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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】癌幹細胞を含む癌の診断および治療法
(51)【国際特許分類】
   A61K 48/00 20060101AFI20220906BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220906BHJP
   A61K 31/337 20060101ALI20220906BHJP
   A61K 31/7064 20060101ALI20220906BHJP
   A61K 31/351 20060101ALI20220906BHJP
   A61K 31/4745 20060101ALI20220906BHJP
   A61K 33/243 20190101ALI20220906BHJP
   A61K 31/357 20060101ALI20220906BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220906BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220906BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20220906BHJP
   A61K 38/08 20190101ALI20220906BHJP
   A61K 38/12 20060101ALI20220906BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20220906BHJP
   C12N 15/86 20060101ALN20220906BHJP
【FI】
A61K48/00 ZMD
A61K39/395 T
A61K31/337
A61K31/7064
A61K31/351
A61K31/4745
A61K33/243
A61K31/357
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K47/68
A61K38/08
A61K38/12
C12N15/13 ZNA
C12N15/86 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020024949
(22)【出願日】2020-02-18
(62)【分割の表示】P 2019020349の分割
【原出願日】2014-07-30
(65)【公開番号】P2020101558
(43)【公開日】2020-07-02
【審査請求日】2020-02-18
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2013/002272
(32)【優先日】2013-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】509146023
【氏名又は名称】バイオエヌテック エスエー
【氏名又は名称原語表記】BIONTECH SE
【住所又は居所原語表記】An der Goldgrube 12 55131 Mainz Germany
(73)【特許権者】
【識別番号】504346260
【氏名又は名称】ガニメド ファーマシューティカルズ ゲーエムベーハー
【住所又は居所原語表記】An der Goldgrube 12 55131 Mainz Germany
(73)【特許権者】
【識別番号】515123258
【氏名又は名称】トロン- トランスラショナル オンコロジー アン デア ウニヴェリジテーツメディツィン デア ヨハネス グーテンベルク-ウニヴェルシテート マインツ ゲマインニューツィゲ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】TRON- Translationale Onkologie an der Universitaetsmedizin der Johannes Gutenberg-Universitaet Mainz gemeinnuetzige GmbH
【住所又は居所原語表記】Freiligrathstr. 12 55131 Mainz Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】サヒン, ウグル
(72)【発明者】
【氏名】テューレヒ, エズレム
(72)【発明者】
【氏名】ウォルター, コルデン
(72)【発明者】
【氏名】ワグナー, マイケ
(72)【発明者】
【氏名】クロイツベルク, マリア
(72)【発明者】
【氏名】ヘッカー, サビーネ
(72)【発明者】
【氏名】ヤコブス, シュテファン
【審査官】大島 彰公
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/156018(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/057788(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0301431(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K、A61P、C12N
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CLDN6の発現を特徴とする癌疾患を治療するための医薬の調製のための、CLDN6に結合する能力を有する抗体をコードする核酸配列を含む組成物の使用であって、前記抗体は、配列番号:5によって表されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、および配列番号:4によって表されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含み、
前記抗体は、補体依存性細胞傷害(CDC)媒介性溶解または抗体依存性細胞傷害(ADCC)媒介性溶解の1つまたはそれ以上を媒介することによって、その阻害作用および/または細胞傷害作用を与え、
前記治療は、(i)前記医薬と、(ii)化学療法の作用物質、または多剤化学療法PEBのいずれかとを、癌患者に投与する工程を含み、前記化学療法の作用物質は、カルボプラチン、ゲムシタビン、パクリタキセル、ドキソルビシン、トポテカンおよびシスプラチンからなる群より選択され、前記多剤化学療法PEBはシスプラチン、エトポシドおよびブレオマイシンを含有する、使用。
【請求項2】
前記核酸配列は、1つ以上のベクターに含まれる、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記核酸配列は、組換えウイルスまたは組換え細胞に含まれる、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
前記医薬の投与が、化学療法の抗癌作用を増強する、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
前記癌が、化学療法に抵抗性である、請求項1から4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
CLDN6に結合する能力を有する前記抗体が、アポトーシスの誘導および増殖の阻害の1つまたはそれ以上を媒介することによってその阻害作用および/または細胞傷害作用をさらに与える、請求項1から5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
CLDN6は、配列番号:1または配列番号:2に従うアミノ酸配列を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
前記癌は、原発癌、進行癌、再発癌、またはそれらの組合せを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
従来の癌療法は、概して急速に増殖する癌細胞(すなわち腫瘍バルクを形成する細胞)を選択的に検出し、根絶することならびに概して細胞増殖およびDNA複製に関与する細胞機構を妨げることにより、癌細胞に毒性作用を及ぼすことを主に試みてきた。さらに、標準的な腫瘍学レジメンは、大部分が、過度の毒性を伴わない、すなわちしばしば「最大耐量」(MTD)と称される、照射の最高線量または化学療法剤の最高用量を投与するように設計されている。
【背景技術】
【0002】
化学療法プロトコルはまた、しばしば、治療の効果を増大させることを目指して化学療法剤の併用投与を含む。多種多様な化学療法剤が使用可能であるにもかかわらず、これらの療法は多くの難点を抱える。例えば、化学療法剤は、正常または悪性に関わらない急速に増殖する細胞への非特異的副作用に起因して、重大な、そしてしばしば危険な副作用を引き起こす。
【0003】
他の種類の癌療法には、患者における腫瘍細胞を根絶するための手術、ホルモン療法、免疫療法、エピジェネティック療法、抗血管新生療法、標的療法および放射線治療が含まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、癌療法のための従来のアプローチすべてが、効果の欠如(特に長期的な転帰の観点で)および毒性を含む患者にとって重大な難点を有する。したがって、癌患者を治療するための新しい療法が求められている。
【0005】
幹様特性を保持する癌細胞の亜集団が腫瘍内に存在することの証拠が増加しつつある。この亜集団は癌幹細胞(CSC)と称される。癌幹細胞は正常幹細胞と比べて類似の特性を有し、自己複製および腫瘍のすべての不均一な細胞型の形成のための能力を備える。腫瘍細胞のCSC様特性を分析するための有効なアッセイはコロニー形成アッセイである。このアッセイを用いて、単一腫瘍細胞の自己複製能力および腫瘍形成能を容易に検討することができる。
【0006】
癌幹細胞は、腫瘍形成を開始させ、腫瘍成長を維持し、おそらく体内の離れた器官部位への腫瘍播種をもたらす能力を有すると考えられる。癌幹細胞は、腫瘍の残りの細胞(すなわち腫瘍バルク)と比べて、より腫瘍形成性で、比較的緩やかに増殖するかまたは静止状態にあり、しばしば腫瘍バルクよりも相対的に化学療法耐性である、腫瘍の独特の亜集団を構成する。従来の癌療法は急速に増殖する細胞(すなわち腫瘍バルクを形成する細胞)を標的とするので、これらの治療は、癌幹細胞を標的とし、傷害するには比較的有効でないと考えられる。癌幹細胞は、多剤耐性および抗アポトーシス経路などの、それらを比較的化学療法耐性にする他の特徴を発現することができる。癌幹細胞を適切に標的とし、根絶することができないことが、標準的な腫瘍治療レジメンが多くの癌患者において長期的な利益を確保できないことの主要な理由である。したがって、癌幹細胞は、治療後の癌再発および薬剤の無効性の主たる理由であるのみならず、悪性癌転移の主要な理由でもあり得る。それゆえ、癌を治癒するための1つの可能性は癌幹細胞を排除することである。
【0007】
クローディンは上皮と内皮の密着結合内に位置する内在性膜タンパク質である。クローディンは、4つの膜貫通セグメントと2つの細胞外ループを有し、N末端およびC末端が細胞質内に局在すると予測される。クローディン(CLDN)ファミリーの膜貫通タンパク質は上皮と内皮の密着結合の維持に重要な役割を果たし、また細胞骨格の維持および細胞シグナル伝達にも関与すると考えられる。CLDN6は一連の異なるヒト癌細胞において発現されるが、正常組織での発現は胎盤に限定される。
【0008】
本明細書で本発明者らは、多能性細胞の生成の間にCLDN6発現が上方調節されることを実証するデータを提示する。さらに、CLDN6は癌幹細胞の公知のマーカーと強く関連し、CLDN6陽性腫瘍細胞はコロニー形成の増強を示す。CLDN6特異的抗体を使用した療法が卵巣癌などの腫瘍の化学療法耐性を克服できることならびに化学療法とCLDN6抗体療法の併用が卓越した相乗効果を有することも明らかにする。
【0009】
本明細書で提示する所見は、CLDN6が癌幹細胞の新規マーカーであることならびにCLDN6を標的とすることによって癌幹細胞を診断および治療目的のために標的化できることを示す。
【課題を解決するための手段】
【0010】
1つの態様では、本発明は、CLDN6を発現する細胞を検出することを含む、癌幹細胞を測定する方法に関する。
【0011】
1つの実施形態では、CLDN6を発現する細胞の存在は癌幹細胞の存在を示す、および/またはCLDN6を発現する細胞の量は癌幹細胞の量と相関する。1つの実施形態では、CLDN6を発現する細胞を、癌のための治療の前、治療中および/または治療後などに癌患者から得た試料中で検出する。1つの実施形態では、この方法はCLDN6を発現する細胞の定量的および/または定性的測定を含む。1つの実施形態では、この方法は、CLDN6を発現する細胞の量を参照試料中のCLDN6を発現する細胞の量と比較するまたは所定の参照範囲と比較することを含む。参照試料は、癌と診断されたことがない患者からの試料であり得る。所定の参照範囲は、癌と診断されたことがない患者の集団に基づき得る。1つの実施形態では、前記方法は癌患者において癌幹細胞の量を観測することを含み、ここで癌患者において癌幹細胞の量を観測することは、好ましくは癌患者から得た試料中の癌幹細胞の量を前記癌患者からより早期に得た試料中の癌幹細胞の量と比較することを含む。1つの実施形態では、癌患者から得た試料は、癌療法の投与中または投与後に癌患者から採取した試料である。
【0012】
さらなる態様では、本発明は、癌患者において癌療法の効果を観測する方法であって、(i)癌療法の投与中または投与後に癌患者から得た試料中の癌幹細胞の量を測定すること;および(ii)癌患者から得た試料中の癌幹細胞の量を前記癌患者からより早期に得た試料中の癌幹細胞の量と比較することを含み、ここで前記癌患者から得た試料中の癌幹細胞の量を測定することおよび/または前記癌患者からより早期に得た試料中の癌幹細胞の量を測定することがCLDN6を発現する細胞の量を測定することを含む方法に関する。
【0013】
1つの実施形態では、癌患者からより早期に得た試料は、癌療法の投与前、投与中または投与後に癌患者から採取した試料である。
【0014】
本発明のすべての態様の方法の1つの実施形態では、癌幹細胞の量の安定化または減少は、癌療法が有効であることを示す。本発明のすべての態様の方法の1つの実施形態では、癌幹細胞の量の増加は、癌療法が有効でないことを示す。本発明のすべての態様の方法の1つの実施形態では、癌療法は癌幹細胞に対する癌療法である。本発明のすべての態様の方法の1つの実施形態では、癌患者から得た試料は生物学的流体または腫瘍生検である。本発明のすべての態様の方法の1つの実施形態では、試料は1つまたはそれ以上の前処理工程に供されている。本発明のすべての態様の方法の1つの実施形態では、CLDN6タンパク質および/またはCLDN6 mRNAを検出するかまたはその量を測定することによってCLDN6を発現する細胞を検出するかまたはその量を測定する。本発明のすべての態様の方法の1つの実施形態では、免疫検定法を用いることによってCLDN6を発現する細胞を検出するかまたはその量を測定し、ここで免疫検定法は、好ましくはウェスタンブロット法、免疫組織化学、放射性免疫検定法、ELISA(固相酵素免疫検定法)、「サンドイッチ」免疫検定法、免疫沈降アッセイ、沈降反応、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散アッセイ、凝集アッセイ、補体結合アッセイ、イムノラジオメトリックアッセイ、蛍光免疫検定法、免疫蛍光法、プロテインA免疫検定法、フローサイトメトリおよびFACS分析から成る群より選択される。本発明のすべての態様の方法の1つの実施形態では、CLDN6に結合する能力を有する抗体を使用することによってCLDN6を発現する細胞を検出するかまたはその量を測定する。本発明のすべての態様の方法の1つの実施形態では、CLDN6を発現する細胞は、CLDN6を発現する癌細胞および/または腫瘍部位に存在する細胞である。
【0015】
さらなる態様では、本発明は、癌を治療するまたは予防する方法であって、CLDN6に結合する能力を有する抗体を癌患者に投与することによって癌幹細胞を阻害するおよび/または排除することを含む方法に関する。
【0016】
1つの実施形態では、癌幹細胞はCLDN6を発現する。1つの実施形態では、前記方法は、化学療法および/または放射線療法を投与することをさらに含む。1つの実施形態では、癌幹細胞を阻害するおよび/または排除することは、化学療法および/または放射線療法の抗癌作用を増強し、ここで化学療法および/または放射線療法の抗癌作用の増強は、好ましくは化学療法および/または放射線療法を受けている癌患者の生存期間の延長を含む。
【0017】
さらなる態様では、本発明は、癌を治療するまたは予防する方法であって、(i)CLDN6に結合する能力を有する抗体および(ii)化学療法を癌患者に投与することを含む方法に関する。
【0018】
1つの実施形態では、癌は、CLDN6を発現する癌幹細胞を含む。1つの実施形態では、CLDN6に結合する能力を有する抗体を投与することは、CLDN6を発現する癌幹細胞の阻害または排除をもたらす。1つの実施形態では、CLDN6に結合する能力を有する抗体を投与することは化学療法の抗癌作用を増強し、ここで化学療法の抗癌作用の増強は、好ましくは化学療法を受けている癌患者の生存期間の延長を含む。
【0019】
本発明のすべての態様の方法の1つの実施形態では、癌幹細胞の排除は癌の治癒をもたらす。本発明のすべての態様の方法の1つの実施形態では、CLDN6に結合する能力を有する抗体と化学療法を相乗的に有効な量で投与する。本発明のすべての態様の方法の1つの実施形態では、化学療法を最大耐量より低い用量で投与する。本発明のすべての態様の方法の1つの実施形態では、化学療法は、タキサン類、白金化合物、ヌクレオシド類似体、カンプトテシン類似体、アントラサイクリン、そのプロドラッグ、その塩およびそれらの組合せから成る群より選択される作用物質を投与することを含む。本発明のすべての態様の方法の1つの実施形態では、化学療法は、パクリタキセル、シスプラチン、カルボプラチン、そのプロドラッグ、その塩およびそれらの組合せから成る群より選択される作用物質を投与することを含む。本発明のすべての態様の方法の1つの実施形態では、癌幹細胞は癌患者の腫瘍部位に存在する。本発明のすべての態様の方法の1つの実施形態では、癌は化学療法に対して、特に単独療法として投与された場合、化学療法に対して耐性である。本発明のすべての態様の方法の1つの実施形態では、CLDN6に結合する能力を有する抗体は癌幹細胞に阻害作用および/または細胞傷害作用を及ぼし、ここでCLDN6に結合する能力を有する抗体は、好ましくは補体依存性細胞傷害(CDC)媒介性溶解、抗体依存性細胞傷害(ADCC)媒介性溶解、アポトーシスの誘導および増殖の阻害の1つまたはそれ以上を媒介することによって癌幹細胞にその阻害作用および/または細胞傷害作用を与える。本発明のすべての態様の方法の1つの実施形態では、CLDN6に結合する能力を有する抗体は治療成分に連結されており、本明細書で述べる抗体薬剤コンジュゲートであり得る。1つの実施形態では、治療成分は、細胞傷害性薬剤、化学療法剤または放射性核種である。1つの実施形態では、治療成分は緩やかに増殖する細胞に作用する。本発明のすべての態様の方法の1つの実施形態では、CLDN6に結合する能力を有する抗体は、CLDN6の第一細胞外ループに結合する。本発明のすべての態様の方法の1つの実施形態では、CLDN6に結合する能力を有する抗体は、配列番号:5によって表されるアミノ酸配列またはそのフラグメントを含む重鎖可変領域(VH)および配列番号:4によって表されるアミノ酸配列またはそのフラグメントを含む軽鎖可変領域(VL)を含有する。
【0020】
さらなる態様では、本発明は、リンカーによって少なくとも1つの毒素薬剤成分に共有結合された、CLDN6に結合する能力を有する抗体を含有する抗体薬剤コンジュゲートを癌患者に投与することを含む、癌を治療するまたは予防する方法に関する。
【0021】
1つの実施形態では、毒素薬剤成分は細胞膜透過性である。1つの実施形態では、毒素薬剤成分の少なくとも1つは、緩やかに増殖する細胞に作用する。1つの実施形態では、毒素薬剤成分はメイタンシノイドまたはアウリスタチンである。1つの実施形態では、メイタンシノイドはDM1およびDM4から成る群より選択される。1つの実施形態では、アウリスタチンはモノメチルアウリスタチンE(MMAE)およびモノメチルアウリスタチンF(MMAF)から成る群より選択される。1つの実施形態では、リンカーは切断可能なリンカー、好ましくはカテプシンで切断可能なリンカーである。1つの実施形態では、抗体は、抗体のシステインチオールを介してリンカーに連結される。
【0022】
1つの実施形態では、癌はCLDN6を発現する癌幹細胞を含む。1つの実施形態では、抗体薬剤コンジュゲートを投与することは、CLDN6を発現する癌幹細胞の阻害または排除をもたらす。1つの実施形態では、癌幹細胞の排除は癌の治癒をもたらす。1つの実施形態では、癌幹細胞は癌患者の腫瘍部位に存在する。1つの実施形態では、抗体薬剤コンジュゲートは癌幹細胞に阻害作用および/または細胞傷害作用を及ぼし、ここで抗体薬剤コンジュゲートは、好ましくはアポトーシスの誘導および/または増殖の阻害によって癌幹細胞にその阻害作用および/または細胞傷害作用を与える。
【0023】
1つの実施形態では、前記方法は、化学療法および/または放射線療法を投与することをさらに含む。1つの実施形態では、抗体薬剤コンジュゲートを投与することは、化学療法および/または放射線療法の抗癌作用を増強し、ここで化学療法および/または放射線療法の抗癌作用の増強は、好ましくは化学療法および/または放射線療法を受けている癌患者の生存期間の延長を含む。
【0024】
1つの実施形態では、抗体薬剤コンジュゲートと化学療法を相乗的に有効な量で投与する。1つの実施形態では、化学療法を最大耐量より低い用量で投与する。1つの実施形態では、化学療法は、タキサン類、白金化合物、ヌクレオシド類似体、カンプトテシン類似体、アントラサイクリン、そのプロドラッグ、その塩およびそれらの組合せから成る群より選択される作用物質を投与することを含む。1つの実施形態では、化学療法は、パクリタキセル、シスプラチン、カルボプラチン、そのプロドラッグ、その塩およびそれらの組合せから成る群より選択される作用物質を投与することを含む。1つの実施形態では、癌は化学療法に対して、特に単独療法として投与された場合の化学療法に対して耐性である。
【0025】
1つの実施形態では、CLDN6に結合する能力を有する抗体は、特に抗体薬剤コンジュゲート中に存在する場合、抗体および/または抗体薬剤コンジュゲートのエンドサイトーシスを可能にするのに適したCLDN6への親和性および/または特異性を有する。1つの実施形態では、抗体薬剤コンジュゲート中のCLDN6に結合する能力を有する抗体は、CLDN6の第一細胞外ループに結合する。1つの実施形態では、抗体薬剤コンジュゲート中のCLDN6に結合する能力を有する抗体は、配列番号:5によって表されるアミノ酸配列またはそのフラグメントを含む重鎖可変領域(VH)および配列番号:4によって表されるアミノ酸配列またはそのフラグメントを含む軽鎖可変領域(VL)を含有する。
【0026】
本発明のすべての態様の方法の1つの実施形態では、CLDN6は、配列番号:1または配列番号:2に従うアミノ酸配列を有する。本発明のすべての態様の方法の1つの実施形態では、癌は、原発癌、進行癌、転移癌、再発癌またはそれらの組合せを含む。
【0027】
さらなる態様では、本発明は、癌を治療するまたは予防する方法であって、(i)本発明の方法によって癌患者において癌幹細胞を測定することおよび(ii)癌幹細胞に対する癌療法を癌患者に投与することを含む方法に関する。1つの実施形態では、癌幹細胞に対する癌療法は、本発明の癌を治療するまたは予防する方法を実施することを含む。
【0028】
さらなる態様では、本発明は、本発明の方法によって癌を治療することを含む、特に癌治療中または癌治療後の、癌化学療法耐性、癌再発または癌転移を予防する方法に関する。
【0029】
さらなる態様では、本発明は、(i)CLDN6に結合する能力を有する抗体および(ii)化学療法剤を含有する、癌を治療するまたは予防するための医療調製物を提供する。CLDN6に結合する能力を有する抗体および化学療法剤は、混合物としてまたは互いに別々に医療調製物中に存在し得る。医療調製物は、CLDN6に結合する能力を有する抗体を含有する第一容器および化学療法剤を含有する第二容器を含むキットの形態で存在し得る。医療調製物は、癌の治療または予防のための調製物の使用、特に本発明の方法における調製物の使用に関する印刷された指示書をさらに含み得る。医療調製物ならびに、特にCLDN6に結合する能力を有する抗体および化学療法剤の種々の実施形態は、本明細書で述べるとおりである。
【0030】
特定の態様では、本発明は、(i)CLDN6に結合する能力を有する抗体および(ii)パクリタキセルを含有する医療調製物を提供する。CLDN6に結合する能力を有する抗体およびパクリタキセルは、混合物としてまたは互いに別々に医療調製物中に存在し得る。医療調製物は、卵巣癌などの癌を治療するまたは予防することを目的とし得る。医療調製物は、CLDN6に結合する能力を有する抗体を含有する第一容器およびパクリタキセルを含有する第二容器を含むキットの形態で存在し得る。医療調製物は、卵巣癌などの癌の治療または予防のための調製物の使用、特に本発明の方法における調製物の使用に関する印刷された指示書をさらに含み得る。医療調製物および、特にCLDN6に結合する能力を有する抗体の種々の実施形態は、本明細書で述べるとおりである。
【0031】
さらなる態様では、本発明は、リンカーによって少なくとも1つの毒素薬剤成分に共有結合された、CLDN6に結合する能力を有する抗体を含有する抗体薬剤コンジュゲートを提供する。
【0032】
1つの実施形態では、毒素薬剤成分は細胞膜透過性である。1つの実施形態では、毒素薬剤成分の少なくとも1つは、緩やかに増殖する細胞に作用する。1つの実施形態では、毒素薬剤成分はメイタンシノイドまたはアウリスタチンである。1つの実施形態では、メイタンシノイドはDM1およびDM4から成る群より選択される。1つの実施形態では、アウリスタチンはモノメチルアウリスタチンE(MMAE)およびモノメチルアウリスタチンF(MMAF)から成る群より選択される。1つの実施形態では、リンカーは切断可能なリンカー、好ましくはカテプシンで切断可能なリンカーである。1つの実施形態では、抗体は、抗体のシステインチオールを介してリンカーに連結される。
【0033】
1つの実施形態では、CLDN6に結合する能力を有する抗体は、特に抗体薬剤コンジュゲート中に存在する場合、抗体および/または抗体薬剤コンジュゲートのエンドサイトーシスを可能にするのに適したCLDN6への親和性および/または特異性を有する。1つの実施形態では、抗体薬剤コンジュゲート中のCLDN6に結合する能力を有する抗体は、CLDN6の第一細胞外ループに結合する。1つの実施形態では、抗体薬剤コンジュゲート中のCLDN6に結合する能力を有する抗体は、配列番号:5によって表されるアミノ酸配列またはそのフラグメントを含む重鎖可変領域(VH)および配列番号:4によって表されるアミノ酸配列またはそのフラグメントを含む軽鎖可変領域(VL)を含有する。
【0034】
さらなる態様では、本発明は、本発明の抗体薬剤コンジュゲートおよび医薬的に許容される希釈剤、担体または賦形剤を含有する医薬製剤を提供する。
【0035】
さらなる態様では、本発明は、本発明の抗体薬剤コンジュゲートおよび化学療法剤を含有する医療調製物を提供する。好ましくは、医療調製物は癌を治療するまたは予防することを目的とする。抗体薬剤コンジュゲートおよび化学療法剤は、混合物としてまたは互いに別々に医療調製物中に存在し得る。医療調製物は、抗体薬剤コンジュゲートを含有する第一容器および化学療法剤を含有する第二容器を含むキットの形態で存在し得る。医療調製物は、癌の治療または予防のための調製物の使用、特に本発明の方法における調製物の使用に関する印刷された指示書をさらに含み得る。医療調製物ならびに、特に抗体薬剤コンジュゲートおよび化学療法剤の種々の実施形態は、本明細書で述べるとおりである。
【0036】
特定の態様では、本発明は、本発明の抗体薬剤コンジュゲートおよびパクリタキセルを含有する医療調製物を提供する。抗体薬剤コンジュゲートおよびパクリタキセルは、混合物としてまたは互いに別々に医療調製物中に存在し得る。医療調製物は、卵巣癌などの癌を治療するまたは予防することを目的とし得る。医療調製物は、抗体薬剤コンジュゲートを含有する第一容器およびパクリタキセルを含有する第二容器を含むキットの形態で存在し得る。医療調製物は、卵巣癌などの癌の治療または予防のための調製物の使用、特に本発明の方法における調製物の使用に関する印刷された指示書をさらに含み得る。医療調製物および、特に抗体薬剤コンジュゲートの種々の実施形態は、本明細書で述べるとおりである。
【0037】
本発明はまた、本明細書で述べる方法における使用のための抗体薬剤コンジュゲート、CLDN6に結合する能力を有する抗体および/または化学療法剤などの、本明細書で述べる作用物質および組成物も提供する。例えば、本発明は、パクリタキセルなどの化学療法剤と共に投与するための抗体薬剤コンジュゲートまたはCLDN6に結合する能力を有する抗体も提供する。
【0038】
1つの実施形態では、CLDN6に結合する能力を有する抗体は、モノクローナル、キメラもしくはヒト化抗体、または抗体のフラグメントである。1つの実施形態では、前記抗体は、細胞CLDN6、特に細胞によってその細胞表面上に発現されたCLDN6に結合した場合、細胞死滅を媒介し、ここで細胞は、好ましくは本明細書で述べる癌の癌幹細胞などの癌幹細胞である。
【0039】
本発明によれば、癌は、好ましくは卵巣癌、特に卵巣腺癌および卵巣奇形癌、小細胞肺癌癌(SCLC)および非小細胞肺癌(NSCLC)を含む肺癌、特に肺扁平上皮癌および腺癌、大細胞癌(LCC)、胃癌、乳癌、肝癌、膵癌、皮膚癌、特に基底細胞癌および扁平上皮癌、悪性黒色腫、頭頸部癌、特に悪性多形腺腫、肉腫、特に滑膜肉腫および癌肉腫、胆管癌、膀胱の癌、特に移行上皮癌および乳頭状癌、腎癌、特に腎明細胞癌および乳頭状腎細胞癌を含む腎細胞癌、結腸癌、回腸の癌を含む小腸癌、特に小腸腺癌および回腸の腺癌、胎盤絨毛癌、子宮頸癌、精巣癌、特に精巣セミノーマ、精巣奇形腫および精巣胎生期癌、子宮癌、奇形癌または胎生期癌などの生殖細胞腫瘍、特に精巣および卵巣の生殖細胞腫瘍、ならびにそれらの転移形態から成る群より選択される。
【0040】
本発明によれば、CLDN6を発現する癌細胞および/または癌幹細胞は、好ましくは本明細書で述べる癌の細胞である。
【0041】
1つの実施形態では、本明細書で述べる癌はCLDN6陽性である。1つの実施形態では、本明細書で述べる癌の癌細胞はCLDN6陽性である。1つの実施形態では、本明細書で述べる癌の癌細胞は、その細胞表面上にCLDN6を発現する。
【0042】
1つの実施形態では、本明細書で述べる癌は、原発癌、進行癌、転移癌、再発癌またはそれらの組合せ、例えば原発癌と転移癌の組合せを含む。1つの実施形態では、癌は、パクリタキセル単独療法などの化学療法に部分的または完全に抵抗性である。1つの実施形態では、癌は卵巣癌、特にパクリタキセル単独療法などの化学療法に部分的または完全に抵抗性の卵巣癌である。
【0043】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】CLDN6 mRNAはヒトiPS細胞において発現される。 RNAなしで(RNAなし対照)または再プログラム化カクテル(非修飾OSKMNL+EBK+miRミックス)と共にLipofectamine RNAiMAX(Life Technologies)を使用してヒト包皮線維芽細胞(HFF)をトランスフェクトし、処置後5、12および19日目に細胞を採取した。RNAを抽出し、cDNAに転写して、その後ABI PRISM 7300配列検出システムおよびソフトウェア(Applied BiosystemsとQuantiTect SYBR green Kit(Qiagen))を用いて定量的リアルタイムRT-PCRによって分析した。処置の1日目からのHFF細胞(灰色のバー)と比較した再プログラム化カクテル(黒色のバー)で処置した細胞のCLDN6発現の倍数誘導を示す。CLDN6のmRNA発現をハウスキーピング遺伝子HPRT1のmRNA発現に基準化した。OSKMNL=転写因子OCT4、SOX2、KLF4、cMYC、NANOGおよびLIN28、EBK=IFNエスケープタンパク質E3、K3およびB18R、miRミックス=miRNA-302a/b/c/dおよび367。
図2】CLDN6はヒトiPS細胞の表面に発現される。 HFF細胞をRNAなし(RNAなし対照)または再プログラム化カクテル(非修飾OSKMNL+EBK+miRミックス)でトランスフェクトし、細胞を処置後5日目(A)、12日目(B)および19日目(C)に採取した。細胞を1μg/mlのCLDN6特異的IMAB027-AF647およびSSEA-4-V450抗体(各試験につき2.5μl、BDから購入)で4℃にて30分間染色し、表面発現をフローサイトメトリによって分析した。実験を二重に実施し、代表的なドットプロットを示す。OSKMNL=転写因子OCT4、SOX2、KLF4、cMYC、NANOGおよびLIN28、EBK=IFNエスケープタンパク質E3、K3およびB18R、miRミックス=miRNA-302a/b/c/dおよび367。
図3】卵巣癌細胞株におけるCLDN6表面発現。 CLDN6発現を分析するため、1E6細胞を1μg/ml IMAB027-AF647で4℃にて30分間染色し、表面発現をフローサイトメトリによって分析した。(A)ではCOV318細胞を示す。実験を三重に実施し、1つの代表的なドットプロットを提示する。(B)では、対照ベクターPA-1 76)またはCLDN6に対するshRNAを発現するベクター(クローンPA-1 50およびPA-1 54)で安定にトランスフェクトしたPA-1細胞を示す。実験を三重に実施し、1つの代表的なドットプロットを提示する。shRNA=低分子ヘアピンRNA。
図4】CLDN6は卵巣癌細胞のコロニー形成のために重要である。 コロニー形成挙動を分析するため、COV318、PA-1 50およびPA-1 54細胞を1μg/ml IMAB027-AF647で4℃にて30分間染色し、その後700(COV318)または500(PA-1 50/54)個のCLDN6陽性またはCLDN6陰性細胞を6ウェルプレートに選別した。細胞を14日間コロニー形成させ、その後0.5%クリスタルバイオレットで20分間染色した。(A)各細胞株の代表的な画像を示す。(B)手作業で計数することによってコロニーの定量化を実施した。3つの独立した実験の平均および標準偏差を示す。
図5A】(図5)CLDN6は卵巣癌細胞株COV318においてCSCマーカーCD24、CD90およびCD44と共発現される。 1E6 COV318細胞を、表1に示すFACSパネルに従って種々の表面マーカーに対する抗体で4℃にて30分間染色し、CSCマーカー発現をフローサイトメトリによって分析した。実験を三重に実施した。(図5A)(A)では、種々の確立されたCSCマーカーとCLDN6の共局在の代表的なドットプロットを示す。
図5B】(B)では、CD44、CD24、CD90とCLDN6陽性細胞の共局在のパーセントを、ダイアグラムのx軸に示す種々のゲーティング方法を用いて計算した。3つの実験の平均値および標準偏差を示す。
図6A】(図6)CLDN6発現細胞の富化は確立されたCSCマーカーの蓄積をもたらす。 COV318細胞を0.5μg/ml IMAB027およびAPC結合ヤギ抗ヒトIgG二次抗体(1:300)で染色し、その後CLDN6陽性およびCLDN6陰性画分をFACS選別によって単離した。両方の画分の細胞を10日間増殖させた。各画分の1E6細胞を、表1に示すFACSパネルに従って種々の表面マーカーに対する抗体で4℃にて30分間染色した。実験を三重に実施した。(図6A)(A)では、CLDN6陽性およびCLDN6陰性画分中の種々のCSCマーカーの発現レベルならびにそれらのCLDN6との共局在の代表的なドットプロットを示す。
図6B】(B)では、CSCマーカー発現レベルのパーセントをダイアグラムとして示し、関連マーカーCD44、CD90およびCD24についての富化係数(倍数発現)を、CLDN6陽性およびCLDN6陰性画分中の陽性細胞のパーセントを比較することによって計算した。
図7A】(図7)CLDN6高発現細胞株はCLDN6低発現細胞に比べてCSCマーカーの富化を示す。 CLDN6高発現卵巣癌細胞株OV90(A)およびPA-1(B)または精巣癌細胞株NEC-8(C)およびNEC-14(D)の1E6細胞を、表1に示すFACSパネルに従って種々の表面マーカーに対する抗体で4℃にて30分間染色し、CSCマーカー発現をフローサイトメトリによって分析した。実験を三重に実施し、代表的なドットプロットを示す。
図7B】CLDN6高発現卵巣癌細胞株OV90(A)およびPA-1(B)または精巣癌細胞株NEC-8(C)およびNEC-14(D)の1E6細胞を、表1に示すFACSパネルに従って種々の表面マーカーに対する抗体で4℃にて30分間染色し、CSCマーカー発現をフローサイトメトリによって分析した。実験を三重に実施し、代表的なドットプロットを示す。
図7C】CLDN6高発現卵巣癌細胞株OV90(A)およびPA-1(B)または精巣癌細胞株NEC-8(C)およびNEC-14(D)の1E6細胞を、表1に示すFACSパネルに従って種々の表面マーカーに対する抗体で4℃にて30分間染色し、CSCマーカー発現をフローサイトメトリによって分析した。実験を三重に実施し、代表的なドットプロットを示す。
図7D】CLDN6高発現卵巣癌細胞株OV90(A)およびPA-1(B)または精巣癌細胞株NEC-8(C)およびNEC-14(D)の1E6細胞を、表1に示すFACSパネルに従って種々の表面マーカーに対する抗体で4℃にて30分間染色し、CSCマーカー発現をフローサイトメトリによって分析した。実験を三重に実施し、代表的なドットプロットを示す。
図8】初期異種移植腫瘍モデルにおけるパクリタキセルと組み合わせたIMAB027の抗腫瘍作用。 ヒトCLDN6を異所性に発現する皮下ヒトES-2異種移植腫瘍を、移植後3、10および17日目にi.p.注射によって15mg/kgパクリタキセルで処置した。4日目に週3回の35mg/kg IMAB027注射(交互にi.v./i.p./i.p.)で抗体維持療法を開始した。(A)IMAB027(白色の四角)、パクリタキセル(灰色の円)、パクリタキセルと組み合わせたIMAB027(黒色の四角)またはビヒクル対照(白色の円)での処置後の平均腫瘍増殖動態(±SEM)。矢印は療法開始の時点を示す。(B)処置マウスの生存率曲線。群サイズ:n=12。
図9】進行した異種移植腫瘍モデルにおけるシスプラチンと組み合わせたIMAB027の抗腫瘍作用。 皮下ヒトNEC14異種移植腫瘍を、処置の開始前に約100mmの平均サイズまで増殖させた。移植後6日目から10日目まで毎日、i.p.注射によって1mg/kgシスプラチンで、および維持療法として6日目から週3回の35mg/kg IMAB027注射(交互にi.v./i.p./i.p.)でマウスを処置した。(A)IMAB027(黒色の円)、シスプラチン(白色の四角)、シスプラチンと組み合わせたIMAB027(黒色の四角)またはビヒクル対照(白色の円)での処置後の平均腫瘍増殖動態(±SEM)。矢印は療法開始の時点を示す。(B)移植後24日目のマウスにおける個別腫瘍サイズ(平均±標準偏差)。(C)処置マウスの生存率曲線。群サイズ:n=19。P値:、p<0.05;**、p<0.01および***、p<0.001。
図10】進行した異種移植腫瘍モデルにおけるカルボプラチンと組み合わせたIMAB027の抗腫瘍作用。 進行したヒトNEC14異種移植腫瘍を、図9で述べたようにIMAB027単独または細胞増殖抑制剤と組み合わせたIMAB027で処置した。シスプラチンの代わりに、6、13および20日目にボーラスi.p.注射によって30mg/kgカルボプラチンでマウスを処置した。(A)IMAB027(黒色の円)、カルボプラチン(白色の四角)、カルボプラチンと組み合わせたIMAB027(黒色の四角)またはビヒクル対照(白色の円)での処置後の平均腫瘍増殖動態(±SEM)。矢印は療法開始の時点を示す。(B)移植後24日目のマウスにおける個別腫瘍サイズ(平均±標準偏差)。(C)処置マウスの生存率曲線。群サイズ:n=19。P値:、p<0.05;**、p<0.01および***、p<0.001。
図11】CLDN6は卵巣癌細胞のスフェア形成挙動のために重要である。 スフェア形成へのCLDN6の影響を分析するため、CLDN6陽性およびCLDN6陰性COV318細胞を、0.5μg/ml IMAB027での染色後に蛍光活性化細胞選別法によって単離した。CLDN6陽性およびCLDN6陰性COV318細胞を、スフェア形成条件(0.4%ウシ血清アルブミン、20ng/ml塩基性線維芽細胞増殖因子、10ng/ml上皮増殖因子および5μg/mlインスリンを含有する無血清DMEM/F12培地)下に超低接着プレート中で増殖させた。(A)選別後3、8および19日目のCLDN6陽性(CLDN6+)およびCLDN6陰性(CLDN6-)COV318細胞の第一世代スフェアの代表的画像。(B)選別後22日目に(A)からのCLDN6+第一世代スフェアの単一細胞から得た第二世代スフェアの代表的画像。
図12】プラチン誘導体での処置後のCLDN6陽性細胞の富化。 COV318細胞を500ng/mlシスプラチンまたは2,000ng/mlカルボプラチンで4日間処置した。処置後、細胞増殖抑制性薬剤不在下で細胞をさらに3日間(白色のバー)および6日間(黒色のバー)、それぞれ増殖させた。CLDN6特異的抗体IMAB027およびアイソタイプ対照抗体を使用してCLDN6の発現をフローサイトメトリによって分析した。処置したCOV318細胞の発現を未処置細胞と比較して示す。評価のために、アイソタイプ対照の値をCLDN6染色から差し引いた。
図13】腹腔内移植後のCLDN6陽性細胞の富化。 無胸腺ヌードマウスにおいてCOV318細胞を腹腔内に注射した。腹水を発症したマウスを安楽死させ、腹水と固形腫瘍の両方をさらなる特性付けのために採取した。単離した細胞を、調製の直後および培養中に数継代維持した後にCLDN6発現に関して分析した。(A)CLDN6特異的抗体IMAB027およびアイソタイプ対照抗体を使用した親COV318細胞でのCLDN6発現のフローサイトメトリ分析。(B)単離後種々の時点での腹水ならびに卵巣、肝臓、胃、膵臓および横隔膜からの固形腫瘍に由来する細胞でのCLDN6発現(:5日目および35日目の腹水;**:12日目および29日目の固形腫瘍)。蛍光強度をx軸に表示する。y軸に表示する事象の数は事象の最大数のパーセントとして表している。
図14】CLDN6は原発腫瘍試料中の卵巣癌幹細胞マーカーと相関する。 42の卵巣癌試料を、Fluidigm検出システムおよびソフトウェアを使用したqRT-PCRによってCLDN6および記載されている様々な卵巣癌幹細胞マーカーのmRNA発現レベルに関して分析した。癌幹細胞特異的マーカーとのCLDN6の相関を分析するためにスピアマン相関分析を実施した。(A)では、有意の相関の散布図を示す(P値≦0.05)。(B)では、すべての相関の要約を示す。
図15A】(図15)カルボプラチンおよびパクリタキセルでの処置後のIMAB027媒介性ADCC。 化学療法と組み合わせたIMAB027のADCC活性を、COV362(Luc)標的細胞を使用して分析した。そのため、指示されている濃度のカルボプラチン、ゲムシタビン、パクリタキセル、ドキソルビシンまたはトポテカンで細胞を4日間処置した。処置後、細胞増殖抑制性薬剤不在下で細胞をさらに3日間(A~D)および10日間(E~J)、それぞれ増殖させた。対照細胞は細胞増殖抑制性薬剤なしで培養した。(A、C、E、G、I)ADCC実験を、健常ドナーからのPBMCを約40:1のエフェクター(PBMC)対標的細胞比で使用してIMAB027(黒色の線)またはアイソタイプ対照抗体(灰色の線)で実施した。データ点(n=4複製物)は平均±SDとして表している。(B、D、F、H、J)IMAB027を使用してCLDN6の発現をフローサイトメトリによって分析した。黒色の点線は未処置細胞におけるCLDN6発現、灰色の中実ヒストグラムは処置後のCLDN6発現を表す。
図15B】化学療法と組み合わせたIMAB027のADCC活性を、COV362(Luc)標的細胞を使用して分析した。そのため、指示されている濃度のカルボプラチン、ゲムシタビン、パクリタキセル、ドキソルビシンまたはトポテカンで細胞を4日間処置した。処置後、細胞増殖抑制性薬剤不在下で細胞をさらに3日間(A~D)および10日間(E~J)、それぞれ増殖させた。対照細胞は細胞増殖抑制性薬剤なしで培養した。(A、C、E、G、I)ADCC実験を、健常ドナーからのPBMCを約40:1のエフェクター(PBMC)対標的細胞比で使用してIMAB027(黒色の線)またはアイソタイプ対照抗体(灰色の線)で実施した。データ点(n=4複製物)は平均±SDとして表している。(B、D、F、H、J)IMAB027を使用してCLDN6の発現をフローサイトメトリによって分析した。黒色の点線は未処置細胞におけるCLDN6発現、灰色の中実ヒストグラムは処置後のCLDN6発現を表す。
図15C】化学療法と組み合わせたIMAB027のADCC活性を、COV362(Luc)標的細胞を使用して分析した。そのため、指示されている濃度のカルボプラチン、ゲムシタビン、パクリタキセル、ドキソルビシンまたはトポテカンで細胞を4日間処置した。処置後、細胞増殖抑制性薬剤不在下で細胞をさらに3日間(A~D)および10日間(E~J)、それぞれ増殖させた。対照細胞は細胞増殖抑制性薬剤なしで培養した。(A、C、E、G、I)ADCC実験を、健常ドナーからのPBMCを約40:1のエフェクター(PBMC)対標的細胞比で使用してIMAB027(黒色の線)またはアイソタイプ対照抗体(灰色の線)で実施した。データ点(n=4複製物)は平均±SDとして表している。(B、D、F、H、J)IMAB027を使用してCLDN6の発現をフローサイトメトリによって分析した。黒色の点線は未処置細胞におけるCLDN6発現、灰色の中実ヒストグラムは処置後のCLDN6発現を表す。
図15D】化学療法と組み合わせたIMAB027のADCC活性を、COV362(Luc)標的細胞を使用して分析した。そのため、指示されている濃度のカルボプラチン、ゲムシタビン、パクリタキセル、ドキソルビシンまたはトポテカンで細胞を4日間処置した。処置後、細胞増殖抑制性薬剤不在下で細胞をさらに3日間(A~D)および10日間(E~J)、それぞれ増殖させた。対照細胞は細胞増殖抑制性薬剤なしで培養した。(A、C、E、G、I)ADCC実験を、健常ドナーからのPBMCを約40:1のエフェクター(PBMC)対標的細胞比で使用してIMAB027(黒色の線)またはアイソタイプ対照抗体(灰色の線)で実施した。データ点(n=4複製物)は平均±SDとして表している。(B、D、F、H、J)IMAB027を使用してCLDN6の発現をフローサイトメトリによって分析した。黒色の点線は未処置細胞におけるCLDN6発現、灰色の中実ヒストグラムは処置後のCLDN6発現を表す。
図15E】化学療法と組み合わせたIMAB027のADCC活性を、COV362(Luc)標的細胞を使用して分析した。そのため、指示されている濃度のカルボプラチン、ゲムシタビン、パクリタキセル、ドキソルビシンまたはトポテカンで細胞を4日間処置した。処置後、細胞増殖抑制性薬剤不在下で細胞をさらに3日間(A~D)および10日間(E~J)、それぞれ増殖させた。対照細胞は細胞増殖抑制性薬剤なしで培養した。(A、C、E、G、I)ADCC実験を、健常ドナーからのPBMCを約40:1のエフェクター(PBMC)対標的細胞比で使用してIMAB027(黒色の線)またはアイソタイプ対照抗体(灰色の線)で実施した。データ点(n=4複製物)は平均±SDとして表している。(B、D、F、H、J)IMAB027を使用してCLDN6の発現をフローサイトメトリによって分析した。黒色の点線は未処置細胞におけるCLDN6発現、灰色の中実ヒストグラムは処置後のCLDN6発現を表す。
図15F】化学療法と組み合わせたIMAB027のADCC活性を、COV362(Luc)標的細胞を使用して分析した。そのため、指示されている濃度のカルボプラチン、ゲムシタビン、パクリタキセル、ドキソルビシンまたはトポテカンで細胞を4日間処置した。処置後、細胞増殖抑制性薬剤不在下で細胞をさらに3日間(A~D)および10日間(E~J)、それぞれ増殖させた。対照細胞は細胞増殖抑制性薬剤なしで培養した。(A、C、E、G、I)ADCC実験を、健常ドナーからのPBMCを約40:1のエフェクター(PBMC)対標的細胞比で使用してIMAB027(黒色の線)またはアイソタイプ対照抗体(灰色の線)で実施した。データ点(n=4複製物)は平均±SDとして表している。(B、D、F、H、J)IMAB027を使用してCLDN6の発現をフローサイトメトリによって分析した。黒色の点線は未処置細胞におけるCLDN6発現、灰色の中実ヒストグラムは処置後のCLDN6発現を表す。
図15G】化学療法と組み合わせたIMAB027のADCC活性を、COV362(Luc)標的細胞を使用して分析した。そのため、指示されている濃度のカルボプラチン、ゲムシタビン、パクリタキセル、ドキソルビシンまたはトポテカンで細胞を4日間処置した。処置後、細胞増殖抑制性薬剤不在下で細胞をさらに3日間(A~D)および10日間(E~J)、それぞれ増殖させた。対照細胞は細胞増殖抑制性薬剤なしで培養した。(A、C、E、G、I)ADCC実験を、健常ドナーからのPBMCを約40:1のエフェクター(PBMC)対標的細胞比で使用してIMAB027(黒色の線)またはアイソタイプ対照抗体(灰色の線)で実施した。データ点(n=4複製物)は平均±SDとして表している。(B、D、F、H、J)IMAB027を使用してCLDN6の発現をフローサイトメトリによって分析した。黒色の点線は未処置細胞におけるCLDN6発現、灰色の中実ヒストグラムは処置後のCLDN6発現を表す。
図15H】化学療法と組み合わせたIMAB027のADCC活性を、COV362(Luc)標的細胞を使用して分析した。そのため、指示されている濃度のカルボプラチン、ゲムシタビン、パクリタキセル、ドキソルビシンまたはトポテカンで細胞を4日間処置した。処置後、細胞増殖抑制性薬剤不在下で細胞をさらに3日間(A~D)および10日間(E~J)、それぞれ増殖させた。対照細胞は細胞増殖抑制性薬剤なしで培養した。(A、C、E、G、I)ADCC実験を、健常ドナーからのPBMCを約40:1のエフェクター(PBMC)対標的細胞比で使用してIMAB027(黒色の線)またはアイソタイプ対照抗体(灰色の線)で実施した。データ点(n=4複製物)は平均±SDとして表している。(B、D、F、H、J)IMAB027を使用してCLDN6の発現をフローサイトメトリによって分析した。黒色の点線は未処置細胞におけるCLDN6発現、灰色の中実ヒストグラムは処置後のCLDN6発現を表す。
図15I】化学療法と組み合わせたIMAB027のADCC活性を、COV362(Luc)標的細胞を使用して分析した。そのため、指示されている濃度のカルボプラチン、ゲムシタビン、パクリタキセル、ドキソルビシンまたはトポテカンで細胞を4日間処置した。処置後、細胞増殖抑制性薬剤不在下で細胞をさらに3日間(A~D)および10日間(E~J)、それぞれ増殖させた。対照細胞は細胞増殖抑制性薬剤なしで培養した。(A、C、E、G、I)ADCC実験を、健常ドナーからのPBMCを約40:1のエフェクター(PBMC)対標的細胞比で使用してIMAB027(黒色の線)またはアイソタイプ対照抗体(灰色の線)で実施した。データ点(n=4複製物)は平均±SDとして表している。(B、D、F、H、J)IMAB027を使用してCLDN6の発現をフローサイトメトリによって分析した。黒色の点線は未処置細胞におけるCLDN6発現、灰色の中実ヒストグラムは処置後のCLDN6発現を表す。
図15J】化学療法と組み合わせたIMAB027のADCC活性を、COV362(Luc)標的細胞を使用して分析した。そのため、指示されている濃度のカルボプラチン、ゲムシタビン、パクリタキセル、ドキソルビシンまたはトポテカンで細胞を4日間処置した。処置後、細胞増殖抑制性薬剤不在下で細胞をさらに3日間(A~D)および10日間(E~J)、それぞれ増殖させた。対照細胞は細胞増殖抑制性薬剤なしで培養した。(A、C、E、G、I)ADCC実験を、健常ドナーからのPBMCを約40:1のエフェクター(PBMC)対標的細胞比で使用してIMAB027(黒色の線)またはアイソタイプ対照抗体(灰色の線)で実施した。データ点(n=4複製物)は平均±SDとして表している。(B、D、F、H、J)IMAB027を使用してCLDN6の発現をフローサイトメトリによって分析した。黒色の点線は未処置細胞におけるCLDN6発現、灰色の中実ヒストグラムは処置後のCLDN6発現を表す。
図16】非常に進行した異種移植腫瘍モデルにおけるPEB処置と組み合わせたIMAB027の抗腫瘍作用。 ヌードマウスにおいて皮下ヒトNEC14異種移植腫瘍を非常に進行した病期まで増殖させた。PEB(シスプラチン、エトポシドおよびブレオマイシン)ならびにIMAB027での腫瘍治療を13日目に開始した。PEBレジメンを受けるマウスを13、14、15、16および17日目に1mg/kgシスプラチンおよび5mg/kgエトポシドで、ならびに13、17および21日目にi.p.注射によって10mg/kgブレオマイシンで処置した。抗体IMAB027を、移植後13日目から101日目まで35mg/kgの交互のi.v./i.p./i.p.注射によって週に3回投与した。ビヒクル対照群には、その代わりに0.9%NaCl溶液および薬剤物質緩衝液を与えた。マウスを合計220日間観測した。(A)、(B)未処置マウスおよびIMAB027、PEBまたはIMAB027と組み合わせたPEBで処置したマウスの平均腫瘍増殖動態(±SEM)。矢印は療法開始の時点を示す(ダンの多重比較検定:***、p<0.001)。(C)未処置マウスおよびIMAB027、PEBまたはIMAB027と組み合わせたPEBで処置したマウスの生存率曲線(マンテル・コックス検定:、p<0.05;**、p<0.01)。群サイズ:n=14。
図17】IMAB027、IMAB027-DM1およびIMAB027-vcMMAEの相対的結合親和性および細胞傷害性。 (A)IMAB027、IMAB027-DM1およびIMAB027-vcMMAEの結合を、内因性にCLDN6を発現するOV90細胞に関してフローサイトメトリ分析によって測定した。(B)OV90細胞生存能のIMAB027-DM1およびIMAB027-vcMMAE媒介性低下の用量反応曲線。腫瘍細胞をIMAB027-DM1またはIMAB027-vcMMAEと共に72時間インキュベートした。XTTに基づく生存能アッセイを用いて細胞生存能の低下を測定した。データ点(n=3複製物)は平均±SDとして表している。MFI:平均蛍光強度。
図18】進行した異種移植腫瘍へのIMAB027-DM1コンジュゲートの抗腫瘍作用。 確立された皮下ヒトOV90異種移植腫瘍を担持するヌードマウスを、移植後10日目に1.78、5.33または16mg/kg IMAB027-DM1またはビヒクル対照の単回静脈内注射で処置した。皮下腫瘍の大きさを週に2回測定した(平均±SEM)。群サイズ:n=5、:p<0.05;**:p<0.01。
図19A】(図19)進行したOV90異種移植腫瘍に関するIMAB027-DM1およびIMAB027-vcMMAEコンジュゲートの用量範囲設定。 確立された皮下ヒトOV90異種移植腫瘍を有するヌードマウスを、移植後10日目にIMAB027-DM1、IMAB027-vcMMAE、ビヒクルの単回静脈内注射またはIMAB027の反復注射で処置した。(図19A)ビヒクル対照およびIMAB027(35mg/kg、週1回のi.v./i.p./i.p.)と比較した1.33、2.67もしくは5.33mg/kg IMAB027-DM1 i.v.(上)または4、8もしくは16mg/kg IMAB027-vcMMAE i.v.(下)で処置したマウスの腫瘍増殖。皮下腫瘍の大きさを週に2回測定した(平均±SEM)。
図19B】ビヒクルまたは4、8もしくは16mg/kg IMAB027-vcMMAEで処置したマウスのカプラン・マイヤー生存率曲線。腫瘍が1400mmの体積に達したときまたは腫瘍が潰瘍性になった場合、マウスを犠死させた。群サイズ:n=10、:p<0.05;**:p<0.01、***:p<0.001。
図20】進行したPA-1異種移植腫瘍に関するIMAB027-vcMMAEコンジュゲートの用量範囲設定。 確立された皮下ヒトPA-1異種移植腫瘍を有するヌードマウスを、移植後15日目にIMAB027-vcMMAE、ビヒクル対照の単回静脈内注射またはIMAB027の反復注射で処置した。(A)平均腫瘍増殖(平均±SEM)および(B)ビヒクル対照、IMAB027(35mg/kg、週1回のi.v./i.p./i.p.)または4、8もしくは16mg/kg IMAB027-vcMMAEで処置したマウスのカプラン・マイヤー生存率曲線。腫瘍が1400mmの体積に達したときまたは腫瘍が潰瘍性になった場合、マウスを犠死させた。群サイズ:n=8、:p<0.05;**:p<0.01。(C)移植後種々の時点でのPA-1異種移植腫瘍切片内のCLDN6に対する代表的な免疫組織化学染色。
図21】進行したMKN74異種移植腫瘍へのIMAB027-vcMMAEの抗腫瘍作用。 確立された皮下ヒトMKN74異種移植腫瘍を有するヌードマウスを、移植後7日目に16mg/kg IMAB027-vcMMAEまたはビヒクル対照の静脈内注射で処置した。(A)平均腫瘍増殖(平均±SEM)および(B)ビヒクル対照またはIMAB027-vcMMAEで処置したマウスのカプラン・マイヤー生存率曲線。腫瘍が1400mmの体積に達したときまたは腫瘍が潰瘍性になった場合、マウスを犠死させた。群サイズ:n=10。(C)移植前のMKN74腫瘍細胞でのCLDN6発現のフローサイトメトリ分析および移植後31日目の処置していないMKN74異種移植腫瘍の代表的な免疫組織化学染色。**:p<0.01、***:p<0.001。
図22】進行した腹腔内転移性ヒト卵巣腫瘍へのIMAB027-DM1およびIMAB027-vcMMAEの抗腫瘍作用。 ヌードマウスに、ルシフェラーゼを異所性に発現するヒト卵巣癌細胞株PA-1(Luc)を腹腔内移植した。腹腔内転移性異種移植腫瘍の形成後、動物を移植後14日目にi.p.注射によって16mg/kg IMAB027-DM1、IMAB027-vcMMAEまたはビヒクル対照で処置した。ルシフェリン投与後、IVIS Lumina Imaging Systemを使用してルミネセンス活性によって転移の成長を測定した。(A)IMAB027-DM1、IMAB027-vcMMAEまたはビヒクルで処置したマウスの転移量の定量化。(B)移植後28日目のヌードマウスのインビボ全身ルミネセンス画像。群サイズ:n=8(ビヒクル)またはn=9(IMAB027-DM1、IMAB027-vcMMAE)、**:p<0.01、****:p<0.0001。
図23A】(図23)ヒト癌細胞によるCLDN6結合抗体のエンドサイトーシス。 CLDN6結合IMAB027、chimAB5F2D2またはアイソタイプ対照抗体のエンドサイトーシスを、標的結合抗体とサポリン結合抗ヒトIgG Fabフラグメント(FabZap)の共インターナリゼーションに依存する細胞傷害性ベースのアッセイを用いて測定した。PA-1、OV90またはNEC14ヒト癌細胞をIMAB027、chimAB5F2D2またはアイソタイプ対照抗体および抗ヒトFabZapと共に72時間インキュベートした。(図23A)それぞれ、PA-1、OV90およびNEC14細胞生存能のIMAB027/FabZapおよびchimAB5F2D2/FabZap媒介性低下の用量反応曲線。データ点(n=3複製物)は平均±SDとして表している。
図23B】フローサイトメトリ結合およびエンドサイトーシスのIMAB027基準化EC50(rel EC50)および最大値(rel maximum)の比較。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明を以下で詳細に説明するが、本発明は本明細書で述べる特定の方法、プロトコルおよび試薬に限定されず、これらは異なり得ることが理解されるべきである。また、本明細書で使用される用語は特定の実施形態を説明することだけを目的とし、本発明の範囲を限定することを意図されず、本発明の範囲は付属の特許請求の範囲によってのみ限定されることも理解されるべきである。特に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術および学術用語は、当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0046】
以下において、本発明の要素を説明する。これらの要素を具体的な実施形態と共に列挙するが、これらは付加的な実施形態を創製するために任意の方法および任意の数で組み合わせてもよいことが理解されるべきである。様々に説明される例および好ましい実施形態は、本発明を明白に記述される実施形態だけに限定すると解釈されるべきではない。この説明は、明白に記述される実施形態を多くの開示される要素および/または好ましい要素と組み合わせた実施形態を支持し、包含すると理解されるべきである。さらに、本出願において記述されるすべての要素の任意の並び替えおよび組合せは、文脈上特に指示されない限り、本出願の説明によって開示されるとみなされるべきである。
【0047】
好ましくは、本明細書で使用される用語は、"A multilingual glossary of biotechnological terms: (IUPAC Recommendations)",H.G.W.Leuenberger,B.Nagel,and H.Kolbl,Eds.,Helvetica Chimica Acta,CH-4010 Basel,Switzerland,(1995)に記載されているように定義される。
【0048】
本発明の実施は、特に指示されない限り、当分野の文献(例えばMolecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Edition,J.Sambrook et al.eds.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor 1989参照)中で説明される化学、生化学、細胞生物学、免疫学および組換えDNA技術の従来の方法を用いる。
【0049】
本明細書および以下の特許請求の範囲全体を通じて、文脈上特に要求されない限り、「含む」という語および「含むこと」などの変形は、記述される成員、整数もしくは工程または成員、整数もしくは工程の群の包含を意味するが、いかなる他の成員、整数もしくは工程または成員、整数もしくは工程の群の排除も意味しないと理解され、しかし一部の実施形態では、そのような他の成員、整数もしくは工程または成員、整数もしくは工程の群が排除され得る、すなわち主題が記述される成員、整数もしくは工程または成員、整数もしくは工程の群の包含に存する。本発明を説明することに関連して(特に特許請求の範囲に関連して)使用される「1つの」および「その」という用語および同様の言及は、本明細書で特に指示されない限りまたは文脈と明らかに矛盾しない限り、単数および複数の両方を包含すると解釈されるべきである。本明細書中の値の範囲の列挙は、単にその範囲内に属する各々別々の値を個別に言及することの簡略化された方法であることが意図されている。本明細書で特に指示されない限り、各個別の値は本明細書で個別に列挙されているかのごとくに本明細書に組み込まれる。本明細書で述べるすべての方法は、本明細書で特に指示されない限りまたは文脈と明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施することができる。本明細書で提供されるありとあらゆる例または例示的言語(例えば「など」)の使用は、単に本発明をよりよく説明することを意図しており、本発明、または特許請求の範囲に限定を課すものではない。本明細書中のいかなる言語も、特許請求されない要素が本発明の実施に必須であると指示すると解釈されるべきではない。
【0050】
本明細書の本文全体を通じていくつかの資料を引用する。本明細書で引用される資料(すべての特許、特許出願、学術出版物、製造者の仕様書、指示書等を含む)の各々は、上記または下記のいずれでも、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書のいかなる内容も、本発明が先行発明のためにそのような開示に先行する権利を有さないことの承認と解釈されるべきではない。
【0051】
クローディンは密着結合の最も重要な成分であるタンパク質のファミリーであり、密着結合においてクローディンは上皮の細胞の間の細胞間隙中の分子の流れを制御する傍細胞バリアを確立する。クローディンは膜を4回横切る膜貫通タンパク質であり、N末端およびC末端の両方が細胞質に位置する。EC1またはECL1と称される第一細胞外ループは平均で53アミノ酸から成り、EC2またはECL2と称される第二細胞外ループは約24アミノ酸から成る。CLDN6などのクローディンファミリーの細胞表面タンパク質は様々な起源の腫瘍で発現され、それらの選択的発現(毒性に関連する正常組織では発現されない)および形質膜への局在のゆえに抗体媒介性癌免疫療法に関連する標的構造体として特に適する。
【0052】
CLDN6は腫瘍組織において特異的に発現されると同定されており、CLDN6を発現する唯一の正常組織は胎盤であり、胎盤では低い量のCLDN6がRNAレベルで検出される。CLDN6は、例えば卵巣癌、肺癌、胃癌、乳癌、肝癌、膵癌、皮膚癌、黒色腫、頭頸部癌、肉腫、胆管癌、腎細胞癌および膀胱癌で発現されることが認められている。
【0053】
本発明の様々な実施形態において、CLDN6発現に関連する癌疾患には、卵巣癌、特に卵巣腺癌および卵巣奇形癌、小細胞肺癌癌(SCLS)および非小細胞肺癌(NSCLC)を含む肺癌、特に肺扁平上皮癌および腺癌、胃癌、乳癌、肝癌、膵癌、皮膚癌、特に基底細胞癌および扁平上皮癌、悪性黒色腫、頭頸部癌、特に悪性多形腺腫、肉腫、特に滑膜肉腫および癌肉腫、胆管癌、膀胱の癌、特に移行上皮癌および乳頭状癌、腎癌、特に腎明細胞癌および乳頭状腎細胞癌を含む腎細胞癌、結腸癌、回腸の癌を含む小腸癌、特に小腸腺癌および回腸の腺癌、精巣胎生期癌、胎盤絨毛癌、子宮頸癌、精巣癌、特に精巣セミノーマ、精巣奇形腫および胎生期精巣癌、子宮癌、奇形癌または胎生期癌などの生殖細胞腫瘍、特に精巣の生殖細胞腫瘍、ならびにそれらの転移形態が含まれる。1つの実施形態では、CLDN6発現に関連する癌疾患は、卵巣癌、肺癌、転移性卵巣癌および転移性肺癌から成る群より選択される。好ましくは、卵巣癌は癌腫または腺癌である。好ましくは、肺癌は癌腫または腺癌であり、好ましくは細気管支癌腫または細気管支腺癌などの細気管支癌である。
【0054】
本明細書で使用される「CLDN」という用語はクローディンを意味し、CLDN6を包含する。好ましくは、クローディンはヒトクローディンである。
【0055】
「CLDN6」という用語は、好ましくはヒトCLDN6、特に配列表の配列番号:1もしくは配列番号:2のアミノ酸配列または前記アミノ酸配列の変異体を含む、好ましくはそれから成るタンパク質に関する。CLDN6の第一細胞外ループは、好ましくは配列番号:1に示すアミノ酸配列または配列番号:2に示すアミノ酸配列のアミノ酸28~80、より好ましくはアミノ酸28~76を含む。CLDN6の第二細胞外ループは、好ましくは配列番号:1に示すアミノ酸配列または配列番号:2に示すアミノ酸配列のアミノ酸138~160、好ましくはアミノ酸141~159、より好ましくはアミノ酸145~157を含む。前記第一および第二細胞外ループは、好ましくはCLDN6の細胞外部分を形成する。
【0056】
本発明による「変異体」という用語は、特に、突然変異体、スプライス変異体、立体配座変異体、アイソフォーム、対立遺伝子変異体、種変異体および種ホモログ、特に天然に存在するものを指す。対立遺伝子変異体は、遺伝子の正常な配列中の変化に関するが、その重要性はしばしば不明確である。完全な遺伝子配列決定は、しばしば所与の遺伝子について数多くの対立遺伝子変異体を同定する。種ホモログは、所与の核酸配列またはアミノ酸配列のものとは異なる種を起源とする核酸配列またはアミノ酸配列である。「変異体」という用語は、任意の翻訳後修飾変異体および立体配座変異体を包含する。
【0057】
本発明によれば、「クローディン陽性癌」という用語または同様の用語は、クローディンを発現する癌細胞、好ましくは前記癌細胞の表面にクローディンを発現する癌細胞を含む癌を意味する。CLDN6が細胞の表面に位置し、細胞に添加されたCLDN6特異的抗体による結合にアクセス可能である場合、CLDN6は細胞の表面に発現している。
【0058】
「細胞表面」は、当分野におけるその通常の意味に従って使用され、したがってタンパク質および他の分子による結合にアクセス可能である細胞の外側を含む。例えば、1またはそれ以上の細胞外部分を有する膜貫通タンパク質は、細胞表面に発現されているとみなされる。
【0059】
本発明に関連して「細胞外部分」という用語は、細胞の細胞外空間に面しており、および好ましくは、例えば細胞の外側に位置する抗体などの抗原結合分子によって、前記細胞の外側からアクセス可能であるタンパク質などの分子の一部を指す。好ましくは、この用語は1つまたはそれ以上の細胞外ループまたはそのドメインもしくはフラグメントを指す。
【0060】
「パート」または「フラグメント」という用語は、本明細書では交換可能に使用され、連続する要素を指す。例えば、アミノ酸配列またはタンパク質などの構造体の1つのパートは、前記構造体の1つの連続する要素を指す。構造体の部分、パートまたはフラグメントは、好ましくは前記構造体の1つまたはそれ以上の機能的特性を含む。例えば、エピトープまたはペプチドの部分、パートまたはフラグメントは、好ましくはそれが由来するエピトープまたはペプチドと免疫学的に等価である。タンパク質配列のパートまたはフラグメントは、好ましくはタンパク質配列の少なくとも6、特に少なくとも8、少なくとも10、少なくとも12、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも50または少なくとも100個の連続するアミノ酸の配列を含む。
【0061】
本発明によれば、CLDN6は、発現のレベルが胎盤細胞または胎盤組織中の発現に比べてより低い場合、細胞中で実質的に発現されない。好ましくは、発現のレベルは胎盤細胞または胎盤組織中の発現の10%未満、好ましくは5%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%もしくは0.05%未満であるかまたはさらに一層低い。好ましくは、CLDN6は、その発現レベルが胎盤以外の非癌性組織中の発現のレベルをせいぜい2倍だけ、好ましくは1.5倍だけ上回る場合、および好ましくは前記非癌性組織中の発現のレベルを上回らない場合、細胞中で実質的に発現されない。好ましくは、CLDN6は、発現のレベルが検出限界より低い場合および/または発現のレベルが、細胞に添加されたCLDN6特異的抗体による結合を許容しないほど低い場合、細胞中で実質的に発現されない。
【0062】
本発明によれば、CLDN6は、その発現レベルが胎盤以外の非癌性組織中の発現のレベルを2倍以上、好ましくは10倍、100倍、1000倍または10000倍以上上回る場合、細胞中で発現される。好ましくは、CLDN6は、発現のレベルが検出限界より高い場合および/または発現のレベルが、細胞に添加されたCLDN6特異的抗体による結合を可能にするのに十分なだけ高い場合、細胞中で発現される。好ましくは、細胞中で発現されるCLDN6は、前記細胞の表面で発現されるまたは暴露される。
【0063】
CLDN6発現は胎盤においてのみmRNAとして検出可能であるが、タンパク質は全く検出不能であることが認められている。したがって、胎盤中のCLDN6発現に関して本明細書で為される記述は、好ましくはmRNAの発現に関する。
【0064】
本発明によれば、「疾患」という用語は、癌、特に本明細書で述べる癌の形態を含む、任意の病的状態を指す。癌または癌の特定の形態への本明細書での言及は、その癌転移も包含する。好ましい実施形態では、本出願に従って治療されるべき疾患は、CLDN6を発現する細胞、特にCLDN6を発現する癌幹細胞を含む。
【0065】
「CLDN6を発現する細胞に関連する疾患」または同様の表現は、本発明によればCLDN6が疾患組織または器官の細胞において発現されることを意味する。1つの実施形態では、罹患組織または器官の細胞におけるCLDN6の発現は、健常組織または器官における状態と比較して増大している。増大とは、少なくとも10%、特に少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも500%、少なくとも1000%、少なくとも10000%またはさらにそれ以上の増大を指す。1つの実施形態では、発現は罹患組織においてのみ認められ、対応する健常組織での発現は抑制されている。本発明によれば、CLDN6を発現する細胞に関連する疾患には癌疾患が含まれる。さらに、本発明によれば、癌疾患は、好ましくは癌細胞がCLDN6を発現するものである。
【0066】
本明細書で使用される場合、「癌疾患」または「癌」は、異常調節された細胞成長、増殖、分化、接着および/または移動を特徴とする疾患を包含する。「癌細胞」とは、急速で制御不能の細胞増殖によって成長し、新たな成長を開始させた刺激が停止した後も成長し続ける異常細胞を意味する。好ましくは、「癌疾患」は、CLDN6を発現する細胞、特にCLDN6を発現する癌幹細胞を特徴とする。
【0067】
本発明による「癌」という用語は、白血病、セミノーマ、黒色腫、奇形腫、リンパ腫、神経芽細胞腫、神経膠腫、直腸癌、子宮内膜癌、腎癌、副腎癌、甲状腺癌、血液の癌、皮膚癌、脳の癌、子宮頸癌、腸癌、肝癌、結腸癌、胃癌、腸癌、頭頸部癌、胃腸の癌、リンパ節癌、食道癌、結腸直腸癌、膵癌、耳、鼻および咽喉(ENT)癌、乳癌、前立腺癌、子宮癌、卵巣癌および肺癌ならびにそれらの転移を含む。それらの例は、肺癌腫、乳癌腫、前立腺癌腫、結腸癌腫、腎細胞癌腫、子宮頸癌腫、または上述した癌型もしくは腫瘍の転移である。本発明による癌という用語は癌転移も含む。
【0068】
本発明によれば、「癌腫」は、上皮細胞に由来する悪性腫瘍である。この群は、一般的な形態の乳癌、前立腺癌、肺癌および結腸癌を含む、最も一般的な癌である。
【0069】
「腺癌」は、腺組織から発生する癌である。この組織は、上皮組織として知られるより大きな組織カテゴリーの一部でもある。上皮組織には、皮膚、腺ならびに身体の腔および器官を裏打ちする様々な他の組織が含まれる。上皮は発生学的に外胚葉、内胚葉および中胚葉に由来する。腺癌として分類されるために、細胞は、分泌特性を有する限り、必ずしも腺の一部である必要はない。この形態の癌腫は、ヒトを含む一部の高等哺乳動物において発生し得る。高分化型腺癌はそれらが由来する腺組織に類似する傾向があるが、低分化型はその傾向がない場合もある。生検からの細胞を染色することにより、病理学者は腫瘍が腺癌であるかまたは何らかの他の種類の癌であるかを決定する。腺癌は、体内での腺の遍在性のために身体の多くの組織で発生し得る。各々の腺が同じ物質を分泌しているとは限らないが、細胞への外分泌機能が存在する限り、腺とみなされ、それゆえその悪性形態は腺癌と命名される。悪性腺癌は他の組織に浸潤し、転移するのに十分な時間があればしばしば転移する。卵巣腺癌は最も一般的な種類の卵巣癌腫である。卵巣腺癌には、漿液性および粘液性腺癌、明細胞腺癌および類内膜腺癌が含まれる。
【0070】
「転移」とは、そのもとの部位から身体の別の部分への癌細胞の拡大を意味する。転移の形成は非常に複雑な過程であり、原発性腫瘍からの悪性細胞の分離、細胞外マトリックスの侵襲、体腔および脈管に侵入するための内皮基底膜の貫入、そして次に、血液によって運ばれた後、標的器官の浸潤に依存する。最後に、標的部位での新たな腫瘍の成長は血管新生に依存する。腫瘍転移はしばしば原発性腫瘍の除去後でも起こり、これは、腫瘍細胞または成分が残存し、転移能を発現し得るからである。1つの実施形態では、本発明による「転移」という用語は、原発性腫瘍および所属リンパ節系から遠く離れた転移に関連する「遠隔転移」に関する。1つの実施形態では、本発明による「転移」という用語はリンパ節転移に関する。
【0071】
難治性癌は、特定の治療が無効である悪性疾患であり、最初から治療に不応性であるかまたは経時的に不応性となる。「難治性」、「不応性」または「抵抗性」という用語は、本明細書では交換可能に使用される。
【0072】
本明細書で使用される場合、「癌幹細胞」という用語は、高度増殖性癌細胞の前駆体であり得る細胞を指す。癌幹細胞は、免疫無防備状態マウスにおいて腫瘍を形成するその能力によって実証されるように腫瘍を再成長させる能力を有する。癌幹細胞はまた、典型的には腫瘍のバルクに比べて緩やかに増殖し、すなわち癌幹細胞は一般に静止状態にある。すべてではないが、一部の実施形態では、癌幹細胞は腫瘍の約0.1~10%などのごく一部分であり得る。癌幹細胞は以下の特徴または特性の1つまたはそれ以上または全部を有し得る:(i)腫瘍を引き起こすおよび/または腫瘍成長を持続させる能力を備え得る、(ii)一般に腫瘍のバルクよりも比較的変異することが少ないと考えられる(例えばより緩やかな増殖およびしたがってより少ないDNA複製依存性エラー、改善されたDNA修復、ならびに/またはそれらの悪性度に寄与するエピジェネティック/非変異促進性変化に起因して)、(iii)正常幹細胞(1または複数)の多くの特徴を有することができ(例えば正常幹細胞に特徴的な、類似の細胞表面抗原および/または細胞内発現プロフィール、自己複製プログラム、多剤耐性、未熟な表現型等)、正常幹細胞(1または複数)に由来し得る、(iv)転移源であり得る、(v)緩やかに増殖しているかまたは静止状態にあり得る、(vi)腫瘍形成性であり得る(例えばNOD/SCID移植実験によって測定されるように)、(vii)伝統的な療法に比較的耐性(すなわち化学療法耐性)であり得る、ならびに(viii)腫瘍の亜集団を含み得る(例えば腫瘍バルクと比べて)。
【0073】
「治療する」とは、被験体において腫瘍の大きさもしくは腫瘍の数を低減することを含む、疾患を予防するもしくは排除するため、被験体において疾患を停止させるもしくは疾患の進行を遅らせるため、被験体において新たな疾患の発症を阻止するもしくは遅らせるため、現在疾患を有しているもしくは以前に疾患を有していたことがある被験体において症状および/もしくは再発の頻度もしくは重症度を低下させるため、ならびに/または被験体の生存期間を延長させる、すなわち増大もしくは拡大させるために、化合物または組成物または化合物もしくは組成物の組合せなどの治療を被験体に投与することを意味する。特に、「疾患の治療」という用語は、疾患またはその症状を治癒する、期間を短縮する、改善する、予防する、進行もしくは悪化を減速させるもしくは阻止する、または発症を予防するもしくは遅延させることを包含する。
【0074】
本発明に関連して、「保護する」または「予防する」などの用語は、被験体における疾患の発生および/または伝播の予防または治療またはその両方ならびに、特に、被験体が疾患を発症する可能性を最小限に抑えるまたは疾患の発症を遅延させることに関する。例えば、癌の危険性がある被験体は、癌を予防するための療法の候補である。
【0075】
「危険性がある」とは、一般集団と比較して、疾患、特に癌を発症する可能性が通常より高いと同定される被験体を意味する。加えて、疾患、特に癌を有していたことがあるまたは現在有している被験体は、そのような被験体は引き続き疾患を発症する可能性があるので、疾患を発症する危険性が高い被験体である。現在癌を有しているまたは癌を有していたことがある被験体は、癌転移の危険性も高い。
【0076】
「患者」という用語は、本発明によれば、ヒト、非ヒト霊長動物または別の動物、特に哺乳動物、例えばウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコまたはマウスおよびラットなどのげっ歯動物を含む、治療のための被験体、特に罹患被験体を意味する。特に好ましい実施形態では、患者はヒトである。
【0077】
本明細書で使用される場合、療法の投与に関連して「併用」という用語は、1つより多い療法または治療薬の使用を指す。「組み合わせて」という用語の使用は、療法または治療薬を被験体に投与する順序を限定しない。療法または治療薬は、2番目の療法または治療薬の被験体への投与の前、投与と同時または投与後に投与することができる。好ましくは、療法または治療薬を、療法または治療薬が一緒に作用することができるような順序、量および/または時間間隔内で被験体に投与する。特定の実施形態では、療法または治療薬を、それらを別の方法で、特に互いに独立して投与した場合よりも高い利益を提供するような順序、量および/または時間間隔内で被験体に投与する。好ましくは、高い利益は相乗効果である。
【0078】
「標的細胞」は、癌細胞、特に癌幹細胞などの任意の望ましくない細胞を意味する。好ましい実施形態では、標的細胞はCLDN6を発現する。
【0079】
本発明によれば、「化学療法」という用語は、1つまたはそれ以上の化学療法剤または化学療法剤の併用、例えば細胞増殖抑制性薬剤または細胞傷害性薬剤での治療に関する。本発明による化学療法剤には、細胞増殖抑制性化合物および細胞傷害性化合物が含まれる。
【0080】
本発明によれば、「化学療法剤」という用語は、パクリタキセルおよびドセタキセルなどのタキサン類ならびにシスプラチンおよびカルボプラチンなどの白金化合物、ならびにそれらの組合せを包含する。好ましい組合せは、特に卵巣癌の治療に関して、タキサンと白金化合物の組合せ、例えばパクリタキセルとカルボプラチンの組合せを含み得る。さらなる好ましい組合せは、特に卵巣癌、特に卵巣生殖細胞腫瘍の治療に関して、ならびに/または生殖細胞腫瘍、特に卵巣および精巣生殖細胞腫瘍の治療に関して、シスプラチンなどの白金化合物とエトポシドおよび/またはブレオマイシンとの組合せを含み得る。本発明によれば、化学療法剤への言及は、エステルなどの任意のプロドラッグ、塩または前記作用物質のコンジュゲートなどの誘導体を包含するものとする。例は、前記作用物質と担体物質、例えばアルブミン結合パクリタキセルなどのタンパク質結合パクリタキセルとのコンジュゲートである。好ましくは、前記作用物質の塩は医薬的に許容される。
【0081】
タキサン類は、最初にイチイ属(genus Taxus)の植物などの天然源から誘導されたジテルペン化合物のクラスであるが、一部は人工的に合成されている。タキサンクラスの薬剤の主たる作用機構は微小管機能の破壊であり、それにより細胞分裂の過程を阻害する。タキサン類にはドセタキセル(Taxotere)およびパクリタキセル(Taxol)が含まれる。
【0082】
本発明によれば、「ドセタキセル」という用語は、以下の式:
【化1】
を有する化合物を指す。
【0083】
特に、「ドセタキセル」という用語は、化合物、1,7β,10β-トリヒドロキシ-9-オキソ-5β,20-エポキシタキス-11-エン-2α,4,13α-トリチル4-アセテート2-ベンゾエート13-{(2R,3S)-3-[(tert-ブトキシカルボニル)-アミノ]-2-ヒドロキシ-3-フェニルプロパノエート}を指す。
【0084】
本発明によれば、「パクリタキセル」という用語は、以下の式:
【化2】
を有する化合物を指す。
【0085】
特に、「パクリタキセル」という用語は、化合物、(2α,4α,5β,7β,10β,13α)-4,10-ビス-(アセチルオキシ)-13-{[(2R,3S)-3-(ベンゾイルアミノ)-2-ヒドロキシ-3-フェニルプロパノイル]オキシ}-1,7-ジヒドロキシ-9-オキソ-5,20-エポキシタキス-11-エン-2-イルベンゾエートを指す。
【0086】
本発明によれば、「白金化合物」という用語は、白金錯体などのその構造中に白金を含有する化合物を指し、シスプラチン、カルボプラチンおよびオキサリプラチンなどの化合物を包含する。
【0087】
「シスプラチン」または「シスプラチナム」という用語は、以下の式:
【化3】
の化合物、シス-ジアンミンジクロロ白金(II)(CDDP)を指す。
【0088】
「カルボプラチン」という用語は、以下の式:
【化4】
の化合物、シス-ジアンミン(1,1-シクロブタンジカルボキシラト)白金(II)を指す。
【0089】
「オキサリプラチン」という用語は、以下の式:
【化5】
のジアミノシクロヘキサン担体配位子に錯化した白金化合物である化合物を指す。
【0090】
特に、「オキサリプラチン」という用語は、化合物、[(1R,2R)-シクロヘキサン-1,2-ジアミン](エタンジオアト-O,O')白金(II)を指す。注射用のオキサリプラチンも、Eloxatineの商品名で市販されている。
【0091】
単独でまたはタキサン類もしくは白金化合物などの他の化学療法剤と組み合わせて、本発明における使用のために想定されるさらなる化学療法剤には、ヌクレオシド類似体、カンプトテシン類似体およびアントラサイクリンが含まれるが、これらに限定されない。
【0092】
「ヌクレオシド類似体」という用語は、プリン類似体およびピリミジン類似体の両方を包含するカテゴリーである、ヌクレオシドの構造類似体を指す。
【0093】
「ゲムシタビン」という用語は、以下の式:
【化6】
のヌクレオシド類似体である化合物である。
【0094】
特に、この用語は、化合物、4-アミノ-1-(2-デオキシ-2,2-ジフルオロ-β-D-エリスロ-ペントフラノシル)ピリミジン-2(1H)-オンまたは4-アミノ-1-[(2R,4R,5R)-3,3-ジフルオロ-4-ヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)オキソラン-2-イル]-1,2-ジヒドロピリミジン-2-オンを指す。
【0095】
「ヌクレオシド類似体」という用語は、フルオロウラシルおよびそのプロドラッグなどのフルオロピリミジン誘導体を包含する。「フルオロウラシル」または「5-フルオロウラシル」(5-FUまたはf5U)(Adrucil、Carac、Efudix、EfudexおよびFluoroplexの商標名で市販されている)という用語は、以下の式:
【化7】
のピリミジン類似体である化合物である。
【0096】
特に、この用語は、化合物、5-フルオロ-1H-ピリミジン-2,4-ジオンを指す。
【0097】
「カペシタビン」(Xeloda、Roche)という用語は、組織中で5-FUに変換されるプロドラッグである化学療法剤を指す。経口投与し得るカペシタビンは、以下の式:
【化8】
を有する。
【0098】
特に、この用語は、化合物、ペンチル[1-(3,4-ジヒドロキシ-5-メチルテトラヒドロフラン-2-イル)-5-フルオロ-2-オキソ-1H-ピリミジン-4-イル]カルバメートを指す。
【0099】
「フォリン酸」または「ロイコボリン」という用語は、化学療法剤5-フルオロウラシルとの相乗作用的組合せにおいて有用な化合物を指す。したがって、本明細書で5-フルオロウラシルまたはそのプロドラッグの投与に言及する場合、1つの実施形態では前記投与はフォリン酸と併用した投与を含み得る。フォリン酸は、以下の式:
【化9】
を有する。
【0100】
特に、この用語は、化合物、(2S)-2-{[4-[(2-アミノ-5-ホルミル-4-オキソ-5,6,7,8-テトラヒドロ-1H-プテリジン-6-イル)メチルアミノ]ベンゾイル]アミノ}ペンタン二酸を指す。
【0101】
本発明によれば、「カンプトテシン類似体」という用語は、化合物カンプトテシン(CPT;(S)-4-エチル-4-ヒドロキシ-1H-ピラノ[3',4':6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-3,14-(4H,12H)-ジオン)の誘導体を指す。好ましくは、「カンプトテシン類似体」という用語は、以下の構造:
【化10】
を含む化合物を指す。
【0102】
本発明によれば、好ましいカンプトテシン類似体は、DNA酵素トポイソメラーゼI(トポI)の阻害剤である。本発明による好ましいカンプトテシン類似体は、イリノテカンおよびトポテカンである。
【0103】
イリノテカンは、トポイソメラーゼIの阻害によってDNAの巻戻しを防ぐ薬剤である。化学用語では、これは、以下の式:
【化11】
を有する天然アルカロイドカンプトテシンの半合成類似体である。
【0104】
特に、「イリノテカン」という用語は、化合物、(S)-4,11-ジエチル-3,4,12,14-テトラヒドロ-4-ヒドロキシ-3,14-ジオキソ1H-ピラノ[3',4':6,7]-インドリジノ[1,2-b]キノリン-9-イル-[1,4'-ビピペリジン]-1'-カルボキシレートを指す。
【0105】
トポテカンは、式:
【化12】
のトポイソメラーゼ阻害剤である。
【0106】
特に、「トポテカン」という用語は、化合物、(S)-10-[(ジメチルアミノ)メチル]-4-エチル-4,9-ジヒドロキシ-1H-ピラノ[3',4':6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-3,14(4H,12H)-ジオン一塩酸塩を指す。
【0107】
アントラサイクリンは、抗生物質でもある、癌化学療法において一般的に使用される薬剤のクラスである。構造的に、すべてのアントラサイクリンは共通の4環性7,8,9,10-テトラヒドロテトラセン-5,12-キノン構造を共有し、通常は特定部位でのグリコシル化を必要とする。
【0108】
アントラサイクリンは、好ましくは以下の作用機構の1つまたはそれ以上を生じさせる:1.DNA/RNA鎖の塩基対の間にインターカレートすることによってDNAおよびRNA合成を阻害し、したがって急速に増殖する癌細胞の複製を妨げる。2.トポイソメラーゼII酵素を阻害し、スーパーコイルDNAの弛緩を妨げ、したがってDNAの転写および複製をブロックする。3.DNAおよび細胞膜を損傷する鉄媒介性遊離酸素ラジカルを生成する。
【0109】
本発明によれば、「アントラサイクリン」という用語は、好ましくはトポイソメラーゼIIのDNAの再結合を阻害することによって、好ましくはアポトーシスを誘導するための作用物質、好ましくは抗癌剤に関する。
【0110】
アントラサイクリンおよびアントラサイクリン類似体の例には、ダウノルビシン(ダウノマイシン)、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、エピルビシン、イダルビシン、ロドマイシン、ピラルビシン、バルルビシン、N-トリフルオロ-アセチルドキソルビシン-14-バレレート、アクラシノマイシン、モルホリノドキソルビシン(モルホリノ-DOX)、シアノモルホリノ-ドキソルビシン(シアノモルホリノ-DOX)、2-ピロリノ-ドキソルビシン(2-PDOX)、5-イミノダウノマイシン、ミトキサントロンおよびアクラシノマイシンA(アクラルビシン)が含まれるが、これらに限定されない。ミトキサントロンはアントラセンジオンクラスの化合物の成員であり、前記クラスの化合物は、アントラサイクリンの糖部分を欠くが、DNAへのインターカレーションを許容する平面多環式芳香族環構造を保持するアントラサイクリン類似体である。
【0111】
本発明に関連してアントラサイクリンとして特に企図されるのはエピルビシンである。エピルビシンは、以下の式:
【化13】
を有するアントラサイクリン薬剤であり、米国ではEllenceの商品名で、および別のところではPharmorubicinまたはEpirubicin Ebeweの商品名で市販されている。特に、「エピルビシン」という用語は、化合物、(8R,10S)-10-[(2S,4S,5R,6S)-4-アミノ-5-ヒドロキシ-6-メチル-オキサン-2-イル]オキシ-6,11-ジヒドロキシ-8-(2-ヒドロキシアセチル)-1-メトキシ-8-メチル-9,10-ジヒドロ-7H-テトラセン-5,12-ジオンを指す。エピルビシンは、副作用を引き起こすことがより少ないと考えられるので、一部の化学療法レジメンでは、最も一般的なアントラサイクリンであるドキソルビシンよりも好ましい。
【0112】
「エトポシド」という用語は、抗腫瘍活性を示すポドフィロトキシンの半合成誘導体を指す。エトポシドは、トポイソメラーゼIIおよびDNAと複合体を形成することによってDNA合成を阻害する。この複合体は二重鎖DNAの切断を誘導し、トポイソメラーゼII結合によって修復を妨げる。蓄積されたDNAの切断は、細胞分裂の有糸分裂期に入るのを妨げ、細胞死をもたらす。エトポシドは、以下の式:
【化14】
を有する。
【0113】
特に、この用語は、化合物、4'-デメチル-エピポドフィロトキシン9-[4,6-O-(R)-エチリデン-β-D-グルコピラノシド],4'-(リン酸二水素)を指す。
【0114】
「ブレオマイシン」という用語は、細菌、ストレプトミセス・バーチシラス(Streptomyces verticillus)によって産生されるグリコペプチド抗生物質を指す。抗癌剤として使用される場合、これはDNAの切断を引き起こすことによって働く。ブレオマイシンは、好ましくは以下の式:
【化15】
を有する化合物を含有する。
【0115】
本発明によれば、CLDN6に結合する能力を有する抗体(少なくとも1つの毒素薬剤成分とのコンジュゲート中に、すなわち抗体薬剤コンジュゲートとして存在してもよい)と組み合わせて化学療法を投与する場合、化学療法を抗体の投与の前および/または投与と同時に(混合物としてまたは別々の組成物として)投与する。好ましくは、化学療法の投与は抗体の投与に先立って開始する。好ましくは、化学療法は、癌幹細胞などの癌細胞におけるCLDN6発現を増大させ、抗体の抗腫瘍活性が増強されるように抗体の投与の前に開始されるまたは投与される。好ましくは、化学療法の投与は、抗体の1回目の投与の少なくとも2日前、少なくとも4日前、少なくとも6日前、少なくとも8日前、少なくとも10日前、少なくとも12日前または少なくとも14日前に開始する。化学療法の投与は、抗体の投与の間継続し得るかまたは抗体の投与の前もしくは投与の間に、例えば抗体の投与の1~3日前、1~7日前、1~10日前、1~14日前に停止し得る。好ましくは、化学療法剤は、パクリタキセルもしくはドセタキセルなどのタキサン類および/またはシスプラチンもしくはカルボプラチンなどの白金化合物を含む。
【0116】
「抗原」という用語は、免疫応答が向けられるおよび/または向けられるべきであるエピトープを含有するタンパク質またはペプチドなどの作用物質に関する。好ましい実施形態では、抗原は、CLDN6などの腫瘍関連抗原、すなわち細胞質、細胞表面および細胞核に由来し得る癌細胞の成分、特に、細胞内でまたは癌細胞上の表面抗原として、好ましくは大量に、産生される抗原である。
【0117】
本発明に関連して、「腫瘍関連抗原」または「腫瘍抗原」という用語は、好ましくは、正常条件下では限られた数の組織および/もしくは器官においてまたは特定の発生段階で特異的に発現され、ならびに1つまたはそれ以上の腫瘍または癌組織中で発現されるまたは異常発現されるタンパク質に関する。本発明に関連して、腫瘍関連抗原は、好ましくは癌細胞の細胞表面に関連し、好ましくは正常組織中では全く発現されないかまたはまれにしか発現されない。
【0118】
「エピトープ」という用語は、分子中の抗原決定基、すなわち免疫系によって認識される、例えば抗体によって認識される分子中のパートを指す。例えば、エピトープは、免疫系によって認識される、抗原上の個別の三次元部位である。エピトープは通常、アミノ酸または糖側鎖などの分子の化学的に活性な表面基群から成り、通常は特定の三次元構造特性ならびに特定の電荷特性を有する。立体配座エピトープと非立体配座エピトープは、変性溶媒の存在下で前者への結合は失われるが後者への結合は失われないという点で区別される。CLDN6などのタンパク質のエピトープは、好ましくは前記タンパク質の連続部分または不連続部分を含み、好ましくは5~100、好ましくは5~50、より好ましくは8~30、最も好ましくは10~25アミノ酸長であり、例えばエピトープは、好ましくは8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24または25アミノ酸長であり得る。
【0119】
「抗体」という用語は、ジスルフィド結合によって相互に連結された少なくとも2本の重(H)鎖と2本の軽(L)鎖を含む糖タンパク質、およびそのような糖タンパク質の抗原結合部分を含む任意の分子を包含する。「抗体」という用語は、モノクローナル抗体、組換え抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、抗体のフラグメントまたは誘導体、例えば、限定されることなく、一本鎖抗体、例えばscFvならびにFabおよびFab'フラグメントなどの抗原結合抗体フラグメントを包含し、またすべての組換え形態の抗体、例えば原核生物において発現される抗体、非グリコシル化抗体、ならびに本明細書で述べる任意の抗原結合抗体フラグメントおよび誘導体も包含する。各々の重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではVHと略す)および重鎖定常領域から成る。各々の軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではVLと略す)および軽鎖定常領域から成る。VHおよびVL領域は、より保存された、フレームワーク領域(FR)と称される領域が間に組み入れられた、相補性決定領域(CDR)と称される超可変性の領域にさらに細分することができる。各々のVHとVLは、以下の順序でアミノ末端からカルボキシ末端へと配置された、3つのCDRと4つのFRから成る:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えばエフェクター細胞)および古典的補体系の第一成分(Clq)を含む、宿主組織または因子への免疫グロブリンの結合を媒介し得る。
【0120】
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」という用語は、単一分子組成の抗体分子の調製物を指す。モノクローナル抗体は単一結合特異性および親和性を示す。1つの実施形態では、モノクローナル抗体は、不死化細胞に融合した、非ヒト動物、例えばマウスから得られるB細胞を含むハイブリドーマによって産生される。
【0121】
「組換え抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、組換え手段によって作製される、発現される、創製されるまたは単離されるすべての抗体、例えば(a)免疫グロブリン遺伝子に関してトランスジェニックもしくはトランスクロモソーマルである動物(例えばマウス)またはそれから作製されたハイブリドーマから単離された抗体、(b)抗体を発現するように形質転換された宿主細胞から、例えばトランスフェクトーマから単離された抗体、(c)組換えコンビナトリアル抗体ライブラリから単離された抗体、および(d)免疫グロブリン遺伝子配列の他のDNA配列へのスプライシングを含む任意の他の手段によって作製された、発現された、創製されたまたは単離された抗体を包含する。
【0122】
「ヒト抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を有する抗体を包含することが意図されている。ヒト抗体は、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えばインビトロでランダムもしくは部位特異的突然変異誘発によってまたはインビボで体細胞突然変異によって導入された突然変異)を含み得る。
【0123】
「ヒト化抗体」という用語は、非ヒト種からの免疫グロブリンに実質的に由来する抗原結合部位を有する分子を指し、ここで分子の残りの免疫グロブリン構造は、ヒト免疫グロブリンの構造および/または配列に基づく。抗原結合部位は、定常ドメインに融合した完全な可変ドメインを含み得るか、または可変ドメイン内の適切なフレームワーク領域に移植された相補性決定領域(CDR)だけを含み得る。抗原結合部位は、野生型であり得るかまたは1つもしくはそれ以上のアミノ酸置換によって修飾されていてもよく、例えばより密接にヒト免疫グロブリンに類似するように修飾されていてもよい。ヒト化抗体の一部の形態はすべてのCDR配列を保存する(例えばマウス抗体からの6つのCDR全部を含むヒト化マウス抗体)。他の形態は、もとの抗体に比べて変化した1つまたはそれ以上のCDRを有する。
【0124】
「キメラ抗体」という用語は、重鎖および軽鎖のアミノ酸配列の各々の一部分が、特定の種に由来するまたは特定のクラスに属する抗体中の対応する配列に相同であり、一方鎖の残りのセグメントは別の抗体中の対応する配列に相同である抗体を指す。典型的には、軽鎖と重鎖の両方の可変領域が哺乳動物の1つの種に由来する抗体の可変領域を模倣し、一方定常部分は別の種に由来する抗体の配列に相同である。そのようなキメラ形態の1つの明らかな利点は、可変領域を、例えばヒト細胞調製物に由来する定常領域と組み合わせて、容易に入手可能な非ヒト宿主生物からのB細胞またはハイブリドーマを用いて現在公知の供給源から好都合に誘導できることである。可変領域は調製の容易さという利点を有し、その特異性は供給源に影響されないが、ヒトである定常領域は、抗体を注射した場合、非ヒト供給源からの定常領域よりもヒト被験体から免疫応答を惹起する可能性が低い。しかし、その定義はこの特定の例に限定されない。
【0125】
抗体は、マウス、ラット、ウサギ、モルモットおよびヒトを含むがこれらに限定されない、様々な種に由来し得る。
【0126】
本明細書で述べる抗体は、IgA1またはIgA2などのIgA、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgE、IgMおよびIgD抗体を含む。様々な実施形態において、抗体は、IgG1抗体、より特定するとIgG1、カッパまたはIgG1、ラムダアイソタイプ(すなわちIgG1、κ、λ)、IgG2a抗体(例えばIgG2a、κ、λ)、IgG2b抗体(例えばIgG2b、κ、λ)、IgG3抗体(例えばIgG3、κ、λ)またはIgG4抗体(例えばIgG4、κ、λ)である。
【0127】
本明細書で使用される場合、「異種抗体」は、そのような抗体を産生するトランスジェニック生物に関して定義される。この用語は、トランスジェニック生物から構成されず、および一般にトランスジェニック生物以外の種に由来する生物において認められるものに対応するアミノ酸配列またはコード核酸配列を有する抗体を指す。
【0128】
本明細書で使用される場合、「ヘテロハイブリッド抗体」は、異なる生物起源の軽鎖と重鎖を有する抗体を指す。例えば、マウス軽鎖と結合したヒト重鎖を有する抗体はヘテロハイブリッド抗体である。
【0129】
本明細書で述べる抗体は、好ましくは単離されている。本明細書で使用される「単離された抗体」は、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を指すことが意図されている(例えば、CLDN6に特異的に結合する単離された抗体は、CLDN6以外の抗原に特異的に結合する抗体を実質的に含まない)。ヒトCLDN6のエピトープ、アイソフォームまたは変異体に特異的に結合する単離された抗体は、しかし、他の関連抗原、例えば他の種からの関連抗原(例えばCLDN6種ホモログ)に対する交差反応性を有し得る。さらに、単離された抗体は、実質的に他の細胞物質および/または化学物質不含であり得る。本発明の1つの実施形態では、「単離された」モノクローナル抗体の組合せは、異なる特異性を有し、および十分に定義された組成物または混合物中で組み合わされている抗体に関する。
【0130】
抗体の「抗原結合部分」(もしくは単に「結合部分」)または抗体の「抗原結合フラグメント」(もしくは単に「結合フラグメント」)という用語または同様の用語は、抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体の1つまたはそれ以上のフラグメントを指す。抗体の抗原結合機能は完全長抗体のフラグメントによって実行され得ることが示されている。抗体の「抗原結合部分」という用語に包含される結合フラグメントの例には、(i)VL、VH、CLおよびCHドメインから成る一価フラグメントである、Fabフラグメント;(ii)ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFabフラグメントを含む二価フラグメントである、F(ab')フラグメント;(iii)VHドメインとCHドメインから成るFdフラグメント;(iv)抗体の1本の腕のVLドメインとVHドメインから成るFvフラグメント;(v)VHドメインから成る、dAbフラグメント(Ward et al.,(1989)Nature 341:544-546);(vi)単離された相補性決定領域(CDR)、ならびに(vii)場合により合成リンカーによって連結されていてもよい2つまたはそれ以上の単離されたCDRの組合せが含まれる。さらに、Fvフラグメントの2つのドメイン、VLおよびVHは別々の遺伝子によってコードされるが、それらは、VL領域とVH領域が対合して一価分子を形成する一本鎖タンパク質(一本鎖Fv(scFv)として知られる;例えばBird et al.(1988)Science 242:423-426;およびHuston et al.(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879-5883参照)としてそれらを作製することを可能にする合成リンカーによって、組換え法を用いて連結することができる。そのような一本鎖抗体も、抗体の「抗原結合フラグメント」という用語に包含されることが意図されている。さらなる例は、(i)免疫グロブリンヒンジ領域ポリペプチドに融合した結合ドメインポリペプチド、(ii)ヒンジ領域に融合した免疫グロブリン重鎖CH2定常領域、および(iii)CH2定常領域に融合した免疫グロブリン重鎖CH3定常領域を含む、結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質である。結合ドメインポリペプチドは、重鎖可変領域または軽鎖可変領域であり得る。結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質は、さらに、米国特許出願第2003/0118592号および同第2003/0133939号に開示されている。これらの抗体フラグメントは当業者に公知の従来技術を用いて得られ、フラグメントは無傷抗体と同じ方法で有用性に関してスクリーニングされる。
【0131】
「結合ドメイン」という用語は、本発明に関連して、所与の標的構造体/抗原/エピトープに結合する/相互作用する、例えば抗体の、構造を特徴づける。したがって、本発明による結合ドメインは「抗原相互作用部位」を表す。
【0132】
本発明の目的上、本明細書で述べる抗体フラグメントなどのすべての抗体および抗体の誘導体は、「抗体」という用語に包含される。「抗体誘導体」という用語は、任意の修飾形態の抗体、例えば抗体と別の作用物質もしくは別の抗体とのコンジュゲート、または抗体フラグメントを指す。
【0133】
天然に存在する抗体は一般に単一特異性であり、すなわちそれらは単一抗原に結合する。本発明は、標的細胞に結合し(CLDN6に係合することによって)、および細胞傷害性細胞などの第二実体に結合する(例えばCD3受容体に係合することによって)抗体を含む。本発明の抗体は二重特異性または多重特異性、例えば三重特異性、四重特異性等であり得る。
【0134】
「二重特異性分子」という用語は、2つの異なる結合特異性を有する作用物質を包含することが意図されている。例えば、前記分子は、(a)細胞表面抗原および(b)エフェクター細胞の表面のFc受容体などの受容体に結合し得るまたはこれらと相互作用し得る。「多重特異性分子」という用語は、2つより多い異なる結合特異性を有する作用物質を包含することが意図されている。例えば、前記分子は、(a)細胞表面抗原、(b)エフェクター細胞の表面のFc受容体などの受容体および(c)少なくとも1つの他の成分に結合し得るまたはこれらと相互作用し得る。したがって、「CLDN6に結合する能力を有する抗体」という用語は、CLDN6に対する、およびエフェクター細胞上のFc受容体などの他の標的に対する、二重特異性、三重特異性、四重特異性および他の多重特異性分子を包含するが、これらに限定されない。「二重特異性抗体」という用語はダイアボディも包含する。ダイアボディは、VHおよびVLドメインが1本のポリペプチド鎖上に発現されるが、同じ鎖上の2つのドメイン間での対合を許容するには短すぎるリンカーを使用して、それによりそれらのドメインを別の鎖の相補的ドメインと対合させて、2つの抗原結合部位を創製する、二価の二重特異性抗体である(例えばHolliger,P.,et al.(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444-6448;Poljak,R.J.,et al.(1994)Structure 2:1121-1123参照)。
【0135】
本発明に関連して、「CLDN6に結合する能力を有する抗体」は、好ましくは本明細書で述べる免疫エフェクター機能を惹起することができる。好ましくは、前記免疫エフェクター機能は、その表面に腫瘍関連抗原CLDN6を担持する癌幹細胞などの細胞に対するものである。
【0136】
本発明に関連して「免疫エフェクター機能」という用語は、例えば、腫瘍の播種および転移の阻害を含む、腫瘍成長の阻害および/または腫瘍発生の阻害をもたらす免疫系の成分によって媒介される任意の機能を包含する。好ましくは、免疫エフェクター機能は癌細胞、特に癌幹細胞の死滅をもたらす。そのような機能は、補体依存性細胞傷害(CDC)、抗体依存性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞貪食作用(ADCP)、腫瘍関連抗原を担持する細胞におけるアポトーシスの誘導、腫瘍関連抗原を担持する細胞の細胞溶解、および/または腫瘍関連抗原を担持する細胞の増殖の阻害を含む。結合物質も、単に癌細胞の表面の腫瘍関連抗原に結合することによって作用を及ぼし得る。例えば、抗体は、単に癌細胞の表面の腫瘍関連抗原に結合することによって腫瘍関連抗原の機能をブロックし得るまたはアポトーシスを誘導し得る。
【0137】
本発明によれば、抗体を、毒素薬剤成分、特に細胞毒、薬剤(例えば免疫抑制剤)または放射性同位体などの治療成分または作用物質に結合し得る。細胞毒または細胞傷害性薬剤は、細胞に有害であり、特に細胞を死滅させる任意の作用物質を包含する。例には、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、アマニチン、1-デヒドロテストステロン、糖質コルチコイド類、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロールおよびピューロマイシンならびにそれらの類似体またはホモログが含まれる。抗体コンジュゲートを形成するための適切な治療薬には、代謝拮抗剤(例えばメトトレキサート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、フルダラビン、5-フルオロウラシルデカルバジン)、アルキル化剤(例えばメクロレタミン、チオテパ、クロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)およびロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンCおよびシス-ジクロロジアミン白金(II)(DDP)(シスプラチン)、アントラサイクリン(例えばダウノルビシン(以前のダウノマイシン)およびドキソルビシン)、抗生物質(例えばダクチノマイシン(以前のアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシンおよびアントラマイシン(AMC))、ならびに抗有糸分裂薬(例えばビンクリスチンおよびビンブラスチン)が含まれるが、これらに限定されない。好ましい実施形態では、治療薬は細胞傷害性物質または放射性毒性物質である。別の実施形態では、治療薬は免疫抑制剤である。さらに別の実施形態では、治療薬はGM-CSFである。好ましい実施形態では、治療薬は、ドキソルビシン、シスプラチン、硫酸ブレオマイシン、カルムスチン、クロラムブシル、シクロホスファミドまたはリシンAである。本発明による特に好ましい毒素薬剤成分は、微小管集合を阻害し、抗増殖および/または細胞傷害作用を有する化合物である。
【0138】
本発明に従って特に好ましいのは、癌幹細胞などの緩やかに増殖するまたは静止状態にある細胞に作用する、細胞毒などの治療成分または作用物質に結合した抗体である。そのような治療成分には、mRNAおよび/またはタンパク質合成に作用する治療成分が含まれる。転写のいくつかの阻害剤が公知である。例えば、転写阻害剤およびDNA損傷剤の両方であるアクチノマイシンDは、DNA内にインターカレートし、したがって転写の初期段階を阻害する。フラボピリドールは転写の伸長段階を標的とする。α-アマニチンはRNAポリメラーゼに直接結合し、開始および伸長段階の両方の阻害をもたらす。
【0139】
抗体はまた、放射性同位体、例えばヨウ素131、イットリウム90またはインジウム111に結合して、細胞傷害性放射性医薬品を生成することもできる。
【0140】
本発明の抗体コンジュゲートは、所与の生物学的応答を調節するために使用することができ、薬剤成分は古典的化学療法剤に限定されると解釈されるべきではない。例えば、薬剤成分は、所望の生物学的活性を有するペプチド、タンパク質またはポリペプチドであり得る。そのようなタンパク質には、例えば酵素活性毒素もしくはその活性フラグメント、例えばアブリン、リシンA、シュードモナス外毒素もしくはジフテリア毒素;腫瘍壊死因子もしくはインターフェロンγなどのタンパク質;または生物学的応答調節剤、例えばリンホカイン、インターロイキン1(「IL-1」)、インターロイキン2(「IL-2」)、インターロイキン6(「IL-6」)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「GM-CSF」)、顆粒球コロニー刺激因子(「G-CSF」)もしくは他の増殖因子などが含まれ得る。本発明によるさらなる好ましい薬剤成分は、クルクミン、サリノマイシンおよびスルフォラファンである。
【0141】
そのような治療成分を抗体に結合するための技術は周知であり、例えばArnon et al.,"Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy",in Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy,Reisfeld et al.(eds.),pp.243-56(Alan R.Liss,Inc.1985);Hellstrom et al.,"Antibodies For Drug Delivery",in Controlled Drug Delivery(2nd Ed.),Robinson et al.(eds.),pp.623-53(Marcel Dekker,Inc.1987);Thorpe,"Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy:A Review",in Monoclonal Antibodies '84:Biological And Clinical Applications,Pinchera et al.(eds.),pp.475-506(1985);"Analysis,Results,And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy",in Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy,Baldwin et al.(eds.),pp.303-16(Academic Press 1985)、およびThorpe et al.,"The Preparation And Cytotoxic Properties Of Antibody-Toxin Conjugates",Immunol.Rev.,62:119-58(1982)参照。
【0142】
1つの好ましい実施形態では、本発明による抗体を1つまたはそれ以上のメイタンシノイド分子に結合する。
【0143】
メイタンシノイドは、有糸分裂において細胞の増殖を阻害する強力な微小管標的化合物である。メイタンシノイドは、塩素化ベンゼン環に結合した19員のアンサマクロライド構造体であるメイタンシンの誘導体である。メイタンシンは以下の式:
【化16】
を有する。
【0144】
特定の微生物も、メイタンシノールおよびC-3メイタンシノールエステルなどのメイタンシノイドを産生することが発見された(米国特許第4,151,042号)。合成メイタンシノールおよびメイタンシノール類似体は、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第4,137,230号;同第4,248,870号;同第4,256,746号;同第4,260,608号;同第4,265,814号;同第4,294,757号;同第4,307,016号;同第4,308,268号;同第4,308,269号;同第4,309,428号;同第4,313,946号;同第4,315,929号;同第4,317,821号;同第4,322,348号;同第4,331,598号;同第4,361,650号;同第4,364,866号;同第4,424,219号;同第4,362,663号および同第4,371,533号ならびにKawai et al(1984)Chem.Pharm.Bull.3441-3451において報告されている。
【0145】
メイタンシノイドは当分野で周知であり、公知の技術によって合成するかまたは天然源から単離することができる。本発明による特に好ましいメイタンシノイドは、DM1およびDM4などの、メイタンシンのチオール含有誘導体である。メイタンシンのそのようなチオール含有誘導体には、カルボニル基に結合したメチル基が遊離スルフヒドリル基を含有する基、例えば-R-SH基[式中、Rはアルキレン基または他の炭素含有原子団を表す]によって置換されている化合物が含まれる。
【0146】
メルタンシンとしても知られるDM1は、以下の式:
【化17】
を有するメイタンシノイドである。
【0147】
特に、「メルタンシン」または「DM1」という用語は、化合物、N2'-デアセチル-N2'-(3-メルカプト-1-オキソプロピル)-メイタンシンを指す。
【0148】
「DM4」は、化合物、N2'-デアセチル-N2'-(4-メチル-4-メルカプト-1-オキソペンチル)-メイタンシンを指す。
【0149】
抗CLDN6抗体-メイタンシノイドコンジュゲートは、抗CLDN6抗体をメイタンシノイド分子に化学的に連結することによって抗体またはメイタンシノイド分子の生物学的活性を有意に低下させることなく調製される。抗体分子につき平均3~4個のメイタンシノイド分子を結合し得るが、毒素/抗体の1個の分子でさえも裸の抗体の使用に比べて細胞傷害性を増強すると予想される。
【0150】
この点に関して、「少なくとも1つの毒素薬剤成分に共有結合された抗体」という用語は、同じ薬剤の1個またはそれ以上の分子が抗体分子に共有結合している状況ならびに異なる薬剤が抗体分子に共有結合している状況を包含する。後者の状況では、異なる薬剤の各々の1個またはそれ以上の分子が抗体分子またはその組合せ(例えば1つの薬剤の1個の分子が結合し、別の薬剤の数個の分子が結合している)に結合し得る。
【0151】
本発明の一部の実施形態では、抗体をドラスタチンまたはドラスタチンペプチド類似体および誘導体であるアウリスタチンに結合する(参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,635,483号;同第5,780,588号)。アウリスタチンは、海洋性軟体動物であるタツナミガイ、ドラベッラ・アウリクラリア(Dolabela auricularia)に由来する天然産物、ドラスタチン10の合成類似体である。メイタンシノイドと同様に、アウリスタチンは微小管破壊剤である。ドラスタチンまたはアウリスタチン薬剤成分をペプチド薬剤成分のN(アミノ)末端またはC(カルボキシル)末端を介して抗体に結合し得る。
【0152】
例示的なアウリスタチンの実施形態には、好ましくはN末端連結されたMMAEおよびMMAFなどのモノメチルアウリスタチン薬剤成分が含まれる。
【0153】
モノメチルアウリスタチンEとしても知られるMMAEは、以下の式:
【化18】
を有する。
【0154】
特に、「MMAE」という用語は、化合物、(S)-N-((3R,4S,5S)-1-((S)-2-((1R,2R)-3-(((1S,2R)-1-ヒドロキシ-1-フェニルプロパン-2-イル)アミノ)-1-メトキシ-2-メチル-3-オキソプロピル)ピロリジン-1-イル)-3-メトキシ-5-メチル-1-オキソヘプタン-4-イル)-N,3-ジメチル-2-((S)-3-メチル-2-(メチルアミノ)ブタンアミド)ブタンアミドを指す。MMAEは、実際はデスメチル-アウリスタチンEであり、すなわちN末端アミノ基は、アウリスタチンE自体におけるように2個のメチル置換基ではなく1個のメチル置換基だけを有する。
【0155】
本発明に従って特に好ましいのは、抗体-vcアウリスタチンコンジュゲート、例えば抗体-vcMMAEコンジュゲートである。本発明によれば、「抗体-vcアウリスタチン」または「vcMMAE」という用語は、リソソームで切断可能なジペプチド、バリン-シトルリン(vc)によって抗体に連結された、MMAEなどのアウリスタチンを含有する抗体-薬剤コンジュゲート(ADC)を指す。
【0156】
モノメチルアウリスタチンFとしても知られるMMAFは、化合物、(S)-2-((2R,3R)-3-((S)-1-((3R,4S,5S)-4-((S)-N,3-ジメチル-2-((S)-3-メチル-2-(メチルアミノ)ブタンアミド)ブタンアミド)-3-メトキシ-5-メチルヘプタノイル)ピロリジン-2-イル)-3-メトキシ-2-メチルプロパンアミド)-3-フェニルプロパン酸を指す。
【0157】
抗体-薬剤コンジュゲートを作製するための当分野で公知の多くの連結基が存在する。
【0158】
本発明の1つの実施形態では、抗体を二官能性架橋試薬によって薬剤と連結する。本明細書で使用される場合、「二官能性架橋試薬」は、抗体を薬剤と連結するために、一方が抗体と反応することができ、他方が薬剤と反応することができる2つの反応性基を有し、それによってコンジュゲートを形成する試薬を指す。リンカー試薬が薬剤、例えば細胞傷害性の保持および抗体の標的特性を提供する限り、任意の適切な二官能性架橋試薬を本発明に関連して使用することができる。好ましくは、リンカー分子は、薬剤と抗体が互いに化学的に結合される(例えば共有結合される)ように、化学結合を介して薬剤を抗体に連結する。
【0159】
1つの実施形態では、二官能性架橋試薬は非切断可能なリンカーを含む。非切断可能なリンカーは、メイタンシノイドなどの薬剤を安定な共有結合で抗体に連結することができる任意の化学成分である。好ましくは、非切断可能なリンカーは生理的条件下で、特に細胞の内部で切断されない。したがって、非切断可能なリンカーは、薬剤または抗体が活性なままである条件下で、酸誘導切断、光誘導切断、ペプチダーゼ誘導切断、エステラーゼ誘導切断およびジスルフィド結合切断に対して実質的に耐性である。薬剤と抗体の間に非切断可能なリンカーを形成する適切な架橋試薬は当分野で周知である。1つの実施形態では、チオエーテル結合を介して薬剤を抗体に連結する。非切断可能なリンカーの例には、メイタンシノイドのスルフヒドリル基などの薬剤との反応のためのマレイミドまたはハロアセチルベースの成分を有するリンカーが含まれる。そのような二官能性架橋剤は当分野で周知であり、N-スクシンイミジル4-(マレイミドメチル)シクロヘキサンカルボキシレート(SMCC)およびSMCCの「長鎖」類似体であるN-スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)-シクロヘキサン-1-カルボキシ-(6-アミドカプロエート)(LC-SMCC)を包含するが、これらに限定されない。好ましくは、二官能性架橋剤はSMCCである。そのようなリンカーを使用して、メルタンシンなどの薬剤を4-(3-メルカプト-2,5-ジオキソ-1-ピロリジニルメチル)-シクロヘキサンカルボン酸によって抗体のリシン残基の遊離NH2基などのアミノ基に連結することができる。各々の抗体薬剤コンジュゲート分子は、メルタンシンの数個の分子に結合した1個の抗体分子を含み得る。
【0160】
1つの特に好ましい実施形態では、連結試薬は切断可能なリンカーである。好ましくは、切断可能なリンカーは生理的条件下で、特に細胞の内部で切断可能である。適切な切断可能リンカーの例には、ジスルフィドリンカー、酸不安定リンカー、光不安定リンカー、ペプチダーゼ不安定リンカーおよびエステラーゼ不安定リンカーが含まれる。ジスルフィド含有リンカーは、生理的条件下で起こり得る、ジスルフィド交換を介して切断可能なリンカーである。酸不安定リンカーは、酸pHで切断可能なリンカーである。例えば、エンドソームおよびリソソームなどの特定の細胞内区画は酸性pH(pH4~5)を有し、酸不安定リンカーを切断するのに適した条件を提供する。光不安定リンカーは、体表面でおよび光にアクセス可能な多くの体腔中で有用である。さらに、赤外光は組織に浸透することができる。ペプチダーゼ不安定リンカーは、細胞の内部または外部で特定のペプチドを切断するのに使用できる。1つの実施形態では、切断可能なリンカーは穏やかな条件下で、すなわち細胞傷害性薬剤の活性が影響を受けない細胞内の条件下で切断される。
【0161】
1つの特に好ましい実施形態では、リンカーは、腫瘍細胞の内部でカテプシンによって切断されるジペプチド、バリン(Val)-シトルリン(Cit)(vc)を含むまたはこれから成るリンカーである。
【0162】
本発明によれは、「癌幹細胞に対する癌療法」という用語は、癌幹細胞を標的とし、好ましくは癌幹細胞を死滅させるおよび/または癌幹細胞の増殖もしくは生存能を低下させるために使用できる任意の療法に関する。そのような療法には、i)癌幹細胞上の特定の細胞表面標的、例えばCLDN6を標的とする裸のもしくは治療成分に結合した抗体、抗体フラグメントおよびタンパク質(例えば上述したCLDN6に結合する能力を有する抗体もしくは抗体コンジュゲート)またはii)癌幹細胞の増殖もしくは生存能を低下させる低分子が含まれる。特定の実施形態では、前記作用物質は、正常幹細胞上よりも癌幹細胞上により高いレベルで発現される抗原に結合する。特定の実施形態では、前記作用物質は癌幹細胞抗原に特異的に結合する。
【0163】
本発明による「結合」という用語は、好ましくは特異的結合に関する。
【0164】
本発明によれば、抗体が標準的なアッセイにおいて所定の標的に有意の親和性を有し、前記所定の標的に結合する場合、前記抗体は前記所定の標的に結合することができる。「親和性」または「結合親和性」は、しばしば平衡解離定数(K)によって測定される。好ましくは、「有意の親和性」という用語は、10-5Mもしくはそれ以下、10-6Mもしくはそれ以下、10-7Mもしくはそれ以下、10-8Mもしくはそれ以下、10-9Mもしくはそれ以下、10-10Mもしくはそれ以下、10-11Mもしくはそれ以下、または10-12Mもしくはそれ以下の解離定数(K)で所定の標的に結合することを指す。
【0165】
抗体が標準的なアッセイにおいて標的に有意の親和性を有さず、前記標的に有意に結合しない、特に検出可能に結合しない場合、前記抗体は前記標的に(実質的に)結合することができない。好ましくは、抗体が2、好ましくは10、より好ましくは20、特に50または100μg/mlまでまたはそれ以上の濃度で存在する場合、前記抗体は前記標的に検出可能に結合しない。好ましくは、抗体が結合することができる所定の標的への結合に関するKよりも少なくとも10倍、100倍、10倍、10倍、10倍または10倍高いKでその抗体が前記標的に結合する場合、前記抗体は前記標的に有意の親和性を有さない。例えば、抗体が結合することができる標的へのその抗体の結合に関するKが10-7Mである場合、前記抗体が有意の親和性を有さない標的への結合に関するKは少なくとも10-6M、10-5M、10-4M、10-3M、10-2Mまたは10-1Mである。
【0166】
抗体が、所定の標的に結合することができるが、他の標的には結合することができない、すなわち標準的なアッセイにおいて他の標的には有意の親和性を有さず、他の標的に有意に結合しない場合、前記抗体は前記所定の標的に特異的である。本発明によれば、抗体が、CLDN6に結合することができるが、他の標的には(実質的に)結合することができない場合、前記抗体はCLDN6に特異的である。好ましくは、そのような他の標的に対する親和性および結合が、CLDN6に無関係なタンパク質、例えばウシ血清アルブミン(BSA)、カゼイン、ヒト血清アルブミン(HSA)、または非クローディン膜貫通タンパク質、例えばMHC分子もしくはトランスフェリン受容体、または何らかの他の特定のポリペプチドに対する親和性または結合を有意に上回らない場合、前記抗体はCLDN6に特異的である。好ましくは、抗体が、その抗体が特異的でない標的への結合に関するKよりも少なくとも10倍、100倍、10倍、10倍、10倍または10倍低いKで所定の標的に結合する場合、前記抗体は前記所定の標的に特異的である。例えば、抗体が特異的である標的へのその抗体の結合に関するKが10-7Mである場合、前記抗体が特異的でない標的への結合に関するKは、少なくとも10-6M、10-5M、10-4M、10-3M、10-2Mまたは10-1Mである。
【0167】
標的への抗体の結合は、任意の適切な方法:例えばBerzofsky et al.,"Antibody-Antigen Interactions"In Fundamental Immunology,Paul,W.E.,Ed.,Raven Press New York,NY(1984)、Kuby,Janis Immunology,W.H.Freeman and Company New York,NY(1992)参照、および本明細書で述べる方法を用いて実験的に測定することができる。親和性は、従来の技術を用いて、例えば平衡透析によって;製造者によって概説される一般的手順を用いて、BIAcore 2000装置を使用することによって;放射性標識した標的抗原を用いる放射性免疫検定法によって;または当業者に公知の別の方法によって、容易に測定し得る。親和性データは、例えばScatchard et al.,Ann N.Y.Acad.ScL,51:660(1949)の方法によって分析し得る。特定の抗体-抗原相互作用の測定される親和性は、異なる条件下で、例えば異なる塩濃度、pHの下で測定された場合、異なり得る。したがって、親和性および他の抗原結合パラメータ、例えばK、IC50の測定は、好ましくは抗体および抗原の標準溶液および標準緩衝液を用いて行われる。
【0168】
本明細書で使用される場合、「アイソタイプ」は、重鎖定常領域遺伝子によってコードされる抗体クラス(例えばIgMまたはIgG1)を指す。
【0169】
本明細書で使用される場合、「アイソタイプスイッチ」は、抗体のクラスまたはアイソタイプがある1つのIgクラスからその他のIgクラスの1つに変化する現象を指す。
【0170】
物体に適用される場合の本明細書で使用される「天然に存在する」という用語は、物体を自然界で見出すことができるという事実を指す。例えば、自然界の供給源から単離することができる生物(ウイルスを含む)中に存在し、実験室においてヒトによって意図的に改変されていないポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列は、天然に存在する。
【0171】
本明細書で使用される「再編成された」という用語は、基本的にそれぞれ完全なVHまたはVLドメインをコードする立体配座においてVセグメントがD-JまたはJセグメントに直接隣接して位置する、重鎖または軽鎖免疫グロブリン遺伝子座の立体配置を指す。再編成された免疫グロブリン(抗体)遺伝子座は、生殖細胞系DNAとの比較によって同定することができ、再編成された遺伝子座は、少なくとも1つの組み換えられた7量体/9量体相同エレメントを有する。
【0172】
Vセグメントに関して本明細書で使用される「再編成されていない」または「生殖細胞系立体配置」という用語は、Vセグメントが、DまたはJセグメントに直接隣接するように組み換えられていない立体配置を指す。
【0173】
好ましくは、CLDN6に結合する能力を有する抗体の、CLDN6を発現する細胞への結合は、CLDN6を発現する細胞の死滅を誘導または媒介する。CLDN6を発現する細胞は、好ましくは癌幹細胞であり、特に卵巣癌の癌幹細胞などの本明細書で述べる癌疾患の細胞である。好ましくは、抗体は、CLDN6を発現する細胞の補体依存性細胞傷害(CDC)媒介性溶解、抗体依存性細胞傷害(ADCC)媒介性溶解、アポトーシスおよび増殖の阻害の1つまたはそれ以上を誘導することによって細胞の死滅を誘導または媒介する。好ましくは、細胞のADCC媒介性溶解はエフェクター細胞の存在下で起こり、エフェクター細胞は、特定の実施形態では単球、単核細胞、NK細胞およびPMNから成る群より選択される。細胞の増殖の阻害は、ブロモデオキシウリジン(5-ブロモ-2-デオキシウリジン、BrdU)を使用するアッセイにおいて細胞の増殖を定量することによってインビトロで測定できる。BrdUはチミジンの類似体である合成ヌクレオシドであり、複製中の細胞の新たに合成されたDNAに組み込まれることができ(細胞周期のS期の間に)、DNA複製の間にチミジンと置き換わる。例えばBrdUに特異的な抗体を使用して、組み込まれた化学物質を検出することは、そのDNAを活発に複製していた細胞を示す。
【0174】
好ましい実施形態では、本明細書で述べる抗体は、以下の特性:
a)CLDN6に対する特異性;
b)CLDN6への、約100nMまたはそれ以下、好ましくは約5~10nMまたはそれ以下、より好ましくは約1~10nMまたはそれ以下の結合親和性;
c)CLDN6陽性細胞上でCDCを誘導または媒介する能力;
d)CLDN6陽性細胞上でADCCを誘導または媒介する能力;
e)CLDN6陽性細胞の増殖を阻害する能力;
f)CLDN6陽性細胞のアポトーシスを誘導する能力
の1つまたはそれ以上を特徴とし得る。
【0175】
1つの実施形態では、CLDN6に結合する能力を有する抗体は、CLDN6中に存在するエピトープ、好ましくはCLDN6の細胞外ドメイン内、特に第一細胞外ループ、好ましくはCLDN6のアミノ酸位置28~76内または第二細胞外ループ、好ましくはCLDN6のアミノ酸位置141~159内に位置するエピトープに結合する能力を有する。特定の実施形態では、CLDN6に結合する能力を有する抗体は、CLDN9上には存在しないCLDN6上のエピトープに結合する。好ましくは、CLDN6に結合する能力を有する抗体は、CLDN4および/またはCLDN3上には存在しないCLDN6上のエピトープに結合する。最も好ましくは、CLDN6に結合する能力を有する抗体は、CLDN6以外のCLDNタンパク質上には存在しない、CLDN6上のエピトープに結合する。
【0176】
CLDN6に結合する能力を有する抗体は、好ましくはCLDN6に結合するがCLDN9には結合せず、ならびに好ましくはCLDN4および/またはCLDN3には結合しない。好ましくは、CLDN6に結合する能力を有する抗体はCLDN6に特異的である。好ましくは、CLDN6に結合する能力を有する抗体は、細胞表面に発現されたCLDN6に結合する。特定の好ましい実施形態では、CLDN6に結合する能力を有する抗体は、生細胞の表面に存在するCLDN6の天然エピトープに結合する。
【0177】
好ましい実施形態では、CLDN6に結合する能力を有する抗体は、配列番号:3、5、7、9およびそのフラグメントから成る群より選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)を含有する。
【0178】
好ましい実施形態では、CLDN6に結合する能力を有する抗体は、配列番号:4、6、8、10、11、12およびそのフラグメントから成る群より選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含有する。
【0179】
特定の好ましい実施形態では、CLDN6に結合する能力を有する抗体は、以下の可能性(i)~(vii)から選択される重鎖可変領域(VH)と軽鎖可変領域(VL)の組合せを含む:
(i)VHは配列番号:3によって表されるアミノ酸配列またはそのフラグメントを含み、およびVLは配列番号:4によって表されるアミノ酸配列またはそのフラグメントを含む、
(ii)VHは配列番号:5によって表されるアミノ酸配列またはそのフラグメントを含み、およびVLは配列番号:6によって表されるアミノ酸配列またはそのフラグメントを含む、
(iii)VHは配列番号:7によって表されるアミノ酸配列またはそのフラグメントを含み、およびVLは配列番号:8によって表されるアミノ酸配列またはそのフラグメントを含む、
(iv)VHは配列番号:9によって表されるアミノ酸配列またはそのフラグメントを含み、およびVLは配列番号:10によって表されるアミノ酸配列またはそのフラグメントを含む、
(v)VHは配列番号:5によって表されるアミノ酸配列またはそのフラグメントを含み、およびVLは配列番号:4によって表されるアミノ酸配列またはそのフラグメントを含む、
(vi)VHは配列番号:5によって表されるアミノ酸配列またはそのフラグメントを含み、およびVLは配列番号:11によって表されるアミノ酸配列またはそのフラグメントを含む、
(vii)VHは配列番号:5によって表されるアミノ酸配列またはそのフラグメントを含み、およびVLは配列番号:12によって表されるアミノ酸配列またはそのフラグメントを含む。
【0180】
特に好ましい実施形態では、CLDN6に結合する能力を有する抗体は、重鎖可変領域(VH)と軽鎖可変領域(VL)の以下の組合せを含む:
VHは配列番号:5によって表されるアミノ酸配列またはそのフラグメントを含み、およびVLは配列番号:4によって表されるアミノ酸配列またはそのフラグメントを含む。
【0181】
「フラグメント」という用語は、特に、重鎖可変領域(VH)および/または軽鎖可変領域(VL)の相補性決定領域(CDR)の1つまたはそれ以上、好ましくは少なくともCDR3可変領域を指す。1つの実施形態では、前記相補性決定領域(CDR)の1つまたはそれ以上は、相補性決定領域CDR1、CDR2およびCDR3のセットから選択される。特に好ましい実施形態では、「フラグメント」という用語は、重鎖可変領域(VH)および/または軽鎖可変領域(VL)の相補性決定領域CDR1、CDR2およびCDR3を指す。
【0182】
1つの実施形態では、本明細書で述べる1つまたはそれ以上のCDR、CDRのセットまたはCDRのセットの組合せを含む抗体は、前記CDRをそれらの介在フレームワーク領域と共に含む。好ましくは、その部分は、1番目と4番目のフレームワーク領域のいずれかまたは両方の少なくとも約50%を含み、前記50%は、1番目のフレームワーク領域のC末端の50%および4番目のフレームワーク領域のN末端の50%である。組換えDNA技術によって行われる抗体の構築は、本発明の可変領域を免疫グロブリン重鎖、他の可変ドメイン(例えばダイアボディの作製において)またはタンパク質標識を包含するさらなるタンパク質配列に連結するためのリンカーの導入を含む、クローニングまたは他の操作工程を容易にするために導入されるリンカーによってコードされる可変領域のN末端またはC末端残基の導入を生じさせ得る。
【0183】
1つの実施形態では、本明細書で述べる1つまたはそれ以上のCDR、CDRのセットまたはCDRのセットの組合せを含む抗体は、ヒト抗体フレームワーク内に前記CDRを含む。
【0184】
抗体の重鎖に関して特定の鎖または特定の領域もしくは配列を含む抗体への本明細書における言及は、好ましくは前記抗体のすべての重鎖が前記特定の鎖、領域または配列を含む状況に関する。これは抗体の軽鎖にも対応して適用される。
【0185】
本明細書で述べる抗体は、抗体をコードするRNAなどの核酸を投与することによっておよび/または抗体をコードするRNAなどの核酸を含む宿主細胞を投与することによって患者に送達し得ることが理解されるべきである。したがって、患者に投与された場合、抗体をコードする核酸は、裸の形態でまたは適切な送達ビヒクル中に、例えばリポソームもしくはウイルス粒子の形態でまたは宿主細胞内に存在し得る。提供される核酸は、治療用抗体に関して少なくとも一部に認められる不安定性を軽減する持続的な方法で長期間にわたって抗体を産生することができる。患者に送達されるべき核酸は組換え手段によって作製することができる。核酸が宿主細胞内に存在せずに患者に投与される場合、核酸は、好ましくは核酸によってコードされる抗体の発現のために患者の細胞によって取り込まれる。核酸が宿主細胞内に存在して患者に投与される場合、核酸は、好ましくは核酸によってコードされる抗体を産生するように患者内で宿主細胞によって発現される。
【0186】
「核酸」という用語は、本明細書で使用される場合、DNAおよびRNA、例えばゲノムDNA、cDNA、mRNA、組換え生産されたおよび化学合成された分子を包含することが意図されている。核酸は一本鎖または二本鎖であってよい。RNAは、インビトロ転写RNA(IVT RNA)または合成RNAを包含する。
【0187】
核酸はベクター中に含まれ得る。本明細書で使用される「ベクター」という用語は、プラスミドベクター、コスミドベクター、λファージなどのファージベクター、アデノウイルスもしくはバキュロウイルスベクターなどのウイルスベクター、または細菌人工染色体(BAC)、酵母人工染色体(YAC)もしくはP1人工染色体(PAC)などの人工染色体ベクターを含む、当業者に公知の任意のベクターを包含する。前記ベクターは、発現ベクターならびにクローニングベクターを包含する。発現ベクターは、プラスミドならびにウイルスベクターを含み、一般に所望コード配列および特定の宿主生物(例えば細菌、酵母、植物、昆虫もしくは哺乳動物)またはインビトロ発現系における作動可能に連結されたコード配列の発現のために必要な適切なDNA配列を含む。クローニングベクターは、一般に特定の所望DNAフラグメントを操作し、増幅するために使用され、所望DNAフラグメントの発現のために必要な機能的配列を欠如し得る。
【0188】
本発明に関連して、「RNA」という用語は、リボヌクレオチド残基を含み、好ましくは全面的にまたは実質的にリボヌクレオチド残基から成る分子に関する。「リボヌクレオチド」は、β,D-リボフラノシル基の2'位にヒドロキシル基を有するヌクレオチドに関する。この用語は、二本鎖RNA、一本鎖RNA、部分的に精製されたRNAなどの単離されたRNA、基本的に純粋なRNA、合成RNA、組換え生産されたRNA、ならびに1個またはそれ以上のヌクレオチドの付加、欠失、置換および/または変化によって天然に存在するRNAとは異なる修飾RNAを包含する。そのような変化には、例えばRNAの末端へのまたは内部での、例えばRNAの1個またはそれ以上のヌクレオチドにおける、非ヌクレオチド物質の付加が含まれ得る。RNA分子中のヌクレオチドは、非標準ヌクレオチド、例えば天然には存在しないヌクレオチドまたは化学合成されたヌクレオチドもしくはデオキシヌクレオチドも含み得る。これらの変化したRNAは、類似体または天然に存在するRNAの類似体と称され得る。
【0189】
本発明によれば、「RNA」という用語は、「メッセンジャーRNA」を意味する「mRNA」を包含し、好ましくは「mRNA」に関し、およびDNAを鋳型として使用して生成され得、ペプチドまたはタンパク質をコードする「転写産物」に関する。mRNAは、典型的には5'非翻訳領域(5'-UTR)、タンパク質またはペプチドコード領域および3'非翻訳領域(3'-UTR)を含む。mRNAは、細胞中およびインビトロで限られた半減期を有する。好ましくは、mRNAはDNA鋳型を使用してインビトロ転写によって生成される。本発明の1つの実施形態では、RNAはインビトロ転写または化学合成によって得られる。インビトロ転写の方法は当業者に公知である。例えば、様々なインビトロ転写キットが市販されている。
【0190】
本発明の1つの実施形態では、RNAは自己複製RNA、例えば一本鎖自己複製RNAである。1つの実施形態では、自己複製RNAはプラスセンスの一本鎖RNAである。1つの実施形態では、自己複製RNAは、ウイルスRNAまたはウイルスRNAに由来するRNAである。1つの実施形態では、自己複製RNAは、アルファウイルスゲノムRNAであるかまたはアルファウイルスゲノムRNAに由来する。1つの実施形態では、自己複製RNAはウイルス遺伝子発現ベクターである。1つの実施形態では、ウイルスはセムリキ森林ウイルスである。1つの実施形態では、自己複製RNAは1つまたはそれ以上の導入遺伝子を含み、前記導入遺伝子の少なくとも1つは本明細書で述べる抗体をコードする。1つの実施形態では、RNAがウイルスRNAであるかまたはウイルスRNAに由来する場合、導入遺伝子は、ウイルス配列、例えば構造タンパク質をコードするウイルス配列を部分的または完全に置換し得る。1つの実施形態では、自己複製RNAはインビトロ転写RNAである。
【0191】
アルファウイルスのゲノムは、大きなポリタンパク質のための2つのオープンリーディングフレーム(ORF)をコードするプラスセンスの一本鎖RNA(ssRNA(+))である。ゲノムの5'末端のORFは非構造タンパク質nSP1~nSP4(nsP1~4)をコードし、これらは翻訳され、RNA依存性RNAポリメラーゼ(レプリカーゼ)へとプロセシングされる;3'末端のORFは、構造タンパク質-キャプシドおよび糖タンパク質をコードする。どちらのORFも、構造ORFの転写を支配する、いわゆるサブゲノムプロモーター(SGP)によって分離されている。遺伝子ベクターとして利用される場合は、SGPの後の構造タンパク質が一般に導入遺伝子に置き換えられる。そのようなベクターをウイルス粒子にパッケージングするために、構造タンパク質は一般にヘルパー構築物からトランスで発現される。アルファウイルスは、もっぱらRNAレベルで感染細胞の細胞質中で複製する。感染後、ssRNA(+)ゲノムはnsP1234ポリタンパク質前駆体の翻訳のためのmRNAとして働き、前記前駆体は、自己タンパク質分解によってフラグメントnsP123およびnsP4へとプロセシングされるウイルス生活環の初期段階にある。フラグメントnsP123およびnsP4は、ゲノムRNA鋳型から(-)鎖RNAを転写する(-)鎖レプリカーゼ複合体を形成する。後期段階で、nsP1234ポリタンパク質は単一タンパク質へと完全に切断され、これらが、新たな(+)鎖ゲノムを合成する(+)鎖レプリカーゼ複合体、ならびに構造タンパク質または導入遺伝子をコードするサブゲノム転写産物へと集合する。サブゲノムRNAならびに新たなゲノムRNAは、キャップされ、ポリアデニル化されており、したがって標的細胞の感染後にmRNAとして認識される。新しいゲノムRNAだけが、ゲノムRNAの出芽ビリオンへの独占的なパッケージングを確実にするパッケージングシグナルを含む。ベクター学にとってのアルファウイルスレプリコンの利点は、キャップされ、ポリアデニル化されたRNAゲノムの正方向性に基づく。翻訳可能なレプリコンRNAはインビトロで容易に合成することができ、それによりインビトロ転写反応にキャップ類似体を添加してキャッピングが達成され、ポリA尾部がプラスミド鋳型上にポリTトラックとしてコードされ得る。インビトロ転写された(IVT)レプリコンは従来のトランスフェクション技術によってトランスフェクトされ、低い量の出発IVT RNAでも速やかに増殖する。導入後数時間以内に、SGPの下流に位置づけられた導入遺伝子は、細胞当たり約40,000~200,000コピーという非常に高いコピー数のサブゲノムRNAに転写され、したがって組換えタンパク質が強く発現されることは驚くには当たらない。特定の目的に応じて、IVTレプリコンを標的細胞に直接トランスフェクトし得るか、または構造遺伝子をトランスで提供するヘルパーベクターを用いてアルファウイルス粒子にパッケージングし得る。皮膚または筋への導入は、体液性および細胞性免疫応答の強力な誘導と並行して、高く持続的な局所発現をもたらす。
【0192】
本発明に従って使用されるRNAの発現および/または安定性を高めるために、好ましくは発現されるペプチドまたはタンパク質の配列を変化させずに、RNAを修飾し得る。
【0193】
本発明に従って使用されるRNAに関連して「修飾」という用語は、天然では前記RNA中に存在しないRNAの任意の修飾を包含する。
【0194】
本発明の1つの実施形態では、本発明に従って使用されるRNAは、キャップされていない5'-三リン酸を有さない。そのようなキャップされていない5'-三リン酸の除去は、RNAをホスファターゼで処理することによって達成できる。
【0195】
本発明によるRNAは、その安定性を高めるおよび/または細胞傷害性を低下させるために、修飾された天然に存在するリボヌクレオチドまたは合成リボヌクレオチドを有し得る。例えば、1つの実施形態では、本発明に従って使用されるRNA中で、シチジンを5-メチルシチジンで部分的または完全に、好ましくは完全に置換する。あるいはまたは加えて、1つの実施形態では、本発明に従って使用されるRNA中で、ウリジンをプソイドウリジンで部分的または完全に、好ましくは完全に置換する。
【0196】
1つの実施形態では、「修飾」という用語は、RNAに5'キャップまたは5'キャップ類似体を提供することに関する。「5'キャップ」という用語は、mRNA分子の5'末端に認められるキャップ構造を指し、一般に独特の5'-5'三リン酸結合によってmRNAに連結されたグアノシンヌクレオチドから成る。1つの実施形態では、このグアノシンは7位でメチル化されている。「従来の5'キャップ」という用語は、天然に存在するRNAの5'キャップ、好ましくは7-メチルグアノシンキャップ(m7G)を指す。本発明に関連して、「5'キャップ」という用語には、RNAキャップ構造に類似し、好ましくはインビボおよび/または細胞中で、RNAに結合した場合RNAを安定化する能力を有するように修飾されている5'キャップ類似体が含まれる。
【0197】
RNAに5'キャップまたは5'キャップ類似体を提供することは、前記5'キャップまたは5'キャップ類似体の存在下でDNA鋳型をインビトロ転写することによって達成でき、前記5'キャップを生成されたRNA鎖に同時転写によって組み込むか、または、例えばインビトロ転写によってRNAを生成し、キャッピング酵素、例えばワクシニアウイルスのキャッピング酵素を用いて転写後に5'キャップをRNAに結合し得る。
【0198】
RNAはさらなる修飾を含み得る。例えば、本発明で使用されるRNAのさらなる修飾は、天然に存在するポリ(A)尾部の伸長もしくは末端切断または前記RNAのコード領域に関連しない非翻訳領域(UTR)の導入などの5'UTRもしくは3'UTRの変化、例えばグロビン遺伝子、例えばα2グロビン、α1グロビン、βグロビン、好ましくはβグロビン、より好ましくはヒトβグロビンに由来する3'UTRの1コピーまたはそれ以上、好ましくは2コピーの挿入であり得る。
【0199】
それゆえ、本発明に従って使用されるRNAの安定性および/または発現を増大させるために、好ましくは10~500、より好ましくは30~300、さらに一層好ましくは65~200、特に100~150個のアデノシン残基の長さを有する、ポリA配列と共に存在するようにRNAを修飾し得る。特に好ましい実施形態では、ポリA配列は約120個のアデノシン残基の長さを有する。加えて、RNA分子の3'非翻訳領域(UTR)内への2つまたはそれ以上の3'非翻訳領域の組込みは翻訳効率の上昇をもたらすことができる。1つの特定の実施形態では、3'UTRはヒトβグロビン遺伝子に由来する。
【0200】
好ましくは、RNAは、細胞に、特にインビボで存在する細胞に送達された場合、すなわちトランスフェクトされた場合、それがコードするタンパク質またはペプチドを発現する。
【0201】
「トランスフェクション」という用語は、核酸、特にRNAの細胞への導入に関する。本発明の目的上、「トランスフェクション」という用語はまた、細胞への核酸の導入またはそのような細胞による核酸の取込みも包含し、ここで細胞は被験体、例えば患者中に存在し得る。したがって、本発明によれば、本明細書で述べる核酸のトランスフェクションのための細胞はインビトロまたはインビボで存在することができ、例えば細胞は患者の器官、組織および/または生物のパートを形成し得る。本発明によれば、トランスフェクションは一過性または安定であり得る。トランスフェクションの一部の適用に関しては、トランスフェクトされた遺伝物質が一過性にだけ発現されれば十分である。トランスフェクション工程において導入される核酸は、通常は核ゲノムに組み込まれないので、外来核酸は有糸分裂を介して希釈されるかまたは分解される。核酸のエピソーム増幅を許容する細胞は希釈の割合を大きく低減させる。トランスフェクトされた核酸が実際に細胞およびその娘細胞のゲノム内に留まることを所望する場合は、安定なトランスフェクションが起こらなければならない。RNAを、そのコードタンパク質を一過性に発現させるように細胞にトランスフェクトすることができる。
【0202】
RNAの「安定性」という用語は、RNAの「半減期」に関する。「半減期」は、分子の活性、量または数の半分を除去するのに必要な期間に関する。本発明に関連して、RNAの半減期は前記RNAの安定性の指標である。RNAの半減期は、RNAの「発現の持続期間」に影響を及ぼし得る。長い半減期を有するRNAは長期間にわたって発現されると予想できる。
【0203】
本発明に関連して、「転写」という用語は、DNA配列中の遺伝暗号がRNAに転写される過程に関する。その後、RNAはタンパク質へと翻訳され得る。本発明によれば、「転写」という用語は「インビトロ転写」を含み、ここで「インビトロ転写」という用語は、RNA、特にmRNAが、好ましくは適切な細胞抽出物を使用して、無細胞系においてインビトロ合成される過程に関する。好ましくは、クローニングベクターを転写産物の生成に適用する。これらのクローニングベクターは一般に転写ベクターと称され、本発明によれば「ベクター」という用語に包含される。
【0204】
本発明による「翻訳」という用語は、メッセンジャーRNAの鎖がアミノ酸の配列のアセンブリを指令してペプチドまたはタンパク質を作製する、細胞のリボソームにおける過程に関する。
【0205】
「発現」という用語は、本発明によればその最も一般的な意味で使用され、例えば転写および/または翻訳による、RNAおよび/またはペプチドもしくはタンパク質の生成を含む。RNAに関して、「発現」または「翻訳」という用語は、特にペプチドまたはタンパク質の生成に関する。また核酸の部分的発現も含む。さらに、発現は一過性または安定であり得る。本発明によれば、発現という用語は「異所発現」または「異常発現」も包含する。
【0206】
「異所発現」または「異常発現」は、本発明によれば、参照、例えば特定のタンパク質、例えば腫瘍抗原の異所または異常発現に関連する疾患を有していない被験体における状態と比較して、発現が変化している、好ましくは増大していることを意味する。発現の増大は、少なくとも10%、特に少なくとも20%、少なくとも50%または少なくとも100%またはそれ以上の増大を指す。1つの実施形態では、発現は罹患組織においてのみ認められ、健常組織中での発現は抑制されている。
【0207】
「特異的に発現される」という用語は、タンパク質が基本的に特定の組織または器官中でのみ発現されることを意味する。例えば、胎盤中で特異的に発現される腫瘍抗原は、前記タンパク質が主として胎盤において発現され、他の組織では発現されないかまたは他の組織もしくは器官型では有意の程度に発現されないことを意味する。したがって、胎盤の細胞中で排他的に発現され、他の組織では有意に低い程度に発現されるタンパク質は、胎盤の細胞中で特異的に発現される。一部の実施形態では、腫瘍抗原はまた、正常条件下では1つより多い組織型または器官、例えば2または3の組織型または器官で、しかし好ましくは3以下の異なる組織または器官型において特異的に発現され得る。この場合、腫瘍抗原はこれらの器官において特異的に発現される。
【0208】
本発明によれば、「をコードするRNA」という用語は、RNAが、適切な環境中に、好ましくは細胞内に存在する場合、それがコードするタンパク質またはペプチドを生成するように発現され得ることを意味する。
【0209】
本発明の一部の態様は、好ましくは低い前駆体頻度から臨床的に適切な細胞数へのエクスビボ増殖後に、本明細書で述べる抗体をコードするRNAなどの核酸を用いてインビトロでトランスフェクトされ、患者などの受容者に移入される宿主細胞の養子移入に基づく。本発明による処置に使用される宿主細胞は、処置される受容者にとって自家、同種異系または同系であり得る。
【0210】
「自家」という用語は、同じ被験体に由来する任意のものを表すために使用される。例えば、「自家移植」は、同じ被験体に由来する組織または器官の移植を指す。そのような手順は、さもなければ拒絶反応をもたらす免疫学的障壁を克服するので、好都合である。
【0211】
「同種異系」という用語は、同じ種の異なる個体に由来する任意のものを表すために使用される。2またはそれ以上の個体は、1つまたはそれ以上の遺伝子座の遺伝子が同一でない場合、互いに同種異系であると言われる。
【0212】
「同系」という用語は、同一の遺伝子型を有する個体または組織、すなわち同一の双生児もしくは同じ近交系の動物またはそれらの組織に由来する任意のものを表すために使用される。
【0213】
「異種」という用語は、複数の異なる要素から成るものを表すために使用される。一例として、ある個体の骨髄の異なる個体への移入は異種移植を構成する。異種遺伝子は、その被験体以外の供給源に由来する遺伝子である。
【0214】
本発明による「ペプチド」という用語は、オリゴペプチドおよびポリペプチドを含み、ペプチド結合によって共有結合で連結された2個またはそれ以上、好ましくは3個またはそれ以上、好ましくは4個またはそれ以上、好ましくは6個またはそれ以上、好ましくは8個またはそれ以上、好ましくは9個またはそれ以上、好ましくは10個またはそれ以上、好ましくは13個またはそれ以上、好ましくは16個またはそれ以上、好ましくは21個またはそれ以上、および好ましくは8、10、20、30、40または50個まで、特に100個までのアミノ酸を含む物質を指す。「タンパク質」という用語は、大きなペプチド、好ましくは100個を超えるアミノ酸残基を有するペプチドを指すが、一般に「ペプチド」と「タンパク質」という用語は同義語であり、本明細書では交換可能に使用される。
【0215】
特定のアミノ酸配列、例えば配列表に示すものに関して本明細書で与えられる教示は、前記特定配列と機能的に等価である配列、例えば前記特定のアミノ酸配列の特性と同一または類似の特性を示すアミノ酸配列を生じさせる前記特定配列の変異体にも関すると解釈されるべきである。1つの重要な特性は、抗体のその標的への結合を保持することまたは抗体のエフェクター機能を維持することである。好ましくは、特定の配列に関して変異体である配列は、それが抗体中で前記特定配列を置換する場合、前記抗体のCLDN6への結合および好ましくは本明細書で述べる前記抗体の機能、例えばCDC媒介性溶解またはADCC媒介性溶解を保持する。
【0216】
例えば、配列表に示す配列は、1個またはそれ以上、好ましくはすべての遊離システイン残基を、特にシステイン以外のアミノ酸、好ましくはセリン、アラニン、トレオニン、グリシン、チロシン、ロイシンまたはメチオニン、最も好ましくはアラニンまたはセリンによってシステイン残基を置換することによって除去するように修飾することができる。
【0217】
特にCDR、超可変領域および可変領域の配列は、CLDN6に結合する能力を失わずに修飾され得ることが当業者に認識される。例えば、CDR領域は本明細書で特定される抗体の領域に同一または高度に相同である。「高度に相同」により、1~5、好ましくは1~4、例えば1~3または1もしくは2個の置換がCDR内で行われていてもよいことが企図される。加えて、超可変領域および可変領域は、本明細書で具体的に開示される抗体の領域と実質的な相同性を示すように修飾され得る。
【0218】
本発明の目的上、アミノ酸配列の「変異体」は、アミノ酸挿入変異体、アミノ酸付加変異体、アミノ酸欠失変異体および/またはアミノ酸置換変異体を含む。タンパク質のN末端および/またはC末端に欠失を含むアミノ酸欠失変異体は、N末端および/またはC末端切断変異体とも呼ばれる。
【0219】
アミノ酸挿入変異体は、特定のアミノ酸配列内に1個または2個またはそれ以上のアミノ酸の挿入を含む。挿入を有するアミノ酸配列変異体の場合、1個またはそれ以上のアミノ酸残基がアミノ酸配列内の特定の部位に挿入されているが、生じる産物の適切なスクリーニングを伴うランダムな挿入も可能である。
【0220】
アミノ酸付加変異体は、1個またはそれ以上のアミノ酸、例えば1、2、3、5、10、20、30、50個またはそれ以上のアミノ酸のアミノ末端および/またはカルボキシ末端融合を含む。
【0221】
アミノ酸欠失変異体は、配列からの1個またはそれ以上のアミノ酸の除去、例えば1、2、3、5、10、20、30、50個またはそれ以上のアミノ酸の除去を特徴とする。欠失はタンパク質の任意の位置に存在し得る。
【0222】
アミノ酸置換変異体は、配列内の少なくとも1個の残基が除去され、別の残基がその位置に挿入されていることを特徴とする。相同なタンパク質もしくはペプチドの間で保存されていないアミノ酸配列内の位置に修飾が存在することおよび/またはアミノ酸が類似の特性を有する別のアミノ酸で置換されることが好ましい。好ましくは、タンパク質変異体内のアミノ酸変化は保存的アミノ酸変化、すなわち類似荷電または非荷電アミノ酸の置換である。保存的アミノ酸変化は、側鎖が関連するアミノ酸のファミリーの1つの置換を含む。天然に存在するアミノ酸は、一般に4つのファミリー:酸性(アスパラギン酸、グルタミン酸)、塩基性(リシン、アルギニン、ヒスチジン)、非極性(アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)および非荷電極性(グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、トレオニン、チロシン)アミノ酸に分けられる。フェニルアラニン、トリプトファンおよびチロシンは、時として芳香族アミノ酸として一緒に分類される。
【0223】
好ましくは、所与のアミノ酸配列と前記所与のアミノ酸配列の変異体であるアミノ酸配列との間の類似性の程度、好ましくは同一性の程度は、少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%である。類似性または同一性の程度は、好ましくは、参照アミノ酸配列の全長の少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%または約100%であるアミノ酸領域に関して与えられる。例えば、参照アミノ酸配列が200個のアミノ酸から成る場合、類似性または同一性の程度は、好ましくは少なくとも約20、少なくとも約40、少なくとも約60、少なくとも約80、少なくとも約100、少なくとも約120、少なくとも約140、少なくとも約160、少なくとも約180または約200個のアミノ酸、好ましくは連続するアミノ酸に関して与えられる。好ましい実施形態では、類似性または同一性の程度は参照アミノ酸配列の全長に関して与えられる。配列類似性、好ましく配列同一性を決定するためのアラインメントは、当分野で公知のツールを用いて、好ましくは最良配列アラインメントを使用して、例えばAlignを使用して、標準的な設定、好ましくはEMBOSS::ニードル、マトリックス:Blosum62、キャップオープン10.0、ギャップ伸長0.5を用いて行うことができる。
【0224】
「配列類似性」は、同一であるかまたは保存的アミノ酸置換であるアミノ酸のパーセントを示す。2つのアミノ酸配列の間の「配列同一性」は、これらの配列間で同一であるアミノ酸のパーセントを示す。
【0225】
「同一性パーセント」という用語は、最良のアラインメント後に得られる、比較しようとする2つの配列の間で同一であるアミノ酸残基のパーセントを表すことが意図されており、このパーセントは純粋に統計的であって、2つの配列間の相違はランダムにおよびそれらの全長にわたって分布している。2つのアミノ酸配列の間の配列比較は、従来これらの配列を最適に整列した後で比較することによって実施され、前記比較は、配列類似性の局所領域を同定し、比較するためにセグメントごとにまたは「比較ウィンドウ」ごとに実施される。比較のための配列の最適アラインメントは、手作業による以外に、Smith and Waterman,1981,Ads App.Math.2,482の局所相同性アルゴリズムによって、Neddleman and Wunsch,1970,J.Mol.Biol.48,443の局所相同性アルゴリズムによって、Pearson and Lipman,1988,Proc.Natl Acad.Sci.USA 85,2444の類似性検索法によって、またはこれらのアルゴリズムを使用したコンピュータプログラム(Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Drive,Madison,Wis.のGAP、BESTFIT、FASTA、BLAST P、BLAST NおよびTFASTA)によって作成され得る。
【0226】
同一性パーセントは、比較する2つの配列の間で同一の位置の数を決定し、これら2つの配列間の同一性パーセントを得るためにこの数を比較する位置の数で除して、得られた結果に100を乗じることによって計算される。
【0227】
「細胞」または「宿主細胞」という用語は、好ましくは無傷の細胞、すなわち酵素、細胞小器官または遺伝物質などのその正常な細胞内成分が放出されていない無傷の膜を有する細胞に関する。無傷の細胞は、好ましくは生存可能な細胞、すなわちその正常な代謝機能を果たすことができる生細胞である。好ましくは、前記用語は、本発明によれば外因性核酸でトランスフェクトすることができる任意の細胞に関する。好ましくは、細胞は、外因性核酸でトランスフェクトされ、受容者に移入された場合、受容者内で前記核酸を発現することができる。「細胞」という用語は細菌細胞を包含する;他の有用な細胞は、酵母細胞、真菌細胞または哺乳動物細胞である。適切な細菌細胞には、グラム陰性菌株、例えば大腸菌(Escherichia coli)、プロテウス属(Proteus)およびシュードモナス属(Pseudomonas)の菌株、ならびにグラム陽性細菌株、例えばバチルス属(Bacillus)、ストレプトミセス属(Streptomyces)、ブドウ球菌属(Staphylococcus)およびラクトコッカス属(Lactococcus)の菌株からの細胞が含まれる。適切な真菌細胞には、トリコデルマ属(Trichoderma)、アカパンカビ属(Neurospora)およびアスペルギルス属(Aspergillus)の種からの細胞が含まれる。適切な酵母細胞には、サッカロミセス属(Saccharomyces)(例えばサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae))、シゾサッカロミセス属(Schizosaccharomyces)(例えばシゾサッカロミセス・ポンベ(Schizo saccharomyces pombe))、ピキア属(Pichia)(例えばピキア・パストリス(Pichia pastoris)およびピキア・メタノリカ(Pichia methanolicd)、ならびにハンセヌラ属(Hansenula)の種からの細胞が含まれる。適切な哺乳動物細胞には、例えばCHO細胞、BHK細胞、HeLa細胞、COS細胞、293 HEK等が含まれる。しかし、両生類細胞、昆虫細胞、植物細胞、および異種タンパク質の発現のために当分野で使用される任意の他の細胞も使用することができる。哺乳動物細胞、例えばヒト、マウス、ハムスター、ブタ、ヤギおよび霊長動物からの細胞は、養子移入のために特に好ましい。細胞は多くの組織型に由来してよく、初代細胞および細胞株、例えば免疫系の細胞、特に樹状細胞およびT細胞などの抗原提示細胞、造血幹細胞および間葉幹細胞などの幹細胞ならびに他の細胞型を包含する。抗原提示細胞は、主要組織適合遺伝子複合体に関連して抗原をその表面に提示する細胞である。T細胞は、そのT細胞受容体(TCR)を用いてこの複合体を認識し得る。
【0228】
「トランスジェニック動物」という用語は、1つまたはそれ以上の導入遺伝子、好ましくは重鎖および/もしくは軽鎖導入遺伝子、または導入染色体(動物の天然ゲノムDNAに組み込まれているかもしくは組み込まれていない)を含むゲノムを有し、好ましくは導入遺伝子を発現することができる動物を指す。例えばトランスジェニックマウスは、マウスが、CLDN6抗原および/またはCLDN6を発現する細胞で免疫された場合、ヒト抗CLDN6抗体を産生するように、ヒト軽鎖導入遺伝子と、ヒト重鎖導入遺伝子またはヒト重鎖導入染色体のいずれかを有し得る。ヒト重鎖導入遺伝子は、HCo7もしくはHCol2マウスなどのトランスジェニックマウス、例えばHuMAbマウスの場合のように、マウスの染色体DNAに組み込まれ得るか、またはヒト重鎖導入遺伝子は、国際公開第02/43478号に記載されているトランスクロモソーマル(例えばKM)マウスの場合のように、染色体外に維持され得る。そのようなトランスジェニックおよびトランスクロモソーマルマウスは、V-D-J組換えおよびアイソタイプスイッチを受けることによってCLDN6に対するヒトモノクローナル抗体の複数のアイソタイプ(例えばIgG、IgAおよび/またはIgE)を産生し得る。
【0229】
本明細書で使用される「低減する」、「低下させる」または「阻害する」は、レベル、例えば細胞の発現のレベルまたは増殖のレベルの、好ましくは5%またはそれ以上、10%またはそれ以上、20%またはそれ以上、より好ましくは50%またはそれ以上、最も好ましくは75%またはそれ以上の全体的な低下または全体的な低下を引き起こす能力を意味する。
【0230】
「増大させる」または「増強する」などの用語は、好ましくは、少なくとも約10%、好ましくは少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、さらに一層好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも500%、少なくとも1000%、少なくとも10000%またはさらにそれ以上の増大または増強に関する。
【0231】
以下は、抗体の治療効果の基礎となる機構に関する考察を提供するが、これはいかなる意味においても本発明への限定とみなされるべきではない。
【0232】
本明細書で述べる抗体は、好ましくはADCCまたはCDCを介して、好ましくは免疫系の成分と相互作用する。本明細書で述べる抗体はまた、ペイロード(例えば放射性同位体、薬剤もしくは毒素)を標的として腫瘍細胞を直接死滅させるためにも使用でき、または伝統的な化学療法剤と相乗作用的に使用して、Tリンパ球への化学療法剤の細胞傷害性副作用のために損なわれた可能性がある抗腫瘍免疫応答を含み得る補完的な作用機構を介して腫瘍を攻撃することもできる。しかし、本明細書で述べる抗体はまた、単に細胞表面上のCLDN6に結合することによって、したがって、例えば細胞の増殖をブロックすることによっても作用を及ぼし得る。
【0233】
抗体依存性細胞媒介性細胞傷害
ADCCは、本明細書で述べるエフェクター細胞、特にリンパ球の細胞死滅能力を表し、これは、好ましくは標的細胞が抗体によって印付けられることを必要とする。
【0234】
ADCCは、好ましくは、抗体が腫瘍細胞上の抗原に結合し、抗体Fcドメインが免疫エフェクター細胞の表面のFc受容体(FcR)に係合した場合に起こる。Fc受容体のいくつかのファミリーが同定されており、特定の細胞集団は、規定されたFc受容体を特徴的に発現する。ADCCは、抗原提示および腫瘍に対するT細胞応答の誘導をもたらす様々な程度の即時腫瘍破壊を直接誘導する機構とみなすことができる。好ましくは、ADCCのインビボ誘導は、腫瘍に対するT細胞応答および宿主由来の抗体応答をもたらす。
【0235】
補体依存性細胞傷害
CDCは、抗体によって指令され得るもう1つの細胞死滅方法である。IgMは補体活性化のための最も有効なアイソタイプである。IgG1およびIgG3も、どちらも古典的補体活性化経路によってCDCを指令するのに非常に有効である。好ましくは、このカスケードにおいて、抗原-抗体複合体の形成は、IgG分子などの関与する抗体分子のC2ドメイン上のごく近接した複数のC1q結合部位の露出を生じさせる(C1qは補体C1の3つのサブ成分の1つである)。好ましくは、これらの露出されたC1q結合部位は、それまでの低親和性C1q-IgG相互作用を高いアビディティの相互作用へと変換し、それが、一連の他の補体タンパク質を含む事象のカスケードを開始させ、エフェクター細胞走化性/活性化物質C3aおよびC5aのタンパク質分解性放出をもたらす。好ましくは、補体カスケードは、細胞内へのおよび細胞から外への水と溶質の自由な通過を促進する細胞膜の細孔を作り出す、膜傷害性複合体の形成で終了する。
【0236】
本明細書で述べる抗体は、従来のモノクローナル抗体法、例えばKohler and Milstein,Nature 256:495(1975)の標準的な体細胞ハイブリダイゼーション技術を含む、様々な技術によって作製することができる。体細胞ハイブリダイゼーション手順が原則として好ましいが、モノクローナル抗体を作製するための他の技術、例えばBリンパ球のウイルス形質転換もしくは発癌性形質転換または抗体遺伝子のライブラリを用いたファージディスプレイ技術も使用することができる。
【0237】
モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを作製するための好ましい動物系は、マウスの系である。マウスにおけるハイブリドーマの作製は極めて広く確立された手順である。免疫プロトコルおよび融合のために免疫脾細胞を単離する技術は当分野で公知である。融合パートナー(例えばマウス骨髄腫細胞)および融合手順も公知である。
【0238】
モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを作製するための他の好ましい動物系は、ラットおよびウサギの系である(例えばSpieker-Polet et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.92:9348(1995)に記載されている;またRossi et al.,Am.J.Clin.Pathol.124:295(2005)も参照のこと)。
【0239】
さらに別の好ましい実施形態では、ヒトモノクローナル抗体は、マウスの系ではなくヒト免疫系のパートを担持するトランスジェニックまたはトランスクロモソーマルマウスを使用して作製できる。これらのトランスジェニックおよびトランスクロモソーマルマウスには、それぞれHuMAbマウスおよびKMマウスとして公知のマウスが含まれ、本明細書では集合的に「トランスジェニックマウス」と称する。そのようなトランスジェニックマウスにおけるヒト抗体の生産は、国際公開第2004/035607号の中でCD20に関して詳述されているように実施することができる。
【0240】
モノクローナル抗体を作製するためのさらに別の方法は、定義された特異性を有する抗体を産生するリンパ球から抗体をコードする遺伝子を直接単離することであり、例えばBabcock et al.,1996;A novel strategy for generating monoclonal antibodies from single,isolated lymphocytes producing antibodies of defined specificities参照。組換え抗体工学の詳細については、Welschof and Kraus,Recombinant antibodes for cancer therapy ISBN-0-89603-918-8およびBenny K.C.Lo Antibody Engineering ISBN 1-58829-092-1も参照のこと。
【0241】
抗体を作製するため、抗原配列、すなわちそれに対して抗体が向けられるべき配列に由来する担体結合ペプチド、組換え発現された抗原もしくはそのフラグメントの富化調製物および/または、上述したように、抗原を発現する細胞でマウスを免疫することができる。あるいは、抗原またはそのフラグメントをコードするDNAでマウスを免疫することができる。抗原の精製または富化調製物を使用した免疫が抗体をもたらさない場合は、免疫応答を促進するために抗原を発現する細胞、例えば細胞株でマウスを免疫することもできる。
【0242】
免疫プロトコルの経過中、尾静脈または眼窩後方採血によって得られる血漿および血清試料を用いて免疫応答を観測することができる。免疫グロブリンの十分な力価を有するマウスを融合のために使用できる。特異的抗体を分泌するハイブリドーマの割合を増大させるため、犠死および脾切除の3日前に抗原発現細胞を用いてマウスを腹腔内または静脈内経路で追加免疫することができる。
【0243】
モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを作製するため、免疫マウスからの脾細胞およびリンパ節細胞を単離し、マウス骨髄腫細胞株などの適切な不死化細胞株に融合することができる。生じたハイブリドーマを、次に、抗原特異的抗体の産生に関してスクリーニングすることができる。その後個々のウェルを、ELISAによって抗体を分泌するハイブリドーマに関してスクリーニングできる。抗原発現細胞を使用した免疫蛍光法およびFACS分析により、抗原に対して特異性を有する抗体を同定することができる。抗体分泌ハイブリドーマを再度プレートし、再びスクリーニングして、モノクローナル抗体に関してまだ陽性である場合は限界希釈によってサブクローニングすることができる。その後、安定なサブクローンをインビトロで培養し、特性付けのために組織培養培地中で抗体を作製することができる。
【0244】
抗体はまた、例えば、当分野で周知のように組換えDNA技術と遺伝子トランスフェクション法の組合せを用いて、宿主細胞トランスフェクトーマにおいて産生させることもできる(Morrison,S.(1985)Science 229:1202)。
【0245】
例えば、1つの実施形態では、関心対象の遺伝子、例えば抗体遺伝子を、国際公開第87/04462号、同第89/01036号および欧州特許第338 841号に開示されているGS遺伝子発現系または当分野で周知の他の発現系によって使用されるような真核生物発現プラスミドなどの発現ベクターに連結することができる。クローニングした抗体遺伝子を有する精製プラスミドを、CHO細胞、NS/0細胞、HEK293T細胞またはHEK293細胞などの真核生物宿主細胞、あるいは植物由来細胞、真菌または酵母細胞のような他の真核細胞に導入することができる。これらの遺伝子を導入するのに使用される方法は、電気穿孔、リポフェクチン、リポフェクタミンその他のような当分野で記述されている方法であり得る。宿主細胞へのこれらの抗体遺伝子の導入後、抗体を発現する細胞を同定し、選択することができる。これらの細胞はトランスフェクトーマであり、その後これらを発現レベルに関して増幅し、抗体を生産するためにスケールアップすることができる。これらの培養上清および/または細胞から組換え抗体を単離し、精製することができる。
【0246】
あるいは、クローニングした抗体遺伝子を、微生物、例えば大腸菌などの原核細胞を含む、他の発現系において発現させることができる。さらに、抗体は、ヒツジおよびウサギからの乳もしくはニワトリからの卵などのトランスジェニック非ヒト動物において、またはトランスジェニック植物において生産することができる;例えばVerma,R.,et al.(1998)J.Immunol.Meth.216:165-181;Pollock,et al.(1999)J.Immunol.Meth.231:147-157;およびFischer,R.,et al.(1999)Biol.Chem.380:825-839参照。
【0247】
キメラ化
マウス抗体は、反復適用した場合ヒトにおいて高度に免疫原性であり、治療効果の低下をもたらす。主たる免疫原性は重鎖定常領域によって媒介される。ヒトにおけるマウス抗体の免疫原性は、それぞれの抗体をキメラ化またはヒト化した場合、低減するまたは完全に回避することができる。キメラ抗体は、その異なる部分が異なる動物種に由来する抗体、例えばマウス抗体に由来する可変領域とヒト免疫グロブリン定常領域を有するものである。抗体のキメラ化は、マウス抗体の重鎖および軽鎖の可変領域をヒト重鎖および軽鎖の定常領域と連結することによって達成される(例えばKraus et al.,Methods in Molecular Biology series,Recombinant antibodies for cancer therapy ISBN-0-89603-918-8に記述されているように)。好ましい実施形態では、キメラ抗体は、ヒトκ軽鎖定常領域をマウス軽鎖可変領域に連結することによって作製される。同じく好ましい実施形態では、キメラ抗体は、ヒトλ軽鎖定常領域をマウス軽鎖可変領域に連結することによって作製できる。キメラ抗体の作製のための好ましい重鎖定常領域は、IgG1、IgG3およびIgG4である。キメラ抗体の作製のための他の好ましい重鎖定常領域は、IgG2、IgA、IgDおよびIgMである。
【0248】
ヒト化
抗体は、主として、6つの重鎖および軽鎖相補性決定領域(CDR)内に位置するアミノ酸残基を介して標的抗原と相互作用する。このため、CDR内のアミノ酸配列は、CDRの外側の配列よりも個々の抗体の間で多様である。CDR配列は大部分の抗体-抗原相互作用に関与するので、異なる特性を有する異なる抗体からのフレームワーク配列に移植された、特定の天然に存在する抗体からのCDR配列を含む発現ベクターを構築することにより、特定の天然に存在する抗体の特性を模倣する組換え抗体を発現することが可能である(例えばRiechmann,L.et al.(1998)Nature 332:323-327;Jones,P.et al.(1986)Nature 321:522-525;およびQueen,C.et al.(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.86:10029-10033参照)。そのようなフレームワーク配列は、生殖細胞系抗体遺伝子配列を含む公的DNAデータベースから入手することができる。これらの生殖細胞系配列は、B細胞の成熟の間にV(D)J連結によって形成される、完全に構築された可変遺伝子を含まないので、成熟抗体遺伝子配列とは異なる。生殖細胞系遺伝子配列はまた、個々に均一に可変領域全体にわたる高親和性二次レパートリー抗体の配列とも異なる。
【0249】
抗原に結合する抗体の能力は、標準的な結合アッセイ(例えばELISA、ウェスタンブロット法、免疫蛍光法およびフローサイトメトリ分析)を用いて決定することができる。
【0250】
抗体を精製するため、選択したハイブリドーマをモノクローナル抗体精製用の2リットルスピナーフラスコ中で増殖させることができる。あるいは、抗体を透析バイオリアクターにおいて生産することができる。上清をろ過し、必要に応じて濃縮した後、プロテインG-セファロースまたはプロテインA-セファロースによるアフィニティクロマトグラフィに供することができる。純度を保証するために溶出したIgGをゲル電気泳動および高性能液体クロマトグラフィによって検査できる。緩衝液をPBSに交換し、1.43の吸光係数を使用してOD280によって濃度を測定することができる。モノクローナル抗体をアリコートに分け、-80℃で保存することができる。
【0251】
選択したモノクローナル抗体がユニークなエピトープに結合するかどうかを判定するため、部位指定または多部位指定突然変異誘発を使用することができる。
【0252】
抗体のアイソタイプを決定するため、様々な市販のキット(例えばZymed、Roche Diagnostics)によるアイソタイプELISAを実施することができる。マイクロタイタープレートのウェルを抗マウスIgで被覆することができる。ブロックした後、プレートを周囲温度で2時間、モノクローナル抗体または精製アイソタイプ対照と反応させる。次に、ウェルをマウスIgG1、IgG2a、IgG2bもしくはIgG3、IgAまたはマウスIgM特異的ペルオキシダーゼ結合プローブのいずれかと反応させることができる。洗浄後、プレートをABTS基質(1mg/ml)で展開し、405~650のODで分析することができる。あるいは、IsoStrip Mouse Monoclonal Antibody Isotyping Kit(Roche、カタログ番号1493027)を、製造者によって述べられているように使用し得る。
【0253】
免疫したマウスの血清中の抗体の存在または抗原を発現する生細胞へのモノクローナル抗体の結合を明らかにするために、フローサイトメトリが使用できる。天然にまたはトランスフェクション後に抗原を発現する細胞株と抗原発現を欠く陰性対照(標準的な増殖条件下で増殖させた)を、ハイブリドーマ上清中または1%FBSを含有するPBS中で様々な濃度のモノクローナル抗体と混合し、4℃で30分間インキュベートすることができる。洗浄後、APC標識またはAlexa647標識抗IgG抗体を、一次抗体染色と同じ条件下で抗原結合モノクローナル抗体に結合することができる。単一生細胞をゲートする側方光散乱特性を利用したFACS装置でのフローサイトメトリによって試料を分析することができる。単一測定において抗原特異的モノクローナル抗体を非特異的結合抗体から区別するために、同時トランスフェクションの方法が使用できる。抗原と蛍光マーカーをコードするプラスミドを一過性にトランスフェクトした細胞を上述したように染色することができる。トランスフェクトされた細胞は、抗体染色細胞とは異なる蛍光チャネルで検出できる。トランスフェクト細胞の大部分は両方の導入遺伝子を発現するので、抗原特異的モノクローナル抗体は蛍光マーカーを発現する細胞に選択的に結合し、一方非特異的抗体は同等の割合で非トランスフェクト細胞に結合する。蛍光顕微鏡検査法を用いた選択的なアッセイをフローサイトメトリアッセイに加えてまたはその代わりに使用し得る。細胞を上述したように正確に染色し、蛍光顕微鏡法によって検査することができる。
【0254】
免疫マウスの血清中の抗体の存在または抗原を発現する生細胞へのモノクローナル抗体の結合を明らかにするために、免疫蛍光顕微鏡分析を用いることができる。例えば、自然にまたはトランスフェクション後に抗原を発現する細胞株と抗原発現を欠く陰性対照を、10%ウシ胎仔血清(FCS)、2mM L-グルタミン、100IU/mlペニシリンおよび100μg/mlストレプトマイシンを添加したDMEM/F12培地中、標準的な増殖条件下にチャンバースライド中で増殖させる。次に細胞をメタノールまたはパラホルムアルデヒドで固定するかまたは未処理のまま放置することができる。その後細胞を、25℃で30分間、抗原に対するモノクローナル抗体と反応させることができる。洗浄後、細胞を同じ条件下でAlexa555標識抗マウスIgG二次抗体(Molecular Probes)と反応させることができる。その後蛍光顕微鏡法によって細胞を検査することができる。
【0255】
抗原を発現する細胞からの細胞抽出物および適切な陰性対照を調製し、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)ポリアクリルアミドゲル電気泳動に供することができる。電気泳動後、分離された抗原をニトロセルロース膜に移し、ブロックして、試験するモノクローナル抗体でプローブする。抗マウスIgGペルオキシダーゼを使用してIgG結合を検出し、ECL基質で展開することができる。
【0256】
抗体を、当業者に周知の方法で免疫組織化学によって、例えば通常の外科手術の間に患者から得た、または自然にもしくはトランスフェクション後に抗原を発現する細胞株を接種した異種移植腫瘍を担持するマウスから得た、非癌組織試料または癌組織試料からの、パラホルムアルデヒドもしくはアセトンで固定した凍結切片またはパラホルムアルデヒドで固定したパラフィン包埋組織切片を使用して、抗原との反応性をさらに試験することができる。免疫染色のために、抗原に対して反応性の抗体をインキュベートし、次いで供給者の指示に従ってホースラディッシュペルオキシダーゼ結合ヤギ抗マウスまたはヤギ抗ウサギ抗体(DAKO)と共にインキュベートすることができる。
【0257】
抗体を、CLDN6を発現する細胞の食作用および死滅を媒介するその能力に関して試験することができる。インビトロでのモノクローナル抗体活性の試験は、インビボモデルを試験するのに先立つ初期スクリーニングを提供する。
【0258】
抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)
簡単に述べると、健常ドナーからの多形核細胞(PMN)、NK細胞、単球、単核細胞または他のエフェクター細胞をFicoll Hypaque密度勾配遠心分離、次いで混入赤血球の溶解によって精製することができる。洗浄したエフェクター細胞を、10%熱不活性化ウシ胎仔血清または5%熱不活性化ヒト血清を添加したRPMIに懸濁し、CLDN6を発現する51Cr標識標的細胞と、エフェクター細胞対標的細胞の様々な比率で混合することができる。あるいは、標的細胞を蛍光増強リガンド(BATDA)で標識してもよい。死細胞から放出される増強リガンドを有するユウロピウムの高度蛍光キレートを蛍光光度計によって測定することができる。別の選択的な技術は、ルシフェラーゼによる標的細胞のトランスフェクションを利用し得る。添加したルシファーイエローは、その後、生細胞によってのみ酸化され得る。次に精製抗CLDN6 IgGを様々な濃度で添加することができる。無関係なヒトIgGを陰性対照として使用できる。アッセイは、使用するエフェクター細胞型に依存して37℃で4~20時間実施することができる。51Crの放出または培養上清中のEuTDAキレートの存在を測定することによって試料を細胞溶解に関して検定できる。あるいは、ルシファーイエローの酸化から生じるルミネセンスは生細胞の評価尺度であり得る。
【0259】
抗CLDN6モノクローナル抗体はまた、細胞溶解が複数のモノクローナル抗体で増強されるかどうかを判定するために様々な組合せで試験することもできる。
【0260】
補体依存性細胞傷害(CDC)
モノクローナル抗CLDN6抗体を、様々な公知の技術を用いてCDCを媒介するその能力に関して試験することができる。例えば、補体のための血清を当業者に公知の方法で血液から入手できる。mAbのCDC活性を測定するために種々の方法を用いることができる。例えば51Cr放出を測定することができ、またはヨウ化プロピジウム(PI)排除アッセイを用いて膜透過性の上昇を評価することができる。簡単に述べると、標的細胞を洗浄し、5×10/mlを様々な濃度のmAbと共に室温または37℃で10~30分間インキュベートすることができる。次に血清または血漿を20%(v/v)の最終濃度まで添加し、細胞を37℃で20~30分間インキュベートすることができる。各々の試料からのすべての細胞をFACSチューブ中のPI溶液に添加することができる。その後FACSArrayを使用してフローサイトメトリ分析によって混合物を直ちに分析することができる。
【0261】
選択的なアッセイでは、CDCの誘導を接着細胞で測定することができる。このアッセイの1つの実施形態では、アッセイの24時間前に細胞を3×10/ウェルの密度で組織培養平底マイクロタイタープレートに接種する。その翌日、増殖培地を取り出し、細胞を抗体と共に三つ組みでインキュベートする。対照細胞を、バックグラウンド溶解および最大溶解の測定のためにそれぞれ増殖培地または0.2%サポニンを含有する増殖培地と共にインキュベートする。室温で20分間のインキュベーション後、上清を取り、DMEM中の20%(v/v)ヒト血漿または血清(あらかじめ37℃に温めておく)を細胞に添加して、37℃でさらに20分間インキュベートする。各々の試料からのすべての細胞をヨウ化プロピジウム溶液(10μg/ml)に添加する。次に、上清を、2.5μg/ml臭化エチジウムを含有するPBSに交換し、Tecan Safireを使用して520nmでの励起後の蛍光放出を600nmで測定する。特異的溶解のパーセントを以下のように計算する:特異的溶解%=(試料蛍光-バックグラウンド蛍光)/(最大溶解蛍光-バックグラウンド蛍光)×100。
【0262】
モノクローナル抗体によるアポトーシスの誘導および細胞増殖の阻害
アポトーシスを開始させる能力に関して試験するため、モノクローナル抗CLDN6抗体を、例えばCLDN6陽性腫瘍細胞またはCLDN6トランスフェクト腫瘍細胞と共に37℃で約20時間インキュベートすることができる。細胞を採取し、アネキシンV結合緩衝液(BD biosciences)中で洗浄して、FITCまたはAPCと結合したアネキシンV(BD biosciences)と共に暗所で15分間インキュベートすることができる。各々の試料からのすべての細胞をFACSチューブ中のPI溶液(PBS中10μg/ml)に添加し、フローサイトメトリによって直ちに評価することができる(上記のように)。あるいは、モノクローナル抗体による細胞増殖の一般的な阻害は市販のキットで検出できる。DELFIA Cell Proliferation Kit(Perkin-Elmer、カタログ番号AD0200)は、マイクロプレートにおける増殖中の細胞のDNA合成の間の5-ブロモ-2'-デオキシウリジン(BrdU)の組込みの測定に基づく非同位体免疫検定法である。組み込まれたBrdUは、ユウロピウム標識モノクローナル抗体を用いて検出される。抗体検出を可能にするため、Fix液を用いて細胞を固定し、DNA変性する。非結合抗体を洗い流し、DELFIA誘導剤を添加して標識抗体からユウロピウムイオンを溶液中に解離し、溶液中で前記イオンはDELFIA誘導剤の成分と高度蛍光キレートを形成する。検出において時間分解蛍光光度法を利用して測定された蛍光は、各々のウェルの細胞におけるDNA合成に比例する。
【0263】
前臨床試験
本明細書で述べる結合物質はまた、CLDN6を発現する腫瘍細胞の増殖を制御するうえでのそれらの効果を測定するためにインビボモデルにおいて(例えばCLDN6を発現する細胞株を接種した異種移植腫瘍を担持する免疫不全マウスにおいて)試験することもできる。
【0264】
CLDN6を発現する腫瘍細胞を免疫無防備状態マウスまたは他の動物に異種移植した後のインビボ試験を、本明細書で述べる抗体を使用して実施することができる。腫瘍を有さないマウスに抗体を投与し、次いで腫瘍細胞を注射して、腫瘍の形成または腫瘍関連症状を予防する抗体の作用を測定することができる。腫瘍担持マウスに抗体を投与し、腫瘍の成長、転移または腫瘍関連症状を低減するそれぞれの抗体の治療効果を測定することができる。抗体の適用は、併用の相乗効果および潜在的毒性を測定するために他の物質、例えば細胞増殖抑制剤、増殖因子阻害剤、細胞周期ブロッカー、血管新生阻害剤または他の抗体の適用と組み合わせることができる。抗体によって媒介される毒性副作用を分析するため、動物に抗体または対照試薬を接種し、CLDN6抗体治療に関連する可能性がある症状に関して十分に検討することができる。CLDN6抗体のインビボ適用の起こり得る副作用には、特に胎盤を含むCLDN6発現組織における毒性が含まれる。ヒトおよび他の種、例えばマウスにおいてCLDN6を認識する抗体は、ヒトにおけるモノクローナルCLDN6抗体の適用によって媒介される潜在的副作用を予測するために特に有用である。
【0265】
抗体によって認識されるエピトープのマッピングは、Glenn E.Morrisによる"Epitope Mapping Protocols(Methods in Molecular Biology)"ISBN-089603-375-9およびOlwyn M.R.Westwood,Frank C.Hayによる"Epitope Mapping:A Practical Approach"Practical Approach Series,248において詳述されているように実施することができる。
【0266】
本明細書で述べる化合物および作用物質は、任意の適切な医薬組成物の形態で投与し得る。
【0267】
本発明の医薬組成物は、好ましくは無菌であり、所望の反応または所望の作用を生じさせるために本明細書で述べる抗体および場合により本明細書で論じるさらなる作用物質の有効量を含有する。
【0268】
医薬組成物は、通常は単位投与形態で提供され、それ自体公知の方法で調製され得る。医薬組成物は、例えば溶液または懸濁液の形態であり得る。
【0269】
医薬組成物は、塩、緩衝物質、防腐剤、担体、希釈剤および/または賦形剤を含有してよく、それらすべてが、好ましくは医薬的に許容される。「医薬的に許容される」という用語は、医薬組成物の活性成分の作用と相互作用しない物質の無毒性を指す。
【0270】
医薬的に許容されない塩は、医薬的に許容される塩を調製するために使用でき、本発明に包含される。この種の医薬的に許容される塩は、非限定的に、以下の酸:塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、クエン酸、ギ酸、マロン酸、コハク酸等から調製されるものを含む。医薬的に許容される塩はまた、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩、例えばナトリウム塩、カリウム塩またはカルシウム塩としても調製し得る。
【0271】
医薬組成物における使用のための適切な緩衝物質には、塩中の酢酸、塩中のクエン酸、塩中のホウ酸および塩中のリン酸が含まれる。
【0272】
医薬組成物における使用のための適切な防腐剤には、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、パラベンおよびチメロサールが含まれる。
【0273】
注射用製剤は、乳酸リンガー液などの医薬的に許容される賦形剤を含有し得る。
【0274】
「担体」という用語は、適用を容易にする、増強するまたは可能にするために活性成分と組み合わせる、天然または合成の有機または無機成分を指す。本発明によれば、「担体」という用語はまた、患者への投与に適する、1つまたはそれ以上の適合性の固体または液体充填剤、希釈剤または被包物質も包含する。
【0275】
非経口投与のために可能な担体物質は、例えば滅菌水、リンガー液、乳酸リンガー液、滅菌塩化ナトリウム溶液、ポリアルキレングリコール、水素化ナフタレンおよび、特に生体適合性ラクチドポリマー、ラクチド/グリコリドコポリマーまたはポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンコポリマーである。
【0276】
本明細書で使用される場合の「賦形剤」という用語は、医薬組成物中に存在してよく、および活性成分ではないすべての物質、例えば担体、結合剤、潤滑剤、増粘剤、界面活性剤、防腐剤、乳化剤、緩衝剤、着香剤または着色剤を示すことが意図されている。
【0277】
本明細書で述べる作用物質および組成物は、任意の従来の経路によって、例えば注射または注入を含む非経口投与によって投与し得る。投与は、好ましくは非経口的であり、例えば静脈内、動脈内、皮下、皮内または筋肉内経路である。
【0278】
非経口投与に適する組成物は、通常、好ましくは受容者の血液と等張である、活性化合物の滅菌水性または非水性調製物を含む。適合性担体および溶媒の例は、リンガー液および等張塩化ナトリウム溶液である。加えて、通常は滅菌の、固定油が溶液または懸濁液の媒質として使用される。
【0279】
本明細書で述べる作用物質および組成物は有効量で投与される。「有効量」は、単独でまたはさらなる投与物と共に所望の反応または所望の作用を達成する量を指す。特定の疾患または特定の状態の治療の場合、所望の反応は、好ましくは疾患の進行の阻止に関する。これは、疾患の進行を遅らせることおよび、特に疾患の進行を妨げるまたは逆転させることを含む。疾患または状態の治療における所望の反応はまた、前記疾患または前記状態の発症の遅延または発症の予防であり得る。特に、「有効量」という用語は、癌およびその1つもしくはそれ以上の症状の発現、再発もしくは発症の予防をもたらす、癌の重症度、期間を低減する、癌の1つもしくはそれ以上の症状を改善する、癌の進行を防止する、癌の退縮を生じさせる、ならびに/または癌の転移を予防するのに十分な治療の量を指す。本発明の1つの実施形態では、前記治療量は、癌幹細胞集団の安定化、低減もしくは排除ならびに/または原発癌、転移癌および/もしくは再発癌の根絶、除去もしくは抑制を達成するのに有効である。
【0280】
本明細書で述べる作用物質または組成物の有効量は、治療される状態、疾患の重症度、患者の年齢、生理的状態、大きさおよび体重を含む患者の個別のパラメータ、治療の期間、付随する治療法の種類(存在する場合)、特定の投与経路および同様の因子に依存する。したがって、本明細書で述べる作用物質の投与される用量は、そのような様々なパラメータに依存し得る。患者における反応が初期用量で不十分である場合は、より高用量(または異なる、より限局された投与経路によって達成される効果的により高い用量)を使用し得る。
【0281】
本明細書で述べる作用物質および組成物は、癌疾患、例えばCLDN6を発現する癌幹細胞の存在を特徴とする、本明細書で述べるような癌疾患を治療するまたは予防するために患者に投与することができる。
【0282】
本明細書で提供される作用物質および組成物は、単独でまたは手術、放射線照射、化学療法および/または骨髄移植(自家、同系、同種異系または無関係)などの従来の治療レジメンと組み合わせて使用し得る。
【0283】
癌の治療は、しばしば2、3、4またはさらにそれ以上の抗癌薬/療法の組合せ作用が単独療法アプローチの効果よりもかなり強力な相乗効果を生じさせるので、併用戦略が特に望ましい分野である。したがって、本発明の別の実施形態では、癌治療を様々な他の薬剤と有効に併用し得る。その中には、例えば従来の腫瘍療法、マルチエピトープ戦略、付加的な免疫療法、および血管新生またはアポトーシスを標的とする治療アプローチとの併用がある(総説については、例えばAndersen et al.2008:Cancer treatment:the combination of vaccination with other therapies.Cancer Immunology Immunotherapy,57(11):1735-1743参照)。異なる作用物質の連続的な投与は異なるチェックポイントで癌細胞の増殖を阻害することができ、一方他の作用物質は、例えば新生血管形成、悪性細胞の生存または転移を阻害し、潜在的に癌を慢性疾患に転換し得る。
【0284】
以下のリストは、本発明と組み合わせて使用することができる抗癌剤および療法の一部の非限定的な例を提供する:
【0285】
1.化学療法
化学療法は多数の癌型の標準的な治療である。最も一般的な化学療法剤は、癌細胞の主たる特性の1つである、急速に分裂する細胞を死滅させることによって作用する。したがって、例えばアルキル化剤、代謝拮抗物質、アントラサイクリン、植物アルカロイド、トポイソメラーゼ阻害剤、および細胞分裂またはDNA合成のいずれかに影響を及ぼす他の抗腫瘍薬などの従来の化学療法薬との併用は、サプレッサー細胞を除去し、免疫系を再起動させることによって、腫瘍細胞を免疫媒介性死滅に対してより感受性にすることによって、または免疫系の細胞の付加的な活性化によって、本発明の治療効果を有意に改善し得る。化学療法薬とワクチン接種に基づく免疫療法薬の相乗的抗癌作用は多くの試験において明らかにされている(例えばQuoix et al.2011:Therapeutic vaccination with TG4010 and first-line chemotherapy in advanced non-small-cell lung cancer:a controlled phase 2B trial.Lancet Oncol.12(12):1125-33参照;またLiseth et al.2010:Combination of intensive chemotherapy and anticancer vaccines in the treatment of human malignancies:the hematological experience.J Biomed Biotechnol.2010:6920979も参照;またHirooka et al 2009:A combination therapy of gemcitabine with immunotherapy for patients with inoperable locally advanced pancreatic cancer.Pancreas 38(3):e69-74も参照のこと)。併用療法に基本的に適する使用可能な数百の化学療法薬がある。本発明と併用できる化学療法薬の一部の(非限定的な)例は、カルボプラチン(Paraplatin)、シスプラチン(Platinol、Platinol-AQ)、クリゾチニブ(Xalkori)、シクロホスファミド(Cytoxan、Neosar)、ドセタキセル(Taxotere)、ドキソルビシン(Adriamycin)、エルロチニブ(Tarceva)、エトポシド(VePesid)、フルオロウラシル(5-FU)、ゲムシタビン(Gemzar)、イマチニブメシレート(Gleevec)、イリノテカン(Camptosar)、リポソーム被包ドキソルビシン(Doxil)、メトトレキサート(Folex、Mexate、Amethopterin)、パクリタキセル(Taxol、Abraxane)、ソラフィニブ(Nexavar)、スニチニブ(Sutent)、トポテカン(Hycamtin)、トラベクテジン(Yondelis)、ビンクリスチン(Oncovin、Vincasar PFS)およびビンブラスチン(Velban)である。
【0286】
2.手術
癌手術-腫瘍を除去する手術-は依然として癌治療の基礎である。残存するいかなる腫瘍細胞も取り除くために手術を他の癌治療と組み合わせることができる。外科的な方法をその後の免疫療法処置と組み合わせることは、幾度となく実証されてきた有望なアプローチである。
【0287】
3.放射線
放射線療法は依然として癌治療の重要な構成要素であり、すべての癌患者の約50%が疾病の経過中に放射線療法を受ける。放射線療法の主たる目標は、癌細胞にその増殖(細胞分裂)能を失わせることである。癌を治療するのに使用される放射線の種類は、光子放射線(x線およびγ線)ならびに粒子放射線(電子線、陽子線および中性子線)である。放射線を癌の位置に送達する2つの方法がある。外部放射線は、高エネルギー線(光子、陽子または粒子放射線)を腫瘍の位置に向けることによって体外から送達される。内部放射線または近接照射療法は、カテーテルまたはシード内に密封された線源によって体内から直接腫瘍部位に送達される。本発明と組み合わせて適用できる放射線療法技術は、例えば分割法(分割方式で送達される放射線療法、例えば数週間にわたって与えられる1.5~3Gyの日々分割線量)、3次元原体照射法(3DCRT;肉眼的腫瘍体積に放射線を送達する)、強度変調放射線治療(IMRT;複数の放射線ビームのコンピュータ制御による強度変調)、画像誘導放射線治療(IGRT;修正を考慮に入れたプレ放射線治療イメージングを含む技術)、および定位放射線治療(SRBT、少数の治療画分だけに非常に高い個別線量を送達する)である。放射線療法の総説については、Baskar et al.2012:Cancer and radiation therapy:current advances and future directions.Int.J Med Sci.9(3):193-199参照。
【0288】
4.抗体
抗体(好ましくはモノクローナル抗体)は、様々な機構を介して癌細胞に対するその治療効果を達成する。抗体は、アポトーシスまたはプログラム細胞死を生じさせるのに直接の作用を及ぼすことができる。それらは、例えば増殖因子受容体などのシグナル伝達経路の成分をブロックし、腫瘍細胞の増殖を有効に停止させることができる。モノクローナル抗体を発現する細胞において、それらは抗イディオタイプ抗体の形成をもたらし得る。間接的な作用には、単球およびマクロファージなどの細胞傷害性を有する細胞を動員することが含まれる。この種の抗体媒介性細胞死滅は、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)と呼ばれる。抗体はまた、補体に結合して、補体依存性細胞傷害(CDC)として知られる直接の細胞傷害性をもたらす。外科的な方法を免疫療法薬または方法と組み合わせることは、例えばGadri et al.2009:Synergistic effect of dendritic cell vaccination and anti-CD20 antibody treatment in the therapy of murine lymphoma.J Immunother.32(4):333-40において明らかにされたように、成功を収めたアプローチである。以下のリストは、本発明と組み合わせて使用することができる抗癌抗体および潜在的な抗体標的(括弧内)の一部の非限定的な例を提供する:アバゴボマブ(CA-125)、アブシキシマブ(CD41)、アデカツムマブ(EpCAM)、アフツズマブ(CD20)、アラシズマブペゴール(VEGFR2)、アルツモマブペンテテート(CEA)、アマツキシマブ(MORAb-009)、アナツモマブ・マフェナトクス(TAG-72)、アポリズマブ(HLA-DR)、アルシツモマブ(CEA)、バビツキシマブ(ホスファチジルセリン)、ベクツモマブ(CD22)、ベリムマブ(BAFF)、ベバシズマブ(VEGF-A)、ビバツズマブ・メルタンシン(CD44 v6)、ブリナツモマブ(CD19)、ブレンツキシマブ・ベドチン(CD30 TNFRSF8)、カンツズマブ・メルタンシン(ムチンCanAg)、カンツズマブ・ラブタンシン(MUC1)、カプロマブペンデチド(前立腺癌細胞)、カルルマブ(CNTO888)、カツマキソマブ(EpCAM、CD3)、セツキシマブ(EGFR)、シタツズマブ・ボガトクス(EpCAM)、シクスツムマブ(IGF-1受容体)、クラウジキシマブ(クローディン)、クリバツズマブ・テトラキセタン(MUC1)、コナツムマブ(TRAIL-R2)、ダセツズマブ(CD40)、ダロツズマブ(インスリン様増殖因子I受容体)、デノスマブ(RANKL)、デツモマブ(Bリンパ腫細胞)、ドロジツマブ(DR5)、エクロメキシマブ(GD3ガングリオシド)、エドレコロマブ(EpCAM)、エロツズマブ(SLAMF7)、エナバツズマブ(PDL192)、エンシツキシマブ(NPC-1C)、エプラツズマブ(CD22)、エルツマキソマブ(HER2/neu、CD3)、エタラシズマブ(インテグリンαvβ3)、ファルレツズマブ(葉酸受容体1)、FBTA05(CD20)、フィクラツズマブ(SCH 900105)、フィギツムマブ(IGF-1受容体)、フランボツマブ(糖タンパク質75)、フレソリムマブ(TGF-β)、ガリキシマブ(CD80)、ガニツマブ(IGF-I)、ゲムツズマブ・オゾガマイシン(CD33)、ゲボキズマブ(IL-1β)、ジレンツキシマブ(炭酸脱水酵素9(CA-IX))、グレムバツムマブ・ベドチン(GPNMB)、イブリツモマブ・チウキセタン(CD20)、イクルクマブ(VEGFR-1)、イゴボマブ(CA-125)、インダツキシマブ・ラブタンシン(SDC1)、インテツムマブ(CD51)、イノツズマブ・オゾガマイシン(CD22)、イピリムマブ(CD152)、イラツムマブ(CD30)、ラベツズマブ(CEA)、レキサツムマブ(TRAIL-R2)、リビビルマブ(B型肝炎表面抗原)、リンツズマブ(CD33)、ロルボツズマブ・メルタンシン(CD56)、ルカツムマブ(CD40)、ルミリキシマブ(CD23)、マパツムマブ(TRAIL-R1)、マツズマブ(EGFR)、メポリズマブ(IL-5)、ミラツズマブ(CD74)、ミツモマブ(GD3ガングリオシド)、モガムリズマブ(CCR4)、モキセツモマブ・パスドトクス(CD22)、ナコロマブ・タフェナトクス(C242抗原)、ナプツモマブ・エスタフェナトクス(5T4)、ナルナツマブ(RON)、ネシツムマブ(EGFR)、ニモツズマブ(EGFR)、ニボルマブ(IgG4)、オファツムマブ(CD20)、オララツマブ(PDGF-R α)、オナルツズマブ(ヒト散乱因子受容体キナーゼ)、オポルツズマブ・モナトクス(EpCAM)、オレゴボマブ(CA-125)、オキセルマブ(OX-40)、パニツムマブ(EGFR)、パトリツマブ(HER3)、ペムツモマブ(MUC1)、ペルツズマブ(HER2/neu)、ピンツモマブ(腺癌抗原)、プリツムマブ(ビメンチン)、ラコツモマブ(N-グリコリルノイラミン酸)、ラドレツマブ(フィブロネクチンエクストラドメインB)、ラフィビルマブ(狂犬病ウイルス糖タンパク質)、ラムシルマブ(VEGFR2)、リロツムマブ(HGF)、リツキシマブ(CD20)、ロバツムマブ(IGF-1受容体)、サマリズマブ(CD200)、シブロツズマブ(FAP)、シルツキシマブ(IL-6)、タバルマブ(BAFF)、タカツズマブ・テトラキセタン(α-フェトプロテイン)、タプリツモマブ・パプトクス(CD19)、テナツモマブ(テネイシンC)、テプロツムマブ(CD221)、チシリムマブ(CTLA-4)、チガツズマブ(TRAIL-R2)、TNX-650 (IL-13)、トシツモマブ(CD20)、トラスツズマブ(HER2/neu)、TRBS07(GD2)、トレメリムマブ(CTLA-4)、ツコツズマブ・セルモロイキン(EpCAM)、ウブリツキシマブ(MS4A1)、ウレルマブ(4-1BB)、ボロシキシマブ(インテグリンα5β1)、ボツムマブ(腫瘍抗原CTAA16.88)、ザルツムマブ(EGFR)、ザノリムマブ(CD4)。
【0289】
5.サイトカイン、ケモカイン、共刺激分子、融合タンパク質
有益な免疫調節または腫瘍阻害作用を誘発するためのサイトカイン、ケモカイン、共刺激分子および/またはその融合タンパク質と本発明の抗原をコードする医薬組成物との併用は、本発明のもう1つ別の実施形態である。腫瘍内への免疫細胞の浸潤を増大させ、腫瘍を排液するリンパ節への抗原提示細胞の移動を促進するために、C、CC、CXCおよびCX3C構造を有する様々なケモカインを使用し得る。最も有望なケモカインの一部は、例えばCCR7ならびにそのリガンドであるCCL19およびCCL21、さらにCCL2、CCL3、CCL5およびCCL16である。他の例は、CXCR4、CXCR7およびCXCL12である。さらに、例えばB7リガンド(B7.1およびB7.2)などの共刺激分子または調節分子が有用である。他のサイトカイン、例えば特にインターロイキン(例えばIL-1~IL17)、インターフェロン(例えばIFNα1~IFNα8、IFNα10、IFNα13、IFNα14、IFNα16、IFNα17、IFNα21、IFNβ1、IFNW、IFNE1およびIFNK)、造血因子、TGF(例えばTGF-α、TGF-βおよびTGFファミリーの他の成員)、最後に受容体の腫瘍壊死因子ファミリーの成員およびそれらのリガンド、ならびに4-1BB、4-1BB-L、CD137、CD137L、CTLA-4GITR、GITRL、Fas、Fas-L、TNFR1、TRAIL-R1、TRAIL-R2、p75NGF-R、DR6、LTβR、RANK、EDAR1、XEDAR、Fn114、Troy/Trade、TAJ、TNFRII、HVEM、CD27、CD30、CD40、4-1BB、OX40、GITR、GITRL、TACI、BAFF-R、BCMA、RELTおよびCD95(Fas/APO-1)、グルココルチコイド誘導性TNFR関連タンパク質、TNF受容体関連アポトーシス媒介タンパク質(TRAMP)および細胞死受容体6(DR6)を含むがこれらに限定されない他の刺激分子も有用である。特にCD40/CD40LおよびOX40/OX40Lは、T細胞の生存および増殖へのそれらの直接の影響のゆえに、併用免疫療法の重要な標的である。総説についてはLechner et al.2011:Chemokines,costimulatory molecules and fusion proteins for the immunotherapy of solid tumors.Immunotherapy 3(11),1317-1340参照。
【0290】
6.細菌治療
研究者達は、低酸素腫瘍の内部を枯渇させるためにノビイ菌(クロストリジウム・ノビイ(Clostridium novyi))などの嫌気性菌を使用してきた。これらはその後、腫瘍の酸素化側と接触したときに死滅するはずであり、それらが身体の残りの部分には無害であることを意味する。別の戦略は、非毒性プロドラッグを毒性薬剤に変換することができる酵素で形質転換した嫌気性菌を使用することである。腫瘍の壊死および低酸素領域における細菌の増殖と共に、酵素が腫瘍内でのみ発現される。したがって、全身的に適用されたプロドラッグは腫瘍内でのみ毒性薬剤へと代謝される。これは非病原性嫌気性菌、スポロゲネス菌(クロストリジウム・スポロゲネス(Clostridium sporogenes))に関して有効であることが実証されている。
【0291】
7.キナーゼ阻害剤
補完的な癌療法のための潜在的標的の別の大きな群はキナーゼ阻害剤であり、というのは、癌細胞の増殖および生存はキナーゼ活性の脱制御と密接に連動するからである。正常なキナーゼ活性を回復するため、したがって腫瘍増殖を低減するために広範囲の阻害剤が使用されている。標的キナーゼの群は、受容体チロシンキナーゼ、例えばBCR-ABL、B-Raf、EGFR、HER-2/ErbB2、IGF-IR、PDGFR-α、PDGFR-β、c-Kit、Flt-4、Flt3、FGFR1、FGFR3、FGFR4、CSF1R、c-Met、RON、c-Ret、ALK、細胞質チロシンキナーゼ、例えばc-SRC、c-YES、Abl、JAK-2、セリン/トレオニンキナーゼ、例えばATM、Aurora A & B、CDK、mTOR、PKCi、PLK、b-Raf、S6K、STK11/LKB1および脂質キナーゼ、例えばPI3K、SK1を含む。低分子キナーゼ阻害剤は、例えばPHA-739358、ニロチニブ、ダサチニブおよびPD166326、NSC 743411、ラパチニブ(GW-572016)、カネルチニブ(CI-1033)、セマキシニブ(SU5416)、バタラニブ(PTK787/ZK222584)、スーテント(SU11248)、ソラフェニブ(BAY 43-9006)およびレフルノミド(SU101)である。さらなる情報については、例えばZhang et al.2009:Targeting cancer with small molecule kinase inhibitors.Nature Reviews Cancer 9,28-39参照。
【0292】
8.Toll様受容体
Toll様受容体(TLR)ファミリーの成員は、先天免疫と適応免疫との間の重要なリンクであり、多くのアジュバントの作用はTLRの活性化に依存する。癌に対する多くの確立されたワクチンは、ワクチン応答を増強するためにTLRのリガンドを組み込んでいる。TLR2、TLR3、TLR4に加えて、特にTLR7およびTLR8が受動免疫療法アプローチでの癌療法のために検討されてきた。密接に関連するTLR7とTLR8は、免疫細胞、腫瘍細胞および腫瘍微小環境に影響を及ぼすことによって抗腫瘍応答に寄与し、ヌクレオシド類似体構造体によって活性化され得る。すべてのTLRは単独免疫療法としてまたは癌ワクチンアジュバントして使用されており、本発明の製剤および方法と相乗的に併用し得る。さらなる情報についてはvan Duin et al.2005:Triggering TLR signaling in vaccination.Trends in Immunology,27(1):49-55参照。
【0293】
9.血管新生阻害剤
腫瘍媒介性エスケープ機構および免疫抑制によって影響を受ける免疫調節受容体を標的とする療法に加えて、腫瘍環境を標的とする療法がある。血管新生阻害剤は、腫瘍が生存するのに必要な血管の広範囲の成長(血管新生)を防止する。例えば腫瘍細胞の栄養および酸素要求の増大を満たすために腫瘍細胞によって促進される血管新生は、種々の分子を標的とすることによってブロックすることができる。本発明と組み合わせ得る血管新生媒介分子または血管新生阻害剤の非限定的な例は、可溶性VEGF(VEGFアイソフォームVEGF121およびVEGF165、受容体VEGFR1、VEGFR2および共受容体ニューロピリン1およびニューロピリン2)1ならびにNRP-1、アンギオポエチン2、TSP-1およびTSP-2、アンギオスタチンおよび関連分子、エンドスタチン、バソスタチン、カルレティキュリン、血小板第4因子、TIMPおよびCDAI、Meth-1およびMeth-2、IFN-α、-βおよび-γ、CXCL10、IL-4、-12および-18、プロトロンビン(クリングルドメイン2)、アンチトロンビンIIIフラグメント、プロラクチン、VEGI、SPARC、オステオポンチン、マスピン、カンスタチン、プロリフェリン関連タンパク質、レスチンならびに、例えばベバシズマブ、イトラコナゾール、カルボキシアミドトリアゾール、TNP-470、CM101、IFN-α、血小板第4因子、スラミン、SU5416、トロンボスポンジン、VEGFRアンタゴニスト、血管新生抑制性ステロイド+ヘパリン、軟骨由来血管新生阻害因子、マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤、2-メトキシエストラジオール、テコガラン、テトラチオモリブデート、サリドマイド、トロンボスポンジン、プロラクチンα Vβ3阻害剤、リノミド、タスキニモドのような薬剤である。総説についてはSchoenfeld and Dranoff 2011:Anti-angiogenesis immunotherapy.Hum Vaccin.(9):976-81参照。
【0294】
10.低分子標的療法薬
低分子標的療法薬は、一般に、癌細胞内の変異した、過剰発現されたまたはさもなければ重要なタンパク質上の酵素ドメインの阻害剤である。著名で非限定的な例は、チロシンキナーゼ阻害剤イマチニブ(Gleevec/Glivec)およびゲフィチニブ(Iressa)である。癌療法のためのワクチンと組み合わせた、一部のキナーゼを標的とする低分子、例えばスニチニブリンゴ酸塩および/またはソラフェニブトシル酸塩の使用も、以前の特許出願、米国特許出願第2009004213号に記載されている。
【0295】
11.ウイルスベースのワクチン
本発明の製剤と共に併用治療アプローチにおいて使用できる利用可能なまたは開発中の多くのウイルスベースの癌ワクチンが存在する。そのようなウイルスベクターを使用することの1つの利点は、免疫応答を開始させるそれらの内因性能力であり、免疫活性化に必要な危険性シグナルを作り出すウイルス感染の結果として炎症反応が起こる。理想的なウイルスベクターは安全であるべきであり、抗腫瘍特異的応答を増強することを可能にする抗ベクター免疫応答を導入すべきではない。組換えウイルス、例えばワクシニアウイルス、単純ヘルペスウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルスおよびアビポックスウイルスが動物腫瘍モデルにおいて使用されており、それらの有望な結果に基づき、ヒト臨床試験が開始されている。特に重要なウイルスベースのワクチンは、ウイルスの外被由来の特定のタンパク質を含有する小さな粒子、ウイルス様粒子(VLP)である。ウイルス様粒子はウイルスからのいかなる遺伝物質も含有せず、感染を引き起こすことができないが、その外被上に腫瘍抗原を提示するように構築され得る。VLPは様々なウイルス、例えばB型肝炎ウイルスまたはパルボウイルス科(Parvoviridae)(例えばアデノ随伴ウイルス)、レトロウイルス科(Retroviridae)(例えばHIV)およびフラビウイルス科(Flaviviridae)(例えばC型肝炎ウイルス)を含む他のウイルスファミリーなどに由来し得る。総説についてはSorensen and Thompsen 2007:Virus-based immunotherapy of cancer:what do we know and where are we going?APMIS 115(11):1177-93;癌に対するウイルス様粒子は、Buonaguro et al.2011:Developments in virus-like particle-based vaccines for infectious diseases and cancer.Expert Rev Vaccines 10(11):1569-83;およびGuillen et al.2010:Virus-like particles as vaccine antigens and adjuvants:application to chronic disease,cancer immunotherapy and infectious disease preventive strategies.Procedia in Vaccinology 2(2),128-133において総説されている。
【0296】
12.マルチエピトープ戦略
マルチエピトープの使用はワクチン接種のための有望な結果を示す。知的アルゴリズムシステムと組み合わせた高速シーケンシング技術は、腫瘍ミュータノームの開発を可能にし、本発明と併用できる個別化ワクチンのためのマルチエピトープを提供し得る。さらなる情報については2007:Vaccination of metastatic colorectal cancer patients with matured dendritic cells loaded with multiple major histocompatibility complex class I peptides.J Immunother 30:762-772;さらにCastle et al.2012:Exploiting the mutanome for tumor vaccination.Cancer Res 72(5):1081-91参照。
【0297】
13.養子T細胞移入
例えば、腫瘍抗原ワクチン接種とT細胞移入の組合せは、Rapoport et al.2011:Combination immunotherapy using adoptive T-cell transfer and tumor antigen vaccination on the basis of hTERT and survivin after ASCT for myeloma.Blood 117(3):788-97に記載されている。
【0298】
14.ペプチドベースの標的療法
ペプチドは、細胞表面受容体または腫瘍の周囲の罹患した細胞外マトリックスに結合することができる。これらのペプチド(例えばRGD)に連結された放射性核種は、核種が細胞の近傍で崩壊する場合、最終的に癌細胞を死滅させる。特にこれらの結合モチーフのオリゴマーまたはマルチマーは、腫瘍の特異性およびアビディティの増強をもたらすことができるので、非常に興味深い。非限定的な例については、Yamada 2011:Peptide-based cancer vaccine therapy for prostate cancer,bladder cancer,and malignant glioma.Nihon Rinsho 69(9):1657-61参照。
【0299】
15.他の療法
相乗効果を生じさせるために本発明と組み合わせることができる数多くの他の癌療法が存在する。非限定的な例は、アポトーシスを標的とする治療、温熱療法、ホルモン療法、テロメラーゼ療法、インスリン増強療法、遺伝子療法および光力学療法である。
【0300】
当分野で公知の様々な方法を、CLDN6を発現する細胞を検出するおよび/または細胞の量を測定するために使用することができる。
【0301】
例えば、免疫検定法は、細胞中または細胞表面上のCLDN6タンパク質発現を検出するために使用し得る。本発明によれば、免疫検定法には、ウェスタンブロット法、免疫組織化学、放射性免疫検定法、ELISA(固相酵素免疫検定法)、「サンドイッチ」免疫検定法、免疫沈降アッセイ、沈降反応、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散アッセイ、凝集アッセイ、補体結合アッセイ、イムノラジオメトリックアッセイ、蛍光免疫検定法、免疫蛍光法、プロテインA免疫検定法、フローサイトメトリまたはFACS分析が含まれるが、これらに限定されない。
【0302】
1つの実施形態では、細胞を、検出および/または量の測定の前に、CLDN6に結合する能力を有する1つまたはそれ以上の標識抗体と結合する。
【0303】
あるいは、CLDN6を発現する細胞を検出するおよび/または細胞の量を測定するために、CLDN6 mRNAの発現を検出し得るかまたはCLDN6 mRNAの量を測定し得る。
【0304】
本発明の特定の実施形態では、CLDN6を発現する細胞を検出するおよび/または細胞の量を測定するために患者から得る試料は、血液、骨髄、血清、尿または間質液を含むがこれらに限定されない、生物学的液体である。他の実施形態では、患者からの試料は組織試料(例えば癌性組織を有するまたは有することが疑われる被験体からの生検)である。最も好ましくは、試料は腫瘍の生検である。
【0305】
本発明の方法に従って、試料は、CLDN6を発現する細胞の検出および/または細胞の量の測定の前に1つまたはそれ以上の前処理段階に供された生物学的試料であり得る。特定の実施形態では、生物学的液を遠心分離、ろ過、沈殿、透析もしくはクロマトグラフィによってまたはそのような前処理段階の組合せによって前処理する。他の実施形態では、組織試料を凍結、化学固定、パラフィン包埋、脱水、透過処理または均質化によって前処理し、次いで遠心分離、ろ過、沈殿、透析もしくはクロマトグラフィによってまたはそのような前処理段階の組合せによって前処理する。
【0306】
試料中の癌幹細胞の量は、例えば試料中の細胞全体もしくは癌細胞全体のパーセントとして表すか、または面積(例えば1視野当たりの細胞)、体積(例えば1ml当たりの細胞)もしくは重量(例えば1ml当たりの細胞)に対して定量化することができる。
【0307】
試験試料中の癌幹細胞の量を参照試料(1または複数)中の癌幹細胞の量と比較することができる。1つの実施形態では、参照試料は、療法を受けている被験体からより早期の時点(例えば基線参照試料として療法を受ける前、または療法を受けている間のより早期の時点)で得た試料である。この実施形態では、療法は、望ましくは参照試料と比較して試験試料中の癌幹細胞の量の減少を生じさせる。別の実施形態では、参照試料を、検出可能な癌を有さない健常被験体からまたは同じ種類の癌に関して寛解期にある患者から得る。この実施形態では、療法は、望ましくは参照試料中で検出されるのと等しい量の癌幹細胞を有するまたは参照試料中で検出される癌幹細胞の量より少ない量の癌幹細胞を有する試験試料を生じさせる。特定の実施形態では、被験体に関して測定されたより早期の(以前に検出された)癌幹細胞量と比べて癌幹細胞の量の安定化または減少は、被験体の予後の改善または療法に対する有益な応答を指示し、一方より早期の癌幹細胞量と比べての増加は、同じ予後もしくは予後の悪化および/または療法に対する応答不良を指示する。
【0308】
一部の実施形態では、試料中の癌幹細胞の量を測定するために細胞表面マーカー、例えばCLDN6と癌幹細胞に典型的な他のマーカーとの組合せを利用する。
【0309】
本発明はまた、CLDN6を発現する細胞を検出する、その量を測定するまたは観測するための試薬を満たした1つまたはそれ以上の容器を含むキットも提供する。1つの実施形態では、キットは、場合により、CLDN6を発現する細胞を検出するおよび/またはその量を測定することによって癌幹細胞を定量するまたは癌療法の効果を観測するための試薬の使用、特に本発明の方法における試薬の使用のための指示書を含む。1つの実施形態では、キットは、CLDN6タンパク質またはCLDN6 mRNAに特異的に結合する作用物質を含む。一部の実施形態では、作用物質は抗体または抗体フラグメントである。他の実施形態では、作用物質は核酸である。核酸検出のために、キットは一般に、CLDN6 mRNAに特異的なプローブを含む(がこれに限定されない)。定量的PCRのために、キットは一般に、CLDN6核酸配列に特異的な事前に選択されたプライマーを含む。定量的PCRキットはまた、核酸を増幅するのに適した酵素(例えばTaqなどのポリメラーゼ)、および増幅のための反応混合物に必要なデオキシヌクレオチドと緩衝液も含み得る。定量的PCRキットはまた、CLDN6核酸配列に特異的なプローブも含み得る。一部の実施形態では、定量的PCRキットはまた、逆転写反応に必要なデオキシヌクレオチドおよび緩衝液と共に、逆転写のための酵素(例えば逆転写酵素)およびプライマーを含む、RNAを逆転写するのに適した成分も含む。
【0310】
特定の実施形態では、作用物質を検出可能に標識する。さらに、キットは、アッセイを実施するための指示書およびアッセイの実施から生じるデータを解釈し、分析するための方法を含み得る。
【0311】
得られた結果に基づき(すなわち癌幹細胞が存在するかどうかまたは癌幹細胞の量が安定化または減少したかどうか)、医師は、特定の癌療法、例えば癌幹細胞に対する癌療法を選択し得るか、または療法を継続することを選択し得る。あるいは、癌幹細胞が存在しないまたは癌幹細胞の量が増加したという結果に基づき、医師は、癌幹細胞に対するものではない癌療法を投与することまたは療法を継続する、変更するもしくは中止することを選択し得る。
【0312】
本発明の特定の実施形態では、癌療法を受けている患者から得た試料中の癌幹細胞集団を前記患者からより早期に採取した患者由来の試料と比較して、癌幹細胞集団の低減が不十分であると決定した場合、医師は療法を調整する数多くの選択肢を有する。
【0313】
例えば、医師はその後、癌療法の用量、投与の頻度、投与の期間またはそれらの任意の組合せを増加することができる。特定の実施形態では、決定を行った後、最初の療法の代わりにまたは最初の療法と併用して付加的な癌療法を患者に投与することができる。
【0314】
他の特定の実施形態では、癌療法を受けている患者から得た試料中の癌幹細胞集団を前記患者からより早期に採取した患者由来の試料と比較して、癌幹細胞集団の低減が許容できると決定した場合、医師は癌療法を調整しないことを選択し得る。例えば、医師は、癌療法の用量、投与の頻度、投与の期間またはそれらの任意の組合せを増加しないことを選択し得る。さらに、医師は、付加的な療法を追加するまたは療法を併用することを選択し得る。
【0315】
本発明を以下の実施例によってさらに説明するが、それらは本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【実施例
【0316】
(実施例1)
CLDN6はヒト誘導多能性幹細胞の表面に発現される
CLDN6がヒト誘導多能性幹細胞(iPSC)で発現されるかどうかを分析するため、CLDN6の転写産物発現を、新生児HFF(ヒト包皮線維芽細胞、System Bioscience)において再プログラム化カクテル(非修飾OSKMNL+EBK+miRミックス;OSKMNL=転写因子OCT4、SOX2、KLF4、cMYC、NANOGおよびLIN28のインビトロ転写(IVT)RNA、EBK=IFNエスケープタンパク質E3、K3およびB18RのIVT-RNAならびにmiR-302a/b/c/dおよび367から成るmiRNAミックスで構成される;国際公開第PCT/EP2012/04673号に記載されているプロトコルに従う)またはモックトランスフェクトしたHFF(RNAなし対照)で数回の時点で処置し、ABI PRISM 7300配列検出システムおよびソフトウェア(Applied BiosystemsとQuantiTect SYBR green Kit(Qiagen))を用いて定量的リアルタイムRT-PCR(qRT-PCR)によって分析した。10ng/ml bFGFおよび0.5μMチアゾビビンを添加したNutristem無血清培地(Stemgent,Cambridge(MA))中で細胞を培養した。再プログラム化カクテルを、実験の1、2、3、4、8、9、10および11日目にLipofectamine RNAiMAX(Life Technologies)を使用してトランスフェクトした。対照として、細胞をLipofectamine RNAiMAXだけで処置した(RNAなし対照)。処置の19日目に未処置HFFと比較してCLDN6の明らかなほぼ6000倍の上方調節を検出し、処置の12日目にはCLDN6の約2000倍の上方調節を観察した(図1)。したがって、CLDN6はヒト誘導多能性幹細胞(iPSC)において発現される。
【0317】
フローサイトメトリを使用して、CLDN6がiPSCの表面にも発現されるかどうかを検討した。iPSCはHFF支持細胞上で増殖するので、iPSCが特異的に検出されることを確実にするため、この分析を広く受け入れられている幹細胞マーカー、SSEA-4の染色と組み合わせた。このために、再プログラム化カクテルまたはモック対照(RNAなし)で処置したHFF細胞を処置の5、12および19日目に採取し、1μg/mlのCLDN6特異的IMAB027-AF647および2μlのSSEA-4抗体で4℃にて30分間染色し、表面発現をフローサイトメトリによって分析した。また、本発明者らの分析から死細胞を除外するためにViability Dye 7-AADも本発明者らの染色プロトコルに含めた。実験を二重に実施し、BD Canto IIフローサイトメータを用いて各試料から50,000事象を記録した。FlowJoソフトウェアを用いて記録した細胞の分析を実施し、代表的なドットプロットを示す(図2)。
【0318】
5日目に、再プログラム化カクテルで処置した場合または処置しなかった場合のいずれも、CLDN6は表面HFF上で検出可能ではない。意外にも、再プログラム化カクテルで処置したか否かに関わらず、HFFの15%でSSEA-4が発現されることが認められる。これは、使用したHFFが新生児線維芽細胞であり、これらの細胞がSSEA-4に関して一定の陽性率を保持することが可能であるという事実によって説明できる。処置の12日目に、処置したHFFの約63%がSSEA-4に関して陽性であり、約15%のCLDN6-SSEA-4二重陽性画分が認められる。処置の19日目には、処置したHFFの15%がCLDN6およびSSEA-4に関して陽性であり、明確な亜集団を示す。CLDN6-SSEA-4陽性亜集団はiPSCだけを示すが、CLDN6-SSEA-4陰性亜集団はHFF支持細胞であるかまたは再プログラム化された細胞ではないとみなされ、SSEA-4単一陽性細胞は再プログラム化の開始時にある細胞を示すと推測される。
【0319】
本発明者らは、HFF細胞の15%がSSEA-4に関して陽性であり、CLDN6に関しては陽性でないことを認めたので、CLDN6はヒトiPSCに関してSSEA-4よりも特異的なマーカーであると推測される。SSEA-4は新生児HFFでも発現されるが、CLDN6は、iPSC画分である完全に再プログラム化されたHFF細胞においてのみ特異的に発現されると思われる。
【0320】
したがって、CLDN6はヒトiPSCの表面に特異的に発現される。
【0321】
(実施例2)
CLDN6は卵巣癌細胞のコロニー形成のために重要である
腫瘍細胞のCSC様特性を分析するための有効なアッセイはコロニー形成アッセイである。このアッセイを用いて、単一腫瘍細胞の自己複製能力および腫瘍形成能を容易に検討することができる。CLDN6が腫瘍形成において役割を果たすかどうかを分析するため、本発明者らは、一方ではCLDN6陽性細胞の亜集団だけを示す卵巣腫瘍細胞株、COV318、および他方では安定なレンチウイルス低分子ヘアピンRNA(shRNA)媒介性のCLDN6ノックダウンを担持する均一なCLDN6発現細胞株、PA-1(クローンPA-1 50、PA-1 54)を選択した;図3参照。
【0322】
細胞を、1μg/ml IMAB027-AF647で4℃にて30分間CLDN6に関して染色し、その後それらのCLDN6発現についてBD FACSAriaセルソータを用いてFACS(蛍光活性化細胞選別法)によって選別した。CLDN6陽性およびCLDN6陰性亜集団の500(PA-1 50、PA-1 54)または700(COV318)個の細胞を6ウェルプレートのウェルに直接選別し、十分なコロニーが形成されるまで最大14日間増殖させた。週に2回、培地を交換した。コロニーを10%エタノール中の0.5%クリスタルバイオレットで20分間染色し、固定して、蒸留水で3回洗浄し、空気乾燥させた。写真を撮影し、コロニーを手作業で計数した。少なくとも50個の細胞をコロニーであるとみなした。図4に、COV318ならびにCLDN6ノックダウン細胞株PA-1 50および54細胞の代表的なコロニー形成アッセイを示す。
興味深いことに、両方の細胞株においてCLDN6陰性細胞はCLDN6陽性細胞に比べて有意に低いコロニー形成を示す。これらの結果から、本発明者らは、CLDN6が癌幹細胞の本質的な特徴であるコロニー形成能に重要な役割を果たすと結論する。
【0323】
(実施例3)
CLDN6は卵巣癌細胞株においてCSCマーカーCD24、CD90およびCD44と共発現される
特異的表面マーカー発現プロフィールの使用は、固形腫瘍および細胞株からのCSCの同定と単離のための一般的な戦略である。卵巣癌からのCSCの単離のために文献中で使用される表面マーカーには、CD44、CD24、CD90、CD34、CD117およびCD133が含まれる。CLDN6陽性細胞の小さな亜集団を含む卵巣癌細胞株においてCSC亜集団を同定することができるかどうかを分析するために、本発明者らは、これらの表面マーカーに対する抗体を含むFACSパネルを設定した(表1)。さらに、広く確立されたCSCマーカーとCLDN6の共局在の割合を検討するためにCLDN6の検出のための抗体もパネルに含め、したがってCSCのマーカーとして働くCLDN6の潜在的可能性を判定した。このために、細胞株COV318の1E6細胞を指示量の抗体(表1参照)で4℃にて30分間染色し、その後細胞をフローサイトメトリによってそれらの表面マーカー発現プロフィールに関して分析した。本発明者らはまた、本発明者らの分析から死細胞を除外するためにViability Dye eFluor(登録商標)506も本発明者らの染色プロトコルに含めた。実験を三重に実施し、BD Canto IIフローサイトメータを用いて各試料から50,000事象を記録した。FlowJoソフトウェアを用いて記録した細胞の分析を実施した。
【0324】
【表1】
表1:CSC FACSパネル。卵巣癌細胞株におけるCSCマーカーおよびCLDN6発現の分析のために使用したFACSパネルを示す。対応するマーカーのために使用した抗体の量および結合蛍光色素を列挙する。
【0325】
FACS分析は、COV318細胞がCSCマーカーCD44、CD90およびCD24の亜集団を発現することならびにCLDN6が3つのマーカー全部と少なくとも部分的に共局在することを明らかにした(図5A)。本発明者らは次に、4つのマーカーすべての共局在のパーセントを計算するために種々のゲーティング戦略を使用した。第一に、生細胞集団全体におけるCD44、CD24、CD90およびCLDN6陽性細胞のパーセントを計算した。生細胞の0.18%が4つのマーカーすべてについて陽性であることを認めた。次に、CSC画分を示し得る、生細胞集団中のCD44、CD24およびCD90陽性細胞のパーセントを計算した。生細胞集団全体と比べた場合、0.23%の細胞が3つのマーカーすべてに陽性であることを認め、一方CLDN6陽性亜集団と比較した場合は、細胞の20.1%の画分が三重陽性であることを認め、CLDN6陽性サブ画分における3つのマーカーの87倍濃度を示した。最後の段階では、一方では生細胞集団全体におけるCLDN6陽性細胞のパーセント、および他方ではCD44/CD24/CD90陽性亜集団におけるCLDN6陽性細胞のパーセントを計算した。細胞集団全体での0.91%からCSC画分における66.87%までのCLDN6発現細胞の濃度を認め、74倍の増大を示した(図5B)。
【0326】
合わせて考慮すると、これらのデータは、CLDN6がCSC画分中に蓄積し、逆もまた同様にCSCマーカーがCLDN6陽性亜集団において富化されることを示す。これらの所見は、CLDN6がCSCのマーカーであることを示す。
【0327】
(実施例4)
CLDN6発現細胞の富化は確立されたCSCマーカーCD44、CD24およびCD90の蓄積をもたらす
細胞株および腫瘍から単離されたCSC画分は、しばしばCD44およびCD24などのCSCマーカーが富化されていることが示されている。CSCの新規マーカーとして働くCLDN6の潜在的可能性を分析するため、バルク細胞からのCLDN6陽性画分の細胞単離が確立された卵巣CSCマーカーの蓄積をもたらすかどうかを検討した。
【0328】
このために、COV318細胞を0.5μg/ml IMAB027で4℃にて30分間染色し、次いでヤギ抗ヒトIgG二次抗体(1:300)と共に4℃で10分間インキュベートして、その後CLDN6陽性およびCLDN6陰性細胞画分を、BD FACSAriaセルソータを用いてFACS選別によってCOV318細胞から単離した。次に、選択した細胞を標準的な増殖条件下で10日間増殖させた。両方の亜集団の1E6細胞をCSCマーカーCD44、CD24、CD90、CD34、CD117およびCD133に関して4℃で30分間染色し(詳細については表1参照)、フローサイトメトリによってそれらの表面マーカー発現プロフィールを分析した。BD Canto IIフローサイトメータを用いて各試料から50,000事象を記録し、FlowJoソフトウェアを用いて記録した細胞の分析を実施した。
【0329】
FACS分析は、CLDN6陽性と分類された画分の約50%の細胞が、標準的な条件下での10日間の培養後もまだCLDN6に関して陽性であり、一方CLDN6陰性と分類された細胞はCLDN6に関して完全に陰性であることを示した。重要な点として、本発明者らは、COV318細胞のCLDN6陰性画分と比較した場合、CLDN6陽性画分はCSCマーカーCD44、CD24およびCD90の蓄積を示すことを認めた。種々の試料の代表的なドットプロットを図6Aに示す。これらのマーカーの発現レベルのさらなる定量化は、CLDN6陽性亜集団とCLDN6陰性亜集団を比較した場合、CD44の99倍の富化、CD90の8倍の富化およびCD24の33倍の富化を明らかにした(図6B)。
【0330】
これらの所見は、CLDN6がバルク細胞株からCSC画分を分離するための選択マーカーとして使用できることを実証し、CLDN6が新規CSCマーカーであることを示す。
【0331】
(実施例5)
CLDN6高発現細胞株はCLDN6低発現細胞と比較してCSCマーカーの富化を示す
CLDN6は、生殖細胞腫瘍、卵巣腺癌および原始的表現型を有する一部の癌において高発現されることが示されている。CLDN6がCSCマーカーである場合、そのような細胞株または腫瘍においてCSC様特徴を有する細胞の蓄積、したがってCSCマーカー陽性細胞の蓄積が予想される。
【0332】
本発明者らは、4つのCLDN6高発現細胞株、卵巣癌細胞株OV90およびPA-1ならびに精巣癌細胞株NEC-8およびNEC-14を、それらの確立されたCSCマーカーの発現レベルに関して検討した。このために、各細胞株の1E6細胞を表面マーカーCD44、CD24、CD90、CD34、CD117およびCD133ならびにCLDN6に関して4℃にて30分間染色し(詳細については表1参照)、その後細胞をフローサイトメトリによってそれらの発現プロフィールに関して分析した。実験を三重に実施し、BD Canto IIフローサイトメータを用いて各試料から50,000事象を記録して、FlowJoソフトウェアを用いて記録した細胞の分析を実施した。viability dye eFluor(登録商標)506で細胞を対比染色することによって死細胞を分析から除外した。各試料からの代表的なドットプロットを図7に示す。
【0333】
FACS分析は、検討したすべての細胞株がCLDN6に関して約95%陽性であることを明らかにした。予想されたように、これらのCLDN6高発現細胞株は、CLDN6に加えて、確立されたCSCマーカーの蓄積も示し、OV90細胞はCD44、CD133、CD24およびCD117の高発現を示し、PA-1細胞はCD44、CD133、CD90およびCD117の高発現を示し、NEC-8およびNEC-14細胞はマーカーCD133、CD90、CD24およびCD117の発現レベル上昇を示す。
【0334】
これらの所見は、CLDN6高発現細胞株がCSC様細胞に関して富化されていることを指示し、CLDN6がCSCマーカーであることをさらに裏付ける。
【0335】
(実施例6)
CLDN6抗体と化学療法薬の併用による進行したヒト異種移植腫瘍の処置は、相乗的に腫瘍細胞増殖を阻害し、生存期間を延長させる
Hsd:無胸腺ヌードFoxn1nuマウスにヒト癌細胞株を移植した。腫瘍が確立した後、腫瘍担持マウスを群分けし、CLDN6特異的モノクローナル抗体(IMAB027)、化学療法薬または両者の組合せを投与した。対照群には抗体緩衝液を与えた(ビヒクル対照)。
【0336】
具体的には、ヒトES-2(CLDN6)異種移植腫瘍の処置のために、ヒトCLDN6で安定にトランスフェクトしたヒト卵巣癌細胞株ES-2を、5%COを含む加湿インキュベータにおいて37℃で、1×非必須アミノ酸溶液(Life Technologies)、700μg/ml G418(Life Technologies)および10%FCS(Life Technologies)を含有する最小必須培地(Life Technologies)中で培養した。移植のために、6週齢の雌性Hsd:無胸腺ヌードFoxn1nuマウスにPBS 200μl中の5×10ES-2(CLDN6)細胞を側腹部に皮下的に接種した。皮下腫瘍接種後3日目に、マウスを生理食塩水対照、抗体または化学療法薬単独療法および抗体/細胞増殖抑制薬併用療法群のいずれかで処置した(各群につきn=12)。15mg/kgパクリタキセルまたは生理食塩水対照を移植後3、10および17日目に投与した。抗体維持処置を、週に3回の35mg/kg IMAB027またはビヒクル対照(IMAB027緩衝液)のボーラス注射(交互にi.v./i.p./i.p.)で4日目に開始した。腫瘍量および動物の健康状態を週に2回観測した。腫瘍が1400mmの最大値の体積に達したときまたは腫瘍が潰瘍性になったときにマウスを犠死させた。腫瘍増殖の阻害を、クラスカル・ウォリス検定およびポストホック・ダンの多重比較検定を使用して分析した。
【0337】
進行したヒトNEC14異種移植腫瘍の処置のために、ヒト精巣生殖細胞腫瘍細胞株NEC14を、5%COを含む加湿インキュベータにおいて37℃で、10%FCS(Life Technologies)を含有するRPMI 1640培地GlutaMAX(商標)(Life Technologies)中で供給者の指示に従って培養した。移植のために、6~8週齢の雌性Hsd:無胸腺ヌードFoxn1nuマウスにPBS 200μl中の2×10NEC14細胞を側腹部に皮下的に接種した。進行後処置試験において、腫瘍を50~150mmの体積に成長させ、マウスを処置の前に対照、抗体または細胞増殖抑制薬単独療法および抗体/細胞増殖抑制薬併用療法群(各群につきn=19)に群分けした。移植後6日目に、薬剤単独または併用またはビヒクル対照(生理食塩水)を以下のように投与した:6、7、8、9および10日目に1mg/kgシスプラチンのボーラスi.p.注射;6、13および20日目に30mg/kgカルボプラチンのボーラスi.p.注射;ならびに週に3回の35mg/kg IMAB027またはビヒクル対照(IMAB027緩衝液)のボーラス注射(交互にi.v./i.p./i.p.)での抗体維持処置。腫瘍量を週に2回観測した。腫瘍が1400mmの最大値の体積に達したときまたは腫瘍が潰瘍性になったときにマウスを犠死させた。腫瘍増殖の阻害を、クラスカル・ウォリス検定およびポストホック・ダンの多重比較検定を使用して分析した。
【0338】
対照群と比較して、ヒトCLDN6を異所性に発現するヒトES-2(CLDN6)異種移植腫瘍のパクリタキセルでの処置は有効でなく、抗腫瘍活性を示さない。これに対し、IMAB027はマウスにおいて腫瘍増殖を阻害し、生存期間を延長させる。IMAB027とパクリタキセルの併用での処置は、腫瘍増殖を相乗的に阻害する(図8)。
【0339】
さらに、単剤としてのシスプラチンおよびIMAB027はどちらも、NEC14腫瘍担持動物において腫瘍増殖を極めて有意に低減することができる。しかし、初期の腫瘍増殖阻害後、本発明者らは大部分の動物において再発性腫瘍増殖を観察した。併用療法アプローチでは、シスプラチンおよびIMAB027は相乗的に作用し、腫瘍増殖を阻害するだけでなく、完全なNEC14腫瘍寛解を誘発する。生存率データは、シスプラチンと併用したIMAB027の治療効果を最も印象的に示す。単剤アプローチと比較して、シスプラチンと共にIMAB027で処置したほとんどすべてのマウスが腫瘍移植後90日目にもまだ生存した(図9)。
【0340】
マウスが担持するNEC14異種移植腫瘍の進行後処置において、カルボプラチンなどの他のプラチン誘導体は非常に限られた抗腫瘍効果しか示さない。IMAB027とカルボプラチンの併用は、しかしながら、腫瘍増殖の極めて効率的な阻害と生存期間の延長による相乗的な腫瘍阻害作用をもたらす(図10)。
【0341】
したがって、化学療法薬とCLDN6特異的抗体の併用は、ヒト腫瘍細胞を移植したマウスの腫瘍増殖の阻害を増大させ、生存期間を延長させる。化学療法薬と抗体の併用は、腫瘍細胞増殖の阻害および生存期間の延長に関する相乗効果を生じさせる。
【0342】
(実施例7)
CLDN6はCSCマーカーである
実施例7.1:CLDN6は卵巣癌細胞のスフェア形成挙動のために重要である
腫瘍細胞のCSC様特性を分析するためのもう1つの有効なアッセイはスフェア形成アッセイである。このアッセイを用いて、CSCの典型的な特徴である足場非依存性増殖に関する細胞の能力を容易に検討することができる。CLDN6が腫瘍細胞の足場非依存性増殖に役割を果たすかどうかを分析するため、本発明者らは、CLDN6陽性細胞の亜集団だけを含む卵巣腫瘍細胞株、COV318細胞を選択した。COV318細胞をそのCLDN6発現に関して選別し、CLDN6陽性およびCLDN6陰性細胞集団に幹細胞特異的条件下で21日間スフェアを形成させた。スフェア形成アッセイは、CLDN6陽性COV318細胞は幹細胞特異的条件下で培養した場合スフェアを形成する能力を示すが、CLDN6陰性細胞はほぼ完全に死滅することを明らかにした(図11A)。これらの所見は、CLDN6陽性画分が、足場非依存性増殖の能力を示す幹細胞富化集団であることを指示する。
【0343】
未分化状態を維持しながら細胞分裂の数多くのサイクルを通過するCLDN6陽性COV318細胞の能力を定義するため、本発明者らは第二世代スフェアを生成するスフェアの能力を分析した。このためにCLDN6陽性COV318細胞の第一世代スフェア(播種後22日目)を単細胞に解離させ、その後再びプレートした。再プレート後23日目に、第二世代のスフェアが形成し、これらの新たに形成されたスフェアが最初の第一世代スフェアよりも形態学的に規則正しいことを明らかに観察することができた(図11B)。これらの観察は、COV318細胞のCLDN6陽性画分がこの細胞株の幹細胞画分であることをさらに確認する。
【0344】
合わせて考慮すると、これらの結果は、CLDN6が、癌幹細胞の本質的な特徴である、卵巣癌細胞の足場非依存性増殖において顕著な役割を果たすことを明らかに示す。
【0345】
実施例7.2:インビトロでの化学療法薬での処置後のCLDN6陽性COV318細胞の富化
卵巣癌細胞株COV318はCLDN6の不均一な発現を示し、非常に小さな亜集団の細胞(約0.3~0.5%)がCLDN6を発現する。インビトロでのプラチン誘導体によるCOV318の処置は、各々の場合により高いパーセント(> 2%)のCLDN6陽性細胞を有する残存細胞集団を生成する(図12)。処置後のCLDN6陽性細胞の特異的蓄積は、これらの細胞が化学療法の間、選択的な生存または増殖の有利さを有し得ることを示す。従来の化学療法に対する耐性はCSCの特徴である。
【0346】
実施例7.3:インビボでのCLDN6陽性COV318細胞の富化
以前の試験で、本発明者らは、無胸腺ヌードマウスの側腹部に皮下注射したCOV318細胞が弱い腫瘍形成性であることを認めた。これに対し、腹腔内注射によってCOV318細胞を摂取したマウスは、100日以上のうちに悪性腹水と腹膜腫瘍を発症した。親COV318細胞と異なり(図13A)、腹水および腫瘍から単離した細胞の大部分はCLDN6陽性であった(図13B、上のパネル)。COV318細胞は、標準的な条件下で培養した後、再びインビトロでのCLDN6発現を喪失した(図13B、下のパネル)。これは、CLDN6陽性COV318細胞がより大きな腫瘍形成能を示すことを意味し、小さなCLDN6陽性亜集団がCSCを含有することを示唆する。
【0347】
実施例7.4:CLDN6は原発性腫瘍試料中の卵巣癌幹細胞マーカーと相関する
本発明者らの以前の結果は、卵巣癌細胞株においてCLDN6が一部のCSCマーカーと共局在することを示したので、本発明者らは次に、CLDN6発現が卵巣癌患者からの原発性腫瘍試料中のCSCマーカーとも相関するかどうかを調べた。
【0348】
このために、CLDN6および文献中で卵巣癌に特異的な癌幹細胞であると記述されている選択したマーカー(CTCFL、LIN28B、CD24、GNL3、EpCAM、CD44、ABCG2、ALDH1A1、AMACR、ATXN1、BMI1、BMP4、CD34、CD117、Myd88、Nanog、Notch 1、Pou5F1、CD133、Snail、Sox 2)のmRNA発現を42のヒト卵巣癌試料においてqRT-PCRによって分析した。これらのマーカーとCLDN6のその後の相関分析を、スピアマンrを用いて実施した。有意の相関からの散布図およびすべての相関の要約を図14に示す。
【0349】
正の相関がCTCFL、LIN28B、CD24、GNL3およびEPCAMとCLDN6に関して認められ、一方CD44は、分析した卵巣癌試料中のCLDN6と負に相関することが認められた(図14A)。検討した他のすべてのマーカーについては、有意の相関は認められなかった(図14B)。
【0350】
これらの所見は、CLDN6がCSCマーカーであることをさらに裏付ける。
【0351】
(実施例8)
抗CLDN6抗体の抗腫瘍活性は化学療法薬との併用によって増強される
実施例8.1:IMAB027媒介性ADCCへの化学療法剤の影響
IMAB027媒介性ADCCへの化学療法剤の影響を、カルボプラチン、ゲムシタビン、パクリタキセル、ドキソルビシンおよびトポテカンでそれぞれ前処置したCOV362(Luc)細胞を用いて分析した。フローサイトメトリによって示されるように、標的細胞の前処置は細胞表面のCLDN6のタンパク質レベルの上昇をもたらす(図15B、D、F、HおよびJ)。未処置標的細胞と比較して、化学療法剤で処置した細胞の最大溶解は3倍まで増大する(図15A、C、F、GおよびI)。要約すると、IMAB027の抗腫瘍活性は化学療法薬との併用で増強され得る。
【0352】
実施例8.2:IMAB027と多剤化学療法PEB(シスプラチン、エトポシドおよびブレオマイシン)の併用は、ヒト腫瘍細胞株NEC14を移植したマウスの腫瘍増殖の阻害を極めて有効に増大させ、生存期間を延長させる
Hsd:無胸腺ヌードFoxn1nuマウスにヒト精巣生殖細胞腫瘍細胞株NEC14を皮下移植した。非常に進行した腫瘍を有するマウスをランダム化し、抗体IMAB027、多剤化学療法PEB(シスプラチン、エトポシドおよびブレオマイシン)またはIMAB027とPEBの併用で処置した。
【0353】
未処置およびIMAB027処置マウスと比較して、多剤化学療法は腫瘍増殖を極めて有意に低減する(図16A)。しかし、腫瘍が最初にPEB処置に応答した後、30日目には大部分の動物において腫瘍が増殖し始めた。腫瘍増殖の持続的な阻害は、PEBとIMAB027が相乗的に作用する併用アプローチにおいてのみ達成された(図16B)。未処置マウスは30日の平均生存期間を示し、IMAB027およびPEBで処置したマウスではそれぞれ34日と97日の平均生存期間が認められた。PEBで処置した群では、3/14匹(21%)のマウスが完全な腫瘍寛解を示し、1/14匹(7%)のマウスは試験終了時に約30mmの残存腫瘍塊を呈した。驚くべきことに、IMAB027と併用してPEBで処置した12/14匹(86%)のマウスでは完全な腫瘍退縮が認められた。11匹のマウスは6か月以上にわたっていかなる再発もなしに治癒し、腫瘍を有していない1匹のマウスは、全身健康状態の不良のために93日目に安楽死させた(図16C)。試験は、IMAB027と併用してPEBを投与された、非常に進行したヒトNEC14精巣腫瘍を有する動物が、多剤化学療法単独で処置された動物と比較して有意に長い生存期間および有意に高い応答率を有することを示した。
【0354】
(実施例9)
抗CLDN6抗体-薬剤コンジュゲートはCLDN6発現腫瘍を処置するのに極めて有効である
実施例9.1:インビトロでの毒素結合IMAB027の結合および抗腫瘍活性
IMAB027-薬剤コンジュゲートIMAB027-DM1およびIMAB027-vcMMAEの相対的結合親和性を、フローサイトメトリを使用して卵巣癌細胞株OV90に関して試験した。飽和結合実験では、抗体の濃度を蛍光強度(MFI)の中央値に対してプロットし、EC50(平衡状態で結合部位の半数に結合する抗体濃度)および最大結合を非線形回帰によって計算した。コンジュゲート化していないIMAB027と比較して、両方のIMAB027-薬剤コンジュゲートが類似の低いEC50値を示し、結合の飽和は低濃度で達成された(図17A)。IMAB027-薬剤コンジュゲートの細胞傷害活性を、XTT増殖アッセイを用いてOV90細胞に関して測定した。用量-反応曲線は、インビトロでIMAB027-DM1およびIMAB027-vcMMAEに関して腫瘍細胞増殖の類似の阻害を示す(図17B)。要約すると、DM1またはvcMMAEに結合したIMAB027は、類似の相対的親和性でCLDN6陽性標的細胞に結合し、極めて有効に腫瘍細胞死滅を誘導する。
【0355】
実施例9.2:毒素結合IMAB027抗CLDN6抗体での進行したヒト異種移植腫瘍の処置は腫瘍細胞増殖を阻害し、生存期間を延長させ、完全な腫瘍退縮を媒介する
細胞傷害性薬剤に結合したCLDN6特異的抗体IMAB027の抗腫瘍活性を、CLDN6陽性ヒト癌細胞株を移植したマウスで試験した。この標的アプローチでは、IMAB027をメイタンシノイドDM1またはアウリスタチンE(MMAE)に結合し、進行した異種移植腫瘍を担持する無胸腺ヌードFoxn1nuマウスにおいて腫瘍増殖を観測した。
【0356】
進行したヒトOV90卵巣皮下異種移植腫瘍モデルの処置:
毒素結合IMAB027の抗腫瘍作用を、均一なCLDN6発現を有する進行したヒト異種移植腫瘍担持マウスで試験した。腫瘍細胞移植後10日目に処置を開始した。単回i.v.ボーラス注射後、IMAB027-DM1およびIMAB027-vcMMAEは、均一にCLDN6を発現するOV90卵巣癌細胞異種移植腫瘍の腫瘍増殖を極めて有意に阻害した(図18および19A)。より重要な点として、16mg/kg IMAB027-vcMMAEの単回適用は、処置したマウスの60%において完全な腫瘍寛解をもたらした(図19B)。
【0357】
進行したヒトPA-1卵巣皮下異種移植腫瘍モデルの処置:
毒素結合IMAB027の抗腫瘍作用を、不均一なCLDN6発現を有する進行した異種移植腫瘍モデルでも試験した。皮下移植後、PA-1異種移植腫瘍は、一定期間後にCLDN6発現を喪失した(図20C)。15日目に処置を開始した。その時点で、PA-1異種移植腫瘍はCLDN6発現を喪失し始めた。動物に、単回i.v.ボーラス注射によって4、8または16mg/kg IMAB027-vcMMAEを投与した。対照動物には、その代わりに非コンジュゲート化IMAB027またはビヒクル対照緩衝液を与えた。
【0358】
IMAB027-vcMMAEでの処置は、PA-1異種移植腫瘍の腫瘍増殖を極めて有意に阻害し、腫瘍担持マウスの生存期間を延長させたが、IMAB027またはIMAB027-DM1(データは示していない)はPA-1腫瘍増殖に影響を及ぼさなかった(図20AおよびB)。
【0359】
腫瘍バルク中のCLDN6陽性腫瘍細胞のレベル低下が、おそらくこのインビボ腫瘍モデルにおけるIMAB027およびIMAB027-DM1の弱い抗腫瘍活性の原因である。IMAB027-DM1は、非切断可能なリンカーによって非膜透過性毒素DM1に結合される。これに対し、IMAB027-vcMMAEは、カテプシンで切断可能なリンカーによって細胞膜透過性毒素MMAEに結合される。細胞プロセシング後の膜透過性形態のMMAEの放出は、特定のエピトープを欠く腫瘍細胞の死滅を促進する(バイスタンダー効果)。それゆえ、IMAB027-vcMMAEでの処置は、CLDN6陽性およびCLDN6陰性細胞の両方を含有するPA-1腫瘍を根絶するのに極めて有効である。
【0360】
要約すると、IMAB027-vcMMAEは、バイスタンダー細胞の標的細胞活性化死滅によって不均一なCLDN6発現を有するヒト異種移植腫瘍を死滅させるうえで極めて効率的である。
【0361】
進行したヒトMKN74胃皮下異種移植腫瘍モデルの処置:
進行した腫瘍ではCLDN6発現を喪失するPA-1異種移植腫瘍と異なり、MKN74異種移植腫瘍はCLDN6発現を獲得する。CLDN6特異的抗体IMAB027を使用したフローサイトメトリによって示されるように、胃癌細胞株MKN74の<0.3%の細胞がインビトロでCLDN6陽性である。興味深いことに、無胸腺ヌードマウスにおける皮下移植後にかなりの数の腫瘍細胞がCLDN6発現を示す(図21C)。16mg/kg IMAB027-vcMMAEでの確立されたMKN74異種移植腫瘍の処置は、腫瘍増殖の極めて有意の阻害を生じさせ、生存期間を延長させる(図21AおよびB)。
【0362】
IMAB027-vcMMAEで認められた腫瘍増殖阻害は、バイスタンダー細胞の標的細胞活性化死滅によって引き起こされ得る。
【0363】
進行したヒトPA-1卵巣腹腔内異種移植腫瘍モデルの処置:
s.c.異種移植腫瘍の処置に加えて、毒素結合IMAB027抗体を、インビボ観測のためにルシフェラーゼを異所性に発現するPA-1細胞を使用してi.p.異種移植腫瘍モデルにおいてそれらの抗腫瘍活性に関しても試験した(図22)。マウスに、腫瘍細胞移植後14日目に単回ボーラスi.v.注射によって16mg/kg IMAB027-DM1または16mg/kg IMAB027-vcMMAEを投与した。
【0364】
インビボでの生物発光強度の測定は、IMAB027-DM1での処置後に腹膜PA-1転移の腫瘍増殖阻害を明らかにした。さらに、IMAB027-vcMMAEは、IMAB027-DM1またはビヒクルよりも有意に高い抗腫瘍作用を示し、100%の動物において腹膜腫瘍の完全な退縮をもたらした(図22)。
【0365】
要約すると、IMAB027-vcMMAEおよびIMAB027-DM1は、インビボで試験した濃度範囲内で毒性副作用を示すことなく極めて有効である。IMAB027-DM1は皮下異種移植腫瘍の腫瘍増殖を有意に阻害し、腹膜異種移植腫瘍の腫瘍増殖を低下させた。IMAB027-vcMMAEは、均一なまたはさらには不均一なCLDN6発現を有する皮下または腹膜ヒト異種移植腫瘍を担持する動物の腫瘍増殖を極めて有意に阻害し、生存期間を延長させた。最も印象的なのは、大部分の腫瘍担持動物がMMAE結合抗体での処置後に治癒したことである。特に腫瘍が不均一なCLDN6発現を示す動物で認められた、IMAB027-vcMMAEの卓越した抗腫瘍活性は、IMAB027-vcMMAEコンジュゲートが低いパーセントのCLDN6陽性度を有する腫瘍を処置するのに適していることを明らかにする。
【0366】
実施例9.3:CLDN6特異的抗体のエンドサイトーシスはそれらの親和性およびCLDN6結合エピトープに依存する
毒素結合抗体の細胞傷害性効果は、インターナリゼーションのためのそれらの標的媒介潜在能に厳密に依存する。したがって、高いエンドサイトーシス率を有する抗体の作製は毒素結合抗体の開発における必須の重要な因子である。
【0367】
内因性にCLDN6を発現するヒト癌細胞を、CLDN6反応性モノクローナルキメラ抗体および毒素サポリンに結合した抗ヒトFabフラグメントと共にインキュベートすることによってインビトロでエンドサイトーシスの効率を試験した。CLDN6結合抗体/Fab-サポリン複合体のインターナリゼーションは細胞の特異的死滅を生じさせ、細胞生存能アッセイを用いて測定することができる。種々のCLDN6反応性抗体のスクリーニングは、エンドサイトーシスが抗体の結合親和性だけでなく、抗原エピトープにも依存することを明らかにする。本発明者らは、CLDN6の第一細胞外ループ内のエピトープへのCLDN6特異的抗体の結合がOV-90およびPA-1ヒト癌細胞におけるエンドサイトーシスを支持することを観察する。注目すべきは、別のエピトープに類似かまたはより高い親和性で結合するCLDN6反応性抗体5F2D2は、このアッセイにおいてより低い細胞傷害性潜在能を示す(図23)。
【0368】
(実施例10)
上記実施例7~9で使用した試験材料および方法
細胞培養:
発光レポーター遺伝子を安定に発現するCOV362(Luc)およびPA-1(Luc)細胞を、それぞれホタルルシフェラーゼでの細胞株COV362(ECACC、07071910)およびPA-1(ATCC、CRL-1572)の安定なトランスフェクションによって作製した。
【0369】
NEC14(JCRB、0162)およびMKN74(JCRB、0255)細胞を、10%熱不活性化FCS(Gibco、10270-106)を添加したRPMI1640培地(Gibco、61870-010)中で培養した。COV318(ECACC、07071903)およびCOV362(Luc)細胞は、2mM GlutaMAX(Gibco、35050-038)および10%熱不活性化FCSを含有するDMEM(Gibco、41965-039)中で培養した。PA-1およびPA-1(Luc)細胞は、1.5g/l重炭酸ナトリウム(Invitrogen、25080)、1mMピルビン酸ナトリウム(Invitrogen、11360)、1%非必須アミノ酸(Gibco、11140-035)および10%熱不活性化FCSを添加したMEM(Gibco、31095-029)中で培養した。OV90(ATCC、CRL-11732)細胞は、1.5g/l重炭酸ナトリウムおよび15%熱不活性化FCSを添加した、MCB105 (Sigma、M6395)および199培地(Sigma、M4530)の1:1混合物中で培養した。細胞を37℃および5%COで増殖させた。
【0370】
フローサイトメトリによるCLDN6発現の測定:
0.05%トリプシン/EDTA(Gibco、25300-054)を用いて細胞を採取し、FACS緩衝液(2%FCS(Gibco、10270-106)および0.1%アジ化ナトリウム(Applichem、A1430)を含有するPBS)で洗浄して、2×10細胞/mlの濃度でFACS緩衝液に再懸濁した。細胞懸濁液100μlを、2.5μg/mlの濃度の抗CLDN6抗体IMAB027またはアイソタイプ対照ヒトIgG1抗体(Sigma、I5154)と共に4℃で30分間インキュベートした。細胞をFACS緩衝液で3回洗浄し、FACS緩衝液中で1:200希釈したAPC結合F(ab')フラグメントヤギ抗ヒトIgG(Jackson ImmunoResearch、109-136-170)と共に4℃で30分間インキュベートした。細胞を2回洗浄し、FACS緩衝液に再懸濁した。BD FACSArray(BD Biosciences)およびFlowJoソフトウェア(Tree Star Inc.)を使用してフローサイトメトリによって結合を分析した。生/死染料ヨウ化プロピジウム(Sigma、P4864)を使用して分析から死細胞を除外した。
【0371】
プラチン誘導体でのCOV318細胞の処置:
COV318細胞(100mm細胞培養皿につき1.2×10細胞)を標準的な条件下で増殖させた。24時間後、細胞を0.5μg/mlシスプラチンまたは2μg/mlカルボプラチンで処置し、96時間インキュベートした。培地を交換し、処置した細胞を標準的な増殖条件下で増殖させた。3および6日後に、細胞をフローサイトメトリによってCLDN6発現に関して分析した。
【0372】
細胞傷害性薬剤での処置後の抗体依存性細胞傷害(ADCC):
レポーターとしてのルシフェラーゼで安定にトランスフェクトしたヒト卵巣癌細胞株COV362を使用して、IMAB027媒介性ADCCへのカルボプラチンおよびパクリタキセルの影響を測定した。COV362(Luc)細胞(150mm細胞培養皿につき3×10細胞)を標準的な条件下で増殖させた。24時間後、細胞を5ng/mlパクリタキセル、20μg/mlカルボプラチン、25ng/mlゲムシタビン、20ng/mlドキソルビシンまたは7.5ng/mlトポテカンで処置し、4日間インキュベートした。培地を交換し、処置した細胞を、カルボプラチンおよびゲムシタビンについてはさらに3日間またはパクリタキセル、ドキソルビシンもしくはトポテカンについては10日間、標準的な増殖条件下で増殖させた。
【0373】
0.05%トリプシン/EDTA(Gibco、25300-054)を用いて細胞を採取し、2mMグルタミン(Gibco、25030-081)および20mM HEPES(Gibco、15630-056)を含有するDMEM中で2×10細胞/mlの濃度に調整した。1×10細胞/ウェルを白色96ウェルPPプレートに接種し、37℃および5%COで約5時間インキュベートした。
【0374】
PBMC(末梢血単核細胞)を、Ficoll Hypaque(GE Healthcare、17144003)を使用して密度勾配遠心分離によってヒトドナー血液試料から単離した。分裂間期を含むPBMCを単離し、2mM EDTAを含有するPBSで細胞を3回洗浄した。PBMCを1.6×10細胞/mLの濃度でX-Vivo 15培地(Lonza、BE04-418Q)に再懸濁し、検定のときまで37℃および5%COで保存した。
【0375】
IMAB027およびアイソタイプ対照抗体25μlを指示濃度で細胞に添加した。その後、PBMC懸濁液25μlを添加し、細胞を37℃および5%COで24時間インキュベートした。
【0376】
PBS中の8%Triton X-100(Sigma、T8787)10μlを全溶解対照に添加し、PBS 10μlを最大生細胞対照および試料に添加した後、ルシフェリン混合物(ddHO中3.84mg/ml D-ルシフェリン(Sigma Aldrich、50227)および160mM HEPES)50μlを添加し、細胞を暗所で室温にて90分間インキュベートした。ルミノメータ(Infinite M200、TECAN)を用いて生物発光を測定した。結果を統合デジタル相対光単位として示す。
【0377】
特異的溶解を、以下として計算する。
【数1】
最大生細胞:PBS 10μl、抗体なし
全溶解:PBS中8%Triton X-100 10μl、抗体なし
【0378】
無胸腺ヌードマウスにおけるCOV318細胞の腹腔内移植:
ヒト卵巣癌細胞株COV318のインビボ腫瘍形成性およびCLDN6陽性細胞の蓄積をマウスにおいて試験した。それゆえ、PBS中に再懸濁した2×10COV318細胞を6~8週齢の雌性Hsd:無胸腺ヌードFoxn1nuマウスに腹腔内注射した。マウスを毎日観測した。ひとたび生命を脅かす症状が顕著に発現した場合は動物を安楽死させた。腫瘍および腹水細胞を単離し、さらなる分析のために培養した。腫瘍を機械的に解離させ、メッシュに通して、DMEM培地(Gibco、41965-039)で洗浄した。単細胞懸濁液を得るために、腫瘍細胞をアキュターゼ(Life Technologies、A11105-01)で37℃にて30分処置し、40μmセルストレーナーに通して、DMEM培地で洗浄した。腹水を収集し、ACK(塩化アンモニウムカリウム)溶解緩衝液(Invitrogen、A10492-01)を使用することによって混入赤血球を除去した。腫瘍および腹水細胞を、ペニシリン/ストレプトマイシンを添加した標準的なCOV318培地(Gibco、15140)を用いて標準的な条件下で増殖させた。細胞をフローサイトメトリによってCLDN6発現に関してスクリーニングした。
【0379】
非常に進行したヒトNEC14異種移植腫瘍の処置:
移植のために、6~8週齢の雌性Hsd:無胸腺ヌードFoxn1nuマウスにPBS 200μl中の2×10NEC14細胞を側腹部に皮下的に接種した。非常に進行した後の処置試験では、腫瘍を最大170mmの体積まで13日間増殖させ、マウスを処置の前に対照、IMAB027、PEB(シスプラチン、エトポシド、ブレオマイシン)およびIMAB027/PEB群(各群につきn=14)に群分けした。
【0380】
移植後13日目に、薬剤を以下のように投与した:13、14、15、16および17日目に1mg/kgシスプラチンのボーラスi.p.注射;13、14、15、16および17日目に5mg/kgエトポシドのボーラスi.p.注射;13、17および21日目に10mg/kgブレオマイシンのボーラスi.p.注射。IMAB027は、13日目から101日目まで週に3回、35mg/kg IMAB027の交互のボーラスi.v./i.p./i.p.注射によって適用した。ビヒクル対照として、マウスに、抗体の代わりに薬剤物質緩衝液またはPEBの代わりに0.9%NaCl溶液をそれぞれ与えた。
【0381】
腫瘍量および動物の健康状態を週に2回観測した。腫瘍が1400mmの体積に達したときまたは腫瘍が潰瘍性になったときにマウスを犠死させた。腫瘍増殖の阻害を、クラスカル・ウォリス検定およびポストホック・ダンの多重比較検定を使用して分析した。
【0382】
スフェア形成アッセイ:
スフェア形成アッセイのために、COV318細胞を0.5μg/ml IMAB027を用いてCLDN6に関して4℃で30分間染色し、次いでヤギ抗ヒトIgG二次抗体(1:300)と共に4℃で10分間インキュベートして、その後BD FACSAriaセルソータを用いて細胞をそのCLDN6発現に関して選別した。次に1×10CLDN6陽性またはCLDN6陰性選別細胞を、0.4%ウシ血清アルブミン、20ng/ml塩基性線維芽細胞増殖因子、10ng/ml上皮増殖因子および5μg/mlインスリンを含有する無血清DMEM/F12培地中で6ウェルUltra Low Attachment Plate(Corning)のウェルに接種し、これらの幹細胞特異的条件下で21日間、細胞にスフェアを形成させた。スフェアを破壊することなく1日おきに培地を交換し、代表的な写真を定期的に撮影した。
【0383】
第二世代スフェアの生成のために、CLDN6陽性COV318細胞の第一世代スフェア(接種後22日目)を単細胞に解離させ、その後再び6ウェルUltra Low Attachment Plateのウェルにプレートした。再び、形成されたスフェアを破壊することなく1日おきに培地を交換し、代表的な写真を定期的に撮影した。
【0384】
Bio Mark(商標)HD System(Fluidigm)を使用した定量的リアルタイムRT-PCR:
42のヒト卵巣癌試料を、Bio Mark(商標)HD System(Fluidigm)を使用して、選択した卵巣癌幹細胞特異的因子(CTCFL、LIN28B、CD24、GNL3、EpCAM、CD44、ABCG2、ALDH1A1、AMACR、ATXN1、BMI1、BMP4、CD34、CD117、Myd88、Nanog、Notch 1、Pou5F1、CD133、Snail、Sox 2)に関してTaqMan(登録商標)遺伝子発現アッセイ(Life technologies)とqRT-PCRによって分析した。それぞれの製造者の指示に従って、RNeasy Mini Kit(Qiagen)を使用して卵巣癌試料からのRNAの単離を実施し、PrimeScript RT Reagent Kit(Takara Bio Inc.)を使用してcDNAを合成した。TaqMan(登録商標)GE Assays rev A2を使用してFluidigm(登録商標)Advanced Development Protocol 28-Fast Gene Expression Analysisに従って試料を調製し、分析した。IFC Controller HXによって96.96 Gene Expression Dynamic Array IFCへの充填を実施した。チップアレイをFluidigm BioMark(商標)HDシステムによって分析した。TaqMan PreAmp MasterMixをApplied Biosystemsより購入した。データセットをΔΔCt法に従って評価した。選択した卵巣癌幹細胞マーカーとCLDN6の相関分析を、スピアマンrを用いて実施した。相関値の有意性を、相関係数に関する検定によって評価した。ベンジャミニとホッシュバーグの方法を用いて多重検定のためにp値を調整し、調整したp値≦0.05を有意とみなした。
【0385】
CLDN6抗体の毒素結合:
モノクローナル抗体の毒素結合をPiramal Healthcare(Grangemouth,UK)において実施した。
【0386】
DM1結合のために、裸の抗体を、PBS(pH7.2)中で室温にて1時間のインキュベーションによってリシン基の遊離NH2残基と反応するSMCC(6×モル濃度)で改変した。その後改変した抗体を35mMクエン酸緩衝液(pH5.0)に透析し、逆エルマンアッセイを用いてリンカー対抗体の比率を測定した。DM1(6×モル濃度)を、室温で17時間のインキュベーションによってそのスルフヒドリル基を介してSMCCリンカーのマレイミド部分に結合した。結合抗体を製剤緩衝液(20mM His、85mg/mlスクロース、pH5.8)に透析し、-80℃で保存した。薬剤抗体比を紫外分光法によって分析し、SEC-HPLCによってモノマー含量を、およびRP-HPLCによって遊離薬剤含量を分析した。
【0387】
MMAE結合のために、裸の抗体をPBS(pH7.2)に透析し、トラウト試薬(2-イミノチオラン)(20×モル濃度)を使用して室温で2時間、リシン残基の遊離NH2基をチオール化することによって改変した。その後チオール化した抗体を35mMクエン酸緩衝液(pH5.5)に透析し、逆エルマンアッセイを用いてリンカー対抗体の比率を測定した。vcMMAE(6×モル濃度)を、室温で15時間のインキュベーションによってカテプシン切断性リンカーのバリンを介してチオール化抗体のスルフヒドリル基に結合した。結合抗体を製剤緩衝液(20mM His、85mg/mlスクロース、pH5.8)に透析し、-80℃で保存した。薬剤抗体比を紫外分光法によって分析し、SEC-HPLCによってモノマー含量を、およびRP-HPLCによって遊離薬剤含量を分析した。
【0388】
フローサイトメトリによる相対的結合親和性の測定:
0.05%トリプシン/EDTA(Gibco、25300-054)を用いて細胞を採取し、FACS緩衝液(2%FCS(Gibco、10270-106)および0.1%アジ化ナトリウム(Applichem、A1430)を含有するPBS)で洗浄して、2×10細胞/mlの濃度でFACS緩衝液に再懸濁した。細胞懸濁液100μlをIMAB027、IMAB027-DM1またはIMAB027-vcMMAE(0.1ng/ml~20μg/mlの力価シリーズ)と共に4℃で30分間インキュベートした。次いで細胞をFACS緩衝液で3回洗浄し、FACS緩衝液中で1:200希釈した抗ヒトIgG(Jackson ImmunoResearch、109-136-170)と共に4℃で30分間インキュベートした。その後、細胞を2回洗浄し、FACS緩衝液100μlに再懸濁した。BD FACSArray(BD Biosciences)およびFlowJoソフトウェア(Tree Star Inc.)を使用してフローサイトメトリによって結合を分析した。
【0389】
毒素結合IMAB027に関する生存能アッセイ:
ヒト腫瘍細胞株の生存能へのIMAB027-DM1およびIMAB027-vcMMAEの作用を、細胞代謝活性を検出する比色アッセイ(AppliChemからのCell Proliferation Kit XTT)を用いてインビトロで測定した。
【0390】
OV90細胞を、0.05%トリプシン/EDTA(Gibco、25300-054)を用いて採取し、2500細胞を96ウェル培養物中の増殖培地50μlに播種した。24時間後、一連の濃度のDM1結合IMAB027およびMMAE結合IMAB027または培地50μlに希釈したアイソタイプ対照抗体を添加した。未処置細胞が約80%の集密度に達するまで細胞を3~7日間培養した。AppliChem Cell Proliferation Kit II(AppliChem、A8088-1000)を製造者に指示に従って使用して細胞生存能を分析した。XTT試薬との3~5時間のインキュベーション後、細胞上清100μlを新たな96ウェルアッセイプレートに移し、分光光度計(Tecan)を用いて480nm(参照630nm)で吸光度を測定した。
【0391】
生存能を以下の方程式を用いて計算した。
【数2】
ブランク:細胞なしの培地およびXTT
最大生細胞:細胞、培地およびXTT
【0392】
GraphPad Prism 6ソフトウェアを使用して非線形回帰によってEC50値を決定した。
【0393】
進行した皮下OV90異種移植腫瘍の処置:
ヒト卵巣癌細胞株OV90を標準的な条件下で培養した。移植のために、6~8週齢の雌性Hsd:無胸腺ヌードFoxn1nuマウスにPBS 200μl中の1×10OV90細胞を側腹部に皮下的に接種した。進行後処置試験では、腫瘍を10日間増殖させ、50~150mm体積の確立した腫瘍を有するマウスを処置の前にビヒクルと抗体群(n=10)に無作為に割り当てた。腫瘍体積(TV=(長さ×幅)/2)を週に2回観測した。TVをmmで表し、経時的な腫瘍増殖曲線を作成した。
【0394】
最初の用量範囲設定試験では、動物にビヒクル、IMAB027-DM1(1.78mg/kg、5.33mg/kgまたは16mg/kg)を1回i.v.注射し、移植後35日目に解剖した。2回目の用量範囲設定試験では、動物にビヒクル、IMAB027-vcMMAE(4mg/kg、8mg/kgもしくは16mg/kg)またはIMAB027-DM1(1.33mg/kg、2.67mg/kgもしくは5.33mg/kg)を1回i.v.注射した。IMAB027を35mg/kg IMAB027の交互のボーラスi.v./i.p./i.p.注射によって週に3回適用した。腫瘍が1400mmより大きな体積に達したときまたは潰瘍性になったときにマウスを犠死させた。腫瘍増殖の阻害を、クラスカル・ウォリス検定およびポストホック・ダンの多重比較検定を使用して分析した。生存率は、マンテル・コックス検定を用いて分析した。
【0395】
進行した皮下PA-1異種移植腫瘍の処置および腫瘍切片の免疫組織化学:
ヒト卵巣癌細胞株PA-1を標準的な条件下で培養した。移植のために、6~8週齢の雌性Hsd:無胸腺ヌードFoxn1nuマウスにPBS 200μl中の1×10PA-1細胞を側腹部に皮下的に接種した。進行後処置試験では、腫瘍を15日間増殖させ、40~120mm体積の確立した腫瘍を有するマウスを処置の前にビヒクルと抗体群(n=10)に無作為に割り当てた。腫瘍体積(TV=(長さ×幅)/2)を週に2回観測した。TVをmmで表し、経時的な腫瘍増殖曲線を作成した。
【0396】
動物にビヒクル、IMAB027-vcMMAE(4mg/kg、8mg/kgもしくは16mg/kg)またはIMAB027-DM1(4mg/kg、8mg/kgもしくは16mg/kg)を1回i.v.注射した。IMAB027を35mg/kg IMAB027の交互のボーラスi.v./i.p./i.p.注射によって週に3回適用した。腫瘍が1400mmより大きな体積に達したときまたは潰瘍性になったときにマウスを犠死させた。腫瘍増殖の阻害を、クラスカル・ウォリス検定およびポストホック・ダンの多重比較検定を使用して分析した。生存率は、マンテル・コックス検定を用いて分析した。
【0397】
腫瘍の確立と進行の間のCLDN6発現を分析するため、未処置マウスのPA-1腫瘍を7、14および56日目にそれぞれ切除し、ホルマリン固定して、パラフィンに包埋した。4μmの組織切片を各試料のFFPE(ホルマリン固定パラフィン包埋)ブロックから調製し、接着スライド(SuperFrost Ultra Plus、Thermo Fisher Scientific)に封入して、60℃で60分間焼成した。染色の前に、FFPE組織切片を脱パラフィン化した。0.05%Tween-20(pH6.0)を添加した10mMクエン酸中、120℃で10分間切片を煮沸した。PBS中0.3%Hでのインキュベーションによって内因性ペルオキシダーゼをクエンチングした。PBSで洗浄した後、非特異的抗体結合部位をブロッキング緩衝液(PBS中10%ヤギ血清)で室温にて30分間ブロックし、次いでブロッキング緩衝液に希釈した0.2μg/mlの一次ウサギ抗クローディン6抗体(IBL-America、18865)と共に一晩インキュベートした。次に試料をPBSで3回洗浄し、それぞれの二次希釈済み抗体(Power Vision HRPヤギ抗ウサギ;Immunologic)と共に室温で30分間インキュベートした。基質発色液(VectorRed;Vector Laboratories)を使用して視覚化を4分30秒間実施した。ヘマトキシリンで対比染色し、脱水して封入した後、Leica DM2000顕微鏡を用いて切片を分析した。
【0398】
進行した皮下MKN74異種移植腫瘍の処置および腫瘍切片の免疫組織化学:
ヒト胃癌細胞株MKN74を標準的な条件下で培養した。移植のために、6~8週齢の雌性Hsd:無胸腺ヌードFoxn1nuマウスにPBS 200μl中の1×10MKN74細胞を側腹部に皮下的に接種した。進行後処置試験では、腫瘍を7日間増殖させ、200±30mm体積の確立した腫瘍を有するマウスを処置の前にビヒクルと抗体群(n=10)に無作為に割り当てた。腫瘍体積(TV=(長さ×幅)/2)を週に2回観測した。TVをmmで表し、経時的な腫瘍増殖曲線を作成した。
【0399】
動物に、8日目に単回ボーラスi.v.注射によってビヒクル対照緩衝液または16mg/kg IMAB027-vcMMAEを投与した。腫瘍が1400mmより大きな体積に達したときまたは潰瘍性になったときにマウスを犠死させた。腫瘍増殖の阻害を、クラスカル・ウォリス検定およびポストホック・ダンの多重比較検定を使用して分析した。腫瘍増殖の阻害を、マン-ホイットニー検定およびポストホック・ダンの多重比較検定を使用して分析した。生存率は、マンテル・コックス検定を用いて分析した。
【0400】
MKN74細胞でのCLDN6標的発現を、移植前にフローサイトメトリによっておよび31日目に切除した未処置MKN74異種移植腫瘍に関する組織化学によって分析した。
【0401】
免疫組織化学のために、厚さ3μmの組織切片を調製し、スライドガラスに載せて、室温で90分間空気乾燥させた。すべての組織切片を-20℃のアセトン中で10分間固定し、PBS中で5分間洗浄した。0.03%過酸化水素(Dakocytomation EnVision System、K4011)との15分間のインキュベーションによって内因性ペルオキシダーゼをクエンチングした。PBSで洗浄した後、非特異的抗体結合部位をブロッキング緩衝液(PBS中10%ヤギ血清)で室温にて30分間ブロックし、次いで5μg/ml IMAB027-FITCと共に室温で60分間インキュベートした。次いで試料をPBSで3回洗浄し、それぞれの二次希釈済み抗体(Bright VisionポリHRP抗ウサギIgG、Immunologic、DPVR-110HRP)と共に室温で30分間インキュベートした。基質発色液(VectorRed;Vector Laboratories)を使用して視覚化を2分30秒間実施した。ヘマトキシリンで対比染色し、脱水して封入した後、Leica DM2000顕微鏡を用いて切片を分析した。
【0402】
進行した腹腔内PA-1(Luc)異種移植腫瘍の処置:
発光レポーター遺伝子としてホタルルシフェラーゼを安定に発現するヒト卵巣奇形癌細胞株PA-1(Luc)を腹腔内異種移植腫瘍モデルとして使用し、毒素結合IMAB027抗体の抗腫瘍活性をインビボで検討した。以前の移植実験は、PA-1(Luc)細胞の腹腔内接種が腹腔内腫瘍結節を生じさせることを明らかにした。
【0403】
PBS中に再懸濁した1×10PA-1(Luc)細胞を雌性Hsd:無胸腺ヌードFoxn1nuに腹腔内注射した。腫瘍細胞接種後14日目に生物発光イメージングを開始し、その後試験終了まで週に1回実施した。D-ルシフェリン(PerkinElmer、122796)を滅菌水に溶解し、IVIS Lumina Imaging System(Advanced Molecular Vision)によるイメージングの5分前に腹腔内注射した(150mg/kg、注射容量200μl)。マウスをイソフルランで麻酔し、IVIS Luminaの暗チャンバーに入れて、放出された光子を1分の積分時間について定量化した。動物の体内のPA-1細胞を発現するルシフェラーゼから生じる透過光の強度を疑似カラー画像として表示し、ここで青色は最も強度が弱く、赤色は最も強い生物発光シグナルである。マウスのグレースケール写真画像も、LED微光照明下で得た。Living Imageソフトウェア(Xenogen)を使用して画像を重ね合わせた。すべての画像について同等の照明設定を使用した。生物発光を定量化するため、関心領域(ROI)を決定し、それぞれのROIの総流量を光子/秒(p/s)で測定した。動物の非シグナル放出領域から得たバックグラウンド生物発光値を各動物についてそれぞれの生物発光値から差し引いた。
【0404】
14日目に、マウスを無作為に割り付け、それぞれ16mg/kg IMAB027-DM1またはIMAB027-vcMMAEの腹腔内投与によって処置した。対照動物にはビヒクル緩衝液を与えた。腫瘍増殖を腹面図からの生物発光イメージングによって週に1回観測し、その後マウスの腹部をカバーする関心領域内の総流量(光子/秒)を分析した。
【0405】
エンドサイトーシス:
標的結合抗体とサポリン結合抗ヒトIgG Fabフラグメント(Fab-ZAPヒト、Advanced Targeting Systems、IT-51)の共インターナリゼーションに基づく細胞傷害性ベースのエンドサイトーシスアッセイを用いて、CLDN6結合抗体のエンドサイトーシスを測定した。サポリンは、インターナリゼーション後にタンパク質生合成を害し、それゆえ細胞死をもたらすリボソーム不活性化タンパク質である。
【0406】
PA-1細胞を、0.05%トリプシン/EDTA(Gibco、25300-054)を用いて採取し、2.5×10細胞/ウェルを96ウェル培養プレート中の増殖培地50μlに播種した。24時間後、Fab-ZAPおよびその後IMAB027またはアイソタイプ対照抗体を各々25μlの容量で添加した。CLDN6抗体を6または8段階希釈シリーズで投与し、一方Fab-ZAPは一定濃度で適用した(Fab-ZAP:抗体比3:1~6561:1)。細胞を37℃の加湿COインキュベータ中でさらに72時間培養した。その後、AppliChemからのCell Proliferation Kit II(AppliChem、A8088-1000)を製造者に指示に従って使用して細胞生存能を分析した。分光光度計(Tecan)を用いて480nm(参照630nm)で吸光度を測定した。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図7D
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図15C
図15D
図15E
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図15G
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図16
図17
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図19A
図19B
図20
図21
図22
図23A
図23B
【配列表】
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