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  • 特許-ロケット 図1
  • 特許-ロケット 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】ロケット
(51)【国際特許分類】
   F42B 10/02 20060101AFI20220906BHJP
   B64G 1/24 20060101ALI20220906BHJP
   F02K 9/90 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
F42B10/02
B64G1/24 Z
F02K9/90
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018211909
(22)【出願日】2018-11-12
(65)【公開番号】P2020079654
(43)【公開日】2020-05-28
【審査請求日】2021-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】500302552
【氏名又は名称】株式会社IHIエアロスペース
(74)【代理人】
【識別番号】100102141
【弁理士】
【氏名又は名称】的場 基憲
(74)【代理人】
【識別番号】100137316
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 宏
(72)【発明者】
【氏名】兼近 達也
(72)【発明者】
【氏名】堀口 貴充
【審査官】姫島 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-123599(JP,A)
【文献】特開2011-231965(JP,A)
【文献】特開平03-239698(JP,A)
【文献】国際公開第2018/142402(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0037651(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F42B 10/02
B64G 1/24
F02K 9/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
推力方向制御装置と、機体側面に配置した圧力センサと、機体尾部に配置し且つ機体側面に沿う収納位置から機体外側の展開位置に至る間で動作する可動フレアとを備え、圧力センサで検出した動圧の大きさに基づいて可動フレアを駆動することを特徴とするロケット。
【請求項2】
前記圧力センサで検出した動圧の大きさに基づいて可動フレアを駆動制御するフレア制御装置を備え、
前記フレア制御装置が、動圧が閾値以上である場合に可動フレアを展開位置にすると共に、動圧が閾値未満である場合に可動フレアを収納位置にする制御を行うことを特徴とする請求項1に記載のロケット。
【請求項3】
前記可動フレアが、機体の機軸回りに分割した複数のフレア部材から成り、
各フレア部材が、夫々の機体頭部側の端部を中心にして回動可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載のロケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、推力方向制御装置を備えたロケットの改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ロケットの推力方向制御装置は、非特許文献1に記載されているように、様々な方式があり、代表的には可動ノズルが挙げられる。この推力方向制御装置は、機体に対してノズルを揺動可能に設け、ノズルの向きを変えて推力方向を変更することで制御モーメントを得るものであり、飛翔中の機体に空力モーメントが生じた際に、この空力モーメントを打ち消すように推力方向(舵角)を変更して機体の安定化を図る。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】「増補版 航空宇宙工学便覧」丸善、昭和49年12月20日、p.652
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記したような従来のロケットでは、最大動圧時のように空力モーメントが大きい場合、その空力モーメントを相殺するために推力方向制御の舵角が大きくなり、ロケットの仕様を逸脱する恐れがある。そこで、空力の緩和策として、機体尾部にフレアを配置することで空力中心を重心側に後退させ、これにより空力モーメントを下げることが考えられる。しかし、フレアを配置すると、空気抵抗が増して速度損失も増えるので、打ち上げ能力(搭載可能なペイロードの質量)が低下するという問題点があった。
【0005】
本発明は、上記従来の課題に着目して成されたもので、推力方向制御の必要舵角の抑制と、空気抵抗による速度損失の低減とを両立させることができるロケットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係わるロケットは、推力方向制御装置と、機体側面に配置した圧力センサと、機体尾部に配置し且つ機体側面に沿う収納位置から機体外側の展開位置に至る間で動作する可動フレアとを備え、圧力センサで検出した動圧の大きさに基づいて可動フレアを駆動することを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係わるロケットは、可動フレアを収納位置にした状態で打ち上げられる。この際、ロケットは、可動フレアによる空気抵抗を無視できるので、速度損失を生じることなく打ち上げられる。その後、ロケットは、推力方向制御装置により飛翔中の姿勢制御を行うと共に、圧力センサにより動圧を検出する。そして、ロケットは、動圧が高くなったときに可動フレアを展開位置に駆動する。これにより、ロケットは、空力中心が重心寄りに後退して、空力モーメントが下がるので、その空力モーメントを相殺するための推力方向制御の必要舵角も抑制されることになる。また、ロケットは、動圧が低下した場合には、可動フレアを収納位置に戻し、空気抵抗による速度損失を最小限にする。
【0008】
このようにして、上記のロケットは、推力方向制御の必要舵角の抑制と、空気抵抗による速度損失の低減とを両立させることができる
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係わるロケットの一実施形態を説明する図であって、フレアを収納した状態を説明する斜視図(A)及び制御系を示すブロック図(B)である。
図2図1に示すロケットのフレアを展開した状態を説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に基づいて、本発明に係わるロケットの一実施形態を説明する。
図1(A)に示すロケットRは、推進機関部1Aとその頭部側のペイロード搭載部1Bとで機体1を構成している。推進機関部1Aは、固体又は液体のロケットである。ペイロード搭載部1Bは、分離可能なノーズフェアリングで覆われている。
【0011】
また、ロケットRは、推力方向制御装置2と、機体側面に配置した圧力センサ3と、機体尾部に配置し且つ機体側面に沿う収納位置から機体外側の展開位置に至る間で動作する可動フレア4とを備え、圧力センサ3で検出した動圧の大きさに基づいて可動フレア4を駆動する構造である。そこで、ロケットRは、圧力センサ3で検出した動圧の大きさに基づいて可動フレア4を駆動制御するフレア制御装置5を備えている。
【0012】
推力方向制御装置2は、機体1の尾部に対して揺動可能に設けた可動ノズルNを備えており、図示を省略したが、可動ノズルNを駆動するアクチュエータ類やその制御機器が含まれる。圧力センサ3は、ペイロード搭載部1Bの側面に配置してあり、大気圧を検出するものや、飛翔中に受ける空気圧を直接検出するもので良く、検出圧力値に基づいてロケットRに作用する動圧を検出(算出)し得る。
【0013】
可動フレア4は、機体1の機軸回りに分割した複数のフレア部材4Aから成る筒状の構造である。各フレア部材4Aは、いずれも同じ大きさの板状部材であり、夫々の機体頭部側の端部を中心にして機体1の内外方向に回動可能である。なお、各フレア部材4Aは、その枚数がとくに限定されるものではなく、機軸回りの位置等に応じて寸法や形状の異なるものを配置しても良い。
【0014】
この可動フレア4は、図1(B)に制御系を示すように、フレア制御装置5の指令信号が入力される駆動部6により、各フレア部材4Aを一斉に作動させる。駆動部6は、例えば、アクチュエータ類や動力伝達機構等で構成してある。
【0015】
フレア制御装置5は、圧力センサ3で検出した動圧が閾値以上である場合に可動フレア4を展開位置にすると共に、動圧が閾値未満である場合に可動フレア4を収納位置にする制御を行う。つまり、フレア制御装置5は、動圧の大きさに基づいて駆動部6に指令信号を出力することで、可動フレア4を駆動制御する。
【0016】
上記のロケットRは、重心Gに対して空力中心ACが頭部側に位置しており、図1(A)に示すように、可動フレア4を収納位置にした状態で打ち上げられる。この際、ロケットRは、可動フレア4による空気抵抗を無視できるので、速度損失を生じることなく打ち上げられる。
【0017】
その後、ロケットRは、推力方向制御装置2により飛翔中の姿勢制御を行うと共に、圧力センサ3により動圧を検出する。そして、ロケットRは、動圧が閾値以上になった場合に、図2に示すように、可動フレア4を展開位置に駆動する。すなわち、各フレア部材4Aを機体1の外側へ一斉に回動させる。
【0018】
これにより、ロケットRは、図2中の矢印で示すように、空力中心ACが重心寄りに後退して重心Gと空力中心ACとの距離Lが小さくなり、空力モーメントが下がるので、その空力モーメントを相殺するための推力方向制御の必要舵角も抑制される。また、ロケットRは、動圧が閾値未満に低下した場合には、可動フレア4を図1(A)に示す収納位置に戻して空気抵抗を低減させる。つまり、ロケットRは、大気圏内において、動圧が高くなったときのみに可動フレア4を展開して、空気抵抗による速度損失を最小限にする。
【0019】
このようにして、上記のロケットRは、推力方向制御の必要舵角の抑制と、空気抵抗による速度損失の低減とを両立させることができる。したがって、上記のロケットRによれば、推力方向制御の必要舵角が仕様を逸脱するような恐れを回避することができ、良好な打ち上げ能力(搭載可能なペイロードの質量)を維持し得る。
【0020】
また、上記のロケットRは、複数のフレア部材4Aから成る可動フレア4を採用することで、比較的簡単な構造で収納及び展開の各状態を得ることができる。さらに、ロケットRは、上記の可動フレア4を採用した場合、各フレア部材4A若しくは選択したフレア部材4Aを個別に駆動する構成にしても良い。これにより、ロケットRは、推力方向制御装置2の補助的な機能部として、フレア部材4Aを動翼として用いることが可能である。
【0021】
本発明に係わるロケットは、その構成が上記実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で具体的構造を適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0022】
R ロケット
1 機体
2 推力方向制御装置
3 圧力センサ
4 可動フレア
4A フレア部材
5 フレア制御装置
図1
図2