(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】サワードウ発酵型米/小麦粉食品のマイクロ波加工方法
(51)【国際特許分類】
A23L 35/00 20160101AFI20220906BHJP
A21D 10/04 20060101ALI20220906BHJP
A21D 13/047 20170101ALI20220906BHJP
A23L 7/104 20160101ALI20220906BHJP
【FI】
A23L35/00
A21D10/04
A21D13/047
A23L7/104
(21)【出願番号】P 2021517779
(86)(22)【出願日】2019-07-24
(86)【国際出願番号】 CN2019097401
(87)【国際公開番号】W WO2020134049
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-07-01
(31)【優先権主張番号】201811589417.0
(32)【優先日】2018-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】514262886
【氏名又は名称】江南大学
【氏名又は名称原語表記】JIANGNAN UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】No. 1800 Lihu Avenue, Bin Hu District, Wuxi, Jiangsu, China
(73)【特許権者】
【識別番号】521126287
【氏名又は名称】無錫華順民生食品有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】519391712
【氏名又は名称】安井食品集団股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】ANJOY FOODS GROUP CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Xinyang Road No. 2508, Haicang District, Xiamen, Fujian, China
(73)【特許権者】
【識別番号】521126298
【氏名又は名称】湖北安井食品有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】范大明
(72)【発明者】
【氏名】▲やん▼博文
(72)【発明者】
【氏名】呉曄君
(72)【発明者】
【氏名】連恵章
(72)【発明者】
【氏名】王凱
(72)【発明者】
【氏名】趙建新
(72)【発明者】
【氏名】張▲ほう▼
(72)【発明者】
【氏名】楊化宇
(72)【発明者】
【氏名】李秀秀
(72)【発明者】
【氏名】張印
(72)【発明者】
【氏名】費錦標
(72)【発明者】
【氏名】周文果
(72)【発明者】
【氏名】▲ぱん▼珂
(72)【発明者】
【氏名】黄建聯
(72)【発明者】
【氏名】張清苗
(72)【発明者】
【氏名】陳衛
【審査官】飯室 里美
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107568585(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108378288(CN,A)
【文献】特開2002-27904(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105010463(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106418462(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A21D
A23G
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファーガオ食品の加工方法であって、
ファーガオ原料にサワードウを添加してファーガオバッターを調製し、このファーガオバッターを誘電率20~34、誘電損失6.3~9.0、水分含有量45~55%、水分活性0.920~0.980まで発酵させて、マイクロ波を用いて加熱してファーガオ食品を作ることを含む、ことを特徴とするファーガオ食品の加工方法。
【請求項2】
ファーガオ原料にサワードウを添加してファーガオバッターを調製し、このファーガオバッターを誘電率22~24、誘電損失7.1~7.5、水分含有量50~52%、水分活性0.940~0.960まで発酵させて、マイクロ波を用いて加熱してファーガオ食品を作ることを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
サワードウの調製過程において、DY値が170~180であり、DY値が、
で定義され、
発酵時間は12~13hである、ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
サワードウの添加量が、ファーガオ原料の重量に対して8~12%である、ことを特徴とする請求項3に記載の加工方法。
【請求項5】
サワードウの調製過程において、菌剤添加量が小麦粉質量に対して0.1~0.3%であり、サワードウ中の初期接種生菌数が1~3×10
7CFU/g小麦粉である、ことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
サワードウの調製過程において選択される小麦粉が高グルテン小麦粉であり、高グルテン小麦粉中の湿潤グルテン蛋白の含有量が30~32%であり、
サワードウの調製方法は、高グルテン小麦粉200重量部、水140~160重量部、及びラクトバチルス・プランタラム粉末0.2~0.6重量部を均一に混合攪拌し、恒温恒湿培養器に入れて、発酵温度37~38℃、発酵時間12~13hに設定して発酵させ、ラクトバチルス・プランタラム発酵型サワードウを得ることを含む、ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ファーガオバッターの発酵過程において、発酵温度を37~38℃、発酵湿度を80~85%に制御する、ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ファーガオ原料は、小麦デンプンとグルテン粉末を配合して得られ、グルテン粉末の重量は小麦デンプンの10~20%である、ことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ファーガオバッターの調製方法は、ファーガオ原料352~368重量部に、サワードウ32~48重量部、白砂糖48~60重量部、活性乾燥酵母4.8~6重量部、ベーキングパウダー2~2.5重量部、水260~266重量部を加えて、かき混ぜてファーガオバッターを得ることを含む、ことを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ファーガオバッターの発酵開始点の誘電率を30~34、誘電損失を9.0~10.5、水分含有量を50~52%、水分活性を0.940~0.960に調整する、ことを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
同軸プローブ法を用いてファーガオバッターの誘電率及び誘電損失を測定し、測定システムはベクトルネットワークアナライザ、85070E高温プローブ、ケーブル、コンピュータ、及びテストソフトウェアを含み、測定周波数は2.45GHzとする、ことを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サワードウ発酵型米/小麦粉食品のマイクロ波加工方法に関し、食品加工技術の分野に属する。
【背景技術】
【0002】
発酵米/小麦粉食品は中国の伝統的な主食源である。現在よく見られる発酵米/小麦粉食品はファーガオ(蒸しパン)、饅頭、花巻などがあり、一般的に米/小麦粉を主原料とし、調合、発酵、熟成などのプロセスを経て製造されたものであり、風味が独特で、栄養が豊富で、ふわふわしている食感をしている。熟成過程は、デンプンのゲル化、蛋白変性、体積膨張、水分蒸発などの重要なステップに関連しているので、発酵米/小麦粉食品の製造過程に欠かせないステップであるが、現在、伝統的な熟成方式は通常蒸気加熱を採用しており、エネルギー消費量が大きく、製品の生産周期が長く、加工過程の栄養損失が大きく、微生物腐敗が発生しやすく、賞味期限が短く、製品の品質が不安定で、風味や品質が不足しているなどの深刻な問題があり、大規模な工業的生産が難しい。以上の問題を解決するために、マイクロ波熟成方式は次第に研究者により注目されており、省エネ化、高効率化、選択的加熱が可能であり、栄養損失が少なく、便利性や衛生性が高く、制御しやすいなどの特徴があり、現代人の速いリズムの消費や生活の方式に合っている。
【0003】
伝統的な発酵米/小麦粉食品の熟成方式は、熱源から外部への輻射熱エネルギー、及び熱源と加熱される食品との間に温度差が存在することによる熱伝導と熱対流過程によって食品を加熱し、一方、マイクロ波加熱は、材料中の極性分子を利用して、急速に変化する電磁界で激しい回転を発生させて、隣接する分子と摩擦効果を発生させ、材料を急速に昇温して、材料の内部の圧力を増加し、質量の伝達を材料の内部から材料の表面に行うことで、急速な熟成の目的を達成するものである。マイクロ波加熱過程では、マイクロ波エネルギーの吸収と変換は食品材料の誘電特性に依存し、一方、誘電特性は食品固有の特性であり、材料とマイクロ波との相互作用能力を反映しており、理論的には誘電率ε’と誘電損失ε’’の2つのパラメータを考察する。誘電率は、材料が電磁界でエネルギーを貯蔵する能力を反映し、誘電損失は材料がマイクロ波を吸収する能力を決定し、ε”が大きいほど、マイクロ波に対する材料の吸収能力は強く、両者は、食品材料におけるマイクロ波の侵透深さを決定し、マイクロ波加熱効果に影響する最も重要なパラメーターである。材料の誘電特性を検出・調整することは、マイクロ波加熱効果の改善と製品品質の制御に役立つ。
【0004】
マイクロ波加熱にも、例えば加熱速度が速すぎて、不均一で、製品の中心に硬い芯が現れて、表皮が粗くて乾燥して、風味が弱まるなどの欠陥を招きやすいなど、多くの問題が存在しており、現在、主に例えば乳酸、クエン酸、食品増粘剤などの食品添加剤などの手段を採用して発酵米/小麦粉食品の品質を改善する。消費者の日増しに増大する化学物質添加フリー化へのニーズに応えるために、マイクロ波加熱過程で発酵米/小麦粉食品の物性品質を効果的に改善できる方法の開発が急務となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
マイクロ波加熱を利用する場合の加熱速度が速すぎて、不均一で、製品の中心に硬い芯が現れて、表皮が粗くて乾燥し、風味が弱まるなどの欠陥と、食品添加剤との現在の矛盾を解決するために、本発明は、微生物発酵過程で材料系の誘電特性を調整することによって上記課題を解決する、誘電調整に基づくサワードウ発酵型米/小麦粉食品の加工方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ファーガオ原料にサワードウを添加してファーガオバッターを調製し、このファーガオバッターを誘電率20~34、誘電損失6.3~9.0、水分含有量45~55%、水分活性0.920~0.980まで発酵させて、マイクロ波を用いて加熱してファーガオ食品を作ることを含む、ファーガオ食品の加工方法を提供する。
【0007】
好ましくは、ファーガオ原料にサワードウを添加してファーガオバッターを調製し、このファーガオバッターを誘電率22~24、誘電損失7.1~7.5、水分含有量50~52%、水分活性0.940~0.960まで発酵させて、マイクロ波を用いて加熱してファーガオ食品を作ることを含む。
【0008】
好ましくは、サワードウの調製過程において、DY値が170~180であり、DY値が、
で定義され、
発酵時間は12~13hである。
【0009】
好ましくは、サワードウの添加量が、ファーガオ原料の重量に対して8~12%である。
【0010】
好ましくは、サワードウの調製過程において、菌剤添加量が小麦粉質量に対して0.1~0.3%であり、サワードウ中の初期接種生菌数が1~3×107CFU/g小麦粉である。
【0011】
好ましくは、サワードウの調製過程において選択される小麦粉が高グルテン小麦粉であり、高グルテン小麦粉中の湿潤グルテン蛋白の含有量が30~32%である。
【0012】
好ましくは、サワードウの調製方法は、高グルテン小麦粉200重量部、水140~160重量部、ラクトバチルス・プランタラム粉末0.2~0.6重量部を均一に混合攪拌し、恒温恒湿培養器に入れて、発酵温度37~38℃、発酵時間12~13hに設定して発酵させ、ラクトバチルス・プランタラム発酵型サワードウを得ることを含む。
【0013】
好ましくは、ファーガオバッターの発酵過程において、発酵温度を37~38℃、発酵湿度を80~85%に制御する。
【0014】
好ましくは、ファーガオ原料は、小麦デンプンとグルテン粉末を配合して得られ、グルテン粉末の重量は小麦デンプンの10~20%である。
【0015】
好ましくは、ファーガオバッターの調製方法は、ファーガオ原料352~368重量部に、サワードウ32~48重量部、白砂糖48~60重量部、活性乾燥酵母4.8~6重量部、ベーキングパウダー2~2.5重量部、水260~266重量部を加えて、かき混ぜてファーガオバッターを得ることを含む。
【0016】
好ましくは、前記方法は、ファーガオバッターの発酵開始点の誘電率を30~34、誘電損失を9.0~10.5、水分含有量を50~52%、水分活性を0.940~0.960に調整することをさらに含む。
【0017】
好ましくは、前記方法では、同軸プローブ法を用いてファーガオバッターの誘電率及び誘電損失を測定し、測定システムはベクトルネットワークアナライザ、85070E高温プローブ、ケーブル、コンピュータ、及びテストソフトウェアを含み、測定周波数は2.45GHzとする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の有益な効果は以下の通りである。
従来技術と比較して、本発明には以下の利点がある。
1、本発明では、サワードウ発酵技術を採用し、サワードウ発酵による材料系の誘電制御変化規則に基づいて、サワードウ発酵プロセスを最適化し、その調製過程におけるDY値、発酵時間及びファーガオバッターへの添加量を制御することにより、ファーガオバッターを誘電率22~24、誘電損失7.1~7.5、水分含有量50~52%、水分活性0.940~0.960まで発酵させるように調整した。これにより、ファーガオのマイクロ波加熱の効果と製品の品質を明らかに改善し、得られた製品は既存のこのような製品より質感が更に柔らかく弾性があり、気孔が均一で緻密で、咀嚼性が良く、比容積がより大きく、食品添加剤を添加せずに、マイクロ波加熱を利用した場合、製品の中心に硬い芯が現れ、表皮が粗く乾燥し、風味が弱まるなどの現在の課題を解決した。
2、本発明で得られた製品は、栄養が豊富であり、健康にやさしく、かつ風味が濃厚で、化学添加剤の使用に起因する食品安全上の潜在的な問題を効果的に回避し、消費者の日増しに増大する化学物質添加フリー化へのニーズにこたえる。さらに、本発明のプロセスは、簡便で、操作性が高く、省エネで環境に優しいので、機械化・大規模工業化生産への応用に適している。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本発明の実施例における技術思想をより明確に説明するために、以下では、実施例の説明において使用する図面を簡単に説明するが、以下の説明における図面は本発明の一部の実施例にすぎず、当業者であれば、創造的な努力を必要とせずに、これらの図面から他の図面を得ることができる。
【
図1】異なるサワードウ添加量が生ファーガオバッターの発酵終点での誘電特性に与える影響(DY=175)である。
【
図2】異なるDY値のサワードウの添加が生ファーガオバッターの発酵終点での誘電特性に与える影響(添加量20%)である。
【
図3】異なるサワードウの添加量が生ファーガオバッターの発酵終点での侵透深さに与える影響(DY=175)である。
【
図4】異なるDY値のサワードウの添加が生ファーガオバッターの発酵終点での侵透深さに与える影響(添加量20%)である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の目的、技術思想、及び利点をより明確にするために、以下、図面を参照しながら本発明の実施形態をさらに詳細に説明する。
【0021】
本発明の前記方法が、サワードウによる材料への誘電増強効果及びバッターへの誘電調整作用に基づいて、マイクロ波加熱効果を改善し、製品の物性や品質特性を効果的に向上させることができることをよりよく明らかにするために、関連パラメータを中心に一連の試験研究を行い、以下のように説明する。
【0022】
発酵バッターの誘電特性の測定:同軸プローブ法を用いてバッターの誘電率と誘電損失を含む誘電特性を測定する。測定システムはベクトルネットワークアナライザ、85070E高温プローブ、ケーブル、コンピュータ及びテストソフトウェアから構成されている。測定周波数は2.45GHzとする。計器校正:計器を起動させて、30分間、予熱し、中点周波数が2.45GHzになるように2.4~2.5GHzの周波数範囲を設定する。これに基づいて、プローブを空気、短絡部、及び脱イオン水(既知の温度)で校正する。
【0023】
サンプル測定:サンプルをサンプル台に置き、気泡の発生を回避しながらプローブに十分に接触させ、オンライン検出ソフトウェアにより複素誘電率の実部ε’と虚部ε’’を読み取り、単一サンプルを3回平行に測定し、平均値をとる。
【0024】
の測定:消費電力が1/e(オイラー数e≒2.718)まで減衰する深さをマイクロ波の侵透深さ(単位:メートル)と定義し、式(1)により計算することができる。
但し、cは真空中の光速(3×10
8m/s)であり、fは電磁波周波数(Hz)である。
【0025】
ファーガオの物理性能の測定:60分間冷却した製品の中心部位を取り、2cm×2cm×2cmの均一なブロック状に切り、プラテン式プローブを採用し、TPA操作タイプ、測定変形40%、測定前速度1.0mm・s-1、測定後速度1.0mm・s-1、測定速度1.7mm・s-1、間隔時間5sとする。TPA測定によりファーガオの硬さ、咀嚼性や回復性などの指標を得る。
【0026】
製品の比容積の測定:アワ(粟)置換法を用いて比容積を測定し、同じ体積のビーカーを2つ取り、ビーカー1をアワで満たし、定規でビーカー口を平らにする。製品をビーカー2に入れ、ビーカー1内のアワでビーカー2を満たし、ビーカー口を定規で平らにし、残りのアワの体積をメスシリンダーで測定して、製品の体積とする。
【0027】
以下の比較例及び実施例では、小麦粉ファーガオの調製を例にして説明する。
【0028】
比較例1
本比較例は、サワードウを添加せずにマイクロ波ファーガオを調製することを例に説明し、詳細な過程は以下の通りである。
(1)生ファーガオバッターの調製:
小麦デンプン350重量部、グルテン粉50重量部に、白砂糖48重量部、活性乾燥酵母4.8重量部、ベーキングパウダー2重量部、水280重量部を加え、シェフマシンでK字パドルを用いて、240rpmの回転速度で、12分間、高速でかき混ぜて、生ファーガオバッターを得た。
(2)生ファーガオバッターの発酵:
生ファーガオバッター100重量部を予め植物油を塗布した円筒形の型に取り、十分に振とうさせて平らにし、温度37℃、湿度80%の条件の寝かせ箱に入れて40分間、発酵させた。
(3)ファーガオのマイクロ波熟成:
発酵後の生ファーガオバッターを取り、電子レンジに入れ、4.25W/g、2分のマイクロ波条件で熟成し、冷却してマイクロ波ファーガオを得た。
【0029】
比較例2
本比較例は、伝統的な蒸しプロセスを用いて、サワードウを添加せずにファーガオを調製し、詳細な過程は以下の通りである。
(1)生ファーガオバッターの調製:比較例1を参照。
(2)生ファーガオバッターの発酵:比較例1を参照。
(3)ファーガオの蒸し熟成:発酵後のバッターを取り、蒸し箱に入れ、100℃で15分間蒸し、冷却して蒸しファーガオを得た。
【0030】
実施例1
本実施例は、既存のプロセスで調製されたサワードウを添加して発酵させた米/小麦粉食品のマイクロ波加工方法を提供する。この方法は以下を含む。
(1)ラクトバチルス・プランタラムで発酵させたサワードウの調製
高グルテン小麦粉100重量部、水100重量部、及びラクトバチルス・プランタラム粉末0.1重量部をとり、サワードウ中の初期接種生菌数を1×10
7CFU/g小麦粉とし、このうち、高グルテン小麦粉中の湿潤グルテン蛋白質の含有量は30~32%であった。これらの材料をビーカー内に均一に混合攪拌し、恒温恒湿培養器に入れ、発酵温度を37℃に設定し、12h恒温培養し、ラクトバチルス・プランタラム発酵型サワードウを得た。
上記の調製過程を参照すると、本実施例におけるサワードウの調製過程におけるDY値は以下の通りであることが分かった。
(2)生ファーガオバッターの調製:
小麦デンプン350重量部、グルテン粉50重量部を取り、前記サワードウ100重量部、白砂糖60重量部、活性乾燥酵母6重量部、ベーキングパウダー2.5重量部、水300重量部を加え、シェフマシンでK字パドルを用いて、240 rpmの回転速度で12分間、高速でかき混ぜて、生ファーガオバッターを得た。
上記の調製過程を参考すると、サワードウの添加量はファーガオ原料の
であることがわかった。
(3)生トウモロコシファーガオバッターの発酵:
生トウモロコシファーガオバッター100重量部をあらかじめ植物油を塗布した円筒形の型に入れ、十分に振とうさせて平らにし、温度37℃、湿度80%の条件の寝かせ箱に入れて発酵させた。
(4)発酵バッターの誘電率調整:
発酵バッターの発酵開始点における誘電率を30~36、誘電損失を9.5~10.2、水分含有量を51.0~51.5%、水分活性を0.925~0.935に制御した。バッター発酵時間を40分に制御し、このとき、発酵終点でのバッターの誘電率は27~30、誘電損失は8.1~8.3、水分含有量は51.0~52.0%、水分活性は0.945~0.955であった。
(5)ファーガオのマイクロ波熟成:
発酵後の生ファーガオバッターを取り、電子レンジに入れ、4.25W/g、2分のマイクロ波条件で熟成し、冷却してマイクロ波ファーガオを得た。
【0031】
実施例2
本実施例は、比較のために、従来の蒸しプロセスを用いて、既存のプロセスで調製されたサワードウを添加したファーガオを調製し、詳細な過程は以下の通りである。
(1)ラクトバチルス・プランタラム発酵型サワードウの調製:実施例1を参照。
(2)生ファーガオバッターの調製:実施例1を参照。
(3)生ファーガオバッターの発酵:実施例1を参照。
(4)ファーガオの蒸し熟成:発酵後のバッターを取り、蒸し箱に入れ、100℃で15分間蒸し、冷却して蒸しファーガオを得た。
【0032】
実施例3
本出願は、Box-Behnken応答曲面法を採用してサワードウ発酵技術を最適化し、質感が柔らかく、咀嚼性が良く、比容積が大きいマイクロ波ファーガオを得、前記方法は以下を含む。
(1)ラクトバチルス・プランタラム発酵型サワードウの調製:
高グルテン小麦粉200重量部、水150~250重量部、ラクトバチルス・プランタラム粉末0.2~0.6重量部を取り、サワードウ中の初期接種生菌数は1~3×107CFU/g小麦粉であった。上記材料を均一に混合攪拌してビーカー内に入れ、恒温恒湿培養器に入れ、発酵温度を37℃に設定し、8~16h恒温培養して、ラクトバチルス・プランタラム発酵型サワードウを得て、このサワードウのDY値は175~225の範囲であった。
(2)生ファーガオバッターの調製:
小麦デンプン245~315重量部、グルテン粉末35~45重量部を取り、サワードウ40~120重量部、白砂糖48重量部、活性乾燥酵母4.8重量部、ベーキングパウダー2重量部、水213.3~262.8重量部を加え、シェフマシンでK字パドルを用いて、240rpmの回転速度で12分間、高速でかき混ぜて、ファーガオ生地を得た。
(3)生ファーガオバッターの発酵:
生ファーガオバッター100重量部を、あらかじめ植物油を塗布した円筒形の型に取り、十分に振とうさせて平らにし、温度37℃、湿度80%の条件の寝かせ箱に入れて発酵させた。
(4)発酵バッターの誘電率調整:
発酵バッターの発酵開始点における誘電率を30~36、誘電損失を9.5~10.2、水分含有量を51.0~51.5%、水分活性を0.925~0.935に制御した。バッター発酵時間を40分に制御し、このとき、発酵終点でのバッターの誘電率は23~30、誘電損失は7.2~8.0、水分含有量は51.0~52.0%、水分活性は0.945~0.955であった。
(5)ファーガオのマイクロ波熟成:
発酵後の生ファーガオバッターを取り、電子レンジに入れ、4.25W/g、2分のマイクロ波条件で熟成し、冷却してマイクロ波ファーガオを得た。
得られた結果を表2に示す。
表2を参照して、データ統計分析をしたところ、最適なサワードウ発酵プロセスとして、DY値((weight of sourdough/weight of flour in sourdough)×100)は175、発酵時間は12.5h、サワードウの添加量はファーガオ原料の8~14%(重量換算)であり、この条件下で調製されたファーガオ生地の発酵終点における誘電率は22.976±0.399であり、誘電損失は7.181±0.114であった。
【0033】
実施例4
本実施例は、上記で決定された最適化パラメータを用いたサワードウを用いてマイクロ波ファーガオを調製し、詳細な過程は以下の通りである。
(1)ラクトバチルス・プランタラム発酵型サワードウの調製:
高グルテン小麦粉200重量部、水150重量部、ラクトバチルス・プランタラム粉末0.2重量部をとり、サワードウ中の初期接種生菌数は1×107CFU/g小麦粉であった。上記の材料を均一に混合攪拌してビーカー内に入れ、恒温恒湿培養器に入れ、発酵温度を37℃に設定して、12.5h恒温培養し、ラクトバチルス・プランタラム発酵型サワードウを得、上記の過程では、DYは175であった。
(2)生ファーガオバッターの調製:
小麦デンプン315重量部、グルテン粉45重量部をとり、前記サワードウ40重量部、白砂糖48重量部、活性乾燥酵母4.8重量部、ベーキングパウダー2重量部、水213~263重量部を加え、シェフマシンでK字パドルを用いて、240rpmの回転速度で12分間、高速でかき混ぜて、生ファーガオバッターを得て、サワードウの添加量は、ファーガオ原料の11%(重量換算)であった。
(3)生ファーガオバッターの発酵:
生ファーガオバッター100重量部を、あらかじめ植物油を塗布した円筒形の型に取り、十分に振とうさせて平らにし、温度37℃、湿度80%の条件の寝かせ箱に入れて発酵させた。
(4)発酵バッターの誘電率調整:
発酵バッターの発酵開始点における誘電率を30~34、誘電損失を9.0~10.5、水分含有量を51.0~51.5%、水分活性を0.925~0.935に制御した。バッター発酵時間を40分に制御し、このとき、発酵終点でのバッターの誘電率は22~24、誘電損失は7.1~7.5、水分含有量は51.0~52.0%、水分活性は0.945~0.955であった。
(5)ファーガオのマイクロ波熟成:
発酵後の生ファーガオバッターを取り、電子レンジに入れ、4.25W/g、2分のマイクロ波条件で熟成し、冷却してマイクロ波ファーガオを得た。
【0034】
実施例5
本実施例は、比較のために、従来の蒸し工程を用いて、最適化されたサワードウを添加したファーガオを調製し、詳細な過程は以下の通りである。
(1)ラクトバチルス・プランタラム発酵型サワードウの調製:実施例4を参照。
(2)生ファーガオバッターの調製:実施例4を参照。
(3)生トウモロコシファーガオバッターの発酵:実施例4を参照。
(4)ファーガオの蒸し熟成:発酵したバッターを取り、蒸し箱に入れ、100℃で15分間蒸し、冷却して蒸しファーガオを得た。
上記の各比較例及び実施例で調製されたファーガオの品質特性は次の表1に示す通りである。
【0035】
上記表1に示した各実施例及び比較例で調製されたファーガオ食品の品質特性データを比較し、
図1、
図2と合わせると、サワードウの添加はファーガオバッターの誘電特性を明らかに高めることができることがわかり、表1の比較例1と実施例1の間のデータの比較結果、比較例2と実施例2の間のデータの比較結果に示すように、マイクロ波加工方式を採用しても伝統的な蒸し方式を採用しても、サワードウを添加すると、ファーガオ食品の硬さは明らかに低下したが、比容積は低下しており、また、マイクロ波加工方式を採用した比較例1と実施例1では、サワードウを添加すると、咀嚼性が低下し、回復性がやや向上し、一方、伝統的な蒸し方式を採用した比較例2と実施例2では、サワードウを添加すると、咀嚼性と回復性がいずれも少し向上した。
【0036】
一方、
図1、
図2及び表2のデータを参照すると、発酵終点でのバッターの誘電率及び誘電損失は、サワードウ添加量の増加及びサワードウのDY値の増加に伴って上昇する傾向にあることが分かった。以上の誘電変化規則に基づいてバッターを適切な誘電レベルに調整することにより、マイクロ波加熱効果を明らかに改善し、マイクロ波加熱効率を効果的に向上させることができる。
【0037】
また、表1の実施例1と実施例4のデータの比較結果を参照すると、
比容積値は
と向上し、硬さは
と下がり、したがって、本出願の最適化技術を用いて調製された、サワードウを用いてマイクロ波加工により得られたファーガオ食品は、より大きな製品体積を有し、質感がより柔らかく、その咀嚼性と回復性が低下しているが、蒸しファーガオより明らかに優れていることと、本発明の方法を用いて調製されたサワードウで発酵させたマイクロ波ファーガオは、弾性、靭性に優れ、咀嚼に耐えられることが分かった。
【0038】
さらに、侵透深さは、材料中のマイクロ波の減衰能力の大きさを特徴付け、材料のマイクロ波加熱の均一性を反映することができ、材料の誘電特性によって決定される。侵透深さが大きいほど、材料のマイクロ波加熱はより均一な加熱特性を得ることができる。
図3、
図4から分かるように、トウモロコシバッターの侵透深さは、サワードウの添加量の増加及びサワードウのDY値の増加に伴い、減少してから増加する傾向にあり、マイクロ波侵透深さはバッター用型の寸法選択及びバッターの誘電調整に一定の考慮価値がある。
【0039】
表1の結果を参照すると、蒸しファーガオと比べて、マイクロ波加工によれば、ファーガオは高い咀嚼性と回復性を有し、構造がよりしっかりとし、崩壊しにくくなり、冷却した後にかすが落ちにくく、その反面、マイクロ波加工の迅速さは一定の品質劣化をもたらし、製品の硬さが著しく増加し、気孔が増大し、質感が粗くなる。サワードウを導入することにより、マイクロ波ファーガオの硬さを大幅に低下させ、気孔を減らし、均一に分布させるが、比容積と咀嚼性を大幅に低下させ、理想的な製品品質との差があるため、本出願はサワードウの発酵プロセスを最適化した。
【0040】
本発明のサワードウによる最適化発酵で調製されたマイクロ波ファーガオと、サワードウを添加しないで発酵させたマイクロ波ファーガオとを比較した結果、最適化されたサワードウを添加し、高い誘電特性を有するように調整されたマイクロ波ファーガオは、低い誘電特性のマイクロ波ファーガオよりも製品体積が大きく、質感がより柔らかく、咀嚼性と回復性が低下したが、蒸しファーガオより明らかに優れている。本発明の方法を用いて調製されたサワードウ発酵マイクロ波ファーガオは、弾性、靭性に優れ、咀嚼に耐え、切る時にかすが落ちにくく、このことから、微生物発酵過程による材料系の誘電特性の調整作用により、発酵ファーガオの物性品質を確実に効果的に改善できることを示した。
【0041】
さらに、7名の当技術分野の専門家からなる判定グループは、本発明に記載されたトウモロコシファーガオのサンプルについて、色、匂い、内部構造や食感等の官能評価を行い、評価基準は表3に示す。官能評価グループによる評価結果を表4に示す。
【0042】
上記表4を参照すると、本発明のマイクロ波ファーガオは、においが強く、味が純正で、気孔が細かく均一で、食感がきめ細かく、歯にくっつかず、歯ごたえがあり、品質が優れており、地元の消費者に適していることがわかった。
【0043】
上記は、本発明の好適な実施例にすぎず、本発明を限定するものではなく、本発明の思想及び原則の範囲内で行われた修正、同等の置換や改良等は、本発明の特許範囲に含まれるものとする。