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  • 特許-車両用シートのロック装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】車両用シートのロック装置
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/30 20060101AFI20220906BHJP
【FI】
B60N2/30
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019075087
(22)【出願日】2019-04-10
(65)【公開番号】P2020172180
(43)【公開日】2020-10-22
【審査請求日】2021-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000135209
【氏名又は名称】株式会社ニフコ
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】京極 正人
(72)【発明者】
【氏名】加藤 浩一
(72)【発明者】
【氏名】岡田 貴志
(72)【発明者】
【氏名】呉田 学
(72)【発明者】
【氏名】金 基元
(72)【発明者】
【氏名】荒木 俊夫
(72)【発明者】
【氏名】石城 光芳
【審査官】杉▲崎▼ 覚
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/031225(WO,A1)
【文献】特開2008-290649(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
客室の側壁に向けて跳ね上げた車両用シートを跳ね上げ位置にロックする車両用シートのロック装置であって、
前記車両用シートに対して固定された係合バーと、
前記係合バーを受ける受入溝が設けられ、前記受入溝と平行な心棒の周りに回動可能に前記側壁に取り付けられたロック本体と、
前記心棒の周りに回動可能に前記側壁に取り付けられ、前記受入溝に受けられた前記係合バーを当該受入溝内に保持するロック爪を備えるロック動作部と、を備え、
前記ロック動作部が前記ロック本体に対して回動することにより前記ロック爪が前記ロック本体に対して進退して、前記係合バーを当該受入溝内に保持、又は当該受入溝から開放すること、
を特徴とする車両用シートのロック装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用シートのロック装置であって、前記車両用シートは、折り畳まれてシートクッションとシートバックが重ねられた状態で跳ね上げられ、前記係合バーは、前記シートクッションと前記シートバックが重ねられた状態で、前記シートクッションの底面を含むように規定された平面と前記シートバックの背面を含むように規定された平面との間に位置する、車両用シートのロック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、跳ね上げて格納する車両用シートを跳ね上げた位置にロックするロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用シートを格納することにより荷物の搭載空間を拡大可能な車両が知られている。車両用シートの格納手法として、車両用シートのシートバックを倒してシートクッションと重ね、さらに客室の側壁に向けて跳ね上げて格納する手法がある。
【0003】
下記特許文献1には、シートバック(2)の背面に設けられた係合部材(11)を車両の側壁(W)に設けられた受入口(Wh)に係合させて、車両用シート(1)を跳ね上げた位置にロックするロック装置が開示されている。車両用シート(1)を跳ね上げる際に、係合部材(11)が受入口(Wh)に挿入される。
【0004】
また、下記特許文献2には、シートクッション(2)に設けられたワイヤー(52)に車体側に設けられたボディ側フック(53)のフック部(55)を掛けて、乗物用シート(1)を跳ね上げた位置にロックするロック装置が開示されている。
【0005】
なお、上記の( )内の部材名および符号は、下記特許文献1,2で用いられている符号であり、本願の実施形態の説明で用いられる部材名および符号とは関連しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-46787号公報
【文献】特開2018-197039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
車両用シートに設けられた係合部材を車体側に設けられた受け部に係合させる際に、係合部材と受け部の位置がずれていると、滑らかに係合させることができない場合がある。
【0008】
本発明は、車両用シートを客室側壁に向けて跳ね上げて格納する際、係合部材と受け部が滑らかに係合するロック装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る車両用シートのロック装置は、客室の側壁に向けて跳ね上げた車両用シートを跳ね上げ位置にロックする車両用シートのロック装置であって、車両用シートに対して固定された係合バーと、係合バーを受ける受入溝が設けられ、受入溝と平行な心棒の周りに回動可能に側壁に取り付けられたロック本体と、心棒の周りに回動可能に側壁に取り付けられ、受入溝に受けられた係合バーを当該受入溝内に保持するロック爪を備えるロック動作部と、を備え、ロック動作部がロック本体に対して回動することによりロック爪がロック本体に対して進退して、係合バーを当該受入溝内に保持、又は当該受入溝から開放すること、を特徴とする。
【0010】
係合バーと受入溝の位置がずれていても、ロック本体が移動することにより係合バーと受入溝の位置が合い、係合バーが受入溝に滑らかに受け入れられる。客室の側壁側に移動する要素を設けたことにより、車両用シート側の要素が簡易な構造となる。これにより、車両用シートが軽量化され、例えば跳ね上げ時の操作者の負担を軽減することができる。
【0012】
また、車両用シートは、折り畳まれてシートクッションとシートバックが重ねられた状態で跳ね上げられ、係合バーはシートクッションとシートバックが重ねられた状態で、シートクッションの底面を含むように規定された平面とシートバックの背面を含むように規定された平面との間に位置するものとできる。
【発明の効果】
【0013】
係合バーと受入溝の位置がずれていても、ロック本体が移動して係合バーと受入溝の位置を合わせ、係合バーが受入溝に滑らかに受け入れられる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】跳ね上げて格納される車両用シートを示す模式図である。
図2】ロック装置を示す斜視図である。
図3】ロック機構の分解斜視図である。
図4】ロック機構の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に従って説明する。各図において、矢印FRで示す向きが車両の前方、矢印UPで示す向きが車両の上方、矢印LHで示す向きが車両の左方である。以下において、左右上下等の方向および向きを表す語句は、特段の断りがない限り、説明中の図における方向および向きを表す。
【0016】
図1は、3列の座席を有する車両の最後列の車両用シート10の格納状態を示す図である。車両用シート10は、格納する際、乗員が着座可能な使用状態から折り畳まれて、すなわちシートバック12を前に倒してシートクッション14と重ね、更に矢印Aの方向に跳ね上げて客室の側壁16に沿う状態とされる。この状態が車両用シート10の格納状態である。車両用シート10、特にシートクッション14の後端面には、係合アーム18が固定されている。係合アーム18は、図2に示されるように、棒鋼をU字形に曲げ、さらにL字に屈曲させて形成される。側壁16、例えば車体最後部のDピラー20には、係合アーム18の端部を受けるロック機構22が設けられている。ロック機構22は、係合アーム18を受けるとこれを保持し、車両用シート10を格納位置に保持する。係合アーム18は、露出を抑えるためにカバーで覆うようにしてよい。
【0017】
図2および図3は、係合アーム18とロック機構22を含むロック装置24の概略構成を示す図であり、図2が斜視図、図3がロック機構22の分解斜視図である。ロック機構22は、ロック機構22をDピラー20内の骨格部材に固定するためのブラケット26を含む。ブラケット26は、図2,3の右側の縁部において、Dピラー20内の骨格部材にボルト等の締結要素により固定される。ブラケット26の左側の縁部の上下の端部には支持孔26aが設けられ、ブラケット26は、これら2つの支持孔26aを貫通する1本の心棒28を支持する。さらに、ブラケット26は、心棒28を介して合わせカバー30を支持する。合わせカバー30は、Dピラー20の内装材31との隙間をふさぎ、Dピラー20の内部構造が見えにくいようしている(図4参照)。さらにまた、ブラケット26は、心棒28を介して、ロック本体32とロック動作部34を支持する。ロック本体32には上端部と下端部に貫通孔32aが設けられ、これらの貫通孔32aを心棒28が貫通して、ロック本体32が心棒28周りに回動可能に支持される。ロック動作部34にも上端部と下端部に貫通孔34aが設けられ、これらの貫通孔34aを心棒28が貫通して、ロック動作部34が心棒28周りに回動可能に支持される。心棒28は、ロック本体32とロック動作部34を付勢する2つのコイルばね36,38(図3参照)を貫通している。ロック本体32を付勢するコイルばね36を首振り用ばね36と記し、ロック動作部34を付勢するコイルばね38をロック用ばね38と記す。首振り用ばね36は、一端が合わせカバー30に接し、他端がロック本体32に接して、ロック本体32を、上方から見たとき反時計回りに付勢する。ロック用ばね38は一端が合わせカバー30に接し、他端がロック動作部34に接して、ロック動作部34を時計回りに付勢する。ロック用ばね38は、ロック動作部34がロック本体32に一体となるよう付勢し、一体とされたロック本体32とロック動作部34は、2つのばね36,38の付勢力が釣り合った中立位置に向けて付勢される。
【0018】
前述のように、係合アーム18はU字形に曲げられており、U字の底辺部分40が車両の上下方向に延びて配置されている。この底辺部分40がロック機構22と係合する。以降、底辺部分40を係合バー40と記す。ロック本体32には、係合バー40を受け入れる受入溝42が設けられている。受入溝42は、係合バー40と同じ方向に、つまり上下方向に延びている。受入溝42と係合バー40の延びる方向は、心棒28と平行である。受入溝42の開口縁部には、係合バー40を受入溝42内に導くよう傾斜した傾斜面42a,42bが設けられている。ロック動作部34は、係合バー40を受入溝42内に保持するためのロック爪44を有する。ロック爪44は、ロック動作部34に設けられた操作部46を操作することにより進退し、進出して係合バー40を受入溝42内に保持し、退避して係合バー40を解放可能とする。係合バー40は、折り畳まれて重なったシートバック12とシートクッション14の厚さ(つまり跳ね上げられた状態での車両幅方向の寸法)の範囲内に配置してよい。これにより、係合バー40が、車両幅方向において、跳ね上げられた車両用シート10から突出することがなく、車両用シート10の客室内への突出を抑制することができる。
【0019】
図4は、ロック機構22の動作を説明するための図である。(a)は、跳ね上げられた車両用シート10が格納位置となる直前の様子を示す図であり、(b)は、車両用シート10が格納された状態を示す図である。
【0020】
ロック本体32は、心棒28を中心として回動可能であり、受入溝42が設けられた端部が左右に振れるように首振り動作する。ロック本体32は、首振り用ばね36およびロック用ばね38により、図4の(a)に示す位置である中立位置に向けて付勢されている。ロック動作部34のロック爪44は、ロック本体32に開けられた開口32bを貫通して受入溝42と交叉するように進出することができる。ロック爪44は、ロック動作部34の操作部46を操作することにより、受入溝42から退避させることができる。ロック動作部34は、ロック本体32と一緒に心棒28を中心として回動可能である。ロック動作部34は、ロック爪44が受入溝42に向けて進出した位置となるように、ロック用ばね38により付勢されている。
【0021】
車両用シート10を格納するとき、車両用シート10を跳ね上げると、係合バー40は、ロック機構22に向けて矢印Bの方向に移動する。係合バー40が、ロック爪44の傾斜した背面44aに当接すると、ロック動作部34はロック用ばね38の付勢力に抗して図4において反時計回りに回動する。一方、ロック本体32は係合バー40に阻止されて回動しない。これにより、ロック爪44は、一点鎖線で示すように、受入溝42から退避する。そして、係合バー40は、受入溝42内に進入し、ロック爪44は、ロック用ばね38の付勢力によって進出位置に復帰し、係合バー40を受入溝42内に保持する。
【0022】
車両用シート10を使用位置に戻す場合には、操作部46を図2において右方向に動かして、図4に一点鎖線で示すように、ロック動作部34を反時計回りに回動させる。このとき、ロック本体32は係合バー40に阻止されて回動せず、ロック爪44は受入溝42から退避する。これにより、係合バー40が解放され、受入溝42からの退出が可能となり、車両用シート10を使用位置、つまり客室の床面上へと倒すことができる。
【0023】
このロック機構22においては、係合バー40と受入溝42の位置がずれている場合、ロック本体32の回動動作、つまり首振り動作によってこのずれに対応している。図4は、係合バー40が受入溝42の中心から右にずれている状態を示している。車両用シート10の格納時、係合バー40は、ロック爪44の背面44aに当接する前に、傾斜面42bに当接する。係合バー40が傾斜面42bを押す力によってロック本体32が反時計回りに回動して、係合バー40がロック爪44の背面44aに当接する。係合バー40から受ける力により、ロック爪44が退避して、係合バー40が受入溝42内に受け入れられ、その後、進出位置に戻ったロック爪44により受入溝42内に保持される(図4の(b)参照)。係合バー40が受入溝42に対して左にずれている場合には、係合バー40が傾斜面42aに当接し、これによりロック本体32は時計回りに回動して、係合バー40を受入溝42内に受け入れる。
【0024】
ロック本体32を回動可能としたことにより、車両用シート10と車体の間の寸法誤差を吸収することができる。
【0025】
上述のロック装置24において、係合バー40および受入溝42は、上下方向に延びて配置されたが、前後方向に延びるように配置されてもよい。この場合、ロック本体32の回動中心は、係合バー40および受入溝42と平行に、つまり前後方向に延びるように配置される。また、ロック本体は、回転以外の移動、例えばスライド可能とすることができる。ロック本体が移動しても受入溝が係合バーを受け入れ可能であるためには、ロック本体が受入溝の延びる方向を維持したまま、車両用シートを跳ね上げるときの係合バーの移動方向に対して交差する方向に移動可能であればよい。
【符号の説明】
【0026】
10 車両用シート、12 シートバック、14 シートクッション、16 側壁、18 係合アーム、20 Dピラー、22 ロック機構、24 ロック装置、26 ブラケット、28 心棒、30 合わせカバー、32 ロック本体、34 ロック動作部、36 首振り用ばね、38 ロック用ばね、40 係合バー、42 受入溝、44 ロック爪、46 操作部。
図1
図2
図3
図4