(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】ロータリ式バルブ装置
(51)【国際特許分類】
F16K 5/04 20060101AFI20220906BHJP
F16K 27/00 20060101ALI20220906BHJP
F16K 5/06 20060101ALI20220906BHJP
F16K 11/085 20060101ALI20220906BHJP
F16K 11/087 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
F16K5/04 C
F16K5/04 J
F16K27/00 C
F16K5/06 C
F16K11/085 Z
F16K11/087 Z
(21)【出願番号】P 2018154892
(22)【出願日】2018-08-21
【審査請求日】2021-03-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000177612
【氏名又は名称】株式会社ミクニ
(74)【代理人】
【識別番号】100106312
【氏名又は名称】山本 敬敏
(72)【発明者】
【氏名】赤瀬 将吾
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-133547(JP,A)
【文献】中国実用新案第202629431(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 5/00- 5/22
F16K 27/00-27/12
F16K 11/00-11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の軸線周りに形成された内部通路,及び前記内部通路から径方向外側に向かって外輪郭面に開口する開口部を有するロータと、
前記ロータを前記軸線回りに回動自在に支持すると共に,前記内部通路に連通する軸方向通路,及び前記外輪郭面と対向し前記開口部に連通し得る径方向通路を画定するハウジングと、
前記径方向通路の一部を画定するように前記ハウジング内に配置された通路部材と、
前記通路部材を前記外輪郭面に向けて付勢する付勢バネと、を備え、
前記ハウジングは、前記ロータを収容するハウジング本体と、前記ハウジング本体に結合されると共に前記付勢バネ及び前記通路部材を保持する筒部を有する保持部材を含
み、
前記保持部材は、前記通路部材が組み込まれた状態でその抜け落ちを規制する掛止部を有し、
前記通路部材は、前記掛止部に掛止される被掛止部を有し、
前記掛止部は、前記付勢バネの付勢方向における所定範囲において、前記被掛止部の移動を許容するように形成されている、
ことを特徴とするロータリ式バルブ装置。
【請求項2】
前記保持部材、前記付勢バネ、及び前記通路部材は、
前記保持部材に対して前記付勢バネ及び前記通路部材が組み込まれ前記掛止部に前記被掛止部が掛止された状態において、前記ハウジング本体に組み付けられ得るモジュール品を形成する、
ことを特徴とする請求項1に記載のロータリ式バルブ装置。
【請求項3】
前記掛止部は、前記筒部の端面側において、前記筒部の軸線方向に開口するL字状の切り欠きとして形成されている、
ことを特徴とする請求項
1又は2に記載のロータリ式バルブ装置。
【請求項4】
前記保持部材は、前記被掛止部が前記掛止部に沿って移動し離脱するのを規制するべく、前記掛止部において突出して形成された規制突起を有する、
ことを特徴とする請求項3に記載のロータリ式バルブ装置。
【請求項5】
前記付勢バネは、第1端部及び第2端部を有する圧縮型のコイルバネであり、
前記保持部材は、前記第1端部を受ける受け部を有し、
前記通路部材は、前記第2端部を受ける受け部を有する、
ことを特徴とする請求項1ないし4いずれか一つに記載のロータリ式バルブ装置。
【請求項6】
前記保持部材は、外部の配管を接続するべく前記筒部に一体的に形成されたパイプ部を有する、
ことを特徴とする請求項1ないし5いずれか一つに記載のロータリ式バルブ装置。
【請求項7】
前記通路部材の外壁面と前記保持部材の内壁面との間をシールする環状シール部材をさらに含み、
前記保持部材は、前記付勢バネ、前記通路部材、及び前記環状シール部材を
組み込んだ状態で保持する、
ことを特徴とする請求項1ないし6いずれか一つに記載のロータリ式バルブ装置。
【請求項8】
前記保持部材は、前記軸方向通路から前記ロータの周りに画定される隙間を通して流れ込む流体の圧力を受ける前記環状シール部材の移動を規制する規制部を含む、
ことを特徴とする請求項7に記載のロータリ式バルブ装置。
【請求項9】
前記通路部材は、前記軸方向通路から流れ込む流体の圧力により前記外輪郭面に密接するように押圧される環状当接部と、前記径方向通路から流れ込む流体の圧力により前記環状当接部を前記外輪郭面に密接させるべく前記環状シール部材により押圧される被押圧部を含む、
ことを特徴とする請求項7又は8に記載のロータリ式バルブ装置。
【請求項10】
前記通路部材は、樹脂材料により形成され、
前記保持部材は、樹脂材料又は金属材料により形成されている、
ことを特徴とする請求項1ないし9いずれか一つに記載のロータリ式バルブ装置。
【請求項11】
前記ロータを前記軸線回りに回転駆動する駆動機構をさらに含む、
ことを特徴とする請求項1ないし10いずれか一つに記載のロータリ式バルブ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータを回転させて流体の通路を開閉するロータリ式バルブ装置に関し、特に、車両等に搭載されるエンジンの冷却水の流れを制御する際に適用されるロータリ式バルブ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のロータリ式バルブ装置としては、所定の軸線回りに回転する円筒状のロータ、ロータを収容するケーシング、ロータとケーシングの間に介在し通路部材として機能する筒状のシール部材、ロータを回転駆動する駆動機構等を備えたものが知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
このロータリ式バルブ装置において、ロータは、軸線方向に貫通する内部通路、外周面において開口する開口部を備えている。ケーシングは、ロータの外周面に対向して開口部と連通し得ると共に接続管が接続される径方向通路、ロータの内部通路と連通する軸方向通路を備えている。また、シール部材は、ケーシングの径方向通路側に配置され、径方向通路から導かれた流体の圧力により押圧されてロータの外周面に密着するように形成された内側湾曲部を備えている。
【0004】
そして、流体が、ケーシングの径方向通路から流れ込んで軸方向通路から流れ出る使用状態において、シール部材の内側湾曲部が、流体の圧力により押圧されてロータの外周面に密着することにより、所望のシール機能が得られるようになっている。
【0005】
しかしながら、流体が、ケーシングの軸方向通路から流れ込んで径方向通路から流れ出るように使用される場合は、内側湾曲部が流体の圧力によりロータの外周面から離れる向きに押圧され、十分なシール機能を確保することができない虞がある。
【0006】
また、通路部材として機能するシール部材は、サブ接続部材の外周面とケーシングの開口部の内壁面に挟み込まれて組み付けられるようになっている。
したがって、サブ接続部材がケーシングに組み付けられる際の組み付け位置のバラツキにより、シール部材の組み付け位置の位置ずれ、径方向における圧縮量のバラツキ等を招く虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2013-245737号公報
【文献】特開2013-245738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来技術の問題点を解消して、組み付けが容易で、所望のシール性能が得られるロータリ式バルブ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のロータリ式バルブ装置は、所定の軸線周りに形成された内部通路及び内部通路から径方向外側に向かって外輪郭面に開口する開口部を有するロータと、ロータを軸線回りに回動自在に支持すると共に内部通路に連通する軸方向通路及び外輪郭面と対向し開口部に連通し得る径方向通路を画定するハウジングと、径方向通路の一部を画定するようにハウジング内に配置された通路部材と、通路部材を外輪郭面に向けて付勢する付勢バネとを備え、ハウジングは、ロータを収容するハウジング本体と、ハウジング本体に結合されると共に付勢バネ及び通路部材を保持する筒部を有する保持部材を含み、保持部材は、通路部材が組み込まれた状態でその抜け落ちを規制する掛止部を有し、通路部材は、掛止部に掛止される被掛止部を有し、掛止部は、付勢バネの付勢方向における所定範囲において、被掛止部の移動を許容するように形成されている、構成となっている。
【0010】
上記構成のロータリ式バルブ装置において、保持部材、付勢バネ、及び通路部材は、保持部材に対して付勢バネ及び通路部材が組み込まれ掛止部に被掛止部が掛止された状態において、ハウジング本体に組み付けられ得るモジュール品を形成する、構成を採用してもよい。
【0011】
上記構成のロータリ式バルブ装置において、保持部材の掛止部は、筒部の端面側において筒部の軸線方向に開口するL字状の切り欠きとして形成されている、構成を採用してもよい。
【0012】
上記構成のロータリ式バルブ装置において、保持部材は、被掛止部が掛止部に沿って移動し離脱するのを規制するべく、掛止部において突出して形成された規制突起を有する、構成を採用してもよい。
【0013】
上記構成のロータリ式バルブ装置において、付勢バネは、第1端部及び第2端部を有する圧縮型のコイルバネであり、保持部材は、第1端部を受ける受け部を有し、通路部材は、第2端部を受ける受け部を有する、構成を採用してもよい。
【0014】
上記構成のロータリ式バルブ装置において、保持部材は、外部の配管を接続するべく筒部に一体的に形成されたパイプ部を有する、構成を採用してもよい。
【0015】
上記構成のロータリ式バルブ装置において、通路部材の外壁面と保持部材の内壁面との間をシールする環状シール部材をさらに含み、保持部材は、付勢バネ、通路部材、及び環状シール部材を組み込んだ状態で保持する、構成を採用してもよい。
【0016】
上記構成のロータリ式バルブ装置において、保持部材は、軸方向通路からロータの周りに画定される隙間を通して流れ込む流体の圧力を受ける環状シール部材の移動を規制する規制部を含む、構成を採用してもよい。
【0017】
上記構成のロータリ式バルブ装置において、通路部材は、軸方向通路から流れ込む流体の圧力により外輪郭面に密接するように押圧される環状当接部と、径方向通路から流れ込む流体の圧力により環状当接部を外輪郭面に密接させるべく環状シール部材により押圧される被押圧部を含む、構成を採用してもよい。
【0018】
上記構成のロータリ式バルブ装置において、通路部材は、樹脂材料により形成され、保持部材は、樹脂材料又は金属材料により形成されている、構成を採用してもよい。
【0019】
上記構成のロータリ式バルブ装置において、ロータを軸線回りに回転駆動する駆動機構をさらに含む、構成を採用してもよい。
【発明の効果】
【0020】
上記構成をなすロータリ式バルブ装置によれば、組み付けが容易で、所望のシール性能が得られるロータリ式バルブ装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明に係るロータリ式バルブ装置の第1実施形態を示す正面図である。
【
図3】
図1に示すロータリ式バルブ装置に含まれる保持部材及び通路部材を示す斜視図である。
【
図4】
図1に示すロータリ式バルブ装置に含まれる通路部材及び環状シール部材を示す分解斜視図である。
【
図5】
図1に示すロータリ式バルブ装置において、径方向通路から流体が流れ込むときの状態を示す部分断面図である。
【
図6】
図1に示すロータリ式バルブ装置において、軸方向通路から流体が流れ込むときの状態を示す部分断面図である。
【
図7】
図1に示すロータリ式バルブ装置に含まれる通路部材の形状及び寸法を示す断面図である。
【
図8】
図1に示すロータリ式バルブ装置に含まれる環状シール部材の他の実施形態を示すものであり、通路部材及び環状シール部材の分解斜視図である。
【
図9】
図8に示す環状シール部材を採用したロータリ式バルブ装置において、径方向通路から流体が流れ込むときの状態を示す部分断面図である。
【
図10】
図8に示す環状シール部材を採用したロータリ式バルブ装置において、軸方向通路から流体が流れ込むときの状態を示す部分断面図である。
【
図11】
図1に示すロータリ式バルブ装置に含まれる保持部材の他の実施形態を示すものであり、保持部材が、通路部材、付勢バネ、及び環状シール部材を保持したモジュール品の斜視図である。
【
図14】
図11に示す保持部材のモジュール品がハウジング本体に結合されたロータリ式バルブ装置において、径方向通路から流体が流れ込むときの状態を示す部分断面図である。
【
図15】
図11に示す保持部材のモジュール品がハウジング本体に結合されたロータリ式バルブ装置において、軸方向通路から流体が流れ込むときの状態を示す部分断面図である。
【
図16】本発明に係るロータリ式バルブ装置の第2実施形態を示す外観斜視図である。
【
図18】
図16に示すロータリ式バルブ装置が車両等に搭載のエンジンにおける冷却水の流れを制御するシステムに適用された場合を示すブロック図である。
【
図20】
図16に示すロータリ式バルブ装置に含まれるロータ、通路部材、環状シール部材、付勢バネ、駆動機構を示す分解斜視図である。
【
図21】
図16に示すロータリ式バルブ装置に含まれるロータ、通路部材、環状シール部材、付勢バネ、駆動機構を示す分解斜視図である。
【
図22】
図16に示すロータ装置に含まれるロータ、通路部材、環状シール部材、付勢バネ等を示す部分分解断面図である。
【
図23】
図16に示すロータリ式バルブ装置において、ロータがモード3の回転位置にあるときの
図17中のE3-E3における断面図である。
【
図24】
図16に示すロータリ式バルブ装置において、ロータがモード3の回転位置にあるときの
図17中のE4-E4における断面図である。
【
図25】本発明に係るロータリ式バルブ装置が車両等に搭載のエンジンにおける冷却水の流れを制御する他の配置関係をなすシステムに適用された場合を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係るロータリ式バルブ装置の第1実施形態について、添付図面の
図1ないし
図10を参照しつつ説明する。
第1実施形態に係るロータリ式バルブ装置M1は、ハウジングH、接続部材40、軸線S回りに回動するロータ50、通路部材60、環状シール部材70、付勢バネ80、駆動機構90を備えている。
【0023】
ここで、ハウジングHは、ハウジング本体10、ハウジングカバー20、保持部材30により形成されている。
また、ハウジングHは、軸線S方向に沿う軸方向通路APと、軸線Sに対して垂直な径方向に伸長する径方向通路RPを画定する。
【0024】
ハウジング本体10は、樹脂材料、アルミニウム材料、その他の金属材料等により形成され、収容室11、凹部12、軸受部13、軸受部14、嵌合部15、フランジ部16、接合部17を備えている。
収容室11は、ロータ50を軸線S回りに回動自在に、第1隙間C1をおいて収容するように形成されている。
凹部12は、駆動機構90を配置するべく形成され、ハウジングカバー20により覆われるようになっている。
【0025】
軸受部13は、ロータ50の回転軸51の一端側を回動自在に支持するように形成され、小径部51aを支持する嵌合孔13a、大径部51bを支持する嵌合孔13b、嵌合孔13aと嵌合孔13bの境界に形成されて回転軸51の段差部51cをスラスト方向において支持する段差面13cを備えている。
【0026】
軸受部14は、ロータ50の回転軸51の他端側を回動自在に支持するように形成され、小径部51dを支持する嵌合孔14a、回転軸51の段差部51eをスラスト方向において支持する当接面14b、収容室11内に連通する複数の連通孔14cを備えている。
そして、軸受部14は、ロータ50が収容室11に挿入された後に、小径部51dが嵌合孔14aに嵌合されて、フランジ部16の内側に嵌合して固定される。
【0027】
嵌合部15は、保持部材30の段付き円筒部31を嵌合させる段付き嵌合孔15a、保持部材30の鍔部37を嵌合させる凹部15bを備えている。
フランジ部16は、エンジン等の適用対象物に対して、ネジ又はボルト等を用いて固定されるように形成されている。
接合部17は、ネジ又は溶着等により、接続部材40を接合して固定するように形成されている。
【0028】
ハウジングカバー20は、樹脂材料、アルミニウム材料、その他の金属材料等により形成され、ハウジングH内に収容される駆動機構90に接続される電気配線を外部に接続するためのコネクタ21を備えている。
そして、ハウジングカバー20は、ハウジング本体10の凹部12に配置された駆動機構90を覆うように、ネジを用いてハウジング本体10に連結される。
【0029】
保持部材30は、樹脂材料、アルミニウム材料、その他の金属材料等により形成され、筒部としての段付き円筒部31、内壁面32、内壁面33、規制部としての環状段差部34、受け部35、径方向通路36、フランジ部37、嵌合部38、掛止部39を備えている。
【0030】
段付き円筒部31は、ハウジング本体10の段付き嵌合孔15aに対して、Oリングを挟んで嵌合されるように形成されている。
内壁面32は、第2隙間C21をおいて通路部材60を受け入れるように、円形の内周面として形成されている。
ここで、第2隙間C21は、通路部材60の外壁面61bと保持部材30の内壁面32の間において画定される。そして、
図5に示すように、径方向通路RPから軸方向通路APに向けて流体が流れる際に、第2隙間C21を通して、流体の圧力が環状シール部材70の端面74に導かれるようになっている。
【0031】
内壁面33は、内壁面32よりも大きい内径をなし、第2隙間C22をおいて通路部材60を受け入れ、かつ、環状シール部材70を通路部材60の外壁面61bと協働して挟み込むように、円形の内周面として形成されている。
ここで、第2隙間C22は、通路部材60の外壁面61bと保持部材30の内壁面33の間において画定される。そして、
図6に示すように、軸方向通路APから径方向通路RPに向けて流体が流れる際に、第1隙間C1及び第2隙間C22を通して、流体の圧力が環状シール部材70の端面73に導かれると共に、環状段差部62に導かれるようになっている。
【0032】
環状段差部34は、内壁面32と内壁面33の境界において、環状シール部材70が当接し得るように円環状の当接面として形成されている。
そして、環状段差部34は、軸方向通路APから第1隙間C1及び第2隙間C22を通して流れ込む流体の圧力を受ける環状シール部材70を当接させて、その移動を規制する規制部としての役割をなす。
このように、規制部としての環状段差部34を設けたことにより、軸方向通路APから第1隙間C1及び第2隙間C22を通して流れ込む流体が、環状シール部材70の端面73で受け止められる。これにより、
図6に示すように、環状当接部63及び環状段差部62に対して、流体の圧力を確実に作用させることができる。
受け部35は、付勢バネ80の第1端部81を受けるように、円環状の座面として形成されている。
【0033】
径方向通路36は、ハウジングHの径方向通路RPの一部を画定するものであり、通路部材60の径方向通路61aと連通するように形成されている。
フランジ部37は、嵌合部15の凹部15bに嵌合させるように形成されている。
嵌合部38は、外周に形成された環状溝にOリングを嵌め込んだ状態で、接続部材40の結合部42が嵌合されるように形成されている。
【0034】
掛止部39は、保持部材30に組み込まれた通路部材60の被掛止部64を掛止するべく、段付き円筒部31の端面側において、段付き円筒部31の軸線方向に開口するL字状の切り欠きとして形成されている。
ここで、掛止部39は、付勢バネ80の付勢方向における所定範囲において、被掛止部64の移動を許容するように形成されている。
すなわち、通路部材60の環状当接部63がロータ50の外輪郭面52cに密接するように組み付けられた状態において、付勢バネ80の付勢力が作用するように、被掛止部64が掛止部39から離れた状態で保持されるようになっている。
【0035】
上記のように、ハウジング本体10と別個に形成された保持部材30を採用し、保持部材30に掛止部39を設け、通路部材60に被掛止部64を設けたことにより、保持部材30に対して、付勢バネ80、環状シール部材70、及び通路部材60を組み込んだ後に、掛止部39で被掛止部64を掛止することで、これらの部品が保持部材30から抜け落ちるのを防止することができる。
そして、付勢バネ80、環状シール部材70、及び通路部材60が組み込まれた保持部材30を、モジュール品として取り扱うことができ、ハウジング本体10に対して容易に組み付けることができる。
また、通路部材60は、保持部材30の内側に配置されて付勢バネ80の付勢力により付勢された状態で保持されている。したがって、従来のようなケーシングと接続部材の間に挟み込まれて保持されるような構造に比べて、モジュール品をハウジング本体10に組み付けるだけで、通路部材60を付勢バネ80で付勢しつつロータ50の開口部52dと対向する位置に容易に組み付けることができる。
【0036】
接続部材40は、樹脂材料、アルミニウム材料、その他の金属材料等により形成され、ハウジング本体10に接合されるフランジ部41、保持部材30の嵌合部38に結合される結合部42、外部の配管を接続するパイプ部43を備えている。
フランジ部41は、ハウジング本体10の接合部17に対してネジで締結されて、一体的に固定される。尚、固定手法としては、ネジに限らず、溶着、その他の手法でもよい。
結合部42は、保持部材30の嵌合部38を密接して嵌合させるように、円筒状に形成されている。
パイプ部43は、配管を接続するべく円筒状にかつ軸線Sに垂直な方向に伸長して形成されている。尚、パイプ部43は、接続される配管のレイアウトに応じて屈曲して形成されてもよい。
【0037】
ロータ50は、耐摩耗性及び摺動性に優れた樹脂材料により形成され、軸線Sをもつ回転軸51、バルブ部52、バブル部52を回転軸51に連結する複数のスポーク部53を備えている。
【0038】
回転軸51は、嵌合孔13aに嵌合される小径部51a、嵌合孔13bにOリングを介在させて嵌合される大径部51b、段差面13cに当接される段差部51c、嵌合孔14aに嵌合される小径部51d、当接面14bに当接される段差部51eを備えている。
尚、小径部51aは、ラジアル軸受を介して嵌合孔13aに嵌合されてもよい。
【0039】
バルブ部52は、軸線Sを中心とする略円筒状の内壁面52a、軸線S周りにおいて内壁面52aと回転軸51の間に画定された内部通路52b、球面をなす外輪郭面52c、内部通路52bから軸線Sに垂直な径方向外側に向かって外輪郭面52cに開口する開口部52dを備えている。
外輪郭面52cは、軸線S上に中心をもつ所定半径の球面として形成されている。
開口部52dは、軸線Sに垂直な直線を中心線とする所定内径の円形孔として形成されている。
スポーク部53は、内部通路52bが軸線S方向において貫通するように、回転軸51に対してバルブ部52を離散的に連結するように形成されている。
【0040】
通路部材60は、耐摩耗性及び摺動性に優れた樹脂材料等により形成され、ロータ50とハウジングHの一部をなす保持部材30の間に配置されて、径方向通路RPの一部を画定するものである。
通路部材60は、
図2及び
図4に示されるように、円筒部61、円筒部61の外周に形成された環状段差部62、環状段差部62よりも大きい径をなす環状当接部63、環状段差部62の近傍において径方向に突出する2つの被掛止部64、円筒部61の外径を小さくして形成された受け部65を備えている。
【0041】
円筒部61は、内側においてハウジングHの径方向通路RPの一部を画定する径方向通路61a、外側において環状シール部材70が密接して嵌合される外壁面61bを備えている。
【0042】
環状段差部62は、環状シール部材70が離脱可能に当接するように、円環状段差面として形成されている。
そして、環状段差部62は、径方向通路RP(36)から第2隙間C21を通して流れ込む流体の圧力が作用するとき、環状当接部63を外輪郭面52cに密接させるべく環状シール部材70により押圧される被押圧部として機能する。
一方、環状段差部62は、軸方向通路APから第1隙間C1を通して流れ込む流体の圧力が作用するとき、環状当接部63を外輪郭面52cに密接させるべく流体の圧力により押圧される被押圧部としても機能する。
【0043】
環状当接部63は、球面をなす外輪郭面52cと密接するように、環状段差部62よりも大きい径をなす円環の鍔状に延出し、所定のシール幅をもつ円環状シールリップとして形成されている。
そして、環状当接部63は、軸方向通路APから第1隙間C1を通して流れ込む流体の圧力が作用するとき、流体の圧力により外輪郭面52cに密接するように押圧される。
【0044】
被掛止部64は、保持部材30の掛止部39に対して離脱可能に掛止されるように形成されている。
そして、通路部材60が保持部材30内に組み込まれた状態で、被掛止部64が掛止部39に掛止されることにより、保持部材30からの通路部材60の抜け落ちが規制されるようになっている。
受け部65は、付勢バネ80が保持部材30と通路部材60の間に配置された状態において、付勢バネ80の第2端部82を受けるように、円環状の座面として形成されている。
【0045】
上記構成をなす通路部材60においては、
図7に示すように、環状段差部62の幅寸法W、環状段差部62から環状当接部63までの長さ寸法Lは、環状当接部63を外輪郭面52cに密接させるべく流体が及ぼす圧力(付勢バネ80の付勢力を除いた押圧力)を決定するために重要な値である。
すなわち、所望されるシール性能、摺動抵抗、最大流体圧、付勢バネ80の付勢力等を考慮して、幅寸法W及び長さ寸法Lを適宜決定することにより、環状当接部63を外輪郭面52cに密接させるために所望される押圧力を確保することができる。
【0046】
環状シール部材70は、ゴム材料により略矩形の断面をなす円環状に形成され、内周面71、外周面72、端面73、端面74を備えている。
内周面71は、通路部材60の外壁面61bに密接するように形成されている。
外周面72は、保持部材30の内壁面33に密接するように形成されている。
端面73は、通路部材60の環状段差部62に対して離脱可能に当接するように形成されている。
端面74は、保持部材30の環状段差部34に対して離脱可能に当接するように形成されている。
尚、環状シール部材70は、ゴム材料を成形する際に、金属材料等により形成された補強環を埋設して形成されてもよい。
【0047】
付勢バネ80は、第1端部81及び第2端部82を有する圧縮型のコイルバネであり、保持部材30の内部に収容されて保持され、第1端部81が保持部材30の受け部35に当接し、第2端部82が通路部材60の受け部65に当接するように圧縮状態で配置される。
そして、付勢バネ80は、環状当接部63が外輪郭面52cに密接するように、通路部材60をロータ50に向けて付勢する付勢力を及ぼす。
このように、付勢バネ80を設けることにより、流体の圧力が低い使用領域において、付勢バネ80の付勢力により、通路部材60をロータ50に押圧して、環状当接部63を外輪郭面52cに密接させることができる。
【0048】
上記構成において、ハウジングHは、第1隙間C1をおいてロータ50を回動自在に支持すると共に、ロータ50の内部通路52bに連通する軸方向通路APと、ロータ50の外輪郭面52cに対向し開口部52dに連通し得る径方向通路RPを画定する。
ここで、ロータ50は、ハウジングH内において第1隙間C1をおいて回動自在に支持されているため、流体内に粒状物等の小さな異物が混じり込んだ際に、その異物の噛み込みによるロック、作動不良等を防止することができる。
【0049】
駆動機構90は、
図2に示されるように、モータ91、モータ91の回転軸に固定されたピニオン91a、二段歯車92、歯車93、ウォームホイール94を備えている。
二段歯車92は、ピニオン91aに噛合する大径歯車92aと、小径歯車92bを同軸上に備えている。
歯車93は、小径歯車92bに噛合する大径歯車93aと、ウォーム93bを同軸上に備えている。
ウォームホイール94は、ウォーム93bに噛合すると共に回転軸51の小径部51aに固定されている。
そして、モータ91の回転により、ピニオン91a、二段歯車92、歯車93、及びウォームホイール94を介して、ロータ50が軸線S回りに回転駆動され、径方向通路61aに対する開口部52dの位置が適宜調整されるようになっている。
【0050】
すなわち、駆動機構90によりロータ50の回転位置が適宜調整されることにより、軸方向通路APから径方向通路RPに向けて流れる流体の流量、又は、径方向通路RPから軸方向通路APに向けて流れる流体の流量が制御されるようになっている。
【0051】
次に、上記ロータリ式バルブ装置M1の動作について説明する。
ここでは、駆動機構90が適宜制御されることにより、ロータ50が回転駆動され、開口部52dが通路部材60の径方向通路61aに対向するとき全開状態にあり、ロータ50が徐々に回転されると開口面積が狭くなって流量が減り、開口部52d以外の外輪郭面52cが通路部材60の径方向通路61aに対向するとき全閉状態となる。
また、流体が流れない状態においても、付勢バネ80の付勢力により、環状当接部63が外輪郭面52cに密接するように通路部材60がロータ50に向けて押圧されている。
【0052】
一つの使用形態として、流体が径方向通路RPから軸方向通路APに向けて流れる場合は、
図5に示すような流れとなる。
すなわち、接続部材40から導かれた流体は、径方向通路RPとしての径方向通路36,61aを通り、ロータ50の開口部52d及び内部通路52bを経て、軸方向通路APからフランジ部16に接続された下流側の供給先に供給される。
【0053】
この流体の流れにおいて、径方向通路36から第2隙間C21を通して流れ込む流体の圧力は、環状シール部材70の端面74に作用する。
したがって、流体の圧力により押圧される環状シール部材70は、通路部材60の環状段差部(被押圧部)62に当接して、環状当接部63が外輪郭面52cに密接するように通路部材60をロータ50に向けて押圧する。
【0054】
このように、付勢バネ80の付勢力に加えて、径方向通路RPから第2隙間C21を通して流れ込む流体の圧力が、環状シール部材70を介して通路部材60に押圧力を及ぼすため、環状当接部63は外輪郭面52cに確実に密接させられ、所望のシール性能が得られる。
尚、流体の圧力が低い場合は、流体が漏れようとする挙動自体も弱く、又、付勢バネ80の付勢力が押圧力として作用するため、環状当接部63は外輪郭面52cに確実に密接させられ、所望のシール性能が得られる。
【0055】
他の使用形態として、流体が軸方向通路APから径方向通路RPに向けて流れる場合は、
図6に示すような流れとなる。
すなわち、フランジ部16に接続された上流側の供給元から導かれた流体は、軸方向通路APからロータ50の内部通路52b及び開口部52dを経て、径方向通路RPとしての径方向通路61a,36を通り、接続部材40から下流側の供給先に供給される。
【0056】
この流体の流れにおいて、軸方向通路APから第1隙間C1及び第2隙間22を通して流れ込む流体の圧力は、環状シール部材70の端面73に作用する。
したがって、流体の圧力により押圧される環状シール部材70は、保持部材30の環状段差部(規制部)34に当接して移動が規制される。
そして、第2隙間C22内に流れ込んだ流体の圧力は、通路部材60の環状段差部(被押圧部)62及び環状当接部63に有効に作用する。
したがって、この領域に流れ込んだ流体の圧力により、通路部材60がロータ50に向けて押圧され、環状当接部63が外輪郭面52cに密接させられる。
【0057】
このように、付勢バネ80の付勢力に加えて、軸方向通路APから第1隙間C1を通して流れ込む流体の圧力が、通路部材60の環状段差部62及び環状当接部63に直接作用するため、環状当接部63は外輪郭面52cに確実に密接させられ、所望のシール性能が得られる。
尚、流体の圧力が低い場合は、流体が漏れようとする挙動自体も弱く、又、付勢バネ80の付勢力が押圧力として作用するため、環状当接部63は外輪郭面52cに確実に密接させられ、所望のシール性能が得られる。
【0058】
上記構成をなすロータリ式バルブ装置M1によれば、保持部材30に掛止部39を設け、通路部材60に被掛止部64を設けたことにより、保持部材30に対して、付勢バネ80、環状シール部材70、及び通路部材60を組み込んだ後に、掛止部39で被掛止部64を掛止することで、これらの部品が保持部材30から抜け落ちるのを防止することができる。
そして、付勢バネ80、環状シール部材70、及び通路部材60が組み込まれた保持部材30を、モジュール品として取り扱うことができ、ハウジング本体10に対して容易に組み付けることができる。
【0059】
また、通路部材60は、保持部材30の内側に配置されて付勢バネ80の付勢力により付勢された状態で保持されている。したがって、従来のようなケーシングと接続部材の間に挟み込まれて保持されるような構造に比べて、モジュール品をハウジング本体10に組み付けるだけで、通路部材60を付勢バネ80で付勢しつつロータ50の開口部52dと対向する位置に容易に組み付けることができる。
また、軸方向通路APから径方向通路RPに流体が流れる使用形態と、径方向通路RPから軸方向通路APに流体が流れる使用形態の両形態において、シール性能に優れた通路を確保することができる。すなわち、流体の流れ方向に関係なく、所望のシール性能が得られ、所望の流量制御を行うことができる。
【0060】
図8は、前述の環状シール部材70に替えて、凹状の受圧面を有する環状シール部材710を採用する変形例を示すものである。
環状シール部材710は、ゴム材料により略V又はU字断面をなす円環状に形成され、内周面711、外周面712、端面713、凹状の受圧面714を備えている。
内周面711は、通路部材60の外壁面61bに密接するように形成されている。
外周面712は、保持部材30の内壁面33に密接するように形成されている。
端面713は、通路部材60の環状段差部62又は保持部材30の環状段差部34に当接するように形成されている。
受圧面714は、第1隙間C1及び第2隙間C22、又は第2隙間C21を通して流れ込んだ流体の圧力を受けて、その径方向において内周面711と外周面712が押し広げられるように形成されている。
また、環状シール部材710には、ゴム材料を成形する際に、金属材料等により形成された補強環が埋設されている。
【0061】
すなわち、環状シール部材710は、受圧面714に対して、流体の圧力が作用するように組み付けられるものである。
したがって、流体が径方向通路RPから軸方向通路APに向けて流れる使用形態においては、
図9に示すように、受圧面714が保持部材30の環状段差部34に対向しかつ端面713が通路部材60の環状段差部62に当接するように組み付けられる。
一方、流体が軸方向通路APから径方向通路RPに向けて流れる使用形態においては、
図10に示すように、受圧面714が通路部材60の環状段差部62に対向しかつ端面713が保持部材30の環状段差部34に当接するように組み付けられる。
【0062】
上記環状シール部材710を組み込んだロータリ式バルブ装置M1の動作は、前述の内容と同様であり、さらに受圧面714の作用が加わることになる。
一つの使用形態として、流体が径方向通路RPから軸方向通路APに向けて流れる場合は、
図9に示すような流れとなる。
すなわち、流体の流れにおいて、径方向通路36から第2隙間C21を通して流れ込む流体の圧力は、環状シール部材710の受圧面714に作用する。
【0063】
したがって、流体の圧力により押圧される環状シール部材710は、通路部材60の環状段差部(被押圧部)62に当接して、環状当接部63が外輪郭面52cに密接するように通路部材60をロータ50に向けて押圧する。
さらに、受圧面714に作用する流体の圧力により、環状シール部材710がその径方向に押し広げられ、内周面711が外壁面61bに対してより密接するように押圧され、又、外周面712が内周面33に対してより密接するように押圧される。
【0064】
このように、付勢バネ80の付勢力に加えて、径方向通路RPから第2隙間C21を通して流れ込む流体の圧力が、環状シール部材710を介して通路部材60に押圧力を及ぼし、又、環状シール部材710を通路部材60と保持部材30に押圧する。
これにより、通路部材60と保持部材30に対して環状シール部材710が密接させられると共に、環状当接部63は外輪郭面52cに確実に密接させられ、シール性能が高められる。
尚、流体の圧力が低い場合は、前述同様に、流体が漏れようとする挙動自体も弱く、又、付勢バネ80の付勢力が押圧力として作用するため、環状当接部63は外輪郭面52cに確実に密接させられ、所望のシール性能が得られる。
【0065】
他の使用形態として、流体が軸方向通路APから径方向通路RPに向けて流れる場合は、
図10に示すような流れとなる。
すなわち、流体の流れにおいて、軸方向通路APから第1隙間C1及び第2隙間C22を通して流れ込む流体の圧力は、環状シール部材710の受圧面714に作用する。
【0066】
したがって、流体の圧力により押圧される環状シール部材710は、保持部材30の環状段差部(規制部)34に当接して移動が規制される。
さらに、受圧面714に作用する流体の圧力により、環状シール部材710がその径方向に押し広げられ、内周面711が外壁面61bに対してより密接するように押圧され、又、外周面712が内周面33に対してより密接するように押圧される。
そして、第2隙間C22内に流れ込んだ流体の圧力は、通路部材60の環状段差部(被押圧部)62及び環状当接部63に有効に作用する。
したがって、この領域に流れ込んだ流体の圧力により、通路部材60がロータ50に向けて押圧され、環状当接部63が外輪郭面52cに密接させられる。
【0067】
このように、付勢バネ80の付勢力に加えて、軸方向通路APから第1隙間C1を通して流れ込む流体の圧力が、環状シール部材710を通路部材60と保持部材30に押圧し、又、通路部材60の環状段差部62及び環状当接部63に直接作用する。
これにより、通路部材60と保持部材30に対して環状シール部材710が密接させられると共に、環状当接部63は外輪郭面52cに確実に密接させられ、シール性能が高められる。
尚、流体の圧力が低い場合は、前述同様に、流体が漏れようとする挙動自体も弱く、又、付勢バネ80の付勢力が押圧力として作用するため、環状当接部63は外輪郭面52cに確実に密接させられ、所望のシール性能が得られる。
【0068】
上記のように、環状シール部材710を組み込んだロータリ式バルブ装置M1によれば、軸方向通路APから径方向通路RPに流体が流れる使用形態と、径方向通路RPから軸方向通路APに流体が流れる使用形態の両形態において、シール性能に優れた通路を確保することができる。すなわち、流体の流れ方向に関係なく、所望のシール性能が得られ、所望の流量制御を行うことができる。
このように、環状シール部材710の組付け方向が、使用形態に応じて変えられる場合も、本発明の範疇とするものである。
【0069】
図11ないし
図15は、第1実施形態に係るロータリ式バルブ装置M1に含まれる保持部材の他の実施形態を示すものであり、前述の実施形態と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
この実施形態に係る保持部材300は、樹脂材料、アルミニウム材料、その他の金属材料等により形成され、環状溝301aを外周に備える筒部としての円筒部301、内壁面302、内壁面303、規制部としての環状段差部304、受け部305、径方向通路306、フランジ部307、掛止部308、パイプ部309を備えている。
【0070】
円筒部301は、環状溝301aにOリングを嵌め込んだ状態で、ハウジング本体10の嵌合部15に嵌合されるように形成されている。
ここでは、嵌合部15は、円筒状の貫通孔として形成されている。
【0071】
内壁面302は、第2隙間C21をおいて通路部材60を受け入れるように、円形の内周面として形成されている。
ここで、第2隙間C21は、通路部材60の外壁面61bと保持部材300の内壁面32の間において画定される。そして、
図14に示すように、径方向通路RPから軸方向通路APに向けて流体が流れる際に、第2隙間C21を通して、流体の圧力が環状シール部材710の受圧面714に導かれるようになっている。
【0072】
内壁面303は、内壁面302よりも大きい内径をなし、第2隙間C22をおいて通路部材60を受け入れ、かつ、環状シール部材710を通路部材60の外壁面61bと協働して挟み込むように、円形の内周面として形成されている。
ここで、第2隙間C22は、通路部材60の外壁面61bと保持部材300の内壁面303の間において画定される。そして、
図15に示すように、軸方向通路APから径方向通路RPに向けて流体が流れる際に、第1隙間C1及び第2隙間C22を通して、流体の圧力が環状シール部材710の受圧面714に導かれると共に、環状段差部62に導かれるようになっている。
【0073】
環状段差部304は、内壁面302と内壁面303の境界において、環状シール部材710が当接し得るように円環状の当接面として形成されている。
そして、環状段差部304は、軸方向通路APから第1隙間C1及び第2隙間C22を通して流れ込む流体の圧力を受ける環状シール部材710を当接させて、その移動を規制する規制部としての役割をなす。
このように、規制部としての環状段差部304を設けたことにより、軸方向通路APから第1隙間C1及び第2隙間C22を通して流れ込む流体が、環状シール部材710の受圧面714で受け止められる。これにより、
図15に示すように、環状当接部63及び環状段差部62に対して、流体の圧力を確実に作用させることができる。
受け部305は、付勢バネ80の第1端部81を受けるように、円環状の座面として形成されている。
【0074】
径方向通路306は、ハウジングHの径方向通路RPの一部を画定するものであり、通路部材60の径方向通路61aと連通するように形成されている。
フランジ部307は、嵌合部15の端面において、ハウジング本体10に対してネジで締結固定されるように形成されている。尚、固定手法としては、ネジに限らず、溶着、その他の手法でもよい。
【0075】
掛止部308は、保持部材300に組み込まれた通路部材60の被掛止部64を掛止するべく、円筒部301の端面側において円筒部301の軸線方向に開口するL字状の切り欠きとして形成されている。
ここで、掛止部308は、付勢バネ80の付勢方向、すなわち円筒部301の軸線方向における所定範囲において、被掛止部64の移動を許容するように形成されている。
すなわち、通路部材60の環状当接部63がロータ50の外輪郭面52cに密接するように組み付けられた状態において、付勢バネ80の付勢力が作用するように、被掛止部64が掛止部308から離れた状態で保持されるようになっている。
【0076】
また、掛止部308の領域には、通路部材60の被掛止部64が掛止部308に沿って移動し離脱するのを規制するべく、掛止部308から突出する規制突起308aが形成されている。
したがって、保持部材300に対して、付勢バネ80、環状シール部材710、通路部材60が組み込まれて保持された状態で、通路部材60の被掛止部64は、付勢バネ80の付勢力により掛止部308に掛止され、又、規制突起308aにより移動が規制されるため、保持部材300からの通路部材60の抜け落ちが規制される。
【0077】
パイプ部309は、外部の配管を接続するべく、円筒状をなし、円筒部301に一体的に形成されている。尚、パイプ部309は、接続される配管のレイアウトに応じて種々の形態に形成され得る。
【0078】
上記のように、ハウジング本体10と別個に形成された保持部材300を採用し、保持部材300に掛止部308を設け、通路部材60に被掛止部64を設けたことにより、保持部材300に対して、付勢バネ80、環状シール部材710、及び通路部材60を組み込んだ後に、掛止部308で被掛止部64を掛止することで、これらの部品が保持部材300から抜け落ちるのを防止することができる。
そして、付勢バネ80、環状シール部材70、及び通路部材60が組み込まれた保持部材300を、モジュール品として取り扱うことができ、ハウジング本体10に対して容易に組み付けることができる。
【0079】
また、通路部材60は、保持部材300の内側に配置されて付勢バネ80の付勢力により付勢された状態で保持されている。したがって、従来のようなケーシングと接続部材の間に挟み込まれて保持されるような構造に比べて、モジュール品をハウジング本体10に組み付けるだけで、通路部材60を付勢バネ80で付勢しつつロータ50の開口部52dと対向する位置に容易に組み付けることができる。
尚、保持部材300、通路部材60、付勢バネ80、環状シール部材710を組み込んだロータリ式バルブ装置M1の動作は、前述の内容と同様である。
【0080】
次に、本発明に係るロータリ式バルブ装置の第2実施形態について、添付図面の
図16ないし
図25を参照しつつ説明する。尚、前述の第1実施形態と同一の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
第2実施形態に係るロータリ式バルブ装置M2は、ハウジングH2、2つの接続部材410,420、所定の軸線S回りに回動するロータ500、3つの通路部材60、3つの環状シール部材710、3つの付勢バネ80、駆動機構90、サーモスタット600を備えている。
【0081】
ハウジングH2は、ハウジング本体100、ハウジングカバー20、3つの保持部材310,320,330により形成されている。
また、ハウジングH2は、軸線S方向に沿う軸方向通路APと、軸線Sに対して垂直な径方向に伸長する径方向通路RPを画定する。
尚、3つの通路部材60、3つの環状シール部材710、及び3つの付勢バネ80は、それぞれ取付け位置に応じて異なる寸法をなす略相似形として形成されているが、機能上は前述の実施形態と同一であるため、同一符号にて示されている。
【0082】
ロータリ式バルブ装置M2は、
図18に示すように、車両に搭載されるエンジン1の冷却水の流れを制御する冷却水制御系に適用されるものである。
冷却水制御系は、エンジン1に組み付けられたウォータポンプ2、ウォータポンプ2の上流側に取り付けられたロータリ式バルブ装置M2、ラジエータ3、ヒータ4、EGRクーラ5、スロットルユニット6を備えている。
【0083】
ロータリ式バルブ装置M2は、配管L1を介してラジエータ3に、配管L2を介してヒータ4に、配管L3を介してEGRクーラ5に、配管L4を介してスロットルユニット6に、それぞれ接続されている。
また、エンジン1のアウトレット1aは、配管L5を介してラジエータ3に、配管L6を介してヒータ4に、配管L7を介してEGRクーラ5に、配管L8を介してスロットルユニット6に、それぞれ接続されている。
そして、ウォータポンプ2のポンプ作用により、エンジン1のアウトレット1から吐出された冷却水は、配管L5,ラジエータ3,及び配管L1を経て、配管L6,ヒータ4,及び配管L2を経て、配管L7,EGRクーラ5,及び配管L3を経て、配管L8,スロットルユニット6,及び配管L4を経て、ロータリ式バルブ装置M2の径方向通路RPから流入し軸方向通路APから流出して、ウォータポンプ2に流入するようになっている。
【0084】
ハウジング本体100は、樹脂材料、アルミニウム材料、その他の金属材料等により形成され、収容室11、凹部12、軸受部13、軸受部14、3つの嵌合部15、フランジ部16、4つの接合部117,118,119,120、サーモスタット600を収容する収容部130を備えている。
3つの嵌合部15は、それぞれ異なる寸法をなす略相似形として形成されているが、機能上は前述の実施形態と同一であるため、同一符号にて示されている。
収容室11は、ロータ500を軸線S回りに回動自在に、第1隙間C1をおいて収容するように形成されている。
【0085】
接合部117は、接続部材410を接合して、ネジにより固定するように形成されている。
接合部118は、保持部材310を嵌合する嵌合部15の領域において、接続部材420を接合して、ネジにより固定するように形成されている。
接合部119は、保持部材320を嵌合する嵌合部15の領域において、保持部材320を接合して、ネジにより固定するように形成されている。
接合部120は、保持部材330を嵌合する嵌合部15の領域において、保持部材330を接合して、ネジにより固定するように形成されている。
【0086】
保持部材310は、ロータ500の開口部524aに対向する通路部材60、環状シール部材710及び付勢バネ80を保持するものであり、段付き円筒部31、内壁面32、内壁面33、環状段差部34、受け部35、径方向通路36、フランジ部37、嵌合部38、掛止部39、サーモスタット600に通じるバイパス通路311を備えている。
バイパス通路311は、サーモスタット600が所定温度以上で開弁したときに、軸方向通路APと接続部材420の通路を連通させるものである。
【0087】
保持部材320は、ロータ500の開口部523aに対向する通路部材60、環状シール部材710及び付勢バネ80を保持するものであり、段付き円筒部31、内壁面32、内壁面33、環状段差部34、受け部35、径方向通路36、嵌合部38、掛止部39、フランジ部321、配管L2を接続するパイプ部322を備えている。
フランジ部321は、ハウジング本体100の嵌合部15に形成された凹部15bに嵌め込まれて、ネジにより締結されて固定される。
【0088】
保持部材330は、ロータ500の開口部524bに対向する通路部材60、環状シール部材710及び付勢バネ80を保持するものであり、段付き円筒部31、内壁面32、内壁面33、環状段差部34、受け部35、径方向通路36、嵌合部38、掛止部39、フランジ部331、配管L4を接続するパイプ部332を備えている。
フランジ部331は、ハウジング本体100の嵌合部15に形成された凹部15bに嵌め込まれて、ネジにより締結されて固定される。
【0089】
接続部材410は、ハウジング本体100に接合されるフランジ部411、配管L3を接続するパイプ部412を備えている。
フランジ部411は、ハウジング本体100の接合部117に対してネジにより締結されて固定される。
そして、接続部材410は、ロータ500の回転位置に関係なく、ハウジングH2内の軸方向通路APと常時連通すると共に、パイプ部412が配管L3を介してEGRクーラ5に接続される。
【0090】
接続部材420は、ハウジング本体100に接合されるフランジ部421、結合部42、サーモスタット600に通じるバイパス通路423、配管L1を接続するパイプ部424を備えている。
フランジ部421は、ハウジング本体100の接合部118に対してネジにより締結されて固定される。
バイパス通路423は、サーモスタット600が所定温度以上で開弁したときに、バイパス通路311と協働して、軸方向通路APと接続部材420の通路を連通させるものである。
【0091】
ロータ500は、耐摩耗性及び摺動性に優れた樹脂材料により形成され、軸線Sをもつ回転軸51、バルブ部520、バブル部520を回転軸51に連結する複数のスポーク部530を備えている。
【0092】
バルブ部520は、軸線Sを中心とする略円筒状の内壁面521、軸線S周りにおいて内壁面521と回転軸51の間に画定された内部通路522、軸線S方向において連なる2つの球面をなす外輪郭面523,524、内部通路522から軸線Sに垂直な径方向外側に向かって外輪郭面523に開口する2つの開口部523a,523b、内部通路522から軸線Sに垂直な径方向外側に向かって外輪郭面524に開口する2つの開口部524a,524bを備えている。
【0093】
外輪郭面523,524は、それぞれ軸線S上に中心をもつ所定半径の球面として形成されている。
開口部523aは、
図21に示すように、外輪郭面523において、軸線Sに垂直な直線を中心線とする所定内径の円形孔として、又、軸線S回りの中心角が約20度を占めるように形成されている。
開口部523bは、
図21に示すように、外輪郭面523において、開口部523aの内径と同程度の幅で周方向に伸びる長孔として、又、軸線S回りの中心角が約50度を占めるように形成されている。
開口部524aは、
図20に示すように、外輪郭面524において、開口部523aよりも大きい開口面積で周方向に伸びる長孔として、又、軸線S回りの中心角が約90度を占めるように形成されている。
開口部524bは、
図20及び
図21に示すように、外輪郭面524において、開口部524aよりも幅狭で周方向に伸びる長孔として、又、軸線S回りの中心角が約120度を占めるように形成されている。
【0094】
ここで、開口部523bの中心は、開口部523aの中心に対して、
図23中の反時計回りに約100度位相がずれた位置に形成されている。
開口部524aの中心は、開口部523aの中心に対して、
図23及び
図24の反時計回りに約80度位相がずれた位置に形成されている。
開口部524bの中心は、開口部523aの中心に対して、
図23及び
図24の時計回りに約60度位相がずれた位置に形成されている。
【0095】
スポーク部530は、内部通路522が軸線S方向において貫通するように、回転軸51に対してバルブ部520を離散的に連結するように形成されている。
第2実施形態においては、ロータ500の外輪郭面523,524に対して、3つの通路部材60の環状当接部63がそれぞれ密接するように押圧される。
【0096】
サーモスタット600は、温度検知媒体を含み、流体の温度が所定レベル以上になると、温度検体媒体の膨張により開弁動作を行って、軸方向通路APと接続部材420の配管L1に通じる通路(パイプ部424内の通路)とを連通させるようになっている。
【0097】
次に、上記ロータリ式バルブ装置M2の動作について説明する。
ここでは、エンジン1の冷却水は、径方向通路RPから軸方向通路APに向けて流れるように設定されている。
また、駆動機構90により、ロータ500が適宜回転制御されて、モード1、モード2、モード3、モード4、モード5の状態が設定され得る。
尚、全てのモードにおいて、EGRクーラ5は、ロータ500の回転位置に関係なく常に冷却水が供給され得る状態にある。
【0098】
モード1は、ラジエータ3及びヒータ4への冷却水の供給が停止され、EGRクーラ5及びスロットルユニット6に冷却水が供給される状態である。
すなわち、ロータ500が、
図23及び
図24に示す位置から反時計回りに約90度回転させられた状態で、モード1が成立する。
この状態において、ラジエータ3に連通する保持部材310の領域の径方向通路36,61aが外輪郭面524により遮断され、ヒータ4に連通する保持部材320の領域の径方向通路36,61aが外輪郭面523により遮断され、スロットルユニット6に連通する保持部材330の領域の径方向通路36,61aが開口部524bに連通する。
【0099】
モード2は、ラジエータ3への冷却水の供給が停止され、ヒータ4、EGRクーラ5、及びスロットルユニット6に冷却水が供給される状態である。
すなわち、ロータ500が、
図23及び
図24に示す位置から反時計回りに約70度回転させられた状態で、モード2が成立する。
この状態において、ラジエータ3に連通する保持部材310の領域の径方向通路36,61aが外輪郭面524により遮断され、ヒータ4に連通する保持部材320の領域の径方向通路36,61aが開口部523aに連通し、スロットルユニット6に連通する保持部材330の領域の径方向通路36,61aが開口部524bに連通する。
【0100】
モード3は、ヒータ4への冷却水の供給が停止され、ラジエータ3、EGRクーラ5、及びスロットルユニット6に冷却水が供給される状態である。すなわち、ロータ500が、
図23及び
図24に示す位置にある状態で、モード3が成立する。
この状態において、ヒータ4に連通する保持部材320の領域の径方向通路36,61aが外輪郭面523により遮断され、ラジエータ3に連通する保持部材310の領域の径方向通路36,61aが開口部524aに連通し、スロットルユニット6に連通する保持部材330の領域の径方向通路36,61aが開口部524bに連通する。
【0101】
モード4は、ラジエータ3、ヒータ4、EGRクーラ5、及びスロットルユニット6に冷却水が供給される状態である。
すなわち、ロータ500が、
図23及び
図24に示す位置から時計回りに約15度前後回転させられた状態で、モード4が成立する。
この状態において、ラジエータ3に連通する保持部材310の領域の径方向通路36,61aが開口部524aに連通し、ヒータ4に連通する保持部材320の領域の径方向通路36,61aが開口部523bに連通し、スロットルユニット6に連通する保持部材330の領域の径方向通路36,61aが開口部524bに連通する。
【0102】
モード5は、スロットルユニット6への冷却水の供給が停止され、ラジエータ3、ヒータ4、及びEGRクーラ5に冷却水が供給される状態である。
すなわち、ロータ500が、
図23及び
図24に示す位置から時計回りに約40度前後回転させられた状態で、モード5が成立する。
この状態において、スロットルユニット6に連通する保持部材330の領域の径方向通路36,61aは外輪郭面524により遮断され、ラジエータ3に連通する保持部材310の領域の径方向通路36,61aが開口部524aに連通し、ヒータ4に連通する保持部材320の領域の径方向通路36,61aが開口部523bに連通する。
【0103】
以上述べた全てのモードにおいて、径方向通路36から第2隙間C21に流れ込む冷却水の圧力は、環状シール部材710の受圧面714に作用する。
したがって、冷却水の圧力により押圧される環状シール部材710は、通路部材60の環状段差部(被押圧部)62に当接して、環状当接部63が外輪郭面52cに密接するように通路部材60をロータ500に向けて押圧する。
さらに、受圧面714に作用する流体の圧力により、環状シール部材710がその径方向に押し広げられ、内周面711が外壁面61bに対してより密接するように押圧され、又、外周面712が内周面33に対してより密接するように押圧される。
【0104】
このように、付勢バネ80の付勢力に加えて、径方向通路RPから第2隙間C21を通して流れ込む流体の圧力が、環状シール部材710を介して通路部材60に押圧力を及ぼし、又、環状シール部材710を通路部材60と保持部材310,320,330に押圧する。
これにより、通路部材60と保持部材310,320,330に対して環状シール部材710が密接させられると共に、環状当接部63は外輪郭面523,524に確実に密接させられ、シール性能が高められる。
【0105】
一方、上記ロータリ式バルブ装置M2を、
図25に示すように軸方向通路APから径方向通路RPに向けて冷却水が流れる冷却水制御系に使用する場合は、
図10に示すように、軸方向通路APから第1隙間C1及び第2隙間C22を通して流れ込む冷却水の圧力が受圧面714に作用するように、環状シール部材710を組み込むことで、同様のシール性能を確保することができる。
【0106】
上記構成をなすロータリ式バルブ装置M2によれば、保持部材310,320,330に掛止部39を設け、通路部材60に被掛止部64を設けたことにより、保持部材310,320,330に対して、付勢バネ80、環状シール部材710、及び通路部材60を組み込んだ後に、掛止部39で被掛止部64を掛止することで、これらの部品が保持部材310,320,330から抜け落ちるのを防止することができる。
そして、付勢バネ80、環状シール部材710、及び通路部材60が組み込まれた保持部材310,320,330を、モジュール品として取り扱うことができ、ハウジング本体100に対して容易に組み付けることができる。
【0107】
また、通路部材60は、保持部材310,320,330の内側に配置されて付勢バネ80の付勢力により付勢された状態で保持されている。したがって、従来のようなケーシングと接続部材の間に挟み込まれて保持されるような構造に比べて、モジュール品をハウジング本体100に組み付けるだけで、通路部材60を付勢バネ80で付勢しつつロータ500の開口部523a,524a,524bと対向する位置に容易に組み付けることができる。
また、軸方向通路APから径方向通路RPに流体が流れる使用形態と、径方向通路RPから軸方向通路APに流体が流れる使用形態の両形態において、シール性能に優れた通路を確保することができる。すなわち、流体の流れ方向に関係なく、所望のシール性能が得られ、所望の流量制御を行うことができる。
尚、上記ロータリ式バルブ装置M2においては、環状シール部材710を採用した場合を示したが、前述の実施形態と同様に、環状シール部材70を組み込んでもよい。
【0108】
上記実施形態においては、環状シール部材として、略矩形の断面をなす環状シール部材70、略U又はV字状断面をなす環状シール部材710を示したが、これに限定されるものではなく、流体の圧力に対して所定範囲の形態を維持し得るものであれば、両端面に凹状の受圧面を形成した環状シール部材を採用してもよい。
【0109】
上記実施形態においては、ロータとして、球面をなす外輪郭面52c,523,524を有するロータ50,500を示したが、これに限定されるものではなく、円筒状の外輪郭面をもつロータを採用し、通路部材としても、ロータの外周面に密接し得る環状当接部を備えた円筒状の通路部材を採用してもよい。
【0110】
以上述べたように、本発明のロータリ式バルブ装置は、組み付けが容易で、所望のシール性能が得られ、又、軸方向通路から径方向通路に流体が流れる使用形態と、径方向通路から軸方向通路に流体が流れる使用形態の両形態において、シール性能に優れた通路を確保することができるため、車両等の冷却水制御系に適用できるのは勿論のこと、その他の流体の流れを制御する流体制御系においても有用である。
【符号の説明】
【0111】
S 軸線
M1,M2 ロータリ式バルブ装置
H,H2 ハウジング
AP 軸方向通路
RP 径方向通路
30 保持部材(ハウジング)
31 段付き円筒部(筒部)
32,33 内壁面
34 環状段差部(規制部)
36 径方向通路
39 掛止部
50 ロータ
52b 内部通路
52c 外輪郭面
52d 開口部
60 通路部材
61a 径方向通路
61b 外壁面
62 環状段差部(被押圧部、円環状段差面)
63 環状当接部(円環状シールリップ)
64 被掛止部
70 環状シール部材
C1 第1隙間
C21,C22 第2隙間
80 付勢バネ
90 駆動機構
300 保持部材(ハウジング)
301 円筒部(筒部)
302,303 内壁面
304 環状段差部(規制部)
305 受け部
306 径方向通路
308 掛止部
308a 規制突起
309 パイプ部
310,320,330 保持部材(ハウジング)
500 ロータ
522 内部通路
523,524 外輪郭面
523a,523b,524a,524b 開口部