(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】痛みの予防および治療に使用するための鎮痛効果を有する化合物
(51)【国際特許分類】
C07H 19/167 20060101AFI20220906BHJP
A61K 31/7076 20060101ALI20220906BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20220906BHJP
A61P 3/12 20060101ALI20220906BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20220906BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20220906BHJP
A61P 13/10 20060101ALI20220906BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20220906BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20220906BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220906BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220906BHJP
A61P 21/02 20060101ALI20220906BHJP
A61P 25/06 20060101ALI20220906BHJP
C09K 9/00 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
C07H19/167 CSP
A61K31/7076
A61P25/04
A61P3/12
A61P25/00
A61P21/00
A61P13/10
A61P1/00
A61P19/02
A61P29/00
A61P35/00
A61P21/02
A61P25/06
C09K9/00
(21)【出願番号】P 2019540670
(86)(22)【出願日】2018-01-26
(86)【国際出願番号】 US2018015460
(87)【国際公開番号】W WO2018140734
(87)【国際公開日】2018-08-02
【審査請求日】2021-01-13
(32)【優先日】2017-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】596118493
【氏名又は名称】アカデミア シニカ
【氏名又は名称原語表記】ACADEMIA SINICA
【住所又は居所原語表記】128 Sec 2,Academia Road,Nankang,Taipei 11529 TW
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【氏名又は名称】伊藤 克博
(74)【代理人】
【識別番号】100130845
【氏名又は名称】渡邉 伸一
(72)【発明者】
【氏名】チェン、 チー-チェン
(72)【発明者】
【氏名】ファン、 ジム-ミン
(72)【発明者】
【氏名】リー、 チェン-ハン
(72)【発明者】
【氏名】チャン、 ジェン-ヤオ
【審査官】早川 裕之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2001/040244(WO,A1)
【文献】国際公開第2001/040245(WO,A1)
【文献】国際公開第2001/040799(WO,A1)
【文献】国際公開第2001/096356(WO,A1)
【文献】J. Comb. Chem.,2003年,5,292-310
【文献】Carbohydr. Res.,1982年,109,181-205
【文献】J. Org. Chem.,1959年,24,1487-1490
【文献】Biochem. Biophys. Res. Commun.,2000年,272,327-331
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07H 19/167
A61K 31/7076
A61P 25/04
A61P 3/12
A61P 25/00
A61P 21/00
A61P 13/10
A61P 1/00
A61P 19/02
A61P 29/00
A61P 35/00
A61P 21/02
A61P 25/06
C09K 9/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物:
【化1】
(式中、
nは0、1、2または3であり;
XはNH、OまたはSであり
YはO、NHまたはSであり;
R
1はOH、NH
2、NO
2、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、非置換または置換アルコキシ、アルコキシアルキル、アルケニルまたはアルキニルであり;
R
2およびR
3はそれぞれ独立してOH、NH
2、NO
2、ハロアルキル、ヒドロキシアルキルまたはアルキルアミノであり;そして
R
4は
グリシン、アラニン、システイン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、グルタミン、アスパラギン、スレオニン、アルギニン、リジン、プロリン、γ-アミノ酪酸(GABA)、セリン、チロシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、ヒスチジンから選択され、そしてR
4は、そのN末端基またはその側鎖アミノ基を介して、構造中のC(=O)と結合して
いるか、またはR
4
は、ペプチドRPKPQQFFGLM-CONH
2
であり、該ペプチドはKの側鎖アミノ基を介して、構造中のC(=O)と結合しており、ここで、アミノ酸またはペプチドのC末端は場合により修飾されている);
その互変異性体もしくは立体異性体;および、それらの薬学的に許容される塩。
【請求項2】
R
1、R
2およびR
3がそれぞれ独立してOHである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
nが1である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
XがNHであり、YがO、NHまたはSである、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
XがSであり、YがNHまたはOである、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
R
4が、グリシン、
システイン、バリン、フェニルアラニン、またはグルタミンから選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項7】
R
4
が、ペプチドRPKPQQFFGLM-CONH
2
であり、該ペプチドが、Kの側鎖アミノ基を介して、構造中のC(=O)に連結されている、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
化合物が式(IA)の化合物である、請求項1に記載の化合物:
【化2】
(式中、
Rは、
グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、またはフェニルアラニンに存在する基であり;そして
Z
+はH
+、Li
+、Na
+、K
+、Rb
+、Cs
+、NH
4
+またはアミニウムイオンであり;
ここで、
アミニウムイオンは、非環式および環式のアミニウムイオンを含むR
AR
BR
CNH
+であり;そして、R
A、R
B、およびR
Cは、独立してH、C
1~C
4アルキル、またはベンジルである);
その互変異性体もしくは立体異性体;および、それらの薬学的に許容される塩。
【請求項9】
以下から成る群より選択される、請求項1に記載の化合物:
【化3】
【化4】
【化5】
、
その互変異性体または立体異性体; およびそれらの薬学的に許容される塩。
【請求項10】
XがNHであり、YがOである、請求項1記載の式(I)の化合物
【化6】
を調製する方法であって、以下を含む方法:
(a)N
6-(4-ヒドロキシベンジル)アデノシン(2)を酸の存在下でアセトン中の2,2-ジメトキシプロパンと反応させて、式(3)の化合物を得る工程;
【化7】
(ここで、
酸は、p-トルエンスルホン酸またはカンファースルホン酸である);
(b)塩基の存在下で化合物(3)を薬剤と反応させて、式(4)の化合物を得る工程:
【化8】
(ここで、
PGは4-メトキシベンジルまたはベンゾイルであり;薬剤は塩化4-メトキシベンジルまたは塩化ベンゾイルであり;そして、塩基は炭酸カリウムまたはトリエチルアミンである);
(c)塩基の存在下で化合物(4)を1,1’-カルボニルジイミダゾール(CDI)と反応させて、式(5)の化合物を得る工程:
【化9】
(ここで、
塩基は4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)である);
(d)化合物(5)を
請求項1に記載のR
4
において定義されるアミノ酸またはペプチドの塩またはエステルと反応させて、式(6)の化合物を得る工程:
【化10】
(式中、
[A’]-NH-はアミノ酸またはペプチドの
塩またはエステルから形成される);および
(e)全ての保護基を除去して、式(IB)の化合物を得る工程:
【化11】
(式中、
[A]-NH-は、
アミノ酸またはペプチドである)。
【請求項11】
XおよびYが独立してNHである、請求項1記載の式(I)の化合物
【化12】
を調製する方法であって、以下を含む方法:
(a)化合物(4a)
【化13】
を塩基の存在下でジフェニルホスホリルアジド(DPPA)およびアジ化ナトリウムと反応させて、式(18)の化合物を得る工程:
【化14】
(ここで、
塩基は1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)である);
(b)触媒の存在下での水素化分解により化合物(18)を還元し、続いて促進剤の存在下でグリシンメチルエステル塩酸塩とカップリングさせて、式(19)の化合物を得る工程:
【化15】
(ここで、
触媒はリンドラー触媒であり、促進剤は1,1’-カルボニルジイミダゾールである);
(c)全ての保護基とグリシンメチルエステル塩酸塩に由来するエステル基を除去して、式(I-d1)の化合物を得る工程:
【化16】
【請求項12】
XがNHであり、YがSである、請求項1記載の式(I)の化合物
【化17】
を調製する方法であって、以下を含む方法:
(a)塩基の存在下で化合物(4a)を塩化メタンスルホニル(MsCl)と反応させ、続いてチオ酢酸カリウムと反応させて、式(21)の化合物を得る工程:
【化18】
(ここで、
塩基はトリエチルアミンおよび4-ジメチルアミノピリジンである);
(b)塩基を用いて化合物(21)からアセチル基を除去し、続いて促進剤の存在下で2,2,2-トリクロロエチルグリシンとカップリングさせて、式(22)の化合物を得る工程:
【化19】
(ここで、
塩基は水酸化カリウムであり、促進剤は1,1’-カルボニルジイミダゾールである);
(c)全ての保護基と2,2,2-トリクロロエチルグリシンから誘導されたエステル基を除去して、式(I-e1)の化合物を得る工程:
【化20】
【請求項13】
式(II)の化合物:
【化21】
(式中、
kは1、2または3であり;
XおよびYはそれぞれ独立してNH、OまたはSであり;
R
1はOH、NH
2、NO
2、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、非置換または置換アルコキシ、アルコキシアルキル、アルケニルまたはアルキニルであり;
R
2およびR
3はそれぞれ独立してOH、NH
2、NO
2、ハロアルキル、ヒドロキシアルキルまたはアルキルアミノであり;そして
R
4は
グリシン、アラニン、システイン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、グルタミン、アスパラギン、スレオニン、アルギニン、リジン、プロリン、γ-アミノ酪酸(GABA)、セリン、チロシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、ヒスチジンから選択され、そしてR
4は、そのN末端基またはその側鎖アミノ基を介して、構造中のC(=O)と結合して
いるか、またはR
4
は、ペプチドRPKPQQFFGLM-CONH
2
であり、該ペプチドはKの側鎖アミノ基を介して、構造中のC(=O)と結合しており、ここで、アミノ酸またはペプチドのC末端は場合により修飾されており;
環Aは、5または6員複素環および縮合複素環を含む置換または非置換の芳香族複素環であり;環内のヘテロ原子は、1つまたはそれ以上の窒素、酸素、および/または硫黄ヘテロ原子であり;そして、置換基は、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ヒドロキシル、ニトロ、アルキル、トリフルオロメチル基および、それらの組み合わせから成る群から選択される);
その互変異性体もしくは立体異性体;および、それらの薬学的に許容される塩。
【請求項14】
以下から成る群より選択される、請求項
13に記載の化合物:
【化22】
【請求項15】
以下を含む医薬組成物:
(a)請求項1~
9、
13および
14のいずれか1項に記載の化合物、その互変異性体もしくは立体異性体、または、それらの薬学的に許容される塩の治療的有効量;および
(b)薬学的に許容される担体、賦形剤または媒体。
【請求項16】
請求項1~
9、
13および
14のいずれか1項に記載の化合物、その互変異性体もしくは立体異性体、またはそれらの薬学的に許容される塩を含む、治療を必要とする対象の疼痛を治療するための医薬組成物。
【請求項17】
疼痛が組織アシドーシス、神経損傷、またはその両方に関連する、請求項
16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
疼痛が機能不全性疼痛である、請求項
16に記載の医薬組成物。
【請求項19】
機能不全性疼痛が、線維筋痛症、膀胱痛症候群、過敏性腸症候群によって引き起こされる疼痛、および顎関節症に関連する疼痛から成る群より選択される、請求項
18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
疼痛が、炎症性疼痛、癌関連疼痛、胸痛、背部痛、頸部痛、肩痛、片頭痛、頭痛、筋膜痛、関節痛、筋肉痛症候群、神経因性疼痛、末梢痛、交感神経痛、術後痛、心的外傷後痛、および多発性硬化症疼痛から成る群から選択される、請求項
16に記載の医薬組成物。
【請求項21】
疼痛が慢性疼痛である、請求項
16に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
この出願は2017年1月27日に提出された米国仮出願第62/451,322号の利益を主張するものである。
【0002】
発明の分野
本発明は、疼痛の予防および/または治療に使用するための化合物に関する。特に、本発明は、アデノシン誘導体、および疼痛の予防および/または治療におけるそれらの適用に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
痛みは通常、強い刺激または組織/神経の損傷によって引き起こされる不快な感覚である。痛みは、影響する時間によって急性/慢性の2つに分類され得る。急性の痛みは、状況に応じて、ほんの一瞬または数週間持続し得る。急性の痛みは通常、損傷した組織の回復後に消失する。慢性疼痛は、3~6カ月より長く続く痛みとして定義され、これは通常の損傷の治癒時間である。慢性疼痛を有する大きな集団があり、慢性疼痛で報告される患者の約5分の1が主に神経因性疼痛を患っている。神経障害性疼痛は、病変または疾患の影響を受けた神経系から生じる疼痛である。オピオイドまたは非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)で緩和され得る侵害受容性疼痛とは異なり、神経障害性疼痛には効果的な治療法がない。
【0004】
線維筋痛症(FM)症候群は、慢性的な広範囲の痛みと圧痛により特徴付けられる。疲労、睡眠障害、認知機能障害の症状も発生する場合がある。FMの主な原因は依然として不明であるが、侵害受容性の痛みの閾値の低下によって特徴付けられる。線維筋痛症および神経障害性疼痛には、末梢および中枢神経系の病理にいくらかの多様性がある。
【0005】
神経障害性疼痛の治療には、プレガバリン(リリカ(登録商標))およびガバペンチン(ニューロチン(登録商標))が推奨されている。プレガバリンとガバペンチンは、γ-アミノ酪酸(GABA)に類似した構造を有しているが、それらはGABA受容体とは相互作用しない。これらの2つの薬物は、カルシウムチャネルα2-δサブユニットと相互作用することにより作用し、結果として、シナプスから放出されるさまざまな神経伝達物質の減少をもたらす[非特許文献1]。プレガバリン(25mg/日)およびガバペンチン(300mg/日)の適応には、抗痙攣薬としての使用も含まれる;しかし、鎮静、めまい、浮腫を含む副作用が報告されている。
【0006】
ミルナシプラン(サベラ(登録商標))およびデュロキセチン(シンバルタ(登録商標))は、FMと同様に、神経障害性疼痛の治療にも使用されている[非特許文献2;非特許文献3]。ミルナシプランとデュロキセチンは、セロトニンとノルエピネフリンの再取り込み阻害薬(SNRI)であり、シナプス間隙におけるセロトニンとノルエピネフリンの作用期間を延長して、セロトニンとノルエピネフリンによって誘発されるシグナルを強化する。セロトニンのターゲットは5-ヒドロキシルトリプタミン(5-HT)受容体であるが、これは、セロトニンによって活性化されるサブタイプに応じて、侵害受容促進効果と抗侵害受容効果の両方に関連する15を超えるサブタイプを含んでいる。ノルエピネフリンの抗侵害受容効果は、α2アドレナリン受容体によって媒介される。
【0007】
シンバルタ(登録商標)、リリカ(登録商標)、およびサベラ(登録商標)は、FDAによってFMの治療が承認された数少ない薬剤である。しかし、1300例以上のFM患者に対してNational Pain Foundationが実施したオンライン調査によると、これらの薬を服用している患者の3分の2は、それらを効果的な薬とはみなしていない[非特許文献4]。この残念な結果は、FMに対する我々の不十分な理解を反映している可能性がある。
【0008】
SPのASIC3陽性筋肉侵害受容器へのターゲティングが慢性的な広範囲の痛みを抑制することを実証することにより、サブスタンスPの新たな抗侵害受容シグナル伝達メカニズムが以前に同定された[非特許文献5;非特許文献6]。サブスタンスP(SP)は、最初にウサギの腸から単離され、そのアミノ酸配列は後にArg-Pro-Lys-Pro-Gln-Gln-Phe-Phe-Gly-Leu-Met-CONH2であると決定された。SPはタキキニン神経ペプチドのクラスに属し、Phe-X-Gly-Leu-Met-NH2(Xは芳香族または脂肪族のアミノ酸)の同様なC末端配列と、かなり多様なN末端を有している。SPのターゲットは、中枢および末梢神経系において発現されるGタンパク質共役受容体(GPCR)のニューロキニン1受容体(NK1R)である。SPは疼痛伝達の主要な要素であると考えられており、その作用は濃度に依存的である。NK1R(GPCRの一員)のノックアウトマウスは、野生型マウスと比較して鎮痛効果を示したが、NK1Rアンタゴニストの使用は、臨床試験において同様な結果を生じなかった。臨床試験の失敗は、おそらく疼痛知覚のための脊柱上部位におけるNK1R分布の種差によるものである[非特許文献7]。
【0009】
この作用機序に基づき、T1-11(化合物2)と呼ばれるN6-(4-ヒドロキシベンジル)アデノシンが、ASIC3媒介性疼痛モデルの抗侵害受容剤であることが以前に示された[非特許文献8]。T1-11は、SP感受性ASIC3発現筋侵害受容器の外向き電流を媒介し、よって、酸誘発ASIC3活性化を阻害できる[非特許文献9]。筋肉内のSPは、特殊なNK1受容体シグナル伝達経路を媒介して、筋肉侵害受容器の酸活性化を阻害し、これにより、筋肉内酸注入の繰り返しによって引き起こされる慢性的な機械的痛覚過敏に対する予想外の抗侵害受容効果がもたらされる[非特許文献10]。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【文献】Taylor,C.;Angelotti,T.;Fauman,E.Pharmacology and mechanism of action of pregabalin:the calcium channel alpha2-delta(α2-δ)subunit as a target for antiepileptic drug discovery.Epilepsy Res.2006,73,137-150
【文献】Derry,S.;Gill,D.;Phillips,T.;Moore,R.Milnacipran for neuropathic pain and fibromyalgia in adults.Cochrane Database Syst.Rev.2012,doi:10.1002/14651858.CD008244.pub2;
【文献】Lunn,M.;Hughes,R.and Wiffen,P.Duloxetine for treating painful neuropathy,chronic pain or fibromyalgia.The Cochrane Library,2014,doi:10.1002/14651858.CD007115.pub3
【文献】National Pain Foundation,Fibromyalgia drugs:successes or failures? National Pain Report 2014,April 23
【文献】Lin,C.-C.J.;Chen,W.-N.;Chen,C.-J.;Lin,Y.-W.;Zimmer,A.;Chen,C.-C.An antinociceptive role for substance P in acid-induced chronic muscle pain.Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.2012,109,E76
【文献】Sun,W.H.;Chen,C.C.Roles of proton-sensing receptors in the transition from acute to chronic pain.J.Dent.Res.2016,95,135-142
【文献】Hill,R.NK1(substance P)receptor antagonists - why are they not analgesic in humans? Trends Pharmacol.Sci.2000,21,244-246
【文献】Chen,C.-C.;Lin,Y.-L.;Fang,J.-M.;Chern,Y.;Lin,C.-C.J.;Chen,W.-N.Methods and compositions for treating pain.
【文献】Deval,E.;Noel,J.;Gasull,X.;Delaunay1,A.;Alloui,A.;Friend,V.;Eschalier,A.;Lazdunski,M.,Lingueglia,E.Acid-sensing ion channels in postoperative pain.J.Neurosci.2011,31,6059-6066
【文献】Lin,C.-C.J.;Chen,W.-N.;Chen,C.-J.;Lin,Y.-W.;Zimmer,A.;Chen,C.-C.An antinociceptive role for substance P in acid-induced chronic muscle pain.Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.2012,109,E76-E83
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
発明の概要
本発明においては、T1-11とサブスタンスPに由来するコンジュゲート化合物Ic-2が合成される。化合物Ic-2は、慢性的な広範な痛みが間欠的寒冷ストレス(ICS)によって誘発される線維筋痛症のマウスモデルにおいて、14μg/kg(160ピコモル)から始まる鎮痛効果を示した。さらに、鎮痛作用をテストするために、アミノ酸(例えば、I-a1)またはペプチド(例えば、I-c1)とのコンジュゲーションによって一連の化合物が調製された。
【課題を解決するための手段】
【0012】
1つの側面では、本発明は、式(I)の化合物:
【0013】
【化1】
(式中、
nは0、1、2または3であり;
XおよびYはそれぞれ独立してNH、OまたはSであり;
R
1はOH、NH
2、NO
2、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、非置換または置換アルコキシ、アルコキシアルキル、アルケニルまたはアルキニルであり;
R
2およびR
3はそれぞれ独立してOH、NH
2、NO
2、ハロアルキル、ヒドロキシアルキルまたはアルキルアミノであり;そして
R
4はアミノ酸またはペプチドに由来する部分であり、そしてR
4は、そのN末端基またはその側鎖アミノ基を介して、構造中のC(=O)と結合しており、ここで、アミノ酸
ま
たはペプチドのC末端は場合により修飾されている);
その互変異性体もしくは立体異性体;または上記のものの薬学的に許容される塩に関する。
【0014】
別の側面では、本発明は、式(II)の化合物:
【0015】
【0016】
(式中、
kは1、2または3であり;
XおよびYはそれぞれ独立してNH、OまたはSであり;
R1はOH、NH2、NO2、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、非置換または置換アルコキシ、アルコキシアルキル、アルケニルまたはアルキニルであり;
R2およびR3はそれぞれ独立してOH、NH2、NO2、ハロアルキル、ヒドロキシアルキルまたはアルキルアミノであり;そして
R4はアミノ酸またはペプチドであり;
環Aは、5または6員複素環および縮合複素環を含む置換または非置換芳香族複素環であり;環内のヘテロ原子は、1つまたはそれ以上の窒素、酸素、および/または硫黄ヘテロ原子であり;そして、置換基は、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ヒドロキシル、ニトロ、アルキル、トリフルオロメチル基および、それらの組み合わせから成る群から選択される);
その互変異性体もしくは立体異性体;および上記のものの薬学的に許容される塩に関する。
【0017】
別の側面では、本発明は、以下を含む組成物に関する:
(a)前述の化合物またはその薬学的に許容される塩の治療的有効量;および
(b)薬学的に許容される担体、賦形剤または媒体。
【0018】
さらに別の側面では、本発明は、それを必要とする対象の疼痛を治療するための薬剤の製造における前述の化合物の使用に関する。あるいは、本発明は、それを必要とする対象の疼痛の治療に使用するための前述の化合物に関する。
【0019】
本発明の1つの実施態様では、疼痛は酸誘発性の疼痛であり得る。酸誘発性の疼痛は、酸誘発性の筋肉痛であり得る。酸誘発性の筋肉痛は、酸誘発性の慢性筋痛であり得る。
【0020】
本発明の1つの実施態様では、疼痛は、炎症性疼痛、癌関連疼痛、胸痛、背部痛、頸部痛、肩痛、片頭痛、頭痛、筋膜痛、関節痛、筋肉痛症候群、神経因性疼痛、末梢痛、交感神経痛、術後痛、心的外傷後痛、および多発性硬化症疼痛から成る群から選択される。
【0021】
本発明の別の実施態様では、疼痛は機能不全性疼痛であり得る。機能不全性疼痛は、線維筋痛症、筋筋膜痛、膀胱痛症候群、過敏性腸症候群に起因する疼痛、および顎関節症に関連する疼痛から成る群から選択され得る。
【0022】
これらおよび他の側面は、本開示の新規な概念の精神および範囲から逸脱することなく、その変形および修正が影響を受け得るが、以下の図面と併せて好ましい実施態様の以下の説明から、明らかとなるであろう。
【0023】
本発明では、式(I)および(II)の化合物を使用して、術後痛、筋筋膜痛症候群、ならびに筋肉起源の疼痛でありASIC3およびサブスタンスPに関連する他の慢性的な広範囲の疼みが治療され得る。
【0024】
理論により制限されることを望まないが、式(I)および(II)の化合物の鎮痛効果は、式(I)および(II)の化合物が、神経細胞が過分極状態となり、発火閾値が上昇するように、筋肉侵害受容器において、ゆっくりと不活化する外向き電流を誘導できるという事実によるものである。
【0025】
添付の図面は、本発明の1つまたはそれ以上の実施態様を示しており、記載された説明とともに、本発明の原理を説明する働きを持つ。実施態様の同一または同様な要素を参照するために、可能な限り、図面全体を通して同じ参照番号が使用される。
【0026】
図面の簡単な説明
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、式(I)の代表的な化合物を示している。中でも、化合物I-a1(JMF3737)はT1-11とグリシンとのコンジュゲートである。化合物I-c2は、T1-11とサブスタンスP(ウンデカペプチドRPKPQQFFGLM-CONH
2)とのコンジュゲートである。
【
図2】
図2は、PMB保護中間体化合物4aを介した化合物I-a1の合成方法を示している。
【
図3】
図3は、ベンゾアート保護中間体化合物4bを介した化合物I-a1の合成方法を示している。
【
図4】
図4は、化合物II-a1の合成を示している。
【
図5】
図5は、化合物II-b1の合成を示している。
【
図6】
図6は、化合物I-d1の合成を示している。
【
図7】
図7は、化合物I-e1の合成を示している。
【
図8】
図8は、化合物I-f1およびI-f2の合成を示している。
【
図9】
図9は、慢性的な広範な痛みが間欠的寒冷ストレス(ICS)によって引き起こされる線維筋痛症のマウスモデルにおける鎮痛効果を示している。T1-11は、腹腔内注射(i.p.)で0.03mg/kgから、強制経口投与(p.o.)で8mg/kgから始まる有効用量で、用量依存的な鎮痛効果を示す。対照的に、T1-11とグリシンに由来するコンジュゲート化合物I-a1(JMF3737)は、1mg/kg(i.p.)および1mg/kg(p.o.)から始まる有効用量で優れた用量依存的鎮痛効果を示す。T1-11とグリシンの経口投与による併用処置は、相乗効果を示さない。
【
図10】
図10は、化合物I-a1(JMF3737)の鎮痛作用のメカニズムを示している;RP67580およびJMF3737の濃度はそれぞれ10μMである。
【
図11】
図11は、化合物I-a1(JMF3737)の反復処置に対し、耐性を示さず、治療効果を示している。
【
図12】
図12は、慢性的な広範な痛みが間欠的寒冷ストレス(ICS)によって引き起こされる線維筋痛症のマウスモデルにおけるJMF4413とJMF3795の鎮痛効果を示している。
【発明を実施するための形態】
【0028】
発明の詳細な記述
定義
特に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての技術的および科学的な用語は、本発明が属する当該技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾がある場合は、定義を含め、本明細書が優先するものとする。本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形の「1つ(a)」、「1つ(an)」、および「その(the)」は、内容が明らかにそうでないことを規定しない限り、複数の参照を含んでいる。
【0029】
本明細書を通じて、内容がそうでないことを要求しない限り、「含む(comprise)」との語、または「含む(comprises)」もしくは「含む(comprising)」などの変形は、記述された要素もしくは整数または要素もしくは整数の群を含むことを意味すると理解されるが、他の要素もしくは整数または要素もしくは整数の群を除外するものではない。
【0030】
本明細書で使用される場合、「ハロ」という用語は、-F、-Cl、-Brまたは-Iを意味する。
【0031】
本明細書で使用される場合、「置換」という用語は、指定された原子上の1つまたはそれ以上の水素が、指し示された群からの選択で置き換えられることを意味するが、ただし、既存の状況下において指定された原子の通常の原子価を超えず、置換により安定な化合物が得られるものとする。
【0032】
本明細書で使用される場合、単独でまたは他の用語と組み合わせて使用される「アルキル」という用語は、直鎖または分岐であり得る飽和炭化水素基を指す。いくつかの実施態様では、アルキル基は1~6、1~4、または1~3個の炭素原子を含む。アルキル部分の例には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、2-メチル-1-ブチル、3-ペンチル、n-ヘキシル、1,2,2-トリメチルプロピルなどの化学基が含まれるが、これらに限定はされない。いくつかの実施態様では、アルキル基はメチル、エチル、またはプロピルである。
【0033】
本明細書で使用される場合、単独でまたは他の用語と組み合わせて使用される「アルケニル」という用語は、少なくとも1つの炭素-炭素単結合が炭素-炭素二重結合で置き換えられているアルキル基に由来する基を指す。いくつかの実施態様では、アルケニル部分は2~6、または2~4個の炭素原子を含む。例示的なアルケニル基には、エテニル、n-プロペニル、イソプロペニル、n-ブテニル、sec-ブテニル、ペンテニル、ヘキセニルなどが含まれるが、これらに限定はされない。
【0034】
本明細書で使用される場合、単独でまたは他の用語と組み合わせて使用される「アルキニル」という用語は、少なくとも1つの炭素-炭素単結合が炭素-炭素三重結合で置き換えられているアルキル基に由来する基を指す。いくつかの実施態様では、アルキニル部分は2~6、または2~4個の炭素原子を含む。アルキニル基の例には、エチニル、プロピン-1-イル、プロピン-2-イル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニルなどが含まれるが、これらに限定はされない。
【0035】
本明細書で使用される場合、「ハロアルキル」という用語は、1つまたはそれ以上のハロ置換基を有する置換アルキルを意味する。例えば、「ハロアルキル」は、置換基として少なくとも1つのハロゲンを有するアルキルを指し、各置換基は、モノ、ジ、トリフルオロメチルなど、同じでも異なっていてもよい。
【0036】
本明細書で使用される場合、「アルキルアミノ」という用語は、基-NRR’を指し、ここで、Rはアルキルであり、R’は水素またはアルキルである。
【0037】
本明細書で使用される場合、「アルコキシアルキル」という用語は、本明細書で定義されるアルキル基を介して親分子部分に付加されている、本明細書で定義されるアルコキシ基を指す。アルコキシアルキルの代表例には、メトキシメチル、メトキシエチル、およびメトキシプロピルが含まれるが、これらに限定はされない。
【0038】
本明細書で使用される場合、「ペプチド」という用語は、ペプチド結合により連結されたアミノ酸モノマー、好ましくは50個以下のアミノ酸モノマー、より好ましくは2~30個のアミノ酸、より好ましくは2~20個のアミノ酸、例えば9、10、11、または12個のアミノ酸の短い鎖を指す。ペプチドには、オリゴペプチドおよびポリペプチドが含まれる;前者は通常2~20個のアミノ酸を有し、後者は通常50個以下のアミノ酸を有する。
【0039】
本明細書で使用される場合、「アミノ酸またはペプチドの誘導体」という用語は、アミノ酸またはペプチドの塩、エステルまたは両方を含む。塩は、C末端、N末端および/または側鎖基に由来してもよく、エステルはC末端および/または側鎖基に由来してもよい。
【0040】
本明細書で使用される場合、「アミノ酸またはペプチドのC末端修飾」などの記述は、末端-COOHの修飾、または末端-COOHの生物学的等価体の類似体との置換を指す。修飾の例には、メチル化などのエステル化などが含まれるが、これらに限定はされない。類似体の例には、アミド部分、ホスホネート部分、スルホネート部分、ヒドロキサメート部分、アシルヒドラジド、ホスホナミド、スルホンアミドなどが含まれるが、これらに限定はされない。
【0041】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される塩」は、親化合物がその酸塩または塩基塩を作ることにより修飾されている開示の化合物の誘導体を指す。薬学的に許容される塩の例には、アミン、ピリジン、ピリミジンおよびキナゾリンなどの塩基性残基の無機酸塩または有機酸塩;カルボン酸などの酸性残基のアルカリ塩または有機塩;などが含まれるが、これらに限定はされない。
【0042】
本明細書で使用される場合、「立体異性体」という用語は、空間内の原子の配向のみが異なる個々の分子のあらゆる異性体のための一般的な用語である。それは、鏡像異性体と、他方の鏡像ではない1以上のキラル中心を持つ化合物の異性体(ジアステレオ異性体)を含む。「鏡像異性体」および「鏡像異性」という用語は、その鏡像に重ね合わせることができず、それゆえ光学的に活性な分子を指すが、鏡像異性体は偏光面を一方向に回転させ、その鏡像化合物は偏光面を反対方向に回転させる。
【0043】
本明細書で使用される場合、「互変異性体」という用語は、特にプロトンの再配置を伴う、容易に相互変換する有機化合物の構成異性体を指す。互変異性体の例には、アミノ酸およびカルボン酸アンモニウム、ケトンおよびエノールなどが含まれるが、これらに限定はされない。
【0044】
本明細書で使用される場合、「治療する」または「治療」という用語は、有効量の治療剤を、神経変性疾患および/または疼痛を有する、またはそのような疾患および/または疼痛に対する症状または素因を有し、それを必要とする対象に、疾患および/または疼痛、その症状、またはそれに対する素因を治癒、軽減、緩和、矯正、改善、または予防する目的で投与することを指す。そのような対象は、任意の適切な診断方法の結果に基づいて、医療専門家によって同定され得る。
【0045】
本明細書で使用される場合、「有効量」という用語は、治療対象に治療効果を与えるのに必要な活性化合物の量を指す。当業者によって認識されるように、有効用量は、投与経路、賦形剤の使用、および他の治療的処置との併用の可能性に応じて変動するであろう。
【0046】
本明細書で使用される場合、米国保健社会福祉省食品医薬品局によって発行されている「Guidance for Industry and Reviewers Estimating the Safe Starting Dose in Clinical Trials for Therapeutics in Adult Healthy Volunteers」は、「治療的有効量」が次式からの計算によって得られ得ることを開示している:
【0047】
HED=mg/kg単位の動物の用量×(kg単位の動物の体重/kg単位のヒトの体重)。
【0048】
発明の化合物
本発明は、式(I)の化合物:
【0049】
【0050】
(式中、
nは0、1、2または3であり;
XおよびYはそれぞれ独立してNH、OまたはSであり;
R1はOH、NH2、NO2、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、非置換または置換アルコキシ、アルコキシアルキル、アルケニルまたはアルキニルであり;
R2およびR3はそれぞれ独立してOH、NH2、NO2、ハロアルキル、ヒドロキシアルキルまたはアルキルアミノであり;そして
R4はアミノ酸またはペプチドに由来する部分であり、そしてR4は、そのN末端基またはその側鎖アミノ基を介して、構造中のC(=O)と結合しており、ここで、アミノ酸
またはペプチドのC末端は場合により修飾されている);
その互変異性体もしくは立体異性体;および上記のものの薬学的に許容される塩を提供する。
【0051】
いくつかの実施態様では、R1、R2、およびR3はそれぞれ独立してOHである。
【0052】
1つの実施態様では、nは1である。
【0053】
いくつかの実施態様では、XおよびYはそれぞれ独立してNH、OまたはSである。
【0054】
さらなる実施態様では、XはNHであり、YはOである。
【0055】
さらなる実施態様において、XはNHであり、YはNHである。
【0056】
さらなる実施態様では、XはNHであり、YはSである。
【0057】
XがSであり、YがNHである、請求項1の化合物。
【0058】
いくつかの実施態様では、R4は、酸性側鎖を有するアミノ酸、塩基性側鎖を有するアミノ酸、極性側鎖を有するアミノ酸、非極性側鎖を有するアミノ酸に由来する部分;またはペプチドに由来する部分である。いくつかの実施態様では、R4はグリシン、アラニン、システイン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、グルタミン、アスパラギン、トレオニン、アルギニン、リジン、プロリン、または20個未満のアミノ酸を有する場合により置換されたペプチドに由来する。いくつかの実施態様では、アミノ酸はグリシン、バリン、システイン、フェニルアラニンまたはグルタミンである。1つの実施態様では、ペプチドはRPKPQQFFGLM-CONH2であり、ペプチドはKの側鎖アミノ基を介して、構造中のC(=O)に連結されている。
【0059】
本発明は、式(II)の化合物:
【0060】
【0061】
(式中、
kは1、2または3であり;
XおよびYはそれぞれ独立してNH、OまたはSであり;
R1はOH、NH2、NO2、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、非置換または置換アルコキシ、アルコキシアルキル、アルケニルまたはアルキニルであり;
R2およびR3はそれぞれ独立してOH、NH2、NO2、ハロアルキル、ヒドロキシアルキルまたはアルキルアミノであり;そして
R4はアミノ酸またはペプチドであり;
環Aは、5または6員複素環および縮合複素環を含む置換または非置換芳香族複素環であり;環内のヘテロ原子は、1つまたはそれ以上の窒素、酸素、および/または硫黄ヘテロ原子であり;そして、置換基は、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ヒドロキシル、ニトロ、アルキル、トリフルオロメチル基および、それらの組み合わせから成る群から選択される);
その互変異性体もしくは立体異性体;および上記のものの薬学的に許容される塩を提供する。
【0062】
化学合成
別の側面では、本発明は、以下の工程を含む、上記の式(I)の化合物を調製する方法に関する:
(a)N6-(4-ヒドロキシベンジル)アデノシン(2)を酸の存在下でアセトン中の2,2-ジメトキシプロパンと反応させて、式(3)の(2’,3’-O-イソプロピリデン)アデノシン化合物を得る工程;
【0063】
【0064】
(b)(2’,3’-O-イソプロピリデン)アデノシン化合物(3)を塩基の存在下でヒドロキシル基保護剤と反応させて、フェノール保護基(PG)を有する式(4)の(2’,3’-O-イソプロピリデン)アデノシン化合物を得る工程;
【0065】
【0066】
(c)(2’,3’-O-イソプロピリデン)アデノシン誘導体(4)を塩基の存在下で1,1’-カルボニルジイミダゾール(CDI)と反応させて、ヒドロキシル活性化基を有する式(5)の(2’,3’-O-イソプロピリデン)アデノシン化合物を得る工程;
【0067】
【0068】
(d)(2’,3’-O-イソプロピリデン)アデノシン化合物(5)をアミノ酸またはペプチドの誘導体(α-アミノエステルなど)と反応させてカップリング反応を行い、式(6)の(2’,3’-O-イソプロピリデン)アデノシン化合物を得る工程;
【0069】
【0070】
(式中、[A’]-NH-はアミノ酸またはペプチドの誘導体に由来する);
そして
(e)全ての保護基を化合物(6)から除去して、式(I)の化合物を得る工程;
【0071】
【0072】
(式中、[A]-NH-は、アミノ酸またはペプチドの誘導体中のアミノ酸またはペプチドである)。
【0073】
本発明の1つの実施態様では、工程(a)の酸は、p-トルエンスルホン酸またはカンファースルホン酸であり得る。
【0074】
本発明の別の実施態様では、工程(b)のヒドロキシル保護剤(PG-Cl)は、塩化4-メトキシベンジルまたは塩化ベンゾイルであり得る。
【0075】
本発明の別の実施態様では、工程(d)のアミノ酸またはペプチドの誘導体は、グリシンメチルエステル、グリシンエチルエステル、L-フェニルアラニンエチルエステル、L-バリンエチルエステル、γ-アミノ酪酸メチルエステル、またはウンデカペプチドArg-Pro-Lys-Pro-Gln-Gln-Phe-Phe-Gly-Leu-Met-CONH2(サブスタンスP)であり得る。
【0076】
本発明の別の実施態様では、工程(e)の脱保護方法は、塩基を使用してベンゾイル基を切断し、酸を使用してp-メトキシベンジル基を除去することを含み得る;ここで、塩基は水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸セシウムまたは水酸化アンモニウムであり得、酸はトリフルオロ酢酸(TFA)または塩酸であり得る。
【0077】
本発明の別の実施態様では、工程(f)における加水分解は、アルキル基を除去するために塩基を使用することを含み得る;ここで、塩基は、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸セシウムまたは水酸化アンモニウムであり得る。
【0078】
さらに、本発明の別の実施態様では、Z+がLi+、Na+、K+、Rb+、Cs+またはNH4
+である工程(f)で調製された式(IA)の塩は、無機酸を使用してカルボン酸に変換され、ここで、無機酸は塩酸であり得る。Rは一般的なα-アミノ酸に存在する置換基である。
【0079】
【0080】
さらに、本発明の別の実施態様では、式(IA、Z+=H+)のカルボン酸が、アミンRARBRCNで処理され、式(IA)のアミニウム塩が形成されるが、ここで、アミンはトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ-n-ブチルアミン、ベンジルジメチルアミン、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、またはN-メチルモルホリンであり得る。
【0081】
1つのアプローチでは、
図2に示されるように、PMB保護中間体化合物4aを介して化合物I-a1が合成される:
【0082】
(a)以前に報告された手順に従い[Chen,J.-B.;Liu,E.M.;Chern,T.-R.;Yang,C.-W.;Lin,C.-I.;Huang,N.-K.;Lin,Y.-L.;Chern,Y.;Lin,J.-H.Fang,J.-M.Design and synthesis of novel dual-action compounds targeting the adenosine A2A receptor and adenosine transporter for neuroprotection.ChemMedChem 2011,6,1390-1400]、T1-11が、6-クロロプリンリボシドと4-ヒドロキシベンジルアミンの置換反応から得られ、そして、アセトン中の2,2-ジメトキシプロパンで処理されて、p-トルエンスルホン酸の触媒作用により、アセトニド化合物3が得られる:
【0083】
【0084】
(b)3のフェノール基は、塩基K2CO3の存在下で4-メトキシベンジルクロリドによるアルキル化によりp-メトキシベンジル(PMB)エーテルとして保護され、化合物4aが与えられる:
【0085】
【0086】
(c)4aのヒドロキシル基は、CDIで処理することにより活性化され、5aが与えられ、グリシンエチルエステルとさらに反応して、カルバメート化合物6a-1を生成する:
【0087】
【0088】
(d)6a-1のアセトニドおよびPMBエーテル保護基は、トリフルオロ酢酸(TFA)で処理することにより除去され、化合物7a-1が与えられ、これは、アルカリ条件下で加水分解され、クロマトグラフィーによる精製後に化合物I-a1が得られる:
【0089】
【0090】
別のアプローチでは、
図3に示されるように、ベンゾアート保護中間体化合物4bを介して化合物I-a1が合成される。
【0091】
(a)3のフェノール基は、塩基Et3Nの存在下、塩化ベンゾイルでアシル化することにより安息香酸エステルとして保護され、化合物4bが与えられる:
【0092】
【0093】
(b)4bのヒドロキシル基はCDIで処理することにより活性化され、その後グリシンメチルエステルと反応して、カルバメート化合物6b-1が得られる:
【0094】
【0095】
(c)6b-1のアセトニドおよびエステル基を脱保護することで、クロマトグラフィーによる精製後に化合物I-a1が生成される。
【0096】
別の実施態様では、化合物4aがイミダゾリド5aとして活性化され、これは、L-フェニルアラニンエチルエステルと反応して化合物6a-2が与えられる。
【0097】
【0098】
別の実施態様では、化合物4bがCDIによって活性化され、次いでL-バリンメチルエステルで処理されて、化合物6b-2が与えられる:
【0099】
【0100】
別の実施態様では、化合物6a-2をTFA、続いてNaOHで処理して保護基を除去し、化合物I-a2を生成する:
【0101】
【0102】
別の実施態様では、化合物6b-2をTFA、続いてNaOHで処理して保護基を除去し、化合物I-a3を生成する:
【0103】
【0104】
1つの側面では、類似化合物8が合成される。化合物4bがCDIによって活性化され、n-ブチルアミンで処理される。この生成物をTFA、続いてNaOHで処理してアセトニドおよびベンゾアート保護基を除去し、化合物8を生成する:
【0105】
【0106】
別の実施態様では、末端カルボン酸を含む類似化合物Ib-1が、中間化合物9を介して合成される。イミダゾリド化合物5aをγ-アミノ酪酸メチルエステルと反応させて化合物9を得、これをTFA、続いてNaOHで処理してアセトニド、PMBおよびエステル保護基を除去し、化合物I-b1を生成する:
【0107】
【0108】
別の実施態様では、化合物I-c1が中間化合物10を介して合成される。化合物6a-1を加水分解して対応するカルボン酸を得、これをL-ロイシル-L-メチオニンアミドとのカップリング反応に供して化合物10を形成する。10のアセトニドおよびPMB保護基をTFAで処理して除去することで、化合物I-c1が与えられる:
【0109】
【0110】
別の実施態様では、化合物I-c2が、イミダゾリド化合物5aとSP、ウンデカペプチドArg-Pro-Lys-Pro-Gln-Gln-Phe-Phe-Gly-Leu-Met-CONH2のカップリング反応と、それに続くTFAでの処理によってアセトニドおよびPMB保護基を除去することで合成される:
【0111】
【0112】
別の実施態様では、式II-a1(14)の化合物は、N
6-(4-ヒドロキシベンジル)基をN
6-(インドール-3-イル)エチル基で置換したI-a1の類似化合物である。化合物14(II-a1)は、
図4に示されているように、N
6-(インドール-3-イル)エチルアデノシン(化合物11)から中間化合物12および13を介して合成される。
【0113】
【0114】
(a)ジイソプロピルエチルアミンの存在下、エタノール中で6-クロロプリンリボシド(1)を(インドール-3-イル)エチルアミンと反応させて、N6-(インドール-3-イル)エチル-アデノシン(11)を得る;
(b)p-トルエンスルホン酸の存在下で化合物11をアセトン中で2,2-ジメトキシプロパンと反応させて、式(12)のアセトニド化合物を得る;
(c)CDIで化合物12のヒドロキシル基を活性化した後、グリシンメチルエステルと反応させて、式(13)のカルバメート化合物を得る;そして
(d)アセトニド保護基をTFAで除去し、続いてアルカリ条件下で加水分解して、化合物14(II-a1)を得る。
【0115】
別の実施態様では、式II-b1の化合物は、N
6-(4-ヒドロキシベンジル)基をN
6-(5-ブロモチエン-2-イル)メチル基で置換したI-a1の類似化合物である。化合物II-b1は、
図5に示されているように、N
6-(5-ブロモチエン-2-イル)メチルアデノシン(化合物15)から中間化合物16および17を介して合成される。
【0116】
【0117】
別の実施態様では、
図6に示されているように、化合物I-d1は中間化合物18、19および20を介して合成される:
【化27】
【0118】
(a)塩基の存在下で、化合物4aをジフェニルホスホリルアジド(DPPA)およびアジ化ナトリウムと反応させて、式18のアジド化合物を得るが、ここで、塩基は、トリエチルアミン、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノン-5-エン(DBN)、および1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)であり得る;
(b)触媒の存在下での水素化分解によりアジド化合物18を還元し、続いて促進剤の存在下でグリシンメチルエステル塩酸塩とカップリング反応させ、式19の化合物を得るが、ここで、触媒はリンドラー触媒であり、促進剤は1,1’-カルボニルジイミダゾールである;
(c)水素化分解によりPMB保護基を除去して、式20の化合物を得る。
(d)2’,3’-ジオールおよびエステルの保護基をそれぞれTFAおよびNaOHにより除去して、式I-d1の化合物を得る。
【0119】
別の実施態様では、
図7に示されているように、化合物I-e1は中間化合物21および22を介して合成される:
【0120】
【0121】
(a)塩基の存在下で化合物4aを塩化メタンスルホニル(MsCl)と反応させ、続いてチオ酢酸カリウムと反応させて、式21の化合物を得るが、ここで、塩基はトリエチルアミンおよび4-ジメチルアミノピリジンであり得る;
(b)塩基を用いて化合物21からアセチル基を除去し、続いて促進剤の存在下で2,2,2-トリクロロエチルグリシンとカップリングさせて、式22の化合物を得るが、ここで、塩基は水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムであり得、促進剤は1,1-カルボニルジイミダゾールである;
(c)全ての保護基を除去して、式I-e1の化合物を得る。
【0122】
別の実施態様では、
図8に示されているように、化合物I-f1は中間化合物23、24aおよび25aを介して合成される。
【0123】
【0124】
医薬組成物
別の側面では、本発明は、本発明の化合物と薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を提供する。
【0125】
化合物は、経口、非経口、吸入スプレーにより、局所投与、経腸、経鼻、経口腔、経膣で、または埋め込み型リザーバーを介して投与され得る医薬組成物に製剤化されてもよい。本明細書で使用される「非経口」という用語は、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑液嚢内、胸骨内、くも膜下腔内、肝内、病巣内および頭蓋内への注射または注入技術を含む。薬学的に許容される担体および希釈剤は、当業者によく知られている。液体溶液として製剤化された組成物の場合、許容される担体および/または希釈剤には、生理食塩水および滅菌水が含まれ、場合により、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤および他の一般的な添加物が含まれていてもよい。組成物はまた、本発明の化合物に加えて、希釈剤、分散剤および界面活性剤、結合剤、および潤滑剤を含む丸剤、カプセル剤、顆粒剤、または錠剤として製剤化することもできる。
【0126】
好ましい実施態様では、化合物は、その意図された治療目的を達成するのに有効な量で組成物中に存在する。個々のニーズはさまざまであり得るが、各化合物の有効量の最適範囲の決定は、当技術分野の技術の範囲内である。
【0127】
本発明の化合物は、1つまたはそれ以上の第2の治療剤、特に、本明細書中に提示されている状態および疾患の治療および/または予防に適した治療剤との組み合わせにおいて有用となり得る。
【0128】
鎮痛効果
別の側面において、本発明は、有効量の本発明の化合物を対象に投与することを含む、疼痛の治療方法を提供する。1つの実施態様では、疼痛は慢性疼痛である。いくつかの実施態様では、疼痛は、組織アシドーシスおよび/または神経損傷に関連し、炎症性疼痛、癌関連疼痛、胸痛、背中の痛み、首の痛み、肩の痛み、片頭痛、頭痛、筋筋膜痛、関節痛、筋肉痛症候群、神経障害性疼痛、末梢痛、交感神経痛、術後痛、心的外傷後痛、多発性硬化症の痛みを含むが、これらに限定はされない。1つの実施態様では、疼痛は機能不全性疼痛である。さらなる実施態様では、機能不全性疼痛には、線維筋痛症、膀胱痛症候群、過敏性腸症候群に起因する疼痛、および顎関節症に伴う疼痛が含まれるが、これらに限定はされない。
【0129】
1つの実施態様において、化合物2(T1-11)は、ジメチルスルホキシド(DMSO)への良好な溶解性と、慢性的な広範な疼痛が間欠的寒冷ストレス(ICS)によって誘発される線維筋痛症のマウスモデルにおける優れた鎮痛効果を有する。このICSマウスモデルでは、T1-11は、i.p.経路を介した場合は0.03mg/kg(
図9(a))から、p.o.経路を介した場合は8mg/kg(
図9(b))から始まる有効用量の用量依存的な鎮痛効果を示した。ただし、T1-11のバイオアベイラビリティは低く(F~5%)、疼痛治療への使用が制限される場合がある。
【0130】
別の実施態様では、T1-11とグリシンに由来するコンジュゲート化合物I-a1(JMF3737)は、T1-11よりも優れた鎮痛効果を示した。同じICSマウスモデルで、化合物I-a1は、1mg/kg(i.p.)(
図9(c))および1mg/kg(p.o.)(
図9(d))から始まる有効用量で用量依存的な鎮痛効果を示した。化合物I-a1の用量は、感知できるほどの有害な影響を引き起こすことなく、少なくとも64mg/kg(i.p.およびp.o.)まで増やすことができる。
【0131】
別の実施態様では、経口経路を介した2mg(4μmol)/kgのコンジュゲート化合物I-a1の相当な鎮痛効果と比較して、T1-11(4μmol/kg)とグリシン(4μmol/kg)の経口投与による併用処置は相乗効果を示さなかった(
図9(e))。
【0132】
別の実施態様では、化合物I-a1(JMF3737)の鎮痛作用機序はT1-11と同じであり、筋肉侵害受容器のNK1R受容体に作用して、NK1Rアンタゴニストにより阻害され得る外向き電流を誘導することによる(
図10)。
【0133】
別の実施態様では、低用量(1mg/kg、p.o.)での化合物I-a1(JMF3737)の4日間の毎日の処置は、耐性を示さなかったが、線維筋痛痛の治療効果を示した(
図11(a)および11(b))。
【0134】
さらに別の実施態様では、化合物I-d1(JMF4313)は、同じICSモデルにおいて優れた鎮痛効果を示した(
図12(a))。化合物I-d1の用量は、感知できるほどの有害な影響を引き起こすことなく、64mg/kg(i.p.)まで増やすことができる。
【0135】
さらに別の実施態様では、T1-11とサブスタンスPに由来するコンジュゲート化合物Ic-2は、ICSマウスモデルにおいて14μg/kg(160pmol、i.p.)から始まる鎮痛効果を示した(
図12(b))。
【実施例】
【0136】
実施例
全ての試薬および溶媒は試薬グレードであり、特に明記されない限り、さらに精製することなく使用した。テトラヒドロフランとジエチルエーテルはNa/ベンゾフェノンから蒸留し、CH2Cl2はCaH2から蒸留した。空気または湿度に感受性の実験は全て、アルゴン下で実施した。ガラス器具は全てオーブンで2時間以上乾燥させ、デシケーター中で室温まで冷却してから使用した。
【0137】
融点はYanacoのマイクロ装置で記録した。旋光度は、日本のJASCO Co.のデジタル偏光計DIP-1000で測定した。[α]D値は、10-1deg cm2 g-1の単位で与えられている。赤外線(IR)スペクトルはNicolet Magna 550-IIで記録した。NMRスペクトルはVarian Unity Plus-400(400MHz)で取得し、化学シフト(δ)は、CHCl3/CDCl3についてはδH7.24/δC77.0(三重項の中心線)、(CH3)2CO/(CD3)2COについてはδH2.05/δC29.92、CH3OH/CD3ODについてはδH3.31/δC49.0、そして(CH3)2SO/(CD3)2SOについてはδH2.49(m)/δC39.5(m)に対して、百万分率(ppm)で記録した。分裂パターンは、s(シングレット)、d(ダブレット)、t(トリプレット)、q(カルテット)、m(マルチプレット)、br(ブロード)として報告されている。結合定数(J)はHzで与えられる。ESI-MS実験は、Bruker Daltonics BioTOF III高分解能質量分析計で実施した。分析薄層クロマトグラフィー(TLC)は、E.Merckシリカゲル60 F254プレート(0.25mm)上で行った。化合物は、UV、アニスアルデヒドまたはニンヒドリンのスプレーにより可視化した。70~230メッシュのシリカゲルを充填したカラムでカラムクロマトグラフィーを実施した。
【0138】
N6-(4-ヒドロキシベンジル)-2’,3’-O-イソプロピリデン-アデノシン(3)
【0139】
【0140】
N6-(4-ヒドロキシベンジル)アデノシン(化合物2、T1-11)は、以前に報告された手順[Chen et al.,2011.]に従って、6-クロロプリンリボシドの4-ヒドロキシベンジルアミンによる置換反応で調製した。簡単に説明すると、4-ヒドロキシベンジルアミン(塩酸塩として、2.5当量)、6-クロロプリンリボシド(1当量)、およびジイソプロピルエチルアミン(DIEA、24当量)の混合物を1-プロパノール中で6時間70℃に加熱した。混合物を減圧下で濃縮し、水で摩砕して白色沈殿物を得、これを濾過して化合物2を得た(収率81%)。
【0141】
アセトン(5mL)中の化合物2(374mg、1mmol)、p-トルエンスルホン酸一水和物(280mg、1.5mmol)および2,2-ジメトキシプロパン(3mL、2.5mmol)の混合物を室温で撹拌した。混合物を減圧下で回転蒸発により濃縮した。残渣をCH2Cl2で希釈し、水で抽出した。水相をCH2Cl2で洗浄し、組合わせた有機層を飽和NaHCO3(aq.)とブラインで連続して洗浄した。有機相をMgSO4で乾燥させ、濾過し、減圧下で回転蒸発により濃縮し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/EtOAc、勾配1:1から0:1)で精製して、アセトニド化合物3を得た(358mg、86%の収率)。C20H23N5O5;TLC(EtOAc)Rf=0.56;[α]D
25=-113.1(CHCl3,c=2);IR νmax(ニート)3367,2991,2933,1622,1516,1454,1381,1340,1217,1082cm-1;1H NMR(CDCl3,400MHz)δ 8.35(1 H,br s),7.81(1 H,s),7.04(2 H,d,J=8.0Hz),6.64(2 H,d,J=8.0Hz),6.39(1 H,br s),5.82(1 H,d,J=5.2Hz),5.19(1 H,dd,J=5.6,5.2Hz),5.10(1 H,d,J=5.6Hz),4.67(2 H,br s),4.53(1 H,s),3.93-4.02(1 H,m),3.71-3.82(1 H,m),1.62(3 H,s),1.36(3 H,s);13C NMR(CDCl3,100MHz)δ 155.8,154.5,153.9,147.1,139.4,129.1,129.0,120.4,115.5,114.0,94.1,86.0,83.0,81.6,63.2,44.0,27.5,25.1;C20H24N5O5についてのESI-HRMSの計算値:414.1777,実測値:m/z 414.1763[M+H]+.
【0142】
2’,3’-O-イソプロピリデン-N6-(4-(4-メトキシベニルオキシ)ベンジル)アデノシン(4a)
【0143】
【0144】
N、N-ジメチルホルムアミド(DMF、25mL)中の化合物3(1.13g、2.74mmol)、p-メトキシベンジルクロリド(800μL、6mmol)およびK2CO3(930mg、6.85mmol)の混合物を45℃で3時間攪拌した。混合物を減圧下で回転蒸発により濃縮した。残渣をEtOAcで希釈し、1MのHCl、水およびブラインで連続して洗浄した。有機相をMgSO4で乾燥させ、濾過し、回転蒸発により濃縮し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、EtOAc/ヘキサン、勾配1:3から4:1)により精製して、PMB誘導体4a(1.12g、76%の収率)を得た。C28H31N5O6;白色個体;融点68.3~71.4℃;TLC(EtOAc/ヘキサン(1:1))Rf=0.17;[α]D
25=-66.0(CH2Cl2,c=2);IR νmax(ニート)3281,2988,2936,2870,2834,1622,1586,1514,1478,1468,1380,1339,1303,1242,1216,1170,1154,1113,1077cm-1;1H NMR(CDCl3,400MHz)δ 8.34(1 H,br s),7.66(1 H,br s),7.32(2 H,d,J=8.4Hz),7.25(2 H,d,J=8.4Hz),6.89(4 H,dd,J=8.4,5.8Hz),6.77(1 H,br s),6.42(1 H,br s),5.79(1 H,d,J=4.8Hz),5.18(1 H,t,J=5.2Hz),5.09(1 H,d,J=5.6Hz),4.95(2 H,s),4.73(2 H,br s),4.51(1 H,s),3.95(1 H,d,J=12.46Hz),3.71-3.83(4 H,m),1.62(3 H,s),1.35(3 H,s);13C NMR(CDCl3,100MHz)δ 159.3,158.3,154.9,152.7,147.3,139.5,130.2,129.1,129.0,128.8,121.2,115.0,114.0,113.9,94.3,85.9,82.9,81.7,69.7,63.4,55.2,43.9,27.6,25.2;C28H32N5O6についてのESI-HRMSの計算値:534.2353,実測値:m/z 534.2368[M+H]+.
【0145】
N6-(4-(ベンゾイルオキシ)ベンジル)-2’,3’-O-イソプロピリデン-アデノシン(4b)
【0146】
【0147】
CH2Cl2(15mL)中の化合物2(265mg、0.64mmol)とNEt3(267μL、1.9mmol)の混合物を0℃で攪拌しつつ、CH2Cl2(9mL)中の塩化ベンゾイル溶液(74μL、0.64mmol)をシリンジポンプで添加した(4mL/h)。添加が完了した後、混合物を減圧下で回転蒸発により濃縮した。残渣をEtOAcで希釈し、1MのHCl、飽和NaHCO3、水およびブラインで連続して洗浄した。有機相をMgSO4で乾燥させ、濾過し、回転蒸発により濃縮し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/EtOAc、勾配1:1から0:1)により精製して、化合物4bを得た(258g、収率78%)。C27H27N5O6;白色泡;TLC(EtOAc/ヘキサン(1:1))Rf=0.13;[α]D
25=-74.4(CHCl3,c=2);IR νmax(ニート)3279,2989,2934,2860,1735,1622,1508,1481,1357,1340,1265,1202,1081,1065cm-1;1H NMR(CDCl3,400MHz)δ 8.33(1 H,br s),8.15(2 H,d,J=7.6Hz),7.57(1 H,t,J=7.6Hz ),7.45(2 H,t,J=7.6Hz),7.35(2
H,d,J=8.0Hz),7.12(2 H,d,J=8.0Hz),6.63(1
H,br s),5.82(1 H,d,J=4.8Hz),5.17(1 H,dd,J=5.2,4.8Hz),5.06(1 H,d,J=5.2Hz),4.81(2
H,d,J=18.8Hz),4.46(1 H,s),3.91(1 H,d,J=12.0Hz),3.73(1 H,d,J=12.0Hz),1.57(3 H,s),1.31(3 H,s);13C NMR(CDCl3,100MHz)δ 165.,154.9,152.6,150.0,147.3,139.6,136.0,133.5,130.0,129.2,128.6,128.4,121.8,120.9,113.7,93.9,85.9,82.9,81.5,63.2,43.4,27.4,25.1;C27H28N5O6についてのESI-HRMSの計算値:518.2040,実測値:m/z 518.2050[M+H]+.
【0148】
5’-O-(イミダゾリル-N-カルボニル)-2’,3’-O-イソプロピリデン-N
6
-(4-(4-メトキシベンジルオキシ)ベンジル)アデノシン(5a)
【0149】
【0150】
化合物4a(207mg、0.38mmol)、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP、触媒量)および1,1’-カルボニルジイミダゾール(500mg、3.1mmol)との混合物を無水CH2Cl2(3mL)中、アルゴン下、室温で3時間攪拌した。反応が完了した後(TLCでモニター)、混合物を1MのHCl、水、塩水で連続して洗浄した。有機相をMgSO4で乾燥させ、濾過し、回転蒸発により濃縮して、化合物5aを得た(241mg、収率98%)。C32H33N7O7;白色粉末;融点68.3~71.5℃;TLC(EtOAc/ヘキサン(1:1))Rf=0.34;[α]D
25=2.36(CH2Cl2,c=2);IR νmax(ニート)3281,3134,3035,2995,2929,2835,1769,1617,1585,1151,1482,1409,1389,1295,1242,1176,1102,1004cm-1;1H NMR(CDCl3,400MHz)δ 8.32(1 H,br s),8.11(1 H,s),7.71(1 H,s),7.37(1 H,s),7.32(2 H,d,J=8.8Hz),7.27(2 H,d,J=8.4Hz),7.02(1 H,s),6.89(4 H,t,J=8.0Hz),6.26(1 H,br s),6.02(1 H,d,J=1.6Hz),5.53(1 H,dd,J=6.4,1.6Hz),5.22(1 H,dd,J=6.4,4.0Hz),4.95(2 H,s),4.74(1 H,br s),4.68(1 H,dd,J=11.2,4.0Hz),4.54-4.62(1 H,m),4.46-4.54(1 H,m),3.78(3 H,s),1.60(3 H,s),1.38(3 H,s);13C NMR(CDCl3,100MHz)δ 159.2,158.1,154.5,148.1,140.9,139.4,139.3,137.0,134.0,13.5,13.3,129.0,128.9,128.7,117.0,115.0,114.7,113.9,90.8,84.6,83.8,81.4,69.8,67.2,55.3,39.0,27.3;C32H34N7O7についてのESI-HRMSの計算値:628.2520,実測値:m/z 628.2514[M+H]+.
【0151】
5’-O((エチルグリシネート)-N-カルボニル)-2’,3’-O-イソプロピリ
デン-N
6
-(4-(4-メトキシベンジルオキシ)ベンジル)アデノシン(6a-1)
【0152】
【0153】
DMF(4mL)中の化合物5a(104mg、0.16mmol)、DMAP(触媒量)、DIEA(110μL、0.64mmol)およびグリシンエチルエステル塩酸塩(93mg、0.66mmol)の混合物をアルゴン下で12時間、室温で撹拌した。反応が完了した後(TLCでモニター)、混合物を減圧下で回転蒸発により濃縮した。残渣をEtOAcで希釈し、1MのHCl、飽和NaHCO3、水およびブラインで連続して洗浄した。有機相をMgSO4で乾燥させ、濾過し、回転蒸発により濃縮し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、EtOAc/ヘキサン、勾配1:3から9:1)により精製して、化合物6a-1(104mg、94%の収率)を得た。C33H38N6O9;白色固体;融点69.6~71.2℃;[α]D
25=-25.5(CH2Cl2,c=2);IR νmax(ニート)3367,2987,5938,2835,1724,1618,1581,1511,1483,1466,1381,1303,1246,1217,1172,1078,1029cm-1;1H NMR(CDCl3,400MHz)δ 8.36(1 H,br s),7.78(1 H,s),7.31(2 H,d,J=8.4Hz),7.25(2 H,J=8.4Hz ),6.88(2 H,d,J=8.4Hz),6.87(2 H,d,J=8.4Hz),6.57(1 H,t,J=5.3Hz),6.05(1 H,s),5.81(1 H,br s),5.35(1 H,d,J=4.8Hz),4.97(1 H,dd,J=6.0,3.2Hz),4.93(2 H,s),4.74(2 H,br s),4.38-4.44(1 H,m),4.32(1 H,dd,J=11.6,4.0Hz),4.08-4.20(3 H,m),3.79-3.96(2 H,m),3.77(3 H,s),1.57(3 H,s),1.34(3 H,s),1.22(4 H,t,J=7.2Hz);13C NMR(CDCl3,100MHz)δ 169.9,159.3,158.1,155.7,154.6,153.3,148.3,139.1,130.7,129.1,129.0,128.8,120.1,114.9,114.3,113.9,90.7,85.0,84.0,81.5,69.7,64.7,61.4,55.2,43.8,42.7,27.0,25.2,14.0;C33H39N6O9についてのESI-HRMSの計算値:663.2779,実測値:m/z 663.2772[M+H]+.
【0154】
5’-O-(エチルL-フェニルアラニネート)-N-カルボニル)-2’,3’-O-
イソプロピリデン-N
6
-(4-(4-メトキシベンジルオキシ)ベンジル)アデノシン(6a-2)
【0155】
【0156】
無水DMF(13mL)中の化合物5a(110mg、0.17mmol)、DMAP(触媒量)、DIEA(125μL、0.68mmol)およびL-フェニルアラニンエチルエステル塩酸塩(160mg、0.68mmol)の混合物をアルゴン下で12時間、室温で撹拌した。反応が完了した後(TLCでモニター)、混合物を減圧下で回転蒸発により濃縮した。残渣をEtOAcで希釈し、1MのHCl、飽和NaHCO3、水およびブラインで連続して洗浄した。有機相をMgSO4で乾燥させ、濾過し、減圧下での回転蒸発により濃縮し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、EtOAc/ヘキサン、1:3から9:1の勾配)により精製して、化合物6a-2を得た(44mg、34%の収率)。C40H44N6O9;白色固体;融点80.1~83.6℃;TLC(EtOAc)Rf=0.75;[α]D
25=-9.55(CH2Cl2,c=1);IR νmax(ニート)3371,3028,2991,2942,2876,2844,1728,1621,1585,1512,1489,1463,1377,1344,1299,1250,1209,1176,1082,1033cm-1;1H NMR(CDCl3,400MHz)δ 8.36(1 H,br s),7.76(1 H,s),7.32(2 H,d,J=8.4Hz),7.26(2 H,d,J=8.4Hz),7.15-7.22(3 H,m),7.04(2 H,d,J=6.6Hz),6.89(2 H,d,J=8.4Hz),6.88(2 H,d,J=8.4Hz),6.39(1 H,t,J=5.2Hz),6.05(1 H,d,J=1.2Hz),5.50(1 H,d,J=8.0Hz),5.42(1 H,dd,J=6.4,1.2Hz),4.99(1 H,dd,J=6.4,3.2Hz),4.94(2 H,s),4.74(2 H,br s),4.55(1 H,td,J=8.0,6.4Hz),4.39-4.47(1 H,m),4.26-4.34(1 H,m),4.17-4.24(1 H,m),4.10(2 H,qd,J=7.2,1.5Hz),3.78(3 H,s),3.02(2 H,qd,J=9.6,6.0Hz),1.59(3 H,s),1.37(3 H,s),1.17(3 H,t,J=7.2Hz);13C NMR(CDCl3,100MHz)δ 171.1,159.1,158.,154.8,154.4,153.1,139.1,139.0,135.5,13.4,129.1,129.0,128.9,128.7,128.3,126.8,120.1,114.9,114.3,113.8,90.8,8.2,84.0,81.6,69.8,64.7,61.5,55.2,54.9,43.4,38.3,27.2,25.5,14.2;C40H45N6O9についてのESI-HRMSの計算値:753.3248,実測値:m/z 753.3228[M+H]+.
【0157】
N
6
-(4-(ベンゾイルオキシ)ベンジル)-2’,3’-O-イソプロピリデン-5
’-O-((メチルグリシネート)-N-カルボニル)-アデノシン(6b-1)
【0158】
【0159】
化合物4b(93mg、0.18mmol)と1,1’-カルボニルジイミダゾール(117mg、0.72mmol)の混合物を無水テトラヒドロフラン(THF、2mL)中、アルゴン下、室温で1時間攪拌した。反応が完了した後(TLCでモニター)、水(9.72uL、0.54mmol)、グリシンメチルエステル(塩酸塩として、90mg、0.72mmol)およびDIEA(129μL、0.72mmol)を加えた。混合物をさらに12時間撹拌し、それから、減圧下で回転蒸発により濃縮した。残渣をEtOAcで希釈し、1MのHCl、飽和NaHCO3、水およびブラインで連続して洗浄した。有機相をMgSO4で乾燥させ、濾過し、回転蒸発により濃縮し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/EtOAc、勾配1:1から0:1)により精製して、カルバメート化合物6b-1を得た(69mg、収率60%)。C31H32N6O9;無色の油;TLC(EtOAc/ヘキサン(1:1))Rf=0.12;[α]D
25=-32.5(CH2Cl2,c=2);IR νmax(ニート)3366,2988,2952,1731,1620,1583,1508,1481,1452,1438,1419,1376,1331,1267,1209,1081,1064cm-1;1H NMR(CDCl3,400MHz)δ 8.36(1 H,br s),8.15(2 H,d,J=7.6Hz),7.75(1 H,br s),7.59(1 H,t,J=7.2Hz),7.46(2 H,dd,J=7.6,7.2Hz),7.40(2 H,d,J=8.4Hz),7.13(2 H,d,J=8.4Hz),6.89(1 H,br s),6.07(1 H,s),5.99(1 H,br s),5.30(1 H,d,J=5.2Hz),4.94(1 H,dd,J=5.6,3.2Hz),4.85(2 H,br s),4.38-4.44(1 H,m),4.29-4.37(1 H,m),4.15(1 H,dd,J=11.2,5.6Hz),3.80-3.98(2 H,m),3.66(3 H,s),1.56(3 H,s),1.32(3 H,s);13C NMR(CDCl3,100MHz)δ 170.5,165.1,155.8,154.6,153.3,150.1,148.4,139.3,136.3,133.5,130.1,129.4,128.7,128.5,121.8,120.1,114.3,90.6,84.9,84.0,81.4,64.8,52.3,42.5,29.6,27.1,25.2;C31H33N6O9についてのESI-HRMSの計算値:633.2309,実測値:m/z 633.1201[M+H]+.
【0160】
N
6
-(4-(ベンゾイルオキシ)ベンジル)-2’,3’-O-イソプロピリデン-5
’-O-(メチルL-バリネート)-N-カルボニル)-アデノシン(6b-2)
【0161】
【0162】
化合物4a(70mg、0.13mmol)と1,1,1’-カルボニルジイミダゾール(90mg、0.55mmol)の混合物を無水THF(4mL)中、アルゴン下、室温で1時間撹拌した。反応が完了した後(TLCでモニター)、水(4.8μL、0.26mmol)、L-バリンメチルエステル塩酸塩(90mg、0.55mmol)およびDIEA(96μL、0.55mmol)を加えた。混合物をさらに12時間撹拌し、それから、減圧下で回転蒸発により濃縮した。残渣をEtOAcで希釈し、1MのHCl、飽和NaHCO3、水およびブラインで連続して洗浄した。有機相をMgSO4で乾燥させ、濾過し、回転蒸発により濃縮し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/EtOAc、勾配2:1から0:1)により精製して、化合物6b-2を得た(35mg、収率40%)。C34H38N6O9;白色固体;融点83.9~84.6℃;TLC(EtOAc/ヘキサン(1:1))Rf=0.21;[α]D
25=-17.6(CH2Cl2,c=2);IR νmax(ニート)3363,2964,2936,1731,1620,1508,1481,1452,1375,1332,1266,1208,1166,1082,1064,1025cm-1;1H NMR(CDCl3,400MHz)δ 8.38(1 H,br s),8.17(2 H,d,J=7.2Hz),7.76(1 H,s),7.60(1 H,t,J=7.6Hz),7.48(2 H,dd,J=7.2,7.6Hz),7.41(2 H,d,J=8.4Hz),7.15(2 H,d,J=8.4Hz),6.60(1 H,t,J=5.6Hz),6.07(1 H,s),5.41-5.51(2 H,m),5.05(1 H,dd,J=6.0,3.2Hz),4.86(2 H,br s),4.40-4.47(1 H,m),4.28-4.37(1 H,m),4.16-4.26(2 H,m),3.68(3 H,s)2.00-2.16(1 H,m),1.58(3 H,s),1.37(3 H,s),0.84(6 H,dd,J=24.0,6.8Hz);13C NMR(CDCl3,100MHz)δ 172.4,165.1,155.6,154.7,153.3,150.2,146.7,139.4,136.2,133.6,130.1,129.4,128.8,128.5,121.9,120.4,114.5,90.9,85.3,84.0,81.7,64.8,59.0,52.1,31.2,29.6,27.1,25.3,18.8,17.5;C34H39N6O9についてのESI-HRMSの計算値:675.2779,実測値:m/z 675.2755[M+H]+.
【0163】
5’-O-((エチルグリシネート)-N-カルボニル)-N
6
-(4-ヒドロキシベン
ジル)アデノシン(7a-1)
【0164】
【0165】
MeOH(0.8mL)および水(0.2mL)中の化合物6a-1(92mg、0.14mmol)の溶液を0℃で攪拌しながら、TFA(2mL)をゆっくりと加えた。添加が完了した後、混合物を室温まで温め、さらに2時間撹拌した。混合物を減圧下で回転蒸発により濃縮し、MeOH/EtOAc(1:9)で希釈し、飽和NaHCO3、水およびブラインで連続して洗浄した。有機相をMgSO4で乾燥させ、濾過し、減圧下で回転蒸発により濃縮し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、MeOH/EtOAc、0:1から1:9の勾配)により精製して、化合物7a-1を得た(32mg、37%の収率)。C22H26N6O8;白色固体;融点197.9~199.2℃;[α]D
2
5=-36.3(DMSO,c=2);IR νmax(フィルム)3328,2933,1708,1637,1517,1499,1334,1303,1265,1240,1219,1174,1136,1080cm-1;1H NMR(DMSO-d6,400MHz)δ 9.23(1 H,s),8.35(1 H,s),8.27(1 H,br s),8.22(1 H,br s),7.75(1 H,t,J=6.0Hz),7.14(2 H,d,J=8.0Hz),6.67(2 H,d,J=8.0Hz),5.93(1 H,d,J=6.0Hz),5.53(1 H,d,J=6.0Hz),5.39(1 H,d,J=4.8Hz),4.67(1 H,d,J=6.0Hz),4.59(2 H,br s),4.26(1 H,dd,J=11.6,2.8Hz),4.13-4.18(2 H,m),4.07-4.13(3 H,m),3.74(2 H,d,J=6.0Hz),1.18(3 H,t,J=7.2Hz);13C NMR(DMSO-d6,100MHz)δ 170.1,156.4,156.1,154.4,152.7,149.0,139.4,130.2,128.5,115.0,87.0,82.3,73.0,70.6,64.6,62.8,60.4,42.4,42.2,14.1;C22H27N6O8についてのESI-HRMSの計算値:503.1890,実測値:m/z 503.1908[M+H]+.
【0166】
5’-O-(グリシン-N-カルボニル)-N
6
-(4-ヒドロキシベンジル)アデノシ
ン(I-a1)
【0167】
【0168】
方法A。MeOH(4mL)中の化合物7a-1(25mg、0.05mmol)の溶液に1MのNaOH(4mL)を加えた。混合物を30分間撹拌し、減圧下で回転蒸発により濃縮し、逆相カラムクロマトグラフィー(RP-18シリカゲル、MeOH/H2O、0:1から1:1の勾配)により精製し、化合物I-a1を得た(18mg、収率76%)。
【0169】
方法B。MeOH(0.9mL)および水(0.1mL)中のエステル6b-1(125mg、0.19mmol)の溶液を0℃で攪拌しながら、TFA(2mL)をゆっくりと加えた。添加が完了した後、混合物を室温まで温め、さらに2時間撹拌した。反応物を減圧下で回転蒸発により濃縮し、MeOH/EtOAc(1:9)で希釈し、飽和NaHCO3、水およびブラインで連続して洗浄した。有機相をMgSO4で乾燥させ、濾過し、減圧下で回転蒸発により濃縮した。残渣をMeOH(3mL)で希釈し、1MのNaOH(3mL)を加え、室温で30分間撹拌した。混合物を減圧下での回転蒸発により濃縮し、順相カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、AcOH/MeOH/EtOAc、0:1:9から1:1:8の勾配)により精製し、次いで逆相カラムクロマトグラフィー(RP-18シリカゲル、MeOH/H2O、0:1から1:1の勾配)で化合物I-a1を得た(67mg、収率74%)。生成物I-a1の純度は、Chromolith RP-18高分解能カラム(Merck、100mm×4.6mm)、tR=11.05分((CH3CN/0.5%TFA水溶液、15分で0%から20%までの勾配)でのHPLCで示されるように、98.1%であった。C20H22N6O8;白色固体;融点172.4~174.6℃;[α]D
25=-19.5(H2O,c=1);IR νma
x(フィルム)3192,2951,1708,1686,1641,1595,1521,1491,1447,1410,1356,1310,1262,1230,1196,1169,1159,1142,1068,1032cm-1;1H NMR(CD3OD,400MHz)δ 8.29(1 H,br s),8.27(1 H,br s),7.21(2 H,d,J=8.4Hz),6.74(2 H,d,J=8.4Hz),6.05(1 H,d,J=5.4Hz),4.66-4.73(3 H,m),4.34-4.40(2 H,m),4.28-4.33(1 H,m),4.22-4.27(1 H,m),3.61-3.72(2 H,m);13C NMR(CD3OD,100MHz)δ 177.3,158.6,158.0,156.1,154.2,150.2,140.6,131.0,130.2,120.8,116.5,89.6,84.6,75.7,72.1,65.3,45.9,45.0;C20H21N6O8についてのESI-HRMS(ネガティブモード)の計算値:473.1421,実測値:m/z 473.1416[M-H]-.
【0170】
N
6
-(4-ヒドロキシベンジル)-5’-O-(L-フェニルアラニン-N-カルボニ
ル)アデノシン(I-a2)
【0171】
【0172】
MeOH(0.8mL)および水(0.2mL)中の化合物6a-2(72mg、0.1mmol)の溶液を0℃で攪拌しながら、TFA(2mL)をゆっくりと加えた。添加が完了した後、反応物を室温まで温め、さらに2時間撹拌した。反応物を減圧下で回転蒸発により濃縮した。残渣をMeOH(4mL)で希釈し、1MのNaOH(4mL)を加えながら室温で撹拌した。混合物を30分間撹拌し、減圧下で回転蒸発により濃縮し、逆相カラムクロマトグラフィー(RP-18シリカゲル、水/MeOH、1:0から1:1の勾配)により精製し、化合物I-a2を得た(43mg、収率76%)。生成物I-a2の純度は、Chromolith RP-18高分解能カラム(Merck、100mm×4.6mm)、tR=11.0分(CH3CN/0.5%TFA水溶液、15分で5%から40%までの水性CH3CNの勾配)でのHPLCで示されるように、95.1%であった。C27H28N6O8;白色固体;融点180.2~182.3℃;[α]D
25=-7.40(DMSO,c=1);IR νmax(フィルム)3409,2940,1702,1642,1517,1498,1453,1401,1340,1248,1178,1082,1056cm-1;1H NMR(CD3OD,400MHz)δ 8.25(1 H,s),8.22(1 H,s),7.19(2 H,d,J=8.4Hz),7.15-7.17(2 H,m),7.10-7.14(2 H,m),7.04-7.08(1 H,m),6.73(2 H,d,J=8.4Hz),6.02(1 H,d,J=4.4Hz),4.67(2 H,br s),4.63(1 H,dd,J=4.4,4.4Hz),4.30-4.34(1 H,m),4.23-4.29(2 H,m),4.17-4.21(2 H,m),3.17(1 H,dd,J=14.0,4.8Hz),2.83-2.92(1 H,m);13C NMR(CDCl3,100MHz)δ 177.4,157.8,157.7,155.9,154.0,149.9,140.5,139.2,130.8,130.4,130.0,129.2,127.4,120.7,116.3,89.4,84.4,75.5,71.8,65.1,58.1,44.8,39.2;C27H27N6O8についてのESI-HRMS(ネガティブモード)の計算値:563.1890 実測値:m/z 563.1871[M-H]-.
【0173】
N
6
-(4-ヒドロキシベンジル)-5’-O-(L-バリン-N-カルボニル)アデノ
シン(I-a3)
【0174】
【0175】
MeOH(0.4mL)および水(0.1mL)中の化合物6b-2(35mg、0.05mmol)の溶液を0℃で攪拌しながら、TFA(1mL)をゆっくりと加えた。添加が完了した後、反応物を室温まで温め、さらに2時間撹拌した。混合物を減圧下で回転蒸発により濃縮した。残渣をMeOH(4mL)で希釈し、1MのNaOH(4mL)を加えながら室温で撹拌し、30分間反応させた。混合物を減圧下での回転蒸発により濃縮し、順相カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、AcOH/MeOH/EtOAc、0:1:9から1:1:8の勾配)および逆相カラムクロマトグラフィー(RP-18シリカゲル、水/MeOH、1:0から1:1の勾配)で化合物I-a3を得た(21mg、80%の収率)。生成物I-a3の純度は、Chromolith RP-18高分解能カラム(Merck、100mm×4.6mm)、tR=3.78分(CH3CN/0.5%TFA水溶液、15分で15%から40%までの勾配)でのHPLCで示されるように、98.9%であった。C23H28N6O8;白色固体;融点166.6~168.8℃;TLC(MeOH/AcOH/EtOAc(1:1:8))Rf=0.5;[α]D
25=-2.2(DMSO,c=1);IR νmax(フィルム)3332,2965,1702,1625,1517,1466,1406,1340,1240,1173,1107,1087,1050cm-1;1H NMR(CD3OD,400MHz)δ 8.27(2 H,s),7.24(2 H,d,J=8.8Hz),6.75(2 H,d,J=8.8Hz),6.05(1 H,d,J=5.6Hz),4.72-4.74(1 H,m),4.70(2 H,br s),4.38-4.43(1 H,m),4.29-4.36(2 H,m),4.24-4.27(1 H,m),4.02(1 H,d,J=5.2Hz),2.09-2.20(1 H,m),0.93(7 H,dd,J=16.4,6.8Hz);13C NMR(CD3OD,100MHz)δ 176.5,158.5,157.8,155.9,154.0,150.0,14.6,130.8,130.0,120.7,116.3,89.5,84.3,75.3,72.0,65.5,61.7,44.8,31.9,19.8,18.2;C23H29N6O8についてのESI-HRMSの計算値:517.2047,実測値:m/z 517.2040[M+H]+.
【0176】
5’-O-(n-ブチルアミノカルボニル)-N
6
-(4-ヒドロキシベンジル)アデノ
シン(8)
【0177】
【0178】
化合物4b(70mg、0.14mmol)と1,1,1’-カルボニルジイミダゾール(90mg、0.56mmol)の混合物を無水THF(4mL)中、アルゴン下、室温で2時間撹拌した。反応が完了した後(TLCでモニター)、水(4.8μL、0.28mmol)およびブチルアミン(110μL、1.1mmol)を連続して加えた。混合物をさらに12時間撹拌し、それから、減圧下で回転蒸発により濃縮した。残渣をEtOAcで希釈し、1MのHCl、水およびブラインで連続して洗浄した。有機相をMgSO4で乾燥させ、濾過し、回転蒸発により濃縮して粗生成物を得た。
【0179】
MeOH(0.8mL)および水(0.2mL)中の粗生成物の溶液を0℃で撹拌しながら、TFA(2mL)をゆっくりと加えた。添加が完了した後、混合物を室温まで温め、さらに2時間撹拌した。混合物を減圧下で回転蒸発により濃縮し、MeOH/EtOA
c(1:9)で希釈し、飽和NaHCO3、水およびブラインで首尾よく抽出した。有機相をMgSO4で乾燥させ、濾過し、回転蒸発により濃縮した。残渣をMeOH(2mL)で希釈し、1MのNaOH(2mL)を加えながら室温で撹拌した。混合物を室温で30分間撹拌し、減圧下で回転蒸発により濃縮した。残渣をMeOH/EtOAc(1:9
)で希釈し、水およびブラインで連続して洗浄した。有機相をMgSO4で乾燥させ、濾過し、回転蒸発により濃縮し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、MeOH/CH2Cl2、0:1から1:9の勾配)により精製して、化合物8を得た(34mg、51%の収率)。生成物8の純度は、Chromolith(登録商標)RP-18高分解能カラム(Merck、100mm×4.6mm)、tR=6.6分(CH3CN/0.5%TFA水溶液、15分で15%から 40%までの勾配)でのHPLCで示されるように、98.2%であった。C22H28N6O6;白色固体;融点187.4~189.0℃;TLC(MeOH/CH2Cl2(1:19))Rf=0.08;[α]D
25=-31.3(DMSO,c=2);IR νmax(フィルム)3339,3149,2958,2933,2872,1696,1620,1519,1465,1372,1337,1293,1248,1168,1115,1079,1049cm-1;1H
NMR(CD3OD,400MHz)δ 8.26(1 H,s),8.20(1 H,s),7.21(2 H,d,J=8.4Hz),6.74(2 H,d,J=8.4Hz),6.03(1 H,d,J=4.8Hz),4.61-4.75(3 H,m),4.37-4.43(1 H,m),4.33(1 H,t,J=4.4Hz),4.20-4.29(2 H,m),3.08(2 H,t,J=6.8Hz),1.38-1.51(2 H,m),1.25-1.37(2 H,m),0.90(3 H,t,J=7.3Hz);13C NMR(CD3OD,100MHz)δ 158.7,158.0,156.2,154.2,140.5,131.1,130.1,121.0,116.5,90.2,84.4,75.7,72.2,65.3,41.8,33.1,21.0,14.1;C22H29N6O6についてのESI-HRMSの計算値:473.2149,実測値:m/z 473.2145[M+H]+.
【0180】
2’,3’-O-イソプロピリデン-5’-O-((3-メトキシカルボニル-プロピル
アミノ)カルボニル)-N
6
-(4-(4-メトキシベンジルオキシ)ベンジル)アデノ
シン(9)
【0181】
【0182】
DMF(3mL)中の化合物5a(90mg、0.14mmol)、DMAP(触媒量)、DIEA(110μL、0.6mmol)およびγ-アミノ酪酸メチルエステル(塩酸塩として、180mg、1.2mmol)の混合物をアルゴン下、室温で12時間攪拌した。反応が完了した後(TLCでモニター)、混合物を減圧下で回転蒸発により濃縮した。残渣をEtOAcで希釈し、1MのHCl、飽和NaHCO3、水およびブラインで連続して洗浄した。有機相をMgSO4で乾燥させ、濾過し、減圧下で回転蒸発により濃縮し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、EtOAc/ヘキサン、1:3から9:1の勾配)により精製して、化合物9を得た(97mg、99%)。C34H40N6O9;油;[α]D
25=-32.6(CH2Cl2,c=2);IR νmax(ニート)3359,2989,2938,1727,1614,1584,1514,1479,1467,1377,1330,1297,1243,1174,1089,1033cm-1;1H NMR(CDCl3,400MHz)δ 8.37(1 H,br s),7.73(1 H,s),7.31(2 H,d,J=8.4Hz),7.25(2 H,d,J=8.4Hz),6.89(2 H,d,J=8.4Hz),6.88(2 H,d,J=8.4Hz),6.47(1 H,br s),6.05(1 H,s),5.42-5.47(1 H,m),5.01(1 H,dd,J=5.6,2.8Hz),4.94(2 H,s),4.74(2 H,br s),4.42(1 H,d,J=2.9Hz),4.25-4.32(1 H,m),4.13-4.21(1 H,m),3.77(3 H,s),3.61(3 H,s),3.12(2 H,q,J=6.3Hz),2.28(2 H,t,J=7.2Hz),1.74(2 H,quin,J=6.9Hz),1.58(3 H,s),1.36(3 H,s);13C NMR(CDCl3,100MHz)δ 173.5,159.3,158.1,155.7,154.6,153.3,139.0,130.6,129.1,129.0,128.8,120.2,114.9,114.4,113.9,91.0,85.2,84.0,81.6,69.7,64.4,55.2,51.6,43.8,40.3,31.0,27.1,25.3,24.9;C34H41N6O9についてのESI-HRMSの計算値:677.2935,実測値:m/z 677.2933[M+H]+.
【0183】
5’-O-((3-カルボキシプロピルアミノ)カルボニル)-N
6
-(4-ヒドロキシ
ベンジル)アデノシン(I-b1)
【0184】
【0185】
MeOH(0.8mL)および水(0.2mL)中の化合物9(92mg、0.14mmol)の溶液を0℃で攪拌しながら、TFA(2mL)をゆっくりと加えた。添加が完了した後、混合物を室温まで温め、さらに2時間撹拌した。混合物を減圧下で回転蒸発により濃縮し、MeOH/EtOAc(1:9)で希釈し、飽和NaHCO3、水およびブラインで首尾よく洗浄した。有機相をMgSO4で乾燥させ、濾過し、減圧下で回転蒸発により濃縮した。残渣をMeOH(4mL)で希釈し、1MのNaOH(4mL)を加え、30分間撹拌した。混合物を減圧下で回転蒸発により濃縮し、H2Oで希釈し、EtOAcで洗浄した。水相を減圧下で回転蒸発により濃縮し、逆相カラムクロマトグラフィー(RP-18シリカゲル、水/MeOH、1:0から1:1の勾配)により精製して、化合物I-b1(32.1mg、47%)を得た。生成物I-b1の純度は、Chromolith RP-18高分解能カラム(Merck、100mm×4.6mm)、tR=10.2分(CH3CN/0.5%TFA水溶液、15分で0%から30%までの勾配)でのHPLCで示されるように、98.0%であった。C22H26N6O8;白色個体;融点226.1~229.0℃;[α]D
25=-29.7(H2O,c=1);IR
νmax(フィルム)3482,3414,2929,1701,1619,1560,1546,1517,1459,1438,1340,1259,1129,1087,1053cm-1;1H NMR(CD3OD,400MHz)δ 8.26(1 H,s),8.23(1 H,s),7.21(2 H,d,J=8.4Hz),6.74(2 H,d,J=8.4Hz),6.05(1 H,d,J=5.4Hz),4.82-4.84(2 H,m),4.68(1 H,t,J=5.2Hz),4.33-4.41(2 H,m),4.20-4.31(2 H,m),3.05-3.17(2 H,m),2.18(2 H,t,J=7.2Hz),1.76(2 H,quin,J=7.2Hz);13C NMR(CD3OD,100MHz)δ 183.2,158.7,158.0,156.1,154.2,150.1,140.5,131.0,130.2,120.9,116.5,89.7,84.5,75.6,72.2,65.2,45.0,52.0,36.0,27.6;C22H27N6O8についてのESI-HRMSの計算値:503.1890,実測値:m/z 503.1894[M+H]+.
【0186】
N-[2’,3’-O-イソプロピリデン-N
6
-(4-(4-メトキシベンジルオキシ
)ベンジル)アデノシン-5’-O-カルボニル]グリシル-L-ロイシル-L-メチオ
ニンアミド(10)
【0187】
【0188】
1MのNaOH(2mL)およびMeOH(2mL)中の化合物6a-1(130mg、0.17mmol)の溶液を室温で30分間攪拌した。混合物を減圧下で回転蒸発により濃縮した。残渣をEtOAcで希釈し、1MのHCl、水およびブラインで連続して洗浄した。有機相をMgSO4で乾燥させ、濾過し、減圧下で回転蒸発により濃縮した。DMF(3mL)中の残渣に、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDCI、57mg、0.29mmol)およびヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt、40mg、0.30mmol)を加えた。混合物を0℃で30分間撹拌した。活性化処置が完了した後(TLCでモニター)、DMF(3mL)中のL-ロイシル-L-メチオニンアミド塩酸塩(223mg、0.75mmol)およびDIEA(100μL、0.56mmol)の溶液を加えた。混合物を室温で16時間撹拌し、次いで減圧下で回転蒸発により濃縮した。残渣をMeOH/EtOAc(1:9)で希釈し、1MのHCl(2回)、飽和NaHCO3、水およびブラインで連続して洗浄した。有機相をMgSO4で乾燥させ、濾過し、回転蒸発により濃縮し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、AcOH/MeOH/EtOAc、0:0:1から1:1:8までの勾配)により精製して、カップリング化合物10を得た(115mg、収率77%)。C42H55N9O10S;無色の油;TLC(AcOH/EtOAc(1:9))Rf=0.26;[α]D
25=-38.1(アセトン,c=1);IR νmax(ニート)3309,2954,2925,2872,2361,2337,1716,1663,1618,1585,1516,1467,1381,1242,1172,1086,1033cm-1;1H NMR(CDCl3,400MHz)δ 8.35(1 H,br s),8.08(1 H,br s),7.93(1 H,s),7.71(1 H,br s),7.29(2 H,d,J=8.4Hz),7.23(2 H,d,J=8.0Hz),7.07(1 H,br s),6.98(1 H,br s),6.85(2 H,d,J=8.4Hz),6.84(2 H,d,J=8.0Hz),6.57(1 H,br s),6.47(1 H,br s),6.09(1 H,br s),5.33(1 H,d,J=4.4Hz),4.95(1 H,br s),4.89(2 H,s),4.74(2 H,br s),4.57(1 H,d,J=5.6Hz),4.50(1 H,br s),4.28(1 H,d,J=8.8Hz),4.06-4.16(1 H,m),3.82(1 H,br s),3.75(3 H,s),2.43(2 H,br s),1.97-2.09(1 H,m),1.95(3 H,s),1.91(1 H,br s),1.55(5 H,s),1.48(1 H,br s),1.32(3 H,s),0.74-0.86(6 H,m);13C NMR(CDCl3,100MHz)δ 174.0,172.5,169.8,159.4,158.1,156.4,154.6,138.9,134.2,130.9,129.4,129.2,129.0,128.9,119.9,114.8,114.5,113.9,90.5,84.8,84.3,8.2,697,64.8,55.2,52.5,52.1,44.3,41.0,1.0,30.5,30.2,28.9,27.1,25.3,24.7,22.7,22.0,15.2,14.0,11.0;C42H56N9O10SについてのESI-HRMSの計算値:878.3874,実測値:m/z 878.3866[M+H]+.
【0189】
N-[(N
6
-(4-ヒドロキシベンジル)アデノシン)-5’-O-カルボニル]グリ
シル-L-ロイシル-L-メチオニンアミド(I-c1)
【0190】
【0191】
MeOH(2mL)および水(0.5mL)中の化合物10(115mg、0.13mmol)の溶液を0℃で攪拌しながら、TFA(5mL)をゆっくりと加えた。添加が完了した後、混合物を室温まで温め、さらに2時間撹拌した。混合物を減圧下で回転蒸発により濃縮し、飽和NaHCO3で希釈し、EtOAcおよびn-BuOHで連続的に抽出した。有機相を回収し、減圧下で回転蒸発により濃縮した。RP-18ゲル(水/MeOH、アイソクラティック1:3)での逆相カラムクロマトグラフィー、および別のRP-18ゲルカラム(水/アセトン、1:0から1:1の勾配)で繰り返して残渣を精製し、トリペプチドコンジュゲート化合物I-c1を得た(46.7mg、収率50%)。生成物I-c1の純度は、Chromolith RP-18高分解能カラム(Merck、100mm×4.6mm)、tR=6.3分(CH3CN/0.5%TFA水溶液、15分で15%から40%までの勾配)でのHPLCで示されるように、96.9%であった。C31H43N9O9S;白色粉末;融点181.2~184.3℃;[α]D
25=-34.0(DMSO,c=2);IR νmax(フィルム)3297,2958,2917,1703,1679,1626,1544,1516,1446,1417,1250,1172,1127,1082,1046cm-1;1H NMR(DMSO-d6,400MHz)δ 9.23(1 H,s),8.36(1 H,s),8.27(1 H,br s),8.22(1 H,br s),8.05(1 H,d,J=7.8Hz),7.92(1 H,d,J=8.0Hz),7.57(1 H,t,J=5.2Hz),7.17(1 H,br s),7.14(2 H,d,J=8.4Hz),7.07(1 H,br s),6.67(2 H,d,J=8.4Hz),5.92(1 H,d,J=6.0Hz),5.52(1 H,d,J=6.0Hz),5.39(1 H,d,J=4.8Hz),4.67(1 H,dd,J=6.0,6.0Hz),4.59(2 H,br s),4.19-4.32(3 H,m),4.10-4.19(2 H,m),4.03-4.09(1 H,m),3.63(2 H,d,J=3.2Hz),2.29-2.47(2 H,m),2.02(3 H,s),1.87-1.98(1 H,m),1.72-1.85(1 H,m),1.59(1 H,d septet,J=6.4,6.4Hz),1.45(2 H,dd,J=6.4,3.2Hz),0.87(7 H,d,J=6.4Hz),0.83(7 H,d,J=6.4Hz);13C NMR(DMSO-d6,100MHz)δ 172.3,171.9,169.2,156.4,156.1,154.3,152.6,137.3,13.2,129.,128.5,114.9,86.9,82.3,73.0,70.6,64.5,51.7,51.2,43.4,40.6,31.5,29.7,24.1,23.0,21.5,14.6;C31H44N9O9SについてのESI-HRMSの計算値:718.2983,実測値:m/z 718.2972[M+H]+.
【0192】
サブスタンスPコンジュゲート化合物(I-c2)
【0193】
【0194】
CH2Cl2(5mL)とPBS溶液(5mL)の2相系中の化合物5a(130mg、200μmol)とウンデカペプチドArg-Pro-Lys-Pro-Gln-Gln-Phe-Phe-Gly-Leu-Met-CONH2(サブスタンスP、10mg、7μmol)の混合物をアルゴン下、室温で4時間激しく攪拌した。分離漏斗を使用して、2つの相を分離した。水層を遠心分離し(8000rpm、20分、4℃)、上清をデカントした。残渣を水で洗浄し、再度遠心分離(8000rpm、20分、4℃)して、上清を除去した後、粗生成物を得た。
【0195】
MeOH(0.4mL)および水(0.1mL)中の粗生成物(10mg、5.2μmol)の溶液を0℃で撹拌しながら、TFA(1mL)をゆっくりと加えた。添加が完了した後、混合物を室温まで温め、さらに2時間撹拌した。混合物を減圧下で回転蒸発により濃縮し、逆相カラムクロマトグラフィー(RP-18ゲル、水/MeOH、勾配1:0から1:1)により精製して、化合物I-c2を得た(1.6mg、収率12%)。生成物I-c2の純度は、Chromolith RP-18高分解能カラム(Merck、100mm×4.6mm)、tR=1.8分(CH3CN/0.5%TFA水溶液、15分で10%から20%までの勾配)でのHPLCで示されるように、96.2%であった。C81H115N23O19S;白色粉末;RP-18 TLC(AcOH/MeOH/H2O(2:9:9))Rf=0.45;C81H116N23O19SについてのMALDI-TOFの計算値:1746.8,実測値:m/z 1746.7[M+H]+.
【0196】
N6-(インドール-3-イル)エチル-2’,3’-O-イソプロピリデン-アデノシン(12)
【0197】
【0198】
N6-(インドール-3-イル)エチルアデノシン(化合物11)は、以前に報告された手順に従って6-クロロプリンリボシドの(インドール-3-イル)エチルアミンとの置換反応により調製した[Chen,J.-B.;Liu,E.M.;Chern,T.-R.;Yang,C.-W.;Lin,C.-I.;Huang,N.-K.;Lin,Y.-L.;Chern,Y.;Lin,J.-H.Fang,J.-M.Design and synthesis of novel dual-action compounds targeting the adenosine A2A receptor and adenosine transporter for neuroprotection.ChemMedChem 2011,6,1390-1400]。簡単に言えば、エタノール中のトリプタミン(2.5当量)、6-クロロプリンリボシド(1当量)、およびジイソプロピルエチルアミン(DIEA、4.5当量)の混合物を、フォーカスドモノモードマイクロ波リアクターにおいて150Wで10分間照射した。混合物を減圧下で濃縮し、フラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル;MeOH/EtOAc(1:9))で精製して、化合物11を収率83%で得た。
【0199】
アセトン(2mL)中の化合物11(147mg、0.36mmol)、p-トルエンスルホン酸一水和物(75mg、0.48mmol)および2,2-ジメトキシプロパン(1mL、0.83mmol)の混合物を室温で4時間撹拌した。混合物を減圧下で回転蒸発により濃縮した。残渣をCH2Cl2で希釈し、水および飽和NaHCO3で連続的に抽出した。有機相をMgSO4で乾燥させ、濾過し、減圧下で回転蒸発により濃縮し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/EtOAc(1:1))により精製して、アセトニド化合物12を得た(131mg、収率81%)。C23H26N6O4;[α]D
25=-103.4(CHCl3,c=1);IR νmax(ニート)3421,1624,1458,1340,1215,1155,1080cm-1;1H NMR(400MHz,CDCl3)δ 8.59(1 H,br s),8.33(1 H,br s),7.57(1 H,d,J=8.4Hz),7.50(1 H,d,J=2.0Hz),7.15-7.11(1 H,m),7.09-7.05(1 H,m),6.88(1 H,d,J=2.0Hz),6.82(1 H,br s),6.49(1 H,br s),5.74(1 H,br s),5.18(1 H,t,J=5.2Hz ),5.08(1 H,dd,J=6.0,0.8Hz),4.51(1 H,s),3.95(2 H,m),3.88-3.76(2 H,m),3.06(2 H,t,J=6.8Hz),1.62(3 H,s),1.35(3 H,s);13C NMR(100MHz,CDCl3)δ 155.2,139.4,136.5,127.3,122.2,119.5,118.8,113.9,112.8,111.2,94.4,86.1,82.9,81.8,63.5,50.4,27.7,25.2;C23H27N6O4についてのESI-HRMSの計算値:451.2094,実測値:m/z 451.2099[M+H]+.
【0200】
N
6
-(インドール-3-イル)エチル-2’,3’-O-イソプロピリデン-5’-O
-((メチルグリシネート)-N-カルボニル)アデノシン(13)
【0201】
【0202】
化合物12(78mg、0.17mmol)とCDI(113mg、0.77mmol)の混合物を無水THF(4mL)中、窒素下、室温で2時間撹拌した。CDIの別のバッチ(113mg、0.77mmol)を加え、混合物を2時間撹拌した。反応が完了した後(TLCでモニター)、少量の水を加えて過剰なCDIをクエンチし、続いてグリシンメチルエステル塩酸塩(347mg、2.8mmol)およびDIEA(0.5mL、2.8mmol)を加えた。混合物をさらに24時間撹拌し、それから、減圧下で回転蒸発により濃縮した。残渣をCH2Cl2で希釈し、1MのHCl、水およびブラインで連続して洗浄した。有機相をMgSO4で乾燥させ、濾過し、回転蒸発により濃縮し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/EtOAc(2:3))により精製して、化合物13を得た(48mg、50%の収率)。C27H31N7O7;油;[α]D
25=-34.2(CHCl3,c=1);IR νmax(ニート)3406,1724,1620,1536,1460,1379,1211,1076cm-1;1H NMR(CD3OD)δ 8.28(1 H,br s),8.16(1 H,br s),7.59(1 H,d,J=8.0Hz),7.31(1 H,d,J=7.6Hz),7.10-7.04(2 H,m),6.99-6.95(1 H,m),6.18(1 H,d,J=2.8Hz),5.43-5.41(1 H,m),5.08-5.06(1 H,m),4.59(2 H,br s),4.55(1 H,dd,J=8.0,4.8Hz),4.30(1 H,dd,J=11.6,4.8Hz),4.19(1 H,dd,J=11.6,4.8Hz),3.89(1 H,br s),3.86(1 H,s),3.69(3 H,s),3.12(2 H,t,J=7.2Hz),1.61(3 H,s),1.33(3 H,s);13C NMR(100MHz,CD3OD)δ 172.4,158.7,154.3,140.8,138.4,129.0,125.2,123.8,122.5,119.7,119.5,115.7,113.3,112.3,91.8,86.0,85.6,83.2,66.0,52.8,49.6,49.4,43.3,42.6,27.6,26.6,25.7;C27H32N7O7についてのESI-HRMSの計算値:566.2363,実測値:m/z 566.2336[M+H]+.
【0203】
N
6
-(インドール-3-イル)エチル-5’-O-(グリシン-N-カルボニル)アデ
ノシン(14、II-a1)
【0204】
【0205】
MeOH(1mL)および水(0.05mL)中の化合物13(21mg、0.04mmol)の溶液を0℃で攪拌しながら、TFA(1.3mL)をゆっくりと加えた。添加が完了した後、混合物を室温まで温め、さらに2時間撹拌した。混合物を減圧下で回転蒸発により濃縮した。残渣をMeOH(0.5mL)で希釈し、1MのNaOH(2.5mL)を加え、室温で15分間撹拌した。混合物を減圧下で回転蒸発により濃縮し、逆相カラムクロマトグラフィー(RP-18シリカゲル、MeOH/H2O、1:9から1:1の勾配)により精製し、化合物14(II-a1)を得た(14mg、74%の収率)。生成物II-a1の純度は、Chromolith RP-18高分解能カラム(Merck、100mm×4.6mm)、tR=15.4分((CH3CN/0.1%TFA水溶液、22分で5%から20%までの勾配)でのHPLCで示されるように、91.6%であった。C23H25N7O7;[α]D
25=-44.0(DMSO,c=1);IR νmax(ニート)3447,1793,1624,1559,1456,1299,1245,1096cm-1;1H NMR(400MHz,CD3OD)δ 8.27(2 H,br s),7.59(1 H,d,J=7.6Hz),7.32(1 H,d,J=8.0Hz),7.10-7.04(2 H,m),6.99-6.95(2 H,m),6.04(1 H,d,J=5.2Hz),4.68(2 H,t,J=5.2Hz),4.38-4.34(2 H,m),4.31(1 H,d,J=3.6Hz),4.25(1 H,t,J=4.0Hz),3.90(2 H,br s),3.15-3.11(2 H,m);13C NMR(100MHz,CD3OD)δ 177.3,158.6,156.3,154.2,140.5,138.3,128.9,123.8,122.4,120.9,120.3,119.7,119.5,113.2,112.4,89.6,84.6,75.6,72.1,65.3,45.9,42.7,26.5;C23H24N7O7についてのESI-HRMSの計算値:510.1737,実測値:m/z 510.1753[M-H]-.
【0206】
N
6
-((5-ブロモチエン-2-イル)メチル)アデノシン(15)
【0207】
【0208】
i-PrOH(8mL)中の6-クロロプリンリボシド(287mg、1mmol)、2-アミノメチル-5-ブロモチオフェン(塩酸塩として、384mg、2mmol)およびDIEA(3mL、17mmol)の混合物)を50℃で48時間加熱した。混合物を減圧下で回転蒸発により濃縮し、適切な量のMeOHを加え、遠心分離した(8000rpm、4℃、20分)。沈殿物を回収し、MeOHから再結晶して、化合物15を得た(375mg、収率85%)。C15H16N5O4SBr;白色個体;融点153.1~154.7℃;TLC(i-プロパノール/ヘキサン(2:3))Rf=0.36;[α]D
25=-152.8(アセトン,c=1);IR νmax(ニート)3309,2929,2869,1709,1626,1584,1483,1441,1347,1298,1230,1125,1084,1053cm-1;1H NMR(DMSO-d6,400MHz)δ 8.54(1 H,br s),8.40(1 H,s),8.29(1 H,br s),7.02(1 H,d,J=3.6Hz),6.87(1 H,d,J=3.6Hz),5.90(1 H,d,J=6.0Hz),5.46(1 H,d,J=6.0Hz),5.36(1 H,dd,J=6.8,4.8Hz),5.20(1 H,d,J=4.8Hz),4.77(2 H,br s),4.61(1 H,ddd,J=6.8,6.0,6.0Hz),4.15(1 H,d,J=2.8Hz),3.97(1 H,d,J=2.8Hz),3.62-3.73(1 H,m),3.52-3.60(1 H,m);13C NMR(DMSO-d6,100MHz)δ 154.0,152.3,145.0,140.2,129.6,126.4,122.9,109.8,88.0,85.9,73.6,70.6,61.6;C15H17N5O4S79BrおよびC15H17N5O4S81BrについてのESI-HRMSの計算値:442.0185および444.0164,実測値:m/z 442.0190および444.0167[M+H]+.
【0209】
N
6
-(5-ブロモチエン-2-イル)メチル-2’,3’-O-(イソプロピリデン)
アデノシン(16)
【0210】
【0211】
アセトン(2mL)中の化合物15(150mg、0.34mmol)、p-トルエンスルホン酸一水和物(70mg、0.48mmol)および2,2-ジメトキシプロパン(1mL、0.83mmol)の混合物を室温で4時間撹拌した。混合物を減圧下で回転蒸発により濃縮した。残渣をCH2Cl2で希釈し、水および飽和NaHCO3で連続的に抽出した。有機相をMgSO4で乾燥させ、濾過し、減圧下で回転蒸発により濃縮し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/EtOAc(2:3))により精製して、アセトニド化合物16を得た(131mg、収率80%)。C18H20BrN5O4S;無色の油;[α]D
25=-126.3(CHCl3,c=1);IR νmax(ニート)3422,1618,1478,1382,1341,1297,1264,1215,1110,1081cm-1;1H NMR(400MHz,CDCl3)δ 8.33(1 H,br s),7.67(1 H,br s),6.82(1 H,d,J=3.6Hz),6.71(1 H,d,J=4.0Hz),5.80(1 H,d,J=4.8Hz),5.16(1 H,t,J=5.2Hz ),5.07(1 H,dd,J=6.0,0.8Hz),4.85(2 H,s),4.49(1 H,s),3.92(1 H,d,J=12.0Hz),3.76(1 H,d,J=12.0Hz),1.60(3 H,s),1.33(3 H,s);13C NMR(100MHz,CDCl3)δ 171.1,154.4,152.6,142.9,139.7,129.3,126.2,121.1,113.9,111.6,109.2,94.2,86.0,82.9,81.6,63.3,27.6,25.2; C18H21
79BrN5O4SについてのESI-HRMSの計算値:482.0485,実測値:m/z 482.0498[M+H]+
【0212】
N
6
-(5-ブロモチエン-2-イル)メチル-2’,3’-O-イソプロピリデン-5
’-O-((メチルグリシネート)-N-カルボニル)アデノシン(17)
【0213】
【0214】
化合物16(208mg、0.44mmol)とCDI(81mg、0.55mmol)の混合物を無水THF(17mL)中、窒素下、室温で2時間撹拌した。CDIの別のバッチ(81mg、0.55mmol)を加え、混合物を2時間撹拌した。反応が完了した後(TLCでモニター)、少量の水を加えて過剰なCDIをクエンチし、続いてグリシンメチルエステル塩酸塩(864mg、7mmol、347mg、2.8mmol)およびDIEA(1.25mL、7mmol)を加えた。混合物をさらに24時間撹拌し、それから、減圧下で回転蒸発により濃縮した。残渣をCH2Cl2で希釈し、1MのHCl、水およびブラインで連続して洗浄した。有機相をMgSO4で乾燥させ、濾過し、回転蒸発により濃縮し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/EtOAc(1:1))により精製して、化合物17を得た(118mg、45%の収率)。C22H25BrN6O7S;無色の油;[α]D
25=-29.7(MeOH,c=1);IR νmax(ニート)3422,1735,1719,1618,1214,1076cm-1;1H NMR(400MHz,CDCl3)δ 8.38(1 H,br s),7.84(1 H,br s),6.82(1 H,d,J=3.6Hz),6.74(1 H,d,J=4.0Hz),6.06(1 H,d,J=2.0Hz),5.94(1 H,s),5.07(1 H,dd,J=6.0,2.0Hz),4.94(1 H,dd,J=6.4,3.2Hz),4.88(2 H,s),4.43-4.39(1 H,m),4.33(1 H,dd,J=11.6,4.0Hz),4.19-4.15(1 H,m),3.97-3.83(2 H,m),3.69(3 H,s),1.57(3 H,s),1.33(3 H,s);13C NMR(100MHz,CDCl3)δ 170.4,155.7,154.1,153.2,148.4,143.2,139.4,129.4,126.2,120.2,114.5,111.5,109.4,90.9,85.1,84.1,81.5,64.8,52.4,42.6,27.1,25.3;C22H26
79BrN6O7SについてのESI-HRMSの計算値:597.0767,実測値:m/z 597.0739[M+H]+.
【0215】
N
6
-(5-ブロモチエン-2-イル)メチル-5’-O-(グリシン-N-カルボニル
)アデノシン(II-b1)
【0216】
【0217】
MeOH(0.5mL)および水(0.05mL)中の化合物17(19mg、31μmol)の溶液を0℃で攪拌しながら、TFA(1mL)をゆっくりと加えた。添加が完了した後、混合物を室温まで温め、さらに1時間撹拌した。混合物を減圧下で回転蒸発により濃縮した。残渣をMeOH(1mL)で希釈し、1MのNaOH(5mL)を加え、室温で10分間撹拌した。混合物を減圧下で回転蒸発により濃縮し、逆相カラムクロマトグラフィー(RP-18シリカゲル、MeOH/H2O、1:9から6:4の勾配)により精製し、化合物II-b1を得た(16mg、95%の収率)。生成物II-b1の純度は、Chromolith RP-18高分解能カラム(Merck、100mm×4.6mm)、tR=4.1分((CH3CN/0.1%TFA水溶液、22分で5%から20%までの勾配)でのHPLCで示されるように、95.5%であった。C18H19BrN6O7S;白色固体,融点=171.6~174.0℃;[α]D
25=-16.1(DMSO,c=1);IR νmax(ニート)3448,1623,1278,1119,1084,1060cm-1;1H NMR(400MHz,CDCl3)δ 8.31(2 H,d,J=4.0Hz),6.90(1 H,d,J=4.0Hz),6.85(1 H,d,J=3.6Hz),6.06(1 H,d,J=5.2Hz),4.90(2 H,s),4.69(1 H,t,J=5.2Hz),4.36-4.40(2 H,m),4.24-4.30(2 H,m),3.66(2 H,s);13C NMR(100MHz,CDCl3)δ 177.6,158.7,155.7,154.1,145.7,141.0,130.8,127.6,121.0,112.1,107.6,89.6,84.6,75.7,72.2,65.4,45.8,30.9.C18H18
79BrN6O7SについてののESI-HRMSの計算値:541.0141,実測値:m/z 541.0140[M-H]-.
【0218】
5’-アジド-5’-デオキシ-2’,3’-O-イソプロピリデン-N6-(4-(4-メトキシベンジルオキシ)ベンジル)アデノシン(18)
【0219】
【0220】
1,4-ジオキサン(3mL)中の化合物4a(500mg、0.94mmol)と1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU、420μL、2.81mmol)の混合物を0℃で撹拌しながら、ジフェニルホスホリルアジド(DPPA、404μL、1.88mmol)を一度に加えた。10分後、混合物が室温まで温まるようにし、さらに2.5時間撹拌した。アジ化ナトリウム(304mg、4.67mmol)および15-クラウン-5エーテル(18.5μL、0.09mmol)を加えた。次に、混合物を80℃で16時間撹拌した。混合物を冷却し、減圧下で回転蒸発により濃縮した。残渣をEtOAcで希釈し、1MのHCl、NaHCO3(sat.)、水およびブラインで連続して洗浄した。有機相をMgSO4で乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、EtOAc/CH2Cl2、1:19から2:3の勾配)で精製して、化合物18を得た(368mg、収率70%)。C28H30N8O5;白色泡状固体;融点49.2~50.8℃;TLC(EtOAc/CH2Cl2(1:3))Rf=0.42;[α]D
25=+7.21(CHCl3,c=2);IR νmax(ニート)2929,2101,1615,1583,1513,1479,1464,1375,1330,1295,1240,1215,1173,1155,1093,1034cm-1;1H NMR(CDCl3,600MHz)δ 8.42(1 H,br s)7.72(1 H,br s)7.36(2 H,d,J=8.2Hz)7.29(2 H,d,J=8.2Hz)6.93(4 H,t,J=7.4Hz)6.54(1 H,t,J=5.6Hz)6.09(1 H,s)5.47(1 H,d,J=6.7Hz)5.08(1 H,dd,J=5.9,3.3Hz)4.99(2 H,s)4.79(2 H,br.s.)4.43-4.35(1 H,m)3.82(3 H,s)3.64-3.51(2 H,m)1.63(3 H,s)1.41(3 H,s);13C NMR(CDCl3,150MHz)δ 159.4,158.2,154.7,153.3,139.2,130.5,129.1,129.0,128.9,120.3,115.0,114.6,113.9,90.6,85.7,84.0,82.1,69.8,55.2,52.3,43.9,27.0,25.3;C28H31N8O5についてのESI-HRMS:559.2417,実測値:m/z 559.2443[M+H]+.
【0221】
5’-デオキシ-2’,3’-O-イソプロピリデン-5’-((メチルグリシネート)
-N-アミド)-N
6
-(4-(4-メトキシベンジルオキシ)ベンジル)アデノシン(19)
【0222】
【0223】
MeOH(3mL)およびEtOAc(3mL)中の化合物18(368mg、0.66mmol)およびリンドラー触媒(280mg、0.13mmol)の混合物を室温、水素雰囲気下(バルーン内)で24時間攪拌し、TLCで示されるように、アジドの水素化分解を完了させた。混合物をMeOHで希釈し、セライトのパッドで濾過し、MeOHおよびCH2Cl2でリンスした。濾液を減圧下で濃縮して、粗アミン生成物を得た。窒素雰囲気下で、粗アミン生成物を無水THF(10mL)に溶解し、0℃に冷却し、無水THF(10mL)中の1,1’-カルボニルジイミダゾール(330mg、2.04mmol)の溶液を攪拌しながら滴下して加えた。混合物を1時間撹拌し、室温に温め、さらに2時間撹拌した。グリシンメチルエステル塩酸塩(512mg、4.08mmol)、Et3N(568μL、4.08mmol)およびDMAP(25mg、0.20mmol)を加えた。混合物を室温で16時間撹拌し、次いで減圧下で回転蒸発により濃縮した。残渣をEtOAcで希釈し、1MのHCl、水およびブラインで連続して洗浄した。有機相をMgSO4で乾燥させ、濾過し、減圧下で回転蒸発により濃縮し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、MeOH/EtOAc、勾配0:1から3:97)で精製して、尿素誘導体19を得た(379mg、86%の収率)。C32H37N7O8;白色泡状固体;融点84.6~85.8℃;TLC(MeOH/DCM(1:9))Rf=0.68;[α]D
25=-118.2(CHCl3,c=2);IR νmax(ニート)1750,1616,1578,1559,1513,1375,1297,1240,1214,1175,1097,1082,1034cm-1;1H NMR(CDCl3,600MHz)δ 8.49(1 H,br s),7.67(1 H,br s),7.45(1 H,d,J=8.2Hz),7.34(2 H,d,J=8.7Hz),7.27(2 H,d,J=8.7Hz),6.91(10 H,dd,J=8.7,3.6Hz),6.70(1 H,t,J=5.6Hz),5.77(1 H,d,J=5.1Hz),5.42-5.34(2 H,m),4.96(2 H,s),4.88(1 H,dd,J=6.0,1.8Hz),4.76(2 H,br s),4.46(1 H,dd,J=4.6,2.0Hz),4.13(1 H,dd,J=18.2,6.4Hz),3.98(1 H,ddd,J=14.1,9.5,2.0Hz),3.90(1 H,dd,J=18.2,4.9Hz),3.80(3 H,s),3.72(3 H,s),3.30-3.24 (1 H,m),1.62(3 H,s),1.37(3 H,s);13C NMR(CDCl3,150MHz)δ 171.7,159.4,158.7,158.2,155.0,152.9,140.1,130.4,129.1,129.0,128.8,121.2,115.0,114.4,113.9,92.9,84.0,81.9,81.7,69.7,55.2,52.1,42.1,42.0,27.5,25.1;C32H38N7O8についてのESI-HRMSの計算値:648.2782,実測値:m/z 648.2780[M+H]+.
【0224】
5’-デオキシ-2’,3’-O-イソプロピリデン-5’-((メチルグリシネート)
-N-アミド)-N
6
-(4-ヒドロキシベンジル)アデノシン(20)
【0225】
【0226】
MeOH(2.7mL)および酢酸(0.3mL)中の化合物19(100mg、0.15mmol)および10%Pd/C(82mg、0.07mmol)の混合物を室温、H2雰囲気下で3日間撹拌した。混合物をEtOAcで希釈し、セライトのパッドで濾過した。濾液を減圧下で回転蒸発により濃縮し、EtOAcで希釈し、飽和NaHCO3、水およびブラインで連続して洗浄した。有機相をMgSO4で乾燥させ、濾過し、減圧下で回転蒸発により濃縮し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、MeOH/CH2Cl2、勾配1:99から7:93)で精製して、生成物20を得た(72mg、89%の収率)。C24H29N7O7;TLC(MeOH/DCM(1:19))Rf=0.35;1H NMR(CDCl3,600MHz)δ 8.91(1 H,br s),8.42(1 H,br s),7.72(1 H,br s),7.27(1 H,br s),6.98(2 H,d,J=8.2Hz),6.74(1 H,br s),6.61(2 H,d,J=8.2Hz),5.77(1 H,d,J=4.6Hz),5.44(1 H,t,J=5.4Hz),5.32-5.26(1 H,m),4.82(1 H,dd,J=6.1,1.5Hz),4.52-4.71(2 H,m),4.38(1 H,d,J=2.0Hz),4.05(1 H,dd,J=18.0,6.4Hz),3.85(2 H,dd,J=18.0,5.1Hz),3.64(3 H,s),3.24(1 H,d,J=14.3Hz),1.56(3 H,s),1.30(3 H,s);13C NMR(CDCl3,150MHz)δ 171.7,158.9,156.0,154.6,153.1,147.7,139.8,129.0,120.5,115.5,114.5,92.5,84.1,82.1,81.6,52.2,43.9,42.1,41.9,27.4,25.1;C24H30N7O7についてのESI-HRMSの計算値:528.2207,実測値:m/z 528.2207[M+H]+.
【0227】
5’-デオキシ-5’-(グリシン-N-アミド)-N
6
-(4-ヒドロキシベンジル)
アデノシン(I-d1)
【0228】
【0229】
MeOH(0.8mL)および水(0.2mL)中の化合物20(70mg、0.13mmol)の溶液を0℃で攪拌しながら、TFA(2mL)をゆっくりと加えた。混合物を室温に温め、2時間撹拌した。混合物を減圧下で回転蒸発により濃縮した。残渣をMeOH(5mL)で希釈し、1MのNaOH(5mL)を加え、室温で30分間撹拌した。混合物を減圧下で回転蒸発により濃縮し、逆相カラムクロマトグラフィー(RP-18シリカゲル、MeOH/水、0:1から3:7の勾配)により精製し、化合物I-d1を得た(61.8mg、98%の収率)。生成物I-d1の純度は、Chromolith RP-18カラム(Merck、100mm×4.6mm)、tR=6.82分(CH3CN/0.1%TFA水溶液、10分で0%から30%までの勾配)でのHPLCで示されるように、99.2%であった。C20H23N7O7;白色固体,融点>200℃(分解した);[α]D
25=-19.5(H2O,c=1);IR νmax(フィルム)2924,1623,1598,1577,1398,1337,1250,1171,1133,1080cm-1;1H NMR(D2O,600MHz)δ 8.05(1 H,s),8.00(1 H,s),7.00(2 H,d,J=8.2Hz),6.54(2 H,d,J=8.7Hz),5.87(1 H,d,J=5.1Hz),4.62(1 H,t,J=5.1Hz),4.39(2 H,br.s.),4.25(1 H,t,J=5.1Hz),4.12(1 H,q,J=4.6Hz),3.58-3.50(2 H,m),3.45-3.37(2 H,m);13C NMR(D2O,150MHz)δ 178.1,165.4,160.3,160.1,153.9,152.6,139.2,128.8,126.2,118.9,117.0,112.5,87.6,83.6,73.3,70.9,43.8,41.1;C20H24N7O7についてのESI-HRMS(ネガティブモード)の計算値:474.1731,実測値:m/z 474.1737[M+H]+.
【0230】
5’-アセチルチオ-5’-デオキシ-N6-(4-(4-メトキシベンジルオキシ)ベンジル)-2’,3’-(O-イソプロピリデン)アデノシン(21)
【0231】
【0232】
CH2Cl2(4mL)中のN6-(4-ヒドロキシベンジル)-2’,3’-O-イソプロピリデン-アデノシン(3)(291mg、0.55mmol)、Et3N(442μL、3.2mmol)およびDMAP(2.75mg、0.03mmol)の混合物を0℃で撹拌しながら、CH2Cl2(1.5mL)中の塩化メタンスルホニル(MsCl、125μL、1.62mmol)の溶液を滴下して加えた。混合物を0℃で10分間撹拌し、室温に温め、さらに2時間撹拌した。混合物を減圧下で回転蒸発により濃縮し、EtOAcで希釈し、飽和NH4Cl、飽和NaHCO3、水およびブラインで連続して洗浄した。有機相をMgSO4で乾燥させ、濾過し、減圧下で回転蒸発により濃縮して、粗メシル化生成物を得た。DMF(5mL)中のメシル化生成物の溶液に、KSAc(358mg、3.19mmol)およびKI(4.4mg、0.03mmol)を加えた。混合物を室温で20時間撹拌し、次いで減圧下で回転蒸発により濃縮した。残渣をEtOAcで希釈し、飽和NaHCO3、水およびブラインで連続して洗浄した。有機相をMgSO4で乾燥させ、濾過し、減圧下での回転蒸発により濃縮し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、EtOAc/CH2Cl2、0:1から3:7の勾配)により精製して、化合物21を得た(242mg、74%の収率)。C30H33N5O6S;白色泡状固体;融点85.2~86.7℃;TLC(EtOAc/DCM(1:3))Rf=0.53;[α]D
25=-20.39(CHCl3,c=2);IR νmax(ニート)1695,1616,1583,1513,1465,1422,1375,1330,1297,1241,1216,1174,1155,1091,1035cm-1;1H NMR(400MHz,CDCl3)δ 8.38(1 H,s),7.75(1 H,s),7.32(2 H,d,J=8.6Hz),7.27(2 H,d,J=8.6Hz),6.90(4 H,dd,J=8.6,7.2Hz),6.16(1 H,br.s.),6.02(1 H,d,J=2.0Hz),5.49(1 H,dd,J=6.4,2.0Hz),4.97(1 H,d,J=3.2Hz),4.95(2 H,s),4.31(1 H,td,J=6.4,3.2Hz),3.79(3 H,s),3.31-3.22(1 H,m),3.21-3.11(1 H,m),2.32(3 H,s),1.57(3 H,s),1.36(3 H,s);13C NMR(CDCl3,100MHz)δ 194.5,159.4,158.3,154.7,153.3,139.3,130.5,129.2,128.9,115.1,114.4,114.0,90.9,86.1,84.2,83.7,69.8,55.3,31.3,30.5,27.1,25.3;C30H34N5O6SについてのESI-HRMSの計算値:592.2230,実測値:m/z 592.2243[M+H]+.
【0233】
5’-デオキシ-5’-((2,2,2-トリクロロエチルグリシネート)-N-(カル
ボニル)チオ)-N
6
-(4-(4-メトキシベンジルオキシ)ベンジル)-2’,3’
-O-(イソプロピリデン)アデノシン(22)
【0234】
【0235】
アルゴン雰囲気下、化合物21(120mg、0.20mmol)を1MのKOH(aq)(5mL)、THF(5mL)およびMeOH(5mL)の脱酸素化溶液で処理した。混合物を室温で2時間撹拌した。水(10mL)中のクエン酸(1.05g)の脱酸素化溶液を加えて、過剰な塩基を中和した。混合物を減圧下で10mL未満に濃縮し、EtOAcで希釈し、飽和NH4Cl、水およびブラインで連続して洗浄した。有機相をMgSO4で乾燥させ、濾過し、減圧下での回転蒸発により濃縮し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、EtOAc/CH2Cl2、0:1から1:4の勾配)により精製して、脱アセチル化生成物を得た(66mg、60%の収率)。
【0236】
窒素雰囲気下、CH2Cl2(0.8mL)およびTHF(0.2mL)中の2,2,
2-トリクロロエチルグリシネート(塩酸塩として、140mg、0.58mmol)および1,1’-カルボニルジイミダゾール(140mg、0.86mmol)を室温で4時間撹拌した。混合物を減圧下で濃縮し、CH2Cl2で希釈し、ブラインで洗浄した。有機相をMgSO4で乾燥させ、濾過し、減圧下で回転蒸発により濃縮して、粗イミダゾリド生成物を得た。
【0237】
アルゴン雰囲気下、上記で調製した脱アセチル化チオール生成物(66mg、0.12mmol)とイミダゾリドを含むTHF溶液(4mL)を室温で20時間撹拌した。混合物を減圧下で回転蒸発により濃縮し、EtOAcで希釈し、飽和NH4Cl、水およびブラインで連続して洗浄した。有機相をMgSO4で乾燥させ、濾過し、減圧下での回転蒸発により濃縮し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、EtOAc/CH2Cl2、1:9から1:4の勾配)により精製して、化合物22を得た(57mg、60%の収率)。C33H35Cl3N6O8S;TLC(EtOAc/DCM(1:3))Rf=0.35;[α]D
25=-51.1(CHCl3,c=2);IR νmax(ニート)1768,1723,1669,1612,1514,1457,1382,1302,1241,1216,1174,1157,1082,1034,1008cm-1;1H NMR(CDCl3,600MHz)δ 8.38(1 H,br.s.),7.80(1 H,s),7.34-7.31(2 H,m),7.29-7.26(2 H,m),6.94-6.86(4 H,m),6.20(1 H,br s),6.09(1 H,t,J=5.4Hz),6.04(1 H,d,J=2.6Hz),5.46(1 H,dd,J=6.4,3.0Hz),5.00(1 H,dd,J=6.1,3.0Hz),4.95(2 H,s),4.82-4.71(4 H,m),4.43-4.36(1 H,m),4.18(2 H,d,J=5.1Hz),3.79(3 H,s),3.34-3.20(2 H,m),1.58(3 H,s),1.36(3 H,s);13C NMR(CDCl3,150MHz)δ 168.0,159.4,158.3,154.7,153.4,139.2,129.2,128.9,115.1,114.5,114.0,94.2,90.8,86.4,84.2,83.5,74.7,74.4,69.8,55.3,46.5,42.5,39.1,32.2,27.1,25.4;C33H36
35Cl3N6O8SについてのESI-HRMSの計算値:783.1353,実測値:m/z 783.1363[M+H]+.
【0238】
5’-デオキシ-5’-(グリシン-N-(カルボニル)チオ)-N
6
-(4-ヒドロキ
シベンジル)アデノシン(I-e1)
【0239】
【0240】
MeOH(0.8mL)および水(0.2mL)中の化合物22(55mg、0.07mmol)の溶液を0℃で攪拌しながら、TFA(2mL)をゆっくりと加えた。混合物を室温に温め、さらに2時間撹拌し、次いで減圧下で回転蒸発により濃縮した。残渣をMeOH(3mL)で希釈し、室温で攪拌しながら、NaOAc・3H2O(816mg、6mmol)、酢酸(343μL、6mmol)および亜鉛末(46mg、0.7mmol)を加えた。混合物を室温で2時間撹拌し、減圧下で回転蒸発により濃縮し、逆相カラムクロマトグラフィー(RP-18シリカゲル、MeOH/水、0:1から1:1の勾配)により精製して化合物I-e1を得た(6.0mg、収率17%)。C20H22N6O7S;1H NMR(DMSO-d6,600MHz)δ 9.22(1 H,br s),8.38(1 H,br s),8.35(1 H,s),8.25(1 H,br s),8.22(1 H,br s),7.14(2 H,d,J=8.2Hz),6.67(2 H,d,J=8.2Hz),5.88(1 H,d,J=6.1Hz),5.47(1 H,d,J=5.1Hz),5.38-5.30(1 H,m),4.78(1 H,d,J=4.6Hz),4.58(2 H,br s),4.09(1 H,br s),3.94(1 H,d,J=2.0Hz),3.72(2 H,d,J=4.6Hz),3.10(1 H,dd,J=13.8,7.2Hz);C20H23N6O7SについてのESI-HRMSの計算値:491.1343,実測値:m/z 491.1350[M+H]+.
【0241】
6-クロロプリン-2’,3’-O-(イソプロピリデン)リボシド(23)
【0242】
【0243】
N2下、アセトン(20mL)中の6-クロロプリンリボシド(1)(1.0g、3.5mmol)、p-トルエンスルホン酸一水和物(1.0g、5.3mmol)および2,2-ジメトキシプロパン(10mL)の混合物を室温で3時間撹拌した。もう一度2,2-ジメトキシプロパン(10mL)を加え、混合物をさらに1時間撹拌した。混合物を減圧下で回転蒸発により濃縮した。残渣をCH2Cl2で希釈し、水で抽出した。水相をCH2Cl2で洗浄し、組合わせた有機層を飽和NaHCO3およびブラインで洗浄した。有機相をMgSO4で乾燥させ、濾過し、減圧下での回転蒸発により濃縮し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、EtOAc/ヘキサン、3:7から1:0の勾配)により精製して、化合物23を得た(870mg、76%の収率)。C13H15ClN4O4;[α]D
25=-112.6(CHCl3,c=2);IR νmax(ニート)1592,1563,1490,1438,1419,1400,1384,1337,1259,1202,1154,1136,1108,1080cm-1;1H NMR(CDCl3,600MHz)δ 8.79(1 H,s),8.25(1 H,s),6.00(1 H,d,J=4.6Hz),5.24-5.21(1 H,m),5.14(1 H,dd,J=5.6,1.5Hz),4.93(1 H,dd,J=10.6,2.0Hz),4.57(1 H,d,J=1.5Hz),4.00(1 H,dt,J=12.7,2.0Hz),3.84(1 H,ddd,J=12.7,10.6,2.3Hz),1.68(3 H,s),1.41(3 H,s);13C NMR(CDCl3,150MHz)δ 152.4,151.7,150.4,144.7,133.4,114.5,94.1,86.3,83.2,81.5,63.2,27.6,25.2;C13H16
35ClN4O4についてのESI-HRMSの計算値:327.0855,実測値:m/z 327.0868[M+H]+.
【0244】
2’,3’-O-イソプロピリデン-6-[(4-メトキシベンジルチオ)プリン]リボ
シド(24a)
【0245】
【0246】
MeOH(8mL)およびTHF(2mL)中の化合物23(163mg、0.5mmol)およびS-(4-メトキシベンジル)チオアセテート(106mg、0.555mmol)の溶液を0℃で攪拌しながら、K2CO3(76mg、0.555mmol)を一度に加えた。混合物を0℃で2時間撹拌し、EtOAcで希釈し、水およびブラインで洗浄した。有機相をMgSO4で乾燥させ、濾過し、減圧下での回転蒸発により濃縮し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、EtOAc/CH2Cl2、0:1から1:2の勾配)により精製して、化合物24aを得た(168mg、76%の収率)。C21H24N4O5S;白色泡;TLC(EtOAc/DCM(1:3))Rf=0.33;1H NMR(600MHz,CDCl3) 8.71(1 H,s),8.13(1 H,s),7.36(2 H,d,J=8.4Hz),6.82(2 H,d,J=8.4Hz),5.96(1 H,d,J=5.4Hz),5.19(1 H,t,J=5.4Hz),5.10(1 H,d,J=5.4Hz),4.56-4.64(2 H,m),4.53(1 H,s),3.97(1 H,d,J=12.0Hz),3.81(1 H,dd,J=12.0,2.0Hz),3.77(3 H,s),1.64(3 H,s),1.37(3 H,s);13C NMR(CDCl3,100MHz)δ 162.2,158.8,151.3,146.9,142.2,132.0,130.2,128.8,114.1,113.9,93.9,86.3,83.3,81.5,63.1,55.2,32.5,27.5,25.1;C21H25N4O5SについてのESI-HRMSの計算値:445.1540,実測値:m/z 445.1543[M+H]+.
【0247】
2’,3’-O-イソプロピリデン-6-[(4-(4-メトキシベンジルオキシ)ベン
ジルチオ)プリン]リボシド(24b)
【0248】
【0249】
MeOH(4mL)およびTHF(1mL)中の化合物23(61.8mg、0.19mmol)およびS-[4-(4-メトキシベンジルオキシ)ベンジル]チオアセテート(63mg、0.21mmol)の溶液を0℃で撹拌しながら、K2CO3(34.6mg、0.25mmol)を一度に加えた。混合物を0℃で2時間撹拌し、EtOAcで希釈し、水およびブラインで洗浄した。有機相をMgSO4で乾燥させ、濾過し、減圧下での回転蒸発により濃縮し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、EtOAc/CH2Cl2、0:1から2:3の勾配)により精製して、化合物24aを得た(85mg、81%の収率)。C28H30N4O6S;白色泡;TLC(EtOAc/ヘキサン(1:1))Rf=0.24;1H NMR(600MHz,CDCl3)δ 8.72(1 H,s),8.06(1 H,s),7.38(2 H,d,J=8.7Hz),7.34(2 H,d,J=8.7Hz),6.91(4 H,d,J=8.7,2.0Hz),5.94(1 H,d,J=4.6Hz),5.23-5.19(1 H,m),5.13(1 H,dd,J=5.9,1.4Hz),4.97(2 H,s),4.65-4.58(2 H,m),4.55(1 H,d,J=1.4Hz),3.98(1 H,dd,J=12.5,1.8Hz),3.83(1 H,d,J=1.8Hz),3.81(3 H,s),1.66(3 H,s),1.39(3 H,s);13C NMR(CDCl3,100MHz)δ 162.4,159.3,158.1,146.9,142.2,132.4,130.2,129.09,129.06,128.8,114.8,113.9,93.9,86.1,83.1,81.5,69.7,63.2,55.2,32.4,27.5,25.1;C28H31N4O6SについてのESI-HRMSの計算値:551.1959,実測値:m/z 551.2983[M+H]+.
【0250】
2’,3’-O-イソプロピリデン-6-(4-メトキシベンジルチオ)プリン-5’-
O-((メチルグリシネート)-N-カルボニル)リボシド(25a)
【0251】
【0252】
無水THF(3mL)中の化合物24a(88mg、0.2mmol)とCDI(97mg、0.6mmol)の混合物をアルゴン下、室温で3時間撹拌した。CDIの別のバッチ(50mg、0.3mmol)を加え、混合物を1時間撹拌した。反応が完了した後(TLCでモニター)、グリシンメチルエステル塩酸塩(175mg、1.4mmol)、DMAP(1.2mg、0.01mmol)およびTEA(194μL、1.4mmol)を加えた。混合物をさらに20時間撹拌し、それから、減圧下で回転蒸発により濃縮した。残渣をEtOAcで希釈し、飽和NH4Cl(aq.)、水およびブラインで連続して洗浄した。有機相をMgSO4で乾燥させ、濾過し、回転蒸発により濃縮し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、EtOAc/CH2Cl2、0:1から1:1の勾配)により精製して、化合物25aを得た(96mg、85%の収率)。C25H29N5O8S;白色泡;TLC(EtOAc/DCM(1:9))Rf=0.07;1H NMR(CDCl3,400MHz)δ 8.75(1 H,s),8.23(1 H,s),7.36(2 H,d,J=8.7Hz),6.82(2 H,d,J=8.7Hz),6.18(1 H,d,J=2.4Hz),5.81(1 H,t,J=5.1Hz),5.43(1 H,dd,J=6.0,2.4Hz),5.05(1 H,dd,J=6.0,4.2Hz),4.59(2 H,s),4.49(1 H,m),4.35(1 H,dd,J=11.8,4.2Hz),4.26(1 H,dd,J=11.8,5.4Hz),3.89(2 H,m),3.76(3 H,s),3.69(3 H,s),1.61(3 H,s),1.38(3 H,s);13C NMR(CDCl3,100MHz)δ170.2,161.0,158.8,155.7,151.9,147.6,141.9,131.0,130.2,128.9,114.5,113.8,90.9,85.1,84.1,81.4,64.6,55.1,52.2,42.5,32.4,27.0,25.2;C25H29N5O8SについてのESI-HRMSの計算値:560.1810,実測値:m/z 560.1817[M+H]+.
【0253】
5’-O-(グリシン-N-カルボニル)-6-[(4-メトキシベンジルチオ)プリン
]リボシド(I-f1)
【0254】
【0255】
MeOH(0.8mL)、THF(0.1mL)および水(0.1mL)中の化合物25a(10mg、0.01mmol)の溶液を室温で撹拌しながら、ギ酸(2mL)をゆっくりと加えた。添加が完了した後、反応物を40℃に加熱し、さらに24時間撹拌した。混合物を減圧下で回転蒸発により濃縮した。残渣をMeOH(2mL)およびH2O(1mL)で希釈し、室温で撹拌しながら、K2CO3(28mg、0.2mmol))を加えた。混合物を2時間撹拌した後、飽和NH4Cl(1mL)でクエンチした。混合物を減圧下で回転蒸発により濃縮し、逆相カラムクロマトグラフィー(RP-18シリカゲル、MeOH/水、0:1から9:1の勾配)により精製し、化合物I-f1を得た(3.5mg、39%)。C21H23N5O8S;TLC(MeOH/AcOH/EtOAc(1:1:8))Rf=0.50;1H NMR(DMSO-d6,600MHz)δ 8.80(1 H,s),8.67(1 H,s),7.44(1 H,br s),7.38(2 H,d,J=8.7Hz),6.87(2 H,d,J=8.7Hz),6.02(1 H,d,J=5.6Hz),4.69(1 H,t,J=5.6Hz),4.57-4.65(2 H,m),4.25(1 H,dd,J=11.8,2.6Hz),4.19(1 H,d,J=4.1Hz),4.09-4.17(2 H,m),3.72(3 H,s),3.59(2 H,d,J=5.1Hz);13C NMR(DMSO-d6,150MHz)δ 159.4,158.5,156.2,151.7,149.5,148.5,143.2,130.8,130.2,129.4,113.9,87.3,82.7,73.1,70.5,64.2,55.1,42.7,31.3;C21H24N5O8SについてのESI-HRMSの計算値:506.1340,実測値:m/z 506.1345[M+H]+.
【0256】
間欠的寒冷ストレスモデル
8~12週齢の雌C57BL/6JNarlマウスを国立実験動物センター(台北、台湾)から購入した。線維筋痛モデルは、植田のグループによって開発されたものであり、マウスを間欠的な寒冷ストレスで2日間処置した(Nishiyori,M.;Ueda,H.Prolonged gabapentin analgesia in an experimental mouse model of fibromyalgia.Mol.Pain 2008,4,52)。間欠的寒冷ストレスにより処置されたマウスは、長く続く(>2週間)機械的および熱的な痛覚過敏を発症した。間欠的寒冷ストレスの5日後、i.p.(0.5%HPβCD中)またはp.o.(1%HPβCD中)経由の化合物I-a1(JMF3737)、およびi.p.(0.5%HPβCD中)経由の化合物I-d1(JMF4413)の鎮痛効果をこれらのマウスでテストした。機械的痛覚過敏は、0.2-mNのvon Freyフィラメント刺激に対するマウス後足の引っ込め反応をテストすることによって分析した。実験結果を
図9~12に示す。
【0257】
図9は、T1-11が、腹腔内注射(i.p.)で0.03mg/kgから、強制経口投与(p.o.)で8mg/kgから始まる有効用量で、用量依存的な鎮痛効果を示すことを明らかにしている。対照的に、T1-11とグリシンに由来するコンジュゲート化合物I-a1(JMF3737)は、1mg/kg(i.p.)および1mg/kg(p.o.)から始まる有効用量で優れた用量依存的鎮痛効果を示す。T1-11とグリシンの経口投与による併用処置は、相乗効果を示さない。
【0258】
図10は、化合物I-a1(JMF3737)の鎮痛作用のメカニズムを明らかにする、代表的な全細胞パッチクランプ記録を示している;メカニズムは、NK1Rシグナリングに作用することで、T1-11と同じである。筋肉侵害受容器では、JMF3737は外向き電流(IJMF3737)を誘導し、これは、筋肉侵害受容器の全細胞パッチクランプ記録において、NK1Rアンタゴニスト(RP67580)によって可逆的に(40pAから15pAに)抑制され得る。JMF3737が誘導する外向き電流(IJMF3737)は、侵害受容器の過分極を引き起こすことができ、したがって、筋肉侵害受容器の酸誘発脱分極を打ち消し、よって、組織アシドーシスに関連する痛みを抑制する。
【0259】
図11(a)および11(b)は、化合物I-a1(JMF3737)の繰り返し処置により、耐性無く、治療効果が得られることを示している。線維筋痛モデルでは、間欠的寒冷ストレスにより痛みを誘発した後、5日目から4日間連続して1日1回、1mg/kgのJMF3737の経口処置をマウスに与えた。(a)JMF3737の繰り返し処置は、8日目からvon Freyフィラメント刺激に対する疼痛感受性の低下をもたらした(媒体、n=2;JMF3737、n=4)。(b)JMF3737の繰り返し処置は、耐性を引き起こさない。JMF3737は、5日目から8日目まで急性鎮痛効果を示す(n=4)。
【0260】
図12(a)は、I-d1のコンジュゲート化合物(JMF4413)がi.p.経路(n=2)を介した64mg/kgの用量で良好な鎮痛効果を示すことを明らかにしている。
図12(b)は、Ic-2のコンジュゲート化合物(JMF3795)がi.p.経路(n=3)を介して14μg/kg(160pmol)から始まる良好な鎮痛効果を示すことを明らかにしている。
【0261】
結果として、コンジュゲート化合物は、(1)経口経路を介してT1-11よりも優れた鎮痛効果(例えば、JMF3737);(2)T1-11よりも優れた溶解性(最大64mg/kg)(例えば、JMF3737、JMF3795、JMF4413);(3)T1-11よりも広い安全範囲(最大64mg/kg)(例えば、JMF3737、JMF4413)を示す。
【0262】
本発明の例示的な実施態様の前述の説明は、例示および説明の目的のためにのみ提示されており、網羅的であること、または開示された厳密な形態に本発明を限定することを意図してはいない。上記の教示に照らして、多くの修正および変更が可能である。
【0263】
実施態様および実施例は、他の当業者が本発明および様々な実施態様を意図される特定の用途に適した様々な修正と共に利用することを可能とするために、本発明の原理およびそれらの実際の応用を説明するために選択、記載されている。本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、本発明が関連する分野の当業者には、代替的な実施態様が明らかとなるであろう。