(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】電磁コイル
(51)【国際特許分類】
H01F 5/02 20060101AFI20220906BHJP
H01F 27/32 20060101ALI20220906BHJP
H01F 27/28 20060101ALI20220906BHJP
H01F 27/30 20060101ALI20220906BHJP
H01F 7/16 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
H01F5/02 Z
H01F27/32 150
H01F27/28 131
H01F27/30 130
H01F7/16 R
(21)【出願番号】P 2021166970
(22)【出願日】2021-10-11
【審査請求日】2022-07-12
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000192914
【氏名又は名称】株式会社神菱
(74)【代理人】
【識別番号】110002295
【氏名又は名称】弁理士法人M&Partners
(72)【発明者】
【氏名】才尾 知行
【審査官】古河 雅輝
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-340062(JP,A)
【文献】特開平11-141716(JP,A)
【文献】特開平10-289820(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 5/00- 5/06
H01F 7/06- 7/17
H01F 17/00-21/12
H01F 27/00
H01F 27/02
H01F 27/06
H01F 27/08
H01F 27/23
H01F 27/26
H01F 27/28-27/29
H01F 27/30-27/32
H01F 27/36
H01F 27/42
H01F 38/42
H01F 41/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボビンと端子とを備え、
前記ボビンは、胴部と、前記胴部の両端に第1の鍔部と第2の鍔部とを有し、
前記端子は、導線固定部を有し、
前記第1の鍔部は前記端子を支持する端子支持部を有し、
前記胴部には導線が
巻回され、
前記導線の端部である引出線部は、前記導線固定部と半田により接続され、
前記端子支持部は、前記導線固定部の下方に凹部を有していることを特徴とする電磁コイル。
【請求項2】
前記導線固定部は前記端子から反り上げられた舌状部として構成されることを特徴とする請求項1記載の電磁コイル。
【請求項3】
前記端子はストッパを有し、
前記端子支持部は、その先端に端子受部を有し、
前記端子受部は挿入部を有し、
前記端子は部分的に前記挿入部に挿入され、
前記ストッパは前記端子受部の端面に接することを特徴とする請求項1又は2記載の電磁コイル。
【請求項4】
前記端子は端子係止部を有し、
前記端子係止部は前記端子の表面から突出し、前記挿入部の内壁と接触することを特徴とする請求項
3記載の電磁コイル。
【請求項5】
前記端子係止部は、断面が傾斜形状を有することを特徴とする請求項4記載の電磁コイル。
【請求項6】
前記引出線部及び前記導線固定部は樹脂により覆われていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の電磁コイル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電磁コイルに関する。
【背景技術】
【0002】
ボビンの胴部に巻線(被覆線)を巻回したコイルを有する電磁コイルは、例えば電磁弁等に幅広く使用されている。
コイルを構成する巻線の両端は、外部から電力を供給する端子と電気的に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実公平3-9289号公報
【文献】特開2021-48273号公報
【文献】実開平5-63004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、ボビンの鍔部において、巻線の端部と、端子であるリード線の端部とを半田で接続する構成が開示されている。しかし、巻線の先端とリード線の先端とを空中で半田付けする必要がある。そのため、半田付け作業は容易ではなく、作業者には熟練の技術が要求されるという問題がある。
特許文献2は、ボビンの鍔部から突出した端子の括れ部に巻線の端部を巻き付けた後、突片で巻線の先端を挟みヒュージング溶接により接続する方法が開示されている。また、特許文献3は、巻線の端部を端子板の巻付部に巻付け、その後巻付部を半田槽に浸漬させて半田付けする構成が開示されている。これらの特許文献2、3の電磁コイルの構成は製造工程が複雑であるという問題がある。
【0005】
上記課題を鑑み、本発明は、製造工程、特に巻線の端部と端子との接合工程の作業を容易化し、作業負担を軽減することができる電磁コイルを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る電磁コイルは、
ボビン(1)と端子(3)とを備え、
前記ボビン(1)は、胴部(4)と、前記胴部(4)の両端に第1の鍔部(5)と第2の鍔部(6)とを有し、
前記端子(3)は、導線固定部(11)を有し、
前記第1の鍔部(5)は前記端子(3)を支持する端子支持部(7)を有し、
前記胴部(4)には導線(W)が巻回され、
前記導線(W)の端部である引出線部(WL)は、前記導線固定部(11)と半田により接続され、
前記端子支持部(7)は、前記導線固定部(11)の下方に凹部(14)を有していることを特徴とする。
【0007】
このような構成の電磁コイルとすることで、引出線部が導線固定部に半田付け作業の際に、第1の鍔部へ熱の伝達を大きく軽減することが可能となり、半田付け作業の最適なプロセス条件の範囲を広げることができる。また、導線固定部は引出線部との半田付けを容易とする。その結果、電磁コイルの製造の容易化に寄与する。
【0008】
また、本発明に係る電磁コイルは、
前記導線固定部(11)は前記端子(3)から反り上げられた舌状部として構成されることを特徴とする。
【0009】
このような構成の導線固定部とすることで、導線固定部の形成が容易となる。
【0010】
また、本発明に係る電磁コイルは、
前記端子(3)はストッパ(15)を有し、
前記端子支持部(7)は、その先端に端子受部(8)を有し、
前記端子受部(8)は挿入部(9)を有し、
前記端子(3)は部分的に前記挿入部(9)に挿入され、
前記ストッパ(15)は前記端子受部(8)の端面に接することを特徴とする。
【0011】
このような構成の電磁コイルとすることにより、第1の鍔部での端子の位置を確定することができる。
【0012】
また、本発明に係る電磁コイルは、
前記端子(3)は端子係止部(10)を有し、
前記端子係止部(10)は前記端子(3)の表面から突出し、前記挿入部(9)の内壁と接触することを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る電磁コイルは、
前記端子係止部(10)は、断面が傾斜形状を有することを特徴とする。
【0014】
このような構成の電磁コイルとすることにより、端子係止部と挿入部との係合により、端子の位置ずれを防止することができる。
【0015】
また、本発明に係る電磁コイルは、
前記引出線部(WL)及び前記導線固定部(11)は樹脂により覆われていることを特徴とする。
【0016】
このような構成の電磁コイルとすることにより、樹脂が引出線部及び導線固定部を保護するとともに、引出線部及び導線固定部の第1の鍔部への固定を強化する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、巻線の端部と端子との接合作業を容易化し、作業負担を軽減することができる電磁コイルを提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1(A)は電磁コイル100の斜視図を示し、
図1(B)は電磁コイル100の断面斜視図を示す。
図1(B)は、
図1(A)のX-X線断面を示す。
【
図2】
図2(A)はボビン1の斜視図、
図2(B)は端子カバー8近傍のボビン1の部分拡大斜視図であり、端子カバー8の挿入部9に端子3を挿入する工程を示す。
【
図3】
図3(A)はボビン1の上面図であり、端子3の導線固定部11に引出線部WLを仮留めされた状態を示し、
図3(B)は、端子3の導線固定部11近傍の拡大斜視図であり、端子3の導線固定部11に引出線部WLを仮留めされた状態を示す
【
図4】
図4は、引出線部WLの端子3への半田付け工程を示す電磁コイル100の部分断面図であり、
図4(A)は凹部14を有しない端子ベース7の部分断面を示し、
図4(B)は凹部14を有する端子ベース7の部分断面を示す。
【
図5】
図5(A)は、引出線部WLが端子3に半田付けされた状態の電磁コイル100の平面図であり、
図5(B)は引出線部WLを保護する樹脂を注入する工程を示す電磁コイル100の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。但し、以下の実施形態は、いずれも本発明の要旨の認定において限定的な解釈を与えるものではない。また、同一又は同種の部材については同じ参照符号を付して、説明を省略することがある。
【0020】
さらに、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件ならびにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
【0021】
(実施形態1)
以下、本発明の電磁コイル100の実施形態について説明する。
図1(A)は電磁コイル100の斜視図を示し、
図1(B)は電磁コイル100の断面斜視図を示す。
図1(B)は、
図1(A)のX-X線断面を示す。
電磁コイル100は、ボビン1と、ボビン1に巻線である被覆線Wが
巻回されて構成されたコイル2(巻線部2)と、コイル2に電源を供給するために、金属製で板状の一対の端子3を備えている。
ボビン1は、胴部4と、胴部4の上下の両端に第1の鍔部5と第2の鍔部6とを備えており、例えば樹脂やプラスチック材料により構成されている。
胴部4の周りに
巻回された被覆線W(以下、導線Wと称す。)は、銅線等の電気伝導線を芯とし、その周囲が絶縁体で被覆されて構成されている。電磁コイル100を例えば電磁弁に使用する場合、胴部4の内側には、可動鉄芯(プランジャー)を収容することが可能である。
なお、図中の上下配置は例示であり、電磁コイル100の配置方向は任意であり、限定されない。
【0022】
端子3は第1の鍔部5に固定されている。第1の鍔部5は端子支持部7(以下、端子ベース7と称す。)を有している。端子ベース7は端子3の底面と接触し、端子3を、図中下方から支持する。
端子ベース7の先端には、端子ベース7と対向して端子受部8(以下、端子カバー8と称す。)が設けられている。端子カバー8は、断面の概要が逆U字状であり、端子ベース7と端子カバー8とにより、端子3を挟み込む。
図1は、端子ベース7と端子カバー8とが一体で形成されている例を示す。
【0023】
端子カバー8は挿入部9を有し、端子3は、部分的に挿入部9内に挿入される。
端子3は端子係止部10を有している。端子係止部10は、例えば断面が三角形(楔形)の突起として構成されており、ボビン1の中央に向かって低くなるよう表面が傾斜している。端子係止部10は端子カバー8の内壁面に接し、挿入部9への端子3の侵入を容易にするとともに、挿入部9から反対方向への移動を困難にする。
【0024】
端子3は、導線固定部11を有している。導線固定部11は、端子3の表面から突出して構成され、舌状部として構成することが可能である。導線固定部11の下方には空隙が存在し、引出線部WLの挿入を可能にする。例えば、端子3の一部を導線固定部11の形状に従って、例えば矩形の3辺に切り込みを入れ、上方に反り上げ形成することで、導線固定部11を容易に設けることができる。また、導線固定部11の直下に引出線部WLを挟み込み、引出線部WLの仮留めに好適な構成となる。
端子カバー8の挿入部9は、導線固定部11の通過を可能にするための貫通部91を有し、断面が凸形状を有している。(
図2(A)、
図4(A)参照。)
【0025】
導線固定部11は、電磁コイル100の製造段階において、導線Wの引出線部WLを仮留め(仮固定)することができる。導線固定部11と、その周囲の端子3の表面とで引出線部WLを挟み込むことで仮留めが可能である。後述するように、引出線部WLは、導線固定部11に仮留めされた状態で半田付けされ得る。
【0026】
第1の鍔部5には、コイル2を構成する胴部4に巻回された導線Wを引き出すための一対の引出ポート12(以下、スリット12と称す。)を有する。スリット12から引き出された導線Wは引出線部WLを構成する。
【0027】
第1の鍔部5には、引出線部WL及び端子3の導線固定部11を覆うように封止部13が設けられている。第1の鍔部5が樹脂を収容可能に成型されており、封止部13は、第1の鍔部5に収容された樹脂、例えば紫外線硬化樹脂から構成されることができる。紫外線硬化樹脂を引出線部WL及び導線固定部11上に塗布し、紫外線により硬化させ、気密に封止することができる。
また、コイル2の外側表面には、コイルカバー21が設けられている。コイルカバー21によりコイルを保護することができ、コイルカバー21はモールド樹脂により構成することができる。
【0028】
図2(A)はボビン1の斜視図、
図2(B)は端子カバー8近傍のボビン1の部分拡大斜視図であり、端子カバー8の挿入部9に端子3を挿入する工程を示す。
図2(B)に示すように、端子3aは、挿入部9に挿入される前の状態にあり、端子3bは、挿入部9に挿入された状態にある。
端子3の導線固定部11は端子3の表面より突出しているが、挿入部9の貫通部91を通過することができる。
【0029】
図2に示すように、端子ベース7には凹部14が設けられている。凹部14は、端子3の導線固定部11の下に位置するように配置されている。
図2(B)に示すように、端子3は、位置決め用突起15(以下、ストッパ15と称す。)を有している。ストッパ15の幅は、挿入部9の幅より長い。端子3は、
図2(B)中に示す矢印方向に、挿入部9に挿入され、ストッパ15が端子カバー8の端面、又は挿入部9の入口側端面、に当接すると、端子3の挿入が停止される。そのため、端子3の挿入長は、ストッパ15の位置により確定し、また導線固定部11の位置も確定する。
その結果、ストッパ15により、凹部14は導線固定部11の下に位置することとなる。
なお、図示するように、ストッパ15は端子係止部10より端子3の先端側に位置する。
【0030】
図2(B)に示す例において、導線固定部11は端子3の中央部に位置し、端子係止部10は導線固定部11より端子3の両側面側に位置する。導線固定部11は、2つの端子係止部10の間に位置し、導線固定部11より端子3の先端側(ボビン1の胴部4の反対側)に位置する。
【0031】
図3(A)はボビン1の上面図であり、端子3の導線固定部11に引出線部WLが仮留めされた状態を示し、
図3(B)は、端子3の導線固定部11近傍の拡大斜視図であり、端子3の導線固定部11に引出線部WLが仮留めされた状態を示す。
【0032】
胴部4に
巻回された導線Wの両端部である引出線部WLは、スリット12から引き出され端子3の導線固定部11に仮留めされる。
図3(B)に示すように、引出線部WLは、導線固定部11と端子3の表面Sによって挟まれる。導線固定部11は、凹部14の反対側から引出線部WLに接触し、引出線部WLは導線固定部11と凹部14との間に位置する。
【0033】
引出線部WLは、仮留めされた状態で端子3に半田付けされる。半田付け作業の際に引出線部WLの位置ずれが防止される。
また、端子係止部10と挿入部9との係合により、端子3は端子ベース7に固定されており、半田付け作業において端子3の位置ずれが防止される。
【0034】
図4は、端子ベース7に設けられた凹部14の効果を説明するための図である。
図4は、引出線部WLの端子3への半田付け工程の概要を示す電磁コイル100の部分断面図であり、
図4(A)は凹部14を有しない端子ベース7、
図4(B)は凹部14を有する端子ベース7の部分断面を示す。
図4(A)において、端子ベース7が凹部14を有しない場合の熱の流れを模式的に矢印で示す。
図4(B)において、端子ベース7が凹部14を有する場合の熱の流れを模式的に矢印で示す。
なお、
図4は、
図3(A)のY-Y線断面に対応する。
【0035】
図4に示す例においては、端子ベース7は第1の鍔部5と一体で形成されており、端子カバー8も鍔部5と一体で形成されている。端子カバー8の断面形状は階段形状を示すが、それに限定するものではない。
【0036】
図4に示すように、端子3が挿入部9に挿入された後、引出線部WLが導線固定部11に仮留めされる。その後、半田ごて16の先端部を、半田17に接触させるとともに、端子3の導線固定部11に局所的に接触させる。半田ごて16の熱により半田17を溶融し、流し込み、引出線部WLと端子3、特に導線固定部11とを半田17により結合する。
引出線部WLと端子3の導線固定部11とが仮留めされた状態で半田付け作業を行うため、引出線部WLを支持する必要がなく、半田付け作業が容易になるとともに、半田ごて16からの熱の主な伝達経路が確定される。
【0037】
半田ごて16を導線固定部11に押し当て、半田ごて16の熱を、導線固定部11を経由して引出線部WLに伝達させ、引出線部WL表面の絶縁被膜を溶融除去又は焼失する。
その結果、引出線部WLの芯の電気伝導線は導線固定部11と電気的に接触し、引出線部WLと端子3とが電気的に接合する。また、半田17は、引出線部WLと導線固定部11とを電気的及び機械的に接続する。
半田ごて16の温度は、半田を溶融させるとともに、引出線部WLの絶縁被覆を溶融させることができる温度に設定されている。半田ごて16の温度は、例えば400度から450度に設定される。
【0038】
以下、端子ベース7の凹部14の効果を説明する。
図4(A)に示すように端子ベース7が凹部14を有しない場合、半田ごて16が導線固定部11を押圧すると引出線部WLが撓み、その下に存在する端子ベース7の表面に接触する。半田ごて16の熱は導線固定部11と引出線部WLとを経由して、端子ベース7に伝達される。半田ごて16の熱が端子ベース7に伝導すると、樹脂やプラスチックで構成されている端子ベース7は、熱により変形又は溶融することがある。
【0039】
第1の鍔部5の端子ベース7が溶融しないようにするために半田ごて16の温度を低温化すると、引出線部WLの絶縁被覆を十分に除去することができず、引出線部WLと端子3との接続不良が発生することになる。また、半田ごて16の熱が導線固定部11に十分に供給されないと、半田17を溶融させて、引出線部WLと導線固定部11とを半田17により接合することが出来なくなる。
そのため、引出線部WLと端子3との接合、及び第1の鍔部5の溶融又は変形の防止を両立できる最適なプロセス条件の範囲は狭く、半田付け作業には作業者の熟練の技術が必要であり、ロボット等による自動化も困難である。
【0040】
一方、
図4(B)に示すように端子ベース7が凹部14を有する場合、導線固定部11を介して押圧された引出線部WLの下方の端子ベース7には凹部14が存在することになる。凹部14により、導線固定部11下の引出線部WLが端子ベース7に接触することが防止される。
そのため、
図4(A)と比較して、端子ベース7への熱の伝達が大きく軽減され、端子ベース7の溶融を防止する効果が得られる。
従って、半田ごて16の設定温度、押圧力、押圧時間等の許容範囲が拡大し、半田付け作業の適切なプロセス条件の範囲が拡がる。その結果、作業者の作業負担が大きく軽減され、従来のような作業者の熟練の技術を不要とし、機械を用いた自動制御も可能となる。
【0041】
図5(A)は、引出線部WLが端子3に半田付けされた状態の電磁コイル100の平面図であり、
図5(B)は引出線部WLを保護する樹脂を注入する工程を示す電磁コイル100の平面図である。
【0042】
図5(A)に示すように、端子係止部10は半田17に覆われ、スリット12から引き出された引出線部WLは端子3と半田付けされている。
図5(B)に示すように、引出線部WLが端子3に半田付けされた後、注入管18(チューブ18)から樹脂が第1の鍔部5の表面に注入される。その後、充填された樹脂は硬化される。樹脂は、第1の鍔部5の上部の一部を気密に封止する。
樹脂として例えば紫外線硬化を採用することができ、紫外線を照射することにより樹脂を硬化することができる。
樹脂は、第1の鍔部5の上部において、引出線部WL、端子3、スリット12を覆い、引出線部WL、端子3、導線Wを保護する。また、樹脂は、引出線部WL及び端子3を第1の鍔部5に固定する効果も有する。
【0043】
また、引出線部WLは第1の鍔部5上において端子3の半田接合されるため、特許文献2、3に開示されているような、引出線部WLと端子3との接合部を第1の鍔部5の外側に設ける構成ではなく、電磁コイル100の小型化も可能にする。
【0044】
以上のように、電磁コイル100は、導線固定部11の下の端子ベース7に凹部14を設けることにより、引出線部WLを端子3に仮留めした状態で、端子3と引出線部WLとの半田による接合が可能である。さらに、半田付け工程において、凹部14が、半田付け操作に伴う熱の端子ベース7への伝達を抑制又は大きく低減させる。その結果、半田付け作業の最適なプロセス条件の範囲を広げ、半田付け作業を容易化する。
電磁コイル100の引出線部WLを端子3に接合する作業は、自動化ロボットの単純動作や初心者による作業でも、支障なく行うことができる。
また、高温の半田ごての利用を可能とすることで、半田加熱、溶融の時間短縮を可能とし、生産性の向上に寄与することができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明にかかる電磁コイルによれば、コイルの巻線の端部である引出線部と、外部電源線との接続部である端子との半田付け作業を容易にすることが可能となり、半田付け作業の効率を向上させることができるとともに、電磁コイルの小型化を可能とする。電磁コイルは、例えばガスバルブの電磁弁に採用が可能であり、例えば、ガス給湯機、ガス暖房機、ガス乾燥機などの燃焼機器に内蔵されたガス燃焼機器用部品等幅広く利用可能であり、産業上の利用可能性は大きい。
なお、電磁コイルの適用は上記例に限定するものではない。
【符号の説明】
【0046】
100 電磁コイル
1 ボビン
2 コイル
21 コイルカバー
3 端子
4 胴部
5 第1の鍔部
6 第2の鍔部
7 端子支持部(端子ベース)
8 端子受部(端子カバー)
9 挿入部
91 貫通部
10 端子係止部
11 導線固定部
12 引出ポート(スリット)
13 封止部
14 凹部
15 ストッパ(位置決め用突起)
16 半田ごて
17 半田
18 注入管(チューブ)
W 導線
WL 引出線部
【要約】
【課題】 製造が容易であり、作業負担を軽減することができる電磁コイルの構造を提供する。
【解決手段】
電磁コイル100は、胴部4と第1の鍔部5と第2の鍔部6とを有するボビン1と端子3とを備える。端子3は導線固定部11を有し、第1の鍔部5は端子3を支持する端子支持部7を有し、胴部4には導線Wが券回される。導線Wの端部である引出線部WLは、導線固定部11と半田により接続され、端子支持部7は、導線固定部11の下方に凹部を有している。導線固定部11と引出線部WLとは半田により接合されている。
【選択図】
図1