(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】非磁性細胞を操作するための磁性細胞の使用
(51)【国際特許分類】
C12N 1/02 20060101AFI20220906BHJP
C12N 5/071 20100101ALI20220906BHJP
C12N 1/00 20060101ALI20220906BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20220906BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20220906BHJP
G01N 27/00 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
C12N1/02
C12N5/071
C12N1/00 T
C07K16/28
C12Q1/02
G01N27/00 Z
(21)【出願番号】P 2020506874
(86)(22)【出願日】2018-08-01
(86)【国際出願番号】 US2018044806
(87)【国際公開番号】W WO2019032345
(87)【国際公開日】2019-02-14
【審査請求日】2021-04-19
(32)【優先日】2017-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518371814
【氏名又は名称】グライナー バイオ‐ワン ノース アメリカ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ソウザ,グラウコ,アール.
【審査官】白井 美香保
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-505728(JP,A)
【文献】国際公開第2005/001070(WO,A1)
【文献】特表2015-521470(JP,A)
【文献】特表2012-503492(JP,A)
【文献】Biochimica et Biophysica Acta,1983年,vol.735,p.193-195
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00-7/08
CAPLUS/BIOSIS/MEDLINE/EMBASE(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞の混合物から標的細胞を単離する方法であって、
a)標的細胞及び非標的細胞を含む細胞の混合物を、表面上に1つ以上のリガンドを提示する磁化提示細胞と組み合わせるステップであって、前記リガンドは、前記標的細胞の表面上の結合パートナーに特異的である、ステップ;
b)前記リガンドを前記結合パートナーに結合させて、前記標的細胞に結合した磁化提示細胞を生成するステップ;
c)磁場を印加して、前記標的細胞に結合した前記磁化提示細胞を回収するステップ;及び
d)非標的細胞を洗い流し、それにより前記標的細胞を単離するステップ
を含む、方法。
【請求項2】
前記リガンドが抗原結合部位を含み、前記結合パートナーが、前記抗原結合部位によって認識される抗原を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記磁化提示細胞が線維芽細胞である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記磁化提示細胞が、線維芽細胞由来の細胞株に由来する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記標的細胞及び前記磁化提示細胞がヒトのものである、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記標的細胞に結合した前記磁化提示細胞を3D培養するさらなるステップを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記標的細胞に結合した前記磁化提示細胞が浮遊するように、磁場で、前記標的細胞に結合した前記磁化提示細胞を3D培養するさらなるステップを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記磁化提示細胞が、1つ以上のリガンドを提示する細胞を磁性ナノ粒子で処理することによって提供される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記磁性ナノ粒子が、ブラスティング、注入、エレクトロポレーション、磁気圧力、ヒドロゲル、又はカチオン性リポソームにより1つ以上のリガンドを提示する前記細胞内に導入される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記磁性ナノ粒子が、
a)負に帯電したナノ粒子;
b)正に帯電したナノ粒子;及び
c)支持分子
を含む組成物を用いて、1つ以上のリガンドを提示する前記細胞内に導入され、
d)前記負に帯電したナノ粒子又は正に帯電したナノ粒子の1つは、磁気応答性要素又は化合物であり、前記支持分子は、繊維状マット様構造を形成する稠密な混合物中に前記負に帯電したナノ粒子及び前記正に帯電したナノ粒子を保持する、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
細胞の混合物から標的細胞を単離する方法であって、
a)細胞の表面上に1つ以上の抗原結合部位を提示する細胞を組成物と組み合わせて磁化提示細胞を形成するステップであって、前記組成物は、
i)負に帯電したナノ粒子;
ii)正に帯電したナノ粒子;及び
iii)支持分子
を含み;
iv)前記負に帯電したナノ粒子又は正に帯電したナノ粒子の1つは磁気応答性要素又は化合物であり、前記支持分子は、繊維状マット様構造を形成する稠密な混合物中に前記負に帯電したナノ粒子及び前記正に帯電したナノ粒子を保持する、ステップ;
b)標的細胞及び非標的細胞を含む細胞の混合物を前記磁化提示細胞と組み合わせるステップ;
c)前記抗原結合部位により認識される抗原を提示する1つ以上の標的細胞に前記抗原結合部位を結合させるステップ;
d)磁場を印加して、前記標的細胞に結合した磁化提示細胞を回収するステップ;及び
e)非標的細胞を洗い流し、それにより前記標的細胞に結合した磁化提示細胞を単離するステップ
を含む、方法。
【請求項12】
前記磁化提示細胞を前記標的細胞から分離するさらなるステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記標的細胞に結合した、単離された前記磁化細胞を浮遊させるのに十分な磁場で、前記標的細胞に結合した、単離された前記磁化提示細胞を3D培養するさらなるステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
a)前記支持分子が、ペプチド、多糖、核酸、ポリマー、ポリリジン、フィブロネクチン、コラーゲン、ラミニン、BSA、ヒアルロナン、グリコサミノグリカン、アニオン性、非硫酸化グリコサミノグリカン、ゼラチン、核酸、細胞外マトリックスタンパク質混合物、抗体、又はそれらの混合物若しくは誘導体を含み、b)前記負に帯電したナノ粒子が、金ナノ粒子であり、c)前記正に帯電したナノ粒子が、酸化鉄ナノ粒子である、請求項11から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
標的細胞を操作する方法であって、
a)標的細胞を、表面上に1つ以上のリガンドを提示する磁化提示細胞と組み合わせるステップであって、前記リガンドは、前記標的細胞の表面上の標的分子に特異的に結合する、ステップ;
b)前記リガンドを前記標的分子に結合させて、前記標的細胞に結合した磁化提示細胞を生成するステップ;
c)磁場を印加して、前記標的細胞に結合した前記磁化提示細胞を回収し、それにより、前記標的細胞の操作を可能にするステップ
を含む、方法。
【請求項16】
a)少なくとも1つの磁化提示細胞の表面上に少なくとも1つのリガンドを提示する、少なくとも1つの磁化提示細胞;及び
b)少なくとも1つの標的細胞の表面に少なくとも1つの結合パートナーを有する、少なくとも1つの標的細胞
を含む磁性細胞複合体であって、前記少なくとも1つの磁化提示細胞の表面上の前記少なくとも1つのリガンドは、磁性細胞複合体を形成するように、少なくとも1つの標的細胞の表面上の前記結合パートナーと結合する、磁性細胞複合体。
【請求項17】
前記少なくとも1つのリガンドが抗原結合部位を含み、前記少なくとも1つの結合パートナーが前記抗原結合部位によって認識される抗原を含む、請求項16に記載の磁性細胞複合体。
【請求項18】
前記少なくとも1つの磁化提示細胞が磁性ナノ粒子を含む、請求項16又は17に記載の磁性細胞複合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年8月8日に出願された米国特許出願第62/542,745号に対する優先権を主張し、すべての目的でその全体が参照により組み込まれる。
【0002】
発明の分野
本発明は、他の細胞を回収及び操作するためのツールとしての磁性細胞の材料、その製造方法、及びその使用方法、並びに少なくとも1つの磁化提示細胞及び少なくとも1つの標的細胞を含む磁性細胞複合体に関する。
【背景技術】
【0003】
細胞を選択及び濃縮するための磁気ビーズの使用は長く知られている。実際に、いくつか例を挙げると、Mojosort、EasySep、MACS MicroBead Technology、Dynabeadsなどの磁性ビーズベースの細胞選別技術の商用供給業者がいくつかある。したがって、この技術は十分に開発されており、当該技術分野において周知である。
【0004】
磁性細胞分離技術には多数のバリエーションがあるが、1つの重要な方法では、抗体を使用して目的の細胞を標的とし、次に磁場を使用して、通常は磁気ビーズにコンジュゲートさせた第二の抗体を介して標的細胞を回収する。
【0005】
通常、抗体カクテルは、目的の細胞(陽性選択)又は非目的の細胞(陰性選択)のいずれかに結合する。短時間のインキュベーション後、細胞混合物への磁性ナノ粒子ビーズの添加は、しばしば磁性ビーズにコンジュゲートされた二次抗体を介して、先のインキュベーションからの抗体を結合する。別の短いインキュベーション後、細胞を磁場に置くことができる。数分後、抗体に結合した細胞が磁石に引き寄せられ、結合した細胞又は未結合の細胞を回収することができる。この技術は、細胞集団をバルク集団から迅速に及び簡単に単離することができ、これらの基本原理に基づいて様々な用途が開発されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、磁気抗体ベースの細胞単離は、磁石(約1000ドル)及び抗体キット(約300~700ドルの範囲)の購入にいくらかの先行投資を伴う。さらに、ビーズは天然のものではないため、さらに培養するために取り除かれるか、又は保持されるが、環境の人工性の一因となる。したがって、これらのビーズベースのアプローチは非常に有用ではあるが、さらなる技術、例えば、アッセイ又は培養、特に3D培養のために、高価であり、磁気的にコンジュゲートした抗体ビーズの使用を回避し、人工ビーズ材料及び化学物質の使用を回避し、可能な限り最良の細胞回収を提供する、細胞を単離する改善された方法の余地がまだある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書において、本発明者らは、3Dでアセンブルされた、磁化細胞又は磁化細胞の小さなクラスターの新しい使用を提供し、ここでこの細胞は、標的細胞に結合する抗標的抗体を提示するように操作される。これらの磁化された提示細胞は、細胞濃縮のために磁気ビーズの代わりに使用することができる。したがって、ビーズは不要になり、第二の抗体も不要になる。
【0008】
磁化提示細胞は、好ましくは、表面に抗体又はその抗原結合部分を提示するが、他の任意の標的特異的受容体、リガンド、化学物質、又は結合対の1つのメンバーを使用することができる。このような「提示表面マーカー」は、天然のもの、遺伝子操作されたもの、過剰発現されたもの、又は細胞に化学的に付加されたものであり得る。さらに、特定の癌細胞型の転移標的である特定の臓器の磁化された細胞を使用することができ、照射細胞又は非増殖細胞も使用することができる。重要なことは、目的の細胞を標的とし、それによって細胞に結合するために、磁化提示細胞が特定の化学的又は物理的特性を有することである。このような細胞はすべて、本明細書では「磁化提示細胞」と呼ばれる。
【0009】
磁化提示細胞はまた、蛍光分子又は原子、例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)、又はその他の標識を有することができ、これは、細胞-細胞間結合イベントを同定するために使用され得、又は細胞選別を促進するために使用することができる。これらの細胞は「磁化された標識提示細胞」と呼ばれ、標識が蛍光マーカーである場合、「磁化された蛍光提示細胞」とも呼ばれる。
【0010】
線維芽細胞が磁化提示細胞として使用される限り、それらは、例えば、フィーダー細胞又は天然の間質代用物として使用するために培養物中に保持され得る。これは、3D培養の場合に特に有益であり、例えば、条件付きで細胞を再プログラミングし、循環腫瘍細胞、幹細胞、及び初代細胞を培養する場合、フィーダー細胞とともに培養することから恩恵を受ける。
【0011】
さらに、免疫細胞が磁化提示細胞として使用される限り、それらは、例えば、マクロファージ、T細胞、抗原提示細胞として使用するために培養物中に保持され得る。これは、抗原提示細胞を磁化することによって、抗原提示細胞及びT細胞のいずれかを捕捉する場合に特に有益である。これはまた、免疫細胞の活性化と捕捉のプロセスに有益である。
【0012】
線維芽細胞又は免疫細胞が細胞培養を追い越す(overtake)ことを防ぐために、選択剤が除去される。表面マーカーを提示するようにしばしば遺伝子工学的に操作された細胞は、発現負荷のためにそれらの増殖を遅延させ、選択された標的細胞がより効果的に競合するようにさせる。あるいは、他の負の選択圧を使用することができ、例えば、条件付き突然変異体における必須栄養素の除去、温度選択(温度感受性p-53突然変異体及びSV40の突然変異体)、照射などが挙げられる。
【0013】
表面上に標的抗体を提示する細胞の作製は周知である。ファージ提示は、インビトロでの抗体親和性成熟に長い間使用されており、細菌及び酵母細胞の表面提示システムもまた開発されてきた。「哺乳動物細胞提示」系は、現在開発されており、したがって、選択された抗体遺伝子を別の細胞型に移す必要のあるいかなるステップも潜在的に回避する。任意の他の方法も同様に使用することができる。
【0014】
より詳細には、Ho, 2009によって開発された哺乳動物細胞提示戦略は、ヒト胎児腎臓293T(HEK-293T)細胞を使用したが、他の細胞型、特に線維芽細胞を使用することができる。哺乳動物細胞提示は、哺乳動物細胞において非常に高いレベルの抗体発現を促進させるために、抗体をコードするDNAの一時的なトランスフェクションに依存する。さらに、発現したマウス又はヒト抗体は、抗体機能に必要な翻訳後修飾を含み得る。哺乳動物細胞提示を使用して、大腸菌(E. coli)では発現させることができない組換え抗体断片を発現し得ることが示唆されている。
【0015】
細胞表面上にFvを提示させるために、scFvをヒト血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)の膜貫通ドメインに融合させるが(
図1)、他の膜貫通タンパク質を使用することもできる。発現ベクターには、例えば、サイトメガロウイルスプロモーター、マウスIgκ鎖シグナルペプチド(METDTLLLWVLLLWVPGSTGD)をコードするヌクレオチド配列、scFv、mycタグ、及びPDGFRの膜貫通ドメイン(アミノ酸Ala513-Arg561)が含まれた。scFvのカルボキシル末端のmycエピトープタグを使用して、発現レベルを測定した。Hoは、HEK-293T細胞上で抗CD22(RFB4)scFvを発現した(
図2)。scFv-PDGFR融合の表面局在化は、共焦点蛍光顕微鏡法及びフローサイトメトリーによって検証された。ビオチン化CD22-Fcタンパク質と抗c-myc mAbで同時に標識された細胞をレーザー走査型共焦点顕微鏡法で調べた(図示せず)。
【0016】
次に、例えば、FACS選別により細胞を選択し、scFV遺伝子を回収し、任意の所望の細胞型に入れる。あるいは、選択された提示細胞は、そのまま磁化され、本明細書で説明される方法で直接使用され得る。
【0017】
提示細胞は、磁性ナノ粒子材料、例えば、Nano3D Biosciences(登録商標)による国際公開第2010/036957号及び国際公開第2011/038370号に記載されているものとのインキュベーションにより磁化される。あるいは、ナノ粒子アセンブリのバリエーションは、Nano3D Biosciences(登録商標)(Houston TX)で、NANOSHUTTLE(商標)の商品名で市販されている。この新しい磁性材料は、任意の毒性及び感染性因子を使用せずに細胞を磁化する優れた方法を提供し、材料を洗い流した場合、細胞は磁化されたままである。
【0018】
提示細胞はまた、例えば、ブラスティング、注入、エレクトロポレーション、形質導入、カチオン性リポソーム、ヒドロゲル、磁気圧力などによって、細胞に取り込まれるか、又は他には細胞に導入され得る任意の磁性ナノ粒子を用いて磁化され得る。いずれの導入手段も十分であると予想されるが、NanoShuttleは、最小の細胞摂動法であるため、好ましい方法である。NanoShuttleを使用すると、磁性ナノ粒子が提示細胞に取り込まれ、約2週間保持される。3Dでアセンブルされた、磁化提示細胞の小さなクラスターを使用した場合、磁化は数か月間保持され得る。したがって、細胞はここでは磁化され、さらに、抗原結合部位又は目的の細胞を標的とする他の表面マーカーを提示する。
【0019】
次に、磁性提示細胞を標的細胞と組み合わせ、インキュベートして、抗原結合部位を標的細胞の表面上の一部のエピトープに結合させる。その後、これらの細胞は、強磁場を印加により回収することができる。したがって、磁性提示細胞は、指向された磁場を使用してインビボで磁化提示細胞を局在化するために、磁性ビーズが以前に使用されていた任意の方法で使用することができ、そのような方法として細胞操作、培地交換、細胞単離又は濃縮、細胞拡大、3D細胞培養、細胞浮遊、細胞凝集、バイオプリンティング用途の「インク」などが挙げられる。
【0020】
本方法の全体的なステップは、以下を含む:
1.目的の標的細胞のために抗体又は可変領域を提示する細胞を選択する。多くの場合、抗体提示細胞又はリガンド提示細胞がすでに利用可能である場合、このステップはオプションであり得る。しかしながら、用途に応じて、必要とされる遺伝子を別の細胞型に移すことが必要な場合がある。
2.細胞が磁性ナノ粒子を取り込むように、NANOSHUTTLE(商標)又は任意の別の方法で提示細胞を処理する。
3.磁性提示細胞を標的細胞とともにインキュベートし、磁性提示細胞を標的細胞に結合させる。
4.磁性細胞及びそれに結合した細胞を磁場で回収する。細胞を1回以上洗浄し、培地交換等を行う。
5.場合により、磁化提示細胞及び標的細胞混合物の2D又は3D細胞培養を行う。
6.場合により、アッセイ又は画像化は、用途に関係のあるものを行うか、又はインビボ治療のために3D細胞培養を使用する。
7.場合により、磁化提示細胞及び標的細胞混合物のバイオプリンティングを行う。
【0021】
本発明は、すべての可能な組み合わせにおいて、以下の実施形態のいずれか1つ以上を含む。
【0022】
細胞の混合物から標的細胞を単離する方法であって、
a)標的細胞及び非標的細胞を含む細胞の混合物を、表面上に1つ以上のリガンドを提示する磁化提示細胞と組み合わせるステップであって、前記リガンドは、前記標的細胞の表面上の結合パートナーに特異的である、ステップ;
b)前記リガンドを前記結合パートナーに結合させて、前記標的細胞に結合した磁化提示細胞を生成するステップ;
c)磁場を印加して、前記標的細胞に結合した前記磁化提示細胞を回収するステップ;及び
d)非標的細胞を洗い流し、それにより前記標的細胞を単離するステップ
を含む、方法。
【0023】
前記リガンドが抗原結合部位を含み、前記結合パートナーが、前記抗原結合部位によって認識される抗原を含む、本明細書に記載のいずれかの方法。
【0024】
前記磁化提示細胞は、線維芽細胞又は免疫細胞である、本明細書に記載のいずれかの方法。
【0025】
前記磁化提示細胞は、線維芽細胞由来の細胞株に由来する、本明細書に記載のいずれかの方法。
【0026】
前記標的細胞及び前記磁化提示細胞はヒトのものである、本明細書に記載のいずれかの方法。
【0027】
前記標的細胞に結合した前記磁化提示細胞を3D培養するさらなるステップを含む、本明細書に記載のいずれかの方法。
【0028】
前記標的細胞に結合した前記磁化提示細胞が浮遊するように、磁場で、前記標的細胞に結合した前記磁化提示細胞を3D培養するさらなるステップを含む、本明細書に記載のいずれかの方法。
【0029】
前記標的細胞をアッセイするさらなるステップを含む、本明細書に記載のいずれかの方法。
【0030】
前記標的細胞に結合した前記磁化提示細胞をバイオプリンティングするさらなるステップを含む、本明細書に記載のいずれかの方法。
【0031】
前記磁化提示細胞は、1つ以上のリガンドを提示する細胞を磁性ナノ粒子で処理することによって提供される、本明細書に記載のいずれかの方法。
【0032】
前記磁性ナノ粒子は、ブラスティング、注入、エレクトロポレーション、磁気圧力、ヒドロゲル、又はカチオン性リポソームにより1つ以上のリガンドを提示する前記細胞に導入される、本明細書に記載のいずれかの方法。
【0033】
前記磁性ナノ粒子は、
a)負に帯電したナノ粒子;
b)正に帯電したナノ粒子;及び
c)支持分子
を含む組成物を有する1つ以上のリガンドを提示する前記細胞に導入され、
d)前記負に帯電したナノ粒子又は正に帯電したナノ粒子の1つは、磁気応答性要素又は化合物であり、前記支持分子は、繊維状マット様構造を形成する稠密な混合物に前記負に帯電したナノ粒子及び前記正に帯電したナノ粒子を保持する、本明細書に記載のいずれかの方法。
【0034】
細胞の混合物から標的細胞を単離する方法であって、
a)細胞の表面上に1つ以上の抗原結合部位を提示する細胞を組成物と組み合わせて磁化提示細胞を形成するステップであって、前記組成物は、
i)負に帯電したナノ粒子;
ii)正に帯電したナノ粒子;及び
iii)支持分子
を含み;
iv)前記負に帯電したナノ粒子又は正に帯電したナノ粒子の1つは、磁気応答性要素又は化合物であり、前記支持分子は、繊維状マット様構造を形成する稠密な混合物に前記負に帯電したナノ粒子及び前記正に帯電したナノ粒子を保持する、ステップ;
b)標的細胞及び非標的細胞を含む細胞の混合物を前記磁化提示細胞と組み合わせるステップ;
c)前記抗原結合部位により認識される抗原を提示する1つ以上の標的細胞に前記抗原結合部位を結合させるステップ;
d)磁場を印加して、前記標的細胞に結合した磁化提示細胞を回収するステップ;及び
e)非標的細胞を洗い流し、それにより前記標的細胞に結合した磁化提示細胞を単離するステップ
を含む、方法。
【0035】
磁化提示細胞を標的細胞から分離するさらなるステップを含む、本明細書に開示される方法。
【0036】
磁化提示細胞を標的細胞から分離するさらなるステップは、競合的結合のための過剰な非結合リガンドの使用、結合対の、特に抗原又は抗原結合部位の、一方のメンバーの特定部位を切断する酵素の使用、又は結合対のメンバーの表面タンパク質を非特異的に切断する酵素、特にトリプシン、パパイン、ディスパーゼ、コラゲナーゼ、ヒアルロニダーゼ、又はそれらの混合物の使用を含む、本明細書に開示されるいずれかの方法。
【0037】
細胞の混合物から標的細胞を単離する方法であって、
a)細胞の表面上に1つ以上の抗原結合部位を提示する細胞を組成物と組み合わせて磁化提示細胞を形成するステップであって、前記組成物は、
i)負に帯電したナノ粒子;
ii)正に帯電したナノ粒子;及び
iii)支持分子
を含み;
iv)前記負に帯電したナノ粒子又は正に帯電したナノ粒子の1つは、磁気応答性要素又は化合物であり、前記支持分子は、繊維状マット様構造を形成する稠密な混合物に前記負に帯電したナノ粒子及び前記正に帯電したナノ粒子を保持する、ステップ;
b)標的細胞及び非標的細胞を含む細胞の混合物を前記磁化提示細胞と組み合わせるステップ;
c)前記抗原結合部位により認識される抗原を提示する1つ以上の標的細胞に前記抗原結合部位を結合させるステップ;
d)磁場を印加して、前記標的細胞に結合した磁化提示細胞を回収するステップ;及び
e)非標的細胞を洗い流し、それにより前記標的細胞に結合した磁化提示細胞を単離するステップ;及び
f)前記標的細胞に結合した、単離された前記磁化細胞を浮揚させるのに十分な磁場で、前記標的細胞に結合した、単離された前記磁化提示細胞を3D培養するステップ
を含む、方法。
【0038】
a)支持分子が、ペプチド、多糖、核酸、ポリマー、ポリリジン、フィブロネクチン、コラーゲン、ラミニン、BSA、ヒアルロナン、グリコサミノグリカン、アニオン性、非硫酸化グリコサミノグリカン、ゼラチン、核酸、細胞外マトリックスタンパク質混合物、抗体、又はそれらの混合物若しくは誘導体を含み、b)前記負に帯電したナノ粒子が、金ナノ粒子であり、c)前記正に帯電したナノ粒子が、酸化鉄ナノ粒子である、本明細書に記載のいずれかの方法。
【0039】
標的細胞を操作する方法であって、
a)標的細胞を、表面上に1つ以上のリガンドを提示する磁化提示細胞と組み合わせるステップであって、前記リガンドは、前記標的細胞の表面上の標的分子に特異的に結合する、ステップ;
b)前記リガンドを前記標的分子に結合させ、前記標的細胞に結合した磁化提示細胞を生成するステップ;
c)磁場を印加して、前記標的細胞に結合した前記磁化提示細胞を回収し、それにより前記標的細胞の操作を可能にするステップ
を含む、方法。
【0040】
好ましい実施形態では、細胞は、以下:a)負に帯電したナノ粒子;b)正に帯電したナノ粒子;及びc)支持分子を含む組成物で浮遊され、前記負に帯電したナノ粒子又は正に帯電したナノ粒子の1つは、磁気応答性材料、例えば、鉄又は酸化鉄を含み、前記支持分子は、前記負に帯電したナノ粒子及び前記正に帯電したナノ粒子を稠密な混合物に保持する。
【0041】
最も好ましくは、組成物は、非常に効果的であることが公知であり、Nano3D BioSciences(Houston TX)から市販されているNANOSHUTTLE(商標)である。
【0042】
さらに、先行特許に記載されるように、磁場の形状を変更することにより、様々な形状の3D培養物を作製することができる。例えば、リング磁石を使用して、リング又はドーナツ形の3D培養物を作製することができる。磁場は、脱細胞化及び再細胞化プロセス中にこのような形状を維持又は変更するためにも使用することができる。
【0043】
a)少なくとも1つの磁化提示細胞の表面上に少なくとも1つのリガンドを提示する、少なくとも1つの磁化提示細胞;及び
b)少なくとも1つの標的細胞の表面上に少なくとも1つの結合パートナーを有する、少なくとも1つの標的細胞
を含む磁性細胞複合体であって、前記少なくとも1つの磁化提示細胞の表面上の前記少なくとも1つのリガンドは、磁性細胞複合体を形成するように、少なくとも1つの標的細胞の表面上の前記結合パートナーと結合する、磁性細胞複合体。
【0044】
前記少なくとも1つのリガンドは抗原結合部位を含み、前記少なくとも1つの結合パートナーは前記抗原結合部位によって認識される抗原を含む、本明細書に記載のいずれか磁性細胞複合体。
【0045】
-少なくとも1つの磁化提示細胞が磁性ナノ粒子を含む、本明細書の任意の磁性細胞複合体。
【0046】
少なくとも1つの磁化提示細胞は磁性ナノ粒子を含み、前記磁性ナノ粒子は、
i)負に帯電したナノ粒子;
ii)正に帯電したナノ粒子;及び
iii)支持分子
を含み、
iv)前記負に帯電したナノ粒子又は正に帯電したナノ粒子の1つは、磁気応答性要素又は化合物であり、前記支持分子は繊維状マット様構造を形成する稠密な混合物中に前記負に帯電したナノ粒子及び前記正に帯電したナノ粒子を保持する、本明細書に記載のいずれかの磁性細胞複合体。
【0047】
本明細書の細胞の混合物から標的細胞を単離する方法のいずれかによって得ることができる、特にそれにより得られる本明細書の任意の磁性細胞複合体。
【0048】
標的細胞を操作する方法により得ることができる、特にそれにより得られる本明細書の任意の磁性細胞複合体。
【0049】
本明細書では、以下の略語を使用する場合がある。
【0050】
【0051】
本明細書において「培養する」とは、単一細胞型の培養又は1を超える細胞型の共培養を含む。
【0052】
本明細書で使用される「正に帯電したナノ粒子」又は「正のナノ粒子」は、全体的に正の電荷を有する200nm未満、好ましくは100nm以下の任意の粒子として定義される。好ましくは、粒子は非毒性であるが、粒子は細胞に留まらないため、これは必須ではない。
【0053】
本明細書で使用される「負に帯電したナノ粒子」又は「負のナノ粒子」は、全体的に負の電荷を有する200nm未満、好ましくは100nm、最も好ましくは約2~25nmの任意の粒子として定義される。好ましくは、粒子は非毒性であるが、粒子は細胞に長期間留まらないため、これは必須ではない。
【0054】
本明細書で使用される「磁気応答性要素」は、磁場に応答する任意の要素又は分子であり得る。以下に詳述されるように、ナノ粒子の1つは、磁気応答性要素を含むか、又は磁気応答性要素である必要がある。
【0055】
本明細書で使用される「支持分子」とは、ナノ粒子と相互作用して繊維状構造又はゲルのようなマットを形成し、したがって、取り込みのために細胞に近接して磁性ナノ粒子を保持する任意の長い分子を指す。1つの好ましい支持分子はポリリジンである。
【0056】
本明細書において「幹細胞」とは、特に明記しない限り、全能性細胞及び多能性細胞を含む。
【0057】
「抗体提示」とは、細胞がその細胞表面に特定の抗原の抗原結合部位を提示することを意味する。しかしながら、抗体遺伝子全体を使用する必要はなく、典型的には使用しない。代わりに、他のタンパク質、典型的には膜貫通タンパク質と融合する。それにもかかわらず、融合タンパク質は、抗体の特異的結合特性を保持する。
【0058】
「提示細胞」とは、標的細胞に接着するために使用することができる表面分子、特に1つ以上のリガンド、好ましくは少なくとも1つの抗原結合部位及び/又は抗体を提示する細胞を意味する。
【0059】
「表面マーカーを提示する」又は「表面マーカー」とは、目的の標的細胞への特異的結合を可能にする表面提示マーカー、化学物質又は原子を意味する。好ましい表面分子には、抗原結合部位、抗体などが含まれるが、他のリガンド、受容体、又は化学物質も同様に使用することができる。「提示表面マーカー」及びその「同種結合メンバー」は、あわせて「結合対」として公知である。他の結合対を
図3に示し、ここに列挙する:
1.リガンド-受容体相互作用
2.ホモタイプ又はヘテロタイプのタンパク質相互作用
3.Gタンパク質共役型受容体(GPCR)相互作用
4.循環腫瘍細胞を捕捉するためのEpCam
5.細胞表面受容体
6.膜貫通タンパク質
7.インテグリン
8.細胞外マトリックスタンパク質、すなわち、コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチン
9.脂質-脂質相互作用
10.脂質-タンパク質相互作用
11.キレート相互作用、例えば、金属イオン及びヒスチジンポリペプチド又は他のキレート分子
【0060】
「結合対」とは、互いに結合する2つの原子又は分子を意味し、第3のメンバー又は架橋メンバーが必要な場合であってもよい。
【0061】
「磁化提示細胞」とは、標的細胞の表面上の同種結合メンバーに接着するために使用することができ、その中に(又はECM中若しくは表面コーティング中に)十分量の磁性ナノ粒子を含有し、それにより細胞が磁場によって引き付けられ得るようにする、表面分子を提示する細胞又は細胞クラスターを意味する。
【0062】
本発明との関連では、「磁性細胞複合体」という用語は、複合体、特に少なくとも1つの磁性提示細胞と少なくとも1つの標的細胞のアセンブリを指す。したがって、本明細書で使用される「磁性細胞複合体」は、単一の磁化提示細胞と単一の標的細胞のアセンブリを指すが、1を超える標的細胞を含む単一の磁化提示細胞のアセンブリ、又はその反対も指す。この用語はさらに、少なくとも1つの磁性提示細胞が、少なくとも1つの他の磁性提示細胞などに再び結合される少なくとも1つの標的細胞に結合されるアセンブリを包含する。本発明の「磁性細胞複合体」は、特に、少なくとも1つの磁化提示細胞がその細胞表面上に少なくとも1つのリガンドを提示し、少なくとも1つの標的細胞がその細胞表面上に少なくとも1つの結合パートナーを有することによって特徴付けられ、少なくとも1つの磁化提示細胞の細胞表面上の少なくとも1つのリガンドは、少なくとも1つの標的細胞の細胞表面上の結合パートナーと結合して、磁性細胞複合体を形成する。
【0063】
本明細書で使用するとき、その結合(コンジュゲーション)のすべてにおいて「操作する」とは、任意のタイプの干渉を指す。特に、本発明との関連では、この用語は、細胞、特に標的細胞に干渉するのに適した任意の外部作用又は影響について記述するために使用される。特定の実施形態では、「標的細胞の操作」とは、磁場の印加により磁化提示細胞に結合した標的細胞に影響を及ぼすことを指す。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【
図1】哺乳動物細胞におけるscFvを提示するための発現プラスミドの図である。PCMVサイトメガロウイルスプロモーター;Igκ SP、マウスIgκ鎖シグナルペプチド;VH、重鎖可変領域;VL、軽鎖可変領域;リンカー、VHとVL間の可動性合成リンカー;myc、scFv発現レベルを測定するためのエピトープタグ;PDGFR、ヒト血小板由来増殖因子受容体の膜貫通ドメイン;PSV40/ori、SV40プロモーター及びSV40ラージT抗原を発現する哺乳動物細胞においてエピソーム複製を促進する起点;Neo/KanR、ネオマイシン及びカナマイシン耐性遺伝子。Ho, 2009による。
【
図2】哺乳動物細胞における表面提示の模式図である。追加の10アミノ酸エピトープタグ(c-myc)をscFvのC末端に融合し(抗CD22 RFB4 Fv構造モデルに基づく)、抗原(CD22)結合に依存しないmAb 9E10との融合提示の定量化を可能にした。PDGFR膜貫通ドメインのN末端部分への融合を使用して、哺乳動物(HEK-293T)細胞表面にscFvを固定した。Ho, 2009。
【
図3-1】磁化提示細胞と標的細胞間の一般的な相互作用の模式図である。
【
図3-2】
図3A:タンパク質-タンパク質、脂質-脂質、脂質-タンパク質、静電、ファンデルワールスを含む相互作用。循環腫瘍細胞(CTC)を含む血液又は小さな組織生検試料などの、プローブされた試料に低い数で存在する細胞を回収してアセンブルする場合。磁化提示細胞は、CTC又は生検細胞の増殖を支持する支持層又は栄養層として機能することができる。
図3B:抗体-抗原又はタンパク質-タンパク質相互作用など、細胞表面のタンパク質間の相互作用。
図3C:両方の細胞型の表面上に存在するタンパク質又は抗体と相互作用する結合(カップリング)又は架橋リガンド(分子又はタンパク質又は金属イオン)を追加することによって媒介又は誘発される相互作用。これらの分子はまた、キレートポリペプチド、例えば、ポリヒスチジンが細胞-細胞間相互作用を媒介する場合、タンパク質、アプタマーの形態のDNA、及び/又は金属であり得る。
図3D:Cと同様であるが、ここでは、磁化提示細胞を、表面タンパク質/抗体によって捕捉される分子とともにインキュベートし、遊離/非結合分子を除去し、次に、磁化細胞を標的細胞と組み合わせる。
図3E:Dと同様であるが、ここでは、標的細胞を、その表面タンパク質/抗体によって捕捉される分子とともにインキュベートし、遊離/非結合分子を除去し、次に、磁化提示細胞を標的細胞と組み合わせる。
図3F:磁化提示細胞は、細胞表面修飾分子又はポリマー、例えば、細胞外マトリックスタンパク質、ポリ-L-リジン、フィブロネクチン、コラーゲン、ラミニンなどで修飾される。追加された分子は、磁化提示細胞と標的細胞間の相互作用を促進する。
【
図4】
図4A~E:磁化提示細胞と標的細胞間の相互作用を解離する方法の模式図である。解離作用は、以下を含む:A.酵素消化、イオン強度の変化、培地組成の変化、pHの変化、温度の変化、界面活性剤の作用。B.1つ以上の解離作用による解離。C.過剰なリガンドの添加。D.過剰なリガンド又はキレート分子、例えばEDTA。E.解離作用による解離。
【
図5】実験計画を示す図である。初代気管平滑筋細胞(SMC)は磁化され(磁化提示細胞)、肺癌腺癌A549細胞(標的細胞)は磁化されなかった。気管SMCは肺/肺組織系の一部であり、したがって、SMCと肺癌腺癌標的細胞との間の親和性が期待される。使用した細胞の数は、プレートアレイラベルに示されるように、50K、40K、30K、20K、10K、及び0又は細胞なしであった。
【
図6】
図5に示される実験計画による細胞の顕微鏡写真(倍率2.5倍)を示す図である。時間0は、2つの細胞型(一方は磁化され、他方は磁化されない)が15から30分間相互作用した後、細胞反発性384ウェルプレートの底部で2つの細胞型が磁気的に凝集されたか又はバイオプリントされた直後である。
【
図7】
図5に列記され、
図6に示される実験計画による細胞の、これらの細胞を24時間培養した後の顕微鏡写真(倍率2.5倍)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0065】
一般的に言えば、本発明は、以前に磁性ビーズが使用された方法のいずれかで磁性提示細胞を使用する方法である。人工ビーズの代わりに細胞を使用するということは、ポリマー又は架橋剤若しくは活性化剤を使用する必要がないことを意味する。さらに、磁化細胞はすでに細胞表面上に関連する抗原結合部位を提示しているため、もはやリンカー及び関連する化学物質の使用は必要ない。さらに、照射された線維芽細胞などの線維芽細胞がその後の培養のためのフィーダー細胞として機能する場合には、細胞を保持することができる。
【0066】
標的化配列は、抗原結合部位を含むことが好ましいが、任意の細胞標的化タンパク質又は試薬を使用し得る。別の選択肢として、標的細胞に天然に結合する細胞、例えば、免疫細胞、癌細胞、平滑筋細胞、内皮細胞(edothelial cell)、骨細胞、上皮細胞などを使用し得る。
【0067】
好ましい実施形態において、磁性化材料(magnetizing material)は、正及び負に帯電したナノ粒子を含み、このうちの1つはナノサイズ化酸化鉄のような1つ以上の磁気応答性要素を含む必要がある。これらのナノ粒子はさらに、細胞によってナノ粒子が取り込まれる又は吸着される位置のそれらを保持する、帯電したナノ粒子及び細胞のための支持体として作用するポリマー、好ましくは細胞性又は合成ポリマー、又はその他の長分子(本明細書においては「支持分子」と呼ばれる)と組み合わせられる。正及び負のナノ粒子の両方を含むことは、ナノ粒子の稠密な混合及び3種類の構成要素のアセンブリ(会合)の促進を可能にし、その結果、均一な分布及び良好な取り込みを確実にする。支持分子は、細胞の磁気応答性要素の取り込みを可能にする繊維状のマット様構造として、3種類の構成要素全てと細胞とを稠密に組み合わせる。
【0068】
インキュベート期間の後に、磁性化材料を洗浄して除去することができる。これにより細胞を磁場において操作することが可能になる。磁性ナノ粒子は最終的に8日までに細胞から分離されるが、現在培養の持続時間においてECMによって保持されることがわかっている。
【0069】
磁気応答性要素は、例えば希土類磁石(例えば、サマリウムコバルト(SmCo)及びネオジム鉄ボロン(NdFeB))、セラミック磁石材料(例えば、ストロンチウムフェライト)、磁性元素(例えば、鉄、コバルト、及びニッケル、並びにそれらの合金及び酸化物)のような磁場に応答するであろう、任意の元素又は分子であり得る。特に好ましいものは、磁場に応答する常磁性材料であるが、材料のアセンブリを容易にすることを可能にするので、それらは磁石そのものではない。
【0070】
好ましくは、そのような細胞又は磁性ECMの浮遊に用いる磁場は約300G~1000Gである。しかしながら磁場強度は、培養物からの距離、並びに細胞によって取り込まれる又は吸着される磁気応答要素の量及び種類の両方によって変わる。従って、最適な磁場強度は様々となるであろうが、経験的に容易に決定される。
【0071】
負に帯電したナノ粒子は、電荷の安定した金属(例えば銀、銅、白金、パラジウム)を含むが、好ましくは金のナノ粒子である。
【0072】
正に帯電したナノ粒子は、界面活性剤又はポリマーが安定化した若しくはコーティングされた合金及び/又は酸化物(例えば鉄元素、鉄-コバルト、ニッケル酸化物)を含み、好ましくは酸化鉄のナノ粒子である。
【0073】
2つのナノ粒子のうちの1つは磁気応答性でなくてはならないが、明らかにどちらの一方(又は両方)がこの特徴を有し得る。
【0074】
ナノ粒子はナノスケールの大きさを有するため、約50nmである。しかしながら、大きさは約5~250nm、50~200nm、75~150nmの間の範囲であり得るが、使用する細胞型への取り込み又は吸着を可能にするために適当な大きさである限り、それらはより小さくても又はより大きくてもよいしあるいはナノ粒子のアセンブリであってもよい。粒子が大きいほど細胞侵入の効率は低い。他の研究において我々は、磁性ナノ粒子の有効な大きさには上限があることを示し、また、いくつかの機能が依然として観察されるが、マイクロメーターサイズでは効果的となるには大きすぎることを示した。
【0075】
「支持分子」は通常、(詰まったフェルトマットのような)稠密な混合物中にナノ粒子及び細胞を一緒に保持するのに役立つ、ポリマー又はその他の長分子である。支持分子は正に帯電したものであっても、負に帯電したものであっても、両方の電荷を有するものであっても、又は帯電していない(neutral)ものであってもよく、そして1つ以上の支持分子の組み合わせであってもよい。
【0076】
そのような支持分子の例としては、ペプチド、多糖、核酸などのような天然のポリマーが挙げられるが、合成ポリマーもまた使用することができる。特に好ましい支持分子としては、ポリリジン、フィブロネクチン、コラーゲン、ラミニン、BSA、ヒアルロナン、グリコサミノグリカン、アニオン性、非硫酸化グリコサミノグリカン、ゼラチン、核酸、細胞外マトリックスタンパク質混合物、マトリゲル、抗体、並びにその混合物及び誘導体が挙げられる。
【0077】
一般的に言えば、支持分子の濃度は、負及び正に帯電したナノ粒子の濃度よりも実質的に高く、10~1000倍高い、20~500、又は50~200倍高い範囲である。しかしながら、どの細胞型を用いるか並びにどの支持分子及びナノ粒子を用いるかによって、より高い又はより少ない量にすることも可能である。ポリマーの長さが長くなるほど、取り込みの場所にナノ粒子を保持するのに十分な構造を形成するために必要な量はより少なくなるだろう。
【0078】
通常、ナノ粒子は非常に低い濃度で用いられる。濃度は、10-6~10-12モル濃度の範囲になり得るが、好ましくはナノモル濃度の範囲であり、かつ、支持分子の濃度は10-3~10-9モル濃度であり、好ましくはマイクロモル濃度の範囲である。細胞あたり少なくとも1つの磁性ナノ粒子が必要であるが、好ましくはナノ粒子が多くなるほど必要な電界強度は低くなるため、数百又は数千個がある。
【0079】
3種類の構成要素は静電相互作用によって会合するため、ポリリジンのような帯電した、又は両方に帯電した支持分子が好ましい。しかしながら、構成要素及び/又は細胞の相互作用をさらに促進するために、3種類の構成要素のいずれをも官能化、誘導体化又はコーティングすることができる。従って、1つ以上のメンバーを、例えば、細胞表面抗原に結合する抗体を用いて、官能化、誘導体化、又はコーティングすることができる。従って、構成要素及び/又は細胞間の相互作用がさらに促進されるだろう。他の結合対には、受容体-リガンド、ビオチン-ストレプトアビジン、相補的な核酸、コムギ胚芽凝集素(WGA)、シアル酸含有分子などが含まれる。
【0080】
コーティングは、PVP、デキストラン、BSA、PEG、ポリ-L-リジンなどのような、特にナノ粒子のための、防御的又は保護的なコーティングをもまた含み得る。ナノ粒子、特に磁気応答性要素を含むナノ粒子を可視化のために、例えばフルオロフォア、放射性標識などを用いて、特に磁化細胞及び組織の開発及びin vitroでの試験の段階で標識することができる。しかしながら、治療上での使用においては、そのような標識を省略することが好ましいだろう。
【0081】
ポリリジンなどの支持分子が容易に合成できることから、望まれる場合には、ファージ又は細胞産物のような生物学的分子を含まずに磁性ナノ粒子アセンブリを作製することができる。それであっても、全ての構成要素が通常非毒性であることから、費用も高くなく、また作製も容易である。さらに、詰まった繊維状のマット又はフェルト様構造は、ナノ粒子磁性アセンブリに含めるための、追加の細胞支持分子(細胞外マトリックス要素など)の組み込みを可能にする。
【0082】
磁性ナノ粒子アセンブリを用いた細胞の磁性化は、例えば一般的な培地中の細胞にアセンブリを加えることのみを含む。磁性ナノ粒子を処理して数分(5分)以内に細胞を磁性化することができ、また、付着した又は懸濁された細胞を磁性ナノ粒子アセンブリで処理することができる。
【0083】
次に、磁化抗体提示細胞を、血液又は組織ホモジネートなどの標的細胞とインキュベートし、続いて標的細胞が磁化細胞の抗原結合部位に結合し、強力な磁場での回収が可能になる。これらは、必要に応じて1回以上洗浄できる。回収した細胞はそのまま使用してもよいし、又は使用前にさらに培養してもよい。
【0084】
磁化提示細胞を標的細胞から分離することが望ましい場合、いくつかの方法が
図4に示されている。細胞間相互作用との競合的結合のために、過剰な非結合リガンドを使用し得る。別の方法では、結合対の1つのメンバー及び細胞の特定の部位を切断する酵素を使用し、そのような部位は、提示分子に組み込むこともできる。また、トリプシン処理、又は酵素混合物(例えばパパイン、ディスパーゼ、コラゲナーゼ、ヒアルロニダーゼ及びトリプシンなど)による一般的な酵素消化を使用して、磁石で磁性細胞を取り除くこともできる。短い温度「ショック」もいくつかの相互作用を解離させる可能性がある。最後に、細胞間相互作用がヒスチジンポリペプチドなどのキレートタンパク質又は分子によって媒介される場合、EDTAを添加してもよい。
【0085】
好ましい実施形態において、磁化細胞は線維芽細胞又は標的器官からの細胞であり、線維芽細胞をフィーダー細胞又は標的器官からの細胞として使用して、3D培養を開始する。3D培養は、磁場を印加することで開始し得る。磁場を印加すると、細胞が浮遊し又はバイオプリントされ、3D構造に迅速に合体(coalesce)する。3D培養物の形状は、磁場の形状を変更することでも変更し得る。最終的な3D培養物は、細胞及び組織の治療に使用でき、おそらく将来的には臓器移植にも使用し得る。
【0086】
図5は、実験又はプレートのレイアウトを示し、
図6は結果を示す。
図6は、特定の種類の癌が磁化されたときにin vivoで成長する組織に関連する細胞型を使用して、標的癌細胞を回収及び培養できることを実証している。
【0087】
上位4行と6列(左上の四分位)は2つの細胞型の混合であり、細胞の総数は一定に保たれている(50K細胞で)が、2つの細胞型の比率は示されているように変化する。上位4行は、再現性を示すために各列に設定された条件の複製である。列7~12及び上位4行(右上四分位)は、左上四分位の対照であり、標的細胞(肺腺癌)が存在しない。下位4行と7~12の右列(右下四分位)では、磁化提示細胞(SMC)の数は1ウェルあたり25K細胞で一定に保たれ、標的細胞(A549腺癌)の数は、示されるように0から50K細胞まで変化した。下位4行と最初の6つの左列(左下四分位)には磁化細胞(SMC)がなく、標的細胞(A549腺癌)の数は0から50Kの細胞まで変化した。
【0088】
より具体的には、初代気管平滑筋細胞(SMC)を磁化し(磁化提示細胞)、磁化されていない標的肺癌腺癌A549(標的細胞)と相互作用させる。提示された培養ウェルのうち、磁化提示細胞を示したウェルのみが、磁気的にバイオプリントされた円形構造(左上、右上、及び右下の四分位)を生成した。左下四分位のウェル(下4行、左の最初の6列)には、標的細胞のみを添加し、細胞はウェル内に分散し、そしてこれらの細胞は磁化されず、それゆえ磁性円形パターンに導かれなかったため、円形パターンは生成されなかった。
【0089】
磁化提示細胞及び非磁化細胞を混合するためのプロトコールは以下の通りである:
1. 両方の細胞型、すなわち1つは磁化するもの(磁化提示細胞)、もう1つは磁化しないもの(標的細胞)を剥離してカウントする。
2. 両方の細胞型を100万/mlの濃度にする。
3. 磁化する細胞については、1万個の細胞あたり1μlの濃度でNanoShuttleに添加し、混合物を100Gで5分間3回遠心する。各遠心分離法の後に細胞を穏やかに再懸濁する。あるいは、単層培養にあるときにNanoShuttleの一晩インキュベーションを行って細胞を磁化することができる。
4. 非磁化細胞の所望又は未知量をウェルに添加する。
5. 所望量の磁化細胞をウェルに添加する。
6. 総量300μlとなるようにウェルに培地を添加する。
7. 3分毎にマイクロウェルプレートを穏やかに旋回させながら、細胞を15分間相互作用させる。細胞を5%CO2、37℃のインキュベーターで保持する。
8. プレートを磁石ドライブに15分間置いて、回収した細胞、磁化細胞、及び標的細胞を一緒にアセンブルする。
9. 磁石ドライブからプレートを取り出し、5%CO2、37℃でインキュベートする。
【0090】
図7は、ウェルあたりの細胞数の違い及び磁化提示細胞と標的細胞(非磁化)の比の結果として、4つの四分位すべての間の形態の違いを示す。より具体的には、右上の四分位(磁化提示細胞のみ)は、標的細胞が存在する左上の四分位とは異なる形態、形状及びサイズを示す。具体的には、左上の四分位では、磁化提示細胞の数が50K(左ウェル)から0Kすなわち細胞なし(右ウェル)に減少しても、全体のサイズはほぼ同じに保たれるが、サイズはほぼ同じであるが、但し磁化提示細胞のないウェルの例外がある(OK SMC、右ウェル)。これは、磁化提示細胞が、標的細胞を収集し、標的細胞の成長を促進していることを示している。
【0091】
次に、磁化提示細胞の数が25Kで一定に保たれ、標的細胞(非磁化)の数が増える右下の四分位では、標的細胞の数が増えると3D構造物のサイズが大きくなる。繰り返すが、これは、標的細胞が収集され、磁化提示細胞によって成長が促進されていることを示している。
【0092】
以下の参考文献は、任意のあらゆる目的のためにその全体が本明細書に組み込まれる。