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特許7137061地盤改良用杭、地盤改良体の施工方法及び地盤改良用杭のための複数の突起
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-06
(45)【発行日】2022-09-14
(54)【発明の名称】地盤改良用杭、地盤改良体の施工方法及び地盤改良用杭のための複数の突起
(51)【国際特許分類】
   E02D 5/46 20060101AFI20220907BHJP
   E02D 5/48 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
E02D5/46
E02D5/48
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018179476
(22)【出願日】2018-09-25
(65)【公開番号】P2020051063
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】515277300
【氏名又は名称】ジャパンパイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100193286
【弁理士】
【氏名又は名称】圷 正夫
(72)【発明者】
【氏名】小梅 慎平
(72)【発明者】
【氏名】本間 裕介
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-256841(JP,A)
【文献】特開2007-284879(JP,A)
【文献】特開2016-191289(JP,A)
【文献】特開平07-127053(JP,A)
【文献】特開平11-209971(JP,A)
【文献】特開2007-032018(JP,A)
【文献】特開2003-096770(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 5/46
E02D 5/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に固化材を注入して形成される改良体に沈設される筒状の芯材と、
前記芯材の外周に取り付けられる複数の突起であって前記芯材の軸線方向に相互に離間するとともに前記芯材の径方向にそれぞれ突出する複数の突起と、を備え、
前記複数の突起の各々は、前記突起内に連通路を区画する骨格を含み、
前記連通路は、前記芯材の軸線方向にて前記突起の両側を連通し、
前記骨格は、前記芯材の軸線方向及び周方向に延在して前記芯材の径方向にて前記連通路の外側を区画する外壁部を有する
ことを特徴とする地盤改良用杭。
【請求項2】
前記外壁部は、前記芯材の径方向にて前記外壁部を貫通する少なくとも1つの貫通孔を有することを特徴とする請求項1に記載の地盤改良用杭。
【請求項3】
前記骨格は、前記連通路の開口を部分的に覆う端壁を更に含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の地盤改良用杭。
【請求項4】
前記端壁は、前記芯材の径方向にて、前記連通路の前記外壁部側の領域を覆っており、前記連通路は、前記芯材の径方向にて、前記端壁よりも内側に開口を有することを特徴とする請求項3に記載の地盤改良用杭。
【請求項5】
前記芯材はコンクリートによって構成され、
前記突起は前記芯材とは異なる材料によって構成されている
ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の地盤改良用杭。
【請求項6】
前記骨格は、前記芯材に嵌合可能な内壁部を更に有する
ことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の地盤改良用杭。
【請求項7】
前記芯材は小径部及び前記小径部よりも大径の大径部を有し、
前記突起の内壁部は前記小径部に嵌合可能である
ことを特徴とする請求項6に記載の地盤改良用杭。
【請求項8】
前記芯材は外径が徐々に変化する雄テーパ面を有し、
前記突起の内壁部は内径が徐々に変化する雌テーパ面を有し、
前記雄テーパ面は前記雌テーパ面に嵌合可能である
ことを特徴とする請求項6に記載の地盤改良用杭。
【請求項9】
前記雄テーパ面と前記雌テーパ面との間に介挿されるアダプタリングを更に備え、
前記雄テーパ面は前記アダプタリングを介して前記雌テーパ面に嵌合可能である
ことを特徴とする請求項8に記載に地盤改良用杭。
【請求項10】
地盤に固化材を注入して改良体を形成する改良体形成工程と、
請求項8又は9に記載の地盤改良用杭を前記改良体に沈設する杭沈設工程と、を備え、
前記杭沈設工程は、
複数の前記突起を前記改良体上にて同軸に積み重ねる突起準備工程と、
積み重ねられた前記複数の突起に前記芯材を挿入しながら前記芯材を前記改良体に沈設する芯材沈設工程と、
を含むことを特徴とする地盤改良体の施工方法。
【請求項11】
地盤に固化材を注入して形成される改良体に沈設される芯材に前記芯材の軸線方向に相互に離間して取り付けられる複数の突起であり、前記芯材から径方向にそれぞれ突出するように構成された地盤改良用杭のための複数の突起において、
前記突起内に連通路を区画する骨格を含み、
前記連通路は、前記芯材の軸線方向にて前記突起の両側を連通し、
前記骨格は、前記芯材の軸線方向及び周方向に延在して前記芯材の径方向にて前記連通路の外側を区画する外壁部を有する
ことを特徴とする地盤改良用杭のための複数の突起。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は地盤改良用杭、地盤改良体の施工方法及び地盤改良用杭のための複数の突起に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、軟弱な地盤の支持力を増加させ、また沈下を抑制するために地盤改良が行われている。例えば、特許文献1が開示する地盤改良は、軟弱な地盤にソイルセメント複合杭を構築するものである。該ソイルセメント複合杭の構築にあたって、セメントミルク等の固化材を地盤に注入しながら撹拌混合して地盤にソイルセメント柱(改良体)を形成し、更に、ソイルセメント柱に芯材を圧入している。芯材には環状リングが遊嵌され、環状リングは芯材に設けられた環状突出部と係合している。環状リングは芯材よりも大径であり、環状リングによってソイルセメント柱と芯材との付着力が高められている。
【0003】
一方、特許文献2は、環状リングに代えてラセン状の羽根を用いた羽根付既製杭と、羽根付既製杭に連結された大径の円筒既製杭とをソイルセメント柱体に埋設したソイルセメント合成杭を開示している。該ソイルセメント合成杭では、大径の円筒既製杭を設けたことにより水平耐力も向上している。
また特許文献3は、テーパを有する木製杭に貫入補助具を取り付けた木製支持杭を開示している。貫入保持具は嵌合輪体及び螺旋羽根からなり、該木製支持杭によれば、貫入保持具によって木製杭を締め付け拘束することにより木製杭の座屈強度が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-256841号公報
【文献】特開2003-96770号公報
【文献】特開2007-32018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1が開示するように環状リングを用いた場合、ソイルセメントの粘性が高く流動性が低いと、芯材をソイルセメントに圧入した際に環状リングによってソイルセメントが下方に押し込まれてしまうとともに、環状リング周辺のソイルセメントが自立してしまうことがある。このような場合、環状リングの上方にソイルセメントが回り込まず隙間が生じてしまい、芯材とソイルセメントとの密着性が低下し、支持力の低下を招くおそれがある。また、芯材の周囲に隙間が生じると芯材が変形しやすくなり、芯材の水平耐力が低下してしまう。
同様の問題は、特許文献2や特許文献3が開示するようにラセン状の羽根を用いた場合でも起こり得る。すなわち、羽根を回転させたとしても、鉛直方向の圧入速度が速い場合には、ソイルセメントが羽根によって押し込まれてしまい、羽根の周囲に隙間が生じてしまう。
【0006】
一方、特許文献2が開示するように、水平耐力向上のために大径の円筒状既製杭を芯材として用いることは有効であると考えられるが、芯材の連結作業に手間がかかり、また芯材が大きくなってしまうという問題がある。この点、環状リングにある程度の厚さを持たせれば、水平耐力を簡単な構成である程度向上させることができると思われるが、固化材を注入した地盤の粘性が高い場合には、環状リングの上方に隙間がより生じやすくなってしまい、逆効果となってしまう虞がある。
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態の目的は、地盤に固化材を注入して形成された改良体との間に略隙間無く芯材が沈設され、簡単な構成にて芯材の水平耐力の低下を防止可能な地盤改良用杭、地盤改良体の施工方法及び地盤改良用杭のための複数の突起を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る地盤改良用杭は、
地盤に固化材を注入して形成される改良体に沈設される筒状の芯材と、
前記芯材の外周に取り付けられる複数の突起であって前記芯材の軸線方向に相互に離間するとともに前記芯材の径方向にそれぞれ突出する複数の突起と、を備え、
前記突起は、前記突起内に連通路を区画する骨格を含み、
前記連通路は、前記芯材の軸線方向にて前記突起の両側を連通し、
前記骨格は、前記芯材の軸線方向及び周方向に延在して前記芯材の径方向にて前記連通
路の外側を区画する外壁部を有する。
【0008】
上記構成(1)によれば、突起に連通路が設けられているので、地盤に固化材を注入して形成された改良体の粘性が高くても、突起を押し込んだときに連通路を通じて改良体が突起内を通過する。このため、突起の上方に隙間が発生しづらく、芯材と改良体が密着する。この結果として、水平力が加えられたときに芯材の変形が抑制され、芯材の水平耐力の低下が防止される。
【0009】
(2)幾つかの実施形態では、上記構成(1)において、
前記外壁部は、前記芯材の径方向にて前記外壁部を貫通する少なくとも1つの貫通孔を有する。
上記構成(2)によれば、外壁部に貫通孔を設けることで、改良体が貫通孔に充填されて改良体との間でのせん断耐力が大きくなり、改良体内での突起の付着抵抗力を大きくすることができる。
【0010】
(3)幾つかの実施形態では、上記構成(1)又は(2)において、
前記骨格は、前記連通路の開口を部分的に覆う端壁を更に有する。
上記構成(3)によれば、連通路の開口を部分的に覆う端壁を設けたことで、改良体内での突起の支圧抵抗力を高めることができる。
【0011】
(4)幾つかの実施形態では、上記構成(3)において、
前記端壁は、前記芯材の径方向にて、前記連通路の前記外壁部側の領域を覆っており、前記連通路は、前記芯材の径方向にて、前記端壁よりも内側に開口を有する。
上記構成(4)によれば、連通路が、芯材の径方向にて端壁よりも芯材の近くに開口を有することで、連通路の径方向内側での改良体の流れを確保することができる。このため、突起の上方にて芯材の近傍に隙間が発生することを確実に防止することができる。
【0012】
(5)幾つかの実施形態では、上記構成(1)乃至(4)の何れか1つにおいて、
前記芯材はコンクリートによって構成され、
前記突起は前記芯材とは異なる材料によって構成されている。
上記構成(5)によれば、芯材がコンクリート製の場合、芯材と一体に突起を成形するのは困難であるが、突起をコンクリート以外の材料で構成すれば、突起を容易に製造することができる。
【0013】
(6)幾つかの実施形態では、上記構成(1)乃至(5)の何れか1つにおいて、
前記骨格は、前記芯材に嵌合可能な内壁部を更に有する。
上記構成(6)によれば、芯材に嵌合可能な内壁部を骨格が有しており、骨格を突起が有しているので、突起を芯材に容易に取り付けることができる。
【0014】
(7)幾つかの実施形態では、上記構成(6)において、
前記芯材は小径部及び前記小径部よりも大径の大径部を有し、
前記突起の内壁部は前記小径部に嵌合可能である。
上記構成(7)によれば、芯材に小径部を設け、小径部に突起の内壁部を嵌合することで、芯材に対し突起の位置を確実に決めることができるとともに、芯材に作用する鉛直力を突起を通じて改良体に確実に伝達することができる。
【0015】
(8)幾つかの実施形態では、上記構成(6)において、
前記芯材は外径が徐々に変化する雄テーパ面を有し、
前記突起の内壁部は内径が徐々に変化する雌テーパ面を有し、
前記雄テーパ面は前記雌テーパ面に嵌合可能である。
上記構成(8)によれば、芯材の雄テーパ面と突起の雌テーパ面とを嵌合させることで、芯材に対し突起の位置を確実に決めることができるとともに、芯材に作用する鉛直力を突起を通じて改良体に確実に伝達することができる。
【0016】
(9)幾つかの実施形態では、上記構成(8)において、
前記雄テーパ面と前記雌テーパ面との間に介挿されるアダプタリングを更に備え、
前記雄テーパ面は前記アダプタリングを介して前記雌テーパ面に嵌合可能である。
【0017】
上記構成(9)によれば、芯材の雄テーパ面と突起の雌テーパ面とをアダプタリングを介して嵌合させることで、芯材に対し突起の位置を確実に決めることができるとともに、芯材に作用する鉛直力を突起を通じて改良体に確実に伝達することができる。
また、大きさが異なる複数のアダプタリングを用意しておけば、雌テーパ面の内径が同一の複数の突起を、それぞれアダプタリングを介して、芯材の軸線方向に離間して芯材に取り付けることができる。このため、突起の仕様を少なくすることができ、コスト削減を図ることができる。
【0018】
(10)本発明の少なくとも一実施形態に係る地盤改良体の構築方法は、
地盤に固化材を注入して改良体を形成する改良体形成工程と、
上記構成(8)又は(9)に記載の地盤改良用杭を前記改良体に沈設する杭沈設工程と、を備え、
前記杭沈設工程は、
複数の前記突起を前記改良体上にて同軸に積み重ねる突起準備工程と、
積み重ねられた前記複数の突起に前記芯材を挿入しながら前記芯材を前記改良体に沈設する芯材沈設工程と、
を含む。
【0019】
上記構成(10)によれば、複数の突起を同軸に積み重ねておき、突起に芯材を挿通することで、芯材に突起を容易に取り付けることができる。また、複数の突起を積み重ねる位置を正確に決定しておくことで、芯材の位置決めを容易に行うことができる。
【0020】
(11)本発明の少なくとも一実施形態に係る地盤改良用杭のための複数の突起は、
地盤に固化材を注入して形成される改良体に沈設される芯材に前記芯材の軸線方向に相互に離間して取り付けられる複数の突起であり、前記芯材から径方向にそれぞれ突出するように構成された地盤改良用杭のための複数の突起において、
前記突起内に連通路を区画する骨格を含み、
前記連通路は、前記芯材の軸線方向にて前記突起の両側を連通し、
前記骨格は、前記芯材の軸線方向及び周方向に延在して前記芯材の径方向にて前記連通
路の外側を区画する外壁部を有する。
【0021】
上記構成(11)によれば、突起に連通路が設けられているので、地盤に固化材を注入して形成された改良体の粘性が高くても、突起を押し込んだときに連通路を通じて改良体が突起内を通過する。このため、突起の上方に隙間が発生しづらく、芯材と改良体が密着する。この結果として、水平力が加えられたときに芯材の変形が抑制され、芯材の水平耐力の低下が防止される。
【発明の効果】
【0022】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、地盤に固化材を注入して形成された改良体との間に略隙間無く芯材が沈設され、簡単な構成にて芯材の水平耐力の低下を防止可能な地盤改良用杭、地盤改良体の施工方法及び地盤改良用杭のための複数の突起が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態に係る地盤改良用杭を用いた地盤改良体を概略的に示す断面図である。
図2図1中の地盤改良用杭を概略的に示す図であり、図2の左半分は正面図であり、図2の右半分は断面図である。
図3図2中の領域IIIの拡大図である。
図4図2中の地盤改良用杭の突起を概略的に示す平面図である。
図5図4中のV-V線に沿う突起の概略的な断面図である。
図6】突起の概略的な斜視図である。
図7】突起の骨格の概略的な分解斜視図である。
図8】本発明の他の一実施形態に係る地盤改良用杭を概略的に示す図であり、図8の左半分は正面図であり、図8の右半分は断面図である。
図9図8中の領域IXの拡大図である。
図10図8中の地盤改良用杭の突起を概略的に示す平面図である。
図11図10中のXI-XI線に沿う突起の概略的な断面図である。
図12】突起とともに、本発明の他の実施形態に係るアダプタリングを概略的に示す断面図である。
図13図12中のアダプタリングを概略的に示す斜視図である。
図14】本発明の一実施形態に係る地盤改良体の施工方法の概略的な手順を説明するためのフローチャートである。
図15】突起準備工程を説明するための概略的な断面図である。
図16】芯材沈設工程を説明するための概略的な断面図である。
図17】本発明の他の一実施形態に係る突起を概略的に示す斜視図である。
図18】本発明の他の一実施形態に係る突起を概略的に示す平面図である。
図19図18中のIXX-IXX線に沿う突起の概略的な断面図である。
図20図18の突起に適用された底壁を概略的に示す平面図である。
図21】本発明の他の一実施形態に係る突起を概略的に示す断面図である。
図22】本発明の他の一実施形態に係る地盤改良用杭を概略的に示す断面図である。
図23図22中の突起を概略的に示す平面図である。
図24】本発明の他の一実施形態に係る突起を概略的に示す断面図である。
図25】本発明の他の一実施形態に係る地盤改良用杭を概略的に示す図であり、図25の左半分は正面図であり、図25の右半分は断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
【0025】
図1は、本発明の一実施形態に係る地盤改良用杭(以下、杭とも称する)1を用いた地盤改良体3を概略的に示す断面図である。図2は、杭1を概略的に示す図であり、図2の左半分は正面図であり、図2の右半分は断面図である。図3は、図2中の領域IIIの拡大図である。図4は杭1の突起12を概略的に示す平面図である。図5は、図4中のV-V線に沿う突起12の概略的な断面図である。図6は、突起12の概略的な斜視図である。図7は、突起12の骨格16の概略的な分解斜視図である。
【0026】
図1に示したように、地盤改良体3は、地盤5にセメントミルク等の固化材を注入し、撹拌混合して形成される改良体(ソイルセメント)7と、改良体7に沈設された杭1とを備えている。改良体7の面積及び深さは特に限定されることはなく、改良体7に沈設される杭1の数も特に限定されることはない。また、杭1を沈設する際、杭1を回転させながら圧入しても、回転させずに圧入してもよい。
【0027】
ただし、地盤改良体3は、改良体7の底面積に応じて生じる鉛直支持力と改良体7の側面の摩擦力によって上部構造を主に支持するので、一般的に、改良体7の底面積は、杭1の面積に比べて十分に大きい。また、地盤改良体3に要求される支持力は比較的小さいので、地盤改良体3が支持地盤に必ず達している必要はなく、一般的に、改良体7の深さはプレボーリング工法等のセメントミルク工法で形成される杭基礎よりも浅い。
【0028】
更に、一般的に、改良体7の造成時に掘削土は殆ど排出されず、掘削された土砂が固化材と撹拌混合されてソイルセメントを構成する。このため、改良体7は、セメントミルク工法で形成される杭基礎の杭周部を構成するソイルセメントよりも、土砂を多く含んでいる。このため、地盤5の土質によっては、改良体7の粘性は高くなりやすい。つまり、改良体7は、一般的に、セメントミルク工法で形成される杭周部のソイルセメントとは性状が大きく異なっている。
【0029】
図2及び図3に示したように、杭1は、芯材10と、芯材10に取り付けられた突起12とを備えている。
芯材10は、例えば、円筒形状や角筒形状等の筒状をなし、中空であっても中実であってもよい。角筒形状の場合、その平面視形状は四角形状であってもそれ以外の多角形状であってもよい。芯材10は、例えば、鋼管やコンクリートによって構成される。芯材10がコンクリートによって構成される場合、芯材10は更に補強用の鉄筋を含んでいてもよい。
【0030】
突起12は、芯材10の外周に取り付けられ、芯材10の径方向に突出している。突起12は、図4図7に示したように、突起12内に連通路14を区画する骨格16を含んでいる。連通路14は、芯材10の軸線方向にて突起12の両側、つまり上側と下側を連通している。
そして、骨格16は、芯材10の軸線方向及び周方向に延在して芯材10の径方向にて連通路14の外側を区画する外壁部18を有する。
【0031】
上記構成によれば、突起12に連通路14が設けられているので、地盤5に固化材を注入して形成された改良体7の粘性が高くても、突起12を押し込んだときに連通路14を通じて改良体7が突起12内を通過する。このため、突起12の上方に隙間が発生しづらく、芯材10と改良体7が密着する。この結果として、水平力が加えられたときに芯材10の変形が抑制され、芯材10の水平耐力の低下が防止される。
一方、突起12の骨格16は外壁部18を有している。外壁部18は、芯材10の軸線方向及び周方向に延在して芯材10の径方向にて連通路14の外側を区画しており、外壁部18により杭1と改良体7との密着性を上げることができるとともに水平力を受けることができる。このため、芯材10及び突起12を改良体7に埋設することで、杭1を構成する芯材10の水平耐力を簡単な構成にて向上させることができる。
【0032】
幾つかの実施形態では、芯材10の軸線方向での外壁部18の長さ(高さ)Lは、50mm以上300mm以下である。外壁部18の長さLが50mm以上であることにより、突起12は水平力を確実に受けることができる。一方、外壁部18の長さが50mm以上であっても、突起12の内部に連通路14が区画されているので、改良体7が突起12内を通過することができる。
【0033】
幾つかの実施形態では、芯材10はコンクリートによって構成され、突起12は芯材10とは異なる材料、例えば金属によって構成されている。
上記構成によれば、芯材10がコンクリート製の場合、芯材10と一体に突起12を成形するのは困難であるが、突起12をコンクリート以外の材料で構成すれば、突起12を容易に製造することができる。
なお、突起12は現場で芯材10に取付けても良く、あるいは工場で芯材10に突起12を取付けたものを現場に運搬しても良い
【0034】
幾つかの実施形態では、図3図6に示したように、突起12の骨格16は、芯材10に嵌合可能な内壁部20を更に含む。
上記構成によれば、芯材10に嵌合可能な内壁部20を突起12が有しているので、突起12を芯材10に容易に取り付けることができる。
【0035】
幾つかの実施形態では、図3に示したように、芯材10は小径部10a及び小径部10aよりも大径の大径部10bを有し、突起12の内壁部20は小径部10aに嵌合可能である。
上記構成によれば、芯材10に小径部10aを設け、小径部10aに突起12の内壁部20を嵌合することで、芯材10に対し突起12の位置を確実に決めることができるとともに、芯材10に作用する鉛直力を突起12を通じて改良体7に確実に伝達することができる。
【0036】
幾つかの実施形態では、図4図6に示したように、突起12の骨格16は、筒状の外壁部18と、外壁部18よりも小径の筒状の内壁部20と、外壁部18と内壁部20とを連結する複数の板状のリム部22とを有する。外壁部18及び内壁部20は間隔を開けて同心上に配置され、複数のリム部22は外壁部18と内壁部20との間に放射状に配置されている。従って、突起12内には、複数の連通路14が区画さている。各連通路14は、突起12の上面及び下面にて開口し、平面視にて扇形状を有する。
例えば、外壁部18、内壁部20及びリム部22は金属製の板によって構成され、相互に溶接されている。なお、外壁部18及び内壁部20の形状は、円筒形状であっても角筒形状であってもよい。また、リム部22は、外壁部18及び内壁部20の径方向に沿って配置されているが、径方向に対し傾斜して配置されていてもよい。更に、リム部22は、外壁部18及び内壁部20の軸線方向に沿って配置されているが、軸線方向に対し傾斜して配置されていてもよい。
【0037】
幾つかの実施形態では、図7に示したように、突起12の骨格16は半割体16a,16bによって構成され、半割体16a,16bはボルト24、リベット又は溶接等の締結手段により相互に連結可能である。
【0038】
以下、本発明の他の実施形態について説明するが、上述した実施形態と同一又は類似の構成については、同一の名称又は符号を付して説明を省略又は簡略化する。
図8は、本発明の他の一実施形態に係る地盤改良用杭28を概略的に示す図であり、図8の左半分は正面図であり、図8の右半分は断面図である。図9は、図8中の領域IXの拡大図である。図10は杭28の突起32を概略的に示す平面図である。図11は、図10中のXI-XI線に沿う突起32の概略的な断面図である。
【0039】
杭28の芯材30はテーパ形状を有する。芯材30に取り付けられる突起32は、連通路34を区画する骨格36を有し、骨格36は、外壁部38、内壁部40及びリム部41を有している。
芯材30は外径が徐々に変化する雄テーパ面30aを有し、突起32の内壁部40は内径が徐々に変化する雌テーパ面40aを有し、雄テーパ面30aは雌テーパ面40aに嵌合可能である。なお、雄テーパ面30aの外径は上方に近づくに連れて大きくなり、雌テーパ面40aの内径は下方に近づくに連れて小さくなる。突起32は、雄テーパ面30aの外径と雌テーパ面40aの内径とが一致する位置にて、芯材30に嵌合・固定される。
【0040】
上記構成によれば、芯材30の雄テーパ面30aと突起32の雌テーパ面40aとを嵌合させることで、芯材30に対し突起32の位置を確実に決めることができるとともに、芯材30に作用する鉛直力を突起32を通じて改良体7に確実に伝達することができる。
【0041】
幾つかの実施形態では、突起32は、現場で組み立てる必要が無い一つの物品として構成される。すなわち、突起32は、突起32の内壁部40に芯材30を挿入することにより芯材30に固定可能であるため、突起32を2つの半割体によって構成する必要は無い。ただし、突起32を相互に連結可能な2つの半割体によって構成してもよいのは勿論である。
なお、図8に示すように、複数の突起32を芯材30の軸線方向に離間して芯材30に取り付ける場合、複数の突起32の雌テーパ面34aは、相互に異なる内径を有する。
【0042】
図12は、突起32とともに、本発明の他の実施形態に係るアダプタリング42を概略的に示す断面図である。図13は、アダプタリング42を概略的に示す斜視図である。
幾つかの実施形態では、図12及び図13に示したように、杭28は、雄テーパ面30aと雌テーパ面40aとの間に介挿されるアダプタリング42を更に備えている。芯材30の雄テーパ面30aはアダプタリング42を介して突起32の雌テーパ面40aに嵌合可能である。つまり、アダプタリング42は、芯材30の雄テーパ面30aと嵌合可能な雌テーパ面42aと、突起32の雌テーパ面40aと嵌合可能な雄テーパ面42bとを有する。
【0043】
上記構成によれば、芯材30の雄テーパ面30aと突起32の雌テーパ面40aとをアダプタリング42を介して嵌合させることで、芯材30に対し突起32の位置を確実に決めることができるとともに、芯材30に作用する鉛直力を突起32を通じて改良体7に確実に伝達することができる。
また、大きさが異なる複数のアダプタリング42、すなわち雄テーパ面42bの外径が同一で雌テーパ面42aの内径が異なる複数のアダプタリング42を用意しておけば、雌テーパ面40aの内径が同一の複数の突起32を、それぞれアダプタリング42を介して、芯材30の軸線方向に離間して芯材30に取り付けることができる。このため、突起32の共通化を図って仕様を少なくすることができ、コスト削減を図ることができる。
【0044】
図14は、本発明の一実施形態に係る地盤改良体の施工方法の概略的な手順を説明するためのフローチャートである。図15は、突起準備工程S20を説明するための概略的な断面図である。図16は、芯材沈設工程S22を説明するための概略的な断面図である。
図14に示したように、本発明の一実施形態に係る地盤改良体の施工方法は、地盤5に固化材を注入して改良体7を形成する改良体形成工程S1と、杭28を改良体7に沈設する杭沈設工程S2とを備えている。そして、杭沈設工程S2は、突起準備工程S20と、芯材沈設工程S22と、を含んでいる。
【0045】
図15に示したように、突起準備工程S20では、複数の突起32を改良体7上にて鉛直軸上に同軸に積み重ねる。積み重ねられる複数の突起32間では、雌テーパ面40aの内径が異なっているが、同一である場合には、雌テーパ面42aの内径が異なる複数のアダプタリング42を突起32に嵌めておけばよい。突起32を積み重ねる順序としては、雌テーパ面40a,42aの内径が小さいものほど下方に位置するようする。この際、図15に示したように、積み重ねられた複数の突起32を上下方向移動可能に保持する保持具46を用いてもよい。保持具46は、例えば、複数の突起32を囲む筒部46aと、筒部46aを支える脚部46bとを有する。
【0046】
図16に示したように、芯材沈設工程S22では、積み重ねられた複数の突起32に芯材30を挿入しながら芯材30を改良体7に沈設する。この際、芯材30の沈下に伴い、複数の突起32は芯材30に順次嵌合し、鉛直方向に間隔を開けて配置される。
【0047】
上記構成によれば、複数の突起32を同軸に積み重ねておき、突起32に芯材30を挿通することで、芯材30に突起32を容易に取り付けることができる。また、複数の突起32を積み重ねる位置を正確に決定しておくことで、芯材30の位置決めを容易に行うことができる。
【0048】
図17は、本発明の他の一実施形態に係る突起50を概略的に示す斜視図である。図17に示したように、突起50は、外壁部18に1つ以上の貫通孔52を有している点において、突起12と異なっている。貫通孔52は、芯材10の径方向にて外壁部18を貫通している。
上記構成によれば、外壁部18に貫通孔52を設けることで、改良体7が貫通孔52に充填されて改良体7との間でのせん断耐力が大きくなり、突起50の付着抵抗力を大きくすることができる。
なお、図示しないが、リム部22にも1つ以上の貫通孔を形成してもよい。この場合も、改良体7との間でのせん断耐力が大きくなり、改良体7内での突起50の付着抵抗力を大きくすることができる。
【0049】
図18は、本発明の他の一実施形態に係る突起60を概略的に示す斜視図である。図19は、図18中のIXX-IXX線に沿う突起60の概略的な断面図である。図20は、突起60に適用された底壁62を概略的に示す平面図である。
図18図20に示したように、突起60は、突起60の骨格16が底壁(端壁)62を更に有している点において、突起12と異なっている。底壁62は、リム部22の下側に取り付けられ、円環形状を有している。底壁62は、芯材10の径方向及び周方向に延在し、連通路14の開口を部分的に覆っている。具体的には、底壁62は、連通路14の径方向外側を覆っている。
【0050】
上記構成によれば、連通路14の開口を部分的に覆う底壁62を設けたことで、支圧抵抗力を高めることができる。一方、底壁62を設けながらも、連通路14が、芯材10の径方向にて、外壁部18よりも芯材10の近くに開口を有することで、連通路14の径方向内側での改良体7の流れを確保することができる。このため、突起60の上方にて芯材10の近傍に隙間が発生することを確実に防止することができる。
なお、図20に示したように、底壁62も半割体62a、62bによって構成されていてもよい。また、底壁62にも1つ以上の貫通孔が設けられていてもよい。更に、底壁62に代えて、突起60の上側に底壁62と同じ形状の天井壁(端壁)を設けてもよい。
【0051】
図21は、本発明の他の一実施形態に係る突起70を概略的に示す断面図である。突起70は、底壁62が、芯材10の径方向にて連通路14の開口の中間部分を閉塞している点において、突起60と異なっている。従って、突起70の下側では、連通路14の径方向内側及び径方向外側が開口している。
上記構成によれば、突起70の下側にて連通路14の開口の径方向中間を閉塞する底壁62を設けたことで、換言すれば、連通路14が、芯材10の径方向にて、外壁部18よりも芯材10の近くに開口を有するとともに外壁部18の近くにも開口を有することで、連通路14の径方向内側及び径方向外側での改良体7の流れを確保しながら、支圧抵抗力を高めることができる。
なお、底壁62は、芯材10の周方向にて全域に渡って設けられているが、芯材10の周方向にて部分的に設けられていてもよい。
また、底壁62は複数の孔を有するメッシュ状であってもよい。この場合、底壁62は、連通路14の開口全域を覆っていてもよい。
【0052】
図22は、本発明の他の一実施形態に係る地盤改良用杭72を概略的に示す断面図である。図23は、杭72の突起74を概略的に示す平面図である。
突起74は、骨格16が半割体16aのみによって構成され、半割体16aがブラケット76によって芯材10に取り付けられている点において、突起12と異なっている。複数の突起74は、図22に例示するように、芯材10の軸線方向にて隣り合う突起74の半割体16aを芯材10の周方向にて180度ずらすように、芯材10に取り付けられている。突起74では、外壁部18は半円筒状である。
上記構成によれば、骨格16を半割体16aのみによって構成することで、突起74の付着抵抗力を適宜調整することができる。
なお、外壁部18は円筒形状や半円筒形状に限定されず、4半円筒状等であってもよい。
【0053】
図24は、本発明の他の一実施形態に係る突起78を概略的に示す断面図である。突起78は、外壁部38の外周面が雄テーパ面80によって構成されている点において、突起32と異なっている。
上記構成によれば、外壁部30の外周面を雄テーパ面80によって構成したことで、外壁部30の外周面の鉛直方向での投影面積を大きくすることができ、改良体7内における突起78の付着抵抗力を大きくすることができる。
【0054】
図25は、本発明の他の一実施形態に係る地盤改良用杭82を概略的に示す図であり、図25の左半分は正面図であり、図25の右半分は断面図である。
図25に示したように、地盤改良用杭82は、複数の突起78が芯材30に取り付けられている点において、地盤改良用杭28と異なっている。更に、地盤改良用杭82は、複数の突起78の雄テーパ面80が、2点鎖線84にて示す1つのテーパ面上に位置するように構成されている点においても、地盤改良用杭28と異なっている。つまり、上側の突起78の外径の方が下側の突起78の外径よりも大きくなっている。
上記構成によれば、上側の突起78の外径が大きくなっており、改良体3内での突起78の付着抵抗力を大きくすることができる。
【0055】
最後に、本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態やこれらを組み合わせた形態も含む。
【符号の説明】
【0056】
1,28,72,82 地盤改良体用杭
3 地盤改良体
5 地盤
7 改良体(ソイルセメント)
10 芯材
10a 小径部
10b 大径部
12,32,50,60,70,74,78 突起
14,34 連通路
16,36 骨格
16a,16b 半割体
18,38 外壁部
20,40 内壁部
22,41 リム部
24 ボルト
30 芯材
30a 雄テーパ面
40a 雌テーパ面
42 アダプタリング
42a 雌テーパ面
42b 雄テーパ面
46 保持具
46a 筒部
46b 脚部
52 貫通孔
62 底壁(端壁)
62a,62b 半割体
76 ブラケット
80 雄テーパ面
S1 改良体形成工程
S2 杭沈設工程
S20 突起準備工程
S22 芯材沈設工程
図1
図2
図3
図4
図5
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