(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】成形のために異種材料補強されたブランクおよび押出成形物の設計特徴
(51)【国際特許分類】
F16B 5/08 20060101AFI20220906BHJP
B21D 47/04 20060101ALI20220906BHJP
B21D 53/88 20060101ALI20220906BHJP
B21D 22/20 20060101ALI20220906BHJP
B23K 20/10 20060101ALI20220906BHJP
B62D 25/04 20060101ALI20220906BHJP
B62D 29/04 20060101ALI20220906BHJP
F16B 11/00 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
F16B5/08 A
B21D47/04
B21D53/88 Z
B21D22/20 G
B23K20/10
B62D25/04 B
B62D29/04 A
F16B11/00 B
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018150139
(22)【出願日】2018-08-09
【審査請求日】2021-05-21
(32)【優先日】2017-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】516133799
【氏名又は名称】オハイオ・ステート・イノヴェーション・ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】ライアン・エム・ハーンレン
(72)【発明者】
【氏名】デュアン・トレント・デトワイラー
(72)【発明者】
【氏名】アレン・ビー・シェルドン
(72)【発明者】
【氏名】マルセロ・ジェイ・ダピノ
(72)【発明者】
【氏名】マーク・ブライアント・ギンガリッチ
(72)【発明者】
【氏名】レオン・エム・ヘディングス
【審査官】杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/036262(WO,A1)
【文献】特開2005-199327(JP,A)
【文献】特表2007-504405(JP,A)
【文献】特表2017-511443(JP,A)
【文献】特表2017-510464(JP,A)
【文献】特表2011-514269(JP,A)
【文献】特開2003-117664(JP,A)
【文献】特開2013-095417(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 5/08
B21D 47/04
B21D 53/88
B21D 22/20
B23K 20/10
B62D 25/04
B62D 29/04
F16B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両構成部品を作成する方法であって、
第1の金属を含む金属ブランクおよび第2の金属を含む金属補強材を用意するステップと、
前記金属ブランクに前記補強材を超音波溶接して複合材料ブランクを形成するステップと、
前記複合材料ブランクを変形させて前記車両構成部品を成形するステップと
を含み、
前記補強材は、1以上の金属層の積層体を備え、
前記補強材が2つ以上の金属層を備える場合には、前記2つ以上の金属層は相互に超音波溶接さ
れ、
超音波溶接前に、前記補強材は、前記金属ブランクに存在する事前成形された窪み内に配置される、
方法。
【請求項2】
変形させる前記ステップは、冷間プレス成形することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
超音波溶接前に、前記補強材は、変形後に前記補強材が前記車両構成部品上の所望の位置に強化領域をもたらすように、前記金属ブランクに対して所定の位置に配置される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第2の金属は、前記第1の金属とは異なり、前記第2の金属は、前記第1の金属よりも高い強度および剛性の少なくとも一方を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の金属は、アルミニウムまたはアルミニウムベース合金であり、前記第2の金属は、鋼または鋼ベース合金である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記金属ブランクと前記補強材との間の超音波溶接結合部が、前記窪み内に完全に配置される、請求項
1に記載の方法。
【請求項7】
超音波溶接する前記ステップは、前記補強材の全表面にソノトロードを接触させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
超音波溶接する前記ステップは、前記補強材の表面の一部分のみにソノトロードを接触させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
車両構成部品を作成する方法であって、
強化用繊維、
第1の金属を含む金属ブランク、および第2の金属を含む金属補強材を用意するステップであって、前記金属補強材は1以上の金属層の積層体を備え、前記補強材が2つ以上の金属層を備える場合には、前記2つ以上の金属層は相互に超音波溶接される、ステップと、 前記金属ブランクと前記補強材との間にまたは前記補強材の2つ以上の金属層間に前記強化用繊維を配置するステップと、
前記金属ブランクに前記補強材を超音波溶接して複合材料ブランクを形成するステップと、
前記複合材料ブランクを変形させて前記車両構成部品を成形するステップと
を含む
、方法。
【請求項10】
配置する前記ステップは、前記金属ブランクの事前成形された溝内にまたは前記補強材の事前成形された溝内に前記強化用繊維を配置することを含む、請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
粘性材料が、前記強化用繊維と前記金属ブランクおよび前記補強材の少なくとも一方との間に配置され、
前記方法は、前記粘性材料が、a)前記強化用繊維と前記金属ブランクおよび前記補強材の少なくとも一方との間に接着結合部を形成するように硬化するか、またはb)前記強化用繊維と前記金属ブランクおよび前記補強材の少なくとも一方との間に機械的装着部を形成できるように乾燥または破壊するように、前記車両構成部品を加熱するステップをさらに含む、請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
前記強化用繊維は、前記金属ブランクの事前成形された溝内に配置され、
前記事前成形された溝は、前記金属ブランクに存在する事前成形された窪み内に配置され、
超音波溶接する前記ステップの前に、前記補強材は、前記事前成形された窪み内に配置される、請求項
10に記載の方法。
【請求項13】
変形させる前記ステップ中に、前記事前成形された溝は、前記強化用繊維の周囲を圧迫して前記強化用繊維と前記事前成形された溝との間に機械的装着部を形成する、請求項
10に記載の方法。
【請求項14】
前記車両構成部品は、Bピラーである、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
プレス成形複合材料ブランクを備える車両であって、前記プレス成形複合材料ブランクは、プレス成形前に、
金属補強材に超音波溶接された実質的に平坦状の金属ブランク
であって、前記金属補強材は、前記金属ブランクに事前成形された窪み内に配置される、金属ブランク
を備え、
前記金属ブランクは、第1の金属から形成され、
前記補強材は、第2の金属を含み、
前記補強材は、1以上の金属層の積層体を備え、
前記補強材が2つ以上の金属層を備える場合に、前記2つ以上の金属層は、相互に超音波溶接され、
前記プレス成形複合材料ブランクは、輪郭を与えられる、車両。
【請求項16】
前記第2の金属は、前記第1の金属とは異なり、前記第2の金属は、前記第1の金属よりも高い強度および剛性の少なくとも一方を有する、請求項
15に記載の車両。
【請求項17】
前記プレス成形複合材料ブランクは、前記金属ブランクと前記補強材との間にまたは前記補強材の2つ以上の金属層間に配置された強化用繊維をさらに備える、請求項
15に記載の車両。
【請求項18】
前記プレス成形複合材料ブランクは、前記強化用繊維と前記金属ブランクおよび前記補強材の少なくとも一方との間に接着結合部を備える、プレス成形され加熱された複合材料部品であり、
前記プレス成形され加熱された複合材料部品は、加熱前に、前記強化用繊維と前記金属ブランクおよび前記補強材の少なくとも一方との間に配置された粘性材料を備え、
加熱または時間の経過により、前記粘性材料は硬化して前記接着結合部を形成する、請求項
17に記載の車両。
【請求項19】
前記強化用繊
維は、前記金属ブランクに事前成形された
溝内にまたは前記補強材に存在する
溝に配置される、請求項
17に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2017年8月10日に出願された米国特許仮出願第62/543,471号に基づく優先権を主張する。同仮出願は、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
自動車の構成部品/部品はしばしば、所望の輪郭形状へと成形されるように実質的に平坦状のブランク材料(例えばシート金属)を成形プロセス(例えばプレス成形、押出成形等)にかけることによって、ブランクから作製される。車両を軽量化し、燃料効率を上昇させるために、これらの成形自動車構成部品に使用される材料のゲージ(すなわち厚さ)が削減される。しかし、成形構成部品で使用される材料のゲージを削減する際に、成形される構成部品の強度および他の特徴が低下するか、または他の形で損なわれる。ゲージの削減に関わるこの強度低下に対応するために、成形構成部品を補強する複数の方法が利用される。
【0003】
従来の強化された成形構成部品は、成形後に構成部品上に配置される接着パッチ(無補強接着パッチおよび繊維強化された接着パッチの両方)、ブランクもしくは成形構成部品に固定もしくは溶接される二次異種補強用構造体、または成形前にブランクに溶接される同種材料を備える。補強方式の例としては、金属製車両ドア外方パネルで使用される接着パッチ、車両フレーム構成部品のスポット溶接型補剛材、自動車ドア内方構造体におけるテーラー溶接ブランクおよびテーラー圧延ブランク、ならびに成形前に鋼ブランクにスポット溶接される補強用鋼パッチが含まれる。ドアヒンジのような高応力構成部品用のボルト装着点はしばしば、成形後に装着されるテーラー溶接ブランクまたは補強金属プレートにより厚いシート材料を使用することによって補強される。空間的可変特性を有する成形車両構成部品を生み出すための他の方法としては、可変的急冷熱間プレス成形および選択的成形後熱処理が含まれる。
【0004】
今日まで、車両を軽量化する主な方法は、「薄肉」シート金属構成部品の使用か、または鋼からアルミニウムなど、「軽量」材料への変更であった。成形金属構成部品に関して、シート金属ブランクのゲージを削減することは、成形金属構成部品に必要な強度特性、剛性、エネルギー吸収性、または疲労特性に基づく固有の限度を有する。軽量材料は、鋼よりも低密度である場合があるが、しばしば強度がより低く、剛性がより低い。
【0005】
同様に、押出成形された車両構成部品は、壁厚が構成部品の最高荷重を被る領域の要件に基づいたものとなるように、押出方向に沿って均一な壁厚を、ひいては均一な強度および剛性を有さなければならない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様によれば、車両構成部品を作成する方法が、第1の金属を含む金属ブランクおよび第2の金属を含む金属補強材を用意するステップを含む。この方法は、金属ブランクに補強材を超音波溶接して複合材料ブランクを形成するステップと、複合材料ブランクを変形させて車両構成部品を成形するステップとを含む。補強材は、1以上の金属層の積層体を備える。補強材が2つ以上の金属層を備える場合には、2つ以上の金属層は相互に超音波溶接される。一実施形態では、第2の金属は、第1の金属とは異なる。第2の金属は、離散的に補強された金属基複合材料であることが可能である。
【0007】
別の態様では、車両がプレス成形複合材料ブランクを備える。プレス成形複合材料ブランクは、プレス成形前に、金属補強材に超音波溶接された実質的に平坦状の金属ブランクを備える。金属ブランクは、第1の金属を含み、補強材は、第2の金属を含む。プレス成形複合材料ブランクは、輪郭を与えられる。補強材は、1以上の金属層の積層体を備える。補強材が2つ以上の金属層を備える場合に、2つ以上の金属層は、相互に超音波溶接される。一実施形態では、第2の金属は第1の金属とは異なる。第2の金属は、離散的に補強された金属基複合材料であることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】本主題による成形動作を受ける前の複合材料ブランクの概略平面図である。
【
図1B】本主題による成形動作に
図1の複合材料ブランクをかけることによって成形される車両構成部品の概略平面図である。
【
図2A】線2A-2Aに沿った
図1Aの複合材料ブランクの断面図である。
【
図2B】線2B-2Bに沿った
図1Bの車両構成部品の断面図である。
【
図3A】線3A-3Aに沿った
図1Aの複合材料ブランクの代替的な断面図である。
【
図3B】線3B-3Bに沿った
図1Bの車両構成部品の代替的な断面図である。
【
図4A】線4A-4Aに沿った
図2Aの複合材料ブランクの一実施形態の断面図である。
【
図4B】線4B-4Bに沿った
図2Bの車両構成部品の一実施形態の断面図である。
【
図5A】線5A-5Aに沿った
図3Aの複合材料ブランクの一実施形態の断面図である。
【
図5B】線5B-5Bに沿った
図3Bの車両構成部品の一実施形態の断面図である。
【
図6A】線6A-6Aに沿った
図2Aの複合材料ブランクの別の実施形態の断面図である。
【
図6B】線6B-6Bに沿った
図2Bの車両構成部品の別の実施形態の断面図である。
【
図7A】線7A-7Aに沿った
図3Aの複合材料ブランクの別の実施形態の断面図である。
【
図7B】線7B-7Bに沿った
図3Bの車両構成部品の別の実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
質量の低下を実現し、強度、剛性、およびエネルギー吸収に関する車両構成部品に対する全般的な要件を満たす、空間的変動材料特性を有する複数材料車両構成部品を備える車両構成部品および関連する方法が提供される。この複数材料解決策は、成形、固定性(製造プロセス中の位置安定性)、接合、および熱膨張に関して現行の自動車製造プロセスに存在する障壁に対処する。これに関して、成形構成部品内における様々な材料の空間的変動特性は、従来の製造技術を用いた場合には大まかにしか可能とならない。
【0010】
本主題は、これらの懸案事項に対処し、金属ブランクと同種または異種である材料を含む金属補強材および/または繊維補強材を用いた金属ブランクの補強を可能にする。これらの補強材は、金属ブランクを曲げるおよび他の方法で変形させることにより成形車両構成部品を作製する成形動作の前に、金属ブランクに対して離散的に装着される。金属ブランクに装着された補強材は、成形車両構成部品を補強する役割を果たす。本明細書において、「補強する」および同語源の用語は、金属ブランクから成形されるが補強材を備えない同様の車両構成部品に比較して、成形車両構成部品の強度、剛性、エネルギー吸収、および疲労寿命の1以上の計量値を増加させることを意味する。本方法は、シート材料のみを使用して作製されたものよりも強度の高い車両構成部品を実現する、構成部品上の所望の位置において補強された成形車両構成部品を作製する。このプロセスにより、より薄肉の材料が金属ブランクとして使用されることが可能となり、結果的に、それに対応して軽量化がもたらされるが、成形車両構成部品は、均一により厚いシート材料から作製された場合と同様に、依然として所要の性能特徴を維持する。本方法は、より薄肉な金属ブランクおよびより低強度の材料はより肉厚な金属ブランクよりも成形が容易であり、それにより製造コスト削減が可能となるため、有利である。
【0011】
本主題は、軽量構造、均質シート材料よりも高い性能(例えば強度、剛性、エネルギー吸収、および疲労寿命)、空間的可変特性の調整、金属ブランクへの補強材のより頑丈な装着、部品個数の削減、超高強度ブランクを排除することによる製造コストの削減、熱間成形ブランク、ならびにテーラー溶接/テーラー圧延ブランクを可能にする。
【0012】
いくつかの実施形態では、補強材は、成形プロセス前に金属ブランクまたは押出成形ストックに追加される。金属ブランクは、実質的に平坦状のシート金属材料または金属押出成形物を備え得る。金属ブランクは、第1の金属を含み得るか、または第1の金属からなる。第1の金属は、特に限定されず、アルミニウムまたはアルミニウムベース合金を含み得る。他の金属および金属合金が使用されてもよい。
【0013】
補強材は、第2の金属を含むか、または第2の金属からなり得る。第2の金属は、第1の金属と同一であっても、または第1の金属と異なってもよい。第1の金属と異なる場合、第2の金属は、第1の金属よりもより高い強度である、より高い剛性である、より高いエネルギー吸収性を有する、および高い疲労寿命を有する、のうち少なくとも1つであり得る。第2の金属は、特に限定されず、鋼、鋼ベース合金、または鋼ベース複合材料を含み得る。既述のように、補強材は、金属ブランクと同一の材料からなるものであってもよい。
【0014】
補強材は、超音波積層造形法(UAM)により金属ブランクに対して付加され得る。UAMは、十分に高密度であるギャップレス三次元部品を実現する固相(すなわち非溶融)の連続的な積層造形金属溶接プロセスである。UAMプロセスでは、接合対象の金属部品に圧迫力下で超音波振動を印加するために1以上の圧電トランスデューサにより駆動されるソノトロード(すなわちホーン)を備える、超音波溶接機が使用され得る。ソノトロードは、金属部品と溶接されることとなる材料との間に塑性変形を生じさせるために金属部品に対して横方向である、約20kHz(公称)の振動周波数で動作する。2つの金属部品が超音波溶接されつつあるときに、静的圧迫力と共に加工物に対してソノトロードによって印加される振動により、2つの金属部品間に冶金結合部が成形される。加工温度は低く、典型的には150℃未満であり、したがって脆弱な金属間化合物の形成を阻止し、金属の微細構造を変化させることを阻止し、金属の熱誘起される歪みまたは特性劣化を阻止する。
【0015】
超音波積層造形法は、低温プロセスであり、したがって事前熱処理の効果またはメソスケールまたはマクロスケールにおける金属ブランクの微細構造を変化させず、悪影響のある金属間化合物の形成を伴わない異種金属材料同士の接合を可能にするため、金属ブランクに補強材を接合するのに有用である。第2に、本明細書でさらに詳細に論じるように、UAMは、連続冶金結合部を生成し、すなわち任意の二次補強材料が外部環境から隔離され、それにより電解質などの汚染物質による腐食または浸潤が回避され得る。
【0016】
さらに詳細に論じるように、UAMは、異種材料(すなわち異なる金属)同士を接合するために利用することが可能であり、接合される金属内への繊維の埋設を可能にする。補強材は、成形後に強度、剛性、またはエネルギー吸収能力の向上などの特性強化のために成形構成部品の重要エリア/領域に配置されるように、金属ブランク上に配置される。
【0017】
補強材の材料は、金属ブランクと同一または異なるものであってもよい。補強材は、鋼などの均質材料であってもよく、相互にUAM溶接される1以上の金属層のスタックを備えてもよい。補強材は、離散的に補強された金属基複合材料(DRx)であってもよく、またはこれらの中の1つを一次補強材として備え、さらに二次補強材を備えてもよい。二次補強材は、強化用繊維、強化用トウ、強化用糸、強化用ワイヤ、強化用ケーブル、強化用メッシュ、強化用布、および/または強化用ヴェールを備えてもよく、それらの組成は、特に限定されず、所望に応じて最終的な車両構成部品の特徴となる特定の性能を修正するように選択され得る。本明細書において、繊維は、所与の材料の単一細長片であり、トウは、撚られていない繊維束であり、糸は、撚られた繊維束であり、メッシュおよび布は、繊維、トウ、および糸を含むことが可能であり、ヴェールは、不織マットまたは実質的にランダム配置された繊維である。強化用繊維としては、強度および剛性を高めるための、例えば高強度鋼線、チタン繊維、炭素繊維、炭化ケイ素繊維などのセラミック繊維、Zylon(登録商標)などのポリ(p-フェニレン-2,6-ベンゾビスオキサゾール)(PBO)繊維、Dyneema(登録商標)などの超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)繊維等が含まれ得る。二次補強材は、金属ブランクと一次補強材との間に備えられ得る。
【0018】
次に図面を参照すると、
図1Aは、成形動作にかけられる前の複合材料ブランク2を示し、
図1Bは、複合材料ブランク2を成形動作にかけることにより作製される強化された車両構成部品4を示す。非限定的な例では、成形動作は、複合材料ブランク2の冷間プレス成形を含んでもよく、強化された車両構成部品4は、冷間プレス成形後の複合材料ブランク2からなる。複合材料ブランク2は、実質的に平坦状であってもよく、ストック金属ブランク6と、金属ブランク6に超音波溶接された金属補強材8とを備える。図示されるように、3つの補強材8が金属ブランク6の長さに沿って縦方向に配置され、金属ブランク6の全体を覆っているわけではない。しかし、本主題は、金属ブランク6上への補強材8のこの特定の配置に限定されず、複合材料ブランク2は、複合材料ブランク2が
図1Aに示すものとは異なる配向に配置された1以上の補強材8を備えるなど、特定の用途向けに所望に応じて他の配置を含み得る点を理解されたい。補強材8は、成形車両構成部品4のある特定の特徴を増強するように所望に応じて、重畳補強材8を有するものなどを含む金属ブランク6上への代替的配置をとることができる。さらに、補強材8は、金属ブランク6全体を覆うことを含め、金属ブランク6をより多くまたは少なく覆うことが可能である。非限定的な例では、複合材料ブランク2は、ハッチパターンまたは蜘蛛の巣パターンで配置された複数の補強材8を備えることが可能である。
【0019】
補強材8が均質材料またはDRxであり、補強材8がUAMまたは他の適切なプロセスにより金属ブランク6に接合される場合には、複合材料ブランク2は、成形プロセスにおいて曲げまたは他の方法での変形が可能な状態にある。成形プロセス自体は、超音波溶接結合作用を増大させる大きな塑性変形または高温、すなわち表面酸化物を分離させる塑性変形と、複合材料ブランク2の固相結合をもたらす金属間密接を生じさせる高応力とを伴い得る。組み立てられると、車両構成部品4は、熱処理などのさらに下流のプロセスにかけられてもよく、これにより、金属ブランク-補強材境界面にわたる拡散または結晶成長が可能となり、さらに金属ブランクと補強材との間の接合の強度と、全体としての車両構成部品4の強度とがさらに上昇し得る。
【0020】
成形プロセス中に、実質的に平坦状であり得る複合材料ブランク2は、複合材料ブランク2に曲げ、延伸、および複合材料ブランク2に輪郭を与える他の変形を被らせる力を受ける。かかる成形動作は、複合材料ブランク2を変形させそれにより輪郭設定され補強された車両構成部品4を作製する、冷間プレス成形または他の成形動作を含み得る。
【0021】
図1Bに示す成形車両構成部品4は、車両用のBピラー10として適用するために所望の輪郭および所望の形状を有するBピラー10である。しかし、車両構成部品4は、Bピラー10に限定されず、所望の任意の車両部品を備えることが可能である。非限定的な例として、車両構成部品4は、例えばAピラーなどの別のフレーム部材か、または例えばドアもしくはフードの外方パネルなどの車両クロージャ外方パネルであってもよい。車両構成部品がドアパネルである実施形態では、ドアパネルは、より薄肉の鋼またはアルミニウムが金属ブランクとして使用されるため、より軽量にすることが可能となる。しかし、従来では、より薄肉のドアパネルの耐デント性は、剛性の低下により許容不能なものとなり得る。これらの懸案事項は、金属ブランク6上に補強材8を計画的に配置し、それにより剛性が局所的に増強可能となり、それにより所要の耐デント性をパネルに与えることによって対処される。このようにすることで、クロージャ外方パネルとして使用される車両構成部品4の金属ブランク6は、従来のパネルよりも薄肉であってもよく、しかしながら補強材8は、圧力をかけられた場合の強化されたパネルの凹みを阻止し得る。したがって、クロージャ外方パネルとして機能する強化された車両構成部品4は、従来のドアパネルよりも軽量であり、製造がより安価となり得る。
【0022】
図1Aと
図1Bとの間で概略的に示されるように、補強材8は、成形車両構成部品4上の所望の位置に強化領域12をもたらすように、成形分析により事前に特定された金属ブランク6上の所定位置にて配置されUAM溶接される。補強材8を備えない複合材料ブランク2上のエリアは、成形プロセス後には車両構成部品4上の無補強領域14となる。成形車両構成部品4上における強化領域12および無補強領域14の配置は、複合材料ブランク2上の補強材8の配置に対応し、また複合材料ブランク2を変形させるために使用される成形プロセスにも幾分か対応し得る。強化領域12により与えられる補強は、金属ブランク6から成形されるが補強材8を備えない同様の車両構成部品と比較した場合に、成形車両構成部品4上の特定位置にて強度、剛性、エネルギー吸収、および疲労寿命の中の少なくとも1つを向上させる助けとなる。理解されるように、車両構成部品4は、
図1Bに示すものとは異なる配置および個数の強化領域12および無補強領域14を備え得る。非限定的な例では、車両構成部品4は、無補強領域がなく、強化領域12のみを備えてもよい。
【0023】
図1Aの線2A-2Aに沿った図である
図2Aに示すように、補強材8は、金属ブランク6の表面16上に配置され、金属ブランク6の表面16に超音波溶接される。
図3Aに示す代替的な実施形態では、補強材8は、金属ブランク6の表面16中に事前形成された窪み18内に配置され、金属ブランク6内の窪み18に超音波溶接される。本主題は、表面16上に配置される補強材8を含むが、表面16の対向側の金属ブランク6の側面上に、または所望に応じて金属ブランク6の両側面上に配置された補強材8を備えることも可能である。事前形成された窪み18は、サブトラクティブ製造プロセス(例えばフライス加工、研削、穿孔等)により、または初期局所成形プロセス(例えば押出成形型、プレス成形、ビード加工等)により成形されてもよい。
【0024】
図3Aに示すように、窪み18は、補強材8の表面20が金属ブランク6の表面16と同一平面内に位置するように構成される。しかし、これは必須ではなく、窪み18は、補強材8が窪み18の内部に依然として部分的に位置し得るが、補強材8の表面20が金属ブランク6の表面16と同一平面内に位置せず、代わりに補強材8がある程度まで金属ブランク6の表面16を越えて上方に突出し得るように、異なって構成されてもよい。代替的には、金属補強材8の表面は、成形プロセス中の金属ブランク6の薄肉化に対処するために表面16よりも若干下方に留まってもよい。
【0025】
金属ブランク6に窪み18を備えることにより、金属ブランク6と補強材8との間の溶接境界面22は、金属ブランク6の表面16に位置する(
図2Aおよび
図2B)のではなく、金属ブランク6の塊の内側に引っ込む(
図3Aおよび
図3B)。境界面22が金属ブランク6の塊の内側に引っ込んでいる場合(
図3Aおよび
図3B)、特に接合部中への水の浸透を防止するためにあるいは金属ブランク6および補強材8の一方または両方への水の接触を防止するためにシーラントが塗布される場合には、したがって境界面22は、電解質(例えば、アルミニウム金属ブランク6と鋼補強材8などの2つの異種材料間にガルバニック腐食を誘発し得る水など)から保護され得る。境界面22が引っ込んでおり、超音波溶接が気密シールを形成するので、環境中に存在する電解質は、溶接境界面22に到達しこの境界面22にてガルバニック反応を引き起こすことを妨げられ得る。境界面22が引っ込んでいない場合には(
図2Aおよび
図2B)、車両構成部品は、電解質が溶接境界面22に到達するのを、または金属ブランク6および補強材8に同時的に接触するのを防止するためにシーラント(図示せず)を備え得る。
【0026】
補強材8が金属ブランク6とは異なる材料からなる場合には、補強材8は、補強材8全体を覆う上面コーティングまたは上面層を使用することにより被包され、それにより環境電解質(例えば水)から隔離されてもよい。上面コーティングまたは上面層は、金属ブランク6に使用されるものと同一の金属または金属ブランク6とガルバニック反応しないシーラント材料などの、金属ブランク6に対してガルバニック適合性を有する材料からなり得る。上面コーティングまたは上面層は、金属ブランク6に使用されるものと同一の金属からなる場合には、補強材を覆うように超音波溶接されて、補強材8を気密被包し、それにより電解質への露出から補強材8および金属ブランク6の異質材料を保護し得る。
【0027】
図2Aと
図2Bとの間および
図3Aと
図3Bとの間で示されるように、成形動作によって、複合材料ブランク2は、例えば実質的に平坦状の状態(
図2Aおよび
図3A)から輪郭を有する状態に変形されて、それにより強化された車両構成部品4が成形される(
図2Bおよび
図3B)。図示するように、強化された車両構成部品4は、強化領域12および無補強領域14を備え得る。理解されるように、複合材料ブランク2は、成形動作中に様々なかつ非均一な曲げ力を被り得る。例えば、
図2Aおよび
図3Aに示す複合材料ブランク2の上方部分は延伸され、下方部分は、圧縮されて
図2Bおよび
図3Bにそれぞれ示される車両構成部品4の上方反り曲がり部を形成し得る。複合材料ブランク2は、成形プロセス中に他の力を被り得る。理解されるように、補強材8は、成形プロセス中に実質的に変形される、実質的に変形されない(
図2Bおよび
図3Bの平坦状領域など)、またはそれらの組合せ(実質的に変形される領域と
図2Bおよび
図3Bに示すように実質的に変形されない領域との間にまたがるなど)である、金属ブランク6の部分の上に配置され得る。
【0028】
複数の実施形態において、強化用繊維24は、一次補強材としての役割を果たす金属補強材8により与えられる補強に対して付加的に車両構成部品4に追加的補強を与えるための二次補強材として使用されてもよい。「一次」および「二次」という用語は、与えられる補強の相対量または相対レベルを示すことを意図するのではなく、金属補強材8と強化用繊維24とを区別するために使用される。
【0029】
補強材8は、1以上の金属層を備える。一実施形態では(
図4および
図5)、補強材8は、1つのみの金属層を備える。この実施形態では、ならびに
図4および
図5に示すように、強化用繊維24(すなわち二次補強材)は、金属ブランク6に超音波溶接される金属ブランク6と金属補強材8(すなわち一次補強材)との間に配置される。
【0030】
別の実施形態では(
図6および
図7)、補強材8は、共に超音波溶接される2つ以上の金属層32、34の積層体を備える。
図6および
図7に示すように、強化用繊維24は、金属補強材8の層32、34の間に配置され、これらの層32、34により被包される。この実施形態では、補強材は、異なる材料または同一の材料からなる複数層を備えることが可能である。補強材8中に複数の層を備えることにより、この実施形態は、金属ブランク6との溶接適合性の上昇と、金属ブランク6と補強材8との間の腐食緩和性の改善と、金属ブランク6と補強材8との間の熱膨張整合性の改善とをもたらすことが可能となり、成形車両構成部品4に対して最適な構造上利点を与える特定の材料配置を可能にする。一態様では、補強材8は、第1の鋼層、第2のアルミニウム層、第3の金属基複合材料(MMC)層(例えば、高強度高剛性セラミック繊維で補強されたアルミニウムから作製される、Touchstone Research Laboratory Ltd.、Triadelphia, WVから市販の「Metpreg」など)、第4のアルミニウム層、および第5のMMC層を備える。別の態様では、補強材8は、第1の鋼層と、例えば4つのアルミニウム層および4つのチタン層などのアルミニウムおよびチタンの一連の交互層とを備える。さらに別の態様では、補強材8は、アルミニウム層およびチタン層を備える。補強材8は、これらの態様に限定されず、他の構成および個数の層を備えることが可能である。補強材8の様々な層が、金属ブランク6に対して一度に補強材8の各層を超音波溶接することによって、または初めに補強材8の全ての層を共に溶接し次いで金属ブランク6に補強材8を超音波することによって、金属ブランク6に付着され得る。強化用繊維24は、一体的に超音波溶接される前に補強材8の2つの層の間に、または一体的に超音波溶接される前に補強材8と金属ブランク6との間に配置されてもよい。
【0031】
図4、
図5、
図6、および
図7では、強化用繊維24が断面で示される。理解されるように、強化用繊維24は、金属補強材8の長さ部分に対して平行に延在する長さ部分を有し、金属補強材8により完全に覆われ、この金属補強材8は、車両構成部品4の使用中においては摩損および環境露出から繊維24を保護する役割を果たし得る。しかし、強化用繊維24は、補強材8に対して異なる方向に配向されるなど、異なるように配置されてもよく、補強材8により完全には覆われなくてもよい点を理解されたい。
【0032】
繊維24は、補強材8が金属ブランク6に超音波溶接される前に、金属ブランク6中の(
図4Aおよび
図5A)または補強材8の金属層の中の1つ(例えば第1の金属層32)(
図6Aおよび
図7A)の中の事前成形されたチャネルまたは溝26中に配置され得る。すなわち、溝26は、繊維24が溝26内に配置される前に、および補強材8が金属ブランク6に超音波溶接される前にまたは金属層32、34が共に超音波溶接される前に、金属ブランク6に、または補強材8の金属層の中の1つ(例えば第1の金属層32)に存在する。図示するように、繊維24の3つのトウが3つの溝26内に配置される。しかし、より多数またはより少数の繊維24のトウおよび溝26が備えられてもよい。事前成形された溝26は、サブトラクティブ製造プロセス(例えばフライス加工、研削、穿孔等)により、または初期局所成形プロセス(例えば押出成形型、プレス成形、ビード加工等)により成形されてもよい。図示するように、繊維24は、溝26内に約半分の深さまでだけ配置される。しかし、繊維24は、溝26内に半分の深さよりも深くまたは浅く配置されてもよく、例えば
図4では繊維24が金属ブランク6の表面16よりも下方に完全に位置し得る点が理解されよう。
【0033】
図5Aに示すように、溝26は、金属ブランク6中の窪み18の底部に配置される。そのため、強化用繊維24および補強材8は、繊維24のみが溝26内に配置された状態で、金属ブランク6に存在する事前成形された窪み18内に共に配置される。いくつかの実施形態では、繊維24は、事前成形された溝26内に配置されない。代わりに、繊維24は単に、金属ブランク6の表面16もしくは金属ブランク6中の窪み18内のいずれかにおいて金属ブランク6と補強材8との間に、または補強材8の層32、34間に配置されてもよい。いずれの場合でも、金属ブランク6および補強材8、または補強材8の層32、34は、それらの間に配置される繊維24と共に超音波溶接される。溝26を備えない実施形態では、超音波溶接は、金属ブランク6および/または補強材8に、あるいは補強材8の層32、34に、溶接プロセス中に成形される繊維24用のチャネルを形成し得る。超音波溶接により、金属ブランク6および/または補強材8の金属は、繊維24のトウ中に含浸され得るか、または繊維24のトウの周囲に塑性的に流れ得る。
【0034】
図4Aと
図4B、
図5Aと
図5B、
図6Aと
図6B、ならびに
図7Aと
図7Bとの間で示すように、複合材料ブランク2の変形中に、事前成形された溝26は、強化用繊維24の周囲にて徐々に圧迫され(例えば押し込まれ、締め付けられ、接触され、溶融されて入り込み、または流れ)、それにより強化用繊維24と事前成形された溝26との間の機械的装着が生じる。したがって、
図4A、
図5A、
図6A、および
図7Aで概略的に示される溝26は、
図4B、
図5B、
図6B、および
図7Bでは強化用繊維24の周囲にて圧迫されているため図示されない。成形中の高い塑性変形によって、強化用繊維24の周囲により高い圧迫力が生じ得る。これを考慮して、溝26は、溝26と強化用繊維24との間の相対移動が初めに可能になるように、強化用繊維24のトウのサイズに対してサイズ超過になるように成形されてもよい。しかし、溝26は、成形プロセス中に徐々に潰れて、成形車両構成部品4中の金属ブランク6と強化用繊維24との間で機械的インターロックおよび摩擦による荷重伝達を生じさせる。一実施形態では、成形プロセスは、繊維24を延伸させるが、繊維24の引張強度を越えることはなく、それにより繊維24にかけられる特定の予応力量を生じさせる。
【0035】
複合材料ブランク2は、
図4Aおよび
図5Aに示すように強化用繊維24と金属ブランク6および補強材8の少なくとも一方との間に、または
図6Aおよび
図7Aに示すように強化用繊維24と補強材の層32、34との間に配置された粘性材料28(例えば潤滑剤または樹脂)を任意に備えてもよい。粘性材料は、強化用繊維24のトウの一部として備えられてもよく、繊維24のトウが、粘性材料28で含浸または被覆される。代替的には、粘性材料28は、強化用繊維24から離間されて塗布されてもよい。粘性材料28は、繊維24が成形中に金属ブランク6および補強材8の少なくとも一方に対して少なくとも幾分か移動自在になるように成形プロセス中に強化用繊維24と金属ブランク6および補強材8の少なくとも一方との間に、または成形プロセス中の層32、34に対する繊維24の幾分かの自由移動を可能にするために強化用繊維24と補強材8の層32、34の少なくとも一方との間に、潤滑性を与え得る。
【0036】
繊維24は、溝26が成形プロセス中に繊維24の周囲を徐々に圧迫するにつれて、徐々に締め付けられ、繊維24は、複合材料ブランク2の変形により延伸され得る。例えば
図2Aと
図2Bとの間で示すように、強化用繊維24を備え得る複合材料ブランク2の上方部分は、車両構成部品4中に上方反り曲がり部をもたらすように延伸される。粘性材料28により与えられ得る潤滑性により、成形プロセス中に強化用繊維24をより弱く締め付けることが可能となり、したがって強化用繊維24のそれらの引張強度を越えた延伸および引っ張りを不可能にすることができる。代わりに、繊維24は、変形しつつある金属ブランク6および補強材8に対して摺動し得る、すなわち溝26内で「遊動」し得る。
【0037】
粘性材料28の使用は有利である。なぜならば、粘性材料28が設けられない場合には、溝26は、成形プロセス中に強化用繊維24に対する機械的装着部を形成することができ、複合材料ブランク2の変形により、繊維24の変形(すなわち延伸)が引き起こされ得るからである。かかる変形が繊維24の引張強度を超過する場合には、繊維24は、破断し、したがって車両構成部品4に対して補強効果を与えない恐れがある。粘性材料28を備えることにより、溝26と繊維24との間に潤滑性が与えられ得ることによって、成形プロセス中の繊維24と溝26との間の機械的装着部の形成と、繊維24の付随的な延伸および破断の可能性が阻止され得るため、この懸案事項が対処される。
【0038】
いくつかの実施形態では、強化用繊維24は、繊維24を潤滑化し繊維24の破断を阻止するために粘性材料28が必要ではなくなるように、比較的低い摩擦係数を有する。他の実施形態では、複合材料ブランク2の変形前に繊維24と溝26との間に機械的装着部を形成することが望ましい場合がある。これは、引張予荷重をかけられた繊維24が好ましい場合には望ましいものとなり得る。かかる一実施形態では、粘性材料28は備えられなくてもよい。
【0039】
変形後に、粘性材料28は、下流プロセスにより乾燥されまたは破壊されて、繊維24と金属ブランク6および補強材8の少なくとも一方との間に荷重伝達機構(例えば機械的装着部)を展開させてもよい。代替的には、粘性材料28は、後の塗料焼付プロセス中にまたは時間依存反応においてなど成形プロセス後に硬化され得る未硬化液体接着材料であってもよい。加熱プロセスが接着剤の硬化に利用される場合には、次いで接着剤は、強化用繊維24と金属ブランク6および補強材8の少なくとも一方との間に接着結合部30を形成し得る。この例では、接着剤コーティングが、金属ブランク6から補強材8への荷重伝達を支援する。次いで、成形車両構成部品4は、車両の一部として備えられ得る。
【0040】
車両構成部品4を作成する方法は、第1の金属を含む金属ブランク6と、第1の金属と同一であるまたは異なる第2の金属を含む金属補強材8とを用意することを含む。金属ブランク6および補強材8は、共に超音波溶接されることにより、複合材料ブランク2を形成する。複合材料ブランク2は成形プロセスにかけられて、複合材料ブランク2は、例えば実質的に平坦状である(
図1A)初期構成から例えば輪郭を有する(
図1B)のちの構成へと変形され、それにより車両構成部品4が成形される。また、この方法は、超音波溶接前に、変形後に補強材8が車両構成部品4上の所望の位置に強化領域12をもたらすように、金属ブランク6に対して所定位置に補強材8を配置することを含み得る。変形は、冷間プレス成形することを含み得る。第2の金属は、第1の金属よりもより高い強度、剛性、エネルギー吸収、およびより長い疲労寿命の中の少なくとも1つを有し得る。例えば、第1の金属は、アルミニウムまたはアルミニウムベース合金であってもよく、第2の金属は、鋼または鋼ベース合金であってもよい。補強材8は、補強材8が金属ブランク6の表面16と同一平面内に位置し、金属ブランク6と補強材8との間の超音波溶接接合部/境界面22が窪み18内に完全に配置されるように、超音波溶接前に金属ブランク6に存在する事前成形窪み18内に配置され得る。代替的には、補強材8は、窪み18内にではなく金属ブランク6の表面16上に配置されてもよい。超音波溶接は、ソノトロードを備える超音波溶接機を使用して実施されてもよく、この超音波溶接機は、補強材8の全表面20に接触してもよく、または補強材8の表面20の一部分のみに接触してもよい。また、この方法は、強化用繊維24を用意することと、超音波溶接前に金属ブランク6と補強材8との間に(
図4および
図5)または補強材8の層32、34との間に(
図6および
図7)強化用繊維24を配置することとを含み得る。強化用繊維24は、超音波溶接前に事前成形された溝26内に配置されてもよい。
【0041】
また、本主題は、本明細書で説明されるような強化された車両構成部品4を用意するステップと、強化された車両構成部品4を備える車両を組み立てるステップとを含む、車両を作製する方法を含む。
【0042】
本主題は、プレス成形複合材料、すなわち強化された車両構成部品4を備える車両を提供する。プレス成形複合材料は、プレス成形前に、金属補強材8に超音波溶接された実質的に平坦状の金属ブランク6を備える。金属ブランク6は、第1の金属を含み、補強材8は、第1の金属と同一であるまたは異なる第2の金属を含む。プレス成形複合材料は、輪郭を与えられ、すなわちプレス成形複合材料は、実質的に平坦状ではない。プレス成形複合材料部品は、金属ブランク6と補強材8との間にまたは補強材8の層32、34間に配置された強化用繊維24をさらに備えてもよい。プレス成形複合材料部品は、強化用繊維24と金属ブランク6および補強材8の少なくとも一方との間に接着結合部30を備えるプレス成形され加熱された複合材料部品であってもよい。このプレス成形され加熱された複合材料部品は、加熱前には、強化用繊維24と金属ブランク6および補強材8の少なくとも一方との間に配置された粘性材料28を備えてもよい。プレス成形中に、粘性材料28は、強化用繊維24がそれらの引張強度を超えて引っ張られないように、強化用繊維24に対して潤滑性を与え得る。加熱または時間の経過により、粘性材料28は、硬化して接着結合部30を形成する。強化用繊維24および補強材8は、金属ブランク6に存在する事前成形された窪み18内に配置され得る。
【0043】
本主題による非限定的な例の方法では、金属シート材料が、金属ブランク6として使用され、成形分析により事前に特定された重要領域において補強される。未硬化樹脂(すなわち粘性材料28)を含む繊維24のトウは、金属ブランク6と補強材8との間に、または補強材8の層32、34間に被包される。補強材8は、1以上の金属層の積層体を備え、金属ブランク6と異なるまたは同種の材料を含む。補強材8は、固相超音波溶接プロセスにより金属ブランク6に溶接される。この複合材料ブランク2は、次にプレス成形機において成形され、プレス成形機は、車両構成部品4に特定の形状を与える。成形中に、トウ中の樹脂は、潤滑剤として機能し、この潤滑剤は、繊維24が破壊点まで引っ張られる代わりに滑動するのを可能にする。いくつかの繊維24が、繊維長さ方向において高い変形を生じない領域に配置される。成形中における金属シート材料の変形により、繊維24が配置された溝26は、収縮し、繊維24と溝26との間に緊密な機械境界部を形成する。次いで、成形車両構成部品4は、他の構成部品に装着されて自動車のホワイトボディを形成し、次いでこれが腐食防止コーティングおよび塗装コーティングを硬化させるための1以上の熱処理を含む塗装プロセスを通過する。熱処理中にまたは単に時間の経過により、トウ中の樹脂は硬化して、各強化用繊維24をそれら同士に対してならびに金属シート材料および補強材8に対して接着させる。この例では、補強材8および繊維24により与えられる追加的な強度および剛性により、同一の金属シート材料の均質プレス成形部品に必要とされるものよりも金属シート材料をより薄くすることが可能となり、したがってより軽量化することが可能となる。
【0044】
別の非限定的な例では、金属ブランク6は、金属押出成形物である。この押出成形物は、そのストック形状すなわち直線状で得られ、おおよその長さに切断される。窪み18が、サブトラクティブプロセスによりまたは押出成形型の特徴部を介してのいずれかによって押出成形ストックに対して施される。窪み18の目的は、例えば補強材8の表面20が押出成形物の表面16と同一平面内に位置し得るようにするためなどの、補強材8を収容するためのものである。樹脂含浸した繊維24のトウが、補強材8と押出成形物との間のまたは補強材の層32、34間の溝26内に埋設され、次いで補強材8は、この押出成形物に対して超音波溶接される。強化された押出成形物は、例えば自動車バンパなどの車両構成部品4の所要形状へと曲げられるように成形プロセスにかけられる。ここで、繊維24は、初めに若干サイズ超過した溝26および樹脂により緩和される見込まれる歪みをかけられ、成形終了時には、溝26は、トウの周囲にて潰れて、トウの長さ部分に沿った複数の部分にて定位置にトウをかしめる。この車両構成部品4は、自動車のホワイトボディに追加され、1以上の加熱処理を含む塗装プロセスにかけられ、そこで樹脂が硬化することにより一体化プロセスが完了する。補強材は、追加的な強度、剛性、およびエネルギー吸収の中の少なくとも1つを与えることにより、押出成形物の総壁厚の削減を可能にして、より軽量の車両構成部品をもたらす。
【0045】
これらの例のいずれにおいても、成形プロセス中により薄肉の材料を変形させるために必要とされる力が削減されることに起因して、さらなるコスト削減がもたらされる。力の削減によって、成形のために必要となるエネルギーが低下するが、さらに同等機能の構成部品を作製するためにより小型の成形システムを使用することが可能となる。また、より薄肉の金属ブランク6を使用することにより、ブランク6で使用される材料のコスト削減が可能となる。
【0046】
本主題は、成形プロセス前に埋設された補強材をもたらし、成形プロセスおよび/または後の熱的および機械的プロセスを利用して、補強材料と金属ブランクとの間の境界面を展開させる。これにより、他の材料および製造方法では得られない調整された構造特性向けの固有種の金属基材料が作製される。この補強材料(すなわち補強材8および強化用繊維24)により、本例の方法が金属ブランクへの補強材の一体化のために融接プロセスに依存しないことによって、車両構成部品4におけるより多様な特性が可能となる。さらに、接着剤とは異なり、この提案される方法は、より広範な許容温度範囲を有し、それにより補強材が製造プロセスにおいて、および塗料焼付プロセス後に典型的にはアクセス不能となり得る位置に、より早期に組み込まれるのを可能にする。本方法および関連する車両構成部品は、車両構成部品全体にわたってではなく所望の位置のみに強度特性および剛性特性の向上を局所化することによって軽量化を可能にする。現行では、成形部品は、最高荷重が予測される重要領域だけの厚さ削減に限定される。本主題では、全体的な部品厚さをさらに削減することが可能であり、補強材は、必要時のみ重要エリアに加えられることが可能である。本主題では、補強材は成形プロセス前に平坦状金属ブランクに付着されることにより、複雑な曲線状表面を有する本体に補強材料を付着させる複雑さを軽減する。
【0047】
様々な上記に開示したおよび他の特徴ならびに機能、またはその代替形態もしくは変形形態が、多数の他の異なるシステムまたは適用物へと所望に応じて組み合わされてもよい点が理解されよう。また、添付の特許請求の範囲により包含されるように意図された様々な現時点では予測されていないまたは予期されていない代替、修正、変形、または改良が、当業者によって後になされてもよい。
【符号の説明】
【0048】
2 複合材料ブランク
4 車両構成部品
6 金属ブランク
8 金属補強材
10 Bピラー
12 強化領域
14 無補強領域
16 表面
18 窪み
20 表面
22 溶接境界面、超音波溶接接合部/境界面
24 強化用繊維
26 溝
28 粘性材料
30 接着結合部
32 金属層
34 金属層