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特許7136798クリーンルーム用ワイパー及びその作製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】クリーンルーム用ワイパー及びその作製方法
(51)【国際特許分類】
   A47L 13/17 20060101AFI20220906BHJP
   D03D 1/00 20060101ALI20220906BHJP
   D06M 10/00 20060101ALI20220906BHJP
   B08B 1/00 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
A47L13/17 A
D03D1/00 Z
D06M10/00 J
B08B1/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019552505
(86)(22)【出願日】2018-03-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-05-21
(86)【国際出願番号】 US2018024180
(87)【国際公開番号】W WO2018175987
(87)【国際公開日】2018-09-27
【審査請求日】2021-03-17
(31)【優先権主張番号】62/475,523
(32)【優先日】2017-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513165687
【氏名又は名称】フォームテック インターナショナル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バリオス,ジェイソン
(72)【発明者】
【氏名】バリオス,アーマンド
(72)【発明者】
【氏名】ピサカーネ,フレッド
(72)【発明者】
【氏名】タン,エディ
(72)【発明者】
【氏名】チャオバナレート,チャバラ
(72)【発明者】
【氏名】チャッノ,タイウィン
【審査官】石井 茂
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-071025(JP,A)
【文献】特開2008-303523(JP,A)
【文献】特表2009-500144(JP,A)
【文献】特開平07-097742(JP,A)
【文献】特開2005-110998(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0194789(US,A1)
【文献】特開平05-033262(JP,A)
【文献】特開2009-279312(JP,A)
【文献】特開昭61-138765(JP,A)
【文献】米国特許第04610750(US,A)
【文献】特表2013-502996(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47L 13/00-13/62
B08B 1/00-1/04
B08B 5/00-13/00
D01F 8/00-8/18
D03D 1/00-27/18
D06B 1/00-23/30
D06C 3/00-29/00
D06G 1/00-5/00
D06H 1/00-7/24
D06J 1/00-1/12
D06M 10/00-11/84
D06M 16/00
D06M 19/00-23/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナイロン/ポリエステル複合体を含む第一のファイバー及びポリエステルを含む第二のファイバーを有する織布を含み、前記第一のファイバー及び前記第二のファイバーが、前記第二のファイバーを含む6本の縦糸及び前記第一のファイバーを含む18本の横糸を有する繰り返しパターンを用いて織られており、前記織布は、超純水のみで含浸されており前記超純水が直ちに均一にワイパーに浸潤する、クリーンルーム用ワイパー。
【請求項2】
前記織布が、シールドエッジ(sealed edges)を含む、請求項1に記載のクリーンルーム用ワイパー。
【請求項3】
ナイロン/ポリエステル複合体を含む前記第一のファイバーが、25~30%のナイロン及び70~75%のポリエステルを含む、請求項1又は2に記載のクリーンルーム用ワイパー。
【請求項4】
前記第一のファイバー及び第二のファイバーを織って、前記織布を作製する工程;
高温、高圧、及び少なくとも1つの界面活性剤を用いて前記織布を処理する工程;
前記織布を、無菌超純水を用いて洗浄する工程;
前記織布を乾燥する工程;
前記織布を切断し、前記織布のエッジをシールして、個々のワイパーを作製する工程;及び、
前記ワイパーをパッケージし、前記超純水で含浸する工程、
を含む方法によって作製された、請求項1~のいずれか一項に記載のクリーンルーム用ワイパー。
【請求項5】
前記織布の織られた第一のファイバー及び第二のファイバーが、前記織布を処理する工程の前に弛緩される、請求項に記載のクリーンルーム用ワイパー。
【請求項6】
前記織布を洗浄する工程が、前記織布を、洗剤を用いて洗浄し、続いて無菌純水を用いて前記織布を繰り返しリンスすることを含む、請求項4又は5に記載のクリーンルーム用ワイパー。
【請求項7】
前記織布を切断し、前記織布の前記エッジをシールする工程が、切断及びシールを同時に行うことを含む、請求項のいずれか一項に記載のクリーンルーム用ワイパー。
【請求項8】
前記方法が、前記パッケージされた含浸ワイパーを滅菌する工程をさらに含む、請求項のいずれか一項に記載のクリーンルーム用ワイパー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、その全内容が参照により本明細書に援用される2017年3月23日に出願された仮特許出願第62/475,523号の優先権を主張するものである。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、クリーンルーム環境中、又は他の類似の制御された環境中において使用するための、揮発性有機化合物(VOC)を使用することなく設備及び作業面からの汚染物質の効果的な除去を可能とし、かつ、低い発塵レベルを呈する含浸ワイパー全般に関する。含浸ワイパーは、シールドエッジ(sealed edges)を有する独特の織パターンが組み込まれ、超純水(UPW)のみで含浸された織布から作製される。含浸ワイパーは、ある面を湿潤状態のままとすることなく、その面から汚染物質を除去するのに充分なUPWを保持している。VOCを使用することがないため、それに伴う健康及び安全性のリスクもなく、重要面を清浄かつ乾燥した状態とする。
【背景技術】
【0003】
現在、湿潤剤として100%イソプロピルアルコール(IPA)を用いた含浸ワイパーが、典型的には、ワークステーション、ベンチトップ、及び処理チャンバーの内部といった装置表面など、クリーンルーム内の重要面の洗浄に用いられる。含浸ワイパーが使用される以前は、IPAを含有する噴霧ボトルとともにドライワイパーが用いられていた。IPA含浸ワイパーの現行の使用者は、それが、汚染制御に対するより便利で費用対効果の高い手法を提供するものと考えている。
【0004】
IPA含浸ワイパーを使用している企業によると、噴霧ボトルとともにドライワイパーを使用することと比較した場合に、より良好な手順の遵守(おそらくは利便性によるもの)、全体としてのワイパー使用量の低減、揮発性有機化合物(VOC)レベルの低減、火炎災害の低減、及びワイパーのより再現性のある湿潤レベルが報告されている。しかしながら、IPA含浸ワイパーは、引火性、一時的なVOC放出、及び作業員のVOC曝露など、VOCに伴う健康及び安全性のリスクを依然として有している。
【0005】
加えて、IPA含浸ワイパーの別の欠点は、対応するドライワイパーよりも高い可能性のあるレベルを含む、著しい発塵レベルを呈することである。IPA含浸ワイパーによる高い発塵レベルは、ワイパーと湿潤剤との長期間にわたる接触と関連付けられてきた。IPA含浸ワイパーの試験中に見られるこのようなより高い発塵レベルは、周囲面及び/又はプロセスに対する粉塵への曝露レベル並びにリスクレベルの上昇を潜在的に意味し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、重要面を効果的に洗浄し、同時に、現行の方法、すなわち、IPA含浸ワイパーを、又はIPAを含有する噴霧ボトルとともにドライワイパーを使用する方法と比較して、プロセス有益性の増加、コストの低減、並びに環境衛生及び安全性の向上を提供するクリーンルーム用含浸ワイパーが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、超純水(UPW)のみで含浸された含浸マイクロファイバーシールドエッジワイパーに関する。超純水(UPW又は高純度水)は、著しく厳しい規格まで精製された
水である。超純水は、半導体産業において、水が、有機及び無機化合物、溶解した物質及び粒子状物質、揮発性物質及び不揮発性物質、反応性物質及び不活性物質、親水性物質及び疎水性物質、並びに溶解したガスを含むあらゆる種類の汚染物質に対して最高レベルの純度まで処理されていることを強調するために、一般的に用いられる用語である。本発明のワイパーは、クリーンルーム技術者が100%VOCフリーの拭き取りを実現することを可能とし、かつ、IPAを含む引火性溶剤を、クリーンルームの拭き取り手順から完全に排除する。本発明のワイパーは、オペレータが汚染物質を移動させ、取り込み、除去することを可能とすると同時に、UPWのみを用いて面を清浄及び乾燥状態のままとする、独特の織パターンを有するマイクロファイバー布から構築される。ワイパーの織り方及びシールドエッジは、使用中に粉塵及びファイバーが発生することを低減する目的で、摩耗及び裂けに対する耐性を提供する。
【0008】
本発明のUPW含浸ワイパーは、ISOクラス3及びそれ以上のクリーンルームで使用することができる。UPW含浸ワイパーは、フラットパネルディスプレイ及びウェハ製造(water fabs)における高吸引(hi-vac)プロセスチャンバー及びロボティクスの洗浄、リソグラフィ、化学蒸着、及び計量モジュールにおける揮発性有機化合物(VOC)に敏感なプロセス設備の洗浄、並びにリソグラフィトラックからの焼成したレジスト及び現像剤の洗浄除去に特に有用である。UPW含浸ワイパーはまた、設備のフロントエンドモジュール、静電チャック、VATバルブ、及びガス分散プレートなどの敏感なコンポーネントの最終拭き取りにも用いられ得る。UPW含浸ワイパーはまた、設備の予防メンテナンス時に、並びにVOC及び引火性溶剤の排除が必要とされる場合のウェット洗浄にも、特に有用である。クリーンルーム中の水平面、ステンレススチールカート、及び作業面も、本発明のUPW含浸ワイパーを使用するのに理想的な場所である。
【0009】
1つの例示的な実施形態では、本発明のクリーンルーム用ワイパーは、少なくとも2つの異なるマイクロファイバーを有する織布を含み、織布は、超純水のみで含浸されている。本発明の1つの態様では、織布を構成するマイクロファイバーのうちの1つは、ナイロン/ポリエステル複合体を含み得る。さらに、ナイロン/ポリエステル複合体は、25~30%のナイロン及び70~75%のポリエステルから構成されていてよい。1つの特定の例示的な実施形態では、ナイロン/ポリエステル複合体は、72%のポリエステル及び28%のナイロンを含んでよく、これは、面を装置の回復を阻害し得る湿潤状態のままとすることなく汚染物質を除去することができるように、洗浄される面を湿潤させるのに充分な水を保持することが認められた。
【0010】
本発明の別の態様では、織布は、シールドエッジを有し得る。本発明のなお別の態様では、織布は、6本の縦糸及び18本の横糸を有する繰り返しパターンを用いて織られた第一のマイクロファイバー及び第二のマイクロファイバーを含み得る。第一のマイクロファイバー材料は、ナイロン/ポリエステル複合体であってよく、繰り返しパターンにおける18本の横糸に用いられる。第二のマイクロファイバー材料は、ポリエステルであってよく、繰り返しパターンにおける6本の縦糸に用いられる。この織パターンにより、UPWをワイパーに、直ちにかつ均一に含浸させることが可能となる。本発明の複数のUPW含浸ワイパーが、ワイパーを含むパッケージ内に積み重ねられてよく、パッケージ内に含まれるワイパーの最上部のワイパーと最下部のワイパーは、同量の水を含有しており、したがって、UPWで等しく湿潤されている。
【0011】
本発明はまた、UPW含浸ワイパーの作製方法にも関し、1つのマイクロファイバーがナイロン/ポリエステル複合体を含んでいるマイクロファイバーを選択する工程、特別な織パターンを用いてマイクロファイバーを織り、織布のロールを作製する工程、迅速に水を浸潤させるための、高温、高圧、及び薬品を用いた処理を織布に施す工程、処理された織布を、無菌超純水を用いて洗浄処理する工程、処理された織布のロールから、織布を切
断、シールすることによってワイパーを形成する工程、並びにパッケージし、超純水で含浸する工程、を含む。この方法はまた、確実に無菌状態とするためにガンマ線照射によって後処理する工程、及び清浄度を保障するためのロット検査を行う工程も含んでよい。
【0012】
UPW含浸ワイパーの作製方法の別の例示的実施形態は、1)少なくとも2つの異なるマイクロファイバー材料を織って、マイクロファイバー材料のうちの1つがナイロン/ポリマー複合体である織布を作製する工程、2)高温、高圧、及び少なくとも1つの界面活性剤を用いて織布を処理する工程、3)織布を、無菌超純水を用いて洗浄する工程、4)織布を乾燥する工程、5)織布を切断し、織布のエッジをシールして、個々のワイパーを作製する工程、並びに6)ワイパーをパッケージし、超純水のみで含浸する工程、を含む。織り工程は、6本の縦糸及び18本の横糸を有する繰り返しパターンを用いて、ナイロン/ポリマー複合体材料を、第二のマイクロファイバー材料と共に織ることを含んでよい。ナイロン/ポリマー複合体材料は、繰り返しパターンにおける18本の横糸に用いられてよく、第二のマイクロファイバー材料は、繰り返しパターンにおける6本の縦糸に用いられてよい。
【0013】
織布の織られたファイバーは、織布を処理する工程の前に、弛緩され得る。織布を洗浄する工程は、織布を、洗剤を用いて洗浄し、続いて無菌純水を用いて織布を繰り返しリンスすることを含み得る。織布の切断及びエッジのシールは、同時に行われて、個々のワイパーが作製されてよい。本発明のUPW含浸ワイパーの作製方法は、パッケージされた含浸ワイパーを滅菌する工程も含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明のクリーンルーム用UPW含浸ワイパーの例示的な作製方法における工程を示すフローチャートである。
図2図2は、本発明のワイパーの1つの例示的な実施形態を作製するために用いられる織布の作製に用いられる第一のマイクロファイバーの写真である。
図3図3は、図2で言及した本発明のワイパーの例示的な実施形態を作製するために用いられる織布の作製に用いられる第二のマイクロファイバーの写真である。
図4図4は、図2及び図3に示されるマイクロファイバーを用いて作製された高速水含浸性(fast water wet out)を有する改良された織布の写真である。
図5図5は、図4に示される高速水含浸性を有する改良された織布を作製するために用いられた織パターンを示す図である。
図6図6は、図4に示される高速水含浸性を有する改良された織布を構成する弛緩されたファイバーの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
現在用いられているIPAで含浸されたクリーンルーム用ワイパーは、ポリエステルから構成されている。ポリエステルワイパーの場合、何らかの洗浄効率を得るためには、洗浄される面を完全に湿潤させる必要がある。100%ポリエステルの布は、面を乾燥状態のままとしない。クリーンルーム内の洗浄された面をIPAで湿潤した状態のままとすることは、すべてのIPAがすぐに蒸発することから、問題ではない。しかし、IPAを用いることの欠点は、IPAの蒸気が有害であり、引火性であり、汚染源であることである。加えて、100%ポリエステルは、その耐摩耗性が低いことから、粉塵を容易に排出する。
【0016】
IPA含浸ポリエステルワイパーに伴う課題及び欠点にも関わらず、半導体製造プラントは、ワイパーに水を用いることを考慮したことはなく、その理由は、半導体製造プロセスにおける多くの装置は、10~10気圧で運転される必要があり、装置に水が残っていると、ポンプによるダウンタイムが、3~5倍長くなる、又は何時間も長くなるから
である。プラントでは、設備の価値が、10000ドル/時間を超えるものであることから、このようなポンプによるダウンタイムは許容されない。しかし、水と共に使用するためのワイパーが、IPAと共に用いられるワイパーのように機能するように、すなわち、洗浄はするが、洗浄された後の面を湿潤状態のままとしないように機能するように製造することができれば、それがIPAに伴う安全性及び健康のリスクを有しないことから、半導体製造プラントでは、それを使用することを容易に選定することができる。
【0017】
本発明は、まさにそのようなワイパーに関する。本発明は、超純水(UPW)のみで含浸されており、UPWが直ちに均一にワイパー中に浸潤し、重要面上に水を残すことなく重要面を洗浄することができるように構成された含浸ワイパーを含む。本発明はまた、本発明のUPW含浸ワイパーの作製方法も含む。
【0018】
図1は、本発明のクリーンルーム用UPW含浸ワイパーの例示的な作製方法10における工程を示すフローチャートである。まず、工程12において、ワイパーの作製に用いられることになる織布作製のためのファイバーが選択される。ファイバーは、ナイロン/ポリエステル複合体である第一のマイクロファイバー、及びポリエステルである第二のマイクロファイバーを含む。本発明のワイパーの1つの例示的な実施形態を作製するために用いられる織布の作製に用いることができる第一のマイクロファイバーの写真を、図2に示す。第一のマイクロファイバー材料は、柔らかく、光沢があり、非常にかさ高い。それはまた、非常に優れた水分透過性及び通気性も備える。ナイロン/ポリエステル複合体は、25~30%のナイロン及び70~75%のポリエステルから構成されていてよい。1つの特定の例示的な実施形態では、ナイロン/ポリエステル複合体は、72%のポリエステル及び28%のナイロンを含んでよい。本発明のワイパーの例示的な実施形態を作製するために用いられる織布の作製に用いることができる第二のマイクロファイバーの写真を、図3に示す。第二のマイクロファイバー材料は、柔らかく、高密度であり、耐水性、水分透過性であり、高い引張強度を有する。
【0019】
工程14では、第一及び第二のマイクロファイバーが、図5に示すような特定の織パターンを用いて織られ、このパターンは、織布を、水が直ちに均一に織布中に浸潤することを意味する、高速水含浸性(Fast Water Wet Out)とすることを促進する。図5に示す織パターンは、6本の縦糸と18本の横糸を含む1つの繰り返し単位である。各ボックスは、織りのインターロック点を示す。「×」は、このインターロック点上において、縦糸/マイクロファイバーが、横糸/マイクロファイバーの上にあることを意味する。上記で述べた第一のマイクロファイバー材料は、横糸として用いられ、上記で述べた第二のマイクロファイバー材料は、縦糸として用いられる。第一及び第二のマイクロファイバーは、織られて、ワイパーの作製に用いられる織布のロールが作製される。1つの例示的な方法では、織布のロールは、61インチ幅の織布のロールを含んでよい。
【0020】
織布は、工程16において、高温、及び高圧、及びUPWと織布との間の界面張力を低下させることによって湿潤剤として作用する界面活性剤などの1又は複数の薬品で処理される。この処理は、さらに、織布を高速水含浸性とすることを促進する。処理後、マイクロファイバーを織布に織るために用いられる織機上の特別の配列を用いて、図6に示すように織られたファイバーを弛緩させる。高速水含浸性とする処理が施された織布から得られたヒトデ型の断面を図4に示す。
【0021】
工程18において、処理された織布のロールは、その後、無菌超純水を用いて洗浄処理される。より具体的には、処理された織布のロールは、洗剤を用いて10分間洗浄され、次に4分間ごとのリンスを9回行うことによって36分間にわたってリンスされる。300rpmで5分間、次に600rpmで5分間回転させることによって、ロールから水が抽出される。次に、ロールは、摂氏85度の乾燥機中で2時間にわたって乾燥される。
【0022】
次に、工程20において、処理された織布のロールからワイパーが形成される。処理された織布のロールは、さらに処理されて、布のより細いロールとされ、最終的にはシートとされる。処理された織布のより小さいロール及びシートには、切断と、装置からワイパーへ金属汚染物質が移ることを最小限に抑えるためにステンレススチール上にPVDコーティングを有している超音波装置を用いたシールとが、同時に施される。布は、長さ方向に沿って切断及びシールされて、シールドエッジが形成され、次にそれは、別の機械上で処理されて、ウェブ全体にわたって切断及びシールされ、個々のワイパーが作製される。
【0023】
工程22では、個々のシールドエッジワイパーは、パッケージされ、UPWで含浸される。ワイパーは、パッケージあたり10又は20のワイパーで、互いの上に平らに積み重ねられる。ワイパーを形成するための処理された織布のロールの巻き取り、アイロン掛け、及び切断は、クリーンルーム内で行われる。ワイパーのパッケージ及び含浸も、クリーンルーム内で行われる。次に、パッケージされた含浸ワイパーは、工程24において、ガンマ線照射を用いて滅菌される。ガンマ線照射は、標準的な滅菌手順であり、ガンマ線照射器は、コバルト-60によって作動し、温度の影響をほとんど与えることなく、残渣もなく、製品及びそのパケージ全体にわたって微生物を効果的に殺傷するものである。最後に、清浄度を保障するために、パッケージされ滅菌された製品のロットが、工程26において検査される。
【0024】
本発明のクリーンルーム用UPW含浸ワイパーは、IPAに伴う安全性、環境、及び健康の問題を起こすことなく、クリーンルーム用IPA含浸ワイパーと同様に作用する。クリーンルーム用UPW含浸ワイパーは、清浄であり、平滑であり、洗浄した面のあとに水を残すことなく効果的に洗浄する能力を有する。含浸ワイパーを構成する織布は、IPA含浸ワイパーの場合と同様に、洗浄面が非常に素早く乾燥するように設計されている。
【0025】
本発明のクリーンルーム用UPW含浸ワイパーを用いることによるプロセス有益性としては、限定されないが、1)リソグラフィ、計量、CVDなどのVOCに敏感な製造モジュールを溶媒蒸気から保護すること、2)ファブワイパー(fab wipers)に伴う繊維及び粉塵のエクスカーション(excursions)のリスクを低減すること、3)予防メンテナンス時間の短縮及び稼働時間の向上に繋がる改善された汚染物質の拾い上げ、4)非常に優れたひと拭き(first pass)での洗浄結果及び洗浄時間の短縮を可能とするワイパーの均一で一定の湿潤、並びに5)最先端のウェハ製造での使用に最適化されたワイパーであること、が挙げられる。加えて、本発明のクリーンルーム用UPW含浸ワイパーを用いることは、ワイパーの使用量を減少させて、廃棄物除去コストが低下する結果となることによって、IPAワイプを排除することによりVOCのプロセス曝露及び一時的排出のコストを大きく低減することによって、ひと拭きの質(1st Pass quality)を向上させることで試験ウェハのコストを低減することによって、粉塵制御を向上させることで装置のダウンタイムに伴うコストを低減することによって、及び洗浄の平均時間を削減することによって、維持費を低減することを可能とするものである。
【0026】
本発明のクリーンルーム用UPW含浸ワイパーの使用で得られる環境衛生及び安全性の有益性としては、限定されないが、1)引火性化学物質の保管及び溶媒噴霧ボトルを削減することによって、クリーンルームの拭き取り時の火災リスクを排除すること、2)溶媒での拭き取りに伴う一時的VOC排出及び大気パーミットの影響(air permit implications)を排除すること、並びに3)クリーンルームの拭き取り時における作業員のイソプ
ロピルアルコールへの曝露を排除すること、が挙げられる。
【0027】
本発明のクリーンルーム用UPW含浸ワイパーの性能及び汚染特性の初期評価は、既存のIPA含浸ワイパーと比較して改善を示すものである。本発明のクリーンルーム用UP
W含浸ワイパーのこれらの特性を示すいくつかの初期データを以下の表1に示す。表1のデータは、含浸から7日後のワイパーの典型的な分析を表している(乾燥状態)。測定単位は、標準試験法IEST-RP-CC004.3で用いられる標準単位を表す。
【0028】
【表1】
【0029】
本明細書における本発明の例示的な実施形態の図面及び記述は、本発明の様々な例示的な実施形態を示す。これらの例示的な実施形態及びモードは、当業者が本発明を実践することができるように充分に詳細に記載されるものであり、いかなる形であっても、本発明の範囲、適用性、又は構成を限定することを意図するものではない。そうではなく、以下の開示は、例示的な実施形態及びモードの実行、並びに当業者に公知又は明らかであるいずれかの均等なモード若しくは実施形態の両方を教示することを意図するものである。加えて、含まれるすべての例は、例示的な実施形態及びモードの限定されない実例であり、同様に、当業者に公知又は明らかであるいずれかの均等なモード若しくは実施形態を利用している。
【0030】
具体的に挙げられていないものに加えて、本発明の実践で用いられる構造、配列、適用、割合、要素、材料、又はコンポーネントの他の組み合わせ及び/又は改変は、本発明の範囲から逸脱することなく、改変されてよく、又はそうでなければ特定の環境、製造仕様、設計パラメータ、若しくは他の操作要件に対して特に適合されてよく、本開示に含まれることを意図している。
【0031】
特に断りのない限り、本出願者は、本明細書及び請求項における語句に対して、一般に容認されている一般的意味、又は適用可能な技術分野における当業者によって用いられる通常の慣習的意味が与えられることを意図している。これらの意味が異なる状況では、本明細書及び請求項における語句に対して、可能な限り広く一般的な意味が与えられるべきである。いずれの語又は句に対しても、他の何らかの特別な意味が意図される場合、本明細書は、その特別な意味を明確に記載し、定義する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6