(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】車両用スロープ装置
(51)【国際特許分類】
B60R 3/02 20060101AFI20220906BHJP
A61G 3/06 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
B60R3/02
A61G3/06 711
(21)【出願番号】P 2020013337
(22)【出願日】2020-01-30
【審査請求日】2021-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000128544
【氏名又は名称】日産モータースポーツ&カスタマイズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002549
【氏名又は名称】弁理士法人綾田事務所
(72)【発明者】
【氏名】福井 治
【審査官】村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-071578(JP,A)
【文献】特開2015-059318(JP,A)
【文献】特開2012-239596(JP,A)
【文献】特開2017-170974(JP,A)
【文献】特開2010-089586(JP,A)
【文献】特開2019-098845(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 3/00 - 3/04
A61G 3/06
B60P 1/00 - 9/00
E04F 11/00
E04G 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスロープ部材を積層状態からスライドして伸長状態とし、地上と車両内の床部との間にスロープを形成する車両用スロープ装置であって、
前記スロープ部材は、上面が床面となるパネル部と、該パネル部のスライド方向と
直交する幅方向両側に前記上面から立設されたガイド部と、を有し、
積層状態における下からn段目(nは自然数)の前記スロープ部材のガイド部(以下、n段目ガイド部と記載する。)は、(n-1)段目ガイド部の幅方向内側においてスライド可能に配置され、
前記パネル部が嵌合するn段目嵌合溝と、該n段目嵌合溝から上方に立設されたn段目立設部と、を有し、
前記n段目立設部は、前記n段目嵌合溝の上面から上方に垂直に立ち上げられた基部と、該基部から車幅方向外側に向かって斜めに立ち上げられた傾斜立ち上げ部と、該傾斜立ち上げ部の上端から上方に垂直に立ち上げられた上端部と、を有し、
前記n段目ガイド部を上方から見たとき、
前記上端部の幅方向内側位置は、
前記基部の幅方向外側位置よりも幅方向外側に位置することを特徴とする車両用スロープ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用スロープ装置
であって、
前記(n-1)段目ガイド部は、幅方向内側に凸形成され、前記n段目スロープ部材の上面側への移動を規制する(n-1)段目凸部を有し、
前記n段目ガイド部を上方から見たとき、前記
上端部の幅方向内側位置は
、前記(n-1)段目凸部の幅方向内側位置よりも幅方向外側に位置することを特徴とする車両用スロープ装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両用スロープ装置
であって、
(n-2)段目ガイド部は、幅方向内側に凸形成され、
(n-1)段目スロープ部材の上面側への移動を規制する(n-2)段目凸部を有し、
前記n段目ガイド部を上方から見たとき、前記
上端部の幅方向外側位置は
、前記(n-2)段目凸部の幅方向内側位置よりも幅方向外側に位置することを特徴とする車両用スロープ装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一つに記載の車両用スロープ装置
であって、
(n-2)段目ガイド部は、幅方向内側に凸形成され、
(n-1)段目スロープ部材の上面側への移動を規制する(n-2)段目凸部を有し、
前記(n-1)段目ガイド部は、前記パネル部が嵌合する(n-1)段目嵌合溝と、該(n-1)段目嵌合溝から上方に立設された(n-1)段目立設部と、を有し、
前記(n-1)段目ガイド部を上方から見たとき、前記(n-1)段目
立設部の幅方向外側位置は
、前記(n-2)段目凸部の幅方向内側位置よりも幅方向外側に位置することを特徴とする車両用スロープ装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一つに記載の車両用スロープ装置
であって、
(n-2)段目ガイド部は、幅方向内側に凸形成され、
(n-1)段目スロープ部材の上面側への移動を規制する(n-2)段目凸部を有し、
前記(n-1)段目ガイド部を上方から見たとき、
(n-1)段目凸部の幅方向内側位置は
、前記(n-2)段目凸部の幅方向内側位置よりも幅方向外側に位置することを特徴とする車両用スロープ装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか一つに記載の車両用スロープ装置
であって、
前記n段目スロープ部材は、積層状態で最上段であることを特徴とする車両用スロープ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収納時は車両内に格納でき、使用時には車外に伸長して展開することで、地上から車両内の床部に車いす等を乗降可能な車両用スロープ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用スロープ装置として、特許文献1に記載の装置が知られている。この公報には、3枚のスロープ板材がスライド可能に積層されたスロープ装置が開示されている。以下、伸長状態で車両から近い順に第1スロープ板材、第2スロープ板材、第3スロープ板材と定義する。第1スロープ板材の車幅方向両端には、第2スロープ板材が伸長方向に沿ってスライド可能な第1ガイド部が形成されている。同様に、第2スロープ板材の車幅方向両端には、第3スロープ板材が伸長方向に沿ってスライド可能な第2ガイド部が形成されている。これにより、スロープ装置を伸長展開した状態で車いす等が通過する際にも安定した強度を確保し、スロープ部材の撓みを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、近年の車いすは多様性が増し、様々な形式の車いすが登場している。特に電動化が進んだ車いすの場合は、車いすの座面下方にバッテリやモータを搭載する関係上、車いすの車幅(トレッド)が拡張傾向にある。しかしながら、特許文献1に記載のスロープ装置にあっては、第2スロープ板材の横幅は、第1スロープ板材に形成された第1ガイド部より幅方向に狭く形成する必要があり、更に、第3スロープ板材の横幅は、第2スロープ板材に形成された第2ガイド部より幅方向に狭く形成する必要があるため、第3スロープ板材の幅方向を十分に確保することが困難であった。また、第3スロープ板材の車幅方向両端には、車いす等の脱輪を回避するためのガイド部が垂直に形成されており、ガイド部の車幅方向距離を確保することが困難であった。
【0005】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、多様な車いすに対応可能な車両用スロープ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の車両用スロープ装置では、積層状態における下からn段目のスロープ部材のガイド部を上方から見たとき、n段目ガイド部上端の幅方向内側位置は、n段目ガイド部下端の幅方向外側位置と同一、もしくはn段目ガイド部下端の幅方向外側位置よりも幅方向外側に位置することとした。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、上記構成により、ガイド部の車幅方向距離を確保することができ、多様な車いすに対応可能な車両用スロープ装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態1の車両用スロープ装置を採用した車両を表す概略説明図である。
【
図2】実施形態1の車両用スロープ装置の作動状態を表す概略図である。
【
図3】実施形態1の車両用スロープ装置を採用した車両の車室内概略図である。
【
図4】実施形態1の車両用スロープ装置の積層状態におけるガイド部の部分断面図である。
【
図5】実施形態2の車両用スロープ装置の積層状態におけるガイド部の部分断面図である。
【
図6】実施形態3の車両用スロープ装置の積層状態におけるガイド部の部分断面図である。
【
図7】実施形態4の車両用スロープ装置の積層状態におけるガイド部の部分断面図である。
【
図8】実施形態5の車両用スロープ装置の積層状態におけるガイド部の部分断面図である。
【
図9】実施形態6の車両用スロープ装置の積層状態におけるガイド部の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[実施形態1]
図1は、実施形態1の車両用スロープ装置を採用した車両を表す概略説明図、
図2は、実施形態1の車両用スロープ装置の作動状態を表す概略図、
図3は、実施形態1の車両用スロープ装置を採用した車両の車室内概略図である。実施形態1の車両1は、ワンボックスタイプであり、車両後方に車両下方から上方に渡って大きく開口するリア開口部20と、リア開口部20の上方に設置されたヒンジを中心に回動可能に固定されたリアゲート2と、を備える。車両1は、車室内後方の床部に傾斜状凹部23(
図3参照)が形成され、車両用スロープ装置3が伸長状態のときに形成されるスロープと傾斜状凹部23とが比較的滑らかに接続される。傾斜状凹部23を含む車室内後方には、車いす4を搭載して固定する車いす載置部24を有する。
【0010】
リア開口部20の下方には、車両用スロープ装置3が設置されている。車両用スロープ装置3は、アルミ系材料の押出成形によって形成された1段目スロープ部材31と、2段目スロープ部材32と、3段目スロープ部材33と、を有する。各スロープ部材31,32,33は、上面が床面となるパネル部31a,32a,33aと、パネル部31a,32a,33aのスライド方向と直行する幅方向両側に上面から立設されたガイド部310,320,330と、を有する。各スロープ部材31,32,33は、積層状態からスライドして伸長状態とし、地上と車両内の床部との間にスロープを形成するとともに、
図2に示すように、伸長状態から積層状態とすることで、車室内に収容される。
【0011】
車両用スロープ装置3は、リヤ開口部20の下端に設けられた支持部22に回動可能に設置され、積層状態で支持部22よりも車室内側に倒すことが可能に形成されている。尚、リアバンパのうち、車両用スロープ装置3が設置される部分は、可動式リアバンパ21として形成されている。車両用スロープ装置3を車室外でスロープとして機能させる際は、可動式リアバンパ21も下方に移動し、車両用スロープ装置3の傾斜と車室内とをスムーズに接続可能とする。
【0012】
車室内に車いす4が搭載されている場合、車両用スロープ装置3は、
図2中の略起立状態で固定される。また、車室内に車いす4が搭載されていない場合、車両用スロープ装置3は、
図2中の水平状態で固定され、車室内の床部に形成された傾斜状凹部23に収容される。これにより、車室内に車いす4が搭載されていない場合には、車室内を荷室として利用することができる。
【0013】
図4は、実施形態1の車両用スロープ装置の積層状態におけるガイド部の部分断面図である。
図4(a)は、ガイド部と車いすの車輪41との位置関係を表し、
図4(b)は、ガイド部と傾斜状凹部23との位置関係を表す。
1段目スロープ部材31は、パネル部31aの車幅方向端部にパネル部31aと嵌合する1段目ガイド部310を有する。1段目ガイド部310は、断面略L字状であり、パネル部31aが嵌合する嵌合溝311と、嵌合溝311から上方に立設され2段目スロープ部材32をスライド可能に保持する立設部312とを有する。車両用スロープ装置3がスロープとして機能するときは、嵌合溝311の下面311bが最下部となり、嵌合溝311の上面311aが、2段目スロープ部材32が摺動する摺動面となる。
【0014】
立設部312の車幅方向内側には、2段目スロープ部材32のガイド部320の一部が摺動可能に噛み合うスライド溝312aが形成されている。また、立設部312の上端には、車幅方向内側に凸形成され、ガイド部320の一部が上方に移動して外れることを規制する1段目凸部313が形成されている。上面311aと、スライド溝312aと、1段目凸部313の下方に形成されたストッパ面313aとで、2段目スロープ部材32のガイド溝を形成する。
【0015】
2段目スロープ部材32は、パネル部32aの車幅方向端部にパネル部32aと嵌合する2段目ガイド部320を有する。2段目ガイド部320は、断面略L字状であり、パネル部32aが嵌合する嵌合溝321と、嵌合溝321から上方に立設され3段目スロープ部材33をスライド可能に保持する立設部322とを有する。車両用スロープ装置3がスロープとして機能するときは、嵌合溝321の下面321bが1段目スロープ部材31との摺動面となり、嵌合溝321の上面321aが、3段目スロープ部材33が摺動する摺動面となる。
【0016】
立設部322の車幅方向内側には、3段目スロープ部材33のガイド部330の一部が摺動可能に噛み合うスライド溝322aが形成されている。また、立設部322の車幅方向外側には、1段目スロープ部材31のスライド溝312aと摺動可能に噛み合うガイド用凸部324が形成されている。また、立設部322の上端には、車幅方向内側に凸形成され、ガイド部330の一部が上方に移動して外れることを規制する2段目凸部323が形成されている。上面321aと、スライド溝322aと、2段目凸部323の下方に形成されたストッパ面323aとで、3段目スロープ部材33のガイド溝を形成する。
【0017】
3段目スロープ部材33は、パネル部33aの車幅方向端部にパネル部33aと嵌合する3段目ガイド部330を有する。3段目ガイド部330は、断面略L字状であり、パネル部33aが嵌合する嵌合溝331と、嵌合溝331から上方に立設され車いす4の車輪41の脱輪を規制する立設部332とを有する。車両用スロープ装置3がスロープとして機能するときは、嵌合溝331の下面331bが2段目スロープ部材32との摺動面となる。
【0018】
立設部332は、上方に垂直に立ち上げられた基部332aと、基部332aから車幅方向外側に向かって斜めに立ち上げられた傾斜立上げ部332bと、傾斜立上げ部332bの上端から上方に垂直に立ち上げられた上端部332cと、を有する。ここで、基部332aの車幅方向外側から垂直に立ち上げた線を第1基準線01、2段目凸部323の車幅方向内側から垂直に立ち上げた線を第3基準線03とする。上端部332cの車幅方向内側は、第1基準線01よりも車幅方向外側の位置となるように形成され、更に上端部332cの車幅方向内側は、第3基準線03よりも車幅方向外側の位置となるように形成されている。また、立設部332の車幅方向外側には、2段目スロープ部材32のスライド溝322aと摺動可能に噛み合うガイド用凸部334が形成されている。
【0019】
ここで、本願発明の背景について説明する。実施形態1の車両1は、車室内の傾斜状凹部23の両側であってフロアパネル下方に、車両前後方向に伸びるサイドメンバ10(後述する
図4(b)参照)を有する。サイドメンバ10は、強度部材であることから、傾斜状凹部23(
図3参照)は、サイドメンバ10を回避するように下方に屈曲された壁面231と接続されている。言い換えると、サイドメンバ10の車幅方向間隔によって傾斜状凹部23の幅方向が規制されている。また、
図3に示すように、実施形態1の車両1は、車室内に跳ね上げ式の最後部座席25が設置されており、車幅方向のスペースが制限されている。よって、車いす4を搭載していない状態で車両用スロープ装置3を回動し、床部に収納するには、車両用スロープ装置3の車幅方向長さを最後部座席25と干渉しないサイズに規制しなければならない。
【0020】
このように、車両1の構成上の規制によって、車両用スロープ装置3の車幅方向における設計自由度は制限されている。また、車両用スロープ装置3は、積層状態からスライドして伸長状態とすることでスロープを形成する。よって、車幅方向において1段目スロープ部材31のパネル部31aよりも3段目スロープ部材33のパネル部33aの方が幅狭に形成される。この状態で、3段目スロープ部材33の立設部332を垂直に立ち上げてしまうと、車いすの車輪41が干渉するおそれがある。特に、実施形態1のように各スロープ部材31,32,33をアルミ系材料の押出成形によって構成する場合、強度確保の観点からガイド部310,320,330の各断面おいて、一定以上の厚み(例えば3.5~5mm)を確保する必要がある。これら各部の厚みが積み重なると、数センチ単位で車幅方向の有効面積が狭くならざるを得ない。一方、近年の車いすの多様化により、車いす4のトレッドが広めに設計されたものが登場しており、車両用スロープ装置3を車いす4が通過する際の車幅方向のサイズの拡大が要求されていた。
【0021】
ここで、発明者が鋭意検討した結果、車輪41は、
図4(a)の断面図に示すように、断面形状が略楕円形状をしているため、基部332aの位置は従来と同じ位置としたまま、傾斜立上げ部332bによって上端部332cを車幅方向外側に逃げるように形成すると、それだけトレッドの広い車いすに対応できることを見出した。そこで、実施形態1では、立設部332を、基部332aと、傾斜立上げ部332bと、上端部332cとから構成し、上端部332cの車幅方向内側は、第1基準線01よりも車幅方向外側の位置となるように形成した。更に、実施形態1にあっては、上端部332cの車幅方向内側が第3基準線03よりも車幅方向外側の位置となるように形成した。
【0022】
すなわち、1段目スロープ部材31や2段目スロープ部材32の設計を変更することなく、3段目スロープ部材33の立設部332の形状を変更するのみで、車いすが通過可能なスロープ有効幅を広く設定できる。また、車いす4を車室内から車室外に移動する際、2段目スロープ部材32と3段目スロープ部材33との繋ぎ目部分で車輪41が引っかかることを防止でき、補助者による作業性を改善できる。
【0023】
以上説明したように、実施形態1では、下記に列挙する作用効果が得られる。
(1)複数のスロープ部材31,32,33を積層状態からスライドして伸長状態とし、地上と車両内の床部との間にスロープを形成する車両用スロープ装置であって、
各スロープ部材31,32,33は、上面が床面となるパネル部31a,32a,33aと、該パネル部31a,32a,33aのスライド方向と直行する幅方向両側に上面から立設されたガイド部310,320,330と、を有し、
積層状態における下から3段目の3段目スロープ部材33のガイド部330は、2段目ガイド部320の幅方向内側においてスライド可能に配置され、かつ、3段目ガイド部330を上方から見たとき、上端部332c(3段目ガイド部330上端)の幅方向内側位置は、基部332a(3段目ガイド部330下端)の幅方向外側位置と同一、もしくは基部332aの幅方向外側位置よりも幅方向外側に位置する。
よって、3段目ガイド部330の車幅方向距離を確保することができ、多様な車いすに対応可能な車両用スロープ装置を提供できる。また、車いす4を車室内から車室外に移動する際、2段目スロープ部材32と3段目スロープ部材33との繋ぎ目部分で車輪41が引っかかることを防止でき、補助者による作業性を改善できる。
【0024】
(2)2段目ガイド部320は、幅方向内側に凸形成され、3段目スロープ部材33の上面側への移動を規制する2段目凸部323を有し、3段目ガイド部330を上方から見たとき、上端部332cの幅方向内側位置は、2段目凸部323の幅方向内側位置と同一、もしくは2段目凸部323の幅方向内側位置よりも幅方向外側に位置する。
よって、更に3段目ガイド部330の車幅方向距離を確保できる。
【0025】
(3)3段目スロープ部材33は、積層状態で最上段である。よって、車いすが通過する際に最も幅方向において狭くなる部分において、車輪41が引っかかることを防止できる。
【0026】
(4)車両用スロープ装置は、車両のリヤ開口部20の下端に設けられた支持部22に回動可能に設置され、積層状態で支持部22よりも車室内側に倒すことで、車両内の床部に形成された傾斜状凹部23に収容される。
これにより、車室内に車いす4が搭載されていない場合には、構造部材であるサイドメンバ10や跳ね上げ式の座席25による幅方向の規制があったとしても、車室内を荷室として利用することができる。
【0027】
(5)各スロープ部材31,32,33は、アルミ系材料の押出成形によって形成されている。よって、スロープ部材31,32,33の各部の厚みを確保する必要はあるものの、製造容易性と、3段目ガイド部330の車幅方向距離の両方を確保できる。特に、基部332aが厚い場合、上端部332cの車幅方向外側へのオフセット量を十分に確保することができる。
【0028】
[実施形態2]
次に、実施形態2について説明する。基本的な構成は実施形態1と同様であるため、異なる点についてのみ説明する。
図5は、実施形態2の車両用スロープ装置の積層状態におけるガイド部の部分断面図である。実施形態1では、立設部332の傾斜立上げ部332bを断面形状が直線的に、かつ斜めに立ち上げる構成とした。これに対し、実施形態2では、極力2段目スロープ部材32の2段目凸部323に沿って断面形状が曲線的に、かつ斜めに立ち上げる構成とした点で異なる。これにより、車いす4の車輪41の側面との干渉をより回避することができる。
【0029】
[実施形態3]
次に、実施形態3について説明する。基本的な構成は実施形態1と同様であるため、異なる点についてのみ説明する。
図6は、実施形態3の車両用スロープ装置の積層状態におけるガイド部の部分断面図である。実施形態1では、立設部332の傾斜立上げ部332bを断面形状が直線的に、かつ斜めに立ち上げ、上端部332cを傾斜立上げ部332bの上端から上方に垂直に立ち上げる構成とした。これに対し、実施形態3では、上端部332として傾斜立上げ部332bをそのまま斜めに上端まで立ち上げる構成とした点で異なる。これにより、更に車いす4の車輪41の側面との干渉をより回避することができる。
【0030】
[実施形態4]
次に、実施形態4について説明する。基本的な構成は実施形態1と同様であるため、異なる点についてのみ説明する。
図7は、実施形態4の車両用スロープ装置の積層状態におけるガイド部の部分断面図である。実施形態1では、2段目スロープ部材32の立設部322を断面形状が直線的に、かつ垂直に立ち上げる構成とした。これに対し、実施形態4では、2段目スロープ部材32の立設部322を断面形状が直線的、かつ車幅方向外側に向けて斜めに立ち上げた傾斜立上げ部322xを有し、これにより3段目スロープ部材33の立設部332を車幅方向外側に拡大する構成としている点で異なる。
【0031】
(6)1段目ガイド部310は、軸方向内側に凸形成され、2段目スロープ部材22の上面側への移動を規制する1段目凸部313を有し、3段目ガイド部330の上方から見たとき、上端部332cの幅方向外側位置は、1段目凸部313の幅方向内側位置と同一、もしくは1段目凸部313の幅方向内側位置よりも幅方向外側に位置することとした。これにより、更に車いす4の車輪41の側面と各ガイド部310,320,330との干渉を回避することができる。
【0032】
(7)1段目ガイド部310は、幅方向内側に凸形成され、2段目スロープ部材22の上面側への移動を規制する1段目凸部313を有し、2段目ガイド部320を上方から見たとき、2段目ガイド部320の幅方向外側位置は、1段目凸部313の内側位置と同一、もしくは1段目凸部313の内側位置よりも幅方向外側に位置する。よって、1段目ガイド部310の設計を変更することなく、2段目から幅方向を拡大することができ、更に3段目ガイド部330の幅方向長さを拡大することができる。
【0033】
[実施形態5]
次に、実施形態5について説明する。基本的な構成は実施形態4と同様であるため、異なる点についてのみ説明する。
図8は、実施形態5の車両用スロープ装置の積層状態におけるガイド部の部分断面図である。実施形態4では、2段目スロープ部材32の立設部322を断面形状が直線的に、かつ斜めに立ち上がる傾斜立上げ部322xを有する構成とした。加えて、3段目スロープ部材33の上方から見たとき、3段目ガイド部330の幅方向外側位置が1段目凸部313の幅方向内側と同一、もしくは1段目凸部313の幅方向内側位置よりも幅方向外側に位置することとした。これに対し、実施形態5では、2段目スロープ部材32の立設部322の傾斜立上げ部322aを、極力1段目スロープ部材31の1段目凸部313に沿って断面形状が曲線的に、かつ斜めに立ち上げる構成とした点で異なる。
これにより、実施形態4の(4)で示す効果に加え、傾斜立上げ部322aを実施形態4に比べて短く構成することで、2段目スロープ部材32の曲げ強度を実施形態4に比べて向上できる。
【0034】
[実施形態6]
次に、実施形態6について説明する。基本的な構成は実施形態5と同様であるため、異なる点についてのみ説明する。
図9は、実施形態6の車両用スロープ装置の積層状態におけるガイド部の部分断面図である。実施形態5では、2段目スロープ部材32の立設部322を断面形状が曲線的に、かつ斜めに立ち上がる傾斜立上げ部322xを有する構成とした。加えて、3段目スロープ部材33の上方から見たとき、2段目スロープ部材32の立設部322の2段目凸部323の幅方向内側位置は、1段目凸部313の幅方向内側位置よりも内側に位置していた。
【0035】
これに対し、実施形態6では、2段目スロープ部材32の立設部322の傾斜立上げ部322aを、極力1段目スロープ部材31の1段目凸部313に沿って断面形状が曲線的に、かつ斜めに立ち上げ、2段目凸部323の幅方向内側位置が1段目凸部313の幅方向内側位置と同一、もしくは1段目凸部313の幅方向内側位置よりも幅方向外側に位置させ、かつ、3段目ガイド部330の上端部332cの幅方向内側位置を、1段目凸部313の幅方向内側位置と同一、もしくは1段目凸部313の幅方向内側位置よりも幅方向外側に位置させる構成とした点で異なる。
【0036】
(8)1段目ガイド部310は、幅方向内側に凸形成され、2段目スロープ部材32の上面側への移動を規制する1段目凸部313を有し、2段目ガイド部320を上方から見たとき、2段目凸部323の幅方向内側位置は、1段目凸部313の幅方向内側位置と同一、もしくは1段目凸部の幅方向内側位置よりも幅方向外側に位置する。同様に、3段目ガイド部330を上方から見たとき、上端部332cの幅方向内側位置は、2段目凸部323の幅方向内側位置と同一、もしくは2段目凸部の幅方向内側位置よりも幅方向外側に位置する。
これにより、各スロープ部材31,32,33の車いす4が通過可能な有効面積が徐々に狭くなることを回避することができ、更に車いす4の車輪41の側面と各ガイド部310,320,330との干渉を回避することができる。
【0037】
[他の実施形態]
以上、本発明を実施形態1~6に基づいて説明したが、本発明を逸脱しない範囲で他の実施形態に本発明を適用してもよい。例えば、各実施形態では、3つのスロープ部材から構成される例について説明したが、2つのスロープ部材や、4つ以上のスロープ部材から構成してもよい。尚、特許請求の範囲に記載のnは、スロープ部材の数を表し、特許請求の範囲において(n-2)と記載されている場合は、nは3以上の自然数である。
【符号の説明】
【0038】
1 車両
2 リアゲート
3 車両用スロープ装置
4 車いす
10 サイドメンバ
20 リア開口部
21 可動式リアバンパ
22 支持部
23 傾斜状凹部
24 車いす載置部
25 最後部座席
31 1段目スロープ部材
32 2段目スロープ部材
33 3段目スロープ部材
31a,32a,33a パネル部
41 車輪
310 1段目ガイド部
311 嵌合溝
312 立設部
312a スライド溝
313 1段目凸部
320 2段目ガイド部
321 嵌合溝
322 立設部
322a スライド溝
322x 傾斜立上げ部
323 2段目凸部
330 3段目ガイド部
331 嵌合溝
332 立設部
332a 基部
332b 傾斜立上げ部
332c 上端部
334 ガイド用凸部
313 1段目凸部