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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】摺動部材
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/20 20060101AFI20220906BHJP
   F16C 17/04 20060101ALI20220906BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20220906BHJP
   C08K 7/02 20060101ALI20220906BHJP
   C08K 7/14 20060101ALI20220906BHJP
   C08K 7/04 20060101ALI20220906BHJP
   C08K 7/06 20060101ALI20220906BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20220906BHJP
   C08K 3/30 20060101ALI20220906BHJP
   C08K 3/38 20060101ALI20220906BHJP
   C08K 3/16 20060101ALI20220906BHJP
   C08K 3/20 20060101ALI20220906BHJP
   C08K 3/26 20060101ALI20220906BHJP
   C08K 3/32 20060101ALI20220906BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
F16C33/20 A
F16C17/04 Z
C08L101/00
C08K7/02
C08K7/14
C08K7/04
C08K7/06
C08K3/04
C08K3/30
C08K3/38
C08K3/16
C08K3/20
C08K3/26
C08K3/32
C08K3/34
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019062128
(22)【出願日】2019-03-28
(65)【公開番号】P2020159528
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】591001282
【氏名又は名称】大同メタル工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山内 貴文
【審査官】糟谷 瑛
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-146060(JP,A)
【文献】特開2018-203808(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 17/00
F16C 33/00
C08K 3/00-13/00
C08L 1/00-101/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
裏金層、および該裏金層上の摺動層からなる、スラスト軸受用の摺動部材において、該摺動部材が部分円環形状を有し、
前記摺動層が、合成樹脂および該合成樹脂中に分散した繊維状粒子からなり、該繊維状粒子が、前記摺動層の10~35%の体積割合を有し、
前記摺動層が、前記摺動層の摺動面を含む摺動面側領域と、前記摺動層と前記裏金層との界面を含む界面側領域とからなり、前記界面側領域は、前記摺動層の厚さの15~50%の厚さを有し、
前記摺動層は、以下の(a)~(d)の関係を有する第1断面組織および第2断面組織をそれぞれ有する第1断面および該第1断面に垂直な第2断面を有し、前記第1断面および前記第2断面はそれぞれ前記摺動面に垂直であり、
(a)前記摺動面側領域において、前記第1断面組織での前記繊維状粒子の平均粒径は5~30μmであり、前記第2断面組織における前記繊維状粒子は、前記第1断面組織での前記繊維状粒子の前記平均粒径の5~20%の平均粒径を有し、
(b)前記界面側領域において、前記第2断面組織での前記繊維状粒子の平均粒径は5~30μmであり、前記第1断面組織での前記繊維状粒子は、前記第2断面組織での前記繊維状粒子の前記平均粒径の5~20%の平均粒径を有し、
(c)前記第1断面組織において、前記摺動面側領域は、長軸長さが20μm以上の繊維状粒子を全繊維状粒子に対して10%以上の体積割合で含み、前記長軸長さが20μm以上の繊維状粒子の分散指数が5以上であり、
(d)前記第2断面組織において、前記界面側領域は、長軸長さが20μm以上の繊維状粒子を全繊維状粒子に対して10%以上の体積割合で含み、前記長軸長さが20μm以上の繊維状粒子の分散指数が5以上であり、
ここで分散指数は、各繊維状粒子についての比X1/Y1の平均により表され、X1は断面組織における前記繊維状粒子の前記摺動面に対して平行方向の長さであり、Y1は前記断面組織における前記維状粒子の前記摺動面に対して垂直方向の長さである、摺動部材。
【請求項2】
前記第1断面は、前記摺動部材の部分円環形状の中心軸線に平行である、請求項1に記載された摺動部材。
【請求項3】
前記第2断面は、前記摺動部材の部分円環形状の中心軸線に平行である、請求項1に記載された摺動部材。
【請求項4】
前記第1断面組織における前記摺動面側領域での前記長軸長さが20μm以上の繊維状粒子の平均アスペクト比が1.5~10であり、
前記第2断面組織における前記界面側領域での前記長軸長さが20μm以上の繊維状粒子の平均アスペクト比が1.5~10である、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載された摺動部材。
【請求項5】
前記第1断面組織における前記摺動面側領域での前記長軸長さが20μm以上の繊維状粒子の平均アスペクト比が5~10であり、
前記第2断面組織における前記界面側領域での前記長軸長さが20μm以上の繊維状粒子の平均アスペクト比が5~10である、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載された摺動部材。
【請求項6】
第1断面組織における前記摺動面側領域での、前記長軸長さが20μm以上の繊維状粒子の全繊維状粒子に対する体積割合は30%以上であり、
第2断面組織における前記界面側領域での、前記長軸長さが20μm以上の繊維状粒子の全繊維状粒子に対する体積割合が30%以上である、請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載された摺動部材。
【請求項7】
前記繊維状粒子が、ガラス繊維粒子、セラミック繊維粒子、炭素繊維粒子、アラミド繊維粒子、アクリル繊維粒子、およびポリビニルアルコール繊維粒子のうちから選ばれる1種以上からなる、請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載された摺動部材。
【請求項8】
前記合成樹脂が、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリベンゾイミダゾール、ナイロン、フェノール、エポキシ、ポリアセタール、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレン、およびポリエーテルイミドのうちから選ばれる1種以上からなる、請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載された摺動部材。
【請求項9】
前記摺動層が、黒鉛、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、窒化硼素、およびポリテトラフルオロエチレンのうちから選ばれる1種以上の固体潤滑剤を更に含む、請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載された摺動部材。
【請求項10】
前記摺動層が、CaF、CaCo、タルク、マイカ、ムライト、酸化鉄、リン酸カルシウム、チタン酸カリウムおよびMoCのうちから選ばれる1種または2種以上の充填材を1~10体積%を更に含む、請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載された摺動部材。
【請求項11】
前記裏金層は、前記摺動層との界面となる表面に多孔質金属部を有する、請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載された摺動部材。
【請求項12】
請求項1から請求項11までのいずれか1項に記載された摺動部材を複数個備えた、スラスト軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラスト軸受用の摺動部材に関するものであり、詳細には、裏金層と、合成樹脂および繊維状粒子からなる摺動層とを備えた部分円環形状の摺動部材に係るものである。本発明は、この摺動部材を備えたスラスト軸受にも関するものである。
【背景技術】
【0002】
排気タービンや大型発電機等の回転軸用のスラスト軸受として、部分円環形状を有する軸受パッド形状の摺動部材を、回転軸のスラストカラー面に対向して周方向に複数個配置したスラスト軸受が用いられている(例えば特許文献1参照)。このようなチィルティングパッド式スラスト軸受では、部分円環形状の摺動部材は、軸部材のスラストカラー面に対し、ピボットにより僅かに揺動できるように支持されている。このようなスラスト軸受の摺動部材として、金属製の裏金層上に樹脂組成物からなる摺動層を被覆したものが知られており、樹脂組成物として、ガラス繊維粒子、炭素繊維粒子、金属間化合物繊維粒子等の繊維状粒子を合成樹脂中に分散させて摺動層の強度を高めるようにしたものが、特許文献2や特許文献3に記載されている。また、特許文献4は、繊維強化樹脂組成物が強度の異方性を有することを避けるために樹脂素地中に繊維状粒子を無配向、すなわち等方的に分散することが記載されている。また、特許文献5は、摺動層の表面側と界面側領域の繊維状粒子を摺動層に略平行、中間領域内の繊維状粒子を摺動層に略垂直方向を向くように分散させることにより、起動時の摺動層の表面に割れ等の損傷を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-94373号公報
【文献】特開平10-204282号公報
【文献】特開2016-079391号公報
【文献】特開2013-194204号公報
【文献】特開2018-146059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
排気タービンや大型発電機等は、定常運転時には、軸部材の表面と摺動部材の摺動面との間に油等の流体潤滑膜が形成されるために、軸部材と摺動部材の表面どうしは直接接触することが防がれている。しかし、その停止時においては、油等の供給も停止するため、完全に回転が停止するまでに油等の流体潤滑膜が切れた状態のまま一定時間軸が回転し続ける。そのために、軸部材表面と摺動部材の摺動面とが直接接触した状態の摺動が起こる。このような状態で摺動が起こると、軸部材に接する摺動面付近の樹脂組成物は、軸部材に引きずられて、軸部材の回転方向への弾性変形が生じる。この場合に特許文献4のように、摺動層中に繊維状粒子を無配向すなわち等方的に分散させた場合は、摺動面付近の樹脂組成物の変形量が大きくなり、摺動層の内部に割れによる損傷が起こる虞が大きくなる。これは、繊維状粒子の長軸方向を摺動面に垂直方向を向くものの割合が多くなるように分散させた場合も同様である。他方、繊維状粒子を、その長軸方向が摺動面に略平行に配向するものの割合が多くなるように摺動層中に分散させた場合には、摺動面に平行方向の強度が摺動層全体を通じて大きいために、摺動層表面にかかる負荷が、裏金層との界面まで伝播する。界面に負荷が伝播すると、金属製の裏金層と合成樹脂の摺動層との間での弾性変形量の違いによりせん断力が発生し、ここを起点としてせん断が広がり剥離につながる。また、特許文献5のように、摺動層の表面側と界面側領域の繊維状粒子を摺動層に略平行、中間領域内の繊維状粒子を摺動層に略垂直方向を向くように分散させた場合は、停止する際に油等の流体潤滑膜が切れた状態のまま直接軸と接触した状態での摺動層に加わる負荷が大きい(大型の軸受装置は軸部材の重量が大きい)ために、摺動面に対して平行方向の負荷に対する変形抵抗が小さい中間領域の摺動層が過度に変形し、中間領域内に繊維状粒子に沿った縦方向への割れによる損傷が起こりやすいという新たな問題が生じることが判明した。
【0005】
したがって、本発明の目的は、従来技術の上記欠点を克服して、軸受装置の停止する際に摺動層の内部に割れによる損傷が起き難く、かつ摺動層と裏金層とのせん断が起き難い摺動部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一観点によれば、裏金層および該裏金層上の摺動層からなるスラスト軸受用の摺動部材が提供される。この摺動部材は、部分円環形状を有し、摺動層が、合成樹脂および該合成樹脂中に分散した繊維状粒子からなる。繊維状粒子は、摺動層の10~35%の体積割合を有する。摺動層は、摺動層の摺動面を含む摺動面側領域と、摺動層と裏金層との界面を含む界面側領域からなり、界面側領域は、摺動層の裏金層との界面から摺動面側へ向かって摺動層の厚さの15~50%の厚さを有する。摺動層は、以下の(a)~(d)の関係を有する第1断面組織および第2断面組織をそれぞれ有する第1断面および該第1断面に垂直な第2断面を有する。第1断面および第2断面はそれぞれ摺動面に垂直である。
(a)摺動面側領域において、第1断面組織での繊維状粒子の平均粒径は5~30μmであり、第2断面組織における繊維状粒子は、第1断面組織での繊維状粒子の平均粒径の5~20%の平均粒径を有し、
(b)界面側領域において、第2断面組織での繊維状粒子の平均粒径は5~30μmであり、第1断面組織での繊維状粒子は、第2断面組織での繊維状粒子の平均粒径の5~20%の平均粒径を有し、
(c)第1断面組織において、摺動面側領域は、長軸長さが20μm以上の繊維状粒子を全繊維状粒子に対して10%以上の体積割合で含み、長軸長さが20μm以上の繊維状粒子の分散指数が5以上であり、
(d)第2断面組織において、界面側領域は、長軸長さが20μm以上の繊維状粒子を全繊維状粒子に対して10%以上の体積割合で含み、長軸長さが20μm以上の繊維状粒子の分散指数が5以上であり、
ここで分散指数は、各繊維状粒子についての比X1/Y1の平均により表され、X1は断面組織における繊維状粒子の前記摺動面に対して平行方向の長さであり、Y1は断面組織における維状粒子の摺動面に対して垂直方向の長さである。
【0007】
本発明の一具体例によれば、第1断面は、前記摺動部材の部分円環形状の中心軸線に平行であることが好ましい。
【0008】
本発明の一具体例によれば、第2断面は、前記摺動部材の部分円環形状の中心軸線に平行であることが好ましい。
【0009】
本発明の一具体例によれば、第1断面組織における摺動面側領域での長軸長さが20μm以上の繊維状粒子の平均アスペクト比は1.5~10を有することが好ましく、平均アスペクト比5~10を有することがさらに好ましい。また、第2断面組織における界面側領域での長軸長さが20μm以上の繊維状粒子の平均アスペクト比は1.5~10を有することが好ましく、平均アスペクト比5~10を有することがさらに好ましい。
【0010】
本発明の一具体例によれば、第1断面組織の摺動面側領域において、長軸長さが20μm以上の繊維状粒子の全繊維状粒子に対する体積割合は30%以上であることが好ましい。また、第2断面組織の界面側領域において、長軸長さが20μm以上の繊維状粒子の全繊維状粒子に対する体積割合が30%以上であることが好ましい。
【0011】
本発明の一具体例によれば、繊維状粒子は、ガラス繊維粒子、セラミック繊維粒子、炭素繊維粒子、アラミド繊維粒子、アクリル繊維粒子、およびポリビニルアルコール繊維粒子のうちから選ばれる1種以上からなることが好ましい。
【0012】
本発明の一具体例によれば、合成樹脂は、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリベンゾイミダゾール、ナイロン、フェノール、エポキシ、ポリアセタール、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレン、およびポリエーテルイミドのうちから選ばれる1種以上からなることが好ましい。
【0013】
本発明の一具体例によれば、摺動層は、黒鉛、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、窒化硼素、およびポリテトラフルオロエチレンのうちから選ばれる1種以上の固体潤滑剤を更に含むことが好ましい。
【0014】
本発明の一具体例によれば、摺動層は、CaF、CaCo、タルク、マイカ、ムライト、酸化鉄、リン酸カルシウム、チタン酸カリウムおよびMoC(モリブデンカーバイト)のうちから選ばれる1種または2種以上の充填材を1~10体積%を更に含むことが好ましい。
【0015】
本発明の一具体例によれば、裏金層は、摺動層との界面となる表面に多孔質金属部を有することが好ましい。
【0016】
本発明の他の観点によれば、上記摺動部材を複数個備えたスラスト軸受が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一例による摺動部材の第1断面組織を示す図。
図2】本発明の一例による摺動部材の第2断面組織を示す図。
図1A図1の摺動部材の摺動層の摺動面側領域の拡大図。
図1B図1の摺動部材の摺動層の界面側領域の拡大図。
図2A図2の摺動部材の摺動層の摺動面側領域の拡大図。
図2B図2の摺動部材の摺動層の界面側領域の拡大図。
図3】繊維状粒子のアスペクト比(A)を説明する図。
図4】繊維状粒子の分散指数(S)を説明する図。
図5】本発明の他の例による摺動部材の第1断面組織を示す図。
図6】本発明の他の例による摺動部材の第2断面組織を示す図。
図7A】樹脂の流れを説明する図。
図7B図7AのA-A断面を示す図。
図8】本発明に係る摺動部材の一例の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図8に本発明に係る摺動部材1の一例を模式的に示す。この摺動部材1は、平板形状を有し、その平板面の形状は、円環を2つの半径により切断して得られる形状、すなわち部分円環形状を有している。部分円環形状の中心角度は25°~60°が好ましいが、この角度に限定されるものではない。摺動部材1は、平板な部分円環形状を有する裏金層2上に摺動層3を形成した構成になっている。摺動層3は、10~35体積%の繊維状粒子5が分散された合成樹脂4からなっている。
以後、摺動層3の表面を「摺動面」と称する。また、この明細書で「断面」というときは、特別に他の規定がない限り、「摺動面に垂直な断面」をいう。
また、上記部分円環形状を形成する円環の円周方向を単に「周方向」、半径方向を「径方向」という。部分円環形状の周方向中央を通る径方向の仮想線(摺動部材1の板厚中心を通る)を「中心軸線17」という。
【0019】
概略的に言えば、摺動層3は、摺動面30を含む側の摺動面側領域31と裏金層との界面7を含む側の界面側領域32とからなり、これらの2つの領域では繊維状粒子5の配向が異なっている。いずれの領域においても、繊維状粒子5の長軸方向が全体としてその方向に配向する(すなわち、その方向に略平行に向くものの割合が多い)方向が存在し、摺動面側領域31におけるその方向を第1の方向、界面側領域32におけるその方向を第2の方向という。第1の方向は第2の方向の略垂直であり、いずれの方向も摺動面30に対して略平行である。第1の方向および第2の方向に沿う(平行な)断面を、それぞれ「第1断面」および「第2断面」と称し、それぞれの断面を観察した組織を、それぞれ「第1断面組織」および「第2断面組織」という。
【0020】
図1に、本発明の一例による摺動部材1の第1断面組織を概略的に示す。また、図2に、本発明に係る摺動部材1の第2断面組織を概略的に示す。
摺動部材1は、裏金層2上に摺動層3が設けられており、摺動層3では、合成樹脂4に10~35体積%の繊維状粒子5が分散されている。摺動層3は、摺動面30を含む側に摺動面側領域31、裏金層との界面7を含む側に界面側領域32とに分けられる。界面側領域32は、摺動層3の厚さの15~50%の厚さを有する。摺動面側領域31および界面側領域32のいずれにおいても、合成樹脂4に10~35体積%の繊維状粒子5が分散されていることが好ましい。
摺動面側領域31では、繊維状粒子5の長軸方向が第1断面に略平行に向くものの割合が多く(図1A図2A参照)、他方、界面側領域32では繊維状粒子5の長軸方向が第2断面に略平行を向くものの割合が多くなる(図1B図2B参照)ように分散している。
【0021】
第1断面組織における摺動面側領域での繊維状粒子の平均粒径をd1S、第2断面組織における摺動面側領域での繊維状粒子の平均粒径をd2Sとし、第1断面組織における界面側領域での繊維状粒子の平均粒径をd1B、第2断面組織における界面側領域での繊維状粒子の平均粒径をd2Bとすると、
1Sは5~30μmであり、d2Sはd1Sの5~20%、
2Bは5~30μmであり、d1Bはd2Bの5~20%
となる。
【0022】
摺動部材1の繊維状粒子5の平均粒径d1Sおよびd2Bを5~30μmとする理由は、平均粒径が5μm未満の場合には、摺動層3の強度(変形抵抗)を高める効果が小さくなり、30μmを超えると、摺動層3が軸部材からの負荷を受けた場合に、繊維状粒子5自身にせん断が起こり易くなるからである。
【0023】
摺動部材1の摺動層3中の繊維状粒子5の割合を10~35体積%とする理由は、繊維状粒子5の割合が10%未満であると、摺動層3の強度(変形抵抗)が小さくなり、反対に、繊維状粒子5の割合が35%を超えると、摺動層3が脆くなり、摺動時に摩耗量が多くなりやすいからである。
【0024】
摺動部材1の第1断面組織を観察したときに、摺動面側領域31は、長軸長さが20μm以上である繊維状粒子を全繊維状粒子に対して10%以上の体積割合で含む。この体積割合は30%以上であることが好ましい。他方、摺動部材1の第2断面組織を観察したときに、界面側領域32は、長軸長さが20μm以上である繊維状粒子を全繊維状粒子に対して10%以上の体積割合で含む。この体積割合も30%以上であることが好ましい。ここで、「長軸長さ」とは、断面組織において、繊維状粒子の長さが最大となる方向に沿う長さをいう。長軸長さが20μm以上である繊維状粒子は、摺動層3の強度、すなわち変形抵抗を高める効果が大きい。摺動層は、全繊維粒子に対する「長軸長さが20μm以上である繊維状粒子」の体積割合が10%以上であると、摺動面側領域31、界面側領域32における「長軸長さが20μm以上である繊維状粒子」の長軸が配向する方向の強度、すなわち変形抵抗を高めることができる。
【0025】
合成樹脂4は、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリベンゾイミダゾール、ナイロン、フェノール、エポキシ、ポリアセタール、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレンおよびポリエーテルイミドから選ばれる1種以上からなることが好ましい。繊維状粒子5は、ガラス繊維粒子、セラミック繊維粒子、炭素繊維粒子、アラミド繊維粒子、アクリル繊維粒子、ポリビニルアルコール繊維粒子から選ばれる1種以上からなることが好ましい。しかし、合成樹脂4および繊維状粒子5は、他の材質であってもよい。
【0026】
摺動層3は、黒鉛、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、窒化硼素、ポリテトラフルオロエチレンから選ばれる1種以上の固体潤滑剤をさらに含んでもよい。この固体潤滑剤を含有することにより、摺動層の摺動特性を高めることができる。また、摺動層3は、CaF、CaCo、タルク、マイカ、ムライト、酸化鉄、リン酸カルシウム、チタン酸カリウムおよびMoC(モリブデンカーバイト)のうちから選ばれる1種または2種以上の充填材を1~10体積%をさらに含んでもよい。この充填材を含有することにより、摺動層の耐摩耗性を高めることが可能となる。
【0027】
摺動層3の厚さ(すなわち、摺動層3と裏金層2との界面7から摺動面30までの間の、摺動面30に垂直方向の距離)は、0.5~6mmとすることが好ましい。
【0028】
第1断面組織において、摺動面側領域31に分散する「長軸長さが20μm以上である繊維状粒子5」の分散指数Sが5以上であり、第2断面組織において、界面側領域32に分散する「長軸長さが20μm以上である繊維状粒子5」の分散指数Sが5以上である。ここで、分散指数Sは、各繊維状粒子5についての比X1/Y1の平均により表され、X1は、対象とする断面組織(第1断面組織または第2断面組織)での繊維状粒子の摺動面30に対して平行方向の長さであり、Y1は、第1断面組織または第2断面組織での繊維状粒子5の摺動面30に対して垂直方向の長さである(図4参照)
【0029】
第1断面組織において摺動層3の摺動面側領域31の繊維状粒子5の分散指数Sが5以上であることは、繊維状粒子5の長軸方向が摺動面30に平行かつ径方向を向くものの割合が多くなるように分散することを示している。このため摺動面側領域31は、物性が異方性を有することになり、とりわけ摺動面31および第1断面に対し平行な負荷に対する強度(変形抵抗)が大きくなる。
【0030】
他方、第2断面組織において摺動層3の界面側領域32は、繊維状粒子5の分散指数Sが5以上であり、繊維状粒子5の長軸方向が摺動面30に平行且つ周方向を向くものの割合が多くなるように分散する。したがって、摺動層3の界面側領域32は、摺動面30および第2断面に対し平行な負荷に対する強度(変形抵抗)が大きくなる。
【0031】
繊維状粒子5が上記の配向を有すると、軸受装置の停止時、軸部材と摺動層3の摺動面30とが直接に接触した状態で一定時間摺動が起こっても、摺動面30を含む摺動層3の摺動面側領域31は、第1の方向の負荷に対する強度(変形抵抗)が大きく、界面側領域32は、第2の方向の負荷に対する強度(変形抵抗)が大きくなることにより、負荷に対する摺動層の変形抵抗の強さは、略垂直な第1の方向と第2の方向に分散される。すなわち、摺動層表面に加わる負荷が、摺動層3の繊維状粒子の配向が異なる境界箇所から界面側領域にかけて緩和されて、裏金層との界面まで伝播することが防がれることから、金属製の裏金層と合成樹脂の摺動層との間での弾性変形量の違いによるせん断が起き難い。
また、軸部材からの大きな負荷(大型の軸受装置により軸部材の重量が大きいことによる)が摺動層に加わっても、摺動面側領域31と界面側領域32の繊維状粒子の長軸方向が摺動面に平行に配向していることから、平行方向の強度が摺動層全体を通じて大きいので、(摺動層内の垂直方向への)内部の割れが起こり難い。
【0032】
以上の機構により、本発明に係る摺動部材1は、軸受装置の停止する際の、摺動面30と相手軸表面とが直接接触した状況でも、摺動層3の内部(縦方向への)に割れ等の損傷が発生することが防がれ、かつ摺動層と裏金層とのせん断が起き難い。
【0033】
なお、摺動層の摺動面側領域31、界面側領域32で、繊維状粒子の含有量はほぼ同じでよく、「長軸長さが20μm以上である繊維状粒子」の含有量もほぼ同じでよい。また、摺動層の摺動面側領域31、界面側領域32に分散する「長軸長さが20μm未満である繊維状粒子」の分散指数は、各領域中に分散する「長軸長さが20μm以上である繊維状粒子」の分散指数と、ほぼ同じ分散指数でよい。
【0034】
本発明の摺動部材1において、第1断面組織の摺動面側領域の「長軸長さが20μm以上である繊維状粒子」は、平均アスペクト比が1.5~10であることが好ましく、5~10であることがより好ましく、7~10が更に好ましい。さらに、第2断断面組織の界面側領域の「長軸長さが20μm以上である繊維状粒子」は、平均アスペクト比が1.5~10であることが好ましく、5~10であることがより好ましく、7~10が更に好ましい。平均アスペクト比は、繊維状粒子の配向に関係する数値であり、繊維状粒子の長軸方向が、観察する断面(径方向または周方向)に略平行に配向していなければ、そのアスペクト比は1に近い値(例えば1.5未満)となる。したがって、平均アスペクト比が1.5未満であると、樹脂層の強度(変形抵抗)を高める効果は小さくなる。その場合、「長軸長さが20μm以上である繊維状粒子」の配向を摺動面側領域と界面側領域とで異ならせても、変形抵抗の異方性の差が不十分になりやすく、上記効果が得難い。他方、平均アスペクト比が10を超えると、摺動層が軸部材からの負荷を受けた場合に繊維状粒子自身にせん断が起こる場合がある。
【0035】
裏金層2は、摺動層3との界面となる表面に多孔質金属部6を有してもよい。多孔質金属部6を有する裏金層2を用いた摺動部材1の一例の第1断面組織を図5に、第2断面組織を図6に概略的に示す。裏金層2の表面に多孔質金属部6を設けることにより、摺動層と裏金層の接合強度を高めることができる。多孔質金属部の空孔部に摺動層を構成する組成物が含浸されることによるアンカー効果により、裏金層と摺動層との接合力の強化が可能になるからである。多孔質金属部は、Cu、Cu合金、Fe、Fe合金等の金属粉末を金属板や条等の表面上に焼結することにより形成することができる。多孔質金属部の空孔率は20~60%程度であればよい。多孔質金属部の厚さは50~500μm程度とすればよい。この場合、多孔質金属部の表面上に被覆される摺動層の厚さは0.5~6mm程度となるようにすればよい。ただし、ここで記載した寸法は一例であり、本発明がこの値の限定されるものではなく、異なる寸法に変更するも可能である。
【0036】
以下、本発明のいくつかの実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
第1の実施形態
第1の実施形態では、第1断面が摺動部材1の中心軸線に略平行である。したがって、摺動部材1の中心軸線付近では、摺動面側領域31で繊維状粒子5の長軸方向が中心軸線に略平行に向くものの割合が多く、界面側領域32で繊維状粒子5の長軸方向が中心軸線に略垂直を向くものの割合が多くなる。ところで、摺動部材1が中心角度は25°~60°程度の部分円環形状であれば、概略的には、中心軸線方向は概ね部分円環の径方向に相当し、中心軸線に垂直な方向は概ね周方向に相当するということができる。そうすると、摺動部材1の摺動層の繊維状粒子5の配向は、摺動面側領域31で繊維状粒子5の長軸方向が径方向に略平行に向くものの割合が多く、界面側領域32で繊維状粒子5の長軸方向が周方向に略平行に向くものの割合が多いといえる。したがって、この実施形態の摺動部材では、摺動面側領域31で径方向の変形抵抗が大きく、界面側領域32で周方向の変形抵抗が大きくなる。
【0037】
このような繊維状粒子5の配向においても、軸受装置の停止時、軸部材と摺動層3の摺動面30とが直接に接触した状態で一定時間摺動が起こっても、負荷に対する摺動層の変形抵抗の強さが径方向と周方向に分散されることにより裏金層と摺動層とのせん断が抑制される効果は上記のとおりである。とりわけ、摺動部材1をスラスト軸受に用いた場合には、軸部材との摺動の生じる摺動方向は、摺動部材1の周方向であるところ、この実施形態では、界面側領域32の周方向の変形抵抗が大きくなるために、摺動層3に加わる軸部材からの負荷に対して界面側領域32の周方向変形量が小さくなり、裏金層2との弾性変形量の差によるせん断が一層発生し難くなる。なお、摺動面側領域31と界面側領域32の繊維状粒子の長軸方向が摺動面に平行に配向していることから、摺動層内の垂直方向への内部の割れが起こり難いことも上記のとおりである。
【0038】
第2の実施形態
第2の実施形態では、第2断面が摺動部材1の中心軸線に略平行である。したがって、摺動部材1の中心軸線付近では、摺動面側領域31で繊維状粒子5の長軸方向が中心軸線に略垂直に向くものの割合が多く、界面側領域32で繊維状粒子5の長軸方向が中心軸線に略平行を向くものの割合が多くなる。第1の実施形態で説明したとおり、摺動部材1が中心角度は25°~60°程度の部分円環形状であれば、概略的には、中心軸線の方向は概ね部分円環の径方向に相当し、中心軸線に垂直な方向は概ね周方向に相当するということができる。したがって、摺動部材1の摺動層の繊維状粒子5の配向は、摺動面側領域31で繊維状粒子5の長軸方向が周方向に略平行に向くものの割合が多く、界面側領域32で繊維状粒子5の長軸方向が径方向に略平行に向くものの割合が多いといえる。したがって、実施形態2の摺動部材では、摺動面側領域31で周方向の変形抵抗が大きく、界面側領域32で径方向の変形抵抗が大きくなる。
【0039】
この繊維状粒子5の配向においても、軸受装置の停止時、軸部材と摺動層3の摺動面30とが直接に接触した状態で一定時間摺動が起こっても、負荷に対する摺動層の変形抵抗の強さが径方向と周方向に分散されることによる裏金層と摺動層とのせん断を抑制する効果は上記のとおりである。また、特許文献5とは異なり、摺動面側領域31と界面側領域32の繊維状粒子の長軸方向が摺動面に平行に配向していることから、摺動層内の垂直方向への内部の割れが起こり難いことも上記のとおりである。
【0040】
第3の実施形態
第3の実施形態では、第1断面が摺動部材1の中心軸線から約40°~約50°傾いた方向に平行である。この場合、第2断面は摺動部材1の中心軸線から第1断面とは反対方向に約40°~約50°傾いた方向に平行である。したがって、摺動部材1の摺動層の繊維状粒子5の配向は、摺動面側領域31で繊維状粒子5の長軸方向が中心軸線および周方向から約40°~約50°傾いた方向に向くものの割合が多く、界面側領域32で繊維状粒子5の長軸方向が摺動部材1の中心軸線および周方向から第1断面とは反対方向に約40°~約50°傾いた方向に略平行に向くものの割合が多い。
【0041】
この繊維状粒子5の配向においても、軸受装置の停止時、軸部材と摺動層3の摺動面30とが直接に接触した状態で一定時間摺動が起こっても、負荷に対する摺動層の変形抵抗の強さが径方向と周方向に分散されることによる裏金層と摺動層とのせん断を抑制する効果は上記のとおりである。とりわけ、摺動部材1をスラスト軸受に用いた場合には、繊維状粒子5の配向は摺動方向(すなわち周方向)に対して、左右に約40°~約50°傾いた2つの方向に分散するために、負荷に対する摺動層の変形抵抗の強さの分散がほぼ均等に行われ、そのため分散効果が向上し、せん断の発生防止効果が改善される。また、摺動面側領域31と界面側領域32の繊維状粒子の長軸方向が摺動面に平行に配向していることから、摺動層内の垂直方向への内部の割れが起こり難いことも上記のとおりである。
【0042】
以上、3つの実施形態を説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、第1断面は他の任意の方向を取ることができる。
【0043】
上記摺動部材1は、例えばスラスト軸受に使用できる。例えば、この軸受は、円環状の窪み部を有するハウジングを備える。円環状の窪み部に周方向に沿って上記摺動部材を複数個配置し、これらの摺動部材により相手軸である軸部材のスラストカラー面を支承するようになっている。上記摺動部材の部分円環形状(曲率、寸法等)は円環状の窪み部および軸部材に適合するように設計される。しかし、上記摺動部材は、他の形態の軸受或いはその他の摺動用途にも利用可能である。
本発明は、このような上記摺動部材を複数個備えたスラスト軸受も包含している。
【0044】
上記に説明した摺動部材について、製造工程に沿って以下に詳細に説明する。
(1)繊維状粒子原材料の準備
繊維状粒子の原材料としては、例えば人為的に造成した無機繊維粒子(ガラス繊維粒子、セラミック繊維粒子など)や有機繊維粒子(炭素繊維粒子、アラミド繊維、アクリル繊維粒子、ポリビニルアルコール繊維粒子など)を用いることができる。
【0045】
(2)合成樹脂原材料粒の準備
合成樹脂の原材料としては、平均粒径7~30μm、アスペクト比5~100を有する粒を用いることが好ましい。合成樹脂としては、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリベンゾイミダゾール、ナイロン、フェノール、エポキシ、ポリアセタール、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレンおよびポリエーテルイミドのうちから選ばれる1種以上からなるものを用いることができる。
【0046】
(3)樹脂組成物シートの製造
樹脂組成物シートは、上記原材料等から、溶融混練機、供給金型、シート成形金型および冷却ロールを用いて作製する。
【0047】
「溶融混練機」
溶融混練機により、合成樹脂原材料粒、繊維状粒子原材料、およびその他の任意材料(固体潤滑剤、充填材等)の原材料を230℃~390℃の温度で加熱しながら混合し、溶融状態の樹脂組成物を作製する。この樹脂組成物は、溶融混練機から一定の圧力で押し出される。
【0048】
「供給金型」
溶融混練機から押し出された樹脂組成物は、供給用金型を介してシート成形金型に常に一定量を供給される。供給金型は、加熱用ヒータを有し、供給金型内を通る樹脂組成物を385℃~400℃の温度に加熱して溶融状態に維持する。
【0049】
「シート成形金型」
樹脂組成物はシート成形金型によりシート形状に形成される。供給金型からシート成形金型に供給された溶融状態の樹脂組成物は、シート形状に成形され、シート成形金型内を出口側へ移動しながら徐々に自然冷却され、半溶融状態のシートとなる。
【0050】
「冷却ロール」
半溶融状態の樹脂組成物シートは冷却ロールにて連続的に接触して、冷却されながら「シート成形金型」から引き出される。冷却ロールは、樹脂組成物シートを上面と下面の両側から押えて移動させる少なくとも1対のロール(上側ロールおよび下側ロール)からなる。半溶融状態の樹脂組成物シートは、冷却ロールから引き出された後に完全に固体状態のシートになる。なお、冷却ロールは、ロール内に組み込まれた電動ヒータにより温度制御が可能となっており、かつ電動モータにより制御可能に回転駆動できるようになっている。樹脂組成物シートの厚さの寸法の一例としては1~7mmである。固体状態になった樹脂組成物シートは、後述する被覆工程に用いられる裏金の寸法に適合する大きさに切断される。
【0051】
(4)裏金
裏金層としては、亜共析鋼やステンレス鋼等のFe合金、Cu、Cu合金等の金属板を用いることができる。裏金層表面、すなわち摺動層との界面となる側に多孔質金属部を形成してもよいが、多孔質金属部は裏金層と同じ組成を有することも、異なる組成または材料を用いることも可能である。
【0052】
(5)被覆及び成形工程
樹脂組成物シートを、裏金層の一方の表面、あるいは裏金の多孔質金属部上に接合する。その後、使用形状、例えば、部分円環形状に切り出した後、組成物の厚さを均一とするため、裏金を加工または切削する。このように樹脂組成物シートのシート成形工程における引出方向が、部分円環形状の所定方向になるように成形した後、表面層を切削除去して所定厚さに仕上げる。
【0053】
組織制御
次に、繊維状粒子を配向させる組織制御方法について説明する。組織制御は、上記の樹脂組成物シートの製造工程において、冷却ロールの温度設定により行なう。具体的には、上側冷却ロールの温度が下側冷却ロールよりも温度が約50℃~60℃高く(170℃~180℃)設定する。これに対して、従来の冷却ロールの温度は、上側冷却ロールも下側冷却ロールも同温度(110℃~130℃)に設定していた。
【0054】
半溶融状態の樹脂組成物シートは、冷却ロールに接触して冷却されながら固化するが、下側冷却ロールの温度を上側冷却ロールの温度よりも低く設定しているために、先に樹脂組成物シート下面で固化が始まる。また上側冷却ロールは下側冷却ロールよりも温度が高いために、固化しきれない半溶融状態の樹脂組成物が上側冷却ロール入口で溜りやすくなる(以後、「樹脂溜り」という)。図7Aにこの様子を模式的に示す。樹脂組成物シートは、紙面の右側から左側に向かう方向に引き抜かれる(引き抜き方向10)。半溶融樹脂組成物の流れを矢印11に示す。シート成形金型12から(紙面の右側から)流れてきた半溶融樹脂組成物11は、上側冷却ロール13の入口側で一定量の樹脂溜り15を形成する。この樹脂溜り15を形成している半溶融状態の樹脂組成物11(以後、「半溶融樹脂組成物」という)は、引き抜き方向と同方向に回転して滞留しながら樹脂組成物シートの内部に押し込まれる。樹脂組成物シートの内部は冷却ロールに接触していないために、冷却ロールを通過している間は半溶融状態を保っており、押し込まれた半溶融樹脂組成物11は、既に下側冷却ロール14により固化された樹脂組成物シート下面部16に衝突しながら、樹脂組成物シートの幅方向両端部に向かって広がり流れて(図7B参照)固化が開始される。そのために、樹脂組成物シートの厚さ方向の中央部付近の繊維状粒子は、長軸が樹脂組成物シートの幅方向(引き抜き方向10に垂直な方向)に配向しやすくなる。他方、樹脂組成物シートの表面付近(シート上面と下面)では、半溶融状態の樹脂組成物シートは冷却ロールの出口側へ向かって常に一方向に流れながら冷却ロールに接触して固化するために、繊維状粒子は、長軸が樹脂組成物シートの表面に長手方向(引き抜き方向10)に配向しやすくなる。
【0055】
従来技術では、上側冷却ロールと下側冷却ロールの温度を同じに設定しているが、この場合には、シート成形金型から流れてきた半溶融樹脂組成物は冷却ロール入口側で樹脂溜りを形成することなく出口側へ向かって常に一方向に流れるため、樹脂組成物シートの厚さ方向の全域で、繊維状粒子は、長軸が樹脂組成物シートの表面に平行な方向に配向しやすくなる。
また、従来の一般的な射出成型法で樹脂組成物シートを製造した場合、シート成形金型の供給口から溶融状態の樹脂組成物を瞬時に充填させるので、金型内の各所で溶融状態の樹脂組成物どうしが衝突または合流する。そのため、金型内で溶融状態の樹脂組成物が一方向に流れた箇所と溶融状態の樹脂組成物どうしが衝突した箇所では繊維状粒子の配向方向が異なり、樹脂組成物シートは、表面からみると、繊維状粒子の長軸が表面に平行な方向を向いて配向している箇所と、繊維状粒子の長軸がランダムに配向した箇所(ウエルド部)が混在したものとなる。
【0056】
また、先行技術文献4のように合成樹脂に架橋促進剤と繊維状粒子からなる樹脂組成物を射出成型法により樹脂組成物シートを製造した場合、繊維状粒子は無配向(等方)に分散する。
また、先行技術文献5のように成形金型内で冷却を行い、かつ引出ロールの引出速度を周期的に変化させて樹脂組成物シートを製造した場合、樹脂組成物シートの厚さ方向の中央部領域では、繊維状粒子は、長軸が樹脂組成物シートの表面に垂直な方向に分散し、他方、表面付近では、繊維状粒子は、長軸が樹脂組成物シートの表面に平行な方向に分散する。
【0057】
次に摺動層の摺動面側領域、界面側領域の区分方法を説明する。電子顕微鏡を用いて摺動部材の第1断面組織および第2断面組織の複数箇所の電子像を200倍で撮影する。第1断面組織では、摺動面付近には、概ね摺動面に沿った方向を向いて細長く延びた繊維状粒子が多数観測される(図1A参照)が、裏金層との界面付近には、そのように細長く延びた繊維状粒子はほとんど観察されずに大部分が球状または長球状の粒子である(図1B参照)。反対に、第2断面組織では、摺動面付近には、細長く延びた繊維状粒子はほとんど観察されずに大部分が球状または長球状の粒子である(図2A参照)が、裏金層との界面付近に細長く延びた繊維状粒子が多数観測される(図2B参照)。これらの繊維状粒子の形態の異なる2つの領域は、摺動層の厚さ方向に積層した2層として形成されているので、その境界線を、上記の複数の第1断面組織および第2断面組織から決定して、摺動面に平行な仮想線UL(境界線)を描く。摺動層の摺動面から仮想線ULまでの間を摺動面側領域、摺動層の裏金層との界面から仮想線ULまでの間を界面側領域とする。仮想線ULを図1に点線で示す。
なお、裏金層の表面に多孔質部を有する場合には、裏金層の表面は凹凸状となる。この場合、摺動層と裏金層との界面は、撮影画像中で裏金層(多孔質部)の表面の最も摺動面側に近くに位置する凸部の頂部を通り摺動面に対し平行な仮想線とする。
【0058】
各断面について、上記方向で区分した、摺動面側領域および界面側領域の繊維状粒子の平均粒径を、以下の手法を用い測定した。
繊維状粒子の平均粒径は、上記の電子顕微鏡を用いて摺動部材の第1断面組織および第2断面組織の複数箇所の電子像(200倍)から測定する。具体的には、繊維状粒子の平均粒径は、得られた電子像を一般的な画像解析手法(解析ソフト:Image-Pro Plus(Version4.5);(株)プラネトロン製)を用いて、各繊維状粒子の面積を測定し、それを円と想定した場合の平均直径に換算して求める。ただし、電子像の撮影倍率は200倍に限定されないで、他の倍率に変更してもよい。
【0059】
次に、摺動層に含まれる繊維状粒子の全体積に対する長軸長さが20μm以上である繊維状粒子の体積割合の測定方法について説明する。電子顕微鏡を用いて得られた摺動部材の第1断面組織および第2断面組織の摺動面側領域および界面側領域のそれぞれの撮影画像を用い、一般的な画像解析手法(例えば、解析ソフト:Image-Pro Plus(Version4.5);(株)プラネトロン製)を用いて、撮影画像中の繊維状粒子を、長軸長さが20μm以上である繊維状粒子と、それ以外の繊維状粒子に区分する。撮影画像中の全繊維状粒子の合計面積と長軸長さが20μm以上である全繊維状粒子の合計面積を測定し、全繊維状粒子に対する長軸長さが20μm以上である繊維状粒子の面積割合を算出する。この面積割合は、体積割合に相当する。
【0060】
平均アスペクト比Aは、上記の手法で得られた電子像の撮影画像を用い、長軸長さが20μm以上である各繊維状粒子の長軸長さLと短軸長さSの比(長軸長さL/短軸長さS)の平均として求める(図3参照)。なお、繊維状粒子の長軸長さLは、上記のとおり電子像中の繊維状粒子の長さが最大となる位置での長さを示し、短軸長さSは、長軸長さLの方向に直交する方向での長さが最大となる位置での長さを示す。
繊維状粒子の分散指数Sは、上記電子像の第1断面組織の摺動面側領域と第2断面組織の界面側領域の撮影画像を用い、長軸長さが20μm以上である各繊維状粒子の摺動面に対して平行方向の長さX1と、摺動面に対して垂直方向の長さY1を測定し、それら各長さの比X1/Y1の平均値を算出して求める(図4参照)。なお、繊維状粒子の分散指数Sが0に近いほど、繊維状粒子は長軸方向が摺動面に対し垂直方向に配向して分散し、分散指数Sが5を超えて大きくなるほど長軸方向が摺動面に対し平行に配向して分散することを表す。
【実施例
【0061】
本発明による裏金層および摺動層を有する摺動部材の実施例1~12および比較例21~28を以下に示すとおり作製した。実施例および比較例の各摺動部材の摺動層の組成は、表1に示すとおりである。
【0062】
【表1-1】

【表1-2】
【0063】
表1に示す実施例1~12および比較例21~28における繊維状粒子の原材料は、平均粒径が7~35μmで、平均アスペクト比(長軸長さ/短軸長さ)が5~100の粒子を用いた。
【0064】
実施例1~12および比較例21~28における合成樹脂の原材料としてPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)粒子又はPF(フェノール)粒子を用いた。これらの粒子は、平均粒径が、原材料である繊維状粒子の平均粒径に対して125%であるものを用いた。
実施例5~9の固体潤滑剤(MoS、Gr)の原材料粒子は、平均粒径が繊維状粒子原材料の平均粒径に対して30%の粒子を用い、充填材(CaF)の原材料粒子は、平均粒径が繊維状粒子の平均粒径に対して25%のものを用いた。比較例26の架橋促進剤の原材料は、平均粒径が繊維状粒子の平均粒径に対して25%の粒子を用いた。
【0065】
上記の原材料を表1に示す組成比率で秤量し、この組成物を予めペレット化した。このペレットを溶融混練機に投入し、順に供給金型、シート成形金型、冷却ロールを通して、樹脂組成物シートを作製した。なお、実施例1~9、11、12および比較例21~25、27、28では、溶融混練機の加熱温度を350~390℃に設定し、実施例10では加熱温度を230~250℃に設定した。また、冷却ロールの温度は、実施例1~12および比較例21~24は、上側冷却ロールの温度を180℃に、下側冷却ロールの温度を130℃に設定し、比較例25、27は同一温度に設定し、比較例28は上側冷却ロールの温度を200℃に、下側冷却ロールの温度を100℃に設定した。また、比較例26は、先行技術文献4にしたがって、射出成形にて樹脂組成物シートを作製した。
【0066】
次に樹脂組成物シートをFe合金製の裏金層の一方の表面に被覆させた後、部分円環形状に加工し、次に、裏金層上の組成物が所定の厚さとなるように切削加工した。なお、実施例1~9、11、12及び比較例21~28の裏金層はFe合金を用いたが、実施例10はFe合金の表面にCu合金の多孔質焼結部を有するものを用いた。
【0067】
実施例1~6、10~12および比較例27の摺動部材は、樹脂組成物シートの成形工程での引出ロールでの引出方向に対して、樹脂組成物シートと部分円環形状の中心軸線が平行になるように、樹脂組成物シートを所定のサイズに切り出した後、裏金に被覆し(上記実施形態1に相当)、実施例7~9および比較例21~25、28の摺動部材は、樹脂組成物シートの成形工程での引出ロールでの引出方向に対して、部分円環形状の中心軸線が直交するように、樹脂組成物シートを所定のサイズに切り出した後、裏金に被覆した(上記実施形態2に相当)。
作製した実施例1~12および比較例21~28の摺動部材の摺動層の厚さは3mmであり、裏金層の厚さは10mmであった。なお、実施例1~12および比較例21~25、27、28は、一方の表面部を切削して厚さは3mmとした。
【0068】
作製した実施例および比較例の各摺動部材は、上記に説明した測定方法により、第1断面組織および第2断面組織について、摺動面側領域および界面側領域のそれぞれに分散する繊維状粒子の平均粒径の測定を行い、その結果を表1の「平均粒径」欄に示した。また、上記に説明した第1断面組織の摺動面側領域、第2断面組織の界面側領域における「長軸長さが20μm以上である繊維状粒子」の平均アスペクト比(A)の測定行い、その結果を表1の「平均アスペクト比(A)」欄に示した。また、上記に説明した測定方法により、第1断面組織の摺動面側領域および第2断面組織の界面側領域に分散する「長軸長さが20μm以上である繊維状粒子」の分散指数(S)の測定を行い、その結果を表1の「分散指数(S)」欄に示した。さらに、上記に説明した第1断面組織の摺動面側領域および第2断面組織の界面側領域に分散する繊維状粒子の全体積に対する長軸長さが20μm以上である繊維状粒子の体積割合の測定を行い、その結果を「体積比率」欄に示した。また、摺動層厚さに対する界面側領域の厚さの比率を「界面側領域の厚さ比率(%)」に示す。
【0069】
部分円環形状に成形した摺動部材を複数個組み合わせて円環形状にし、表2に示す条件で摺動試験を行った。この条件は、大型軸受装置の運転の停止時に、油の供給が不十分となり軸部材が一定時間回転する摺動状態を再現したものである。各実施例および各比較例の摺動試験後の摺動層の摩耗量を表1の「摩耗量(μm)」欄に示す。また、摺動試験後の試験片を摺動部材の中心軸線に平行、且つ、摺動面に対して垂直に切断し、摺動層の内部の「割れ」の発生の有無を光学顕微鏡で確認した。表1の「内部の割れ」欄に、内部の「割れ」が確認された場合には「有」、確認されなかった場合は「無」と示した。
また、摺動層と裏金との界面の「せん断」の発生の有無を光学顕微鏡で確認した。表1の「界面のせん断」欄に、界面の「せん断」が確認された場合には「有」、確認されなかった場合は「無」と示した。
【0070】
【表2】
【0071】
表1に示す結果から分かるとおり、実施例1~12は、比較例21~24に対して、摺動試験後の摺動層の摩耗量が少なくなった。さらに、実施例4~9は、繊維状粒子5の平均アスペクト比(A)が5~10となり、特に、摩耗量が少なくなった。第1断面組織での摺動面側領域の「長軸長さが20μm以上である」繊維状粒子5と第2断面組織での界面側領域の「長軸長さが20μm以上である」繊維状粒子5の体積割合が30%以上である実施例4~9は、体積割合が30%未満である実施例1~3、11、12よりも摩耗量が少なくなる結果となったが、これは、上記で説明したように摺動層の強度(変形抵抗)が向上したためと考えられる。
さらに、実施例では、摺動試験後の摺動層の内部に割れの発生および界面のせん断の発生がなかったが、これも上記に説明したとおり、摺動面側領域および界面側領域での繊維状粒子の配向によるものと考えられる。
なお、ここに示す実施例とは別に、摺動部座右の中心軸線に対してシートの引き出し方向斜めに摺動部材を切り出した試料に対しても同様の試験を施したところ同様の効果を示した。
【0072】
これに対し、比較例25や27のように、摺動層に含まれる繊維状粒子が、摺動面側領域、界面側領域の各領域で配向が同じ(摺動面に対して平行に配向)である場合、摺動層表面に加わる負荷が裏金層との界面まで伝播するので、界面にせん断が発生したと思われる。
【0073】
比較例21は、摺動層の摺動面側領域および界面側領域に含まれる繊維状粒子の平均粒径が5μm未満のために、摺動層の強度(変形抵抗)を高める効果が小さくなったために、摺動層の摩耗量が多くなり、また、摺動層と裏金との界面でのせん断が発生したと考えられる。
【0074】
比較例22は、摺動層の摺動面側領域および界面側領域に含まれる繊維状粒子の平均粒径が30μmと大きいために、摺動層に軸部材からの負荷が加わった場合に、繊維状粒子自体にせん断が起こりやすくなり、繊維状粒子の脱落が起きたために摺動層の摩耗量が多くなり、また、摺動層と裏金との界面でのせん断が発生したと考えられる。
【0075】
比較例23は、摺動層の摺動面側領域および界面側領域に含まれる繊維状粒子の体積が10%未満のために摺動層の強度(変形抵抗)が小さくなり、摺動層の摩耗量が多くなり、また、摺動層と裏金との界面でのせん断が発生したと考えられる。
【0076】
比較例24は、摺動層の摺動面側領域に含まれる繊維状粒子の体積が35%を超えているために、摺動層が脆くなり、摺動層の摩耗量が多くなり、摺動面の割れが発生し、また、摺動層と裏金との界面でのせん断が発生したと考えられる。
【0077】
比較例25は、樹脂組成物シートの作製時における上側冷却ロールと下側冷却ロールの温度を同一に設定したために、摺動層に含まれる繊維状粒子が、摺動面側領域、界面側領域の区別がなく、全体において摺動層の摺動面に略平行に配向したために、裏金層の界面まで負荷が伝播して、界面にせん断が発生したと考えられる。
【0078】
比較例26は、射出成形にて樹脂組成物シートを作製したものであるが、摺動層に含まれる繊維状粒子の分散指数が、摺動層の全体を通じて無配向となるために、軸部材から負荷が加わった場合、摺動層の内部に割れが発生したと考えられる。
【0079】
比較例27は、摺動層に含まれる繊維状粒子が、摺動面側領域、界面側領域の区別がなく、全体において摺動層の摺動面に平行方向に配向したために、裏金層の界面まで負荷が伝播して、摺動層と裏金との界面でのせん断が発生したと考えられる。
【0080】
比較例28は、上側冷却ロール温度と下側ロール冷却温度の差を大きくしたことにより
界面側領域が15%未満(10%)と小さいために摺動面に加わった負荷が裏金層の界面まで伝播して、摺動層と裏金との界面でのせん断が発生したと考えられる。
図1
図1A
図1B
図2
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8