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特許7136741地震発生予知方法および地震発生予知システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】地震発生予知方法および地震発生予知システム
(51)【国際特許分類】
   G01V 1/00 20060101AFI20220906BHJP
【FI】
G01V1/00 E
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019080945
(22)【出願日】2019-04-22
(65)【公開番号】P2020176972
(43)【公開日】2020-10-29
【審査請求日】2021-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】598014814
【氏名又は名称】株式会社コンポン研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 努
(72)【発明者】
【氏名】近藤 斎
(72)【発明者】
【氏名】榎本 祐嗣
【審査官】佐野 浩樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-214355(JP,A)
【文献】特開平01-094286(JP,A)
【文献】特開平10-082865(JP,A)
【文献】特開2001-091665(JP,A)
【文献】特開平05-232243(JP,A)
【文献】米国特許第04612506(US,A)
【文献】特開2008-145351(JP,A)
【文献】特開2010-091557(JP,A)
【文献】特開2006-046938(JP,A)
【文献】特開2011-053161(JP,A)
【文献】特開2004-028795(JP,A)
【文献】米国特許第05126654(US,A)
【文献】国際公開第90/009582(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 1/00 - 1/26 、 5/00 - 7/02 、
G01N17/00 -19/10 、
G01V 1/00 -99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地理的に分散して設置されている複数個の地下埋設構造物用電気防食設備を利用して地震の発生を予知する地震発生予知方法であって、各電気防食設備が、電気防食の対象となる地下埋設構造物と、地中において地下埋設構造物と間隔を隔てて配置された電極とを具備すると共に、地下埋設構造物と電極とを接続するリード線を通って地下埋設構造物と電極間の地中内を流れる防食電流の閉ループ電気回路を形成しており、各電気防食設備内に形成された該閉ループ電気回路を流れる電流量を検出し、検出された該電流量が増大したときに地震発生すると予知する地震発生予知方法。
【請求項2】
該電気防食設備が、外部電源方式の電気防食設備である請求項1に記載の地震発生予知方法。
【請求項3】
地理的に分散して設置されている複数個の地下埋設構造物用電気防食設備を利用して地震の発生を予知する地震発生予知システムであって、各電気防食設備が、電気防食の対象となる地下埋設構造物と、地中において地下埋設構造物と間隔を隔てて配置された電極とを具備すると共に、地下埋設構造物と電極とを接続するリード線を通って地下埋設構造物と電極間の地中内を流れる防食電流の閉ループ電気回路を形成しており、各電気防食設備内に形成された該閉ループ電気回路を流れる電流量を観測する観測器と、観測器により観測された該電流量の増大に関する情報および観測器の位置情報を収集して蓄積する情報蓄積装置と、蓄積された情報を統計処理して地震予知に係る情報を出力する情報処理装置と、出力された地震予知に係る情報を発信する地震情報発信装置を具備した地震発生予知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は地震発生予知方法および地震発生予知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
地中内の岩盤のいずれかの箇所で破壊が生じると破壊誘起電荷放射現象を生じ、地中に検知電極を配置すると共に、地表或いは地表近くの地中に第2の電極を配置しておくと、理由は必ずしも明確ではないが、実際に検知電極と第2の電極間に地電流が流れる。そこで、地表における人工ノイズが検知結果に影響を与えないように、検知電極を地中深くに配置した地電流検出装置が公知である(特許文献1を参照)。従って、この地電流検出装置を用いると、地震の予知が可能となる。ところが地震を予知するためには、この地電流検出装置を地理的に分散して多数配置しなければならない。しかしながら、この地電流検出装置は高価であり、実際問題として、この地電流検出装置を多数配置することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平5-232243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで本発明者等は、甚大な被害を招く内陸直下地震に着目し、地震発生時における地球内部の電磁気場の変化の解析から検討を開始した。その結果、実験結果も踏まえて、地中深くの岩石層の破壊により発生する内陸直下地震では、岩石の破壊が始まると地中深くの岩石層の地表側表面に負電荷の集合層が形成され、この負電荷の集合層の形成により地表近くには正電荷の集合層が形成されるとの結論に至ったのである。このように地表近くに正電荷の集合層が形成されると、この正電荷の集合層の電位が高くなり、電位の高い正電荷の集合層から、電位の低い正電荷の集合層周りに向けて地表近くの地中内を電流が流れる。その結果、電気伝導性の地下埋設物が存在すると、この電流によって電気伝導性の地下埋設物には、誘導起電力が発生することになる。
【0005】
ここで本発明者等が目を付けたのは、地下埋設構造物を電気防食するための電気防食設備である。この電気防食設備は、電気防食を行うための閉ループ電気回路を備えており、上述のように正電荷の集合層から、正電荷の集合層周りに向けて電流が流れると、電気防食を行うための閉ループ電気回路内に発生する誘導起電力によって、閉ループ電気回路を流れる電流が変化すると考えられたからである。しかも、既に、多数の電気防食設備が地理的に分散して設置されており、更に、各電気防食設備には岩石層破壊時の地球内部の電磁気場の変化を電流の変化の形で捉えることのできる閉ループ電気回路が既に形成されているので、地震発生の予知には、既存のこれら電気防食設備を利用することが最善であるとの結論に至ったのである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
従って、1番目の発明によれば、地理的に分散して設置されている複数個の地下埋設構造物用電気防食設備を利用して地震の発生を予知する地震発生予知方法であって、各電気防食設備が、電気防食の対象となる地下埋設構造物と、地中において地下埋設構造物と間隔を隔てて配置された電極とを具備すると共に、地下埋設構造物と電極とを接続するリード線を通って地下埋設構造物と電極間の地中内を流れる防食電流の閉ループ電気回路を形成しており、各電気防食設備内に形成された閉ループ電気回路を流れる電流量を検出し、検出された電流量が増大したときに地震発生すると予知する地震発生予知方法が提供される。
また、2番目の発明によれば、地理的に分散して設置されている複数個の地下埋設構造物用電気防食設備を利用して地震の発生を予知する地震発生予知システムであって、各電気防食設備が、電気防食の対象となる地下埋設構造物と、地中において地下埋設構造物と間隔を隔てて配置された電極とを具備すると共に、地下埋設構造物と電極とを接続するリード線を通って地下埋設構造物と電極間の地中内を流れる防食電流の閉ループ電気回路を形成しており、各電気防食設備内に形成された閉ループ電気回路を流れる電流量を観測する観測器と、観測器により観測された電流量の増大に関する情報および観測器の位置情報を収集して蓄積する情報蓄積装置と、蓄積された情報を統計処理して地震予知に係る情報を出力する情報処理装置と、出力された地震予知に係る情報を発信する地震情報発信装置を具備した地震発生予知システムが提供される。
【発明の効果】
【0007】
既存の電気防食設備を利用することができるので、低い費用負担でもって地震発生の予知が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、地球内部を図解的に表した図である。
図2図2Aおよび図2Bは、地球内部の電磁気場の変化を裏付けるための実験方法を図解的に表した図である。
図3図3は、電気防食設備の全体図である。
図4図4は、処理装置を説明するための図である。
図5図5は、別の電気防食設備の全体図である。
図6図6は、閉ループ電気回路内を流れる電流量の変化を示す図である。
図7図7は、閉ループ電気回路内を流れる電流量の変化を示す図である。
図8図8は、閉ループ電気回路内を流れる電流量の平均値を説明するための図である。
図9図9は、閉ループ電気回路内を流れる電流量の変化を示す図である。
図10図10は、閉ループ電気回路内を流れる電流量の変化を示す図である。
図11図11は、異常を検出するためのフローチャートである。
図12図12は、閉ループ電気回路内を流れる電流量の変化を示す図である。
図13図13は、近似直線の変化を示す図である。
図14図14は、異常を検出するためのフローチャートである。
図15図15は、異常を検出するためのフローチャートである。
図16図16は、近似直線の変化を示す図である。
図17図17は、異常を検出するためのフローチャートである。
図18図18は、異常を検出するためのフローチャートである。
図19図19は、地震発生予知システムの概略図である。
図20図20は、地震発生予知システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
最初に、図1図2Aおよび図2Bを参照しつつ、内陸直下地震の発生時における地球内部の電磁気場の変化について説明する。図1は、地球内部を図解的に表した図であり、図2Aおよび図2Bは、地球内部の電磁気場の変化を裏付けるための実験方法を図解的に示している。図1を参照すると、1は地表を示しており、2は、地表から数Km以上の深さに存在している岩石層を示している。プレートの移動によって岩石層2内に水平方向の圧縮力が作用すると岩石が破壊され、岩石層2内に細かな亀裂3が生ずる。このとき岩石の破壊面から負電荷が放出され、負電荷が岩石の破壊面上に蓄積する。即ち、準静的破壊過程が開始される。
【0010】
一方、亀裂3が生ずると、炭酸ガスを含む深層ガスが亀裂3内を上昇し、このとき岩石の破壊面上に蓄積している負電荷が深層ガスに帯電する。この負電荷の帯電している深層ガスは亀裂3内をゆっくりと上昇し、次いで、矢印で示されるように亀裂3から流出して岩石層2の地表側の表面4に滞留する。次いで、細かな亀裂3の数が徐々に増大すると、各亀裂3から流出する深層ガス量が増大し、その結果、図1に示されるように、地中深くの岩石層2の地表側表面4に負電荷の集合層5が形成される。このように岩石層2の地表側表面4に負電荷の集合層5が形成されると、この負電荷により地表1近くには正電荷が静電気的に誘導され、その結果、地表1近くには正電荷の集合層6が形成される。
【0011】
次に、図2Aおよび図2Bを参照しつつ、地球内部の電磁気場の変化を裏付けるために行われた実験について説明する。図2Aにおいて、10は支持台、11は支持台10上に載置された試験岩石、12は冶具、13はロードセルを夫々示している。冶具12内には炭酸ガス流通孔14が形成されており、この炭酸ガス流通孔14内には矢印15で示されるように炭酸ガスが供給されている。プレス装置によりロードセル13を介して冶具12を試験岩石11上に圧接すると、試験岩石11には、図2Aに示されるように亀裂16が発生し、このとき亀裂16内を通って矢印17で示されるように炭酸ガスが流出する。この亀裂16から流出した炭酸ガスを検出した結果、この炭酸ガスには負電荷が帯電していることが確認されている。
【0012】
一方、図2Bでは、図2Aに示される支持台10に代えて、容器18が用いられている。容器18の下方には、外周面に樹脂コーティングが施されているステンレス鋼製パイプ19が挿入されており、容器18内には、小石と土が充填されている。この図2Bに示される場合でも、図2Aに示される場合と同様に、プレス装置によりロードセル13を介して冶具12を試験岩石11上に圧接し、試験岩石11に亀裂16が発生すると、亀裂16からは炭酸ガスが流出する。このときパイプ19への帯電電荷を検出した結果、パイプ19には正電荷が帯電していることが確認されている。
【0013】
これらの実験から、地中深くの岩石層2内に細かな亀裂3が生ずると、図1に示されるように、岩石層2の地表側表面4に負電荷の集合層5が形成され、この負電荷により地表1近くには正電荷が静電気的に誘導され、その結果、地表1近くに正電荷の集合層6が形成されることが裏付けられたと考えられる。このように地中深くの岩石層2内に細かな亀裂3が生ずると、地表1近くに正電荷の集合層6が形成される。その結果、この正電荷の集合層6の電位が、正電荷の集合層6周りの電位よりも高くなり、正電荷の集合層6と、正電荷の集合層6周りとの間で電位差を生じる。従って、地震発生の兆候が生じると、電位の高い正電荷の集合層6から、電位の低い正電荷の集合層6周りに向けて地表近くの地中内を電流が流れることになる。
【0014】
さて、地中には、ガス管、水道管、石油パイプライン等のインフラ用の多数のパイプが埋設されており、これらの数多くのパイプは、導電性の金属パイプ、例えば、ステンレス鋼製パイプから形成されている。このような金属パイプが地中内に埋設されると、金属パイプの外壁面は、金属パイプの外壁面上における局所的な電池の形成により次第に腐食する。金属パイプの外壁面が腐食すると金属パイプは急速に劣化するので、地中内に埋設された金属パイプでは、金属パイプの外壁面の腐食が大きな問題となる。従って、これら金属パイプの外周面には通常、腐食防止用の、即ち、防食用の合成樹脂がコーティングされているが、それでも腐食するのを阻止するのは難しい。そこで従来より、金属パイプの腐食を防止するために、電気防食設備が用いられている。
【0015】
図3は、この電気防食設備の一例を図解的に示している。図3において、この電気防食設備全体が符号30で示されている。なお、図3において、31は、地中32内に埋設されたガス管、水道管、石油パイプライン等のインフラ用の金属パイプを示しており、この金属パイプ31の外周面には、防食用の合成樹脂がコーティングされている。電気防食設備30は、地中32内において金属パイプ31から間隔を隔てて配置された、例えば鋳鉄からなる電極33と、例えば地表35上に設置された外部電源装置34とを具備する。この外部電源装置34は電源36を具備しており、電源36のマイナス側端子がリード線37を介して金属パイプ31に接続され。電源36のプラス側端子がリード線38を介して電極33に接続される。
【0016】
電源36により金属パイプ31と電極33間に電圧が印加されると、電極33から金属パイプ31に向けて微小の防食電流Yが流れる。このように電極33から金属パイプ31に向けて防食電流Yが流れることによって、金属パイプ31の外壁面が腐食するのが阻止される。従って、図3からわかるように、電気防食設備30には、電源36からリード線38、電極33、金属パイプ31およびリード線37を通って再び電源36に戻る閉ループ電気回路Wが形成されている。なお、このように外部電源36を用いた電気防食方式は、外部電源方式と称される。
【0017】
さて、前述したように、地震発生の兆候が生じると、地表近くに正電荷の集合層6が形成され、電位の高い正電荷の集合層6から、電位の低い正電荷の集合層6周りに向けて地中内を電流が流れる。このとき、図3に示されるような閉ループ電気回路Wが形成されていると、地中内を流れる電流によって、閉ループ電気回路W内には、誘導起電力が発生し、その結果、閉ループ電気回路W内を流れる電流が増大する。なお、このとき増大する電流が、閉ループ電気回路W内を、図3において右回りに流れるのか、左回りに流れるのかは、電位の高い正電荷の集合層6が形成されたときに、電極33と、金属パイプ31のどちらの電位が高くなるかによって決まり、従って、このとき電流の流れる向きは電気防食設備30毎に異なる。
【0018】
このように地震発生の兆候が生じると、閉ループ電気回路W内を流れる電流量が変化する。従って、閉ループ電気回路W内を流れる電流量の変化を検出すれば、検出された電流量の変化に基づいて、地震の発生を予知できることになる。なお、電気防食設備30による電気防食の対象となる地下埋設構造物は、金属パイプに限られず、橋脚のような種々の鋼材が存在する。従って、このような地下埋設構造物に対する電気防食設備についても利用することができる。そこで、本発明では、地理的に分散して設置されている複数個の地下埋設構造物用電気防食設備を利用し、各電気防食設備において電気防食を行うための閉ループ電気回路を流れる電流量の変化を検出し、検出された電流量の変化に基づいて、地震の発生を予知するようにしている。
【0019】
ところで、閉ループ電気回路W内を流れる電流量の変化を検出するためには、閉ループ電気回路W内を流れる電流量を検出するための検出器39、例えば、電流計を、図3において破線で示されるように、閉ループ電気回路W内に配置すれば足りる。このように、本発明では、電流計39を既存の電気防食設備30に設置するだけで、地震発生の予知が可能となるので、低い費用負担でもって地震発生の予知が可能となることになる。なお、この場合、図3に示される実施例では、電流計39に加え、電流計39により検出された検出値を処理するための処理装置40が、破線で示されるように、電気防食設備30に追加設置されている。この場合でも、検出器39および処理装置40を、既存の電気防食設備30に設置するだけで、地震発生の予知が可能となるので、同様に、低い費用負担でもって地震発生の予知が可能となることになる。
【0020】
なお、閉ループ電気回路W内を流れる電流量の変化は、種々の形で検出することができる。例えば、閉ループ電気回路W内を流れる電流量の変化を電圧の変化の形で検出することができる。このように閉ループ電気回路W内を流れる電流量の変化は、閉ループ電気回路W内を流れる電流量の変化を表す種々の検出値の形で検出され、従って、本発明において、閉ループ電気回路W内を流れる電流量の変化の検出値は、閉ループ電気回路W内を流れる電流量の変化を表す種々の検出値を全て含んでいる。
【0021】
次に、図3に示される処理装置40について簡単に説明する。図4には、この処理装置40と電流計39とが示されている。図4を参照すると、処理装置40は、電子制御ユニット41と通信装置42を含んでおり、この電子制御ユニット41は、双方向性バス42によって互いに接続されたマイクロプロセッサ(CPU)43と、記憶装置、即ち、メモリ44と、入出力ポート45とを具備する。図4に示されるように、入出力ポート45は通信装置42に接続されており、また、入出力ポート45には電流計39がAD変換機47を介して接続されている。
【0022】
次に、図5を参照しつつ、電気防食設備30の別の例について説明する。なお、図5において、図3と同様な構成要素は同一の符号で示し、説明を省略する。図5を参照すると、電気防食設備30は、地中32内において金属パイプ31から間隔を隔てて配置された陽極50を具備しており、陽極50はリード線51を介して金属パイプ31に接続される。この陽極50は、鉄よりもイオン化傾向の高い金属、例えばアルミニュウムから形成されている。なお、陽極50の周囲は、バックフィルと称される充填剤、例えば、石膏、ベントナイト、硫酸ナトリウムの混合物により包囲されている。
【0023】
図5に示される電気防食設備30では、金属パイプ31と陽極50間に生ずる電位差によって、陽極50から金属パイプ31に向けて微小の防食電流Yが流れる。このように陽極50を構成している電極から金属パイプ31に向けて防食電流Yが流れることによって、金属パイプ31の外壁面が腐食するのが阻止される。この電気防食設備30においても、図5に示されるように、電気防食設備30には、金属パイプ31からリード線51および陽極50を通って再び金属パイプ31に戻る閉ループ電気回路Wが形成されている。なお、このように金属パイプ31と陽極50間に生ずる電位差を利用した電気防食方式は、流電陽極方式と称される。
【0024】
さて、図5に示される電気防食設備30でも、図1において電位の高い正電荷の集合層6から、電位の低い正電荷の集合層6周りに向けて地中内を電流が流れると、閉ループ電気回路W内には、誘導起電力が発生し、その結果、閉ループ電気回路W内を流れる電流が増大する。従って、図5に示される電気防食設備30でも、閉ループ電気回路W内を流れる電流量の変化に基づいて、地震の発生を予知することができる。なお、図5に示される電気防食設備30においても、増大する電流が、閉ループ電気回路W内を、図5において右回りに流れるのか、左回りに流れるのかは、電位の高い正電荷の集合層6が形成されたときに、金属パイプ31と、陽極50のどちらの電位が高くなるかによって決まり、従って、このとき電流の流れる向きは電気防食設備30毎に異なる。
【0025】
一方、図5に示される電気防食設備30でも、閉ループ電気回路W内を流れる電流量の変化を検出するためには、閉ループ電気回路W内を流れる電流量を検出するための検出器39、例えば、電流計を、図5において破線で示されるように、閉ループ電気回路W内に配置すれば足りる。なお、この場合、図5に示される実施例では、検出器39および検出器39により検出された検出値を処理するための処理装置40を有する検知装置52が、破線で示されるように、電気防食設備30に追加設置される。なお、地震が発生すると閉ループ電気回路W内には誘導起電力により高電圧が発生する。従って、電気防食設備30としては、流電陽極方式に比べ高い電圧に対しても対応して作動し続ける外部電源方式の電気防食設備を利用することが好ましい。
【0026】
次に、図6から図9を参照しつつ、岩石層2内に細かな亀裂3が生じ始めた後の、即ち、準静的破壊が開始された後の、閉ループ電気回路Wを流れる電流量の変化について説明する。なお、図6から図9は、防食電流Yが継続的に流れている場合を示している。まず初めに、図6を参照すると、縦軸Iは、閉ループ電気回路Wを流れる電流量を示しており、横軸は時間を示している。また、図6には、準静的破壊が開始されたときと、岩石層2の本破壊が生じたときとが示されている。一方、地中内には平常時でも、微小な自然電流が流れており、図6の縦軸IにおけるIは、この平常時における自然電流値を示している。なお図6は、一例として、本破壊が生じたときに、検出計30により検出された閉ループ電気回路Wを流れる電流量Iが増大する場合を示している。
【0027】
さて、図6を参照すると、岩石層2内に細かな亀裂3が生じ始める前、即ち、準静的破壊が開始される前は、閉ループ電気回路Wを流れる電流量Iは、微小な値となっている。次いで、岩石層2内に細かな亀裂3が生じ始めると、即ち、準静的破壊が開始されると、閉ループ電気回路Wを流れる電流量Iは、最初は微小な値で変動し続け、図6の時刻tX付近で上昇を開始する、その後、閉ループ電気回路Wを流れる電流量Iは急激に上昇してピークに達し、本破壊に至る。このとき地震が発生する。従って、図6において、閉ループ電気回路Wを流れる電流量Iが上昇を開始する時刻tXを検出できれば、地震の発生を予知できることになる。そこで、本発明による実施例では、閉ループ電気回路Wを流れる電流量Iが上昇を開始する時刻tXを検出するようにしている。
【0028】
図7および図8は、本発明による実施例において用いられている電流量Iの上昇開始時刻tXの求め方を示している。初めに、図7を参照すると、図7の曲線Fは、図6の区間Sにおける電流量Iの変化を、時間軸を引き延ばして表したものであり、図7におけるQ1,Q2およびQ3,Q4は、連続する予め設定された一定時間Δtn-1、Δt内における電流量Iの変化を一次関数により近似したときの近似関数、即ち、近似直線を示している。一方、図8は、図7において近似直線Q1およびQ2に関係する部分の詳細図を示している。なお、図8には、電流量Iの実際の変化Gと、一定時間Δts内における電流量Iの平均値Imが示されている。具体的な一例を挙げると、この一定時間Δtsは10秒とされており、この具体的な例では、10秒間における電流量Iの平均値Imが求められている。更に、この具体的な例では、この電流量Iの平均値Imが10秒毎に算出され、一定時間Δtn-1およびΔtは2分とされている。従って、この具体的な例では、一定時間Δtn-1、Δt内に、夫々6個の電流量Iの平均値Imが取得され、各近似直線Q1,Q2、Q3,Q4は、対応する一定時間Δtn-1、Δt内において取得された6個の電流量Iの平均値Imから最小2乗法を用いて求められる。
【0029】
さて、一定時間Δtn-1内における近似直線(図7ではQ1,Q3)の傾きをKn-1とし、一定時間Δt内における近似直線(図7ではQ2,Q4)の傾きをKとすると、地震の発生により電流量Iが増大する以前は電流量Iが微小に変動しているだけであり、従って、図7に示されるように、近似直線Q1の傾きKn-1はほぼ零となり、近似直線Q2の傾きKもほぼ零となる。従って、近似直線Q2の傾きKと近似直線Q1の傾きKn-1との差ΔK(=KーKn-1)もほぼ零となる。
【0030】
一方、正電荷の集合層6の形成により電流量Iが増大し始める前は、図7の近似直線Q3からわかるように、近似直線Q3の傾きKn-1はほぼ零となっている。これに対し、正電荷の集合層6の形成により電流量Iが増大し始めると、図7の近似直線Q4からわかるように、近似直線Q4の傾きKが大きくなる。従って、このときには、近似直線Q4の傾きKと近似直線Q3の傾きKn-1との差ΔK(=KーKn-1)が大きくなる。この場合、図7において、近似直線Q4を求めるために費やされた一定時間Δtの開始時刻tXsが、電流量Iの上昇開始時刻tXに一致したときに、近似直線Q4の傾きKと近似直線Q3の傾きKn-1との差ΔK(=KーKn-1)が最も大きくなり、このとき差ΔK(=KーKn-1)は、過去の実測データから定まる閾値αを越える。従って、本発明による実施例では、差ΔK(=KーKn-1)が閾値αを越えたときに、近似直線Q4を求めるために費やされた一定時間Δtの開始時刻tXsが、電流量Iの上昇開始時刻tXとされる。
【0031】
次に、図9を参照しつつ、本発明による実施例において用いられている電流量Iの上昇開始時刻tXの算出方法について簡単に説明する。なお、図9に示される曲線Fは、図7に示される曲線Fと同一である。前述したように、本発明による実施例では、例えば、閉ループ電気回路Wを流れる電流量Iの平均値Imは10秒毎に取得され、電流量Iの平均値Imが取得されたときに、電流量Iの平均値Imの取得時から一定時間Δt+一定時間Δtn-1前までの間における電流量Iの平均値Imに基づき、差ΔK(=KーKn-1)が算出される。
【0032】
即ち、図9において、時刻tに、電流量Iの平均値Imが取得されたときには、電流量Iの平均値Imの取得時から一定時間Δt+一定時間Δtn-1前までの間における電流量Iの平均値Imに基づき、近似直線Qの傾きおよびQの傾きが求められ、これら傾きから差ΔK(=KーKn-1)がされる。次いで、時刻tにおいて、電流量Iの平均値Imが取得されたときには、電流量Iの平均値Imの取得時から一定時間Δt+一定時間Δtn-1前までの間における電流量Iの平均値Imに基づき、一次直線Qの傾きおよびQの傾きが求められ、これらの傾きから差ΔK(=KーKn-1)が算出される。以下、時刻tにおいて、電流量Iの平均値Imが取得されたときも、時刻tおいて、電流量Iの平均値Imが取得されたときも、時刻tにおいて、電流量Iの平均値Imが取得されたときも、時刻t において、電流量Iの平均値Imが取得されたときも、時刻t において、電流量Iの平均値Imが取得されたときも同様である。
【0033】
各時刻t、t、t、t、t 、t において電流量Iの平均値Imが取得され、差ΔK(=KーKn-1)が算出されると、差ΔK(=KーKn-1)が閾値αを越えたか否かが判別され、例えば、時刻t において差ΔK(=KーKn-1)が閾値αを越えたと判別されたときには、時刻tが電流量Iの上昇開始時刻tXとされる。閉ループ電気回路Wを流れる電流量Iの平均値Imが上昇を開始すると、その後、或る時間を経過したときに、例えば、30分から40分経過した後に、岩石層2における本破壊が生じ、地震が発生する。従って、電流量Iの平均値Imの上昇開始時刻tXがわかると、地震の発生を予知することが可能となる。
【0034】
ところで、電流量Iの平均値Imが上昇を開始した後、地震が発生する場合には、その後、本破壊に至るまで、電流量Iの平均値Imが上昇し続ける。しかしながら、電流量Iの平均値Imの上昇が地震前兆由来によらない場合には、電流量Iの平均値Imが上昇を開始した後、本破壊に至らない場合、即ち、地震が発生しない場合もある。従って、電流量Iの平均値Imが上昇を開始したからといって、地震が発生すると予告すると、誤報を生じることになる。ところで、電流量Iの平均値Imが上昇を開始した後、地震が発生しない場合には、その後、短時間のうちに、電流量Iの平均値Imが減少する。従って、電流量Iの平均値Imが上昇を開始した後の電流量Iの平均値Imの挙動から、地震が発生するか否かを判別することができる。
【0035】
そこで本発明による第1の実施例では、電流量Iの平均値Imが上昇を開始したと判別されたときには、電流量Iの平均値Imが上昇を開始したと判別されたときから順次取得される電流量Iの平均値Imの増大分を積算し、この電流量Iの平均値Imの増大分の積算値ΣIを求めるようにしている。なお、この場合、電流量Iの平均値Imの上昇開始時t直後から順次取得された電流量Iの平均値Imの増大分を積算することもできる。さて、電流量Iが上昇を開始した後、地震が発生する場合には、図9において実線Zで示されるように、電流量Iの平均値Imの増大分の積算値ΣIは上昇し続け、電流量Iの平均値Imが上昇を開始した後、地震が発生しない場合には、電流量Iの平均値Imの増大分はマイナスとなるので、図9において破線で示されるように、電流量Iの平均値Imの増大分の積算値ΣIは一旦上昇した後、減少する。従って、本発明による実施例では、電流量Iの平均値Imが上昇を開始した後、一定時間後における電流量Iの平均値Imの増大分の積算値ΣIが、図9に示される予め設定された基準値dI以下になったか否かによって、地震が発生するか否かが判別される。
【0036】
一方、図10は、図6に示される例とは異なって、本破壊が生じたときに、検出計30により検出された閉ループ電気回路Wを流れる電流量Iが減少する場合を示している。なお、この図10図7と同様な図を表しており、従って、図10において用いられている種々の記号についての説明は不要と考えられるので、これら記号についての説明は省略する。図10に示される場合でも、岩石層2内に細かな亀裂3が生じ始めると、即ち、準静的破壊が開始されると、閉ループ電気回路Wを流れる電流量Iは、最初は微小な値で変動し続ける。次いで、図10の時刻tXs付近で下降を開始し、その後、閉ループ電気回路Wを流れる電流量Iは急激に減少して本破壊に至る。従って、この場合には、閉ループ電気回路Wを流れる電流量Iが下降を開始する時刻tXsを検出できれば、地震の発生を予知できることになる。
【0037】
さて、図10に示される場合でも、地震の発生により電流量Iが低下し始める前は、図10の近似直線Q3からわかるように、近似直線Q3の傾きKn-1はほぼ零となっている。これに対し、地震の発生により電流量Iが減少し始めると、図10の近似直線Q4からわかるように、近似直線Q4の傾きKが大きくなる。従って、このときには、近似直線Q4の傾きKと近似直線Q3の傾きKn-1との差ΔK(=KーKn-1)がマイナスとなり、差ΔKの絶対値が大きくなる。この場合、図10において、近似直線Q4を求めるために費やされた一定時間Δtの開始時刻tXsが、電流量Iの下降開始時刻tXsに一致したときに、近似直線Q4の傾きKと近似直線Q3の傾きKn-1との差ΔK(=KーKn-1)の絶対値が最も大きくなり、このとき差ΔK(=KーKn-1)の絶対値は、過去の実測データから定まる閾値αを越える。従って、図7および図10に示される場合を考慮して、本発明による第1実施例では、差ΔK(=KーKn-1)の絶対値が閾値αを越えたときに、近似直線Q4を求めるために費やされた一定時間Δtの開始時刻tXsが、電流量Iの上昇開始時刻tX或いは電流量Iの下降開始時刻tXとされる。
【0038】
さて、図10に示される場合でも、電流量Iの平均値Imが下降を開始したと判別されたときには、電流量Iの平均値Imが下降を開始したと判別されたときから順次取得される電流量Iの平均値Imの減少分を積算し、この電流量Iの平均値Imの減少分の積算値ΣIを求めるようにしている。この場合には、電流量Iが下降を開始した後、地震が発生する場合には、電流量Iの平均値Imの減少分の積算値ΣIは減少し続け、電流量Iの平均値Imが下降を開始した後、地震が発生しない場合には、電流量Iの平均値Imは増大方向に変化するので、電流量Iの平均値Imの減少分の積算値ΣIは一旦減少した後、増大する。従って、本発明による実施例では、電流量Iの平均値Imが減少を開始した後、一定時間後における電流量Iの平均値Imの減少分の積算値ΣIが、図9に示される予め設定された基準値―dI以上になったか否かによって、地震が発生するか否かが判別される。
【0039】
図11は、地震発生の兆候となる異常の発生を検出するために、図4の処理装置40において実行される異常検出ルーチンを示している。この異常検出ルーチンは、一定時間毎の、例えば、4msec毎の割り込みによって実行される。
図11を参照すると、初めに、ステップ60において、電流計39により検出されている閉ループ電気回路Wを流れる電流量Iが読み込まれ、読み込まれた電流量Iがメモリ45内に記憶される。次いで、ステップ61では、一定時間Δtsが経過したか否か、例えば10秒が経過したか否かが判別される。10秒が経過していないときには、処理サイクルを完了する。これに対し、10秒が経過したと判別されたときには、ステップ62に進んで、電流量Iの平均値Imが算出され、算出された電流量Iの平均値Imがメモリ45内に記憶される。次いで、ステップ63に進む。
【0040】
ステップ63では、メモリ45内に記憶されている電流量Iの平均値Imの中から、図8を参照しつつ説明した一定時間Δtn-1内における電流量Iの平均値Imが読み込まれる。次いで、ステップ64では、一定時間Δtn-1内における電流量Iの平均値Imの変化を近似する近似直線が最小2乗法を用いて求められ、この近似直線の傾きKn-1が算出される。次いで、ステップ65では、メモリ45内に記憶されている電流量Iの平均値Imの中から、図8を参照しつつ説明した一定時間Δt内における電流量Iの平均値Imが読み込まれる。次いで、ステップ66では、一定時間Δt内における電流量Iの平均値Imの変化を近似する近似直線が最小2乗法を用いて求められ、この近似直線の傾きKが算出される。
【0041】
次いで、ステップ67では、地震発生の兆候となる異常が発生していることを示す異常フラグがセットされているか否かが判別される。異常フラグがセットされていないと判別されたときにはステップ68に進む。ステップ68では、算出された傾きKと傾きKn-1との差ΔK(=KーKn-1)の絶対値が閾値αを越えたか否かが判別される。差ΔK(=KーKn-1)の絶対値が閾値αを越えていないと判別されたときには処理サイクルを終了する。これに対し、差ΔK(=KーKn-1)の絶対値が閾値αを越えたと判別されたときには、ステップ69に進んで、異常フラグがセットされる。次いで、ステップ70に進んで、電流量Iの平均値Imの増大分又は減少分C・K(Cは定数)の初期値がΣIとされる。次いで、処理サイクルを終了する。異常フラグがセットされると次の処理サイクルでは、ステップ67からステップ71に進んで、経過時間tSに一定時間Δtsが加算される。なお、この経過時間tSの初期値は零とされており、従って、この経過時間tSは、差ΔK(=KーKn-1)の絶対値が閾値αを越えたと判別されたときからの経過時間を表している。
【0042】
次いで、ステップ72では、電流量Iの平均値Imの増大分又は減少分の積算値ΣIに、電流量Iの平均値Imの増大分又は減少分C・K(Cは定数)が加算される。次いで、ステップ73では、経過時間tSが予め定められた一定時間tSO、例えば、3分を経過したか否かが判別される。経過時間tSが予め定められた一定時間tSOを経過していないときには、処理サイクルを終了する。これに対し、経過時間tSが予め定められた一定時間tSOを経過したときには、ステップ74に進んで、電流量Iの平均値Imの増大分の積算値ΣIが予め設定された基準値dIよりも小さくなったか否か、或いは、電流量Iの平均値Imの減少分の積算値ΣIが予め設定された基準値―dIよりも大きくなったか否か、即ち、電流量Iの平均値Imの増大分又は減少分の積算値ΣIが予め設定された基準値dIと設定された基準値―dIとの間になったか否かが判別される。電流量Iの平均値Imの増大分又は減少分の積算値ΣIが予め設定された基準値dIと設定された基準値―dIとの間になったときには、地震は発生しないと判別され、ステップ75に進んで、異常フラグがリセットされる。次いで、処理サイクルを終了する。異常フラグがリセットされると、地震発生の兆候となる異常の発生の検出が続行される。
【0043】
これに対し、ステップ74において、電流量Iの平均値Imの増大分又は減少分の積算値ΣIが予め設定された基準値dIと設定された基準値―dIとの間にならなかったと判別されたときには、ステップ76に進んで、地震に関する種々の情報を送信すべき指令が通信装置42に出される。即ち、ステップ76では、地震が発生することを示す地震発生信号を送信すべき指令が通信装置42に出され、次いで、ステップ77では、電気防食設備30の固有の識別信号、例えば、電気防食設備30の設置位置の緯度および経度に関する情報、および、現在の時刻と地震発生までの予測時間等、時間に関する情報を送信すべき指令が通信装置42に出される。次いで、ステップ78では、メモリ45内に記憶されている直近の電流量Iの平均値Imの変化履歴に関する情報を送信すべき指令が通信装置42に出される。次いで、ステップ79では、短い時間間隔で現在の電流量Iの平均値Imをリアルタイムで送信すべき送信指令が通信装置42に出される。
【0044】
図12は、電流量Iの平均値Imの上昇開始時刻tXおよび電流量Iの下降開始時刻tXを求めるための図7および図10に示される実施例の変形例を示している。図12に示される変形例では、Kn-1およびKの値として、一定時間Δtn-1内の電流量Iの平均値Imに対する近似直線の傾き、および一定時間Δt内の電流量Iの平均値Imに対する近似直線の傾きに代えて、一定時間Δtn-1内における電流量Iの平均値、および一定時間Δt内における電流量Iの平均値が用いられている。この変形例についても、図11に示される異常検出ルーチンを用いて、地震発生の兆候となる異常の発生を検出することができる。
【0045】
次に、図13および図14を参照しつつ、地震の発生を誤判断しないようにした本発明の第2実施例について説明する。最初に図13について説明すると、図13に示される曲線Fは、図9に示される曲線Fと同一である。また、図13におけるQ1,Q2・・・Q19,Q20は、連続する予め設定された一定時間Δtn-1、Δt内における電流量Iの平均値Imの変化を近似したときの近似直線を示している。また、図13において、tXは電流量Iの平均値Imの上昇開始時刻を示している。この第2実施例でも、第1実施例と同様に、閉ループ電気回路Wを流れる電流量Iの平均値Imが10秒毎に算出され、電流量Iの平均値Imが取得されたときに、電流量Iの平均値Imの取得時から一定時間Δt+一定時間Δtn-1前までの間における電流量Iの平均値Imに基づき、差ΔK(=KーKn-1)が算出される。
【0046】
電流量Iの平均値Imが上昇を開始した後、本破壊に至るときの近似直線Q1,Q2・・・Q19,Q20の変化が、図13に実線で示されている。図13において実線で示される近似直線Q1,Q2・・・Q19,Q20の変化からわかるように、電流量Iの平均値Imが上昇を開始したときには、差ΔK(=KーKn-1)の値は、閾値α以上となり、電流量Iの平均値Imの上昇開始後は、時間Δt内における傾きKと時間Δt+内における傾きKn-1との差が小さくなる。従って、電流量Iの平均値Imが上昇を開始した後、本破壊に至るときには、差ΔK(=KーKn-1)の値は、一時的に閾値α以上になった後、小さな値に維持される。
【0047】
一方、電流量Iの平均値Imの上昇を開始した後、本破壊に至らないときの近似直線Q1,Q2・・・Q19,Q20の変化が、図13に破線で示されている。この場合には、電流量Iの平均値Imは、初めは上昇するが、上昇を開始して暫くすると、低下し始める。従って、図13において破線で示される近似直線Q1,Q2・・・Q19,Q20の変化からわかるように、電流量Iの平均値Imが上昇を開始した後、本破壊に至らないときには、電流量Iの平均値Imの上昇開始時刻tX以降、差ΔK(=KーKn-1)の値は、一旦、閾値α以上に維持された後、徐々に減少して、例えば、マイナスα以下となる。
【0048】
一方、電流量Iの平均値Imが下降を開始した後、本破壊に至らないときには、図13に示される場合と異なり、電流量Iの平均値Imの下降開始時刻tX以降、差ΔK(=KーKn-1)の値は、一旦、マイナスα以下に維持された後、徐々に増大して、例えば、閾値α以上となる。そこでこの第2実施例では、電流量Iの平均値Imが下降を開始した後、或る時間、例えば、3分以内に、差ΔK(=KーKn-1)の値が、閾値α以上となったときには、地震が発生しないと判別するようにしている。
【0049】
図14および図15は、この第2実施例を実行するために、図4の処理装置40において実行される異常検出ルーチンを示している。この異常検出ルーチンは、一定時間毎の、例えば、4msec毎の割り込みによって実行される。なお、図14および図15に示されるルーチンにおけるステップ80から87は、図11に示されるルーチンにおけるステップ60から67と同じである。
【0050】
即ち、図14を参照すると、初めに、ステップ80において、電流計39により検出されている閉ループ電気回路Wを流れる電流量Iが読み込まれ、読み込まれた電流量Iがメモリ45内に記憶される。次いで、ステップ81では、一定時間Δtsが経過したか否か、例えば10秒が経過したか否かが判別される。10秒が経過していないときには、処理サイクルを完了する。これに対し、10秒が経過したと判別されたときには、ステップ82に進んで、電流量Iの平均値Imが算出され、算出された電流量Iの平均値Imがメモリ45内に記憶される。次いで、ステップ83に進む。
【0051】
ステップ83では、メモリ45内に記憶されている電流量Iの平均値Imの中から、図8を参照しつつ説明した一定時間Δtn-1内における電流量Iの平均値Imが読み込まれる。次いで、ステップ84では、一定時間Δtn-1内における電流量Iの平均値Imの変化を近似する近似直線が最小2乗法を用いて求められ、この近似直線の傾きKn-1が算出される。次いで、ステップ85では、メモリ45内に記憶されている電流量Iの平均値Imの中から、図8を参照しつつ説明した一定時間Δt内における電流量Iの平均値Imが読み込まれる。次いで、ステップ86では、一定時間Δt内における電流量Iの平均値Imの変化を近似する近似直線が最小2乗法を用いて求められ、この近似直線の傾きKが算出される。
【0052】
次いで、ステップ87では、地震発生の兆候となる異常が発生していることを示す異常フラグがセットされているか否かが判別される。異常フラグがセットされていないと判別されたときにはステップ88に進む。ステップ88では、算出された傾きKと傾きKn-1との差ΔK(=KーKn-1)が閾値αを越えたか否かが判別される。差ΔK(=KーKn-1)が閾値αを越えていないと判別されたときにはステップ89に進んで、算出された傾きKと傾きKn-1との差ΔK(=KーKn-1)がマイナスαよりも小さいか否かが判別される。差ΔK(=KーKn-1)がマイナスαよりも小さくないときにはときには処理サイクルを終了する。
【0053】
一方、ステップ88において、差ΔK(=KーKn-1)が閾値αを越えたと判別されたときには、ステップ90に進んで、電流量Iが上昇していることを示す上昇フラグがセットされる。次いで、ステップ92に進んで、異常フラグがセットされ、次いで、処理サイクルを終了する。一方、ステップ89において、差ΔK(=KーKn-1)がマイナスαよりも小さいと判別されたときには、ステップ91に進んで、電流量Iが上昇していることを示す上昇フラグがリセットされる。次いで、ステップ92に進んで、異常フラグがセットされ、次いで、処理サイクルを終了する。異常フラグがセットされると次の処理サイクルでは、ステップ87からステップ93に進んで、経過時間tSに一定時間Δtsが加算される。なお、この経過時間tSの初期値は零とされており、従って、この経過時間tSは、差ΔK(=KーKn-1)が閾値αを越えたと判別されたとき、或いは、差ΔK(=KーKn-1)がマイナスαよりも小さいと判別されたときからの経過時間を表している。
【0054】
次いで、ステップ94では、経過時間tSが予め定められた一定時間tSO、例えば、3分を経過していないか否かが判別される。経過時間tSが予め定められた一定時間tSOを経過していないときには、ステップ95に進んで、電流量Iが上昇していることを示す上昇フラグがセットされているか否かが判別される。上昇フラグがセットされているときには、ステップ96に進んで、差ΔK(=KーKn-1)がマイナスαよりも小さくなったか否かが判別される。差ΔK(=KーKn-1)がマイナスαよりも小さくなったときには、地震は発生しないと判別され、ステップ98に進んで、異常フラグがリセットされる。次いで、処理サイクルを終了する。異常フラグがリセットされると、地震発生の兆候となる異常の発生の検出が続行される。
【0055】
これに対し、ステップ95において、上昇フラグがセットされていないと判別されたときには、ステップ97に進んで、差ΔK(=KーKn-1)が閾値αを越えたか否かが判別される。差ΔK(=KーKn-1)が閾値αを越えたときには、地震は発生しないと判別され、ステップ99に進んで、異常フラグがリセットされる。次いで、処理サイクルを終了する。異常フラグがリセットされると、地震発生の兆候となる異常の発生の検出が続行される。一方、ステップ94において、経過時間tSが予め定められた一定時間tSOを経過したと判別されたときには、ステップ100に進んで、地震に関する種々の情報を送信すべき指令が通信装置42に出される。
【0056】
即ち、ステップ100では、地震が発生することを示す地震発生信号を送信すべき指令が通信装置42に出され、次いで、ステップ101では、電気防食設備30の固有の識別信号、例えば、電気防食設備30の設置位置の緯度および経度に関する情報、および、現在の時刻と地震発生までの予測時間等、時間に関する情報を送信すべき指令が通信装置42に出される。次いで、ステップ102では、メモリ45内に記憶されている直近の電流量Iの平均値Imの変化履歴に関する情報を送信すべき指令が通信装置42に出される。次いで、ステップ103では、短い時間間隔で現在の電流量Iの平均値Imをリアルタイムで送信すべき送信指令が通信装置42に出される。
【0057】
次に、図16から図18を参照しつつ、地震の発生を誤判断しないようにした本発明の第3実施例について説明する。最初に図16について説明すると、図16に示される曲線Fは、図9に示される曲線Fと同一である。また、図16におけるQ1,Q2・・・Q19,Q20は、連続する予め設定された一定時間Δtn-1、Δt内における電流量Iの平均値Imの変化を近似したときの近似直線を示している。また、図16において、tXは電流量Iの平均値Imの上昇開始時刻を示している。この第3実施例でも、第1実施例および第2実施例と同様に、閉ループ電気回路Wを流れる電流量Iの平均値Imは10秒毎に算出され、電流量Iの平均値Imが取得されたときに、電流量Iの平均値Imの取得時から一定時間Δt+一定時間Δtn-1前までの間における電流量Iの平均値Imに基づき、差ΔK(=KーKn-1)が算出される。
【0058】
また、図13と同様に図16には、電流量Iの平均値Imの絶対値が上昇を開始した後、本破壊に至るときの近似直線Q1,Q2・・・Q19,Q20の変化が、実線で示されている。このように、電流量Iの平均値Imが上昇を開始した後、本破壊に至るときには前述したように、差ΔK(=KーKn-1)の値は、一時的に閾値α以上になった後、小さな値に維持される。これに対し、電流量Iの平均値Imが上昇を開始した後、本破壊に至るときには、電流量Iの平均値Imの上昇開始時刻tX以降、時間Δt内における傾きKは一定以上の傾きに維持される。
【0059】
この第3実施例では、電流量Iの平均値Imの上昇開始時刻tX以降における時間Δt内の傾きKの変化を求めるために、電流量Iの平均値Imの上昇開始時刻tXにおける時間Δt内の傾きKn-1が基準値Kとされ、即ち、図16に示される例では、近似直線Q9の傾きKn-1が基準値Kとされ、電流量Iの平均値Imの上昇開始時刻tX以降の各時間Δt内における傾きKと基準値Kとの差ΔKK(=KーK)が算出される。電流量Iの平均値Imの上昇開始時刻tX以降、電流量Iの平均値Imが上昇し続けると、傾きKは一定以上の傾きに維持され、従って、差ΔKK(=KーK)の値は、一定値以上に維持される。図16には、この差ΔKK(=KーK)が示されている。
【0060】
電流量Iの平均値Imが上昇を開始した後、本破壊に至るときには、図16において実線で示されるように、電流量Iの平均値Imの上昇開始時刻tX以降、差ΔKK(=KーK)の値は、一定の値、例えば、閾値α付近に維持される。これに対し、電流量Iの平均値Imが上昇を開始した後、本破壊に至らないときには、電流量Iの平均値Imの上昇開始時刻tX以降、暫くすると差ΔKK(=KーK)の値は、閾値α以下に低下する。そこでこの第3実施例では、電流量Iの平均値Imが上昇を開始した後、差ΔKK(=KーK)の値が、或る時間、例えば、5分以上、継続して閾値α付近に維持されていれば、地震が発生すると判別し、電流量Iの平均値Imが上昇を開始した後、差ΔKK(=KーK)の値が、或る時間、例えば、5分以内に閾値α以下に低下すれば、地震が発生しないと判別するようにしている。
【0061】
一方、電流量Iの平均値Imが下降を開始した後、本破壊に至るときには、図16において破線で示されるように、電流量Iの平均値Imの下降開始時刻tX以降、差ΔKK(=KーK)の値は、一定の値、例えば、マイナスα付近に維持される。これに対し、電流量Iの平均値Imが下降を開始した後、本破壊に至らないときには、電流量Iの平均値Imの下降開始時刻tX以降、暫くすると差ΔKK(=KーK)の値は、マイナスα以上に上昇する。従って、この第3実施例では、電流量Iの平均値Imが下降を開始した後、差ΔKK(=KーK)の値が、或る時間、例えば、5分以上、継続してマイナスα付近に維持されていれば、地震が発生すると判別し、電流量Iの平均値Imが下降を開始した後、差ΔKK(=KーK)の値が、或る時間、例えば、5分以内にマイナスα以上に上昇すれば、地震が発生しないと判別するようにしている。
【0062】
図17および図18は、この第3実施例を実行するために、図4の処理装置40において実行される異常検出ルーチンを示している。この異常検出ルーチンは、一定時間毎の、例えば、4msec毎の割り込みによって実行される。なお、図17および図18に示されるルーチンにおけるステップ110から121は、図14に示されるルーチンにおけるステップ80から91と同じである。
【0063】
即ち、図17を参照すると、初めに、ステップ110において、電流計39により検出されている閉ループ電気回路Wを流れる電流量Iが読み込まれ、読み込まれた電流量Iがメモリ45内に記憶される。次いで、ステップ111では、一定時間Δtsが経過したか否か、例えば10秒が経過したか否かが判別される。10秒が経過していないときには、処理サイクルを完了する。これに対し、10秒が経過したと判別されたときには、ステップ112に進んで、電流量Iの平均値Imが算出され、算出された電流量Iの平均値Imがメモリ45内に記憶される。次いで、ステップ113に進む。
【0064】
ステップ113では、メモリ45内に記憶されている電流量Iの平均値Imの中から、図8を参照しつつ説明した一定時間Δtn-1内における電流量Iの平均値Imが読み込まれる。次いで、ステップ114では、一定時間Δtn-1内における電流量Iの平均値Imの変化を近似する近似直線が最小2乗法を用いて求められ、この近似直線の傾きKn-1が算出される。次いで、ステップ115では、メモリ45内に記憶されている電流量Iの平均値Imの中から、図8を参照しつつ説明した一定時間Δt内における電流量Iの平均値Imが読み込まれる。次いで、ステップ116では、一定時間Δt内における電流量Iの平均値Imの変化を近似する近似直線が最小2乗法を用いて求められ、この近似直線の傾きKが算出される。
【0065】
次いで、ステップ117では、地震発生の兆候となる異常が発生していることを示す異常フラグがセットされているか否かが判別される。異常フラグがセットされていないと判別されたときにはステップ118に進む。ステップ118では、算出された傾きKと傾きKn-1との差ΔK(=KーKn-1)が閾値αを越えたか否かが判別される。差ΔK(=KーKn-1)が閾値αを越えていないと判別されたときにはステップ119に進んで、算出された傾きKと傾きKn-1との差ΔK(=KーKn-1)がマイナスαよりも小さいか否かが判別される。差ΔK(=KーKn-1)がマイナスαよりも小さくないときにはときには処理サイクルを終了する。
【0066】
一方、ステップ118において、差ΔK(=KーKn-1)が閾値αを越えたと判別されたときには、ステップ120に進んで、電流量Iが上昇していることを示す上昇フラグがセットされる。次いで、ステップ122に進んで、ステップ114において算出された傾きKn-1が基準値Kとされる。次いで、ステップ123に進んで、異常フラグがセットされ、次いで、処理サイクルを終了する。一方、ステップ119において、差ΔK(=KーKn-1)がマイナスαよりも小さいと判別されたときには、ステップ121に進んで、電流量Iが上昇していることを示す上昇フラグがリセットされる。次いで、ステップ122に進んで、ステップ114において算出された傾きKn-1が基準値Kとされる。次いで、ステップ123に進んで、異常フラグがセットされ、次いで、処理サイクルを終了する。異常フラグがセットされると次の処理サイクルでは、ステップ117からステップ124に進んで、経過時間tSに一定時間Δtsが加算される。なお、この経過時間tSの初期値は零とされており、従って、この経過時間tSは、差ΔK(=KーKn-1)が閾値αを越えたと判別されたとき、或いは、差ΔK(=KーKn-1)がマイナスαよりも小さいと判別されたときからの経過時間を表している。
【0067】
次いで、ステップ12では、経過時間tSが予め定められた一定時間tSU、例えば、5分を経過したか否かが判別される。経過時間tSが予め定められた一定時間tSUを経過していないときには、ステップ126に進んで、電流量Iが上昇していることを示す上昇フラグがセットされているか否かが判別される。上昇フラグがセットされているときには、ステップ127に進んで、差ΔKK(=K ーK )が算出され、次いで、ステップ128に進んで、差ΔKK(=KーK)が、閾値αから小さな一定値sを減算した値α―sと、閾値αに小さな一定値sを加算した値α+sとの間にあるか否か、即ち、差ΔKK(=KーK)が閾値α付近の値であるか否かが判別される。差ΔKK(=KーK)が、α―sとα+sとの間にないときには、地震は発生しないと判別され、ステップ131に進んで、異常フラグがリセットされる。次いで、処理サイクルを終了する。異常フラグがリセットされると、地震発生の兆候となる異常の発生の検出が続行される。
【0068】
これに対し、ステップ126において、上昇フラグがセットされていないと判別されたときには、ステップ129に進んで、差ΔKK(=K ーK )が算出され、次いで、ステップ130に進んで、差ΔKK(=KーK)が、マイマスαから小さな一定値sを減算した値―α―sと、マイマスαに小さな一定値sを加算した値―α+sとの間にあるか否か、即ち、差ΔKK(=KーK)がマイマスα付近の値であるか否かが判別される。差ΔKK(=KーK)が、―α―sとーα+sとの間にないときには、地震は発生しないと判別され、ステップ132に進んで、異常フラグがリセットされる。次いで、処理サイクルを終了する。異常フラグがリセットされると、地震発生の兆候となる異常の発生の検出が続行される。一方、ステップ125において、経過時間tSが予め定められた一定時間tSUを経過したと判別されたときには、即ち、差ΔKK(=KーK)が、一定時間tSU以上、α―sとα+sとの間に維持されていたとき、或いは、差ΔKK(=KーK)が、一定時間tSU以上、―α―sとα+sとの間に維持されていたときには、ステップ133に進んで、地震に関する種々の情報を送信すべき指令が通信装置42に出される。
【0069】
即ち、ステップ133では、地震が発生することを示す地震発生信号を送信すべき指令が通信装置42に出され、次いで、ステップ134では、電気防食設備30の固有の識別信号、例えば、電気防食設備30の設置位置の緯度および経度に関する情報、および、現在の時刻と地震発生までの予測時間等、時間に関する情報を送信すべき指令が通信装置42に出される。次いで、ステップ135では、メモリ45内に記憶されている直近の電流量Iの平均値Imの変化履歴に関する情報を送信すべき指令が通信装置42に出される。次いで、ステップ136では、短い時間間隔で現在の電流量Iの平均値Imをリアルタイムで送信すべき送信指令が通信装置42に出される。
【0070】
さて、上述したように、地震発生の兆候となる異常の発生が検出されると、地震に関する種々の情報を送信すべき指令が、各電気防食設備30内に設置された処理装置40から通信装置42に出される。この場合、本発明による実施例では、各電気防食設備30内の通信装置42から送信される地震に関する種々の情報に基づいて、地震の発生が予知される。そこで、次に、この地震の発生を予知するための地震発生予知システムの概要について簡単に説明する。
【0071】
本発明による地震発生予知システムでは、地理的に分散して設置されている複数個の地下埋設構造物用電気防食設備30を利用して地震の発生が予知される。この場合、この地震発生予知システムは、図19に示されるように、各電気防食設備30において電気防食を行うための閉ループ電気回路Wを流れる電流量Iの変化を観測する観測器80と、観測器80により観測された電流量Iの変化に関する情報および観測器80の位置情報を収集して蓄積する情報蓄積装置81と、蓄積された情報を統計処理して地震予知に係る情報を出力する情報処理装置82と、出力された地震予知に係る情報を発信する地震情報発信装置83を具備している。地震情報発信装置83から発信された地震予知に係る情報は、携帯電話等の端末84でもって受信される。
【0072】
この場合、図19における観測器80は、図4に示される例では、電流計39および処理装置40に相当する。情報蓄積装置81では、地理的に分散して配置されている多数の観測器80により観測された電流量Iの変化に関する情報および地理的に分散して配置されている多数の観測器80の位置情報が収集され、情報蓄積装置81内に設けられているメモリ内に蓄積される。情報処理装置82では、情報蓄積装置81のメモリ内に蓄積された種々の情報に基づいて、地震の発生場所と、地震の規模と、地震の発生時刻等が予測され、これらの地震の予測発生場所と、地震の予測規模と、地震の予測発生時刻等が、地震情報発信装置83から携帯電話等の端末84に送信される。例えば、図17および図18に示される実施例を例にとると、互いに近接している複数の観測器80において、差ΔKK(=KーK)が、一定時間tSU以上、α―sとα+sとの間に維持されたと判別されたとき、或いは、差ΔKK(=KーK)が、一定時間tSU以上、―α―sとα+sとの間に維持されたと判別されたときには、これら複数の観測器80が設置されている領域において最も震度が高くなる地震が発生すると予測され、直ちに地震警報が発令される。
【0073】
一方、図20は、既存の携帯電話のネットワークを利用した地震発生予知システムの概略図を示している。なお、図20に示される観測器90は、図19に示される例と様に、電流計39および処理装置40に相当する。この地震発生予知システムでは、地理的に分散して配置されている多数の観測器90により観測された電流量Iの変化に関する情報および地理的に分散して配置されている多数の観測器90の位置情報が、基地局91に送信され、基地局91において受信されたこれらの情報が、携帯電話のネットワーク92を介してサーバ93に送り込まれる。
【0074】
図20に示されるように、サーバ93は、マイクロプロセッサ(CPU)94と、記憶装置、即ち、メモリ95とを具備しており、基地局91から携帯電話のネットワーク92を介してサーバ93に送り込まれた情報、即ち、多数の観測器90により観測された電流量Iの変化に関する情報および多数の観測器90の位置情報は、メモリ95内に記憶される。サーバ93内では、メモリ95内に記憶された種々の情報に基づいて、地震の発生場所と、地震の規模と、地震の発生時刻等が予測され、これらの地震の予測発生場所と、地震の予測規模と、地震の予測発生時刻等が、サーバ93から携帯電話のネットワーク92および基地局91を介して携帯電話等の端末96に送信される。
【符号の説明】
【0075】
30 電気防食設備
31 金属パイプ
33 電極
34 外部電源装置
39 電流計
40 処理装置
80、90 観測器
81 情報蓄積装置
82 情報処理装置
83 地震情報発信装置
W 閉ループ電気回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図10
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