(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】印刷装置及び印刷方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/165 20060101AFI20220906BHJP
【FI】
B41J2/165 209
(21)【出願番号】P 2019003738
(22)【出願日】2019-01-11
【審査請求日】2021-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100166545
【氏名又は名称】折坂 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100142653
【氏名又は名称】小林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】花岡 周平
(72)【発明者】
【氏名】市川 陽一
【審査官】小野 郁磨
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-091200(JP,A)
【文献】特開2015-212031(JP,A)
【文献】特開2018-001765(JP,A)
【文献】特開2016-172417(JP,A)
【文献】特開2003-127429(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0056650(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体に対してインクジェット方式で印刷を行う印刷装置であって、
インクジェット方式で前記媒体へインクを吐出するインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドによりインクを吐出する吐出位置を指定することで印刷すべき画像である印刷画像を示す吐出位置指定データに基づいて前記インクジェットヘッドの動作を制御する制御部と
、
予め設定された主走査方向へ前記媒体に対して相対的に移動しつつインクを吐出する主走査動作を前記インクジェットヘッドに行わせる主走査駆動部と、
前記主走査方向と直交する副走査方向へ前記媒体に対して相対的に移動する副走査動作を前記インクジェットヘッドに行わせる副走査駆動部と
を備え、
前記制御部は、前記吐出位置指定データに対し、前記印刷画像に加えて予め設定されたパターンが更に印刷されるように、前記吐出位置を追加する補正を行い、補正後の前記吐出位置指定データに基づいて、前記インクジェットヘッドにインクを吐出させ
、
前記印刷装置は、前記媒体において前記印刷画像が印刷される領域の各位置に対して複数回の前記主走査動作を行うマルチパス方式で前記媒体への印刷を行い、
1回の前記主走査動作において前記インクジェットヘッドによりインクを吐出する前記吐出位置を指定するデータを主走査用データと定義した場合、前記吐出位置指定データは、前記印刷画像を印刷するために行うそれぞれの回の前記主走査動作に対応する前記主走査用データを含み、
前記制御部は、少なくともいずれかの回の前記主走査動作に対応する前記主走査用データに対し、前記パターンに対応する前記吐出位置を追加する補正を行い、
前記主走査用データに対して前記パターンに対応する前記吐出位置を追加する補正において、前記制御部は、前記媒体において前記印刷画像が印刷される位置の変更を行った上で、前記媒体において前記印刷画像と重ならないように、前記パターンに対応する前記吐出位置を追加することを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
媒体に対してインクジェット方式で印刷を行う印刷装置であって、
インクジェット方式で前記媒体へインクを吐出するインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドによりインクを吐出する吐出位置を指定することで印刷すべき画像である印刷画像を示す吐出位置指定データに基づいて前記インクジェットヘッドの動作を制御する制御部と、
予め設定された主走査方向へ前記媒体に対して相対的に移動しつつインクを吐出する主走査動作を前記インクジェットヘッドに行わせる主走査駆動部と、
前記主走査方向と直交する副走査方向へ前記媒体に対して相対的に移動する副走査動作を前記インクジェットヘッドに行わせる副走査駆動部と
を備え、
前記制御部は、前記吐出位置指定データに対し、前記印刷画像に加えて予め設定されたパターンが更に印刷されるように、前記吐出位置を追加する補正を行い、補正後の前記吐出位置指定データに基づいて、前記インクジェットヘッドにインクを吐出させ、
前記印刷装置は、前記媒体において前記印刷画像が印刷される領域の各位置に対して複数回の前記主走査動作を行うマルチパス方式で前記媒体への印刷を行い、
1回の前記主走査動作において前記インクジェットヘッドによりインクを吐出する前記吐出位置を指定するデータを主走査用データと定義した場合、前記吐出位置指定データは、前記印刷画像を印刷するために行うそれぞれの回の前記主走査動作に対応する前記主走査用データを含み、
前記制御部は、少なくともいずれかの回の前記主走査動作に対応する前記主走査用データに対し、前記パターンに対応する前記吐出位置を追加する補正を行い、
前記主走査用データに対して前記パターンに対応する前記吐出位置を追加する補正において、前記制御部は、前記印刷画像の一部を削除した上で、前記印刷画像から削除した前記一部に対応する範囲内に、前記パターンに対応する前記吐出位置を追加することを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
前記パターンは、前記媒体において前記印刷画像と重ならない前記吐出位置へ前記インクジェットヘッドにインクを吐出させることで前記インクジェットヘッドにフラッシングを行わせるためのパターンであることを特徴とする請求項1
又は2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記印刷装置は、パス数をN(Nは、2以上の整数)とするマルチパス方式で前記媒体への印刷を行い、
印刷の解像度に応じて設定される全ての吐出位置に対してインクを吐出する場合の印刷の濃度を全吐出濃度Mdと定義した場合、前記パターンに対応する前記吐出位置を追加する補正を行う前の前記主走査用データは、印刷の濃度が前記全吐出濃度Mdをパス数Nで除した数であるMd/N以下になるように前記吐出位置を指定するデータであり、
前記制御部は、少なくともいずれかの回の前記主走査動作に対応する前記主走査用データに対し、1回の前記主走査動作において前記パターンに対応する位置へ吐出されるインクによる印刷の濃度がMd/Nよりも大きくなるように、前記パターンに対応する前記吐出位置を追加する補正を行うことを特徴とする請求項1
から3のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項5】
前記主走査用データは、対応する前記主走査動作においてインクを吐出する前記吐出位置が画素と対応付けられたラスタ画像のデータであり、
前記印刷装置は、少なくとも次に行う前記主走査動作に対応する前記主走査用データが示すラスタ画像を記憶する画情報記憶部を更に備え、
前記制御部は、前記画情報記憶部に記憶されているラスタ画像に対し、前記パターンに対応する位置の画素の値を変更する補正を行うことにより、前記主走査用データに対して前記パターンに対応する前記吐出位置を追加する補正を行うことを特徴とする請求項1
から4のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項6】
前記吐出位置指定データは、前記印刷画像を示すデータに対してRIP処理を行うことで生成されたデータであることを特徴とする請求項1から
5のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記印刷装置の外部にある装置から前記吐出位置指定データを受け取り、前記印刷装置内で、前記吐出位置指定データに対し、前記パターンが更に印刷されるように前記吐出位置を追加する補正を行うことを特徴とする請求項1から
6のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項8】
前記印刷装置の動作を制御するプログラムであるファームウェアを記憶するファームウェア記憶部を更に備え、
前記制御部は、前記ファームウェア記憶部に記憶されているファームウェアに従って、前記吐出位置指定データに対する補正を行うことを特徴とする請求項
7に記載の印刷装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記パターンの幅、及び前記パターンの形成時にインクを吐出する印刷の濃度の指定をユーザから受け取り、ユーザの指定に基づき、前記吐出位置指定データに対し、前記パターンが更に印刷されるように前記吐出位置を追加する補正を行うことを特徴とする請求項1から
8のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項10】
媒体に対してインクジェット方式で印刷を行う印刷方法であって、
インクジェット方式で前記媒体へインクを吐出するインクジェットヘッドの動作について、
前記インクジェットヘッドによりインクを吐出する吐出位置を指定することで印刷すべき画像である印刷画像を示す吐出位置指定データに基づいて制御し、
かつ、前記吐出位置指定データに対し、前記印刷画像に加えて予め設定されたパターンが更に印刷されるように、前記吐出位置を追加する補正を行い、補正後の前記吐出位置指定データに基づいて、前記インクジェットヘッドにインクを吐出させ
、
予め設定された主走査方向へ前記媒体に対して相対的に移動しつつインクを吐出する主走査動作と、前記主走査方向と直交する副走査方向へ前記媒体に対して相対的に移動する副走査動作とを前記インクジェットヘッドに行わせ、かつ、前記媒体において前記印刷画像が印刷される領域の各位置に対して複数回の前記主走査動作を行うマルチパス方式で前記媒体への印刷を行い、
1回の前記主走査動作において前記インクジェットヘッドによりインクを吐出する前記吐出位置を指定するデータを主走査用データと定義した場合、前記吐出位置指定データは、前記印刷画像を印刷するために行うそれぞれの回の前記主走査動作に対応する前記主走査用データを含み、
少なくともいずれかの回の前記主走査動作に対応する前記主走査用データに対し、前記パターンに対応する前記吐出位置を追加する補正を行い、
前記主走査用データに対して前記パターンに対応する前記吐出位置を追加する補正において、前記媒体において前記印刷画像が印刷される位置の変更を行った上で、前記媒体において前記印刷画像と重ならないように、前記パターンに対応する前記吐出位置を追加することを特徴とする印刷方法。
【請求項11】
媒体に対してインクジェット方式で印刷を行う印刷方法であって、
インクジェット方式で前記媒体へインクを吐出するインクジェットヘッドの動作について、
前記インクジェットヘッドによりインクを吐出する吐出位置を指定することで印刷すべき画像である印刷画像を示す吐出位置指定データに基づいて制御し、
かつ、前記吐出位置指定データに対し、前記印刷画像に加えて予め設定されたパターンが更に印刷されるように、前記吐出位置を追加する補正を行い、補正後の前記吐出位置指定データに基づいて、前記インクジェットヘッドにインクを吐出させ、
予め設定された主走査方向へ前記媒体に対して相対的に移動しつつインクを吐出する主走査動作と、前記主走査方向と直交する副走査方向へ前記媒体に対して相対的に移動する副走査動作とを前記インクジェットヘッドに行わせ、かつ、前記媒体において前記印刷画像が印刷される領域の各位置に対して複数回の前記主走査動作を行うマルチパス方式で前記媒体への印刷を行い、
1回の前記主走査動作において前記インクジェットヘッドによりインクを吐出する前記吐出位置を指定するデータを主走査用データと定義した場合、前記吐出位置指定データは、前記印刷画像を印刷するために行うそれぞれの回の前記主走査動作に対応する前記主走査用データを含み、
少なくともいずれかの回の前記主走査動作に対応する前記主走査用データに対し、前記パターンに対応する前記吐出位置を追加する補正を行い、
前記主走査用データに対して前記パターンに対応する前記吐出位置を追加する補正において、前記印刷画像の一部を削除した上で、前記印刷画像から削除した前記一部に対応する範囲内に、前記パターンに対応する前記吐出位置を追加することを特徴とする印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置及び印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェット方式で印刷を行う印刷装置であるインクジェットプリンタが広く用いられている。また、従来、インクジェットプリンタにおいて用いるインクジェットヘッドに対するメンテナンスの動作に関し、フラッシングを行う構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。フラッシングとは、例えば、インクジェットヘッドのノズルからインクを吐出することでインクジェットヘッドのメンテナンスを行う方法のことである。フラッシングを定期的に行うことにより、例えば、ノズルの近辺でのインクの乾燥や増粘等を防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インクジェットプリンタにおいてフラッシングを行う場合、例えばインクジェットヘッドに対するメンテナンスを行う構成であるメンテナンスステーションを用い、メンテナンスステーションの位置へインクジェットヘッドを移動させて、インクジェットヘッドにインクを吐出させることが考えられる。また、高い品質での印刷を行おうとする場合、例えば、印刷の動作中にも定期的にフラッシングを行うことが望ましい。そして、この場合、例えば、インクジェットヘッドが行う主走査動作(スキャン動作)でのインクジェットヘッドの移動経路の途中の位置へメンテナンスステーションを移動させて、主走査動作中にフラッシングを行うことが考えられる。また、主走査動作でのインクジェットヘッドの移動経路の途中の位置に、フラッシング時にインクを受けるための構成(例えば、フラッシングボックス)を配設すること等も考えられる。これらのように構成すれば、例えば、所定の位置をインクジェットヘッドが通過するタイミングでフラッシングを行うことで、印刷の動作中に定期的にフラッシングを行うことが可能になる。
【0005】
しかし、印刷装置の構成によっては、主走査動作でのインクジェットヘッドの移動経路の途中の位置にメンテナンスステーション等を移動することや、このような位置にフラッシングボックス等を配設すること等が難しい場合がある。また、これらが可能な場合にも、印刷に求められる品質等によっては、様々な位置でフラッシングを行うことが望ましい場合がある。そのため、従来、インクジェットプリンタにおいて、フラッシング等のメンテナンスの動作等をより適切に行うことが望まれていた。そこで、本発明は、上記の課題を解決できる印刷装置及び印刷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の発明者は、インクジェットヘッドにフラッシングを行わせる方法について、鋭意研究を行った。そして、先ず、印刷対象の媒体(メディア)に対してインクジェットヘッドにインクを吐出させる方法でフラッシングを行うことを考えた。この場合、例えば、印刷すべき画像である印刷画像に加えて所定のパターンを更に印刷するようにインクジェットヘッドの動作を制御することで、インクジェットヘッドにフラッシングを行わせることが考えられる。このように構成すれば、例えば、メンテナンスステーションやフラッシングボックス等を用いることなく、インクジェットヘッドにフラッシングを行わせることができる。
【0007】
ここで、印刷画像に加えて所定のパターンを印刷する場合、通常、印刷装置に供給するデータとして、印刷画像及び所定のパターンを示すデータを用いることが考えられる。また、この場合、印刷装置の外部のコンピュータ等でこのデータの元になる画像の編集を行うことで、印刷画像及び所定のパターンを示すデータを作成することが考えられる。
【0008】
しかし、印刷装置において用いるデータの作成時には、通常、印刷画像をそのまま示すデータ(印刷画像データ)に対し、印刷の条件に合わせた画像処理等の様々な処理を行う。より具体的に、この場合、例えば、印刷装置において使用するインクの色数や印刷の解像度等に合わせて、RIP(Raster Image Processor)処理等を行うことが考えられる。そして、このような処理を行った場合、フラッシングを行うために追加したパターンの部分も処理の対象になることで、意図しない変更が行われる場合がある。また、その結果、所望の条件でのフラッシングを行えなくなるおそれがある。
【0009】
これに対し、本願の発明者は、更なる鋭意研究により、RIP処理等を行う前の画像に対して所定のパターンを追加するのではなく、RIP処理等により生成されるデータに対して、印刷装置において所定のパターンを追加する補正(変更)を行うことを考えた。このように構成すれば、例えば、所望の条件でのフラッシング等をより適切に行うことができる。また、このようにしてパターンを追加する方法については、例えば、フラッシング以外の目的でパターンを追加する場合にも、同様に用いることが可能である。
【0010】
また、本願の発明者は、更なる鋭意研究により、このような効果を得るために必要な特徴を見出し、本発明に至った。上記の課題を解決するために、本発明は、媒体に対してインクジェット方式で印刷を行う印刷装置であって、インクジェット方式で前記媒体へインクを吐出するインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドによりインクを吐出する吐出位置を指定することで印刷すべき画像である印刷画像を示す吐出位置指定データに基づいて前記インクジェットヘッドの動作を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記吐出位置指定データに対し、前記印刷画像に加えて予め設定されたパターンが更に印刷されるように、前記吐出位置を追加する補正を行い、補正後の前記吐出位置指定データに基づいて、前記インクジェットヘッドにインクを吐出させる。
【0011】
このように構成した場合、例えば、印刷画像に対して所定のパターンを追加することにより、インクジェットヘッドにフラッシング等を行わせることができる。また、この場合において、吐出位置を指定するデータに対して補正を行うことにより、例えば、フラッシング等のためにインクを吐出する位置をより確実かつ適切に指定することができる。
【0012】
また、この場合、媒体へインクを吐出することで、例えばメンテナンスステーションやフラッシングボックス等を用いることなく、インクジェットヘッドにフラッシング等を行わせることができる。そのため、このように構成すれば、例えば、インクジェット方式で印刷を行う印刷装置(インクジェットプリンタ)において、フラッシング等のメンテナンスの動作等をより適切に行うことができる。
【0013】
また、より具体的に、この構成において、インクジェットヘッドにインクを吐出させるとは、例えば、インクジェットヘッドにおける各ノズルにインクを吐出させることである。また、上記のパターンとしては、インクジェットヘッドにフラッシングを行わせるためのパターンを用いることが考えられる。この場合、パターンとして、例えば、媒体において印刷画像と重ならない吐出位置へインクジェットヘッドにインクを吐出させるパターンを用いることが考えられる。このように構成すれば、例えば、インクジェットヘッドにフラッシングを適切に行わせることができる。
【0014】
また、吐出位置指定データとしては、例えば、印刷画像を示すデータに対してRIP処理を行うことで生成されたデータ等を好適に用いることができる。このように構成すれば、例えば、フラッシングを行う条件がRIP処理によって変化すること等を適切に防ぐことができる。
【0015】
また、この構成において、印刷装置は、例えば、媒体において印刷画像が印刷される領域の各位置に対して複数回の主走査動作を行うマルチパス方式で媒体への印刷を行う。この場合、印刷装置は、例えば、パス数をN(Nは、2以上の整数)とするマルチパス方式で媒体への印刷を行う。また、主走査動作とは、例えば、予め設定された主走査方向へ媒体に対して相対的に移動しつつインクを吐出する動作のことである。また、この場合、印刷装置は、例えば、主走査動作をインクジェットヘッドに行わせる主走査駆動部と、副走査動作をインクジェットヘッドに行わせる副走査駆動部とを更に備える。副走査動作とは、例えば、主走査方向と直交する副走査方向へ媒体に対して相対的に移動する動作のことである。
【0016】
また、マルチパス方式で印刷を行う場合、例えばRIP処理を行う前のデータに対して所定のパターンを追加すると、その後に行う処理により、パターンに対応する部分についても、マルチパス方式で印刷を行うことになる。そして、この場合、各回の主走査動作でパターンに対応する位置へ吐出するインクの量は、パス数に応じて減少することになる。そのため、このようにしてパターンを追加した場合、所望の条件でのフラッシング等を行うことが難しくなる場合がある。
【0017】
これに対し、吐出位置指定データの補正によりパターンを追加する場合、各回の主走査動作時でインクを吐出する吐出位置を直接的に指定することができる。また、より具体的に、例えば、1回の主走査動作においてインクジェットヘッドによりインクを吐出する吐出位置を指定するデータを主走査用データと定義した場合、吐出位置指定データとしては、例えば、印刷画像を印刷するために行うそれぞれの回の主走査動作に対応する主走査用データを含むデータを用いることが考えられる。そして、この場合、制御部は、例えば、少なくともいずれかの回の主走査動作に対応する主走査用データに対し、パターンに対応する吐出位置を追加する補正を行う。このように構成すれば、例えば、所望の条件でのフラッシング等をより適切に行うことができる。
【0018】
ここで、パターンの追加によりインクジェットヘッドにフラッシングを行わせる場合、例えば、全ての回の主走査動作においてフラッシングを行わせることが考えられる。この場合、制御部は、例えば、全ての回の主走査動作に対応する主走査用データに対し、パターンに対応する吐出位置を追加する補正を行う。また、印刷に求められる品質や、使用するインク等の特性によっては、必ずしも全ての回の主走査動作でフラッシングを行わなくても、適切に印刷を行える場合もある。この場合、制御部は、例えば、一部の回のみの主走査動作に対応する主走査用データに対し、パターンに対応する吐出位置を追加する補正を行ってもよい。
【0019】
また、マルチパス方式での動作に関し、印刷の解像度に応じて設定される全ての吐出位置に対してインクを吐出する場合の印刷の濃度を全吐出濃度Mdと定義した場合、パターンに対応する吐出位置を追加する補正を行う前の主走査用データについては、パス数に応じて印刷の濃度が全吐出濃度Mdよりも低くなっているデータ等と考えることができる。また、より具体的に、補正前の主走査用データについては、例えば、全吐出濃度Mdをパス数Nで除した数であるMd/N以下に印刷の濃度がなるように吐出位置を指定するデータ等と考えることができる。
【0020】
これに対し、補正により追加したパターンに対応する部分では、このような印刷の濃度よりも印刷の濃度が高くなるようにインクを吐出することが考えられる。この場合、制御部は、例えば、少なくともいずれかの回の主走査動作に対応する主走査用データに対し、1回の主走査動作においてパターンに対応する位置へ吐出されるインクによる印刷の濃度がMd/Nよりも大きくなるように、パターンに対応する吐出位置を追加する補正を行う。このように構成すれば、例えば、マルチパス方式で印刷画像の印刷を行う場合にも、パターンに対応する部分に対し、より高い印刷の濃度でインクジェットヘッドにインクを吐出させることができる。
【0021】
また、この構成において、主走査用データとしては、例えば、対応する主走査動作においてインクを吐出する吐出位置が画素と対応付けられたラスタ画像のデータを用いることが考えられる。また、この場合、印刷装置は、例えば、少なくとも次に行う主走査動作に対応する主走査用データが示すラスタ画像を記憶する画情報記憶部を更に備える。画情報記憶部としては、例えば、公知の画像記憶用のメモリ(画情報メモリ)等を好適に用いることができる。また、この場合、制御部は、例えば、画情報記憶部に記憶されているラスタ画像に対し、パターンに対応する位置の画素の値を変更する補正を行う。このように構成すれば、例えば、主走査用データに対して、パターンに対応する吐出位置を追加する補正を適切に行うことができる。
【0022】
また、吐出位置指定データの補正時には、単にパターンに対応する吐出位置の追加を行うのではなく、吐出位置を追加するための領域の確保を行った上で、パターンに対応する吐出位置の追加を行うことも考えられる。また、このような領域の確保の方法としては、例えば、印刷画像が印刷される位置の変更や、印刷画像の一部を削除する処理等を行うことが考えられる。より具体的に、主走査用データに対してパターンに対応する吐出位置を追加する補正において、制御部は、例えば、媒体において印刷画像が印刷される位置の変更を行った上で、媒体において印刷画像と重ならないように、パターンに対応する吐出位置を追加する。また、主走査用データに対してパターンに対応する吐出位置を追加する補正において、制御部は、例えば、印刷画像の一部を削除した上で、印刷画像から削除した一部に対応する範囲内に、パターンに対応する吐出位置を追加してもよい。これらのように構成すれば、例えば、吐出位置指定データの補正をより適切に行うことができる。
【0023】
また、この構成において、制御部は、例えば、印刷装置の外部にある装置から吐出位置指定データを受け取る。この場合、印刷装置の外部にある装置とは、例えば、印刷装置の動作を制御するコンピュータ等のことである。そして、この場合、制御部は、例えば、印刷装置内で、吐出位置指定データに対し、パターンが更に印刷されるように吐出位置を追加する補正を行う。このように構成すれば、例えば、印刷画像を示すデータを印刷装置に提供した後に、パターンを追加する処理等を適切に行うことができる。
【0024】
また、この構成において、印刷装置は、例えば、印刷装置の動作を制御するプログラムであるファームウェアを記憶するファームウェア記憶部を更に備える。この場合、制御部は、例えば、ファームウェア記憶部に記憶されているファームウェアに従って、吐出位置指定データに対する補正を行う。このように構成すれば、例えば、印刷装置内において、吐出位置指定データの補正を適切に行うことができる。
【0025】
また、この構成において、制御部では、例えば、どのようなパターンを追加するかについて、ユーザの指示に応じて決定することが考えられる。この場合、制御部は、例えば、パターンの幅、及びパターンの形成時にインクを吐出する印刷の濃度の指定をユーザから受け取る。そして、ユーザの指定に基づき、吐出位置指定データに対し、パターンが更に印刷されるように吐出位置を追加する補正を行う。このように構成すれば、例えば、ユーザの指示に応じて、追加するパターンを様々に変化させることができる。また、これにより、例えば、必要に応じて、フラッシングの条件等を様々に変化させることができる。
【0026】
また、本発明の構成として、上記と同様の特徴を有する印刷方法等を用いることも考えられる。この場合も、例えば、上記と同様の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、例えば、インクジェット方式で印刷を行う印刷装置において、メンテナンスの動作等をより適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の一実施形態に係る印刷システム10について説明をする図である。
図1(a)は、印刷システム10の構成の一例を示す。
図1(b)は、印刷装置12の構成の一例を示す。
図1(c)は、印刷装置12におけるヘッド部102の構成の一例を示す。
【
図2】制御部120により行う所定のパターンを追加する補正について更に詳しく説明をする図である。
図2(a)は、パターンを追加する処理の一例を示す。
図2(b)は、パターン部304の構成の一例を示す。
【
図3】パターン部304に含まれる領域402の特徴について更に詳しく説明をする図である。
図3(a)は、パターン部304における一つの領域402の詳細な構成の一例を示す。
図3(b)は、一つの領域402内において近接して形成される複数のドット502の位置関係を拡大して示す。
【
図4】パターンを追加する補正等について更に詳しく説明をする図である。
図4(a)は、印刷システム10において行うデータ処理等について更に詳しく説明をする図である。
図4(b)は、印刷装置12の動作の変形例を示す。
【
図5】パターンの印刷の濃度を下げつつパターンの幅を大きくする場合のインクの吐出の仕方について説明をする図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る印刷システム10について説明をする図である。
図1(a)は、印刷システム10の構成の一例を示す。尚、以下において説明をする点を除き、本例の印刷システム10は、公知の印刷システムと同一又は同様の特徴を有してよい。
【0030】
本例において、印刷システム10は、印刷対象の媒体(メディア)に対してインクジェット方式で印刷を行うシステムであり、印刷装置12及びホストPCを備える。印刷装置12は、インクジェット方式で媒体に対して印刷を行うインクジェットプリンタであり、ホストPC14から受け取る印刷入力データに基づき、印刷の動作を実行する。この場合、印刷入力データとは、例えば、印刷すべき画像である印刷画像を示す入力データのことである。また、本例において、印刷入力データは、吐出位置指定データの一例である。この場合、吐出位置指定データとは、例えば、印刷装置12におけるインクジェットヘッドによりインクを吐出する吐出位置を指定することで印刷画像を示すデータのことである。
【0031】
ホストPC14は、印刷装置12の動作を制御するコンピュータであり、印刷装置12の外部において印刷入力データを生成して、生成した印刷入力データを印刷装置12へ供給することにより、印刷装置12の動作を制御する。また、より具体的に、本例において、ホストPC14は、RIP(Raster Image Processor)処理を行うことで、印刷入力データを生成する。この場合、RIP処理とは、例えば、印刷装置12において使用するインクの色数や印刷の解像度等に合わせたラスタ形式の画像を生成する処理のことである。ホストPC14から印刷装置12へ供給する印刷入力データとしては、公知のRIP処理等を行って生成するデータを好適に用いることができる。この場合、ホストPC14において印刷入力データを生成する処理については、例えば、公知の処理と同一又は同様に行うことができる。また、印刷入力データを生成する処理等については、後に更に詳しく説明をする。
【0032】
続いて、印刷システム10における印刷装置12について、更に詳しく説明をする。
図1(b)は、印刷装置12の構成の一例を示す。
図1(c)は、印刷装置12におけるヘッド部102の構成の一例を示す。本例において、印刷装置12は、ヘッド部102、プラテン104、主走査駆動部106、副走査駆動部108、画情報メモリ110、ファームウェア記憶部112、及び制御部120を有する。
【0033】
尚、上記及び以下に説明をする点を除き、印刷装置12は、公知のインクジェットプリンタと同一又は同様の特徴を有してよい。また、印刷装置12は、図示した構成以外に、印刷の動作等に必要な各種の構成を更に有してもよい。例えば、印刷装置12は、使用するインクの種類に応じて、インクを媒体50に定着させるための定着手段等を更に有してよい。
【0034】
ヘッド部102は、媒体50に対してインクを吐出する部分である。また、本例において、ヘッド部102は、
図1(c)にインクジェットヘッド202y、インクジェットヘッド202m、及びインクジェットヘッド202k(以下、インクジェットヘッド202y~kという)として示すように、複数のインクジェットヘッドを有する。この場合、インクジェットヘッド202y~kのそれぞれは、互いに異なる色のインクをインクジェット方式で媒体50へ吐出するインクジェットヘッドであり、印刷装置12において予め設定された副走査方向(図中のX方向)の位置をずらして並ぶ複数のノズルを有し、それぞれのノズルから、媒体50へ向けて、インクを吐出する。また、本例において、インクジェットヘッド202y~kは、副走査方向の位置を揃えて、副走査方向と直交する主走査方向(図中のY方向)へ並べて配設される。
【0035】
また、インクジェットヘッド202y~kから吐出する各色のインクは、カラー印刷(例えば、フルカラー印刷)に用いる基本色(プロセスカラー)の各色のインクである。より具体的に、インクジェットヘッド202yは、イエロー色(Y色)のインクを吐出する。インクジェットヘッド202mは、マゼンタ色(M色)のインクを吐出する。インクジェットヘッド202cは、シアン色(C色)のインクを吐出する。また、インクジェットヘッド202kは、ブラック色(K色)のインクを吐出する。
【0036】
プラテン104は、ヘッド部102と対向する位置において媒体50を保持する台状部材である。主走査駆動部106は、ヘッド部102におけるインクジェットヘッド202y~kに主走査動作を行わせる駆動部である。この場合、主走査動作とは、例えば、主走査方向へ媒体50に対して相対的に移動しつつインクを吐出する動作のことである。本例において、主走査駆動部106は、例えば、主走査方向における位置を固定した媒体50に対してインクジェットヘッド202y~kの側を主走査方向へ移動させることにより、インクジェットヘッド202y~kに主走査動作を行わせる。
【0037】
副走査駆動部108は、インクジェットヘッド202y~kに副走査動作を行わせる駆動部である。この場合、副走査動作とは、例えば、副走査方向へ媒体50に対して相対的に移動する動作のことである。また、本例において、副走査駆動部108は、例えば、図示を省略したローラ等を用いて副走査方向と平行な搬送方向へ媒体50を搬送することにより、媒体50の側を移動させて、インクジェットヘッド202y~kに副走査動作を行わせる。
【0038】
画情報メモリ110は、画情報記憶部の一例として機能する画像記憶用のメモリであり、主走査動作においてインクを吐出する位置を示すラスタ画像を記憶する。また、ファームウェア記憶部112は、印刷装置12の動作を制御するプログラムであるファームウェアを記憶する記憶部である。
【0039】
制御部120は、例えば印刷装置12のCPUを含む構成であり、ファームウェア記憶部112に記憶されているファームウェアに従って動作をすることにより、印刷装置12の各部の動作を制御する。より具体的に、制御部120は、例えば、ホストPC14から受け取る印刷入力データに基づき、インクジェットヘッド202y~kの動作を制御する。また、この場合、制御部120は、例えば、印刷入力データに基づき、少なくとも各回の主走査動作が行われる前に、その回の主走査動作においてインクを吐出する位置を示すラスタ画像を画情報メモリ110に記憶させる。また、更に具体的に、複数回の主走査動作を繰り返して行う印刷の動作中において、制御部120は、例えば、ホストPC14から受け取る印刷入力データに基づき、少なくとも、次の回の主走査動作においてインクを吐出する位置を示すラスタ画像を画情報メモリ110に記憶させる。これにより、各回の主走査動作において、制御部120は、画情報メモリ110に記憶されているラスタ画像に基づき、インクジェットヘッド202y~kに対し、インクを吐出する吐出位置の制御を行う。本例によれば、例えば、印刷入力データが示す印刷画像の印刷を適切に行うことができる。
【0040】
ここで、本例において、印刷装置12は、マルチパス方式により、媒体50への印刷を行う。この場合、マルチパス方式とは、例えば、媒体50において印刷画像が印刷される領域の各位置に対して複数回の主走査動作を行う方式のことである。各位置に対して複数回の主走査動作を行うとは、例えば、各位置と対向する位置をインクジェットヘッド202y~kが通過する回数が複数回になるように主走査動作を行うことである。また、この場合、各回の主走査動作の合間において、副走査駆動部108は、各位置に対して行う主走査動作の回数であるパス数に応じて決まる送り量での副走査動作をインクジェットヘッド202y~kに行わせる。より具体的に、インクジェットヘッド202y~kのそれぞれにおいてノズルが存在する範囲の副走査方向における幅をノズル長Lと定義して、パス数をN(Nは、2以上の整数)とした場合、副走査動作での送り量については、例えば、ノズル長をNで除した値(L/N)に対応する距離に設定することが考えられる。
【0041】
また、本例において、ホストPC14は、印刷装置12において行うマルチパス方式での動作に合わせて、各回の主走査動作でインクを吐出する吐出位置を示す印刷入力データを生成する。より具体的に、例えば、1回の主走査動作においてインクジェットヘッド202y~kのそれぞれによりインクを吐出する吐出位置を指定するデータを主走査用データと定義した場合、ホストPC14は、印刷画像を印刷するために行うそれぞれの回の主走査動作に対応する主走査用データを含む印刷入力データを生成する。この場合、主走査用データについては、例えば、一つのインクジェットヘッドにより1回の主走査動作でインクを吐出する吐出位置を示すデータ等と考えることができる。
【0042】
また、このような主走査用データを含む印刷入力データについては、例えば、印刷に使用するインクの色毎に各回の主走査動作でインクを吐出する吐出位置を示すデータ等と考えることができる。そして、この場合、主走査用データについては、例えば、吐出位置を指定することで吐出位置に対応する画像を示すラスタ画像と考えることもできる。また、この場合、画情報メモリ110については、例えば、各回の主走査動作に対応するラスタ画像を記憶すると考えることができる。この場合、画情報メモリ110は、少なくとも、次に行う主走査動作に対応する主走査用データが示すラスタ画像を記憶する。
【0043】
また、本例において、制御部120は、画情報メモリ110に記憶されているラスタ画像に対し、所定のパターンを追加する補正を行う。この場合、所定のパターンを追加する補正とは、例えば、各回の主走査動作において所定のパターンに対応する吐出位置に更にインクが吐出されるように行う補正のことである。
【0044】
また、より具体的に、本例においては、このように追加するパターンとして、インクジェットヘッド202y~kにフラッシングを行わせるためのパターンを用いる。フラッシングについては、後に更に詳しく説明をする。また、この場合、制御部120は、例えば、少なくともいずれかの回の主走査動作に対応する主走査用データに対し、パターンに対応する吐出位置を追加する補正を行う。これにより、制御部120は、例えば、印刷入力データに対し、印刷画像に加えて予め設定されたパターンが更に印刷されるように、吐出位置を追加する補正を行う。そして、補正後の印刷入力データに基づいて、インクジェットヘッド202y~kにインクを吐出させる。この場合、インクジェットヘッド202y~kにインクを吐出させるとは、例えば、インクジェットヘッド202y~kのそれぞれにおける各ノズルにインクを吐出させることである。また、補正後の印刷入力データとは、例えば、印刷装置12への入力時の印刷入力データが含む主走査用データを上記又は以下において説明をするようにして補正を行った補正後の主走査用データに置き換えたデータのことである。また、補正後の印刷入力データに基づくとは、例えば、補正後の主走査用データに基づくことであってよい。また、所定のパターンを追加する補正については、以下において、更に詳しく説明をする。
【0045】
図2は、制御部120(
図1参照)により行う所定のパターンを追加する補正について更に詳しく説明をする図である。上記においても説明をしたように、本例において、印刷装置12(
図1参照)は、印刷装置12の外部にある装置であるホストPC14(
図1参照)から印刷入力データを受け取る。そして、ファームウェア記憶部112(
図1参照)に記憶されているファームウェアに従って制御部120により補正の動作を実行することで、印刷装置12内において、印刷画像を印刷するためのインクの吐出位置を示す印刷入力データに対し、所定のパターンが更に印刷されるように吐出位置を追加する補正を行う。このように構成すれば、例えば、印刷画像を示す印刷入力データを印刷装置12に提供した後に、パターンを追加する処理等を適切に行うことができる。
【0046】
図2(a)は、パターンを追加する処理の一例を示す図であり、インクジェットヘッド202y~k(
図1参照)により1回の主走査動作で媒体上に描く画像の一例を示す。また、
図2(a)については、例えば、画情報メモリ110に記憶されているラスタ画像に基づいてインクジェットヘッド202y~kが1回の主走査動作でインクを吐出することで描く画像の範囲等を示していると考えることができる。この場合、画情報メモリ110に記憶されているラスタ画像とは、パターンを追加する補正を行った後のラスタ画像のことである。
【0047】
上記においても説明をしたように、本例において、印刷装置12は、印刷画像を印刷するために行うそれぞれの回の主走査動作に対応する主走査用データを含む印刷入力データをホストPC14から受け取る。この場合、各回の主走査動作に対応する主走査用データについて、印刷画像の一部に対応するラスタ画像を示すと考えることができる。また、このような主走査用データについては、例えば、対応する主走査動作においてインクを吐出する吐出位置が画素と対応付けられたラスタ画像のデータ等と考えることができる。また、このラスタ画像については、例えば、その回の主走査動作においてインクを吐出する吐出位置を示す画像等と考えることもできる。
【0048】
また、上記においても説明をしたように、制御部120は、例えば、印刷入力データに基づき、各回の主走査動作が行われる前に、その回の主走査動作においてインクを吐出する位置を示すラスタ画像を画情報メモリ110に記憶させる。また、本例において、制御部120は、更に、画情報メモリ110に記憶されているラスタ画像を補正することで、所定のパターンを追加する。この場合、ラスタ画像の補正により所定のパターンを追加するとは、その回の主走査動作で所定のパターンに対応する吐出位置にインクが吐出されるようにラスタ画像を補正することである。また、より具体的に、本例において、制御部120は、例えば、画情報メモリ110に記憶されているラスタ画像に対し、パターンに対応する位置の画素の値を変更する補正を行う。また、より具体的に、この場合、画素の値について、インクを吐出することを示す値に変更することが考えられる。このように構成すれば、例えば、主走査用データに対して、パターンに対応する吐出位置を追加する補正を適切に行うことができる。
【0049】
そして、このような補正を行った後において、画情報メモリ110は、例えば、図中に示す印刷画像対応部302及びパターン部304に対応する領域を含むラスタ画像を記憶する。また、より具体的に、本例において、画情報メモリ110は、例えば、インクの色毎に分版されたラスタ画像を記憶する。そして、この場合、画情報メモリ110は、各色に対応するラスタ画像における印刷画像対応部302及びパターン部304に対応する領域に、1色分のインクの吐出位置に対応する画像を記憶する。
【0050】
また、この場合、印刷画像対応部302は、印刷画像に対応する部分であり、印刷画像のうち、その回の主走査動作においてインクを吐出する部分を示す。印刷画像対応部302については、例えば、補正前のラスタ画像に対応する部分等と考えることもできる。また、図中に示す場合において、印刷画像対応部302の主走査方向(Y方向)における幅は、Waである。幅Waは、例えば、印刷画像の幅に応じて設定される。また、副走査方向(X方向)における幅は、インクジェットヘッドのノズル長に対応する幅になっている。
【0051】
また、パターン部304は、補正により追加するパターンに対応する部分である。図中に示す場合において、パターン部304は、印刷画像対応部302との間に空白部を挟んで、主走査方向における印刷画像対応部302の両側に追加される。図中に示す場合において、パターン部304の主走査方向における幅は、Wbである。また、副走査方向における幅は、インクジェットヘッドのノズル長に対応する幅になっている。また、印刷画像対応部302とパターン部304と間の空白部の幅(主走査方向における幅)は、Wcである。パターン部304の幅Wbや、空白部の幅Wcについては、例えば、追加するパターンを指定するユーザの指示等に応じて設定することが考えられる。
【0052】
尚、パターン部304を追加する補正を行った場合、各回の主走査動作においてインクジェットヘッド202y~kを移動させる範囲(主走査方向における幅)についても、補正の結果に応じて広げることが考えられる。このように構成すれば、パターンを追加した結果に合わせて、適切に印刷を行うことができる。
【0053】
続いて、本例において補正により追加するパターンについて、更に詳しく説明をする。
図2(b)は、パターン部304の構成の一例を示す。上記においても説明をしたように、本例において、印刷装置12は、ホストPC14から受け取る印刷入力データに対し、パターンを追加する補正を行う。また、これにより、媒体50に対し、印刷画像に加えて、パターンを印刷する。
【0054】
そして、本例においては、このように追加するパターンとして、上記においても説明をしたように、インクジェットヘッド202y~kにフラッシングを行わせるためのパターンを用いる。この場合、フラッシングとは、例えば、インクジェットヘッドのノズルから定期的にインクを吐出することでインクジェットヘッドのメンテナンスを行う方法のことである。フラッシングを定期的に行うことにより、例えば、インクジェットヘッドにおけるノズルの近辺でのインクの乾燥や増粘等を適切に防ぐことができる。また、フラッシングを行わせるためのパターンについては、例えば、印刷画像の印刷以外の目的でインクをインクジェットヘッドに吐出させるための捨て打ちパターン等と考えることもできる。フラッシングを行わせるためのパターンとしては、例えば、インクジェットヘッド202y~kのそれぞれにおける全てのノズルで描くはしご状のパターン等を好適に用いることができる。
【0055】
また、より具体的に、本例において、印刷装置12の制御部120は、例えば
図2(a)に示すように、印刷画像対応部302と重ならない位置にパターン部304を追加する。そして、パターン部304を描くためにインクを吐出する動作を利用して、フラッシングを行う。そのため、本例において追加するパターンについては、例えば、媒体において印刷画像と重ならない吐出位置へインクジェットヘッド202y~kにインクを吐出させるパターン等と考えることができる。また、更に具体的に、本例において、パターン部304に形成するパターンとしては、例えば
図2(b)に示すように、互いに異なる色の複数の領域402により構成されるカラーバー状のパターンを用いる。
図2(b)においては、図示の便宜上、異なる色について、異なる網掛け模様で示している。また、本例において、複数の領域402は、パターン部304の中で主走査方向における一部を構成する領域である。そのため、それぞれの領域402の副走査方向における幅は、インクジェットヘッドのノズル長に対応する幅になっている。このように構成すれば、各回の主走査動作において、領域402に対し、例えば、インクジェットヘッドの全てのノズルからインクを吐出することが可能になる。
【0056】
また、各回の主走査動作において、制御部120は、例えば、インクジェットヘッド202y~kのそれぞれについて、全てのノズルから複数回インクを吐出させる。このように構成すれば、例えば、各回の主走査動作において、インクジェットヘッド202y~kのそれぞれに対してフラッシングを適切に行わせることができる。また、この場合、例えば、少なくともいずれかの一つの領域402に対し、一つのインクジェットヘッドの全てのノズルから複数回インクを吐出させることが考えられる。
【0057】
本例によれば、例えば、印刷画像に対して所定のパターンを追加することにより、インクジェットヘッド202y~kにフラッシングを適切に行わせることができる。また、この場合において、吐出位置を指定するデータに対して補正を行うことにより、例えば、フラッシング等のためにインクを吐出する位置をより確実かつ適切に指定することができる。また、この場合、媒体へインクを吐出することで、例えばメンテナンスステーションやフラッシングボックス等を用いることなく、インクジェットヘッド202y~kにフラッシングを適切に行わせることができる。
【0058】
続いて、パターン部304(
図2参照)に含まれる領域402の特徴について更に詳しく説明をする。
図3は、領域402の特徴について更に詳しく説明をする図である。
図3(a)は、パターン部304における一つの領域402の詳細な構成の一例を示す図であり、同じ色(1カラー)で塗るつぶされる一つの領域402について、その領域402を構成するインクのドット502の並び方の例を示す。
図3(b)は、一つの領域402内において近接して形成される複数のドット502の位置関係を拡大して示す。
【0059】
図中に示すように、領域402において、インクのドット502は、主走査方向及び副走査方向へ並べて形成される。また、
図3(a)に図示した場合において、一つの領域402の主走査方向における幅は、Wdである。また、本例において、領域402内の複数のドット502は、主走査方向及び副走査方向における間隔を一定にして並ぶ。より具体的に、複数のドット502は、例えば
図3(b)に示すように、主走査方向における間隔をdyとし、副走査方向における間隔をdxとして、一定の間隔で並ぶ。この場合、主走査方向における間隔dyは、例えば、主走査動作時に一つノズルからインクを吐出する間隔(時間の間隔)と、主走査動作時におけるインクジェットヘッドの移動速度とに応じて決まる、また、副走査方向における間隔dxは、一つのインクジェットヘッドの中での副走査方向におけるノズル間の間隔(距離の間隔)に応じて決まる。
【0060】
ここで、媒体上にインクジェットヘッド202y~kにインクを吐出させることでフラッシングを行わせる場合、通常、より多くのインクを吐出させる程、フラッシングの効果が大きくなる。また、この場合、例えば、パターン部304におけるそれぞれの領域402を構成するインクのドット502の密度を調整することで、フラッシング時のインクの吐出量を調整することができる。また、より具体的に、本例においては、例えば、一つの領域402の主走査方向における幅Wdや、領域402内での主走査方向におけるドット502の間隔dyを変化させることで、フラッシング時のインクの吐出量を変化させることが可能である。
【0061】
そのため、本例において、印刷装置12(
図1参照)は、ユーザの指示に応じてこれらのパラメータを設定することで、フラッシング時のインクの吐出量を調整する。より具体的に、この場合、印刷装置12における制御部120は、例えば、パターンの幅、及びパターンの形成時にインクを吐出する印刷の濃度等の指定をユーザから受け取る。この場合、パターンの幅とは、例えば、パターン部304の副走査方向における幅Wbのことである。パターンの幅を指定することで、例えば、フラッシング時のインクの吐出量等の制御(フラッシングの制御)を行うことができる。また、制御部120は、パターンの幅を示すパラメータとして、例えば、一つの領域402の幅Wdの指定をユーザから受け取ってもよい。
【0062】
また、印刷の濃度については、例えば、フラッシング時のインクの吐出量と予め対応付けられたレベル(以下、リフレッシュレベルという)の指定をユーザから受け取ることが考えられる。この場合、例えば、互いに異なる吐出量と対応付けられた複数段階のリフレッシュレベルからいずれかをユーザに選択させることで、印刷の濃度の指定をユーザから受け取ることが考えられる。また、この場合、パターンの印刷の濃度(パターンの濃度)を指定することにより、例えば、フラッシングの量及び連続性の制御を行うことができる。
【0063】
また、この場合、制御部120は、例えば、ユーザの指示に応じて、印刷入力データを構成する主走査用データに対し、指定された条件に合わせたパターンが更に印刷されるように、吐出位置を追加する補正を行う。この場合、例えば、指定されたパターンの幅及びリフレッシュレベルに応じて、それぞれの領域402の幅や主走査方向におけるドット502間の距離dy等を調整することで、追加すべき吐出位置を決定することが考えられる。このように構成すれば、例えば、どのようなパターンを追加するかについて、ユーザの指示に応じて適切に決定することができる。また、追加するパターンを様々に変化させることで、例えば、必要に応じて、フラッシングの条件等を様々に変化させることができる。そのため、本例によれば、例えば、所望の条件でのフラッシングをより適切に行うことができる。
【0064】
続いて、パターンを追加する補正等について更に詳しく説明をする。
図4は、パターンを追加する補正等について更に詳しく説明をする図である。
図4(a)は、印刷システム10において行うデータ処理等について更に詳しく説明をする図である。
【0065】
上記においても説明をしたように、本例の印刷システム10では、ホストPC14において、RIP処理を行うことで、印刷入力データを生成する。より具体的に、本例において、ホストPC14は、印刷画像を示すデータである印刷画像データに対し、RIP処理等を行うことで、印刷入力データを生成する。この場合、印刷画像データとしては、例えば、印刷装置12に依存しない形式(例えば汎用の画像形式)のカラー画像のデータ等を用いることが考えられる。また、印刷画像データは、多階調のカラー画像のデータであってよい。
【0066】
そして、ホストPC14は、入力画像データに対し、RIP処理を行う。また、この処理において、より具体的に、ホストPC14は、例えば、印刷装置12において使用するインクの色に合わせた色変換処理及び分版処理、印刷装置12における印刷の解像度に合わせた解像度変換処理、及び量子化処理等を行う。また、ホストPC14は、更に、これらの処理を行った後の画像を印刷装置12で処理可能な形式に変換するコマンド化を行って、印刷入力データを生成する。また、この場合、上記の処理におけるいずれかの段階(例えば、コマンド化の処理時)において、印刷のパス数に応じて設定されるマスクを用いて、印刷のパス数に合わせてデータを分ける処理を行う。また、これにより、各回の主走査動作時のインクの吐出位置を指定する主走査用データを含む印刷入力データを生成する。
【0067】
また、このようにして生成された印刷入力データに対し、印刷装置12では、上記においても説明をしたように、パターンを追加する補正を行う。また、これにより、図中にパターン追加データと示すように、補正後の印刷入力データを生成する。そして、補正後の印刷入力データに従って印刷の動作を実行することで、印刷画像を描くために行う主走査動作の中で、フラッシングを行う。
【0068】
ここで、印刷に用いるデータに対して所定のパターンを追加することを考えた場合、印刷装置12においてRIP処理後のデータに対して処理をするのではなく、例えばRIP処理等を行う前の段階でパターンを追加すればよいようにも思われる。しかし、このようにしてパターンを追加した場合、パターンの部分に対しても印刷画像の部分と同じようにその後の処理が行われることで、パターンに対応する部分についても、マルチパス方式で印刷を行うことになる。より具体的に、この場合、パターンに対応する部分に対しても、印刷のパス数に応じて設定されるマスクが適用されることになる。また、その結果、各回の主走査動作でパターンに対応する位置へ吐出するインクの量についても、パス数に応じて減少することになる。そのため、このようにしてパターンを追加した場合、所望の条件でのフラッシング等を行うことが難しくなる場合がある。
【0069】
これに対し、本例においては、印刷入力データに対する補正によりパターンを追加することで、パターンに対応する位置について、各回の主走査動作時でインクを吐出する吐出位置を直接的に指定することができる。また、これにより、例えば、フラッシングを行う条件がRIP処理によって変化すること等を適切に防ぎ、所望の条件でのフラッシングをより適切に実行することができる。
【0070】
また、より具体的に、マルチパス方式に関連する事項に関し、印刷の解像度に応じて設定される全ての吐出位置に対してインクを吐出する場合の印刷の濃度を全吐出濃度Mdと定義した場合、パターンに対応する吐出位置を追加する補正を行う前の主走査用データについては、例えば、パス数に応じて印刷の濃度が全吐出濃度Mdよりも低くなっているデータになっていると考えることができる。例えば、印刷のパス数をNとした場合、補正前の主走査用データでは、全吐出濃度Mdをパス数Nで除した数であるMd/N以下に印刷の濃度がなるように吐出位置が指定されることになる。
【0071】
これに対し、補正により追加したパターンに対応する部分では、パス数と無関係に吐出位置を指定することが可能であるため、このような印刷の濃度よりも印刷の濃度が高くなるようにインクの吐出位置を指定することができる。より具体的に、例えば、印刷装置12の制御部120(
図1参照)では、少なくともいずれかの回の主走査動作に対応する主走査用データに対し、1回の主走査動作においてパターンに対応する位置へ吐出されるインクによる印刷の濃度がMd/Nよりも大きくなるように、パターンに対応する吐出位置を追加する補正を行うことが考えられる。このように構成すれば、例えば、マルチパス方式で印刷画像の印刷を行う場合にも、パターンに対応する部分に対し、より高い印刷の濃度でインクジェットヘッドにインクを吐出させることができる。
【0072】
尚、上記のように、本例においては、パターンに対応する部分に対し、高い印刷の濃度で適切にインクジェットヘッドにインクを吐出させることができる。しかし、この場合において、印刷の濃度を高くしすぎると、媒体の特性等に応じて決まるインクの許容量を超えること等も考えられる。より具体的に、例えば、印刷画像の印刷を多くのパス数で行うことが必要になる印刷の条件の場合、上記の濃度Md/Nと比べて高すぎる印刷の濃度でパターンに対応する位置へインクを吐出すると、媒体上のインクが過剰になることで、様々な問題(例えば、コックリング等)が生じること等も考えられる。そのため、このような場合には、例えば、パターンの印刷の濃度を下げつつパターンの幅を大きくすること等が考えられる。このように構成すれば、例えば、フラッシングを行うために必要な吐出量を確保しつつ、このような問題の発生を適切に防ぐことができる。
【0073】
続いて、パターンを追加する位置等について、更に詳しく説明をする。上記においても説明をしたように、本例においては、印刷装置12の制御部120により印刷入力データの補正を行うことにより、インクジェットヘッド202y~k(
図1参照)にフラッシングを行わせるためのパターンを追加する。そして、この補正時には、単にパターンに対応する吐出位置の追加を行うのではなく、吐出位置を追加するための領域の確保を行った上で、パターンに対応する吐出位置の追加を行うことも考えられる。また、このような領域の確保の方法としては、例えば、印刷画像が印刷される位置の変更や、印刷画像の一部を削除する処理等を行うことが考えられる。
【0074】
より具体的に、印刷入力データを構成する主走査用データに対してパターンに対応する吐出位置を追加する補正において、制御部120は、例えば、媒体において印刷画像が印刷される位置の変更を行った上で、媒体において印刷画像と重ならないように、パターンに対応する吐出位置を追加する。また、この場合、印刷装置12としては、例えば、印刷画像を任意の位置に移動可能なシステムを用いることが考えられる。このように構成すれば、例えば、各回の主走査動作に対応する主走査用データに対し、パターンを任意の位置に追加することができる。また、これにより、例えば、印刷入力データの補正を適切に行い、各回の主走査動作に対するパターンの付与を適切に行うことができる。
【0075】
また、主走査用データに対してパターンに対応する吐出位置を追加する補正において、制御部120は、例えば、印刷画像の一部を削除した上で、印刷画像から削除した部分に対応する範囲内に、パターンに対応する吐出位置を追加してもよい。このように構成した場合も、例えば、印刷入力データの補正を適切に行い、各回の主走査動作に対するパターンの付与を適切に行うことができる。
【0076】
また、上記においては、パターンを追加する位置について、
図2等を用いて、印刷画像対応部302に対する主走査方向の両側にパターン部304を追加する例を説明した。しかし、印刷装置12の動作の変形例においては、例えば
図4(b)に示すように、印刷画像対応部302の片側(印刷画像対応部302の右側又は左側の片方)のみにパターン部304を追加してもよい。
図4(b)は、印刷装置12の動作の変形例を示す。
【0077】
より具体的に、例えば図中に示すように、印刷画像対応部302の左側にパターン部304を追加する場合、その分だけ印刷画像の一部を削除するか、印刷画像を右側へ移動することが考えられる。また、図示した場合とは反対に、印刷画像対応部302の右側にパターン部304を追加する場合、その分だけ印刷画像の一部を削除するか、印刷画像を左側へ移動することが考えられる。
【0078】
続いて、上記において説明をした各構成に関する補足説明や、更なる変形例の説明等を行う。上記においても説明をしたように、本例においては、追加したパターンに従ってインクジェットヘッド202y~kにインクを吐出させることで、インクジェットヘッド202y~kにフラッシングを行わせる。そして、この場合、印刷装置12については、例えば、媒体上に捨て打ちを行うことでリフレッシュ機能やランニングフラッシュ機能を実現できるシステム等と考えることができる。
【0079】
また、この場合、上記においても説明をしたように、例えばメンテナンスステーションやフラッシングボックス等を用いることなく、インクジェットヘッド202y~kにフラッシングを適切に行わせることができる。そのため、印刷装置12の構成としては、例えば、主走査動作時にメンテナンスステーション又はフラッシングボックスを用いて行うフラッシングが実行できない構成を用いることが考えられる。このような構成としては、例えば、メンテナンスステーションにおいてインクを受ける構成(例えば、キャップステーション)が主走査動作中にフラッシングを実行できる位置(例えば高さ)に移動できない構成や、フラッシングボックスが設置されていない構成等を用いることが考えられる。このような構成の印刷装置12を用いる場合にも、本例によれば、例えば、主走査動作中に適切にフラッシングを行うことができる。また、これにより、例えば、インクジェットヘッド202y~kにおけるノズルの乾燥等を適切に防ぎつつ、適切に印刷を行うことができる。
【0080】
また、上記においても説明をしたように、パターンに対応する部分に対して高い印刷の濃度でインクを吐出すると問題が生じる場合には、パターンの印刷の濃度を下げつつパターンの幅を大きくすることで、単位面積に対して吐出するインクの量を少なくすること等が考えられる。そして、この場合、例えば
図5において符号B~Dを付して示すようにして、パターンに対応する部分にインクを吐出することが考えられる。
【0081】
図5は、パターンの印刷の濃度を下げつつパターンの幅を大きくする場合のインクの吐出の仕方について説明をする図であり、同じ数のインクのドットにより構成される様々なパターンの例を示す。
図5においては、図示の便宜上、図中に丸で囲んで示す数字1~16に対応する16個のノズルにより描く様々なパターンの例を並べて示している。また、図中において、符号Aを付して示すパターンは、パターンの印刷の濃度を下げない場合の例である。この例については、例えば、
図3を用いて説明をしたパターンにおいて、主走査方向でのドットの間隔dy及び副走査方向でのドットの間隔dxを最小にして、最も高い印刷の濃度でパターンを描く場合の例と考えることができる。間隔dy及び間隔dxを最小にするとは、例えば、1回の主走査動作で設定可能な最小の間隔にすることである。
【0082】
また、符号B~Dを付して示すパターンは、符号Aを付して示すパターンよりも印刷の濃度を低くした場合の例である。これらのパターンにおいては、各ノズルからインクを吐出するタイミングを変化させることで、間隔dy又は間隔dxについて、符号Aを付して示す場合よりも大きくして、印刷の濃度を低くしている。また、この場合、印刷の濃度を下げた分に合わせてパターンの幅を大きくすることで、符号Aを付した場合と同じ数のインクのドットを形成している。このように構成すれば、パターンの濃度を低く抑えつつ、適切にフラッシングを実行することができる。
【0083】
また、より具体的に、符号Bを付して示す例は、主走査方向におけるドットの間隔dyを大きくすることで、主走査方向において印刷の濃度を下げる例である。また、符号Cを付して示す例は、副走査方向におけるドットの間隔dxを大きくすることで、主走査方向において印刷の濃度を下げる例である。この場合、同じタイミングでインクを吐出するノズルとして、全てのノズルではなく、一定の間隔毎のノズル(例えば、図中に示すように、一つおきのノズル)を選択する。また、この場合、図中に示すように、他のタイミングで他のノズルにインクを吐出させることで、パターンの全体の中で、全てのノズルについて、インクを吐出する回数を、符号Aの場合と同じにする。このように構成した場合も、パターンの濃度を低く抑えつつ、適切にフラッシングを実行することができる。
【0084】
また、符号Dを付して示す例は、主走査方向及び副走査方向の両方において印刷の濃度を下げる例である。この場合、例えば、各タイミングでインクを吐出するノズルを指定するマスク等を用いて各タイミングで一部のノズルのみにインクを吐出させることで、パターンを構成するインクのドットを分散させる。このように構成した場合も、パターンの濃度を低く抑えつつ、適切にフラッシングを実行することができる。
【0085】
また、上記のようにパターンを追加することで主走査動作中にインクジェットヘッド202y~kにフラッシングを行わせる場合、例えば、全ての回の主走査動作においてフラッシングを行わせることが考えられる。この場合、制御部120は、例えば、全ての回の主走査動作に対応する主走査用データに対し、パターンに対応する吐出位置を追加する補正を行う。また、印刷に求められる品質や、使用するインク等の特性によっては、必ずしも全ての回の主走査動作でフラッシングを行わなくても、適切に印刷を行える場合もある。この場合、制御部120は、例えば、一部の回のみの主走査動作に対応する主走査用データに対し、パターンに対応する吐出位置を追加する補正を行ってもよい。より具体的に、例えば、ノズル抜け等が生じにくいインク等を用いる場合、特定の回の主走査動作時(特定のスキャン回)でのみインクジェットヘッド202y~kにフラッシングを行わせることで、間欠的にフラッシングを行わせてもよい。この場合、例えば、一定の複数回数の主走査動作を行う毎に1回の主走査動作でインクジェットヘッド202y~kにフラッシングを行わせること等が考えられる。
【0086】
また、フラッシングの行わせ方については、例えば、インクの色毎に異ならせてもよい。例えば、一部の色のインクにおいてノズル抜け等が生じやすい場合、その色について、より多くのインクを吐出してフラッシングを行うようなパターンを用いることが考えられる。より具体的に、この場合、パターン部304においてこの色のインクに対応する領域402(
図2参照)の主走査方向における幅について、他の色のインクに対応する領域402の幅よりも大きくすること等が考えられる。
【0087】
また、上記においては、印刷装置12において追加するパターンについて、主に、インクジェットヘッド202にフラッシングを行わせるためのパターンを用いる場合について、説明をした。しかし、パターンを追加する特徴についてより一般化して考えた場合、印刷装置12において、その他の目的に用いるパターンを追加すること等も考えられる。この場合も、RIP処理等を行った後のデータに対してパターンを追加することで、パターンに対応する吐出位置をより確実に指定することができる。
【0088】
また、上記においては、印刷装置12について、主に、媒体に対してインクを吐出する場合の構成を説明した。この場合、印刷装置12について、媒体上に2次元の画像を描くインクジェットプリンタ等と考えることができる。しかし、印刷装置12の変形例においては、印刷装置12として、立体的な造形物を造形する3Dプリンタ(3D印刷装置)等を用いることも考えられる。印刷装置12において捨て打ち用のパターンを追加することで、インクジェットヘッドにフラッシング等を適切に行わせることができる。
【0089】
尚、印刷装置12により立体的な造形物を造形する場合、捨て打ちパターンにより造形物の周囲にインクを吐出すると、造形物の周囲においても、インクの層が積層されることが考えられる。また、この場合において、パターンの印刷の濃度が高いと、パターンの部分において、造形物を構成する部分よりも高速にインクの層が積層されること等も考えられる。また、その結果、例えば、パターンの部分に積層されたインクの層がインクジェットヘッドに接触(干渉)して、造形の動作に影響を及ぼすこと等も考えられる。
【0090】
そのため、印刷装置12により立体的な造形物を造形する場合には、例えば
図5を用いて上記において説明をしたようにして、パターンの印刷の濃度を低くすることが好ましい。このように構成すれば、例えば、立体物の造形時に生じる上記のような問題の発生を防ぎつつ、フラッシング等をより適切に実行することができる。また、パターンの部分においてインクの層が過度の積層されることを防ぐためには、例えば、インクの層の高さを調整する平坦化ローラ等を用いつつ、造形物の造形を行うこと等も考えられる。また、この場合も、パターンの印刷の濃度を低くすることで、フラッシング等をより適切に実行できる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、例えば印刷システムに好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0092】
10・・・印刷システム、12・・・印刷装置、14・・・ホストPC、50・・・媒体、102・・・ヘッド部、104・・・プラテン、106・・・主走査駆動部、108・・・副走査駆動部、110・・・画情報メモリ、112・・・ファームウェア記憶部、120・・・制御部、202・・・インクジェットヘッド、302・・・印刷画像対応部、304・・・パターン部、402・・・領域、502・・・ドット