(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】スタンパ構造を備えたスタンパ並びにその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20220906BHJP
B29C 33/40 20060101ALI20220906BHJP
B29C 59/02 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
H01L21/30 502D
B29C33/40
B29C59/02 B
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020069743
(22)【出願日】2020-04-08
(62)【分割の表示】P 2018133444の分割
【原出願日】2013-11-29
【審査請求日】2020-04-17
(73)【特許権者】
【識別番号】508333169
【氏名又は名称】エーファウ・グループ・エー・タルナー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ムスタファ チョウイキ
【審査官】今井 彰
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-055097(JP,A)
【文献】特開2012-245775(JP,A)
【文献】国際公開第2012/141238(WO,A1)
【文献】特開2013-154637(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0131784(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027、21/30
G03F 7/20-7/24、9/00-9/02
B29C 33/00-33/76、45/00-45/84
57/00-59/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スタンパ構造を備えたインプリントスタンパにおいて、前記スタンパ構造は、スタンパ材料として少なくとも部分的にシリコーンから形成されていて、前記インプリントスタンパは変形可能に構成されていて、前記インプリントスタンパは、10000MPa未満の弾性率を有し、前記インプリントスタンパの表面の粗さが1μm未満であり、かつ前記スタンパ材料は、型押し材料に対して不透過性であり、かつ前記スタンパ材料は、導電性であり、
ここで、前記スタンパ材料の導電性は、カーボンナノチューブ、グラフェンおよびグラファイトから選択される少なくとも1種の他の成分を添加することにより達成され、かつ1W/(m・K)より大きい熱伝導率を有し、かつエポキシ官能化シリコーン及び/又はアクリラート官能化シロキサン及び/又はアクリラートシリコーンである、インプリントスタンパ。
【請求項2】
スタンパ構造を備えたインプリントスタンパにおいて、前記スタンパ構造は、スタンパ材料として少なくとも部分的にシリコーンから形成されていて、前記インプリントスタンパは変形可能に構成されていて、前記インプリントスタンパは、10000MPa未満の弾性率を有し、前記インプリントスタンパの表面の粗さが1μm未満であり、かつ前記スタンパ材料は、型押し材料に対して不透過性であり、かつ前記スタンパ材料は、導電性であり、
ここで、前記スタンパ材料の導電性は、カーボンナノチューブ、グラフェンおよびグラファイトから選択される少なくとも1種の他の成分を添加することにより達成され、かつ1W/(m・K)より大きい熱伝導率を有し、かつ規則的又は不規則の間隔でメチル基がエポキシ基及び/又はアクリラート基によって置き換えられたポリジメチルシロキサンである、インプリントスタンパ。
【請求項3】
前記スタンパ材料は、UV線又は熱照射によって硬化されているか又は硬化可能である、請求項1又は2に記載のスタンパ。
【請求項4】
前記スタンパ材料は、5000nm~10nm、好ましくは1000nm~100nm、より好ましくは700nm~200nm、最も好ましくは500nm~400nmの波長領域で透過性である、請求項1から3までのいずれか1項に記載のスタンパ。
【請求項5】
インプリントスタンパのスタンパ構造を形成する方法において、前記スタンパ構造を、マスタースタンパを用いて、スタンパ材料として少なくとも部分的にシリコーンから形成し、前記スタンパ構造の前記スタンパ材料を、UV線又は熱照射により硬化し、前記インプリントスタンパは変形可能に構成されていて、前記インプリントスタンパは、10000MPa未満の弾性率を有し、前記インプリントスタンパの表面の粗さが1μm未満であり、かつ前記スタンパ材料は、型押し材料に対して不透過性であり、かつ前記スタンパ材料は、導電性であり、
ここで、前記スタンパ材料の導電性は、カーボンナノチューブ、グラフェンおよびグラファイトから選択される少なくとも1種の他の成分を添加することにより達成され、かつ1W/(m・K)より大きい熱伝導率を有し、かつエポキシ官能化シリコーン及び/又はアクリラート官能化シロキサン及び/又はアクリラートシリコーンである、インプリントスタンパのスタンパ構造を形成する方法。
【請求項6】
インプリントスタンパのスタンパ構造を形成する方法において、前記スタンパ構造を、マスタースタンパを用いて、スタンパ材料として少なくとも部分的にシリコーンから形成し、前記スタンパ構造の前記スタンパ材料を、UV線又は熱照射により硬化し、前記インプリントスタンパは変形可能に構成されていて、前記インプリントスタンパは、10000MPa未満の弾性率を有し、前記インプリントスタンパの表面の粗さが1μm未満であり、かつ前記スタンパ材料は、型押し材料に対して不透過性であり、かつ前記スタンパ材料は、導電性であり、
ここで、前記スタンパ材料の導電性は、カーボンナノチューブ、グラフェンおよびグラファイトから選択される少なくとも1種の他の成分を添加することにより達成され、かつ1W/(m・K)より大きい熱伝導率を有し、かつ規則的又は不規則の間隔でメチル基がエポキシ基及び/又はアクリラート基によって置き換えられたポリジメチルシロキサンである、インプリントスタンパのスタンパ構造を形成する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項6に記載のスタンパ構造を備えたスタンパの製造方法、並びに請求項1に記載の構造スタンパに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体工業において、相応する機能的素子を作製するために、材料に関して構造化プロセスを実施しなければならない。ここ数十年の最も重要な構造化プロセスの1つは、今日までもまだフォトリソグラフィーである。
【0003】
ここ数年において、確かにフォトリソグラフィーの他に、インプリント技術が、新規の代替の構造化技術として認められ、この技術は、専らではないが、現在でもまだ主に、高対称性の、特に反復する構造素子の構造化のために利用される。インプリント技術を用いて、型押材料にスタンパプロセスによって直接表面構造を作製することができる。これにより生じる利点は明らかである。フォトリソグラフィープロセスのためにはまだ必要であった現像のため及びエッチングのための薬品を省くことができる。更に、今日既に、ナノメートル領域の構造サイズを型押しすることができ、この製造は、慣用のフォトリソグラフィーによると、極端に複雑でかつ特に高価な装置によって考えられるだけである。
【0004】
インプリント技術の場合に、2種類のスタンパ、つまり硬質スタンパ及び軟質スタンパの間で区別される。各スタンパプロセスは、理論的には硬質スタンパ又は軟質スタンパを用いて実施することができる。しかしながら、多くの技術的及び金銭的理由があり、硬質スタンパ自体は、いわゆるマスタースタンパとしてだけ使用し、このマスタースタンパから、必要な場合に、軟質スタンパを型取り、ついでこの軟質スタンパを本来の構造スタンパとして使用する。この硬質スタンパは、つまり軟質スタンパのネガである。硬質スタンパは、複数の軟質スタンパの製造のためだけに必要である。軟質スタンパは、多様な化学的、物理的かつ工業的パラメータにより、硬質スタンパとは区別することができる。弾性挙動に基づく区別が考えられる。軟質スタンパは、主にエントロピー弾性に基づく変形挙動を示し、硬質スタンパは、主にエネルギー弾性に基づく変形挙動を示す。更に、この2つの種類のスタンパは、例えばこの硬度によって区別することができる。硬度は、材料が押し込まれる物体に対抗する抵抗性である。硬質スタンパは主に金属又はセラミックスからなるため、この硬質スタンパは相応して高い硬度値を示す。固体の硬度を定める多様な方法が存在する。極めて慣用の方法は、ビッカースによる硬度の記述である。詳細を言及することなく、大まかには、硬質スタンパは500HVを越えるビッカース硬度を有すると言うことができる。
【0005】
硬質スタンパは、確かに、適切なプロセス、例えば電子線リソグラフィー又はレーザー光線リソグラフィーによって高い強度及び高い剛性を有する材料の部材から直接作製することができるという利点を有する。この種の硬質スタンパは、極めて高い硬度を有し、かつそれにより程度に差はあるが耐摩耗性である。この高い強度及び耐摩耗性は、確かに、とりわけこのような硬質スタンパの製造のために生じる高いコストと対立している。硬質スタンパが100回の型押し工程のために利用できる場合であっても、このスタンパは、時間と共にもはやなおざりにできない摩耗を示すことになる。さらに、この硬質スタンパを型押し材料から離型することは技術的に困難である。硬質スタンパは比較的高い曲げ抵抗を示す。この硬質スタンパは、特に良好には変形可能ではなく、つまり型押し平面に対して法線方向に取り外さなければならない。型押しプロセス後に硬質スタンパを離型する際に、ここで、規則的に、型押しされたナノ構造及び/又はマイクロ構造の破壊が生じかねない、というのも、硬質スタンパは極めて高い剛性を示し、従ってちょうど型押しされた型押し材料のマイクロ構造及び/又はナノ構造を破壊しかねないためである。更に、基板は欠陥を有することがあり、この欠陥が、次の工程で、硬質スタンパの損傷又は破壊を引き起こすことがある。確かに、硬質スタンパをマスタースタンパとしてだけ使用する場合、このマスタースタンパから軟質スタンパの型取りプロセスは極めて良好に制御可能でありかつマスタースタンパの極めて僅かな摩耗に結びつく。
【0006】
軟質スタンパは、マスタースタンパ(硬質スタンパ)から複製プロセスによって極めて簡単に作製できる。このマスタースタンパは、この場合、軟質スタンパに対応するネガである。この軟質スタンパは、つまりマスタースタンパに型押しされ、その後で離型され、次いでたいていは基材上に施された型押し材料内にスタンパ構造を型押しするための構造スタンパとして使用される。軟質スタンパは、硬質スタンパよりも、機械的に極めて簡単で、温和でかつ問題なく型押し材料から離型できる。更に、任意の数の軟質スタンパをマスターから型取ることができる。軟質スタンパが所定の摩耗を示した後には、この軟質スタンパを破棄し、新たな軟質スタンパをマスタースタンパから形成する。
【0007】
今日の先行技術の問題は、特に軟質スタンパが、その化学構造に基づいて、他の分子状の化合物に対して極めて高い吸収性を示す点にある。つまり、この軟質スタンパは、主に金属、セラミック又はガラスからなる硬質スタンパとは異なり、一般に他の分子状の化合物に対して透過性である。金属製及びセラミック製のマイクロ構造の場合、分子状の物質の吸収はたいていの場合に排除される、それでも、特別な硬質スタンパの場合であっても、分子状の物質の吸収を引き起こすことがある。
【0008】
軟質スタンパは、型押し材料を用いた型押しプロセスの間に、頻繁にこの型押し材料の一部を吸収する。この吸収はいくつかの望ましくない効果を引き起こす。
【0009】
第1に、型押し材料の分子の吸収により、軟質スタンパの膨潤が生じる。この膨潤は、特に、軟質スタンパの表面上でのマイクロ構造及び/又はナノ構造の範囲内で問題である、というのも、マイクロ構造及び/又はナノ構造をゆがめるには、型押し材料の既に少量の分子で十分であるためである。軟質スタンパは複数回使用されるため、その使用の経過で、この軟質スタンパは次第に多くの型押し材料分子を吸収する。型押し材料分子の吸収は、軟質スタンパの耐用時間を決定的に低下させる。この膨潤は、多様な測定機器、例えば原子間力顕微鏡(AFM)、走査電子顕微鏡(SEM)等によって直接測定可能であるか、又は体積増加及び/又は質量増加を介して間接的に測定可能である。体積増加及び/又は質量増加の測定は、確かに極めて高い解像度を有する測定機器を必要とする。例えば、マイクロ重量分析及び/又はナノ重量分析法による質量増加の測定が考えられる。
【0010】
更に、この型取り材料は、熱又は電磁波によって硬化される。特に、電磁波による硬化の場合には、既にこのスタンパ内に部分的に浸透した型押し材料分子が、全体の型押し材料の照射時間に不利に影響する。この理由は、軟質スタンパ中に浸透した型押し材料分子の硬化にある。軟質スタンパ中の型押し材料分子は硬化し、それによりあまり透明でなくなり、かつそれにより本来の型押し材料に向かう電磁波の強度を低下させる。この問題は、軟質スタンパ及び硬質スタンパについて同じく重要である。
【0011】
第3の問題は、軟質スタンパの粘着である。軟質スタンパは、主に、型押し材料と似た物理特性及び/又は化学特性を有するポリマーからなる。従って、軟質スタンパの表面の型押し材料との粘着が生じ、この粘着は、軟質スタンパの離型特性に不利に影響する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】EP2286981B1
【文献】PCT/EP2013/062922
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、本発明の課題は、インプリント技術のための構造スタンパの製造を、最適なスタンパ材料を明らかにするように改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述の課題は、請求項1及び6の特徴によって解決される。本発明の好ましい実施態様は、従属請求項に記載されている。明細書、特許請求の範囲及び/又は図面に記載された特徴の少なくとも2つからなる全ての組み合わせも、本発明の範囲に含まれる。記載された値の範囲は、限界値としての記載された限界にある値内に明らかに該当し、かつ任意の組み合わせも利用することができる。
【0015】
本発明は、スタンパ材料からなる軟質スタンパの利点を有し、スタンパを型押し材料からできる限り簡単に離型でき、できる限り膨潤を示さずかつ本来の型押し材料により汚染されないスタンパを取り扱う。従って、このスタンパ材料は、本発明の場合に、型押し材料に対して特に不透過性である。一般に、型押し材料と、本発明による構造スタンパのスタンパ材料との間で、親水性と疎水性とを変える場合に、特に本発明による利点が生じる。型押し材料が疎水性である場合、本発明による構造スタンパのスタンパ材料は親水性であるのが好ましくかつその逆の場合も好ましい。ただし、極めて特別な場合に、構造スタンパと型押し材料が両方とも疎水性であるか又は両方とも親水性である場合も特別な利点が生じることがある。本発明による構造スタンパのスタンパ材料を選択する方法により、常に、型押し材料に関して低い粘着特性を示す材料を選択することができる。従って、更に、本発明によるスタンパ材料は、型押し材料の分子に対して不透過性である場合に本発明による利点が生じる。他の本発明による利点は、本発明によるスタンパ材料の、特に適切に調節可能な表面である。特に、表面が極端に高い粗さを示す軟質スタンパの場合には、型押しされるべき構造に不利な影響を及ぼしかねない。本発明によるスタンパ材料の使用によって、第1に、平滑な表面によって型押し材料に対する接触面は最小化され、第2に、形状の噛み合いによる結合は低減する。それにより、同様に改善された離型が生じる。改善されかつ効果的な離型は、特に、離型のために必要な力がより低いことに起因し得る。従って、本発明によるスタンパ材料の粗さは、1μm未満、好ましくは100nm未満、更に好ましくは10nm未満、最も好ましくは1nm未満である。この開示された粗さ値は、算術平均粗さ(mittlere Rauheit)及び/又は二乗平均平方根高さ(quadratische Rauheit)及び/又は十点平均粗さ(gemittelte Rautiefe)があてはまる。この測定は、この場合、約2μm×2μmの面積区分について行われる。
【0016】
全く特別な実施形態の場合に、本発明によるスタンパ材料は導電性である。それにより、好ましくは、静電荷は防止されるか又は少なくとも低減される。更に好ましくは、導電性の本発明によるスタンパ材料は接地されていてもよく、その結果、その表面で生じる電荷は搬出される。電気的に中性の表面によって、粒子の引き寄せ、特に静電気的引き寄せを妨げるか又は完全に取り除き、それにより長時間にわたりこのスタンパの清浄度が高められる。接地は、本発明によるスタンパ材料、ひいてはスタンパと、好ましくは縁部で接続する。スタンパ材料の導電性は、分子特性に基づき既に電子の伝導性を可能とする、適切に使用された化学構造により達成することができるか、又は非導電性スタンパ材料を導電性にする少なくとも1種の他の成分を添加することにより達成することができる。特に、この場合に、マイクロ粒子及び/又はナノ粒子、ナノワイヤ、特にカーボンナノチューブ、グラフェン、グラファイトなどの使用が好ましい。添加されたマイクロ粒子及び/又はナノ粒子は、特に好ましくは、型押し材料の硬化を熱によって行い、かつ本来好ましいようなUV光によって行わない場合に、スタンパの加熱のためにも使用することもできる。マイクロ粒子及び/又はナノ粒子によるこの種の加熱は、特許文献EP2286981B1に開示されている。この引用された特許文献は、確かに、マイクロ粒子及び/又はナノ粒子が、型押し材料中に存在することについて指摘している。本願の場合には、マイクロ粒子及び/又はナノ粒子が、型押し材料ではなく、スタンパの直接的な加熱を達成するために、本発明によるスタンパ材料中に存在する。型押し材料の加熱は、次いで、スタンパを介して間接的に行われる。特許文献EP2286981B1には、マイクロ粒子及び/又はナノ粒子が磁場に対して敏感である、つまり磁性を示す場合に、マイクロ粒子及び/又はナノ粒子を交流磁場によって加熱することが考えられている。
【0017】
親水性とは、材料の表面の水との高い相互作用性であると解釈される。親水性表面は主に極性であり、かつ流体の分子の永久双極子と、好ましくは水と、相応して良好に相互作用する。表面の親水性は、接触角測定機器によって定量化される。この場合、親水性表面は、極めて低い接触角を示す。できる限り簡単に型押し材料から離型するために、本発明による被覆が親水性表面を有しなければならない場合には、本発明による次の値の範囲が当てはまる:親水性表面は、90°未満、好ましくは60°未満、更に好ましくは40°未満、より好ましくは20°未満、最も好ましくは10°未満の接触角を示す。
【0018】
疎水性とは、相応して材料の表面の水との低い相互作用性であると解釈される。疎水性表面は主に無極性であり、かつ流体の分子の永久双極子とほとんど相互作用しない。できる限り簡単に型押し材料から離型するために、本発明の一実施態様の場合に、本発明による被覆は疎水性表面を有する場合に、本発明の場合に次の値の範囲が当てはまる:疎水性表面は、90°より大きい、好ましくは100°より大きい、更に好ましくは120°より大きい、より好ましくは140°より大きい、最も好ましくは160°より大きい接触角を示す。親水性又は疎水性によって、表面の挙動は水に関して特徴付けられているにもかかわらず、相互の挙動に関して正確な説明を得るために、多様な材料の間の粘着特性を直接測定しなければならないこともあることは、当業者には明らかである。水に関する表面の粘着特性の特性決定は、確かに、この粘着挙動の極めて大まかな洞察を既に提供する。スタンパ材料と型押し材料との間の粘着特性を特性決定する場合、接触角測定法は本発明の場合に、好ましくは水を用いてではなく、スタンパ上に直接堆積された型押し材料の液滴を用いて直接実施される。本発明によるスタンパは、特に、インプリント技術において使用するためのインプリントスタンパである。このスタンパは、軟質スタンパの製造のための硬質スタンパとして、又は好ましくは基板のインプリントのための軟質スタンパとして形成される。本発明によるスタンパ材料によって、型押し材料からのスタンパの離型は、スタンパが好ましくは型押し材料に対して低い粘着を示すことにより、構造を損なうことなしに及び/又は(部分的に)破壊することなしに可能となる。2つの表面の間の粘着能力は、最良には、単位面積当たりのエネルギーによって、つまりエネルギー面積密度によって表される。これについては、単位面積に沿って2つの互いに結合した表面を互いに分離するために必要なエネルギーであると解釈される。型押し材料と構造スタンパとの間の粘着は、この場合、2.5J/m2未満、好ましくは1J/m2未満、更に好ましくは0.1J/m2未満、より好ましくは0.01J/m2未満、更に好ましくは0.001J/m2未満、より好ましくは0.0001J/m2未満、最も好ましくは0.00001J/m2未満である。この離型は、それにより、本発明によるスタンパ材料を使用しないスタンパを用いた場合よりも、より容易に、より迅速に、かつより効果的にかつより低コストで可能となる。特に、高められた離型速度により、単位時間当たりの型押し工程の数を高めることができることにより、より低コストになる。更に、スタンパの耐用時間はかなり向上するため、それにより製造コストが低減される。
【0019】
好ましくは、軟質スタンパ内へ型押し材料が侵入できないことにより、構造スタンパ、特に軟質スタンパの膨潤が本発明による構造材料によって防止されるほど密封性が高いスタンパ材料が使用される。相応して、スタンパ構造のゆがみは十分に回避される。
【0020】
このスタンパ材料は、好ましくは、1~2500mPas、好ましくは10~2500mPas、更に好ましくは100~2500mPas、より好ましくは150~2500mPasの粘度を示す。
【0021】
更に、型押し材料の吸収が本発明によるスタンパ材料によって遮断されるか少なくとも低減される限り、スタンパのスタンパ材料を通した型押し材料の照射時間は短縮される。これは、特に、型押し材料が構造スタンパを通して照射される場合に必要である。本発明による型押し材料は、従って、好ましくは、使用される電磁波に対して主に透過性である。たいていの型押し材料はUV光によって硬化されるため、本発明によるスタンパ材料は好ましくはUV光に対して透過性である。本発明によるスタンパ材料は、特に、5000nm~10nm、好ましくは1000nm~100nm、更に好ましくは700nm~200nm、より好ましくは500nm~300nmの波長領域で透過性である。
【0022】
本発明によるスタンパ材料、スタンパ構造及び/又は構造スタンパ自体は、特に少なくとも主に、好ましくは完全に、次の材料の少なくとも1種からなる:
【0023】
○ シリコーン、
● ビニル官能性ポリマー
● ビニル末端のポリジメチルシロキサン、特にCAS: 68083-12-2
● ビニル末端のジフェニルシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマー、特にCAS: 68951-96-2
● ビニル末端のポリフェニルメチルシロキサン、特にCAS: 225927-21-9
● ビニルフェニルメチル末端のビニルフェニルシロキサン-フェニルメチルシロキサンコポリマー、特にCAS: 8027-82-1
● ビニル末端のトリフルオロプロピルメチルシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマー、特にCAS: 68951-98-4
● ビニルメチルシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキシ末端、特にCAS: 67762-94-1
● ビニルメチルシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマー、シラノール末端、特にCAS 67923-19-7
● ビニルメチルシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマー、ビニル末端、特にCAS 68083-18-1
● ビニルゴム
● ビニルQ樹脂分散体、特にCAS: 68584-83-8
● ビニルメチルシロキサンホモポリマー、特にCAS: 68037-87-6
● ビニルT構造ポリマー、特にCAS: 126681-51-9
● モノビニル官能化ポリジメチルシロキサン(対称又は非対称)、特にCAS: 689252-00-1
● ビニルメチルシロキサンターポリマー、特にCAS: 597543-32-3
● ビニルメトキシシロキサンホモポリマー、特にCAS: 131298-48-1
● ビニルエトキシシロキサンホモポリマー、特にCAS: 29434-25-1
● ビニルエトキシシロキサン-プロピルエトキシシロキサンコポリマー
【0024】
● ヒドリド官能性ポリマー
● ヒドリド末端のポリジメチルシロキサン、特にCAS: 70900-21-9
● ポリフェニルメチルシロキサン、ヒドリド末端
● メチルヒドロシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキシ末端、特にCAS: 68037-59-2
● メチルヒドロシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマー、ヒドリド末端、特にCAS: 69013-23-6
● ポリメチルヒドロシロキサン、トリメチルシロキシ末端、特にCAS: 63148-57-2
● ポリエチルヒドロシロキサン、トリエチルシロキシ末端、特にCAS: 24979-95-1
● ポリフェニル-ジメチルヒドロシロキシシロキサン、ヒドリド末端
● メチルヒドロシロキサン-フェニルメチルシロキサンコポリマー、ヒドリド末端、特にCAS: 115487-49-5
● メチルヒドロシロキサン-オクチルメチルシロキサンコポリマー及びターポリマー、特にCAS: 68554-69-8
● ヒドリドQ樹脂、特にCAS: 68988-57-8
【0025】
● シラノール官能性ポリマー
● シラノール末端のポリジメチルシロキサン、特にCAS: 70131-67-8
● シラノール末端のジフェニルシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマー、特にCAS 68951-93-9及び/又はCAS: 68083-14-7
● シラノール末端のポリジフェニルシロキサン、特にCAS: 63148-59-4
● シラノール末端のポリトリフルオロプロピルメチルシロキサン、特にCAS: 68607-77-2
● シラノール-トリメチルシリル変性Q樹脂、特にCAS: 56275-01-5
【0026】
● アミノ官能化シリコーン
● アミノプロピル末端のポリジメチルシロキサン、特にCAS: 106214-84-0
● N-エチルアミノイソブチル末端のポリジメチルシロキサン、特にCAS: 254891-17-3
● アミノプロピルメチルシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマー、特にCAS: 99363-37-8
● アミノエチルアミノプロピルメチルシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマー、特にCAS 71750-79-3
● アミノエチルアミノイソブチルメチルシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマー、特にCAS: 106842-44-8
● アミノエチルアミノプロピルメトキシシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマー、特にCAS: 67923-07-3
【0027】
● ヒンダードアミン官能化シロキサン(英語:hindered amine functional siloxanes)
● テトラメチルピペリジニルオキシプロピルメチルシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマー、特にCAS: 182635-99-0
【0028】
● エポキシ官能化シリコーン
● エポキシプロポキシプロピル末端のポリジメチルシロキサン、特にCAS: 102782-97-8
● エポキシプロポキシプロピルメチルシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマー、特にCAS: 68440-71-7
● エポキシプロポキシプロピル末端のポリフェニルメチルシロキサン、特にCAS: 102782-98-9
● エポキシプロポキシプロピルジメトキシシリル末端のポリジメチルシロキサン、特にCAS: 188958-73-8
● トリス(グリシドキシプロピルジメチルシロキシ)フェニルシラン、特にCAS: 90393-83-2
● モノ-(2,3-エポキシ)-プロピルエーテル末端のポリジメチルシロキサン(好ましい実施形態)、特にCAS: 127947-26-6
● エポキシシクロヘキシルエチルメチルシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマー、特にCAS: 67762-95-2
● (2~3%エポキシシクロヘキシルエチルメチルシロキサン)(10~15%メトキシポリアルキレンオキシメチルシロキサン)-ジメチルシロキサンターポリマー、特にCAS: 69669-36-9
【0029】
● 環式脂肪族エポキシシラン及びシリコーン
● エポキシシクロヘキシルエチルメチルシロキサン)-ジメチルシロキサンコポリマー、特にCAS: 67762-95-2
● (2~3%エポキシシクロヘキシルエチルメチルシロキサン)(10~15%メトキシポリアルキレンオキシメチルシロキサン)-ジメチルシロキサンターポリマー、特にCAS: 69669-36-9
● エポキシシクロヘキシルエチル末端のポリジメチルシロキサン、特にCAS: 102782-98-9
【0030】
● カルビノール官能化シリコーン
● カルビノールヒドロキシ末端のポリジメチルシロキサン、特にCAS: 156327-07-0, CAS: 104780-66-7, CAS: 68937-54-2, CAS: 161755-53-9, CAS: 120359-07-1
● ビス(ヒドロキシエチル)アミン)末端のポリジメチルシロキサン
● カルビノール官能化メチルシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマー、特にCAS: 68937-54-2, CAS: 68957-00-6, CAS: 200443-93-2
● モノカルビノール末端のポリジメチルシロキサン、特にCAS: 207308-30-3
● モノジカルビノール末端のポリジメチルシロキサン、特にCAS: 218131-11-4
【0031】
● メタクリラート及びアクリラート官能化シロキサン
● メタクリルオキシプロピル末端のポリジメチルシロキサン、特にCAS: 58130-03-3
● (3-アクリルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシプロピル)末端のポリジメチルシロキサン、特にCAS: 128754-61-0
● アクリルオキシ末端のエチレンオキシド-ジメチルシロキサン-エチレンオキシドABAブロックコポリマー、特にCAS: 117440-21-9
● メタクリルオキシプロピル末端の分枝したポリジメチルシロキサン、特にCAS: 80722-63-0
● メタクリルオキシプロピルメチルシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマー、特にCAS: 104780-61-2
● アクリルオキシプロピルメチルシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマー、特にCAS: 158061-40-6
● (3-アクリルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシプロピル)メチルシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマー
● メタクリルオキシプロピルT構造化シロキサン、特にCAS: 67923-18-6
● アクリルオキシプロピルT構造化シロキサン
【0032】
● 多面体のオリゴマーのシルセスキオキサン(POSS)
● オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)
● ポリ(オルガノ)シロキサン
【0033】
好ましくは、このスタンパ材料は、エポキシシリコーン及び/又はアクリラートシリコーンからなる。本発明によるスタンパ材料の化学基本構造は、従って、規則的又は不規則の間隔でメチル基がエポキシ基及び/又はアクリラート基によって置き換えられたポリジメチルシロキサンである。これらの化学基は、好ましくはUV光による本発明によるスタンパ材料の硬化を可能にする。UV硬化プロセスを開始するために、本発明によるスタンパ材料に、相応するラジカル開始剤及び/又はカチオン開始剤を添加することができる。
【0034】
更に、このスタンパ、特にスタンパ構造は、上述の材料の組み合わせから製造することも考えられる。また、一連のスタンパ及びバックプレイン(英語:backplane)の使用も考えられ、この場合、スタンパとバックプレインとは一般に異なる材料からなる。複数の異なる材料の使用により、この材料から製造された個々の又は組み合わせられたスタンパはハイブリッドスタンパと言われることとなる。バックプレインは、ここではスタンパの補強材として利用することができる。確かに極端に柔軟でありかつスタンパの支持体として利用されるだけであるバックプレインも考えられる。ついで、このバックプレインは、特に2000μm未満、好ましくは1000μm未満、より好ましくは500μm未満、最も好ましくは100μm未満の厚さを有する。
【0035】
特に好ましい実施態様の場合に、このスタンパは、付加的に、本発明によるスタンパ材料と型押し材料との間の粘着の低下を達成するために付着防止層で被覆される。好ましくは、この付着防止層は、型押し材料に対して相応して低い粘着特性を有する有機分子である。例えば金属、セラミック又はガラス製のスタンパの場合にはほとんどが当てはまるように、スタンパが既に型押し材料の分子に対して既に不透過性である場合に、拡散バリアとしての本発明による被覆は省くことができかつこのスタンパは、この場合に本発明による被覆として、付着防止層で直接被覆されていてもよい。それにより、粘着に基づく離型特性に関して少なくとも1つの好ましい効果が生じる。この種の被覆は、既に、特許文献PCT/EP2013/062922に言及され、この点でこの特許文献が指摘される。
【0036】
本発明によるスタンパ材料は、型押し材料のUV効果の際に好ましくは、型押し材料を架橋させる電磁波の波長領域に対して少なくとも部分的に透過性である。光学的透明性は、この場合、0%より大きく、好ましくは20%より大きく、より好ましくは50%より大きく、更に好ましくは80%より大きく、最も好ましくは95%より大きい。この光学的透明性についての波長領域は、特に100nm~1000nm、好ましくは150nm~500nm、更に好ましくは200nm~400nm、最も好ましくは250nm~350nmである。
【0037】
型押し材料が熱により硬化される場合、スタンパ、特に本発明による被覆はできる限り高い熱伝導率を有する。この熱伝導率は、この場合、0.1W/(m・K)より大きく、好ましくは1W/(m・K)より大きく、好ましくは10W/(m・K)より大きく、更に好ましくは100W/(m・K)より大きく、最も好ましくは1000W/(m・K)より大きい。
【0038】
被覆を備えた構造スタンパは、特に温度安定性に構成されている。この構造スタンパは、特に25℃より高い温度で、好ましくは100℃より高い温度で、更に好ましくは250℃より高い温度で、より好ましくは500℃より高い温度で、最も好ましくは750℃より高い温度で使用することができる。
【0039】
弾性率は、素材の弾性の特性を表す。この構造スタンパは、基本的にあらゆる任意の弾性率を有することができる。ただし、構造スタンパを変形可能に保持しかつそれにより型押し材料から容易に分離するために、できる限り小さな弾性率であるのが好ましい。この弾性は、主にエントロピー弾性である。従って、弾性率は、10000MPa未満、好ましくは1000MPa未満、更に好ましくは100MPa未満、より好ましくは1~50MPa、最も好ましくは1~20MPaである。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1a】好ましいアクリラートシリコーンの化学構造を示す。
【
図1b】好ましいエポキシシリコーンの化学構造を示す。