(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-06
(45)【発行日】2022-09-14
(54)【発明の名称】回転機
(51)【国際特許分類】
H02K 5/22 20060101AFI20220907BHJP
H02K 5/20 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
H02K5/22
H02K5/20
(21)【出願番号】P 2018126588
(22)【出願日】2018-07-03
【審査請求日】2021-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130498
【氏名又は名称】佐野 禎哉
(72)【発明者】
【氏名】小林 鷹謙
【審査官】島倉 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-189052(JP,A)
【文献】特開2013-172486(JP,A)
【文献】特開2006-115651(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/22
H02K 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端部に供試体が接続可能なシャフトと、
前記シャフトの軸回りに設けたロータと、
前記ロータ及び前記シャフトの少なくとも一部を内部空間に収容可能なケーシングと、
前記ケーシング内に固定したステータと、を備えた回転機であって、
前記ステータは、ステータコアと、前記ステータコアのステータティースに巻回したコイル巻線とを備え、前記コイル巻線のうち前記ケーシングの外部に引き出した口出線を、前記ケーシングの外部に設けたリード端子部のリードバーに接続したものであり、
前記リード端子部のうち少なくとも前記リードバーに対する前記口出線の接続部分を収容可能なダクトと、
前記ダクトの内部空間に冷媒を噴射することによって前記口出線の外表面の少なくとも一部を冷却する冷却機構
とを備え
、
前記ダクトの内部空間が前記ケーシングの内部空間と連通していることを特徴とする回転機。
【請求項2】
前記リードバーに、前記口出線に沿って延在するヒートシンク部を設け、当該ヒートシンク部に前記口出線を接触させている請求項1に記載の回転機。
【請求項3】
前記冷却機構は、前記口出線に対して所定の2方向から冷媒を噴射するものである請求項1又は2に記載の回転機。
【請求項4】
前記冷却機構は、冷媒を扇状に噴出する冷媒噴射部を備え、前記リードバーを挟む所定の2方向のうち一方の方向から前記口出線に対して冷媒を噴射する前記冷媒噴射部の噴射角度と、他方の方向から前記口出線に対して冷媒を噴射する前記冷媒噴射部の噴射角度の位相を相互に異ならせている請求項3に記載の回転機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車用試験装置に適用される回転機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
供試体である電動機、発電機、エンジン、パワートレイン等の車輛駆動系などの特性等を評価するための自動車用試験装置には、供試体の出力軸に連結されて「擬似負荷」或いは「擬似駆動源」として機能する回転機(ダイナモ装置)が用いられている。
【0003】
回転機は、円筒状のケーシングと、そのケーシング内に配置されたステータ及びロータとを備えており、シャフト回りに固定したロータをシャフトと一体回転可能に構成している。例えば自動車用試験装置の回転機は、高速回転且つ大容量化が求められ、通常のモータに比べて発熱量が多くなり、ケーシング内部におけるステータやロータからの発熱を抑制する必要がある。
【0004】
例えば、特許文献1には、シャフトの軸心部に軸方向に延伸する給油路(軸中穴)と、給油路に連通するラジアル孔(噴射ノズル)とを形成し、噴射ノズルからケーシング内に噴射された冷却油によってステータコイルを冷却する冷却機構が開示されている。このような冷却機構によって、発熱体であるステータコイルに対する冷却性能が得られる。
【0005】
ところで、近時の回転機には、高速回転化と同時に低慣性化も要求され、小径化及び小型化が図られている。ステータにおいて、コイル線とリード線を溶接(蝋付け)によって接続すると、溶接部分及びその周辺部分が他の部分よりも嵩張ることになり、小型化を図る上では採用し難い。そこで、例えば、特許文献2に開示されているように、ステータコイルのコイル線をそのままハウジングの外に引き出して外部でリード端子部に接続する構成が採用される場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2007-159325号公報
【文献】特許第4608775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、コイル線はハウジング内において冷却機構による冷却を想定された線径であるため、ハウジングの外に引き出したコイル線(口出線)は冷却されないことにより、発熱量が大きくなり、断線に至るおそれもある。特に、自動車試験に用いられる回転機は、自動車試験に必要なパワーも求められるため、消費電力が大きく、小型化が進むにつれて回転機全体の温度が上昇し易いことから、有効な発熱対策を講じることが肝要である。
【0008】
なお、特開2013-172486号公報には、ハウジング内にリード端子部を設け、ステータコイルのうちコイルエンドよりもリード端子部側の部分であるリード線を、ハウジング内に設けられた油供給部から油をリード線に形成した孔に向かって噴出することで内部に浸み込んだ油でコイルを冷却し、併せてリード線も冷却する構成が開示されている。しかしながら、ハウジング内にリード端子部を設ける構成は、ハウジングの大型化を招来するものであり、小型化に反する構成である。
【0009】
本発明は、このような問題に着目してなされたものであって、主たる目的は、ハウジング内にステータ及びロータを備え、ステータコイルのコイル線をハウジングの外に直接引き出してリード端子部に接続する構成において、ハウジング外に引き出したコイル線(口出線)を効果的に冷却することが可能な回転機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち本発明は、一端部に供試体が接続可能なシャフトと、シャフトの軸回りに設けたロータと、ロータ及びシャフトの少なくとも一部を内部空間に収容可能なケーシングと、ケーシング内に固定したステータとを備えた回転機に関する。そして、本発明に係る回転機は、ステータとして、ステータコアと、ステータコアのステータティースに巻回したコイル巻線とを備え、コイル巻線のうちケーシングの外部に引き出した口出線を、ケーシングの外部に設けたリード端子部のリードバーに接続したものを適用し、冷媒を噴射することによって口出線の外表面の少なくとも一部を冷却する冷却機構を備えていることを特徴としている。
【0011】
このような本発明に係る回転機によれば、コイル巻線のうちケーシング外に直接引き出した口出線を冷却機構によって冷却する構成であるため、口出線の発熱を効果的に抑制することができるとともに、噴射した冷媒による気流を形成することで、口出線が配置されているケーシング外の空間を冷却し、口出線及びリードバーに対する冷却効率を向上させることができる。
【0012】
本発明において、口出線に沿って延在するヒートシンク部をリードバーに設け、ヒートシンク部に口出線を接触させる構成を採用すれば、ヒートシンク部によって熱容量を増加し、外部へ伝熱して放熱することが可能になり、口出線に対する冷却効率をさらに向上させることができる。感電等のリスクを考慮した場合、リードバーには余計な部分を設けないことが一般的であるが、感電等のリスクの無いところで使用するリードバーであれば、ヒートシンク部を付加することで、口出線に対する十分な冷却能力を発揮する放熱性の高いリードバーを比較的簡単な構成で実現できる。
【0013】
本発明の「冷却機構」は、冷媒を噴射することによって口出線の外表面の少なくとも一部を冷却するものであればよく、特に、口出線に対して所定の2方向から冷媒を噴射するものであれば、口出線に対して1方向から冷媒を噴射する構成と比較して、口出線に対する冷却効率が高まる。この場合、冷却機構として、冷媒を扇状に噴出する冷媒噴射部を備えたものを適用し、リードバーを挟む所定の2方向のうち一方の方向から口出線に対して冷媒を噴射する冷媒噴射部の噴射角度と、他方の方向から口出線に対して冷媒を噴射する前記冷媒噴射部の噴射角度の位相を相互に異ならせれば、各冷媒噴射から噴出する冷媒同士の衝突を回避して、口出部が配置されている空間に噴出した冷媒の勢いを保って冷たい気流を効率良く形成することができ、口出線に対する冷却能力が高まる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、コイル巻線のうちケーシングの外部に引き出してリード端子部のリードバーに接続する口出線に対して、冷媒を噴射する冷却機構を備えているため、回転高速化及び小型化に伴って生じるステータの口出線の発熱を効果的に抑制することが可能な回転機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る回転機の断面模式図。
【
図2】同実施形態に係る回転機の要部拡大断面模式図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0017】
本実施形態に係る回転機1は、
図1、
図2及び
図3(
図2は
図1の要部拡大図であり、
図3は
図2のA方向矢視図である)に示すように、円筒状のケーシング2と、ケーシング2内に固定したステータ3と、シャフト4と、シャフト4の軸回りに設けたロータ5とを備えている。本実施形態に係る回転機1は、例えば自動車用試験装置に適用されるダイナモ装置として機能するものであり、自動車用試験装置に適用した場合、回転機1に連結された供試体(自動車に用いられる回転体(パワートレイン)等、図示省略)の特性を測定することが可能である。ここで、供試体の種類により、回転機1は「擬似負荷」として機能したり、「擬似駆動源」として機能する。
【0018】
ケーシング2は、シャフト4の軸方向Xに沿って横臥姿勢で配置される概略円筒状のケーシング本体21と、ケーシング本体21の一端部に取り付けた供試体側カバー22Aと、ケーシング本体21の他端部に取り付けた反供試体側カバー22Bとを備えている(
図1参照)。なお、「供試体側,反供試体側」は、「負荷側,反負荷側」、「一次側,二次側」とも称される。供試体側カバー22A及び反供試体側カバー22Bは、それぞれ中心部に供試体側軸受6A、反供試体側軸受6Bを収容可能な凹部23A,23Bを有するものである。
【0019】
供試体側軸受6A及び反供試体側軸受6Bは、供試体側カバー22A、反供試体側カバー22Bの凹部23A,23B内にそれぞれ収容された状態で、シャフト4を回転可能に支持するものである。供試体側カバー22Aには、厚み方向に貫通する貫通孔24を形成し、この貫通孔24を通じてシャフト4の一端4A近傍部分(供試体側端部)をケーシング2の外部に表出させている。一方、反供試体側カバー22Bには貫通孔は形成されておらず、シャフト4の他端近傍部分4Bは、反供試体側カバー22Bの凹部23B内に収容された状態にある。なお、反供試体側カバー22Bに、シャフト4の他端4Bを含む所定部分に接続可能な接続部を有する反供試体側サブカバー(図示省略)を装着可能に構成することもできる。
【0020】
供試体側軸受6A及び反供試体側軸受6Bは、外周面を供試体側カバー22A、反供試体側カバー22Bによってそれぞれ固定され、シャフト4に対する摺接面を内周面に設定したものである。なお、
図1等では、カバー(供試体側カバー22A、反供試体側カバー22B)をケーシング本体21に取り付けるための部材やボルト等を省略している。本実施形態の回転機1では、ケーシング本体21及びカバー(供試体側カバー22A、反供試体側カバー22B)によって仕切られるケーシング2の内部空間2Sを外部空間から隔離した気密性の高い空間に維持することができる。なお、本実施形態の回転機1は、ケーシング2を支持する受台7により任意の設置面上に据え付けることが可能である(
図1参照)。
【0021】
ケーシング2の内部空間2Sに配置されるロータ5は周知のものを適用することができるため、詳細な説明は省略する。
【0022】
ステータ3は、ステータコア31と、ステータコア31のステータティースに巻回したコイル巻線と、ステータ3のうち軸方向Xにおける両端部に配置したコイルエンド32とを備え、コイル巻線のうちケーシング2の外部に直接引き出した口出線33をリード端子部Lに接続したものである。なお、コイルエンド32と口出線33の間にはコイル結線部30が形成されている(
図1及び
図2参照)
【0023】
ここで、本実施形態の回転機1は、
図1等に示すように、反供試体側のコイルエンド32の上方であって且つケーシング2の外部である所定箇所にリード端子部Lを配置し、コイル巻線のうちケーシング2の外部に引き出した口出線33を、リード端子部LのリードバーL1に接続している。口出線33の先端部分には圧着端子34をかしめて取り付け、圧着端子34をボルト及びナットを用いてリードバーL1に固定することによって、口出線33をリードバーL1に電気的・機械的に接続している(
図2及び
図3参照)。
【0024】
本実施形態では、リードバーL1として、
図5(同図(a),(b),(c)はリードバーL1の側面図、正面図、平面図である)に示すように、リードバー本体L2と、リードバー本体L2の下端から下方に延材するヒートシンク部L3を備えたものを適用している。本実施形態のリードバーL1は、リードバー本体L2及びヒートシンク部L3を一体に有する例えば銅製のものである。リードバー本体L2は、上端部に主回線接続用ターミナルTを取り付けるためのネジ孔L2aを形成した横断面略正方形状のブロック体である。ヒートシンク部L3は、リードバー本体L2の下向き面における奥行き方向Y(水平面内においてシャフト4の軸方向Xに直交する方向)中央部分から下方に延伸する平板状(プレート状)をなし(
図5(b)参照)、奥行き方向Yに対向する両側面L31,L32の表面積をシャフト4の軸方向Xに対向する面の表面積よりも大きく設定したものである。ここで、ヒートシンク部L3とリードバーL1との境界をヒートシンク部L3の始端L33(基端)とした場合、ヒートシンク部L3の始端L33から終端L34(末端)までの高さ寸法は、リードバー本体L2の高さ寸法よりも大きく、ヒートシンク部L3の始端L33近傍に、奥行き方向Yに貫通するネジ孔L3aを形成し、このネジ孔L3aを利用して口出線33をリードバーL1に取り付けることができる。
【0025】
本実施形態の回転機1は、ケーシング2の外部に引き出された口出線33と、リード端子部Lのうち少なくともリードバーL1に対する口出線33の接続部分を収容可能なダクトDをケーシング2の上部に設けている(
図1等参照)。ヒートシンク部L3の終端L34は、ダクトDの底面(下面)近傍あたり、換言すれば、ダクト空間DSとケーシング2の内部空間2Sとの境界部分近傍あたりに到達している(
図2参照)。
【0026】
そして、本実施形態の回転機1は、コイル巻線のうちケーシング2の外部に引き出した口出線33の先端部分を、圧着端子34を介してリードバーL1部のうちヒートシンク部L3の始端L33近傍に取り付け、口出線33のうち先端部分(圧着端子34)からダクト空間DSとケーシング2の内部空間2Sとの境界近傍位置までに亘る領域をヒートシンク部L3に接触させている。したがって、ヒートシンク部L3は、口出線33に沿って延材するものであるといえる。
【0027】
本実施形態では、ヒートシンク部L3の両側面L31,L32をフラットな面に設定し、各側面L31,L32にそれぞれ口出線33を複数本(図示例では2本)並べて配置している。なお、ヒートシンク部L3の放熱性を高めるために、両側面L31,L32をそれぞれ放熱フィン形状またはリブ形状に設定し、各面L31,L32の表面積を増加させてもよい。
【0028】
本実施形態の回転機1は、
図4(同図は
図2のa-a線断面模式図である)に示すように、シャフト4の軸方向Xにヒートシンク部L3を挟む位置に口出線33を配置し、1体のヒートシンク部L3に合計4本の口出線33を接触させている。本実施形態の回転機1は、平面視においてシャフト4の軸方向Xと直交する方向(奥行き方向Y)にリードバーL1を所定ピッチで3体配置し、リードバーL1毎に同相(U相,V相,W相)の口出線33を接続している。
【0029】
ダクトDは、
図4に示すように、四角筒状のダクト本体D1を主体としてなり、ダクト本体D1のうちシャフト4の軸方向Xに対向する側壁D2に、後述する冷媒噴射部91を収容可能な凹部D23を有するものである。ダクトDの内部空間(ダクト空間DS)はケーシング2の内部空間2Sと連通している。ダクトDの上方は、樹脂モールド材D4によって蓋封されている。本実施形態では、リードバーL1のうち、口出線33の接続部分よりも上方の領域であるリードバー本体L2とダクトDの上方開口部D5との間に樹脂モールド材D4を設け(
図2等参照)、ダクト空間DSを外部から隔離した気密状態に設定している。なお、本実施形態の回転機1は、リードバーL1の上端部を主回線接続用ターミナルTに固定し、主回線接続用ターミナルTに主回路配線Cを接続している。主回線接続用ターミナルTは、リード端子部Lの一部を構成するものである。
【0030】
そして、本実施形態に係る回転機1は、冷媒を噴射することによって口出線33の外表面の少なくとも一部を冷却する冷却機構9を備えている。冷却機構9は、口出線33に対して所定の2方向から冷媒を噴射するものである。本実施形態では、冷媒として油(冷却油)を適用している。冷却機構9は、冷媒を扇状に噴出する冷媒噴射部91を備えている。
図2及び
図4には、冷媒の噴射形状を2点鎖線で模式的に示している。本実施形態では、リードバーL1のうちシャフト4の軸方向Xにおいてヒートシンク部L3を挟んで対向する位置に冷媒噴射部91(噴射ノズル)を配置し、一方の冷媒噴射部91(相対的に供試体側の位置に配置した冷媒噴射部91)による冷媒の噴射角度と、他方の冷媒噴射部91(相対的に反供試体側の位置に配置した冷媒噴射部91)による冷媒の噴射角度の位相を相互に異ならせている。具体的には、一方の冷媒噴射部91から噴射する冷媒が略水平面内で扇状に広がるように噴射角度を設定し、他方の冷媒噴射部91から噴射する冷媒が略鉛直面内で扇状に広がるように噴射角度を設定している(図示省略)。すなわち、一方の冷媒噴射部91による冷媒の噴射角度と、他方の冷媒噴射部91による冷媒の噴射角度の位相を90度または略90度異ならせている。もちろん90度以外の角度位相に設定することもできる。
【0031】
本実施形態の回転機1は、リードバーL1を所定ピッチで3体配置し、各リードバーL1を挟んで対向する位置にそれぞれ冷媒噴射部91を配置している。
図4に示すように、リードバーL1を境に一方の側に配置された3つの冷媒噴射部91は、ダクトDの一方の側壁D2に所定ピッチで設けた凹部D23に収容され、当該側壁D2の外側に密着状態で配置したダクト側壁カバーD6の内部に形成した共通の第1マニホールド92に連結されている。同様に、リードバーL1を境に他方の側に配置された3つの冷媒噴射部91は、ダクトDの他方の側壁D2に所定ピッチで設けた凹部D23に収容され、当該側壁D2の外側に密着状態で配置したダクト側壁カバーD6の内部に形成した共通の第2マニホールド93に連結されている。各マニホールド(第1マニホールド92、第2マニホールド93)の始端は冷媒供給口として機能する。
【0032】
以上の構成を有する本実施形態に係る回転機1は、コイル巻線のうちケーシング2の外部に引き出した口出線33を、ケーシング2の外部に設けたリード端子部LのリードバーL1に接続している構成であり、ケーシング2外に引き出した口出線33及びリードバーL1を冷却機構9によって冷却することができ、口出線33及びリードバーL1の発熱を効果的に抑制することが可能であるとともに、噴射した冷媒による気流をダクト空間DS内に形成することで、口出線33が配置されているダクト空間DSを冷却し、ケーシング2外に引き出された口出線33及びリードバーL1に対する冷却効率を向上させることができる。
【0033】
さらに、本実施形態の回転機1は、ダクト空間DSとケーシング2の内部空間2Sを連通させているため、冷却機構9によってダクト空間DSに噴出した冷媒が、ミスト状になってケーシング2の内部空間2Sにも流れ、ケーシング2内に配置されたステータ3のコイルエンド32等の発熱体に対する冷却作用を発揮する。なお、本実施形態の回転機1は、ケーシング2の下部に冷媒排出口26を設け(
図1参照)、この冷媒排出口26から冷媒をケーシング2外に排出可能に構成している。
【0034】
特に、本実施形態に係る回転機1は、口出線33に沿って延在するヒートシンク部L3をリードバーL1に設け、ヒートシンク部L3に口出線33を接触させる構成であるため、ヒートシンク部L3を設けていない構成と比較して、リードバーL1において口出線33の冷却に寄与する放熱領域を拡大して、熱容量を増やすことができる。これにより、コイル巻線で生じた熱が口出線33を伝ってからリードバーL1のヒートシンク部L3に移り、リードバーL1の外部へ放熱することが可能になり、口出線33に対する冷却効率をさらに向上させることが可能である。
【0035】
加えて、本実施形態に係る回転機1は、冷却機構9として、冷媒を扇状に噴出する冷媒噴射部91を備えたものを適用し、リードバーL1を挟む所定の2方向のうち一方の方向から口出線33に対して冷媒を噴射する冷媒噴射部91の噴射角度と、他方の方向から口出線33に対して冷媒を噴射する冷媒噴射部91の噴射角度の位相を相互に異ならせているため、各冷媒噴射部91から噴射する冷媒同士の衝突を回避して、口出部が配置されている空間に噴出した冷媒の勢いを保って冷たい気流を効率良く形成することができ、冷却能力が高まる。
【0036】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、本発明の「冷却機構」は、冷媒を噴射することによって口出線の外表面の少なくとも一部を冷却するものであればよく、リードバーを挟んで対向配置する冷媒噴射部から口出線に対して冷媒を扇状に噴射する角度(噴射角度)の位相が同じであってもよい。
【0037】
また、本発明では、口出線に対して一方向からのみ冷媒を噴射する冷却機構を採用することも可能である。さらには、冷媒を扇状ではなく円錐状に噴射する冷却機構を適用してもよい。
【0038】
本発明では、供試体側から口出線に向かって冷媒を噴射する冷媒噴射部と、反供試体側から口出線に向かって冷媒を噴射する冷媒噴射部とを複数のリードバーが並ぶ方向に交互に配置した回転機を構成することもできる。
【0039】
回転機の仕様によっては、冷却機構の冷媒として、冷却油以外の流体や気体を採用しても構わない。つまり、冷却機構による冷却方式は、油冷、水冷、空冷等どのような方式であってもよく、冷媒によって口出線の発熱を奪う能力(冷却能力)が向上する。
【0040】
また、シャフトとして、軸心部分に軸方向に延伸する冷媒の供給路であるメイン冷媒路と、メイン冷媒路に連通しシャフトのラジアル方向に延伸するサブ冷媒路とを備え、メイン冷媒路に供給した冷媒をサブ冷媒路の終端(出口)からケーシングの内部空間に放出することで、ケーシング内において熱を帯びるロータ等のパーツに対する冷却処理も実行可能に構成した回転機であってもよい。ケーシング内を冷却する機構をハウジングに設けた回転機であっても構わない。
【0041】
リードバーのヒートシンク部の形状やサイズは適宜変更することができる。特に、ヒートシンク部は、口出線に沿って延在するものであることが好ましく、口出線が高さ方向以外の方向に直線状また曲線状に配置される構成であれば、ヒートシンク部も口出線の配線形状に応じた形状にすればよい。
【0042】
リードバーが、それぞれ別体のリードバー本体とヒートシンク部を備えたものであってもよい。ヒートシンク部を備えていないリードバーを採用しても構わない。銅以外の素材(材料)でリードバーを構成することも可能である。
【0043】
口出線をリードバーに接続する態様は、圧着端子を用いたカシメ処理に限定されず、適宜の処理で口出線をリードバーに電気的・機械的に接続すればよい。また、口出線はコイル線の素線の束ねたものだけのものであってもよいし、素線の束を適宜の被覆材(例えば可撓性の絶縁被覆材)で被覆したものであってもよい。
【0044】
また、本発明に係る回転機は、自動車用試験装置に適用されるものに限定されず、用途に応じた仕様に変更することができる。
【0045】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0046】
1…回転機
2…ケーシング
3…ステータ
33…口出線
4…シャフト
5…ロータ
9…冷却機構
91…冷媒噴射部
L…リード端子部
L1…リードバー
L3…ヒートシンク部