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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/03 20060101AFI20220906BHJP
   B60C 11/13 20060101ALI20220906BHJP
   B60C 11/12 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
B60C11/03 100A
B60C11/13 C
B60C11/12 D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018198696
(22)【出願日】2018-10-22
(65)【公開番号】P2020066279
(43)【公開日】2020-04-30
【審査請求日】2021-08-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 哲二
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-030583(JP,A)
【文献】特開2010-247626(JP,A)
【文献】特開平09-300918(JP,A)
【文献】特開2008-222162(JP,A)
【文献】特開2010-042786(JP,A)
【文献】特開2014-151716(JP,A)
【文献】特開2015-013513(JP,A)
【文献】特開平01-132406(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/03
B60C 11/13
B60C 11/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの主溝に区画され且つ接地面を形成する陸部と、
所定方向に沿って延び且つ前記接地面よりも窪む凹部と、を備え、
前記凹部は、前記接地面との間に第1エッジを形成する第1鉛直面と、前記所定方向に直交する前記凹部の幅方向に延びる底平面と、を有し、
前記底平面は、互いに高さが異なり且つ前記所定方向に沿って配列された少なくとも2つの平面領域を有し、
前記凹部は、更に、前記2つの平面領域を接続し且つ高い方の平面領域との間に第3エッジを形成する第2鉛直面を有し、
前記第3エッジは、タイヤ幅方向及びタイヤ周方向の両方に対して傾斜しており、
前記底平面は、前記所定方向における第1側の端に前記第3エッジを有し、前記第3エッジが前記所定方向における第2側の端よりもタイヤ径方向外側に高くなるように前記底平面が傾斜しており、
前記所定方向に沿って隣接する前記少なくとも2つの前記平面領域は、タイヤ径方向における位置が重複している、空気入りタイヤ。
【請求項2】
少なくとも1つの主溝に区画され且つ接地面を形成する陸部と、
所定方向に沿って延び且つ前記接地面よりも窪む凹部と、を備え、
前記凹部は、前記接地面との間に第1エッジを形成する第1鉛直面と、前記所定方向に直交する前記凹部の幅方向に延びる底平面と、を有し、
前記底平面は、互いに高さが異なり且つ前記所定方向に沿って配列された少なくとも2つの平面領域を有し、
前記凹部は、更に、前記2つの平面領域を接続し且つ高い方の平面領域との間に第3エッジを形成する第2鉛直面を有し、
前記第3エッジは、タイヤ幅方向及びタイヤ周方向の両方に対して傾斜しており、
前記第1エッジから前記底平面までの前記凹部の最大深さは、1.5mm以下であり、
前記第2鉛直面の深さ方向の長さは、0.5mm以上1.5mm以下である、空気入りタイヤ。
【請求項3】
少なくとも1つの主溝に区画され且つ接地面を形成する陸部と、
所定方向に沿って延び且つ前記接地面よりも窪む凹部と、を備え、
前記凹部は、前記接地面との間に第1エッジを形成する第1鉛直面と、前記所定方向に直交する前記凹部の幅方向に延びる底平面と、を有し、
前記底平面は、互いに高さが異なり且つ前記所定方向に沿って配列された少なくとも2つの平面領域を有し、
前記凹部は、更に、前記2つの平面領域を接続し且つ高い方の平面領域との間に第3エッジを形成する第2鉛直面を有し、
前記第3エッジは、タイヤ幅方向及びタイヤ周方向の両方に対して傾斜しており、
前記凹部は、前記第3エッジを少なくとも2つ有し、
前記凹部の幅方向の第1側に配置されている少なくとも1つの第3エッジと、前記凹部の幅方向の第2側に配置されている少なくとも1つの第3エッジとは、平面視において所定方向に対する傾斜方向が異なる、空気入りタイヤ。
【請求項4】
平面視における前記第3エッジの長さは、2mm以上である、請求項1~3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記凹部の幅方向の中央部には、サイプが形成されている、請求項1~のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
スタッドレスタイヤ、オールシーズンタイヤなどの冬用タイヤには、雪上路面における性能の向上が望まれる。種々の性能の中でも、スノートラクション性能の向上が望まれる。
【0003】
特許文献1は、スノー性能及びドライ性能を向上させるために、ラグ溝の底部にジグザグ状のサイプを形成することを開示している。
【0004】
特許文献2は、偏摩耗の抑制及びウエット性能の向上のために、サイプの開口部に幅広部を形成することを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-187517号公報
【文献】特開2004-330812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1によれば、ラグ溝によりスノートラクションを得られるとの記載があるが、スノートラクションを得るための新たな手法が望まれる。
【0007】
本開示の目的は、スノートラクション性能を向上させた空気入りタイヤを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の空気入りタイヤは、
少なくとも1つの主溝に区画され且つ接地面を形成する陸部と、
所定方向に沿って延び且つ前記接地面よりも窪む凹部と、を備え、
前記凹部は、前記接地面との間に第1エッジを形成する第1鉛直面と、前記所定方向に直交する前記凹部の幅方向に延びる底平面と、を有し、
前記底平面は、互いに高さが異なり且つ前記所定方向に沿って配列された少なくとも2つの平面領域を有し、
前記凹部は、更に、前記2つの平面領域を接続し且つ高い方の平面領域との間に第3エッジを形成する第2鉛直面を有し、
前記第3エッジは、タイヤ幅方向及びタイヤ周方向の両方に対して傾斜している、空気入りタイヤ。
【0009】
このように、凹部を構成する底平面における少なくとも2つの平面領域が所定方向に高さを異ならせて配列され、前記少なくとも2つの平面領域が第2鉛直面により接続されており、いわゆる段差が形成されている。第3エッジがタイヤ幅方向及びタイヤ周方向の両方に対して傾斜しているので、エッジ効果により、車両でいえば前後方向及び左右方向のスノートラクション性能を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態のトレッドパターンを示す平面図
図2A】凹部及びサイプが形成された陸部を示す平面図
図2B】サイプの幅方向中央におけるサイプの形状をタイヤ幅方向に投影した図
図3A図2におけるA1-A1部位の断面図
図3B図2におけるA2-A2部位の断面図
図4A】陸部のタイヤ子午線断面
図4B】変形例における陸部のタイヤ子午線断面
図5】凹部及びサイプの斜視図
図6A図5におけるA3-A3部位の断面図
図6B】変形例におけるA3-A3部位の断面図
図6C】変形例における凹部及びサイプが形成された陸部を示す平面図
図7】変形例におけるA1-A1部位の断面図
図8】変形例における凹部及びサイプが形成された陸部を示す平面図
図9A】変形例におけるA1-A1部位断面図
図9B】変形例におけるA1-A1部位断面図
図10】第2実施形態のトレッドパターンを示す平面図
図11】第2実施形態の凹部及びサイプが形成された陸部を示す平面図
図12A図10におけるA1-A1部位の断面図
図12B】変形例におけるA1-A1部位の断面図
図13】第2実施形態の凹部及びサイプの斜視図
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1実施形態>
以下、本開示の第1実施形態について説明する。図において、「CD」はタイヤ周方向を意味し、「WD」はタイヤ幅方向を意味する。各図は、タイヤ新品時の形状を示す。
【0012】
第1実施形態の空気入りタイヤは、図示を省略するが、通常の空気入りタイヤと同様に、一対のビードコアと、ビードコアを巻回しトロイダル形状を成すカーカスと、カーカスのクラウン部のタイヤ径方向外側に配置されたベルト層と、ベルト層のタイヤ径方向外側に配置されたトレッド部と、を備える。
【0013】
図1に示すように、トレッド部は、タイヤ周方向CDに延びる複数の主溝1(1a,1b,1c,1d)と、2つの主溝1a,1bに区画され且つ接地面5を形成する陸部2aと、を有する。トレッド部は、更に、2つの主溝(1b,1c)に区画され且つタイヤ赤道CLに配置される陸部2bと、2つの主溝(1c,1d)に区画される陸部2cと、タイヤ幅方向WDの最も外側にある主溝1a[1d]に区画される陸部2d[2e]と、を有する。主溝は、タイヤ周方向に延びていれば、タイヤ周方向に一致していても傾斜してもよく、ジグザグ状であってもよい。主溝の数は適宜変更可能である。本実施形態において、主溝1はタイヤ赤道CLを避けて配置された4本溝であるが、これに限定されない。例えば、タイヤ赤道CLに配置された第1主溝と、第2主溝とにより区画される陸部に対して本開示を提供してもよい。
【0014】
接地面5は、正規リムにリム組みし、正規内圧を充填した状態でタイヤを平坦な路面に垂直に置き、正規荷重を加えたときの路面に接地する面を意味する。正規リムは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤごとに定めるリムである。 JATMAであれば標準リム、TRAであれば「Design Rim」、ETRTOであれば「Measuring Rim」となる。
【0015】
正規内圧は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤごとに定めている空気圧である。JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、ETRTOであれば「INFLATION PRESSURE」であるが、タイヤが乗用車用である場合には180kPaとする。
【0016】
正規荷重は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤごとに定めている荷重である。JATMAであれば最大負荷能力、TRAであれば上記の表に記載の最大値、ETRTOであれば「LOAD CAPACITY」であるが、タイヤが乗用車用である場合には内圧180kPaの対応荷重の85%とする。
【0017】
図1及び図2Aに示すように、陸部2aには、2つの主溝1a,1bのうち一方の主溝から陸部2aのタイヤ幅方向中央側に向けて延びるサイプ4が形成されている。図2Aに示すように、サイプ4の幅W1は0.3~1.2mmが好ましい。図2Bは、サイプ4の幅方向中央におけるサイプ4の形状をタイヤ幅方向WDに投影した図である。図2Bに示すように、サイプ4の深さD1は2~7mmが好ましい。本実施形態において、サイプ4は平面視にて1つの直線状に延びているが、これに限定されない。例えば、平面視にて屈曲する複数の直線に沿って延びていてもよい。
【0018】
図3A及び図3Bは、サイプ4及び凹部3の幅方向に沿った断面図である。図3A及び図3Bに示すように、サイプ4の開口部を形成する開口側壁4aは、タイヤ径方向RDに平行な鉛直方向に沿っている。なお、本実施形態では、サイプ4を構成する開口側壁4aだけでなく、側壁の全体が鉛直方向に沿っているが、これに限定されない。サイプ4の開口部を形成する開口側壁4aが鉛直方向に沿っていれば、サイプの中央部又は下部の形状は、適宜変更可能である。
【0019】
図1図2A図3A及び図3Bに示すように、陸部2aには、接地面5よりも窪む凹部3が形成されている。凹部3は、サイプ4の幅方向両側に形成されている。凹部3は、2つの主溝1a,1bのうち一方の主溝から陸部2aのタイヤ幅方向中央側に向けて延びている。第1実施形態では、凹部3は、タイヤ幅方向WD及びタイヤ周方向CDの両方に対して傾斜しているが、これに限定されない。凹部3が延びる方向は、タイヤ周方向CDに対して傾斜していればよく、タイヤ幅方向WDと一致していてもよい。凹部3は、第1端が主溝1に開口し、第2端が陸部2a内で終端している。図2Aに示すように、凹部3のタイヤ幅方向の長さL1は、陸部2aのタイヤ幅方向の長さL2の50%~90%あることが好ましい。後述する第1エッジ33及び第2エッジ34によるトラクションが発揮されやすくなるからである。
【0020】
第1主溝1a及び第2主溝1bに区画される陸部2aには、複数の凹部3が設けられている。複数の凹部3は、第1主溝1aから陸部2aのタイヤ幅方向中央側に向けて延びて陸部2a内で終端する複数の第1凹部3aと、第2主溝1bから陸部2aのタイヤ幅方向中央側に向けて延びて陸部2a内で終端する複数の第2凹部3bと、を有する。複数の第1凹部3a及び複数の第2凹部3bは、図1及び図2Aに示すように、タイヤ周方向CDに沿って交互に配置されている。
【0021】
図3A及び図3Bに示すように、凹部3は、接地面5から鉛直方向(RD)に沿って下がる第1鉛直面30と、サイプ4の開口側壁4aに交差する底平面31と、を有する。第1鉛直面30は接地面5との間に第1エッジ33を形成する。底平面31と開口側壁4aは、底平面31と開口側壁4aの角度が90度以下となる第2エッジ34を形成している。図3A及び図3Bの例では、底平面31は水平方向に延びているので、底平面31と開口側壁4aの角度(第2エッジ34の角度θ)が90度となる。底平面31が水平方向に延びていることにより、底平面31が凹部3の中央側に向けてタイヤ径方向内側に下がるように傾斜している場合に比べて、エッジ近傍の接地圧を向上させることが可能となる。
【0022】
図2A図3A及び図3Bに示すように、第1エッジ33と第2エッジ34とのサイプ4の幅方向に沿った離間距離W2,W3(すなわち凹部3の幅方向に沿った底平面31の幅W2,W3)は、陸部2aの中央側から陸部2aの端に向かうにつれて大きくなる。W2>W3という関係が成立する。凹部3の幅(底平面31の幅)は、徐々に変化してよいし、階段状に変化してもよい。
【0023】
図3A及び図3Bに示すように、第1エッジ33と第2エッジ34の鉛直方向(RD)における高さの差D2は、0.5mm以上且つ1.5mm以下である。また、第1エッジ33と第2エッジ34は、サイプ4の幅方向に沿って1.5mm以上離れている。すなわち、W2≧1.5mmであり、W3≧1.5mmである。
【0024】
このように、第1エッジ33と第2エッジ34の鉛直方向における高さの差D2が1.5mm以下であり、且つ、第1エッジ33と第2エッジ34がサイプ4の幅方向に沿って1.5mm以上離れているので、荷重がかかった時の陸部2aの変形により第2エッジ34を接地させることができ、第1エッジ33及び第2エッジ34によるダブルエッジ効果を得ることが可能となる。例えば、D2>1.5mmであれば、第2エッジ34が接地しにくくなり、第2エッジ34によるエッジ効果が得られにくい。また、W2(W3)<1.5mmであれば、第2エッジ34が第1鉛直面30に近すぎて、第2エッジ34が接地しにくくなり、第2エッジ34のエッジ効果が得られにくい。D2≧0.5mmであれば、第1エッジ33によるエッジ効果が得られるが、D2<0.5mmであれば、第1エッジ33によるエッジ効果が得られにくい。
【0025】
第1エッジ33と第2エッジ34とのサイプ4の幅方向に沿った離間距離W2,W3は、3.0mm以下であることが好ましい。W2≦3.0mmであり、W3≦3.0mmである。例えば、W2(W3)>3.0mmであれば、凹部3が大きくなって陸部2aの剛性が弱くなり、操縦安定性能が損なわれてしまう。勿論、操縦安定性能の悪化を許容できるのであれば、W2(W3)>3.0mmという構成を採用してもよい。
【0026】
図5は、凹部3及びサイプ4の斜視図である。図6Aは、図5におけるA3-A3部位の縦断面図である。図2A及び図5に示すように、凹部3は、サイプが延びる方向(所定方向PD)に沿って延びている。図5及び図6Aに示すように、凹部3は、接地面5との間に第1エッジ33を形成する第1鉛直面30と、所定方向PDに直交する凹部3の幅方向に延びる底平面31と、を有する。底平面31は、所定方向PDに沿って配列された少なくとも2つの平面領域31A,31B,31Cを有する。図5に示す第2凹部3bには、3つの平面領域31A,31B,31Cが形成されているが、平面領域の数は2つ以上であれば、適宜変更可能である。例えば、図2Aに示す第1凹部3aには、2つの平面領域が形成されている。各々の平面領域31A,31B,31Cは、タイヤ径方向RDに沿った高さが互いに異なる。凹部3は、更に、2つの平面領域を接続し且つ高い方の平面領域との間に第3エッジ35を形成する第2鉛直面32を有する。第2凹部3bは、2つの平面領域31A,31Bを接続し且つ高い方の平面領域31Aとの間に第3エッジ35を形成する第2鉛直面32と、2つの平面領域31B,31Cを接続し且つ高い方の平面領域31Bとの間に第3エッジ35を形成する第2鉛直面32と、を有する。第3エッジ35は、タイヤ幅方向WD及びタイヤ周方向CDの両方に対して傾斜している。
【0027】
このように、第3エッジ35がタイヤ幅方向WD及びタイヤ周方向CDの両方に対して傾斜しているので、エッジ効果により、車両でいえば前後方向及び左右方向のスノートラクション性能を向上させることが可能となる。
【0028】
上記で述べているが、図3A及び図3Bに示すように、第1エッジ33から底平面31までの凹部3の最大深さD2は、1.5mm以下であることが好ましい。図6Aに示すように、第2鉛直面32の深さ方向の長さD3は、0.5mm以上且つ1.5mm以下であることが好ましい。D2≦1.5mmであれば、凹部3がそれよりも深い場合に比べて陸部2aの剛性低下を抑制でき、操縦安定性能を維持可能となる。それでいて、凹部3の最大深さD2は1.5mm以下であるので、タイヤが路面に接地するときに第3エッジ35が路面に接触可能となり第3エッジ35によるエッジ効果が発現する。更に、第2鉛直面32の深さ方向の長さD3が0.5mm以上であるので、エッジ効果を確保可能となる。
【0029】
図6Aに示すように、底平面31は、所定方向PDにおける第1側PD1の端に第3エッジ35を有し、第3エッジが所定方向PDにおける第2側PD2の端よりもタイヤ径方向外側RD1に高くなるように底平面31が傾斜している。更に、所定方向PDに沿って隣接する2つの平面領域31A,31Bは、タイヤ径方向RDにおける位置が重複している。これにより、平面領域31A,31Bによって形成される凹部3が深くなり過ぎず、陸部2aの剛性低下を抑制でき、操縦安定性能を維持可能となる。さらに、第3エッジ35が路面に接地しやすくなり、底平面31が水平である場合に比べてエッジ効果を向上させることが可能となる。図6Aの例では、各々の平面領域31A,31B,31Cの第1側PD1の端同士の高さ位置が一致しており、第2側PD2の端同士の高さ位置が一致しているが、これに限定されない。隣接する2つの平面領域の少なくとも一部のタイヤ径方向RDの位置が一致していればよい。
【0030】
図2Aに示すように、平面視における第3エッジ35の長さL3は、2mm以上であることが好ましい。第3エッジ35のエッジ効果を的確に確保可能となるからである。
【0031】
図2A及び図5に示すように、所定方向PDに直交する方向は、凹部3の幅方向である。凹部3は、少なくとも2つの第3エッジ35を有する。凹部3の幅方向の第1側に配置されている少なくとも1つの第3エッジ35と、凹部3の幅方向の第2側に配置されている少なくとも1つの第3エッジ35とは、平面視において所定方向PDに対する傾斜方向が異なる。同図では、前記第1側に配置されている第3エッジ35と、前記第2側に配置されている第3エッジ35との間にはサイプ4が形成されている。
【0032】
このように、第3エッジ35の傾斜方向が異なるので、ある第3エッジ35が苦手な方向を他の第3エッジ35がカバーすることができ、車両における前後方向及び左右方向の全方向に対するスノートラクション性能を向上させることが可能となる。
【0033】
一般的に、雪上路面では、陸部2aのタイヤ幅方向WDの端20の摩擦係数μが低く接地圧が低くなり、逆に、陸部2aのタイヤ幅方向中央部21の接地圧が高くなる傾向がある。本実施形態では、凹部3の幅は、陸部2aの中央側から陸部2aの端に向かうにつれて大きくなっているので、陸部2aの端部の接地面積が中央側の接地面積に比べて少なくなり、陸部2aの端部における単位面積あたりの接地圧が上がり、接地圧の均一化を図ることが可能となる。
【0034】
一方、一般的に、ドライ路面では、雪上路面におけるメカニズムとは異なり、陸部2aのタイヤ幅方向WDの端20の摩擦係数μが高く接地しやすいために接地圧が高くなり、逆に、陸部2aのタイヤ幅方向中央部21が接地しにくく接地圧が低くなる傾向にあり、接地圧の不均一が生じる。
【0035】
第1実施形態では、ドライ路面における接地圧の不均一を減少させてドライ路面での接地性を向上させるために、図4Aに示すように、陸部2aは、タイヤ子午線断面において、タイヤ幅方向中央部21がタイヤ幅方向WDの両端20よりもタイヤ径方向外側RD1に突出している。突出形状は、少なくとも1つの曲率半径を有する少なくとも一つの曲線で形成されている。ここでいう陸部2aのタイヤ幅方向中央部21は、陸部2aの方向WDの両端20よりもタイヤ幅方向WDの内側の部位を意味する。陸部2aのタイヤ幅方向WDの両端20は、接地面5における端を意味する。このように、陸部2aのタイヤ幅方向中央部21を端20よりもタイヤ径方向外側RD1へ突出するようにすれば、タイヤ幅方向中央部21が端20に比べて接地しやすくなり、ドライ路面におけるタイヤ幅方向中央部21の接地圧を上げて、接地圧の均一化を図り、操縦安定性能を向上させることが可能となる。
【0036】
一方、陸部2aのタイヤ幅方向中央部21を端20よりもタイヤ径方向外側RD1に突出するようにすれば、陸部2aの端20がタイヤ幅方向中央部21に比べて接地しにくくなり、端20でのエッジ成分がタイヤ幅方向中央部21に比べて不利となる。しかし、凹部3の幅は、陸部2aの中央側から陸部2aの端に向かうにつれて大きくなっているので、陸部2aの端20における第2エッジ34の効果が大きくなるので、エッジ成分を確保可能となる。
【0037】
勿論、オールシーズンタイヤではなく、スタッドレスタイヤのように、ドライ路面における接地性の向上を目的としない場合には、図4Bに示すように、陸部2aは、タイヤ子午線断面において、タイヤ幅方向中央部21がタイヤ幅方向WDの両端20よりもタイヤ径方向外側RD1に突出していなくてもよく、陸部2aのタイヤ幅方向の端20同士の間がフラットでもよい。
【0038】
<変形例>
図1及び図2Aに示す例では、サイプ4は、第1端が主溝1に開口し、第2端が陸部2a内で終端しているが、これに限定されない。例えば、サイプ4の第1端及び第2端の両方が主溝1に開口していてもよい。また、サイプ4が延びる方向は、タイヤ幅方向WD及びタイヤ周方向CDの両方に対して傾斜しているが、これに限定されない。サイプ4が延びる方向は、タイヤ周方向CDに対して傾斜していればよく、タイヤ幅方向WDと一致していてもよい。
【0039】
第1実施形態において、第1凹部3a及び第2凹部3bが、タイヤ周方向CDに沿って交互に配置されているが、これに限定されない。第1凹部3a及び第2凹部3bが、タイヤ周方向CDに沿って交互に配置されていなくてもよい。また、陸部2aには、第1凹部3a及び第2凹部3bの双方が配置されているが、これに限定されない。例えば、陸部に第1凹部3aが形成され且つ第2凹部3bが形成されていない例が挙げられる。同様に、陸部に第2凹部3bが形成され且つ第1凹部3aが形成されていない例が挙げられる。
【0040】
さらに、第1凹部3a及び第2凹部3bは、タイヤ幅方向に対して同じ方向に傾斜しているが、これに限定されない。第1凹部3a及び第2凹部3bは、互いに逆方向に傾斜していてもよい。
【0041】
第1実施形態では、底平面31は水平方向に延びているが、これに限定されない。例えば、図7に示すように、底平面31は、凹部3の幅方向に沿った断面において凹部3の幅方向中央側がタイヤ径方向外側RD1に向けて高くなるように傾斜していてもよい。この場合、底平面31と開口側壁4aの角度(第2エッジ34の角度)は90度未満となる。このように、第2エッジ34の角度が90度未満になれば、凹部3(底平面31)の表面積が増えるので、放熱性能を向上させることが可能となる。
【0042】
第1実施形態では、凹部3の幅(底平面31の幅)は、陸部2aの中央側から陸部2aの端に向かうにつれて大きくなっているが、これに限定されない。例えば、図8に示すように、凹部3の幅(底平面31の幅)が一定であってもよい。
【0043】
第1実施形態では、底平面31は平坦面であるが、これに限定されない。例えば、図9Aに示すように、底平面31に、底平面31の幅W2よりも小さな幅を有するディンプル38が1又は複数形成されていてもよい。別の例では、図9Bに示すように、底平面31に、底平面31の幅W2よりも小さな幅を有する突起39が1又は複数形成されていてもよい。
【0044】
図1に示す実施形態において、本開示が適用される陸部2aは、メディエイト陸部2aに限定されない。例えば、センター陸部2bに適用してもよいし、他のメディエイト陸部2cに適用してもよいし、ショルダー陸部2dに適用してもよい。
【0045】
図6Aに示す底平面31は、水平方向に対して傾斜しているが、これに限定されない。図6Bに示すように、底平面31を水平方向に沿うように配置してもよい。
【0046】
図2A及び図5に示すように、サイプ4の幅方向の第1側にある第3エッジ35と、サイプ4の幅方向の第2側にある第3エッジ35とは、平面視において所定方向PDに対する傾斜方向が異なるが、これに限定されない。例えば、図6Cに示すように、傾斜方向が同じでもよいし、更には双方の第3エッジ35が平面視で平衡であってもよい。
【0047】
以上のように、本実施形態の空気入りタイヤは、
少なくとも1つの主溝(1a,1)に区画され且つ接地面5を形成する陸部2aと、
少なくとも1つの主溝1a[1b]から陸部2aのタイヤ幅方向中央側に向けて延びるサイプ4であって、鉛直方向(RD)に沿った開口側壁4aを有するサイプ4と、
サイプ4の幅方向両側に形成され且つ接地面5よりも窪む凹部3と、を備える。
凹部3は、接地面5との間に第1エッジ33を形成する鉛直面30と、サイプ4の開口側壁4aに交差する底平面31と、を有する。底平面31とサイプ4の開口側壁4aとは、両者の角度θが90度以下となる第2エッジ34を形成する。
第1エッジ33と第2エッジ34の鉛直方向(RD)における高さの差D2は、0.5mm以上且つ1.5mm以下である。
第1エッジ33と第2エッジ34は、サイプ4の幅方向に沿って1.5mm以上離れている。
【0048】
このように、陸部2aに形成されたサイプ4の幅方向両側に凹部3が形成されており、凹部3は鉛直面30と底平面31とにより形成されている。第1エッジ33は、タイヤ径方向RDに平行な鉛直方向に沿った鉛直面30と接地面5との間に形成されているので、第1エッジ33によるエッジ効果が発現する。また、サイプ4の開口側壁4aと底平面31との間に第2エッジ34が形成され、第2エッジ34の角度θが90度以下であるので、第2エッジ34によるエッジ効果が発現する。さらに、第1エッジ33と第2エッジ34の鉛直方向(RD)における高さの差D2が1.5mm以下であり、且つ、第1エッジ33と第2エッジ34がサイプ4の幅方向に沿って1.5mm以上離れているので、荷重がかかった時の陸部2aの変形により第2エッジ34が路面に接触可能となり、第1エッジ33及び第2エッジ34によるダブルのエッジ効果を得ることができ、スノートラクション性能を向上させることが可能となる。第1エッジ33と第2エッジ34の鉛直方向(RD)における高さの差D2が0.5mm以上であるので、第1エッジ33によるエッジ効果を得ることが可能となる。
したがって、サイプ4の幅方向の片側にて2つのエッジ効果が発現し、サイプ4の幅方向の両方で4つのエッジ効果が発現するので、スノートラクション性能を向上させることが可能となる。
【0049】
図3A及び図3Bに示す実施形態において、サイプ4の幅方向に沿った第1エッジ33と第2エッジ34との離間距離W2(W3)は、3.0mm以下であることが好ましい。
【0050】
前記離間距離W2(W3)が3.0mmを超えると、凹部3が大きくなることにより陸部2aの剛性が弱くなり、ドライ路面での操縦安定性能が損なわれてしまう。したがって、上記構成によれば、操縦安定性能が損なわれてしまうことを抑制又は防止可能となる。
【0051】
図2A図3A及び図3Bに示す実施形態において、サイプ4の幅方向に沿った第1エッジ33と第2エッジ34との離間距離W2(W3)は、陸部2aの中央側から陸部2aの端に向かうにつれて大きくなる。
【0052】
一般的に、雪上路面では、陸部2aのタイヤ幅方向WDの端20の摩擦係数μが低く接地圧が低くなり、逆に、陸部2aのタイヤ幅方向中央部21の接地圧が高くなる傾向がある。図2A図3A及び図3Bに示す実施形態において、前記離間距離(凹部3の幅)は、陸部2aの中央側から陸部2aの端に向かうにつれて大きくなっているので、陸部2aの端部の接地面積が中央側の接地面積に比べて少なくなり、陸部2aの端部における単位面積あたりの接地圧が上がり、接地圧の均一化を図ることが可能となる。
【0053】
図4Aに示す実施形態において、陸部2aは、タイヤ子午線断面において、タイヤ幅方向中央部21がタイヤ幅方向WDの両端20よりもタイヤ径方向外側RD1に突出している。さらに、図2Aに示すように、サイプ4の幅方向に沿った第1エッジ33と第2エッジ34との離間距離W2(W3)は、陸部2aの中央側から陸部2aの端に向かうにつれて大きくなる。
【0054】
このように、陸部2aのタイヤ幅方向中央部21を端20よりもタイヤ径方向外側RD1に突出するようにすれば、陸部2aの端20がタイヤ幅方向中央部21に比べて接地しにくくなり、端20でのエッジ成分がタイヤ幅方向中央部21に比べて不利となる。しかし、凹部3の幅は、陸部2aの中央側から陸部2aの端に向かうにつれて大きくなっているので、陸部2aの端20における第2エッジ34の効果が大きくなるので、エッジ成分を確保可能となる。したがって、ドライ路面での操縦安定性能と、スノートラクションの向上とを両立可能となる。
【0055】
図9A及び図9Bに示す実施形態において、底平面31には、底平面31の幅W2よりも小さな幅を有するディンプル38又は突起39が1又は複数形成されている。
【0056】
この構成によれば、第1エッジ33及び第2エッジ34だけでなく、ディンプル38又は突起39によってもエッジ効果が発現するので、更にスノートラクション性能を向上させることが可能となる。
【0057】
<第2実施形態>
第2実施形態は、図10図11図12A及び図13に示すように、第1実施形態にサイプ4を設けていない形態である。図10は、陸部2aに、第1凹部3a及び第2凹部3bがタイヤ周方向CDに交互に配置されていることを示す。図11は、第1凹部3a及び第2凹部3bを拡大して示す図である。図12Aは、図11のA1-A1部位断面図である。図12Aに示すように、底平面31は水平方向に延びている。変形例として図12Bに示すように、底平面31は、凹部3の幅方向に沿った断面において凹部3の幅方向中央側がタイヤ径方向外側RD1に向けて高くなるように傾斜していてもよい。図13は、第2実施形態の凹部及びサイプの斜視図である。
【0058】
以上のように、第1又は第2実施形態の空気入りタイヤは、
第1主溝1a及び第2主溝1bに区画され且つ接地面5を形成する陸部2aと、
第1主溝1aから陸部2aのタイヤ幅方向中央側に向けて延びて陸部2a内で終端し且つ接地面5よりも窪む複数の第1凹部3aと、第2主溝1bから陸部2aのタイヤ幅方向中央側に向けて延びて陸部2a内で終端し且つ接地面5よりも窪む複数の第2凹部3bと、を備える。
陸部2aは、タイヤ幅方向中央部21がタイヤ幅方向WDの両端20よりもタイヤ径方向外側RD1へ突出している。
複数の第1凹部3a及び複数の第2凹部3bは、タイヤ周方向CDに沿って交互に配置されている。
各々の凹部3は、接地面5から鉛直方向(RD)に沿って下がる鉛直面30と、凹部3の幅方向に延びる底平面31と、を有する。
底平面31は、水平である、又は、凹部3の幅方向に沿った断面において凹部3の中央側に向かってタイヤ径方向外側RD1へ高くなるように傾斜している。
底平面の幅W2(W3)は、陸部2aのタイヤ幅方向中央側から端部に向かうにつれて広がる。
【0059】
この構成によれば、陸部2aは、タイヤ幅方向中央部21がタイヤ幅方向の両端20よりもタイヤ径方向外側RD1へ突出しているので、タイヤ幅方向中央部21が端20に比べて接地しやすくなり、ドライ路面におけるタイヤ幅方向中央部21の接地圧があがり、接地圧が均一化する方向に向かい、操縦安定性能を向上させることが可能となる。かといって、突出量が大きすぎれば、接地圧のバランスがくずれてしまう。そこで、陸部2aの端部における底平面31(凹部3)の幅が陸部中央側における底平面31(凹部3)の幅よりも広がるように形成されているので、陸部2aのタイヤ幅方向中央部21に比べて陸部2aのタイヤ幅方向の端20の接地圧が増加し、中央部と端との接地圧のバランスが取れ、ドライ路面での操縦安定性能が向上する。
また、底平面31は、水平である、又は、凹部3の幅方向に沿った断面において凹部3の中央側に向かってタイヤ径方向外側RD1へ高くなるように傾斜しているので、凹部3が大きくなりすぎることにより、陸部2aの剛性が弱くなり、ドライ路面での操縦安定性能が損なわれることを抑制可能となる。
それでいて、陸部2aは、タイヤ幅方向中央部21がタイヤ幅方向の両端20よりも突出しているので、排水性能を向上させることができる。
【0060】
図3A及び図3Bに示す実施形態において、接地面5と鉛直面30とが形成する第1エッジ33を有し、第1エッジ33と底平面31の鉛直方向(RD)における高さの差D2は、0.5mm以上且つ1.5mm以下である。
【0061】
この数値範囲内であれば、凹部3が大きくなりすぎることにより、陸部2aの剛性が弱くなり、ドライ路面での操縦安定性能が損なわれることを的確に抑制可能となる。
【0062】
本実施形態において、凹部3の中央部に、サイプ4が形成されている。
【0063】
この構成によれば、サイプ4によりエッジ効果が発現し、トラクション性能を向上させることが可能となる。さらに、サイプ4により陸部2aが開きやすく接地しやすくなり、トラクション性能及び制動性能を向上させることが可能となる。
【0064】
以上のように、第1又は第2実施形態の空気入りタイヤは、
少なくとも1つの主溝(1a,1b)に区画され且つ接地面5を形成する陸部2aと、
所定方向PDに沿って延び且つ接地面5よりも窪む凹部3と、を備える。
凹部3は、接地面5との間に第1エッジ33を形成する第1鉛直面30と、所定方向PDに直交する凹部3の幅方向に延びる底平面31と、を有する。
底平面31は、互いに高さが異なり且つ所定方向PDに沿って配列された少なくとも2つの平面領域31A,31B,31Cを有する。
凹部3は、更に、2つの平面領域(31A,31B[31B,31C])を接続し且つ高い方の平面領域(31A[31B])との間に第3エッジ35を形成する第2鉛直面32を有する。
第3エッジ35は、タイヤ幅方向WD及びタイヤ周方向CDの両方に対して傾斜している。
【0065】
このように、凹部3を構成する底平面31における少なくとも2つの平面領域31A,31B,31Cが所定方向PDに高さを異ならせて配列され、第2鉛直面32により接続されており、いわゆる段差が形成されている。第3エッジ35がタイヤ幅方向WD及びタイヤ周方向CDの両方に対して傾斜しているので、エッジ効果により、車両でいえば前後方向及び左右方向のスノートラクション性能を向上させることが可能となる。
【0066】
第1又は第2実施形態において、第1エッジ33から底平面31までの凹部3の最大深さD2は、1.5mm以下であり、第2鉛直面32の深さ方向の長さD3は、0.5mm以上1.5mm以下である。
【0067】
このように、凹部3の最大深さD2が1.5mm以内であれば、凹部3がそれよりも深い場合に比べて陸部2aの剛性低下を抑制でき、操縦安定性能を維持可能となる。それでいて、凹部3の最大深さD2は1.5mm以下であるので、タイヤが路面に接地するときに第3エッジ35が路面に接触可能となり第3エッジ35によるエッジ効果が発現する。更に、第2鉛直面32の深さ方向の長さD3が0.5mm以上であるので、エッジ効果を的確に確保可能となる。
【0068】
第1又は第2実施形態において、平面視における第3エッジ35の長さL3は、2mm以上である。この構成によれば、第3エッジ35のエッジ効果を的確に確保可能となるからである。
【0069】
第1又は第2実施形態において、底平面31は、所定方向PDにおける第1側PD1の端に第3エッジ35を有し、第3エッジ35が所定方向PDにおける第2側PD2の端よりもタイヤ径方向外側RD1に高くなるように底平面31が傾斜しており、
所定方向PDに沿って隣接する少なくとも2つの平面領域31A,31B,31Cは、タイヤ径方向RDにおける位置が重複している。
【0070】
この構成によれば、平面領域31A,31Bによって形成される凹部3が深くなり過ぎず、陸部2aの剛性低下を抑制でき、操縦安定性能を維持可能となる。さらに、第3エッジ35が路面に接地しやすくなり、底平面31が水平である場合に比べてエッジ効果を向上させることが可能となる。
【0071】
第1又は第2実施形態において、凹部3は、第3エッジ35を少なくとも2つ有し、
凹部3の幅方向の第1側に配置されている少なくとも1つの第3エッジ35と、凹部3の幅方向の第2側に配置されている少なくとも1つの第3エッジ35とは、平面視において所定方向PDに対する傾斜方向が異なる。
【0072】
この構成によれば、第3エッジ35の傾斜方向が異なるので、ある第3エッジ35が苦手な方向を他の第3エッジ35がカバーすることができ、車両における前後方向及び左右方向の全方向に対するスノートラクション性能を向上させることが可能となる。
【0073】
第1実施形態において、凹部3の幅方向の中央部には、サイプ4が形成されている。
【0074】
この構成によれば、サイプ4により陸部2aが接地しやすくなるので、トラクション性能及び制動性能を向上させることが可能となる。
【0075】
以上、本開示の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0076】
上記の各実施形態で採用している構造を他の任意の実施形態に採用することは可能である。各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0077】
1 主溝
1a 主溝
1b 主溝
2a 陸部
3 凹部
30 第1鉛直面
31 底平面
31A 平面領域
31B 平面領域
31C 平面領域
32 第2鉛直面
33 第1エッジ
35 第3エッジ
4 サイプ
5 接地面
PD 所定方向
WD タイヤ幅方向
CD タイヤ周方向
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12A
図12B
図13