが異なっており、例えば、検量線データAの演算パラメータ等と検量線データBの演算パラメータ等とが異なる。
【0035】
制御部21は、選択された検量線データを用いて、応答電流値に基づいて間質液中のグルコース濃度値を算出する。選択された検量線データは、識別されたセンサ設定位置に対応している。したがって、制御部21は、センサ設置位置に対応する検量線データを参照し、応答電流値から間質液中のグルコース濃度値を算出する。このように、制御部21は、センサ設置位置毎に異なる複数の検量線データのうちから選択された検量線データを参照して、応答電流値から間質液中のグルコース濃度値を算出する。
【0036】
図6は、第1実施形態に係る測定処理の一例を示すフローチャートである。送信装置1の電源がONされ、受信装置2の電源がONされた後、送信装置1がユーザの体表面に取り付けられることで、送信装置1がユーザに装着される。送信装置1の初期化が行われ、受信装置2の初期化が行われることにより、
図6に示すフローが開始される。送信装置1がユーザの体表面に取り付けられた後、送信装置1の電源がONされてもよい。ステップS01において、送信装置1が、応答電流値及び活動因子データを受信装置2に送信し、受信装置2が、応答電流値及び活動因子データを受信する。
【0037】
ステップS02において、制御部21は、活動因子データの値に基づいて、センサ設置位置を識別する。ステップS03において、制御部21は、センサ設置位置に基づいて、記憶部22に記憶されている複数の検量線データのうちの一つを選択する。ステップS04において、制御部21は、選択された検量線データを用いて、応答電流値に基づいて間質液中のグルコース濃度値を算出する。ステップS05において、表示部25は、間質液中のグルコース濃度値を、ユーザのグルコース濃度値として表示する。
【0038】
第1実施形態によれば、複数の検量線データのうちからセンサ設置位置に対応する検量線データが選択される。選択された検量線データを用いて、応答電流値から間質液中のグルコース濃度値が算出される。センサ設置位置毎に異なる複数の検量線データのうちから選択された検量線データを用いて、応答電流値から間質液中のグルコース濃度値が算出されるため、間質液中のグルコース濃度値の測定精度を向上することができる。
【0039】
〈第2実施形態〉
第2実施形態に係る測定システムについて説明する。第1実施形態では、センサ設置位置に基づいて、複数の検量線データのうちの一つが選択される例を示した。第2実施形態では、センサ設置位置に基づいて、複数の測定アルゴリズムのうちの一つが選択される例を示す。測定アルゴリズムは、例えば、応答電流値を測定するための処理手順である。測定アルゴリズムは、演算情報の一例である。なお、第2実施形態において、第1実施形態と同一の構成要素については、第1実施形態と同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0040】
図7は、第2実施形態に係る測定処理の一例を示すフローチャートである。
図7に示すフローの開始条件は、
図6に示すフローの開始条件と同様である。ステップS11において、送信装置1が、活動因子データを受信装置2に送信し、受信装置2が、活動因子データを受信する。ステップS12において、制御部21は、活動因子データの値に基づいて、センサ設置位置を識別する。
【0041】
ステップS13において、制御部21は、センサ設置位置に基づいて、記憶部22に記憶されている複数の測定アルゴリズムのうちの一つを選択する。測定アルゴリズムとセンサ設置位置に関する情報とが対応付けられた状態で、複数の測定アルゴリズム及び複数のセンサ設置位置に関する情報が、記憶部22に記憶されている。
図8は、記憶部22に記憶されている複数の測定アルゴリズムの一例を示す図である。
図8に示す例では、センサ設置位置Aと測定アルゴリズムAとが対応付けられており、センサ設置位置Bと測定アルゴリズムBとが対応付けられている。
図8の測定アルゴリズムAと測定アルゴリズムBとが異なっており、例えば、測定アルゴリズムAの印加電圧、サンプリング間隔、演算処理等と測定アルゴリズムBの印加電圧、サンプリング間隔、演算処理等とが異なる。
【0042】
ステップS14において、受信装置2が、選択された測定アルゴリズムを送信装置1に送信する。送信装置1は、選択された測定アルゴリズムを受信する。制御部13は、選択された測定アルゴリズムを用いて、測定部12を制御する。測定部12は、センサ部11に電圧を印加し、応答電流値を測定する。選択された測定アルゴリズムは、識別されたユーザ設置位置に対応している。したがって、制御部13は、センサ設置位置に対応する測定アルゴリズムを用いて測定部12を制御し、測定部12が、応答電流値を測定する。このように、制御部13は、センサ設置位置毎に異なる複数の測定アルゴリズムのうちから選択された測定アルゴリズムを用いて測定部12を制御し、測定部12が、応答電流値を測定する。
【0043】
ステップS15において、送信装置1が、応答電流値を受信装置2に送信し、受信装置2が、応答電流値を受信する。ステップS16において、制御部21は、所定の検量線データを用いて、応答電流値に基づいて間質液中のグルコース濃度値を算出する。所定の検量線データは、記憶部22に記憶されている。ステップS17において、表示部25は、間質液中のグルコース濃度値を、ユーザのグルコース濃度値として表示する。
【0044】
測定アルゴリズムとセンサ設置位置に関する情報とが対応付けられた状態で、複数の測定アルゴリズム及び複数のセンサ設置位置に関する情報が、記憶部14に予め記憶されていてもよい。送信装置1の制御部13が、センサ設置位置に基づいて、複数の測定アルゴリズムのうちの一つを選択してもよい。
【0045】
第2実施形態によれば、複数の測定アルゴリズムのうちからセンサ設置位置に対応する測定アルゴリズムが選択される。選択された測定アルゴリズムを用いて、応答電流値が測定され、応答電流値から間質液中のグルコース濃度値が算出される。センサ設置位置毎に異なる複数の測定アルゴリズムのうちから選択された測定アルゴリズムを用いて応答電流値が測定され、応答電流値から間質液中のグルコース濃度値が算出されるため、間質液中のグルコース濃度値の測定精度を向上することができる。
【0046】
第1実施形態及び第2実施形態では、制御部21が、センサ設置位置を識別する。第1実施形態及び第2実施形態に示す例に限定されず、検出センサ17に制御回路を設けることにより、検出センサ17が、センサ設置位置を識別してもよい。検出センサ17は、「識別部」の一例である。センサ設置位置毎の活動因子データの値と、活動因子データの値に対応するセンサ設置位置に関する情報とが、記憶部14に予め記憶されてもよい。例えば、送信装置1及び受信装置2を初期化する際、センサ設置位置毎の活動因子データの値及び活動因子データの値に対応するセンサ設置位置に関する情報が、記憶部14に記憶されてもよい。
【0047】
第1実施形態に係る測定システムと第2実施形態に係る測定システムとを組み合わせてもよい。例えば、複数の測定アルゴリズムのうちからセンサ設置位置に対応する測定アルゴリズムを用いて応答電流値を測定し、複数の検量線データのうちからセンサ設置位置に対応する検量線データを用いて応答電流値から間質液中のグルコース濃度値を算出してもよい。上記では、送信装置1及び受信装置2を備える測定システムを例示して説明したが、各実施形態はこれに限定されない。送信装置1及び受信装置2を一体とする測定装置として構成してもよい。また、送信装置1及び受信装置2の何れか一方が、測定装置として構成してもよい。送信装置1の制御部13が、「識別部」及び「算出部」のうちの少なくとも一つとして機能してもよい。送信装置1の記憶部14に、複数の検量線データ及び複数の測定アルゴリズムが記憶されてもよい。
【0048】
〈第3実施形態〉
第3実施形態に係る測定システムについて説明する。第3実施形態における第1、第2実施形態と同一の構成要素については、第1、第2実施形態と同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0049】
図10は、第3実施形態に係る測定システムの構成図である。
図10に示す測定システムは、送信装置1、受信装置2及び投与装置3を備える。第3実施形態に係る送信装置1及び受信装置2は、第1、第2実施形態と同様である。投与装置3は、薬剤を体内に連続的(持続的)又は間欠的に供給する薬剤供給装置である。投与装置3は、ユーザの腹部、上腕部、臀部等の部位に装着して使用することが可能である。投与装置3は、パッチ(貼り付け)式又はチューブ式の何れであってもよい。薬剤は、インスリン及びグルカゴンを含む。投与装置3は、無線により受信装置2との間でデータ通信を行う。また、投与装置3は、有線により受信装置2との間でデータ通信を行ってもよい。第3実施形態において、送信装置1及び受信装置2が別々の機器として構成されているが、これらが一体に構成されていてもよい。第3実施形態において、送信装置1及び投与装置3が別々の機器として構成されているが、これらが一体に構成されていてもよい。また、送信装置1、受信装置2及び投与装置3が一体に構成されていてもよい。
【0050】
〈投与装置〉
投与装置3は、ユーザの皮下に植え込んで使用するカニューレ(挿入部)31を備える。投与装置3は、粘着テープ等によってユーザの皮膚に貼り付けられ、あるいは衣服やベルト等に取り付けられることで、ユーザに装着される。
図11は、第3実施形態に係る投与装置3のブロック構成図である。投与装置3は、カニューレ31、収容部32、ポンプ33、制御部(演算部)34、記憶部35、通信部36及びアンテナ37を備える。カニューレ31は、ポンプ33に接続されている。収容部32は薬剤を収容する。収容部32は、複数種類の薬剤を収容してもよい。また、複数の収容部32を、投与装置3に設けてもよい。例えば、複数の収容部32のうちの一つがインスリンを収容し、複数の収容部32のうちの一つがグルカゴンを収容してもよい。
【0051】
ポンプ33は、例えば、モーター等により駆動する。ポンプ33が駆動し、収容部32内の薬剤がカニューレ31に送出されることにより、体内に薬剤が投与される。ポンプ33は、投与部の一例である。複数のポンプ33を、投与装置3に設けてもよい。例えば、複数のポンプ33のうちの一つがインスリンポンプであり、複数のポンプ33のうちの一つがグルカゴンポンプであってもよい。制御部34は、ポンプ33、記憶部35及び通信部36を制御する。制御部34は、通信部36及びアンテナ37を介して受信装置2から各種のデータを送信する。制御部34は、通信部36及びアンテナ37を介して受信装置2に各種のデータを受信する。制御部34、記憶部35及び通信部36は、投与装置3に設けられたCPU、RAM及びROM等を含むコンピュータ、各装置及びコンピュータ上で実行されるプログラム等によって実現することができる。
【0052】
第3実施形態に係る受信装置2について説明する。記憶部22には、複数の投与アルゴリズムが記憶されている。投与アルゴリズムは、例えば、体内に薬剤を投与するための処理手順である。投与アルゴリズムは、投与する薬剤の種類、薬剤の投与量(ユニット/分)、薬剤の投与期間及び薬剤の投与タイミング(投与する時間帯)を含む。制御部21は、間質液中のグルコース濃度値及びセンサ設置位置に基づいて、記憶部22に記憶されている複数の投与アルゴリズムのうちの一つを選択する。投与アルゴリズムと、間質液中のグルコース濃度値及びセンサ設置位置に関する情報とが対応付けられた状態で、複数の投与アルゴリズム、間質液中のグルコース濃度値及びセンサ設置位置に関する情報が、記憶部22に記憶されている。
【0053】
図12及び
図13は、第3実施形態に係る測定処理の例を示すフローチャートである。
図12及び
図13に示すフローの開始条件は、
図6に示すフローの開始条件と同様である。
図12のステップS21~S24の処理は、
図6のステップS01~S04の処理と同様である。
図13のステップS31~S36の処理は、
図7のステップS11~S16の処理と同様である。ステップS25及びS37において、制御部21は、間質液中のグルコース濃度値及びセンサ設置位置に基づいて、記憶部22に記憶されている複数の投与アルゴリズムのうちの一つを選択する。例えば、間質液中のグルコース濃度値が第1閾値以上である場合、投与する薬剤の種類としてインスリンが選択され、間質液中のグルコース濃度値が第1閾値未満である場合、投与する薬剤の種類としてグルカゴンが選択される。また、例えば、間質液中のグルコース濃度値が第1閾値以上である場合、投与する薬剤の種類としてインスリンが選択され、間質液中のグルコース濃度値が第2閾値以下である場合、投与する薬剤の種類としてグルカゴンが選択される。間質液中のグルコース濃度値及びセンサ設置位置に応じて薬剤の投与量が決定される。例えば、間質液中のグルコース濃度値が同じ値であっても、センサ設置位置が異なる場合、薬剤の投与量が異なる。センサ設置位置に応じて薬剤の投与期間が決定されてもよい。センサ設置位置に応じて薬剤の投与タイミングが決定されてもよい。
【0054】
ステップS26及びS38において、表示部25は、間質液中のグルコース濃度値を、ユーザのグルコース濃度値として表示する。
図12のフローの例では、ステップS24の処理の後にステップS25の処理が行われているが、ステップS26の処理の後にステップS25の処理が行われてもよい。
図13のフローの例では、ステップS36の後にステップS37の処理が行われているが、ステップS38の処理の後にステップS37の処理が行われてもよい。
【0055】
表示部25にユーザのグルコース濃度値が表示された後、制御部21は、選択された投与アルゴリズムを用いて、薬剤が体内に投与されるようにポンプ33を制御する。例えば、制御部21は、投与装置3の制御部34を介して、ポンプ33を制御する。また、表示部25にユーザのグルコース濃度値が表示される前に、制御部21は、選択された投与アルゴリズムを用いて、薬剤が体内に投与されるようにポンプ33を制御してもよい。ポン
プ33が駆動し、収容部32内の薬剤がカニューレ31に送出されることにより、体内に薬剤が投与される。体内に薬剤が投与されると、薬剤の効果により、体内のグルコース濃度値が増減する。これにより、血液中のグルコース濃度値及び間質液中のグルコース濃度値が増減する。体内にインスリンが投与されると、血液中のグルコース濃度値及び間質液中のグルコース濃度値が減少する。体内にグルカゴンが投与されると、血液中のグルコース濃度値及び間質液中のグルコース濃度値が増加する。
【0056】
制御部21は、複数の投与アルゴリズムのうちから間質液中のグルコース濃度値及びセンサ設置位置に対応する投与アルゴリズムを選択する。制御部21は、選択された投与アルゴリズムに基づいて、ポンプ33の駆動を制御し、体内に薬剤を投与する。例えば、間質液中のグルコース濃度値が高い値を示す場合、体内にインスリンが投与されることにより、間質液中のグルコース濃度値が減少する。例えば、間質液中のグルコース濃度値が低い値を示す場合、体内にグルカゴンが投与されることにより、間質液中のグルコース濃度値が増加する。このように、体内に薬剤を投与することで、ユーザの間質液中のグルコース濃度値を所望の値に維持することができる。
【0057】
受信装置2の制御部21が行う処理の一部又は全部を投与装置3の制御部34が行ってもよい。例えば、制御部34は、受信装置2から間質液中のグルコース濃度値及びセンサ設置位置を受信し、間質液中のグルコース濃度値及びセンサ設置位置に基づいて、記憶部35に記憶されている複数の投与アルゴリズムのうちの一つを選択してもよい。制御部34は、選択された投与アルゴリズムを用いて、薬剤が体内に投与されるようにポンプ33を制御してもよい。
【0058】
また、例えば、送信装置1、受信装置2及び投与装置3の少なくとも一つが備えるコンピュータのメモリにプログラムを格納し、当該プログラムをコンピュータに実行させることで、第1~第3実施形態における各処理を実現してもよい。コンピュータは、CPU、MPU、FPGA等のプロセッサを備えてもよいし、ASIC等の専用プロセッサを備えてもよい。また、コンピュータが当該プログラムを実行する方法により、第1~第3実施形態における各処理を実現してもよい。上記プログラムは、例えば、ネットワークを通じて、又は、非一時的にデータを保持するコンピュータ読取可能な記録媒体等から上記コンピュータに提供されてもよい。上記プログラムをコンピュータ読取可能な記録媒体等に記録してもよい。
【0059】
《コンピュータが読み取り可能な記録媒体》
コンピュータその他の機械、装置(以下、コンピュータ等)に上記何れかの機能を実現させるプログラムをコンピュータ等が読み取り可能な記録媒体に記録してもよい。コンピュータ等に、この記録媒体のプログラムを読み込ませて実行させることにより、上記何れかの機能が提供される。ここで、コンピュータ等が読み取り可能な記録媒体とは、データやプログラム等の情報を電気的、磁気的、光学的、機械的、または化学的作用によって蓄積し、コンピュータ等から読み取り可能な記録媒体をいう。このような記録媒体のうちコンピュータ等から取り外し可能なものとしては、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、CD-R/W、DVD、ブルーレイディスク、DAT、8mmテープ、フラッシュメモリなどのメモリカード等がある。また、コンピュータ等に固定された記録媒体としてハードディスクやROM等がある。
【符号の説明】
【0060】
1・・・送信装置
2・・・受信装置
3・・・投与装置
10・・・測定センサ
11・・・センサ部
12・・・測定部
13、21、34・・・制御部
14、22、35・・・記憶部
15、23、36・・・通信部
17・・・検出センサ
31・・・カニューレ
32・・・収容部
33・・・ポンプ