(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/01 20060101AFI20220906BHJP
【FI】
B60C11/01 A
(21)【出願番号】P 2019108372
(22)【出願日】2019-06-11
【審査請求日】2021-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】佐橋 耕平
【審査官】岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-209048(JP,A)
【文献】国際公開第2013/18800(WO,A1)
【文献】特開2009-298184(JP,A)
【文献】特開2018-177185(JP,A)
【文献】特開2017-87677(JP,A)
【文献】特開2017-206115(JP,A)
【文献】国際公開第2010/140524(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00-19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド踏面部のタイヤ幅方向の端部に連なるバットレス部の外表面に、タイヤ周方向の全域にわたって、タイヤ径方向に圧縮変形可能な緩衝凹部が、タイヤ周方向に沿って複数配設され、
前記バットレス部の平面視において、前記緩衝凹部の開口周縁は、6つの辺部分を有する六角形状を呈するとともに、タイヤ周方向で互いに隣り合う前記緩衝凹部は、それぞれの前記6つの辺部分のうちの1つがタイヤ周方向に向き合わされて配設され
、
前記緩衝凹部は、タイヤ周方向の大きさが、タイヤ径方向の大きさより大きい横長に形成されている、タイヤ。
【請求項2】
前記6つの辺部分のうち、他の前記緩衝凹部にタイヤ周方向で向き合う対向辺部分の長さは、他の辺部分の長さより短い、請求項
1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記緩衝凹部の内面は、タイヤ幅方向を向く底面と、この底面の外周縁から立ち上がり前記緩衝凹部の開口周縁に連なる側面と、を備え、
前記バットレス部の平面視において、前記緩衝凹部の開口周縁と前記底面の外周縁とのタイヤ周方向の距離は、前記底面の中心と前記底面の外周縁とのタイヤ周方向の距離より大きい、請求項
1または2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記緩衝凹部の内面は、タイヤ幅方向を向く底面と、この底面の外周縁から立ち上がり前記緩衝凹部の開口周縁に連なる側面と、を備え、
前記バットレス部の平面視において、前記緩衝凹部の開口周縁と前記底面の外周縁とのタイヤ径方向の距離は、前記底面の中心と前記底面の外周縁とのタイヤ径方向の距離より大きい、請求項
1から3のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記バットレス部の平面視において、タイヤ周方向で互いに隣り合う前記緩衝凹部のタイヤ周方向の間隔は、前記緩衝凹部の中心と前記緩衝凹部の開口周縁との距離の最小値より小さい、請求項
1から4のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項6】
タイヤ周方向に沿って配設された複数の前記緩衝凹部からなる緩衝凹部列が、前記バットレス部の外表面に3つ以上形成されている、請求項
1から5のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記バットレス部の平面視において、前記緩衝凹部は、タイヤ周方向の中央部を通り、かつタイヤ径方向に延びる第1基準線、およびタイヤ径方向の中央部を通り、かつタイヤ周方向に延びる第2基準線の双方に対して対称形状を呈する、請求項
1から6のいずれか1項に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば下記特許文献1に示されるような、トレッド踏面部のタイヤ幅方向の端部に連なるバットレス部の外表面に、タイヤ周方向の全域にわたって、タイヤ径方向に圧縮変形可能な緩衝凹部が、タイヤ周方向に沿って複数配設され、緩衝凹部におけるタイヤ径方向の中央部に、タイヤ周方向に延びる谷線部と、谷線部からタイヤ周方向に延びる稜線部と、が形成されたタイヤが知られている。このタイヤでは、走行中に、路面からトレッド踏面部を介して振動が入力されたときに、緩衝凹部をタイヤ径方向に変形させることで、この入力振動を減衰することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来のタイヤでは、路面からの入力振動によって、バットレス部が谷線部および稜線部に沿って繰り返し折り曲げられ、バットレス部の外表面に、緩衝凹部におけるタイヤ径方向の中央部を通り、タイヤ周方向に延びる亀裂が生ずるおそれがあった。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、走行中に、路面からトレッド踏面部を介して入力された振動を減衰することが可能で、かつバットレス部の外表面に、タイヤ周方向に延びる亀裂が生ずるのを抑制することができるタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係るタイヤは、トレッド踏面部のタイヤ幅方向の端部に連なるバットレス部の外表面に、タイヤ周方向の全域にわたって、タイヤ径方向に圧縮変形可能な緩衝凹部が、タイヤ周方向に沿って複数配設され、前記バットレス部の平面視において、前記緩衝凹部の開口周縁は、6つの辺部分を有する六角形状を呈するとともに、タイヤ周方向で互いに隣り合う前記緩衝凹部は、それぞれの前記6つの辺部分のうちの1つがタイヤ周方向に向き合わされて配設されている。
【0007】
この発明では、バットレス部の外表面に、複数の緩衝凹部が形成されているので、走行中に、路面からトレッド踏面部を介して振動が入力されたときに、緩衝凹部をタイヤ径方向に変形させることで、この入力振動を減衰することができる。
特に、バットレス部の平面視において、緩衝凹部の開口周縁が、6つの辺部分を有する六角形状を呈するとともに、タイヤ周方向で互いに隣り合う緩衝凹部が、それぞれの前記6つの辺部分のうちの1つがタイヤ周方向に向き合わされて配設されている。これにより、前記平面視において、前記6つの辺部分、およびこれらの辺部分がなす六角形状の対角線が、タイヤ周方向に沿って延びる線と一致することがなくなることから、緩衝凹部に、タイヤ周方向に延びる線と一致した線部分、つまり路面からの入力振動により繰り返し折り曲げられる折れ線部分を生じにくくすることが可能になり、タイヤ周方向に沿って配設された複数の緩衝凹部からなる緩衝凹部列に、タイヤ周方向に延びる亀裂が生ずるのを抑制することができる。
【0008】
ここで、前記緩衝凹部は、タイヤ周方向の大きさが、タイヤ径方向の大きさより大きい横長に形成されてもよい。
【0009】
この場合、緩衝凹部が横長に形成されているので、振動入力時に、緩衝凹部をタイヤ径方向に変形させやすくすることができる。
【0010】
また、前記6つの辺部分のうち、他の前記緩衝凹部にタイヤ周方向で向き合う対向辺部分の長さは、他の辺部分の長さより短くてもよい。
【0011】
この場合、前記6つの辺部分のうち、他の緩衝凹部にタイヤ周方向で向き合う対向辺部分の長さが、他の辺部分の長さより短いので、振動入力時に、緩衝凹部をタイヤ径方向に変形させやすくすることができる。
【0012】
また、前記緩衝凹部の内面は、タイヤ幅方向を向く底面と、この底面の外周縁から立ち上がり前記緩衝凹部の開口周縁に連なる側面と、を備え、前記バットレス部の平面視において、前記緩衝凹部の開口周縁と前記底面の外周縁とのタイヤ周方向の距離は、前記底面の中心と前記底面の外周縁とのタイヤ周方向の距離より大きくてもよい。
【0013】
この場合、バットレス部の平面視において、緩衝凹部の開口周縁と底面の外周縁とのタイヤ周方向の距離が、底面の中心と底面の外周縁とのタイヤ周方向の距離より大きいので、側面のうち、底面をタイヤ周方向に挟む両側に位置する部分を、振動入力時に変形させやすくすることができる。
【0014】
また、前記緩衝凹部の内面は、タイヤ幅方向を向く底面と、この底面の外周縁から立ち上がり前記緩衝凹部の開口周縁に連なる側面と、を備え、前記バットレス部の平面視において、前記緩衝凹部の開口周縁と前記底面の外周縁とのタイヤ径方向の距離は、前記底面の中心と前記底面の外周縁とのタイヤ径方向の距離より大きくてもよい。
【0015】
この場合、バットレス部の平面視において、緩衝凹部の開口周縁と底面の外周縁とのタイヤ径方向の距離が、底面の中心と底面の外周縁とのタイヤ径方向の距離より大きいので、側面のうち、底面をタイヤ径方向に挟む両側に位置する部分が、底面の外周縁回りにタイヤ径方向に変形しやすくなり、振動入力時に、緩衝凹部をタイヤ径方向に変形させやすくすることができる。
【0016】
また、前記バットレス部の平面視において、タイヤ周方向で互いに隣り合う前記緩衝凹部のタイヤ周方向の間隔は、前記緩衝凹部の中心と前記緩衝凹部の開口周縁との距離の最小値より小さくてもよい。
【0017】
この場合、バットレス部の平面視において、タイヤ周方向で互いに隣り合う緩衝凹部のタイヤ周方向の間隔が、緩衝凹部の中心と緩衝凹部の開口周縁との距離の最小値より小さいので、タイヤ周方向で互いに隣り合う緩衝凹部同士の距離が長くなるのを防ぐことが可能になり、入力振動を確実に減衰することができる。
【0018】
また、タイヤ周方向に沿って配設された複数の前記緩衝凹部からなる緩衝凹部列が、前記バットレス部の外表面に3つ以上形成されてもよい。
【0019】
この場合、緩衝凹部列が、バットレス部の外表面に3つ以上形成されているので、走行中に、路面からトレッド踏面部を介して入力された振動を確実に減衰することができる。
【0020】
また、前記バットレス部の平面視において、前記緩衝凹部は、タイヤ周方向の中央部を通り、かつタイヤ径方向に延びる第1基準線、およびタイヤ径方向の中央部を通り、かつタイヤ周方向に延びる第2基準線の双方に対して対称形状を呈してもよい。
【0021】
この場合、バットレス部の平面視において、六角形状を呈する緩衝凹部が、前記第1基準線、および前記第2基準線の双方に対して対称形状を呈するので、緩衝凹部から、対角線を含めて、タイヤ周方向に延びる線と一致した線部分を排除することが可能になり、緩衝凹部列に、タイヤ周方向に延びる亀裂が生ずるのを確実に抑制することができる。
バットレス部の平面視において、緩衝凹部が前述の対称形状を呈することから、振動入力時に、緩衝凹部がタイヤ径方向に変形したときの形状を安定させることが可能になり、減衰性能を安定して発揮させることができる。
【発明の効果】
【0022】
この発明によれば、走行中に、路面からトレッド踏面部を介して入力された振動を減衰することが可能で、かつバットレス部の外表面に、タイヤ周方向に延びる亀裂が生ずるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施形態に係るタイヤのタイヤ幅方向に沿う断面図である。
【
図2】
図1に示すタイヤのトレッド踏面部およびバットレス部の展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、
図1および
図2を参照し、本発明の一実施形態に係るタイヤ1を説明する。
タイヤ1は、タイヤ径方向の外端部に位置するトレッド部15と、トレッド部15におけるタイヤ幅方向の両端部側からタイヤ径方向の内側に向けて延びる一対のサイドウォール部16と、トレッド部15とサイドウォール部16とを接続する一対のバットレス部12と、サイドウォール部16におけるタイヤ径方向の内端部に接続されたビード部17と、を備えている。ビード部17に、ビードコア17aが埋設されている。トレッド部15に、ベルト18が埋設されている。トレッド部15のうち、タイヤ径方向の外側を向く外周面が、トレッド踏面部11となっている。トレッド部15、バットレス部12、サイドウォール部16、およびビード部17に、カーカスプライ19が一体に埋設されている。カーカスプライ19は、ビードコア17a回りに折り返されている。
タイヤ1の外表面に、タイヤ1の、車両に対するタイヤ幅方向の装着向きが特定可能な図示されない明示部が形成されている。この明示部は、タイヤ1の例えばサイドウォール部16の外表面に形成されている。
【0025】
ここで、トレッド踏面部11とは、タイヤ1に正規内圧および正規荷重を加えた状態でのトレッド部15の接地面をいう。バットレス部12は、外表面が、トレッド踏面部11におけるタイヤ幅方向の外端部に連なり、かつタイヤ1に正規内圧および正規荷重を加えた状態でタイヤ1を回転させたときに、平滑な路面に接触しない部分となっている。
正規内圧とは、JATMA(日本自動車タイヤ協会)のYear Book2008年度版の最大負荷能力に対応する空気圧であり、正規荷重とは、JATMAのYear Book2008年度版の単輪を適用した場合の最大負荷能力に相当する荷重である。日本以外では、正規内圧とは、後述する規格に記載されている単輪の最大荷重(最大負荷能力)に対応する空気圧であり、正規荷重とは、後述する規格に記載されている適用サイズにおける単輪の最大荷重(最大負荷能力)のことである。規格は、タイヤが生産又は使用される地域に有効な産業規格によって定められている。例えば、アメリカ合衆国では、”The Tire and Rim Association Inc. のYear Book ”であり、欧州では”The European Tire and Rim Technical OrganizationのStandards Manual”である。
【0026】
トレッド踏面部11に、外側主溝21、22、内側主溝23、24、外側共鳴器25、および内側共鳴器26が形成されている。
なお、
図2において、タイヤ周方向に延びる二点鎖線は、トレッド踏面部11におけるタイヤ幅方向の外端縁を示している。
【0027】
外側主溝21、22は、タイヤ周方向に連続して延びている。外側主溝21、22は、トレッド踏面部11のうち、タイヤ赤道部CLに対してタイヤ幅方向に沿う車両外側に位置する外側踏面部11aに、タイヤ幅方向に間隔をあけて2つ形成されている。
内側主溝23、24は、タイヤ周方向に連続して延びている。内側主溝23、24は、トレッド踏面部11のうち、タイヤ赤道部CLに対してタイヤ幅方向に沿う車両内側に位置する内側踏面部11bに、タイヤ幅方向に間隔をあけて2つ形成されている。
【0028】
2つの外側主溝21、22のうち、タイヤ幅方向の内側に位置する外側主溝22と、2つの内側主溝23、24のうち、タイヤ幅方向の内側に位置する内側主溝24と、により区画された中央陸部27は、タイヤ周方向に連続して延びている。中央陸部27のタイヤ幅方向の中央部は、タイヤ赤道部CL上に位置している。
2つの外側主溝21、22により区画された外側陸部28、および2つの内側主溝23、24により区画された内側陸部29に、外側共鳴器25、および内側共鳴器26が各別にタイヤ周方向に沿って複数ずつ形成されている。
【0029】
外側共鳴器25は、タイヤ周方向に延びる第1縦溝31と、第1縦溝31より内容積が小さく、かつ第1縦溝31におけるタイヤ周方向の両端部から互いに逆向きにタイヤ幅方向に延び、2つの外側主溝21、22に各別に開口した第1枝溝32、および第2枝溝33と、を備えている。
内側共鳴器26は、タイヤ周方向に延びる第2縦溝36と、第2縦溝36より内容積が小さく、かつ第2縦溝36におけるタイヤ周方向の両端部から互いに逆向きにタイヤ幅方向に延び、2つの内側主溝23、24に各別に開口した第3枝溝37、および第4枝溝38と、を備えている。
【0030】
トレッド踏面部11に、外側共鳴器25、および内側共鳴器26を形成したことによって、走行時に、外側主溝21、22、および内側主溝23、24と路面との間を流れる空気の一部が、第1枝溝32、若しくは第2枝溝33、および第3枝溝37、若しくは第4枝溝38を通して、第1縦溝31、および第2縦溝36に各別に導入されることとなる。これにより、外側主溝21、22、および内側主溝23、24と路面との間を流れる空気の振動を減衰することが可能になり、気柱共鳴の発生を抑制することができる。
【0031】
そして、本実施形態では、バットレス部12の外表面に、タイヤ周方向の全域にわたって、タイヤ径方向に圧縮変形可能な緩衝凹部40が、タイヤ周方向に沿って複数配設されている。
緩衝凹部40は、一対のバットレス部12のうち、車両内側のバットレス部12に設けられている。なお、緩衝凹部40は、一対のバットレス部12のうち、車両外側のバットレス部12に設けてもよく、一対のバットレス部12の双方に設けてもよい。
【0032】
バットレス部12の平面視において、緩衝凹部40の開口周縁は、2つの第1辺部分(対向辺部分)41、および4つの第2辺部分42と、2つの第1角部分43、および4つの第2角部分44と、を備える六角形状を呈する。
以下、この六角形状の図心を緩衝凹部40の中心Oという。
【0033】
第1辺部分41は、緩衝凹部40におけるタイヤ周方向の両端に位置してタイヤ径方向に延びている。タイヤ周方向で互いに隣り合う緩衝凹部40は、それぞれの第1辺部分41がタイヤ周方向に向き合わされて配設されている。
第2辺部分42は、第1辺部分41より長くなっている。これにより、バットレス部12の平面視において、緩衝凹部40の開口周縁が有する2つの第1辺部分41、および4つの第2辺部分42のうち、他の緩衝凹部40にタイヤ周方向で向き合う第1辺部分41の長さは、第2辺部分42の長さより短くなっている。
【0034】
第2辺部分42は、第1辺部分41の両端から、緩衝凹部40におけるタイヤ周方向の中央部に向かうに従い、互いがタイヤ径方向に離れる向きに延びている。緩衝凹部40のタイヤ径方向の大きさは、タイヤ周方向の両端部からタイヤ周方向の中央部に向かうに従い、大きくなっている。緩衝凹部40は、タイヤ周方向の大きさが、タイヤ径方向の大きさより大きい横長に形成されている。4つの第2辺部分42のうち、バットレス部12の平面視において、緩衝凹部40の中心Oを、タイヤ径方向およびタイヤ周方向の双方向に対して傾斜する向きに挟んで互いに対向する一対の第2辺部分42は平行になっている。
【0035】
第1角部分43は、緩衝凹部40の中心O回りで連なる2つの第2辺部分42により画成され、緩衝凹部40のタイヤ周方向の中央部に位置している。第2角部分44は、緩衝凹部40の中心O回りで連なる第1辺部分41および第2辺部分42により画成され、第1角部分43より角度が小さくなっている。
以上より、緩衝凹部40は、バットレス部12の平面視で、タイヤ周方向の両端部にタイヤ径方向に延びる第1辺部分41を有し、タイヤ周方向の中央部にタイヤ径方向の外側に尖る第1角部分43を有する六角形状を呈する。
【0036】
バットレス部12の平面視において、タイヤ周方向で互いに隣り合う緩衝凹部40のタイヤ周方向の間隔は、緩衝凹部40の中心Oと緩衝凹部40の開口周縁との距離の最小値より小さくなっている。図示の例では、緩衝凹部40の開口周縁のうち、前記平面視で緩衝凹部40の中心Oとの距離が最小となる部分は、第1角部分43となっている。
【0037】
バットレス部12の平面視において、緩衝凹部40は、タイヤ周方向の中央部を通り、かつタイヤ径方向に延びる第1基準線L1、およびタイヤ径方向の中央部を通り、かつタイヤ周方向に延びる第2基準線L2の双方に対して対称形状を呈する。第1基準線L1、および第2基準線L2は、緩衝凹部40の中心Oで交差している。
なお、緩衝凹部40は、バットレス部12の平面視で、第1基準線L1、および第2基準線L2のうちのいずれか一方に対して対称形状を呈してもよく、また、いずれに対しても非対称形状を呈してもよい。
【0038】
緩衝凹部40の内面は、タイヤ幅方向を向く底面45と、この底面45の外周縁から立ち上がり緩衝凹部40の開口周縁に連なる側面46と、を備えている。バットレス部12の平面視で底面45、および側面46は、緩衝凹部40の中心Oと同軸に配設されている。
なお、緩衝凹部40は、底面45を有しない錐形状に形成されてもよく、また、バットレス部12の平面視で底面45、および側面46の中心を、緩衝凹部40の中心Oからずらしてもよい。
【0039】
バットレス部12の平面視において、緩衝凹部40の開口周縁の第1辺部分41と底面45の外周縁とのタイヤ周方向の距離a1は、緩衝凹部40の中心Oと底面45の外周縁とのタイヤ周方向の距離a2より大きくなっている。なお、前記距離a1を、前記距離a2以下としてもよい。
バットレス部12の平面視において、緩衝凹部40の開口周縁の第1角部分43と底面45の外周縁とのタイヤ径方向の距離b1は、緩衝凹部40の中心Oと底面45の外周縁とのタイヤ径方向の距離b2より大きくなっている。なお、前記距離b1を、前記距離b2以下としてもよい。
バットレス部12の平面視において、第1辺部分41と底面45の外周縁とのタイヤ周方向の距離a1は、第1角部分43と底面45の外周縁とのタイヤ径方向の距離b1より大きくなっている。なお、前記距離a1を、前記距離b1以下としてもよい。
【0040】
バットレス部12の平面視において、緩衝凹部40の底面45は、緩衝凹部40の開口周縁と同じ向きに配設された六角形状を呈する。緩衝凹部40の側面46は、バットレス部12の平面視において、緩衝凹部40の中心O回りに谷線部46aを介して連なる6つの区画面46bを備えている。谷線部46aは、バットレス部12の平面視において、互いに向かい合う、第1角部分43、若しくは第2角部分44と、底面45の外周縁をなす1つの角部分と、を接続している。区画面46bは、第1辺部分41、若しくは第2辺部分42と、底面45の外周縁をなす1つの線部分と、を接続している。
以上より、緩衝凹部40は六角錐台形状となっている。
【0041】
タイヤ周方向に沿って配設された複数の緩衝凹部40からなる緩衝凹部列Aが、バットレス部12の外表面に3つ以上形成されている。図示の例では、緩衝凹部列Aが、バットレス部12の外表面に3つ形成されている。なお、緩衝凹部列Aは、バットレス部12の外表面に3つ未満形成してもよい。
1つの緩衝凹部列Aにおいて、それぞれの緩衝凹部40の中心Oは、同じタイヤ径方向の位置に位置している。
【0042】
タイヤ径方向で互いに隣り合う緩衝凹部列Aは、タイヤ周方向に、緩衝凹部40のタイヤ周方向の大きさ未満ずらされて配設されている。図示の例では、タイヤ径方向で互いに隣り合う緩衝凹部列Aは、タイヤ周方向に、緩衝凹部40のタイヤ周方向の大きさの半分ずらされて配設されている。
タイヤ径方向で互いに隣り合う緩衝凹部列Aは、タイヤ径方向に、緩衝凹部40のタイヤ径方向の大きさ未満ずらされて配設されている。図示の例では、タイヤ径方向で互いに隣り合う緩衝凹部列Aは、緩衝凹部40のタイヤ径方向の大きさの半分より大きくずらされて配設されている。
【0043】
そして、タイヤ径方向で互いに隣り合う緩衝凹部列Aは、タイヤ径方向の外側に位置する緩衝凹部40のタイヤ径方向の内端部が、タイヤ径方向の内側に位置する緩衝凹部40のタイヤ径方向の外端部より、タイヤ径方向の内側に位置するように配設されている。すなわち、タイヤ径方向で互いに隣り合う緩衝凹部列Aは、一方の緩衝凹部列Aの緩衝凹部40の第1角部分43が、他方の緩衝凹部列Aの、タイヤ周方向の全域にわたって連続して延びる帯状の配設領域に対してタイヤ径方向に食い込み、タイヤ周方向で互いに噛み合うように配設されている。
【0044】
タイヤ径方向で互いに隣り合う緩衝凹部40は、それぞれの第2辺部分42の1つ同士が互いに平行に向き合うように配設されている。これらの第2辺部分42同士の間隔は、タイヤ周方向で互いに隣り合う緩衝凹部40のタイヤ周方向の間隔と同等になっている。
【0045】
緩衝凹部列Aのタイヤ径方向の大きさをH、緩衝凹部列Aのタイヤ径方向の中央部におけるタイヤ周方向の大きさをS、緩衝凹部40の開口面積をX、複数の緩衝凹部40の内容積の総和をV、緩衝凹部40の深さをD、緩衝凹部40の個数をNとしたときに、0.4≦X/(H・S)≦1.3、150≦(N・X)/(H・S)≦600、かつH・S・D/2≦Vを満たしている。
【0046】
以上説明したように、本実施形態に係るタイヤ1によれば、バットレス部12の外表面に、複数の緩衝凹部40が形成されているので、走行中に、路面からトレッド踏面部11を介して振動が入力されたときに、緩衝凹部40をタイヤ径方向に変形させることで、この入力振動を減衰することができる。
【0047】
特に、バットレス部12の平面視において、緩衝凹部40の開口周縁が六角形状を呈するとともに、タイヤ周方向で互いに隣り合う緩衝凹部40が、それぞれの第1辺部分41がタイヤ周方向に向き合わされて配設されている。これにより、前記平面視において、第1辺部分41、および第2辺部分42、並びに、これらの辺部分41、42がなす六角形状の対角線が、タイヤ周方向に沿って延びる線と一致することがなくなることから、緩衝凹部40に、タイヤ周方向に延びる線と一致した線部分、つまり路面からの入力振動により繰り返し折り曲げられる折れ線部分を生じにくくすることが可能になり、緩衝凹部列Aに、タイヤ周方向に延びる亀裂が生ずるのを抑制することができる。
【0048】
緩衝凹部40が横長に形成されているので、振動入力時に、緩衝凹部40をタイヤ径方向に変形させやすくすることができる。
バットレス部12の平面視において、緩衝凹部40の開口周縁が有する2つの第1辺部分41、および4つの第2辺部分42のうち、他の緩衝凹部40にタイヤ周方向で向き合う第1辺部分41の長さが、第2辺部分42の長さより短くなっているので、振動入力時に、緩衝凹部40をタイヤ径方向に変形させやすくすることができる。
【0049】
バットレス部12の平面視において、緩衝凹部40の開口周縁の第1辺部分41と底面45の外周縁とのタイヤ周方向の距離a1が、緩衝凹部40の中心Oと底面45の外周縁とのタイヤ周方向の距離a2より大きいので、側面46のうち、底面45をタイヤ周方向に挟む両側に位置する部分を、振動入力時に変形させやすくすることができる。
【0050】
バットレス部12の平面視において、緩衝凹部40の開口周縁の第1角部分43と底面45の外周縁とのタイヤ径方向の距離b1が、緩衝凹部40の中心Oと底面45の外周縁とのタイヤ径方向の距離b2より大きいので、側面46のうち、底面45をタイヤ径方向に挟む両側に位置する部分が、底面45の外周縁回りにタイヤ径方向に変形しやすくなり、振動入力時に、緩衝凹部40をタイヤ径方向に変形させやすくすることができる。
【0051】
バットレス部12の平面視において、タイヤ周方向で互いに隣り合う緩衝凹部40のタイヤ周方向の間隔が、緩衝凹部40の中心Oと緩衝凹部40の開口周縁との距離の最小値より小さいので、タイヤ周方向で互いに隣り合う緩衝凹部40同士の距離が長くなるのを防ぐことが可能になり、入力振動を確実に減衰することができる。
緩衝凹部列Aが、バットレス部12の外表面に3つ以上形成されているので、走行中に、路面からトレッド踏面部11を介して入力された振動を確実に減衰することができる。
【0052】
バットレス部12の平面視において、六角形状を呈する緩衝凹部40が、第1基準線L1、および第2基準線L2の双方に対して対称形状を呈するので、緩衝凹部40から、対角線を含めて、タイヤ周方向に延びる線と一致した線部分を排除することが可能になり、緩衝凹部列Aに、タイヤ周方向に延びる亀裂が生ずるのを確実に抑制することができる。
バットレス部12の平面視において、緩衝凹部40が前述の対称形状を呈することから、振動入力時に、緩衝凹部40がタイヤ径方向に変形したときの形状を安定させることが可能になり、減衰性能を安定して発揮させることができる。
【0053】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0054】
緩衝凹部40は、タイヤ周方向の大きさが、タイヤ径方向の大きさより短い縦長に形成されてもよく、また、緩衝凹部40のタイヤ周方向の大きさを、緩衝凹部40のタイヤ径方向の大きさと同等にしてもよい。
前記実施形態では、バットレス部12の平面視において、緩衝凹部40の底面45が、緩衝凹部40の開口周縁と同じ向きに配設された六角形状を呈する構成を示したが、異なる向きに配設されてもよいし、底面45の平面視形状を、緩衝凹部40の開口周縁の平面視形状と異ならせてもよい。
前記実施形態では、緩衝凹部40の側面46が、谷線部46aおよび区画面46bを備える構成を示したが、例えば、緩衝凹部40の中心O回りに連続して延びる滑らかな周面とされた構成を採用してもよい。
トレッド踏面部11に形成されたトレッドパターンは、前記実施形態に限らず、適宜変更してもよい。
【0055】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、前記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 タイヤ
11 トレッド踏面部
12 バットレス部
40 緩衝凹部
41 第1辺部分(対向辺部分)
42 第2辺部分(他の辺部分)
45 底面
46 側面
A 緩衝凹部列
L1 第1基準線
L2 第2基準線
O 緩衝凹部の中心(底面の中心)