(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】金属発泡体加熱要素を有する排ガス加熱装置
(51)【国際特許分類】
F01N 3/20 20060101AFI20220906BHJP
H05B 3/12 20060101ALI20220906BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
F01N3/20 K ZAB
H05B3/12 A
B01D53/94 222
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020193340
(22)【出願日】2020-11-20
【審査請求日】2021-01-14
(32)【優先日】2019-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】511237586
【氏名又は名称】フォルシア・システム・デシャプモン
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ティン・フェン
(72)【発明者】
【氏名】ヤニック・フールコド
【審査官】中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0316507(US,A1)
【文献】特開平09-260030(JP,A)
【文献】特開平05-144549(JP,A)
【文献】特開平04-366584(JP,A)
【文献】特開2013-020847(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/94
F01N 3/027-38
H05B 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 加熱要素を形成する金属発泡体(16)と、
- 長手方向軸(X)に沿って延びる側壁(14)によって画定され、前記金属発泡体(16)が収容されるケース(12)と、
- 前記金属発泡体(16)と前記ケース(12)との間に配置された電気絶縁手段(18)と、
- 少なくとも1つの電極(22)とを備える、ヒートエンジン排気ラインのための排ガス加熱装置(10)であって、
前記金属発泡体(16)は、前記少なくとも1つの電極(22)を受け入れるように構成された区域(24)を含
み、
前記少なくとも1つの電極(22)は、導電コア(22a)を含み、
前記区域(24)は、電極(22)の導電コア(22a)の直径の2倍を超える直径にわたって延在し、
前記金属発泡体(16)は第1の密度を有しており、前記区域(24)は、前記第1の密度よりも高い第2の密度を有しており、
前記区域(24)は、溶接によって前記電極(22)に結合されることが意図されており、これによって、前記電極(22)は、前記区域(24)に溶接によって結合される
ことを特徴とする、排ガス加熱装置(10)。
【請求項2】
前記金属発泡体(16)は、その全体積において均質の多孔性構造を有する発泡体プリフォーム(16a)
から構成されており、よって前記金属発泡体(16)は均質の多孔性構造を有する、
請求項1に記載の排ガス加熱装置(10)。
【請求項3】
乾燥される前、前記金属発泡体(16)の周辺部に浸透させた第1の液体材料によって形成された保護層(28)を含み、前記電気絶縁手段(18)は、前記保護層(28)を取り囲む少なくとも1つの絶縁要素(26)を備える、請求項1または2に記載の排ガス加熱装置(10)。
【請求項4】
前記長手方向軸(X)の方向に前記金属発泡体(16)のいずれかの側に配置され、各々が前記ケース(12)に固定された、前記金属発泡体(16)を維持するための2つの環状要素(20)を備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の排ガス加熱装置(10)。
【請求項5】
前記維持要素(20)の少なくとも1つは、前記長手方向軸(X)に向かって延びる締結タブ(30)を含み、前記ケース(12)は、各締結タブ(30)のために溶接穴(32)を含み、そこを通して、対応する前記締結タブ(30)が前記ケース(12)に溶接される、請求項4に記載の排ガス加熱装置(10)。
【請求項6】
請求項1に記載の排ガス加熱装置(10)を含むことを特徴とする、ヒートエンジン排気ライン。
【請求項7】
請求項6に記載のヒートエンジン排気ラインを備えることを特徴とする、車
両。
【請求項8】
金属発泡体(16)が以下のステップ
- 発泡体プリフォーム(16a)を製造するステップと、
- 第1の密度を有する第1の液体金属で前記発泡体プリフォーム(16a)を充填するステップと、
- 金属で充填された前記発泡体プリフォーム(16a)を
、前記第1の液体金属がもはや液体ではなくなり、よって前記発泡体プリフォーム(16a)にくっついたままになるまで乾燥させるステップと、
- 金属で充填された前記発泡体プリフォーム(16a)を最初に焼結するステップと、
- 前記最初の焼結後、前記第1の密度より高い第2の密度を有する第2の液体金属を注入するステップであって、前記発泡体プリフォーム(16a)の周辺部の少なくとも1つの区域(24)が金属で充填され、焼結される、ステップと、
- 前記区域(24)を含む前記発泡体プリフォーム(16a)を2度目に焼結するステップとに従って製造されることを特徴とする、請求項1に記載の排ガス加熱装置(10)を製造するための製造方法。
【請求項9】
前記金属発泡体(16)の前記製造は、前記最初の焼結後、かつ前記第2の液体金属の前記注入の前に、金属で充填され焼結された前記発泡体プリフォーム(16a)を第1の形状に切断するステップであって、前記第2の液体金属の2つの注入区域は、この第1の形状(16b)の周辺部上にある、ステップを含む、請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記第1の形状(16b)は、所望される最終形状のものより大きい寸法を有し、前記金属発泡体(16)の前記製造は、2回目の焼結の後、前記所望される最終形状を獲得するために前記第1の形状(16b)を切断するステップを含む、請求項9に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼機関、特に車両燃焼機関の排気ラインに備え付けることが意図された排ガス加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
先行技術から既に知られているのは、汚染粒子(特に酸化窒素NOx)を無害な粒子(特に二窒素N2と水H2O)に還元することが意図された触媒浄化装置を備える燃焼機関排気ラインである。この目的のために、排ガスは、触媒浄化ユニットの中を通って進む。
【0003】
触媒浄化ユニットの効果は、反応が高温で行われる場合に最適であることに留意されたい。よって、低温の始動時に反応の効果はより低く、より多くの汚染粒子が放出される。
【0004】
このような欠点に対処するために、1つの解決策は、エンジンが十分に高温のガスを放出するまで、排ガスが浄化ユニットを通過する前に排ガスを加熱することが意図された、排ガス加熱装置を排気ラインに装備することで成り立っている。この加熱装置は、浄化ユニットから上流に配置される。
【0005】
加熱装置の1つの既知の例は、金属発泡体によって形成された加熱要素を含んでおり、ジュール効果によってそれを加熱するために電流が中に通される。金属発泡体は、排ガスがその中を通過するように配置され、排ガスはこれにより、浄化ユニットに入る前に加熱される。電流は、金属発泡体に電気的に接続された電極によって供給される。
【0006】
しかしながらそのような加熱装置は、特に電極と金属発泡体との間の電気接続を生み出すのが難しいという点において、十分に満足のいくものではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は特に、電極と金属発泡体との間の電気接続が簡素にかつ確実に行われる加熱装置を提供することによって、このような欠点に対処することを目指している。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的のために、本発明は特に、加熱エンジン排気ラインのための排ガス加熱装置に関し、これは、
- 金属発泡体の形態の加熱要素と、
- 長手方向軸に沿って延びる側壁によって画定され、金属発泡体が収容されるケースと、
- 金属発泡体とケースとの間に配置された電気絶縁手段と、
- 少なくとも1つの電極とを備え、
金属発泡体は、少なくとも1つの電極を受け入れるように構成された区域を含むことを特徴とする。
【0009】
電極を受け入れるために成形された金属発泡体の区域のために、装置は、電極と金属発泡体との間に追加の接続要素を必要としない。
【0010】
本発明による加熱装置は、単独で、または技術的に可能な組合せの全てに従って考慮される以下の特徴の1つまたは複数をさらに含んでもよい。
- 金属発泡体は、その全体積において均質の多孔性構造を有する発泡体プリフォームを含む。
- 加熱装置は、乾燥される前、金属発泡体の周辺部に浸透させた第1の液体材料によって形成された保護層を含み、電気絶縁手段は、保護層を取り囲む少なくとも1つの環状要素を備える。
- 加熱装置は、長手方向軸の方向に金属発泡体のいずれかの側に配置され、各々がケースに固定された、金属発泡体を維持するための2つの環状要素を含む。
- 維持要素の少なくとも1つは、長手方向軸に向かって延びる締結タブを含み、ケースは、各締結タブのために、溶接穴を含み、そこを通して、対応する締結タブがケースに溶接される。
【0011】
本発明はまた、あらかじめ定義されたような加熱装置を含むことを特徴とするヒートエンジンの排気ラインにも関する。
【0012】
本発明はまた、上記で定義されるような排気ラインを含むことを特徴とする、車両、特にモータ車両にも関する。
【0013】
本発明は、最後に、金属発泡体が以下のステップ、
- 発泡体プリフォームを製造するステップと、
- 第1の密度を有する第1の液体金属で発泡体プリフォームを充填するステップと、
- 金属で充填された発泡体プリフォームを乾燥させるステップと、
- 金属で充填された発泡体プリフォームを最初に焼結するステップと、
- 最初の焼結後、第1の密度より高い第2の密度を有する第2の液体金属を注入するステップであって、発泡体プリフォームの周辺部の少なくとも1つの区域が金属で充填され、焼結される、ステップと、
- この区域を含む発泡体プリフォームを2度目に焼結するステップと
に従って製造されることを特徴とする、排ガス加熱装置を製造するための方法に関する。
【0014】
有利には、金属発泡体の製造は、最初の焼結後、かつ第2の液体金属の注入の前に、金属で充填され焼結された発泡体プリフォームを第1の形状に切断するステップであって、第2の液体金属の2つの注入区域は、この第1の形状の周辺部上にある、ステップを含む。
【0015】
任意選択で、第1の形状は、所望される最終形状のものより大きい寸法を有し、金属発泡体の製造は、2回目の焼結の後、所望される最終形状を獲得するために第1の形状を切断するステップを含む。
【0016】
本発明の種々の態様および他の利点は、単に非限定的な例として提供され、添付の図面を参照してなされている。以下の説明において強調されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1の例による加熱装置の斜視図である。
【
図3】
図1の加熱装置の金属発泡体を製造するためのプリフォームの詳細な斜視図である。
【
図4】金属発泡体の製造の1つのステップの間の、
図1の加熱装置の金属発泡体の概略的な上面図である。
【
図5】本発明の第2の例による加熱装置の分解組立斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1および
図2は、本発明の1つの例示的な実施形態による加熱装置10を示す。
【0019】
加熱装置10は、排ガス浄化装置の上流でヒートエンジンの排気ラインに配置されるのに適している。ヒートエンジンは、例えば、車両のもの、特にモータ車両のものであるが、一変形形態では、任意の他のヒートエンジンも可能である。
【0020】
浄化装置は、それ自体既知の方法で、汚染粒子(特に酸化窒素NOx)を無害な粒子(特に二窒素N2と水H2O)に還元することを可能にする触媒浄化ユニットを含む。還元反応は、高温でより効果的であり、加熱装置10は、特にヒートエンジンの低温の始動開始時に、浄化装置の上流で排ガスを加熱することが意図されている。
【0021】
加熱装置10は、長手方向軸Xに沿って延びる略円筒形の壁14によって形成されたケース12を含む。好ましくは壁14は、長手方向軸Xの周りに画定された、丸められた角を備えた、円形、楕円形または矩形の底面を有する円筒形の全体形状を有する。
【0022】
加熱装置10はさらに、ケース12に収容された加熱要素16と、加熱要素16とケース12の壁14との間に半径方向に挿入された電気および熱絶縁手段18と、維持要素20とを含む。加熱装置10はまた、ジュール効果によって加熱要素を加熱するために、この加熱要素16内に電流を通すことが意図された、加熱要素16に電気的に接続された少なくとも1つの電極22も含む。好ましくは、加熱装置は、2つの電極22を含む。
【0023】
好ましくは、各電極22は、絶縁被覆22bによって囲まれた導電コア22aを含む。
【0024】
導電コア22aは、例えば金属から作製され、特に鉄クロムアルミニウム(FeCrAl)およびその合金、ニッケルクロム(NiCr)およびその合金、ステンレス鋼、Inconel(登録商標)または炭化ケイ素から作製される。
【0025】
絶縁被覆22bは、例えば酸化マグネシウムMgOまたはアルミナAl2O3から作製される。
【0026】
絶縁被覆22bは好ましくは、ケース12に溶接されることが意図された、溶接可能な材料(特にInconel(登録商標)またはNiCr)から作製されたシェル22cによって取り囲まれる。このシェル22cは、絶縁被覆22bのおかげで導電コア22aから電気的に絶縁されている。
【0027】
加熱要素16は、金属発泡体から形成され、本発明によるその製造をこの後に説明する。
【0028】
好ましくは、金属発泡体16は、鉄クロムアルミニウム(FeCrAl)合金またはニッケルクロム(NiCr)合金から作製される。金属発泡体16は、包括的に8から11%の密度と、包括的に15から30mmの厚さ(長手方向軸Xの方向で考える)とを有する。
【0029】
金属発泡体16は、少なくとも1つの電極22のうちの1つを受け入れるために成形された少なくとも1つの区域24を有する。区域24は、金属発泡体16の任意の適切な場所に配置することができる。記載される例では、金属発泡体16は、金属発泡体16の周辺部に、互いに向かい合わせに配置された2つの区域24を含む。一変形形態では、区域24を金属発泡体16の中心に設ける、または金属発泡体16の中心付近に設けることも可能である。別の変形形態によると、区域24は、互いに向かい合っていないが、電極22が、例えば45°以下、または包括的に120°から180°の角度を互いに対して形成するように金属発泡体16の周辺部に配置させることも可能である。
【0030】
好ましくは、各区域24は、溶接によって電極22のそれぞれ1つに結合されることが意図された密度を上げた溶接区域24である。換言すると、溶接区域24の密度は、対応する電極22の溶接を可能にするのに十分である。
【0031】
各区域24は好ましくは、金属発泡体16内で少なくとも5mmの深さにわたって延在する。さらに、各区域24は好ましくは、電極22の導電コア22aの直径の2倍を超える直径にわたって延在する。したがって約6mmの直径を有する導電コア22aの場合、対応する区域24の直径は、少なくとも12mmであり、例えば約18mmである。
【0032】
絶縁手段18は、加熱要素16の周辺部を少なくとも部分的に取り囲む少なくとも1つの絶縁要素26、好ましくは2つの絶縁要素26を含む。より具体的には、2つの絶縁要素26は、密度が高められた溶接区域24を露出したままにするように配置される。
【0033】
有利には、絶縁要素26は、加熱要素16の周辺部が収容される凹部27を一緒に画定するリム26aを含む。リム26aはしたがって、加熱要素16の周辺部を、長手方向軸Xの方向でこの加熱要素16のいずれの側でも形作っている。
【0034】
絶縁要素26は特に、排ガスに対して半径方向の引き締めを確実にすることで、排ガスのみが、軸Xの方向で加熱要素16の中を通過することを確実にすることを可能にする。
【0035】
各絶縁要素26は、例えば電気絶縁材料から作製された繊維のウェブによって形成される。いずれの電気絶縁材料も考えられる。
【0036】
有利には、保護層28が、加熱要素16の周辺部を覆う。保護層28は、金属発泡体16の攻撃的な多孔性の縁部から絶縁要素26を保護することが意図されている。よって保護層28がひとたび塗布されると、加熱要素16は、平滑な周辺部を有することになり、もはや多孔性で攻撃的な周辺部は持たない。したがって絶縁要素26の寿命が向上する。
【0037】
1つの例示的な実施形態によると、保護層28は、金属から作製され、例えば金属発泡体16を形成するものと同じ金属から作製される。一変形形態では、保護層28は、例えばセラミックまたは酸化マグネシウムMgOから作製することができる。別の変形形態によると、保護層28は、それが加熱要素16の周辺部を平滑にすることが可能である限り、任意の他の適切な材料から作製することができる。
【0038】
維持要素20は、加熱要素16ならびに絶縁要素26を長手方向軸Xの方向に維持することが意図されている。より詳細には、記載される例では、維持要素20は、加熱要素16を維持する絶縁要素26を維持している。維持要素20は好ましくは実質的に同一である。
【0039】
各維持要素20は、環状の全体形状を有し、ケース12の壁14に(およびより詳細には、この壁14の内面に)固定され、かつ加熱要素16の一部から端から端まで延在するために半径方向に十分に延在することが意図された周辺輪郭20aを有する。よって維持要素20は、長手方向軸Xの方向でこの加熱要素16のいずれかの側で加熱要素16を把持する。
【0040】
各維持要素20は、加熱要素16に向かう排ガスの通過を可能にする中央開口21の境界を定める。
【0041】
各維持要素20は、その周辺輪郭20a上に、周辺輪郭20a上に均一に分散された複数の締結タブ30を含み、例えば3から8個の締結タブ、好ましくは4または6個の締結タブ30を含む。締結タブ30は、長手方向軸Xに平行に延び、加熱要素16から離れるように進む。よって、溶接によって与えられる熱が金属発泡体16を損傷することなく、これらの加熱要素16上で溶接作業を実行することが可能である。
【0042】
ケース12の壁14は、各締結タブ30のために溶接穴32を含んでおり、この穴を通して、対応する締結タブ30と壁14の溶接を行う。このような溶接穴32は、締結タブ30へのアクセスを容易にし、かつこのような締結タブ30の溶接時間を短縮することが可能である。
【0043】
溶接穴32は、各溶接穴32の輪郭に沿ってずっと最適な溶接面を可能にするために、好ましくは円周方向に延在する長円の全体形状を有する。
【0044】
金属発泡体16は、これにより、ケース12上に直接溶接されるのではなく、維持要素20によって軸方向に維持され、この維持要素がケース12に溶接されることに留意されたい。こうして、金属発泡体の溶接に関連する問題の全てが回避される。
【0045】
ケース12の壁14はまた、電極22のための通行開口34を有し、各々の通行開口34は好ましくは、加熱要素16の溶接区域24のそれぞれ1つの真向かいに配置されている。あるいは、通行開口34は、溶接区域24に対してずらされる。各通行開口34は好ましくは、ケース12の外側に向かって半径方向に延在する周辺リム36を有することで、対応する電極22の最適な維持を可能にする。
【0046】
加熱装置10を製造するための方法を次に記載する。
【0047】
方法は最初に、金属発泡体を製造するステップを含む。
【0048】
金属発泡体16の製造は、
図3に部分的に示される、発泡体プリフォーム16aを製造するためのステップを含む。本発明による発泡体プリフォーム16aは好ましくは、その全体積を通して均質である多孔性構造を有する。
図3に示されるように、多孔性構造は、例えば、全体的に多面体形状の、より詳細には六角形形状のセル37を含む。セル37は、穴38によって互いに通じている。有利には、セルのサイズは包括的に0.4から5mmである。
【0049】
そのような発泡体プリフォーム16aは、例えば追加の製造方法、特に3D印刷によって製造される。発泡体プリフォーム16aは、例えば、ポリウレタンから作製される。
【0050】
発泡体プリフォーム16aの事前定義された均質の構造により、その挙動(再現可能である)を知ることは容易であり、この挙動は、発泡体プリフォーム16a全体を通して同様である。
【0051】
有利には、発泡体プリフォーム16aは、非均質構造(伝統的なスポンジタイプのプリフォーム)を有する。
【0052】
発泡体プリフォーム16aは好ましくは、最終的な金属発泡体16のものより大きな寸法を有することに留意されたい。
【0053】
方法は次に、発泡体プリフォーム16aを、第1の密度を有する第1の液体金属で充填するステップを含む。第1の液体金属は、溶融金属であってよい、または一変形形態では金属粒子(金属スラッジ)を有する流体であってもよい。第1の密度は、例えば包括的に金属発泡体16の密度の4から15%である。
【0054】
発泡体プリフォーム16aにこうして第1の液体金属が浸透し、第1の液体金属は、その後、この発泡体プリフォーム16aを形成する材料を覆う。
【0055】
方法は次に、第1の金属がもはや液体ではなくなり、よって発泡体プリフォーム16aにくっついたままになるまで、金属が充填された発泡体プリフォーム16aを乾燥させるステップを含む。
【0056】
方法は次に、金属が充填され乾燥された発泡体プリフォーム16aを最初に焼結するステップを含む。焼結は、第1の金属の結合を高めるために、第1の金属の溶融温度未満で、金属が充填され乾燥された発泡体プリフォームを加熱することを指している。
【0057】
好ましくは、金属発泡体16の製造は、金属が充填され焼結された発泡体プリフォーム16aを、金属発泡体16の最終形状のものより大きい寸法をなおも有する第1の形状になるように切断するステップを含む。この第1の形状は、特に正方形の底面を有する、例えば矩形の平行六面体である。この第1の形状は、参照番号16bで示されて、
図4に示されている。
【0058】
有利には、金属発泡体16の製造は、
図4に示されるように、最初の焼結後、金属が充填され、焼結されそして切断された第1の形状16bの周辺部の2つの別個の区域への、第1の密度より大きな第2の密度を有する第2の液体金属の注入を含む。
【0059】
第2の液体金属は、溶融金属であってよい、または一変形形態では、金属粒子(金属スラッジ)を有する流体であってもよい。第2の密度は例えば、金属発泡体16の密度の90%を超える。
【0060】
好ましくは、第2の液体金属は、第1の液体金属と同じ材料、特にFeCrAlまたはNiCr合金から作製されるが、第1の液体金属の密度より大きな密度で作製される。
【0061】
第2の液体金属が注入される区域は、溶接区域24である。
【0062】
方法は次に、溶接区域24の結合を高めるために、2回目の焼結ステップを含む。
【0063】
あるいは、溶接区域24は、金属発泡体16への第2の液体金属の注入によって形成されない。この場合には、方法は、金属発泡体16に少なくとも1つの盲穴をあけ、その後、この盲穴に区域24を形成する材料、特に第2の液体金属を充填することによる形成を含む。
【0064】
別の変形形態によると、盲穴は、穿孔によって形成されないが、金属発泡体16が形成されるときに作製される。より具体的には、この場合のプリフォーム16aは、盲穴を既に含んでいる。
【0065】
金属発泡体16の製造は次に、所望される最小形状を獲得するために第1の形状16bを切断するステップを含み、所望される最終形状は、例えば丸められた角を備えた、円形、楕円形または矩形の底面を有する、特に円筒形のケース12の形状に実質的に一致する。
【0066】
本発明による方法を用いて獲得された金属発泡体16は、その均質の多孔性構造および/または溶接区域24の存在のために、認識することが可能であることに留意されたい。
【0067】
好ましくは、金属発泡体16の製造は、平滑で非攻撃性の周辺部を獲得するために、その周辺部に保護層28を塗布するステップを含む。先に指摘したように、保護層28は例えば、金属、セラミックまたは酸化マグネシウムMgOから作製される。保護層28が金属から作製される場合、それは例えば第1の液体金属で作製される。
【0068】
保護層28の塗布は、噴霧作業またはペイント作業によって行うことができる。
【0069】
製造方法は次に、加熱装置10を組み立てるステップを含む。
【0070】
加熱要素16は、絶縁要素26と共に組み立てられ、絶縁要素26は、溶接区域24を露出したままで加熱要素の周辺部に適合される。
【0071】
維持要素20の1つが、溶接穴32を通してその締結タブ30を溶接することによって、ケース12に溶接される。絶縁要素26を備えた加熱要素16を次に、このケース12の内側に溶接された維持要素20によって支持されたままで、ケース12に挿入することができる。この挿入の間、加熱要素16の溶接区域24は、対応する通行開口34の真向かいに配置させる必要がある。
【0072】
他方の維持要素20を加熱要素16より上に取り付けることができ、加熱要素はしたがって2つの維持要素20の間に把持される。この他方の維持要素20はその後、先行する維持要素20と同様にケース12に溶接される。
【0073】
電極22が次に、対応する通行開口34を各々通して取り付けられ、各電極22の導電コア22aは、対応する溶接区域24に溶接される。これは、この溶接区域24の十分な密度のおかげで可能になり、これにより電極22と金属発泡体16との間の直接の接触が可能になる。
【0074】
各電極22のシェル22cが次に、ケース12上に電極22を最適に維持するために通行開口34のリム36に溶接される。
【0075】
本発明によって、金属発泡体の構造、プリフォーム16aに接続されるもののサイズ、多孔性の密度および均質性の優れた制御が可能になることに留意されたい。その均質性のために、セルは全て、実質的に同一の形状および同一のサイズを有し、熱の制約は、金属発泡体16の体積全体を通して実質的に同一である。さらに、金属発泡体16の厚さは、長手方向軸Xの方向で考えると、好ましくは一定である。一変形形態では、金属発泡体16の厚さは、一定ではなく、例えば局所的に過剰な厚さおよび/または過小な厚さを有する場合もある。
【0076】
金属発泡体16の寸法および挙動は、予測可能かつ再生可能であり、この金属発泡体の機械的抵抗および電気的抵抗を制御するために、シミュレーションおよびテストを行うことは容易である。
【0077】
本発明はまた、適切な形状を有するプリフォーム16aを選択することによって、全ての形状、特にS字またはE字形状の底面を有する加熱要素16を生み出すことを可能にすることに留意されたい。
【0078】
図5は、本発明の第2の例示の実施形態による加熱装置10を示す。この図では、2つの先行する図面のものと同様の要素は、同一の参照番号を用いて示される。
【0079】
この第2の実施形態によると、加熱要素10は、異なる形状を有する第1の環状維持要素20と、第2の環状維持要素40とを含む。
【0080】
第1の環状維持要素20は、第1の実施形態のものと同一である。それは、同じ方法で締結タブ30を含む。
【0081】
第2の環状維持要素40は、反対に、締結タブを含まないが、電極22の通行のためのノッチ44を含む周辺縁部42を含む。この周辺縁部42は、長手方向に平行に延在する。
【0082】
この周辺縁部42の真向かいの溶接穴32を通して、この周辺縁部42がケース12に溶接される。
【0083】
この周辺縁部42は好ましくは、加熱要素16を取り囲むように配向されることに留意されたい。
【0084】
第2の環状維持要素40はまた、加熱要素16の一部から端から端まで延在するために半径方向に十分に延在する環状部分46を含む。したがって、維持要素20、40は、加熱要素16を、長手方向軸Xの方向でこの加熱要素16のいずれかの側で把持する。
【0085】
この第2の実施形態は、特に、周辺縁部42が加熱要素16を取り囲むため、ケース12の高さを長手方向軸Xの方向に縮小することを可能にするという利点を有する。したがって、このケース12の高さは、例えば51mmであるのに対して、第1の実施形態では、例えば65mmであり、これは、記載される例では14mmの高さの縮小を示唆する。
【0086】
さらに、長手方向軸Xの方向での、溶接穴32の2つの円周方向の列の間の距離もまた、第1の実施形態に対して縮小される。
【0087】
一般に、第2の実施形態によって、加熱装置10のよりコンパクトな形態が可能になる。
【0088】
本発明は、上記に記載される実施形態に限定されるものではなく、種々の相補的な変形形態を想定することが可能である。
【符号の説明】
【0089】
10 加熱装置
12 ケース
14 壁
16 加熱要素、金属発泡体
16a 発泡体プリフォーム
16b 第1の形状のプリフォーム
18 絶縁手段
20 維持要素、環状要素
20a 周辺輪郭
21 中央開口
22 電極
22a 導電コア
22b 被覆
22c シェル
24 区域
26 絶縁要素
26a リム
27 凹部
28 保護層
30 締結タブ
32 溶接穴
34 通行開口
36 周辺リム
37 セル
38 穴
40 維持要素
42 周辺縁部
44 ノッチ
46 環状部分