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特許7136812術後乳房創傷に使用する吸収性陰圧ドレッシングシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】術後乳房創傷に使用する吸収性陰圧ドレッシングシステム
(51)【国際特許分類】
   A61M 27/00 20060101AFI20220906BHJP
   A61F 13/00 20060101ALI20220906BHJP
   A61F 13/02 20060101ALI20220906BHJP
   A61F 13/14 20060101ALI20220906BHJP
   A61L 15/26 20060101ALI20220906BHJP
   A61L 15/58 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
A61M27/00
A61F13/00 301Z
A61F13/02 A
A61F13/14 A
A61L15/26 100
A61L15/58 100
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2019563060
(86)(22)【出願日】2018-04-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-02
(86)【国際出願番号】 US2018026694
(87)【国際公開番号】W WO2018212849
(87)【国際公開日】2018-11-22
【審査請求日】2021-04-07
(31)【優先権主張番号】62/506,873
(32)【優先日】2017-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(74)【代理人】
【識別番号】100110803
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 太朗
(72)【発明者】
【氏名】ロック,クリストファー,ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】プラット,ベンジャミン,アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】セドン,ジェイムス,キリングワース
(72)【発明者】
【氏名】ハーパー,ジョン,アール.
【審査官】竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-521736(JP,A)
【文献】国際公開第2015/188003(WO,A1)
【文献】特表2016-516462(JP,A)
【文献】特表2014-525318(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 27/00
A61F 13/00
A61F 13/02
A61F 13/14
A61L 15/26
A61L 15/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰圧治療を提供するシステムにおいて、
乳房上に配置されるような形状である第1のドレッシングアセンブリであって、乳輪を覆うように適合された実質的に円形の区画を含むクラウンと、内側部分及び外側部分を有し、且つ乳房下溝に沿った創傷部位を覆うように適合された長尺状アームとを含み、
前記乳房に付着するように適合された第1の面を含み、且つ穿孔を含むドレッシング組織インタフェースと、
第1の側及び第2の側を有するドレッシングマニホールドであって、前記ドレッシングマニホールドの前記第1の側は、前記ドレッシング組織インタフェースの第2の面に接して配置されている、ドレッシングマニホールドと、
前記ドレッシングマニホールドの前記第2の側に配置され、且つ前記ドレッシングマニホールド及び前記ドレッシング組織インタフェースを前記乳房に封止するための接着性縁部を有するドレッシングカバーと
をさらに含む第1のドレッシングアセンブリと、
前記第1のドレッシングアセンブリ上に配置され、且つ陰圧源と流体連通するように構成された陰圧ポートと
を含むことを特徴とするシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記第1のドレッシングアセンブリと流体連通するように構成された第1のポートと、陰圧を受け取るように適合された第2のポートとを含む吸収性パウチをさらに含むことを特徴とするシステム。
【請求項3】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記第1のドレッシングアセンブリは、
前記長尺状アームの前記外側部分から延在するブリッジ
をさらに含み、前記クラウン、前記長尺状アーム及び前記ブリッジの各々は、前記ドレッシング組織インタフェース、前記ドレッシングマニホールド及び前記ドレッシングカバーの一部を含むことを特徴とするシステム。
【請求項4】
請求項3に記載のシステムにおいて、前記クラウンは、前記長尺状アームに結合され、及び前記長尺状アームは、前記ブリッジに結合されていることを特徴とするシステム。
【請求項5】
請求項3に記載のシステムにおいて、前記第1のドレッシングアセンブリは、前記ブリッジの外側先端に近接して位置決めされたコネクタをさらに含むことを特徴とするシステム。
【請求項6】
請求項3に記載のシステムにおいて、前記ブリッジは、前記長尺状アームの前記外側部分と実質的に90°の角度を形成することを特徴とするシステム。
【請求項7】
請求項3に記載のシステムにおいて、前記穿孔は、前記クラウンの第1の複数の孔と前記長尺状アームの第2の複数の孔とからなることを特徴とするシステム。
【請求項8】
請求項5に記載のシステムにおいて、前記ドレッシングマニホールドは、前記ブリッジの前記外側先端に向かって配向された複数の繊維を含むことを特徴とするシステム。
【請求項9】
請求項8に記載のシステムにおいて、前記複数の繊維は、前記コネクタに向かって配向されていることを特徴とするシステム。
【請求項10】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記第1のドレッシングアセンブリは、前記ドレッシング組織インタフェースの前記第1の面から剥離されるように適合された第1の剥離層をさらに含むことを特徴とするシステム。
【請求項11】
請求項2に記載のシステムにおいて、前記吸収性パウチの第1の面から剥離されるように適合された第2の剥離層をさらに含むことを特徴とするシステム。
【請求項12】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記ドレッシング組織インタフェースは、低粘着性シリコーンを含むことを特徴とするシステム。
【請求項13】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記ドレッシングマニホールドは、織布材料を含むことを特徴とするシステム。
【請求項14】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記ドレッシングマニホールドは、不織布材料を含むことを特徴とするシステム。
【請求項15】
請求項2に記載のシステムにおいて、前記吸収性パウチ及び前記第1のドレッシングアセンブリに陰圧を提供する陰圧源をさらに含むことを特徴とするシステム。
【請求項16】
請求項2に記載のシステムにおいて、
第2のドレッシングアセンブリ
をさらに含み、前記吸収性パウチは、前記第2のドレッシングアセンブリを前記吸収性パウチの内部に流体的に接続するように構成された第3のポートをさらに含むことを特徴とするシステム。
【請求項17】
請求項16に記載のシステムにおいて、前記第1のドレッシングアセンブリ及び前記第2のドレッシングアセンブリは、異なる幾何学的形状を含むことを特徴とするシステム。
【請求項18】
請求項16に記載のシステムにおいて、前記第1のドレッシングアセンブリは、患者の右乳房上に配置されるように構成され、及び前記第2のドレッシングアセンブリは、患者の左乳房上に配置されるように構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項19】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記第1のドレッシングアセンブリは、第1の乳房の少なくとも一部及び第2の乳房の少なくとも一部の上に延在するように構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項20】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記第1のドレッシングアセンブリは、穿孔を含む切開部区画を含むことを特徴とするシステム。
【請求項21】
請求項20に記載のシステムにおいて、前記切開部区画は、円形であることを特徴とするシステム。
【請求項22】
請求項20に記載のシステムにおいて、前記切開部区画は、弓形の形状であることを特徴とするシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年5月16日に出願された、「An Absorbent Negative-Pressure Dressing System for use With Post-Surgical Breast Wounds」という名称の米国仮特許出願第62/506,873号明細書に対する優先権を主張し、その出願は、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
添付の特許請求の範囲に示される本発明は、概して、組織治療システムに関し、より詳細には、ただし限定なしに、陰圧創傷治療システムに関する。
【背景技術】
【0003】
毎年世界中で何百万もの外科処置が行われている。それらの処置の多くが観血手術として行われる一方、内視鏡処置、関節鏡処置及び腹腔鏡処置等、低侵襲手術を用いて実施されるものが増えている。通常、外科処置では、必然的に皮膚及び関連組織における急性創傷、例えば切開部がある。多くの場合、切開部は、処置の最後にステープル又は縫合糸等、機械的装置を用いて閉鎖されるか又は接着剤を用いて閉鎖される。その後、創傷は、多くの場合、単に乾いた滅菌包帯で覆われるのみである。しかしながら、通常、表皮のみではない断裂がある。多くの外科処置、特に低侵襲技法を用いて実施される外科処置では、断裂又は損傷の大部分は、表皮の下又は皮下レベルである。損傷組織は、治癒のために時間及びケアを必要とし、浮腫、血清腫、血腫、さらなる打撲傷及び感染を含む多数のあり得る合併症及びリスクの原因となる。
【0004】
臨床研究及び診療により、組織部位、特に損傷組織を含む部位に近接して減圧することにより、組織部位における新たな組織の増殖を促進及び加速させ得ることが示された。この現象の多数の応用があるが、それは、創傷を治療するのに特に有利であることが分かった。外傷、外科手術又は別の原因の何れであっても、創傷の原因に関わらず、創傷の適切なケアが転帰に重要である。減圧を用いる創傷又は他の組織の治療は、一般に、「陰圧療法」と呼ばれる場合があるが、例えば、「陰圧創傷療法」、「減圧療法」、「真空療法」、「陰圧補助閉鎖」及び「局所陰圧」を含む他の名称を含む他の名称でも知られている。陰圧療法は、上皮組織及び皮下組織の移動、血流の改善並びに創傷部位における組織の微小変形を含む多くの利益を提供することができる。これらの利益が合わさって、肉芽組織の成長を促進し、治癒時間を短縮することができる。
【0005】
陰圧療法の臨床的利益が広く知られているが、治療システム、構成要素及びプロセスの改善は、医療提供者及び患者に利益をもたらすことができる。
【発明の概要】
【0006】
以下の概要及び説明において且つ添付の特許請求の範囲において、陰圧療法環境で乳房組織を治療する新たな且つ有用なシステム、装置及び方法が示される。当業者が請求項に係る主題を作成及び使用することができるように、例示的な実施形態も提供する。
【0007】
いくつかの実施形態では、陰圧治療を提供するシステムは、第1のドレッシングアセンブリ及び陰圧ポートを含むことができる。第1のドレッシングアセンブリは、乳房上に配置されるような形状とすることができ、且つ乳輪を覆うための実質的に円形区画を有するクラウンと、内側部分及び外側部分を有し、且つ乳房下溝に沿った創傷部位を覆うように適合された長尺状アームとを含むことができる。第1のドレッシングアセンブリは、ドレッシング組織インタフェース、ドレッシングマニホールド及びドレッシングカバーも含むことができる。ドレッシング組織インタフェースは、乳房に付着するように適合された第1の面と、ドレッシング組織インタフェースを通して流体路を提供する穿孔とを有することができる。ドレッシングマニホールドは、第1の側及び第2の側を有することができ、及びドレッシングマニホールドの第1の側は、ドレッシング組織インタフェースの第2の面に接して配置することができる。ドレッシングカバーは、ドレッシングマニホールドの第2の側に配置することができ、且つドレッシングマニホールド及びドレッシング組織インタフェースを乳房に封止するための接着性縁部を有することができる。陰圧ポートは、陰圧源と流体連通するように構成することができる。
【0008】
他の実施形態例では、組織部位に陰圧療法を提供するシステムは、第1のドレッシングアセンブリ、第2のドレッシングアセンブリ、吸収性パウチ及び陰圧サブシステムを含むことができる。第1のドレッシングアセンブリは、第1の乳房領域上に配置されるような形状とし且つそのように構成し、及び乳房下溝を覆うように適合させることができ、第2のドレッシングアセンブリは、第2の乳房領域上に配置されるような形状とし且つそのように構成し、及び乳房下溝を覆うように適合させることができる。吸収性パウチは、第1のポート及び第2のポートを含むことができる。第1のポートは、第1のドレッシングアセンブリ及び第2のドレッシングアセンブリの少なくとも一方に流体的に接続されるように適合させることができる。陰圧サブシステムは、吸収性パウチの第2のポートに流体的に接続することができ、且つ吸収性パウチ、第1のドレッシングアセンブリ及び第2のドレッシングアセンブリに陰圧を提供することができる。
【0009】
さらなる他の実施形態例では、患者の乳房組織に治療的支援を提供するドレッシングは、組織インタフェース、マニホールド、カバー及びポートを含むことができる。組織インタフェースは、第1の側の接着性材料と、乳房組織に陰圧を連通させるように適合された複数の穿孔とを含むことができる。マニホールドは、陰圧を伝達し、且つ乳房組織から流体を取得するように適合させることができる。カバーは、組織インタフェースと反対側でマニホールドに隣接して位置決めすることができ、且つ乳房組織の周囲に流体シールを提供することができる。ポートは、導管に流体的に結合するためのものであり得る。
【0010】
さらに他の実施形態例では、吸収性パウチは、第1の側に接着性材料を有する組織インタフェース層と、陰圧を伝達し、且つ流体を取得するように適合されたマニホールドと、マニホールド内に配置された吸収性材料と、非接着性フィルムと接着性縁枠とを含むカバーと、ドレッシングとの流体連通を提供する少なくとも1つのポートと、少なくとも1つのポートに導管を接続する前に除去されるように適合された実質的に非付着性のフィルムを含む少なくとも1つのポートカバーとを含むことができる。
【0011】
さらなる実施形態例では、乳房組織を治療する方法は、患者の第1の乳房の乳輪及び乳房下溝の少なくとも一方の上の第1の切開部に第1のドレッシングアセンブリを適用するステップと、患者の第2の組織部位の皮膚表面に吸収性パウチを付着させるステップと、吸収性パウチ及び第1のドレッシングアセンブリに陰圧源を流体的に結合するステップとを含むことができる。
【0012】
さらなる実施形態例では、乳房組織のためのドレッシングは、切開部区画及びコネクタ区画を含むことができる。切開部区画は、流体を取得するように適合させることができる。コネクタ区画は、流体を輸送するように適合させることができ、且つ切開部区画の一部から延在する第1の側と、陰圧インタフェースを有する第2の側とを有することができる。
【0013】
さらなる実施形態例では、乳房組織に治療的支援を提供するドレッシングは、実質的に円形の区画と、内側部分及び外側部分を有する弧状区画とを含むことができる。実質的に円形の区画及び弧状区画の各々は、組織インタフェース、マニホールド及びカバーを含むことができる。組織インタフェースは、乳房組織に付着するように適合された第1の面と、複数の穿孔とを含むことができる。マニホールドは、陰圧を伝達し、且つ乳房組織から流体を取得するように適合させることができる。カバーは、マニホールドに隣接して位置決めし、且つ乳房組織の周囲に流体シールを提供するように適合させることができる。
【0014】
さらなる実施形態例では、乳房組織に治療的支援を提供するドレッシングは、実質的に円形の区画と、実質的に円形の区画の第1の側から延在するブリッジ区画と、ブリッジ区画上に位置決めされたポートとを含むことができる。ポートは、ドレッシングに陰圧を流体連通させるように適合させることができる。
【0015】
さらなる実施形態例では、乳房組織に治療的支援を提供するドレッシングは、実質的に円形の区画と、実質的に円形の区画の第1の側から延在するアーム区画とを含むことができる。実質的に円形の区画は、乳房組織に付着するように適合された組織インタフェースと、マニホールド層と、カバーとを含むことができる。マニホールド層は、組織インタフェースとカバーとの間に位置決めすることができる。アーム区画の少なくとも一部は、乳房組織に付着するように適合された組織インタフェースと、マニホールド層と、カバーとを含み、マニホールド層は、組織インタフェースとカバーとの間に位置決めされている。
【0016】
さらなる実施形態例では、組織部位を治療するシステムは、乳房上に配置されるような形状であるドレッシングアセンブリと、ポートとを含むことができる。ドレッシングアセンブリは、実質的に円形の区画と、内側部分及び外側部分を有し、且つ乳房の乳房下溝を覆うように適合された長尺状アームとを含むことができる。ポートは、陰圧源と流体連通するように構成することができる。
【0017】
請求項に係る主題を作成及び使用する目的、利点及び好ましい形態は、例示的な実施形態の以下の詳細な説明と併せて添付図面を参照することにより最もよく理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本明細書による、組織部位に陰圧を送達することができ、且つ流体を管理することができる治療システムの実施形態例の機能ブロック図である。
図2A図2Aは、図1の治療システムにおけるドレッシングサブシステムのいくつかの実施形態例に関連付けることができるさらなる詳細を示す概略図である。
図2B図2Bは、図1の治療システムにおけるドレッシングサブシステムのいくつかの実施形態例に関連付けることができるさらなる詳細を示す概略図である。
図3図3は、図2A及び図2Bのドレッシングのいくつかの実施形態に関連付けることができるさらなる詳細を示す組立図である。
図4図4は、図2A及び図2Bのパウチのいくつかの実施形態に関連付けることができる追加の詳細を示す組立図である。
図5A図5Aは、1つの例示的な実施形態例による、モデル模擬患者の乳房に適用された乳房ドレッシング例の正面図である。
図5B図5Bは、1つの例示的な実施形態例による、図5Aのモデル模擬患者の乳房に適用された乳房ドレッシング例の1つの側面図である。
図6A図6Aは、例示的な実施形態例による、モデル模擬患者の乳房に適用された乳房ドレッシング例の上に装着された圧迫帯例の正面図である。
図6B図6Bは、例示的な実施形態例による、乳房ドレッシング例の上に装着された図6Aの圧迫帯例の側面図である。
図7A図7Aは、1つの例示的な実施形態例による、いくつかの豊胸処置に関連する、乳房の切開部の上に適用された乳房ドレッシング例の重ね合わせ図である。
図7B図7Bは、別の例示的な実施形態例による、いくつかの豊胸処置に関連する、乳房の切開部の上に適用された乳房ドレッシング例の重ね合わせ図である。
図7C図7Cは、さらに別の例示的な実施形態例による、いくつかの豊胸処置に関連する、患者の腕の下部に位置する切開部の上に適用されたドレッシング例の重ね合わせ図である。
図8A図8Aは、別の例示的な実施形態例による、いくつかの乳房縮小処置に関連する、乳房の切開部の上に適用された乳房ドレッシング例の重ね合わせ図である。
図8B図8Bは、別の例示的な実施形態例による、いくつかの乳房縮小処置に関連する、乳房の切開部の上に適用された乳房ドレッシング例の重ね合わせ図である。
図8C図8Cは、さらに別の例示的な実施形態例による、いくつかの乳房縮小処置に関連する、乳房の切開部の上に適用された乳房ドレッシングの実施形態例の重ね合わせ図である。
図8D図8Dは、図8Aのドレッシングのいくつかの実施形態に関連付けることができるさらなる詳細を示す概略図である。
図8E図8Eは、図8Bのドレッシングのいくつかの実施形態に関連付けることができるさらなる詳細を示す概略図である。
図8F図8Fは、図8Cのドレッシングのいくつかの実施形態に関連付けることができるさらなる詳細を示す概略図である。
図9A図9Aは、1つの例示的な実施形態例による、いくつかの乳房切除処置に関連する、乳房の切開部の上に適用された乳房ドレッシングの実施形態例の重ね合わせ図である。
図9B図9Bは、別の例示的な実施形態例による、いくつかの乳房切除処置に関連する、乳房の切開部の上に適用された乳房ドレッシングの実施形態例の重ね合わせ図である。
図9C図9Cは、さらに別の例示的な実施形態例による、いくつかの乳房切除処置に関連する、乳房の切開部の上に適用された乳房ドレッシングの実施形態例の重ね合わせ図である。
図9D図9Dは、図9Aのドレッシングのいくつかの実施形態に関連付けることができるさらなる詳細を示す概略図である。
図9E図9Eは、図9Bのドレッシングのいくつかの実施形態に関連付けることができるさらなる詳細を示す概略図である。
図9F図9Fは、図9Cのドレッシングのいくつかの実施形態に関連付けることができるさらなる詳細を示す概略図である。
図10図10は、1つの例示的な実施形態例による、いくつかの乳房切除処置に関連する切開部の上で乳房に適用された乳房ドレッシング例の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
実施形態例の以下の説明は、当業者が、添付の特許請求の範囲に示す主題を作成及び使用することを可能にする情報を提供するが、本技術分野においてすでに周知であるいくつかの詳細は、省略している場合がある。したがって、以下の詳細な説明は、限定的ではなく、例示的であるものとして解釈されるべきである。
【0020】
本明細書では、実施形態例について、添付図面に示すさまざまな要素間の空間的関係又はさまざまな要素の空間的向きに関して説明する場合もある。概して、こうした関係又は向きは、治療を受けるための適所にある患者と一致するか又はそうした患者に対する基準系を想定する。しかしながら、当業者が理解するはずであるように、この基準系は、厳密な規定ではなく、単に説明的な手段である。
【0021】
図1は、本明細書による陰圧療法を提供することができる治療システム100の実施形態例の簡易機能ブロック図である。治療システム100は、ドレッシングサブシステム102及び治療ユニット104を含むことができる。いくつかの実施形態では、ドレッシングサブシステム102は、ドレッシング106及びパウチ108を含むことができる。いくつかの実施形態では、治療ユニット104は、陰圧源110等の陰圧源を含むことができる。治療システム100は、容器112及び調節器114等の追加の構成要素も含むことができ、それらもドレッシングサブシステム102及び治療ユニット104と流体連通することができる。
【0022】
これに関連して、「組織部位」という用語は、広義に、限定されないが、骨組織、脂肪組織、筋組織、神経組織、皮膚組織、血管組織、結合組織、軟骨組織、腱又は靭帯を含む、組織上又は組織中に位置する創傷、欠損又は他の治療標的を指す。創傷としては、例えば、慢性創傷、急性創傷、外傷性創傷、亜急性創傷及び裂開性創傷、中間層熱傷、潰瘍(糖尿病潰瘍、褥瘡又は静脈不完全潰瘍等)、弁及び移植片を挙げることができる。「組織部位」という用語は、必ずしも創傷を受けたか又は欠損した領域ではなく、代わりにさらなる組織を追加するか又はそうした組織の成長を促進することが望ましい可能性がある領域である、任意の組織の領域も指すことができる。例えば、陰圧は、採取して移植することができる追加の組織を増殖させるために組織部位に印加することができる。
【0023】
治療システム100の構成要素は、それらの構成要素間で流体(すなわち液体及び/又は気体)を移送するための経路を提供するように互いに流体的に結合することができる。例えば、構成要素は、チューブ等の流体伝導体を通して流体的に結合することができる。本明細書で用いる「チューブ」は、広義には、チューブ、パイプ、ホース、導管又は2つの端部間で流体を搬送するように適合された1つ又は複数の内腔を備えた他の構造体を含む。通常、チューブは、幾分かの可撓性がある長尺状の円筒状構造体であるが、幾何学的形状及び剛性を変更することができる。いくつかの実施形態では、構成要素は、物理的に近接し、単一構造体に一体化されているか、又は同じ材料片から形成されることによって結合することも可能である。さらに、いくつかの流体伝導体を他の構成要素内にはめ込むか、又は他の構成要素と他の方法で一体的に結合することができる。結合としては、いくつかの文脈では、機械的結合、熱的結合、電気的結合又は化学的結合(化学結合等)も挙げることができる。例えば、チューブは、ドレッシングサブシステム102のドレッシング106及びパウチ108を互いに機械的に且つ流体的に結合することができるとともに、いくつかの実施形態では、ドレッシングサブシステム102の構成要素を治療ユニット104に機械的に且つ流体的に結合することができる。概して、治療システム100の構成要素は、直接結合される場合もあれば又は間接的に結合される場合もある。
【0024】
治療システム100は、ドレッシング等の分配構成要素に結合されるように構成することができる陰圧源110等の陰圧供給部を含むことができる。概して、分配構成要素は、陰圧供給部と組織部位との間の流体路において陰圧供給部に流体的に結合されるように構成された任意の補完的な又は補助的な構成要素を指すことができる。分配構成要素は、好ましくは、着脱可能であり、使い捨て、再使用可能又はリサイクル可能であり得る。例えば、ドレッシングサブシステム102は、図1に示すように、治療ユニット104の陰圧源110に流体的に結合することができる分配構成要素を示す。ドレッシングサブシステム102は、いくつかの実施形態では、カバー、組織インタフェース又は両方を含むことができるドレッシング106等のドレッシングを含むことができる。
【0025】
密閉された治療環境内等、別の構成要素又は場所において減圧するために陰圧源を使用する流体力学は、数学的に複雑である可能性がある。しかしながら、陰圧療法に適用可能な流体力学の基本原理は、一般に、当業者に周知であり、本明細書では、減圧するプロセスは、例えば、陰圧を「送達する」、「分配する」又は「発生させる」として例示的に記載するものとする。
【0026】
概して、滲出物及び他の流体は、流体路に沿って圧力の低い方に向かって流れる。したがって、「下流」という用語は、通常、流体路において、相対的に陰圧源により近いか又は陽圧源からより離れることを意味する。逆に、「上流」という用語は、相対的に陰圧源からより離れるか又は陽圧源により近いことを意味する。同様に、こうした基準系における流体「入口」又は「出口」に関していくつかの特徴を記載することが好都合である場合がある。この向きは、概して、本明細書におけるさまざまな特徴及び構成要素を説明する目的で想定されている。しかしながら、流体路は、いくつかの応用では(陰圧源の代わりに陽圧源を用いること等により)反転させることも可能であり、この説明的な慣例は、限定的な関連として解釈されるべきではない。
【0027】
「陰圧」は、一般に、ドレッシング106によって提供される密閉された治療環境の外部の局所環境における周囲圧力等、局所的な周囲圧力を下回る圧力を指す。多くの場合、局所的な周囲圧力は、組織部位が位置する場所の大気圧でもあり得る。別法として、圧力は、組織部位における組織に関連する静水圧未満であり得る。別段の指示がない限り、本明細書で述べる圧力の値は、ゲージ圧である。同様に、陰圧の上昇と言及する場合、それは、一般に絶対圧の低下を指す一方、陰圧の低下は、一般に絶対圧の上昇を指す。組織部位に印加される陰圧の量及び性質は、治療要件に従って変更することができるが、圧力は、一般に、-5mmHg(-667Pa)~-500mmHg(-66.7kPa)の粗真空とも呼ばれる低真空である。一般的な治療範囲は、-75mmHg(-9.9kPa)~-300mmHg(-39.9kPa)である。
【0028】
治療ユニット104の陰圧源110等の陰圧供給部は、陰圧での空気の貯蔵部であり得るか、又は例えば真空ポンプ、吸引ポンプ、多くの医療施設で利用可能な壁面吸込みポート又はマイクロポンプ等、密閉された容積内で減圧することができる手動又は電動式の装置であり得る。陰圧供給部は、センサ、処理装置、アラームインジケータ、メモリ、データベース、ソフトウェア、表示装置又は治療をさらに容易にするユーザインタフェース等、他の構成要素内に収容するか又はそれらとともに使用することができる。陰圧供給部は、陰圧供給部の1つ又は複数の分配構成要素に対する結合及び分離を容易にするように構成された1つ又は複数の供給ポートも有することができる。
【0029】
ここで、主に図2A及び図2Bを参照すると、ドレッシングサブシステム102は、治療ユニット104の陰圧源110から組織部位に陰圧を提供し、組織部位から抽出される流体を貯蔵するように適合させることができる。いくつかの実施形態では、ドレッシング106は、乳房組織に適用するために薄型の身体にフィットする、剥がして貼るドレッシングであり得る。パウチ108は、同様に剥がして貼る特徴を含むことができる、滲出物を収集する内蔵吸収性パウチであり得る。いくつかの実施形態では、ドレッシング106は、薄型であり、身体にフィットするマニホールド式の剥がして貼るドレッシングとすることができ、それは、乳房組織上の創傷等の組織部位に陰圧を提供するために乳房組織上の切開部の上に配置することができる。ドレッシング106は、乳房組織上の組織部位から滲出物及び他の流体を取得し、それらをパウチ108に移送することができ、パウチ108の吸収性コア内に滲出物及び他の流体を貯蔵することができる。
【0030】
図2Aは、いくつかの実施形態に関連付けることができるさらなる詳細を示す、ドレッシング106及びパウチ108の例の上面斜視図である。いくつかの実施形態では、ドレッシング106、パウチ108又は両方は、柔らかな感触のピンク色のフィルムの目立たない色合いでの不透明な設計であり得る。ドレッシング106は、円周方向の乳輪切開部を含めて、種々の形状及びサイズの切開乳房創傷を管理するような形状とし且つ輪郭とすることができる。例えば、図2Aに示すように、ドレッシング106は、クラウン116及びアーム118等の切開部セグメントと、ブリッジ117等のブリッジセグメントとの1つ又は複数の組合せを含むことができる。例えば、図2Aの実施形態に示すように、アーム118は、クラウン116をブリッジ117に結合することができる。他の実施形態では、ブリッジ117にクラウン116を直接結合することができる。さらに他の実施形態例では、ドレッシング106は、本質的に、アーム118及びブリッジ117のみからなり得る。特定の切開部に対して、セグメントの他の組合せが好適であるか又は有利であり得る。概して、アーム118等のアームセグメントは、一端においてブリッジ117に結合され、概して、実質的に直線状の切開部を覆うように構成されている。クラウン116等のクラウンセグメントは、概して、アームセグメント又はブリッジから延在し、概して、楕円形又は円形の切開部を覆うように構成されている。例えば、図2Aの実施形態に示すように、クラウン116は、実質的にアーム118に対して垂直である。したがって、場合により、アーム118は、一部にはクラウン116によって覆うことができる切開創傷の別の部分に対して垂直である切開創傷の一部分を覆うために特に有利であり得る。さらに、ドレッシング106は、少なくとも2つの異なる向き、すなわち左乳房及び右乳房に1つずつで設計することができ、したがって個々の乳房又は両方の乳房を治療することができる。
【0031】
さらに図2Aを参照すると、ドレッシング106は、第1のドレッシングインタフェース120を含むことができる。パウチ108も第1のパウチインタフェース122及び第2のパウチインタフェース124を含むことができる。いくつかの実施形態では、第1のパウチインタフェース122は、パウチ108の内部構成要素をドレッシング106に流体的に接続するためのものであり得る。同様に、パウチ108の第2のパウチインタフェース124は、パウチ108をさらなる第2のドレッシングに流体的に接続するためのものであり得る。しかしながら、図2Aに示すように、パウチ108とともにドレッシング106等の単一ドレッシングのみが使用されるべきである場合、第2のパウチインタフェース124を利用しない場合もある。こうした状況では、パウチ108の内部が外部環境と流体連通することを防止するために、第2のパウチインタフェース124の上に第1のアパーチャカバー126等のカバーを配置して付着させることができる。さらに、いくつかの実施形態では、パウチ108に複数のドレッシングを流体的に接続するために、第1のパウチインタフェース122等の単一のパウチインタフェースを使用することができる。こうした実施形態では、パウチ108を複数のドレッシングに接続するために単一のY字型導管を使用することができる。例えば、第1のドレッシングチューブ136等の導管は、第1のパウチインタフェース122に接続するための1つの端部と、Y字型構成で2つの部分導管(各々がそれ自体の端部を有する)に分割される別の端部とを含むことができる。部分導管端部の1つは、ドレッシング106に接続するためのものとすることができ、第2の部分導管端部は、第2のドレッシングに接続するためのものとすることができる。さらに、パウチ108は、第3のパウチインタフェース128を含むことができ、それは、いくつかの実施形態では、パウチ108を治療ユニット104の陰圧源110等の陰圧源に流体的に接続するためのものであり得る。
【0032】
ドレッシングサブシステム102は、パウチ108をドレッシング106に流体的に接続するとともに、該当する場合にはパウチ108をさらなるドレッシングに流体的に接続するための1つ又は複数のチューブセットも含むことができる。図2Aに示すように、第1のドレッシングチューブセット130は、ドレッシング106の第1のドレッシングインタフェース120との流体接続を提供するための第1のチューブインタフェース132を含むことができる。第1のドレッシングチューブセット130は、パウチ108の第1のパウチインタフェース122との流体接続を提供するための第2のチューブインタフェース134も含むことができる。第1のドレッシングチューブ136は、第1のチューブインタフェース132及び第2のチューブインタフェース134を流体的に接続することができる。パウチ108を治療ユニット104の陰圧源110等の治療システム100の別の構成要素に流体的に接続するために、パウチチューブセット138も含めることができる。パウチチューブセット138は、パウチ108の第3のパウチインタフェース128とパウチチューブ142との間の流体接続を提供することができるパウチチューブインタフェース140を含むことができる。
【0033】
図2Bは、図2Aのドレッシング106及びパウチ108の実施形態例の底面斜視図である。ドレッシング106は、薄型であるが、高い毛管吸収特性を示すことができる。いくつかの実施形態では、ドレッシング106は、クラウン116及びアーム118に穿孔152を含むことができるドレッシング組織インタフェース150を含むことができる。ドレッシング組織インタフェース150は、外側に面する面をマニホールド(図示せず)及びドレッシングカバー154で覆うことができる。ドレッシング組織インタフェース150は、患者の乳房組織の上の切開部等、組織部位に近接又は隣接して位置決めされるように適合させることができる。ドレッシング組織インタフェース150は、陰圧を組織部位に分配するために組織部位と流体連通するように位置決めされるように適合させることができる。いくつかの実施形態では、ドレッシング組織インタフェース150は、組織部位と直接接触するように位置決めすることができる。いくつかの実施形態では、パウチ108は、パウチカバー158によって外側に面する面を覆うことができるパウチ組織インタフェース156を含むことができる。パウチ組織インタフェース156は、患者の組織に適用されるように適合させることができる。さらに、ドレッシング106及びパウチ108の各々に保護剥離層を取り付けることができ、保護剥離層は、ドレッシング106及びパウチ108の使用前にドレッシング組織インタフェース150及びパウチ組織インタフェース156の内側の組織に面する面を覆うことができる。
【0034】
ここで、主に図3を参照すると、いくつかの実施形態例によるドレッシング106のさまざまな層をさらに詳細に見ることができる。ドレッシング組織インタフェース150は、概して、組織部位と接触するように適合させることができる。ドレッシング組織インタフェース150は、部分的に又は完全に組織部位と接触することができる。組織部位が切開部又は幅の狭い創傷である場合、ドレッシング組織インタフェース150は、組織部位の上に配置することができるが、より深い又はより幅の広い創傷の場合、ドレッシング組織インタフェース150は、創傷を部分的に又は完全に充填することもできる。ドレッシング組織インタフェース150は、多くの形態をとることができ、実施されている治療のタイプ又は組織部位の性質及びサイズ等、種々の要素に応じて多くのサイズ、形状又は厚さを有することができる。例えば、ドレッシング組織インタフェース150のサイズ及び形状は、あり得る切開部の種々の形状の輪郭に適合させることができる。さらに、ドレッシング組織インタフェース150の表面の任意のもの又はすべては、組織部位における肉芽形成を促進することができる、組織部位におけるひずみ及び応力を引き起こすことができる突出部又は不均一な、粗い若しくはぎざぎざした輪郭を有することができる。
【0035】
いくつかの実施形態では、ドレッシング組織インタフェース150は、低粘着性シリコーン又はヒドロゲル等のシリコーン材料から形成することができる。例えば、低粘着性シリコーン組成物は、軟質の皮膚接着性シリコーンエラストマーであり得る。ドレッシング組織インタフェース150の低粘着性質は、ドレッシング106の快適な痛みの少ない接着を提供し、ドレッシング106が、患者の皮膚表面に対して最小限の不快感及び外傷で必要に応じて位置決めされ且つ再配置されることを可能にすることができる。いくつかの実施形態例では、ドレッシング組織インタフェース150は、ASTM D3330/D3330mに従って試験した場合、0.24N/cm~2.76N/cmの180°剥離接着力を有する低粘着性シリコーンから形成することができる。さらに、低粘着性シリコーンは、実質的に透明とすることができ、それにより滲出物の色及びレベルのモニタリングを可能にすることができる。いくつかの実施形態では、ドレッシング組織インタフェース150の組織に面する面は、追加の取付強度が必要であるか又は望まれる場合に接着剤層をさらに含むことができる。
【0036】
ドレッシング組織インタフェース150は、組織部位への陰圧の伝達と、ドレッシング組織インタフェース150の選択部分を通した滲出物の取得とを可能にするために、穿孔152等の複数のアパーチャ又は開口部を含むことができる。例えば、穿孔152は、適用されるとき、所定の一般的な切開創傷形状及びサイズと整列することができる、ドレッシング組織インタフェース150のクラウン116、アーム118若しくは両方又は他の領域に対応するドレッシング組織インタフェース150の一部又は複数の部分に配置することができる。ドレッシング106の好ましい実施形態例は、乳房切除切開部、乳房縮小切開部及び豊胸切開部に関連する種々の形状と整列し、且つそうした形状に適応することができる穿孔152を有するドレッシング組織インタフェース150を含むことができる。健康な組織と、穿孔152を通して取得される滲出物との間に流体バリアを提供するために、ブリッジ117に対応する部分等、ドレッシング組織インタフェース150の他の部分は、好ましくは、中実である。したがって、穿孔152は、滲出物及び他の流体の組織部位からドレッシング106内への交換を可能にすることができ、ドレッシング106において流体を隔離し、ブリッジ117を通して輸送することができる。
【0037】
ドレッシング106は、ドレッシング組織インタフェース150に隣接して位置決めすることができるマニホールド160等のマニホールドも含むことができる。マニホールド160は、ドレッシング106の実施形態及び所定の組織部位応用に応じて、単一層又は複数層の何れの形態でもあり得る。例えば、図3の実施形態例では、マニホールド160は、互いに接して又は隣接して配置されるように適合されている2つの別個の層の形態であり得る。これに関連して、「マニホールド」は、概して、圧力下で組織部位にわたって流体を収集するか又は分配するように適合された複数の経路を提供する任意の物質又は構造を含むことができる。例えば、マニホールドは、陰圧源から陰圧を受け取り、且つ組織部位にわたって複数のアパーチャを通して陰圧を分配するように適合させることができ、それには、組織部位にわたって流体を収集し、陰圧源に向かって流体を引き寄せるという効果があり得る。
【0038】
マニホールド160は、毛細管材料又は不織布材料等、高ウィッキングマニホールド材料であり得るマニホールド材料から形成することができる。マニホールド160に使用される高ウィッキング材料により、ドレッシング106は、陰圧の印加なしでも、流体を組織部位から離れる方向に且つドレッシング106を通して移動させることができる。マニホールド160は、織布材料又は不織布材料を含むことができる。一実施形態では、マニホールド160は、Libeltex TDL2材料から形成することができる。場合により、マニホールド160は、ドレッシングアパーチャ162に向かう滲出物の直接の流れを促進するために、第1のドレッシングインタフェース120のドレッシングアパーチャ162等、ドレッシング106の陰圧ポートに向かうように繊維が配向され且つ広がるようにするマニホールド材料から形成することができる。
【0039】
いくつかの例示的な実施形態では、マニホールドの経路は、組織部位にわたる流体の分配又は組織部位からの流体の収集を促進するように相互接続することができる。マニホールド材料の例としては、限定なしに、例えば、気泡フォーム、連続気泡フォーム、多孔組織集合体、液体、ゲル、不織布及び流路を含むか又は含むように硬化するフォーム等、流路を形成するように配置された構造的要素を有するデバイスを挙げることができる。マニホールド材料は、多孔質とすることができ、フォーム、ガーゼ、フェルトマット又は流体を輸送するのに適した他の任意の材料から作製することができる。いくつかの例示的な実施形態では、マニホールドは、流路として作用する、相互接続された気泡又は細孔を有する多孔質フォーム材料であり得る。例えば、気泡フォーム、連続気泡フォーム、網状フォーム、多孔組織集合体及びガーゼ又はフェルトマット等の他の多孔質材料は、概して、相互接続された流路を形成するように適合された細孔、縁及び/又は壁を含む。液体、ゲル及び他のフォームも、アパーチャ及び流体経路を含むことができるか又は含むように硬化させることができる。いくつかの実施形態では、マニホールドは、さらに又は別法として、相互接続された流体経路を形成する突出部を含むことができる。例えば、相互接続された流体経路を画定する表面突出部を提供するようにマニホールドを成形することができる。
【0040】
フォームの平均細孔径は、指示される療法の必要に従って変更することができる。例えば、いくつかの実施形態では、マニホールド160は、400~600ミクロンの範囲の細孔径を有するフォームであり得る。マニホールド160の引張強度も、指示される療法の必要に従って変更することができる。例えば、フォームの引張強度は、局所治療液の滴下のために増大させることができる。1つの非限定的な例では、マニホールド160は、ともにSan Antonio,TexasのKinetic Concepts,Inc.から入手可能なGranuFoam(登録商標)ドレッシング又はVeraFlo(登録商標)フォーム等、連続気泡、網状ポリウレタンフォームであり得る。
【0041】
マニホールド160は、疎水性又は親水性の何れでもあり得る。マニホールド160が親水性であり得る例では、マニホールド160は、組織部位に陰圧を分配し続けながら、組織部位から流体を吸い取ることも可能である。マニホールド160のウィッキング特性は、流体を毛細管流又は他のウィッキング機構によって組織部位から引き離すことができる。親水性フォームの例は、San Antonio,TexasのKinetic Concepts,Inc.から入手可能なV.A.C.WhiteFoam(登録商標)ドレッシング等、ポリビニルアルコール、連続気泡フォームである。他の親水性フォームとしては、ポリエーテルから作製されたものを挙げることができる。親水性の特徴を示すことができる他のフォームとしては、親水性を提供するように処理されるか又はコーティングされた疎水性フォームが挙げられる。
【0042】
いくつかの実施形態では、ドレッシング106にマニホールド層として代替的な又はさらなる構成要素を組み込むことができる。例えば、いくつかの実施形態では、マニホールド160として次世代創傷フィラー又は他の任意の市販のフィラーを組み込むことができる。結果として、簡略化される可能性があるドレッシング106を達成することができ、それは、切開部閉鎖に役立つ補強力又は付着力を増大させることも可能である。さらに、いくつかの実施形態例では、ドレッシング106は、必要な場合に付着力を提供することができる可能性があるさらなる又は代替的なマニホールド材料とともに使用することによって利益を得ることも可能である。例えば、3次元フォーム構造を含むマニホールドを組み込むことができ、それは、圧力が印加されると、フォーム構造体が一方の方向において横につぶれるが、他方の方向においてつぶれないようなパターンで穿孔することができる。したがって、こうしたマニホールドを組み込んだドレッシングは、乳房組織上の切開部等、切開部位に沿って位置合せすることができ、意図された付着力の方向は、切開部の長さに対して垂直である。適用可能なフォーム構造体としては、San Antonio,TX,USAのKinetic Concepts Inc.から市販されている圧縮又はフェルトGranuFoam(商標)を挙げることができる。
【0043】
ドレッシング106のドレッシングカバー154は、治療ユニット104の陰圧源110からドレッシング組織インタフェース150まで送達される陰圧のための陰圧環境を提供し、ドレッシング組織インタフェース150を通して組織部位から抽出される流体を収容及び輸送するのに役立つように適合させることができる。いくつかの実施形態では、ドレッシングカバー154は、細菌バリア及び身体的外傷からの保護を提供することができる。ドレッシングカバー154は、患者からの滲出物を隠してドレッシングの視覚的衝撃を低減させ、且つ目立つことを最小限にするように不透明でもあり得る。ドレッシングカバー154は、蒸発損失を低減させ、2つの構成要素又は治療環境と局所外部環境との間等、2つの環境間に流体シールを提供することができる材料から構成することも可能である。ドレッシングカバー154は、例えば、所与の陰圧源に対して組織部位において陰圧を維持するのに適切なシールを提供することができるエラストマーフィルム又は膜であり得る。ドレッシングカバー154は、いくつかの応用では、高水蒸気透過率(MVTR)を有することができる。例えば、MVTRは、いくつかの実施形態では、24時間あたり少なくとも300g/mであり得る。いくつかの実施形態例では、ドレッシングカバー154は、水蒸気に透過性であるが、液体に不透過性であるポリウレタンフィルム等のポリマードレープであり得る。こうしたドレープは、通常、25~50ミクロンの範囲の厚さを有する。透過性材料の場合、透過率は、概して、所望の陰圧を維持することができるのに十分に低くなければならない。いくつかの実施形態では、ドレッシングカバー154は、Coverisから市販されているInspire(登録商標)2351等、中~高粘着性接着剤閉鎖フィルムであり得る。中~高粘着性接着剤は、ドレッシング106の異なる層を合わせて結合するように作用するとともに、ドレッシング組織インタフェース150等の患者インタフェースと調和して機能して、ドレッシング106の外周部を患者に固定することができる。
【0044】
ドレッシング組織インタフェース150、マニホールド160及びドレッシングカバー154等、ドレッシング106のさまざまな層は、それらの縁の各々が実質的に互いに整列することができるようなサイズとし且つそのように構成することができる。しかしながら、いくつかの実施形態では、ドレッシング106のドレッシングカバー154は、ドレッシングカバー154の外周部の周囲の縁部が、患者の組織と接触するためにドレッシング106の他の層の縁部を越えて延在するようなサイズとすることができる。例えば、ドレッシングカバー154は、患者の皮膚表面に接着剤により取り付けることができるカバー外縁部164を含むことができる。
【0045】
取付デバイスを使用して、無傷の表皮、ガスケット又は別のカバー等の取付面にドレッシングカバー154を取り付けることができる。取付デバイスは、多くの形態をとることができる。例えば、取付デバイスは、周縁部、一部又はドレッシングカバー154全体に延在する医学的に許容可能な感圧接着剤であり得る。例えば、ドレッシングカバー154のカバー外縁部164のより高粘着性の接着剤は、ドレッシング組織インタフェース150を含むドレッシング106の他の層の外側輪郭を包囲することができ、ドレッシング106を適所に固定することができる。いくつかの実施形態では、例えば、ドレッシングカバー154の一部又はすべてを、25~65グラム/平方メートル(g.s.m.)の付着量を有するアクリル接着剤でコーティングすることができる。いくつかの実施形態では、密閉性を向上させ、漏れを低減させるように、より厚い接着剤又は接着剤の組合せを付与することができる。取付デバイスの他の実施形態例としては、両面テープ、糊、親水コロイド、ヒドロゲル、シリコーンゲル又はオルガノゲルを挙げることができる。上述したように、ドレッシング組織インタフェース150の組織に面する面に同様の形態の取付デバイス、特に接着剤も付与することができる。
【0046】
第1のドレッシングインタフェース120は、ドレッシング106の内部構成要素と治療システム100の他の部分との間の流体連通を実証するためにドレッシングアパーチャ162等の開口部を含むことができる。例えば、ドレッシングアパーチャ162により、陰圧は、治療ユニット104の陰圧源110から第1のドレッシングチューブセット130を通り、ドレッシングアパーチャ162を通ってマニホールド160、ドレッシング組織インタフェース150及び最終的に患者の組織部位に連通することができる。ドレッシング106は、第1のドレッシングチューブセット130の第1のチューブインタフェース132をドレッシングアパーチャ162の周囲でドレッシングカバー154の第1のドレッシングインタフェース120に固定するために、接着リング166等の取付手段をさらに含むことができる。
【0047】
ここで、主に図4を参照すると、図2のドレッシングサブシステム102のパウチ108の実施形態例に関連するさらなる詳細が示されている。例えば、パウチ108は、患者の皮膚の表面に配置され付着されるように概して適合させることができるパウチ組織インタフェース156を含むことができる。ドレッシング106のドレッシング組織インタフェース150と同様に、パウチ組織インタフェース156は、多くの形態をとることができ、実施されている治療のタイプ、パウチ108のサイズ若しくは容量又はパウチ108が取り付けられる患者の所望の位置等、種々の要素に応じて多くのサイズ、形状又は厚さを有することができる。したがって、パウチ組織インタフェース156及び全体としてのパウチ108のサイズ及び形状は、種々の身体位置の輪郭に適合させることができる。パウチ組織インタフェース156は、種々の材料から形成することができる。いくつかの実施形態では、パウチ組織インタフェース156は、低粘着性シリコーン材料から形成することができる。パウチ108の患者に面する側に低粘着性シリコーン材料等の低粘着性材料を含めることにより、患者に対して快適な且つ痛みのない接着を提供することができ、パウチ108が、患者に対して最小限の不快感又は外傷で必要に応じて位置決めされ且つ再配置されることを可能にすることができる。ドレッシング106に関して考察したように、パウチ組織インタフェース156の低粘着性シリコーン材料は、滲出物の色及び容量のモニタリングを可能にするために実質的に透明であり得る。
【0048】
いくつかの実施形態では、パウチ108は、超吸収性層170であり得る、組織部位から流体を受け取り且つ貯蔵する吸収性層を含むことができる。超吸収性層170は、2つ以上のマニホールド層間に位置決めすることができる。超吸収性層170は、Texsus400-800GSM又はGelok300GSM等、1種又は複数の超吸収性材料を含むことができる。例えば、いくつかの実施形態では、超吸収性層170は、Texsus400-800GSM又はGelok300GSMから実質的に作成することができる。超吸収性層170は、滲出物とともに他の流体を取得し、それらを安定させ、漏れを最小限にするか又は防止するのに役立つことができる。
【0049】
パウチ108は、2つ以上のマニホールド層も含むことができ、それらの少なくとも1つは、パウチ組織インタフェース156に隣接して位置決めすることができる。例えば、図4に示す実施形態では、パウチ108は、3つのマニホールド層を含むことができる。第1のマニホールド層172は、パウチ組織インタフェース156と超吸収性層170との間に位置決めされて示されている。第2のマニホールド層174及び第3のマニホールド層176は、互いに隣接し、且つ超吸収性層170とパウチカバー158との間に位置決めされて示されている。ドレッシング106のマニホールド160と同様に、パウチ108のマニホールド層は、種々の材料から形成することができる。いくつかの実施形態では、パウチ108の各マニホールドは、パウチ108の他のマニホールド層と異なる1種又は複数の材料から形成することができる。1つの好ましい実施形態では、マニホールド層172、174及び176は、Libeltex TDL2材料であり得る同じ材料から形成することができる。
【0050】
パウチカバー158は、治療ユニット104の陰圧源110からパウチ108のさまざまな他の層を通ってドレッシングサブシステム102のドレッシング106まで陰圧を連通させるとともに、治療を受けている組織部位から抽出される流体を貯蔵するように適合させることができる。ドレッシング106のドレッシングカバー154と同様に、パウチカバー158は、細菌バリアを提供し、流体及び/又は臭気がパウチ108から放出されることを防止することができる。パウチカバー158は、蒸発損失を低減させ、2つの構成要素又は治療環境と局所外部環境との間等、2つの環境間に流体シールを提供することができる材料からも構成することができる。パウチカバー158は、上述したように、ドレッシングカバー154と同じ又は同様の材料から形成することができる。パウチカバー158は、例えば、所与の陰圧源に対して組織部位において陰圧を維持するのに適したシールを提供することができるエラストマーフィルム又は膜であり得る。パウチカバー158は、いくつかの応用では、高水蒸気透過率(MVTR)を有することができる。例えば、MVTRは、いくつかの実施形態では、24時間あたり少なくとも300g/mであり得る。いくつかの実施形態例では、パウチカバー158は、水蒸気に透過性であるが、液体に不透過性であるポリウレタンフィルム等のポリマードレープであり得る。こうしたドレープは、通常、25~50ミクロンの範囲の厚さを有することができる。透過性材料の場合、透過率は、概して、所望の陰圧を維持することができるのに十分に低くなければならない。いくつかの実施形態では、パウチカバー158は、非接着性とすることができ且つCoverisから市販されているInspire(登録商標)2150又は2151、すなわち15μmマットピンクポリウレタンフィルムから形成することができる。
【0051】
パウチカバー158の材料によって促進される水分透過及び蒸発により、滲出物容量を増大させ、したがって製品寿命を延長することができる。例えば、パウチカバー158の上に接着剤層を組み込むのではなく、組立を容易にするために、カバー接着性縁枠178等の高粘着性接着性縁枠を含めることができ、それは、患者の皮膚へのパウチ108の層の確実な接着のための高粘着性接着固定点を提供することができる。カバー接着性縁枠178は、パウチカバー158の上に配置することができる。図4に示すように、いくつかの実施形態では、カバー接着性縁枠178は、パウチカバー158の上に配置されると、パウチカバー158の実質的な部分がパウチ108の外面にアクセス可能であり続けることを可能にしながら、カバー接着性縁枠178がパウチカバー158の外周部の周囲の外縁部とともに患者の皮膚の一部を覆うようなサイズとすることができる。いくつかの実施形態では、カバー接着性縁枠178等の高粘着性接着性縁枠は、限定されないが、Coverisから市販されているInspire(登録商標)2321又は2327から形成することができる。さらに、いくつかの実施形態では、カバー接着性縁枠178は、患者にさらなる接着を提供するか、又はパウチ108が丸められ、それ自体に固定されることを可能にするために使用することができる2つの接着性タブを含むことができる。
【0052】
ドレッシングカバー154の取付と同様に、取付デバイスを使用して、無傷の表皮又は図4の実施形態例における第3のマニホールド層176等、パウチ108の他の層の1つ又は複数等の取付面にパウチカバー158を取り付けることができる。ドレッシングカバー154に関して上述したように、取付デバイスは、多くの形態をとることができる。例えば、取付デバイスは、周縁部、一部又はパウチカバー158全体の周りに延在する医学的に許容可能な感圧接着剤であり得る。例えば、パウチカバー158のより高粘性接着剤は、パウチ組織インタフェース156を含むパウチ108の他の層の外側輪郭を包囲することができ、パウチ108を適所に固定することができる。いくつかの実施形態では、例えば、パウチカバー158の一部又はすべてを、25~65グラム/平方メートル(g.s.m.)の付着量を有するアクリル接着剤でコーティングすることができる。いくつかの実施形態では、密閉性を向上させ、漏れを低減させるために、より厚い接着剤又は接着剤の組合せを付与することができる。取付デバイスの他の実施形態例としては、両面テープ、糊、親水コロイド、ヒドロゲル、シリコーンゲル又はオルガノゲルを挙げることができる。
【0053】
パウチカバー158は、第1のパウチインタフェース122と呼ぶ領域も含むことができる。さらに、パウチカバー158は、第2のパウチインタフェース124及び第3のパウチインタフェース128を含むことができる。第1のパウチインタフェース122は、パウチ108の内部構成要素と治療システム100の他の構成要素との間の流体連通を提供するために第1のパウチアパーチャ180等の開口部を含むことができる。例えば、第1のパウチアパーチャ180により、陰圧は、パウチ108から第1のドレッシングチューブセット130を通ってドレッシング106まで連通することができる。第2のパウチインタフェース124は、第2のドレッシングチューブセットを通してパウチ108と第2のドレッシングとの間の流体連通を可能にすることができる第2のパウチアパーチャ182等の開口部も含むことができる。さらに、第3のパウチインタフェース128は、パウチ108が、パウチチューブセット138を通して、治療ユニット104及び陰圧源110等、治療システム100の他の構成要素と流体連通することを可能にすることができる第3のパウチアパーチャ184等の開口部を含むことができる。
【0054】
上述したように、パウチ108は、2つ以上の組織ドレッシングに流体的に接続されるように構成することができるが、いくつかの状況では、治療システム100の一部としてドレッシング106等の1つのドレッシングのみを展開することができる。パウチとともに単一のドレッシングのみが使用されるこうした場合、第1のパウチインタフェース122又は第2のパウチインタフェース124であり得るさらなるパウチインタフェースは、利用されない可能性がある。こうした場合、何れのパウチインタフェースが使用中であるかに応じて、パウチ108は、第1のアパーチャカバー126及び第2のアパーチャカバー186を含むことができ、それらの何れも適用することができる。さらに、いくつかの状況では、例えば、パウチ108に何れのドレッシングも接続されていない場合、第1のアパーチャカバー126及び第2のアパーチャカバー186の両方をパウチカバー158のアパーチャに付着させることができる。こうした状況は、1つ又は複数のドレッシングとともに関連するドレッシングチューブセットが交換されている場合を含むことができる。第1のアパーチャカバー126及び第2のアパーチャカバー186を含むアパーチャカバーは、低粘着性ポリウレタンフィルム又は低粘着性シリコーン接着リングが組み込まれた非付着性ポリウレタンフィルムから形成することができる。アパーチャカバーは、容易に除去するために剥離タブをさらに含むことができる。適切な時点において、第1のドレッシングチューブセット130等の1つ又は複数のチューブセットにより、パウチ108へのドレッシング106等の1つ又は複数のドレッシングの流体接続を可能にするためにアパーチャカバーを取り除くことができる。図4に示すパウチ108の実施形態は、ドレッシングを流体的に結合するように設計された2つのパウチアパーチャを覆う2つのアパーチャカバーを含むが、パウチ108に3つ以上のドレッシングを接続することが望まれる場合、より多くのパウチアパーチャ、したがってアパーチャカバーも含めることができる。同様に注目すべきは、パウチ108に接続された複数のドレッシングが2つの同一のドレッシングに限定されず、したがって創傷の上の異なる切開部を治療するために異なる形状のドレッシングを使用することができ、それには、異なるドレッシング構成、すなわち1回の乳房切除術に対して異なるサイズの左乳房ドレッシング及び右乳房ドレッシング又は複数のドレッシングが必要である。
【0055】
次のいくつかの図は、治療システム100に関連する構成要素及び特徴のさまざまな実施形態をどのように適用し動作させることができるかを示す。図5A及び図5Bは、模擬患者200に適用されたドレッシング106等のドレッシングの実施形態例を示す。より具体的には、図5A及び図5Bは、模擬患者200の第1の乳房202及び第2の乳房204の両方にドレッシングをどのように適用することができるかを示す。図5Aに示すように、患者の第1の乳房202に第1のドレッシング206を適用することができ、第2の乳房204に第2のドレッシング208を適用することができる。図5Aに見ることができるように、第1のドレッシング206及び第2のドレッシング208の両方は、乳頭、乳輪及び周囲領域とともに、乳房の実質的に半円形状の下方部分及び乳房下溝を含む第1の乳房202及び第2の乳房204の部分の上にそれぞれ適用される。
【0056】
ここで、主に図5Bを参照すると、図5Aの第1のドレッシング206のさらなる詳細が示されている。例えば、第1のドレッシング206は、複数の部分又は領域を含むことができ、それらの各々を一意の目的に合わせて調整することができる。例えば、第1のドレッシング206は、クラウン210、アーム212及びブリッジ214を含むことができる。クラウン210は、組織部位の輪郭に沿うように構成された1つ又は複数の縁を含むことができる。例えば、図5Bの実施形態におけるクラウン210は、半円形又は凸状縁207を含み、それは、典型的には、第1の乳房202等、乳房の中心部分に適用することができ、創傷組織を含むことができる、乳頭、乳輪及び周囲領域等の構造を覆うことができる。アーム212は、乳房下溝に沿う等、乳房の下方部分に沿うようなサイズ及び形状とすることができる。いくつかの実施形態では、アーム212は、第1の乳房202の輪郭に沿うように適合された少なくとも1つの身体にフィットする縁を有することができる。例えば、図5Bの実施形態に示すように、アーム212は、クラウン210と反対側に凸状縁215を有することができる。いくつかの実施形態では、アーム212は、半円形又は円弧の形状とすることができ、第1の乳房202等の乳房の周囲の下方部分に適用することができ、第1のドレッシング206のクラウン210の下方部分に当接することができる。いくつかの実施形態では、アーム212は、直線の縁がある実質的に直線状であり得る。いくつかの実施形態では、アーム212の各端部は、弓形状であり得る。さらに、いくつかの実施形態では、アーム212は、実質的に直線である第1の、すなわち下縁と、湾曲した又は弓状である第2の、すなわち上縁とを含むことができる。いくつかの実施形態では、第2の、すなわち上縁は、第1の、すなわち下縁から離れる方向に延在することができる。別法として、第2の、すなわち上縁は、第1の、すなわち下縁に向かって下向きに湾曲することができる。例えば、応用では、第1の、すなわち下縁は、乳房下溝の真下に且つ/又は乳房下溝に沿って広がることができ、第2の、すなわち上縁は、乳房の湾曲部分にわたって延在することができる。さらに、第1のドレッシング206のアーム212は、乳房間溝等の患者の胸部の中心から、第1の乳房202の下方部分をまわって患者の胴部の側部まで延在するように外側部分まで広がる内側部分を有することができ、外側部分でアーム212は、ブリッジ214と一緒になる。
【0057】
ブリッジ214は、第1のドレッシング206のアーム212にアーム212の外側部分において接合することができる。いくつかの実施形態では、ブリッジ214は、アーム212と一緒になって約90度の角度を形成することができる。さらなる実施形態では、第1のドレッシングの幾何学的形状は、異なる身体比率を有する患者に適応するように変更することができ、例えば、ブリッジ214は、第1のドレッシング206のアーム212とより大きいか又は小さい角度を形成することができる。ブリッジ214は、第1のドレッシング206のクラウン210及びアーム212等、第1のドレッシング206の他の部分から流体を輸送するための連続的な陰圧流路を提供することができる。例えば、ブリッジ214は、ブリッジ214がアーム212に接続する箇所と反対側であるブリッジ214の端部に位置決めすることができるドレッシングインタフェース216等のインタフェースへの経路を提供することができる。滲出物等の流体の除去及び貯蔵のために、チューブセットを通してパウチ又は他の容器にドレッシングインタフェース216を流体的に接続することができる。いくつかの実施形態では、第1のドレッシング206は、単一の連続的な構造として形成することができるが、第1のドレッシング206の異なる部分を別個の区画として構成することができ、それらを、その後、ドレッシングを組織部位に適用するとき又は適用する前の何れかにおいて一緒にすることができる実施形態が存在し得る。
【0058】
図6A及び図6Bは、ドレッシングを含むドレッシングサブシステムの構成要素を、特に治癒を補助するように設計されている従来の圧迫帯の下に装着するようにどのように適合させることができるかを示す。図6Aに示すように、第1のドレッシング206及び第2のドレッシング208は、圧迫帯620が2つのドレッシングの上に装着された状態でそれぞれ患者の乳房の一方に適用することができる。いくつかの例示的な実施形態では、圧迫帯620は、Mammary Strap(乳房ストラップ)を備えたJuliet手術用ブラとすることができ、それらの両方は、Houston,TX,USAのMedical Z(登録商標)から市販されている。第1のドレッシング206及び第2のドレッシング208等の薄型乳房ドレッシングは、圧迫帯620の下で圧迫されている間、開放したマニホールド経路及び滲出物管理能力をそれぞれ提供することができる。さらに、圧迫帯620は、患者に乳房ドレッシングを固定するのに役立つことができる。図6Bに見ることができるように、第1のドレッシング206等のドレッシングは、圧迫帯が装着されている間、チューブセットに接続するためのドレッシングの流体インタフェースがアクセス可能であり続けるように設計することができる。例えば、第1のドレッシング206のブリッジ214は、圧迫帯620の外部縁部を越えて延在することができ、その結果、ドレッシングインタフェース216を含むブリッジ214の部分が使用者にアクセス可能であり得る。したがって、第1のドレッシング206は、圧迫帯620を必ずしも除去するか又は再配置する必要なく、治療システム100の他の構成要素、特にドレッシングサブシステム102のパウチ108に対して流体的に結合し且つ分離することができる。
【0059】
図7図9は、開示したドレッシングの実施形態が、患者の乳房組織の上に位置する異なるサイズ及び形状の切開部にどのように適応することができるかを示す。図7A図7Cは、豊胸のための処置に特徴的であり得る種々の切開部に適用された第1のドレッシング206の実施形態例を示す。例えば、図7Aは、乳輪周囲切開部730の上に適用された第1のドレッシング206の重ね合わせ図を提供する。この応用例では、乳輪周囲切開部730は、第1のドレッシング206のクラウン210によって覆うことができる。乳輪周囲切開部730のサイズ等、種々の切開部サイズとともに乳房サイズの全体的な相違に適応するために、クラウン210又は第1のドレッシング206全体の何れか又は両方は、種々のサイズで提供することができる。ここで、図7Bを参照すると、乳房切開部に適用された第1のドレッシング206の同様の重ね合わせ図が示されている。この例示例では、第1のドレッシング206は、乳房下切開部732の上に適用され、第1のドレッシング206のアーム212は、乳房下切開部732を覆っている。第1のドレッシング206のクラウン210と同様に、異なる切開部長とともに異なる乳房サイズに適応するように広範囲のサイズでアーム212を提供することができる。図7Cは、脇の下の組織に位置する経腋窩切開部734の上に適用された第1のドレッシング206のさらなる重ね合わせ図を提供する。この応用例では、経腋窩切開部734は、実質的に、第1のドレッシング206のアーム212によって覆うことができる。いくつかの実施形態では、第1のドレッシング206のアーム212が患者の胸骨と概して一直線に並んで向けられるように、図7A及び図7Bに示す第1のドレッシングの位置と比較して、第1のドレッシング206を約90度まで回転させることにより、こうした経腋窩切開部734に第1のドレッシング206を適用することができる。さらに、いくつかの実施形態では、こうした経腋窩切開部734を治療するために異なるドレッシング輪郭を使用することができ、第1のドレッシング206の一部が患者の胴部の側部に向かって巻き付けられる。さらに、経腋窩切開部734等、腕下切開部に適切にフィットし且つそれを覆うように必要に応じて第1のドレッシング206の変更バージョンとともにさらなる形状のドレッシングを適用することができる。
【0060】
図8A図8Cは、乳房ドレッシングのさらなる応用と、乳房縮小処置に関連する種々の典型的な切開部に乳房ドレッシングをどのようにさらに適用することができるかとを示す。例えば、図8Aは、乳房縮小処置の結果として一般に体験される切開部形状である、錨形切開部840の上に適用された第1のドレッシング206の重ね合わせ図を提供する。この応用例では、錨形切開部840の部分は、第1のドレッシング206のクラウン210又はアーム212の何れかによって覆うことができる。図8Aの第1のドレッシング206のクラウン210及びアーム212は、患者間のサイズ、形状及び比率の相違に適応するために広範囲のサイズで提供することができる。図8Dは、第1のドレッシング206の構成要素のいくつかのあり得る寸法を例示する目的のため、いくつかの実施形態による図8Aの第1のドレッシング206のさらなる概略図を提供する。例えば、クラウン210は、約60mm~120mmの範囲であり得るクラウン長841を有することができる。いくつかの実施形態では、クラウン長841は、約90mmであり得る。さらに、アーム212は、約150mm~350mmの範囲であり得るアーム長843を有することができる。いくつかの実施形態では、アーム長843は、約250mmであり得る。アーム212は、いくつかの実施形態では、約40mm~90mmの範囲であり得るアーム幅845も有することができる。いくつかの実施形態では、アーム幅845は、約65mmであり得る。さらに、第1のドレッシング206のいくつかの実施形態では、クラウン210の一方の側まで延在するアーム212の部分は、クラウン210の他方の側まで延在するアーム212の部分より長い。例えば、患者の身体の側部に向かって延在する乳房の外側部分にわたって又はそれに沿って配置されるように適合されたアーム212の第1のアーム部分849は、患者の身体の中線又は乳房間溝に向かって配置されるように適合されたアーム212の第2のアーム部分851より長くすることができる。いくつかの実施形態では、クラウン210を通って延在し且つクラウン210と交差する垂直軸853がアーム212を通過するアーム212の点で始まることができる第1のアーム部分849の第1のアーム部分長855は、約75mm~250mmの範囲であり得る。例えば、第1のアーム部分長855は、約150mmであり得る。
【0061】
図8Bは、いくつかの特定の形状を有する切開部に適用することができる、乳房ドレッシングの別の実施形態例の重ね合わせ図を提供する。この例示では、ロリポップ(lollipop)乳房縮小法からもたらされた可能性がある、ロリポップ形切開部842が乳房組織上に位置している。ドレッシング844が切開部のさまざまな部分の上に配置されるように示されており、切開部は、乳房の乳輪の周囲に連続的に延在し、切開部の円形部分の底部から下向きに一直線にさらに延在する可能性がある。したがって、ドレッシング844は、クラウン846、アーム847及びブリッジ848を含むことができる。この例では、クラウン846は、アーム847の第1の端部に結合され、ブリッジ848は、アーム847の第2の端部に結合されている。クラウン846は、乳輪の外周、したがって乳輪を取り囲む切開部の部分を覆い且つそれを越えて延在するようなサイズとすることができる一方、アーム847は、切開部の下向きの直線状部分を覆うようなサイズとすることができる。ドレッシング844は、ブリッジ848の底部領域に位置決めされたドレッシングインタフェース850も含むことができる。ドレッシング844等、ロリポップ形ドレッシングは、個々の患者に一意である乳房組織の態様に適応するように種々のサイズで提供することができる。図2に示すようなドレッシング106の形状を有するドレッシングも、ロリポップ形切開部を使用する乳房縮小処置に適用可能であり得る。
【0062】
図8Bのドレッシング844も、患者間の乳房及び/又は他の解剖学的サイズの相違に適応するように広範囲のサイズで提供することができる。図8Eは、ドレッシング844の構成要素の寸法例を示す、いくつかの実施形態例による図8Bのドレッシング844のさらなる概略図を提供する。例えば、クラウン846は、約60mm~120mmの範囲とすることができ、いくつかの実施形態では約90mmであり得るクラウン長857を有することができる。さらに、アーム847及びブリッジ848は、各々又はともに約40mm~100mmの範囲とすることができ、いくつかの実施形態では約70mmであり得る幅859を有することができる。さらに、ドレッシング844は、約150mm~350mmの範囲の全体的な、すなわち全長861を有することができる。いくつかの実施形態では、全長861は、約270mmであり得る。
【0063】
図8Cも、種々の形状を有する切開部、特に乳房組織の幾分か円形の領域を占有する切開部に適用することができる、乳房ドレッシングの別の実施形態例の重ね合わせ図を提供する。例えば、この例示では、乳房縮小処置からもたらされた可能性がある円形又はドーナツ形切開部852が乳房組織の上に位置している。ドレッシング854が切開部のさまざまな部分の上に配置されて示されており、切開部は、乳房の乳輪の周囲に連続的に延在する可能性がある。したがって、ドレッシング854は、主に、乳輪を取り囲む可能性がある切開部を覆い且つ切開部を越えて延在するようなサイズとすることができるクラウン856を含むことができる。ドレッシング854は、ブリッジ858も含むことができ、ブリッジ858は、クラウン856に直接結合され、クラウン856から外向きに延在することができる。ブリッジ858は、ドレッシングインタフェース860を含むことができる。種々の個々の患者に適応するように種々のサイズでドレッシング854を提供することができる。図2のドレッシング106を含む種々の異なる形状のドレッシングも、ドーナツ形切開部をもたらす乳房縮小処置に適用可能であり得る。
【0064】
図8Cのドレッシング854は、広範囲のサイズで提供することもできる。図8Fに示すドレッシング854の概略図に示すように、ドレッシング854の構成要素の寸法例を考察する。例えば、クラウン856は、約60mm~120mmの範囲のクラウン長863を有することができ、いくつかの実施形態では、クラウン長863は、約90mmであり得る。さらに、ブリッジ858は、約40mm~100mmの範囲とすることができ、いくつかの実施形態では約70mmであり得る幅865を有することができる。ドレッシング854は、約150mm~300mmの範囲の全長867を有することができ、いくつかの実施形態では、ドレッシング854の全長867は、約200mmであり得る。
【0065】
図9A図9Cは、乳房ドレッシングの実施形態例のさらなる応用と、乳房切除処置に関連することが多い種々の切開部にこうしたドレッシングをどのように適用することができるかとを示す。例えば、図9Aは、従来の乳房切除処置に関連する可能性がある切開部の上に適用されたドレッシングの重ね合わせ図を提供する。図に示すように、乳房切除切開部962は、長円形状で実施され、乳房組織にわたって斜方向に広がり、乳頭及び乳輪を包囲する可能性がある。結果として、典型的に、患者には、乳房にわたり、リンパ腺が位置する可能性がある腋窩に向かって伸びる切開部が残される可能性がある。この例では、乳房切除ドレッシング964は、切開部が形成される可能性がある乳房組織の領域の上に配置されて示されている。乳房切除ドレッシング964は、アーム966及びブリッジ968を含むことができ、それらの各々は、種々のサイズで入手可能であり得る。乳房切除ドレッシング964等、乳房組織の上で使用されるドレッシングも、例えば、異なる乳房比率を有する患者に適応するように、アーム966とブリッジ968との間の曲げ角度を変更することができるように種々のわずかに異なる形状で提供することができる。図9Aに示すように、乳房切除ドレッシング964のアーム966は、乳房組織、より具体的には乳房切除切開部962に陰圧を連通させるために、乳房切除ドレッシング964の患者に面する側に穿孔を含むことができる。この例示的な実施形態では、患者に適用されると、乳房切除ドレッシング964のブリッジ968は、患者の乳房間溝に近接して位置することができるアーム966の内側端部で開始することができる。ブリッジ968は、患者の胴部に沿って垂直方向下向きに延在することができ、ドレッシングインタフェース970は、ブリッジ968の下端部に位置決めされる。ドレッシングインタフェース970を使用して、パウチ108又は陰圧源110等、治療システム100の他の構成要素に乳房切除ドレッシング964を流体的に結合することができる。
【0066】
他の実施形態に関して上述したように、図9Aの乳房切除ドレッシング964は、患者間のサイズ、形状及び比率の解剖学的相違に適応するように広範囲のサイズで提供することができる。図9Dは、乳房切除ドレッシング964の寸法例を示す、いくつかの実施形態例による図9Aの乳房切除ドレッシング964のさらなる概略図を提供する。例えば、アーム966は、約100mm~350mmの範囲とすることができ、いくつかの実施形態では約220mmであり得るアーム長969を有することができる。さらに、ブリッジ968は、約75mm~300mmの範囲とすることができ、いくつかの実施形態では約165mmであり得るブリッジ長971を有することができる。ブリッジ968は、約40mm~100mmの範囲とすることができ、いくつかの実施形態では約70mmであり得るブリッジ幅973も有することができる。さらに、図9Aに関して考察したように、アーム966とブリッジ968との間の曲げ角度は、異なる患者に適応するように変更することができる。例えば、曲げ角度975は、100度~140度の範囲の何れかの寸法をとることができる。いくつかの実施形態では、曲げ角度975は、約120度であり得る。
【0067】
図9Bは、いくつかの代替的な乳房切除処置に関連する可能性がある切開部の上に適用することができる、乳房ドレッシングの別の実施形態例の重ね合わせ図を提供する。図に示すように、切開部は、乳房の組織内に形成される可能性があり、皮膚温存乳房切除切開部972の場合等、乳頭及び乳輪の周囲にわたり又はそれらを取り囲む可能性がある。したがって、皮膚温存乳房切除切開部972は、乳房切除処置の終了に続いて閉鎖されるとき、乳房のおよそ中心部に位置する幾分か円形の切開部の形態をとる可能性がある。この実施形態例では、図9Aの乳房切除ドレッシング964と同様のドレッシング、より具体的には反転乳房切除ドレッシング974は、乳房切除処置に続いて切開部が残る可能性がある乳房組織の領域の上に配置されて示されている。
【0068】
反転乳房切除ドレッシング974は、クラウン976及びブリッジ978を含むことができる。図9Bに示すように、クラウン976は、皮膚温存乳房切除切開部972の上に配置することができる。反転乳房切除ドレッシング974のクラウン976は、反転乳房切除ドレッシング974の患者に面する側に位置するドレッシング組織インタフェースに穿孔を含むことができ、それにより乳房組織、より具体的には皮膚温存乳房切除切開部972への陰圧の連通を容易にすることができる。この例示的な実施形態では、反転乳房切除ドレッシング974のブリッジ978は、クラウン976の下の乳房の下方部分で開始することができる。ブリッジ978は、乳房の底部まで垂直方向下向きに、さらに患者の胴部の上に下向きに延在することができる。したがって、ブリッジ978は、曲げ部、すなわちエルボを含むことができ、患者の胴部の側部に向かって外側に続くことができる。患者の胴部の側部のブリッジ978の端部にドレッシングインタフェース(図示せず)を位置決めすることができ、それは、反転乳房切除ドレッシング974を治療システム100の他の構成要素に流体的に結合するために使用することができる。
【0069】
図9Bの反転乳房切除ドレッシング974も広範囲のサイズで提供することができる。図9Eは、反転乳房切除ドレッシング974の寸法例を例示するために、いくつかの実施形態例による図9Bの反転乳房切除ドレッシング974のさらなる概略図を提供する。例えば、反転乳房切除ドレッシング974のクラウン976は、クラウン976のその最も広い部分における幅であり得るクラウン幅977を有することができる。いくつかの実施形態では、クラウン幅977は、約70mm~100mmの範囲とすることができ、いくつかの実施形態では約90mmであり得る。さらに、反転乳房切除ドレッシング974のブリッジ978は、約50mm~90mmの範囲とすることができ、いくつかの実施形態では約70mmであり得るブリッジ幅979を有することができる。さらに、上述したように、ブリッジ978は、曲げ部すなわちエルボを含み、患者の胴部の側部に向かって外側に延在する部分を含むことができる。いくつかの実施形態では、外側に延在するブリッジ978の部分は、約150mm~300mmの範囲である外側ブリッジ長981を有することができ、いくつかの実施形態では約220mmであり得る。
【0070】
図9Cは、さらなる乳房切除処置に関連するあるタイプの切開部の上に適用することができる、乳房ドレッシングのさらなる実施形態例の重ね合わせ図を提供する。例えば、この例示的な実施形態では、乳房組織の上に直線状切開部が形成される可能性があり、それは、乳房の乳輪の底部で開始する可能性があり、乳房の底部まで下向きに延在する可能性がある。こうした直線状切開部は、一般に、乳輪温存乳房切除切開部982によって表されるように、患者の乳房の乳頭、乳輪及び他の部分を保存することが望まれる状況において実施することができる。図9Cに示すように、乳輪温存乳房切除切開部982の上に反転乳房切除ドレッシング984等の乳房切除ドレッシングの別の変形形態を適用することができる。反転乳房切除ドレッシング984は、アーム986及びブリッジ988を含むことができる。アーム986は、乳頭及び乳輪を包囲する領域から延在し、乳輪温存乳房切除切開部982の上を下向きに延在することができる。アーム986は、乳輪温存乳房切除切開部982及び周囲の乳房組織との陰圧連通を容易にするために、反転乳房切除ドレッシング984の患者に面する側に位置するドレッシング組織インタフェースに穿孔を含むことができる。反転乳房切除ドレッシング984のブリッジ988は、アーム986の端部に隣接して乳房の底部の真下で開始することができる。ブリッジ988は、患者の胴部の中心に向かって内側に延在することができ、患者の胴部の中心において、ブリッジ988は、乳房間溝の下の胴部の部分で終端することができる。ドレッシングインタフェース990等のドレッシングインタフェースは、ブリッジ988の端部に位置することができる。
【0071】
図9Fは、図9Cの反転乳房切除ドレッシング984の概略図を提供し、反転乳房切除ドレッシング984のいくつかの寸法例を示す。例えば、アーム986は、約100mm~300mmの範囲のアーム長983を有することができる。いくつかの実施形態では、アーム長983は、約200mmであり得る。さらに、ブリッジ988は、約100mm~300mmの範囲であるブリッジ長985を有することができ、いくつかの実施形態では約250mmであり得る。ブリッジ988は、約40mm~100mmの範囲であり得、いくつかの実施形態では約70mmであり得るブリッジ幅987も有することができる。
【0072】
ここで、主に図10を参照すると、従来の両胸乳頭切除処置に続いて複数のドレッシングがあてがわれた患者例の画像が示されている。図10に示すように、処置に続き、患者には2つの切開部が残されており、各切開部は、それぞれの乳房にわたり、リンパ腺及びそれぞれの腋窩の位置に向かって伸びている。この特定の例では、図9Aの乳房切除ドレッシング964と同様である2つのドレッシング、乳房切除ドレッシング1064a及び1064bが患者の乳房に適用されて示されている。例えば、乳房切除ドレッシング1064aは、第1の乳房上の乳房切除切開部1062aの上に適用されて示されており、乳房切除ドレッシング1064bは、第2の乳房上の乳房切除切開部1062bの上に適用されて示されている。ドレッシングのさまざまな層及び材料は、図3に関して説明し例示した層及び材料と同じか又は実質的に同様であり得る。上述した他のドレッシング実施形態と同様に、乳房切除ドレッシング1064a及び1064bの各々は、それぞれアーム1066a及び1066b並びに同様にそれぞれブリッジ1068a及び1068bを含むことができる。図示するように、ブリッジ1068a及び1068bの各々は、患者の胴部の中心部分に沿って乳房間溝から下向きに延在することができ、ドレッシングインタフェース1070a及び1070bは、ブリッジ1068a及び1068bの各々の下方部分にそれぞれ位置決めされている。
【0073】
多くの患者は、乳房切除術と同時に乳房再建手術を行うように選択する可能性があるため、乳房切除ドレッシングは、乳房再建処置とともに使用される可能性がある。通常、患者が再建を受けるように選択する場合、組織エキスパンダを乳房空洞内に挿入し、乳房切除切開部が治癒し周囲組織に可能となるに従い、組織エキスパンダに生理食塩水を徐々に充填することができる。したがって、乳房切除ドレッシング1064等、本明細書に開示したドレッシングの乳房切除術の変形形態の初期配置は、患者のより平坦な輪郭の上でなされる可能性が高いことにも注目すべきである。乳房切除ドレッシング1064等の乳房切除術特定のドレッシングを使用して、豊胸処置に通常関連する乳房切開部を治療することも可能である。こうした豊胸切開部は、多くの場合、乳房下溝に位置する可能性があり、直線状であり且つより長さが短い可能性がある。
【0074】
手術時、ドレッシングサブシステム102、ドレッシング106及びパウチ108の構成要素を患者に適用することができる。ドレッシング106は、創傷特定であるか又は切開部特定の乳房ドレッシングとすることができ、したがって、場合により、ドレッシングサブシステム102の一部として含まれる乳房ドレッシングのタイプは、特定の乳房処置応用に基づいて変更することができる。ドレッシング106は、実質的に外部環境から隔離された、乳房組織上に位置する切開部等、組織部位に近接して密閉された治療環境を提供することができる。患者に第2の乳房ドレッシングも適用することができ、それに続き、両ドレッシングをパウチ108に流体的に接続することができる。重要なことに、複数のドレッシングの場合、ドレッシングは、治療対象である乳房組織の各領域の具体的な治療の必要に応じて同じか又は異なるサイズ、形状又は設計であり得る。さらに、患者の右乳房及び左乳房両方の少なくとも一部に適用するために単一のドレッシングが好適であり得る環境があり得る。したがって、陰圧源を含む治療ユニットをドレッシングサブシステム102の構成要素に流体的に結合することができる。
【0075】
手術時、陰圧源は、ドレッシング106によって提供される密閉された治療環境において減圧することができる。密閉された治療環境において組織部位にわたって印加される陰圧は、組織部位においてマクロひずみ及びマイクロひずみを引き起こすとともに、組織部位から滲出物及び他の流体を除去することができる。ドレッシング106が乳房上の切開部等の組織部位からの流体と接触すると、流体は、ドレッシング組織インタフェース層の穿孔を通って1つ又は複数のマニホールド層に向かって移動することができる。マニホールド層は、ドレッシング組織インタフェースを通して組織部位から離れる方向に流体を吸い取るか又は他の方法で移動させることができる。したがって、流体を貯蔵するのではなく、組織部位からの流体と連通するようにドレッシング組織インタフェースを適合させることができる。したがって、マニホールド層は、マニホールド層に沿って、ドレッシング106を通して、ドレッシングアパーチャを有するドレッシングインタフェースに向かって流体を吸い取り、引っ張り、引き抜き又は他の方法で移動させるように適合させることができる。したがって、陰圧により、流体を、ドレッシングアパーチャを通ってドレッシングチューブセット内に引き込むことができる。したがって、流体をパウチ108に輸送してそこに収集することができる。
【0076】
本明細書に記載したシステム、装置及び方法は、著しい利点を提供することができる。例えば、開示した治療システムは、適用が容易であり且つ使用が容易である、乳房で使用するのに適した陰圧創傷管理解決法を提供する。術後の乳房創傷は、創傷のボルスタとして且つ治癒を促進するために遠隔に貯蔵することができる流体の能動的除去のため、陰圧の印加から利益を得ることができる。例えば、治療システム100のドレッシング106及びパウチ108等、開示した治療システムの一意の構成要素は、調和して機能して、術後滲出物管理、切開部管理の利益を提供することができ、感染低減に役立つことができる。対照的に、乳房創傷のためのケアの現行の標準規格は、通常、標準的な高度創傷ドレッシング(AWD)とドレナージバルブとを必要とし、それらは、何れも頻繁な交換を必要とするか又は扱いにくく患者の生活の質を妨げる。したがって、本明細書に開示したドレッシング106等、身体にフィットしたマニホールド式の吸収性構造体は、患者に容易に且つ迅速に適用することができ、患者に対して邪魔になること及び視覚的影響を最小限にしながら、陰圧療法の有益な効果を送達することができ、したがってこの十分に満たされていなかった必要に対処することができる。したがって、当技術分野における先行する治療システム及びドレッシングと異なり、本システム及びドレッシングは、創傷管理及びドレナージ管理両方を合わせて提供し、それらは、従来、別個のドレッシング及び圧力ドレインバルブ等、2つ以上の異なる製品によって管理されていた。外科処置に続いて使用されることが多い従来の「バブル」ドレーンシステムと比較して、開示した治療システムは、部分的には陰圧の一定の印加により、滲出物管理を大幅に改善することができる。さらに、開示した治療システムのドレッシング及びパウチは、創傷滲出物を乳房上の切開部等の創傷部位から十分に離れて貯蔵することができ、したがってドレッシングの1つ又は複数の吸収性層の膨張に起因する圧点を低減させるのに役立つ。結果として、開示した治療システムのドレッシングは、従来の内部マニホールドドレーンより邪魔にならない可能性もある。さらに、開示したドレッシングのいくつかの実施形態における方向性のある流体ウィッキング能力の結果として、陰圧の送達によってもたらされる空気流の存在がなくても、創傷流体をドレナージ部位から離れて、ドレッシングの流体インタフェース等の収集箇所に向かって移動させることができる。いくつかの実施形態では、閉鎖創傷処置とともに、ドレナージ管理は、白色フォームの指状体を使用する「フレンチフライ」法を通しても強化することができる。こうした方法では、白色フォームの指状体は、乳房及び周囲組織内に配置することができ、外科医によって特定されるドレナージ位置の方に向けることができる。白色フォーム指状体は、表皮を通って突出することができ、第1のドレッシング206等のドレッシングに空気圧式に結合することができる。さらに、開示したドレッシングは、本来、複雑な多方向の複合創傷に対して問題である可能性があった、創傷に対する付着力の印加を回避することができる。付着力がないことにより、外科医によって意図されるように複雑な且つ多方向の切開部の美容的治癒を促進することができる。したがって、開示したドレッシングは、折畳み式フォームを利用する従来の陰圧創傷療法ドレッシングと比較して付着力を低減させるか又は除去する著しい利点を提供することができる。結果として、多方向切開創傷の適切な美容的治癒を強化することができる。
【0077】
さらに、開示したドレッシングを使用して達成することができる密閉された創傷環境により、創傷部位の感染率を低下させることができる。また、ドレッシング106及びパウチ108の一部、例えばドレッシング106のドレッシング組織インタフェース150及びパウチ108のパウチ組織インタフェース156としてシリコーン患者インタフェースを組み込むことは、美容的瘢痕低減に寄与することができる。関連する点として、ドレッシング106及びパウチ108等、開示した治療システムの付着性構成要素は、除去されるときに与える外傷をわずかな量とすることができる。例えば、アクリル接着剤の限られた使用により、ブラ配置及び交換中のドレッシング106等のドレッシングの一時的な保持を可能にすることができるが、組織部位に損傷を与えることなくドレッシング106を移動させることも可能である。
【0078】
また、注目すべきことに、開示したドレッシング及びパウチアセンブリは、San Antonio,TX,USAのKinetic Concepts Inc.から市販されているSNAP(商標)システム等、他の使い捨て陰圧創傷治療システムと機能するようにも適用させることができる。
【0079】
いくつかの例示的な実施形態で示したが、当業者は、本明細書に記載したシステム、装置及び方法が、さまざまな変形形態及び変更形態が可能であることを理解するであろう。さらに、「又は」等の用語を使用するさまざまな代替例の記載は、文脈から明らかに必要でない限り、相互排他性を必要とせず、「1つの(a)」又は「1つの(an)」という冠詞は、文脈から明らかに必要でない限り、対象を単一の例に限定するものではない。販売、製造、組立又は使用の目的で、構成要素をさまざまな構成で組み合わせるか又は除去することも可能である。例えば、いくつかの構成では、ドレッシングサブシステム102、治療ユニット104又は両方を製造又は販売のために他の構成要素から除去するか又は分離することができる。
【0080】
添付の特許請求の範囲は、上述した主題の新規性のある且つ進歩性のある態様を示すが、特許請求の範囲は、具体的に詳細に記載していないさらなる主題も包含することができる。例えば、当業者に既知であることから、新規性のある且つ進歩性のある特徴を識別するために必要ではない場合、いくつかの特徴、要素又は態様を特許請求の範囲から省略している場合がある。本明細書に記載した特徴、要素及び態様は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく、組み合わせるか、又は同じ、均等な若しくは同様の目的にかなう代替的な特徴と置き換えることも可能である。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図8F
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図9F
図10