IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 第一稀元素化学工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-ジルコニア系粉末材料 図1
  • 特許-ジルコニア系粉末材料 図2
  • 特許-ジルコニア系粉末材料 図3
  • 特許-ジルコニア系粉末材料 図4
  • 特許-ジルコニア系粉末材料 図5
  • 特許-ジルコニア系粉末材料 図6
  • 特許-ジルコニア系粉末材料 図7
  • 特許-ジルコニア系粉末材料 図8
  • 特許-ジルコニア系粉末材料 図9
  • 特許-ジルコニア系粉末材料 図10
  • 特許-ジルコニア系粉末材料 図11
  • 特許-ジルコニア系粉末材料 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】ジルコニア系粉末材料
(51)【国際特許分類】
   C01G 25/02 20060101AFI20220906BHJP
   C01G 25/00 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
C01G25/02
C01G25/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022049263
(22)【出願日】2022-03-25
【審査請求日】2022-04-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000208662
【氏名又は名称】第一稀元素化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 理大
【審査官】磯部 香
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-081392(JP,A)
【文献】国際公開第2020/195973(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/020104(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 25/02
C01G 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水銀圧入法により求められる細孔直径分布において、細孔直径Xnm以上Ynm未満の範囲における細孔容積をVpX-Yとしたとき、
[(Vp10-100)/(Vp100-6000)]が、以下の式[1]を満たし、
前記Vp 100-6000 が、0.6mL/g以上であり、
ZrO を70質量%以上含むことを特徴とするジルコニア系粉末材料。
式[1] 0.4≦[(Vp10-100)/(Vp100-6000)]≦1
【請求項2】
[(Vp10-100)/(Vp5-6000)]が、以下の式[2]を満たすことを特徴とする請求項1に記載のジルコニア系粉末材料。
式[2] 0.2≦[(Vp10-100)/(Vp5-6000)]≦0.5
【請求項3】
[(Vp5-10)/(Vp5-6000)]が、以下の式[3]を満たすことを特徴とする請求項1又は2に記載のジルコニア系粉末材料。
式[3] 0.001≦[(Vp5-10)/(Vp5-6000)]≦0.1
【請求項4】
[(Vp100-6000)/(Vp5-6000)]が、以下の式[4]を満たすことを特徴とする請求項1~3のいずれか1に記載のジルコニア系粉末材料。
式[4] 0.5≦[(Vp100-6000)/(Vp5-6000)]≦0.8
【請求項5】
Vp5-6000が、0.5mL/g以上2mL/g以下であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1に記載のジルコニア系粉末材料。
【請求項6】
ZrO を75質量%以上含むことを特徴とする請求項1~5のいずれか1に記載のジルコニア系粉末材料。
【請求項7】
下記解砕処理後の粒子径D50が、0.05μm以上1.5μm以下であることを特徴とする請求項1~6のいずれか1に記載のジルコニア系粉末材料。
<解砕処理>
40mLの純水に0.1gのジルコニア系材料粉末を投入し、BRANSON社製の超音波ホモジナイザー:製品名Digital Sonifier 250型を用い、下記解砕条件にてホモジナイザー処理を5分間行う。
<解砕条件>
発振周波数:20kHz
高周波出力:200W
振幅制御 :40±5%
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジルコニア系粉末材料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、酸化ジルコニウムを主成分とするジルコニア系粉末材料は、電子材料の特性を向上させる添加材料として注目を浴びている。具体的な使用例としては、リチウムイオン二次電池における電極活物質の構造安定化を目的とした電極活物質との複合化用途、セパレーターの耐熱性等を向上させるための無機フィラー用途等が挙げられる。
【0003】
特許文献1には、水銀圧入法に基づく細孔分布において、全細孔容積が1.0ml/g以上であり、20nm以上100nm未満の直径を有する細孔の細孔容積が0.3ml/g以下であり、且つ、100nm以上1000nm以下の直径を有する細孔の細孔容積が0.5ml/g以上であるジルコニア系多孔質体が開示されている(請求項1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2020/195973号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の用途のように、ジルコニア系粉末材料と他材料を複合化する用途においては、ジルコニア系粉末材料と他材料とをいかに均一に複合化できるかが重要とされている。
【0006】
本発明者は、鋭意検討した結果、脆弱な凝集構造を有し、容易に微粒化が可能なジルコニア系粉末材料を提供できれば、より均一な複合物を得ることが可能であると考えるに至った。
【0007】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、容易な解砕処理により微粒が得られ易いジルコニア系粉末材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、ジルコニア系粉末材料について鋭意研究を行った。その結果、驚くべきことに、下記構成を有するジルコニア系粉末材料は、容易な解砕処理により微粒が得られ易いことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明に係るジルコニア系粉末材料は、
水銀圧入法により求められる細孔直径分布において、細孔直径Xnm以上Ynm未満の範囲における細孔容積をVpX-Yとしたとき、
[(Vp10-100)/(Vp100-6000)]が、以下の式[1]を満たすことを特徴とする。
式[1] 0.4≦[(Vp10-100)/(Vp100-6000)]≦1
【0010】
細孔直径10nm以上100nm未満の細孔は、ジルコニア系粉末材料の二次粒子の凝集粒の破砕の起点となる一次粒子間隙である。また、細孔直径100nm以上6000nm未満の細孔は、ジルコニア系粉末材料の三次粒子の凝集粒の破砕の起点となる二次粒子間隙である。
前記構成によれば、[(Vp10-100)/(Vp100-6000)]が、前記式[1]を満たすため、二次粒子の凝集粒の破砕の起点となる細孔直径10nm以上100nm未満の細孔と、三次粒子の凝集粒の破砕の起点となる細孔直径100nm以上6000nm未満の細孔との両方が、ある程度存在している。
例えば、[(Vp10-100)/(Vp100-6000)]が1を超えると、細孔直径10nm以上100nm未満の細孔は多く、二次粒子の凝集粒の破砕の起点となる一次粒子間隙は多いが、細孔直径100nm以上6000nm未満の細孔は少なく、三次粒子の凝集粒の破砕の起点となる二次粒子間隙が少ない。そのため、二次粒子の凝集粒は容易に破壊できても、三次粒子の凝集粒は容易に破砕できず、全体として、易粉砕性に劣ることになる。
また、[(Vp10-100)/(Vp100-6000)]が0.4未満であると、細孔直径100nm以上6000nm未満の細孔は多く、三次粒子の凝集粒の破砕の起点となる二次粒子間隙は多いが、細孔直径10nm以上100nm未満の細孔は少なく、二次粒子の凝集粒の破砕の起点となる一次粒子間隙が少ない。そのため、三次粒子の凝集粒は容易に破壊できても、二次粒子の凝集粒は容易に破砕できず、全体として、易粉砕性に劣ることになる。
一方、本発明によれば、[(Vp10-100)/(Vp100-6000)]が、前記式[1]を満たすため、凝集粒の破砕の起点となる一次粒子間隙、及び、二次粒子間隙の双方を適度に有していると言える。従って、強力な解砕手法を用いることなく、容易な解砕処理により微粒化することが可能となる。
【0011】
なお、特許文献1では、粒子径D50が1μm以下の微粒粉体を得るために、ジルコニア系多孔質体を遊星型ボールミルを用いて粉砕しており(段落[0170])、容易な手法で解砕できる粉末材料であるとは言い難い。
このことは、特許文献1の実施例2を追試した本明細書における比較例3の評価結果からも明らかである。本明細書における比較例3は、緩やかな条件であるホモジナイザーによる解砕処理後の粒度が、本明細書における実施例と比較して粗い結果となっている。
【0012】
前記構成においては、[(Vp10-100)/(Vp5-6000)]が、以下の式[2]を満たすことが好ましい。
式[2] 0.2≦[(Vp10-100)/(Vp5-6000)]≦0.5
【0013】
前記[(Vp10-100)/(Vp5-6000)]が0.2以上0.5以下であると、破砕の起点となる比較的大きな一次粒子間隙を適度に含むため、より容易に微粒化することが可能となる。
なお、Vp5-6000は、細孔直径5nm以上6000nm未満の範囲における細孔容積である。
つまり、前記[(Vp10-100)/(Vp5-6000)]は、細孔直径5nm以上6000nm未満の範囲における細孔容積に対する、細孔直径10nm以上100nm未満の細孔の容積の比率を意味する。
【0014】
前記構成においては、[(Vp5-10)/(Vp5-6000)]が、以下の式[3]を満たすことが好ましい。
式[3] 0.001≦[(Vp5-10)/(Vp5-6000)]≦0.1
【0015】
前記[(Vp5-10)/(Vp5-6000)]が0.001以上0.1以下であると、破砕の阻害となる小さな一次粒子間隙(細孔直径5nm以上10nm未満の細孔)が十分に少ないため、より容易に微粒化することが可能となる。
なお、前記[(Vp5-10)/(Vp5-6000)]は、細孔直径分布の全範囲での細孔容積に対する、細孔直径5nm以上10nm未満の細孔の容積の比率を意味する。
【0016】
前記構成においては、[(Vp100-6000)/(Vp5-6000)]が、以下の式[4]を満たすことが好ましい。
式[4] 0.5≦[(Vp100-6000)/(Vp5-6000)]≦0.8
【0017】
前記[(Vp100-6000)/(Vp5-6000)]が0.5以上0.8以下であると、破砕の起点となる比較的大きな二次粒子間隙を適度に含み、より容易に微粒化することが可能である。
【0018】
前記構成においては、Vp5-6000が、0.5mL/g以上2mL/g以下であることが好ましい。
【0019】
Vp5-6000が0.5mL/g以上2mL/g以下であると、クラックの起点となる細孔を多く有しているといえる。従って、より容易に微粒化することが可能である。
【0020】
前記構成においては、ZrOを70質量%以上含むことが好ましい。
【0021】
ZrOを70質量%以上含むと、ZrO由来の脆弱な粒子が多く含まれることになるため、より粉砕性に優れる。
【0022】
前記構成においては、下記解砕処理後の粒子径D50が、0.05μm以上1.5μm以下であることが好ましい。
<解砕処理>
40mLの純水に0.1gのジルコニア系材料粉末を投入し、BRANSON社製の超音波ホモジナイザー:製品名Digital Sonifier 250型を用い、下記解砕条件にてホモジナイザー処理を5分間行う。
<解砕条件>
発振周波数:20kHz
高周波出力:200W
振幅制御 :40±5%
【0023】
前記解砕処理は、比較的穏やかな条件での解砕処理である。前記構成によれば、穏やかな解砕処理により、粒子径D50が1.5μm以下となる。従って、当該ジルコニア系材料粉末は、微粒化が容易であるといえる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、容易な解砕処理により微粒が得られ易いジルコニア系粉末材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本実施形態に係るジルコニア系粉末材料の製造方法を説明するための模式図である。
図2】実施例1のジルコニア系粉末材料の細孔分布である。
図3】実施例2のジルコニア系粉末材料の細孔分布である。
図4】実施例3のジルコニア系粉末材料の細孔分布である。
図5】実施例4のジルコニア系粉末材料の細孔分布である。
図6】実施例5のジルコニア系粉末材料の細孔分布である。
図7】実施例6のジルコニア系粉末材料の細孔分布である。
図8】実施例7のジルコニア系粉末材料の細孔分布である。
図9】比較例1のジルコニア系粉末材料の細孔分布である。
図10】比較例2のジルコニア系粉末材料の細孔分布である。
図11】比較例3のジルコニア系粉末材料の細孔分布である。
図12】実施例1、比較例1、及び、比較例3のジルコニア系粉末材料の解砕処理後の粒子径分布である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について説明する。ただし、本発明はこれらの実施形態のみに限定されるものではない。なお、本明細書において、水酸化ジルコニウムとは一般的なものであり、ハフニウムを含めた10質量%以下の不純物金属化合物を含むものである。
【0027】
[ジルコニア系粉末材料]
本実施形態に係るジルコニア系粉末材料は、水銀圧入法により求められる細孔直径分布において、細孔直径Xnm以上Ynm未満の範囲における細孔容積をVpX-Yとしたとき、
[(Vp10-100)/(Vp100-6000)]が、以下の式[1]を満たす。
式[1] 0.4≦[(Vp10-100)/(Vp100-6000)]≦1
【0028】
前記ジルコニア系粉末材料は、凝集していない一次粒子、一次粒子が凝集した二次粒子、及び、二次粒子同士が凝集した三次粒子を含む。
ただし、前記ジルコニア系粉末材料において、二次粒子とはならず、凝集しない一次粒子の状態で存在する一次粒子の量はごく微量であり、例えば、一次粒子全体(凝集していない一次粒子と、凝集して二次粒子となった一次粒子との合計)のうちの1質量%未満である。つまり、前記ジルコニア系粉末材料は、凝集していない一次粒子をごく微量含み得るが、大部分が二次粒子、及び、三次粒子で構成されている。
【0029】
細孔直径10nm以上100nm未満の細孔は、ジルコニア系粉末材料の二次粒子の凝集粒の破砕の起点となる一次粒子間隙である。また、細孔直径100nm以上6000nm未満の細孔は、ジルコニア系粉末材料の三次粒子の凝集粒の破砕の起点となる二次粒子間隙である。
前記ジルコニア系粉末材料によれば、[(Vp10-100)/(Vp100-6000)]が、前記式[1]を満たすため、二次粒子の凝集粒の破砕の起点となる細孔直径10nm以上100nm未満の細孔と、三次粒子の凝集粒の破砕の起点となる細孔直径100nm以上6000nm未満の細孔との両方が、ある程度存在している。
例えば、[(Vp10-100)/(Vp100-6000)]が1を超えると、細孔直径10nm以上100nm未満の細孔は多く、二次粒子の凝集粒の破砕の起点となる一次粒子間隙は多いが、細孔直径100nm以上6000nm未満の細孔は少なく、三次粒子の凝集粒の破砕の起点となる二次粒子間隙が少ない。そのため、二次粒子の凝集粒は容易に破壊できても、三次粒子の凝集粒は容易に破砕できず、全体として、易粉砕性に劣ることになる。
また、[(Vp10-100)/(Vp100-6000)]が0.4未満であると、細孔直径100nm以上6000nm未満の細孔は多く、三次粒子の凝集粒の破砕の起点となる二次粒子間隙は多いが、細孔直径10nm以上100nm未満の細孔は少なく、二次粒子の凝集粒の破砕の起点となる一次粒子間隙が少ない。そのため、三次粒子の凝集粒は容易に破壊できても、二次粒子の凝集粒は容易に破砕できず、全体として、易粉砕性に劣ることになる。
一方、前記ジルコニア系粉末材料によれば、[(Vp10-100)/(Vp100-6000)]が、前記式[1]を満たすため、凝集粒の破砕の起点となる一次粒子間隙、及び、二次粒子間隙の双方を適度に有していると言える。従って、強力な解砕手法を用いることなく、容易な解砕処理により微粒化することが可能となる。
【0030】
前記[(Vp10-100)/(Vp100-6000)]は、好ましくは0.45以上であり、より好ましくは0.5以上である。前記[(Vp10-100)/(Vp100-6000)]は、好ましくは0.9以下であり、より好ましくは0.8以下である。
【0031】
前記ジルコニア系粉末材料は、[(Vp10-100)/(Vp5-6000)]が、以下の式[2]を満たすことが好ましい。
式[2] 0.2≦[(Vp10-100)/(Vp5-6000)]≦0.5
【0032】
前記[(Vp10-100)/(Vp5-6000)]が0.2以上0.5以下であると、破砕の起点となる比較的大きな一次粒子間隙を適度に含むため、より容易に微粒化することが可能となる。
なお、Vp5-6000は、前記細孔直径分布の全範囲での細孔容積である。
つまり、前記[(Vp10-100)/(Vp5-6000)]は、全範囲での細孔容積に対する、
細孔直径10nm以上100nm未満の細孔の容積の比率を意味する。
【0033】
前記[(Vp10-100)/(Vp5-6000)]は、好ましくは0.25以上であり、より好ましくは0.3以上である。前記[(Vp10-100)/(Vp5-6000)]は、好ましくは0.45以下であり、より好ましくは0.4以下である。
【0034】
前記ジルコニア系粉末材料は、[(Vp5-10)/(Vp5-6000)]が、以下の式[3]を満たすことが好ましい。
式[3] 0.001≦[(Vp5-10)/(Vp5-6000)]≦0.1
【0035】
前記[(Vp5-10)/(Vp5-6000)]が0.001以上0.1以下であると、破砕の阻害となる小さな一次粒子間隙(細孔直径5nm以上10nm未満の細孔)が十分に少ないため、より容易に微粒化することが可能となる。
なお、前記[(Vp5-10)/(Vp5-6000)]は、細孔直径分布の全範囲での細孔容積に対する、細孔直径5nm以上10nm未満の細孔の容積の比率を意味する。
【0036】
前記[(Vp5-10)/(Vp5-6000)]は、好ましくは0.002以上であり、より好ましくは0.003以上である。前記[(Vp5-10)/(Vp5-6000)]は、好ましくは0.007以下であり、より好ましくは0.005以下である。
【0037】
前記ジルコニア系粉末材料は、[(Vp100-6000)/(Vp5-6000)]が、以下の式[4]を満たすことが好ましい。
式[4] 0.5≦[(Vp100-6000)/(Vp5-6000)]≦0.8
【0038】
前記[(Vp100-6000)/(Vp5-6000)]が0.5以上0.8以下であると、破砕の起点となる比較的大きな二次粒子間隙を適度に含み、より容易に微粒化することが可能である。
なお、前記[(Vp100-6000)/(Vp5-6000)]は、細孔直径分布の全範囲での細孔容積に対する、細孔直径100nm以上6000nm未満の細孔の容積の比率を意味する。
【0039】
前記[(Vp100-6000)/(Vp5-6000)]は、好ましくは0.55以上であり、より好ましくは0.6以上である。前記[(Vp100-6000)/(Vp5-6000)]は、好ましくは0.75以下であり、より好ましくは0.7以下である。
【0040】
前記Vp5-10は、0mL/g以上0.1mL/g以下であることが好ましい。前記Vp5-10が0.001mL/g以上0.1mL/g以下であると、破砕の障害となる一次粒子間隙が十分に少ないため、より容易に微粒化することができる。前記Vp5-10は、より好ましくは0.001mL/g以上、さらに好ましくは0.002mL/g以上、特に好ましくは0.003mL/g以上である。前記Vp5-10は、より好ましくは0.05mL/g以下、さらに好ましくは0.03mL/g以下である。
【0041】
前記Vp10-100は、0.3mL/g以上0.8mL/g以下であることが好ましい。前記Vp10-100が0.3mL/g以上0.8mL/g以下であると、破砕の起点となる比較的大きな一次粒子間隙を適度に含むため、より容易に微粒化することが可能となる。前記Vp10-100は、より好ましくは0.4mL/g以上、さらに好ましくは0.5mL/g以上である。Vp10-100は、より好ましくは0.75mL/g以下、さらに好ましくは0.70mL/g以下、さらに好ましくは0.65mL/g以下である。
【0042】
前記Vp5-6000は、0.5mL/g以上2mL/g以下であることが好ましい。前記Vp5-6000が0.5mL/g以上2mL/g以下であると、クラックの起点となる細孔を多く有しているといえる。従って、より容易に微粒化することが可能である。前記Vp5-6000は、より好ましくは0.7mL/g以上、さらに好ましくは0.9mL/g以上である。前記Vp5-6000は、より好ましくは1.8mL/g以下、さらに好ましくは1.6mL/g以下である。
【0043】
前記Vp100-6000は、0.5mL/g以上1.1mL/g以下であることが好ましい。前記Vp100-6000が0.5mL/g以上1.1mL/g以下であると、破砕の起点となる比較的大きな二次粒子間隙を適度に含み、より容易に微粒化することが可能である。前記Vp100-6000は、より好ましくは0.6mL/g以上、さらに好ましくは0.7mL/g以上である。Vp100-6000は、より好ましくは1.05mL/g以下、さらに好ましくは1mL/g以下である。
【0044】
前記Vp5-10、前記Vp10-100、前記Vp5-6000、及び、前記Vp100-6000は、実施例に記載の方法により得られた値をいう。
また、前記Vp5-10は、細孔直径5nm以上10nm未満の範囲における細孔容積をいう。
前記Vp10-100は、細孔直径10nm以上100nm未満の範囲における細孔容積をいう。
前記Vp5-6000は、細孔直径5nm以上6000nm未満の範囲における細孔容積をいう。
前記Vp100-6000は、細孔直径100nm以上6000nm未満の範囲における細孔容積をいう。
【0045】
前記ジルコニア系粉末材料は、下記解砕処理後の粒子径D50(以下、粒子径D50-afterともいう)が、0.05μm以上1.5μm以下であることが好ましい。
<解砕処理>
40mLの純水に0.1gのジルコニア系材料粉末を投入し、BRANSON社製の超音波ホモジナイザー:製品名Digital Sonifier 250型を用い、下記解砕条件にてホモジナイザー処理を5分間行う。
<解砕条件>
発振周波数:20kHz
高周波出力:200W
振幅制御 :40±5%
【0046】
前記解砕処理は、比較的穏やかな条件での解砕処理である。上記粒子径D50-afterが1.5μm以下であると、穏やかな解砕処理によって、容易に微粒が得られ易いといえる。
【0047】
前記粒子径D50-afterは、0.1μm以上がより好ましく、0.2μm以上がさらに好ましい。また、前記粒子径D50-afterは、1.2μm以下がより好ましく、1.1μm以下がさらに好ましい。
【0048】
前記ジルコニア系粉末材料は、解砕処理前の粒子径D50(以下、粒子径D50-beforeともいう)が1μm以上400μm以下であることが好ましい。前記粒子径D50-beforeは、5μm以上がより好ましく、10μm以上がさらに好ましい。また、前記粒子径D50-beforeは、100μm以下がより好ましく、50μm以下がさらに好ましい。
【0049】
前記ジルコニア系粉末材料は、下記式(A)で示される粒度変化率が、95%以上であることが好ましい。
式(A):[粒度変化率(%)]=
100-([粒子径D50-after]/[粒子径D50-before])×100
【0050】
前記解砕処理は、比較的穏やかな条件での解砕処理である。前記粒度変化率が95%以上であると、前記ジルコニア系粉末材料は、穏やかな解砕処理により、大きく微粒化される。従って、当該ジルコニア系粉末材料は、微粒化が容易であるといえる。
【0051】
前記粒度変化率は、より好ましくは96%以上であり、さらに好ましくは98%以上である。前記粒度変化率は、大きいほど好ましいが、例えば、99.5%以下、99%以下等である。
【0052】
前記ジルコニア系粉末材料は、下記解砕処理後の粒子径D10(以下、粒子径D10-afterともいう)が0.05μm以上1μm以下であることが好ましい。前記粒子径D10-afterは、0.1μm以上がより好ましく、0.15μm以上がさらに好ましい。また、前記粒子径D10-afterは、0.8μm以下がより好ましく、0.6μm以下がさらに好ましい。
前記粒子径D10-afterが1μm以下であると、下記解砕処理により、大きく微粒化されているといえる。従って、当該ジルコニア系粉末材料は、微粒化が容易であるといえる。
<解砕処理>
40mLの純水に0.1gのジルコニア系粉末材料を投入し、BRANSON社製の超音波ホモジナイザー:製品名Digital Sonifier 250型を用い、下記解砕条件にてホモジナイザー処理を5分間行う。
<解砕条件>
発振周波数:20kHz
高周波出力:200W
振幅制御 :40±5%
【0053】
前記ジルコニア系粉末材料は、解砕処理前の粒子径D10(以下、粒子径D10-beforeともいう)が0.8μm以上150μm以下であることが好ましい。前記粒子径D10-beforeは、1μm以上がより好ましく、1.2μm以上がさらに好ましい。また、前記粒子径D10-beforeは、100μm以下がより好ましく、50μm以下がさらに好ましい。
【0054】
前記ジルコニア系粉末材料は、下記解砕処理後の粒子径D90(以下、粒子径D90-afterともいう)が0.1μm以上3.5μm以下であることが好ましい。前記粒子径D90-afterは、0.2μm以上がより好ましく、0.3μm以上がさらに好ましい。また、前記粒子径D90-afterは、3μm以下がより好ましく、2.5μm以下がさらに好ましい。
前記粒子径D90-afterが3.5μm以下であると、下記解砕処理により、粗粒が残っていないといえる。従って、当該ジルコニア系粉末材料は、微粒化が容易であるといえる。
<解砕処理>
40mLの純水に0.1gのジルコニア系粉末材料を投入し、BRANSON社製の超音波ホモジナイザー:製品名Digital Sonifier 250型を用い、下記解砕条件にてホモジナイザー処理を5分間行う。
<解砕条件>
発振周波数:20kHz
高周波出力:200W
振幅制御 :40±5%
【0055】
前記ジルコニア系粉末材料は、解砕処理前の粒子径D90(以下、粒子径D90-beforeともいう)が10μm以上600μm以下であることが好ましい。前記粒子径D90-beforeは、15μm以上がより好ましく、20μm以上がさらに好ましい。また、前記粒子径D90-beforeは、300μm以下がより好ましく、100μm以下がさらに好ましい。
【0056】
前記ジルコニア系粉末材料は、下記解砕処理後のモード径が0.05μm以上1.5μm以下であることが好ましい。前記解砕処理後のモード径は、0.1μm以上がより好ましく、0.15μm以上がさらに好ましい。また、前記解砕処理後のモード径は、1μm以下がより好ましく、0.8μm以下がさらに好ましい。
前記解砕処理後のモード径が1.5μm以下であると、下記解砕処理により、大きく微粒化されているといえる。従って、当該ジルコニア系粉末材料は、微粒化が容易であるといえる。
<解砕処理>
40mLの純水に0.1gのジルコニア系粉末材料を投入し、BRANSON社製の超音波ホモジナイザー:製品名Digital Sonifier 250型を用い、下記解砕条件にてホモジナイザー処理を5分間行う。
<解砕条件>
発振周波数:20kHz
高周波出力:200W
振幅制御 :40±5%
【0057】
前記ジルコニア系粉末材料は、解砕処理前のモード径が3μm以上500μm以下であることが好ましい。前記解砕処理前のモード径は、5μm以上がより好ましく、7μm以上がさらに好ましい。また、前記解砕処理前のモード径は、400μm以下がより好ましく、300μm以下がさらに好ましい。
【0058】
前記ジルコニア系粉末材料は、下記解砕処理後の平均粒子径が0.1μm以上1.3μm以下であることが好ましい。前記解砕処理後の平均粒子径は、0.15μm以上がより好ましく、0.2μm以上がさらに好ましい。また、前記解砕処理後の平均粒子径は、1.1μm以下がより好ましく、0.9μm以下がさらに好ましい。
前記解砕処理後の平均粒子径が1.3μm以下であると、下記解砕処理により、大きく微粒化されているといえる。従って、当該ジルコニア系粉末材料は、微粒化が容易であるといえる。
<解砕処理>
40mLの純水に0.1gのジルコニア系粉末材料を投入し、BRANSON社製の超音波ホモジナイザー:製品名Digital Sonifier 250型を用い、下記解砕条件にてホモジナイザー処理を5分間行う。
<解砕条件>
発振周波数:20kHz
高周波出力:200W
振幅制御 :40±5%
【0059】
前記ジルコニア系粉末材料は、解砕処理前の平均粒子径が5μm以上300μm以下であることが好ましい。前記解砕処理前の平均粒子径は、7μm以上がより好ましく、10μm以上がさらに好ましい。また、前記解砕処理前の平均粒子径は、200μm以下がより好ましく、100μm以下がさらに好ましい。
【0060】
前記粒子径D50-before、粒子径D50-after、粒子径D10-before、粒子径D10-after、粒子径D90-before、粒子径D90-after、解砕処理前のモード径、解砕処理後のモード径、解砕処理前の平均粒子径、解砕処理後の平均粒子径は、実施例に記載の方法により得られた値をいう。
【0061】
<組成>
前記ジルコニア系粉末材料は、ジルコニアを含有する。前記ジルコニアの含有量は、前記ジルコニア系粉末材料全体を100質量%としたとき、好ましく80%以上、より好ましくは90質量%以上である。前記ジルコニアの含有量の上限値は、特に制限されないが、前記ジルコニアの含有量の上限は特に制限されず、95質量%以下、92質量%以下、90質量%以下等とすることができる。また、前記ジルコニア系粉末材料は、ジルコニアのみで構成されていてもよい。すなわち、前記ジルコニア系粉末材料中のジルコニアの含有量は、前記ジルコニア系粉末材料全体を100質量%としたとき、100質量%であってもよい。
前記ジルコニアの含有量が80質量%以上であると、解砕性を高く維持することできる。
【0062】
前記ジルコニア系粉末材料は、Zrを除く遷移元素、アルカリ金属元素、及び、アルカリ土類金属元素からなる群から選ばれる1種以上を含んでも構わない。
前記ジルコニア系粉末材料が前記遷移元素を含む場合、前記遷移元素は、前記遷移元素の酸化物として含まれることが好ましい。
前記ジルコニア系粉末材料が前記アルカリ金属元素を含む場合、前記アルカリ金属元素は、前記アルカリ金属元素の酸化物として含まれることが好ましい。
前記ジルコニア系粉末材料が前記アルカリ土類金属元素を含む場合、前記アルカリ土類金属元素は、前記アルカリ土類金属元素の酸化物として含まれることが好ましい。
前記ジルコニア系粉末材料が、Zrを除く遷移元素、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素を含む場合、含む元素に応じた特性が発現し、様々な用途(例えば、触媒用途、ファインセラミックス用途、電子材料用途等)に応用することが可能となる。
【0063】
前記遷移元素は、中でも、La、Ce、Nd、Y、Sc、Ti、Fe、Nb、Gd、Pr、Hf、Ta、Wが好ましい。
【0064】
前記アルカリ土類金属元素は、中でも、Mg、Ca、Sr、Baが好ましい。
【0065】
前記アルカリ金属元素は、中でも、Li、Naが好ましい。
【0066】
前記ジルコニア系粉末材料に、Zrを除く遷移元素、アルカリ金属元素、及び、アルカリ土類金属元素からなる群から選ばれる1種以上を含有させる場合、酸化物換算で、前記ジルコニア系粉末材料に対して20質量%以下であることが好ましい。含有量を20質量%以下とすることにより、解砕性が大きく低下することを防止できる。
【0067】
前記ジルコニア系粉末材料の用途は特に限定されないが、例えば、リチウムイオン二次電池における電極活物質の構造安定化を目的とした電極活物質との複合化用途、セパレーターの耐熱性等を向上させるための無機フィラー用途等が挙げられる。前記ジルコニア系粉末材料によれば、脆弱な凝集構造を有し、容易に微粒化が可能であるため、例えば、ジルコニア系粉末材料と他材料を複合化する用途においては、ジルコニア系粉末材料と他材料とを容易に均一に複合化することが可能となる。
【0068】
[ジルコニア系粉末材料の製造方法]
以下、ジルコニア系粉末材料の製造方法の一例について説明する。ただし、本発明のジルコニア系粉末材料の製造方法は、以下の例示に限定されない。
【0069】
本実施形態に係るジルコニア系粉末材料の製造方法は、
Zr濃度0.5M以上2.0M以下のジルコニウム塩溶液を60℃以上90℃以下に加熱する工程1、
硫酸塩化剤溶液を60℃以上90℃以下に加熱する工程2、
前記加熱後のジルコニウム塩溶液と前記加熱後の硫酸塩化剤溶液と接触させ、直ちに、アルカリ溶液に投入し、塩基性硫酸ジルコニウム含有スラリーを得る工程3、及び、
前記塩基性硫酸ジルコニウム含有スラリーを中和することにより水酸化ジルコニウムを生成させる工程4、及び、
前記水酸化ジルコニウムを熱処理することによりジルコニア系粉末材料を得る工程5を含む。
以下、工程ごとに詳細に説明する。
【0070】
<工程1>
工程1では、Zr濃度0.5M以上2.0M以下のジルコニウム塩溶液を60℃以上90℃以下に加熱する。
前記ジルコニウム塩溶液を作製するために用いるジルコニウム塩としては、ジルコニウムイオンを供給するものであればよく、例えば、オキシ硝酸ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、硝酸ジルコニウム等を使用できる。これらは1種又は2種以上で使用できる。この中でも、工業的規模での生産性が高い点でオキシ塩化ジルコニウムが好ましい。
【0071】
前記ジルコニウム塩溶液を作製するために用いる溶媒としては、ジルコニウム塩の種類等に応じて選択すればよい。通常は水(純水、イオン交換水、以下同様)が好ましい。
【0072】
上述したように、前記ジルコニウム塩溶液の濃度は、Zr濃度0.5M以上2.0M以下とする。前記ジルコニウム塩溶液の濃度を0.5M以上2.0M以下とすることにより、硫酸塩化剤溶液と接触させた際に生成する塩基性硫酸ジルコニウム粒子(ZBS粒子)の生成速度を緩やかにすることができ、ZBS粒子の成長をほどよく抑制することができる。前記ジルコニウム塩溶液の濃度は、ZBS粒子の成長をほどよく抑制する観点から、好ましくはZr濃度1.8M以下であり、より好ましくはZr濃度1.6M以下である。前記ジルコニウム塩溶液の濃度は、ZBS粒子の生成が抑制されすぎない観点からは、好ましくはZr濃度0.7M以上であり、より好ましくはZr濃度1.0M以上である。
上記数値範囲内においてZr濃度を高くするほど、上記式[1]の値は、大きくなり、Zr濃度を低くするほど、上記式[1]の値は、小さくなる。
【0073】
また、上述したように、工程1では、ジルコニウム塩溶液を60℃以上90℃以下に加熱する。前記ジルコニウム塩溶液の温度を60℃以上90℃以下とすることにより、硫酸塩化剤溶液と接触させた際に生成する塩基性硫酸ジルコニウム粒子(ZBS粒子)の生成速度を緩やかにすることができ、ZBS粒子の成長をほどよく抑制することができる。前記ジルコニウム塩溶液の温度は、ZBS粒子の成長をほどよく抑制する観点から、好ましくは85℃以下であり、より好ましくは80℃以下である。前記ジルコニウム塩溶液の温度は、ZBS粒子の生成が抑制されすぎない観点からは、好ましくは65℃以上であり、より好ましくは70℃以上である。
上記数値範囲内においてジルコニウム塩溶液の温度を高くするほど、上記式[1]の値は、小さくなり、ジルコニウム塩溶液の温度を低くするほど、上記式[1]の値は、大きくなる。
【0074】
<工程2>
工程2では、硫酸塩化剤溶液を60℃以上90℃以下に加熱する。なお、工程2は、工程1と並行して行えばよい。
【0075】
硫酸塩化剤としては、ジルコニウムイオンと反応して硫酸塩を生成させるもの(すなわち、硫酸塩化させる試薬)であればよく、例えば、硫酸、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニウム、硫酸水素カリウム、硫酸水素ナトリウム、二硫酸カリウム、二硫酸ナトリウム、三酸化硫黄等が例示される。硫酸塩化剤は、粉末状、溶液状等のいずれの形態でもよいが、溶液(特に水溶液)が好ましい。溶媒については、前記ジルコニウム塩溶液を作製するために用いる溶媒と同様のものを使用することができる。
【0076】
前記ジルコニウム塩溶液の酸濃度は0.1~2.0Nとすることが好ましい。酸濃度を上記範囲に設定することによって、ジルコニア系粉末材料を構成する粒子の凝集状態を好適な状態に制御することができる。酸濃度の調整は、例えば、塩酸、硝酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等を用いることにより実施することができる。
【0077】
前記硫酸塩化剤(前記硫酸塩化剤溶液)の濃度は、特に制限されないが、0.1~3.0Mとすることが好ましい。
【0078】
上述したように、工程2では、硫酸塩化剤溶液を60℃以上90℃以下に加熱する。前記硫酸塩化剤溶液の温度を60℃以上90℃以下とすることにより、ジルコニウム塩溶液と接触させた際に生成する塩基性硫酸ジルコニウム粒子(ZBS粒子)の成長速度をほどよく抑制することができる。前記硫酸塩化剤溶液の温度は、ZBS粒子の成長をほどよく抑制する観点から、好ましくは85℃以下であり、より好ましくは80℃以下である。前記硫酸塩化剤溶液の温度は、ZBS粒子の生成反応が抑制されすぎない観点からは、好ましくは65℃以上であり、より好ましくは70℃以上である。また、硫酸塩化剤溶液の温度は、ジルコニウム塩溶液の温度と同じにすることが好ましい。
上記数値範囲内において硫酸塩化剤溶液の温度を高くするほど、上記式[1]の値は、小さくなり、硫酸塩化剤溶液の温度を低くするほど、上記式[1]の値は、大きくなる。
【0079】
前記ジルコニウム塩溶液及び前記硫酸塩化剤溶液を調製する容器は、前記ジルコニウム塩溶液及び前記硫酸塩化剤溶液をそれぞれ十分攪拌できる容量を備えていれば、材質は特に限定されない。ただし、各溶液の温度が60℃を下回らないように適宜加熱できる設備を有していることが好ましい。例えば、各溶液を供給する配管(例えば、後述するT字管20)等にヒーターを設置することが好ましい。
【0080】
<工程3>
工程3では、前記加熱後のジルコニウム塩溶液と前記加熱後の硫酸塩化剤溶液とを接触させ、直ちに、アルカリ溶液に投入する。これにより、塩基性硫酸ジルコニウム含有スラリーを得る。
以下、工程3について、図面を参照しつつ、説明する。
【0081】
図1は、本実施形態に係るジルコニア系粉末材料の製造方法を説明するための模式図である。図1に示すように、容器10は、定量送液ポンプ12を介してT字管20の上方の一端(図1では左側)に接続されている。容器30は、定量送液ポンプ32を介してT字管20の上方の他端(図1では右側)に接続されている。容器10には、60℃以上90℃以下に加熱されたジルコニウム溶液が貯蓄されている。容器30には、60℃以上90℃以下に加熱された硫酸塩化剤溶液が貯蓄されている。
【0082】
また、容器40には、アルカリ溶液が入れられており、T字管20の下方に配置されている。アルカリとしては限定されず、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、アンモニア、ヒドラジン、炭酸水素アンモニウム等が挙げられる。前記アルカリ溶液の濃度は特に限定されないが、水で希釈し、通常5~30%のものが用いられる。
前記アルカリ溶液は、70℃以上100℃以下に加熱されていることが好ましい。前記アルカリ溶液の温度が70℃以上であると、速やかに凝集粒子の形成が進行し、前記アルカリ溶液の温度が100℃以下であると、水の蒸発による溶液の濃度変化を抑制することができる。前記アルカリ溶液の温度は、より好ましくは95℃以下であり、さらに好ましくは90℃以下である。前記アルカリ溶液の温度は、より好ましくは75℃以上であり、さらに好ましくは85℃以上である。
上記数値範囲内において前記アルカリ溶液の温度を高くするほど、上記式[1]の値は、大きくなり、前記アルカリ溶液の温度を低くするほど、上記式[1]の値は、小さくなる。
なお、本実施形態では、T字管20を用いてジルコニウム溶液と硫酸塩化剤溶液とを接触させ、その後、混合液を、下方に配置されているアルカリ溶液に投入する場合について説明するが、ジルコニウム溶液と硫酸塩化剤溶液とを接触させる器具としては、T字管20に限定されず、ガラス製Y字型チューブコネクター等を用いることとしてもよい。
【0083】
工程3では、定量送液ポンプ12によるジルコニウム溶液の送液速度と定量送液ポンプ32による硫酸塩化剤溶液の送液速度とをコントロールすることにより、ジルコニウム溶液と硫酸塩化剤溶液とを接触させる。接触することにより得られた混合液(塩基性硫酸ジルコニウム含有反応液)は、T字管20の下方から直ちに容器40内のアルカリ溶液に流入する(投入される)。
ジルコニウム溶液と硫酸塩化剤溶液とを接触させることにより得られた混合液(塩基性硫酸ジルコニウム含有反応液)を直ちにアルカリ溶液に流入する(滴下する)ことにより、形成された塩基性硫酸ジルコニウム粒子(ZBS粒子)を瞬時に中和し、電気的に凝集させることにより、上記式[1]を満たすような細孔直径分布を有するジルコニア系粉末材料を得ることができる。
具体的に、ジルコニウム溶液と硫酸塩化剤溶液とが接触してから、アルカリ溶液に投入されるまでの時間が短いほど、上記式[1]の値は、大きくなり、ジルコニウム溶液と硫酸塩化剤溶液とが接触してから、アルカリ溶液に投入されるまでの時間が長いほど、上記式[1]の値は、小さくなる。
なお、「混合液を直ちにアルカリ溶液に投入する」とは、定量送液ポンプ12によるジルコニウム溶液の送液速度と定量送液ポンプ32による硫酸塩化剤溶液の送液速度とを適切な範囲内に設定することにより、混合液が速やかにアルカリ溶液に投入されることをいう。
具体的に、「混合液を直ちにアルカリ溶液に投入する」とは、定量送液ポンプ12によるジルコニウム溶液の送液速度を1mL/分以上25mL/分以下の範囲内とし、且つ、定量送液ポンプ32による硫酸塩化剤溶液の送液速度を0.2mL/分以上5mL/分以下の範囲内とすることにより、ジルコニウム塩溶液と加熱後の硫酸塩化剤溶液とが接触して得られた混合液(混合された部分)がそのままアルカリ溶液に投入されることをいう。
前記ジルコニウム溶液の送液速度は、より好ましくは5mL/分以上、さらに好ましくは10mL/分以上である。前記ジルコニウム溶液の送液速度は、より好ましくは20mL/分以下、さらに好ましくは15mL/分以下である。
前記硫酸塩化剤溶液の送液速度は、より好ましくは1mL/分以上、さらに好ましくは2mL/分以上である。前記硫酸塩化剤溶液の送液速度は、より好ましくは4mL/分以下、さらに好ましくは3mL/分以下である。
ジルコニウム溶液を送液するチューブ径L1(図1参照)は、1mm以上10mm以下であることが好ましい。前記チューブ径L1は、より好ましくは2mm以上、さらに好ましくは4mm以上である。前記チューブ径L1は、より好ましくは8mm以下、さらに好ましくは6mm以下である。
硫酸塩化剤溶液を送液するチューブ径L2(図1参照)は、1mm以上10mm以下であることが好ましい。前記チューブ径L2は、より好ましくは2mm以上、さらに好ましくは4mm以上である。前記チューブ径L2は、より好ましくは8mm以下、さらに好ましくは6mm以下である。
定量送液ポンプ12によるジルコニウム溶液の送液速度、定量送液ポンプ32による硫酸塩化剤溶液の送液速度、チューブ径L1、チューブ径L2が上記数範囲内であると、混合液を直ちにアルカリ溶液に投入することがより容易となる。
【0084】
前記アルカリ溶液のpHは、前記混合液全部が滴下された後に、0.8以上3未満となるように調整されていることが好ましい。前記アルカリ溶液のpHは、1以上2以下がより好ましく、1.2以上1.8以下がより好ましい。
前記アルカリ溶液のpHが前記数値範囲内であると、好適に、塩基性硫酸ジルコニウムの粒子(ZBS粒子)を析出させることができる。
【0085】
以上、工程3について説明した。
【0086】
その後、前記ジルコニア系粉末材料に、Zrを除く遷移元素、アルカリ金属元素、及び、アルカリ土類金属元素からなる群から選ばれる1種以上を含有させる場合には、前記工程3の後であって後述する中和工程(工程4)の前に、塩基性硫酸ジルコニウム含有スラリーに、Zrを除く遷移元素、アルカリ金属元素、及び、アルカリ土類金属元素からなる群から選ばれる1種以上の金属の塩溶液、又は、化合物を添加する(工程3-1)。
なお、アルカリ金属元素を含有させる場合、アルカリ金属元素は、Zrを除く遷移元素やアルカリ土類金属元素とは挙動が異なることがあるので、含侵法や固相法を用いて添加してもよい。
【0087】
前記ジルコニア系粉末材料に、Zrを除く遷移元素、アルカリ金属元素、及び、アルカリ土類金属元素からなる群から選ばれる1種以上を含有させる場合、酸化物換算で、前記ジルコニア系粉末材料に対して20質量%以下であることが好ましい。含有量を20質量%以下とすることにより、解砕性が大きく低下することを防止できる。
【0088】
<工程4>
工程4では、前記塩基性硫酸ジルコニウム含有スラリーを中和することにより水酸化ジルコニウムを生成させる。具体的には、塩基性硫酸ジルコニウム含有スラリーをアルカリで中和することにより、水酸化ジルコニウムとする。アルカリとしては限定されず、例えば、水酸化アンモニウム、重炭酸アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が使用できる。この中でも、工業的なコスト面から水酸化ナトリウムが好ましい。
【0089】
アルカリの添加量は、塩基性硫酸ジルコニウム含有スラリーの溶液から沈殿物として水酸化ジルコニウムを生成させることができれば特に限定されない。通常は上記溶液のpHが11以上、好ましくは12以上となるように添加する。
【0090】
中和反応後は、水酸化ジルコニウム含有溶液を35~60℃で1時間以上保持することが好ましい。これにより、生成した沈殿が熟成されるとともに、濾別が容易となる。
【0091】
次に、水酸化ジルコニウムを固液分離法により回収する。例えば、濾過、遠心分離、デカンテーション等が利用できる。
【0092】
水酸化ジルコニウムを回収後、水酸化ジルコニウムを水洗し、付着している不純物を除去することが好ましい。
【0093】
水酸化ジルコニウムは、自然乾燥又は加熱乾燥により乾燥してもよい。
【0094】
<工程4>
工程4では、前記水酸化ジルコニウムを熱処理(焼成)することによりジルコニア系粉末材料を得る。熱処理温度は特に限定されないが、380~900℃程度で1~10時間程度が好ましい。熱処理雰囲気は、大気中又は酸化性雰囲気中が好ましい。
【0095】
得られたジルコニア系粉末材料は、必要に応じてハンドリング性向上などの目的で、凝集を解す処理をしてもよい。
【0096】
以上、本実施形態に係るジルコニア系粉末材料の製造方法について説明した。
【実施例
【0097】
以下、本発明に関し実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例及び比較例において得られたジルコニア系粉末材料中には、不可避不純物としてハフニウムがジルコニウムに対して1~3質量%含まれる(下記式(X)にて算出)。
<式(X)>
([ハフニウムの質量]/([ジルコニウムの質量]+[ハフニウムの質量]))×100(%)
【0098】
以下の実施例で示される各成分の含有量の最大値、最小値は、他の成分の含有量に関係なく、本発明の好ましい最小値、好ましい最大値と考慮されるべきである。
また、以下の実施例で示される測定値の最大値、最小値は、各成分の含有量(組成)に関係なく、本発明の好ましい最小値、最大値であると考慮されるべきである。
【0099】
[ジルコニア系粉末材料の作製]
(実施例1)
オキシ塩化ジルコニウム水溶液(Zr濃度=1.6M)100mLと、硫酸ナトリウム水溶液(NaSO濃度=1.6M)35mLのそれぞれを70℃に、水酸化ナトリウム水溶液(NaOH濃度=2.5mM)250mLを90℃に加熱した。その後、オキシ塩化ジルコニウム水溶液と硫酸ナトリウム水溶液の2液について、定量送液ポンプを用いた送液による2液混合を行った後、2液混合した液をそのまま、90℃に加熱した水酸化ナトリウム水溶液中へ送液した。
この時、チューブには、内径4mm、タイゴン製のものを用い、2液混合反応を行う2液の合流部位には、ガラス製Y字型チューブコネクターを用いた。また、オキシ塩化ジルコニウム水溶液の送液速度は10mL/min、硫酸ナトリウム水溶液の流速は3.5mL/minとした。
各水溶液を混合したものを、そのまま90℃で30分間攪拌した後、pHが11以上になるまで水酸化ナトリウム水溶液(NaOH濃度=0.1M)を加えることで水酸化ジルコニウムを含むスラリーを得た。次いで、これを濾別した後、沈殿物中に含まれるNa及び、Clの量が100ppm未満になるまで蒸留水による洗浄をすることで水酸化ジルコニウムから成るケーキを得た。
回収した水酸化ジルコニウムケーキを、箱型電気炉を用いて、400℃で5時間熱処理した。得られた焼成物をハンマー式ヘッド(IKA社製、MF10.2ハンマー式ヘッド)でほぐし、実施例1に係るジルコニア系材料粉末を得た。
ハンマー式ヘッドでほぐす際の条件は以下の通りとした。
回転数 : 6000rpm
ふるいの目の大きさ: 0.5mm
【0100】
(実施例2)
水酸化ジルコニウムケーキの熱処理温度を600℃に変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例2に係るジルコニア系粉末材料を得た。
【0101】
(実施例3)
ハンマー式ヘッドの代わりにジェットミル粉砕によりほぐす処理を行ったことを除き、実施例2と同様にして実施例3に係るジルコニア系粉末材料を得た。
ジェットミル粉砕は以下の条件で実施した。
機種 : KKJ-50(株式会社栗本鐵工所製)
回転数: 6000rpm
【0102】
(実施例4)
オキシ塩化ジルコニウム水溶液(Zr濃度=1.6M)100mLと、硫酸ナトリウム水溶液(NaSO濃度=1.6M)35mLのそれぞれを70℃に、水酸化ナトリウム水溶液(NaOH濃度=2.5mM)250mLを90℃に加熱した。その後、オキシ塩化ジルコニウム水溶液と硫酸ナトリウム水溶液の2液について、定量送液ポンプを用いた送液による2液混合を行った後、2液混合した液をそのまま、90℃に加熱した水酸化ナトリウム水溶液中へ送液した。
この時、チューブには、内径4mm、タイゴン製のものを用い、2液混合反応を行う2液の合流部位には、ガラス製Y字型チューブコネクターを用いた。また、オキシ塩化ジルコニウム水溶液の送液速度は10mL/min、硫酸ナトリウム水溶液の流速は3.5mL/minとした。
その後、室温(25℃)の塩化セリウム水溶液(Ce濃度=0.5M)10.79mLを加えた。
各水溶液を混合したものを、そのまま90℃で30分間攪拌した後、pHが11以上になるまで水酸化ナトリウム水溶液(NaOH濃度=0.1M)を加えることで水酸化ジルコニウムを含むスラリーを得た。次いで、これを濾別した後、沈殿物中に含まれるNa及び、Clの量が100ppm未満になるまで蒸留水による洗浄をすることで水酸化ジルコニウムから成るケーキを得た。
回収した水酸化ジルコニウムケーキを、箱型電気炉を用いて、400℃で5時間熱処理した。得られた焼成物をハンマー式ヘッド(IKA社製、MF10.2ハンマー式ヘッド)でほぐし、実施例4に係るジルコニア系材料粉末を得た。
ハンマー式ヘッドでほぐす際の条件は以下の通りとした。
回転数 : 6000rpm
ふるいの目の大きさ: 0.5mm
【0103】
(実施例5)
塩化セリウム水溶液を加える代わりに、塩化イットリウム水溶液(Y濃度=1.0M)4.85mLを加えたこと以外は、実施例4と同様にして実施例5に係るジルコニア系粉末材料を得た。
【0104】
(実施例6)
塩化セリウム水溶液を加える代わりに、塩化ランタン水溶液(La濃度=1.0M)2.76mLと塩化ネオジム水溶液(Nd濃度=1.0M)13.91mLとを加えたこと以外は、実施例4と同様にして実施例6に係るジルコニア系粉末材料を得た。
【0105】
(実施例7)
塩化セリウム水溶液の添加量を30.54mLに変更し、さらに、塩化イットリウム水溶液(Y濃度=1.0M)11.64mL、塩化ランタン水溶液(La濃度=1.0M)8.07mLと塩化ネオジム水溶液(Nd濃度=1.0M)7.81mLとを加えたこと以外は、実施例4と同様にして実施例7に係るジルコニア系粉末材料を得た。
【0106】
参考例1
オキシ塩化ジルコニウム水溶液(Zr濃度=1.6M)100mLと、硫酸ナトリウム水溶液(NaSO濃度=1.6M)35mLのそれぞれを70℃に、水酸化ナトリウム水溶液(NaOH濃度=2.5mM)250mLを90℃に加熱した。その後、オキシ塩化ジルコニウム水溶液と硫酸ナトリウム水溶液の2液について、定量送液ポンプを用いた送液による2液混合を行った後、2液混合した液をそのまま、90℃に加熱した水酸化ナトリウム水溶液中へ送液した。
この時、チューブには、内径4mm、タイゴン製のものを用い、2液混合反応を行う2液の合流部位には、ガラス製Y字型チューブコネクターを用いた。また、オキシ塩化ジルコニウム水溶液の送液速度は20mL/min、硫酸ナトリウム水溶液の流速は7mL/minとした。
各水溶液を混合したものを、そのまま90℃で30分間攪拌した後、pHが11以上になるまで水酸化ナトリウム水溶液(NaOH濃度=0.1M)を加えることで水酸化ジルコニウムを含むスラリーを得た。次いで、これを濾別した後、沈殿物中に含まれるNa及び、Clの量が100ppm未満になるまで蒸留水による洗浄をすることで水酸化ジルコニウムから成るケーキを得た。
回収した水酸化ジルコニウムケーキを、箱型電気炉を用いて、400℃で5時間熱処理した。得られた焼成物をハンマー式ヘッド(IKA社製、MF10.2ハンマー式ヘッド)でほぐし、参考例1に係るジルコニア系材料粉末を得た。
ハンマー式ヘッドでほぐす際の条件は以下の通りとした。
回転数 : 6000rpm
ふるいの目の大きさ: 0.5mm
【0107】
(実施例9)
オキシ塩化ジルコニウム水溶液(Zr濃度=1.6M)100mLと、硫酸ナトリウム水溶液(NaSO濃度=1.6M)35mLのそれぞれを70℃に、水酸化ナトリウム水溶液(NaOH濃度=2.5mM)250mLを90℃に加熱した。その後、オキシ塩化ジルコニウム水溶液と硫酸ナトリウム水溶液の2液について、定量送液ポンプを用いた送液による2液混合を行った後、2液混合した液をそのまま、90℃に加熱した水酸化ナトリウム水溶液中へ送液した。
この時、チューブには、内径4mm、タイゴン製のものを用い、2液混合反応を行う2液の合流部位には、ガラス製Y字型チューブコネクターを用いた。また、オキシ塩化ジルコニウム水溶液の送液速度は5mL/min、硫酸ナトリウム水溶液の流速1.75mL/minとした。
各水溶液を混合したものを、そのまま90℃で30分間攪拌した後、pHが11以上になるまで水酸化ナトリウム水溶液(NaOH濃度=0.1M)を加えることで水酸化ジルコニウムを含むスラリーを得た。次いで、これを濾別した後、沈殿物中に含まれるNa及び、Clの量が100ppm未満になるまで蒸留水による洗浄をすることで水酸化ジルコニウムから成るケーキを得た。
回収した水酸化ジルコニウムケーキを、箱型電気炉を用いて、400℃で5時間熱処理した。得られた焼成物をハンマー式ヘッド(IKA社製、MF10.2ハンマー式ヘッド)でほぐし、実施例に係るジルコニア系材料粉末を得た。
ハンマー式ヘッドでほぐす際の条件は以下の通りとした。
回転数 : 6000rpm
ふるいの目の大きさ: 0.5mm
【0108】
(実施例10)
オキシ塩化ジルコニウム水溶液(Zr濃度=1.6M)100mLと、硫酸ナトリウム水溶液(NaSO濃度=1.6M)35mLのそれぞれを70℃に、水酸化ナトリウム水溶液(NaOH濃度=2.5mM)250mLを96℃に加熱した。その後、オキシ塩化ジルコニウム水溶液と硫酸ナトリウム水溶液の2液について、定量送液ポンプを用いた送液による2液混合を行った後、2液混合した液をそのまま、96℃に加熱した水酸化ナトリウム水溶液中へ送液した。
この時、チューブには、内径4mm、タイゴン製のものを用い、2液混合反応を行う2液の合流部位には、ガラス製Y字型チューブコネクターを用いた。また、オキシ塩化ジルコニウム水溶液の送液速度は10mL/min、硫酸ナトリウム水溶液の流速3.5mL/minとした。
各水溶液を混合したものを、そのまま96℃で30分間攪拌した後、pHが11以上になるまで水酸化ナトリウム水溶液(NaOH濃度=0.1M)を加えることで水酸化ジルコニウムを含むスラリーを得た。次いで、これを濾別した後、沈殿物中に含まれるNa及び、Clの量が100ppm未満になるまで蒸留水による洗浄をすることで水酸化ジルコニウムから成るケーキを得た。
回収した水酸化ジルコニウムケーキを、箱型電気炉を用いて、400℃で5時間熱処理した。得られた焼成物をハンマー式ヘッド(IKA社製、MF10.2ハンマー式ヘッド)でほぐし、実施例10に係るジルコニア系材料粉末を得た。
ハンマー式ヘッドでほぐす際の条件は以下の通りとした。
回転数 : 6000rpm
ふるいの目の大きさ: 0.5mm
【0109】
(比較例1)
オキシ塩化ジルコニウム・8水和物155g(ZrO換算:60g)をイオン交換水に溶解し、次に35質量%塩酸及びイオン交換水により酸濃度が0.67N、ZrO濃度が4w/v%(質量体積パーセント濃度)となるように調整し、ジルコニウム塩溶液を得た。
【0110】
得られたジルコニウム塩溶液をオートクレーブに入れて130℃まで昇温した。130℃まで昇温した後、直ちに、圧力1.3×10Pa下で5%硫酸ナトリウム(硫酸塩化剤)1065gを添加し、そのまま15分間保持した。なお、昇温開始してから130℃に達するまでの時間は、1時間であった。その後、室温(25℃)になるまで放冷し、塩基性硫酸ジルコニウム含有スラリーを得た。
【0111】
次に、25%水酸化ナトリウム(中和用アルカリ)500gを60分間かけて添加し、水酸化物沈殿を生成させた。
【0112】
得られた水酸化物沈澱をろ過し、十分水洗し、得られた水酸化物を105℃で24時間乾燥させた。乾燥させた水酸化物を大気中600℃で5時間熱処理(焼成)した。得られた焼成物をハンマー式ヘッド(IKA社製、MF10.2ハンマー式ヘッド)でほぐし、比較例1に係るジルコニア系粉末材料を得た。
ハンマー式ヘッドでほぐす際の条件は以下の通りとした。
回転数 : 6000rpm
ふるいの目の大きさ: 0.5mm
【0113】
(比較例2)
オキシ塩化ジルコニウム水溶液の濃度をZr濃度=2.2Mとしたこと以外は、実施例1と同様にして比較例2に係るジルコニア系粉末材料を得た。
【0114】
(比較例3)
オキシ塩化ジルコニウム・8水和物155g(ZrO換算:60g)をイオン交換水に溶解し、次に35質量%塩酸及びイオン交換水により酸濃度が0.67N、ZrO濃度が4w/v%(質量体積パーセント濃度)となるように調整し、ジルコニウム塩溶液を得た。
【0115】
得られたジルコニウム塩溶液をオートクレーブに入れて130℃まで昇温した。130℃まで昇温した後、圧力1.3×10Paで2日間(48時間)保持した。なお、昇温開始してから130℃に達するまでの時間は、1時間であった。
【0116】
2日経過後、130℃、1.3×10Paの条件を保ったオートクレーブ内において、5%硫酸ナトリウム(硫酸塩化剤)1065gを添加し、そのまま15分間保持した。その後、室温(25℃)になるまで放冷し、塩基性硫酸ジルコニウム含有スラリーを得た。
【0117】
得られた塩基性硫酸ジルコニウム含有スラリーに硝酸セリウム溶液300g(CeO換算:30g)、硝酸ランタン溶液50g(La換算:5g)及び硝酸ネオジム溶液50g(Nd換算:5g)を添加した。
【0118】
次に、25%水酸化ナトリウム(中和用アルカリ)500gを60分間かけて添加し、水酸化物沈殿を生成させた。
【0119】
得られた水酸化物沈澱をろ過し、十分水洗し、得られた水酸化物を105℃で24時間乾燥させた。乾燥させた水酸化物を大気中600℃で5時間熱処理(焼成)した。得られた焼成物をハンマー式ヘッド(IKA社製、MF10.2ハンマー式ヘッド)でほぐし、比較例3に係るジルコニア系粉末材料を得た。
ハンマー式ヘッドでほぐす際の条件は以下の通りとした。
回転数 : 6000rpm
ふるいの目の大きさ: 0.5mm
【0120】
[細孔容積の測定]
実施例、比較例のジルコニア系粉末材料について、細孔分布測定装置(「オートポアIV9500」マイクロメリティクス製)を用い、水銀圧入法にて細孔分布を得た。測定条件は下記の通りとした。
<測定条件>
測定装置:細孔分布測定装置(マイクロメリティクス製オートポアIV9500)
測定範囲:0.0036~10.3μm
測定点数:120点
水銀接触角:140degrees
水銀表面張力:480dyne/cm
【0121】
得られた細孔分布を用い、Vp5-10、Vp10-100、Vp5-6000、及び、Vp100-6000を得た。結果を表1に示す。
また、表1には、[(Vp10-100)/(Vp100-6000)]、[(Vp10-100)/(Vp5-6000)]、[(Vp5-10)/(Vp5-6000)]、及び、[(Vp100-6000)/(Vp5-6000)]の値も合わせて示す。
また、図2図11に、実施例1~実施例7、比較例1~比較例3のジルコニア系粉末材料の細孔分布を示す。
【0122】
[解砕処理前の粒子径D50(粒子径D50-before)、解砕処理前の粒子径D10(粒子径D10-before)、解砕処理前の粒子径D90(粒子径D90-before)、解砕処理前のモード径、解砕処理前の平均粒子径の測定]
実施例、比較例のジルコニア系粉末材料の各粒子径を、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置「LA-950」((株)堀場製作所製)を用いて測定した。より詳細には、サンプル0.15gを装置(レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置「LA-950」)に投入して測定した。
測定条件は下記の通りとした。結果を表1に示す。
屈折率 :2.4
粒子径基準:体積
測定上限 :3000μm
測定下限 :0.01μm
【0123】
[解砕処理後の粒子径D50(粒子径D50-after)、解砕処理後の粒子径D10(粒子径D10-after)、解砕処理後の粒子径D90(粒子径D90-after)、解砕処理後のモード径、解砕処理後の平均粒子径の測定]
実施例、比較例のジルコニア系粉末材料を、下記解砕処理に従って、解砕した。
<解砕処理>
40mLの純水に0.1gのジルコニア系粉末材料を投入し、BRANSON社製の超音波ホモジナイザー:製品名Digital Sonifier 250型を用い、下記解砕条件にてホモジナイザー処理を5分間行った。
<解砕条件>
発振周波数:20kHz
高周波出力:200W
振幅制御 :40±5%
【0124】
上記解砕処理を行った後のジルコニア系粉末材料の各粒子径を測定した。測定方法は、解砕処理前のジルコニア系粉末材料の各粒子径の測定方法と同様とした。結果を表1に示す。
【0125】
図12は、実施例1、比較例1、及び、比較例3のジルコニア系粉末材料の解砕処理後の粒子径分布である。
表1、及び、図12から分かるように、ホモジナイザー解砕処理後の実施例は同処理後の比較例に対して粒子径D50が非常に小さい。従って、実施例のジルコニア系粉末材料は比較例のジルコニア系粉末材料と比較して、容易な解砕処理により微粒が得られ易いといえる。
また、図12より、実施例1のジルコニア系粉末材料は、粒度分布形状がシャープであり、解砕によって粒子径が均一な粉体が得られていることも分かる。なお、図示しないが、実施例1以外の実施例のジルコニア系粉末材料も、実施例1のジルコニア系粉末材料と同様に、粒度分布形状がシャープな粒子径分布を有することが確認された。
【0126】
【表1】
【要約】
【課題】 容易な解砕処理により微粒が得られ易いジルコニア系粉末材料を提供すること。
【解決手段】 水銀圧入法により求められる細孔直径分布において、細孔直径Xnm以上Ynm未満の範囲における細孔容積をVpX-Yとしたとき、[(Vp10-100)/(Vp100-6000)]が、以下の式[1]を満たすジルコニア系粉末材料。
式[1] 0.4≦[(Vp10-100)/(Vp100-6000)]≦1
【選択図】 図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12