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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】電源制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20220906BHJP
   B60R 16/033 20060101ALI20220906BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20220906BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
H02J7/00 302C
B60R16/033 B
H01M10/44 P
H01M10/48 P
H02J7/00 P
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020191683
(22)【出願日】2020-11-18
(65)【公開番号】P2022080550
(43)【公開日】2022-05-30
【審査請求日】2022-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145908
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信雄
(74)【代理人】
【識別番号】100136711
【弁理士】
【氏名又は名称】益頭 正一
(72)【発明者】
【氏名】笹原 将人
【審査官】右田 勝則
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-125928(JP,A)
【文献】特開2020-137218(JP,A)
【文献】特開2020-032831(JP,A)
【文献】特開2017-093226(JP,A)
【文献】国際公開第2018/047636(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00
H01M 10/44
H01M 10/48
B60R 16/033
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力供給部と、メイン電源と、バックアップ電源とを備える電源システムにおいて、前記電力供給部と前記メイン電源と前記バックアップ電源とを接続し、前記バックアップ電源の充放電を制御する電源制御装置であって、
前記電力供給部と前記メイン電源と前記バックアップ電源とバックアップ負荷とが接続された電力線と、
前記電力線に設けられ、前記電力供給部及び前記メイン電源と前記バックアップ電源との接続をON/OFFする第1スイッチと、
前記電力線に設けられ、前記バックアップ電源と前記バックアップ負荷との接続をON/OFFする第2スイッチと、
前記第2スイッチと並列に前記電力線に接続され、前記電力供給部側から供給された電圧を変換して前記バックアップ電源側に供給する充電用DC/DCコンバータと、
前記第1スイッチをOFF、前記第2スイッチをONにして前記バックアップ電源から前記バックアップ負荷に放電する放電制御と、前記第1スイッチをON、前記第2スイッチをOFFにし前記充電用DC/DCコンバータ経由で前記バックアップ電源を充電する第1充電制御と、前記第1スイッチをON、前記第2スイッチをONにし前記第2スイッチ経由で前記バックアップ電源を充電する第2充電制御とを実行する制御部と
を備え、
前記制御部は、前記バックアップ電源の充電時に、充電電流の電流値が第1所定値以上且つ前記第1所定値より大きい第2所定値以下の場合に限り、前記第2充電制御を実行する電源制御装置。
【請求項2】
前記第2スイッチと前記バックアップ負荷との間に設けられた放電回路を備え、
前記制御部は、前記第1スイッチをON、前記第2スイッチをOFFにし前記電力供給部から前記放電回路を通して放電させる放電処理を実行し、前記放電処理の実行中に前記放電回路に流れる電流値と、前記バックアップ負荷に出力される電流値と、前記第1充電制御の実行中に前記バックアップ電源に流れる電流値と、前記バックアップ電源の電圧及び開回路電圧と、前記第1スイッチと前記第2スイッチとの間の電圧とに基づいて、前記充電電流の電流値を算出する請求項1に記載の電源制御装置。
【請求項3】
前記第1所定値は、前記充電用DC/DCコンバータの出力電流の最大値に設定され、
前記第2所定値は、前記電源制御装置における通電電流の最大値、及び前記バックアップ電源における充電電流の最大値の小さい方に設定されている請求項1又は2に記載の電源制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記バックアップ電源の内部抵抗と、前記電力供給部及び前記メイン電源が接続される第1端子から前記バックアップ電源が接続される第2端子までの内部抵抗との和に基づいて、前記充電電流の電流値を算出する請求項1~3の何れか1項に記載の電源制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
メイン電源としての鉛電池とバックアップ電源としてのリチウムイオン電池とを備える車両用電源システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の車両用電源システムでは、リチウムイオン電池は、DC/DCコンバータを介して鉛電池、オルタネータ、負荷及びバックアップ負荷に接続されている。このDC/DCコンバータは、スイッチング動作により、鉛電池側の電圧を変換してリチウムイオン電池側へ供給したり、リチウムイオン電池側の電圧を変換して鉛電池側へ供給したりする双方向のDC/DCコンバータである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-63543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
駆動する負荷の増加によりDC/DCコンバータの要求出力が増加すると、DC/DCコンバータの冷却性能を向上させるためにDC/DCコンバータに大幅な構造変更が必要になったり、部品の大型化が必要になったりする等、DC/DCコンバータのコストが上昇する。ここで、DC/DCコンバータを介さずにバックアップ電源側からバックアップ負荷側へ放電させる放電経路を設けることにより、DC/DCコンバータのコストを低減できる。
【0005】
ところで、バックアップ電源がバックアップ負荷に放電するのは、メイン電源側に電源失陥が生じた場合等に限られる。メイン電源側に電源失陥が生じていない通常時には、バックアップ電源は殆ど放電しない。このため、バックアップ電源を充電する機会も少ない。従って、DC/DCコンバータを低容量なものにすることでコストの低減を図ることが考えられる。しかしながら、何らかの異常事態が発生してバックアップ電源が放電しバックアップ電源の充電率が低下した場合には、低容量のDC/DCコンバータを通して充電したのでは、充電時間が多大にかかることになる。
【0006】
そこで、バックアップ電源の充電時に上記の放電経路を使用することが考えられる。しかしながら、メイン電源側の電圧やバックアップ電源の開回路電圧によっては、充電電流の変動幅が大きくなる場合があり、この場合には、充電電流が許容上限値を超える可能性もある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑み、DC/DCコンバータのコストを低減できると共に、バックアップ電源の充電を安全に実施するうえで充電時間を短縮できる電源制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電源制御装置は、電力供給部と、メイン電源と、バックアップ電源とを備える電源システムにおいて、前記電力供給部と前記メイン電源と前記バックアップ電源とを接続し、前記バックアップ電源の充放電を制御する電源制御装置であって、前記電力供給部と前記メイン電源と前記バックアップ電源とバックアップ負荷とが接続された電力線と、前記電力線に設けられ、前記電力供給部及び前記メイン電源と前記バックアップ電源との接続をON/OFFする第1スイッチと、前記電力線に設けられ、前記バックアップ電源と前記バックアップ負荷との接続をON/OFFする第2スイッチと、前記第2スイッチと並列に前記電力線に接続され、前記電力供給部側から供給された電圧を変換して前記バックアップ電源側に供給する充電用DC/DCコンバータと、前記第1スイッチをOFF、前記第2スイッチをONにして前記バックアップ電源から前記バックアップ負荷に放電する放電制御と、前記第1スイッチをON、前記第2スイッチをOFFにし前記充電用DC/DCコンバータ経由で前記バックアップ電源を充電する第1充電制御と、前記第1スイッチをON、前記第2スイッチをONにし前記第2スイッチ経由で前記バックアップ電源を充電する第2充電制御とを実行する制御部とを備え、前記制御部は、前記バックアップ電源の充電時に、充電電流の電流値が第1所定値以上且つ前記第1所定値より大きい第2所定値以下の場合に限り、前記第2充電制御を実行する。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、バックアップ電源の充電時に、充電電流の電流値が第1所定値以上且つ当該第1所定値より大きい第2所定値以下の場合に限り、第2スイッチ経由でバックアップ電源を充電し、それ以外の場合には、充電用DC/DCコンバータ経由でバックアップ電源を充電する。これにより、放電用DC/DCコンバータを設けないことや充電用DC/DCコンバータを低容量なものにすること等によるDC/DCコンバータのコスト低減を実現できると共に、バックアップ電源の充電を安全に実施するうえで充電時間を短縮することも実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るコントロールモジュールを備える車載電源システムを示す図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係るコントロールモジュールを備える車載電源システムを示す図である。
図3図3は、本発明の一実施形態に係るコントロールモジュールを備える車載電源システムを示す図である。
図4図4は、本発明の一実施形態に係るコントロールモジュールを備える車載電源システムを示す図である。
図5図5は、第1充電経路のみを使用してバックアップバッテリを充電する場合におけるVB1端子とバックアップバッテリの内部との間の電圧と充電電流の電流値との関係を示すグラフである。
図6図6は、第1充電経路と第2充電経路とを使用してバックアップバッテリを充電する場合におけるVB1端子とバックアップバッテリの内部との間の電圧と充電電流の電流値との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を好適な実施形態に沿って説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、以下に示す実施形態においては、一部構成の図示や説明を省略している箇所があるが、省略された技術の詳細については、以下に説明する内容と矛盾点が発生しない範囲内において、適宜公知又は周知の技術が適用される。
【0012】
図1図4は、本発明の一実施形態に係るコントロールモジュール10を備える車載電源システム1を示す図である。これらの図に示すように、車載電源システム1は、メインバッテリ2と、バックアップバッテリ3と、高圧用DC/DCコンバータ4と、電源制御装置としてのコントロールモジュール10とを備える。本実施形態の車載電源システム1では、メインバッテリ2が12V系のメイン負荷5に電力を供給する常用電源であり、バックアップバッテリ3が12V系のバックアップ負荷6に電力を供給する非常用電源である。また、本実施形態のメインバッテリ2は、12V系の鉛蓄電池である。それに対して、本実施形態のバックアップバッテリ3は、三元系のリチウムイオン二次電池であり、メインバッテリ2に比して定格電圧が高い。
【0013】
不図示の電力供給部は、例えば48V等の高圧電源とオルタネータ等の発電機(共に図示省略)と、高圧用DC/DCコンバータ4とを備える。高圧用DC/DCコンバータ4は、高圧電源と発電機とから出力された高電圧を降圧して出力する。高圧用DC/DCコンバータ4の出力端子に接続された電力線PL6には、メインバッテリ2とメイン負荷5とコントロールモジュール10とが接続されている。コントロールモジュール10に備えられた電力線PL1の一端にはVB1端子T1が設けられ、電力線PL1の他端にはVB2端子T2が設けられている。電力線PL6はVB1端子T1に接続されている。また、バックアップバッテリ3が電力線PL5によりVB2端子T2に接続されている。また、電力線PL1には、バックアップ負荷6が接続されている。
【0014】
図1に示すように、メイン電源系で電源失陥が生じていない通常時には、高圧用DC/DCコンバータ4から出力された電力は、メイン負荷5、及びメインバッテリ2に供給される。また、バックアップバッテリ3の充電時には、高圧用DC/DCコンバータ4から出力された電力は、コントロールモジュール10を介してバックアップバッテリ3に供給される。
【0015】
他方で、図2に示すように、メイン電源系で電源失陥が生じた時には、バックアップバッテリ3からバックアップ負荷6に電力が供給される。即ち、図1に示すように、メイン電源系で電源失陥が生じていない通常時には、高圧用DC/DCコンバータ4から出力された電力によりバックアップバッテリ3が充電され、図2に示すように、メイン電源系で電源失陥が生じた時に、バックアップバッテリ3からバックアップ負荷6に放電されるように、バックアップバッテリ3の充放電が、コントロールモジュール10によって制御される。
【0016】
コントロールモジュール10は、第1スイッチ11と、第2スイッチ12と、充電用DC/DCコンバータ13と、放電回路14と、CPU(Central Processing Unit)20と、電力線PL1とを備える。第1スイッチ11と第2スイッチ12とは、電力線PL1に設けられている。
【0017】
第1スイッチ11は、VB1端子T1とバックアップ負荷6の接続点P2との間に設けられている。この第1スイッチ11は、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)等のトランジスタスイッチであり、図1に示すようにメイン電源系で電源失陥が生じていない通常時にはONとなり高圧用DC/DCコンバータ4側からバックアップバッテリ3側へ電流を流す。他方で、第1スイッチ11は、図2に示すようにメイン電源系で電源失陥が生じた時にOFFとなりバックアップバッテリ3側から高圧用DC/DCコンバータ4側への電流を遮断する。
【0018】
第2スイッチ12は、電力線PL1におけるバックアップ負荷6の接続点P2とVB2端子T2との間に設けられている。この第2スイッチ12は、MOSFET等のトランジスタスイッチであり、図1に示すようにメイン電源系で電源失陥が生じていない時(バックアップバッテリ3の充電時)にはOFFとなり高圧用DC/DCコンバータ4側からバックアップバッテリ3側への電流を遮断する。他方で、図2に示すようにメイン電源系で電源失陥が生じた時(バックアップバッテリ3の放電時)にはONとなりバックアップバッテリ3側からバックアップ負荷6側へ電流を流す。
【0019】
充電用DC/DCコンバータ13は、第2スイッチ12と並列に電力線PL1に接続されている。換言すると、充電用DC/DCコンバータ13は、第2スイッチ12をバイパスするバイパス線BLに設けられている。このバイパス線BLには電流センサ用シャント抵抗Rsh1が設けられている。
【0020】
充電用DC/DCコンバータ13は、図1に示すように高圧用DC/DCコンバータ4から出力された電圧を変換してバックアップバッテリ3に出力する。ここで、バックアップバッテリ3の充電時に充電用DC/DCコンバータ13を流れる電流は約4Aの微量な電流であり、充電用DC/DCコンバータ13に要求される出力容量は小さい。他方で、図2に示すようにバックアップバッテリ3からバックアップ負荷6に出力される電流は約80Aの大電流である。
【0021】
また、上述したように、バックアップバッテリ3がバックアップ負荷6に放電するのは、メイン電源系に電源失陥が生じた場合等に限られ、メイン電源系に電源失陥が生じていない通常時には、バックアップバッテリ3は殆ど放電しない。このため、バックアップバッテリ3を充電する機会も少ない。このため、本実施形態では、充電用DC/DCコンバータ13を低容量なものにすることでDC/DCコンバータのコストを低減している。
【0022】
放電回路14は、電力線PL1とVout端子T3とを接続する電力線PL4に対して、電力線PL3を介して接続されている。Vout端子T3は、バックアップ負荷6に接続された電力線PL2が接続される端子である。放電回路14は不図示のスイッチを備えている。この放電回路14のスイッチがON、第1スイッチ11がON、第2スイッチ12がOFFの時に高圧用DC/DCコンバータ4から電力が出力されると、図3に示すように、電力線PL3から放電回路14に電流が流れる。電力線PL4における接続点P2と電力線PL3の接続点P3との間には、電流センサ用シャント抵抗Rsh2が設けられている。また、電力線PL3には、電流センサ用シャント抵抗Rsh3が設けられている。
【0023】
CPU20は、第1スイッチ11、第2スイッチ12、充電用DC/DCコンバータ13、及び放電回路14を制御する。例えばメインバッテリ2の出力電圧が所定値以下に低下する等、メイン電源系で電源失陥が生じた場合、図2に示すように、CPU20は、第1スイッチ11をOFFにし、第2スイッチ12をONにする。
【0024】
ここで、CPU20は、バックアップバッテリ3を充電する際、充電電流の電流値I1,I2に応じて、第1充電経路と第2充電経路とを切り換える。第1充電経路は、図1に示すように充電用DC/DCコンバータ13を経由する充電経路であるのに対して、第2充電経路は、図4に示すように第2スイッチ12を経由する充電経路である。また、充電電流の電流値I1は、図1に示すように第1充電経路を流れる充電電流の電流値であり、充電電流の電流値I2は、図4に示すように第2充電経路を流れる充電電流の電流値である。CPU20は、図1に示すように、第1スイッチ11をON、第2スイッチ12をOFFにすることにより、電流値I1の充電電流を、充電用DC/DCコンバータ13経由でバックアップバッテリ3に供給する。他方で、CPU20は、図4に示すように、第1スイッチ11をON、第2スイッチ12をONにすることにより、電流値I2の充電電流を第2スイッチ12経由でバックアップバッテリ3に供給する。さらに、CPU20は、第2充電経路を使用してバックアップバッテリ3を充電する場合における充電電流の電流値I2を推定するための処理を、車両始動時(イグニッションがONになった直後)に実行する。
【0025】
図5は、第1充電経路のみを使用してバックアップバッテリ3を充電する場合におけるVB1端子T1とバックアップバッテリ3の内部との間の電圧(VB1-OCV)と充電電流の電流値I1との関係を示すグラフである。なお、VB1は、メインバッテリ2から出力されてコントロールモジュール10に入力する電圧であり、OCVは、バックアップバッテリ3の開回路電圧である。また、図6は、第1充電経路と第2充電経路とを使用してバックアップバッテリ3を充電する場合における電圧(VB1-OCV)と充電電流の電流値I2との関係を示すグラフである。
【0026】
図5のグラフに示すように、第1充電経路のみを使用してバックアップバッテリ3を充電する場合には、充電電流の電流値I1は、電圧(VB1-OCV)にかかわらず、充電用DC/DCコンバータ13の出力電流の最大値Ith1以下となる。即ち、第1充電経路のみを使用してバックアップバッテリ3を充電する場合には、充電電流の電流値I1が、コスト低減のために低容量とされた充電用DC/DCコンバータ13の出力電流の最大値Ith1以下と小さくなる。
【0027】
それに対して、図6のグラフに示すように、第1充電経路のみならず第2充電経路をも使用してバックアップバッテリ3を充電する場合には、第2充電経路を使用してIth1以上の電流値I2の充電電流をバックアップバッテリ3に供給する状況もあることから、充電電流は、第1充電経路のみを使用してバックアップバッテリ3を充電する場合に比して増加する。
【0028】
ここで、第2充電経路を使用してIth1以上の電流値I2の充電電流をバックアップバッテリ3に供給する場合、充電電流の電流値I2を、コントロールモジュール10の通電電流の許容上限値以下、且つ、バックアップバッテリ3の充電電流の許容上限値以下に抑える必要がある。このため、CPU20は、第2充電経路を使用してバックアップバッテリ3を充電する場合における充電電流の電流値I2を推定するための処理を、車両始動時(イグニッションがONになった直後)に実行し、当該処理で推定された充電電流の電流値I2が、Ith1≦I2≦Ith2の場合に限り、第2充電経路を使用してバックアップバッテリ3を充電する。ここで、Ith2は、コントロールモジュール10の通電電流の許容上限値とバックアップバッテリ3の充電電流の許容上限値との小さい方である。以下、充電電流の電流値I2の推定処理について説明する。
【0029】
第2充電経路を使用してバックアップバッテリ3を充電する場合の充電電流の電流値I2は、下記(1)式で算出される。
I2=(VB1-OCV)/R2 …(1)
R2は、下記(2)式で算出される。
R2=Rm1+Rm2+Rb …(2)
Rm1,Rm2は、コントロールモジュール10の内部抵抗であり(図1~4参照)、Rm1は、第1スイッチ11と第2スイッチ12との間の内部抵抗、Rm2は、第2スイッチ12とVB2端子T2との間の内部抵抗である。また、Rbは、バックアップバッテリ3の内部抵抗である。
【0030】
バックアップバッテリ3の内部抵抗Rbは、下記(3)式で算出される。
Rb=α(VB2-OCV)/I1 …(3)
αは、放電電流により変化するバックアップバッテリ3の内部抵抗Rbの変換係数であり、予めバッテリの特性評価試験を実施して取得している。
I1は、第1充電経路を使用した場合にバックアップバッテリ3に供給される充電電流の電流値である。この充電電流の電流値I1を取得するために、CPU20は、車両始動時に第1充電経路を使用して充電電流を流し電流値I1を電流センサで計測する処理を実行する。
【0031】
内部抵抗Rm1は、下記(4)式で算出される。
Rm1=(VB1-VBA)/Iout …(4)
VBAは、第1スイッチ11と第2スイッチ12との間の電圧である(図1~4参照)。Ioutは、Vout端子T3からバックアップ負荷6に出力される電流の電流値である(図2,3参照)。この電流値Ioutを取得するために、CPU20は、車両始動時に高圧用DC/DCコンバータ4から電力線PL4経由でバックアップ負荷6に電流を流し電流値Ioutを電流センサで計測する処理を実行する。
【0032】
内部抵抗Rm2は、下記(5)式で算出される。
Rm2=(VB2-VBA)/I3 …(5)
I3は、放電回路14を流れる電流の電流値である(図3参照)。この電流値I3を取得するために、CPU20は、車両始動時に第1スイッチ11をON、第2スイッチ12をOFFにして高圧用DC/DCコンバータ4から電力線PL6,PL1,PL4,PL3経由で放電回路14に電流を流し電流値I3を計測する処理を実行する。
【0033】
CPU20は、当該推定処理で推定した充電電流の電流値I2が、I2<Ith1,I2>Ith2の関係にある場合、第1充電経路を使用してバックアップバッテリ3を充電する。他方で、CPU20は、当該推定処理で推定した充電電流の電流値I2が、Ith1≦I2≦Ith2の関係にある場合、第2充電経路を使用してバックアップバッテリ3を充電する。
【0034】
図6のグラフに示すように、コントロールモジュール10に入力する電圧VB1と開回路電圧OCVとの差(VB1-OCV)が小さくなるほど、内部抵抗R2が小さくなり、充電電流の増加率が高くなる。この場合、第2充電経路を使用してバックアップバッテリ3を充電できる時間が短くなり、充電電流が減り、充電時間が長くなる。それに対して、コントロールモジュール10に入力する電圧VB1と開回路電圧OCVとの差が大きくなるほど、内部抵抗R2が大きくなり、充電電流の増加率が低くなる。この場合、第2充電経路を使用してバックアップバッテリ3を充電できる時間が長くなり、充電電流が増え、充電時間が短くなる。
【0035】
即ち、本実施形態では、コントロールモジュール10に入力する電圧VB1からバックアップバッテリ3の内部の開回路電圧OCVまでの間の内部抵抗R2を推定することにより、バックアップバッテリ3の充電を開始する前に、第2充電経路を使用してバックアップバッテリ3を充電する場合における充電電流の電流値I2を推定できる。そして、推定した充電電流の電流値I2が、コントロールモジュール10の通電電流の許容範囲と、バックアップバッテリ3の充電電流の許容範囲との関係で安全な範囲に含まれている場合には、第2充電経路を使用してバックアップバッテリ3を充電する。これにより、第1充電経路のみを使用してバックアップバッテリ3を充電する場合に比して、充電電流を増加させることができ、充電時間を短縮できる。また、メインバッテリ2からコントロールモジュール10に入力される電圧VB1やバックアップバッテリ3の開回路電圧OCV等によって第2充電経路を流れる充電電流の電流値I2は変動するところ、この電流値I2が、コントロールモジュール10の通電電流の許容範囲とバックアップバッテリ3の充電電流の許容範囲とを超えることを防止できる。従って、低コストの充電用DC/DCコンバータ13を用いることによりコントロールモジュール10のコストを低減すると共に、安全且つ短時間でバックアップバッテリ3を充電することができる。
【0036】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよいし、適宜公知や周知の技術を組み合わせてもよい。
【0037】
例えば、上記実施形態では、放電回路14を設けてバックアップバッテリ3から放電回路14に放電して放電回路14に流れる電流値I3に基づいて、上記充電電流の電流値I2を算出したが、他の方法により、上記充電電流の電流値I2を算出してもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 :車載電源システム(電源システム)
2 :メインバッテリ(メイン電源)
3 :バックアップバッテリ(バックアップ電源)
4 :高圧用DC/DCコンバータ(電力供給部)
5 :メイン負荷
6 :バックアップ負荷
10 :コントロールモジュール(電源制御装置)
11 :第1スイッチ
12 :第2スイッチ
13 :充電用DC/DCコンバータ
14 :放電回路
20 :CPU(制御部)
I1 :電流値
I2 :電流値
I3 :電流値
Iout :電流値
Ith1 :出力電流の最大値(第1所定値)
Ith2 :許容上限値(第2所定値)
OCV :開回路電圧
PL1 :電力線
Rm1 :内部抵抗
Rm2 :内部抵抗
Rb :内部抵抗
T1 :VB1端子
T2 :VB2端子
VB1 :電圧
VB2 :電圧
VBA :電圧
図1
図2
図3
図4
図5
図6