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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】繊維強化樹脂材の板状部材
(51)【国際特許分類】
   B62K 19/16 20060101AFI20220906BHJP
   B62K 3/02 20060101ALI20220906BHJP
   B62K 19/24 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
B62K19/16
B62K3/02
B62K19/24
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018163445
(22)【出願日】2018-08-31
(65)【公開番号】P2019064579
(43)【公開日】2019-04-25
【審査請求日】2021-05-11
(31)【優先権主張番号】P 2017192792
(32)【優先日】2017-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】波多野 大督
(72)【発明者】
【氏名】江川 貴久
(72)【発明者】
【氏名】北川 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】手島 雅智
【審査官】塩澤 正和
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2005/068284(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/105716(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/069108(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/104889(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/090848(WO,A1)
【文献】特開平09-323690(JP,A)
【文献】国際公開第2013/011852(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0239856(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62K 19/16
B62K 3/02
B62K 19/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維強化樹脂により形成されている板状部材において、
前記繊維強化樹脂は、10mm以上の長さを有する繊維を有する不連続繊維強化樹脂であり、
前記板状部材の平面部には、穴部が設けられ、
前記穴部の近くに位置する前記平面部の外周端部には、側壁が一体的に形成され、
前記側壁は、前記穴部の開口縁における前記外周端部に近い方の部位と、前記外周端部との間の領域の外周に沿って延びて配置されており、
前記板状部材は、鞍状型車両のメインフレームに取り付けられるシートレールであり、
前記穴部は、前記平面部の前部における半円状の先端部から車両後方に間隔をあけた位置に設けられ、前記穴部の中心は、前記平面部の車両上下方向幅の中央に位置しており、
前記穴部は、締結部材によって前記シートレールを前記メインフレームに締結するための締結部として構成され、
前記平面部の前部の車両幅方向内側は、前記メインフレームに当接し、
前記側壁は、車幅方向外側で、前記締結部材の前記穴部への挿入方向とは反対側の方向に突出していることを特徴とする繊維強化樹脂材の板状部材。
【請求項2】
前記側壁は、前記穴部の中心位置に対応する位置まで、さらに延びていることを特徴とする請求項1に記載の繊維強化樹脂材の板状部材。
【請求項3】
前記側壁は、前記開口縁における前記外周端部に遠い方の部位に対応する位置まで、さらに延びていることを特徴とする請求項2に記載の繊維強化樹脂材の板状部材。
【請求項4】
前記側壁は、前記シートレールの平面部の両面側に設けられていることを特徴とする請求項に記載の繊維強化樹脂材の板状部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化樹脂により形成されている板状部材に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に開示されているように、鞍状型の2輪車両における乗車用シート
を支持するリヤフレームを、強度を維持しつつ軽量化するために、長繊維を有する繊維強
化樹脂により形成される構造が知られている。長繊維とは、例えば10mm以上の長さを
有する繊維で、長繊維を有する繊維強化樹脂は、通常、射出成形では成形できないもので
あり、例えばプレス成形により形成される。
【0003】
特許文献1に開示されているリヤフレームの構造では、左右の繊維強化樹脂製の側壁パ
ネルをクロス部材で締結し、繊維強化樹脂製の側壁パネルに設けられた締結孔を介して、
メインフレームにボルト締結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】WO2015-033425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
長繊維を有する不連続繊維強化樹脂を用いてプレス成形によって例えば板状の部材を成
形する場合、板状部材の端部では、プレス成形時に、樹脂と長繊維が共に流動し、端部に
対応する金型とぶつかり、行き場を失った長繊維がうねることがある。ここでのうねりと
は、長繊維が層状に流れずに、乱流のように流れてしまう現象である。
【0006】
長繊維がうねった部位では、板状部材の表層に長繊維の存在しない樹脂面が、露出する
可能性がある。このような部位は、強度が低下してしまう。板状部材の先端部の近傍に、
ボルト等の締結用の穴部を設けた場合、当該穴部の周囲では、所定の強度を確保できない
部位が発生する可能性がある。
【0007】
特許文献1に開示された側壁パネルにおいても、不連続繊維強化樹脂を用いてプレス成
形で作製した場合、製品端部に設けられた締結孔の周辺は、長繊維がうねることによって
強度が低下する可能性がある。
【0008】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、長繊維を有す
る繊維強化樹脂の板状部材の先端部の近傍において、長繊維のうねりによる強度低下を抑
制することが可能な繊維強化樹脂材の板状部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため本発明に係る板状部材は、繊維強化樹脂により形成されている。当該板状部材において、前記繊維強化樹脂は、10mm以上の長さを有する繊維を有する不連続繊維強化樹脂であり、前記板状部材の平面部には、穴部が設けられ、前記穴部の近くに位置する前記平面部の外周端部には、側壁が一体的に形成され、前記側壁は、前記穴部の開口縁における前記外周端部に近い方の部位と、前記外周端部との間の領域の外周に沿って延びて配置されており、前記板状部材は、鞍状型車両のメインフレームに取り付けられるシートレールであり、前記穴部は、前記平面部の前部における半円状の先端部から車両後方に間隔をあけた位置に設けられ、前記穴部の中心は、前記平面部の車両上下方向幅の中央に位置しており、前記穴部は、締結部材によって前記シートレールを前記メインフレームに締結するための締結部として構成され、前記平面部の前部の車両幅方向内側は、前記メインフレームに当接し、前記側壁は、車幅方向外側で、前記締結部材の前記穴部への挿入方向とは反対側の方向に突出している。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、長繊維を有する繊維強化樹脂材の板状部材の先端部の近傍において、
長繊維のうねりによる強度低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る繊維強化樹脂材の板状部材の第1の実施形態を示す斜視図である。
図2図1の第1の変形例を示す斜視図である。
図3図1の第2の変形例を示す斜視図である。
図4】本発明に係る繊維強化樹脂材の板状部材の第2の実施形態を示す斜視図である。
図5】本発明に係る繊維強化樹脂材の板状部材の第3の実施形態を示す斜視図である。
図6図5のA部を拡大して示す拡大斜視図である。
図7図6のB-B矢視断面図である。
図8】図本発明に係る繊維強化樹脂材の板状部材の第4の実施形態を示す斜視図である。6の変形例を示す斜視図である。
図9図8のC-C矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る繊維強化樹脂材の板状部材1について、図面(図1図9)を参照
して説明する。
【0013】
[第1の実施形態]
先ず、本発明に係る繊維強化樹脂材の板状部材の基本構成となる第1の実施形態につい
て、図1を用いて説明する。図1は、板状部材1の第1の実施形態を示す斜視図である。
【0014】
先ず、本実施形態の板状部材1の材質について説明する。本実施形態の板状部材1は、
長繊維を有する不連続繊維強化樹脂材により形成されている。本実施形態で用いている樹
脂材料は、母材に熱硬化性樹脂を用いた炭素繊維強化樹脂CFRP(Carbon Fiber Reinforced
Plastics)や、熱可塑性の炭素繊維強化樹脂CFRTP(Carbon Fiber Reinforced Thermo Pla
stics)である。
【0015】
繊維強化樹脂に用いられる繊維は、炭素繊維、ガラス繊維、ポリアミド繊維、ポリエチ
レン繊維等の種々の繊維を用いることができる。繊維強化樹脂には、連続繊維強化樹脂と
不連続繊維強化樹脂とがある。連続繊維強化樹脂とは、例えば、連続した炭素繊維を一方
向に並べて樹脂を含浸させて得られる樹脂のことである。この連続繊維強化樹脂において
は、炭素繊維が配向する方向の機械的特性(剛性等)は高いものの、炭素繊維が配向する
方向と直交する方向の機械的特性は低い。
【0016】
これに対して、不連続繊維強化樹脂とは、例えば、ある程度の長さを有する不連続な繊
維に樹脂を含浸させて得られる樹脂のことである。このような不連続繊維強化樹脂は、炭
素繊維毎に炭素繊維の配向方向が異なるため、機械的特性の高低に方向性を持たない。ま
た、連続繊維樹脂に比べて成形を容易に行うことができる。
【0017】
以下、不連続繊維強化樹脂により形成された板状部材1の形状について図1を用いて説
明する。板状部材1は、図1に示すように、平面部2と、穴部3と、側壁5を有している
。平面部2は、所定の面積の主面2aを有する平板状である。本実施形態では、一方向(
図1における左右方向)に延びる平板である。平面部2の長手方向の一方端(図1の左方
端)は、長手方向に直交するように直線状に延びている直線状端部2bである。また、長
手方向の他方端(図1の右方端)は、半円状端部2cである。すなわち、板状部材1は、
長方形状の一方の端部が半円状に形成されている。
【0018】
穴部3は、平面部2の外周端部の付近に設けられている。本実施形態では、穴部3の近
くに位置する外周端部は、半円状端部2cである。この例における平面部2の先端部2d
は、半円状端部2cにおける平面部2の幅方向の中央に位置している。穴部3は、円形の
貫通孔で、穴部3の中心は、半円状端部2cの先端部2dから、所定の間隔を空けて配置
されている。また、当該中心は、板状部材1の幅方向の中央に位置している。
【0019】
穴部3の中心と、半円状端部2cの先端部2dとの距離は、穴部3の中心と、直線状端
部2bとの距離よりも短い。すなわち、上記の通り、本実施形態における穴部3の周辺の
端部(穴部3の近くに位置する端部)は、半円状端部2cである。
【0020】
側壁5は、平面部2の端部に設けられ、平面部2から一方側(図1の上方側)に略垂直
に突出し、平面部2の外周に沿って延びて配置されている。側壁5は、穴部3における先
端部2dに近い方(図1の右側)の開口縁3aと、先端部2dとの間の領域に位置する平
面部2の外周端部に、外周に沿って延びて配置されている。
【0021】
この例では、半円状端部2cのほぼ全域に配置されおり、側壁5の端部5aは、穴部3
における先端部2dに近い方(図1の右側)の開口縁3aに対応する平面部2の幅方向端
部2eに配置されている。すなわち、図1に示すように、先端部2dに近位の開口縁3a
を通る幅方向の破線X1に側壁5の端部5aが配置される。また、側壁5の高さとなる平
面部2から側壁5の頂上までの長さは、平面部2の板厚よりも長ければよい。また、側壁
5と主面2aは、所定の曲率を有するR部によって接続されている。側壁5と主面2aで
構成される角部の応力集中を、当該R部によって抑制している。
【0022】
本実施形態における板状部材1は、不連続繊維強化樹脂材料をプレス成形することによ
り形成される。板状部材1の原材料をプレス成形するときに、板状部材1の先端部2dの
長繊維を、側壁5に導くことができる。先端部2dで樹脂が停滞することなく、側壁5に
導かれるため、先端部2dの近傍において長繊維のうねりが発生することを抑制できる。
よって、先端部2dの近傍の長繊維のうねりによる強度低下を抑制することが可能となる
【0023】
また、側壁5はリブとしての効果を有しており、穴部3に近い半円状端部2cの周辺の
強度を向上させることができる。その結果、先端部2dの近傍にボルト等の締結用の穴部
3を設けた場合においても、穴部3の周囲の強度を確保することができる。
【0024】
また、図2に示すように、側壁5を、穴部3の中心位置Oと、先端部2dとの間の領域
に位置する平面部2の外周端部に、配置させてもよい。この場合の側壁5の端部5aは、
穴部3の中心位置Oに対応する幅方向端部2eに配置されている。すなわち、図2に示す
ように、穴部3の中心位置Oを通る幅方向の破線X2に側壁5の端部5aが配置される。
【0025】
また、図3に示すように、側壁5を、穴部3における先端部2dと反対側(直線状端部
2b側)の開口縁3aと、先端部2dとの間の領域に位置する平面部2の外周端部に、配
置してもよい。この場合の側壁5の端部5aは、穴部3における直線状端部2bの近い方
の開口縁3aに対応する幅方向端部2eに配置されている。また、図示は省略するが、側
壁5の端部5aを、さらに直線状端部2bに近い位置に配置してもよい。
【0026】
このように、側壁5を設けることで、穴部3の周辺及び先端部2dの近傍における、長
繊維のうねりの発生が、さらに抑制されるため、穴部3の周辺における上記うねりの発生
による強度低下の抑制効果がより一層高まる。
【0027】
[第2の実施形態]
続いて、本発明に係る繊維強化樹脂材の板状部材の基本構成となる第2の実施形態につ
いて、図4を用いて説明する。図4は、本実施形態の板状部材1の斜視図である。本実施
形態は、第1の実施形態(図1)の変形例であって、第1の実施形態と同一部分または類
似部分には、同一符号を付して、重複説明を省略する。
【0028】
本実施形態の平面部2は、長方形状で、図4の左右方向が長手方向となる。平面部2の
長手方向の両端は、長手方向に直交するように直線状に延びている。
【0029】
穴部3は、第1の実施形態と同様に、平面部2の図4の右方の先端部2dから所定の間
隔を空けた位置に設けられている。この例における平面部2の先端部2dは、図4の右方
の長手方向端部である。穴部3の中心は、板状部材1の幅方向の中央に位置している。穴
部3の中心と先端部2dとの距離は、穴部3の中心と、図4の左方の長手方向端部との距
離よりも短い。
【0030】
側壁5は、第1の実施形態と同様に、平面部2の外周端部に設けられ、穴部3における
先端部2dに近い方(図4の右側)の開口縁3aと、先端部2dとの間の領域に位置する
平面部2の外周端部に、外周に沿って延びて配置されている。この例では、側壁5は、図
4における右方の長手方向端部2fと、この長手方向端部2fの両側端から連続して延び
る幅方向端部2eに配置されている。幅方向端部2eに位置する側壁5は、長手方向端部
2fから、穴部3の先端部2dに近い方の開口縁3aに対応する平面部2の幅方向端部2
eまで延びている。
【0031】
このように構成することにより、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。ま
た、本実施形態の側壁5は、第1の実施形態と同様に、穴部3の中心位置と、先端部2d
との間の領域に位置する平面部2の外周端部に配置されてもよく、穴部3における先端部
2dと反対側(直線状端部2b側)の開口縁3aと、先端部2dとの間の領域に位置する
平面部2の外周端部に配置されてもよい。また側壁5の端部5aを、さらに直線状端部2
bに近い位置に配置してもよい。
【0032】
[第3の実施形態]
続いて、本発明に係る繊維強化樹脂材の板状部材の第3の実施形態について、図5~図
7を用いて説明する。本実施形態は、第1の実施形態で説明した板状部材1の構成を、例
えば2輪の鞍状型車両のメインフレーム10に取り付けられているシートレール11に用
いた例について説明する。
【0033】
シートレール11は、鞍状型車両のシート部材を車体に取り付けるためのフレーム部材
で、車体骨格を構成している。本実施形態におけるシートレール11は、図5に示すよう
に、車幅方向に間隔を空けて対をなすように配置されており、車両前後方向に延びている
。また、シートレール11は車両後方に向かうに従い車両上方に傾斜している。
【0034】
ここで、シートレール11の構成について説明する。シートレール11は、平面部12
と側壁15を有しており、平面部12は、車幅方向を臨む面を有する板状の部分で、車両
前後方向に延びている。この例では、平面部12は、図5に示すように、車両後方に向か
うに従い車両上方に向かって傾斜配置されている。
【0035】
平面部12における車幅方向を臨む主面12aは、主面12aにおける下部が車幅方向
外側に膨出している。また、主面12aの上側の前部には、鞍状型車両のメインフレーム
10に、シートレール11をボルト(締結部材)19等により接合するための締結部13
が設けられている。すなわち、第1の実施形態で説明した穴部3(図1)は、本実施形態
の締結部13として構成されている。本実施形態における締結部13は、車幅方向両側(
左右)のそれぞれに2つずつ設けられている。車幅方向の一方側の2つの締結部13は、
車両上下方向に間隔を空けて配置されている。
【0036】
上側の締結部13は、図5図7に示すように、平面部12における上下方向幅が小さ
い前部で、先端の部分に設けられており、車幅方向に貫通する円形の貫通孔14を有して
いる。貫通孔14は、平面部12の前部における先端部12dから車両後方に所定の間隔
を空けた位置に設けられている。この例における平面部12の先端部12dは、図6に示
すように、第1の実施形態と同様に、半円状端部12cの先端であり、半円状端部12c
における平面部12の車両上下方向幅の略中央に位置している。
【0037】
貫通孔14の中心は、半円状端部12cの先端部12dから、車両後方に所定の間隔を
空けて配置されている。また、当該中心は、平面部12の車両上下方向幅の中央に位置し
てもよいし、当該中央から上方または下方にシフトしてもよい。
【0038】
また、下側の締結部13は、シートレール11の下側の角部に配置され、上側の締結部
13と同様に形成されている。
【0039】
側壁15は、平面部12の前部における外周端部に設けられ、平面部12の主面12a
から車幅方向外側に略垂直に突出し、外周端部に沿って延びている。側壁15は、貫通孔
14における前側の開口縁3aと、先端部12dとの間の領域に位置する外周端部に、外
周に沿って延びて配置されている。この例では、側壁15は、半円状端部12cのほぼ全
域に配置され、さらに、穴部3よりも車両後方まで延びている。
【0040】
ここで、締結部13が、メインフレーム10の側面に締結されている状態について説明
する。図6に示すように、メインフレーム10の側面10bには、締結部13の貫通孔1
4に連通するボルト孔10aが形成されている。当該ボルト孔10aに締結部13の貫通
孔14が連通するように、平面部12の前部における当接面12gをメインフレーム10
の側面10bに当接させる。この状態で、貫通孔14にブッシュ19aを介してボルト1
9を挿入し、ボルト孔10aに螺合させ、メインフレーム10の側面10bに、シートレ
ール11が締結される。
【0041】
シートレール11の後方に荷重が作用すると、シートレール11とメインフレーム10
を締結する締結部13に、荷重が伝わる。一方、シートレール11をプレス成形するとき
に、当該締結部13に長繊維のうねりが発生すると、当該締結部13の強度が低下する可
能性がある。当該うねりにより締結部13の強度が低下すると、締結部13に伝わる荷重
により締結部13が破損する可能性がある。このため、シートレール11の端部に締結部
13を設置できない問題があった。これは、設計の自由度の低下を招く。
【0042】
これに対して、本実施形態のように、シートレール11に第1の実施形態で説明した板
状部材1を用いると、シートレール11をプレス成形により形成するときに、締結部13
の貫通孔14の周辺における長繊維を、側壁15に導くことができる。締結部13で樹脂
が停滞することなく、側壁15に導かれるため、締結部13の近傍において長繊維のうね
りが発生することを抑制できる。これにより、締結部13における長繊維のうねりによる
強度低下を抑制することが可能となる。また、側壁15はリブとして機能するため、締結
部13の剛性をさらに高めることができる。
【0043】
その結果、メインフレーム10の後方に荷重が作用しても、シートレール11とメイン
フレーム10を締結する締結部13が、上述の長繊維のうねりを原因として破損すること
を抑制でき、締結部13に荷重が作用しても破損を抑制できる。
【0044】
そのため、長繊維を有する不連続繊維強化樹脂である繊維強化樹脂材料を用いても、シ
ートレール11の前部に、締結部13を設置することができ、シートレール11をメイン
フレーム10への取付部品として成立させることが可能となる。
【0045】
[第4の実施形態]
続いて、本発明に係る繊維強化樹脂材の板状部材の第4の実施形態について、図8及び
図9を用いて説明する。本実施形態は、第3の実施形態(図5図7)の変形例であって
、第3の実施形態と同一部分または類似部分には、同一符号を付して、重複説明を省略す
る。
【0046】
本実施形態のシートレール11は、図8及び図9に示すように、側壁15a,15bが
、平面部12の両面側に設けられている。すなわち、本実施形態のシートレール11は、
平面部12の主面12aから車幅方向外側に突出する外側壁15aと、主面12aから車
幅方向内側に突出する内側壁15bを有している。外側壁15a及び内側壁15bが設け
られているため、第1~第3の実施形態の効果をさらに高めることができる。
【0047】
プレス成形時に長繊維が導入される側壁15a,15bの体積が、第3の実施形態の側
壁15に比べて増えるため、当該長繊維が貫通孔14の周辺や先端部12dで流動しやす
くなり、貫通孔14の周辺における長繊維によるうねりの発生が抑制され、その結果、締
結部13の強度が低下することが抑制される。
【0048】
内側壁15bは、図9に示すように、メインフレーム10に係合している。そのためメ
インフレーム10に形状に適合するように傾斜させている。したがって、外側壁15aと
内側壁15bは、対称である必要はない。このように構成することで、内側壁15bは、
シートレール11とメインフレーム10を接合するときに、位置決めとして機能する。そ
のため、内側壁15bを設けることによって、シートレール11をメインフレーム10に
取り付ける時間を短縮することができる。
【0049】
上記の第1~第4の実施形態の説明は、本発明を説明するための例示であって、特許請
求の範囲に記載の発明を限定するものではない。また、本発明の各部構成は上記実施形態
に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。
【0050】
例えば、第1及び第2の実施形態における穴部3は、貫通孔でもよいし、底部を有する
穴でもよい。底部を有する穴の場合には、例えばボルトが螺合するボルト穴とし、板状部
材1に締結される部材に貫通孔を設けるとよい。また、第3の実施形態では、シートレー
ル11に第1の実施形態の板状部材1を用いているが、これに限らない。第2の実施形態
で説明した板状部材1を、シートレール11に用いてもよい。
【0051】
また、第1及び第2の実施形態における板状部材1は、長繊維を有する不連続性繊維強
化樹脂により形成される部材であれば、シートレール以外の部材にも適用可能である。第
3及び第4の実施形態では、第1の実施形態で説明した熱可塑性のCFRPにより形成された
板状部材1を、2輪の鞍状型車両のメインフレーム10に取り付けられているシートレー
ル11に用いた例について説明しているが、これに限らない。例えば、熱可塑性のCFRPを
、自動車のフロア部分に相当するスタックフレーム等に用いることもできる。
【符号の説明】
【0052】
1 板状部材
2 平面部
2a 主面
2b 直線状端部
2c 半円状端部
2d 先端部
2e 幅方向端部
3 穴部
3a 開口縁
5 側壁
10 メインフレーム
10a ボルト孔
10b 側面
11 シートレール
12 平面部
12c 半円状端部
12d 先端部
12g 当接面
13 締結部
14 貫通孔
15 側壁
15a 外側壁
15b 内側壁
19 ボルト(締結部材)
19a ブッシュ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9