(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】ペパーミント抽出物を含む化粧品組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/9789 20170101AFI20220906BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20220906BHJP
A61K 31/216 20060101ALI20220906BHJP
A61K 36/534 20060101ALI20220906BHJP
A61P 39/06 20060101ALI20220906BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220906BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20220906BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20220906BHJP
A61K 135/00 20060101ALN20220906BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61K8/37
A61K31/216
A61K36/534
A61P39/06
A61P43/00 107
A61Q19/00
A61Q19/08
A61K135:00
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018139598
(22)【出願日】2018-07-25
【審査請求日】2021-07-19
(32)【優先日】2018-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508283406
【氏名又は名称】シャネル パフュームズ ビューテ
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128761
【氏名又は名称】田村 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】コカンド,ヴァンサン
(72)【発明者】
【氏名】ジレ,マエヴァ
(72)【発明者】
【氏名】オルドリト,セルジュ
(72)【発明者】
【氏名】ルガニョ,ダヴィド
(72)【発明者】
【氏名】ルリソン,アニー
(72)【発明者】
【氏名】レイ,オレリアン
(72)【発明者】
【氏名】トリビオ,アリクス
(72)【発明者】
【氏名】ワインバーグ,リオネル
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-543847(JP,A)
【文献】特開2007-210956(JP,A)
【文献】特表2005-506310(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101020637(CN,A)
【文献】J. Agric. Food Chem. (2010), Vol.58, p.2869-2876
【文献】Comp Clin Pathol (2016), Vol.25, p.743-747
【文献】J. Agric. Food Chem. (2012), Vol.60, p.2692-2700
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A61K 36/00-36/9068
A61K 31/00-31/327
A61P 39/06
A61P 43/00
A23L 33/00
A61K 135/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生理学的に許容される媒体中に、
ペパーミントの茎を水アルコール溶媒の混合物で抽出し、グリセロールによりエステル化することにより得られるペパーミント抽出物(I)であって、少なくとも式(I)の化合物を含むペパーミント抽出物(I)、および
【化1】
ペパーミントの茎を水アルコール溶媒の混合物で抽出して得られるペパーミント抽出物(II)であって、少なくとも式(II)の化合物を含むペパーミント抽出物(II)
【化2】
を含み、前記抽出物(I)/(II)の重量比が0.5から2の間であることを特徴とする、化粧品または皮膚科学的組成物。
【請求項2】
ペパーミント抽出物(II)が、場合により水と混合させた、一価アルコールおよび/またはグリコールによるアルコール抽出により得られることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ペパーミントの茎を水アルコール溶媒の混合物で抽出し、オクチルアルコールによりエステル化することで得られるペパーミント抽出物(III)であって、少なくとも式(III)の化合物を含む、ペパーミント抽出物(III)をさらに含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の組成物。
【化3】
【請求項4】
前記抽出物(I)および(II)の混合物が、組成物の全重量に対して、0.01重量%~10重量%の範囲の含量を示すことを特徴とする、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項5】
前記抽出物(I)、(II)および(III)の混合物が、組成物の全重量に対して、0.01重量%~10重量%の範囲の含量を示すことを特徴とする、請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
局所塗布に適することを特徴とする、請求項1~
5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
抗酸化効果のための請求項1~
6のいずれか一項に記載の組成物の化粧的使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミント(セイヨウハッカ(Mentha piperita))の少なくとも1つの種に由
来するペパーミント抽出物を含む、化粧品または皮膚科学的組成物に関する。特に、本発
明は、皮膚細胞の老化現象に関与するフリーラジカルの存在を低減できる化粧品組成物に
関する。本発明はまた、化粧品または皮膚科学的組成物における抗酸化剤としてのペパー
ミント抽出物の使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
フリーラジカルの生成は、皮膚老化を加速する主な要因の1つである。現時点で、外部
のフリーラジカルの80%はUV曝露から、残りの20%は汚染および気候変動から生じ
ることが知られている。したがって、我々の細胞のタンパク質、脂肪酸およびDNAに結
合するこれらの反応分子を捕獲できる唯一の栄養剤である抗酸化剤を皮膚に与えることが
重要である。
【0003】
皮膚老化、光老化、およびフリーラジカルの存在と関連する変異は、以下を含む様々な
形で現れ得る:
- 表皮および/または真皮の組織欠損によるハリおよび弾力の低下;
- 表皮の微小循環の低下および細胞再生の減速による輝きの低下;
- メラニンの合成(またはメラニン生成)の機能不全と関連する色素斑(pigment
spot)の出現;
- 角質層のバリア機能の低下および表皮再生の減速による皮膚乾燥。
【0004】
これにより、フリーラジカルの存在を低減できる抗酸化剤を生成し、それにより老化お
よび/またはフリーラジカルによる老化に関する生理機構の改変による皮膚の変異の一連
の原因に作用させる必要性が存在する。
【0005】
天然由来の抽出物は、皮膚化粧学の分野でますます頻繁に使用されている。ペパーミン
トは、その抗酸化性、沈静化性、エモリエント、沈痛性および麻酔性で知られている。ペ
パーミント由来のロスマリン酸は、現存する抗酸化性の最も高い天然分子の1つとして知
られている。また、特定の分子の物理化学特性を、それらの有効性を調節し、細胞内でそ
の作用を標的にするために、化学的または生物学的に改変できることでも知られている。
ゆえに、極性にしたがって、得られる各分子は様々な細胞コンパートメントで所与の作用
を有する。例えば、グリセロール分子をグラフティングすることで、水性媒体でより良好
な生物学的利用能を有することが可能になることで知られている。
【0006】
したがって、フリーラジカルの存在に効果的に対処することができる抗酸化性を有する
化粧品または皮膚科学的組成物への必要性が存在する。
【0007】
しかし、植物抽出物から、特にペパーミントから得られるこうした組成物は、高い抗酸
化性を有する抽出物を必要とする。
【0008】
ペパーミントの非常に特異的な抽出を行うことにより、現在知られている抽出物と比較
してその抗酸化性を高めることができたことを明らかにしていることが本出願人の功績で
ある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記の先行技術に関して実行され、したがって、本発明の目的は、その抗酸化
特性を通して、皮膚の細胞の老化現象に関与するフリーラジカルの存在を極めて著しく低
減することができる化粧品または皮膚科学的組成物を得ること、およびフリーラジカルの
存在に対処するためのこうした組成物の使用である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
課題を解決するため、本発明は、ペパーミントの茎を水アルコール溶媒の混合物、好ま
しくはエタノール/水混合物で抽出し、グリセロールによりエステル化することで得られ
るペパーミント抽出物(I)を提供し、前記ペパーミント抽出物(I)は少なくとも式(
I)の化合物を含む。
【0011】
【0012】
これにより、本発明者らは、前記抽出物(I)がその抗酸化性を通して(実施例4、表
3に示す)、フリーラジカルの存在に対処することができることを見出し、本発明として
完成させることができた。本抽出物の抗酸化性は、老化、または老化に関する生理機構、
もしくは表皮および/または真皮におけるこれらの機構に関する課題による症状に作用す
ることができる。本発明の化粧品または皮膚科学的組成物において、医学的用途は除外す
る。
【発明を実施するための形態】
【0013】
グリセロールによりエステル化したペパーミントの乾燥した茎の水アルコール抽出によ
る生成物は、先行技術の抽出物と比較してより多くの式(I)の化合物を含有し、優れた
抗酸化性を有する。
【0014】
抽出物(I)は、ペパーミント(セイヨウハッカ(Mentha piperita))の少なくとも
1つの種から優先的に得られる。
【0015】
ハッカ属(Mentha)はシソ科(Lamiaceae)に属する。このシソ科(Lamiaceae)は、お
よそ6000の種および約210の属を含み、世界中、あらゆる環境に広く分布する重要
な科の植物である。
【0016】
ミントは、典型的なシソ科(Lamiaceae)(両唇形とは異なる花の花冠を除く)であり
、ハッカ属(Mentha)に属する。この属には、ヨーロッパ、アジアおよびアフリカの、2
5種の常緑または半常緑の芳香性耐寒植物が含まれる。そのほとんどは、香り、風味また
は装飾性のために栽培されている。その形状はほふく性から低木まで様々であり、その風
味は非常に強い爽快感があり得る。
【0017】
セイヨウハッカ(Mentha ×piperita L.)種は、スペアミント(Mentha spicata)とヌ
マハッカ(Mentha aquatica)の交配の結果、英国で作られたハイブリッドであり、その
シノニムには、メンタ×アドスペルサ モエンク(Mentha × adspersa Moench)、メン
タ×アトラタ Ehrh.(Mentha × atrata Ehrh.)、メンタ×バルサメア ウィルル
ドゥ(Mentha × balsamea Willd)、メンタ×コンキンナ ペラルドゥ(Mentha × conc
inna Perard)、メンタ×エリアンタ K.コク(Mentha × eriantha K.Koch)、メンタ
×オドラ Salisb.(Mentha × odora Salisb.)、メンタ×ピペロイデス Ma
linv.(Mentha × piperoides Malinv.)、メンタ×レベルコニイ Briq.(Me
ntha × reverchonii Briq.)、メンタ・ニグリカンス Mill.(Mentha nigricans
Mill.)、メンタ・オドラタ ソレ(Mentha odorata Sole)がある。
【0018】
また、一般名称:ペパーミント、ミント、ペパーミン(peppermin)、マントポワヴレ
(menthe poivree)、フェファーミンツェ(Pfefferminze)でも知られている。
【0019】
第二の実施形態によると、本発明の対象は、生理学的に許容される媒体中に、前記で定
義したミント抽出物(I)を含むことを特徴とする、化粧品または皮膚科学的組成物であ
る。
【0020】
有利には、組成物はまた、茎を水アルコール溶媒の混合物、好ましくはエタノール/水
混合物で抽出して得られ、少なくとも式(II)の化合物を含む、ペパーミントの茎の水
アルコール抽出物(II)を含む。
【0021】
【0022】
特定の実施形態によると、本発明による組成物は、特に、前記で定義したペパーミント
抽出物(I)およびペパーミント抽出物(II)を含み得、抽出物(I)/(II)の重
量比は好ましくは0.5から2の間、より優先的には1である。
【0023】
好ましい実施形態によると、組成物はまた、前記ペパーミント(II)の茎の水アルコ
ール抽出物、および、ペパーミントの茎を水アルコール溶媒の混合物、好ましくはエタノ
ール/水混合物で抽出し、オクチルアルコールによりエステル化することにより得られる
ペパーミント抽出物(III)を含み、前記ペパーミント抽出物(III)は少なくとも
式(III)の化合物を含む。
【0024】
【0025】
好ましい実施形態によると、抽出物(I)、(II)および(III)は、ペパーミン
トの葉または植物全体からよりむしろ茎から単独で得られる。
【0026】
本発明者らは、抽出物(I)および(II)の、より優先的には抽出物(I)、(II
)および(III)の特定の混合物が、特定の相乗効果を有し、意外なことに、実施例4
で得られた結果が示すとおり、さらにより良好な抗酸化性を得ることができることを見出
した。
【0027】
好ましい実施形態によると、抽出物(II)は、場合により水と混合させた、一価アル
コールおよび/またはグリコールによるアルコール抽出により得られる。
【0028】
特に有利には、組成物は、抽出物(I)、(II)および(III)の混合物を含み、
抽出物(II)/(III)の重量比は0.5から1.5の間であり、抽出物(I)/(
II)の重量比は2から4の間である。
【0029】
さらにより有利には、組成物は、抽出物(I)、(II)および(III)の混合物を
含み、抽出物(I)/(II)/(III)の重量比は3/1/1である。
【0030】
本発明者らは、特に意外なことに、これらの特定の割合が、実施例4の表3の結果が示
す通り、高い抗酸化効果を有することを観察した。さらに、存在する分子の選択された極
性にしたがって、前記抽出物は様々な細胞コンパートメントで所与の作用を有し、真皮お
よび表皮の様々な層により形成されたバリアをより容易に突破する。
【0031】
有利には、組成物は、局所塗布に適する。
【0032】
組成物の特定の実施形態において、前記抽出物(I)または抽出物(I)、(II)お
よび場合により(III)の混合物は、組成物の全重量に対して、0.01~10重量%
、特に0.1~10重量%、好ましくは1~5重量%の範囲の含量を示す。
【0033】
実施例5で試験した化粧品および皮膚科学的組成物の例は、これらの濃度により、有効
成分が局所塗布に適する組成物に導入されると、著しく高い抗酸化活性を保持できること
を示した。
【0034】
ゆえに、本発明による化粧品または皮膚科学的組成物は、少なくとも以下のステップを
含む、ペパーミントの茎の抽出方法により得られる抽出物を含む:
1.ペパーミントの茎、優先的には乾燥したものを用意するステップ、
2.前記茎を粉砕するステップ、
3.前記茎を、50℃超の温度で、好ましくはエタノール/水混合物からなる水アル
コール溶媒の混合物で抽出するステップ、
4.植物残渣を取り除くためにふるいにかけるステップ、
5.優先的には、1時間、活性炭に接触させて脱色し、その後抽出物を得るために精
密ろ過により炭残渣から混合物を分離するステップ、
6.好ましくは蒸発によりアルコール溶媒を取り除き、抽出物を濃縮するステップ、
7.pH<3に達するように硫酸で酸性化し、酢酸エチルなどの有機溶媒を加えるス
テップ、
8.水相から有機相に含まれる抽出物を分離し、水相を取り除き、その後粉末を得る
ために有機溶媒を取り除くステップ、および
9.1,3-プロパンジオールもしくはグリセロール、またはオクチルアルコールを
加えることによる官能化ステップ。
【0035】
本発明の第一の変形例において、組成物は、以下のステップを含む、ペパーミントの茎
の水アルコール抽出のための方法により得られるペパーミント抽出物(II)を含む:
1)ペパーミントの茎、優先的には乾燥したものを用意するステップ、
2)前記茎を、典型的には2cm未満の細かさに粉砕するステップ、
3)優先的には、前記茎を2回、60℃の条件で最低2時間、典型的には96°のエ
タノール55%および水45%(v/v)からなる水アルコール溶媒の混合物で抽出する
ステップ、
4)植物残渣を取り除くために優先的には5μmのふるいにかけるステップ、
5)優先的には、クロロフィルやキサントフィルなどの色素を取り除くために1時間
、活性炭に接触させて脱色し、その後抽出物を得るために精密ろ過(1μm以下)により
炭残渣から混合物を分離するステップ、
6)好ましくは蒸発によりアルコール溶媒を取り除き、抽出物を濃縮するステップ、
7)典型的にはpH<3に達するように硫酸で酸性化し、液液精製を行うために有機
溶媒、典型的には酢酸エチルを加えるステップ、
8)水相から有機相に含まれる抽出物を分離し、水相を取り除き、その後粉末を得る
ために、例えば真空下で有機溶媒を取り除くステップ、
9)優先的には、前記粉末に1,3-プロパンジオールを加えるステップ。
【0036】
本発明の第二の変形例において、組成物は、以下のステップを含む方法により得られる
ペパーミント抽出物(I)を含む:
1)予め得られた抽出物(II)を用意するステップ、
2)前記粉末にグリセロールを加えるステップ、
3)優先的には、70℃で最低7日間、イオン交換樹脂を先の混合物に加えることに
より、ロスマリン酸および誘導体の完全なエステル化を実施し、その後ふるいにかけてイ
オン交換樹脂を取り除くステップ、
4)好ましくは1時間、活性炭に接触させて脱色し、その後ろ過(4μm以下)によ
り炭残渣を取り除くステップ、
5)グリセロール、好ましくは水溶液を加えるステップ。
【0037】
本発明の第三の変形例において、組成物は、以下のステップを含む方法により得られる
ペパーミント抽出物(III)を含む:
1)予め得られた抽出物(II)を用意するステップ、
2)前記粉末にオクチルアルコールを加えるステップ、
3)70℃で7日間、イオン交換樹脂を先の混合物に加えることにより、ロスマリン
酸の完全なエステル化を実施し、その後ふるいにかけてイオン交換樹脂を取り除くステッ
プ、
4)好ましくは1時間、活性炭に接触させて脱色し、その後ろ過(4μm以下)によ
り炭残渣を取り除くステップ、
5)優先的には、蒸発により剰余のオクチルアルコールを取り除き、ジプロピレング
リコールを加えるステップ。
【0038】
本発明者らは、これら様々なステップにより得られる抽出物が目的の化合物が特に豊富
であり、化粧品または皮膚科学的組成物でこれらの使用を可能にしたことを観察した。し
たがって、予め述べた式(I)、(II)および(III)の化合物は、優先的には、こ
れらの方法により得られる。
【0039】
本発明はまた、好ましくは皮膚の細胞の老化現象に関与するフリーラジカルの存在を低
減することにより、生理学的に許容される媒体中に、抗酸化効果のためのペパーミント抽
出物(I)を含む、上で定義された化粧品または皮膚科学的組成物の化粧的使用に関する
。
【0040】
本発明の別の対象は、化粧品または皮膚科学的組成物における抗酸化剤としての上記の
ペパーミント抽出物(I)の使用である。
【0041】
有利には、本発明による組成物はまた、エモリエントまたは湿潤剤、ゲル化剤および/
または増粘剤、界面活性剤、油、活性剤、染料、防腐剤、抗酸化剤、活性剤、有機または
無機散剤、日焼け止め、ならびに香料から選択される化合物を含む。
【0042】
有利には、前記化粧品または皮膚科学的組成物は、散剤、乳剤、マイクロ乳剤、ナノ乳
剤、懸濁液、溶液、ローション剤、クリーム剤、水性もしくは水アルコールゲル剤、フォ
ーム剤、セラム、溶液もしくはエアゾール剤分散体、または脂質小胞分散体の形態であり
得る。
【0043】
乳剤の場合、油中水型または水中油型の乳剤であり得る。
【0044】
化粧品または皮膚科学的組成物はまた、様々な成分により選択される溶媒および投与形
を含む。
【0045】
例として、水(好ましくは純水)、エタノールなどのアルコール、またはエトキシジグ
リコールもしくはジエチレングリコールモノメチルエーテルなどのジエチレングリコール
エーテルで作られることが挙げられる。
【0046】
前記化粧品組成物はまた、例えばエモリエントまたは湿潤剤、ゲル化剤および/または
増粘剤、界面活性剤、油、活性剤、染料、防腐剤、抗酸化剤、活性剤、有機または無機散
剤、日焼け止め、ならびに香料から選択される化合物などの分野で有用である添加剤を含
み得る。
【0047】
特に、前記組成物は、以下を含有し得る。
【0048】
- 例えば、ホホバエステル、脂肪酸および脂肪アルコールエステルなどのエステル類
(ミリスチン酸オクチルドデシル、トリエチルヘキサノイン、炭酸ジカプリリル、イソス
テアリン酸イソステアリル、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド)、カリテバター(
karite butter)などのバター類(Lipex Sheasoft、Lipex She
a-U、Lipex Shea、Lipex Shealight、Lipex She
a Trisの名で販売されている、ブチュロスペルヌム・パルキイ(butyrospernum pa
rkii)バター抽出物、シアーバターエチルエステル)、またはモリンガ(モリンガ油/水
素化モリンガ油エステル)、ワックス(フサアカシア(acacia decurrens)の花のワック
スおよびヒマワリ(helianthus annuus)のロウの種子のワックス、C10-18トリグ
リセリド)、植物油、フィトスクワラン、アルカン(ウンデカン、トリデカン)から選択
し得る、1つまたは複数のエモリエント。
【0049】
前記エモリエントは、組成物の全重量に対して、約0~30%、好ましくは0.5~1
0%の割合で組成物中に存在する。
【0050】
- ポリオール(グリセリン、プロピレングリコール、プロパンジオール)、糖、ヒア
ルロン酸などのグリコサミノグリカン、ならびにその塩およびエステル、Lipidur
e PMBなどのポリクオタニウムなどの、1つまたは複数の湿潤剤。
【0051】
前記湿潤剤は、組成物の全重量に対して、約0~30%、好ましくは0.005~10
%の割合で組成物中に存在する。
【0052】
- 例えば、セルロース誘導体、植物由来のガム(グアー、カロブ、アルギン酸塩、カ
ラギーナン、ペクチン)、微生物由来のガム(キサンタン)、粘土(ラポナイト)、架橋
または非架橋の、親水性または両親媒性のホモおよびコポリマー、アクリロイルメチルプ
ロパンスルホン酸(AMPS)および/またはアクリルアミドおよび/またはアクリル酸
および/またはアクリル酸の塩もしくはエステル(Aristoflex AVC、Ar
istoflex AVS、Aristoflex HMB、Simulgel NS、
Simulgel EG、Simulgel600、Simulgel800、Pemu
len、Carbopol、Sepiplus400、Seppimax zen、Se
piplus S、Cosmedia SPの名で販売されている)から選択される、水
相の1つまたは複数のゲル化剤および/または増粘剤。
【0053】
前記ゲル化剤および/または増粘剤は、組成物の全重量に対して、約0~10%の割合
で組成物中に存在する。
【0054】
- 組成物の全重量に対して、約0~8%、好ましくは0.5~3%の割合で存在する
、レシチン、糖誘導体(Montanov68、Montanov202、Montan
ov82、Montanov L、Easynovの名で販売されているグルコシドまた
はキシロシドの誘導体)、リン酸塩(Sensanov WRの名で販売されているC2
0-22アルキルリン酸塩)などの、1つまたは複数の界面活性剤。
【0055】
- 好ましくは組成物の全重量に対して、0~およそ10%、好ましくは0.5~5%
の割合で、揮発性または不揮発性の油、炭化水素、線状、環状または分岐のシリコーン、
例えば、イソドデカン、シクロペンタジメチルシロキサン、ジメチコン、イソノナン酸イ
ソノニル、テトライソステアリン酸ペンタエリスリチルなどと一般に呼ばれる、室温で液
状の1つまたは複数の脂肪。
【0056】
- 生物活性を有し、生物学的部位を介した皮膚への効能を有する、例えば、ビタミン
Cおよびその誘導体(アスコルビルグルコシド、3-O-エチルアスコルビン酸、テトラ
イソパルミチン酸アスコルビル)、ビタミンAおよびその誘導体、ビタミンEおよびその
誘導体、ビタミンB3またはナイアシンアミドなどのビタミン類、少数元素、アラントイ
ン、アデノシン、ペプチド類(Matrixyl3000、N-Palmitoyl-R
igin、Idealift、Eyeserylの名で販売されているパルミトイルトリ
ペプチド-1、パルミトイルテトラペプチド-7、パルミトイルペンタペプチド-4、ア
セチルジペプチド-1セチルエステル、アセチルテトラペプチド-5)、植物抽出物(ス
ペインカンゾウ(glycyrrhiza glabra)抽出物、ツボクサ(centella asiatica)葉抽出
物、セカレ・セレアル(secale cereal)種子抽出物)、酵母抽出物、グリコール酸また
は乳酸などのα-ヒドロキシ酸、サリチル酸などのβ-ヒドロキシ酸、ならびにそれらの
誘導体などから選択される、天然、バイオテクノロジーまたは合成由来の1つまたは複数
の活性剤。
【0057】
前記活性剤は、組成物の全重量に対して、約0~10%の割合で組成物中に存在する。
【0058】
- 好ましくは組成物の全重量に対して、0~およそ10%の割合で、例えば、シリカ
、ナイロン-12、セルロース、窒化ホウ素、エラストマーシリコーン(DC9040、
DC9041、DC9045、KSG-15、KSG-16、KSG-016F、KSG
-18の名で販売されているジメチコン/ビニルジメチコンクロスポリマーおよびジメチ
コンクロスポリマー、KSG-31、KSG-32、KSG-41、KSG-42、KS
G-43、KSG-44の名で販売されているラウリルジメチコン/ビニルジメチコンク
ロスポリマー)などの、1つまたは複数の散剤。
【0059】
通常化粧品で用いられる他の添加剤、特に技術分野で周知の防腐剤(フェノキシエタノ
ール、ペンチレングリコール、カプリリルグリコール、クロルフェネシンなど)、抗酸化
剤、または香料もまた、本発明による組成物中に存在し得る。
【0060】
当業者は、これらすべての考えられる添加剤から、組成物、および組成物に加えられる
それらの特性をすべて保持するような量をどちらも選択することができる。
【0061】
本発明は、以下の実施例により非制限的に説明する。
【0062】
下記の3つの異なる抽出物、ペパーミント抽出物(II)、ペパーミント抽出物(I)
およびペパーミント抽出物(III)である。
【実施例1】
【0063】
以下のステップによる、乾燥した茎の水アルコール抽出によるペパーミント抽出物(I
I)の調製および酢酸エチルによる精製:
1)乾燥したペパーミントの茎を、2cm未満の細かさに粉砕する、
2)続いて、茎を2回、60℃の条件で最低2時間、96°のエタノール55%およ
び水45%(v/v)からなる溶媒と混合して抽出する、
3)混合物を、植物残渣を取り除くためにふるい(5μm以下)にかける、
4)得られた混合物は、クロロフィルやキサントフィルなどの色素を取り除くために
1時間、活性炭に接触させて脱色を行う、
5)脱色させた混合物は、精密ろ過(1μm以下)により炭残渣から分離する、
6)混合物のエタノールを蒸発により取り除き、抽出物を濃縮する、
7)濃縮された抽出物はpH<3に達するように硫酸で酸性化し、酢酸エチルを液液
精製を行うために加える、
8)上部酢酸エチル相を、下部水相から分離する。上部相の酢酸エチル溶媒を、粉末
を得るために、真空下で取り除く、
9)粉末に1,3-プロパンジオールを加える。可溶化を促進するために、エタノー
ルを加え、蒸発により取り除くことができる。
【0064】
得られたペパーミント(II)は、乾燥抽出物5%(w/w)および1,3-プロパン
ジオール95%からなる。本抽出物は、主に1.5~2%の割合のロスマリン酸からなる
。
【実施例2】
【0065】
以下のステップにより、酢酸エチルにより精製およびグリセロールによりエステル化さ
せた、乾燥した茎の水アルコール抽出を用いる親水化ミント抽出物(I)()の調製:
1)ペパーミント(II)の1)から8)までのステップと同じ、
2)粉末にグリセリンを加える、
3)カチオン交換樹脂などのイオン交換樹脂を上記の混合物に加え、70℃で最低7
日間、ロスマリン酸およびその誘導体の完全なエステル化を実施する。続いて、イオン交
換樹脂をふるいにかけて取り除く、
4)得られた混合物は、1時間、活性炭に接触させて脱色を行う。続いて、炭残渣を
ろ過(4μm以下)により取り除く、
5)最終的に、水とグリセロールを、乾燥抽出物5%(w/w)、グリセロール67
%および水28%からなるHyrosペパーミントを得るために加えた。
【0066】
本抽出物(I)は、主に1~1.7%の割合のロスマリン酸グリセリルからなる。
【実施例3】
【0067】
以下のステップにより、酢酸エチルにより精製およびオクチルアルコールによりエステ
ル化させた、乾燥した茎の水アルコール抽出を用いる凍結乾燥ミント抽出物(III)(
)の調製:
1)ペパーミント(II)の1)から8)までのステップと同じ、
2)粉末にオクチルアルコールを加える、
3)カチオン交換樹脂などのイオン交換樹脂を上記の混合物に加え、70℃で最低7
日間、ロスマリン酸およびその誘導体の完全なエステル化を実施する。続いて、イオン交
換樹脂をふるいにかけて取り除く、
4)得られた混合物は、1時間、活性炭に接触させて脱色を行う。続いて、炭残渣を
ろ過(4μm以下)により取り除く、
5)剰余のオクチルアルコールを、蒸発により取り除き、最終的に、ジプロピレング
リコールを、乾燥抽出物5%(w/w)およびジプロピレングリコール95%からなるL
irosペパーミントを得るために加えた。
【0068】
本抽出物(III)は、主に1.5~2.7%の割合のロスマリン酸オクチルからなる
。
【0069】
用いられる原料は、例えばセイヨウハッカ(Mentha piperita)種のペパーミントの茎
からなり、通常の手段で粉砕し、小さな断片にすることができる。
【0070】
これらの抽出に用いられるセイヨウハッカ(Mentha piperita)の茎は、ロスマリン酸
だけでなく誘導体も含有する。
【0071】
【実施例4】
【0072】
抽出物およびその混合物の抗酸化活性の測定。
総抗酸化活性は、フリーラジカルを捕獲する1つの抗酸化化合物または一連の抗酸化化
合物の能力である。Institut Europeen des Antioxyda
ntsにより開発された、PAOT Technologie(登録商標)によって評価
した。本方法により、分析するマトリクスの総合的な抗酸化および酸化活性(PAOT)
が得られる。
【0073】
測定は、反応培地で生成物を可溶化し、その後溶液中のその活性を直接分析することで
、液体培地において行われる。
【0074】
PAOT Technologieの反応培地は、(生物学的条件をシミュレートする
ために)pHが6.7~7.2の主に生理学的溶液からなる。試料20μlを反応培地1
mlと混合する。特定の電極を、24°と27℃の間の温度で最大7分間、溶液中に浸す
。原理は、培地の成分の酸化型と還元型の比の変化に基づいている。
【0075】
この変化は、抗酸化剤の反応(1)および酸化剤の反応(2)の間の、酸化/還元型の
濃度の変動の結果である:
- 反応培地+AO(抗酸化剤)=>反応培地+AOOx(抗酸化剤の酸化の結果)
(1)
- 反応培地+OA(酸化剤)=>反応培地+OA Red(酸化剤の還元の結果)
(2)。
【0076】
結果は、分析する生成物1リットル当たり、または1グラム当たりのPAOTスコア(
登録商標)(総抗酸化活性)またはPOTスコア(登録商標)(総酸化活性)単位(生成
物のPAOTスコア/lまたはPOTスコア(登録商標)/g)で表すことができる。ま
た参照分子(抗酸化剤および酸化剤)のμM/lまたはμM/gで表すこともできる。
【0077】
実験条件は、3重(n=3)で実行した。
【0078】
抽出物およびそれらの混合物の定義:
- MEL1:100%ペパーミント(I)
- MEL2:100%ペパーミント(II)
- MEL3:100%ペパーミント(III)
- MEL4:50%ペパーミント(I)および50%ペパーミント(II)
- MEL5:66.6%ペパーミント(I)、16.6%ペパーミント(II)お
よび16.6%ペパーミント(III)
【0079】
結果は以下の表に示す。
【0080】
【0081】
総抗酸化活性は、参照等価として表される。等価性は、生成物1リットル当たりの参照
グラムで表される。等価性の値が高いほど、生成物の効能は良好となる。
【0082】
非常に効果的な抗酸化性を有するとみなすためには、PAOTスコアが50超である必
要がある。40から49の間のPAOTスコアでは、抗酸化活性は効果的であるとみなし
、25から39の間のPAOTスコアでは、抗酸化活性は中程度であると評価される。
【0083】
したがって、実施例1、2および3で得られた抽出物由来の試料すべてが、特に優れた
抗酸化性を示す。
【0084】
対照試験は、溶媒E15/177ZEMA、E15/178DPG(1/2希釈)およ
びE15/179グリセロール/水の抗酸化活性を測定するために実施し、これらのPA
OTスコアは3未満にとどまったが、これは上記の試料で観察された抗酸化活性の役割が
ないことを示す。
【0085】
試料MEL1、ペパーミント抽出物(I)は最も良好な抗酸化活性スコアを有し、ME
L4、比3/1/1での3つの抽出物の混合物は予期せぬ相乗効果を有することを見出し
た。
【実施例5】
【0086】
【0087】
PAOTスコアはまた、様々な濃度で、複数のセラム型の化粧品組成物で評価された。
最良の結果をもたらす組成物は、全重量に対して、活性複合体を1重量%から5重量%の
間で含有するものから、より好ましくは5重量%の活性複合体を含む組成物から得られ、
後者の場合、測定した抗酸化活性はPAOTスコアでおよそ130だった。したがって、
化粧品組成物のこの例は、非常に効果的な抗酸化性を有するとみなすことができる。
【0088】
また、当量濃度(1%)で、活性複合体の処方は、トコフェロールおよびビタミンC参
照の処方(これら2つのスコアは等価である)に対して2倍のスコアを示すことも見出し
た。