(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】リンク機構を有するシート装置及び該シート装置を有する車両
(51)【国際特許分類】
B60N 2/54 20060101AFI20220906BHJP
【FI】
B60N2/54
(21)【出願番号】P 2018230158
(22)【出願日】2018-12-07
【審査請求日】2021-11-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000143639
【氏名又は名称】株式会社今仙電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100129676
【氏名又は名称】▲高▼荒 新一
(74)【代理人】
【識別番号】100158067
【氏名又は名称】江口 基
(72)【発明者】
【氏名】石原 慶隆
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 恭史
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 隆太
(72)【発明者】
【氏名】湊 裕貴
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-115741(JP,A)
【文献】特開2014-213753(JP,A)
【文献】特開平10-226256(JP,A)
【文献】特開平09-254691(JP,A)
【文献】特開2002-126004(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/54
B60N 2/10
B60N 2/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リンク機構を有するシート装置において、
シートと、
支持底面に対して前記シートの前後方向に回動可能に支持された第1リンクと、
前記第1リンクの後方に支持底面に対して前後方向に回動可能に支持された第2リンクと、
前記第1リンクに一方側端部が前後方向に回動可能に連結された第3リンクと、
前記第2リンクに一方側端部が前後方向に回動可能に連結された第4リンクと、
前記第3リンク及び前記第4リンクが回動可能に連結された回動部と、
前記第1リンクを回動方向に付勢するように他方側端部が外部に固定された第1弾性体、前記第2リンクを回動方向に付勢するように他方側端部が外部に固定された第2弾性体及び前記回動部を上下方向に付勢するように他方側端部が支持底面に固定された第3弾性体から選択される少なくとも1以上の弾性体と、
を有し、前記シートを固定するリンク機構と、
を備えていることを特徴とするリンク機構を有するシート装置。
【請求項2】
リンク機構を有するシート装置において、
シートと、
支持底面に対して前記シートの側方方向に回動可能に支持された第1リンクと、
前記第1リンクの側方に支持底面に対して側方方向に回動可能に支持された第2リンクと
前記第1リンクに一方側端部が側方方向に回動可能に連結された第3リンクと、
前記第2リンクに一方側端部が側方方向に回動可能に連結された第4リンクと、
前記第3リンク及び前記第4リンクが回動可能に連結された回動部と、
前記第1リンクを回動方向に付勢するように他方側端部が外部に固定された第1弾性体、前記第2リンクを回動方向に付勢するように他方側端部が外部に固定された第2弾性体及び前記回動部を上下方向に付勢するように他方側端部が支持底面に固定された第3弾性体から選択される少なくとも1以上の弾性体と、
を有し、前記シートを固定するリンク機構と、
を備えていることを特徴とするリンク機構を有するシート装置。
【請求項3】
リンク機構を有するシート装置において、
シートと、
前記シートの下方の前後左右に配置され、支持底面に自在継手によって連結された第1リンク、第2リンク、第3リンク及び第4リンクと、
それぞれ前記第1リンク、前記第2リンク、前記第3リンク及び前記第4リンクに一方側端部が自在継手によって連結された第5リンク、第6リンク、第7リンク及び第8リンクと、
前記第5リンク、前記第6リンク、前記第7リンク及び前記第8リンクの他方側端部をそれぞれ自在に方向を変更移動可能に連結された自在可動部と、
それぞれ前記第1リンク、前記第2リンク、前記第3リンク及び前記第4リンクに対して一方方向と反対方向に付勢するように取り付けられた4本の第1弾性体と、
前記自在可動部の両側に前記第1弾性体と水平方向に直交するように取り付けられた2本の第2弾性体と、
前記自在可動部の下方と支持底面との間に設けられた第3弾性体と、
を有し、前記シートを固定するリンク機構と、
を備えていることを特徴とするリンク機構を有するシート装置。
【請求項4】
前記第1弾性体、前記第2弾性体及び前記第3弾性体を構成する弾性体に代えて、シリンダーを使用したことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のリンク機構を有するシート装置。
【請求項5】
前記リンク機構は、ダンパーを備えていることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のリンク機構を有するシート装置。
【請求項6】
前記リンク機構は、リンクの移動をロックするロック機構を有することを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のリンク機構を有するシート装置。
【請求項7】
前記リンク機構は、可動装置を備えることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載のリンク機構を有するシート装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載のリンク機構を有するシート装置を備えた車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リンク機構を有するシート装置該シート装置を有する車両に関する。
【背景技術】
【0002】
前後に移動させるとそれに連動して座面の傾斜角度が変化する車両用シートとしては、乗員用シートのシートクッションをスライド自在に支持するスライドレールが前上がりの傾斜状態で車室内に配設されるとともに、上記スライドレールに沿ってシートクッションが車体の前後方向にスライド変位するように構成された自動車のシート位置調整装置において、上記シートクッションを車体の前後方向にスライド変位させる操作に連動してシートクッションを揺動変位させることにより座面の傾斜角度を変化させるチルト手段を備え、このチルト手段は、シートクッションを車体の前方側にスライド変位させる際に、後下がりに傾斜した上記座面の傾斜角度を小さくするように変化させるとともに、シートクッションが前方位置に近付くのに伴って上記傾斜角度の変化率を増大させるように構成されたことを特徴とする自動車のシート位置調整装置が提案されている(特許文献1)。
【0003】
この発明によれば、乗員用シートの前後位置を乗員の体格等に対応させて調整する動作に応じて、乗員の視界および運転操作性を適正に確保できるという効果を有する。
【0004】
しかしながら、かかるシート位置調整装置は、シートを移動させるのにスライド変位させる操作をしなければならず、体重移動のみでシートを移動させることができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、乗員が体重移動するという動作のみでシートの位置を移動させることができ、かつその移動に連動して座面の傾斜角度が変化するリンク機構を有するシート装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の目的を達成するために、以下の手段を採った。
【0008】
本発明にかかるリンク機構を有するシート装置は、
シートと
支持底面に対して前記シートの前後方向に回動可能に支持された第1リンクと、
前記第1リンクの後方に支持底面に対して前後方向に回動可能に支持された第2リンクと
前記第1リンクに一方側端部が前後方向に回動可能に連結された第3リンクと、
前記第2リンクに一方側端部が前後方向に回動可能に連結された第4リンクと、
前記第3リンク及び前記第4リンクが回動可能に連結された回動部と、
前記第1リンクを回動方向に付勢するように他方側端部が外部に固定された第1弾性体、前記第2リンクを回動方向に付勢するように他方側端部が外部に固定された第2弾性体及び前記回動部を上下方向に付勢するように他方側端部が支持底面に固定された第3弾性体から選択される少なくとも1以上の弾性体と、
を有し、前記シートを固定するリンク機構と、
を備えていることを特徴とする。
【0009】
本発明は、リンク機構を弾性体によって保持することで、シートに対して体重移動によって前後方向に力を加えることで、シートを前後に移動させることができる。したがって、外部操作をすることなくシートの位置を変更させることができる。また、シートを移動させた際に、同時にシートの傾きをシートの移動に連動させて変更することができる。
【0010】
また、本発明にかかるリンク機構を有するシート装置は、
シートと
支持底面に対して前記シートの側方方向に回動可能に支持された第1リンクと、
前記第1リンクの側方に支持底面に対して側方方向に回動可能に支持された第2リンクと
前記第1リンクに一方側端部が側方方向に回動可能に連結された第3リンクと、
前記第2リンクに一方側端部が側方方向に回動可能に連結された第4リンクと、
前記第3リンク及び前記第4リンクが回動可能に連結された回動部と、
前記第1リンクを回動方向に付勢するように他方側端部が外部に固定された第1弾性体、前記第2リンクを回動方向に付勢するように他方側端部が外部に固定された第2弾性体及び前記回動部を上下方向に付勢するように他方側端部が支持底面に固定された第3弾性体から選択される少なくとも1以上の弾性体と、
を有し、前記シートを固定するリンク機構と、
を備えていることを特徴とする。
【0011】
上記発明は、リンク機構を弾性体によって保持することで、シートに対して体重移動によって側方方向に力を加えることで、シートを左右に移動させることができる。したがって、外部操作をすることなくシートの位置を変更させることができる。また、シートを移動させた際に、同時にシートの傾きをシートの移動に連動させて変更することができる。
【0012】
また、本発明にかかるリンク機構を有するシート装置は、
シートと
前記シートの下方の前後左右に配置され、支持底面に自在継手によって連結された第1リンク、第2リンク、第3リンク及び第4リンクと、
それぞれ前記第1リンク、前記第2リンク、前記第3リンク及び前記第4リンクに一方側端部が自在継手によって連結された第5リンク、第6リンク、第7リンク及び第8リンクと、
前記第5リンク、前記第6リンク、前記第7リンク及び前記第8リンクの他方側端部をそれぞれ自在に方向を変更移動可能に連結された自在可動部と、
それぞれ前記第1リンク、前記第2リンク、前記第3リンク及び第4リンクに対して一方方向と反対方向に付勢するように取り付けられた4本の第1弾性体と、
前記自在可動部の両側に前記第1弾性体と水平方向に直交するように取り付けられた2本の第2弾性体と、
前記自在可動部の下方と支持底面との間に設けられた第3弾性体と、
を有し、前記シートを固定するリンク機構と、
を備えていることを特徴とする。
【0013】
上記発明は、リンク機構の連結部に自在継手(ユニバーサルジョイント)を使用し、かつリンク機構を弾性体によって保持することで、シートに対して体重移動によって水平方向のあらゆる方向に力を加えることで、シートを力を加えた方向に移動させることができる。したがって、外部操作をすることなくシートの位置を変更させることができる。また、シートを移動させた際に、同時にシートの傾きをシートの移動に連動させて変更することができる。
【0014】
また、本発明にかかるリンク機構を有するシート装置において、前記第1弾性体、前記第2弾性体及び前記3弾性体を構成する弾性体に代えて、シリンダーを使用したことを特徴とするものであってもよい。
【0015】
弾性体の代わりにシリンダーを使用しても同様の効果を得ることができる。
【0016】
さらに、本発明にかかるリンク機構を有するシート装置において、前記リンク機構は、ダンパーを備えていることを特徴とするものであってもよい。
【0017】
ダンパーを備えることによって、シートに対して急激に大きな力を加えた場合であっても、シートが急激に大きく移動することを防止することができる。
【0018】
さらに、本発明にかかるリンク機構を有するシート装置において、前記リンク機構は、リンクの移動をロックするロック機構を有することを特徴とするものであってもよい。
【0019】
ロック機構を備えることによって、シートを移動させたくない場合にシートの位置を固定することができる。また、移動させた状態でその位置を保持させることもできるようになる。
【0020】
さらに、本発明にかかるリンク機構を有するシート装置において、前記リンク機構は、可動装置を備えることを特徴とするものであってもよい。
【0021】
かかる構成を採用することによって、体重移動以外の手段によってもシートの位置を変更することができる。
【0022】
上述したリンク機構を有するシート装置は、車両のシートとして使用することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明にかかるシートレール装置によれば、乗員が体重移動するという動作のみでシートの位置を移動させることができ、かつその移動に連動して座面の傾斜角度が変化するリンク機構を有するシート装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、第1実施形態にかかるリンク機構20を有するシート装置100を示す側面図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態にかかるリンク機構20を有するシート装置100(シート10は省略してある)の斜視図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態にかかるリンク機構20を有するシート装置100の別実施形態を示す側面図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態にかかるリンク機構20を有するシート装置100に着座した状態を示す側面図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態にかかるリンク機構20を有するシート装置100に着座した状態で後方に体重移動した際の状態を示す側面図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態にかかるリンク機構20を有するシート装置100に着座した状態で前方に体重移動した際の状態を示す側面図である。
【
図7】
図7は、第2実施形態にかかるリンク機構20を有するシート装置100を示す側面図である。
【
図8】
図8は、第2実施形態にかかるリンク機構20を有するシート装置100に着座した状態を示す側面図である。
【
図9】
図9は、第2実施形態にかかるリンク機構20を有するシート装置100に着座した状態で後方に体重移動した際の状態を示す側面図である。
【
図10】
図10は、第2実施形態にかかるリンク機構20を有するシート装置100に着座した状態で前方に体重移動した際の状態を示す側面図である。
【
図11】
図11は、第3実施形態にかかるリンク機構20を有するシート装置100に着座した状態で前方に体重移動した際の状態を示す側面図である。
【
図12】
図12は、第4実施形態にかかるリンク機構20を有するシート装置100に着座した状態で前方に体重移動した際の状態を示す側面図である。
【
図13】
図13は、第5実施形態にかかるリンク機構20を有するシート装置100を示す斜視図である。
【
図14】
図14は、第5実施形態にかかるリンク機構20を有するシート装置100の自在可動部75を示す斜視図である。
【
図15】
図15は、各実施形態にかかるリンク機構20を有するシート装置100の別実施形態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係るリンク機構20を有するシート装置100の実施形態について、図面に沿って詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態及び図面は、本発明の実施形態の一部を例示するものであり、これらの構成に限定する目的に使用されるものではない。また、各図において対応する構成要素には同一又は類似の符号が付されている。なお、以下の説明において、シート10の前後を「前後方向」という。
【0026】
(第1実施形態)
第1実施形態にかかるリンク機構20を有するシート装置100が
図1及び
図2に示されている。
図1は、第1実施形態にかかるリンク機構20を有するシート装置100を示す側面図であり、
図2は、第1実施形態にかかるリンク機構20を有するシート装置100(シート10は省略してある)の斜視図である。
【0027】
第1実施形態にかかるリンク機構20を有するシート装置100は、
図1に示すように、シート10と、シート10を支持するリンク機構20と、を主として備えている。
【0028】
シート10は、着座可能なものであれば、特に限定するものではない。
【0029】
リンク機構20は、少なくとも4つのリンク(31~34)と、3つの弾性体(41~43)と、を備えている。4つのリンク(31~34)は、支持底面50に対して前後方向に回動可能に支持された第1リンク31と、この第1リンク31の後方に配置され、支持底面50に対して前後方向に回動可能に支持された第2リンク32と、第1リンク31の第1リンク上方側端部31aに対して一方側端部33aが第1回動軸部36で前後方向に回動可能に連結された第3リンク33と、第2リンク32の上方側端部32a対して第2回動軸部37で一方側端部34aが前後方向に回動可能に連結された第4リンク34と、を備えている。第3リンク33と第4リンク34は、互いに前後方向に回動可能となるように第3回動軸部38で交差するように連結されている。こうして全体として五節閉リンク構造をなしている。第1リンク31と第3リンク33との第1回動軸部36には、第1弾性体41の一方側端部41aが取り付けられており、他方側端部41bが外部の部材に固定されており、他方側端部41bの位置は変更されない。また、第2リンク32と第4リンク34との第2回動軸部37には、第2弾性体42の一方側端部42aが取り付けられており、他方側端部42bが外部の部材に固定されており、他方側端部42bの位置は変更されない。第1弾性体41又は第2弾性体42は、第1実施形態においては、それぞれ第1回動軸部36及び第2回動軸部37に設けられているが、
図3に示すように、それぞれ第1リンク31又は第2リンク32の中位に直接設けてもよい。さらに、第3弾性体43が支持底面50と第3リンク33と第4リンク34の交点である第3回動軸部38に連結されており、シート10に何ら力が加わっていない状態で垂直に配置されている。第1弾性体41~第3弾性体43は、それぞれつるまきばねが使用されている。
【0030】
シート10は、第3リンク33及び第4リンク34の先端にブラケット11を介して取り付けられる。ブラケット11は、第3リンク33と第4リンクの34の可動により互いの先端の幅が変化するため、変化する間隔を移動可能なようにブラケット11内をスライド可能となるように取り付けられる。具体的には、第3リンク33又は第4リンク34のいずれか一方(本実施形態においては、第3リンク33)の他方側端部33bをシート10に対して回動可能に設け、他方のリンク(本実施形態においては第4リンク34)をブラケット11に長穴を設けてスライド可能となるように取り付けられている。
【0031】
なお、リンク機構20は、シート10をより安定的に取り付けられるように、
図2に示すように、シート10の左右両側にそれぞれリンク機構20を設け、それぞれのリンク機構20の第1回動軸部36同士、第2回動軸部37同士及び第3回動軸部38同士がそれぞれ回転軸で連結するとよい。このような構成にすることによって、より堅固なリンク機構20とすることができる。
【0032】
こうして作製されたシート装置100は、シート10の座面が水平の状態でそれぞれの弾性体は釣り合うように調整されており、何も力が加わっていない状態では
図1に示すように水平状態が維持されている。この状態でシート10に人間が着座すると人間の体重により、
図4に示すように、第1リンク31及び第3リンク33と、第2リンク32及び第4リンク34がほぼ同じ角度に屈曲され、シート10は水平状態を維持した状態で下方へ移動する。すなわち、座面がわずかに沈み込むことになる。この状態から体重を後方側へ移動しつつ荷重を後方側へ移動すると、
図5に示すように、第1リンク31と第3リンク33は、互いの角度αが大きくなるように移動し、第2リンク32と第4リンク34は、互いの角度βが小さくなるように移動する。これにより、シート10は全体的に後方へ移動する。この際に、
図5に示すように、第3リンク33の第3回動軸部38からブラケット11側の先端の回転中心までの長さAと、第4リンク34の第3回動軸部38からブラケット11側の先端の回転中心までの長さBの長さの比によって、シート10が後方へ移動する距離に応じたシート10の傾き方向及び傾き具合を調整することができる。AよりBの方が長く形成されていると、
図5に示すように、シート10が後方へ移動するに伴って後方側が高くなるように移動する。一方、AよりBの方が短く形成されているとシート10が後方へ移動するに伴って後方側が低くなるように移動する。また、このAとBの長さの差が大きくなれば、シート10の傾きを大きくさせることができる。したがって、この第3リンク33の第3回動軸部38からブラケット11側の先端の回転中心までの長さAと、第4リンク34の第3回動軸部38からブラケット11側の先端の回転中心までの長さBは適宜選択することで座席の移動と傾き具合を最適化することができる。逆に前方側へ体重を移動しつつ荷重を前方に加えると、
図6に示すように、第1リンク31と第3リンク33は、互いの角度αが小さくなるように移動し、第2リンク32と第4リンク34は、互いに角度βが大きくなるように移動する。これにより、シート10は全体的に前方へ移動する。この際に、後方へ移動する場合のように、第3リンク33の第3回動軸部38からブラケット11側の先端の回転軸までの長さAと、第4リンク34の第3回動軸部38からブラケット11側の先端の回転軸までの長さBの長さの比によって、シート10が後方へ移動する距離に応じたシート10の傾きを調整することができる。AよりBの方が長く形成されていると、
図6に示すように、シート10が前方へ移動するに伴って後方側が低くなるように移動する。一方、AよりBの方が短く形成されているとシート10が前方へ移動するに伴って後方側が高くなるように移動する。また、この差が大きくなれば、シート10の傾きを大きくさせることができる。
【0033】
このようにして、第1実施形態にかかるリンク機構20を有するシート装置100によれば、シート10を移動させるための特別な操作をすることなく、体重移動だけでシート10の前後位置を変更することができる。しかも、移動に応じてシート10の傾きを変更させることができ、シート10の前後位置に応じて適切なシート10の傾きを確保することができる。
【0034】
(第2実施形態)
第2実施形態にかかるリンク機構20を有するシート装置100が
図7に示されている。第2実施形態にかかるシート装置100は、第1実施形態にかかるリンク機構20に対して、シートを取り付ける構造が異なっている。第2実施形態にかかるリンク機構20は少なくとも4つのリンク(31~34)と、3つの弾性体(41~43)と、を備えており、それぞれのリンクの連結構成は第1実施形態と同様である。第2実施形態にかかるリンク機構は、第3リンク33と第4リンク34で形成される第3回動軸部38が、他方側端部同士で連結されており第3回動軸部38から突出するようにそれぞれのリンクが延びていない点が異なる。シート10は、左右に配置されたリンク機構20の第3回動軸部38同士に架設された棒状の第3回転軸38a(
図2の38aに相当する部品)に固定された支持部材70をブラケット11に固定することで取り付けられている。第3回転軸38aは、第3リンク33又は第4リンク34のいずれかにのみ固定されていて、他方とは自由に回転可能に設けられている。それ以外の構成は第1実施形態と同様である。
【0035】
こうして作製されたシート装置100は、シート10の座面が水平の状態でそれぞれの弾性体は釣り合うように調整されており、何も力が加わっていない状態では水平状態が維持されている。この状態のシート10に人間が着座すると人間の体重により、
図8に示すように、第1リンク31と第3リンク33の屈曲と、第2リンク32と第4リンク34の屈曲がほぼ同じ角度に屈曲され、シート10は、水平状態を維持した状態で下方へ移動することになる。第1リンク31及び第3リンク33と、第2リンク32及び第4リンク34がほぼ同じ角度に屈曲され、シート10は水平状態を維持した状態で下方へ移動する。すなわち、座面がわずかに沈み込むことになる。この状態から、後方側へ体重を移動しつつ荷重を加えると、
図9に示すように、第1リンク31と第3リンク33は、互いの角度αが大きくなるように移動し、第2リンク32と第4リンク34は、互いの角度βが小さくなるように移動する。これにより、シート10は全体的に後方へ移動する。この際に、第3回転軸38aは、第3リンク33は垂直方向との角度γが小さくなるように移動し、第4リンク34は垂直方向との角度δが大きくなる方向に移動するため、第3回転軸38aは、第3リンク33又は第4リンク34のいずれに固定されていた場合であっても、シート10の前方側が低くなる方向に回転(
図9に示す矢印の方向)する。よって、シート10を後方へ移動するにしたがってシート10は後方が高くなるように移動する。逆に前方側へ体重を移動しつつ力を加えると、
図10に示すように、第1リンク31と第3リンク33は、互いの角度αが小さくなるように移動し、第2リンク32と第4リンク34は、互いに角度βが大きくなるように移動する。これにより、シート10は全体的に前方へ移動する。この際に、後方へ移動する場合と反対に、第3回転軸38aは、第3リンク33は垂直方向との角度γが大きくなるように移動し、第4リンク34は垂直方向との角度δが小さくなる方向に移動するため、第3回転軸38aは、第3リンク33又は第4リンク34のいずれに固定されていた場合であっても、シート10の前方側が高くなる方向に回転(
図10に示す矢印の方向)する。よって、シート10を前方へ移動するにしたがってシート10は後方が低くなるように移動する。
【0036】
このようにして、第2実施形態にかかるシート装置100によれば、特別にシート10を移動させるための操作をすることなく、体重移動だけでシート10の前後位置を変更することができる。しかも、移動に応じてシート10の傾きを変更させることができ、シート10の前後位置に応じて適切なシート10の傾きを確保することができる。
【0037】
(第3実施形態)
第3実施形態にかかるリンク機構20を有するシート装置100が
図11に示されている。第3実施形態にかかるシート装置100は、第2実施形態にかかるリンク機構20に対して、第3弾性体43が支持底面50に固定されておらず、前後方向へ移動可能な移動体51に設けられている点が異なる。移動体51としては、例えば、支持底面50にロアレールとこのロアレールに移動可能に設けられたアッパーレールとからなるスライドレールのアッパーレール等が考えられる。これ以外の構成は第2実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0038】
第3実施形態にかかるシート装置100によれば、シート10を前後に移動した場合であっても、第3弾性体43の垂直が保たれるので、第2実施形態のように斜めに伸ばされた第3弾性体43によって斜め方向に力が加えられることが防止される。そのため、シート10に余計な力が加わることなく、スムーズに前後方向の移動が可能となる。
【0039】
なお、第3弾性体43の移動体51の構成は、第1実施形態と組み合わせて使用してもよい。
【0040】
(第4実施形態)
第4実施形態にかかるリンク機構20を有するシート装置100が
図12に示されている。第4実施形態にかかるシート装置100は、第1実施形態にかかるリンク機構20がシート10に対して前後方向へ移動可能となるように配置されているのに対してリンク機構20がシート10に対して90°水平方向に回転して取り付けられている点が異なる。リンク機構20自体は第1実施形態と同様である。
【0041】
このようなリンク機構20を有するシート装置100によれば、側方方向、すなわち左右方向に対して移動可能なシート10を有するシート装置100とすることができる。すなわち、側方方向に荷重を加えることによって第1実施形態と同様の動きでシート10を左右方向に移動させることができ、また左右へシート10を移動させた際にシート10の左右の傾きを変更させることができる。
【0042】
なお、リンク機構20に対してシート10を90°水平回転させて取り付ける構成は、第2実施形態及び第3実施形態のリンク機構20と組み合わせて使用してもよい。
【0043】
(第5実施形態)
第5実施形態にかかるシート装置100が
図13に示されている。第5実施形態にかかるシート装置100は、
図13に示すように、シート10(点線表示)と、シート10を支持するリンク機構20とを主として備えている。
【0044】
リンク機構20は、8本のリンクと、7本の弾性体と、を備えている。8本のリンク(61~68)は、シート10の前後左右に上面視で四角形となるように配置されており、支持底面50に対してすべての方向へ屈曲移動可能なように自在継手80(ユニバーサルジョイント)で固定された4本の第1リンク61、第2リンク62、第3リンク63及び第4リンク64と、これら4本のリンクにそれぞれすべての方向へ屈曲移動可能な第1自在継手71、第2自在継手72、第3自在継手73、第4自在継手74に一方側端部が連結された第5リンク65、第6リンク66、第7リンク67及び第8リンク68と、を備えている。それぞれ第5リンク65、第6リンク66、第7リンク67及び第8リンク68の他方側端部は、それぞれが互いに自在に移動可能な自在継手で連結された自在可動部75が形成されている。自在可動部75は、例えば、
図14に示すように4方向に球体が収納可能な収納領域を有しており、この収納領域にそれぞれ第5リンク65、第6リンク66、第7リンク67及び第8リンク68の他方側端部に形成された球体がはめ込まれた形態をなしているものが挙げられる。自在可動部75の頂面には、シート支持部材90が設けられており、このシート支持部材90にシート10が取り付けられる。また、それぞれ第1自在継手71、第2自在継手72、第3自在継手73、第4自在継手74に連結された4本の第1弾性体(81~84)を有しており、すべて水平でそれぞれが互いに平行に配置されてそれぞれの自在継手と反対側の端部はリンク機構20の外部部材(図示しない。)に取り付けられて位置が固定されている。第1自在継手71、第2自在継手72に連結された第1弾性体81、82は水平に一方方向に付勢され、第3自在継手73、第4自在継手74に連結された第1弾性体83、84は、反対方向に付勢されている。自在可動部75には、第1弾性体81と水平方向に直交するように自在可動部75の両側に2本の第2弾性体85、86が設けられており、自在可動部75と連結された反対側の端部が外部部材(図示しない。)に取り付けられて位置が固定されている。さらに、自在可動部75には、支持底面50と連結されて垂直方向に付勢している第3弾性体87が設けられている。
【0045】
以上のように作製されたリンク機構20は、第1リンク61、第2リンク62、第5リンク65及び第6リンク66の組み合わせ、第2リンク62、第3リンク63、第6リンク66及び第7リンク67の組み合わせ、第3リンク63、第4リンク64、第7リンク67及び第8リンク68の組み合わせ、第1リンク61、第4リンク64、第5リンク65及び第8リンク68の組み合わせ、第1リンク61、第3リンク63、第5リンク65及び第7リンク67の組み合わせ、第2リンク62、第4リンク64、第6リンク66及び第8リンク68の組み合わせのそれぞれが、五節閉リンク構造をなすことになる。それぞれのリンクは自在継手で接続されているので、シート10は水平方向360°すべての方向に移動させることができ、前述した実施形態の原理により、シート10の移動した側高くなるように傾斜することになる。
【0046】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得る。
【0047】
上述した実施形態においては、弾性体としてつるまきばねを使用したが、つるまきばねに代えて、エアシリンダー又は油圧シリンダー等のシリンダーを使用してもよい。
【0048】
また、上述した実施形態において、
図15に示すように、1本又はそれ以上のダンパー91を取り付けてもよい。ダンパー91を取り付けることによって、移動方向に強い力が加わった場合であっても急激にシート10が移動することを防止することができる。
【0049】
さらに、上述した実施形態において、シート10を所定の位置でロック可能なロック機構92を設けてもよい。ロック機構92としては、例えば、リンクの回動部に自動車用シートのリクライニング装置等を取り付けることで達成することができる。
【0050】
さらに、上述した実施形態において、シート10を所定の位置に自動で移動させることができるように可動装置を設けても良い。例えば、回動部に自動車用シートのリクライニング装置92にモータ93を連動させることにより達成することができる。
【0051】
なお、上述した各実施形態にかかるリンク機構20を有するシート装置100は、車両用シート、特に自動車用シートに適用すると好適である。リンク機構20を有するシート装置100を備えた車両は、体重移動させるだけでシート10の位置を変更することができる。
【0052】
なお、上述した第1実施形態~第4実施形態にかかるシート装置の第1弾性体41~第3弾性体43をすべて有する実施例を示したが、必ずしもすべて有する必要はなく、いずれか1つ又はいずれか2つのみであってもよい。3つの弾性体を取り付ける場合と比較してより強い弾性力を有する弾性体を使用する必要はあるが同様の効果を得ることができる。弾性体の代わりにシリンダーを使用した場合も同様にいずれか1つ又はいずれか2つのみであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
上述した実施形態で示すように、車両用シートとして、産業上利用可能である。
【符号の説明】
【0054】
10…シート、11…ブラケット、20…リンク機構、31…第1リンク、31a…第1リンク上方側端部、32…第2リンク、33…第3リンク、33a…一方側端部、33b…他方側端部、34…第4リンク、34a…一方側端部、36…第1回動軸部、37…第2回動軸部、38…第3回動軸部、38a…第3回転軸、40…弾性体、41…第1弾性体、41a…一方側端部、41b…他方側端部、42…第2弾性体、42a…一方側端部、42b…他方側端部、43…第3弾性体、50…支持底面、51…移動体、61…第1リンク、62…第2リンク、63…第3リンク、64…第4リンク、65…第5リンク、66…第6リンク、67…第7リンク、68…第8リンク、70…支持部材、71…第1自在継手、72…第2自在継手、73…第3自在継手、74…第4自在継手、75…自在可動部、80…自在継手、81、82、83、84…第1弾性体、85、86…第2弾性体、87…第3弾性体、90…シート支持部材、91…ダンパー、92…ロック機構、93…モータ、100…シート装置