(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】複数の個別チャンバを有する傾斜アジャスタ
(51)【国際特許分類】
A43B 13/14 20060101AFI20220906BHJP
A43B 5/06 20220101ALI20220906BHJP
A43B 13/38 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
A43B13/14 A
A43B5/06
A43B13/38 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021025844
(22)【出願日】2021-02-22
(62)【分割の表示】P 2020512592の分割
【原出願日】2018-08-30
【審査請求日】2021-02-22
(32)【優先日】2017-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514144250
【氏名又は名称】ナイキ イノベイト シーブイ
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】ウォーカー,スティーヴン エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】ニコリ,レイモンド エル.
(72)【発明者】
【氏名】ポーザル,ロランド
【審査官】田村 惠里加
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2006/0248750(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0150785(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0154190(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0157091(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 13/00-13/42
A43B 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
履物品であって、
アッパーと、
前記アッパーに結合されたソール構造であって、前記ソール構造は、ベースと、傾斜アジャスタと、支持プレートと、を備える、ソール構造と、を備え、
前記ベースは、前記ソール構造の前足部分、前記ソール構造の中足部分、および前記ソール構造の踵部分に配置され、
前記支持プレートは、前記ソール構造の少なくとも前記前足部分に配置され、
前記傾斜アジャスタは、前記ソール構造の前記前足部分において、前記ベースと前記支持プレートとの間に配置される傾斜アジャスタ前足部セクションを備え、前記傾斜アジャスタ前足部セクションは、少なくとも3つのチャンバを備え、
前記チャンバの各々は、電気粘性流体を含み、前記チャンバ内の前記電気粘性流体の体積の変化に対応して外方への延在を変化させるように構成されており、
前記チャンバは、伝達チャネルによって直列に連結され、前記伝達チャネルの各々は、前記チャンバのうちの2つの間での流れを可能にし、
前記伝達チャネルは、流量調節伝達チャネルを備え、前記流量調節伝達チャネルは、前記流量調節伝達チャネルの電界生成部分の内部に沿って延在する、対向する第1電極および第2電極を備え、
前記ソール構造は、前記チャンバの各々について、前記チャンバの上部と前記支持プレートの底部との間に配置される対応
するチャンバキャップを備え
、
前記チャンバのうちの第1チャンバは、前記チャンバの一部を形成する可撓性壁を備え、前記可撓性壁は、前記チャンバ内の前記電気粘性流体の前記体積が増加するにつれて膨張するように構成されており、前記チャンバ内の前記電気粘性流体の前記体積が減少するにつれて収縮するように構成されており、
前記第1チャンバの前記可撓性壁は、中央セクションと、前記中央セクションを囲む側部セクションと、を備え、
前記第1チャンバの前記可撓性壁の前記中央セクションは、凹部を含む外形を有し、
前記第1チャンバに対応する前記チャンバキャップは、前記凹部内へと延在する突出部と、前記第1チャンバの前記可撓性壁の前記側部セクションを囲むスカートと、を含む、
履物品。
【請求項2】
直列の前記チャンバのうちの
前記第1チャンバは、直列の前記チャンバのうちの最後のチャンバに連結されていない、
請求項1に記載の履物品。
【請求項3】
前記チャンバの各々は、前記チャンバの一部を形成する可撓性壁を備え、前記可撓性壁は、前記チャンバ内の前記電気粘性流体の前記体積が増加するにつれて膨張するように構成されており、前記チャンバ内の前記電気粘性流体の前記体積が減少するにつれて収縮するように構成されている、
請求項1に記載の履物品。
【請求項4】
前記傾斜アジャスタは、前記伝達チャネルが格納され、前記チャンバの前記可撓性壁が延在する本体を備える、
請求項3に記載の履物品。
【請求項5】
前記チャンバのうちの少なくとも2つの各々について、
前記可撓性壁は、中央セクションと、前記中央セクションを囲む側部セクションと、を備え、
前記側部セクションは、前記チャンバの蛇腹形状を画定する少なくとも1つの折り目を備える、
請求項3に記載の履物品。
【請求項6】
前記チャンバのうちの1つの前記可撓性壁は、中央セクションと、前記中央セクションを囲む側部セクションと、を備え、
前記中央セクションは、凹部を含む外形を有する、
請求項3に記載の履物品。
【請求項7】
前記チャンバのうちの少なくとも2つの各々について、
前記可撓性壁は、中央セクションと、前記中央セクションを囲む側部セクションと、を備え、
前記中央セクションは、凹部を含む外形を有する、
請求項3に記載の履物品。
【請求項8】
前記チャンバキャップの各々は、前記支持プレートの前記底部の面に接触する丸い上面を有する、
請求項1に記載の履物品。
【請求項9】
前記チャンバキャップの各々について、前記丸い上面を形成するキャップ上部材料は、前記支持プレートの前記底部の前記面に対する摩擦係数を有し、前記摩擦係数は、前記チャンバキャップに対応する前記チャンバの上面を形成する材料の、前記支持プレートの前記底部の前記面に対する摩擦係数よりも小さい、
請求項8に記載の履物品。
【請求項10】
前記伝達チャネルは、前記チャンバ内の前記電気粘性流体の体積が変化するとき、前記伝達チャネル内の前記電気粘性流体の前記体積が略一定を保つように構成されている、
請求項1に記載の履物品。
【請求項11】
前記チャンバは、前記傾斜アジャスタ前足部セクションの内側上に配置される1つまたは複数の内側チャンバと、前記傾斜アジャスタ前足部セクションの外側上に配置される1つまたは複数の外側チャンバと、を備える、
請求項1に記載の履物品。
【請求項12】
前記内側チャンバよりも前記外側チャンバの数の方が多い、
請求項
11に記載の履物品。
【請求項13】
前記外側チャンバよりも前記内側チャンバの数の方が多い、
請求項
11に記載の履物品。
【請求項14】
前記内側チャンバは、前方内側チャンバと、中間内側チャンバと、後方内側チャンバと、を備え、
前記外側チャンバは、前方外側チャンバと、中間外側チャンバと、後方外側チャンバと、を備える、
請求項
11に記載の履物品。
【請求項15】
前記電界生成部分は、前記ソール構造の中足部および踵領域を通って延在する、
請求項1に記載の履物品。
【請求項16】
前記電界生成部分は、長さLと平均幅Wとを有し、
比L/Wは、少なくとも50である、
請求項1に記載の履物品。
【請求項17】
前記流量調節伝達チャネル以外の前記伝達チャネルは、電極を有しない、
請求項1に記載の履物品。
【請求項18】
前記傾斜アジャスタは、前記伝達チャネルが格納される本体を備え、
前記チャンバの各々は、前記チャンバが延在する前記本体の平面において丸みを帯びており、前記本体の前記平面において直径が15ミリメートル~30ミリメートルである、
請求項1に記載の履物品。
【請求項19】
履物品であって、
アッパーと、
前記アッパーに結合されたソール構造であって、前記ソール構造は、ベースと、傾斜アジャスタと、支持プレートと、を備える、ソール構造と、を備え、
前記ベースは、前記ソール構造の前足部分、前記ソール構造の中足部分、および前記ソール構造の踵部分に配置され、
前記支持プレートは、前記ソール構造の少なくとも前記前足部分に配置され、
前記傾斜アジャスタは、前記ソール構造の前記前足部分において、前記ベースと前記支持プレートとの間に配置される傾斜アジャスタ前足部セクションを備え、前記傾斜アジャスタ前足部セクションは、少なくとも3つのチャンバを備え、
前記チャンバの各々は、電気粘性流体を含み、前記チャンバ内の前記電気粘性流体の体積の変化に対応して外方への延在を変化させるように構成されており、
前記チャンバは、伝達チャネルによって直列に連結され、前記伝達チャネルの各々は、前記チャンバのうちの2つの間での流れを可能にし、
前記伝達チャネルは、流量調節伝達チャネルを備え、前記流量調節伝達チャネルは、前記流量調節伝達チャネルの電界生成部分の内部に沿って延在する、対向する第1電極および第2電極を備え、
前記流量調節伝達チャネル並びに前記対向する第1電極および第2電極は、前記傾斜アジャスタ前足部セクションの第1チャンバから前記ソール構造の踵領域まで後方に延び、前記傾斜アジャスタ前足部セクションの第2チャンバまで前方に戻る、
履物品。
【請求項20】
直列の前記チャンバのうちの第1チャンバは、直列の前記チャンバのうちの最後のチャンバに連結されていない、
請求項
19に記載の履物品。
【請求項21】
前記チャンバの各々は、前記チャンバの一部を形成する可撓性壁を備え、前記可撓性壁は、前記チャンバ内の前記電気粘性流体の前記体積が増加するにつれて膨張するように構成されており、前記チャンバ内の前記電気粘性流体の前記体積が減少するにつれて収縮するように構成されている、
請求項
19に記載の履物品。
【請求項22】
前記傾斜アジャスタは、前記伝達チャネルが格納され、前記チャンバの前記可撓性壁が延在する本体を備える、
請求項
21に記載の履物品。
【請求項23】
前記チャンバのうちの1つの前記可撓性壁は、中央セクションと、前記中央セクションを囲む側部セクションと、を備え、
前記側部セクションは、前記チャンバの蛇腹形状を画定する少なくとも1つの折り目を備える、
請求項
21に記載の履物品。
【請求項24】
前記チャンバのうちの1つの前記可撓性壁は、中央セクションと、前記中央セクションを囲む側部セクションと、を備え、
前記中央セクションは、凹部を含む外形を有する、
請求項
21に記載の履物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年8月31日に出願された「INCLINE ADJUSTER WITH MULTIPLE DISCRETE CHAMBERS(複数の別個のチャンバを有する傾斜アジャスタ)」と題する米国仮特許出願第62/552,551号に対する優先権を主張する。第62/552,551号は、その全体が参照によって組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
従来の履物品は、一般に、アッパーおよびソール構造を含む。アッパーは、足のカバーを提供し、ソール構造に対して足を安定して位置決めする。ソール構造は、アッパーの下の部分に固定され、着用者が立っているとき、歩いているとき、または走っているとき、足と地面の間に位置決めされるように構成されている。
【0003】
従来の履物は、多くの場合、靴を特定の条件または一連の条件に対して最適化させるという目的で設計される。例えば、テニスおよびバスケットボールなどのスポーツは、実質的に左右の移動を必要とする。多くの場合、そのようなスポーツ中に着用するために設計された靴は、横向きの移動中において、より大きな力を受ける領域に相当な補強部および/または支持部を含む。別の例として、ランニング用の靴は、多くの場合、着用者の直線的な前方移動のために設計される。条件が変わる中で、または複数の異なるタイプの動きをする中で、靴を着用していなければならない場合に、困難が生じ得る。
【発明の概要】
【0004】
この概要は、発明を実施するための形態で以下にさらに説明される概念の選択を簡潔な形で紹介するために提供されている。この概要は、本発明の鍵となる特徴または本質的な特徴を明らかにする意図はない。
【0005】
少なくともいくつかの実施形態において、ソール構造は、ベース、傾斜アジャスタ、および支持プレートを含み得る。ベースは、ソール構造の前足部分、ソール構造の中足部分、およびソール構造の踵部分に配置され得る。支持プレートは、ソール構造の少なくとも前足部分に配置され得る。傾斜アジャスタは、ソール構造の前足部分において、ベースと支持プレートとの間に配置される前足部セクションを含み得、少なくとも3つのチャンバを含み得る。チャンバの各々は、電気粘性流体を含み得、チャンバ内の電気粘性流体の体積の変化に対応して外方への延在を変化させるように構成され得る。チャンバは、伝達チャネルによって直列に連結され得、伝達チャネルの各々は、チャンバのうちの2つの間での流れを可能にする。伝達チャネルは、流量調節伝達チャネルの電界生成部分の内部に沿って延在する、対向する第1電極および第2電極を含む流量調節伝達チャネルを含み得る。
【0006】
いくつかの実施形態において、傾斜アジャスタは、本体と、本体から外方に延在する少なくとも3つの可変体積型のチャンバとを含み得る。チャンバの各々は、電気粘性流体を含み得、チャンバ内の電気粘性流体の体積の変化に対応して外方への延在を変化させるように構成され得る。チャンバは、伝達チャネルによって直列に連結され得、伝達チャネルの各々は、チャンバのうちの2つの間での流れを可能にする。伝達チャネルは、流量調節伝達チャネルを含み得る。流量調節伝達チャネルは、流量調節伝達チャネルの電界生成部分の内部に沿って延在する、対向する第1電極および第2電極を含み得る。電界生成部分は、長さLと平均幅Wとを有し得、比L/Wは、少なくとも50であり得る。
【0007】
いくつかの実施形態において、傾斜アジャスタを製作する方法は、上部側と、上部側に画定された複数の伝達チャネルの第1部分と、を含む第1構成要素を成形することを含み得る。伝達チャネルの第1部分のうちの1つは、露出した第1電極を含み得る。この方法は、底部側と、上部側と、底部側に画定された複数の伝達チャネルの第2部分と、を含む第2構成要素を成形することを含み得る。伝達チャネル第2部分のうちの1つは、露出した第2電極を含み得る。少なくとも3つのチャンバの各々の上部分は、第2構成要素の上部側から外方に延在し得る。この方法は、第1構成要素の上部側を第2構成要素の底部側に接合することと、内部体積を電気粘性流体で満たすことと、内部体積を封止することと、をさらに含み得る。
【0008】
さらなる実施形態を本明細書内に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
添付の図面に、いくつかの実施形態を限定としてではなく例として示しており、そこでは、同様の参照番号は同様の要素を指す。
【
図1】いくつかの実施形態による靴の内側側面図である。
【
図2B】前足部アウトソール要素を除去した、
図1の靴のソール構造の底面図である。
【
図2C】
図1の靴のソール構造の前足部アウトソール要素の底面図である。
【
図3】
図1の靴のソール構造の部分分解内側透視図である。
【
図4A】
図1の靴の傾斜アジャスタの拡大された後方外側上面斜視図である。
【
図4C】
図4Bに示す平面を矢印A-Aで切り取った断面図である。
【
図4D】
図4Bに示す平面を矢印B-Bで切り取った断面図である。
【
図5A】
図4Aの傾斜アジャスタの第1構成要素の第1層と、金属製の第1電極と、を示す。
【
図5C】第1層および取り付けられた第1電極の上に第2層を成形した後の、
図4Aの傾斜アジャスタの第1構成要素を示す。
【
図6A】
図4Aの傾斜アジャスタの第2構成要素の第1層と金属製の第2電極とを示す。
【
図6C】第1層および取り付けられた第2電極の上に第2層を成形した後の、
図4Aの傾斜アジャスタの第2構成要素を示す。
【
図8A】組み立て後かつER流体充填前の傾斜アジャスタの外側上面斜視図である。
【
図8B】組み立て後かつER流体充填前の傾斜アジャスタの内側底面斜視図である。
【
図9】
図4Bに示す平面を矢印C-Cで切り取った拡大断面図であり、
図4Aの傾斜アジャスタの伝達チャネルの一部分を示す。
【
図10】
図4Bに示す平面を矢印A-Aで切り取った上面後方内側斜視図であり、2つのチャンバキャップをさらに示す部分概略断面図である。
【
図11】
図1の靴の電気系統の構成要素を示すブロック図である。
【
図12A】最小傾斜状態から最大傾斜状態になっていくときの、
図1の靴の傾斜アジャスタの動作を示す部分概略断面図である。
【
図12B】最小傾斜状態から最大傾斜状態になっていくときの、
図1の靴の傾斜アジャスタの動作を示す部分概略断面図である。
【
図12C】最小傾斜状態から最大傾斜状態になっていくときの、
図1の靴の傾斜アジャスタの動作を示す部分概略断面図である。
【
図13A】最小傾斜状態から最大傾斜状態へ移行する間の様々な時間での足の状態、圧力差、電圧レベル、および傾斜角のグラフである。
【
図13B】最大傾斜状態から最小傾斜状態へ移行する間の様々な時間での足の状態、圧力差、電圧レベル、および傾斜角のグラフである。
【
図14A】傾斜アジャスタの構成要素を成形するプロセスにおける作業を模式的に示す。
【
図14B】傾斜アジャスタの構成要素を成形するプロセスにおける作業を模式的に示す。
【
図14C】別の実施形態による傾斜アジャスタを形成するための鋳型の上面図である。
【
図14D】別の実施形態による傾斜アジャスタを形成するための鋳型の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
様々なタイプのアクティビティにおいて、靴の着用者が走っているか、他のアクティビティに参加している間、靴または靴の一部の形状を変化させることは有利であり得る。多くのランニングの競技会において、例えば、選手は、「コーナー」としても公知の曲がっている部分を有するトラックの周りを走る。いくつかの場合によっては、200メートルまたは400メートルレースなどの短距離種目で、選手は、トラックのコーナーを全力のペースで走り得る。しかし、平坦なカーブを速いペースで走ることは、生体力学的に非効率であり、ぎこちない体の動きを要し得る。そうした影響を相殺するために、いくつかのランニングトラックのコーナーは傾斜している。この傾斜により、より効率的な体の移動が可能となり、通常、ランニングタイムがより短縮される。テストは、同様の利点を靴の形状を変更することによって達成できることを示した。特に、地面に対して傾斜している中底を有する靴を履いて平坦なトラックのコーナーを走ることで、傾斜していない中底を有する靴を履いて傾斜の付いたコーナーを走ることの利益を模倣することができる。しかし、傾斜している中底は、ランニングトラックの直線部分において不利となる。コーナーを走る場合に傾斜している中底を提供することができ、直線トラックセクションを走る場合に傾斜を低減または解消することができる履物は、有意な利点をもたらし得る。
【0011】
いくつかの実施形態による履物において、電気粘性(ER)流体は、靴の1つまたは複数の部分の形状を変化させるのに用いられる。ER流体は、通常、非常に小さな粒子が懸濁している非導電性オイルまたは他の流体を備える。いくつかのタイプのER流体において、粒子は、5ミクロン以下の直径を有し得、ポリスチレン、または双極性分子を有する別のポリマーから形成され得る。ER流体全体に電界が課されると、流体の粘度は、その電界の強度が増加するにつれて高まる。以下により詳細に記載するように、この効果は、流体の伝達を制御し、履物の構成要素の形状を修正するのに用られ得る。トラックシューズの実施形態を初めに説明するが、他の実施形態においては、他のスポーツまたはアクティビティ向けに意図された履物を含む。
【0012】
「靴(シューズ)」および「履物品」は、人間の足に着用されるように意図された物品を指すために、本明細書中で互いに互換的に用いられる。靴は、着用者の足全体を包んでもよく、または包まなくてもよい。例えば、靴は、着用している足の大部分を露出するサンダル状のアッパーを含み得る。靴の要素は、その靴を着用している人間の足の領域および/または解剖学的構造に基づいて、かつ着用している足に靴の内部が概ね整合し、そうでなければ着用している足に適切にサイズ決めされていると仮定することによって、説明することができる。足の前足部領域は、中足骨の前端および本体部分、ならびに指節骨を含む。靴の前足部要素は、靴が着用されたときに、着用者の前足部(またはその一部)の下に、上に、外側および/もしくは内側に、かつ/または手前に配置される1つもしくは複数の部分を有する要素である。足の中足部領域は、立方骨、舟状骨および楔状骨、ならびに中足骨の付け根を含む。靴の中足部要素は、靴が着用されたときに、着用者の中足部(またはその一部)の下に、上に、かつ/または外側および/もしくは内側に配置される1つまたは複数の部分を有する要素である。足の踵領域は、距骨および踵骨を含む。靴の踵要素は、靴が着用されたときに、着用者の踵(またはその一部)の下に、かつ/または外側および/もしくは内側に、かつ/または後ろに配置される1つまたは複数の部分を有する要素である。前足部領域は、中足部領域と重なり合ってもよく、中足部領域と踵領域も同様である。
【0013】
以下の説明および図面の全体を通じて、同様の要素は、共通の番号および異なる付加文字(例えば、外側チャンバ35a、35b、および35c)を用いて識別されることがある。このような方式で識別された要素はまた、番号のみを用いて集合的(例えば、外側チャンバ35(lateral chambers 35))または包括的(例えば、外側チャンバ35(a lateral chamber 35))に識別され得る。
【0014】
図1は、いくつかの実施形態による、トラックシューズの靴10の内側側面図である。靴10の外側は、同様の構成および外観を有するが、着用者の足の外側に対応するように構成されている。靴10は右足の着用向けに構成されており、靴10の鏡像でありかつ左足の着用向けに構成されている靴(図示せず)を含む、一足のうちの片方である。しかし、以下により詳細に説明するように、靴10およびそれに対応する左靴は、所与の一連の条件下で、それらの形状を変更するように様々な方式で構成され得る。
【0015】
靴10は、ソール構造12に取り付けられたアッパー11を含む。アッパー11は、任意の様々なタイプまたは材料から形成され、任意の様々な異なる構造を有し得る。いくつかの実施形態において、例えば、アッパー11は、単一ユニットとして編まれてもよく、他のタイプの裏地のブーティを含まなくてもよい。いくつかの実施形態において、アッパー11は、アッパー11の底縁を縫って足受けの内部空間を包むことにより、スリップラスティング(slip lasting)されてもよい。他の実施形態において、アッパー11は、ストローベルまたは何らかの他の方式でラスティングされてもよい。電池組立体13は、アッパー11の踵の後ろ領域に配置され、コントローラに電力を提供する電池を含む。コントローラは、
図1には見えないが、他の図面に関連して以下に記載する。
【0016】
ソール構造12は、中底14、アウトソール15、および傾斜アジャスタ16を含む。傾斜アジャスタ16は、アウトソール15と中底14との間に位置する。以下により詳細に説明するように、傾斜アジャスタ16は、中底14の内側前足部分を支持する内側流体チャンバのみならず、中底14の外側前足部分を支持する外側流体チャンバを含む。ER流体は、それらのチャンバの間で、チャンバの内部と流体連通している伝達チャネルを通って伝達され得る。そのような流体の伝達により、一方のチャンバの高さに対する他方のチャンバ高さが高くなり得、チャンバの上に配置される中底14の一部分に傾斜をもたらす。チャネルのうちの1つを通るER流体のさらなる流れが中断されると、ER流体の流れの再開が可能になるまで、傾斜は維持される。
【0017】
アウトソール15は、ソール構造12の、地面に接触する部分を形成する。靴10の実施形態において、アウトソール15は、前方アウトソールセクション17および後方アウトソールセクション18を含む。前方アウトソールセクション17と後方アウトソールセクション18との関係は、
図2Aのソール構造12の底面図と、
図2Bの、前足部アウトソールセクション17を除去したソール構造12の底面図と、を比較することによって見て取ることができる。
図2Cは、ソール構造12から除去された前足部アウトソールセクション17の底面図である。
図2Aで分かるように、前方アウトソールセクション17は、ソール構造12の前足部領域および中央の中足部領域を通って延在し、狭小な端部19に向かって先細りになる。端部19は、踵領域に配置されるジョイント20で後方アウトソールセクション18に取り付けられる。後方アウトソールセクション18は、中足部領域の上に延在する。前足部アウトソールセクション17は、ジョイントを通過する20長手軸L1の周りを枢動する。特に、以下に説明するように、前足部アウトソールセクション17は、中底14の前足部分が前足部アウトソールセクション17に対して傾斜しているときに、軸L1の周りを回転する。
【0018】
アウトソール15は、ポリマーまたはポリマー複合体で形成され得、地面に接触する面にゴムおよび/または他の耐摩耗材料を含み得る。トラクション要素21は、アウトソール15の底部に成形されるか、そうでなければその中に形成され得る。前足部アウトソールセクション17は、1つまたは複数の除去可能なスパイク要素22を保持するリセプタクルも含み得る。他の実施形態において、アウトソール15は、異なる構成を有し得る。
【0019】
中底14は、ミッドソール25を含む。靴10の実施形態において、ミッドソール25は、人間の足の外形にほぼ対応するサイズおよび形状を有するものであり、中底14の全長および全幅に延在する単一ピースであり、輪郭付けられた上面26を含む(
図3に示す)。上面26の輪郭は、人間の足の足底領域の形状に概ね対応するように、かつアーチ支持部を提供するように構成されている。ミッドソール25は、エチレン酢酸ビニル(EVA)および/または1つもしくは複数の他の独立気泡ポリマー発泡材料から形成され得る。後方アウトソールセクション18の内側および外側を上方に延在させると、着用者の足に、さらなる内側および外側の支持も提供し得る。他の実施形態において、中底は異なる構成を有し得る。例えば、ミッドソールは、中底の全体をカバーしなくてもよく、または、まったく存在しなくてもよく、かつ/または、中底は他の構成要素を含んでもよい。
【0020】
図3は、ソール構造12の部分分解内側透視図である。底部支持プレート29は、靴10の足底領域に配置される。靴10の実施形態において、底部支持プレート29は、前方アウトソールセクション17の上面30に取り付けられる。比較的硬いポリマーまたはポリマー複合体から形成され得る底部支持プレート29は、前方アウトソールセクション17の前足部領域を強化させ、傾斜アジャスタ16に安定したベースを提供することに役立つ。前方前足部感圧抵抗器(FSR)32a、中間前足部FSR32b、および後方前足部FSR32cは、前足部領域の内側上の底部支持プレート29の上面33に取り付けられる。同様に、前方前足部分FSR31a、中間前足部分FSR31bおよび後方前足部分FSR31cは、前足部分領域の外側上の上面33に取り付けられる。以下に説明するように、FSR31および32は、傾斜アジャスタ16のチャンバ内の圧力を判定することに役立つ出力を提供する。
【0021】
傾斜アジャスタ16は、下部支持プレート29の上面33と、後方アウトソールセクション18の上面43と、に取り付けられる。傾斜アジャスタ16の外側チャンバ35a、35b、および35cは、外側FSR31a、31b、31cの上にそれぞれ位置決めされる。傾斜アジャスタ16の内側チャンバ36a、36b、および36cは、内側FSR32a、32b、および32cの上にそれぞれ位置決めされる。チャンバキャップ37a、37b、および37cは、チャンバ35a、35b、および35cの上にそれぞれ位置決めされる。チャンバキャップ38a、38b、および38cは、チャンバ36a、36b、および36cの上にそれぞれ位置決めされる。
図10と関連付けてさらに詳述するとおり、チャンバキャップ37および38は、チャンバ35および36と上部支持プレート41の下面との間のインタフェースを提供する。上部支持プレート41も、靴10の足底領域に配置され、傾斜アジャスタ16上に位置決めされる。靴10の実施形態において、上部支持プレート41は、底部支持プレート29と概ね整列する。比較的硬いポリマーまたはポリマー複合体からも形成され得る上部支持プレート41は、傾斜アジャスタ16が押され得、かつ中底14の前足部領域を支持する、安定した比較的変形不能な領域を提供する。
【0022】
ミッドソール25の下面の前足部領域部分は、上部支持プレート41の上面42に取り付けられる。踵および中足部領域でミッドソール25の下面の部分は、ミッドソール25の踵および中足部領域内の上面傾斜アジャスタ16に取り付けられる。前方アウトソールセクション17の端部19は、セクション18の前縁の最後方位置44の後ろで、後方アウトソールセクション18に、ジョイント20を形成するように取り付けられる。いくつかの実施形態において、端部19は、位置14で、または位置14の近傍で、セクション18に形成されたスロットに摺動するタブであり得、かつ/または上面43と傾斜アジャスタ16の下面との間に挟まれ得る。
【0023】
図3には、コントローラ47のDC-高電圧-DCコンバータ45および印刷回路基板(PCB)46も示される。コンバータ45は、低電圧のDC電気信号を傾斜アジャスタ16内の電極に印加される高電圧(例えば、5000V)のDC信号に変換する。PCB46は、1つまたは複数のプロセッサ、メモリ、および他の構成要素を含み、傾斜アジャスタ16を、コンバータ45を通して制御するように構成されている。PCB46はまた、FSR31および32から入力を受信し、電池ユニット13から電力を受信する。PCB46およびコンバータ45は、中足部領域48で、前方アウトソールセクション17の上面に取り付けられ得る。
【0024】
図4Aは、傾斜アジャスタ16の拡大された後方外側上面斜視図である。
図4Bは、傾斜アジャスタ16の拡大上面図である。
図4Cは、
図4Bに示す平面を矢印A-Aで切り取った断面図である。
図4Dは、
図4Bに示す平面を矢印B-Bで切り取った断面図である。
【0025】
傾斜アジャスタ16は、本体51を含む。外側チャンバ35bの一部分は、本体51の上部51の外側から上方に延在する可撓性輪郭壁53bによって境されている。輪郭壁53bは、外側部セクション73b、内側側部セクション75b、および中央セクション71bを含む。外側チャンバ35bの別の一部分は、本体65内の対応領域55bによって境されている(
図4Cおよび
図4D)。外側チャンバ35aおよび35cは、チャンバ35bと同様の構造を各々有し、その構造は、本体51の上部52の外側から上方に延在するそれぞれの可撓性輪郭壁53aおよび53cと、領域55bと同様の本体51内の対応領域によって境されたそれぞれの部分と、を含む。壁53aおよび53cの各々は、それぞれの外側部セクション73aおよび73Cと、それぞれの内側部セクション75aおよび75cと、それぞれ中央セクション71aおよび71cと、を含む。
【0026】
内側チャンバ36cの一部分が、上側52の内側から上方に延在する可撓性輪郭壁54cによって境されている。輪郭壁54cは、側部セクション74cと中央セクション72cとを含む。内側チャンバ36cの別の部分が、本体51内の対応領域56cによって境されている。内側チャンバ36aおよび36bは、チャンバ36cと同様の構造を各々有し、その構造は、本体51の上部52の内側から上方に延在するそれぞれの可撓性輪郭壁54aおよび54bと、領域56cと同様の本体51内の対応領域によって境されたそれぞれの部分と、を含む。壁54aおよび54bの各々は、それぞれの側部セクション74aおよび74bと、それぞれの中央部72aおよび72bとを含む。
【0027】
図4A~
図4Dのいくつかの実施形態において、チャンバ35および36は、トラックのコーナーを周るときに歩行サイクルの様々な箇所を通過する間に生じる高い衝撃力に対応する位置にある。チャンバ36aは、完成した靴10において、着用者の母指(親指)に概ね対応する位置にある。チャンバ36bは、着用者の第1中足骨頭(母指球)に対応する位置にある。チャンバ36cは、着用者の第1中足骨基部に対応する位置にある。チャンバ35aは、着用者の第5末節骨(小指)に対応する位置にある。チャンバ35bは、着用者の第5中足骨頭に対応する位置にある。チャンバ35cは、着用者の第5中足骨基部に対応する位置にある。
【0028】
いくつかの実施形態において、チャンバは、チャンバが延在する本体の平面において円形であり、15ミリメートル~30ミリメートルの直径を有する。いくつかの実施形態において、チャンバ36aは、20ミリメートルの直径を有し、チャンバ36b、36cおよび35a~35cの各々は25ミリメートルの直径を有する。チャンバのサイズを最小化することにより、履物10が実際の使用中に地面に衝突するときのチャンバの変形が最小化され、それによって制御システム内のノイズが最小化される可能性がある。
【0029】
図4Bから分かるように、傾斜アジャスタ16のチャンバ35a、35b、35c、36c、36b、および36aは、伝達チャネルによって直列に連結され、伝達チャネルの各々は、異なる一対のチャンバを連結している。外側チャンバ35aは、伝達チャネル61を通って外側チャンバ35bと流体連通しており、伝達チャネル61は、本体51の一部分に画定され、チャンバ35aと35bとの間に延在する。
図4A~
図4Dの実施形態における傾斜アジャスタ16は不透明であることから、伝達チャネル61および他の伝達チャネルの位置は、
図4Bに小さな破線で示されている。外側チャンバ35bは、伝達チャネル62を通って外側チャンバ35cと流体連通しており、伝達チャネル62は、本体51の一部分に画定され、チャンバ35bと35cとの間に延在する。内側チャンバ36aは、伝達チャネル65を通って内側チャンバ36bと流体連通しており、伝達チャネル65は、本体51の一部分に画定され、チャンバ36aと36bとの間に延在する。内側チャンバ36bは、伝達チャネル64を通って内側チャンバ36cと流体連通しており、伝達チャネル64は、本体51の一部分に画定され、チャンバ36bと36cとの間に延在する。内側チャンバ36cは、伝達チャネル63を介して外側チャンバ35cと流体連通しており、伝達チャネル63は、チャンバ36cから本体31の踵領域まで後方に延在し、その後、前方に延在して外側チャンバ35cに戻る。
【0030】
図4Bからわかるように、伝達チャネルは、チャンバ36cと35bとの間で直接延在していない。したがって、
図4Cでは、伝達チャネル部分が視認されない。しかし、伝達チャネル62および伝達チャネル63の一部分が、
図4Dで確認できる。伝達チャネル63の残りのみならず、伝達チャネル61、64、および65は、チャンバ連結および本体51との垂直位置が、
図4Dに示す伝達チャネルと同様である。さらに、全ての伝達チャネルの幅および高さは、少なくともいくつかの実施形態で概して一定である。
【0031】
ER流体69は、チャンバ35およびチャンバ36と、伝達チャネル61~65を満たしている。いくつかの実施形態において用いられ得るER流体の一例として、ERF Produktion Wurzberg GmbHから「RheOil4.0」という名前で販売されているものが挙げられ得る。外側チャンバ35の内部体積は、外側チャンバ35内へのER流体69の流入、または外側チャンバ35からのER流体69の流出に伴って変化し得る。壁53によって形成された各チャンバ35の部分は、ER流体69が該チャンバ35内に流入すると膨張するように構成されており、それによって該壁53の中央セクション71は、本体51から上方に変位する。内側チャンバ36の内部体積は、内側チャンバ36内へのER流体69の流入、または内側チャンバ36内からのER流体69の流出に伴って同様に変化し得る。壁54によって形成された各チャンバ36の部分は、ER流体69が該チャンバ36内に流入すると膨張するように構成されており、それによって該壁54の中央セクション72は、本体51から上方に変位する。
【0032】
一対の対向する電極は、底部および上部側で伝達チャネル63内に位置決めされており、
図4Bに大きな点の破線で示されている伝達チャネル63の電界生成部分77に沿って延在する。別個リードは、底部電極および上部電極とそれぞれ電気的に接触しており、コンバータ45に連結されている。伝達チャネル63は、チャネル63内の電極に対する表面積を増加させるように蛇行形状を有して、チャネル63内のER流体69に電界を生成する。いくつかの実施形態において、伝達チャネル63は、1ミリメートル(mm)の電極間の最大高さh、2mmの平均幅(w)、およびチャンバ35cと36cとの間で流れ方向沿いに少なくとも250mmの長さを有し得る。いくつかの実施形態において、伝達チャネル63は、1ミリメートル(mm)の電極間の最大高さh、4mmの平均幅(w)、およびチャンバ35cと36cとの間で流れ方向沿いに少なくとも250mmの長さを有し得る。いくつかの実施形態において、伝達チャネル63の長さは、270mmを超え得る。
【0033】
いくつかの実施形態において、伝達チャネルの高さは、実際には、少なくとも0.250mm~3.3mm以下の範囲に制限され得る。柔軟な材料で構成されている傾斜アジャスタは、靴が使用されている間、屈曲し得る。伝達チャネルにわたって屈曲させることによって、屈曲点における高さが局所的に減少する。十分な許容量に至っていない場合、対応する電界強度の増加は、ER流体の最大絶縁強度を上回り得、電界の崩壊を招き得る。極端に言うと、電極は実際に接触するように近接し得て、電界の崩壊という結果をもたらす。
【0034】
ER流体の粘度は、印加される電界強度に伴って増加する。その効果は非直線的であり、最適な電界強度は、ミリメートルあたり3~6キロボルト(kV/mm)の範囲である。3~5Vの電池をブーストするために用いられる高電圧DC-DCコンバータは、物理的なサイズおよび安全性の考慮によって、2W未満に制限され得るか、10kV以下の最大出力電圧に制限され得る。電界強度を所望の範囲内に維持するために、伝達チャネルの高さは、いくつかの実施形態において、最大約3.3mm(10kV/3kV/mm)に制限され得る。
【0035】
伝達チャネルの幅は、実際には、少なくとも0.5mm~4mm以下の範囲に制限され得る。チャネルの最大幅は、チャンバの間の物理的な空間によって制限され得る。また、ER流体の等価直列抵抗もチャネル幅が広がるにつれて減少し、それによって電力消費は増加するであろう。最低M7(US)までの靴のサイズの範囲において、実質的な幅は4mm未満に制限され得る。
【0036】
伝達チャネル63の電界生成部分77内の対向する電極は、通電によって電界生成部分77内のER流体69の粘度を高め、それによって、チャネル63を通るER流体69の流れを減速または停止し得る。伝達チャネル63を通る流れが可能になると、内側チャンバ36の中央セクション72に対する下向きの力は、ER流体69をチャンバ36から伝達チャネル63を通ってチャンバ35内に押し込む。ER流体69がチャンバ36からチャンバ35に伝達されるにつれて、中央セクション72は、本体51に向かって下方に移動し、中央セクション71は、上方に移動して本体51から遠ざかる。逆に、(伝達チャネル63を通る流れが可能になったときに)中央セクション71に対する下向きの力は、ER流体69を外側チャンバ35から伝達チャネル63を通って内側チャンバ36に押し込む。ER流体69がチャンバ35からチャンバ36に伝達されるにつれて、中央セクション71は、本体51に向かって下方に移動し、中央セクション72は、上方に移動して本体51から遠ざかる。
図12A~
図12Cと関連付けて以下にさらに詳述するように、中央セクション71および中央セクション72の相対的な高さの変化により、底部支持プレート29に対する上部支持プレート41の傾斜角度が変化する。
【0037】
伝達チャネルの所望の長さは、使用時に傾斜アジャスタのチャンバの間の最大圧力差の関数であり得る。チャネルが長くなると、耐えられ得る圧力差は大きくなる。最適なチャネルの長さは、用途および構成に依存し得、したがって、様々な実施形態によって異なり得る。長いチャネルによる不利益は、電界が除去されたときの流体の流れにかかる制限が大きいことである。いくつかの実施形態において、チャネルの長さの実質的な制限は、25mm~350mmの範囲内である。少なくともいくつかの実施形態において、電界生成部分77は、少なくともL/w比50を有し得る。ここで、Lは電界生成部分77の長さであり、wは電界生成部分77の平均幅である。他の実施形態における伝達チャネル電界生成部分のL/W比の例示的最小値は、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、および170を含む。いくつかの実施形態において、電界生成伝達チャネル部分でER流体と接触する各対向する電極の最小面積は、平均チャネル幅4mmの伝達チャネルの場合、800平方ミリメートルであり得る。以下にさらに詳述するように、電極の装着特徴部は、チャネルの壁内に封入され得るため、ER流体と接触し得ない。そのため、電極の総面積は、露出している機能的面積を上回り得る。
【0038】
図4Cおよび
図4Dに示すように、外側部セクション73bおよび73cは、上部側52から上方に延在して、内側部セクション75bおよび75cに結合し、内側部セクション75bおよび75cは、中央セクション71bおよび71cに結合される。チャンバ35aのセクション73a、75a、および71aは、同様の構造を有する。セクション75および71は、外側チャンバ35の外形に凹部を形成する。この凹部により、システム内で必要とされるER流体69の総体積を低減することができる。
図4A~
図4Dの実施形態において、外側チャンバ35のみが外部凹部を含む。他の実施形態において、いずれかまたは全てのチャンバが凹部を含み得るか、いずれのチャンバも凹部を含まない(例えば、一部または全ての外側チャンバおよび/または一部または全ての内側チャンバが外部凹部を含み得るか、いずれの外側チャンバおよび/または内側チャンバも外部凹部を含まない)。
【0039】
いくつかの実施形態において、傾斜アジャスタチャンバは、蛇腹形状を有し得る。例えば、
図4Cから分かるように、外側部セクション73bは、外側チャンバ35bの蛇腹形状を画定する折り目を有する。壁54cの側部セクション74cも、内側チャンバ36cの蛇腹形状を画定する折り目を有する。
図4A~
図4Dのいくつかの実施形態において、外側チャンバの外側部は、内側チャンバの側部よりも多くの折り目を有する。いくつかの実施形態において、両側のチャンバが同じ数の折り目を有し得る反面、さらに他の実施形態においては、内側チャンバが外側チャンバよりも多くの折り目を有し得る。チャンバの蛇腹形状により、チャンバの膨張および収縮中において湾曲が増しやすくなる。これは、システム内で必要とされるER流体の総量を減らすことに加え、摩耗を最小限に抑えることにも役立つ。いくつかの実施形態において、一部または全てのチャンバが蛇腹形状を有していなくてもよい。
【0040】
いくつかの実施形態において、傾斜アジャスタ16が、底部構成要素および上部構成要素を別々に形成することによって製作され得る。底部構成要素は、チャンバ35の領域55と、チャンバ36の領域56と、伝達チャネル61~65の底部分と、底部電極と、を含み得る。上部構成要素は、チャンバ35の壁53と、チャンバ36の壁54と、伝達チャネル61~65の上部分と、上部電極と、を含み得る。底部構成要素の上部側は、いったん形成されると、上部構成要素の底部側に接合され得る。その後、チャンバ35、チャンバ36、および伝達チャネル60~65の内部体積を含む内部体積は、ER流体69で満たされ得、内部体積が封止され得る。
【0041】
図5A~
図5Cは、傾斜アジャスタ16の底部構成要素を形成するステップを示す。まず、
図5Aに示すように、第1層101が射出成形される。層101は、底部構成要素の底部層を形成するであろう。層101の境界線は、延在部103および104を除き、本体51の境界線の形状と同じ形状を有する。延在部103および104は、傾斜アジャスタ16がER流体69で満たされ得る湯口を有するネックの部分を形成するであろう。充填後、それらの湯口は封止され得、ネックは除去され得る。電気リードを露出させる空洞の一部を形成する開口78.1を除き、層101は切れ目がない。層101の上面105は、隆起部分106を含む。隆起部分106には、底部電極107に対応し、底部電極107用の安着部(seat)を画定する形状が備えられている。
【0042】
図5Aにも示されている底部電極107は、切れ目のない金属シートである。いくつかの実施形態において、底部電極107は、厚さ.05mm、1010ニッケルめっきの冷間圧延鋼から形成され得る。電極107は、電気リード79を取り付けるためのパッド108を含む(
図5B)。電極107の縁は、両方の縁に沿って形成された一連のスロット109を含む。スロット109の例示的な寸法は、.5mm×1mmである。以下にさらに詳述するように、電極107を所定の位置に固定するために、底部構成要素の成形中に材料がスロット109に流れ込み得る。
【0043】
図5Bでは、電極107が隆起部分106に取り付けられている。いくつかの実施形態において、感圧接着剤(PSA)が電極107の底面および/または隆起部分106の上面に塗布されて、その後の成形作業(以下に記載)中において電極107を所定の位置に保持し得る。リード79は、半田付け、導電性エポキシの使用、または他の技法によって所定の位置に置かれ、パッド108に取り付けられ得る。
【0044】
電極107およびリード79の取り付け後、第2層112は、層101上にオーバーモールドされる。得られた傾斜アジャスタ16の底部構成要素115が、
図5Cに示されている。チャンバ35の領域55、およびチャンバ36の領域56は、底部構成要素115の上面116に画定されている。伝達チャネル61、62、63、64、65の底部分61.1、62.1、63.1、64.1、65.1は、上面116にそれぞれ同様に形成される。電極107の一部分は、底部分63.1内で露出している。層101の開口78.1と整列する層112の開口78.2は、電気リード79と、上部電極用の同様の電気リード(以下に説明する)と、を格納する空洞の追加部分を形成するであろう。層112は、層101の延在部103および104を被せる延在部113および114も含む。延在部113内のチャネル129は、外側湯口の一部分を形成するであろう。延在部114内のチャネル110は、内側湯口の一部分を形成するであろう。上面116からリード53の上に延在する隆起領域119は、傾斜アジャスタ16の上部構成要素の底面の凹部に嵌合するであろう。上面116に凹部120が形成されて、下記のリードに対応する対応隆起領域を上部構成要素の底面で受容する。
【0045】
いくつかの実施形態において、層101は、熱可塑性ポリウレタン(TPU)から射出成形され得る。層112は、(電極107およびリード79が取り付けられた)層101上にオーバーモールドされ得る。層112は、層101を形成するために使用されたものと同じタイプのTPUから形成され得る。
【0046】
図6A~
図6Cは、傾斜アジャスタ16の上部構成要素を形成するステップを示す。まず、
図6Aに示すように、第1層151は射出成形される。層151は、上部構成要素の上部層を形成するであろう。層151の境界線は、延在部153および154を除き、本体51の境界線の形状と同じ形状を有する。層151は切れ目がない。層151の上面155は、隆起部分156を含む。隆起部分156には、上部電極157に対応し、上部電極157用の安着部を画定する形状が備えられている。
図6Aからも分かるように、層151は、反対の壁53および54を含み、反対の壁53および54は、その縁周囲で層151の残りの部分に結合されている。いくつかの実施形態において、壁53および54は、層151の他の部分と同時に射出成形される。
図14C~
図16Fと関連付けて以下に説明する実施形態など、他の実施形態において、チャンバの壁は別々に成形され得、その後、層151の残り部分がそれらの壁に成形され得る。
【0047】
図6Aにおいて、層151は、
図4Aの傾斜アジャスタ16の向きから反転している。特に、層151の底部側が
図6Aで視認できる。壁53および54を囲む層151の上部側の部分は、
図6Aでは見えない部分であるが、完成した傾斜アジャスタ16における本体51の上部52を形成するであろう。延在部153および154は、傾斜アジャスタ16がER流体69で満たされ得る湯口を有するネックの部分を形成するであろう。
【0048】
上部電極157も
図6Aに示されている。電極157も切れ目のない金属シートであり、電極107を形成するために使用された同じ材料から形成され得る。電極157は、電気リードを取り付けるためのパッド158を含む。電極157の縁は、両方の縁に沿って形成された一連のスロット159を含む。スロット159の例示的な寸法は、電極107のスロット109の寸法と同じであり得る。
【0049】
電極157は、
図6Bで隆起部分156に取り付けられている。いくつかの実施形態において、PSAが電極157の上面および/または隆起部分156の底面に塗布され、その後の成形作業(以下に記載)中において電極157を所定の位置に保持し得る。リード80は、半田付け、導電性エポキシの使用、または他の技法によって所定の位置に置かれ、パッド158に取り付けられ得る。
【0050】
電極157およびリード80の取り付け後、第2層162は、層151上にオーバーモールドされる。得られた傾斜アジャスタ16の上部構成要素165が、
図6Cに示されている。壁53内のチャンバ35の内部領域への開口、および壁54内のチャンバ36の内部領域への開口は、上部構成要素165の底面166に画定されている。伝達チャネル61、62、63、64、65の上部分61.2、62.2、63.2、64.2、および65.2は、底面166にもそれぞれ形成されている。電極157の一部分は、上部分63.2内で露出している。面166の凹部78.3は、開口78.1および78.1と整列して、リード79および80を露出させる空洞を形成する。層162は、層151の延在部153および154を被せる延在部163および164も含む。延在部163内のチャネル179は、外側湯口の一部分を形成するであろう。延在部164内のチャネル160は、内側湯口の一部分を形成するであろう。底面166からリード80の上に延在する隆起領域169は、底部構成要素115の上面116の凹部120内に嵌合するであろう。底面166には、底部構成要素115の上面116にある隆起領域119を受容する凹部170が形成されている。
【0051】
いくつかの実施形態において、層151は、TPUから射出成形され得る。層162は、追加TPUの射出成形によって(電極157およびリード80が取り付けられた)層151上にオーバーモールドされ得る。層151および162は、層101および112を形成するために使用されたものと同じタイプのTPUから形成され得るか、異なるタイプのTPUから形成され得る。
【0052】
図7は、底部構成要素115および上部構成要素116が製作された後の傾斜アジャスタ16の組立体を示す。上部構成要素165の底面166は、底部構成要素115の上面116と接触するように配置される。構成要素115および165は、底部分61.1~65.1が上部分61.2~65.2とそれぞれ整列してそれぞれ伝達チャネル61~65を形成し、領域55a~55cが、壁53a~53cで境された空洞内部への開口とそれぞれ整列して、外側チャンバ35a~35cをそれぞれ形成し、領域56a~56cが、壁54a~54cで境された空洞内部への開口とそれぞれ整列して、内側チャンバ36a~36cをそれぞれ形成し、隆起領域119が凹部170内に配置され、隆起領域169が凹部120内に配置されるように組み立てられる。上部構成要素115の底面166は、RF溶接によって底部構成要素165の上面116に接合され得る。いくつかの実施形態において、表面166および116は、接合剤の塗布を用いて接合され得る。
【0053】
図8Aは、構成要素115および165とを接合した後、ただし、傾斜アジャスタ16をER流体69で満たす前の、傾斜アジャスタ16の外側上面斜視図である。説明のために、層101、112、151、および162の位置が、
図8Aの拡大差し込み部分に示されている。しかし、少なくともいくつかの実施形態(例えば、すべての層に同じ色の同じ材料が使用されている場合)においては、個々の層が傾斜アジャスタ16内で区別できないことがある。
【0054】
ネック193は、層101および112の各々の延在部103および113のみならず、層151および162の各々の延在部153および163によって形成されている。チャネル129および179によって形成された湯口191は、外側チャンバ35a内への通路となる。ネック194は、層101および112の各々の延在部104および114のみならず、層151および162の各々の延在部154および164によって形成されている。チャネル110および160によって形成された湯口192は、内側チャンバ36a内への通路となる。
図8Aにおいて、湯口191および192が破線で示されているが、簡潔性のために、伝達チャネルの位置および傾斜アジャスタ116の他の内部構造は示されていない。その後、ER流体69は、湯口191または192の一方を通って、湯口191または192の他方から流出するまで注入され得る。いくつかの実施形態において、米国特許出願公開第2017/0150785号(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているような脱気手順が用いられ得る。いくつかの実施形態において、「Degassing Electrorheological Fluid(電気粘性流体の脱気)」(本出願と同じ日に出願され、代理人整理番号215127.02298/170259US04を有する)と題する米国仮特許出願(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているような脱気手順が用いられ得る。充填および脱気の後、湯口191および192は、(例えば、湯口191および192にわたるRF溶接によって)封止され得、それにより、チャンバ35a~35c、チャンバ36a~36c、および伝達チャネル61~65の内部体積によって形成された内部体積を封止し得る。その後、
図4Bに示す傾斜アジャスタ16の前足部分の外周形状を実現するために、シール(seal)の前方のネック193および194の部分が切り取られ得る。
【0055】
図8Bは、組み立て後かつER流体充填前の傾斜アジャスタ16の内側底面斜視図である。底部側の空洞78は、凹部78.3(層162、
図6C)と開口78.2(層112、
図5C)および78.1(層101、
図5A)との整列によって形成されている。リード線79および80は、コンバータ45に連結するために空洞78内に露出している。
【0056】
図9は、
図4Bに示す平面を矢印C-Cで切り取った拡大断面図である。
図9は、電界生成部分77内に配置された伝達チャネル63の一部分のみならず、埋め込み電極107および157のさらなる詳細を示す。層101、112、151および162の位置は破線で示されている。底部電極107は、電界生成部分77内の伝達チャネル63の底部をまたぐ。上部電極157は、電界生成部分77内の伝達チャネル63の上部をまたぐ。電極107および157の側縁は、伝達チャネル63の側部を越えて、本体51の材料内にまで延在する。
図9から分かるように、本体51の材料は、スロット109および159へと流入し、スロット109および159の内部で固められ、電極107および157を所定の位置に固定する。いくつかの実施形態において、伝達チャネル63は、1ミリメートル(mm)の電極間の最大高さhと、2mmの平均幅(w)と、を有し得る。伝達チャネル61、62、64、および65の最大高さh(上部壁と底部壁との間)および平均幅wは、同じ寸法を有し得る。
【0057】
図10は、
図4Bに示す平面を矢印A-Aで切り取った上面後方内側斜視図であり、部分概略断面図である。チャンバキャップ38cは、チャンバ36c上の所定位置にあり、チャンバキャップ37bは、チャンバ35b上の所定位置にある。チャンバキャップ38cは、壁54cの上部外部でディスク状部分を受容する凹部98cを含む。チャンバキャップ37bは、チャンバ35bの上部の外部凹部内に収まる突出部97bと、外側側壁73bを囲むスカート95bと、を含む。
【0058】
チャンバキャップ38aおよび38bの各々は、チャンバキャップ38cと同様の構造を有する。チャンバキャップ37aおよび37cの各々は、チャンバキャップ37bと同様の構造を有する。便宜上、
図10からは他のチャンバキャップが省略されているが、組み立てられた靴10では、チャンバキャップ38aおよび38bが、チャンバキャップ38cおよびチャンバ36cの場合と同様の方式でチャンバ36aおよび36b上にそれぞれ位置決めされ、チャンバキャップ35aおよび35cが、チャンバキャップ37bおよびチャンバ35bの場合と同様の方式でチャンバ35aおよび35c上にそれぞれ位置決めされている。
【0059】
チャンバキャップ38cの上面94cおよびチャンバキャップ37bの上面93bを含む、チャンバキャップ37a~37cおよび38a~38cの上面は、丸みを帯びた凸形状を有する。これらの形状は、上部支持プレート41の底面を横切るチャンバキャップの移動を容易にし、プレート41に対するカム作用も提供する。いくつかの実施形態において、チャンバキャップ37および38の少なくとも上面93および94は、支持プレート41の底面に対して摩擦係数を有する材料から形成され、この摩擦係数は、壁53および54を形成する材料の、支持プレート41の底面に対する摩擦係数よりも小さい。いくつかの実施形態において、キャップ37および38は、ポリカーボネート(PC)、PCとアクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)とのブレンド、またはアセタールホモポリマーから形成され得る。
【0060】
図11は、靴10の電気系統の構成要素を示すブロック図である。
図11のブロックへの/からの個々の線は、信号(例えば、データおよび/または電力)の流れ経路を表し、必ずしも個々の導電体を表すことを意図していない。電池パック13は、再充電可能なリチウムイオン電池201、電池コネクタ202、およびリチウムイオン電池保護IC(集積回路)203を含む。保護IC203は、異常な充電および放電状態を検出し、電池201の充電を制御し、他の従来の電池保護回路動作を行う。電池パック13は、コントローラ47と通信するための、かつ電池201を充電するためのUSB(ユニバーサルシリアルバス)ポート208も含む。電力経路制御ユニット209は、電力がコントローラ47にUSBポート208から供給されるか、電池201から供給されるかを制御する。オン/オフ(O/O)ボタン206は、コントローラ47および電池パック13をアクティブ化または非アクティブ化する。LED(発光ダイオード)207は、電気系統がオンかオフかを示す。電池パック13の上記の個々の要素は、従来のものであってもよく、本明細書中に記載の新規かつ進歩的な方式で組み合わされかつ用いられる、市販の構成要素であってもよい。
【0061】
コントローラ47は、PCB46上に収容された構成要素のみならず、コンバータ45を含む。他の実施形態において、PCB46の構成要素およびコンバータ45は、単一のPCB上に含まれ得、または、なんらかの他の方式でパッケージ化され得る。コントローラ47は、プロセッサ210、メモリ211、慣性計測ユニット(IMU)213、および低エネルギー無線通信モジュール212(例えば、BLUETOOTH(登録商標)通信モジュール)を含む。メモリ211は、プロセッサ210によって実行され得る命令を記憶し、他のデータを記憶し得る。プロセッサ210は、メモリ211によって保存されかつ/またはプロセッサ210に記憶された命令を実行し、その実行により、コントローラ47は、本明細書中に記載されたような動作が行われる。本明細書中でいう命令は、ハードコードされた命令および/またはプログラム可能な命令を含み得る。
【0062】
IMU213は、ジャイロスコープおよび加速度計および/または磁力計を含み得る。IMU213によって出力されたデータは、靴10の、したがって靴10を着用した足の向きおよびモーションの変化を検出するために、プロセッサ210によって用いられ得る。以下により詳細を説明するように、プロセッサ210は、そうした情報を用いて、靴10の一部分の傾斜がいつ変化すべきかを判定し得る。無線通信モジュール212は、ASIC(特定用途向け集積回路)を含み得、プログラミングおよび他の命令をプロセッサ210に伝達するためのみならず、メモリ211またはプロセッサ210によって記憶され得るデータをダウンロードするために用いられ得る。
【0063】
コントローラ47は、低ドロップアウト電圧レギュレータ(LDO)214およびブーストレギュレータ/コンバータ215を含む。LDO214は、電池パック13から電力を受信し、定電圧をプロセッサ210、メモリ211、無線通信モジュール212、およびIMU213に出力する。ブーストレギュレータ/コンバータ215は、コンバータ45に許容入力電圧を提供するレベル(例えば、5ボルト)に、電池パック13からの電圧をブーストする。その後、コンバータ45は、その電圧をはるかに高いレベル(例えば、5000ボルト)に増加させ、その高電圧を傾斜アジャスタ16の電極107および157にわたって供給する。ブーストレギュレータ/コンバータ215およびコンバータ45は、プロセッサ210からの信号によって有効化/無効化される。コントローラ47は、外側FSR31a~31cおよび内側FSR32a~32cからの信号をさらに受信する。FSR31および32からのそれらの信号に基づいて、プロセッサ210は、着用者の足から外側流体チャンバ35および内側流体チャンバ36への力によって、チャンバ35内にチャンバ36内の圧力よりも高い圧力が生成されているかどうかを判定する。
【0064】
コントローラ47の上記の個々の要素は、従来のものであってもよく、本明細書中に記載の新規かつ進歩的な方式で組み合わされかつ用いられる、市販の構成要素であってもよい。さらに、コントローラ47は、メモリ211および/またはプロセッサ210に記憶された命令によって、靴10の中底14の前足部分の傾斜を調整するように、チャンバ35と36との間の流体の伝達を制御することに関連する、本明細書中に記載の新規かつ進歩的な動作を行うように物理的に構成されている。
【0065】
図12A~
図12Cは、いくつかの実施形態に従って、最小傾斜状態から最大傾斜状態なっていくときの傾斜アジャスタ16の動作を示す部分概略断面図である。
図12A~
図12Cにおける傾斜アジャスタ16にわたる断面平面の位置は、
図4Bに矢印A-Aで示す位置と同様である。組み立てられた靴10の同様の断面における底部支持プレート29、FSR32cおよび31b、ならびに上部支持プレート41の相対的位置も示されている。これらの図面は、いずれも縮尺どおりとは限らないが、
図12A~
図12Cに表された特定要素の比率は、簡潔性のために、他の図に記載された比率に対して変更されている。
【0066】
最小傾斜状態において、上部プレート41の底部プレート29に対する傾斜角αは、前足部領域でソール構造12が提供するように構成された傾斜の最小量を表す値αminを有する。いくつかの実施形態において、αmin=0°である。最大傾斜状態おいて、傾斜角αは、ソール構造12が提供するように構成された傾斜の最大量を表す値αmaxを有する。いくつかの実施形態において、αmaxは、少なくとも5°である。いくつかの実施形態において、αmaxは=10°である。いくつかの実施形態において、αmaxは、10°より大きくてもよい。
【0067】
図12A~
図12Cにおいて、底部プレート29、傾斜アジャスタ16、上部プレート41、FSR31b、FSR32cが示されるが、他の要素は簡潔性のために省略されている。上部プレート41、およびソール構造12の他の要素は、プレート41に対する、傾斜アジャスタ16に向かう方向への下向きの力が、内側チャンバ36および外側チャンバ35によって支持されるように構成されている。外側止め具83および内側止め具82も、
図12A~
図12Cに示される。内側止め具83は、傾斜アジャスタ16および上部プレート41が最大傾斜状態にあるとき、上部プレート41の内側を支持する。外側止め具82は、傾斜アジャスタ16および上部プレート41が最小傾斜状態にあるとき、上部プレート41の外側を支持する。外側止め具82は、上部プレート41が外側に向かって傾くことを防止する。走者はレース中においてトラックを反時計回りに進むので、靴10の着用者は、トラックの曲がっている部分を走るときに自分の左の方へ曲がっているであろう。そのような使用シナリオにおいて、右の靴のソール構造の中底を外側に傾斜させる必要はない。しかし、他の実施形態において、ソール構造は、内側または外側のいずれかに傾き得る。
【0068】
いくつかの実施形態において、靴10を含む一足の靴のうちの左靴は、
図12A~
図12Cに示されたものとはわずかに異なる方式で構成され得る。例えば、内側止め具は、靴10の外側止め具82と同様の高さに存在し得、外側止め具は、靴10の内側止め具83と同様の高さに存在し得る。かかるいくつかの実施形態において、左靴の上部プレートは、上部プレートが外側に傾斜している最小傾斜状態と最大傾斜状態との間で移動する。(すなわち、左靴の上部プレートの外側が、最大傾斜時に左靴の上部プレートの内側よりも低くなるであろう)。
【0069】
内側止め具83および外側止め具82の位置は、
図12A~
図12Cに概略的に表されているが、前述の図面には示されていない。いくつかの実施形態において、外側止め具82は、底部プレート29の外側または縁上にリム(rim)として形成され得る。同様に、内側止め具83は、底部プレート29の内側または縁上にリムとして形成され得る。
【0070】
図12Aは、上部プレート41が最小傾斜状態にあるときの傾斜アジャスタ16を示す。靴10は、靴10の着用者がレース開始の直前に立っているときもしくはスターティングブロックにいるとき、または着用者がトラックの直線部分を走っているとき、上部プレート41を最小傾斜状態に置くように構成され得る。
図12Aにおいて、コントローラ47は、電極107および157にわたる電圧を1つまたは複数の流れ阻止電圧レベルに維持しており、電極107および157にわたる電圧は、伝達チャネル63の電界生成部分77におけるER流体69の粘度を、チャンバ35cと36cとの間の流れを防止する粘度レベルまで高めるのに十分な強度を有する電界を生成できる高さである。いくつかの実施形態において、流れ阻止電圧レベルは、電極107と157との間の電界強度を3kV/mm~6kV/mmで生成するのに十分な電圧である。ER流体69は
図12Aに示した状態下ではチャネル63を通って流れ得ないため、上部プレート41の傾斜角αは、靴10の着用者が靴10の内側と外側との間で体重を移動しても変化しない。
【0071】
図12Bは、コントローラ47が、上部プレート41は最大傾斜状態に配置されるべきであること、すなわちα=α
maxへ傾斜されるべきであることを判定してすぐの傾斜アジャスタ16を示す。いくつかの実施形態において、以下に説明するように、コントローラ47は、靴10の着用者のかなりの歩数に基づいてそのような判定を行う。上部プレート41がα
maxまで傾斜すべきであると判定すると、コントローラ47は、靴10を着用している足が、着用者の歩行サイクルの一部分にあるかを判定し、ここで靴10は地面に接している。コントローラ47は、内側チャンバ36内のER流体69の圧力P
Mと外側チャンバ35内のER流体69の圧力P
Lの差△P
M-Lが正であるかどうか、すなわちP
M-P
Lがゼロより大きいかどうかも判定する。靴10が地面に接しており、△P
M-Lが正である場合、コントローラ47は、電極107および157にわたる電圧を、流れ可能電圧レベルまで低減させる。特に、電極107および157にわたる電圧は、伝達チャネル63内のER流体69の粘度が通常の粘度レベルになるように、伝達チャネル63内の電界強度を低減させるほど十分に低いレベルまで低減される。
【0072】
電極107および157にわたる電圧を流れ可能電圧レベルまで低減させると、チャネル63内のER流体69の粘度は低下する。その後、ER流体69は、チャンバ35からチャンバ36内へ流れ始める。これによって、上部プレート41の内側は底部プレート29に向かって移動し始め、上部プレート41の外側は底部プレート29から離れるように移動し始める。その結果、傾斜角αは、αminから増加し始める。
【0073】
いくつかの実施形態において、コントローラ47は、IMU213からのデータに基づいて、靴10が歩行サイクルの歩部分にあるか、地面に接しているかを判定する。特に、IMU213は、3軸加速度計および3軸ジャイロスコープを含み得る。加速度計およびジャイロスコープからのデータを用いて、かつ、走者の足の既知の生体力学、例えば歩行サイクルの様々な部分における様々な方向の回転および加速度に基づいて、コントローラ47は、靴10の着用者の右足が地面を踏んでいるかどうかを判定することができる。コントローラ47は、FSR31a~31cおよびFSR32a~32cからの信号に基づいて、△PM-Lが正であるかを判定し得る。それらの信号の各々は、FSRを押し下げる着用者の足による力の大きさに対応する。それらの力の大きさおよびチャンバ35および36の既知の寸法に基づいて、コントローラ47は、FSR31およびFSR32からの信号の値を△PM-Lの大きさおよび符号に相関付けることができる。いくつかの実施形態において、内側FSR31の合計は、内側圧力PMの値として利用され、外側FSR32の合計は、外側圧力PLの値として利用される。その後、圧力差が計算されて、電極の電圧状態を判定する。
【0074】
図12Cは、
図12Bに関連する時間のすぐ直後の傾斜アジャスタ16を示す。
図7Cにおいて、上部プレート41は、最大傾斜状態に達している。特に、上部プレート41の傾斜角αは、α
maxに達している。内側止め具83によって、傾斜角αがα
maxを上回ることが防止される。
図7Cと関連付けられた時間が経過したすぐ直後に、コントローラ47は、電極107および157にわたる電圧を、流れ阻止電圧レベルまで上昇させる。このことにより、伝達チャネル63を通るさらなる流れが防止され、上部プレート41は最大傾斜状態に保持される。通常の歩行サイクルの間、前足部が内側にロールしているので、靴にかかる右足の下向きの力は、最初は外側においてより高い。チャネル63を通る流れが防止されなかった場合、着用者の右足の外側にかかる最初の下向きの力により、傾斜角αは減少するであろう。
【0075】
いくつかの実施形態において、靴10の着用者は、上部プレート41が最大傾斜に達するように、 数歩を歩く必要があり得る。したがって、コントローラ47が(IMU213ならびにFSR31およびFSR32からのデータに基づいて)着用者の足は地面から離れたと判定すると、コントローラ47は、電極107および157にわたる電圧を上昇させるように構成され得る。その後、コントローラ47は、靴10が地面を踏んで、△P
M-Lが正であると再度判定すると、その電圧を降下させ得る。これは、所定の歩数の間、繰り返され得る。これは、最小傾斜状態から最大傾斜状態へ移行する間の様々な時間での内側-外側の圧力差△P
M-L、電極107および157にわたる電圧、および傾斜角αのグラフとして
図13Aに示される。
【0076】
時間T1で、コントローラ47は、靴10の上部プレート41が最大傾斜状態へ移行すべきであると判定する。時間T2で、コントローラ47は、靴10が地面を踏んでいるが、△PM-Lは負であると判定する。時間T3で、コントローラ47は、靴10が地面を踏んでおり、△PM-Lが正であると判定し、コントローラは、電極107および157にわたる電圧を流れ可能電圧レベルまで低減させる。その結果、上部プレート41の傾斜角αは、αminから上昇し始める。時間T4で、コントローラ47は、靴10がもはや地面を踏んでいないと判定し、コントローラは、電極107および157にわたる電圧を流れ阻止電圧レベルまで上昇させる。その結果、傾斜角αは、その現在の値に保持される。時間T5で、コントローラ47は、再度、靴10が地面を踏んでいるが、△PM-Lは負であると判定する。時間T6で、コントローラ47は、靴10が地面を踏んでおり、△PM-Lは正であると判定し、コントローラ47は、再度、電極107および157にわたる電圧を流れ可能電圧レベルまで低減させ、傾斜角αの上昇が再開される。時間T7で、傾斜角αは、αmaxに達する。上部プレート41のさらなる傾きが内側止め具83により防止されるため、傾斜角αの上昇は止まる。時間T8で、コントローラ47は、靴10がもはや地面を踏んでいないと判定し、コントローラ47は、再度、電極107と電極157の間の電圧を流れ阻止電圧レベルまで上昇させる。コントローラ47によって上部プレート41が最小傾斜状態に移行すべきであると判定されるまで、コントローラ47は、さらなるステップサイクル(step cycle)の間、該電圧を流れ阻止電圧レベルに維持する。
【0077】
図13Bは、最大傾斜状態から最小傾斜状態に移行する間の様々な時間での内側-外側の圧力差△P
M-L、電極107および157にわたる電圧、ならびに傾斜角αのグラフである。時間T11で、コントローラ47は、靴10の上部プレート47が最小傾斜状態に移行すべきであると判定する。時間T12で、コントローラ47は、靴10が地面を踏んでおり、△P
M-Lは負であると判定し、コントローラ47は、電極107および157にわたる電圧を流れ可能電圧レベルまで低減させる。その結果、負の△P
M-Lは、内側チャンバ36内の圧力P
medに比べて外側チャンバ35内の圧力P
latが高いと表していることから、ER流体59は、外側チャンバ35から内側チャンバ36内に流入し始め、傾斜角αは、α
maxから減少し始める。時間T13で、コントローラ47は、靴10が地面を踏んでいるが、△P
M-Lが正であるとを判定し、コントローラ47は、電極107および157にわたる電圧を流れ阻止電圧レベルまで上昇させる。その結果、上部プレート41の傾斜角αは、保持される。時間T14で、コントローラ47は、靴10が再度地面を踏んでおり、△P
M-Lは負であると判定し、コントローラ47は、電極107および157にわたる電圧を流れ可能電圧レベルまで下げる。その結果、傾斜角αは、減少し続ける。時間T15で、傾斜角αは、α
minに達する。上部プレート41のさらなる傾きが外側止め具82により防止されるため、傾斜角αの減少は止まる。時間T16で、コントローラ47は、△P
M-Lが正であると判定し、コントローラ47は、再度、電極107および157にわたる電圧を流れ阻止電圧レベルまで上昇させる。コントローラ47によって上部プレート41が最大傾斜状態に移行すべきであると判定されるまで、コントローラ47は、さらなるステップサイクルの間、該電圧を流れ阻止電圧レベルに維持する。
【0078】
上記の例において、コントローラ47は、2つのステップサイクルの間、傾斜状態間での移行のために、電極107および157にわたる電圧を下げた。しかし、他の実施形態において、コントローラ47は、より少ないステップサイクルまたはそれ以上のステップサイクルの間、該電圧を下げ得る。最小傾斜から最大傾斜に移行するためのステップサイクルの数は、最大傾斜から最小傾斜に移行するためのステップサイクルの数と同一でなくてもよい。
【0079】
いくつかの実施形態において、コントローラ47は、初期化後の歩数を数え、該歩数が、靴10の着用者がトラックのコーナーの一部分に位置するのに十分なものであるかを判定することにより、最大傾斜位置に異動すべき時期を判定する。通常、陸上競技の選手の歩幅の長さは、非常に一貫している。トラックの寸法および各トラックレーンでのスタートラインからコーナーまでの距離は、コントローラ47によって記憶され得る既知の量である。靴10の着用者からコントローラ47への、該靴10の着用者に割り当てられたトラックレーンを示す入力のみならず、該着用者の歩幅の長さを示す入力に基づいて、コントローラ47は、ランニング中の歩数を記憶することによって、着用者のトラックでの位置を判定することができる。上述したように、コントローラ47は、IMU213からのデータに基づいて、靴10が歩行サイクル内にあり得る場合を判定することができる。これらの歩行サイクルの判定は、一歩踏み出したときを示すことができる。
【0080】
いくつかの実施形態において、靴10を含む一足の靴のうちの左靴は、靴10に関する上記の方式と同様に動作し得るが、最大傾斜状態は、左靴の上部プレートが外側に向かって最大に傾斜していることを表す。左靴のコントローラによって行われる動作は、
図13Aおよび
図13Bと関連付けて上述したものと同様であるが、判定は、△P
L-M=P
L-P
Mの符号に基づく代わりに、△P
M-Lの符号に基づいていた。ここで、P
Lは、左靴の外側流体チャンバ内の圧力であり、P
Mは、左靴の内側流体チャンバ内の圧力である。
【0081】
いくつかの実施形態において、靴のコントローラは、他のタイプの入力に基づいて、最小傾斜から最大傾斜に、かつその反対に移行するときを判定し得る。いくつかのかかる実施形態において、例えば、靴の着用者は、靴から離れているいくつかの他の位置および/または着用者の胴体上に配置される1つまたは複数のIMUを含む衣類を着用し得る。それらのセンサの出力は、無線モジュール212(
図11)と同様の無線インタフェースを介して、靴のコントローラに伝達され得る。それらのセンサから、(例えば着用者の体が、トラックのコーナーを走っているときに側部に傾くにつれて)着用者が靴の上部プレートを傾斜させる必要性と一致する体の位置を占めたことを示す出力を受信すると、コントローラは、靴の上部プレートを傾斜させる動作を行うことができる。さらに他の実施形態において、靴のコントローラは、何らかの他の方式で(例えば、GPS信号に基づいて)位置を判定し得る。
【0082】
コントローラは、ソール構造内に配置されなくてもよい。例えば、いくつかの実施形態において、コントローラの一部のまたは全ての構成要素は、電池組立体13などの電池組立体のハウジングと共に配置され得、かつ/または履物のアッパー上に位置決めされる別のハウジングに配置され得る。
【0083】
いくつかの実施形態において、上述のとおり、底部構成要素115および上部構成要素165は、マルチショット射出成形工程中に各々形成され得る。この工程は、
図14Aおよび
図14Bに概略的に示されている。
図14Aに示す層101および151を形成するための第1の組の作業では、底部鋳型301および302ならびに第1の組の上部鋳型303および304が使用される。底部鋳型301上の面は、層101の底面および側縁の裏側に対応しかつ層101の底面および側縁を形成する輪郭を有する。上部鋳型303上の面は、層101の上面の裏側に対応しかつ層101の上面を形成する輪郭を有する。作業(1a)で、鋳型301および303が合わせられる。作業(2a)で、溶融TPU(または他の材料)が注入され、その材料が硬化して層101になる。作業(3a)で、鋳型303が除去され、層101が鋳型301内に残留し、電極107およびリード79が層101上に配置される。底部鋳型302上の面は、層151の上面および側縁の裏側に対応しかつ層151の上面および側縁を形成する輪郭を有する。上部鋳型304上の面は、層151の底面の裏側に対応しかつ層151の底面を形成する輪郭を有する。作業(1b)で、鋳型302および304が合わせられる。作業(2b)で、溶融TPU(または他の材料)が注入され、その材料が硬化して層151になる。作業(3b)で、鋳型304が除去され、層151が鋳型302内に残留し、電極157およびリード80が層151上に配置される。
【0084】
図14Bに示す層112および162を形成するための第2の組の作業では、底部鋳型301および302ならびに第2の組の上部鋳型305および306が使用される。底部鋳型301上の面は、層112の側縁の裏側に対応しかつ層112の側縁を形成する輪郭を有する。上部鋳型305上の面は、層112の上面の裏側に対応しかつ層112の上面を形成する輪郭を有する。作業(4a)で、鋳型301および305が合わせられる。作業(5a)で、溶融TPU(または他の材料)が注入され、その材料が硬化して層112になる。作業(6a)で、鋳型305が除去され、構成要素115が鋳型301から除去される。底部鋳型302上の面は、層162の側縁の裏側に対応しかつ層162の側縁を形成する輪郭を有する。上部鋳型306上の面は、層162の底面の裏側に対応しかつ層162の底面を形成する輪郭を有する。作業(4b)で、鋳型302および306が合わせられる。作業(5b)で、溶融TPU(または他の材料)が注入され、その材料が硬化して層162になる。作業(6b)で、鋳型306が除去され、構成要素165が鋳型302から除去される。
【0085】
いくつかの実施形態において、チャンバ35の壁53およびチャンバ36の壁54は、層151の他の部分と同時に成形される。特に、鋳型302は、壁53および54の外側面の裏側に対応する輪郭を有する領域を含み得、鋳型304は、壁53および54の内側面の裏側に対応する輪郭を有する領域を含み得る。他の実施形態において、壁53および54が別々に成形される。その後、これらの壁が底部鋳型に挿入され、上部鋳型がその底部鋳型の上に配置され、層151の残り部分が射出成形されて、壁53および54の周囲の所定位置に収まる。いくつかのかかる実施形態において、底部および上部鋳型は、壁53および54を保持するように位置決めされた除去可能なインサートを有し得る。その後、これらのインサートは、他のインサートと交換されて、種々のチャンバ壁サイズおよび/または形状を有する層151のバージョンを形成し得る。
【0086】
図14Cは、いくつかの実施形態による、層151を形成する目的で使用され得る鋳型312の上面図である。鋳型312は、鋳型302と置き換わる。鋳型312は、層151の上面の裏側に対応しかつ層151の上面を形成する輪郭を有する底面320を含む。側壁322は、層151および162の側縁の裏側に対応しかつ層151および162の側縁を形成する輪郭を有する。インサート323a~323cは、壁53a~53cにそれぞれ対応する。インサート323の各々は、壁53の外面に接触する内面325a、325b、および325cを有して、射出成形中に該壁53を適所に保持するのを支援する。インサート324a~324cは、壁54a~54cにそれぞれ対応する。インサート324の各々は、壁54の外面に接触する内面326a、325b、および325cを有して、射出成形中に該壁54を適所に保持するのを支援する。
【0087】
図14Dは、インサート323および324が除去された鋳型312の上面図である。以下にさらに詳述するとおり、インサート323のいずれかまたは全て、および/またはインサート324のいずれかまたは全ては、異なるタイプのチャンバ壁に対応するインサートと置き換えられ得、それにより、鋳型312を使用して、傾斜アジャスタ上側構成要素のカスタマイズ版を作成することができる。開口327aは、インサート323aに対応し、リップ329aを含む。インサート327bおよび327cにそれぞれ対応する開口327bおよび327cは、リップ329aおよび329bを含む。開口328a~328cは、インサート324a~324cにそれぞれ対応し、それぞれのリップ330a~330cを含む。リップ329および330は、以下にさらに詳述するとおり、インサート323および324を保持するのを支援する。
【0088】
図15A~
図15Fは、鋳型312を用いた構成要素165の一部分の成形を示す部分概略断面図である。
図15Aの切断面は、壁53aの中心を通る垂直面である。
図15B~
図15Eの切断面は、
図14Cに矢印D-Dで示されている。
図15Fの切断面は、矢印D-Dが示されている鋳型312の領域に対応する構成要素165の一部分を通る。
【0089】
図15A~
図15Fは、壁53aを囲みかつ組み込む構成要素165の領域の成形に対応する。しかし、当業者であれば、本明細書内の説明を基に、他の壁53および壁54を囲みかつ組み込む鋳型要素165の部分を同時に成形するための他の成形要素の構造および使い方を容易に理解するであろう。
【0090】
図15Aは、別個に成形された壁53aの断面図である。
図15Bは、インサート323a内に配置された後の壁53aの断面図である。上部鋳型314が鋳型304(
図14A)の代わりに使用され、鋳型312の上に配置されている。鋳型312と同様、鋳型314は、1つの壁53または1つの壁54に各々対応する複数のインサートを含む。
図15Bに示すインサート397aは、壁53aに対応する。他のインサートは、壁53b、53c、および54a~54cに対応する。インサート397aを囲む表面395、ならびに他の壁53および54に対応するインサートは、層151の底面(例えば、隆起領域156を含む)の裏側に対応しかつ層151の底面を形成する輪郭を有する。インサート323aのリップ331aは、開口327aのリップ329aに当接して、注入された溶融材料からの外方圧力に対してインサート323aを適所に固定する。同様に、インサート397aは、鋳型314の開口内のリップに当接して、注入された溶融材料からの外方圧力に対してインサート323aを適所に固定するリップを含む。鋳型312および314の他のインサートも同じようにして固定される。
【0091】
鋳型312および314は、結合されて、溶融材料が注入される空隙400を画定する。インサート323aの面325aは、壁53aの外面と接触する。インサート397a内の突出部393aの外側部は、壁53aの内面と接触する。このようにして、壁53aは、インサート323aと325aとの間に挟まれて、壁53aの周囲の空隙400を封止する。空隙400も同様に、他の壁53および壁54の周囲に封止される。
【0092】
図15Cは、空隙400内に溶融材料を注入した後の鋳型312および314を示す。溶融材料は、壁53aと融合し、凝固して層151を形成する。
図15Dでは、鋳型314が除去され、層151が鋳型312内に残っている。電極157およびリード80は、層151(図示せず)上に配置されている。第2鋳型316が鋳型306(
図14B)の代わりに使用され、鋳型312の上に配置されている。鋳型316および312は、鋳型312内の層151、電極157およびリード80と結合されるとき、溶融材料が注入されて層162を形成する空隙402を画定する。鋳型316は、壁53aに対応するインサート391aと、壁53b、53c、および54a~54cに対応する他のインサートとを含む。鋳型316内のインサートも除去可能であり、上述した方式と同様の方式で、当接するリップと共に適所に保持される。鋳型316内のインサートを囲む表面387は、層162の底面(例えば、伝達チャネル部分61.2~65.2を含む)の裏側に対応し、層162の底面を形成する輪郭を有する。インサート391aの突出部389aは、壁53aをインサート323aに当接させて挟み、壁53aの周囲の空隙402を封止する。空隙402も同様に、他の壁53および壁54の周囲に封止される。
【0093】
図15Eは、空隙402内に溶融材料を注入した後の鋳型312および316を示す。溶融材料は、壁53aおよび層151と融合し、凝固して層162および構成要素165を形成した。
図15Fは、鋳型312から除去した後の壁53aの周囲の構成要素165の領域を示す。
【0094】
図16A~
図16Fは、鋳型312、314、および316を使用して、カスタマイズした傾斜アジャスタ構成要素を成形する方法を示す。
図16A~
図16Fは、壁53aが別の壁で置き換えられた例を示しているが、他の一部またはすべてのチャンバ壁が追加または代替として置き換えられることもあり得る。
【0095】
図16Aは、傾斜アジャスタ内の壁53aの代わりに使用される壁553aの断面図である。切断面は、壁553aの直径を通って垂直である。
図16B~
図16Fの切断面は、
図15B~
図15Fで説明した切断面と同様の位置からのものである。
図16Bでは、壁553aが鋳型312および314内に配置されている。インサート323aおよび397aは、壁553aに整合するインサート343aおよび417aでそれぞれ置き換えられている。
図16Cでは、溶融材料が注入されて層151を形成している。
図16Dでは、鋳型314が除去され、鋳型316で置き換えられており、鋳型316は、インサート391aの代わりにインサート411a(壁553aに整合)を有する。電極157およびリード80は、鋳型314を除去した後、かつ鋳型316を配置する前に層151上に配置された。
図16Eでは、溶融材料が注入されて層162および構成要素165を形成している。
図16Fは、鋳型312から除去した後の壁553aの周囲の構成要素165の領域を示す。
【0096】
誤解を避けるために、本出願は、以下の番号付き段落(「Para.」)に記載された主題を含む。
1. 履物品であって、アッパーと、アッパーに結合されたソール構造であって、ソール構造は、ベースと、傾斜アジャスタと、支持プレートと、を備える、ソール構造と、を備え、ベースは、ソール構造の前足部分、ソール構造の中足部分、およびソール構造の踵部分に配置され、支持プレートは、ソール構造の少なくとも前足部分に配置され、傾斜アジャスタは、ソール構造の前足部分において、ベースと支持プレートとの間に配置される傾斜アジャスタ前足部セクションを備え、傾斜アジャスタ前足部セクションは、少なくとも3つのチャンバを備え、チャンバの各々は、電気粘性流体を含み、チャンバ内の電気粘性流体の体積の変化に対応して外方への延在を変化させるように構成されており、チャンバは、伝達チャネルによって直列に連結され、伝達チャネルの各々は、チャンバのうちの2つの間での流れを可能にし、伝達チャネルは、流量調節伝達チャネルを備え、流量調節伝達チャネルは、流量調節伝達チャネルの電界生成部分の内部に沿って延在する、対向する第1電極および第2電極を備える、履物品。
2. 直列のチャンバのうちの第1チャンバは、直列のチャンバのうちの最後のチャンバに連結されていない、段落1に記載の履物品。
3. チャンバの各々は、チャンバの一部を形成する可撓性壁を備え、可撓性壁は、チャンバ内の電気粘性流体の体積が増加するにつれて膨張するように構成されており、チャンバ内の電気粘性流体の体積が減少するにつれて収縮するように構成されている、段落1または2のいずれかに記載の履物品。
4. 傾斜アジャスタは、伝達チャネルが格納され、チャンバの可撓性壁が延在する本体を備える、段落3に記載の履物品。
5. チャンバのうちの1つの可撓性壁は、中央セクションと、中央セクションを囲む側部セクションと、を備え、側部セクションは、チャンバの蛇腹形状を画定する少なくとも1つの折り目を備える、段落3に記載の履物品。
6. 可撓性壁は、中央セクションと、中央セクションを囲む側部セクションと、を備え、側部セクションは、チャンバの蛇腹形状を画定する少なくとも1つの折り目を備える、段落3に記載の履物品。
7. チャンバのうちの1つの可撓性壁は、中央セクションと、中央セクションを囲む側部セクションと、を備え、中央セクションは、凹部を含む外形を有する、段落3、5、または6のいずれかに記載の履物品。
8. チャンバのうちの少なくとも2つの各々について、可撓性壁は、中央セクションと、中央セクションを囲む側部セクションと、を備え、中央セクションは、凹部を含む外形を有する、段落3、5、または6のいずれかに記載の履物品。
9. ソール構造は、チャンバの各々について、チャンバの上部と支持プレートの底部との間に配置される対応チャンバキャップを備える、段落1~8のいずれかに記載の履物品。
10. チャンバキャップの各々は、支持プレートの底部の面に接触する丸い上面を有する、段落9に記載の履物品。
11. チャンバキャップの各々について、丸い上面を形成するキャップ上部材料は、支持プレートの底部の面に対する摩擦係数を有し、摩擦係数は、チャンバキャップに対応するチャンバの上面を形成する材料の、支持プレートの底部の面に対する摩擦係数よりも小さい、段落10に記載の履物品。
12. チャンバのうちの第1チャンバは、チャンバの一部を形成する可撓性壁を備え、可撓性壁は、チャンバ内の電気粘性流体の体積が増加するにつれて膨張するように構成されており、チャンバ内の電気粘性流体の体積が減少するにつれて収縮するように構成されており、第1チャンバの可撓性壁は、中央セクションと、中央セクションを囲む側部セクションと、を備え、第1チャンバの可撓性壁の中央セクションは、凹部を含む外形を有し、第1チャンバに対応するチャンバキャップは、凹部内へと延在する突出部と、第1チャンバの可撓性壁の側部セクションを囲むスカートと、を含む、段落9に記載の履物品。
13. 伝達チャネルは、チャンバ内の電気粘性流体の体積が変化するとき、伝達チャネル内の電気粘性流体の体積が略一定を保つように構成されている、段落1~12のいずれかに記載の履物品。
14. チャンバは、傾斜アジャスタ前足部セクションの内側上に配置される1つまたは複数の内側チャンバと、傾斜アジャスタ前足部セクションの外側上に配置される1つまたは複数の外側チャンバと、を備える、段落1~13のいずれかに記載の履物品。
15. 内側チャンバよりも外側チャンバの方が多い、段落14に記載の履物品。
16. 外側チャンバよりも内側チャンバの方が多い、段落14に記載の履物品。
17. 内側チャンバは、前方内側チャンバと、中間内側チャンバと、後方内側チャンバと、を備え、外側チャンバは、前方外側チャンバと、中間外側チャンバと、後方外側チャンバと、を備える、段落14に記載の履物品。
18. 電界生成部分は、ソール構造の中足部および踵領域を通って延在する、段落1~17のいずれかに記載の履物品。
19. 電界生成部分は、長さLと平均幅Wとを有し、比L/Wは、少なくとも50である、段落1~18のいずれかに記載の履物品。
20. 流量調節伝達チャネル以外の伝達チャネルは、電極を有しない、段落1~19のいずれかに記載の履物品。
21. 傾斜アジャスタは、伝達チャネルが格納される本体を備え、チャンバの各々は、チャンバが延在する本体の平面において丸みを帯びており、本体の平面において直径が15ミリメートル~30ミリメートルである、段落1~20のいずれかに記載の履物品。
22. 物品であって、本体と、本体から外方に延在する少なくとも3つの可変体積型のチャンバと、を備える傾斜アジャスタを備え、チャンバの各々は、電気粘性流体を含み、チャンバ内の電気粘性流体の体積の変化に対応して外方への延在を変化させるように構成されており、チャンバは、伝達チャネルによって直列に連結され、伝達チャネルの各々は、チャンバのうちの2つの間での流れを可能にし、伝達チャネルは、流量調節伝達チャネルを備え、流量調節伝達チャネルは、流量調節伝達チャネルの電界生成部分の内部に沿って延在する、対向する第1電極および第2電極を備え、電界生成部分は、長さLと平均幅Wとを有し、比L/Wは、少なくとも50である、物品。
23. 直列のチャンバのうちの第1チャンバは、直列のチャンバのうちの最後のチャンバに連結されていない、段落22に記載の物品。
24. チャンバの各々は、チャンバの一部を形成する可撓性壁を備え、可撓性壁は、チャンバ内の電気粘性流体の体積が増加するにつれて膨張するように構成されており、チャンバ内の電気粘性流体の体積が減少するにつれて収縮するように構成されている、段落22または23に記載の物品。
25. チャンバのうちの1つの可撓性壁は、中央セクションと、中央セクションを囲む側部セクションと、を備え、側部セクションは、チャンバの蛇腹形状を画定する少なくとも1つの折り目を備える、段落24に記載の物品。
26. チャンバのうちの少なくとも2つの各々について、可撓性壁は、中央セクションと、中央セクションを囲む側部セクションと、を備え、側部セクションは、チャンバの蛇腹形状を画定する少なくとも1つの折り目を備える、段落24に記載の物品。
27. チャンバのうちの1つの可撓性壁は、中央セクションと、中央セクションを囲む側部セクションと、を備え、中央セクションは、凹部を含む外形を有する、段落24、25、または26に記載の物品。
28. チャンバのうちの少なくとも2つの各々について、可撓性壁は、中央セクションと、中央セクションを囲む側部セクションと、を備え、中央セクションは、凹部を含む外形を有する、段落24、25、または26に記載の物品。
29. 伝達チャネルは、チャンバ内の電気粘性流体の体積が変化するとき、伝達チャネル内の電気粘性流体の体積が略一定を保つように構成されている、段落22~28のいずれかに記載の物品。
30. チャンバは、傾斜アジャスタの内側上に配置される1つまたは複数の内側チャンバと、傾斜アジャスタの外側上に配置される1つまたは複数の外側チャンバと、を備える、段落22~29のいずれかに記載の物品。
31. 内側チャンバよりも外側チャンバの方が多い、段落30に記載の物品。
32. 外側チャンバよりも内側チャンバの方が多い、段落30に記載の物品。
33. 内側チャンバは、前方内側チャンバと、中間内側チャンバと、後方内側チャンバと、を備え、外側チャンバは、前方外側チャンバと、中間外側チャンバと、後方外側チャンバと、を備える、段落30に記載の物品。
34. 流量調節伝達チャネル以外の伝達チャネルは、電極を有しない、段落22~33のいずれかに記載の物品。
35. 方法であって、上部側と、上部側に画定された複数の伝達チャネル第1部分と、を備える第1構成要素を成形することであって、伝達チャネル第1部分のうちの1つは、伝達チャネル第1部分のうちの1つの電界生成部分に沿って露出している第1電極の一部分を備える、ことと、底部側と、上部側と、底部側に画定された複数の伝達チャネル第2部分と、を備える第2構成要素を成形することであって、伝達チャネル第2部分のうちの1つは、伝達チャネル第2部分のうちの1つの電界生成部分に沿って露出している第2電極の一部分を備え、少なくとも3つのチャンバの各々の上部分は、第2構成要素の上部側から外方に延在する、ことと、傾斜アジャスタを形成するために、第1構成要素の上部側を第2構成要素の底部側に接合することであって、伝達チャネル第1部分は、伝達チャネル第2部分と整列して、チャンバを直列に連結し、チャンバ間の流体連通を提供する伝達チャネルを形成し、伝達チャネル第1部分のうちの1つの電界生成部分は、伝達チャネル第2部分のうちの1つの電界生成部分と整列する、ことと、内部体積を電気粘性流体で満たすことであって、内部体積は、チャンバおよび伝達チャネルの内部体積を含む、ことと、内部体積を封止することと、を含む、方法。
36. 第2構成要素を成形することは、少なくとも3つのチャンバの上部分を別々に成形することと、第2構成要素の残りを少なくとも3つのチャンバの上部分上に成形することと、を含む、段落35に記載の方法。
37. 少なくとも3つのチャンバの上部分上に第2構成要素の第1層を成形することと、第2電極を第2構成要素の第1層に取り付けることと、第2構成要素の第2層を第2構成要素の第1層および第2電極の上に成形することと、を含む、段落36に記載の方法。
【0097】
実施形態の先述の説明は、例示および説明の目的で提示されている。先述の説明は、網羅的なものであると意図されるものではなく、または本発明の実施形態を、開示された正確な形態に制限することを意図されるものでもなく、改変および変更は、上記の教示を鑑みて可能であり、または様々な実施形態の実施から取得可能であり得る。本明細書中で論じられた実施形態は、様々な実施形態の原理および性質ならびにそれらの実際の適用を説明して、当業者が本発明を様々な実施形態で、また、考慮される特定の用途に適するような様々な改変を用いて利用することを可能にするために、選択および記載された。本明細書中で記載された実施形態の特徴のあらゆる組み合わせ、部分的組み合わせおよび置換は、本発明の範囲内にある。特許請求の範囲において、構成要素の潜在的なまたは意図された着用者またはユーザに関する言及は、構成要素の実際の着用もしくは使用、または着用者もしくはユーザの存在を、特許請求対象である発明の一部として必要とするものではない。