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7136702神経信号を刺激するための方法およびシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】神経信号を刺激するための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/36 20060101AFI20220906BHJP
   A61N 1/37 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
A61N1/36
A61N1/37
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018561670
(86)(22)【出願日】2017-05-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-07-11
(86)【国際出願番号】 US2017034863
(87)【国際公開番号】W WO2017205847
(87)【国際公開日】2017-11-30
【審査請求日】2020-05-19
(31)【優先権主張番号】62/342,402
(32)【優先日】2016-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/450,478
(32)【優先日】2017-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501228071
【氏名又は名称】エスアールアイ インターナショナル
【氏名又は名称原語表記】SRI International
【住所又は居所原語表記】333 Ravenswood Avenue, Menlo Park, California 94025, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100098899
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 信市
(74)【代理人】
【識別番号】100163865
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 健
(72)【発明者】
【氏名】コノリー, クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】リンカン, パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ヤーダヴ, マニーシュ
(72)【発明者】
【氏名】コーンウェル, ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ラママーシー, バスカー
【審査官】宮崎 敏長
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-538994(JP,A)
【文献】特表2013-528416(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0022995(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/36 - A61N 1/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者に神経調節信号を適用するためのシステムであって、
複数の合成神経調節信号を含むように構成された神経調節信号ジェネレータシステムであって、各合成神経調節信号は1又は複数の状態パラメータによって表される1又は複数の状態のシーケンスとして少なくとも1つの処理済み測定末梢神経組織信号を表す、神経調節信号ジェネレータシステムと、
前記神経調節信号ジェネレータシステムと通信する電子デバイスとを備え、前記電子デバイスは、
少なくとも1つの所望の効果の選択を前記使用者から受け取るように構成されたユーザインタフェースであって、可能な所望の効果を前記使用者に提示するように構成されたユーザインタフェースと、
前記少なくとも1つの所望の効果の前記選択を前記ユーザインタフェースから受け取り、前記神経調節信号ジェネレータシステムに接続して、前記選択された所望の効果と関連付けられた合成神経調節信号を検索する通信モジュールであって、前記使用者が、前記所望の効果を選択すると、前記電子デバイス内の前記通信モジュールは、前記ユーザインタフェースから、少なくとも1つの所望の効果の前記使用者の選択を受け取るように構成されている通信モジュールと、を備え、
前記検索された合成神経調節信号を前記使用者に適用することにより、前記使用者が、薬物を前記使用者に適用することなく前記所望の効果を経験するように構成される、システム。
【請求項2】
前記神経調節信号ジェネレータシステムが、ある状態に置かれた対象から得られた複数の測定された末梢神経組織信号を含む記憶モジュールを備える、請求項1に記載のシステ
ム。
【請求項3】
前記神経調節信号ジェネレータシステムが、前記記憶モジュールと通信して前記少なくとも1つの末梢神経組織信号を受け取りかつ前記合成神経調節信号を作り出すように構成された状態機械ジェネレータモジュールであって、前記合成神経調節信号は前記処理済み測定末梢神経組織信号のうちの少なくとも1つを1又は複数の状態のシーケンスとして表すことによって作り出され、各状態は前記合成神経調節信号を形成するよう変換される1又は複数の状態パラメータによって表される、状態機械ジェネレータモジュールを備える、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記合成神経調節信号の表現を受け取り、前記表現を前記使用者に適用するように構成されたアプリケータをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記神経調節信号ジェネレータシステムが、a)前記使用者の必要性または希望を識別する識別パラメータ、b)前記神経調節信号の予定送達時間パラメータ、c)前記神経調節信号の適用パラメータの周波数、d)前記神経調節信号の適用の継続期間を示すパラメータ、およびe)前記神経調節信号の強度を示すパラメータからなる群から選択される、記憶された操作パラメータを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記選択された所望の効果が、使用者の空腹時、疲労時、寒い時、及び温かい時の少なくとも1つの時に、対抗措置をとることであり、そして、そのために、前記ユーザインタフェースは、可能な所望の効果のリストを前記使用者に提示し、前記神経調節信号ジェネレータシステムと協働して、前記使用者が空腹時、疲労時、寒い時、温かい時の少なくとも1つの時に対抗措置をとるための前記選択された所望の効果と関連付けられた前記合成神経調節信号を検索するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記選択された所望の効果が、うつ病を治療することであり、そして、そのために、前記ユーザインタフェースは、可能な所望の効果のリストを前記使用者に提示し、前記神経調節信号ジェネレータシステムと協働して、前記うつ病の治療のための前記選択された所望の効果と関連付けられた前記合成神経調節信号を検索するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記選択された所望の効果が、食欲を減らすことであり、そして、そのために、前記ユーザインタフェースは、可能な所望の効果のリストを前記使用者に提示し、前記神経調節信号ジェネレータシステムと協働して、前記食欲を減らすための前記選択された所望の効果と関連付けられた前記合成神経調節信号を検索するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記選択された所望の効果が、抗炎症効果、および/または、炎症誘発効果を提供することであり、そして、そのために、前記ユーザインタフェースは、可能な所望の効果のリストを前記使用者に提示し、前記神経調節信号ジェネレータシステムと協働して、前記抗炎症効果、および/または、炎症誘発効果を提供するための前記選択された所望の効果と関連付けられた前記合成神経調節信号を検索するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、米国特許法§119(e)の下に、2016年5月27日に出願した、「A METHOD FOR COMPILING AND SYNTHESIZING STIMULATION SIGNALS FOR VAGUS-BASED SOMATIC CONTROL」という名称の米国仮出願第62/342,402号、および2017年1月25日に出願した、「MODULATION OF NERVOUS SYSTEM SIGNALS」という名称の米国仮出願第62/450,478号へと優先権を主張するものであり、これらの関連出願の各々の内容は、参照によりそれらのすべてが本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、一般に、神経信号を刺激するための方法、デバイスおよびシステムに関する。より詳細には、本開示は、測定された末梢神経組織信号を合成神経調節信号(NMS)に処理し、その合成神経調節信号の表現を分配および生成された合成神経調節信号を、個人化された治療利点の提供を始めとする様々な用途のために対象に適用するための技術に関する。
【背景技術】
【0003】
人体の各々の側には1本の迷走神経が存在している。迷走神経は自律神経系の主要な構成要素であり、代謝性恒常性の調整に重要な役割を果たしている。
【0004】
てんかんおよびうつ病などの様々な状態の治療として左頚部迷走神経を刺激するのに、移植可能なデバイスが使用されている。これらのデバイスは、典型的には患者の上部胸部の皮下にジェネレータを置くことによる外科手術を介して移植される。次に電極リード線がジェネレータから迷走神経に取り付けられる。右頚部迷走神経を刺激するためのデバイスを使用して、一例として心不全が治療されている。
【0005】
また、迷走神経の耳介枝(ABVN)の皮膚受容領域をターゲットにすることによってABVNを刺激するのに、経皮性デバイスも使用されている。音響信号と比較すると、左耳甲介艇に知覚閾値より上かつ痛覚閾値より下の電気信号を印加することにより、左頚部腹神経刺激の脳活性化と変わらない脳活性化が得られる。Dietrich S、Smith J、Scherzinger Cら、A novel transcutaneous vagus nerve stimulation leads to brainstem and cerebral activations measured by functional MRI、Biomed Tech (Berl)2008;53:104-111を参照されたい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本明細書においては、神経系信号を変調するためのシステム、デバイスおよび方法が開示される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態は、使用者に神経調節信号を適用するためのシステムであって、システムは、複数の合成神経調節信号を含む神経調節信号ジェネレータシステムであって、各合成神経調節信号が、1又は複数の状態パラメータによって表される1又は複数の状態のシーケンスとして少なくとも1つの処理済み測定末梢神経組織信号を表す神経調節信号ジェネレータシステムと、神経調節信号ジェネレータシステムと通信する電子デバイスとを備え、電子デバイスは、
【0008】
少なくとも1つの所望の効果の選択を使用者から受け取るように構成されたユーザインタフェースと、
【0009】
少なくとも1つの所望の効果の選択をユーザインタフェースから受け取り、神経調節信号生成システムに接続して、選択された所望の効果と関連付けられた合成神経調節信号を検索する通信モジュールと
を備え、
【0010】
検索された合成神経調節信号を使用者に適用することにより、使用者は、薬物を使用者に適用することなく所望の効果を経験する。
【0011】
別の実施形態は、使用者に施されるべき合成神経調節信号を検索する方法であって、方法は、電子デバイスのユーザインタフェースから所望の効果の選択を受け取るステップと、選択に応答して、所望の効果と関連付けられた第1の合成神経調節信号を電子デバイスにダウンロードするステップと、ユーザインタフェースから、ダウンロードされた第1の合成神経調節信号の適用に関連する操作パラメータの入力を受け取るステップとを含む。
【0012】
さらに別の実施形態は、実行されたときに、電子デバイスのユーザインタフェースから所望の効果の選択を受け取るステップと、選択に応答して、所望の効果と関連付けられた第1の合成神経調節信号を電子デバイスにダウンロードするステップと、ユーザインタフェースから、ダウンロードされた第1の合成神経調節信号の適用に関連する操作パラメータの入力を受け取るステップとを含む方法を実施する命令を含む非一時的コンピュータ可読媒体である。
【0013】
一追加実施形態は、1又は複数の測定された末梢神経組織信号を、使用者に適用し得る神経調節信号に変換するための神経調節信号ジェネレータシステムであって、神経調節信号ジェネレータシステムは、ある状態に置かれた対象から獲得された1又は複数の測定された末梢神経組織信号を含む記憶モジュールと、記憶モジュールと通信して1又は複数の測定された末梢神経組織信号のうちの少なくとも1つを受け取る、少なくとも1つの測定された末梢神経組織信号を処理するように構成された処理モジュールと、処理モジュールと通信して少なくとも1つの処理済み測定末梢神経組織信号を受け取り、合成神経調節信号を作り出すように構成された状態機械ジェネレータモジュールであって、前記合成神経調節信号は、処理済み測定末梢神経組織信号のうちの少なくとも1つを1又は複数の状態のシーケンスとして表すことによって作り出され、各状態は、合成神経調節信号に変換される1又は複数の状態パラメータによって表される、状態機械ジェネレータモジュールと、合成神経調節信号を使用者に適用するように構成されるデバイスに合成神経調節信号を送る通信モジュールとを備え、合成神経調節信号を使用者に適用することにより、使用者は、上記状態を使用者に適用することなく所望の効果を経験する。
【0014】
他の一実施形態は、1又は複数の測定された末梢神経組織信号を、使用者に適用し得る神経調節信号に変換するための方法であって、方法は、ある状態に置かれた対象から獲得された少なくとも1つの測定された末梢神経組織信号を受け取るステップと、測定された末梢神経組織信号のうちの少なくとも1つを1又は複数の状態のシーケンスとして表すことによって合成神経調節信号を作り出すステップであって、各状態が、合成神経調節信号に変換される1又は複数の状態パラメータによって表されるステップと、合成神経調節信号を、合成神経調節信号を使用者に適用するように構成されたデバイスに送るステップとを含み、合成神経調節信号を使用者に適用することにより、使用者は、上記状態を使用者に適用することなく所望の効果を経験する。
【0015】
一実施形態は、実行されたときに、ある状態に置かれた少なくとも1つの対象から獲得された少なくとも1つの末梢神経組織信号を受け取るステップと、末梢神経組織信号のうちの少なくとも1つを1又は複数の状態のシーケンスとして表すことによって合成神経調節信号を作り出すステップであって、各状態が1又は複数の状態パラメータによって表されるステップと、合成神経調節信号を、合成神経調節信号を使用者に適用するように構成されたデバイスに送るステップとを含み、合成神経調節信号を使用者に適用することにより、使用者は、上記状態を使用者に適用することなく所望の効果を経験する方法を実施する命令を含む非一時的コンピュータ可読媒体である。
【0016】
別の実施形態は、使用者に適用し得る神経調節信号を生成するための電子デバイスであり、電子デバイスは、少なくとも1つの所望の効果の選択を使用者から受け取るように構成されたユーザインタフェースと、ユーザインタフェースから選択を受け取り、遠隔神経調節信号生成システムに接続してその選択を通信し、また、1)その選択と関連付けられた少なくとも1つの神経調節信号の第1の表現、および2)その選択に関連する一組のパラメータを受け取る通信モジュールと、少なくとも1つの神経調節信号の第1の表現を受け取り、かつ、前記第1の表現に基づき前記少なくとも1つの神経調節信号の第2の表現を生成するように構成される神経調節信号生成モジュールであって、前記第2の表現は使用者に適用される、神経調節信号生成モジュールと、を備え、神経調節信号の第2の表現を使用者に適用することにより、使用者は、薬物を使用者に適用することなく所望の効果を経験する。
【0017】
一追加実施形態は、神経調節信号の表現を生成するための方法であって、方法は、少なくとも1つの所望の効果の選択を使用者から受け取るステップと、神経調節信号生成システムに接続してその選択を通信し、1)その選択と関連付けられた少なくとも1つの神経調節信号の第1の表現、および2)その選択に関連する一組の操作パラメータを受け取るステップと、前記少なくとも1つの神経調節信号の前記第1の表現を受け取るステップと、前記第1の表現に基づき前記少なくとも1つの神経調節信号の第2の表現を生成するステップであって、前記第2の表現は使用者に適用される、ステップと、を備え、神経調節信号の第2の表現を使用者に適用することにより、使用者は、薬物を使用者に適用することなく所望の効果を経験するステップとを含む。
【0018】
一追加実施形態は、実行されたときに、少なくとも1つの所望の効果の選択を使用者から受け取るステップと、神経調節信号生成システムに接続してその選択を通信し、1)その選択と関連付けられた少なくとも1つの神経調節信号の第1の表現、および2)その選択に関連する一組の操作パラメータを受け取るステップと、少なくとも1つの神経調節信号の前記第1の表現を受け取るステップと、前記第1の表現に基づき前記少なくとも1つの神経調節信号の第2の表現を生成するステップであって、前記第2の表現は前記使用者に適用される、ステップと、を備え、神経調節信号の第2の表現を使用者に適用することにより、使用者は、薬物を使用者に適用することなく所望の効果を経験するステップとを含む方法を実施する命令を含む非一時的コンピュータ可読媒体である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】いくつかの特性によって「状態」を表すことができることを示すデータ流れ図である。
【0020】
図2】異なる継続期間を有する状態を遷移によって分離することができることを示す略図である。
【0021】
図3A】各状態が一組のパラメータによって特徴付けられている3つの状態のシーケンスを示す図である。
【0022】
図3B】例示的ベースパルス形状を示す図である。
【0023】
図4】複数のスレッドを有する状態機械を示す略図である。
【0024】
図5】状態機械モデルを使用して神経像を処理し、それにより合成神経調節信号(NMS)を生成し、特定のNMSパラメータに基づいてNMSの表現を適用する方法を示す図である。
【0025】
図6】状態機械モデルを使用して神経像を処理および適用し、それにより合成神経調節信号を生成し、特定のNMSパラメータに基づいてNMS表現を適用する別の方法を示す図である。
【0026】
図7A】記録された神経像の反復処理を示す流れ図である。
【0027】
図7B】処理された神経像の一実施形態を示す図である。
【0028】
図8A】NMSパラメータをサブミットすることができる合成神経調節信号ライブラリを示す略図である。
【0029】
図8B】神経調節信号の安全性を試験する方法を示す流れ図である。
【0030】
図9】NMSを個人化して動物またはヒトの使用者に適用するための別の合成神経調節信号ライブラリを示す略図である。
【0031】
図10】1又は複数のNMSの表現を生成および生成されたNMSの特定の表現を適用するために一組の合成神経調節信号をダウンロードすることができるシステムを示す略図である。
【0032】
図11】神経調節信号ジェネレータシステムを示す機能ブロック図である。
【0033】
図12】一例示的遠隔神経調節信号ジェネレータシステムを示す機能ブロック図である。
【0034】
図13】編集前の一例示的NDEスクリーンショットの一実施形態を示す図である。
【0035】
図14】編集後の一例示的NDEスクリーンショットの一実施形態を示す図である。
【0036】
図15】一例示的状態機械ファイルの一実施形態を示す図である。
【0037】
図16】一例示的局所神経調節信号ジェネレータシステムを示す機能図である。
【0038】
図17】認証のための実例方法を示す図である。
【0039】
図18】合成神経調節信号および認証信号を示す図である。
【0040】
図19】別の合成神経調節信号ジェネレータシステムを示す機能ブロック図である。
【0041】
図20】ミドルウェア層を有する合成神経調節信号ジェネレータシステムの一実施形態を示す機能ブロック図である。
【0042】
図21】ミドルウェア層を有する合成神経調節信号ジェネレータシステムの第2の実施形態を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下の詳細な説明では、本明細書の一部を形成している添付の図面が参照されている。図面では、同様の記号は、文脈が特に指示していない限り、典型的には同様の構成要素を識別している。詳細な説明、図面および特許請求の範囲の中で説明されている実例実施形態は、制限的であることを意味していない。本明細書において提示されている主題の趣旨または範囲を逸脱することなく他の実施形態を利用することも可能であり、また、他の変更を加えることも可能である。本明細書において概略的に説明され、また、図に示されている本開示の態様は、広範囲にわたる様々な異なる構成で配置し、置換し、組み合わせ、分割し、設計することができることは容易に理解され、これらのすべては本明細書において明確に企図されており、また、本明細書における開示の一部をなしている。
【0044】
本明細書において参照されているすべての特許、公開特許出願、他の刊行物およびデータベースは、関連する技術に関して、参照によりそれらのすべてが組み込まれている。
【0045】
定義
特に定義されていない限り、本明細書において使用されている技術的および科学的用語は、本開示が属している分野の当業者によって広く理解されている意味と同じ意味を有している。以下、本開示の目的のために以下の用語が定義される。
【0046】
本明細書において使用されているように、「刺激」という用語は、電気的であれ、機械的であれ、あるいはそれ以外のものであれ、神経または神経系(例えば迷走神経の一部)のあらゆる刺激を意味し得る。例えば対象の末梢神経を刺激することができる。末梢神経は、体細胞神経系および自律神経系を含む末梢神経系(PNS)の神経であってもよい。体細胞神経系は、視神経を除く頭蓋神経を含む。頭蓋神経は、嗅覚神経、視神経、眼球運動神経、滑車神経、外転神経、三叉(眼の)神経、三叉(上顎の)神経、三叉(下顎の)神経、顔面神経、内耳神経、舌咽神経、迷走神経、副神経および舌下神経を含む。PNS系は、上腕神経叢、筋皮神経(橈骨神経、正中神経、尺骨神経など)、胸腹神経(肋間神経、肋骨下神経、腸骨下腹神経、大腿の外側皮神経、陰部大腿神経など)、腰神経叢(閉鎖神経、大腿神経、大腿神経の筋枝、伏在神経など)および仙骨神経叢(座骨神経、脛骨神経、総腓骨神経、深腓骨神経、浅在腓骨神経、腓腹神経など)を含む。神経を刺激することにより、1又は複数のニューロンを所望の神経像によって示される振幅およびタイミングと同じ振幅およびタイミングで発火することができる。神経系刺激は、電気的または機械的な刺激によって、あるいは他の手段(光刺激など)によって実現することができる。
【0047】
本明細書において使用されているように、「神経像」という用語は、神経を縦走する信号の測値を意味している。一実施形態では、神経像は、対象の特定の状態の適用に応答して生成することができる。本明細書において使用されている「対象」という用語の使用は、ある状態下に置かれ、神経像を提供する任意の動物またはヒトの対象を含むことを認識されたい。例えば状態は、薬物の投与などによって特定の治療が対象に施されていた状態であってもよい。また、状態は、対象が特定の状況にある状態、例えば対象が空腹である、疲労している、冷たい、温かいまたは任意の他の状況にあり、ただし外部組成によって取り扱われていなかった状態であってもよい。神経像の一例には、電気的神経スパイクの構造化されたシーケンスがあり、電気的神経スパイクのシーケンスは、特徴的な振幅包絡線、スパイク間インターバルプロファイルおよび有限時間範囲(例えば定義された時間インターバル)を有している。「神経像」は、末梢神経の状態の電気的記録表現であってもよい。神経像は、例えば有限状態機械によって処理して、処理された神経像の合成神経調節信号を生成することができる。
【0048】
本明細書において使用されているように、「状態機械」表現または「有限状態機械」表現という用語は、例えば刺激の数学的モデルまたは数値的モデルを意味することができる。開示されるシステムのいくつかのバージョンでは、状態機械表現における各状態は、既知のスパイク振幅およびタイミングインターバルを指示する一組のパラメータに対応している。例えば処理された神経像は、その一組のパラメータに従って刺激を適用することにより、既知の、または期待されるスパイク振幅およびタイミングを得ることができるよう、関連する一組の合成神経調節信号を有することができる。
【0049】
概説
本発明の実施形態は、動物およびヒトの患者/使用者の薬物に基づく治療の代替として、神経を刺激するシステムおよび方法に関している。本明細書において使用されているように、「使用者」という用語は、1)システムを使用して合成神経調節信号を選択および適用する人、例えば医師またはサービスプロバイダ、2)合成神経調節信号の受容体、3)測定された末梢神経組織信号(神経像)の対象を示すことができる。また、使用者は、友人、家族構成員または薬剤師であってもよい。いくつかの実例では、システムを使用する使用者または施される合成神経調節信号を有している使用者は同じ人であってもよい。一実施形態では、システムは、特定の刺激を使用して神経を興奮させることにより、迷走神経などの神経に的を絞っている。以下で説明されるように、神経系の刺激は、患者の炎症性および自己免疫性状態の薬物治療に取って代わる方法として有用であり得る。迷走神経などの末梢神経または組織の刺激は、様々な有利な効果をもたらし得る。これらの効果は、神経を刺激する際に使用される特定の刺激パターンに依存し得る。一実施形態では、神経の刺激は、刺激されている神経からの先行する電気生理学的記録に基づくことができる。他の実施形態では、電気生理学的記録を処理して合成神経調節信号または記述子にすることができる。神経の刺激は、NMSパラメータに基づいて生成された神経調節信号に基づくことができる。他の実施形態では、神経の刺激は、患者に対して有利な効果を有することが決定されている新たに発見された刺激信号に基づくことができる。本明細書において開示されるシステム、方法およびデバイスは、外科手術を必要とすることなく、あるいは神経機能の先行する記録を必要とすることなく、これらの刺激パターンの生成を可能にすることができる。刺激信号は、様々な手段を介して個体に提示することができる。例えば刺激信号は、音声振動、光刺激、耳または眼に取り付けられる、身体の迷走神経などの神経を刺激するように構成される他のデバイスを介して提示することができる。
【0050】
実施形態は、神経系刺激技法を開発し、使用するための、便利で、安全で、有効な方法を提供することができる。いくつかの実施形態では、本開示の中で説明される技術は、個人化された治療利点を提供することができる。いくつかの実施形態では、患者は、使用者に優しい人間-コンピュータインタフェース、ソフトウェアの中に実現された命令、ならびにプロセッサ、メモリおよび入力/出力デバイスを含むハードウェアを含むことができる自動システムを介して患者自身の個体健康状態を直接管理することができる。例えば一実施形態は、合成神経調節信号などの刺激信号のリポジトリを含む。各合成神経調節信号は、特定の所望の効果と相関されている特定のパターンに対応し得る。例えばNMS #1を生成するための記憶された合成神経調節信号は、うつ病の治療に有用であり得る。使用者は、合成神経調節信号をNMS #1のためのリポジトリからダウンロードし、ダウンロードした合成神経調節信号をアプリケータを使用して電子デバイスにロードすることができ、あるいはアプリケータ(電子デバイス上の、またはスタンドアロンの)が迷走神経などの使用者の末梢神経を刺激するように構成されるアプリケータデバイス上に直接ロードすることができる。NMS #1を使用者のデバイス上でその役割を発揮させることにより、薬剤学的投薬に頼る必要なく使用者にうつ病の治療が施され得る。リポジトリは、以下で説明されるように、様々な所望の効果(食欲の減退など)のための刺激信号を含むことができる。所望の効果は、身体の迷走神経または他の神経の刺激と関連付けることができる。
【0051】
いくつかの実施形態は、最初に神経信号の記録された神経像を対象の母集団(試験群など)から獲得することによってNMSを作り出し、NMSの形態の神経像の処理済みバージョンを1又は複数の他の各使用者に適用する電子システムまたはデバイスを含む。この文脈では、個体は、動物またはヒトの患者あるいは使用者であってもよい。例えば一実施形態は、刺激を個体に適用し、次に、結果として得られる、刺激を適用することによってもたらされる神経像を記録することを含む。次に、神経像を例えば合成神経調節信号などの1又は複数の有用な形態に変換することができる。合成神経調節信号に基づいて生成された音響信号、機械信号、電気信号または電気機械信号などのNMS信号は、ターゲット動物またはヒトの患者あるいは使用者に適用することができる。また、音響信号または他の信号への合成神経調節信号の変換には、結果として得られる合成神経調節信号を使用して、ターゲット動物、ヒトの患者または他の使用者に施される際により有効である正確なNMS(音響信号など)を生成することができるよう、S/N低減プロセスまたは他のプロセスを施して、神経像中の信号を修正する必要があり得る。以下、これらの技術およびその多くの変形形態を可能にするための方法およびシステムについて、より詳細に説明する。
【0052】
一例示的システムは、多数の入力パラメータの仕様を使用して、事実上、任意の所望の刺激パターンを合成することができる。刺激パターンを「プログラム」する能力は、迷走神経刺激療法などの末梢神経または組織の刺激療法に有利である。このような刺激療法は、糖尿病およびてんかんなどの状態に対して治療的に使用することができる。さらに、このような刺激療法は、炎症誘発効果および抗炎症効果を誘導するために使用することができ、また、以下でより詳細に説明されるように、学習および記憶を強化するために使用することができる。一実施形態では、刺激療法は、抗炎症効果および/または炎症誘発効果を提供するのに有効である。代替実施形態では、1又は複数のNMS信号を適用することにより、異なるタイプの効果を得ることができる。
【0053】
システム、方法およびデバイスは、任意のプログラム可能神経または組織刺激デバイスの有用性を高めるための付加物として使用することができる。例えば一例示的システムは、信号ジェネレータを補足して所望の速度および電力で波形を送達するために使用することができる。別の例として、方法は、迷走神経応答を喚起する1又は複数の状態下に置かれていた、麻酔がかけられた対象の迷走神経から直接神経像信号を記録することによって獲得された潜在的な神経像信号を処理することができる。
【0054】
一実施形態は、神経調節信号を使用者に適用するシステムである。システムは2つの原理構成要素を含む。第1の構成要素は、複数の合成神経調節信号を記憶する神経調節信号ジェネレータシステムである。神経調節信号ジェネレータシステムに記憶されている各合成神経調節信号は、少なくとも1つの処理済み測定末梢神経組織信号を表す。以下で示されるように、処理済み測定末梢神経組織信号は、神経像から誘導された信号であってもよい。神経像は、所望の効果をもたらすべく特定の状態に置かれていた対象から記録されたものであってもよい。例えば対象は、対象の食欲を抑制するために第1の薬物で治療されていてもよい。対象からの記録された神経像は、以下で考察されるように状態機械を介して処理することができ、その形態は、1又は複数の状態パラメータによって表される1又は複数の状態のシーケンスである。システムの第2の原理構成要素は、神経調節信号ジェネレータシステムと通信する電子デバイスである。一実施形態では、電子デバイスは携帯型電子デバイスである。この通信は、インターネットなどのローカルエリアおよび広域ネットワーク化接続を含む任意の従来の通信接続を介したものであってもよい。一実施形態では、電子デバイスは、入力のためのユーザインタフェースを有するタッチスクリーンを備えた無線電話または他の電子デバイスである。電子デバイス上のユーザインタフェースは、少なくとも1つの所望の効果の選択を使用者から受け取るように構成することができる。例えばユーザインタフェースは、可能な所望の効果のリストを使用者に提示することができる。使用者は、デバイスタッチスクリーン上の所望の効果のうちの少なくとも1つをタッチしてその効果を選択することができる。使用者が所望の効果を選択すると、電子デバイス内の通信モジュールは、少なくとも1つの所望の効果の使用者の選択をユーザインタフェースから受け取る。接続モジュールは、次に神経調節信号生成システムに接続して、選択された所望の効果と関連付けられた特定の合成神経調節信号を受け取る。電子デバイスによって受け取られる合成神経調節信号は、その合成神経調節信号を使用者に適用することにより、薬物を使用者に適用することなく使用者が所望の効果を経験することになる信号である。
【0055】
別の実施形態は、使用者に施すべき合成神経調節信号を検索する方法である。この方法は、携帯型電子デバイスなどの電子デバイス内で走るソフトウェアプロセスまたはハードウェアプロセスによって実施することができる。プロセスは、所望の効果の選択を電子デバイスのユーザインタフェースから受け取るステップを含むことができる。選択が使用者によってなされると、プロセスは、その選択に応答して、電子デバイスへの、所望の効果と関連付けられた第1の合成神経調節信号のダウンロードを開始することができる。プロセスは、次に、ダウンロードされた第1の合成神経調節信号の適用に関連する操作パラメータの入力をユーザインタフェースから受け取ることができる。このプロセスは、命令として非一時的コンピュータ可読媒体上にも記憶することができ、媒体は、実行されると、このプロセスすなわち方法を実施する命令を含むことを認識されたい。
【0056】
一追加実施形態は、1又は複数の測定された末梢神経組織信号を、使用者に適用することができる神経調節信号に変換する神経調節信号ジェネレータシステムである。このシステムは、ある状態に置かれた対象から獲得された1又は複数の測定された末梢神経組織信号を有する記憶モジュールを備えることができる。システムは、記憶モジュールへの接続を介して通信する処理モジュールをも有することができ、したがって処理モジュールは、測定された末梢神経組織信号のうちの少なくとも1つを受け取ることができる。処理モジュールは、少なくとも1つの測定された末梢神経組織信号を処理して処理済み測定末梢神経組織信号を形成するように構成することができる。神経調節信号ジェネレータシステムは、処理モジュールと通信して少なくとも1つの処理済み測定末梢神経組織信号を受け取り、合成神経調節信号を作り出すように構成された状態機械ジェネレータモジュールをも有することができる。合成神経調節信号は、処理済み測定末梢神経組織信号のうちの少なくとも1つを1又は複数の状態のシーケンスとして表すことによって作り出すことができる。各状態は、合成神経調節信号に変換される1又は複数の状態パラメータによって表すことができる。神経調節信号ジェネレータシステムは、合成神経調節信号を使用者に適用するように構成されたデバイスに合成神経調節信号を送る通信モジュールをも含むことができ、合成神経調節信号を使用者に適用することにより、使用者は、上記状態を使用者に適用することなく所望の効果を経験する。
【0057】
一実施形態は、また、1又は複数の測定された末梢神経組織信号を対象に適用することができる神経調節信号に変換するための方法である。この方法は、神経調節信号ジェネレータシステム内で走るソフトウェアプロセスまたはファームウェアプロセスであってもよい。この方法は、ある状態に置かれた対象から獲得された少なくとも1つの測定された末梢神経組織信号を受け取るステップを含むことができる。プロセスは、次に、測定された末梢神経組織信号のうちの少なくとも1つを1又は複数の状態のシーケンスとして表すことによって合成神経調節信号を作り出すことができ、各状態は、合成神経調節信号に変換される1又は複数の状態パラメータによって表される。合成神経調節信号が作り出されると、プロセスは、合成神経調節信号を使用者に適用するように構成されたデバイスに合成神経調節信号を送ることができ、合成神経調節信号を使用者に適用することにより、使用者は、上記状態を使用者に適用することなく所望の効果を経験する。このプロセスは、命令として非一時的コンピュータ可読媒体上にも記憶することができ、媒体は、実行されると、このプロセスすなわち方法を実施する命令を含むことを認識されたい。
【0058】
一実施形態は、また、使用者に適用することができる神経調節信号を生成するための電子デバイスである。電子デバイスは、無線電話または他の電子デバイスであってもよい。この実施形態では、電子デバイスは、少なくとも1つの所望の効果の選択を使用者から受け取るように構成されたユーザインタフェースを含むことができる。デバイスは、ユーザインタフェースから選択を受け取り、遠隔神経調節信号生成システムに接続してその選択を通信する通信モジュールをも有することができる。デバイスがその選択を遠隔神経調節信号生成システムに通信すると、デバイスは、1)その選択と関連付けられた少なくとも1つの神経調節信号の第1の表現、および2)その選択に関連する一組のパラメータを受け取ることができる。パラメータは、一実施形態では操作パラメータであってもよい。デバイスは、少なくとも1つの神経調節信号の第1の表現を受け取る、第1の表現に基づく少なくとも1つの神経調節信号の第2の表現を生成するように構成される神経調節信号生成モジュールをも備えることができる。第2の表現は、使用者に適用される適切なフォーマットの表現であってもよく、神経調節信号の第2の表現を使用者に適用することにより、使用者は、薬物を使用者に適用することなく所望の効果を経験する。
【0059】
さらに別の実施形態は、神経調節信号の表現を生成するための方法すなわちプロセスである。この方法すなわちプロセスは、電子デバイスの中で実施することができる。この実施形態では、プロセスは、少なくとも1つの所望の効果の選択を使用者から受け取るステップを含むことができる。プロセスは、次に、神経調節信号生成システムに接続して選択された効果を通信し、1)その選択と関連付けられた少なくとも1つの神経調節信号の第1の表現、および2)その選択に関連する一組の操作パラメータを受け取ることができる。プロセスは、次に、少なくとも1つの神経調節信号の第1の表現を受け取り、第1の表現に基づく少なくとも1つの神経調節信号の第2の表現を生成することができる。第2の表現は使用者に適用することができ、神経調節信号の第2の表現を使用者に適用することにより、使用者は、薬物を使用者に適用することなく所望の効果を経験する。このプロセスは、命令として非一時的コンピュータ可読媒体上にも記憶することができ、媒体は、実行されると、このプロセスすなわち方法を実施する命令を含むことを認識されたい。
【0060】
神経像
迷走神経神経像などの末梢神経神経像すなわち測定された末梢神経組織信号は、主として、対象がある状態下に置かれると生じる知覚信号である。例えば状態は、対象に提示される何らかの刺激すなわち攻撃によって生じ得る。神経像は、非運動性で、ほぼ非知覚の体細胞状態に関して、「尾側」(後-脳幹)ターゲットに知らせるために出現する多くの神経線維の補充を表す高度に構造化されたスパイク列を含むことができる。
【0061】
神経像は、部分的にはスパイク列内の発火速度および振幅の展開によって特徴付けることができる。異なる刺激が出現して全く異なる神経像構造をもたらす。例えば腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)の内臓注入に対する神経像応答は、インターロイキンワン1ベータ(IL-1β)またはインスリンの注入に対応する神経像応答とは視覚的に全く異なって出現する。
【0062】
一実施形態では、神経像は、対象動物をインターロイキン1βで攻撃されている状態下に置いた後に末梢神経から記録された。記録された神経像を使用して、その神経像をエミュレートした合成神経調節信号が作り出され、その動物に施された。神経像をエミュレートする合成神経調節信号がその動物の末梢神経組織に適用されると、これらの合成神経調節信号は、特定のインターロイキン1β状態と関連付けられた応答を喚起することが分かった。例えばIL-1β神経像をエミュレートする合成神経調節信号の適用に応答して(3反復、計12分)、インターロイキン-6が、あたかもIL-1βが実際に注入されたかのごとくにアップレギュレートされてその動物に出現した。一方、インスリン神経像をエミュレートする合成神経調節信号を使用した末梢神経組織の刺激は、信号の適用を開始してから40分程度でその動物の血液グルコースの著しい上昇をもたらすことが分かった(連続ループ、約12反復)。インスリン神経像をエミュレートする合成神経調節信号の適用は、インスリン注入の完全な効果を模擬することはできないが、合成神経調節信号は、最終的にはその動物のグルコースを放出させることになるプロセスの縦続をもたらすことができた。これは、対象が特定の状態下に置かれていることに応答して捕獲される神経像をエミュレートする神経調節信号を施すことは、あたかもその動物がその特定の状態に置かれていたかのごとくの生物学的反応をもたらすのに有用であり得ることを示している。
【0063】
神経調節信号
対象からの神経像記録は、神経調節刺激のための価値のある生材料を提供するが、神経像記録のみに頼って適切な刺激信号を精選することは厄介であり得る。その代わりに、神経調節信号ジェネレータシステムを使用して、神経刺激または組織刺激のための合成神経調節信号(NMS)を生成することができる。本明細書において開示されるシステム、方法およびデバイスは、合成神経調節信号のパラメータ化された状態機械モデルを構築して、動物またはヒトの特定の固有応答を喚起するための異なる神経像の構造を使用することができる。合成神経調節信号は、合成神経調節信号を作り出すために使用された状態パラメータを変更することによって修正することができる。神経調節信号ジェネレータシステムは、状態パラメータを修正することによって合成神経調節信号を最適化することができる。状態機械モデルは、確率論的であっても、あるいは決定論的であってもよい。NMS状態パラメータは、スパイク波形特性、発火速度および振幅を含むことができる。
【0064】
一実施形態では、方法は、状態および遷移のシーケンスを使用して、個体に対して生成されるNMSの特性を定義する。NMSの「原子」単位は、神経スパイクと同じ形状および特徴を有することができる波形テンプレートであってもよい。このテンプレートは、信号幅、減極振幅および後過分極(AHP)振幅を含むパラメータを含むことができる。
【0065】
状態機械モデルにおける各状態は、所望の振幅および速度のスパイク列の形態で、確率論的または決定論的に神経調節信号(NMS)を生成するために使用することができる一組のパラメータを定義することができる。一実施形態では、各状態は、スパイク振幅、発火速度に対する確率分布を表し、また、波形特性ならびに状態継続期間をも含むことができる。確率分布はパラメータ化することができる。例えば振幅に対する対数正規分布は、平均および標準偏差を含むことになる。決定論的パターンの場合、後者はゼロに設定することができる。ポアソン分布は、発火時間を確立するために定義されることが可能であり、あるいは一定の発火速度を使用することができる。これらの確率的モデルを使用して、その状態によって生成される特定された継続期間の統計的に定常なスパイク列を生成することができる。状態間の遷移は継続期間によって定義され、また、ジェネレータ機能を1つの状態から次の状態へ直線的にブレンドする(確率分布)ことによって実現され得る。直線ブレンドの代わりに、3次スプラインを使用して円滑性を保証することも可能である。遷移継続期間は、振幅および発火速度が状態から状態へ変化する速さを制御し、また、刺激パケットの包絡線の制御を可能にする。一実施形態では、状態は、振幅もしくは速度の周期的変化、振幅もしくは速度の直線的な漸進、ゼロ時間遷移、および/または圧縮、による変調に基づき得る。
【0066】
一実施形態では、NMSは、継続期間および状態間補間方法を定義する状態遷移と共に、各状態におけるスパイク列生成のための分布パラメータおよび継続期間を識別する状態のシーケンスによって定義することができる。動物対象の外科手術、記録または犠牲を必要とすることなく、新しい神経調節信号を意のままに生成することができる。
【0067】
図1は、3つ以上の特性、すなわち(1)時間遅延関数の合計として表される波形、(2)平均および分散を有する振幅分布(利得、すなわち波形形状に適用されるスケールファクタ)、ならびに(3)分散を有する平均発火速度によって電気信号の「状態」Sを表すことができることを示すデータ流れ図である。代替実施形態では、任意の数の特性が存在し得る。各関数は、時間における平均および分散によってパラメータ化することができる。各関数は、ガウス関数、二次関数またはもっと高次の関数であってもよい。この表現を使用して、所望の振幅パラメータによってスケール化され、また、所望の平均発火速度を示す特定された波形を使用するスパイク様信号が生成される。各状態は、スパイク列のための確率論的モデルである。分散がゼロに設定されると、モデルは決定論的になる。各状態は、動物またはヒトの患者に対する特定の効果のための合成神経調節信号を生成するために使用される1又は複数の状態パラメータによって表すことができる。
【0068】
図2は、異なる継続期間を有する状態を遷移によって分離することができることを示す図である。刺激は、定常統計特性、すなわち波形パラメータ、振幅平均および分散、発火速度平均および分散を個々に有する状態のシーケンスとして表すことができる。各状態は、秒などの時間単位で特定された固定継続期間を有することができる。2つの状態の間の各遷移も固定継続期間を有することができる。状態Sなどの状態は、異なる継続期間を有し、また、異なる状態を分離する遷移を有する多数の状態のうちの1つであってもよい。状態遷移は、1つの状態から次の状態への1又は複数の状態パラメータの補間として実現することができる。例えば波形パラメータ、振幅分布パラメータおよび発火速度パラメータは、1つの状態から次の状態への多項式適合を使用して独立して補間することができる。一例示的システムは、一次補間または3次スプライン補間を実現することができる。
【0069】
一実施形態では、状態モデルは、神経像からの記録されたスパイク列のデータから直接学習される。例えば迷走神経からの記録された信号は、後続する信号合成のためのコンパクト状態機械表現に「コンパイル」することができる。記録されたスパイク列のデータは、時刻表示されたスパイクのシーケンスに分類することができる。分類されたスパイクシーケンスは、時間におけるビニングを使用して、一定の平均振幅および発火速度を含む時間インターバルにコンパイルすることができる。ビンサイズは、自動的に決定することができ、あるいは使用者が決定することができる。個々のこのようなインターバルは、ある状態であることを宣言することができる。平均および分散は、振幅値および発火速度値に対して計算することができる。インターバル内の波形は平均することができ、また、ガウスパラメータに対して標準数値最適化スキームを使用して、2-ガウス混合をこの平均波形に適合させることができる。したがって状態が推論された時間インターバルによって決定されたその継続期間を使用して各状態を定義することができる。状態モデルのパラメータは、モデルの神経調節信号パラメータと呼ぶことができる。状態遷移継続期間は、連続するインターバル間のギャップを使用することによって決定することができる。
【0070】
記録された神経像の形状は、信号の性質および解剖学的原始に関する神経導入を知らせる「アドレス」を表すことができる。例えば神経信号の形状は、信号の性質および解剖学的原始に関する迷走神経導入を知らせる、脳幹を介した末梢からの中枢神経系における原始を表すことができる。一実施形態では、この信号構造は、迷走神経などの神経が末梢障害の性質および部位を身体内の中央恒常性レギュレータに通信するために使用する、あるタイプの解剖学的アドレス指定スキームとして使用することができる。
【0071】
いくつかの実施形態では、生化学的刺激(例えばサイトカイン混合)、解剖学的部位(脾対肝)および距離(軸索長)の組合せは、異なる状況下で異なる信号構造をもたらし得る。所与の生化学的または物理的刺激の場合であっても、軸索長によって誘導される伝搬遅延は、刺激の部位に応じて異なる神経像構造をもたらし得る。
【0072】
本発明の一実施形態は、刺激問題を、状態機械をプログラムする観点、すなわち末梢神経-CNS系、例えば迷走-CNS系などの抽象形式化をプログラムする観点で捉える刺激信号合成フレームワークである。状態機械における各状態および遷移は、継続期間、波形特性(神経のA線維、B線維およびC線維に差別的に影響を及ぼす可能性がある特性、または任意の他のニューロン依存電気特性を含む)およびスパイクタイミングを定義するパラメータを含むことができる。この状態機械モデルは、迷走-CNS信号などの可能な末梢神経-CNS信号の空間を合成するのに十分一般的である。この組合せフレームワークを適所に使用することにより、状態機械表現からの合成神経調節信号を最適化し、それにより特定のスパイク列信号を使用して末梢神経または組織を刺激して、身体の重要な各CNSサブシステムの性能を強化することができる。一実施態様では、その刺激は、電気的に神経に直接適用することができ、あるいは供給されたエネルギーを本発明による手法によって生成された刺激パターンを使用して変調することにより、機械的(例えば音)、光学的(すなわち光)または他の手段を介して変換することができる。これは、プログラム的手法による神経の刺激を可能にし、標的個体内における所望の生理学的成果が得られる。
【0073】
神経像のモデル化
一実施形態では、神経像は、1又は複数の状態のシーケンスとしてモデル化され、各状態は、統計的に定常な特性を有する記録された神経像内の時間期間すなわちセグメントに対応する。各状態は、状態の継続期間、パルスのパルス間タイミング(発火速度の逆)、パルスの振幅、パルス間タイミングの平均および分散、振幅の平均および分散、ベースパルス形状などの1又は複数の状態パラメータによって表すことができる。図3Aは、各状態が一組の状態パラメータによって特徴付けられている3つの状態のシーケンスを示したものである。この例では状態は、4つの状態パラメータ、すなわちパルス間タイミング(P)、振幅(A)、継続期間(T)およびベースパルス形状(PS)によって特徴付けられている。これらの4つの状態パラメータは、それらが波形の特性を記述しているため、「波形パラメータ」と呼ぶことができる。3つの状態は、S1、S2およびS3によって示されている。したがってS1は、パルス間タイミングP1、振幅A1、継続期間T1およびベースパルス形状PS1によって特徴付けられている。ベースパルス形状については、図3Bを参照してさらに説明される。図3Aに示されているスパイクの各々は、拡大されたスケールで観察すると、ある形状および/または有限幅を有することができる。ベース形状の例は図3Bに示されている。したがってベース形状は、ガウスなどの関数によって特徴付けることができる。各形状は、1又は複数の状態パラメータによってさらに特徴付けることができる。この例では、ベース形状がガウスであるため、形状は標準偏差SDによって特徴付けることができる。したがって状態を記述している一組の状態パラメータ内のベースパルス形状を記述している状態パラメータは、特定の形状、および形状の幅または他の特性を定義しているすべての関連する状態パラメータを特定することができる。いくつかの実施形態では、これらの状態パラメータを使用して身体内の合成神経調節信号を生成することができる。
【0074】
図3A~3Bは、状態パラメータの何らかの統計的変化を示していないが、これらの状態パラメータのうちの1又は複数は、実際の生命状況において何らかの統計的分布を有し得ることは可能である。各状態パラメータの統計的変化は、それ自体、パラメータ化が可能であり、また、各状態を表す一組の状態パラメータの中に含めることができる。変化は、記録された神経像を観察した後にモデル化することができる。例えば状態パラメータの変化は、ガウス分布または対数正規分布によってモデル化することができる。さらに、状態パラメータは、互いに別様に変化し得る。一例として、パルス間タイミングはガウス分布に従って変化し、一方、振幅は対数正規分布に従って変化し得る。
【0075】
したがって、神経像は、状態のシーケンスとしてモデル化することができ、各状態は、一組の状態パラメータによって表される。これらの状態パラメータのうちのいくつかは波形を記述しており、また、いくつかの他の状態パラメータは、それらの値の可変性を記述している。状態-空間表現を使用して神経像がモデル化されているが、他の技法を使用することも可能であり得る。「信号表現」という語句は、状態-空間表現を含む神経像を表すために使用される任意の技法を描写するために使用されている。
【0076】
並列合成
一実施形態では、神経像は、全く異なる挙動を示す細胞または細胞群の結果であってもよい。このような神経像は、複数のスレッドを有する状態機械を使用してモデル化することができる。図4は、2つのスレッド、すなわちスレッドAおよびスレッドBを有する状態機械を示したものである。スレッドAは、3つのサブ状態A1、A2およびA3を含む。サブ状態A1、A2およびA3は、第1のタイプの挙動を示す第1の細胞群の結果であってもよい。スレッドBは、4つのサブ状態B1、B2、B3およびB4を含む。サブ状態B1、B2、B3およびB4は、第2のタイプの挙動を示す第2の細胞群の結果であってもよい。各スレッドは、部分合成神経調節信号を生成するための状態パラメータを含むことができる。例えばサブ状態A1、A2およびA3の各々は、波形、振幅分布および平均発火速度などの状態パラメータを使用して関連付けるか、あるいはモデル化することができる。スレッドAは、サブ状態A1、A2およびA3の状態パラメータに基づいて部分NMSを生成することができる。例えばスレッドAは、サブ状態A1の状態パラメータを使用して部分NMSを生成することができ、サブ状態A2の状態パラメータを使用して部分NMSを生成することができ、また、サブ状態A3の状態パラメータを使用して部分NMSを生成することができる。これらの3つの部分神経調節信号を時間遅延を使用して結合して、部分NMSを生成することができる。スレッドBは、サブ状態B1、B2、B3およびB4のパラメータに基づいて部分NMSを生成することができる。例えばスレッドBは、サブ状態B1の状態パラメータを使用して部分NMSを生成することができ、サブ状態B2の状態パラメータを使用して部分NMSを生成することができ、サブ状態B3の状態パラメータを使用して部分NMSを生成することができ、また、サブ状態B4の状態パラメータを使用して部分NMSを生成することができる。これらの4つの部分NMSを時間遅延を使用して結合して、部分NMSを生成することができる。
【0077】
各スレッドによって生成された部分NMSを結合して全神経調節信号を生成することができる。例えば各スレッドによって生成された信号は、第1の時間だけ遅延させることができ、次に、合計されるか、または重畳されて全神経調節信号が生成される。本明細書において開示されるシステム、方法およびデバイスは、全く異なる挙動を示す細胞または細胞群によってもたらされる神経像を処理するための多重スレッド化状態機械として実現することができる。
【0078】
信号の記録、処理および適用
図5は、状態機械モデルを使用して神経像を記録し、処理し、それにより合成神経調節信号を生成および適用する方法を示したものである。この図では刺激は、所望の効果(効果A)を引き出すために種Aのヒトまたは動物1に適用される。結果として得られる神経像は、刺激を適用するプロセスの間、記録される。記録された神経像は、状態機械を使用してデジタル化し、処理し、それにより神経像の状態機械表現を生成することができる。処理は、例えばフィルタリング、増幅、補間、解析、スペクトル成分への分解、クラスタ化、修正、合成および/または他の信号処理技法を含むことができる。処理は、神経像の有限状態機械表現への神経像の変換を含むことができる。状態機械表現は、同じ種の同じまたは異なるヒトまたは動物に対する合成神経調節信号を生成するために使用することができる1又は複数の状態パラメータを含むことができる。処理された神経像および結果として得られる合成神経調節信号は、同じまたは異なる動物に対して、効果A(第1の動物に刺激を適用することによってもたらされた)と同じかまたは同様の効果を引き出すために構築することができる。例えばサイトカイン(細胞信号発信の役割を果たす微小タンパク質)TNF-アルファが動物に注入されると、前炎症性応答が生成される。一般に、このような注入の後、熱が速やかに後続し、おさまる。しかしながら約4時間後に熱の第2の波が存在し、可能性として、TNF-アルファによってトリガされるIL-1(インターロイキン-1、感染に対する免疫性および炎症性応答を調整する役割を果たす別のサイトカイン)の増加によってもたらされる。開示されるシステム、デバイスおよび方法を使用して、サイトカインの物理的な注入を必要とすることなく、TNF-アルファに対する身体の応答を誘発することにより、感染症または他の状態と戦うことができる。例えば刺激、遷移特性および応答特性が分かると、システムは合成神経調節信号を生成することができ、この合成神経調節信号は、例えば神経系の電気的刺激を介して適用されると、TNF-アルファが血流中に存在することを脳に知らせるように設計される(実際にTNF-アルファを注入することなく)。
【0079】
図6は、状態機械モデルを使用して神経像を記録し、処理し、それにより合成神経調節信号を生成および適用する別の方法を示したものである。図6の方法では、神経像は、ある状態を動物の1つの種に適用する結果として生成される。その神経像を使用して、処理され、異なる種のヒトまたは動物に適用される合成神経調節信号が生成される。したがってこの実施形態では、ある状態が1つの種(種A)の1又は複数の動物に適用され、結果として得られる神経像が記録され、処理され、また、結果として得られる合成神経調節信号が異なる(種B)の1又は複数のヒトまたは動物に適用される。
【0080】
別法または追加として、合成神経調節信号への神経像の処理は、解剖学特性および生理学特性の相違、ならびに/または種Aの動物と種Bのヒトもしくは動物との間の他の特性の相違に適応するための合成神経調節信号の追加修正を含むことができる。一例として、特定の振幅を有する神経調節信号は、1つの種の動物における特定の応答を引き出すことができるが、異なる振幅を有するNMSは、異なる種の動物における同じ応答を引き出すために適し得る。別の例として、特定の時間継続期間のNMSは、1つの種の動物における特定の応答を引き出すことができ、一方、異なる時間継続期間のNMSは、異なる種のヒトまたは動物における同じ応答を引き出すために適し得る。修正することができるNMS状態パラメータの他の例には、刺激デバイスを適応させるために使用される記録された神経像および状態パラメータの基礎をなしている構成要素の周波数がある。一般に、期待される応答または神経像の他の特性をもたらすNMS状態パラメータは、異なる種の間、さらには同じ種内でも変化し得る。
【0081】
図7Aは、記録された神経像の反復処理を示したものである。この処理技法では、種A動物における所望の効果をもたらす、種Aの動物に対するある状態の適用に基づいて初期神経像が記録される。次に、記録された初期神経像が処理されて、上で考察した初期合成神経調節信号が形成される。次に、第1の動物と同じまたは異なる種の第2のヒトまたは別の動物に初期合成神経調節信号が適用され、それにより後続する神経像が生成される。初期合成神経調節信号を施すことによる効果は、初期神経像を後続する神経像に対して比較することによって測定される。この技法を使用して後続する神経像を追加合成神経調節信号に処理し、各反復後に観察される効果に基づいて合成神経調節信号のさらなる修正を決定することができるフィードバックループを使用して、反復方式で複数回にわたって動物またはヒトに繰り返し施すことができる。反復は、合成神経調節信号が動物またはヒトを誘導して元の状態下でエミュレートするよう、観察された効果が許容可能なレベルの一貫性に収束するまで継続することができる。この技法を使用することにより、神経像をエミュレートする合成神経調節信号を適用することの効能および安全性の確立を補助することができる。
【0082】
NMSの一例は図7Bに示されている。この例では、記録された初期神経像が複数の構成要素に分解され、また、個別であれ、あるいは組合せであれ、いくつかまたはすべての構成要素の動物(同じまたは異なる種の動物)またはヒトに対する効果が観察され、特徴付けられる。さらに、記録された初期神経像から誘導された合成神経調節信号を使用して生成されたNMSの構成要素を受け取る動物の神経像を記録し、図7Aで説明した反復ループを使用して合成神経調節信号をさらに反復するために使用することができる。図7Bに示されている一例では、記録された初期神経像は、そのスペクトル成分に分解され、このスペクトル成分は、NMS状態パラメータを使用してモデル化することができる。図7Bに示されているように、スペクトルは、グループA内に含まれている信号がより低い周波数成分を含み、また、グループB内に含まれている信号がより高い周波数成分を含む双峰形状を有することができる。2つの構成要素のNMS状態パラメータはフィルタリングすることができ、また、フィルタリングされたNMS状態パラメータを使用して、他の動物またはヒトに適用するための合成神経調節信号を生成することができる。したがって各構成要素グループから誘導されたNMS状態パラメータを使用して生成されたNMSは、それら自身によって適用することができ、また、動物またはヒトに対する効果を観察することができる。さらに、フィルタリングされた構成要素が適用されている間、神経像を記録することができ、動物またはヒトに対する所望の効果が達成されるよう、これらの記録を使用して合成神経調節信号を反復することができる。
【0083】
合成神経調節信号サブミッションのためのアプリケーションライブラリ
図8Aは、合成神経調節信号のライブラリすなわちリポジトリをコンピュータメモリに記憶することができるシステム図を示したものである。例えばライブラリは、ネットワークアクセス可能システムすなわち「クラウド」上に記憶することができる。合成神経調節信号は、記憶し、様々なアプリケーションに使用するために、あるいは1又は複数の特定の最終使用者または最終使用者母集団による使用のために、アプリケーションライブラリにサブミットすることができる。ライブラリは、遠隔神経調節信号ジェネレータシステムの一部であってもよい。例えばライブラリ内の一組の合成神経調節信号は、特定の所望の効果(例えば1~N)と関連付けることができる。使用者は、一組の合成神経調節信号を電子デバイスなどの局所計算デバイスにダウンロードし、また、所望の効果を経験するために、ダウンロードした一組の合成神経調節信号を自身に、あるいは他の人に適用することができる。一例として、使用者は、自身の食欲を抑制することを希望することができる。使用者は、一組の合成神経調節信号を使用して生成することができる特定の所望の効果のための処方を有することができる。局所電子デバイスは、その処方に基づいてその一組の合成神経調節信号をダウンロードすることができる。食欲を抑制するための一組の合成神経調節信号は、使用者または別の実体のいずれかによるライブラリへのその一組の合成神経調節信号の先行するサブミッションの結果としてライブラリ内に存在していてもよい。食欲抑制合成神経調節信号は、使用者によってダウンロードすることができ、また、局所神経調節ジェネレータシステムを使用して使用者または別の対象に適用することができる。ライブラリは、無線計算システム、光学計算システムまたは有線式計算システムを含む任意の適切なネットワークまたは通信リンクを介してアクセスすることができる。いくつかの実施形態では、一組の合成神経調節信号は、記憶されている神経調節信号を使用することができる方法に関する情報を含む制御データと共に、1又は複数の状態を記述している合成神経調節信号を含む神経調節信号プログラムとして記憶することができる。
【0084】
アプリケーションライブラリは、多くの異なる方法で構成することができる。一実施形態では、異なるタイプの使用者に異なるレベルのアクセスが可能にされ得る。アクセス制御機構を使用して、その使用者による使用が承認されている合成神経調節信号のみへのアクセスに制限することができる。一例として、一般大衆には、試験され、また、ヒトへの適用が安全である特定のタイプの合成神経調節信号へのアクセスのみが可能にされ得る。一方、研究者には、ヒトへの適用は不適切であり得るが、非ヒト動物には適用することができる特定の他のタイプの合成神経調節信号へのアクセスが許可され得る。一実施形態では、医師または他の健康管理専門家は、有効な処方を有するヒト患者のみにこのようなNMSへのアクセスが可能にされ得るよう、NMSまたは特定の効果を「処方」することができる。
【0085】
治療または他の健康利点を提供するある等級のNMSに対して、開示されるシステムは、ライブラリからの合成神経調節信号のダウンロードが許可される前に、各NMSの安全性および/または効能の試験を可能にする。いくつかの実施形態では、安全性および効能に対して、動物における試験が実施され、これらの安全性試験に合格する神経調節信号が、そういうものとしてライブラリ内に示される(例えば適切なラベル付けによって)。別法または追加として、ヒトにおける臨床試験を使用して合成神経調節信号を試験することも可能である。このような試験の後、所望の効果が達成されると、合成神経調節信号を適切なラベル付けと共にライブラリ内に記憶することができる。ライブラリに記憶されると、使用者は、示されている試験がなされたことの知識を使用して、これらのタイプの合成神経調節信号をダウンロードすることができる。
【0086】
合成神経調節信号の安全性を試験する別の方法が図8Bに示されている。NMSの状態機械表現であってもよい一組の状態パラメータを使用して、安全であることが分かっている合成神経調節信号を生成することができる。安全な合成神経調節信号を生成するためのこの一組の状態パラメータは、動物の試験群に対する実験などを介した先行する知識に基づいて生成されたものであってもよい。試験されていないNMSのその安全性特性を検査しなければならない場合、その試験されていないNMSを生成するための状態機械表現であってもよい一組のNMS状態パラメータを試験することができる。二組のNMS状態パラメータすなわち状態機械表現が比較される。試験されたNMSと試験されていないNMSの状態機械表現の比較に基づいて、その試験されていないNMSをヒトまたは別の動物対象に適用することができるかどうかについて決定することができる。比較が成功である場合、新たに試験されるNMSを生成するための一組のNMS状態パラメータをライブラリにアップロードすることができる。
【0087】
図9は、動物またはヒトへの合成神経調節信号の適用を個人化するための別のライブラリの略図である。図9に示されているように、システム使用者またはシステム自体は、合成神経調節信号を適用することによってもたらされることが望ましい効果を個人化することができる。一例として、合成神経調節信号が苦痛を管理するように設計される場合、使用者が軽度の苦痛を有していると、その使用者は、合成神経調節信号を適用する操作パラメータを選択することができる。さらに、システムは、合成神経調節信号を動物またはヒトに適切に適用するために操作パラメータを適用する必要性をも検出することができる。使用者がよりレベルの高い苦痛に遭遇していると、最終使用者は、特定の最大限界(安全性試験を介して決定することができる)まで、より長い時間にわたって同じ合成神経調節信号を適用する操作パラメータを選択することができる。示されているシステムでは、合成神経調節信号がパーソナル電子デバイスにダウンロードされると個人化がイネーブルされる。システムによって個人化することができるNMSのいくつかの態様は、日付、カレンダー、運動または時刻などの文脈特化操作パラメータを含む。他の操作パラメータは、刺激装置から神経への伝達関数の差を考慮するために神経刺激の振幅制御に対する変更を可能にすることができる。いくつかの修正可能操作パラメータは、適用時間の長さ、合成神経調節信号を適用するための継続期間の時間、および合成神経調節信号を適用する頻度を含むことができる。
【0088】
図10は、合成神経調節信号の選択およびクラウド記憶装置リポジトリから局所デバイス(例えばスマートフォン、タブレットコンピュータまたは着用可能スマートデバイス)へのダウンロードを可能にし、また、対象への特定の合成神経調節信号の適用を可能にするシステムの略図である。最終使用者は、最初に「神経像アプリケーション」ソフトウェアアプリケーションまたは他のウィジェットを最終使用者のスマートフォンまたは他の電子デバイスもしくはモバイルデバイスにダウンロードすることができる。使用者は、神経像アプリケーションを介してクラウド記憶装置に接続し、所望の効果を提供する合成神経調節信号を選択することができる。次に、その合成神経調節信号を含むファイルが使用者のデバイスにダウンロードされる。使用者は、任意の特定の時間に使用者の電子デバイスにダウンロードされ、記憶された1又は複数のこのような合成神経調節信号を有することができる。次に、使用者は、特定の時間に所望の効果を達成するために施す適切な合成神経調節信号を選択することができる。デバイスは、次に、選択された合成神経調節信号をNMSジェネレータに送ることができ、NMSジェネレータは、合成神経調節信号を対象に適用するために利用されている特定のアプリケータのための特定の操作パラメータに従って合成神経調節信号を修正することができる。対象は、例えば最終使用者であっても、または別のヒト対象あるいは動物対象であってもよい。
【0089】
合成神経調節信号の適用の文脈では、アプリケータは、合成神経調節信号をヒトまたは非ヒト動物に適用するか、あるいは試験機器などの他の機器に適用するデバイスであってもよい。いくつかの構成では、アプリケータを駆動する信号はデバイス自身によって生成することができる。例えば最終使用者の電子デバイスは、アプリケータを制御するためのハードウェアおよび/またはソフトウェア機能性を装備することができる。それらに限定されないが、スピーカ、ヘッドホン、小型イヤホン、電極、発光ダイオードまたは他の発光デバイス、機械式バイブレータ、RF変換器、電磁気デバイス、他の機械式または電気機械式デバイスを始めとする様々なタイプのアプリケータを利用することができる。
【0090】
一実施形態では、一例示的システムは、無許可使用を防止するために使用することができる使用者識別を提供する。異なる最終使用者または対象母集団に対して、異なるレベルの安全保護を利用することができる。一例として、最終使用者のアイデンティティを検証するスマートフォンの本質的な能力を使用して、合成神経調節信号が最終使用者による使用のために承認されることを検証することができる。認証方法は、パスワード、虹彩、網膜、指紋、カメラまたは他の方法論あるいは組合せを含むことができる。使用者が検証されると、使用者デバイスは、アプリケータによる対象への適用のために、選択された合成神経調節信号を出力することができる。別の例として、アプリケーションライブラリを維持している協会に、使用者の指紋などの使用者特化生物測定データを最初に送ることができる。協会は、使用者によってダウンロードされるアプリケーションの一部としてこの生物測定情報を含むことができる。使用者がこの合成神経調節信号の適用を試行すると、最終使用者のデバイスは、生物測定のサンプル(この例では指紋)を供給し、供給された生物測定サンプルを、アプリケーションの一部としてダウンロードされた生物測定データのサンプルに対して比較するかどうかを使用者に問い合わせる。生物測定サンプルが基準生物測定と一致すると整合が得られ、最終使用者のデバイスは、アプリケータによる対象への適用のために合成神経調節信号を出力する。したがってこれらおよび他の技法を利用して合成神経調節信号の無許可使用を防止することができる。
【0091】
迷走神経の刺激などの組織刺激または末梢神経刺激による健康の回復および疾病の緩和を可能にする全システムは、他の層の機能性を含むことができる。例えば開示されるシステムはミドルウェア層を含むことができる。このようなミドルウェアは、デバイスのオペレーティングシステムの特定の機能がより低いレベルにおいてデバイスドライバと通信し、またより高いレベルのアプリケーションと通信することができる、インタフェースを提供することができる。ミドルウェア層を提供することにより、より低いレベルの実装の特定の詳細には無関係に、より高いレベルのアプリケーションが機能を達成することができる。
【0092】
合成神経調節信号ジェネレータシステム
図11は、合成神経調節信号ジェネレータシステムの機能ブロック図を示したものである。このシステムは、対象に適用して、ブドウ糖レベルの制御、食欲抑制、等々など所望の効果を引き出すことができる合成神経調節信号を生成することができる。対象はヒトまたは動物であってもよい。このシステムは、複数の方法で構成することができ、1つの構成が図11に示されている。この構成では、遠隔神経調節信号ジェネレータシステムおよび局所神経調節信号ジェネレータシステムが存在している。各システムは1又は複数のモジュールからなっていてもよく、各モジュールは、一般に1又は複数の機能を達成する役割を担っている。いくつかのモジュールは遠隔で配置することができ、一方、いくつかの他のモジュールは局所に配置することができる(対象に対する関係で)。他の構成が可能であることを理解すると、遠隔で配置することができるモジュールは、メモリおよび記憶モジュール、プログラマプログラマのインタフェースモジュール、アナライザモジュール、ならびにジェネレータモジュールを含む。局所に配置することができるモジュールは、ユーザインタフェースモジュール、神経調節信号ジェネレータモジュール、個人化モジュール、条件付けモジュール、およびエレクトロニクスモジュールを含む。したがって局所神経調節信号ジェネレータシステムは、次に対象に適用することができる合成神経調節信号を生成することができる。
【0093】
遠隔機能
図11に示されているように、合成神経調節信号ジェネレータシステムのいくつかのモジュールは、遠隔神経調節信号ジェネレータシステム(本開示においては「遠隔システム」とも呼ばれる)内で遠隔でセットアップされる。このような構成の利点は、対象上での播種および使用に先立って神経調節信号の実験、解析および試験を可能にすることである。このような構成の別の利点は、計算集約リソースを局所ジェネレータシステム上に配置する必要がなく、局所ジェネレータシステムが、コンパクトで、安価であり、また、恐らくはスマートフォン上のアプリケーションとして全体がカプセル化されることなどの有利な特徴を有することができることである。
【0094】
一実施形態では、生成されるべき合成神経調節信号に関するメタデータと共に、一組または複数組の合成神経調節信号を遠隔神経調節信号ジェネレータシステムに入力することができ、メタデータは、合成神経調節信号が獲得される条件に関する情報を提供することができる。これらの複数組の合成神経調節信号は、研究室で動物実験を実施している間に記録された神経像から獲得することができる。例えば神経像は、ハツカネズミの迷走神経などの末梢神経の上に電極を置き、特定の刺激が動物に送達された後の信号を記録し、デジタル化することによって獲得することができる。一実施形態では、これらの神経像は、局所神経調節信号ジェネレータに送ることができる特定のデータに処理される。
【0095】
遠隔神経調節信号ジェネレータシステム
遠隔神経調節信号ジェネレータシステムのモジュールは、いくつかの方法で構成することができる。1つの構成が図12に示されている。この構成では、中央バスが、メモリおよび記憶モジュール、コントローラ、計算リソース、プログラマのインタフェースモジュール、ならびに通信モジュールなどの様々なリソースを接続している。計算リソースは集中化することも、あるいは分散させることも可能であり、また、中央処理装置(CPU)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)および図形処理装置(GPU)の1つまたは組合せを使用して実現することができる。コントローラは、遠隔神経調節信号ジェネレータシステムのアクティビティ全体を調整し、制御する別の計算リソースであってもよい。メモリおよび記憶モジュールは、図に示されているように集中的に局所化することができ、あるいはシステム内の読出し専用メモリ、ランダムアクセスメモリ、フラッシュ、等々などのいくつかの物理的実体にわたって分散させることができる。メモリおよび記憶装置が計算システム内に普通に提供する様々な機能と共に、このモジュールは、各神経像のメタデータと共に神経像のためのリポジトリとして働く。また、このモジュールは、計算リソースのための、計算の中間結果または最終結果を記憶するためのメモリを提供することも可能である。次に、通信モジュールは、Bluetooth、Wi-Fi、Ethernet、等々などの1つまたはいくつかの機構を使用して、システムによる外部計算リソースまたはデバイスへの通信を可能にする。
【0096】
また、遠隔神経調節信号ジェネレータシステムは、Qファクタの計算を実施することも可能である。このQファクタは、合成神経調節信号に変換して戻された場合に、状態機械表現が入力神経像のうちの1又は複数に整合する近さの程度を表すことができる。この整合は、変換された合成神経調節信号と1又は複数の入力信号の表現との間でも実施することができる。表現は、時間修正および振幅正規化された神経像を平均することによって獲得することができる。整合は、相関技法または回帰技法などの様々な技法を使用して見出すことができる。Qファクタが計算されると、遠隔システムによって次のアクションを取ることができる。さらなるアクションの一例は、値が閾値に達していない場合に、Qファクタの値に応じて、また、遠隔システムの使用者によって設定された比較値に応じて、状態パラメータを局所システムに送るか、または送らないかのいずれかである。別のアクションは、適切なQファクタ閾値値が得られるまで状態表現が反復される自動または手動フィードバックループにQファクタを使用することである。入力神経像は不適切な状態パラメータに寄与し得るため、Qファクタに基づいていくつかの入力神経像が破棄されることも可能である。
【0097】
プログラマのインタフェース
図12の遠隔神経調節信号ジェネレータシステムは、プログラマのインタフェースを含むことができる。このタイプのインタフェースを使用することにより神経像のセグメント化が可能であり、また、状態機械表現を生成するために使用することができる。状態機械表現は、合成神経調節信号に対応する一組の状態パラメータを含むことができる。神経像の状態-空間表現を生成するために、遠隔神経調節信号ジェネレータシステムに入力される記録された神経像を状態のシーケンスにセグメント化することができる。各状態は統計的に定常であってもよい。このセグメント化は、いくつかの方法を利用して達成することができる。一方法では、ヒト使用者入力を利用して、統計的に定常として視覚的に出現し得る神経像信号内のセクションすなわち状態の境界が識別される。この方法では、使用者は、リポジトリモジュール内に記憶されている1又は複数の神経像および関連するメタデータをリコールすることができる。1又は複数の記録された神経像は、遠隔神経調節信号ジェネレータシステムと関連付けられたモニタ上に表示することができる。使用者は、関連するメタデータと共に1又は複数の神経像を見ることができ、また、統計的に定常として視覚的に出現し得るセクションすなわち状態の境界を識別することができる。一例示的セグメント化方法では、10個の神経像が記録され、リポジトリモジュールに記憶されている。これらの10個の神経像は、同様の状況下で取集されている。一例として、これらの神経像は、インターロイキン-1b(IL-1b)を注入する前、注入している間、および注入した後に、10匹の異なるハツカネズミから取集されたものであってもよい。注入の時間は、神経像信号に関連して知ることができる。したがって使用者は、10個の神経像の各々を調査し、IL-1bの注入と関連付けることができる領域を視覚的に識別することができる。タンパク質を注入することにより、神経像の変化をもたらすことができ、この変化は、次に使用者によって視覚化することができる。したがって使用者は、神経像内の状態の境界を識別することができ、その境界では、信号は、注入する前に存在していた信号とは異なって観察され得る。神経像に対する変化が生じた総時間期間内の複数の統計的に定常である状態を使用者が識別することも可能である。10個(または神経像毎に複数の状態が識別される場合は数10個)の状態を識別した後、これらの状態をグループとして解析することができ、また、母集団統計に基づいて状態-空間表現を生成することができる。
【0098】
第2のセグメント化方法では、アルゴリズムは、同様の状況で取得された神経像内の統計的に定常なセグメントを識別するプログラマのインタフェースモジュールの一部として、遠隔神経調節信号ジェネレータシステム内で実現される。アルゴリズムは、最初に、リポジトリに記憶されている神経像のユニバースのメタデータを比較して、同様の状況下で記録された一組の神経像を識別し、その一組内の神経像毎に統計的解析を実施することができる。神経像毎の統計的解析により1又は複数のセグメントを得ることができ、このセグメント内では統計量は定常である。システムが解析を実施しているため、セグメントは、システムの限界内で任意に小さくすることができる。以下は、神経像をセグメント化するための実例プロセスである。
【0099】
神経像の自動セグメント化は、以下で説明される技法を始めとする複数の技法を使用して達成することができ、誘導された特徴に対して、平均振幅またはパルス間インターバルなどの統計量を計算することができる。例えば摺動窓を使用して、エントロピーなどの信号特性を使用して定常性を試験し、高エントロピー点におけるセグメントを形成することができる。別の例として、Kolmogorov-Smirnoffなどの試験を使用して、セグメントの統計量の同様性を試験することができる。さらなる例として、階層的なDirichlet-Processなどの教師なし学習手法を使用してセグメント化に対する見本を取り、共通の統計量を使用して時間窓をより長いセグメントにクラスタ化することも可能である。一例として、振幅、発火速度または他の誘導特徴などの信号特性中の極値を、セグメント化(例えばスプラインのためのノット点を提供するため)および多重神経像解析のための構造的「アンカー」として使用することができる。
【0100】
同様の構造を有するセグメントの発見に引き続いて、これらのセグメントを平均して、正規化されたセグメントを生成することができる。正規化されたセグメントを生成する一技法では、特徴極値などの複数の神経像中の対応する点を識別することができる。神経像毎の時間状態パラメータを共通時間基準に変形することができる。次に、各神経像から誘導された任意の特徴をその時間基準に変換し、使用して、平均するか、あるいは機械学習方法を適用することにより、状態機械モデルにおける状態のための発火速度などの合成状態パラメータを計算することができる。
【0101】
集約のために、それには限定されないが、条件付き確率場、隠れマルコフモデル、隠れセミマルコフモデル、および長期短期記憶ネットワークを始めとする機械学習方法を使用して、多くの例に対する統計的学習を達成することができる。
【0102】
第3の方法では、ヒト使用者入力を使用して、遠隔神経調節信号ジェネレータ上で走らせることができるプロセスの実施が導かれる。一例として、使用者は、セグメントの大まかな境界を識別することができ、したがって機械はより正確な解析を実施する。大まかな境界は、定常セグメントの大まかな開始時間および停止時間であってもよい。この方法では、上記方法と全く同様に、神経像毎の統計的解析により1又は複数のセグメントを得ることができ、このセグメント内では統計量は定常である。また上記方法と全く同様に、遠隔神経調節信号ジェネレータシステムが解析を実施しているため、セグメントは、システムの限界内で任意に小さくすることができる。
【0103】
一実施形態では、神経像信号および刺激信号と関連付けられた一時的情報が知られ、記録されている。言い換えると、IL-1bを注入する例では、各スパイクが生じる時間が、注入が送達された時間と共に、その両方が知られる。
【0104】
図12は、1つの遠隔神経調節信号ジェネレータシステムに通信する1つの局所神経調節信号ジェネレータシステムを示しているが、いくつかの実施形態では、複数の局所システムが1つの遠隔システムに通信することができる。通信は、無線通信、有線式通信または両方の組合せなどの様々な形態であってもよい。
【0105】
複数の方法をセグメント化のために使用することができる。例えばセグメント化は、ハンドセグメント化に基づくことができる。使用者は、マウスを使用して、プレス-ドラッグ-リリースによって状態インターバルを識別することができる。他はすべて遷移であり、自動的に計算することができる。別の例として、セグメント化は、ポイント-アンド-クリック状態認識に基づくことも可能である。使用者は「シード」点をクリックオンすることができ、その点の周囲の情報から状態が推論または学習される。隠れセミマルコフモデル(HsMM)は、明確な継続期間を有するマルコフモデルである。一例では、HsMM学習方法を使用して神経像をセグメント化し、状態機械モデルの生成を補助することができる。
【0106】
状態を定義した後でも、結果は依然として構成要素の不足であることがあり得る。状態表現は分類子と見なすことができ、また、一組のスパイクがその状態と共に属する確率のスコアを付けるために使用することができる。スコアは、状態に属していないスパイクを除去するための基本であってもよい。次に、残留している残りのスパイクを使用して新しい並列状態機械記述を生成することができる。神経像モデル化のための残留方法の一例として、状態を生成的統計的モデルと見なすことができる。各状態および/または遷移は、スパイクのための分類子として使用することができる。1つの神経像が与えられると、以下の疑似コードに基づいて多重状態機械モデルを誘導することができる。
【0107】
k=1を設定し、以下を反復する。
【0108】
1.使用者が状態インターバルを識別し、状態機械Sを作り出す。
【0109】
2.NDEがSを使用してスパイクを分類し、Sによって「良好に説明される」すべてのスパイクに印を付ける。
【0110】
3.印が付けられたスパイクを考察から除去する。
【0111】
4.残りのスパイク(Sによって良好に説明されない)が存在している間、kを増分して1へ進む。
【0112】
セット{S}は、現在、入力神経像のより完全な記述を含む。一実施形態では、状態機械を洗練するために上記疑似コードが複数の記録に適用される。
【0113】
神経調節信号パラメータ開発環境
神経像から合成神経調節信号を決定するためのツールは、任意のコンピュータプログラミング言語およびツールを使用して実装することができる。一例では、Pythonを使用してこのようなツールを実装することができる。一実施形態では、状態の状態パラメータまたは記述子は、波形、平均および分散を有する振幅分布、および分散を有する平均発火速度を含むことができる。状態の状態パラメータまたは記述子は、先行する状態と説明されている状態との間の遷移、または説明されている状態と後続する状態との間の遷移がどのように生じるべきであるかに関するパラメータをも含むことができる。
【0114】
NMSの生成は確率的または決定論的であってもよい。例えば決定論的NMSの場合、NMSは、全く同じNMS状態パラメータを所与として生成または合成されてもよい。別の例として、確率的NMSの場合、全く同じ一組のNMS状態パラメータを使用して異なるNMSを生成することができる。このような確率的生成は、振幅分布の分散および平均発火速度の分散の結果であってもよい。一実施形態では、状態間の遷移を記述するためのパラメータは、継続期間および平均化方法ならびにパラメータを含む。遷移は、決定論的、確率的または条件付きであってもよい。例えば後続する状態に対して記述されている状態からの条件付き遷移は、その後続する状態の特性に応じて異なっていてもよい。
【0115】
図13は、編集前の一例示的NDEスクリーンショットを示したものである。この例示的スクリーンショットは、対話式生神経像記録を使用者に表示することができる。表示は、平均発火速度(上側)および使用者に対する平均正規化振幅グラフ(下側)を含むことができる。十字線は、状態に対応するインターバルの使用者による選択の許容を示している。図14は、編集後の一例示的NDEスクリーンショットを示したものである。使用者は状態(陰が付けられている)を識別することができ、また、NDEは、状態パラメータを計算し、合成に有用な状態機械記述子を保存することができる。図15は、TNF-a信号のための一例示的状態機械記述を示したものである。
【0116】
アナライザ
図12を参照すると、1又は複数の神経像中の1又は複数の状態が識別されると、アナライザは、神経像の状態機械表現を生成することができる。アナライザはアナライザモジュールとして実現することができる。アナライザモジュールを動作させることができる複数の方法が存在している。一方法では、複数の神経像が存在している場合、アナライザは、その複数の神経像にわたって同様の状態を見出す。状態の同様性は、一時的情報に基づいて決定することができる。IL-1Bの注入前、注入の間、および注入後などの同様の状況下で収集された10個の神経像の上記例を使用して、注入後の5分間に各神経像に存在する信号を解析し、1つの状態としてパラメータ化することができる。例えば信号は、各神経像における継続期間にわたって統計的に定常である。同様に、7分と10分の間に存在する信号を解析し、第2の状態としてパラメータ化することができる。5分、7分および10分の時間は、実例で説明するための任意選択であり、制限することは意図されていない。本明細書において説明されているように、これらの境界は定常性特性によって決定することができる。複数の神経像にわたって同様の状態が識別されると、アナライザは、状態毎に、また、神経像毎に状態機械表現を生成することができる。状態機械表現は、波形パラメータおよびそれらの可変性を含むことができる一組の状態パラメータであってもよい。
【0117】
次に、複数の神経像にわたる同様のパラメータ毎に、各状態パラメータの平均を見出すことができる。上記10個の神経像の例に戻ると、10個の神経像の各々は、状態1から5の番号が振られた5個の状態を含むことができる。図3Aに示されているように、各状態は、1又は複数の状態パラメータによって表すことができる。パルス間タイミングおよびその可変性を一例として取ると、解析モジュールは、神経像毎に、状態1に対するパルス間タイミングおよびその可変性の値を見出すことになる。アナライザは、次に、2つの値を見つけるために、タイミングの10個の値の平均および可変性の10個の値の平均を見出すことができる。このプロセスは、すべての状態パラメータ、すべての状態、および一組の神経像に対して反復することができる。次に、このプロセスの終了時に、神経像を状態のシーケンスとしてモデル化することができ、各状態は一組の状態パラメータによって表され、また、各状態は統計的に定常である。
【0118】
局所神経調節信号ジェネレータシステム
一実施形態では、局所神経調節信号ジェネレータシステム(図11)は、遠隔神経調節信号ジェネレータシステムから情報を受け取る。局所システムは、NMS状態パラメータから生成されたNMSを修正し、対象の必要性および要望に従って合成神経調節信号をアプリケータに出力することができる。アプリケータは、最終的に対象に信号を適用するデバイスであってもよい。アプリケータは、電気機械技術、光学技術、電気技術および音響技術を始めとする1又は複数の技術を使用することができる。
【0119】
局所神経調節信号ジェネレータシステムは、対象の近傍に存在するという意味において局所である。局所神経調節信号ジェネレータは、スマートフォンを走らせるアプリケーションとして、また、コンピュータと共に走るアプリケーションとして、複数の方法で構成することができる。また、局所神経調節信号ジェネレータは、独立したスタンドアロンデバイスとして構成することも可能である。構成に無関係に、局所神経調節信号ジェネレータシステムは、必要な計算を実施するための計算リソースおよびメモリを備えた、モバイルデバイスなどの計算システムによって実現することができる。図16は、局所神経調節信号ジェネレータシステムの一可能構成を示したもので、局所神経調節信号ジェネレータシステムは、スタンドアロンシステムとして構成されている。この構成では、異なるモジュール間のデータ転送および制御の役割を担っている中央バスが存在し得る。中央バスに電気接続することができる局所神経調節信号ジェネレータシステム内の構成要素は、メモリおよび記憶モジュール、1つまたは多くのモジュールを実行することができる計算リソース、通信モジュール、エレクトロニクスモジュール、コントローラ、ユーザインタフェースモジュール、ならびに外部センサからデータを受け取るモジュールを含むことができる。ユーザインタフェースモジュールは、タッチセンサUIスクリーンまたは他のタイプのUI入力(例えばスタイラス、ボタン、等々)と通信することができ、使用者は、これらを介してジェネレータシステムと対話することができる。これらのモジュールのうちのいくつかの機能は以下で提供される。
【0120】
一実施形態では、特定の効果を自身に希望する対象は、ユーザインタフェースモジュールを介して局所神経調節信号ジェネレータシステムを使用して、遠隔神経調節信号ジェネレータシステムからの神経調節信号を要求する。対象は、例えばヒト対象であってもよい。このような神経調節信号を利用することができる場合、局所神経調節信号ジェネレータシステムに「神経調節信号プログラム」を送ることができる。神経調節信号プログラムは、神経調節信号を使用することができる方法に関する情報を含む制御データと共に、1又は複数の状態を記述しているNMS状態パラメータを含むことができる。所望の1又は複数の神経調節信号プログラムが局所神経調節信号ジェネレータシステムのメモリおよび記憶ユニット内にロードされると、対象の必要性および要望に従って神経調節信号を修正し、アプリケータを介して適用することができる。神経調節信号プログラムは、神経調節信号のデジタル表現を含むことができる。図16に示されている計算リソースは、デジタル領域の神経調節信号を修正するように構成される個人化モジュールを含むことができる。すべての修正がなされると、計算リソースは、デジタル信号をエレクトロニクスモジュールに送ることができる。エレクトロニクスモジュールは、使用されているアプリケータのタイプに従って、1又は複数のデジタル-アナログ変換器の使用を介してデジタル領域をアナログ領域に変換することができる。アプリケータは、次に、そのアナログ信号を対象に適用することができる。いくつかの実施形態では、局所NMSジェネレータシステムは、遠隔NMSジェネレータシステムによって生成されたNMSを受け取ることができる。受け取られるNMSは、デジタル形式であっても、あるいはアナログ形式であってもよい。
【0121】
ユーザインタフェース(UI)
ユーザインタフェースモジュールは、使用者が神経調節信号ジェネレータシステムと対話するための方法を提供する。例えばユーザインタフェースモジュールは、対象が神経調節信号ジェネレータシステムと対話する1つの方法である。対象は、ユーザインタフェースモジュールを使用して、複数のタスク、例えば対象に適用されると、身体内に特定のタイプの応答を引き出すことができる神経調節信号を要求すること、適用のプロセスを開始し、また、神経調節信号を適用している間、または適用した後にフィードバックを入力することなどのタスクを達成することができる。
【0122】
一実施形態では、ユーザインタフェースモジュールを利用して神経調節信号を生成することができる。この要求は、遠隔神経調節信号ジェネレータシステムに伝えることができる。このような神経調節信号が存在する場合、状態パラメータは、局所神経調節信号ジェネレータに転送することができる。状態の状態パラメータのみが局所神経調節信号ジェネレータに転送され、神経調節信号全体が転送されないため、この転送は極めて迅速であり得る。
【0123】
また、ユーザインタフェースモジュールをも使用して、神経調節を適用するプロセスを開始することも可能である。対象は、適用プロセスを開始することができる何らかのタイプの制御を起動することができる。この制御は物理的なボタンであっても、あるいはタッチスクリーン上の位置であってもよい。
【0124】
また、ユーザインタフェースモジュールをも使用してフィードバックを提供することも可能である。一例として、食欲を減退させる神経調節信号が利用される場合、対象は、神経調節信号がいかに良好に作用しているかについてのフィードバックを入力することができる。このフィードバックは、遠隔ジェネレータシステムに送り返すことができる。特定の神経調節信号と関連付けられたすべてのフィードバックを解析することができ、また、このフィードバックに基づいて神経調節信号に対する変更を実施することができる。一例として、食欲減退神経調節信号の適用時間に対する初期推奨が20分であり、また、食欲が十分に抑制されなかったというフィードバックが複数の対象からあった場合、食欲減退神経調節信号を調節して25分の適用時間を持たせることができる。
【0125】
ユーザインタフェースモジュールの別の使用では、対象は、ユーザインタフェースモジュールを使用して自身のプロファイルを入力することができる。プロファイルは、UIスクリーン上に表示することができる質問表に対する応答として入力することができる。プロファイル中の情報はメモリに記憶することができ、また、記憶モジュールを使用してセッションを個人化することができる。「セッション」という用語は、神経調節信号を対象に適用するプロセスを意味し得る。
【0126】
神経調節信号ジェネレータ
神経調節信号ジェネレータは、各状態の状態パラメータを獲得し、それらを神経調節信号のデジタル表現に変換することができる。神経調節信号ジェネレータモジュールは、神経調節信号ジェネレータを実現することができる。一例では、状態は、8個のパラメータすなわち平均パルス間時間、パルス間時間の1標準偏差、平均振幅、振幅の1標準偏差、状態の平均総継続期間、状態の総継続間の1標準偏差、基本ガウスパルス形状および基本パルスの標準偏差によって表される。この一組のパラメータが与えられると、ジェネレータモジュールは、最初に、200MHzなどのサンプリング速度を選択し、1/200*10^(-6)s毎に値を生成することができる。値を生成するために、状態の継続期間の開始に向かって、その固有標準偏差を有する基本形状を生成することができる。基本形状の振幅は、その振幅が振幅の特定された平均および標準偏差と一致するように選択することができる。次のパルスのタイミングは、そのタイミングがパルス間タイミングの特定された平均および標準偏差と一致するように選択することができる。このプロセスは状態の継続期間にわたって反復することができ、状態の継続期間は、その状態の継続期間が総継続期間の特定された平均および標準偏差と一致するように選択することができる。このプロセスが完了すると、パルス間タイミング、振幅および総継続期間が一組の記録された神経像として同様の統計的特性を有するよう、基本形状を個々に有する一連のパルスのデジタル表現が得られる。
【0127】
状態間の値はゼロであっても、あるいは非ゼロであってもよい。一実施形態では、神経調節信号ジェネレータモジュールは、状態間の神経調節信号の中を満たすことができる。図3Aでは、X軸に沿ったダッシュ線は、状態間の時間セグメントを表している。これらの遷移状態をいくつかの方法で合成神経調節信号の中でモデル化することができる。一例では、パラメータの値は、先行するセグメントの最後の値と次のセグメントの第1の値との間で補間される。各パラメータは、個々に補間することができる。一次および三次を始めとする複数のタイプの補間を使用することができる。
【0128】
個人化
個人化アシスタントは、対象によるセッションの態様の調整を可能にすることができる。個人化モジュールは、個人化アシスタントを実現することができる。調整することができるセッションの態様は、セッションの頻度、継続期間および開始の時間などの操作パラメータの対象による選択を可能にすることを含む。これらの態様を選択する自由は、すべての神経調節信号プログラムによって実現することができる。一例として、食欲制御神経調節信号プログラムは、操作パラメータのすべての選択を可能にすることができるが、血糖制御神経調節信号プログラムは、操作パラメータの1つまたはすべての選択を提供しないことがある。各神経調節信号プログラムと関連付けられた制御データは、選択された操作パラメータに基づいて特定の命令を局所神経調節信号ジェネレータシステムに提供することができる。食欲制御神経調節信号プログラムの例をもう一度参照すると、このプログラムと関連付けられた制御データは、対象に利用することができるようになされる頻度、継続期間および開始の時間の選択に関連する特定の操作パラメータを特定することができる。したがって対象がこのプログラムを選択すると、局所神経調節信号ジェネレータシステム内のコントローラは、制御データを解釈し、対象によって選択される3つの可能操作パラメータを表示し、また、エレクトロニクスモジュールを介した合成神経調節信号の出力を可能にすることができる。一方、血糖制御神経調節信号プログラムは、継続期間の選択を可能にしないことがある。この選択は、食欲制御プログラムと関連付けられた制御データの中では特定されないことがあるため、選択は対象に利用することができないことがある。
【0129】
セッションに関するいくつかの操作パラメータ選択を提供する能力と共に、このモジュールは、複数の異なるセッションのスケジュールを管理することも可能である。糖尿病患者に対する一例として、食欲制御プログラムおよび血糖制御プログラムは、それらが相俟って適用されると、固有の危険を対象に提示することがあり得る。したがって患者のプロファイルを知ることにより、個人化モジュールは、食欲制御プログラムの使用を阻止することができる。このような阻止は、各神経調節信号プログラムの制御データ内で記述することができる規則を確立することによって達成することができる。制御データは、例えば患者が特定のプロファイルを有している場合、特定の選択を不許可にすることができることを明記することができる。また、制御データは、可能にされるプログラムの組合せまたはセッション間の最短時間などの他の詳細を明記することも可能である。
【0130】
別の態様では、局所神経調節信号ジェネレータシステムは、対象に結合することができ、あるいは対象によって使用することができるセンサから入力を受け取る。センサから受け取ったデータに基づいてセッションを修正することができる。一例では、食欲を制御するセッションの頻度は、対象の体重に応じて修正することができる。この例を継続すると、体格指数(BMI)が25と30の間の体重超過の対象の場合、1日に2回だけ食欲制御プログラムを可能にすることができる。しかしながらBMIが30と35の間である肥満した対象の場合、このプログラムは、1日に4回可能にすることができる。それと同時に、対象が19以下のBMIを有している場合、食欲制御プログラムを可能にすることは全く不可能である。この場合、食欲制御プログラムと関連付けられた制御データは、コントローラによって解釈されると、体重計の上に立つように対象に命じる情報をUIスクリーン中に表示する情報を含むことができる。また、制御データは、対象が自身の体重を計るべき頻度に関する情報を含むことも可能である。体重は、手動で、または電子的に入力することができる。例えば個人化モジュールは、体重計出力をデジタル的に受け取ることができる。体重データが入力されない場合、コントローラはセッションを不許可にすることができる。
【0131】
神経調節信号条件付け
神経調節信号条件付けモジュールは、使用されているアプリケータのタイプに応じて神経調節信号の条件付けを可能にする。例えば条件付けは、アプリケータのタイプに従って、デジタル信号の周波数成分を修正すること、デジタル信号の振幅を大きくすること、および状態の継続期間を修正することを含む。アプリケータがスピーカなどの音響デバイスである場合、神経調節信号の振幅は、例えば90dBに設定することができる。この情報は制御データの中に含めることができ、また、コントローラによって解釈することができる。コントローラがスピーカを検出するか、あるいはスピーカを使用して神経調節信号が送達されていることを知ると、制御データに含まれている情報に従って、それに応じて神経調節信号を修正することができる。この場合、信号は、90dBの振幅を使用して再生される。同様に、アプリケータが光をベースとするデバイスである場合、制御データの中で制御される情報に従って、光の輝度および光の色を制御することができる。
【0132】
デジタル信号の周波数成分を修正することができる方法の一例では、スピーカがアプリケータとして使用される場合、特定の周波数を強化することができる。スピーカは、本来、低域通過フィルタと見なすことができる。したがって神経調節信号に存在している特定の高周波数が重要である場合、これらの周波数を強化することができる。これを達成する複数の方法が存在している。例えば信号のデジタル表現のフーリエ変換が見出されており、適切な修正が周波数領域で実施される。変更がなされると逆フーリエ変換を適用することができ、これにより神経調節信号の修正されたデジタル表現が得られる。この信号はエレクトロニクスモジュールに提示することができ、エレクトロニクスモジュールは、次にこの信号を適切なアプリケータに適用する。
【0133】
認証
いくつかの構成では、合成神経調節信号は、無許可修正または誤った使用を防止し、あるいはコピーを防止するために1又は複数の認証信号を含むことができる。認証のための1つの技法が図17に示されている。高いスパイクは合成神経調節信号の区分を表している。図は、高いスパイクの間にあるより短いスパイクすなわち認証信号を示している。局所神経調節信号ジェネレータシステム内の認証モジュールは、合成神経調節信号のデジタル表現に認証信号を追加することができる。認証信号はエレクトロニクスモジュールに提示することができ、また、アプリケータに送られる。アプリケータ上では、コンパニオン認証モジュールが認証信号の存在を検査することができる。認証信号が存在している場合、アプリケータ内のエレクトロニクスモジュールは、アプリケータがアナログ形態の合成神経調節信号を対象に適用するために、合成神経調節信号をデジタル表現からアナログ表現に変換することができる。一実施形態では、認証信号は、ヒトまたは動物に対する影響を有していないことが知られ得るため、神経調節信号を変換し、未修正のままで適用することができる。別の実施形態では、認証信号は、対象への神経調節信号の適用が可能にされる前に、アプリケータによって物理的または電子的に抑制することができ、あるいはソフトウェアまたは電子処理によって除去または低減することができる。この例ではより小さいスパイクが神経調節信号のデジタル表現に含まれているが、他の技法を使用することも可能である。これらの他の技法は、信号強度の把握し難い周期的変化として、特定のパルス形状の使用、パルス空間の変更およびパルスの位相の変更を含むことができる。
【0134】
一実施形態では、認証信号は、図18に示されているように、NMSの無許可修正または誤った使用を防止し、あるいはNMSの無許可コピーを防止するように生成された処理済みNMSに含まれている。認証信号を提供するための一実例技法が図18に示されている。図18に示されているように、高いスパイクはNMSの区分を表し、一方、高いスパイクの間のより短いスパイクは認証信号を表している。システムは、例えばアプリケータの中に認証回路を含むことができ、認証回路は、生成されたNMSのアプリケータによる受取りおよび検証をイネーブルする。認証回路は、認証信号がNMSの中に存在しているかどうかを検査して決定することができる。認証信号が存在している場合、アプリケータを使用した対象へのNMSの適用が許可される。一実施形態では、NMSは未修正のままで適用することができる。例えば認証信号を有するNMSは、その認証信号を除去することなく適用することができる。認証信号は、ヒトまたは動物に対する影響を有していないことが知られ得る。別の実施形態では、認証信号は、神経像を対象に適用することができる前に、アプリケータの物理的態様または電子態様によって抑制することができ、あるいはソフトウェアまたは電子処理によって除去または低減することができる。認証信号は、信号強度、パルス形状、パルス空間または位相の把握し難い周期的変化を含むことができ、これは、最終使用者に対する生理学的影響のない認証を提供するために使用することができる。
【0135】
別の実施形態では、NMSは、図18に示されているようにより高いスパイクの間に散在しているより短いスパイクを有さない認証信号を含むことができる。例えばNMSは、スパイクのタイミングの1又は複数のわずかな変化、スパイクの幅(継続期間)のわずかな変化、スパイクの形状のわずかな変化およびベースライン電圧レベルのわずかな変化を含むことができる。スパイクの形状のわずかな変化は、各個別のスパイクの立上り縁および立下り縁が緩やかになるか、または速やかになるように生成することができる。これは、1ビットまたは2ビットの情報として使用することが可能である。例えば緩やかな立上り縁および緩やかな立下り縁は、値「00」を表すことができる。緩やかな立上り縁および速やかな立下り縁は、値「01」を表すことができる。ベースライン電圧レベルの変化は、小さいスパイクではなく、図18の時間軸に沿った小さい波に基づくことができる。
【0136】
NMS(図18の高いスパイク)は、使用者の食欲の増進などの最終使用者に対する何らかの効果を駆り立てることができる。NMSは、いくつかのわずかな信号変化を含むことができる。わずかな信号変化は、図18に示されている小さいスパイクの形態であっても、あるいはNMSの変化であってもよい。わずかな信号は、アプリケータのエレクトロニクス(ハードウェア)またはソフトウェアによってフィルタ除去することができる。わずかな信号は、使用者の身体に対する認識し得るほどの影響をほとんど有し得ず、フィルタ除去されない。このような信号変化は、ビットのシーケンスを符号化して、デジタルシグネチャと類似のあるレベルの認証性を提供することができる。例えばわずかな変化がないNMSを修正して、公開かぎ-専用かぎ対の公開かぎを使用して生成されるわずかな変化を含ませることができる。公開かぎは、特定のアプリケータに固有であってもよい。アプリケータは、公開かぎ-専用かぎ対の専用かぎを使用して、小さい変化の中に符号化された情報を復号することができる。小さい変化の中に符号化される情報は、ハッシュ、周期冗長検査(CRC)、デジタルハッシュ、キー化ハッシュまたはデジタルシグネチャなどのビットであってもよい。
【0137】
アイデンティティ検証
アイデンティティ検証モジュールは、局所システムを使用して対象のアイデンティティを検証することができる。アイデンティティが検証されない場合、このモジュールは、実行を停止するメッセージを他のモジュールに提供することと共に、メッセージを表示するか、または何らかのタイプの警報を提供するようにソフトウェアに命令する。アイデンティティは、複数の技法を使用して検証することができる。一方法では、指紋、虹彩走査または顔の画像などの何らかのタイプの識別特徴を局所システムによって獲得することができる登録プロセスに加わるよう対象に要求することができる。引き続いて、提供された識別を第三者が検証する検証プロセスを開始することができる。検証を提供する様々な方法を利用することができる。一例では、識別情報の電子コピーが第三者に送られ、第三者は次に電子検証を提供する。別の方法では、物理的な検証が第三者によって提供され、第三者は次に、セッションの継続を可能にする独自のコードを局所システムに入力する。局所システムは、スマートフォンなどの携帯型デバイスであってもよい。初期検証がなされ、対象に、その対象自身の身体に信号を適用する必要が生じると、対象は、セッションの実行を開始するために、指紋などの何らかの情報を提供しなければならないか、あるいは虹彩走査または顔面操作、等々を自発的に提供することになり得る。
【0138】
また、アプリケータの中にアイデンティティ検証機構を含めることも可能である。アプリケータは、アプリケータが接触していた身体部分から、アプリケータが取り付けられている皮膚の色または身体部分の形状などの何らかの信号を獲得し、また、この信号を局所システムに送ることができる。これを達成するために、小型カメラ、インピーダンスセンサ、圧力センサ、電磁容量センサなどのセンサをアプリケータの構造の中に含めることができる。
【0139】
神経調節信号ジェネレータシステム構成
図11は1つの構成を示したものであるが、遠隔システムは、一実施形態ではサーバとして構成することができる。この構成は図19に示されている。この図は、遠隔システムと通信しているN個の局所システムを示している。例えば局所システムは、トランシーバ、プロセッサ、i/oインタフェース、または2つのシステム間の電子通信を可能にする他の構成要素を含むことができる通信モジュールを介して遠隔システムと通信することができる。これらの通信は、無線であっても、あるいは有線式であってもよい。各局所システムは、1又は複数のアプリケータタイプを駆動することができる。したがってこの構成では、遠隔システムは、神経調節プログラムを分配し、フィードバックを含む情報を局所システムを介して1又は複数の対象から集めるサーバとして作用することができる。1又は複数の対象にサービスするために、以下、いくつかの他の構成について説明する。
【0140】
図20には、一実施形態によるミドルウェア層が示されている。ミドルウェアという用語は、神経調節ジェネレータシステムの様々なモジュールのアクティビティを調整し、サポートするソフトウェアの層を意味することができる。この層は、基礎をなしているコンピュータシステムのオペレーティングシステムおよびデバイスドライバに通信することによって調整およびサポートを達成することができる。ソフトウェアのこの層は、神経調節ジェネレータシステムの局所構成要素および遠隔構成要素内に存在することができる。局所神経調節ジェネレータシステム内では、図20に示されているように、ミドルウェア層は、モジュールとデバイスオペレーティングシステムの間のソフトウェア層であってもよい。この実施形態では、ミドルウェア層は、様々なモジュール間のアクティビティをスケジュールしている。さらに、ミドルウェア層は、より低いレベルのコマンドを生成し、それをオペレーティングシステムに通信することができる。また、ミドルウェア層は、オペレーティングシステムから対象または他のモジュールに、コマンドを実行した結果として、あらゆる結果、メッセージまたはデータを通信する。以下、ミドルウェア層の動作の一例について説明する。この例では、ミドルウェア層は、神経調節信号をアプリケータに送るために、一連のステップを介して進行する。以下は、ミドルウェア層の非制限の例示的動作である。
【0141】
ユーザインタフェースモジュール:対象が局所システムを利用して神経調節アプリケーションを起動すると、ミドルウェア層は、最初に、システムを使用して個体のアイデンティティを検証することができる。アイデンティティが検証された後、アプリケーションは、スマートフォンのスクリーンなどのディスプレイデバイス上にメッセージを表示することができる。これらのメッセージは、食欲抑制などの望ましい効果のタイプの対象による選択を促すことができる。このような選択がなされた後、ミドルウェア層は、このような効果を引き出すことになる信号の信号表現が局所システムの記憶装置内に既に存在しているかどうかを調べるために検査することができる。信号表現が存在している場合、その信号表現を神経調節信号ジェネレータシステムに送ることができる。信号表現が存在していない場合、対象が遠隔システムから表現を獲得することの提案などのいくつかの推奨アクションを対象に通知することができる。
【0142】
個人化モジュール:効果のタイプが選択された後、個人化モジュールは、本明細書において説明されているいくつかの機能を実施することができる。例えばこのモジュールは、セッションのいくつかの態様の使用者による最適化を可能にする。さらに、このモジュールは、特定の使用者のための様々なセッションのスケジュールを管理することも可能である。したがって対象が効果を要求した時点で許容可能であることを個人化モジュールが決定する効果に対して、対象の要望に適応するべく信号表現を修正することができる。例えば対象は、セッションの継続期間の変更を希望することができ、また、これは、使用者が行った選択に対して可能にされる。
【0143】
条件付けモジュール:信号表現は、条件付けモジュールによってさらに修正することができる。ミドルウェアはアプリケータタイプを知っているため、ミドルウェアは、波形パラメータのうちのいくつか、またはすべてを修正することができる。一例として、アプリケータのタイプおよびモデルに応じて、1つまたはすべての状態の波形振幅パラメータを修正することができる。
【0144】
認証モジュール:信号表現は、認証モジュールによってさらに修正することができる。一例として、図17に描写されているような信号を作り出すために、元の状態表現を修正して認証信号の追加に適応しなければならないことがある。これは、元の状態を多数の状態に分解することを始めとする様々な方法で達成することができ、各状態は、認証信号を追加することができるよう、より短い継続期間を有する。認証は状態によって表すことができる。
【0145】
神経調節信号ジェネレータモジュール:この例では、上で説明したモジュールは、所望の神経調節信号の信号表現を保存することができる。このモジュールでは、信号表現は、先行するモジュールからのすべてのその修正の後に、デジタル値の列に変換される。
【0146】
安全性モジュール:このモジュールは、一実施形態では安全性検査を実施することができる。安全性検査は、様々な技法を使用して実施することができる。例えば状態機械表現を利用して、自身によって、また、他の状態との組合せによって各状態が安全性閾値内にあることが保証される。一例として、特定の閾値を超えて波形パラメータを大きくすることはできない。安全性モジュールは、このような修正の実施を防止することができる。別の例では、安全性モジュールは、このような信号を適用してはならないことを対象の医療履歴または他の記録が示している場合、その信号の適用を可能にし得ない。さらに別の例では、安全性モジュールは、ヒトが特定の年齢未満である場合、そのヒトへの特定の信号の適用を可能にし得ない。年齢データは、対象が入力し、引き続いて検証した記録から獲得することができる。さらに、識別モジュールは、局所ジェネレータシステムの使用者の識別を連続的に検査することができ、したがって別の対象または使用者がその特定の局所システムを使用することは困難であり得る。
【0147】
エレクトロニクスモジュール:このモジュールでは、アプリケータタイプに応じて信号のデジタル表現を適切に処理することができる。一例として、アプリケータタイプがヘッドセットである場合、デジタル-アナログ変換器は、デジタル信号をアナログ信号に変換することができる。また、エレクトロニクスモジュールは、アプリケータがアナログ-デジタル変換器を含んでいる場合、パス-スルーモードで機能することも可能である。例えばデジタル表現は、未修正のままでアプリケータへ通過することができる。
【0148】
上記モジュールに加えて、ミドルウェア層は、1又は複数の他のモジュールとインタフェースすることができる。これらのモジュールのうちの1つは、よく知られているソーシャルメディアアプリケーションを介して互いに接続するために、使用者による、同じタイプの効果を引き出す試行を可能にするソーシャルメディアモジュールであってもよい。ソーシャルメディアモジュールとのこの対話は、信号処理モジュールとの対話と比較して、ソーシャルメディアモジュールの場合、ミドルウェア層は、スマートフォンなどの局所デバイスに既に存在しているモジュールに大いに依存することができる点で異なっていてもよい。局所システムがスタンドアロンデバイスである場合、カスタムモジュールを開発することができる。実施態様に無関係に、ソーシャルメディアモジュールは、同じタイプの効果を引き出すべく試行する対象を接続することができる。食欲抑制アプリケーションの例では、対象は、それらがどのように初期プログラムを個人化したかの詳細を共有することができる。
【0149】
また、ミドルウェア層は遠隔システム上に存在していてもよい。この場合、ミドルウェア層は、メモリおよび記憶モジュール、プログラマのインタフェースモジュール、ならびにアナライザモジュールなどの他のタイプのモジュールとインタフェースすることができる。局所システムの場合と全く同様に、ミドルウェア層は、様々なモジュールのアクティビティを調整することも可能である。また局所システムの場合と全く同様に、ミドルウェア層は、モジュールと基礎をなしているデバイスオペレーティングシステムおよびハードウェア層との間をインタフェースすることも可能である。
【0150】
また、ミドルウェア層は、アプリケータシステム内に存在していてもよい。アプリケータシステム内では、ミドルウェア層は、神経調節信号の認証性の検証、認証性を保証するために追加された構成要素の信号の取除き、デジタル-アナログ変換の実施、および特定の構成要素への信号の適用などのいくつかの機能を担うことができる。例えば特定の構成要素は、対象の身体に信号を供給する電極であってもよい。
【0151】
一実施形態では、ミドルウェア層は、神経調節システムハードウェアおよびデバイスソフトウェアを不可知論的にする。一例では、局所システムは、カスタムハードウェアおよびソフトウェアに基づくことができ、あるいはアンドロイド電話またはiPhone(登録商標)の中に存在してもよい。局所システムの基礎をなしているハードウェアおよびデバイスソフトウェアに無関係に、神経調節システムは同じ効果を引き出すことができる。同様に、遠隔システムの基礎をなしているハードウェアおよびデバイスソフトウェアに無関係に、神経調節信号は、同様の方法または全く同じ方法で解析することができる。
【0152】
図21は、合成NMSジェネレータシステムのさらに別の構成を示したものである。この構成では、ミドルウェア層は、それらとインタフェースする代わりに、既に考察したモジュールを含むことができる。ミドルウェア層は、既に説明したように、依然としてこれらのモジュール内のアクティビティをスケジュールすることができる。図20のアーキテクチャは、ミドルウェア層のためのソフトウェアコードベース全体に影響を及ぼすことなく、モジュールに対する局所化された変更を可能にする利点、あるいは追加モジュールを開発することができる利点を有しているが、図21のアーキテクチャは変更を制御することができ、したがってより安定したミドルウェアコードを得ることができる。システムの使用者の所望の柔軟性に従って、これらの2つのアーキテクチャまたは組合せのいずれかを利用することができる。
【0153】
アプリケーションストア
対象は、特定の効果を引き出す信号の表現が局所システム内に存在していない場合、このような表現を獲得することができることは既に言及した。このような表現を獲得するいくつかの方法が存在し得る。一方法では、対象は、このような表現をアプリケーションストアから購入し、検索し、または別の方法で獲得する。このプロセスは、スマートフォンアプリケーションが今日ダウンロードされている方法と同様であってもよい。その使用事例との1つの相違では、アプリケーションストア内で利用可能にされたアプリケーションは、厳格な試験および検証プロセスを経る。このようなアプリケーションをアプリケーションストア内で利用可能にするプロセスは厳格であり得る。アプリケーション開発者は、このようなアプリケーションストアを維持する責任を負っている適切な機関または職員に情報を提示し、ヒトに適用する場合に、アプリケーション開発者のアプリケーションの使用が何ら有害ではないことの証拠を提供しなければならないことがあり得る。この情報は、臨床データ、動物データ、実験データまたはヒトにおける事前使用からのデータを含むことができる。適切な機関または職員による精査の後、アプリケーションを利用可能にし、対象の局所デバイスにダウンロードすることができる。
【0154】
専門用語
上で説明した実施形態のうちの少なくともいくつかでは、一実施形態に使用されている1又は複数の要素は、置換えが技術的に不可能でない限り、別の実施形態に交換可能に使用することができる。特許請求される主題の範囲を逸脱することなく、上で説明した方法および構造に様々な他の省略、追加および修正を加えることができることは当業者には認識されよう。すべてのこのような修正および変更は、添付の特許請求の範囲に定義されている主題の範囲内であることが意図されている。
【0155】
本明細書における実質的に任意の複数形および/または単数形の用語の使用に関して、当業者は、文脈および/またはアプリケーションに対して適切である場合、複数形から単数形に、および/または単数形から複数形に置き換えることができる。明確にするために、本明細書においては様々な単数形/複数形の置換をはっきりと示すことができる。本明細書および添付の特許請求の範囲に使用されているように、単数形の表現は、文脈がそうではないことを明確に示していない限り複数形の参照を含む。本明細書における「または」に対するすべての参照には、特に言及されていない限り「および/または」を包含することが意図されている。
【0156】
一般に、本明細書、とりわけ添付の特許請求の範囲に使用されている用語(例えば添付の特許請求の範囲の身体)は、概ね「オープン」用語として意図されている(例えば「を含んでいる」という用語は、「を含んでいるが、それには限定されない」として解釈すべきであり、「を有する」という用語は、「を少なくとも有する」として解釈すべきであり、「を含む」という用語は、「を含むが、それには限定されない」として解釈するべきであり、等々)ことは当業者には理解されよう。さらに、紹介されている特許請求詳述の特定の数が意図されている場合、このような意図は特許請求の範囲に明確に記載されることになり、また、このような詳述がない場合、このような意図は存在しないことは当業者には理解されよう。例えば理解するための補助として、添付の特許請求の範囲は、特許請求詳述を紹介するために、前置き語句「少なくとも1つの」および「1又は複数の」の使用を含むことができる。しかしながら、同じ特許請求が前置き語句「1又は複数の」または「少なくとも1つの」を含み、また、単数形の表現を含んでいる場合であっても(例えば単数形の表現は、「少なくとも1つの」または「1又は複数の」を意味するべく解釈すべきである)、単数形の表現による特許請求詳述の紹介は、このような紹介された特許請求詳述を含む何らかの特定の特許請求を1つのこのような詳述のみを含む実施形態に限定することをほのめかすものとしてこのような語句の使用を解釈してはならず、特許請求詳述を紹介するために使用される単数形の表現の使用についても同じことが言える。さらに、紹介された特許請求詳述の特定の数が明確に記載されている場合であっても、当業者は、このような詳述は、少なくとも記載されている数を意味するものとして解釈すべきであることを認識するであろう(例えば他の変更子がない「2つの詳述」の裸の詳述は、少なくとも2つの詳述、または2つ以上の詳述を意味する)。さらに、「A、BおよびC、等々のうちの少なくとも1つ」と類似した約束が使用されている実例では、一般にこのような構造は、当業者がその約束を理解するであろうという意味で意図されている(例えば「A、BおよびCのうちの少なくとも1つを有するシステム」は、それらに限定されないが、Aのみを有するシステム、Bのみを有するシステム、Cのみを有するシステム、AおよびBを共に有するシステム、AおよびCを共に有するシステム、BおよびCを共に有するシステム、および/またはA、BおよびCを共に有するシステム、等々を含むことになる)。「A、BまたはC、等々のうちの少なくとも1つ」と類似の約束が使用されている実例では、一般にこのような構造は、当業者がその約束を理解するであろうという意味で意図されている(例えば「A、BまたはCのうちの少なくとも1つを有するシステム」は、それらに限定されないが、Aのみを有するシステム、Bのみを有するシステム、Cのみを有するシステム、AおよびBを共に有するシステム、AおよびCを共に有するシステム、BおよびCを共に有するシステム、および/またはA、BおよびCを共に有するシステム、等々を含むことになる)。さらに、事実上、2つ以上の代替用語を表す任意の離接語および/または語句は、説明の中であれ、特許請求の範囲の中であれ、あるいは図面の中であれ、いずれの用語であれ、あるいは両方の用語であれ、それらの用語のうちの1つを含む可能性を企図するべく理解すべきであることは当業者に理解されよう。例えば語句「AまたはB」は、「A」または「B」または「AおよびB」の可能性を含むべく理解されよう。
【0157】
さらに、本開示の特徴または態様がMarkushグループに関して説明されている場合、当業者は、本開示は、したがってMarkushグループの要素のうちの任意の各要素またはサブグループに関しても説明されていることを認識するであろう。
【0158】
当業者には理解されるように、書面にした説明の提供に関することなどの何らかの目的およびあらゆる目的のために、本明細書において開示されているすべての範囲は、任意のサブ範囲およびあらゆる可能サブ範囲ならびにそのサブ範囲の組合せをも包含している。リストに挙げられた任意の範囲は、少なくとも等しく2分の1、3分の1、4分の1、5分の1、10分の1、等々に分解される同じ範囲を十分に説明し、可能にしているため、容易に認識することができる。非制限の例として、本明細書において考察されている各範囲は、下側の3分の1、中間の3分の1および上側の3分の1、等々に容易に分解することができる。また当業者には理解されるように、「まで」、「少なくとも」、「より大きい」、「未満」、等々などのすべての言語は、記載されている数を含み、また、上で考察したサブ範囲に引き続いて分解することができる範囲を意味している。最後に、当業者には理解されるように、範囲は各個別の要素を含む。したがって例えば1~3個の物品を有するグループは、1個、2個または3個の物品を有するグループを意味している。同様に1~5個の物品を有するグループは、1個、2個、3個、4個または5個の物品を有するグループを表し、以下同様である。
【0159】
以上の例、詳細およびシナリオは、実例で説明するために提供されたものであり、本開示を制限することは全く意図されていない。含まれている説明を有する当業者は、過度の実験を実施することなく適切な機能性を実現することができるはずである。本明細書における「一実施形態」、「バージョン」、等々の参照は、説明されている実施形態が特定の特徴、構造または特性を含むことができることを示しているが、すべての実施形態が必ずしもその特定の特徴、構造または特性を含んでいなければならないわけではない。このような語句は、必ずしも同じ実施形態を意味しているわけではない、さらに、特定の特徴、構造または特性が一実施形態に関連して説明されている場合、それは、明確に示されていようとなかろうと、他の実施形態に関連するこのような特徴、構造または特性に影響を及ぼす当業者の知識の範疇とされる。本開示による実施形態は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェアまたはそれらの任意の組合せの中で実現することができる。また、実施形態は、1又は複数の機械可読媒体を使用して記憶された命令として実現することも可能であり、この命令は、1又は複数のプロセッサによって読み出し、実行することができる。一実施形態は、実行されると、本明細書において概説した機能のうちの1又は複数を実施する命令を有する非一時的コンピュータ可読媒体を含むことができる。機械可読媒体は、機械による読出しが可能な形態の情報を記憶し、あるいは転送するための任意の機構を含むことができる。例えば機械可読媒体は、任意の適切な形態の揮発性または不揮発性メモリを含むことができる。モジュール、データ構造、機能ブロック、等々は、考察を容易にするためにそういうものとして参照されており、何らかの特定の実施態様詳細が要求されることをほのめかすことは意図されていない。例えば説明したモジュールおよび/またはデータ構造は、すべて、特定の設計または実施態様による要求に応じて、コンピュータコードまたはデータのサブモジュール、サブプロセスまたは他のユニットに結合するか、または分割することができる。図面においては、説明を分かりやすくするために概略要素の特定の配置または順序を示し得る。しかしながらこのような要素の特定の順序または配置は、処理の特定の順序すなわちシーケンスまたはプロセスの分離がすべての実施形態に要求されることをほのめかすことを意味していない。一般に、命令ブロックまたはモジュールを表すために使用される概略要素は、任意の適切な形態の機械可読命令を使用して実現することができ、また、各このような命令は、任意の適切なプログラミング言語、ライブラリ、アプリケーションプログラミングインタフェース(API)および/または他のソフトウェア開発ツールまたはフレームワークを使用して実現することができる。同様に、データまたは情報を表すために使用される概略要素は、任意の適切な電子配置またはデータ構造を使用して実現することができる。さらに、要素間のいくつかの接続、関係または結合は簡略化することができ、あるいは本開示を曖昧にしないよう、図面には示されていない。本開示は例示的と見なすべきであり、その性質を限定するものと見なすべきではなく、本開示の趣旨の範疇であるすべての変更および修正は保護されることが望ましい。
【0160】
以上、本明細書において様々な態様および実施形態を開示したが、当業者には他の態様および実施形態が明らかであろう。本明細書において開示された様々な態様および実施形態は実例で説明するためのものであり、制限することは意図されておらず、真の範囲および趣旨は、以下の特許請求の範囲によって示されている。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9
図10
図11
図11(Cont.)】
図12
図13
図14
図15
図16
図16(Cont.)】
図17
図18
図19
図20
図20(Cont.)】
図21
図21(Cont.)】