(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】転写膜、転写膜の製造方法、転写膜の使用方法、及びコンポーネントのコーティング方法
(51)【国際特許分類】
B32B 7/06 20190101AFI20220906BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20220906BHJP
B29C 45/14 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
B32B7/06
B32B27/40
B29C45/14
(21)【出願番号】P 2019500357
(86)(22)【出願日】2017-06-13
(86)【国際出願番号】 EP2017064338
(87)【国際公開番号】W WO2018007107
(87)【国際公開日】2018-01-11
【審査請求日】2020-06-04
(31)【優先権主張番号】102016112505.9
(32)【優先日】2016-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】507370644
【氏名又は名称】レオンハード クルツ シュティフトゥング ウント コー. カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヘーン ローランド
(72)【発明者】
【氏名】ファルグナー シュテフェン
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-115295(JP,A)
【文献】特開2013-126741(JP,A)
【文献】特開2012-091344(JP,A)
【文献】特開2013-248867(JP,A)
【文献】特開2013-091166(JP,A)
【文献】特開2011-016353(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102795014(CN,A)
【文献】特開2004-130639(JP,A)
【文献】特表2008-510637(JP,A)
【文献】特開平07-137487(JP,A)
【文献】特開平03-013398(JP,A)
【文献】特開2000-084972(JP,A)
【文献】特開2008-279705(JP,A)
【文献】特表2008-510636(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/021182(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B
B29C 45/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリア膜(11)及び当該キャリア膜から分離可能な転写プライ(15)を備える転写膜(1)であって、
前記転写膜は、コンポーネント(5)に前記転写プライ(15)を転写するために提供され、
前記キャリア膜(11)と前記転写プライ(15)との間に深絞り加工用のメンブレン(13)が配設され、
前記メンブレン(13)と前記キャリア膜(11)との間に第1分離層(12)が配設され、前記メンブレン(13)と前記転写プライ(15)との間に第2分離層(14)が配設され、
前記第1分離層(12)及び前記第2分離層(14)の少なくとも一方は、メラミンホルムアルデヒド樹脂と架橋したワニス
、又はワックスを含むか、メラミンホルムアルデヒド樹脂と架橋したワニス
、又はワックスからな
り、
前記メンブレン(13)は、130℃~160℃の範囲の温度で500%から1500%を超える伸縮性を有して形成され、
前記第2分離層(14)は、1μm未満の層厚を有し、
前記メンブレン(13)と前記キャリア膜(11)との間に配設された前記第1分離層(12)による、前記キャリア膜(11)の、前記メンブレン(13)からの分離力は、前記メンブレン(13)と前記転写プライ(15)との間に配設された前記第2分離層(14)による、前記メンブレン(13)の、前記転写プライ(15)からの分離力よりも5倍~10倍小さく、
前記メンブレン(13)と前記転写プライ(15)との間に配設された前記第2分離層によって、前記メンブレン(13)の分離力が、2つの隣接した転写層(151~153)間の密着力よりも30%~70%小さい、ことを特徴とする、転写膜(1)。
【請求項2】
前記メンブレン(13)は、10μm~200μmの範囲の層厚を有するワニス層として形成され、及び/又は、
前記メンブレン(13)は、ポリウレタンから形成され、及び/又は、
前記メンブレン(13)は、透明、半透明又は不透明に形成され、及び/又は、
前記メンブレン(13)は、装飾又はモチーフを有し、及び/又は、
前記メンブレン(13)は、表面全体に形成されておらず、
前記メンブレン(13)は、前記転写膜(1)のエッジ領域に形成されておらず、及び/又は、
前記エッジ領域において、前記メンブレン(13)は、当該メンブレン(13)を剥離するためのハンドリング性を有することを特徴とする、請求項1に記載の転写膜(1)。
【請求項3】
前記メンブレン(13)は、印刷層として形成され、及び/又は、
前記メンブレン(13)は、複数の層から形成され、及び/又は、
前記メンブレン(13)は、均一な層として形成されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の転写膜(1)。
【請求項4】
前記転写プライ(15)は、転写層(151~153)から形成された多層体として形成されており、及び/又は、
前記転写プライ(15)は、前記メンブレン(13)と対向する第1転写層(151)
と、第2転写層(152)
と、第3転写層(153)
と、を有し、
前記第1転写層(151)は、保護層として形成されており、
前記保護層は、2μm~50μmの範囲の層厚で、PMMA系のワニスから形成された保護ワニスとして形成されており、及び/又は、
前記保護層は、2μm~50μmの範囲の層厚で、PMMA(ポリメチルメタクリレート)系のワニス又はPVDF(ポリビニリデンフルオライド)及びPMMAの混合物系のワニスから形成された保護ワニスとして形成されていることを特徴とする、請求項1~3の何れかに記載の転写膜(1)。
【請求項5】
前記第2転写層(152)は、単一又は多層の装飾層として形成されており、
前記第2転写層(152)は、着色層として形成されており、
前記着色層は、1μm~10μmの範囲の層厚を有するPMMA系のワニスから形成されていることを特徴とする、請求項4に記載の転写膜(1)。
【請求項6】
前記第3転写層(153)は、ベースコート層として形成されており、
前記ベースコート層は、1μm~5μmの範囲の層厚を有するように形成されていることを特徴とする、請求項4又は5に記載の転写膜(1)。
【請求項7】
前記第1分離層(12)及び/又は前記第2分離層(14)は、モンタン酸エステル
ワックス又はポリエチレン
ワックスから形成され、かつ/又は、
前記第1分離層(12)は、1μm未満の層厚を有することを特徴とする、請求項1~6の何れかに記載の転写膜(1)。
【請求項8】
前記第1分離層(12)はポリエチレンワックスから形成され、前記第2分離層(14)はモンタン酸エステル
ワックスから形成されていることを特徴とする、請求項
7に記載の転写膜(1)。
【請求項9】
TOMを用いた、請求項1~
8の何れかに記載の転写膜(1)の使用方法であって、
前記TOMは、基板(2)を積層し、当該基板(2)の裏面をTOMベースコート(16)でコーティングし、かつ積層されかつコーティングされた前記基板(2)を3次元のコンポーネント(5)に適用する工程を含み、
前記転写膜(1)の前記キャリア膜(11)は、前記基板(2)に対する前記コーティングの前又は後に剥離され、前記メンブレン(13)は、前記積層されかつコーティングされた前記基板(2)を前記コンポーネント(5)に適用した後に前記転写プライ(15)から剥離され、かつ/又は、
前記TOMは、前記転写膜(1)を前記コンポーネント(5)に適用する工程を含み、
前記キャリア膜(11)は、前記転写膜(1)を前記コンポーネント(5)に適用する前に前記メンブレン(13)から剥離され、前記メンブレン(13)は、前記転写膜(1)を前記コンポーネント(5)に適用した後に前記転写プライ(15)から剥離されることを特徴とする、方法。
【請求項10】
請求項1~
8の何れかに記載の転写膜(1)の製造方法であって、
前記転写膜(1)は、キャリア膜(11)と、
当該キャリア膜から分離可能な転写プライ(15)と、前記キャリア膜(11)と前記転写プライ(15)との間に配設されたメンブレン(13)と、を有し、
前記メンブレン(13)は、キャスト法、又はスクリーン印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷若しくはインクジェット印刷により製造又は適用され
、
前記方法は、TOMを用いて行われ、当該TOMは、基板(2)を積層し、当該基板(2)の裏面をTOMベースコート(16)でコーティングし、かつ積層されかつコーティングされた前記基板(2)を3次元のコンポーネント(5)に適用する工程を含み、
前記転写膜(1)の前記キャリア膜(11)は、前記基板(2)に対する前記コーティングの前又は後に剥離され、前記メンブレン(13)は、前記積層されかつコーティングされた前記基板(2)を前記コンポーネント(5)に適用した後に前記転写プライ(15)から剥離され、かつ/又は、
前記方法は、TOMを用いて行われ、当該TOMは、前記転写膜(1)を前記コンポーネント(5)に適用する工程を含み、
前記キャリア膜(11)は、前記転写膜(1)を前記コンポーネント(5)に適用する前に前記メンブレン(13)から剥離され、前記メンブレン(13)は、前記転写膜(1)を前記コンポーネント(5)に適用した後に前記転写プライ(15)から剥離されることを特徴とする、方法。
【請求項11】
前記メンブレン(13)は、複数の連続したパス又は複数の層から製造され、
前記メンブレン(13)を形成するため、適用される層は、当該適用される層に追加の層が適用されて前記メンブレン(13)を形成する前に、少なくとも部分的にタッチドライの状態にされ、かつ/又は、追加の層が前記適用される層に適用されて前記メンブレン(13)を形成する前に、完全に乾燥されるか乾燥されることを特徴とする、請求項1
0に記載の方法。
【請求項12】
前記メンブレン(13)を形成するために、既に適用した層の少なくとも表面をエッチングするように次層
を適用
して、均一な層を形成することを特徴とする、請求項1
0又は1
1に記載の方法。
【請求項13】
請求項1~
8の何れかに記載の転写膜(1)
で又は請求項1~
8の何れかに記載の転写膜(1)の転写プライ(15)を有する転写膜(1)でコンポーネント(5)をコーティングする方法
であって、
前記方法は、TOMを用いて行われ、当該TOMは、基板(2)を積層し、当該基板(2)の裏面をTOMベースコート(16)でコーティングし、かつ積層されかつコーティングされた前記基板(2)を前記コンポーネント(5)に適用する工程を含み、
前記転写膜(1)の前記キャリア膜(11)は、前記基板(2)に対する前記コーティングの前又は後に剥離され、前記メンブレン(13)は、前記積層されかつコーティングされた前記基板(2)を前記コンポーネント(5)に適用した後に前記転写プライ(15)から剥離され、かつ/又は、
前記方法は、TOMを用いて行われ、当該TOMは、前記転写膜(1)を前記コンポーネント(5)に適用する工程を含み、
前記キャリア膜(11)は、前記転写膜(1)を前記コンポーネント(5)に適用する前に前記メンブレン(13)から剥離され、前記メンブレン(13)は、前記転写膜(1)を前記コンポーネント(5)に適用した後に前記転写プライ(15)から剥離されることを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写膜、転写膜の製造方法、転写膜の使用方法、及びコンポーネントのコーティング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
装飾のための装飾膜は現在の技術水準から公知であり、異なる方法が用いられている。装飾膜は、キャリア膜と当該キャリア膜から分離可能な転写プライとを備える転写膜として形成されている。
【0003】
IMD法(=In-Mold Decoration)の場合は、転写膜は射出成形金型内に配設され、背面射出成形(back-injection-molded)される。キャリア膜は、特に、高速の状態で金型表面の外形面に適用されると、射出成形中に生じる高圧及び高温に起因して、転写膜の変形中に生じる引張力を吸収し、ワニス層として形成された転写プライを変形中にクラックや他のダメージから保護する。転写層の表面仕上げは、このキャリア膜によって確定される。したがって、ここでは、キャリア膜は、転写プライの変形を扶助するように作用する。ここで、3次元的な変形は、相対的に低弾性のキャリア膜によって確定されるために、それによって制限を受けることになる。
【0004】
インサート成形の場合、転写膜は、特に平滑で平坦な基板に適用される。その後、キャリア膜は剥離される。深絞り金型の2つの金型部分に存在する転写プライでコーティングされた基板の深絞り加工中、適用された転写プライは、変形による引張力を吸収しなければならない。特に、保護層が形成されている場合は、曲率半径が狭くなるとクラックなどが発生する。
【0005】
いわゆる3DHS法の場合、転写膜は既に変形した部分に配設され、ホットスタンプされる。転写膜は、特に真空吸引及び予備加熱で、ホットスタンプ前に既に変形した部分の輪郭に適用され、その後、相応する形態に形作られ、加熱されたスタンプ金型でホットスタンプされる。IMD法の場合のように、キャリア膜は引張力を吸収し、転写すべきワニス層を変形中に生じるクラックや他のダメージから保護する。
【0006】
いわゆるTOM(=Three-dimensional Overlay Method)の場合、転写膜は、特に平滑で平坦な基板に適用される。その後、キャリア膜は剥離される。次いで、その後に転写プライでコーティングされた基板を既存の変形部上に配設し、当該基板の、変形部上に位置する部分を再成形する際に、適用された転写プライは、変形による引張力を吸収しなければならない。特に、保護層が形成されている場合は、曲率半径が狭くなるとクラックなどが発生する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、特に変形能が改良された転写膜を開示することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にしたがって、この目的は、請求項1、30,33及び39の内容によって達成される。
【0009】
キャリア膜と、当該キャリア膜から剥離可能な転写プライとを備えた転写膜が開示される。転写膜は、転写プライをコンポーネント、特に3次元コンポーネントに転写するために提供され、深絞りメンブレンがキャリア膜と転写プライとの間に配設される。
【0010】
また、本発明の転写膜をIMD法、インサート成形、又はTOMにおいて使用することが開示される。
【0011】
さらに、転写膜、特に、キャリア膜と、当該キャリア膜から分離可能な転写プライと、キャリア膜と転写プライとの間に配設された深絞りメンブレンとを備える、本発明の転写膜の製造方法が開示される。深絞りメンブレンは、キャスト法、スクリーン印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、又はインクジェット印刷の方法で製造され、又は適用される。
【0012】
また、本発明の転写膜によるコンポーネントのコーティング方法が開示される。
【0013】
深絞りメンブレンは、引張力を吸収することができ、それによって、転写プライの変形を扶助するように作用し、転写プライを変形中にクラックや他のダメージから保護する。ここで、3次元コンポーネントは、特に3次元的、したがって、長さ、幅及び高さ方向に伸長して変形した、コンポーネント、例えばデバイスに対するハウジングを意味する。
【0014】
深絞りメンブレンは、10μmから200μmの範囲、好ましくは20μmから100μmの範囲、さらに好ましくは25μmから75μmの範囲の層厚を有するワニス層として形成する。
【0015】
有利なデザインにおいて、深絞りメンブレンはポリウレタンから形成する。ポリウレタンは、溶剤系又は水分散体とすることができる。ポリウレタンは、十分な変形能を有することが必要であり、種々のポリマーから構成することができる。これらは、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリアクリレートポリオール、及びこれらポリマーの混合物を含む。ポリエステルポリオールからなるポリウレタンは好ましく使用することができる。これらのポリマーは、深絞りメンブレンを製造する際のワニス材のベースを形成する。
【0016】
十分な層厚を得るために、これらの層は、例えばスリットダイを用いたキャスト法、又はスクリーン印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷の手段によって製造することが好ましい。これらの製造方法は、ワンパス又は複数の連続したパスで適用することができる。また、個々の方法を組み合わせることも原理的には可能である。
【0017】
第1適用膜、特にワニス層は、連続したパスの間に少なくとも部分的に乾燥していることが好ましく、これによって、当該層は少なくとも上乾きの状態となる。しかしながら、当該層は特に硬化乾燥させることもできる。この乾燥の後、次の層を堆積する。この層は、既に堆積した層と均一な層を形成するように、少なくとも既堆積層の表面をエッチングすることが好ましい。2を超える層、特にワニス層の場合、全体として均一な層が形成されるように、上記作業を層の数だけ実行する。
【0018】
好ましい実施形態において、層、特に約0.1μmから50μmの範囲、好ましくは0.1μmから35μmの範囲、さらに好ましくは1μmから25μmの範囲の層厚のワニス層にはワンパスを適用する。上述のように、そのような相対的に薄い部分層を用いることによって、全体的に大きな層厚の層を作製することができる。
【0019】
深絞りメンブレンは、透明、半透明、不透明に形成することができ、同時に、無色又は着色させることができる。少なくとも部分的に不透明及び/又は着色させることで、深絞りメンブレンの装飾基板又はコンポーネント上での存在を容易に認識する。特に、深絞りメンブレンが長時間に亘って、付加的な層として基板上又はコンポーネント上に存在している場合、そのような視覚的な認識性は有用である。この保護層は、例えば最終的に使用されるまで、及び/又は目的地に輸送され、かつダメージに対する保護層としての機能を満足するまで、基板上又はコンポーネント上に存在することができる。
【0020】
深絞りメンブレンが例えばパターンなどの装飾、又はロゴ、書体などのモチーフを有することは有利である。書体としては、例えば製造者情報、又は深絞りメンブレン及び/又は基板若しくはコンポーネントの使用方法などを含むことができる。
【0021】
装飾又はモチーフは、特に深絞りメンブレン上にインプリントすることができる。例えば、第1キャスト工程において深絞りメンブレンをキャストし、その後、第2キャスト工程において装飾又はモチーフをプリントし、当該深絞りメンブレン中に装飾又はモチーフを埋め込むことができる。装飾又はモチーフは、深絞りメンブレンと同じ又は異なる材料、例えば、PVC若しくは他のポリウレタンから構成することができる。
【0022】
深絞りメンブレンは、全体表面、したがって、転写膜の表面全体に亘って配設することもできるし、所定の領域に配設することもできる。例えば、深絞りメンブレンは、転写膜の加工中に特に大きな変形が発生する表面部分のみに配設し、転写膜の加工中の変形が小さい部分若しくは全く変形が発生しない部分には配設しないこともできる。例えば、視覚的に認識可能で、触覚的に利用できるエッジにおいて、深絞りメンブレンを容易に剥離するために、特に狭小なエッジ領域においてのみ、深絞りメンブレンを配設しないこともできる。このため、当該エッジにおいて、例えば少なくとも1つのタブなどとして、深絞りメンブレンを簡易に剥離できるハンドリング性を有する。
【0023】
深絞りメンブレンは、130℃から160℃の深絞り温度において、200%、好ましくは500%から1500%を超えるまで伸縮するように形成することができる。この値は、ツヴィック社(Zwick GmbH&Co.KG,Ulm)のZwick Z005試験装置を使用した標準引張試験(DIN 53504,ISO37)によって決定されたものである。
【0024】
第1分離層をキャリア膜と深絞りメンブレンとの間に配設することができ、第2分離層を深絞りメンブレンと転写プライとの間に配設することができる。
【0025】
第1分離層及び/又は第2分離層はワックスから構成することができる。これは、例えば、カルナバワックス、モンタン酸エステル、ポリエチレンワックス、ポリアミドワックス又はPTFEワックス(PTFE=ポリテトラフルオロエチレン)とすることができる。メラミンホルムアルデヒド樹脂と架橋した薄いワニス層は、分離層として作用することができる。
【0026】
有利なデザインにおいて、第1分離層及び/又は第2分離層は、1μm未満の層厚、特に0.1μm未満の層厚を有することができる。
【0027】
キャリア膜と深絞りメンブレンとの間に配設した第1分離層によって、キャリア膜の深絞りメンブレンからの分離力は、深絞りメンブレンと転写プライとの間に配設した第2分離層による、深絞りメンブレンの転写プライからの分離力の5倍から10倍小さいことが有利である。分離力は、引張試験機(ツヴィック社のZwick Z005)を使用して決定した。このため、転写膜は、下側のホルダーに接着剤で平らに貼り付けた。分離すべき層は、引張試験によって垂直に引き剥がした。分離力は、ロードセルによって決定した。
【0028】
転写プライは、複数の転写層からなる多層体として形成することができる。
【0029】
深絞りメンブレンと転写プライとの間に配設した第2分離層によって、当該深絞りメンブレンの転写プライからの分離力は、隣接した転写層間の接着力の30%から70%小さくすることができる。
【0030】
転写プライは、深絞りメンブレンに対向した第1転写層、第2転写層及び第3転写層を有することができる。第1転写層及び/又は第3転写層は、省略することもできる。
【0031】
第1転写層は保護層として形成することができる。
【0032】
保護層は、好ましくは2μmから5μmの範囲の層厚を有するPMMA系のワニスからなる保護ワニスとして形成することができる。保護ワニスは、放射線二重硬化のワニスから構成することができる。この二重硬化ワニスは、液体状態での適用中及び適用後において、第1ステップにおいて熱的な予備架橋を生じ、転写膜の加工後の第2ステップにおいて、特に高エネルギー放射線、好ましくはUV照射によって、ラジカル後架橋させることができる。このタイプの二重硬化ワニスは、不飽和アクリレート基又はメタクリレート基を有する種々のポリマー又はオリゴマーから構成することができる。このような官能基は、上述した第2ステップにおいて、互いにラジカル架橋することができる。第1ステップの熱的な予備架橋においては、これらのポリマー又はオリゴマー中に少なくとも2以上のアルコール基が存在しなければならない。これらのアルコール基は、多官能性イソシアネート又はメラミンホルムアルデヒド樹脂と架橋することができる。エポキシアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリエステルアクリレート、特にアクリレートアクリレートなどの種々のUV原料が不飽和オリゴマー又はポリマーとして考慮される。TDI(トルエン-2,4-ジイソシアネート)、HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)又はIPDI(イソホロンジイソシアネート)系のブロック及び非ブロック体がイソシアネートとして考慮される。メラミン架橋剤は、十分にエーテル化したバージョンとすることもできるし、イミノタイプとすることもできるし、ベンゾグアナミン系とすることもできる。これらの保護ワニスは十分な変形能を有しないので、深絞りメンブレンの非存在下では十分な深絞りを行うことができない。
【0033】
また、保護層は、好ましくは2μmから50μmの範囲、好ましくは5μmから30μmの範囲の層厚を有する、PMMA(ポリメチルメタクリレート)系のワニス、又はPVDF(ポリビニリデンフルオライド)及びPMMAの混合物系のワニスから作製された保護ワニスから形成することができる。これらのワニスは、転写膜に対して必要とされるものであって、当該転写膜を十分正確かつ手際よく打ち抜き、転写プライの表面の転写領域において、所望の外形域で分離するために必要とされる機械的脆性を生ぜしめる。
【0034】
第2転写層は、単一又は多層の装飾層として形成することができる。装飾層は、好ましくは1以上の層を有する。装飾層は、好ましくは1以上の着色層、特には着色ワニス層を有することができる。これらの着色層は、異なるように着色させることができ、透明及び/又は不透明に形成することができ、1以上の追加の層、特には透明層で分離することができる。ここで、着色層は、バインダー及び着色剤及び/又は顔料、特には光学的に可変な顔料及び/又は金属顔料から構成することができる。また、装飾層は、1以上の反射層を有することができる。これらの反射層は、好ましくは不透明、半透明及び/又は部分的に不透明、半透明とする。特に、反射層は金属及び/又はHRI(高屈折)層、したがって、特に1.5より高い高屈折率の層から構成することができる。例えば、アルミニウム、クロム、銅又はそれらの合金が金属として考慮される。例えば、ZnS又はSiO2がHRI層として考慮される。また、装飾層は、1以上の光学的に活性なレリーフ構造、特に回折構造及び/又はホログラム及び/又は屈折構造及び/又は艶消し構造を有することができる。少なくとも1つの反射層を、少なくとも一部の領域上でレリーフ構造上に直接配設することができる。
【0035】
第2転写層は、好ましくは着色層として形成する。
【0036】
着色層は、好ましくは1μmから10μmの層厚を有するPMMA系のワニスから形成することができる。
【0037】
第3転写層は、ベースコート層として形成することができる。ベースコートは、接着層及び/又は接着促進層である。
【0038】
ベースコートは、1μmから5μmの範囲の層厚で形成することができる。ベースコートに対する原料としては、PMMA、PVC、ポリエステル、ポリウレタン、クロロ化ポリオレフィン、ポリプロピレン、エポキシ樹脂又は失活イソシアネートとポリウレタンポリオールとの組み合わせが考慮される。また、ベースコートは、無機フィラーを含むことができる。ベースコートは、インサート成形において転写膜を使用する際は、PVCから作製することが好ましく、TOMにおいて転写膜を使用する際は、失活したイソシアネートとポリウレタンポリオールとの組み合わせから作製することが好ましい。
【0039】
転写膜の製造は、特に深絞りメンブレンを複数の連続したパスにおいて、又は複数の層から製造することで行うことができる。特に、これによって十分な層厚を達成することができる。深絞りメンブレンの各層は、例えば、スリットダイを用いたキャスト法、スクリーン印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、又はインクジェット印刷で製造することが好ましい。
【0040】
深絞りメンブレンを製造するための第1適用膜、特にワニス層は、連続したパスの間に少なくとも一部が乾燥していることが好ましい。特に、当該層が少なくとも上乾きの状態となるように乾燥する。しかしながら、上記層は、硬化乾燥することもできる。乾燥後、次の層が堆積され、当該層は、好ましくは既堆積層の少なくとも表面をエッチングするようにして適用する。エッチングによって、2つの層が均一な層を形成することが有利である。
【0041】
深絞りメンブレンを製造するために2を超える連続した層を用いる場合、全ての層が均一な層となるように、上記操作を層の数に応じて行う。
【0042】
好ましい実施形態において、層、特にワニス層は、0.1μmから50μmの範囲、好ましくは0.1μmから35μmの範囲、さらに好ましくは1μmから25μmの範囲の層厚でワンパスが適用される。上述のように、そのような相対的に薄い部分層を用いることによって、全体的に大きな層厚の層を作製することができる。
【0043】
次に、記述の転写膜、特に記述の転写膜の転写プライを有する転写膜を用いたコンポーネントのコーティング方法を説明する。
【0044】
この方法は、転写膜を射出成形金型に挿入し、プラスチックとともに背面射出成形するIMD法として形成することができる。
【0045】
背面射出成形の後、キャリア膜は転写膜(転写プライ)から剥離される。深絞りメンブレンも、転写膜(転写プライ)とともに剥離され得る。しかしながら、深絞りメンブレンは、少なくとも最初は、転写プライ上に残存させておくことが有利である。したがって、深絞りメンブレンは、転写プライに対する保護層として特に作用する。ここで、転写プライに対する保護層は省くことができる。深絞りメンブレンは、コーティングされたコンポーネントの使用直前又は使用時に剥離されることも考えられる。これによって、他の物と一緒にすると、そのコンポーネントは、使用前にダメージを受けてしまう。ここでは、転写プライが保護層を有し、コンポーネントが使用される際に、外部の影響から転写プライを保護することが有利である。
【0046】
本方法は、インサート成形法として形成することができる。インサート成形法では、基板を積層し、積層した基板を深絞りし、深絞りした基板を熱可塑性プラスチックとともに背面射出成形する。この場合、基板を積層した後に転写膜のキャリア膜は当該基板から剥離され、背面射出成形の後に、深絞りメンブレンは、背面射出成形された基板から剥離される。
【0047】
次に、深絞りメンブレンの有無による例について説明する。この例は、深絞りメンブレンの利点を示すものである。
【0048】
IMD法における加工のために現状提供された既知の転写膜が深絞り加工されると、通常、光学的な欠陥が生じる。これは、IMD膜が、高安定性かつ相対的に小さい変形しか生じないという事実によって説明される。この相対的に小さい変形のために、特にIMD膜の保護層は特に固く、その変形能を減じてしまう。それでも、これらの高安定性は深絞り加工を行うコンポーネントに対しては望ましいが、それは、転写膜に大きな変形を生ぜしめてしまう。
【0049】
そのような既知の転写膜は次のようにして作製することができる。例えばポリエチレンワックスからなる分離層は、36μmから100μmの層厚で、好ましくはPETから作製されるキャリア膜に対して適用される。3μmから5μmの層厚の保護層は、分離層上に堆積される。この保護層は、PMMA系のワニスである。また、同様にPMMA系のワニスからなり、2μmから15μmの範囲の層厚の、複数の着色ワニスが保護層上に堆積される。着色ワニスは、異なる顔料を含むことができ、表面全体又は装飾中に印刷することができる。後者の場合として、この転写膜は、適当なベースコートを含むことができ、提供された基板に対して十分な接着力を生ぜしめる。本件の場合、このベースコートは、1μmの層厚を有するPVC-ビニルアセテートコポリマーから構成することができる。この膜は、インサートとして加工するために基板上に積層される。基板は、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマーから構成することができ、その厚さは、200μmから750μmの範囲とすることができる。積層条件は、0.1kN/cmから1.0kN/cmの線圧、好ましくは0.3kN/cmから0.4kN/cmの線圧で、120℃から300℃、好ましくは180℃から220℃である。この積層工程において、キャリア膜は分離され、その結果、最上層は保護層から形成される。この積層基板は、次いで真空深絞り加工される。積層体は、約140℃から160℃に加熱され、負圧/真空により、金型形状に絞り加工される。
【0050】
深絞り膜が、(上述した)IMD法にデザインされた(現状の)転写膜の場合、次のようなダメージパターンが形成される。すなわち、膜は強い歪みが発生している領域で裂けてしまい、ギャップが転写プライのワニスパッケージの全体又は一部のみを貫通するように形成されてしまう。これは、IMD保護ワニスが引張力を十分に吸収することができず、伸縮した際に裂けてしまうという事実に顕著に起因する。また、保護ワニス層の表面平滑性(光沢)が減少し、歪みが高レベルな位置(特に保護ワニスが顕著に薄化している位置)が、特に複数のマイクロクラックの影響で曇化、乳化し、下方に位置する黒色の装飾が、例えば灰色に見えるようになる。結局、これは、積層過程の後に、キャリア膜が既に除去されているので、保護ワニスの表面仕上げは最早キャリア膜によって予め確定されるものではない。PETキャリア膜は、剛性が高すぎるので、挿入の際に歪みを生じてしまう。
【0051】
本発明は、本発明に従った深絞りメンブレンを用いてこの問題を解決する。上述のように、好ましくは約36μmから100μmの層厚を有するPETからなるキャリア膜及びポリエチレンワックスからなる第1分離膜を考慮すると、例えばポリウレタンから構成される深絞りメンブレンを第1分離膜に適用することができる。この深絞りメンブレンは、好ましくは10μmから200μmの層厚を有する。この深絞りメンブレンの下側に、特にモンタン酸エステルからなり、好ましくは1μm未満の厚さの第2分離層が位置する。この第2分離層の分離力は、第1分離層の分離力とは異なり、特にその分離力は、第1分離層の分離力の約5倍から10倍高い。転写膜の構造の残部は、好ましくは、上述したようにPMMA系の保護ワニスからなり、その層厚は、好ましくは2μmから5μmの範囲である。次の発色性装飾層も特に同様にPMMA系であり、好ましくは2μmから15μmの範囲である。変形構造として、同じPVC-ビニルベースコートが前述の実施例におけるように用いられる。
【0052】
この拡張した膜構造がABS基板(厚さ200μmから750μm)上に積層されると、その後、キャリア膜を除去することができる。この場合、ワニスからなる深絞りメンブレンが基板(インサート材料)の最上層を形成する。積層体は140℃から160℃で深絞りされ、この最上層の深絞りメンブレンは歪みに起因する引張力を吸収する。同時に、その下側に位置する保護層の表面特性を確定する。
【0053】
真空成形の後、深絞りメンブレンは保護層から剥離され得る。したがって、成形されたコンポーネントに破れは生じず、保護層の表面は光沢を保持したままで透明である。コンポーネントに適用した全てのワニスは2つの実施例で同一とすることができるが、本発明にしたがった方法においてのみ、光学的に傷のないコンポーネントが生成された。
【0054】
本方法は、TOMとして形成することもできる。このTOMでは、基板を積層し、基板の裏面側にTOMベースコートをコーティングし、この積層されかつベースコートされた基板を3次元コンポーネントに適用する。この場合、転写膜のキャリア膜は、基板のコーティング前又は後に剥離し、積層されかつベースコートされた基板を3次元コンポーネントに適用した後、転写プライから剥離する。
【0055】
本目的は、TOMで転写膜を製造することである。TOMで転写膜を製造することは従前は知られていなかった。というのは、結局、転写膜を製造する条件に耐えうると同時に十分に熱変形可能なキャリア膜が今日まで利用できなかったことによる。特に、ポリエチレンワックスからなり、好ましくは1μm未満の層厚の第1分離層がコートされたPETが、キャリア膜の材料として選択された。特に、30μmの厚さのポリウレタン-ポリエステルポリオールは、上記PETに対して深絞りメンブレンとして適用された。特に1μm未満の厚さのモンタン酸エステル層が、上記深絞りメンブレンに対して第2分離層として適用された。第2分離層の分離力は第1分離層の分離力と異なり、特にその分離力は、第1分離膜の分離力の約5倍から10倍高い。30μmの層厚のPMMA/PVDFの混合物からなる装飾層が、転写プライの第1層として、第2分離層に対して適用された。総層厚8μmのPMMAワニス系の着色ワニスパッケージが転写プライの第2層として上記第1層上に適用された。ポリウレタンポリオールと失活イソシアネートの組み合わせからなる厚さ8μmのベースコートが上記第2層上に適用された。ナビタス社(Navitas,Japan)の機械でTOM加工する前に、キャリア膜は剥離された。130℃で加工することにより、基板に対して優れた初期密着力を示し、3次元形状のABS/PC射出形成部品を得た。この射出成形部品を数日保管した後、深絞りメンブレンを剥離したところ、転写プライは鋭利な端部を有し、バラバラになった。
【0056】
本方法は、TOMとして形成することができる。このTOMでは、転写膜を3次元コンポーネントに適用し、転写膜を3次元コンポーネントに適用する前にキャリア膜を深絞りメンブレンから剥離し、転写膜を3次元コンポーネントに適用する後に深絞りメンブレンを転写プライから剥離する。キャリア膜を剥離した後も、深絞りメンブレンのために、転写膜は自立保持され、ハンドリングが容易となる。したがって、深絞りメンブレンは、キャリア膜として機能し、公知のキャリア膜よりもはるかに変形能が高い。深絞りメンブレンを有する転写膜をコンポーネントに適用するには、例えば、100℃から180℃の温度かつ0.1barから2barのエアー加圧力で行う。
【0057】
本発明は、実施形態を参照しながら詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【
図1】本発明の転写膜の第1実施形態を概略的に示す図である。
【
図2】
図1の転写膜を用いたインサートを製造するための第1ステップを概略的に示す図である。
【
図3】
図1の転写膜を用いたインサートを製造するための第2ステップを概略的に示す図である。
【
図4】
図1の転写膜を用いたTOM積層膜を形成する工程を概略的に示す図である。
【
図5】
図4のTOM積層膜を用いたコンポーネントのコーティングを概略的に示す図である。
【
図6】本発明の転写膜の第2実施形態を概略的に示す図である。
【
図7】
図6に示す転写膜を有するコンポーネントをコーティングするためのTOMの第1工程を概略的に示す図である。
【
図8】
図1に示す転写膜を有するコンポーネントをコーティングするためのTOMの第2工程を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
図1は、キャリア膜11、第1分離層12、深絞りメンブレン13、第2分離層14及び複数の転写層151,152,153を含む転写プライ15を備える転写膜1を示す。
【0060】
【0061】
キャリア膜11は、12μmから100μmの範囲の層厚を有するPET膜として形成されている。
【0062】
深絞りメンブレン13は、10μmから200μmの範囲、好ましくは20μmから100μmの範囲、さらに好ましくは25μmから75μmの範囲の層厚を有するポリウレタンから作製されたワニス層として形成されている。ポリウレタンは、溶剤系又は水分散体とすることができる。ポリウレタンは、十分な変形能を有することが必要であり、異なるポリマーから構成することができる。これらは、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリアクリレートポリオール、及びこれらポリマーの混合物からなるポリウレタンを含む。ポリエステルポリオールからなるポリウレタンは好ましく使用することができる。これらのポリマーは、深絞りメンブレン13を製造する際のワニスのベースを形成する。
【0063】
十分な層厚を得るために、これらの層は、例えばスリットダイを用いたキャスト法、又はスクリーン印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷の手段によって製造することが好ましい。これらの製造方法は、ワンパス又は複数の連続したパスで適用することができる。
【0064】
第1適用ワニス層は、連続したパスの間でに少なくとも部分的に乾燥していることが好ましく、これによって、当該層は少なくとも上乾きの状態となる。しかしながら、当該層は特に硬化乾燥させることもできる。この乾燥の後、次のワニス層を堆積する。次のワニス層は、既に堆積したワニス層と均一なワニス層を形成するように、少なくとも既堆積ワニス層の特に表面をエッチングすることが好ましい。2を超えるワニス層の場合、全体として均一なワニス層が形成されるように、上記作業を層の数だけ実行する。
【0065】
好ましい実施形態において、ワニス層はワンパスで、約0.1μmから50μmの範囲、好ましくは0.1μmから35μmの範囲、さらに好ましくは1μmから25μmの範囲の層厚となるようにする。上述のように、そのような相対的に薄い部分層を用いることによって、全体的に大きな層厚の層を作製することができる。
【0066】
深絞りメンブレン13は、130℃から160℃の深絞り温度において、200%、好ましくは500%から1500%を超えるまで伸縮するように形成することができる。
【0067】
第1分離層12はキャリア膜11と深絞りメンブレン13との間に配設されており、ワックス、例えば、カルナバワックス、モンタン酸エステル、ポリエチレンワックス、ポリアミドワックス又はPTFEワックスから形成することができ、0.1μm未満の範囲の層厚を有する。また、シリコーンなどの表面活性物質も第1分離層として適している。メラミンホルムアルデヒド樹脂と架橋した薄いワニス層も、第1分離層として作用することができる。
【0068】
第2分離層14は深絞りメンブレン13と転写プライ15との間に配設することができ、第1分離層12と同様に、ワックス、例えば、カルナバワックス、モンタン酸エステル、ポリエチレンワックス、ポリアミドワックス又はPTFEワックスから形成することができ、0.1μm未満の範囲の層厚を有する。また、シリコーンなどの表面活性物質も第2分離層14として適している。メラミンホルムアルデヒド樹脂と架橋した薄いワニス層も、第2分離層14として作用することができる。
【0069】
キャリア膜11と深絞りメンブレン13との間に配設した第1分離層12によって、キャリア膜11の深絞りメンブレン13からの分離力は、深絞りメンブレン13と転写プライ15との間に配設した第2分離層14によって、深絞りメンブレン13の転写プライ15からの分離力の5倍から10倍小さい。このため、第1分離層12は、例えばポリエチレンワックスから作製することができ、第2分離層14は、例えばモンタン酸エステルから作製することができる。
【0070】
転写プライ15は、3つの転写層151から153を有する多層体として形成されている。
【0071】
第1転写層151は第2分離層と対向しており、保護層として形成されている。第1転写層は、例えば4μmから8μmの層厚を有するアクリレートから作製された保護ワニス、又は15μmから30μmの層厚を有するポリウレタンから作製された保護ワニスとして形成することができる。
【0072】
第2転写層152は、4μmから20μmの層厚を有するアクリレートから作製された着色層として形成されている。
【0073】
第3転写層153は、1μmから5μmの層厚のベースコートとして形成されている。ベースコートに対する原料としては、PMMA、PVC、ポリエステル、ポリウレタン、クロロ化ポリオレフィン、ポリプロピレン、エポキシ樹脂又は失活イソシアネートとポリウレタンポリオールとの組み合わせが考慮される。また、ベースコートは、無機フィラーを含むことができる。
【0074】
深絞りメンブレン13と転写プライ15との間に配設した第2分離層14によって、深絞りメンブレン13の転写プライ15からの分離力は、隣接した転写層151から153間の接着力の30%から70%小さくすることができる。
【0075】
図2及び
図3は、
図1に示す転写膜1を用いたインサートを製造する工程を示す。
【0076】
図2は、温度及び圧力の作用(
図2において矢印の向きで指示)の下、転写膜1を基板2に適用し、さらに基板2への積層後のキャリア膜11の分離を示す。
【0077】
基板2は、100μmから1000μmの範囲の層厚のABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー)から作製された膜として形成することができる。
【0078】
基板に転写膜1を結合させるために、0.1kN/cmから1.0kN/cmの線圧、好ましくは0.3kN/cmから0.4kN/cmの線圧で、120℃から300℃、好ましくは180℃から220℃の温度を適用する。
【0079】
図3は、転写膜1を有する基板2を130℃から160℃の範囲の温度で、金型3を用いて真空成形する工程を示す。この場合、深絞りメンブレン13は、転写プライ15から除去する。深絞り加工中、深絞りメンブレン13は、生成する歪みの引張力を吸収し、深絞りメンブレンの下側に位置する転写プライ15の保護層の表面特性を確定する。したがって、完成した装飾インサート4は、次の工程で型抜きされ、熱可塑性樹脂と背面射出成形される。
【0080】
図4及び
図5は、コンポーネント5をTOM積層膜でコーティングする工程を示す。
【0081】
第1工程において、転写膜1は平滑かつ平坦な基板2上に積層され、
図2において上述したように、当該積層の後、キャリア膜11が除去される。
【0082】
その後、基板2の裏面上にTOM積層膜を形成するために、
図4に示すような、5μmから20μmの層厚を有するTOMベースコートが適用される。そのようなTOMベースコートは、通常、ポリプロピレン、失活イソシアネートとポリウレタンポリオールとの組み合わせ、ポリウレタン、エポキシ樹脂から構成する。エポキシ樹脂を用いた場合、ベースコートに加えて、コンポーネントに対して適当なスプレーベースコートを適用できるという利点がある。これらのスプレーベースコートは、典型的にはアミノ基を含む種々の原料を含む。他のタイプは熱活性化される。
【0083】
図5に示す工程では、TOMにおいて、3次元コンポーネント5が
図4で記載されたTOM積層膜でコーティングされ、その後、深絞りメンブレン13が除去されている。
【0084】
さらなる工程では、コンポーネント5のコーティングは、型抜き、ミリング、レーザトリミングでトリミングされる。
【0085】
図6は、転写膜の第2実施形態を示す。転写膜1は、
図1に示す転写膜と同様に形成されており、第3転写層153がTOMベースコートとして形成されている点で相違する。TOMベースコートは、比較的大きな層厚を有し、好ましくはポリウレタンポリオールと失活したイソシアネートとの組み合わせとして形成されている。TOMベースコートは、活性化による架橋反応のために、約100℃から180℃の低加工温度及び0.1barから2barの低加工圧力で既に活性化されており、完成したコンポーネントに対して高い温度抵抗を付与することができる。転写膜1はTOMにおいて用いられる。転写膜の場合、型抜き、ミリング、レーザトリミングによるトリミングは省略される。
【0086】
図7は、キャリア膜11が転写膜1から剥離される第1工程を示す。
【0087】
図8は、TOMコンポーネント5が
図7に示す層複合体でコーティングされる第2工程を示す。
【0088】
深絞りメンブレン13は、コンポーネント5のコーティングの後に剥離され、深絞りメンブレン13上に残っている転写プライ15の残部15rは除去される。ここで、転写プライ15は、コンポーネント5に適用された転写プライの一部と残部15rとの間で、コンポーネント5のエッジで清浄に分離できるように、機械的に脆性である。最終的に、転写プライ15はトリミングして、コンポーネント5と互いのエッジを揃える。
【符号の説明】
【0089】
1 転写膜
2 基板
3 金型
4 インサート
5 コンポーネント
11 キャリア膜
12 第1分離層
13 深絞りメンブレン
14 第2分離層
15 転写プライ
15r 転写プライの残部
16 TOMベースコート
151 第1転写層
152 第2転写層
153 第3転写層