(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-06
(45)【発行日】2022-09-14
(54)【発明の名称】シャッター装置および工作機械
(51)【国際特許分類】
B23Q 11/08 20060101AFI20220907BHJP
【FI】
B23Q11/08 A
(21)【出願番号】P 2018157796
(22)【出願日】2018-08-24
【審査請求日】2021-07-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000107642
【氏名又は名称】スター精密株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096703
【氏名又は名称】横井 俊之
(74)【代理人】
【識別番号】100124958
【氏名又は名称】池田 建志
(74)【代理人】
【識別番号】100126077
【氏名又は名称】今井 亮平
(72)【発明者】
【氏名】小田 純也
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-058276(JP,A)
【文献】特開2006-297510(JP,A)
【文献】特開2003-211340(JP,A)
【文献】特開平10-080838(JP,A)
【文献】特開平11-010479(JP,A)
【文献】特開2013-103313(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02708318(EP,A1)
【文献】特開平11-156666(JP,A)
【文献】特開2013-158892(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 11/00-13/00
E06B 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に移動可能な移動体の移動に伴って移動するシャッター装置であって、
開口の一部を覆い、前記移動体とともに前記所定方向に移動する第1シャッター部と、
前記開口の端部と前記第1シャッター部との間に配設されて、前記移動体の移動とともに前記所定方向に伸縮する第2シャッター部と、を備え、
前記第2シャッター部は、前記所定方向に長尺な第1片と前記第1片に対して交差する方向に長尺な第2片とを有するシャッター片を、複数重ねて構成され、
前記シャッター片は、
前記第1シャッター部から前記所定方向への力を受ける受け部を前記第1片に有し、かつ、重なり合う他の前記シャッター片との間で、前記所定方向に沿って移動可能な状態で互いを連結する連結部を前記第2片に有
し、
前記第1シャッター部は、前記シャッター片が重なる方向へ突出する第1凸部を有し、
前記受け部は、前記第1片を貫通し且つ前記所定方向に長尺なスリットであって前記第1凸部を挿入させた前記スリットであり、
前記スリットの前記所定方向における長さは、前記開口の端部に近い前記シャッター片の前記スリットほど長い、ことを特徴とするシャッター装置。
【請求項2】
所定方向に移動可能な移動体の移動に伴って移動するシャッター装置であって、
開口の一部を覆い、前記移動体とともに前記所定方向に移動する第1シャッター部と、
前記開口の端部と前記第1シャッター部との間に配設されて、前記移動体の移動とともに前記所定方向に伸縮する第2シャッター部と、を備え、
前記第2シャッター部は、前記所定方向に長尺な第1片と前記第1片に対して交差する方向に長尺な第2片とを有するシャッター片を、複数重ねて構成され、
前記シャッター片は、重なり合う他の前記シャッター片との間で、前記所定方向に沿って移動可能な状態で互いを連結する連結部を前記第2片に有し、
前記連結部は、前記第2片の前記第1片と結合する端部とは逆側の端部に形成されている、ことを特徴とするシャッター装置。
【請求項3】
前記第2片のうち前記連結部が形成されている端部よりも前記第1片側の部位は、前記所定方向における幅が、前記連結部が形成されている端部よりも狭いことを特徴とする請求項
2に記載のシャッター装置。
【請求項4】
前記連結部は、重なり合う一方の前記シャッター片から他方の前記シャッター片に向けて突出する第2凸部と、他方の前記シャッター片に形成されて前記第2凸部を挿入させた穴であって前記所定方向における幅が前記第2凸部よりも長い穴とを含む、ことを特徴とする請求項1~請求項
3のいずれかに記載のシャッター装置。
【請求項5】
請求項1~請求項
4のいずれかに記載のシャッター装置を備えることを特徴とする工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャッター装置および工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械において、移動体が移動する機枠の垂直開口面を覆う防塵カバー装置であって、移動体に固定された基部カバーと、移動体から最も離れた位置で垂直開口面の端部を覆う端部カバーと、両者間に位置する5枚の中間カバーとを備え、端部カバー及び中間カバーを、移動体の上方で移動方向に延びる案内部と、案内部と直交して垂直開口面内に広がる被覆部とからL字形に形成し、基部カバー、端部カバー及び中間カバーを相互に摺動可能に重ね合わせてなる防塵カバー装置が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
文献1に開示されたようなL字形の中間カバーは、基部カバー等と比べて一枚一枚が細く形成されている。そのため、中間カバー相互の隙間への切屑や切粉や切削油やその他のゴミの入り込みによって生じる外力への耐性が低く、中間カバーの変形や破損の生じ易さが課題となっていた。
【0005】
本発明は少なくとも上述の課題に鑑みてなされたものであり、部品の変形や破損の防止に有効なシャッター装置および工作機械を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様の1つは、所定方向に移動可能な移動体の移動に伴って移動するシャッター装置であって、開口の一部を覆い、前記移動体とともに前記所定方向に移動する第1シャッター部と、前記開口の端部と前記第1シャッター部との間に配設されて、前記移動体の移動とともに前記所定方向に伸縮する第2シャッター部と、を備え、前記第2シャッター部は、前記所定方向に長尺な第1片と前記第1片に対して交差する方向に長尺な第2片とを有するシャッター片を、複数重ねて構成され、前記シャッター片は、重なり合う他の前記シャッター片との間で、前記所定方向に沿って移動可能な状態で互いを連結する連結部を前記第2片に有する。
【0007】
前記構成によれば、第2シャッター部を構成する複数のシャッター片は、第2片に連結部を有する。連結部がシャッター片同士を連結することでシャッター片の耐性を向上させ、シャッター片の変形や破損を防ぐことができる。
【0008】
本発明の技術的思想は、シャッター装置という物以外によっても実現される。
例えば、本発明にかかるシャッター装置を備える工作機械を、一つの発明として把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】旋盤の一部分を前側からの視点により示す図。
【
図3】
図2のA‐A線による断面図であり第2シャッター部が伸びた状態を示す図。
【
図4】
図2のA‐A線による断面図であり第2シャッター部が縮んだ状態を示す図。
【
図5】
図2のB‐B線による断面図であり第2シャッター部が伸びた状態を示す図。
【
図6】
図2のB‐B線による断面図であり第2シャッター部が縮んだ状態を示す図。
【
図7】重なり合う二つのシャッター片の第2片の端部付近を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、各図を参照しながら本発明の実施形態を説明する。各図は、本実施形態を説明するための例示に過ぎない。また、各図は例示であるため、形状や比率等が互いに整合していなかったり、一部の図示が省略されていたりすることもあるが、そのような不整合や省略は、説明に影響を及ぼさない。
【0011】
図1は、本実施形態にかかる刃物台30を斜視図により簡易的に示している。
図2は、刃物台30を含む旋盤10の一部分を前側からの視点により示している。
旋盤10は工作機械の一種である。旋盤10は、不図示のNC(Numerical Control)装置により主軸20や刃物台30等の各部が数値制御されることで、ワークWを加工する。
【0012】
主軸20は、棒状のワークWを把持した状態でZ軸を中心として回転する。刃物台30には、ワークWを加工するための刃物が取り付けられる。刃物の図示は省略している。刃物台30は、タレット31と呼ばれる回転装置を有しており、複数の側面に複数の刃物を取り付けたタレット31を回転させることで、ワークWの加工に用いる刃物を切り替えることができる。
【0013】
図2の例では、刃物台30に対してX方向の一端側S1に主軸20が配設されている。X方向は、Z軸に対して直交しており、刃物台30が移動する所定方向である。刃物台30は、移動体の一例に該当する。X方向は、
図1,2の例では水平方向に対して傾いており、一端側S1および他端側S2のうち一端側S1が上側であり、他端側S2が下側である。
【0014】
図1に示すように、刃物台30は一部が筐体40に収容されている。筐体40のZ軸と平行な方向を向く面41には開口(
図3等の符号42参照。)が形成されており、この開口42から刃物台30のうちタレット31を含む残りの一部が筐体40の外に突出している。面41の一部に開口42が形成されている構成であれば、面41は、開口42を区画する枠に該当すると言える。あるいは、実質的に面41の全てが開口42である場合には、筐体40を構成する面41以外の複数の面であって、面41の周囲に位置する複数の面の縁が、開口42を区画する枠に該当する。
【0015】
説明の為、刃物台30が筐体40から突出する側を前側とする。また、Z軸と平行な方向を前後方向と呼ぶ。
図1の例では、筐体40に対して、面41の前側に、面41の縁を覆うためのカバー43が取り付けられている。
図2では、カバー43を省略している。また
図2では、前側から見たときの筐体40の外郭を簡易的に矩形で示している。カバー43は、後に詳述するシャッター装置50よりも前側に取り付けられている。
図1の例では、筐体40を構成する面であって面41以外の面の一部を図示しないことにより、筐体40内の刃物台30の一部を視認できるようにしている。
【0016】
上述の数値制御によって、刃物台30は移動したりタレット31を回転させたりする。刃物台30がX方向の一端側S1へ移動することで刃物台30が主軸20へ近づき、刃物台30がX方向の他端側S2へ移動することで刃物台30が主軸20から遠ざかる。刃物台30がX方向に沿って移動するとき、筐体40は移動しない。詳しい説明は省くが、刃物台30は、さらに、X方向とZ軸とに対して直交する方向へ移動可能であったり、筐体40とともに前後方向へ移動可能であったりしてもよい。むろん、旋盤10は、
図2に示した構成以外にも、他の主軸や他の刃物台、さらにはガイドブッシュ等、を含むとしてもよい。
【0017】
シャッター装置50は、開口42を覆う構造を有する。これにより、シャッター装置50は、筐体40の内と外とを遮り、ワークWの切屑や切粉、ワークWの加工時に噴射される切削油、その他のゴミ(以下、まとめて切屑等)が筐体40内に侵入することを防止する。シャッター装置50が開口42を覆うとは、開口42(ただし、開口42を通過する刃物台30が存在している範囲を除く。)の全てをシャッター装置50が覆う態様だけでなく、開口42をシャッター装置50と他の部品とによって覆う態様や、開口42のうち一部を除いた範囲をシャッター装置50が覆う態様を含む。
【0018】
シャッター装置50は、概略、第1シャッター部51と第2シャッター部52とを含んで構成される。第1シャッター部51は、開口42の一部であって刃物台30の周囲および他端側S2の範囲を覆う板状部材である。第1シャッター部51は、刃物台30に直接あるいは間接的に固定されている。
【0019】
第2シャッター部52は、開口42の一端側S1の端部と第1シャッター部51との間に配設されている。そして、第2シャッター部52は、刃物台30の移動とともにX方向に伸縮する。具体的には、第2シャッター部52は、X方向に長尺な第1片54と、第1片54に対して交差する方向に長尺な第2片55と、を有するシャッター片53を複数重ねて構成されている。複数のシャッター片53が重なる方向は前後方向である。シャッター片53は、第1片54および第2片55を備えたL字形の板状部材である。第1片54の長手方向は、基本的にはX方向と平行であるが、厳密な平行でなくてもよく、いくらかの傾きの誤差は許容される。また、第2片55の長手方向は、基本的にはX方向に直交する方向であるが、これについても厳密な直交でなくてもよく、いくらかの傾きの誤差は許容される。
【0020】
図3および
図4は、
図2のA‐A線による断面を示している。
図3,4では見易さを考慮して、刃物台30等については断面を示すハッチングを省略している。
図3,4(および
図5,6,8,9)では、
図2で省略したカバー43を図示している。
図3は、第2シャッター部52が伸びた状態、つまり刃物台30が他端側S2へ移動した状態を示している。一方、
図4は、第2シャッター部52が縮んだ状態、つまり刃物台30が一端側S1へ移動した状態を示している。
図3,4の例では、第1シャッター部51は、刃物台30に対してネジ70で固定されている。従って、第1シャッター部51は、X方向への刃物台30の移動とともにX方向へ移動する。
【0021】
第2シャッター部52は、例えば8個のシャッター片53により構成される。むろん、第2シャッター部52を構成するシャッター片53の数は、8個より少なくても多くてもよい。シャッター片53のそれぞれを個別に示す場合に、一端側S1に近いシャッター片53から順に、符号53a,53b,53c,53d,53e,53f,53g,53hを用いて示す。
図3に示すように、複数のシャッター片53のうち最も一端側S1のシャッター片53aが最も前側に在り、各シャッター片53b,53c,53d,53e,53f,53g,53hは、一端側S1から遠いシャッター片53ほど後側に在る。第1シャッター部51は、最も後側のシャッター片53hよりも後側に在る。
【0022】
シャッター片53は、第1シャッター部51からX方向への力を受ける受け部56を第1片54に有する。
図5および
図6は、
図2におけるシャッター片53の第1片54を通過するB‐B線による断面を示している。
図5は第2シャッター部52が伸びた状態を示している。一方、
図6は、第2シャッター部52が縮んだ状態を示している。
図5,6では、刃物台30の図示を省略している。
【0023】
図2から判るように、シャッター片53の第1片54には、第1片54を前後方向に貫通し且つX方向に長尺なスリットが形成されている。このスリットが受け部56である。受け部56は、各シャッター片53の第1片54それぞれに形成されている。また、各受け部56は、互いに重なる位置に形成されている。
図5,6では、シャッター片53a,53b,53c,53d,53e,53f,53g,53hそれぞれの受け部56を、順に符号56a,56b,56c,56d,56e,56f,56g,56hを用いて示している。
【0024】
第1シャッター部51は、シャッター片53の受け部56に対応する位置に、シャッター片53が重なる方向へ突出する凸部57を有する。凸部57は、第1シャッター部51から前側へ突出しており、受け部56a,56b,56c,56d,56e,56f,56g,56hに挿入されている。凸部57は、X方向に長尺であり、
図5,6の例では、第1シャッター部51に対してネジ71で固定されている。従って、凸部57は、受け部56a,56b,56c,56d,56e,56f,56g,56hに挿入された状態で、第1シャッター部51と一体となってX方向へ移動する。凸部57は、第1凸部に該当する。
図5,6では見易さを考慮して、凸部57等については断面を示すハッチングを省略している。
【0025】
図5,6から判るように、スリットとしての受け部56a,56b,56c,56d,56e,56f,56g,56hは、X方向における長さが異なる。具体的には、開口42の一端側S1の端部に近いシャッター片53の受け部56ほど、X方向における長さが長い。つまり
図5,6の例では、シャッター片53aの受け部56aが最も長く、シャッター片53hの受け部56hが最も短い。
【0026】
従って、刃物台30および第1シャッター部51が他端側S2から一端側S1へ移動する過程で、凸部57の一端側S1の端部が、受け部56h,56g,56f,56e,56d,56c,56b,56aの順で、各受け部56の一端側S1の端部に衝突する。受け部56の一端側S1の端部が凸部57と衝突したシャッター片53から順に、一端側S1への力を受けて一端側S1への移動を開始し、この結果、
図4,6に示すようにシャッター片53a,53b,53c,53d,53e,53f,53g,53hが一端側S1で重なった状態、つまり第2シャッター部52が縮んだ状態となる。第2シャッター部52が最も縮んだ状態では、
図4から判るように、シャッター片53a,53b,53c,53d,53e,53f,53g,53hの各第2片55がほぼ全て重なる。
【0027】
一方、刃物台30および第1シャッター部51が一端側S1から他端側S2へ移動する過程で、凸部57の他端側S2の端部が、受け部56h,56g,56f,56e,56d,56c,56b,56aの順で、各受け部56の他端側S2の端部に衝突する。受け部56の他端側S2の端部が凸部57と衝突したシャッター片53から順に、他端側S2への力を受けて他端側S2への移動を開始し、この結果、
図3,5に示すように第2シャッター部52が伸びた状態となる。
【0028】
このように、第2シャッター部52を構成するシャッター片53の第1片54が、受け部56により第1シャッター部51からX方向の力を受けることで、第2シャッター部52がX方向に伸縮する。なお、第2シャッター部52が最も伸びた状態でも、第2シャッター部52を構成するシャッター片53は、前後方向に隣り合う他のシャッター片53と一部が重なったままである(
図3,5参照)。また、
図3,4において符号41aで示す板状の部位は、面41の一部である。部位41aは、開口42に該当せずに残された面41の一部である。部位41aは、刃物台30よりも他端側S2において、第1シャッター部51の後側に重なっている。つまり、刃物台30および第1シャッター部51が一端側S1へ移動した状態においても、第1シャッター部51の後側に部位41aが控えていることにより、刃物台30の他端側S2に開口42の一部が露出しない構成となっている(
図4参照)。このようにシャッター装置50は、刃物台30がX方向の一端側S1、他端側S2へどのように移動したとしても、開口42を覆った状態を保つ。
【0029】
次に、第2シャッター部52を構成するシャッター片53が第2片55に有する連結部58について説明する。連結部58は、前後方向に重なり合うシャッター片53同士を、X方向に沿った互いの移動を許容しつつ連結する。
【0030】
図7は、重なり合う二つのシャッター片53の第2片55の端部551付近を、後側から斜視図により示している。第2片55の端部551とは、第2片55の両端部のうち、第1片54と結合する端部とは逆側の端部である。例として、
図7に示す二つのシャッター片53は、シャッター片53bおよびシャッター片53cである。
【0031】
図8は、
図2におけるシャッター片53の第2片55の端部551を通過するC‐C線による断面を示している。
図9は、
図2におけるシャッター片53の第2片55の端部551を通過するD‐D線による断面を示している。
なお、
図7においても、
図2と同様にC‐C線およびD‐D線を記載している。
図2,7から判るように、C‐C線とD‐D線とは、第2片55の長手方向においてずれている。
【0032】
一つのシャッター片53は、端部551に、凸部59および凹部60を有する。凸部59は、第2凸部に該当する。凸部59や凹部60は、連結部58を具体的に実現している。
図7~9の例によれば、凸部59は、後側に重なる他のシャッター片53に形成された凹部60に挿入されており、凹部60は、前側に重なる他のシャッター片53に形成された凸部59の挿入を受け入れている。シャッター片53の第2片55の端部551における凸部59および凹部60の位置関係は、第1タイプと第2タイプとに分かれる。第1タイプは、凸部59よりも凹部60の方が、第2片55の長手方向において第1片54寄りの所定位置に在るタイプである。逆に、第2タイプは、凹部60よりも凸部59の方が、第2片55の長手方向において第1片54寄りの所定位置に在るタイプである。
【0033】
第1タイプに該当する端部551と、第2タイプに該当する端部551とが交互に配置されるように、複数のシャッター片53が前後方向に重ねられる。
図7の例によれば、前側のシャッター片53bの端部551は第2タイプに該当し、後側のシャッター片53cの端部551は第1タイプに該当する。また、
図8,9を参照すれば、シャッター片53a,53c,53e,53gが、第1タイプに該当する端部551を有するシャッター片53であり、シャッター片53b,53d,53f,53hが、第2タイプに該当する端部551を有するシャッター片53である。このような構成により、第1タイプの端部551の凸部59が後側に重なる第2タイプの端部551の凹部60に挿入され、この第2タイプの端部551の凸部59が更に後側に重なる第1タイプの凹部60に挿入される、という関係性が前後方向に重ねられた複数のシャッター片53の間で続く。
【0034】
図7~9の例によれば、各シャッター片53が有する凹部60は、シャッター片53を前後方向に貫通している。また、各シャッター片53が有する凸部59の前後方向における厚み(突出の程度)は、前後方向における凹部60の深さよりも浅い。
図7~9のように凹部60がシャッター片53を貫通する構成においては、シャッター片53の厚みが、凹部60の深さである。ただし、凹部60は、シャッター片53を貫通していなくてもよく、重なり合う他方のシャッター片53から突出する凸部59を受け入れ可能な窪みであってもよい。
【0035】
重なり合う二つのシャッター片53に注目したとき、重なり合う一方のシャッター片53から他方のシャッター片53に向けて突出する凸部59と、この他方のシャッター片53に形成されて当該凸部59を挿入させた凹部60とが、この二つのシャッター片53を連結する連結部58に該当する。
図7の例によれば、凹部60はX方向に長尺な長穴である。凹部60がX方向に長尺な長穴であることにより、重なり合う二つのシャッター片53は、一方が他方に対して、X方向における凹部60(長穴)の長さの範囲内で相対的に移動することが可能となる。
【0036】
重なり合うシャッター片53同士の連結部58による連結の構造は、カバー43と最も前側のシャッター片53aとの関係や、最も後側のシャッター片53hと第1シャッター部51との関係においても適用可能である。つまり、
図8に示すように、シャッター片53aの第2片55の端部551と相対するカバー43側の位置にも後側へ突出する凸部59を形成し、このカバー43から後側へ突出する凸部59が、シャッター片53aの凹部60に挿入された状態とする。また、
図8に示すように、シャッター片53hの第2片55の端部551と相対する第1シャッター部51側の位置にも凹部60を形成し、この第1シャッター部51に形成された凹部60が、シャッター片53hから後側へ突出する凸部59の挿入を受け入れた状態とする。かかる構成とすれば、筐体40に固定されたカバー43と、複数のシャッター片53と、刃物台30とともにX方向に移動する第1シャッター部51とが、重なり合う部材間の連結部58により連続的に連結される。
【0037】
連結部58としての凸部59が突出する方向は、
図7~9に例示したような後側ではなく、前側であってもよい。つまり、シャッター片53に形成されて前側に突出する凸部59は、前側に重なる他のシャッター片53に形成された凹部60に挿入され、シャッター片53に形成された凹部60は、後側に重なる他のシャッター片53に形成された凸部59の挿入を受け入れる構成であってもよい。
【0038】
また、連結部58の構成は、一つのシャッター片53が前後に突出する計二つの凸部59を有し、当該一つのシャッター片53に重なる他のシャッター片53が二つの凹部60を有する構成であってもよい。具体的には、前側に突出する凸部59と、この前側に突出する凸部59に対して第2片55の長手方向にずれた所定位置で後側に突出する凸部59とを有する第3タイプの端部551を想定する。また、少なくとも前側に開口する凹部60と、この前側に開口する凹部60に対して第2片55の長手方向にずれた所定位置で少なくとも後側に開口する凹部60とを有する第4タイプの端部551を想定する。そして、第3タイプに該当する端部551と、第4タイプに該当する端部551とが交互に配置されるように、複数のシャッター片53を前後方向に重ねた構成とする。このような構成により、第3タイプの端部551の後側へ突出する凸部59が、後側に重なる第4タイプの端部551の一つの凹部60に挿入され、この第4タイプの端部551の他方の凹部60へ、更に後側に重なる第3タイプの前側に突出する凸部59が挿入される、という関係性が、前後方向に重ねられた複数のシャッター片53の間で続く。
【0039】
図2,7の例によれば、シャッター片53の第2片55は、端部551と、端部551よりも第1片54側の部位(長尺部552)とで、X方向における幅が異なる。長尺部552の方が、端部551よりもX方向における幅が狭い。端部551は、連結部58としての凸部59や凹部60を有する必要性から、X方向における幅がある程度大きく確保されている。一方、連結部58を有さない長尺部552は、X方向における幅が相対的に狭く形成されている。
【0040】
このような本実施形態によれば、シャッター装置50は、所定のX方向に移動可能な移動体である刃物台30の移動に伴って移動する。シャッター装置50は、開口42の一部を覆い、刃物台30とともにX方向に移動する第1シャッター部51と、開口42の端部と第1シャッター部51との間に配設されて、刃物台30の移動とともにX方向に伸縮する第2シャッター部52と、を備える。第2シャッター部52は、X方向に長尺な第1片54と第1片54に対して交差する方向に長尺な第2片55とを有するシャッター片53を、複数重ねて構成され、シャッター片53は、重なり合う他のシャッター片53との間で、X方向に沿って移動可能な状態で互いを連結する連結部58を第2片55に有する。前記構成によれば、第2シャッター部52を構成するシャッター片53の第2片55に形成された連結部58が、シャッター片53同士を連結することでシャッター片53の耐性を向上させる。
【0041】
図10は、本実施形態が想定する課題の具体例を説明するための図であり、第2シャッター部52を構成するシャッター片53のうちの一つを示している。上述したように、シャッター片53は、刃物台30のX方向の移動に伴ってX方向に移動する。このような構成で、シャッター片53同士の隙間に切屑等が入り込むと、入り込んだ切屑等がシャッター片53に不要な外力を与え、シャッター片53の円滑な移動を阻害することがある。例えば、重なり合う二つのシャッター片53の端部551同士の隙間に切屑等が入り込んだ場合を想定する。この場合、X方向の一端側S1への刃物台30の移動に伴い前記重なり合うシャッター片53のうち後側のシャッター片53が先に一端側S1へ移動したとき、前記切屑等が原因となり、前記後側のシャッター片53の第2片55に、
図10に例示するような力Qがかかる。そして、力Qを受けた前記後側のシャッター片53の第2片55が、
図10に破線で例示するように他端側S2へ曲がってしまうことがある。
【0042】
シャッター片53の第2片55が曲がると、第2片55の根本、つまり第2片55と第1片54とが結合する位置に大きな負荷がかかり、この結果、第2片55の根本にひびが入る等、シャッター片53の破損に繋がり易い。これに対し、本実施形態では、シャッター片53の第2片55の連結部58が、シャッター片53同士を連結することで、複数のシャッター片53が互いに支え合う構成としている。この結果、不要な外力に対するシャッター片53の耐性が向上し、上述したようなシャッター片53の変形や、変形に伴うシャッター片53の破損が防止される。
【0043】
また、本実施形態によれば、連結部58は、第2片55の第1片54と結合する端部とは逆側の端部551に形成されている。
シャッター片53の第2片55の部位の中でも、根本から遠い部位つまり第2片55の端部551に上述したような力Qがかかると、前記根本への負荷がより増して、シャッター片53の破損に繋がり易い。端部551に切屑等の入り込みによる外力が生じ得る状況に対しても、連結部58を端部551に形成したことにより、外力によるシャッター片53の変形を防止し、破損を回避することができる。
【0044】
ただし、連結部58は、第2片55において端部551以外の部位に形成されていてもよい。例えば、連結部58は、第2片55の端部551および長尺部552のそれぞれに形成されていてもよいし、端部551および長尺部552のうち長尺部552だけに形成されていてもよい。
【0045】
また、本実施形態によれば、第2片55のうち連結部58が形成されている端部551よりも第1片54側の部位(長尺部552)は、X方向における幅が、端部551よりも狭い。
前記構成によれば、シャッター片53の第2片55のうち長尺部552を相対的に細く形成している。これにより、第2シャッター部52を最も縮めたときに、刃物台30をできるだけ開口42の端部側に、つまり一端側S1の主軸20にできるだけ近い位置まで移動させることが可能となる。
【0046】
ただし、長尺部552は少なくとも一部が、X方向における幅が、端部551と同じであったり、端部551より広かったりしてもよい。
【0047】
また、本実施形態によれば、連結部58は、重なり合う一方のシャッター片53から他方のシャッター片53に向けて突出する第2凸部(凸部59)と、他方のシャッター片53に形成されて凸部59を挿入させた穴であってX方向における幅が凸部59よりも長い穴(凹部60)と、を含む。
前記構成によれば、重なり合う一方のシャッター片53に形成された凸部59と、重なり合う他方のシャッター片53に形成された凹部60との係合により、両シャッター片53の連結が具体的に実現される。また、
図7に例示したように、凹部60は、X方向に長尺な長穴である。凹部60をX方向に長尺な長穴とすることで、第2片55の長手方向における凹部60の幅を抑える。その結果、凸部59および凹部60を第2片55の長手方向にずらして配置する端部551の第2片55の長手方向における幅をより狭くすることができる。
【0048】
ただし、連結部58の具体的形状は、上述の凸部59および凹部60に限定されない。連結部58は、重なり合うシャッター片53同士を、それぞれがX方向に沿って移動可能な状態で連結するものであればよい。
【0049】
また、本実施形態によれば、シャッター片53は、第1シャッター部51からX方向への力を受ける受け部56を第1片54に有する。
前記構成によれば、第2シャッター部52を構成するシャッター片53が、第1片54が有する受け部56を通じて第1シャッター部51からX方向への力を受けることで、第2シャッター部52が伸縮する。
【0050】
また、本実施形態によれば、第1シャッター部51は、シャッター片53が重なる方向へ突出する第1凸部(凸部57)を有する。シャッター片53の第1片54が有する受け部56は、第1片54を貫通し且つX方向に長尺なスリットであって、凸部57を挿入させたスリットである。そして、前記スリットのX方向における長さは、開口42の端部に近いシャッター片53の前記スリットほど長い。
前記構成によれば、第1シャッター部51の移動に応じて凸部57が各シャッター片53の受け部56としてのスリット内を移動することで、各シャッター片53が順にX方向へ移動し、結果として、第2シャッター部52が伸縮する。
【0051】
また、本実施形態によれば、受け部56としてのスリットおよび前記スリット内に挿入された凸部57はそれぞれX方向に長尺な形状であり、このような凸部57がスリット内をX方向に沿って移動する。かかる構成によれば、X方向に移動する第1シャッター部51からX方向への力を、第2シャッター部52を構成する各シャッター片53に対して適切に伝えることができ、X方向と交差する方向への移動を規制することができる。 その結果、各シャッター片53のX方向に対する傾きが無い、もしくは傾きが殆ど無い各シャッター片53の円滑な移動が実現される。
【0052】
ただし、第1シャッター部51からX方向への力を受ける受け部56は、シャッター片53の第2片55に形成されていてもよい。例えば、複数のシャッター片53のうち最も他端側S2のシャッター片53hの第2片55の長尺部552が、第1シャッター部51と連結する受け部56を有し、このような受け部56が第1シャッター部51から一端側S1や他端側S2への力を受けることで第2シャッター部52が伸縮するとしてもよい。
【0053】
図11および
図12はそれぞれ、連結部58の形状について、
図7とは異なる具体例を示している。
図11,12はいずれも、前後方向に重なり合う二つのシャッター片53の第2片55の端部551の一部範囲を、後側から示している。
図11,12では、符号551bは、シャッター片53bの端部551であることを示し、符号551cは、シャッター片53cの端部551であることを示している。
図11,12によれば、端部551bに凸部59および凹部60が形成されており、端部551cにも凸部59および凹部60が形成されている。また、端部551bの凸部59が、端部551cの凹部60に挿入されている。
【0054】
図11の例では、
図7と比較したとき、連結部58としての凸部59が、より小さく形成されている。
図11に示した凸部59は、第2シャッター部52の正常移動では連結部58としての凹部60の縁に接しないサイズである。第2シャッター部52の正常移動とは、上述した力Q等の不要な外力によるシャッター片53の変形が生じずに各シャッター片53が、刃物台30および第1シャッター部51の移動に応じてX方向へ移動する状態を言う。つまり、第1シャッター部51の凸部57と各シャッター片53の受け部56とが作用し合うことで、連結部58としての凸部59は、凹部60内をX方向に移動する。このとき、前記正常移動の状態では、凸部59は凹部60の縁に接触しないサイズであってもよい。凸部59を、前記正常移動の状態では凹部60の縁に接触しないサイズとすることで、第2シャッター部52が移動する際に凸部59と凹部60との間に摩擦が常時生じるのを避けることができる。第2シャッター部52が移動するとき、前記外力によりシャッター片53に変形が生じ始めると、
図11に示す凸部59は、自身が挿入されている凹部60の縁に接触する。凸部59と凹部60とが接触することで、連結部58によるシャッター片53同士の連結が実質的に生じて複数のシャッター片53が互いに支え合う。その結果、前記外力によるシャッター片53の変形が抑えられる。
【0055】
このように、本実施形態における「互いを連結する連結部58」は、互いが接触した状態を常に保つ構成だけでなく、基本的には互いに接触しておらず不要な外力を受けた場合等のように正常ではない状態において接触して互いを連結する構成も含む。
【0056】
凹部60は、X方向の幅が凸部59のX方向の幅よりも長い穴である。従って、凹部60は、
図7や
図11の例のようにX方向に長尺な長穴に限定されない。凹部60は、例えば、
図12に示すような円形の穴であってもよい。なお、
図12の例においても、凸部59は、第2シャッター部52の正常移動では、自身が挿入されている凹部60の縁に接しないサイズである。
【0057】
これまでの説明では、移動体としての刃物台30が移動するX方向は、水平方向に対して傾いており、主軸20に近い一端側S1が上側、主軸20から遠い他端側S2が下側である。従って、重力の関係で、切屑等はシャッター装置50のうち一端側S1の面よりも他端側S2の面に堆積しやすい。本実施形態では、シャッター装置50のうち一端側S1の面を、複数のL字形のシャッター片53で構成し、他端側S2の面を一枚板状の第1シャッター部51で構成した。これにより、シャッター装置50の他端側S2の面も複数の板状部材を重ねて構成する場合と比較して、シャッター装置50に対する切屑等の堆積を抑制することができる。また、本実施形態では、複数のシャッター片53を、一端側S1のシャッター片53が前側となり他端側S2のシャッター片53が後側となるように重ねている。これにより、一端側S1のシャッター片53が後側となり他端側S2のシャッター片53が前側となるように複数のシャッター片53を重ねる場合と比較して、シャッター片53の間に切屑等が侵入し難い構成となっている。
ただし、X方向が水平方向を向いていてもよい。
【0058】
本実施形態にかかるシャッター装置50が搭載される工作機械は、旋盤に限定されない。また、工作機械に該当しない産業用機械にシャッター装置50が搭載されてもよい。例えば、開口から突出するロボットアーム(移動体の一種)を想定し、この開口を遮蔽するためにシャッター装置50を適用してもよい。つまり、シャッター装置50は、移動体を外部へ突出させる開口に対するゴミや屑等の侵入防止のために広く適用可能である。
【符号の説明】
【0059】
10…旋盤、20…主軸、30…刃物台、31…タレット、40…筐体、41…面、42…開口、43…カバー、50…シャッター装置、51…第1シャッター部、52…第2シャッター部、53…シャッター片、54…第1片、55…第2片、56…受け部、57…凸部、58…連結部、59…凸部、60…凹部、551…端部、552…長尺部、W…ワーク