IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オムロンヘルスケア株式会社の特許一覧 ▶ オムロン株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-脈波伝播時間測定装置及び血圧測定装置 図1
  • 特許-脈波伝播時間測定装置及び血圧測定装置 図2
  • 特許-脈波伝播時間測定装置及び血圧測定装置 図3
  • 特許-脈波伝播時間測定装置及び血圧測定装置 図4
  • 特許-脈波伝播時間測定装置及び血圧測定装置 図5
  • 特許-脈波伝播時間測定装置及び血圧測定装置 図6
  • 特許-脈波伝播時間測定装置及び血圧測定装置 図7
  • 特許-脈波伝播時間測定装置及び血圧測定装置 図8
  • 特許-脈波伝播時間測定装置及び血圧測定装置 図9
  • 特許-脈波伝播時間測定装置及び血圧測定装置 図10
  • 特許-脈波伝播時間測定装置及び血圧測定装置 図11
  • 特許-脈波伝播時間測定装置及び血圧測定装置 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】脈波伝播時間測定装置及び血圧測定装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/02 20060101AFI20220906BHJP
   A61B 5/022 20060101ALI20220906BHJP
   A61B 5/346 20210101ALI20220906BHJP
   A61B 5/25 20210101ALI20220906BHJP
【FI】
A61B5/02 310V
A61B5/022 400E
A61B5/022 100A
A61B5/02 D
A61B5/346
A61B5/25
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018156199
(22)【出願日】2018-08-23
(65)【公開番号】P2020028478
(43)【公開日】2020-02-27
【審査請求日】2021-07-16
(73)【特許権者】
【識別番号】503246015
【氏名又は名称】オムロンヘルスケア株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【氏名又は名称】鵜飼 健
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 晃人
(72)【発明者】
【氏名】川端 康大
(72)【発明者】
【氏名】藤井 健司
(72)【発明者】
【氏名】松村 直美
(72)【発明者】
【氏名】藤田 麗二
【審査官】亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0089081(US,A1)
【文献】特開2011-156194(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0283583(US,A1)
【文献】特開2016-154754(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0245773(US,A1)
【文献】国際公開第2014/132713(WO,A1)
【文献】特開2014-012072(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102008296(CN,A)
【文献】特開2001-346769(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00 - 5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの被測定部位に巻き付けられるベルト部と、
前記ベルト部の内周面に設けられた複数の第1の電極と、
前記ベルト部の前記内周面に設けられた第2の電極と、
前記ベルト部の外周面に設けられた第3の電極と、
前記複数の第1の電極を用いて前記ユーザの第1の心電信号を取得する第1の心電信号取得部と、
ある期間において、前記第2の電極及び前記第3の電極を用いて前記ユーザの第2の心電信号を取得する第2の心電信号取得部と、
前記第2の心電信号の波形特徴点に基づいて、前記期間に取得された第1の心電信号の波形特徴点に関する特徴量パラメータを算出する特徴量パラメータ算出部と、
前記ベルト部に設けられた脈波センサを含み、前記脈波センサを用いて前記ユーザの脈波を表す脈波信号を取得する脈波信号取得部と、
前記特徴量パラメータを用いて、前記期間より後に取得された第1の心電信号の波形特徴点を検出し、前記第1の心電信号の前記検出された波形特徴点と前記脈波信号の波形特徴点との間の時間差に基づいて、脈波伝播時間を算出する脈波伝播時間算出部と、
を備える脈波伝播時間測定装置。
【請求項2】
前記特徴量パラメータ算出部は、前記第2の心電信号の波形特徴点に基づいて決定される時間範囲で、前記第1の心電信号において最大振幅のピークを検出し、前記検出されたピークの振幅値又は前記振幅値の符号を前記特徴量パラメータとして取得する、請求項1に記載の脈波伝播時間測定装置。
【請求項3】
前記第2の電極は、前記複数の第1の電極のうちの1つである、請求項1又は2に記載の脈波伝播時間測定装置。
【請求項4】
前記複数の第1の電極の中から、R波の振幅が最も大きい第1の心電信号を提供する2つの第1の電極を選択する電極選択部をさらに備え、
前記第1の心電信号取得部は、前記選択された2つの第1の電極間の電位差に基づいて前記第1の心電信号を取得する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の脈波伝播時間測定装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の脈波伝播時間測定装置と、
前記算出された脈波伝播時間に基づいて第1の血圧値を算出する第1の血圧値算出部と、
を備える血圧測定装置。
【請求項6】
前記ベルト部に設けられた押圧カフと、
前記押圧カフに流体を供給する流体供給部と、
前記押圧カフ内の圧力を検出する圧力センサと、
前記圧力センサの出力に基づいて第2の血圧値を算出する第2の血圧値算出部と、
を備える、請求項5に記載の血圧測定装置。
【請求項7】
前記押圧カフ、前記流体供給部、前記圧力センサ、及び前記第2の血圧値算出部による血圧測定を開始するボタンをさらに備え、
前記第3の電極は、前記ボタンに設けられる、請求項6に記載の血圧測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脈波伝播時間を非侵襲的に測定する脈波伝播時間測定装置、及び脈波伝播時間測定装置を用いた血圧測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
脈波が動脈上の2点間を伝播するのに要する時間である脈波伝播時間(PTT:Pulse Transit Time)と血圧との間に相関関係があることが知られている。上記の相関関係を利用した血圧測定装置は、ユーザ(被測定者)の脈波伝播時間を測定し、測定した脈波伝播時間と上記の相関関係を表す血圧算出式とを用いて、ユーザの血圧値を算出する。
【0003】
脈波伝播時間の測定方法として、例えば、心電信号とユーザの特定部位(例えば耳や上腕など)における脈波を表す脈波信号とを測定により取得し、取得した心電信号及び脈波信号に基づいて脈波伝播時間を算出する方法がある。この方法では、一般的に、ユーザの心臓を挟むように胴体に配置された複数の電極を用いて心電信号を取得する。
【0004】
ところで、特許文献1には、心電信号はユーザの任意の部位(例えば上腕)において取得可能であることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2007-504917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されるようなユーザの単一部位に配置した複数の電極を用いて心電信号を取得する方法では、心臓の電気的活動を表す信号が小さくてノイズと混同しやすく、また心電波形が電極の組み合わせで異なるため、正確な心電情報を取得することが困難である。このため、ユーザの単一部位に配置した複数の電極を用いて取得された心電信号に基づいて脈波伝播時間を算出する場合、心臓の駆動タイミングを正しく検出できないことがあり、脈波伝播時間を正確に測定できない可能性がある。
【0007】
本発明は、上記の事情に着目してなされたものであり、その目的は、脈波伝播時間をより正確に測定することができる脈波伝播時間測定装置、及びこの脈波伝播時間測定装置を用いた血圧測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために、以下の態様を採用する。
【0009】
一態様に係る脈波伝播時間測定装置は、ユーザの被測定部位に巻き付けられるベルト部と、前記ベルト部の内周面に設けられた複数の第1の電極と、前記ベルト部の前記内周面に設けられた第2の電極と、前記ベルト部の外周面に設けられた第3の電極と、前記複数の第1の電極を用いて前記ユーザの第1の心電信号を取得する第1の心電信号取得部と、前記第2の電極及び前記第3の電極を用いて前記ユーザの第2の心電信号を取得する第2の心電信号取得部と、前記第2の心電信号の波形特徴点に基づいて前記第1の心電信号の波形特徴点に関する特徴量パラメータを算出する特徴量パラメータ算出部と、前記ベルト部に設けられた脈波センサを含み、前記脈波センサを用いて前記ユーザの脈波を表す脈波信号を取得する脈波信号取得部と、前記特徴量パラメータを用いて前記第1の心電信号の波形特徴点を検出し、前記第1の心電信号の前記検出された波形特徴点と前記脈波信号の波形特徴点との間の時間差に基づいて、脈波伝播時間を算出する脈波伝播時間算出部と、を備える。
【0010】
上記の構成によれば、例えば、ベルト部がユーザの左上腕に巻き付けられる場合、第1の電極及び第2の電極は左上腕に接触する。ユーザが右手で第3の電極を触ることにより、第2の電極及び第3の電極が心臓を挟むように配置された状態が生成される。第2の心電信号は心臓を挟むように配置された第2の電極及び第3の電極を用いて取得されるので、第2の心電信号は、左上腕に配置された第1の電極を用いて取得された第1の心電信号よりも正確である。第1の心電信号及び第2の心電信号が同時に取得され、第2の心電信号の波形特徴点に基づいて第1の心電信号の波形特徴点に関する特徴量パラメータが算出される。そして、脈波伝播時間の測定時には、第1の心電信号及び脈波信号が取得され、特徴量パラメータを用いて第1の心電信号の波形特徴点が検出され、第1の心電信号の検出された波形特徴点と脈波信号の波形特徴点との間の時間差が算出される。事前に算出した特徴量パラメータを使用することにより、心臓の駆動タイミングと見なす第1の心電信号の波形特徴点(例えばR波に対応するピーク点)を正しく検出でき、脈波伝播時間を正確に測定することができるようになる。
【0011】
一態様では、前記特徴量パラメータ算出部は、前記第2の心電信号の波形特徴点に基づいて決定される時間範囲で、前記第1の心電信号において最大振幅のピークを検出し、前記検出されたピークの振幅値又は前記振幅値の符号を前記特徴量パラメータとして取得してよい。当該構成によれば、脈波伝播時間を算出するための第1の心電信号において波形特徴点を正しく検出することができるようになる。
【0012】
一態様では、前記第2の電極は、前記複数の第1の電極のうちの1つであってもよい。当該構成によれば、被測定部位に接触することになる、第2の心電信号を取得するために専用の電極を設ける必要がなくなる。このため、製造コストを削減することができる。
【0013】
一態様では、上記の脈波伝播時間測定装置は、前記複数の第1の電極の中から、R波の振幅が最も大きい第1の心電信号を提供する2つの第1の電極を選択する電極選択部をさらに備えてもよく、前記第1の心電信号取得部は、前記選択された2つの第1の電極間の電位差に基づいて前記第1の心電信号を取得してもよい。
【0014】
上記の構成によれば、第1の心電信号においてR波ピーク点(R波に対応するピーク点)の時間を正確に特定することができる。その結果、脈波伝播時間をより正確に測定することができるようになる。
【0015】
一態様に係る血圧測定装置は、上記の脈波伝播時間測定装置と、前記算出された脈波伝播時間に基づいて第1の血圧値を算出する第1の血圧値算出部と、を備える。脈波伝播時間は一心拍ごとに測定することが可能であるので、当該構成によれば、一心拍ごとの血圧値を得ることができる。
【0016】
一態様では、上記の血圧測定装置は、前記ベルト部に設けられた押圧カフと、前記押圧カフに流体を供給する流体供給部と、前記押圧カフ内の圧力を検出する圧力センサと、前記圧力センサの出力に基づいて第2の血圧値を算出する第2の血圧値算出部と、を備えてもよい。
【0017】
上記の構成によれば、一心拍ごとの血圧値を得る連続血圧測定とオシロメトリック法による血圧測定とを1つのデバイスで行うことができる。したがって、ユーザにとって利便性が高い。
【0018】
一態様では、上記の血圧測定装置は、前記押圧カフ、前記流体供給部、前記圧力センサ、及び前記第2の血圧値算出部による血圧測定を開始するボタンをさらに備えてよく、前記第3の電極は、前記ボタンに設けられてよい。
【0019】
上記の構成によれば、脈波伝播時間と血圧との間の相関関係を表す血圧算出式を較正すると同時に、特徴量パラメータを算出することが可能となり、ユーザにとっての利便性が向上する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、脈波伝播時間をより正確に測定することができる脈波伝播時間測定装置、及びこの脈波伝播時間測定装置を用いた血圧測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】一実施形態に係る血圧測定装置を例示する図。
図2図1に示した血圧測定装置の外観を例示する図。
図3図1に示した血圧測定装置の外観を例示する図。
図4図1に示した血圧測定装置の断面を例示する図。
図5図1に示した血圧測定装置の制御系のハードウェア構成を例示するブロック図。
図6図1に示した血圧測定装置のソフトウェア構成を例示するブロック図。
図7図6に示した特徴量パラメータ算出部が特徴量パラメータを算出する方法の一例を説明する図。
図8図6に示した脈波伝播時間算出部が脈波伝播時間を算出する方法の一例を説明する図。
図9図1に示した血圧測定装置が特徴量パラメータを算出する動作を例示するフローチャート。
図10図1に示した血圧測定装置が脈波伝播時間に基づく血圧測定を行う動作を例示するフローチャート。
図11図1に示した血圧測定装置がオシロメトリック法による血圧測定を行う動作を例示するフローチャート。
図12】オシロメトリック法による血圧測定におけるカフ圧及び脈波信号の変化を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
【0023】
[概要]
図1は、一実施形態に係る血圧測定装置10を例示する。図1の例では、血圧測定装置10は、ウェアラブルデバイスであり、ユーザの被測定部位としての左上腕に装着される。血圧測定装置10は、ベルト部20、第1の血圧測定部30、及び第2の血圧測定部40を備える。
【0024】
ベルト部20は、内周面及び外周面を有する。内周面は、ユーザが血圧測定装置10を装着した状態(以下では、単に「装着状態」と称する)でユーザの左上腕に面する(接する)表面であり、外周面は、装着状態でユーザの左上腕に面しない(接しない)表面である。ベルト部20は、ベルト21及び本体22を備える。ベルト21は、左上腕を取り巻いて装着される帯状の部材を指し、バンド又はカフなどの別の名称で呼ばれることもある。
【0025】
本体22は、ベルト21に取り付けられている。本体22は、操作部221及び表示部222とともに、後述する制御部501(図5に示される)などの構成要素を収容する。操作部221は、ユーザが血圧測定装置10に対する指示を入力することを可能にする入力装置である。図1の例では、操作部221は複数のプッシュ式ボタンを含む。表示部222は、血圧測定結果などの情報を表示する表示装置である。表示装置としては、例えば、液晶表示装置(LCD)又はOLED(Organic Light Emitting Diode)ディスプレイを使用することができる。表示装置及び入力装置を兼ねたタッチスクリーンが使用されてもよい。
【0026】
第1の血圧測定部30は、ユーザの脈波伝播時間を非侵襲的に測定し、測定した脈波伝播時間に基づいて血圧値を算出する。第1の血圧測定部30は、一心拍ごとの血圧値を得る連続血圧測定を行うことができる。第2の血圧測定部40は、第1の血圧測定部30とは異なる方式で血圧測定を行う。第2の血圧測定部40は、例えばオシロメトリック法又はコロトコフ法に基づいており、特定のタイミングで、例えばユーザによる操作に応答して、血圧測定を行う。第2の血圧測定部40は、第1の血圧測定部30よりも正確に血圧を測定することができる。
【0027】
第1の血圧測定部30は、内部電極群31、外部電極32、第1の心電信号取得部33、第2の心電信号取得部34、特徴量パラメータ算出部35、脈波信号取得部36、脈波伝播時間算出部37、及び血圧値算出部38を備える。
【0028】
内部電極群31は、複数の内部電極を有する。これらの内部電極は、ベルト部20の内周面に設けられており、それにより、装着状態で内部電極がユーザの左上腕に接するようになっている。内部電極は本発明の第1の電極に相当する。本実施形態において説明する例では、内部電極は第1の心電信号取得部33によって使用され、内部電極のうちの1つは第2の心電信号取得部34によっても使用される。第2の心電信号取得部34によって使用される内部電極は、本発明の第2の電極に相当する。外部電極32は、ベルト部20の外周面に設けられており、それにより、装着状態で外部電極32がユーザの左上腕に接しないようになっている。外部電極32は本発明の第3の電極に相当する。
【0029】
第1の心電信号取得部33は、内部電極群31を用いてユーザの心電信号(ECG信号)を取得する。心電信号は、心臓の電気的活動の時間変化を表す波形信号である。具体的には、第1の心電信号取得部33は、内部電極群31から選択された2つの内部電極間の電位差に基づいてユーザの心電信号を取得する。以下では、第1の心電信号取得部33により取得された心電信号を第1の心電信号と称することもある。
【0030】
第2の心電信号取得部34は、内部電極群31のうちの1つの内部電極と外部電極32とを用いてユーザの心電信号を取得する。具体的には、第2の心電信号取得部34は、1つの内部電極と外部電極32との間の電位差に基づいてユーザの心電信号を取得する。第2の心電信号取得部34による心電信号の取得は、例えば、ユーザが右手で外部電極32に接した状態で、すなわち、心臓を挟むように心臓の左右に配置された電極を用いて、行われる。この測定法は、左室の側壁を見る誘導である第I誘導と呼ばれる測定法であり、より正確な心電信号を取得することが可能である。第2の心電信号取得部34により取得された心電信号を第2の心電信号と称することもある。
【0031】
特徴量パラメータ算出部35は、第2の心電信号の波形特徴点に基づいて、第1の心電信号の波形特徴点に関する特徴量パラメータを算出する。波形特徴点は、Q波、R波、S波のいずれに対応するものであってもよい。単一部位(この例では左上腕)に配置された電極を用いて取得された第1の心電信号は、心臓の電気的活動をより正確に反映する第2の心電信号とは異なる波形形状を有する。例えば、第1の心電信号では、波形特徴点の振幅が小さく、また、波形特徴点は、使用する電極に応じて正又は負側に現れる。このため、第1の心電信号において、特定の波形特徴点を正確に検出することは困難である。特徴量パラメータ算出部35は、第2の心電信号の波形特徴点を検出し、検出した波形特徴点に基づいて、波形特徴点検出を行うための時間範囲を決定する。続いて、特徴量パラメータ算出部35は、決定した時間範囲で、第2の心電信号と同時に取得された第1の心電信号において振幅最大の(振幅値の絶対値が最大となる)ピークを検出し、検出したピークの振幅値を特徴量パラメータとして取得する。
【0032】
脈波信号取得部36は、脈波センサを備え、脈波センサを用いてユーザの左上腕における脈波を表す脈波信号を取得する。脈波センサはベルト部20に設けられている。例えば、脈波センサはベルト部20の内周面に配置されており、それにより、装着状態で脈波センサがユーザの左上腕に接するようになっている。なお、後述する電波法に基づく脈波センサなどのいくつかのタイプの脈波センサでは、装着状態でユーザの左上腕の皮膚に接する必要はない。
【0033】
脈波伝播時間算出部37は、特徴量パラメータ算出部35により算出された特徴量パラメータを用いて、第1の心電信号取得部33により取得された第1の心電信号の波形特徴点を検出し、第1の心電信号の検出された波形特徴点と脈波信号取得部36により取得された脈波信号の波形特徴点との間の時間差に基づいて、脈波伝播時間を算出する。例えば、脈波伝播時間算出部37は、第1の心電信号の検出された波形特徴点と脈波信号の波形特徴点との間の時間差を脈波伝播時間として算出する。本実施形態では、第1の心電信号のQ波、R波、又はS波のいずれかがピークになるタイミングを心臓の駆動タイミング(例えば心臓が血液を拍出するタイミング)と見なす。本実施形態では、脈波伝播時間は、心臓から左上腕(具体的には脈波センサが配置される位置)まで脈波が動脈を伝播するのに要した時間に相当する。
【0034】
血圧値算出部38は、脈波伝播時間算出部37により算出された脈波伝播時間と血圧算出式とに基づいて血圧値を算出する。血圧算出式は、脈波伝播時間と血圧との間の相関関係を表す関係式である。血圧算出式の一例を下記に示す。
SBP=A/PTT+A ・・・(1)
ここで、SBPは収縮期血圧を表し、PTTは脈波伝播時間を表し、A、Aはパラメータである。
【0035】
脈波伝播時間算出部37は一心拍ごとの脈波伝播時間を算出することができ、したがって、血圧値算出部38は一心拍ごとの血圧値を算出することができる。
【0036】
以上のように、血圧測定装置10は、内部電極群31のうちの1つの内部電極と外部電極32とを用いて取得された第2の心電信号に基づいて、内部電極群31を用いて取得された第1の心電信号の波形特徴点に関する特徴量パラメータを算出する。特徴量パラメータを用いることにより、第1の心電信号の波形特徴点を正しく検出することが可能になり、脈波伝播時間を正確に測定することが可能になる。その結果、脈波伝播時間に基づいて算出された血圧値の信頼性が向上する。
【0037】
以下に、血圧測定装置10をより詳細に説明する。
[構成例]
(ハードウェア構成)
図2から図6を参照して、本実施形態に係る血圧測定装置10のハードウェア構成の一例を説明する。
【0038】
図2及び図3は、血圧測定装置10の外観を例示する平面図である。具体的には、図2は、ベルト21を展開した状態でベルト21の外周面211側から見た血圧測定装置10を示し、図3は、ベルト21を展開した状態でベルト21の内周面212側から見た血圧測定装置10を示している。図4は、装着状態での血圧測定装置10の断面を示している。
【0039】
ベルト21は、ベルト21を上腕に着脱可能にする装着部材を備える。図2及び図3に示される例では、装着部材は、多数のループを有するループ面213と複数のフックを有するフック面214とを有する面ファスナである。ループ面213は、ベルト21の外周面211上であってベルト21の長手方向の端部215Aに配置されている。長手方向は、装着状態で上腕の周方向に対応する。フック面214は、ベルト21の内周面212上であってベルト21の長手方向の端部215Bに配置されている。端部215Bは、ベルト21の長手方向において端部215Aと対向する。ループ面213及びフック面214を互いに押し付けると、ループ面213及びフック面214が結合する。また、ループ面213及びフック面214を互いに離れるように引っ張ることで、ループ面213及びフック面214が分離する。
【0040】
図3に示されるように、ベルト21の内周面212には、内部電極群31が配置されている。図3の例では、内部電極群31は、ベルト21の長手方向に一定間隔で整列した6つの内部電極312を有する。内部電極312間の間隔は、例えば、想定する最も腕の細いユーザの上腕周長の四分の一に設定される。この配置では、図4に示されるように、想定する最も腕の細いユーザについて、装着状態で6つの内部電極312のうちの4つが左上腕70に接し、左上腕70の周上において等間隔に位置し、残り2つの内部電極312はベルト21の外周面211に接する。図4において、上腕骨71及び上腕動脈72が示されている。想定する最も腕の太いユーザについては、装着状態で6つすべての内部電極312が左上腕70に接する。
【0041】
なお、内部電極312の数は、6つに限らず、2~5又は7以上であってよい。2つ又は3つの内部電極312が左上腕に接する場合には、装着状態によっては第1の心電信号をうまく測定できないことがある。第1の心電信号をうまく測定できない場合には、表示部222にメッセージを表示するなどして、ユーザに血圧測定装置10を装着し直してもらう必要がある。第1の心電信号を測定できない事態を回避するために、装着状態で少なくとも4つの内部電極312が左上腕に接することが望まれる。
【0042】
装着状態で内部電極312が心臓の近くに位置するほど、内部電極312を用いて得られる、心臓の電気的活動を表す信号が大きくなり、すなわち、信号対雑音比(SN比)が高くなる。好ましくは、図3に示されるように、内部電極312はベルト21の中枢側部分217Aに配置される。中枢側部分217Aは、装着状態で中心線216よりも中枢側(肩側)に位置する部分である。より好ましくは、内部電極312はベルト21の中枢側端部218Aに配置される。中枢側端部218Aは、装着状態で中枢側に位置する端部であり、中枢側端部218Aの幅は、例えば、ベルト21の全幅の3分の1である。
【0043】
図2に示されるように、外部電極32は、本体22に設けられている。なお、外部電極32は、ベルト21の外周面211に設けられていてもよい。
【0044】
ベルト21の内周面212には、インピーダンス測定部361のセンサ部362がさらに配置されている。図3の例では、センサ部362は、左上腕に通電するための1対の電極362A、362Dと、電圧を検出するための1対の電極362B、362Cと、を含む。1対の電極362B、362Cが脈波センサを形成する。電極362A、362B、362C、362Dは、この順番にベルト21の幅方向に配列されている。ベルト21の幅方向は、装着状態で上腕動脈72に沿う方向に対応する。
【0045】
装着状態でセンサ部362が心臓から遠くに位置するほど、脈波伝播距離が長くなり、脈波伝播時間の測定値が大きくなる。脈波伝播時間の測定値が大きい場合、第1の心電信号の波形特徴点と脈波信号の波形特徴点との間の時間差を算出する際に生じた誤差が脈波伝播時間に対して相対的に小さくなり、脈波伝播時間を正確に測定できるようになる。このため、好ましくは、センサ部362はベルト21の末梢側部分217Bに配置される。末梢側部分217Bは、装着状態で中心線216よりも末梢側(肘側)に位置する部分である。より好ましくは、センサ部362はベルト21の末梢側端部218Cに配置される。末梢側端部218Cは、装着状態で末梢側に位置する端部であり、末梢側端部218Cの幅は、例えば、ベルト21の全幅の3分の1である。中枢側端部218Aと末梢側端部218Cとの間の部分218Bは中間部と称する。
【0046】
図4に示されるように、ベルト21は、内布210A及び外布210Bを含み、内布210Aと外布210Bとの間に押圧カフ401が設けられている。押圧カフ401は、左上腕を取り囲むことができるように、ベルト21の長手方向に長い帯状体である。例えば、押圧カフ401は、伸縮可能な2枚のポリウレタンシートを厚さ方向に対向させ、それらの周縁部を溶着して、流体袋として構成されている。内部電極群31及びセンサ部362は、装着状態で押圧カフ401と左上腕70との間に位置するように内布210Aに設けられている。
【0047】
図5は、本実施形態に係る血圧測定装置10の制御系のハードウェア構成の一例を例示する。図5の例では、本体22には、上述した操作部221及び表示部222に加えて、制御部501、記憶部505、電池506、スイッチ回路333、減算回路334、アナログフロントエンド(AFE)335、減算回路344、AFE345、圧力センサ402、流体供給部としてのポンプ403、弁404、発振回路405、及びポンプ駆動回路406が搭載されている。本体22には、スピーカ又は圧電サウンダなどの発音体が設けられていてもよい。本体22には、ユーザが音声で指示を入力することができるように、マイクロフォンが設けられていてもよい。インピーダンス測定部361は、上述したセンサ部362に加えて、通電及び電圧検出回路363を備える。この例では、通電及び電圧検出回路363は、ベルト21に設けられている。
【0048】
制御部501は、CPU(Central Processing Unit)502、RAM(Random Access Memory)503、ROM(Read Only Memory)504などを含み、情報処理に応じて各構成要素の制御を行う。記憶部505は、例えば、ハードディスクドライブ(HDD)、半導体メモリ(例えばフラッシュメモリ)などの補助記憶装置であり、制御部501で実行されるプログラム(例えば脈波伝播時間測定プログラム及び血圧測定プログラムなど)、プログラムを実行するために必要な設定データ、血圧測定結果などを非一時的に記憶する。記憶部505が備える記憶媒体は、コンピュータその他装置、機械等が記録されたプログラムなどの情報を読み取り可能なように、当該プログラムなどの情報を、電気的、磁気的、光学的、機械的又は化学的作用によって蓄積する媒体である。なお、プログラムの一部又は全部は、ROM504に記憶されていてもよい。
【0049】
電池506は、制御部501などの構成要素に電力を供給する。電池506は、例えば、充電可能なバッテリである。
【0050】
6つの内部電極312はそれぞれ、スイッチ回路333の入力端子に接続されている。スイッチ回路333の2つの出力端子はそれぞれ、減算回路334の2つの入力端子に接続されている。スイッチ回路333は、制御部501からスイッチ信号を受け取り、スイッチ信号により指定される2つの内部電極312を減算回路334に接続する。減算回路334は、一方の入力端子から入力された電位から他方の入力端子から入力された電位を減算する。減算回路334は、接続された2つの内部電極312間の電位差を表す電位差信号をAFE335へ出力する。減算回路334は、例えば計装アンプである。AFE335は、例えば、ローパスフィルタ(LPF)、増幅器、及びアナログデジタル変換器を含む。電位差信号は、LPFで濾波され、増幅器で増幅され、アナログデジタル変換器でデジタル信号に変換される。デジタル信号に変換された電位差信号は、制御部501へ与えられる。制御部501は、AFE335から時系列で出力される電位差信号を第1の心電信号として取得する。
【0051】
6つの内部電極312のうちの1つはさらに、減算回路344の一方の入力端子に接続されている。外部電極32は、減算回路344の他方の入力端子に接続されている。減算回路344は、内部電極312と外部電極32との間の電位差を表す電位差信号をAFE345へ出力する。減算回路344は、例えば計装アンプである。AFE345は、例えば、LPF、増幅器、及びアナログデジタル変換器を含む。電位差信号は、LPFで濾波され、増幅器で増幅され、アナログデジタル変換器でデジタル信号に変換される。デジタル信号に変換された電位差信号は、制御部501へ与えられる。制御部501は、AFE345から時系列で出力される電位差信号を第2の心電信号として取得する。
【0052】
通電及び電圧検出回路363は、電極362A、362D間に高周波定電流を流す。例えば、電流の周波数は50kHzであり、電流値は1mAである。通電及び電圧検出回路363は、電極362A、362D間に通電した状態で、電極362B、362C間の電圧を検出し、検出信号を生成する。検出信号は、電極362B、362C対向する動脈の部分を伝播する脈波による電気インピーダンスの変化を表す。通電及び電圧検出回路363は、検出信号に対して整流、増幅、濾波及びアナログデジタル変換を含む信号処理を施し、検出信号を制御部501に与える。制御部501は、通電及び電圧検出回路363から時系列で出力される検出信号を脈波信号として取得する。
【0053】
圧力センサ402は配管407を介して押圧カフ401に接続され、ポンプ403及び弁404は配管408を介して押圧カフ401に接続されている。配管407、408は共通の1つの配管であってもよい。ポンプ403は、例えば圧電ポンプであり、押圧カフ401内の圧力を高めるために、配管408を通して押圧カフ401に流体としての空気を供給する。弁404は、ポンプ403に搭載され、ポンプ403の動作状態(オン/オフ)に伴って開閉が制御される構成となっている。具体的には、ポンプ403がオンされると弁404は閉状態となり、ポンプ403がオフされると弁404は開状態となる。弁404が開状態であるときには、押圧カフ401は大気と連通し、押圧カフ401内の空気が大気中へ排出される。なお、弁404は、逆止弁の機能を有し、空気が逆流することがない。ポンプ駆動回路406は、制御部501から受け取る制御信号に基づいてポンプ403を駆動する。
【0054】
圧力センサ402は、押圧カフ401内の圧力(カフ圧とも称する)を検出し、カフ圧を表す電気信号を生成する。カフ圧は、例えば、大気圧を基準とした圧力である。圧力センサ402は、例えばピエゾ抵抗式圧力センサである。発振回路405は、圧力センサ402からの電気信号に基づいて発振して、電気信号に応じた周波数を有する周波数信号を制御部501に出力する。この例では、圧力センサ402の出力は、押圧カフ401の圧力を制御するために、及び、オシロメトリック法によって血圧値(収縮期血圧及び拡張期血圧を含む)を算出するために用いられる。
【0055】
押圧カフ401は、内部電極312又はインピーダンス測定部361のセンサ部362と左上腕との接触状態を調整するために使用されてもよい。例えば、脈波伝播時間に基づく血圧測定の実行時には、押圧カフ401はある程度の空気が収容された状態に保たれる。これにより、内部電極312及びインピーダンス測定部361のセンサ部362がユーザの左上腕に確実に接触するようになる。
【0056】
図2から図5に示される例では、スイッチ回路333、減算回路334、及びAFE335が図1に示した第1の心電信号取得部33に含まれ、減算回路344及びAFE345が図1に示した第2の心電信号取得部34に含まれ、インピーダンス測定部361(電極362A~362Dと通電及び電圧検出回路363とを含む)が図1に示した脈波信号取得部36に含まれる。また、押圧カフ401、圧力センサ402、ポンプ403、弁404、発振回路405、ポンプ駆動回路406、及び配管407、408が図1に示した第2の血圧測定部40に含まれる。
【0057】
なお、血圧測定装置10の具体的なハードウェア構成に関して、実施形態に応じて、適宜、構成要素の省略、置換及び追加が可能である。例えば、制御部501は、複数のプロセッサを含んでいてもよい。血圧測定装置10は、ユーザの携帯端末(例えばスマートフォン)などの外部装置と通信するための通信部507を備えていてもよい。通信部507は、有線通信モジュール及び/又は無線通信モジュールを含む。無線通信方式として、例えば、Bluetooth(登録商標)、BLE(Bluetooth Low Energy)などを採用することができる。
【0058】
(ソフトウェア構成)
図6を参照して、本実施形態に係る血圧測定装置10のソフトウェア構成の一例を説明する。図6は、血圧測定装置10のソフトウェア構成の一例を例示する。図6の例では、血圧測定装置10は、第1の心電信号測定制御部601、第1の心電信号記憶部602、第2の心電信号測定制御部603、第2の心電信号記憶部604、特徴量パラメータ算出部35、脈波測定制御部606、脈波信号記憶部607、脈波伝播時間算出部37、血圧値算出部38、第1の血圧値記憶部610、血圧測定制御部611、第2の血圧値記憶部612、表示制御部613、指示入力部614、及び較正部615を備える。第1の心電信号測定制御部601、第2の心電信号測定制御部603、特徴量パラメータ算出部35、脈波測定制御部606、脈波伝播時間算出部37、血圧値算出部38、血圧測定制御部611、表示制御部613、指示入力部614、及び較正部615は、血圧測定装置10の制御部501が記憶部505に記憶されたプログラムを実行することによって下記の処理を実行する。制御部501がプログラムを実行する際は、制御部501は、プログラムをRAM503に展開する。そして、制御部501は、RAM503に展開されたプログラムをCPU502により解釈及び実行して、各構成要素を制御する。第1の心電信号記憶部602、第2の心電信号記憶部604、脈波信号記憶部607、第1の血圧値記憶部610、及び第2の血圧値記憶部612は、記憶部505により実現される。
【0059】
第1の心電信号測定制御部601は、第1の心電信号を取得するためにスイッチ回路333を制御する。具体的には、第1の心電信号測定制御部601は、6つの内部電極312の中から2つの内部電極312を選択するためのスイッチ信号を生成し、このスイッチ信号をスイッチ回路333に与える。第1の心電信号測定制御部601は、選択した2つの内部電極312を用いて得られた電位差信号を取得し、取得された電位差信号の時系列データを第1の心電信号として第1の心電信号記憶部602に記憶させる。
【0060】
第1の心電信号測定制御部601は、電極選択部として動作し、心電信号を取得するのに最適な内部電極対を決定する。電極対選択は、例えば、ユーザが血圧測定装置10を左上腕に装着した際に実行される。例えば、第1の心電信号測定制御部601は、内部電極の全ての可能な対それぞれについて心電信号を取得し、R波の振幅が最も大きい心電信号を提供する内部電極対を最適な電極対として決定する。その後は、第1の心電信号測定制御部601は、最適な内部電極対を用いて第1の心電信号を取得する。
【0061】
第2の心電信号測定制御部603は、1つの内部電極312と外部電極32とを用いて得られた電位差信号を取得し、取得された電位差信号の時系列データを第2の心電信号として第2の心電信号記憶部604に記憶させる。第2の心電信号は、特徴量パラメータを算出するために第1の心電信号と同期して取得される。第1の心電信号が測定される期間の少なくとも一部が、第2の心電信号が測定される期間の少なくとも一部と重なればよい。
【0062】
特徴量パラメータ算出部35は、第2の心電信号記憶部604から第2の心電信号を読み出し、第2の心電信号の波形特徴点を検出し、検出した波形特徴点を中心とする時間範囲を決定する。特徴量パラメータ算出部35は、第1の心電信号記憶部602から、第2の心電信号と同期して取得された第1の心電信号を読み出し、決定した時間範囲で、第1の心電信号において最大振幅のピーク点を検出し、検出したピーク点の振幅値を特徴量パラメータとして算出する。なお、特徴量パラメータは、検出したピーク点の振幅値に限らず、検出したピーク点の振幅値の符号(正又は負)であってもよい。
【0063】
図7を参照して、特徴量パラメータを算出する方法の一例を説明する。図7では、4つの内部電極312が示されており、これらの4つの内部電極312を区別するために内部電極312-1、312-2、312-3、312-4と表記する。2段目のグラフは、内部電極312-1、312-3を用いて取得された第1の心電信号であり、1段目のグラフは、段目の第1の心電信号と同時に取得された第2の心電信号である。4段目のグラフは、内部電極312-2、312-4を用いて取得された第1の心電信号であり、3段目のグラフは、4段目の第1の心電信号と同時に取得された第2の心電信号である。図7に示されるように、内部電極対312-1、312-3を用いて得られた第1の心電信号は、内部電極対312-2、312-4を用いて得られた第1の心電信号とは異なる波形形状を有する。内部電極対312-1、312-3を用いて得られた第1の心電信号では、R波ピーク点は正の振幅値を有する。対照的に、内部電極対312-2、312-4を用いて得られた第1の心電信号では、R波ピーク点は負の振幅値を有する。
【0064】
特徴量パラメータ算出部35は、第2の心電信号のR波ピーク点を検出し、検出したR波ピーク点の時刻を中心とした時間範囲(図7において両矢印として示される)を決定する。そして、特徴量パラメータ算出部35は、決定した時間範囲で、第1の心電信号において最大振幅のピーク点を検出し、検出したピーク点の振幅値を特徴量パラメータとして取得する。
【0065】
なお、特徴量パラメータ算出部35は、R波に限らず、Q波又はS波に対応するピーク点に関する特徴量パラメータを算出してもよい。R波は、Q波又はS波よりもはっきりと現れるので、R波に対応するピーク点は、Q波又はS波に対応するピーク点よりも正確に特定することができる。このため、好ましくは、特徴量パラメータ算出部35は、R波ピーク点に関する特徴量パラメータを算出する。
【0066】
図6を再び参照すると、脈波測定制御部606は、脈波信号を取得するために通電及び電圧検出回路363を制御する。具体的には、脈波測定制御部606は、電極362A、362D間に電流を流すよう通電及び電圧検出回路363に指示し、電極362A、362D間に電流を流した状態で検出された電極362B、362C間の電圧を示す検出信号を取得する。脈波測定制御部606は、検出信号の時系列データを脈波信号として脈波信号記憶部607に記憶させる。
【0067】
脈波伝播時間算出部37は、第1の心電信号記憶部602から、最適な内部電極対を用いて取得された第1の心電信号を読み出し、脈波信号記憶部607から脈波信号を読み出し、特徴量パラメータ算出部35から特徴量パラメータを受け取る。脈波伝播時間算出部37は、特徴量パラメータを参照して第1の心電信号のR波ピーク点を検出し、第1の心電信号の検出したR波ピーク点と脈波信号の立ち上がり点との間の時間差に基づいて、脈波伝播時間を算出する。脈波伝播時間算出部37は、特徴量パラメータに基づいてR波ピーク点が取り得る振幅値を特定することができ、それにより、第1の心電信号においてR波ピーク点を正しく検出することができる。例えば、R波ピーク点を検出する場合において、誤ってS波ピーク点を検出してしまうことがなくなる。例えば、脈波伝播時間算出部37は、図8に示されるように、第1の心電信号からR波ピーク点の時刻を検出し、脈波信号から立ち上がり点の時刻を検出し、立ち上がり点の時刻からR波ピーク点の時刻を引いた時間差を脈波伝播時間として算出する。
【0068】
R波に対応するピーク点は、心電信号の波形特徴点の一例である。心電信号の波形特徴点は、Q波に対応するピーク点であってもよく、S波に対応するピーク点であってもよい。R波はQ波又はS波と比べてはっきりとしたピークを持って現れるので、R波ピーク点の時間はより正確に特定することができる。このため、好ましくは、R波ピーク点が心電信号の波形特徴点として使用される。また、立ち上がり点は、脈波信号の波形特徴点の一例である。脈波信号の波形特徴点は、ピーク点であってもよい。
【0069】
血圧値算出部38は、脈波伝播時間算出部37により算出された脈波伝播時間と血圧算出式とに基づいて血圧値を算出する。血圧値算出部38は、例えば上記の式(1)を血圧算出式として使用する。血圧値算出部38は、算出した血圧値を時間情報に関連付けて第1の血圧値記憶部610に記憶させる。
【0070】
なお、血圧算出式は上記の式(1)に限らない。血圧算出式は、例えば、下記の式であってもよい。
SBP=B/PTT+B/PTT+B×PTT+B ・・・(2)
ここで、B、B、B、Bはパラメータである。
【0071】
血圧測定制御部611は、オシロメトリック法による血圧測定を実行するためにポンプ駆動回路406を制御する。血圧測定制御部611は、ポンプ駆動回路406を介してポンプ403を駆動する。それにより、押圧カフ401への空気の供給が開始される。押圧カフ401が膨張し、それによりユーザの左上腕が圧迫される。血圧測定制御部611は、圧力センサ402を用いてカフ圧をモニタする。血圧測定制御部611は、押圧カフ401に空気を供給する加圧過程において、圧力センサ402から出力される圧力信号に基づいて、オシロメトリック法により血圧値を算出する。血圧値は、収縮期血圧(SBP)及び拡張期血圧(DBP)を含むが、これに限定されない。血圧測定制御部611は、算出した血圧値を時間情報に関連付けて第2の血圧値記憶部612に記憶させる。血圧測定制御部611は、血圧値と同時に脈拍数を算出することができる。血圧測定制御部611は、血圧値の算出が完了すると、ポンプ駆動回路406を介してポンプ403を停止する。それにより、押圧カフ401から弁404を通じて空気が排気される。
【0072】
表示制御部613は、表示部222を制御する。例えば、表示制御部613は、血圧測定制御部611による血圧測定が完了した後に血圧測定結果を表示部222に表示させる。
【0073】
指示入力部614は、操作部221を用いてユーザから入力された指示を受け付ける。例えば、血圧測定の実行を指示する操作がなされると、指示入力部614は、血圧測定の開始指示を血圧測定制御部611に与える。血圧測定制御部611は、指示入力部614から血圧測定の開始指示を受けると、血圧測定を開始する。
【0074】
較正部615は、脈波伝播時間算出部37により得られた脈波伝播時間と血圧測定制御部611により得られた血圧値とに基づいて、血圧算出式の較正を行う。脈波伝播時間と血圧値との間の相関関係は、個人ごとに異なる。また、相関関係は、血圧測定装置10がユーザの左上腕に装着された状態に応じて変化する。例えば、同じユーザであっても、血圧測定装置10がより肩側に配置されたときと血圧測定装置10がより肘側に配置されたときとで相関関係は変化する。このような相関関係の変化を反映するために、血圧算出式の較正が行われる。血圧算出式の較正は、例えば、ユーザが血圧測定装置10を装着したときに実行される。較正部615は、例えば、脈波伝播時間の測定結果と血圧の測定結果との組みを複数得て、脈波伝播時間の測定結果と血圧の測定結果との複数の組みに基づいてパラメータA、Aを決定する。較正部615は、パラメータA、Aを決定するために、例えば、最小二乗法又は最尤法といったフィッティング法を使用する。
【0075】
なお、本実施形態では、血圧測定装置10の機能がいずれも汎用のプロセッサによって実現される例について説明している。しかしながら、機能の一部又は全部が1又は複数の専用のプロセッサにより実現されてもよい。
【0076】
[動作例]
(第1の心電信号を取得するために使用する内部電極対の選択)
ユーザが血圧測定装置10を装着すると、まず、第1の心電信号を取得するために最適な内部電極対を選択する処理が実行される。この処理では、制御部501は、第1の心電信号測定制御部601として動作する。ここでは、内部電極群31が4つの内部電極312を有するものとし、これらの4つの内部電極312を区別するために内部電極312-1、312-2、312-3、312-4と表記することとする。制御部501は、内部電極312-1、312-2を選択するためのスイッチ信号をスイッチ回路333に与え、内部電極312-1、312-2の対を用いて第1の心電信号を取得する。次に、制御部501は、内部電極312-1、312-3を選択するためのスイッチ信号をスイッチ回路333に与え、内部電極312-1、312-3の対を用いて第1の心電信号を取得する。同様にして、制御部501は、内部電極312-1、312-4の対、内部電極312-2、312-3の対、内部電極312-2、312-4の対、及び内部電極312-3、312-4の対を用いて、第1の心電信号を取得する。制御部501は、R波の振幅が最も大きい第1の心電信号が得られる内部電極対を、最適な内部電極対として決定する。
【0077】
(特徴量パラメータの算出)
図9は、血圧測定装置10が特徴量パラメータを算出する際の動作フローを示している。制御部501は、例えば、上記の選択処理が完了した直後に特徴量パラメータの算出を開始する。また、制御部501は、操作部221からユーザが脈波伝播時間に基づく血圧測定の開始を指示したことを表す操作信号を受け取り、それに応答して脈波伝播時間に基づく血圧測定を開始する前に、特徴量パラメータの算出を実行してもよい。すなわち、図10のステップS21とステップS22との間に図9に示される処理が実行されてもよい。
【0078】
図9のステップS11では、制御部501は、右手で外部電極32に触るようにユーザに指示する。ここでは、血圧測定装置10はユーザの左上腕に装着されている。例えば、制御部501は、「右手の人差し指で本体上の電極に触れてください」というメッセージを表示部222に表示させる。メッセージは、スピーカを介して音声として出力されてもよい。
【0079】
ステップS12では、制御部501は、ユーザが外部電極32に触れているか否かを判定する。ユーザが外部電極32に触れているか否かの判定は、例えば、AFE345の出力に基づいて行うことができる。制御部501は、ユーザが外部電極32に触れていることを検出すると、ステップS13に進む。
【0080】
ステップS13では、制御部501は、第1の心電信号及び第2の心電信号を同時に取得する。例えば、制御部501は、第1の心電信号測定制御部601として動作し、最適な内部電極対を用いて第1の心電信号を取得する。さらに、制御部501は、第2の心電信号測定制御部603として動作し、内部電極312と外部電極32とを用いて第2の心電信号を取得する。
【0081】
ステップS14では、制御部501は、特徴量パラメータ算出部35として動作し、第2の心電信号に基づいて、第1の心電信号のR波ピーク点に関する特徴量パラメータを算出する。例えば、制御部501は、第2の心電信号のR波ピーク点を検出し、検出したR波ピーク点に基づいて時間範囲を決定し、決定した時間範囲で第1の心電信号においてピーク点を検出し、検出したピーク点の振幅値を特徴量パラメータとして算出する。
【0082】
(脈波伝播時間に基づく血圧測定に使用される血圧算出式の較正)
次に、血圧算出式の較正が実行される。血圧算出式に含まれるパラメータの数をNとすると、脈波伝播時間の測定値と血圧の測定値との組みがN組み以上必要となる。上記の血圧算出式(1)は2つのパラメータA、Aを有する。この場合、例えば、制御部501は、ユーザの安静時に、脈波伝播時間の測定値及び血圧の測定値の組みを取得する。制御部501は、ユーザに運動を行わせるなどしてユーザの血圧を変動させた後に、脈波伝播時間の測定値及び血圧の測定値の組みを取得する。これにより、脈波伝播時間の測定値と血圧の測定値との組みが2組み取得される。制御部501は、較正部615として動作し、取得された脈波伝播時間の測定値と血圧の測定値との2つの組みに基づいてパラメータA、Aを決定する。血圧算出式の較正が終了した後に、脈波伝播時間に基づく血圧測定が実行可能となる。
【0083】
(脈波伝播時間に基づく血圧測定)
図10は、血圧測定装置10が脈波伝播時間に基づく血圧測定を行う際の動作フローを示している。
【0084】
図10のステップS21では、制御部501は、脈波伝播時間に基づく血圧測定を開始する。例えば、制御部501は、操作部221からユーザが脈波伝播時間に基づく血圧測定の開始を指示したことを表す操作信号を受け取り、それに応答して血圧測定を開始する。また、制御部501は、血圧算出式の較正が完了したことに応答して脈波伝播時間に基づく血圧測定を開始してもよい。
【0085】
ステップS22では、制御部501は、第1の心電信号測定制御部601として動作し、最適な2つの内部電極312を用いて第1の心電信号を取得する。ステップS23では、制御部501は、脈波測定制御部606として動作し、脈波センサを用いて脈波信号を取得する。ステップS21の処理とステップS22の処理は並行して実行される。
【0086】
ステップS24では、制御部501は、脈波伝播時間算出部37として動作し、ステップS22で取得された第1の心電信号と、ステップS23で取得された脈波信号と、図9に示される処理により取得された特徴量パラメータと、に基づいて、脈波伝播時間を算出する。例えば、制御部501は、特徴量パラメータを用いて第1の心電信号のR波ピーク点を検出し、検出したR波ピーク点と脈波信号の立ち上がり点との間の時間差を脈波伝播時間として算出する。
【0087】
ステップS25では、制御部501は、血圧値算出部38として動作し、上述した血圧算出式(1)を使用して、ステップS24で算出した脈波伝播時間から血圧値を算出する。制御部501は、算出した血圧値を時間情報に関連付けて記憶部505に記録する。
【0088】
ステップS26では、制御部501は、操作部221からユーザが脈波伝播時間に基づく血圧測定の終了を指示したことを表す操作信号を受け取ったか否かを判定する。制御部501が操作信号を受け取るまで、ステップS22~S25の処理が繰り返される。それにより、一心拍ごとの血圧値が記録される。制御部501は、操作信号を受け取ると、脈波伝播時間に基づく血圧測定を終了する。
【0089】
脈波伝播時間に基づく血圧測定によれば、ユーザの身体的負担が軽い状態で、血圧を長期間にわたって連続的に測定することができる。
【0090】
(オシロメトリック法による血圧測定)
図11は、血圧測定装置10がオシロメトリック法による血圧測定を行う際の動作フローを示している。オシロメトリック法による血圧測定では、押圧カフ401が徐々に加圧され、その後に減圧される。このような加圧又は減圧過程では、脈波伝播時間を正しく測定することができない。このため、オシロメトリック法による血圧測定の実行中は、図10に示した脈波伝播時間に基づく血圧測定は一時的に停止されてもよい。
【0091】
図11のステップS31では、制御部501は、オシロメトリック法による血圧測定を開始する。例えば、制御部501は、操作部221からユーザがオシロメトリック法による血圧測定の実行を指示したことを表す操作信号を受け取り、それに応答して血圧測定を開始する。
【0092】
ステップS32では、制御部501は、血圧測定制御部611として動作し、血圧測定のための初期化を行う。例えば、制御部501は、処理用メモリ領域を初期化する。そして、制御部501は、ポンプ駆動回路406を介してポンプ403を停止する。これに伴い弁404が開き、押圧カフ401内の空気が排出される。制御部501は、圧力センサ402の現時点の出力値を基準値として設定する。
【0093】
ステップS33では、制御部501は、血圧測定制御部611として動作し、押圧カフ401に加圧する制御を行う。例えば、制御部501は、ポンプ駆動回路406を介してポンプ403を駆動する。これに伴い弁404が閉じ、空気が押圧カフ401に供給される。それにより、押圧カフ401が膨張するとともに、図12に示すようにカフ圧Pcが徐々に高まる。制御部501は、圧力センサ402を用いてカフ圧Pcをモニタし、動脈容積の変動成分を表す脈波信号Pmを取得する。
【0094】
ステップS34では、制御部501は、血圧測定制御部611として動作し、この時点で取得されている脈波信号Pmに基づいて血圧値(SBP及びDBPを含む)の算出を試みる。この時点でデータ不足のために、未だ血圧値を算出できない場合は(ステップS35においてNo)、カフ圧Pcが上限圧力に達していない限り、ステップS33、S34の処理が繰り返される。上限圧力は、安全性の観点から予め定められる。上限圧力は、例えば300mmHgである。
【0095】
血圧値の算出ができた場合(ステップS35においてYes)、ステップS36に進む。ステップS36では、制御部501は、血圧測定制御部611として動作し、ポンプ駆動回路406によってポンプ403を停止する。これに伴い弁404が開き、押圧カフ401内の空気が排出される。
【0096】
ステップS37では、制御部501は、血圧測定結果を表示部222に表示させるとともに、記憶部505に記録する。
【0097】
なお、図9図10、又は図11に示した処理手順は例示であり、処理順序又は各処理の内容を適宜変更することが可能である。例えば、図11に示されるオシロメトリック法による血圧測定において、血圧値の算出は、押圧カフ401から空気が排出される減圧過程で実行されてもよい。
【0098】
[効果]
以上のように、本実施形態に係る血圧測定装置10では、内部電極群31、外部電極32、及びインピーダンス測定部361がベルト21に設けられている。このため、単にベルト21を左上腕に巻き付けることで、内部電極群31、外部電極32、及びインピーダンス測定部361をユーザに取り付けることができる。したがって、ユーザは血圧測定装置10を容易に装着することができる。
【0099】
血圧測定装置10は、外部電極32を用いて取得された第2の心電信号に基づいて、内部電極群31を用いて取得された第1の心電信号の波形特徴点に関する特徴量パラメータを算出する。脈波伝播時間を測定するときには、血圧測定装置10は、第1の心電信号及び脈波信号を取得し、特徴量パラメータを用いて第1の心電信号のR波ピーク点を検出し、検出したR波ピーク点と脈波信号の立ち上がり点との間の時間差を脈波伝播時間として算出する。特徴量パラメータを用いることにより、第1の心電信号のR波ピーク点を正しく検出することが可能になる。その結果、脈波伝播時間をより正確に測定することができるようになる。さらに、脈波伝播時間に基づく血圧測定において、血圧をより正確に測定することができるようになる。
【0100】
内部電極群31のうちの1つの内部電極が第2の心電信号を取得するために使用される。このため、第2の心電信号を取得するために専用の電極を設ける必要がなくなり、製造コストを削減することができる。
【0101】
第1の心電信号は、内部電極群31の中から選択された、R波の振幅が最も大きい第1の心電信号を提供する2つの第1の電極を用いて取得される。これにより、第1の心電信号においてR波ピーク点の時間を正確に特定することができ、脈波伝播時間をより正確に測定することができるようになる。
【0102】
心電信号の波形特徴点として、R波に対応するピーク点が使用される。心電信号においてR波はQ波又はS波よりもはっきりと現れるので、R波ピーク点の時間はより正確に特定することが可能である。その結果、特徴量パラメータを精度よく算出することができるようになる。
【0103】
第1の血圧測定部30において使用される血圧算出式は、第1の血圧測定部30とは別の測定系で得られた血圧値に基づいて較正する必要がある。本実施形態では、第2の血圧測定部40が第1の血圧測定部30と一体化されており、第2の血圧測定部40により得られた血圧値に基づいて血圧算出式が較正される。これにより、血圧測定装置10単独で血圧算出式の較正を行うことができる。このため、血圧算出式の較正を容易に行うことができる。
【0104】
脈波伝播時間に基づく血圧測定とオシロメトリック法による血圧測定とを1つのデバイスで行うことができるので、ユーザにとって利便性が高い。
【0105】
(変形例)
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。
【0106】
上述した実施形態では、内部電極のうちの1つが第1の心電信号及び第2の心電信号を取得するために使用される。これに代えて、第2の心電信号を測定するために専用の内部電極がベルト部20の内周面に設けられていてもよい。
【0107】
上述した実施形態では、脈波センサは、動脈の容積変化に伴うインピーダンスの変化を検出するインピーダンス法を採用している。なお、脈波センサは、光電法、圧電法又は電波法などの他の測定法を採用してもよい。光電法を採用する実施形態では、脈波センサは、被測定部位を通る動脈に向けて光を照射する発光素子と、その光の反射光又は透過光を検出する光検出器と、を備え、動脈の容積変化に伴う光強度の変化を検出する。圧電法を採用する実施形態では、脈波センサは、被測定部位に接するようにベルトに設けられた圧電素子を備え、動脈の容積変化に伴う圧力の変化を検出する。電波法を採用する実施形態では、被測定部位を通る動脈に向けて電波を送信する送信素子と、その電波の反射波を受信する受信素子と、を備え、動脈の容積変化に伴う送信波と反射波との間の位相ずれを検出する。
【0108】
血圧測定装置10は、内部電極312と左上腕との接触状態を調整するために、押圧カフ、押圧カフに空気を供給するポンプ、ポンプを駆動するポンプ駆動回路、及び押圧カフ内の圧力を検出する圧力センサと、をさらに備えていてもよい。この押圧カフは、ベルト21の中枢側端部218Aに設けられる。この場合、押圧カフ401は、例えば、ベルト21の中間部218Bに設けられる。
【0109】
血圧測定装置10は、インピーダンス測定部361のセンサ部362と左上腕との接触状態を調整するために、押圧カフ、押圧カフに空気を供給するポンプ、ポンプを駆動するポンプ駆動回路、及び押圧カフ内の圧力を検出する圧力センサをさらに備えていてもよい。この押圧カフは、ベルト21の末梢側端部218Cに設けられる。この場合、押圧カフ401は、例えば、ベルト21の中間部218Bに設けられる。
【0110】
外部電極32は、操作部221に含まれる、オシロメトリック法による血圧測定(第2の血圧測定部40による血圧測定)を開始する開始ボタンに設けられていてもよい。例えば、開始ボタンが導電材料で形成され、開始ボタンが外部電極32の役割を果たす。ユーザが開始ボタンを押下すると、オシロメトリック法による血圧測定が開始する。このとき、ユーザが外部電極32に触れているので、第I誘導による心電信号を取得することができ、特徴量パラメータを算出することが可能である。よって、オシロメトリック法による血圧測定を行うと同時に、特徴量パラメータを算出することができる。さらに、オシロメトリック法による血圧測定を行うことにより得られた血圧値を用いて血圧算出式を較正することもできる。すなわち、血圧算出式を較正すると同時に、特徴量パラメータを算出することができる。
【0111】
血圧測定装置10は、第2の血圧測定部40を備えていなくてもよい。血圧測定装置10が第2の血圧測定部40を備えない実施形態では、血圧算出式の較正を行うために、他の血圧計で測定することで得られた血圧値を血圧測定装置10に入力する必要がある。
【0112】
脈波伝播時間の測定に関与する部分が単独の装置として実現されてもよい。一実施形態では、ベルト部20、内部電極群31、外部電極32、第1の心電信号取得部33、第2の心電信号取得部34、特徴量パラメータ算出部35、脈波信号取得部36、及び脈波伝播時間算出部37を備える脈波伝播時間測定装置が提供される。例えば、脈波伝播時間測定装置が脈波伝播時間の測定結果を外部装置に送信し、外部装置が脈波伝播時間の測定結果から血圧値を算出してもよい。
【0113】
被測定部位は、上腕に限らず、心電信号と脈波信号とを取得することが可能な他の部位、例えば、手首、大腿、足首などであってもよい。
【0114】
本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【符号の説明】
【0115】
10…血圧測定装置
20…ベルト部
21…ベルト
22…本体
210A…内布
210B…外布
211…外周面
212…内周面
213…ループ面
214…フック面
221…操作部
222…表示部
30…第1の血圧測定部
31…内部電極群
32…外部電極
33…第1の心電信号取得部
34…第2の心電信号取得部
35…特徴量パラメータ算出部
36…脈波信号取得部
37…脈波伝播時間算出部
38…血圧値算出部
312…内部電極
333…スイッチ回路
334…減算回路
335…AFE
344…減算回路
345…AFE
361…インピーダンス測定部
362…センサ部
362A~362D…電極
363…通電及び電圧検出回路
40…第2の血圧測定部
401…押圧カフ
402…圧力センサ
403…ポンプ
404…弁
405…発振回路
406…ポンプ駆動回路
501…制御部
502…CPU
503…RAM
504…ROM
505…記憶部
506…電池
507…通信部
601…第1の心電信号測定制御部
602…第1の心電信号記憶部
603…第2の心電信号測定制御部
604…第2の心電信号記憶部
606…脈波測定制御部
607…脈波信号記憶部
610…第1の血圧値記憶部
611…血圧測定制御部
612…第2の血圧値記憶部
613…表示制御部
614…指示入力部
615…較正部
70…左上腕
71…上腕骨
72…上腕動脈
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12