(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】フッ素樹脂用分散剤、組成物、分散液、物品および共重合体
(51)【国際特許分類】
C09K 23/52 20220101AFI20220906BHJP
C08F 220/28 20060101ALI20220906BHJP
C08F 220/24 20060101ALI20220906BHJP
C08F 290/06 20060101ALI20220906BHJP
C08L 33/16 20060101ALI20220906BHJP
C08L 27/12 20060101ALI20220906BHJP
C09D 127/12 20060101ALI20220906BHJP
C08J 3/02 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
C09K23/52
C08F220/28
C08F220/24
C08F290/06
C08L33/16
C08L27/12
C09D127/12
C08J3/02 B CEW
(21)【出願番号】P 2021212282
(22)【出願日】2021-12-27
【審査請求日】2022-01-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003506
【氏名又は名称】第一工業製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179578
【氏名又は名称】野村 和弘
(72)【発明者】
【氏名】岩木 徹
(72)【発明者】
【氏名】田中 真奈
【審査官】佐藤 のぞみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-075590(JP,A)
【文献】特開2010-090338(JP,A)
【文献】特開2015-110697(JP,A)
【文献】特開2011-074129(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109942762(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109880003(CN,A)
【文献】特開平05-185757(JP,A)
【文献】特開2021-187961(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 20/00-20/70
C08F 290/00-290/14
C08F 299/00-299/08
C08L 33/00-33/26
C08L 27/00-27/24
B01F 17/00-17/56
C09D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
共重合体を含むフッ素樹脂用分散剤であって、
前記共重合体は、
下記一般式(1)で表される(メタ)アクリレート化合物(a1)と、
下記一般式(2)で表される(メタ)アクリレート化合物(a2)と、
を含む構成モノマー(a)を重合して得られた共重合体を含
み、
前記構成モノマー(a)100質量部において、前記(メタ)アクリレート化合物(a1)の含有割合は5質量部以上95質量部以下であり、前記(メタ)アクリレート化合物(a2)の含有割合は5質量部以上95質量部以下であり、
前記構成モノマー(a)において、前記(メタ)アクリレート化合物(a1)に対する前記(メタ)アクリレート化合物(a2)の質量割合(a2/a1)は20%以上170%以下であることを特徴とする、フッ素樹脂用分散剤。
R
f-Cb-R-O-X (1)
(式中、R
fはパーフルオロ(ポリ)エーテル基であり、Cbはエステル結合、アミド結合、およびウレタン結合からなる群より選ばれるいずれか1つの連結基であり、Rは炭素原子数1以上8以下のアルキレン基であり、Xはアクリロイル基またはメタクリロイル基である。)
HO-(PO)p-Y (2)
(式中、POはオキシプロピレン基であり、pは2以上150以下の数であり、Yはアクリロイル基またはメタクリロイル基である。)
【請求項2】
前記Cbは、エステル結合であることを特徴とする、請求項1に記載のフッ素樹脂用分散剤。
【請求項3】
前記構成モノマー(a)は、さらに、下記一般式(3)で表される(メタ)アクリレート化合物(a3)を含むことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のフッ素樹脂用分散剤。
AO-(EO)q-Z (3)
(式中、AはHまたはCH
3であり、EOはオキシエチレン基であり、qは2以上150以下の数であり、Zはアクリロイル基またはメタクリロイル基である。)
【請求項4】
前記構成モノマー(a)100質量部において、前記(メタ)アクリレート化合物(a1)が30質量部以上80質量部以下含まれることを特徴とする、請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のフッ素樹脂用分散剤。
【請求項5】
前記R
fは、CF
3CF
2CF
2O(CF(CF
3)CF
2O)
nCF(CF
3)であり、nは0以上の数であることを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のフッ素樹脂用分散剤。
【請求項6】
前記nが0であることを特徴とする、請求項5に記載のフッ素樹脂用分散剤。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載のフッ素樹脂用分散剤と、界面活性剤と、を含む組成物。
【請求項8】
請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載のフッ素樹脂用分散剤と、フッ素樹脂と、を含む分散液。
【請求項9】
請求項8に記載の分散液が含浸または塗布された物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素樹脂用分散剤および共重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂は、撥水性や撥油性に優れる一方で溶剤への分散性が小さいことが知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1には、溶剤へのフッ素樹脂の分散性を向上させるためのフッ素樹脂用分散剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のフッ素樹脂用分散剤は、溶剤へのフッ素樹脂の分散性が十分であるとは言えず、改善の余地があった。このため、様々な溶剤へのフッ素樹脂の分散性を向上させることができる技術の開発が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の形態として実現することができる。
本発明の一形態によれば、共重合体を含むフッ素樹脂用分散剤が提供される。このフッ素樹脂用分散剤において、前記共重合体は、下記一般式(1)で表される(メタ)アクリレート化合物(a1)と、下記一般式(2)で表される(メタ)アクリレート化合物(a2)と、を含む構成モノマー(a)を重合して得られた共重合体を含み、前記構成モノマー(a)100質量部において、前記(メタ)アクリレート化合物(a1)の含有割合は5質量部以上95質量部以下であり、前記(メタ)アクリレート化合物(a2)の含有割合は5質量部以上95質量部以下であり、前記構成モノマー(a)において、前記(メタ)アクリレート化合物(a1)に対する前記(メタ)アクリレート化合物(a2)の質量割合(a2/a1)は20%以上170%以下であることを特徴とする。
R
f
-Cb-R-O-X (1)
(式中、R
f
はパーフルオロ(ポリ)エーテル基であり、Cbはエステル結合、アミド結合、およびウレタン結合からなる群より選ばれるいずれか1つの連結基であり、Rは炭素原子数1以上8以下のアルキレン基であり、Xはアクリロイル基またはメタクリロイル基である。)
HO-(PO)p-Y (2)
(式中、POはオキシプロピレン基であり、pは2以上150以下の数であり、Yはアクリロイル基またはメタクリロイル基である。)
その他、本発明は、以下の形態として実現することができる。
【0006】
(1)本発明の一形態によれば、フッ素樹脂用分散剤が提供される。このフッ素樹脂用分散剤は、共重合体を含むフッ素樹脂用分散剤であって、前記共重合体は、下記一般式(1)で表される(メタ)アクリレート化合物(a1)と、下記一般式(2)で表される(メタ)アクリレート化合物(a2)と、を含む構成モノマー(a)を重合して得られた共重合体を含むことを特徴とする。
Rf-Cb-R-O-X (1)
(式中、Rfはパーフルオロ(ポリ)エーテル基であり、Cbはエステル結合、アミド結合、およびウレタン結合からなる群より選ばれるいずれか1つの連結基であり、Rは炭素原子数1以上8以下のアルキレン基であり、Xはアクリロイル基またはメタクリロイル基である。)
HO-(PO)p-Y (2)
(式中、POはオキシプロピレン基であり、pは2以上150以下の数であり、Yはアクリロイル基またはメタクリロイル基である。)
【0007】
(2)上記形態のフッ素樹脂用分散剤において、前記Cbは、エステル結合であってもよい。
【0008】
(3)上記形態のフッ素樹脂用分散剤において、前記構成モノマー(a)は、さらに、下記一般式(3)で表される(メタ)アクリレート化合物(a3)を含んでいてもよい。
AO-(EO)q-Z (3)
(式中、AはHまたはCH3であり、EOはオキシエチレン基であり、qは2以上150以下の数であり、Zはアクリロイル基またはメタクリロイル基である。)
【0009】
(4)上記形態のフッ素樹脂用分散剤において、前記構成モノマー(a)100質量部において、前記(メタ)アクリレート化合物(a1)が30質量部以上80質量部以下含まれていてもよい。
【0010】
(5)上記形態のフッ素樹脂用分散剤において、前記Rfは、CF3CF2CF2O(CF(CF3)CF2O)nCF(CF3)であり、nは0以上の数であってもよい。
【0011】
(6)上記形態のフッ素樹脂用分散剤において、前記nが0であってもよい。
【0012】
(7)上記形態のフッ素樹脂用分散剤と、界面活性剤と、を含む組成物であってもよい。
【0013】
(8)上記形態のフッ素樹脂用分散剤と、フッ素樹脂と、を含む分散液であってもよい。
【0014】
(9)上記形態の分散液が含侵または塗布された物品であってもよい。
【0015】
(10)本発明の他の形態によれば、共重合体が提供される。この共重合体は、下記一般式(1)で表される(メタ)アクリレート化合物(a1)と、下記一般式(2)で表される(メタ)アクリレート化合物(a2)と、を含む構成モノマー(a)を重合して得られた。
Rf-Cb-R-O-X (1)
(式中、Rfはパーフルオロ(ポリ)エーテル基であり、Cbはエステル結合、アミド結合、およびウレタン結合からなる群より選ばれるいずれか1つの連結基であり、Rは炭素原子数1以上8以下のアルキレン基であり、Xはアクリロイル基またはメタクリロイル基である。)
HO-(PO)p-Y (2)
(式中、POはオキシプロピレン基であり、pは2以上150以下の数であり、Yはアクリロイル基またはメタクリロイル基である。)
【0016】
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、フッ素樹脂用分散剤の製造方法や共重合体の製造方法等の形態で実現することができる。
【発明の効果】
【0017】
本実施形態によれば、様々な溶剤へのフッ素樹脂の分散性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
A.フッ素樹脂用分散剤
本発明の一実施形態であるフッ素樹脂用分散剤(以下、単に「分散剤」とも呼ぶ)は、共重合体(A)を含む。共重合体(A)は、下記一般式(1)で表される(メタ)アクリレート化合物(a1)と、下記一般式(2)で表される(メタ)アクリレート化合物(a2)と、を含む構成モノマー(a)を重合して得られた共重合体を含む。
Rf-Cb-R-O-X (1)
(式中、Rfはパーフルオロ(ポリ)エーテル基であり、Cbはエステル結合、アミド結合、およびウレタン結合からなる群より選ばれるいずれか1つの連結基であり、Rは炭素原子数1以上8以下のアルキレン基であり、Xはアクリロイル基またはメタクリロイル基である。)
HO-(PO)p-Y (2)
(式中、POはオキシプロピレン基であり、pは2以上150以下の数であり、Yはアクリロイル基またはメタクリロイル基である。)
【0019】
本実施形態のフッ素樹脂用分散剤は、様々な溶剤へのフッ素樹脂の分散性を向上させることができる。このような効果を奏するメカニズムは定かではない。しかし、推定メカニズムとしては、一般式(1)で表される(メタ)アクリレート化合物(a1)由来の側鎖によってフッ素樹脂に吸着しやすくなり、また、一般式(2)で表される(メタ)アクリレート化合物(a2)由来の側鎖であるオキシプロピレン基によって溶剤に溶けやすくなると考えられる。
【0020】
また、構成モノマー(a)は、さらに、下記一般式(3)で表される(メタ)アクリレート化合物(a3)を含むことが好ましい。
AO-(EO)q-Z (3)
(式中、AはHまたはCH3であり、EOはオキシエチレン基であり、qは2以上150以下の数であり、Zはアクリロイル基またはメタクリロイル基である。)
【0021】
構成モノマー(a)が一般式(3)で表される(メタ)アクリレート化合物(a3)を含むことにより、フッ素樹脂の水分散性をさらに向上させることができる。このような効果を奏するメカニズムは定かではない。しかし、推定メカニズムとしては、一般式(3)で表される(メタ)アクリレート化合物(a3)由来の側鎖であるオキシエチレン基によって、水との親和性が高められていると考えられる。
【0022】
本明細書において、「フッ素樹脂」とは、フッ素を含有する樹脂を意味する。フッ素樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンパーフルオロビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体(ETFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、クロロトリフルオロエチレン-エチレン共重合体(FCTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)等が挙げられる。分散剤によってフッ素樹脂の分散性を効果的に付与する観点から、フッ素樹脂としてはPTFEとPFAとが好ましく、PTFEがより好ましい。
【0023】
<(メタ)アクリレート化合物(a1)>
(メタ)アクリレート化合物(a1)は、下記一般式(1)で表される。
Rf-Cb-R-O-X (1)
式中、Rfはパーフルオロ(ポリ)エーテル基であり、Cbはエステル結合、アミド結合、およびウレタン結合からなる群より選ばれるいずれか1つの連結基であり、Rは炭素原子数1以上8以下のアルキレン基であり、Xはアクリロイル基またはメタクリロイル基である。本明細書において、パーフルオロ(ポリ)エーテル基は、パーフルオロポリエーテル基またはパーフルオロエーテル基を意味する。また、本明細書において、パーフルオロエーテル基は、パーフルオロアルキル基とエーテル結合とを備え、パーフルオロポリエーテル基は、パーフルオロアルキル基とパーフルオロアルキレン基とエーテル結合とを備える。なお、エステル結合とは、「-C(=O)-O-」を示し、アミド結合とは、「-C(=O)-NH-」を示し、ウレタン結合とは、「-NH-C(=O)-O-」を示す。
【0024】
一般式(1)中のCbは、分散性を向上させる観点から、エステル結合を含むことが好ましい。また、Rfは、分散性を向上させる観点から、CF3CF2CF2O(CF(CF3)CF2O)nCF(CF3)であってnは0以上の数であることが好ましく、CF3CF2CF2OCF(CF3)、すなわちnが0であることがより好ましい。また、Rは、分散性を向上させる観点から、炭素原子数1~6のアルキレン基であることが好ましく、炭素原子数1~3のアルキレン基であることがより好ましく、C2H4であることがさらに好ましい。また、一般式(1)中のXは、分散性を向上させる観点から、メタクリロイル基であることが好ましい。なお、一般式(1)で表される(メタ)アクリレート化合物(a1)は、一種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
一般式(1)で表される(メタ)アクリレート化合物(a1)としては、例えば、側鎖型パーフルオロポリエーテル(PFPE)(メタ)アクリレート化合物と、直鎖型PFPE(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。一般式(1)で表される(メタ)アクリレート化合物(a1)としては、分散性を向上させる観点から、側鎖型PFPE(メタ)アクリレート化合物であることが好ましい。
【0026】
側鎖型PFPE(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、下記一般式(4)~(7)で表される化合物が挙げられる。以下の式中の平均繰り返し単位数nは、0以上の数であり、30以下が好ましく、25以下がより好ましく、20以下がさらに好ましく、特に、15以下が好ましく、10以下がより好ましく、8以下がさらに好ましく、特に、5以下が好ましく、3以下がより好ましく、1以下がさらに好ましく、0であることがより一層好ましい。以下の式中の平均繰り返し単位数mは、0以上の数であり、20以下が好ましく、10以下がより好ましく、8以下がさらに好ましく、特に、5以下が好ましく、3以下がより好ましく、1以下がさらに好ましい。なお、下記一般式(4)~(7)では、いずれもメタクリロイル基を有する化合物を列挙しているが、メタクリロイル基の代わりにアクリロイル基を有する化合物についても側鎖型PFPE(メタ)アクリレート化合物に含まれる。
【0027】
【0028】
【0029】
【0030】
【0031】
直鎖型PFPE(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、下記一般式(8)~(11)で表される化合物が挙げられる。以下の式中の平均繰り返し単位数nは、0以上の数であり、30以下が好ましく、25以下がより好ましく、20以下がさらに好ましく、特に、15以下が好ましく、10以下がより好ましく、8以下がさらに好ましく、0であることがより一層好ましい。以下の式中の平均繰り返し単位数mは、0以上の数であり、20以下が好ましく、15以下がより好ましく、10以下がさらに好ましく、特に、8以下が好ましく、5以下がより好ましく、3以下がさらに好ましい。なお、下記一般式(8)~(11)では、いずれもメタクリロイル基を有する化合物を列挙しているが、メタクリロイル基の代わりにアクリロイル基を有する化合物についても直鎖型PFPE(メタ)アクリレート化合物に含まれる。
【0032】
【0033】
【0034】
【0035】
【0036】
<(メタ)アクリレート化合物(a2)>
(メタ)アクリレート化合物(a2)は、下記一般式(2)で表される。
HO-(PO)p-Y (2)
式中、POはオキシプロピレン基であり、pは2以上150以下の数であり、Yはアクリロイル基またはメタクリロイル基である。
【0037】
一般式(2)中のオキシプロピレン基の平均繰り返し単位数pは、特に限定されないが、分散性をより向上させる観点から、3以上150以下であることが好ましい。平均繰り返し単位数pの下限値は、4以上であることがより好ましく、8以上であることがさらに好ましく、特に、10以上であることが好ましく、12以上であることがより好ましい。平均繰り返し単位数pの上限値は、120以下であることがより好ましく、100以下であることがさらに好ましく、70以下であることがより一層好ましく、50以下であることがより好ましく、20以下であることがさらに好ましく、15以下であることが特に好ましい。また、一般式(2)中のYは、分散性を向上させる観点から、メタクリロイル基であることが好ましい。なお、一般式(2)で表される(メタ)アクリレート化合物(a2)は、一種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0038】
<(メタ)アクリレート化合物(a3)>
(メタ)アクリレート化合物(a3)は、下記一般式(3)で表される。
AO-(EO)q-Z (3)
式中、AはHまたはCH3であり、EOはオキシエチレン基であり、qは2以上150以下の数であり、Zはアクリロイル基またはメタクリロイル基である。
【0039】
一般式(3)中のオキシエチレン基の平均繰り返し単位数qは、特に限定されないが、分散性をより向上させる観点から、3以上150以下であることが好ましい。平均繰り返し単位数qの下限値は、5以上であることがより好ましく、10以上であることがさらに好ましく、特に、15以上であることが好ましく、20以上であることがより好ましい。平均繰り返し単位数qの上限値は、120以下であることがより好ましく、100以下であることがさらに好ましく、70以下であることがより一層好ましく、40以下であることが特に好ましい。また、一般式(3)中のZは、分散性を向上させる観点から、メタクリロイル基であることが好ましい。なお、一般式(3)で表される(メタ)アクリレート化合物(a3)は、一種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0040】
本実施形態の共重合体(A)を構成する構成モノマー(a)は、発明の目的に反しない範囲で、上記成分(a1)、(a2)および(a3)以外のモノマーを含んでいてもよい。また、本実施形態のフッ素樹脂用分散剤は、発明の目的に反しない範囲で、共重合体(A)以外の共重合体を含んでもよい。
【0041】
構成モノマー(a)において、一般式(1)で表される(メタ)アクリレート化合物(a1)の含有割合は、特に限定されないが、分散性を向上させる観点から、構成モノマー(a)100質量部において、5質量部以上95質量部以下含まれることが好ましい。構成モノマー(a)100質量部に対し、一般式(1)で表される(メタ)アクリレート化合物(a1)の含有割合の下限値は、10質量部以上であることがより好ましく、30質量部以上であることがさらに好ましい。構成モノマー(a)100質量部に対し、一般式(1)で表される(メタ)アクリレート化合物(a1)の含有割合の上限値は、80質量部以下であることがより好ましく、70質量部以下であることがさらに好ましく、50質量部以下であることがより一層好ましい。
【0042】
構成モノマー(a)において、一般式(2)で表される(メタ)アクリレート化合物(a2)の含有割合は、特に限定されないが、分散性を向上させる観点から、構成モノマー(a)100質量部において、5質量部以上95質量部以下含まれることが好ましい。構成モノマー(a)100質量部に対し、一般式(2)で表される(メタ)アクリレート化合物(a2)の含有割合の下限値は、10質量部以上であることがより好ましく、15質量部以上であることがさらに好ましく、20質量部以上であることがより一層好ましい。構成モノマー(a)100質量部に対し、一般式(2)で表される(メタ)アクリレート化合物(a2)の含有割合の上限値は、80質量部以下であることがより好ましく、50質量部以下であることがさらに好ましく、40質量部以下であることがより一層好ましく、30質量部以下であることが特に好ましい。
【0043】
構成モノマー(a)において、一般式(3)で表される(メタ)アクリレート化合物(a3)の含有割合は、特に限定されないが、水への分散性を向上させる観点から、構成モノマー(a)100質量部において、5質量部以上90質量部以下含まれることが好ましい。構成モノマー(a)100質量部に対し、一般式(3)で表される(メタ)アクリレート化合物(a3)の含有割合の下限値は、10質量部以上であることがより好ましく、15質量部以上であることがさらに好ましく、25質量部以上であることがより一層好ましく、35質量部以上であることが特に好ましい。構成モノマー(a)100質量部に対し、一般式(3)で表される(メタ)アクリレート化合物(a3)の含有割合の上限値は、80質量部以下であることがより好ましく、60質量部以下であることがさらに好ましく、45質量部以下であることがより一層好ましい。
【0044】
構成モノマー(a)において、一般式(1)で表される(メタ)アクリレート化合物(a1)に対する一般式(2)で表される(メタ)アクリレート化合物(a2)の質量割合(a2/a1)は、分散性を向上させる観点から、20%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましく、40%以上であることがより一層好ましい。また、構成モノマー(a)において、一般式(1)で表される(メタ)アクリレート化合物(a1)に対する一般式(2)で表される(メタ)アクリレート化合物(a2)の質量割合(a2/a1)は、分散性を向上させる観点から、170%以下であることが好ましく、130%以下であることがより好ましく、80%以下であることがより一層好ましく、60%以下であることが特に好ましい。
【0045】
本実施形態で用いる共重合体(A)は、特に限定されないが、重量平均分子量が2,000~200,000であることが好ましく、5,000~100,000であることがより好ましく、10,000~50,000であることがさらに好ましい。重量平均分子量が上記範囲内であると、分散性に優れたフッ素樹脂用分散剤が得られやすい。本明細書において、重量平均分子量は、GPCカラムクロマトグラフィ法を用いて、下記の条件で測定することができ、標準サンプルとして分子量300、2,000、8,000、および20,000のポリエチレングリコールで校正したものを用いた。
【0046】
・装置:LC-10AD((株)島津製作所製)
・検出器:RID-10A((株)島津製作所製)
・カラム:Shodex GPC KF-G、KF-803、KF802.5、KF-802、KF-801を連結したもの(いずれも昭和電工(株)製)
・溶離液:テトラヒドロフラン
・サンプル注入:0.5重量%溶液、100μL
・流速:0.8mL/min
・温度:25℃
【0047】
次に、本実施形態のフッ素樹脂用分散剤の製造方法を説明する。フッ素樹脂用分散剤の製造方法は、特に限定されないが、例えば、一般式(1)で表される(メタ)アクリレート化合物(a1)と、一般式(2)で表される(メタ)アクリレート化合物(a2)と、溶剤と、を混合後加熱する方法が挙げられる。
【0048】
フッ素樹脂用分散剤の製造に用いる溶剤は、水であってもよく、有機溶剤であってもよい。有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、ヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤、シクロヘキサン、イソホロン等の脂環族炭化水素系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールジアセテート等のエステル系溶剤、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルアセテート、3-メトキシ-3-メチルブチルアセテート等のグリコールエーテルエステル系溶剤、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、ジメチルトリグリコール、メチルエチルジグリコール、ジメチルプロピレンジグリコール等のグリコールエーテル系溶剤、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン等が挙げられ、この中でも、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、メチルエチルジグリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メトキシ-3-メチルブチルアセテート、ジメチルプロピレンジグリコールであることが好ましい。上述の溶剤は、2種以上を併用してもよい。
【0049】
重合方法は、特に限定されないが、溶液重合であることが好ましい。重合温度は、特に限定されないが、通常は40~120℃の範囲が好ましい。重合時間は、特に限定されないが、通常は4~15時間程度であることが好ましい。
【0050】
重合を行う際に重合開始剤を用いてもよい。重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、過酸化ベンゾイル、t-ブチルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート等の過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス-2-メチルブチロニトリル等のアゾ化合物等が挙げられる。重合開始剤の使用量は特に限定されないが、一般に、構成モノマー(a)100質量部に対して、0.1~5質量部であることが好ましい。
【0051】
本実施形態のフッ素樹脂用分散剤は、発明の目的に反しない範囲で、例えば、他の親水剤、その他の撥油剤、撥水剤、防虫剤、難燃剤、防シワ剤、帯電防止剤、柔軟仕上げ剤、防腐剤、芳香剤、酸化防止剤、界面活性剤、乳化剤、分散剤、樹脂添加剤等をさらに含有していてもよい。界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。
【0052】
本実施形態のフッ素樹脂用分散剤に用いる分散媒は、特に限定されない。分散媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、iso-ブタノール、sec-ブチルアルコール、tert-ブタノール、ターピネオール等のアルコール類が挙げられる。また、分散媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、2-ヘプタノン、シクロヘプタノン、γ-ブチロラクトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、エチルシクロヘキサノン、メチル-n-ペンチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソペンチルケトン等のケトン類が挙げられる。また、分散媒としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、シクロヘキシルアセテート等のエステル類が挙げられる。また、分散媒としては、例えば、2-オキシプロピオン酸メチル、2-オキシプロピオン酸エチル、2-オキシプロピオン酸プロピル、2-オキシプロピオン酸ブチル、2-メトキシプロピオン酸メチル、2-メトキシプロピオン酸エチル、2-メトキシプロピオン酸プロピル、2-メトキシプロピオン酸ブチル、3-エトキシプロピオン酸エチル等のモノカルボン酸エステル類が挙げられる。また、分散媒としては、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等の極性溶剤が挙げられる。また、分散媒としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールジメチルエーテル等のエチレングリコール類およびそのエステル類が挙げられる。また、分散媒としては、例えば、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のプロピレングリコール類およびそのエステル類が挙げられる。また、分散媒としては、例えば、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブチルアセテート等の溶剤が挙げられる。また、分散媒としては、クロロホルム、塩化メチレン、1,1,1-トリクロルエタン等のハロゲン系溶剤や、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類が挙げられる。また、分散媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン等の芳香族類が挙げられる。また、分散媒としては、例えば、水が挙げられる。上述の分散媒は、2種以上を併用してもよい。上述の分散媒の中でも、N-メチルピロリドン、シクロヘキサノン、トルエン、ジメチルホルムアミド、エタノール、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、酢酸エチル、水が分散性の観点から好ましい。
【0053】
本実施形態のフッ素樹脂用分散剤は、フッ素樹脂に対して優れた分散性を付与することができる。このため、本実施形態のフッ素樹脂用分散剤は、例えば、ガラス、プラスチック、金属、電子基板、繊維製品、皮革、石材、木材、紙等を含む種々の物品のコーティング剤であって、フッ素樹脂を含むコーティング剤に用いることができる。このコーティング剤は、例えば、フライパン等の調理器具や、自動車のボディに塗布してもよい。
【0054】
B.他の実施形態
本発明の他の実施形態として、例えば、上述のフッ素樹脂用分散剤と界面活性剤とを含む組成物が挙げられる。界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤等を用いることができる。また、本発明の他の実施形態として、例えば、上述のフッ素樹脂用分散剤とフッ素樹脂とを含む分散液や、この分散液が含侵または塗布された物品等が挙げられる。本実施形態の分散液には、フッ素樹脂以外の樹脂が溶解していてもよい。また、本実施形態の分散液は、様々な物品に含侵または塗布して用いることができる。例えば、本実施形態の分散液を布に含浸することにより、テント等の布に用いてもよい。また、本実施形態の分散液をビーカー等に塗布することにより、ビーカー等への印字に用いてもよい。また、本発明の他の実施形態として、一般式(1)で表される(メタ)アクリレート化合物(a1)と、一般式(2)で表される(メタ)アクリレート化合物(a2)と、を含む構成モノマー(a)を重合して得られた共重合体(A)が挙げられる。この共重合体(A)や上述の分散液の用途として、例えば、電子機器や、OA機器、家電製品、自動車内装部品等の機構摺動部や、ギア、嵌合部等に用いることにより、潤滑性等を付与してもよく、軋みによって生じる音の抑制効果を付与してもよい。また、上記共重合体(A)は、レベリング剤として用いられてもよい。上記共重合体(A)がレベリング剤として物品に塗布されることにより、ピンホールや塗りムラの発生等を抑制できるので、均質性や平滑性を向上できる。
【実施例】
【0055】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0056】
(使用原料)
一般式(1)で表される(メタ)アクリレート化合物(a1)
(a1-1)
下記一般式(12)で表される化合物(SINOCHEM LANTIAN製、商品名:AC-500)
【0057】
【0058】
(a1-2)
下記一般式(13)で表される化合物(SINOCHEM LANTIAN製、商品名:AC-1000、平均繰り返し単位数n:4)
【0059】
【0060】
一般式(2)で表される(メタ)アクリレート化合物(a2)
(a2-1)ポリプロピレングリコールモノメタクリレート(オキシプロピレン基の平均繰り返し単位数:4~6、日油(株)製、商品名:ブレンマー(登録商標)PP-1000)
(a2-2)ポリプロピレングリコールモノメタクリレート(オキシプロピレン基の平均繰り返し単位数:9、日油(株)製、商品名:ブレンマー(登録商標)PP-500)
(a2-3)ポリプロピレングリコールモノメタクリレート(オキシプロピレン基の平均繰り返し単位数:13、日油(株)製、商品名:ブレンマー(登録商標)PP-800)
【0061】
一般式(3)で表される(メタ)アクリレート化合物(a3)
(a3-1)メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(オキシエチレン基の平均繰り返し単位数:23、日油(株)製、商品名:ブレンマー(登録商標)PME-1000)
(a3-2)ポリエチレングリコールアクリレート(オキシエチレン基の平均繰り返し単位数:10、日油(株)製、商品名:ブレンマー(登録商標)AE-400)
【0062】
溶剤
(c-1)メチルエチルケトン(MEK)
(c-2)エチレングリコールジメチルエーテル(DMG)
(c-3)3-メトキシ-3-メチルブチルアセテート((株)クラレ製、商品名:ソルフィットAC)
(c-4)プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)
(c-5)ジエチレングリコールジエチレンエーテル(DEDG)
(c-6)メチルエチルジグリコール(MEDG)
(c-7)酢酸エチル
(c-8)エタノール
【0063】
(実施例1~18,比較例1~4)
撹拌機、温度計、窒素導入管および還流管を備えた反応容器に、後述する表1および表2に記載の配合割合で、(a1)~(a3)の化合物および溶剤を加え、窒素置換を行った。続いて、t-ブチルパーオキシピバレート(日油(株)製、商品名:パーブチル(登録商標)PV)を、上記(a1)~(a3)の化合物の合計量100質量部に対して3質量部となるように加え、65℃で8時間反応させることにより共重合体溶液(分散剤)を得た。
【0064】
(実施例19)
撹拌機、温度計、窒素導入管および還流管を備えた反応容器に、後述する表2に記載の配合割合で、(a1)、(a2)の化合物および溶剤としてMEK230部を加え、窒素置換を行った。続いて、t-ブチルパーオキシピバレート(日油(株)製、商品名:パーブチル(登録商標)PV)を、上記(a1)、(a2)の化合物の合計量100質量部に対して3質量部となるように加え、65℃で8時間反応させることにより反応溶液を得た。この反応溶液の中のMEKを減圧留去した後、酢酸エチル230部を添加し、60℃で1時間混合することにより、共重合体溶液(分散剤)を得た。
【0065】
(実施例20)
撹拌機、温度計、窒素導入管および還流管を備えた反応容器に、後述する表2に記載の配合割合で、(a1)、(a2)の化合物、および溶剤としてMEK230部を加え、窒素置換を行った。続いて、t-ブチルパーオキシピバレート(日油(株)製、商品名:パーブチル(登録商標)PV)を、上記(a1)、(a2)の化合物の合計量100質量部に対して3質量部となるように加え、65℃で8時間反応させることにより反応溶液を得た。この反応溶液の中のMEKを減圧留去した後、エタノール230部を添加し、60℃で1時間混合することにより、共重合体溶液(分散剤)を得た。
【0066】
作製した分散剤を用いて、以下の評価を行った。具体的には、様々な溶媒を用いた場合における下記の各性能についての評価を行った。
【0067】
(外観(透明性))
作製した分散剤を、外径3.5cmのスクリュー管瓶((株)マルエム製No.8)2本に、一方は高さが10cmとなるよう、他方は高さが1cmとなるように注いだ。文字(MSゴシック、12ポイント)が印刷された用紙の上に各スクリュー管瓶を置き、上方からの文字の視認により以下の3段階で外観を評価した。なお、含フッ素共重合体溶液がゲル状になった場合は、評価結果をDとし、透明性の確認は実施しないこととした。
A:透明(高さ10cm、1cmいずれのスクリュー管瓶においても、下に記載された文字を読むことができる)
B:微濁(高さ10cmのスクリュー管瓶の下に記載した文字は読むことができないが、高さ1cmのスクリュー管瓶の下に記載された文字は読むことができる)
C:白濁(高さ10cm、1cmいずれのスクリュー管瓶においても、下に記載された文字を読むことができない)
【0068】
(NMP分散性評価)
外径3.0cmのスクリュー管瓶((株)マルエム製No.7)に、分散剤1.67g(仕込み量)と、N-メチルピロリドン(NMP)(分散媒)8.33g(仕込み量)とを混合した後、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)((株)セイシン企業製、商品名:TFW-2000(平均粒子径6μm))10g(仕込み量)を添加した。その後、スクリュー管瓶を上下に30回振とうすることにより、PTFEを分散させた。なお、この振とうのみでPTFEが分散しない場合、PTFEをスパチュラで溶液までかき落とした後、振とうすることにより分散させた。そして、一晩静置後、不要な泡をたてないようにスパチュラで攪拌してPTFEを再分散させた後、速やかに分散液をステンレス鋼の平織金網(関西金網(株)製)(200メッシュ、線径0.05mm)でろ過した後、20分間静置させることにより不要な液体部分を平織金網から取り除いた。その後、150℃で20分間、アルミホイル上で平織金網を乾燥させた。そして、事前に測定しておいたアルミホイルと平織金網との合計質量を全質量から差引ことにより、PTFE残渣の質量を算出した。
【0069】
(トルエン分散性評価)
スクリュー管瓶((株)マルエム製No.7)に、分散剤1.67g(仕込み量)と、トルエン(分散媒)8.33g(仕込み量)とを混合した後、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)((株)セイシン企業製、商品名:TFW-2000(平均粒子径6μm))10g(仕込み量)を添加した。その後、スクリュー管瓶を上下に30回振とうすることにより、PTFEを分散させた。なお、この振とうのみでPTFEが分散しない場合、PTFEをスパチュラで溶液までかき落とした後、振とうすることにより分散させた。そして、一晩静置後、不要な泡をたてないようにスパチュラで攪拌してPTFEを再分散させた後、速やかに分散液をステンレス鋼の平織金網(関西金網(株)製)(200メッシュ、線径0.05mm)でろ過した後、20分間静置させることにより不要な液体部分を平織金網から取り除いた。その後、150℃で20分間、アルミホイル上で平織金網を乾燥させた。そして、事前に測定しておいたアルミホイルと平織金網との合計質量を全質量から差引ことにより、PTFE残渣の質量を算出した。
【0070】
NMP分散性評価およびトルエン分散性評価には、PTFE残渣の質量をPTFEの仕込み量で除した値(%)を用いた。この値が小さいほど、分散性に優れるため好ましい。具体的には、NMP分散性およびトルエン分散性を、以下の5段階で評価した。
A:4%未満
B:4%以上9%未満
C:9%以上40%未満
D:40%以上70%未満
E:70%以上
【0071】
(水分散性評価)
スクリュー管瓶((株)マルエム製No.7)に、分散剤0.67g(仕込み量)と水(分散媒)8.33g(仕込み量)と非イオン界面活性剤1.00g(仕込み量)とを混合した後、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)((株)セイシン企業製、商品名:TFW-2000(平均粒子径6μm))10g(仕込み量)を添加した。ここで、非イオン界面活性剤として、ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテル(第一工業製薬(株)製「ノイゲンXL-70」)を用いた。その後、スクリュー管瓶を上下に30回振とうすることにより、PTFEを分散させた。なお、この振とうのみでPTFEが分散しない場合、PTFEをスパチュラで溶液までかき落とした後、振とうすることにより分散させた。そして、一晩静置後、不要な泡をたてないようにスパチュラで攪拌してPTFEを再分散させた後、速やかに分散液をステンレス鋼の平織金網(関西金網(株)製)(200メッシュ、線径0.05mm)でろ過した後、20分間静置させることにより不要な液体部分を平織金網から取り除いた。その後、150℃で20分間、アルミホイル上で平織金網を乾燥させた。そして、事前に測定しておいたアルミホイルと平織金網との合計質量を全質量から差引ことにより、PTFE残渣の質量を算出した。
【0072】
水分散性の評価には、PTFE残渣の質量をPTFEの仕込み量で除した値(%)を用いた。この値が小さいほど、分散性に優れるため好ましい。具体的には、水分散性を、以下の5段階で評価した。
A:4%未満
B:4%以上9%未満
C:9%以上40%未満
D:40%以上70%未満
E:70%以上
【0073】
【0074】
【0075】
上述の表1および表2の結果から以下のことが分かった。つまり、上述の一般式(1)で表される(メタ)アクリレート化合物(a1)および一般式(2)で表される(メタ)アクリレート化合物(a2)を含む構成モノマー(a)を重合して得られた共重合体を含む分散剤は、構成モノマー(a)に一般式(1)で表される(メタ)アクリレート化合物(a1)または一般式(2)で表される(メタ)アクリレート化合物(a2)を含まない場合と比較して、NMP分散性およびトルエン分散性が顕著に優れることが分かった。なお、表には示されていないが、MEKに対する分散性は、トルエン分散性と同様な結果が得られた。
【0076】
また、上述の一般式(3)で表される(メタ)アクリレート化合物(a3)をさらに含む構成モノマー(a)を重合して得られた共重合体を含む分散剤は、構成モノマー(a)に一般式(3)で表される(メタ)アクリレート化合物(a3)を含まない場合と比較して、水分散性が顕著に優れることが分かった。また、表には示されていないが、一般式(3)で表される(メタ)アクリレート化合物(a3)よりも、一般式(2)で表される(メタ)アクリレート化合物(a2)を用いた場合の方が、泡立ちが少ない傾向にあった。
【0077】
〈不可能・非実際的事情〉
本実施形態のフッ素樹脂用分散剤は、上述の一般式(1)で表される(メタ)アクリレート化合物(a1)および一般式(2)で表される(メタ)アクリレート化合物(a2)を含む構成モノマーを重合して得られた共重合体(A)を含む。この共重合体の構造は複雑であるため、一般式で表すことは困難である。さらに、構造が特定されなければ、それに応じて定まるその物質の特性も容易にはできない。すなわち、本実施形態のフッ素樹脂用分散剤が含有する共重合体を、その構造または特性により直接特定することは不可能である。
【0078】
本発明は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、実施例中の技術的特徴は、上述の課題の一部または全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部または全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【要約】
【課題】様々な溶剤へのフッ素樹脂の分散性を向上させる技術を提供する。
【解決手段】共重合体を含むフッ素樹脂用分散剤において、共重合体は、Rf-Cb-R-O-Xで表される(メタ)アクリレート化合物(a1)と、HO-(PO)p-Yで表される(メタ)アクリレート化合物(a2)とを含む構成モノマー(a)を重合して得られた共重合体を含み、Rfはパーフルオロ(ポリ)エーテル基であり、Cbはエステル結合、アミド結合、およびウレタン結合からなる群より選ばれるいずれか1つの連結基であり、Rは炭素原子数1以上8以下のアルキレン基であり、XおよびYはアクリロイル基またはメタクリロイル基であり、POはオキシプロピレン基であり、pは2以上150以下の数である。
【選択図】なし