(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】電気分解装置
(51)【国際特許分類】
C25B 9/65 20210101AFI20220906BHJP
C25B 15/02 20210101ALI20220906BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20220906BHJP
H02J 15/00 20060101ALI20220906BHJP
H02P 9/00 20060101ALI20220906BHJP
H02P 101/15 20150101ALN20220906BHJP
【FI】
C25B9/65
C25B15/02
H02J3/38 160
H02J15/00 G
H02P9/00 F
H02P101:15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021055098
(22)【出願日】2021-03-29
【審査請求日】2021-03-29
(32)【優先日】2020-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519081710
【氏名又は名称】シーメンス ガメサ リニューアブル エナジー エー/エス
【氏名又は名称原語表記】Siemens Gamesa Renewable Energy A/S
【住所又は居所原語表記】Borupvej 16, 7330 Brande, Denmark
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】エリック グレンダール
(72)【発明者】
【氏名】モーウンス ロン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ティステズ
【審査官】池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-027361(JP,A)
【文献】特開2006-345649(JP,A)
【文献】特開2013-231381(JP,A)
【文献】特開2016-226238(JP,A)
【文献】特開2019-163530(JP,A)
【文献】特開2019-198221(JP,A)
【文献】国際公開第2018/202926(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0127646(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0020192(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B 1/00 - 15/08
H02J 3/38
H02J 15/00
H02P 9/00
H02P 101/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気分解装置であって、
それぞれ、電解槽(11)と、該電解槽(11)に直流電力(U
DC,I
DC)を供給するように構成されたAC‐DC電力変換器(110)とを含む、複数の電解質ユニット(11U)と、
それぞれ、複数の電解質ユニット(11U)を含む、複数の電解質アセンブリ(11A)と、
複数の電機子巻線(10W)を有する発電機(10G)を含む少なくとも1つの風力タービン(10)であって、各電機子巻線(10W)が1つずつの電解質アセンブリ(11A)に交流電力を供給する、風力タービン(10)と、
発電機(10G)の電力出力に基づいて、前記電解質ユニット(11U)の前記AC‐DC電力変換器(110)を制御するように構成された変換器ユニットコントローラ(11C)と、
を含む、電気分解装置(1)。
【請求項2】
前記AC‐DC電力変換器(110)は、直流電力を対応する前記電解槽(11)の定格直流電力の任意の比率に調節するように構成されている、請求項1記載の電気分解装置。
【請求項3】
前記変換器ユニットコントローラ(11C)は、利用可能電力を最適な数の電解質ユニット(11U)に分配するために、前記電解質ユニット(11U)の前記AC‐DC電力変換器(110)を調節するように構成されている、請求項1または2記載の電気分解装置。
【請求項4】
前記電解質ユニット(11U)の前記AC‐DC電力変換器(110)は、前記電解質ユニット(11U)の電流密度を制御するように構成された直流電流コントローラ(111)である、請求項1から3までのいずれか1項記載の電気分解装置。
【請求項5】
前記電気分解装置は、各電機子巻線(10W)とその電解質アセンブリ(11A)との間のスイッチ(S)と、該スイッチ(S)を作動させるように構成されたスイッチコントローラ(SC)とを含む、請求項1から4までのいずれか1項記載の電気分解装置。
【請求項6】
各電解質アセンブリ(11A)は、少なくとも2つの電解質ユニット(11U)を含む、請求項1から5までのいずれか1項記載の電気分解装置。
【請求項7】
電解槽(11)は、水を水素および酸素へ電極触媒転換するように構成されている、請求項1から6までのいずれか1項記載の電気分解装置。
【請求項8】
前記電気分解装置は、海水を脱塩して電解槽(11)のための水を得るように構成された脱塩モジュールを含む、請求項1から7までのいずれか1項記載の電気分解装置。
【請求項9】
電解槽(11)は、二酸化炭素をさらなるガスへ電極触媒転換するように構成されている、請求項1から6までのいずれか1項、または
請求項1から6までのいずれか1項を引用する請求項8記載の電気分解装置。
【請求項10】
前記発電機(10G)は、少なくとも2本の電機子巻線(10W)を含む、請求項1から9までのいずれか1項記載の電気分解装置。
【請求項11】
風力タービン(10)の前記発電機(10G)は、脱塩水を精製および脱イオン化するための、前記電気分解装置(1)のさらなる構成要素に電力を供給するようにさらに構成されている、請求項8記載の電気分解装置。
【請求項12】
前記電気分解装置は、複数の風力タービン(10)を含む、請求項1から11までのいずれか1項記載の電気分解装置。
【請求項13】
請求項1から12までのいずれか1項記載の電気分解装置(1)を操作する方法であって、
風力タービン(10)の発電機(10G)を操作するステップであって、その1つ以上の電機子巻線(10W)に交流電力を発生させる、ステップと、該発生させた交流電力に基づいて、
前記巻線(10W)に接続された電解質アセンブリ(11A)の電解質ユニット(11U)のAC‐DC電力変換器(110)を調節するステップと、
を含む、方法。
【請求項14】
前記方法は、
風力タービン(10)の前記発電機(10G)の電力出力を決定するステップと、
利用可能電力によって駆動される電解質ユニット(11U)の数を選択するステップと、
選択された前記電解質ユニット(11U)の前記AC‐DC電力変換器(110)を調節するステップと、
を含む、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記方法は、故障した構成要素(110,11U)を分離するために、電機子巻線(10W)とその電解質アセンブリ(11A)との間のスイッチ(S)を開放するステップを含む、請求項13または14記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気分解装置、および電気分解装置を操作する方法を説明するものである。
【0002】
電解槽は、電気を使って自然界に存在する物質から元素を分離する装置である。例えば、水から水素と酸素とを分離することができる。二酸化炭素を電解転換することで、メタンまたはエチレンなどの種々の製品を作ることができる。
【0003】
電気分解には、直流電圧および直流電流が必要である。しかし、電解プラントは、一般的にはAC系統電力を利用している。そのため、電気分解の全体的な効率は、電解プラントでの降圧変換およびAC‐DC変換など、種々の変換ステージによって決定される。
【0004】
環境保護の観点から、化石燃料ではなく、再生可能エネルギ源を使用することが望まれている。電源としての風力エネルギの普及が進んでおり、多くの洋上風力発電所からの電力が電力網に供給されている。このことは、風力タービンレベルでのAC‐DC‐AC変換、風力タービンレベルでの昇圧変換、ウィンドパークレベルでの昇圧変換、配電網レベルでの降圧変換などの変換ステージの追加により、電気分解の全体的な効率がさらに低下することを意味している。
【0005】
また、風力発電は変動する性質を有しており、その点も考慮する必要がある。弱風または暴風雨の状況では、ウィンドパークは十分な電力を供給できない場合がある。かかる場合、電気分解設備に供給される電力は、再生不能資源から供給される可能性がある。
【0006】
したがって、本発明の目的は、よりエネルギ効率の高い電気分解を行う方法を提供することである。
【0007】
この目的は、請求項1の電気分解装置、およびかかる電気分解装置を操作する請求項13の方法によって達成される。
【0008】
本発明によれば、電気分解装置は、それぞれ電解槽と当該電解槽に直流電力を供給するように構成されたAC‐DC電力変換器とを含む、複数の電解質ユニットと、それぞれ複数の電解質ユニットを含む、複数の電解質アセンブリと、複数の電機子巻線を有する発電機を含む少なくとも1つの風力タービンであって、各電機子巻線が1つずつの電解質アセンブリに交流電力を供給する、風力タービンと、発電機の電力出力に基づいて、電解質ユニットのAC‐DC電力変換器を調節するように構成された変換器ユニットコントローラと、を含む。
【0009】
本発明の文脈で使用される場合、電解質ユニットは、1つ以上の電解槽を含むと理解することができる。2つ以上の電解槽が共通の電源で駆動される装置は、概して「電解スタック」と称される。以下では、「電解槽」、「セル」、「電解スタック」および「スタック」という用語は、互換的に使用されうる。
【0010】
本発明の文脈では、電気分解装置の風力タービンが電気分解を行うことに特化していること、すなわち、当該風力タービンによって生成された電力は、本質的に電気分解ユニットを駆動するためにのみ使用されることが理解されよう。つまり、本発明の電気分解装置の風力タービンは、従来の売電目的には使用されず、電力は「局所的な」消費のためだけに使用される。本発明の電気分解装置の風力タービンによって生成された電力は、本質的には専ら電解質ユニットを駆動するために使用されるが、風力タービンによって生成された電力のうち比較的小さな電力が、冷却システム、空調システム、風力タービンコントローラなどの風力タービンの種々の構成要素に電力を供給するために使用されることが理解されよう。
【0011】
本発明の電気分解装置の利点は、利用可能電力を最適な方法で分配するために、AC‐DC電力変換器を個別に制御できることである。発電機の電力出力は、風力タービンコントローラ(WTC)またはパークコントローラによって決定され、それに応じて変換器ユニットコントローラに通知することができる。例えば、利用可能電力(風速にも大きく依存しうる)に応じて、特定の数の電解槽を最大容量で動作させ、他の電解槽を「オフ」にしうること、全ての電解槽を最大容量の数分の1で動作させうること、一部の電解槽を最大容量で動作させ、他の電解槽を部分的な容量で動作させうること、などが考えられる。このようにして、電気分解装置の効率を最適化することができる。
【0012】
本発明によれば、かかる電気分解装置を操作する方法は、風力タービンの発電機を操作して、その1つ以上の電機子巻線に交流電力を発生させるステップと、発生した交流電力に基づいて、当該巻線に接続された電解質アセンブリの電解質ユニットのAC‐DC電力変換器を調節するステップと、を含む。
【0013】
本発明の方法の利点は、利用可能な風力エネルギを、極めて効率的に利用できることである。特定の風力条件で風力タービンがどれだけの電力を生成できるかを、比較的容易に判断することができる。本方法では、この情報を利用して、利用可能電力の最適な分配を決定する。
【0014】
本発明の特に有利な実施形態および特徴は、以下の説明で明らかにされるように、各従属請求項によって与えられる。異なる請求項のカテゴリの特徴を適宜組み合わせて、本明細書に記載されていないさらなる実施形態を与えることができる。
【0015】
以下では、「電解質ユニット」および「ユニット」なる用語は、互換的に使用されうる。同様に、「電解質アセンブリ」および「アセンブリ」なる用語は、互換的に使用されうる。
【0016】
電気分解には、十分な大きさの直流電流が必要である。本発明の好ましい実施形態では、電解質ユニットのAC‐DC電力変換器は、対応する電解スタックの電流密度を制御するように構成された直流電流コントローラを含み、これにより、電極触媒転換速度が決定される。本発明の特に好ましい実施形態では、電解質ユニットのAC‐DC電力変換器は、直流電力を当該電解質ユニットの電解槽の定格容量の任意の比率に調節するように構成されている。本発明によれば、AC‐DC電力変換器は、変換器ユニットコントローラによって制御される。変換器ユニットコントローラは、電解質ユニットのAC‐DC電力変換器に制御信号を発出する。各AC‐DC電力変換器は、その電解質ユニットを動作させる定格容量の比率(例えば、100%、50%、25%、0%など)を指定する信号を受信する。
【0017】
本発明の電気分解装置は、任意の適切な規模で実現することができる。唯一の大きな制約は、電解質ユニットのAC‐DC電力変換器が必要な分解電位を供給できるよう、発電機巻線により十分な電力を供給できる必要があることである。当該制約を考慮することで、比較的小さなタイプの風力タービンであっても、複数の小容量の電解質ユニットまたは電解質アセンブリを駆動するために使用できることが理解されよう。なお、本発明を何ら制限するものではないが、以下では、本発明の電気分解装置の風力タービンは、現在のウィンドパークで最も一般的に使用されているタイプの水平軸風力タービンであると想定されうる。かかる風力タービンは、定格電力出力が数メガワット級であり、大規模な電気分解を行うための大容量の電解質ユニットを複数台駆動することができる。本発明の電気分解装置は、任意の数の専用風力タービンを使用することができ、例えば、電気分解を行うために専用の複数の風力タービンを使用するウィンドパーク構成で実現することができる。
【0018】
本発明によれば、各風力タービンは、複数の並列かつ独立した巻線を有している。これらの各々により、別々の電解質アセンブリが駆動されうる。本発明の好ましい実施形態では、風力タービンの発電機は、少なくとも2本の電機子巻線を含む。例えば、8MWの風力タービンは、2本の巻線、4本の巻線、または任意の好ましい数の巻線を有するように構築することができる。
【0019】
電解質アセンブリは、単一の電解質ユニットを含むことができる。かかる場合、電解質ユニットの容量を超えないように、電力変換器の直流出力を制限する必要がありうる。したがって、本発明の好ましい実施形態では、各電解質アセンブリは、対応する発電機巻線によって提供されうる電力と本質的に一致する総容量を有する複数の電解質ユニットを含む。例えば、2本の巻線を有する8MWの風力タービンの場合、電解質アセンブリは4つのユニットを含むことができ、その各々が2MWの電解槽/スタックを含む。
【0020】
風力タービンが定格電力で動作している場合、全ての負荷を駆動することができる。つまり、全ての電解質アセンブリを駆動することができる。弱風条件では、風力タービンは、その定格電力未満で動作し、全ての電解質アセンブリを駆動するのに十分な電力を供給できない場合がある。本発明の方法の好ましい実施形態は、風力タービンの発電機の電力出力を決定するステップと、利用可能電力によって駆動される電解質ユニットの数を選択するステップと、例えば、対応するAC‐DC電力変換器に制御信号を発出して、直流電力を各ユニットの定格容量の100%に増加させることにより、選択された電解質ユニットのAC‐DC電力変換器を調節するステップと、を含む。
【0021】
残りのユニットは、例えば、対応するAC‐DC電力変換器に制御信号を発出することで直流電力をゼロにするなどして、非作動状態となる。これらのユニットは、例えば風速が上昇した場合、後で電解転換のプロセスを再開することができる。
【0022】
本発明のさらに好ましい実施形態では、電気分解装置は、各電機子巻線とその電解質アセンブリとの間に設けられたスイッチと、スイッチを作動させるように構成されたスイッチコントローラと、を含む。システムを動作可能な構成要素のみに制限することを目的として、例えば無負荷損失を低減するため、または欠陥を有する構成要素を分離するため(例えば、故障した電力変換器または故障した電解質ユニットを分離するため)など、種々の理由でスイッチを開放する必要がありうる。
【0023】
本発明の好ましい実施形態では、電解槽は、水を水素および酸素へ電極触媒転換(electrocatalytic conversion)するように構築される。本発明の方法は、水素の大規模かつ効率的な製造に適用することができ、これには、燃料電池の動力源など、種々の商業的用途が含まれる。
【0024】
水を電気分解するには、塩分などの汚染物質を除去するために水を浄化する必要がある。そのため、本発明の電気分解装置を洋上風力タービンで実現する場合、当該電気分解装置は、海水を脱塩する脱塩モジュールをさらに含むことになる。脱塩モジュールは、多段フラッシュ蒸留モジュール、多重効用蒸留モジュール、真空蒸気圧縮蒸留モジュールなどとして実現することができ、脱塩水を精製および脱イオン化するためのさらなる構成要素を含んでいてもよい。かかる脱塩モジュールは、電解スタックに供給するのに適した純水を出力する。
【0025】
代替の好ましい実施形態では、大気中の二酸化炭素をメタン、エチレン、エタンなどのガスに電極触媒転換するための電解槽を実現することができる。
【0026】
電解質ユニットに入力(精製されたH2O、大気中のCO2など)を供給するデバイスに電力を供給し、他の補助的な風力タービンデバイスに電力を供給するために、本発明の電気分解装置は、従来の方法で発電するために使用される追加の風力タービンのような専用電源を含んでいてよい。しかし、本発明の好ましい実施形態では、発電機によって生成された電力の一部は、必要に応じてかかるデバイスに電力を供給するために使用可能であり、当該風力タービンの残りの電力は、電解質アセンブリの駆動に使用される。
【0027】
本発明の電気分解装置の一実施形態では、電解質アセンブリの電解質ユニットは、同じ種類の電気分解(例えば、純水からH2およびO2への電気分解)を行うことができ、全て同じ容量を有していてもよく、さらに電解質アセンブリが全て本質的に同一であってもよい。しかし、かかる実施形態は必須ではなく、本発明の電気分解装置は、例えば、異なる容量および/または異なるタイプの電解の組み合わせを利用するなど、実用的な電解質ユニットの構成で実現することができる。
【0028】
本発明の他の目的および特徴は、添付の図面と併せて検討される以下の詳細な説明から明らかになるであろう。しかし、図面は例示の目的のためにのみ設計されたものであり、本発明の限界を定義するものではないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の電気分解装置の実施形態を示す図である。
【
図2】本発明の電気分解装置の実施形態を示す図である。
【
図3】本発明の電気分解装置の実施形態を示す図である。
【0030】
図中、同じ数字は同じ対象を指している。図中の対象は必ずしも縮尺通りに描かれているわけではない。
【0031】
図1~
図3は、本発明の電気分解装置1を説明するための簡略化されたブロック図である。
図3に示すように、電気分解装置1は、複数の洋上風力タービン10を含みうる。
図1は、かかる1つの風力タービンの発電機10G、例えば、2本の巻線10Wを有する8MWの発電機10Gを示している。そのため、各巻線10Wで、風力タービンの定格出力時には最大4MWの交流電力を得ることができる。
【0032】
各巻線10Wは、スイッチSを介して電解質アセンブリ11Aに接続されている。スイッチは、スイッチコントローラSCによって制御される。
【0033】
共に電解質アセンブリ11Aを構成する構成要素は、破線で描かれた長方形の囲みで集合的に示されている。各電解質アセンブリ11Aは、それぞれAC‐DC電力変換器110と電解槽11またはスタック11とを備えた複数の電解質ユニット11Uを含む。共に電解質ユニット11Uを構成する構成要素は、図の下層の(点線で描かれた)囲みで集合的に示されている。
【0034】
変換器ユニットコントローラ11Cは、各AC‐DC電力変換器110に対して制御信号110Cを発出する。電力変換器110の制御信号110Cは、対応する電解槽11に供給される定格電力の割合を指定する。変換器ユニットコントローラ11Cは、電解質アセンブリ11A間で分配できる利用可能電力を決定するために、風力タービンコントローラなどからデータD(例えば、発電されている定格電力の量)を受信することができる。各AC‐DC電力変換器110は、変換器ユニットコントローラ11Cから受信した制御信号110Cによって決定されるレベルで、交流入力を直流電圧UDCおよび直流電流IDCに変換する。
【0035】
電解スタック11には、入力材料11_inが供給され、その出力11_outは、1つ以上の製品となりうる。例えば、精製水11_inに適切な電解質を加えて水の電気分解を行うことができ、この場合の出力11_outは、水素H2および/または酸素O2である。
【0036】
一度に動作しうる電解スタック11の数は、利用可能電力に依存しており、これは風速にも依存する。
図2は、2本の巻線10Wを有する発電機10Gを備えた簡略化された実施形態を示しており、各巻線が電解質アセンブリ11Aを駆動し、各電解質アセンブリ11Aが2つずつの電解質ユニット11Uを含む。2つの電解質アセンブリは、11A:1および11A:2とラベリングされており、第1の電解質アセンブリ11A:1の2つの電解質ユニットは、11U:1aおよび11U:1bとラベリングされており、第2の電解質アセンブリ11A:2の2つの電解質ユニットは、11U:2aおよび11U:2bとラベリングされている。利用可能電力は、最適な利用が達成されるように電解質ユニットに分配することができる。次の表は、例示的な分配を示している:
【表1】
100%の容量では、発電機の電力出力は、両方の電解質アセンブリに均等に分配される。発電機の全出力時には、各電解質ユニット11Uは、利用可能電力の25%で駆動される。
【0037】
2段目は、風速が低下して発電機の電力出力が60%に低下した状況を示している。ここでは、第1の電解質アセンブリ11A:1が全出力の36%で駆動し、第2の電解質アセンブリ11A:2が全出力の24%で駆動するように、利用可能電力が分配される。第1の電解質アセンブリ11A:1の電解質ユニット11U:1aおよび11U:1bは、それぞれ全出力の20%および16%で駆動され、第2の電解質アセンブリ11A:2の電解質ユニット11U:2aおよび11U:2bは、それぞれ全出力の12%で駆動される。
【0038】
3段目は、風速がさらに低下して、発電機の電力出力が40%に低下した場合である。この電力は1本の巻線で発生する。ここで、第2の電解質アセンブリ11A:2は、例えば対応するスイッチを開放することにより、または変換器ユニットコントローラに適切な制御信号を発出することにより、「除去」される。利用可能電力は第1の電解質アセンブリ11A:1の専用となり、その電解質ユニット11U:1aおよび11U:1bがそれぞれ全出力の20%および20%で駆動される。
【0039】
表の4段目は、風速がさらに低下して、発電機の電力出力が20%に低下した場合を示している。ここでも、この電力は1本の巻線で生成され、第2の電解質アセンブリ11A:2は切断されたままである。利用可能電力は、第1の電解質アセンブリ11A:1の専用となり、ただし、単一の電解質ユニット11U:1aを効率的に駆動するのに十分な程度のみとなる。他方の電解質ユニット11U:1bは、駆動されない。
【0040】
図3は、本発明の電気分解装置1のさらなる実施形態を示す。ここで、図は、例えばウィンドパーク構成の複数の風力タービン10を示している。電気分解アセンブリ11Aの集合出力11_outは、パイプライン15、例えば、水素を陸上設備に輸送するための加圧水素パイプラインに供給される。
【0041】
本発明を、好ましい実施形態およびその変形の形態で開示してきたが、本発明の範囲から逸脱することなく多数の追加の修正および変形が可能であることが理解されるであろう。例えば、風力タービン発電機は、単一の電解質アセンブリに電力を供給する単一の巻線を有していてよい。このように実現することにより、完全な電解質アセンブリを駆動するのに十分な風力エネルギがあるときに、電気分解を行うことができる。
【0042】
明確化のために、本出願における「a」「an」の使用は複数を除外するものではなく、「含む(comprising)」は他のステップまたは要素を除外するものではないことを理解されたい。なお、「ユニット」または「モジュール」と記載されていても、複数のユニットまたはモジュールを使用することを妨げるものではない。