(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】手乾燥装置
(51)【国際特許分類】
A47K 10/48 20060101AFI20220906BHJP
【FI】
A47K10/48 A
(21)【出願番号】P 2021064915
(22)【出願日】2021-04-06
【審査請求日】2021-04-06
(31)【優先権主張番号】P 2020124183
(32)【優先日】2020-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591066465
【氏名又は名称】日本エアーテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104547
【氏名又は名称】栗林 三男
(74)【代理人】
【識別番号】100206612
【氏名又は名称】新田 修博
(74)【代理人】
【識別番号】100209749
【氏名又は名称】栗林 和輝
(74)【代理人】
【識別番号】100217755
【氏名又は名称】三浦 淳史
(72)【発明者】
【氏名】磯部 好秀
(72)【発明者】
【氏名】小川 直樹
(72)【発明者】
【氏名】塚原 俊郎
(72)【発明者】
【氏名】山口 真一
【審査官】広瀬 杏奈
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-037675(JP,A)
【文献】国際公開第2017/057597(WO,A1)
【文献】特開2008-048877(JP,A)
【文献】特開平05-293055(JP,A)
【文献】特開昭61-109533(JP,A)
【文献】特開2007-075335(JP,A)
【文献】特開2007-090035(JP,A)
【文献】特開2016-168182(JP,A)
【文献】独国実用新案第202012006804(DE,U1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
手に付着している水分を乾燥させる乾燥室を有する手乾燥装置であって、
前記乾燥室に設けられて、エアを吹き出し可能なスリット状のノズルを有する吹出管と、
パルスエアを発生するパルスエア発生部とを備え、
前記パルスエア発生部は、前記吹出管にエアを供給する供給管と前記吹出管とを接続する継手部に設けられ、
前記供給管から前記継手部に前記エアが流入する際に当該エアの流路断面積を急拡大する急拡大部と、前記継手部から前記吹出管に前記エアが流入する際に当該エアの流路断面積を急縮小する急縮小部とを有し、
前記パルスエア発生部によって発生したパルスエアが前記吹出管に供給されたうえで前記ノズルから前記乾燥室に手挿入口を通して挿入された手に向けて吹き出されることを特徴とする手乾燥装置。
【請求項2】
前記乾燥室は上面壁、前面壁、両側面壁、背面壁および底面壁を備え、
前記上面壁の先端部と前記前面壁の上端部との間に前記手挿入口が設けられ、
前記手挿入口の上方近傍に前記吹出管が設けられ、
前記吹出管の前記ノズルから噴出されるパルスエアの吹出角度が、鉛直面に対して前記背面壁の側に10°~20°で傾斜していることを特徴とする請求項
1に記載の手乾燥装置。
【請求項3】
前記乾燥室は上面壁、前面壁、両側面壁、背面壁および底面壁を備え、
前記上面壁は、前記前面壁の側に向かうほど水平面に対して下方に傾斜する傾斜壁と、当該傾斜壁の先端部から前記手挿入口の上部まで延出する延出壁とを有し、
前記背面壁に前記乾燥室内のエアを外部に排出する排出口が前記上面壁の基端部において設けられていることを特徴とする請求項1
または2に記載の手乾燥装置。
【請求項4】
前記傾斜壁が水平面に対して7°~15°で傾斜し、前記延出壁は前記傾斜壁に対して100°~120°で傾斜していることを特徴とする請求項
3に記載の手乾燥装置。
【請求項5】
前記乾燥室内の水滴が前記排出口から外部に飛散するのを防止する水滴ガードプレートを備えていることを特徴とする請求項
3または4に記載の手乾燥装置。
【請求項6】
前記水滴ガードプレートは、前記上面壁の基端部に取り付けられていることを特徴とする請求項
5に記載の手乾燥装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手洗乾燥機やハンドドライヤーに設けられて、手に付着している水分を乾燥させる手乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
浮遊粒子・菌および異物の混入防止が特に重視される電子工業、医薬品、食品分野などの製造工程(本室)はクリーンルーム等により清浄環境に保たれており、入室前には準清浄環境の前室にて更衣、手洗いが行なわれる。手洗い後の乾燥には再汚染防止のためハンドドライヤー(手指乾燥機)が使用されることが多い。一般的なハンドドライヤーでは吹出ノズルから吹き出された高速気流により、手指に付着した水滴を吹き飛ばし非接触かつ短時間で乾燥が行える。
このようなハンドドライヤーの一例として特許文献1に記載のものが知られている。
このハンドドライヤーは、ケースと、乾燥室と、吹出しノズルとを備えている。
【0003】
ケースは、乾燥室が設けられるものであり、矩形箱状に形成されている。ケースは乾燥室が設けられるケース本体と、このケース本体の上部開口部に着脱可能に取り付けられた上部ケースとを備えている。上部ケースには、乾燥室の上方において開口する手挿入口が設けられている。
また、乾燥室の上部でかつ、手挿入口より後側には、吹出しノズルが設けられ、この吹出しノズルは、その先端縁に設けられた先端開口からエアを乾燥室の内部に向けて吹き出すようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述したハンドドライヤーや手洗乾燥機では、吹出しノズルから手にエアを連続的に吹き付けることによって手から水分を吹き飛ばして手を乾燥させているため、乾燥にある程度の時間を要していた。また、水分の吹き飛ばしの効果を高めるために、手もみをするなど使用者に手間をかけるばかりか、乾燥室の内部が狭い場合、手もみをするのが困難になる場合もある。
【0006】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたもので、従来に比して手を短時間で乾燥させることができるとともに、使用者に手もみなどの手間をかけることがない手乾燥装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の手乾燥装置は、手に付着している水分を乾燥させる乾燥室を有する手乾燥装置であって、
前記乾燥室に設けられて、エアを吹き出し可能なスリット状のノズルを有する吹出管と、
パルスエアを発生するパルスエア発生部とを備え、
前記パルスエア発生部は、前記吹出管にエアを供給する供給管と前記吹出管との間に設けられ、
前記パルスエア発生部によって発生したパルスエアが前記吹出管に供給されたうえで前記ノズルから前記乾燥室に手挿入口を通して挿入された手に向けて吹き出されることを特徴とする。
このような手乾燥装置は、手洗乾燥機やハンドドライヤーに設けられる。
【0008】
本発明においては、手を乾燥させる際に、パルスエア発生部によって発生したパルスエアが吹出管に供給されたうえでノズルから乾燥室に挿入された手に向けて吹き出されるので、エアが手に断続的に吹き付けられる。したがって、手に付着した水分が叩き落とされるようにして吹き飛ばされるので、従来に比して手を短時間で乾燥させることができるとともに、使用者に手もみなどの手間をかけることがない。
【0009】
また、本発明の前記構成において、前記パルスエア発生部は、前記供給管と前記吹出管とを接続する継手部に設けられ、
前記供給管から前記継手部に前記エアが流入する際に当該エアの流路断面積を急拡大する急拡大部と、前記継手部から前記吹出管に前記エアが流入する際に当該エアの流路断面積を急縮小する急縮小部とを有していてもよい。
【0010】
このような構成によれば、供給管から継手部にエアが流入する際に急拡大部によって流路断面積を急拡大することによって、エアが脈動し、さらに、継手部から吹出管にエアが流入する際に急縮小部によって流路断面積を急縮小することによって、エアが脈動する。
したがって、パルスエアを容易に発生させることができるとともに、継手部にパルスエア発生部が設けられているので、パルスエア発生部が供給管の基端部等に設けられている場合に比してパルスエアの減衰を抑制できる。
【0011】
また、本発明の前記構成において、前記乾燥室は上面壁、前面壁、両側面壁、背面壁および底面壁を備え、
前記上面壁の先端部と前記前面壁の上端部との間に前記手挿入口が設けられ、
前記手挿入口の上方近傍に前記吹出管が設けられ、
前記吹出管の前記ノズルから噴出されるパルスエアの吹出角度が、鉛直面に対して前記背面壁の側に10°~20°で傾斜していてもよい。
【0012】
ここで、パルスエアの吹出角度が10°未満であると、パルスエアが手挿入口から漏洩し易くなり、パルスエアの吹出角度が20°を超えると、パルスエアが背面壁に衝突して跳ね返り、手挿入口から漏洩し易くなるとともに、後述する誘引気流と干渉するので、パルスエアの吹出角度を10°~20°に設定する。
【0013】
このような構成によれば、吹出管が上面壁の下方でかつ、手挿入口の内側上方に設けられているので、手挿入口から挿入された手にノズルから確実にパルスエアを吹き付けることができる。
また、吹出管のノズルから噴出されるパルスエアの吹出角度が、鉛直面に対して背面壁の側に10°~20°で傾斜しているので、パルスエアが手挿入口から漏洩するのを抑制できるとともに、パルスエアによって外部のエアが手挿入口を通して乾燥室に誘引されて誘引気流となることによりエアの風量が増大するので、手を効率的に乾燥できる。
【0014】
また、本発明の前記構成において、前記乾燥室は上面壁、前面壁、両側面壁、背面壁および底面壁を備え、
前記上面壁は、前記前面壁の側に向かうほど水平面に対して下方に傾斜する傾斜壁と、当該傾斜壁の先端部から前記手挿入口の上部まで延出する延出壁とを有し、
前記背面壁に前記乾燥室内のエアを外部に排出する排出口が前記上面壁の基端部において設けられていてもよい。
【0015】
このような構成によれば、傾斜壁が前面壁の側に向かうほど水平面に対して下方に傾斜しているので、吹出管のノズルから噴出されたパルスエアは乾燥室内において底面壁で跳ね返って上方へと流れ、傾斜壁に沿って背面壁に向けて流れたうえで、排出口から排出される。したがって、乾燥室内のエアをスムーズに排出口から排出でき、手挿入口からの漏洩を抑制できる。また、延出壁は、傾斜壁の先端部から手挿入口の上部まで延出しているので、傾斜壁に沿って手挿入口に向けて流れるエアの漏洩を抑制できる。
【0016】
また、本発明の前記構成において、前記傾斜壁が水平面に対して7°~15°で傾斜し、前記延出壁は前記傾斜壁に対して100°~120°で傾斜していてもよい。
【0017】
ここで、傾斜壁の傾斜角度が7°未満であると、乾燥室内のエアが排出口側に流れ難くなって滞留するおそれがあり、傾斜壁の傾斜角度が15°を超えると、傾斜壁の傾斜角度が大きくなりすぎて、乾燥室内のエアが排出口から排出し難くなるので、傾斜壁の傾斜角度を7°~15°に設定する。
また、延出壁の傾斜角度が100°未満であると、延出壁の長さが等しい場合に手挿入口が上下に狭くなって手を挿入し難くなり、延出壁の傾斜角度が120°を超えると、乾燥室内のエアが手挿入口から漏洩し易くなるので、延出壁の傾斜角度を100°~120°に設定する。
【0018】
このような構成によれば、傾斜壁の傾斜角度が7°~15°であるので、乾燥室内のエアの滞留を抑制してエアを排出口からスムーズに排出できる。また、延出壁の傾斜角度が100°~120°であるので、乾燥室内のエアの手挿入口からの漏洩を抑制できるとともに手挿入口に手を挿入し易くなる。
【0019】
また、本発明の前記構成において、前記乾燥室内の水滴が前記排出口から外部に飛散するのを防止する水滴ガードプレートを備えていてもよい。
【0020】
このような構成によれば、水滴ガードプレートによって、排出口から外部への水滴飛散を防止し、気流のみ外部に排出することができる。したがって、手乾燥装置の設置場所の壁等に水滴汚れが付着するのを防止できる。
【0021】
また、本発明の前記構成において、前記水滴ガードプレートは、前記上面壁の基端部に取り付けられていてもよい。
【0022】
このような構成によれば、水滴ガードプレートが上面壁の基端部に取り付けられているので、上面壁の基端部において設けられている排出口からの水滴飛散をより確実に防止できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、従来に比して手を短時間で乾燥させることができるとともに、使用者に手もみなどの手間をかけることがない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】第1の実施形態の手乾燥装置が設けられた手洗乾燥機の一例を示すもので、その側面図である。
【
図3】第1の実施形態の手乾燥装置の乾燥室の概略構成を模式的に示す図である。
【
図4】第1の実施形態の手乾燥装置において、傾斜壁の角度、延出壁の角度、ノズルの吹出角度を説明するための模式図である。
【
図5】第1の実施形態の手乾燥装置の吹出管の概略構成を示す模式図である。
【
図6】第2の実施形態の手乾燥装置の乾燥室の概略構成を模式的に示す図である。
【
図7】水滴飛散実験例を説明するためのもので、(a)は排出口付近に水書き用紙を配置した状態を示す斜視図、(b)水書き用紙に水滴が付着している状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1および
図2は本発明に係る手乾燥装置を備えた手洗乾燥機の第1の実施形態を示すもので、
図1は手洗乾燥機の側面図、
図2は同正面図である。
【0026】
図1および
図2に示すように、第1の実施形態の手洗乾燥機10は、ケース11とこのケース11内に設けられた手乾燥装置20とを備えている。
ケース11は矩形箱状に形成されており、このケース11内には、シンク12が収容されている。ケース11はシンク12を収容するケース本体11aと、このケース本体11aの上部に設けられた上部ケース11bとを備え、ケース本体11aの内部と上部ケース11bの内部とは上下に連通している。
上部ケース11bには、シンク12の上方において開口する手挿入口11cが設けられている。この手挿入口11cは、
図2に示すように、横長の矩形状の開口となっている。
【0027】
シンク12は、矩形箱状に形成されており、その上部に開口が設けられている。この開口の上方に手挿入口11cが配置されており、シンク12は、開口と手挿入口11cにより外部と連通している。シンク12の底壁には排水口16が垂設され、この排水口16には、ケース本体1aの下部に設けられる下部ドレンパンに向けて延びる排水管17が接続されている。
また、シンク12の上方でかつ奥側には自動水栓18が設けられている。この自動水栓18には給水管18aが接続され、この給水管18aに水に含まれる異物を捕集するためのフィルタ18bが接続され、このフィルタ18bが上水道に接続されている。
また、上部ケース11bの内側上部には殺菌灯19が設けられ、この殺菌灯19により手に付着している菌を殺菌できるようになっている。
【0028】
また、手乾燥装置20は乾燥室15を有している。
図3は乾燥室15の概略構成を模式的に示す図である。
図3に示すように、乾燥室15はシンク12と、当該シンク12より上方の空間12aとによって構成されており、上面壁31、前面壁32、両側面壁33,33(
図2参照)、背面壁34および底面壁35を備え、これらによって囲まれた部分が乾燥室15となっている。前記手挿入口11cは、上面壁31の先端部と前面壁32の上端部との間に設けられ、乾燥室15には、手挿入口11cを通して手を挿入可能となっている。
【0029】
上面壁31は、ケース11の上部開口を開閉可能に塞ぐ上部カバー31によって構成されている。上面壁(上部カバー)31の基端部(
図1および
図3において右端部)はケース11の上端部に回動可能に取り付けられており、これによって、上面壁31は基端部を軸として上下に回動して、ケース11の上部開口、すなわち、乾燥室15の上部開口を開閉可能としている。
また、上面壁31は、乾燥室15の上部開口を閉じた状態(
図3に示す状態)において、前面壁32の側に向かうほど水平面に対して下方に傾斜する傾斜壁31aと、当該傾斜壁31aの先端部から手挿入口11cの上部まで延出する延出壁31bと、傾斜壁31aの基端部から水平に延びる水平壁31cとを備えている。
また、背面壁34の上端部には、乾燥室15内のエアを外部に排出する排出口36が水平壁31cの下方に設けられている。
【0030】
図4に示すように、傾斜壁31aは水平面に対して7°~15°で傾斜しているが、本実施形態では傾斜角度α=9°で傾斜している。ここで、傾斜壁31aの傾斜角度αが7°未満であると、乾燥室15内のエアが排出口36側に流れ難くなって滞留するおそれがあり、傾斜壁31aの傾斜角度αが15°を超えると、傾斜壁31aの傾斜角度が大きくなりすぎて、乾燥室15内のエアが排出口36から排出し難くなるので、傾斜壁31aの傾斜角度は7°~15°に設定されている。
延出壁31bは傾斜壁31aに対して100°~120°で傾斜しているが、本実施形態では傾斜角度β=114°で傾斜している。ここで、延出壁31bの傾斜角度βが100°未満であると、延出壁31bの長さが等しい場合に手挿入口11cが上下に狭くなって手を挿入し難くなり、延出壁31bの傾斜角度βが120°を超えると、乾燥室15内のエアが手挿入口11cから漏洩し易くなるので、延出壁の傾斜角度は100°~120°に設定されている。
【0031】
図3に示すように、前面壁32はシンク12の前側(
図3において左側)の内面によって構成され、
図2に示すように、側面壁33はシンク12の側面側の内面とケース11の上端部の上部ケース11bの対向する内側面とによって構成されている。
図3に示すように、背面壁34は、シンク12の背面側の内面34aと、上部ケース11bの背面側の内面34bとによって構成されている。したがって、背面壁34は内面34aと内面34bとの間で段差を有している。
底面壁35はシンク12の底面によって構成されている。
【0032】
また、
図2に示すように、ケース11の内部にはシンク12の下方にエア供給部22が設けられている。
エア供給部22は送風機23を備えている。送風機23はケース本体1aの下部に設けられたケーシング24の内部に設けられている。ケーシング24の前面(
図2において左面)は開口しており、この開口部に不織布等で形成されたプレフィルタ25が設けられている。また、ケーシング24の後面(
図2における右面)は開口しており、この開口部にHEPAフィルタ26が設けられている。
また、ケース1の右側面側にはエア流通路27が上下に延在して設けられ、当該エア流通路27の上端部は、後述する供給管42(
図5参照)に接続されている。また、エア流通路27の下端部と、ケーシング24の後面側の開口とが接続されている。
【0033】
そして、このような構成のエア供給部22では、送風機23が起動することによって、ケース11の内部のエアがプレフィルタ25を通ってケーシング24内に吸引され、さらに当該エアがHEPAフィルタ26を通ってエア流通路27に供給される。エア流通路27に供給されたエアはプレフィルタ25およびHEPAフィルタ26によって異物が捕集された清浄なエアとなり、当該エアがエア流通路27を流通して、供給管42に供給される。供給管42に供給されたエアは、後述する継手部45を通して、吹出管40に供給され、この吹出管40に設けられたノズル40aから吹き出される。ノズル40aから吹き出されたエアの一部はケース11の背面側に設けられた回収口11dから下部に戻りプレフィルタ25を通って循環する。また、ノズル40aから吹き出されたエアの残りは前記排出口36から外部に排出される。
【0034】
また、手乾燥装置20は、
図5に示すように、エアを吹き出し可能なスリット状のノズル40a,40aを有する吹出管40と、パルスエアを発生するパルスエア発生部41とを備えている。
吹出管40は乾燥室15に、手挿入口11cの上方近傍において設けられている。具体的には、吹出管40は、上面壁31の先端部の下方でかつ、手挿入口11cの内側上方に設けられている。また、吹出管40は円筒状に形成され、その外周面に2つのスリット状のノズル40a,40aが吹出管40の軸方向に沿って所定間隔で2つ設けられている。ノズル40aのスリット長さは100mm、スリット幅は2mmに設定されているが、これに限るものではない。
【0035】
ノズル40a,40aから吹き出されるパルスエアは、本実施形態では、吹出管40にエアが供給される基端部(
図5において右端部)から遠い側、つまり左側のノズル40aから吹き出されるパルスエアによって形成されるパルスエア気流の方が、近い側、つまり右側のノズル40aから吹き出されるパルスエアによって形成されるパルスエア気流より強く感じられる、つまり、パルスエア気流の風量が多くなる。
一方、パルスエア気流の単位時間当たりの脈動数は、右側のノズル40aから吹き出されるパルスエアの方が、左側のノズル40aから吹き出されるパルスエアより大となっている。
【0036】
また、
図4に示すように、吹出管40のノズル40a,40aから噴出されるパルスエアの吹出角度γは、鉛直面に対して背面壁34の側に10°~20°で傾斜しているが、本実施形態では、吹出角度γ=15°で傾斜している。ここで、パルスエアの吹出角度が10°未満であると、パルスエアが手挿入口11cから漏洩し易くなり、パルスエアの吹出角度が20°を超えると、パルスエアが背面壁34に衝突して跳ね返り、手挿入口11cから漏洩し易くなるとともに、後述する誘引気流と干渉するので、パルスエアの吹出角度は10°~20°に設定されている。
【0037】
パルスエア発生部41は、
図5に示すように、吹出管40にエアを供給する供給管42と吹出管40との間に設けられている。すなわち、供給管42と吹出管40とは継手部45によって接続され、この継手部45にパルスエア発生部41が設けられている。
継手部45は、直方体の中空箱状に形成されており、供給管42が接続される接続部45aと、吹出管40が接続される接続部45bとを備えている。
【0038】
接続部45aは円筒状の管によって構成され、供給管42とほぼ等しい流路断面積を有している。また、接続部45aは継手部45の下側を向く外面に設けられた孔45cに一体的に接続されている。継手部45の流路断面積は、接続部45aの流路断面積より大きくなっており、これによって、供給管42から接続部45aを通して継手部45にエアが流入する際に当該エアの流路断面積を急拡大する急拡大部46が構成されている。
また、吹出管40の基端部にはフランジ部40fが設けられ、このフランジ部40fが継手部45の外面に設けられた孔45dの周囲に固定されている。吹出管40の流路断面積は継手部45の流路断面積より小さくなっており、これによって、継手部45から吹出管40にエアが流入する際に当該エアの流路断面積を急縮小する急縮小部47が構成されている。
なお、本実施形態では、継手部45の流路断面積とは、直方体の中空箱状の継手部の対向する内壁面に直交する面の面積のことをいう。
【0039】
第1の実施形態の手乾燥装置20では、手挿入口11cから手を挿入すると、エア供給部22の送風機23が起動することによって、ケース11の内部のエアがプレフィルタ25、HEPAフィルタ26を通って異物が捕集されたうえでエア流通路27に供給され、エア流通路27に供給されたエアが供給管42に供給される。供給管42に供給されたエアは、継手部45を通して吹出管40に供給され、この吹出管40のノズル40aから吹き出される。
継手部45には、パルスエア発生部41が設けられているので、吹出管40に供給されたエアはパルスエアとなって、ノズル40aから吹き出される。ノズル40aから吹き出されたパルエアは、
図3に示すように、パルスエア気流PAとなって手に断続的に吹き付けられる。したがって、手に付着した水分が叩き落とされるようにして吹き飛ばされるので、従来に比して手を短時間で乾燥させることができるとともに、使用者に手もみなどの手間をかけることがない。
【0040】
また、ノズル40aから吹き出されるパルスエアによって形成されるパルスエア気流PAによって、外部のエアが手挿入口11cを通して誘引されて誘引気流ATとなって乾燥室15内の風量(空気量)が増大する。
また、吹出管40は円筒状の管によって形成されているので、四角筒状の管によって形成されたものに比して、圧力損失が下がるので、この点においても風量が増大する。
さらに、前記パルスエア気流PAは、乾燥室15の底面壁35に衝突して跳ね返って上昇するので、乾燥室15の上部に旋回気流SAが生じ、この旋回気流SAは、風量増大によって大きくなる。
したがって、パルスエア気流PA、誘引気流ATおよび旋回気流SAによって手を素早く乾燥させることができる。
そして、乾燥に供されたパルスエア気流PA、誘引気流ATおよび旋回気流SAのエアの一部はケース11の背面側に設けられた回収口11dから下部に戻りプレフィルタ25を通って循環する。また、エアの残りは前記排出口36から外部に排出される。
【0041】
以上のように、第1の実施形態によれば、手を乾燥させる際に、パルスエア発生部41によって発生したパルスエアが吹出管40に供給されたうえでノズル40aから乾燥室15に挿入された手に向けて吹き出されるので、エアが手に断続的に吹き付けられる。したがって、手に付着した水分が叩き落とされるようにして吹き飛ばされるので、従来に比して手を短時間で乾燥させることができるとともに、使用者に手もみなどの手間をかけることがない。
また、パルスエア発生部41は、供給管42と吹出管40とを接続する継手部45に設けられた、急拡大部46と急縮小部47とを有しているので、供給管42から継手部45にエアが流入する際に急拡大部46によって流路断面積を急拡大することによって、エアが脈動し、さらに、継手部45から吹出管40にエアが流入する際に急縮小部47によって流路断面積を急縮小することによって、エアが脈動する。
したがって、パルスエアを容易に発生させることができるとともに、継手部45にパルスエア発生部41が設けられているので、パルスエア発生部41が供給管42の基端部等に設けられている場合に比してパルスエアの減衰を抑制できる。
【0042】
また、吹出管40が上面壁31の下方でかつ、手挿入口11cの内側上方に設けられ、吹出管40のノズル40aから噴出されるパルスエアの吹出角度γが、鉛直面に対して背面壁34の側に10°~20°で傾斜しているので、手挿入口11cから挿入された手にノズル40aから確実にパルスエアを吹き付けることができるとともに、パルスエアが手挿入口11cから漏洩するのを抑制できるとともに、パルスエアによって外部のエアが手挿入口11cを通して乾燥室15に誘引されて誘引気流ATとなることによりエアの風量が増大するので、手を効率的に乾燥できる。
【0043】
さらに、上面壁31は、前面壁32の側に向かうほど水平面に対して下方に傾斜する傾斜壁31aと、当該傾斜壁31aの先端部から手挿入口11cの上部まで延出する延出壁31bとを有し、背面壁34に乾燥室15内のエアを外部に排出する排出口36が傾斜壁31aの基端部において設けられているので、吹出管40のノズル40aから吹き出されたパルスエアは乾燥室15内において底面壁35で跳ね返って上方へと流れ、傾斜壁31aに沿って背面壁34に向けて流れたうえで、排出口36から外部に排出される。したがって、乾燥室15内のエアをスムーズに排出口36から排出でき、手挿入口11cからの漏洩を抑制できるとともに、傾斜壁31aに沿って手挿入口11cに向けて流れるエアの漏洩を延出壁31bによって抑制できる。
また、傾斜壁31aが水平面に対して7°~15°で傾斜しているので、乾燥室15内のエアの滞留を抑制してエアを排出口36からスムーズに排出できるとともに、延出壁31bは傾斜壁31aに対して100°~120°で傾斜しているので、乾燥室15内のエアの手挿入口11cからの漏洩を抑制できるとともに手挿入口11cに手を挿入し易くなる。
【0044】
なお、第1の実施形態では、本発明に係る手乾燥装置20を、自動水栓18を備えた手洗乾燥機10に適用した場合を例にとって説明したが、手乾燥装置20は自動水栓18等の水栓を備えていないハンドドライヤーに適用してもよい。
【0045】
(実験例)
次に実験例について説明する。
上述したパルスエア発生部の有効性について実験した。
(1)実験方法
i)パルスエアにより形成されるパルスエア気流の発生有無にて実験を実施した。パルスエア発生部を有するものを実験例、有しないものを比較例とする。
ii)手を水で十分に濡らし、10秒乾燥後の手に残っている残水量による評価方法にて比較した。
iii)A~Dの4名にて5回の実験を行い、平均値を算出した。
【0046】
(2)実験結果
本発明に係る実験例を表1に、比較例を表2に示す。
【0047】
【0048】
【0049】
上記結果より、パルスエア気流(脈動)有りの方が、乾燥性能が高いことが分かる。
【0050】
次に、パルスエア発生部が設けられる継手部の容積の違いによるパルスエア気流による乾燥性能について実験した。
(1)実験内容
継手部のサイズ(容積)による乾燥性能の違いを検証する実験を行った。実験に使用した継手部のサイズを下記に示す。
また、ノズルのスリット幅を従来は1.6mmとしていたが、パルスエア吹出し停止直前にスリットから笛吹音が発生するため、今回はノズルのスリット幅を2.0mmとした
継手部(大):W125mm×D56.5mm×H60mm(容積:424cm3)
継手部(中):W60mm×D56.5mm×H57.5mm(容積:195cm3)
継手部(小):W50mm×D50mm×H50mm(容積:125cm3)
(2)実験方法
i)実験条件
大、中、小の継手部にて実験を実施し、10秒乾燥後の残水量による評価方法にて比較した。また、A~Fの6名にて5回の上記実験を行い、平均値を算出した。
(3)実験結果
乾燥性能の実験結果を表3~表5に示す。
【0051】
【0052】
【0053】
【0054】
表3~5の結果より、乾燥性能に関しては継手部(小)を使用した場合が最も効果大であった。急拡大、急縮小による抵抗を小さくし、スリット幅を2.0mmに広げたことにより、風量が増加し乾燥能力の向上につながったと推定する。
パルスエア吹出し停止直前の笛吹音は解消された。
【0055】
図6は、第2の実施形態の手乾燥装置の乾燥室の概略構成を模式的に示す図である。
図6に示す手乾燥装置が、
図3に示す第1の実施形態の手乾燥装置と異なる点は、水滴ガードプレート50を備えた点であるので、以下ではこの点について説明し、第1の実施形態と同一構成には同一符号を付してその説明を省略する場合もある。
【0056】
図6に示すように、水滴ガードプレート50は、手乾燥時において乾燥室15内の水滴が排出口36から外部に水滴が飛散するのを防止するものであり、例えばステンレス製の長方形板状のプレートによって形成されている。また、上部ケース11bの背面側の内面34bの上部には、断面コ字形の透光性を有する突出部51が内面34bから突出するようにして固定されており、この突出部51の内部に殺菌灯19が設けられている。
【0057】
水滴ガードプレート50は、突出部51の前面壁51aと平行離間して配置されており、水滴ガードプレート50の下端部と前面壁51aの上端部とは、水滴ガードプレート50の厚さ方向(
図6において左右方向)において所定の間隔を持って重なっている。
また、水滴ガードプレート50の上端部は、上面壁31の傾斜壁31aの基端部に取り付けられており、これによって、水滴ガードプレート50は傾斜壁31aの基端部から下方に垂下されている。
また、水滴ガードプレート50および突出部51は、乾燥室15の幅方向(
図6において紙面と直交する方向)に延在している。
【0058】
このような手乾燥装置では、乾燥に供されたパルスエア気流PA、誘引気流ATおよび旋回気流SAのエアの一部はケース11の背面側に設けられた回収口11dから下部に戻りプレフィルタ25を通って循環する。また、エアの残りは、水滴ガードプレート50の下端部と突出部51の前面壁51aの上端部との間から、水滴ガードプレート50の背面側(
図6において右面側)に入り、前記排出口36から外部に排出される。さらに、手乾燥時に発生し、上述したパルスエア気流PA、誘引気流ATおよび旋回気流SA中に存在している水滴の殆どは、排出口36に至ることなく、水滴ガードプレート50に当たって、排出口36から外部に飛散するのが防止される。
なお、水滴ガードプレート50の下端部と突出部51の前面壁51aの上端部との間から水滴が侵入するのを防止するために、当該間に水滴を捕集可能で気流(空気)を通過させることができる部材を設けてもよい。
【0059】
第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる他、乾燥室15内の水滴が排出口36から外部に飛散するのを防止する水滴ガードプレート50を備えているので、水滴ガードプレート50によって、排出口36から外部への水滴飛散を防止し、気流のみ外部に排出することができる。したがって、手乾燥装置の設置場所の壁等に水滴汚れが付着するのを防止できる。
また、水滴ガードプレート50は、上面壁31の基端部に取り付けられているので、上面壁31の基端部において設けられている排出口36からの水滴飛散をより確実に防止できる。
【0060】
(実験例)
次に、排出口からの水滴飛散実験例について説明する。
(1)実験方法
i)水滴ガイドプレートを有していない(水滴ガードプレート無しの)手乾燥装置の背面側に設けられた排出口付近に水書き用紙(水に濡れると黒色に変化する用紙)を置き、5人(A、B、C、D、Eの5人)3回手乾燥を行う。
ii)水書き用紙へ飛散した水滴の数を計測する(
図7参照)。
iii)水滴が水書き用紙へ飛散した人(C、Eの2人)のみ、水滴ガードプレートを有している(水滴ガードプレート有の)手乾燥装置の背面側に設けられた排出口付近に水書き用紙(水に濡れると黒色に変化する用紙)を置き、各人各3回手乾燥を行い、水書き用紙へ飛散した水滴の数を計測する。つまり、再実験を行う。
【0061】
その結果を表6および表7に示す。
表6は、水滴ガードプレート無しの場合の水滴数(個)を示し、表7は、水滴ガードプレート有り場合の水滴数(個)を示す。
【0062】
【0063】
【0064】
結論
表7に示すように、手乾燥時の水滴は水滴ガードプレートにて遮断され、排出口からの飛散防止に有効であることが分かる。
【符号の説明】
【0065】
11c 手挿入口
15 乾燥室
20 手乾燥装置
31 上面壁
31a 傾斜壁
31b 延出壁
32 前面壁
33 側面壁
34 背面壁
35 底面壁
36 排出口
40 吹出管
40a ノズル
41 パルスエア発生部
42 供給管
45 継手部
46 急拡大部
47 急縮小部
50 水滴ガードプレート