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  • 特許-穀物乾燥機における穀物貯留タンク 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-06
(45)【発行日】2022-09-14
(54)【発明の名称】穀物乾燥機における穀物貯留タンク
(51)【国際特許分類】
   F26B 17/14 20060101AFI20220907BHJP
   F26B 25/12 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
F26B17/14 P
F26B25/12 A
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018214458
(22)【出願日】2018-11-15
(65)【公開番号】P2020085256
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000001812
【氏名又は名称】株式会社サタケ
(72)【発明者】
【氏名】松島 秀昭
(72)【発明者】
【氏名】奥村 浩次
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-138072(JP,A)
【文献】実開平02-052090(JP,U)
【文献】特開2009-294784(JP,A)
【文献】特開平08-088480(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F26B 17/14
F26B 25/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀物乾燥室を挟んで熱風室と排風室を備えた穀物乾燥部の上部に、複数のタンクプレートを組み合わせて箱形形状となした穀物貯留タンクを載置し、前記穀物貯留タンクの内壁面に複数の摩耗防止板を添着してなる穀物乾燥機において、
前記穀物貯留タンクの内壁面の複数の所定箇所に、前記摩耗防止板を係止する複数の係止片をそれぞれ設ける一方、前記各摩耗防止板の上辺部には前記複数の係止片と係合する複数の係止孔をそれぞれ設け、前記係止片は、段部を前記穀物貯留タンク内部に臨ませた段付ボルトとなす一方、前記摩耗防止板は、穀物の循環流動によって前記段付ボルトの頭部の摩耗を抑止するよう、前記摩耗防止板の上辺部を当該摩耗防止板の直上の摩耗防止板の下辺部で覆うように複数の摩耗防止板の各上下辺部を互いに一部重合させて上下方向に順次連設したことを特徴とする穀物乾燥機における穀物貯留タンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は穀物乾燥機に係り、特に、穀物乾燥機における穀物貯留タンクに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、穀物乾燥機において、穀物乾燥部の上部に載置して設けられる穀物貯留タンクは、該穀物貯留タンクの容量に応じて複数のタンクプレートを組み合わせて箱形に形成される。前記タンクプレートを組み合わせる際、タンクプレートの周囲の縁部を複数回折曲してフランジを形成し、上方のタンクプレート106の下縁フランジ108と、下方のタンクプレート105の上縁フランジ107とを嵌合させることにより、楔やボルト・ナット等を用いずに上下互いのプレート105,106を強固に組付けることが特許文献1で開示されている(図7参照)。
【0003】
ところで、特許文献1のタンクプレートにおいては、鋼板の端縁を複数回曲げ加工して上方タンクプレート106の下縁側のフランジ108を形成する際、加工上、板厚2枚分程度の幅でタンク内方側へ突出して形成されることがあるため(符号109参照)、穀物乾燥機を長時間稼働する間に、該穀物貯留タンク内を流下する籾米等の粗雑な表面(外穎及び内穎)によって前記突出部109が摩耗して穴開きが生ずるという問題が生じた。このことは、穀物中に砂や異物の混入が多い海外の長粒種の籾米乾燥において特に顕著であり、そのため、穀物貯留タンクの内壁面の一部又は全面に複数の摩耗防止板をボルト・ナットにより貼着して補強することが行われていた。
しかしながら、前記摩耗防止板が更に摩耗し、穀物乾燥機の設置現場で新たな摩耗防止板と交換する際、新旧の摩耗防止板の4隅等のボルト・ナットを螺脱・螺入する作業は、該穀物貯留タンクの内外にそれぞれ作業者が必要であり、しかも、危険な高所作業を伴うものであった。
なお、特許文献1で示されるような、上下のタンクプレートの上下縁部にそれぞれ形成されるフランジを互いに組み合わせる方法以外の、従来のボルト・ナットによる組付方法であっても、組付不良等によって下側のタンクプレート上端縁部がタンク内部側に僅かにずれて穀粒の流下を妨げる突出部が形成されることがあり、この場合も、前記突出部が摩耗して孔があくことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-161137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記問題点にかんがみ、穀物乾燥機における穀物貯留タンク内壁面に貼着される摩耗防止板の取付・交換を容易に行うことができる穀物乾燥機における穀物貯留タンクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、
穀物乾燥室を挟んで熱風室と排風室を備えた穀物乾燥部の上部に、複数のタンクプレートを組み合わせて箱形形状となした穀物貯留タンクを載置し、前記穀物貯留タンクの内壁面に複数の摩耗防止板を添着してなる穀物乾燥機において、
前記穀物貯留タンクの内壁面の複数の所定箇所に、前記摩耗防止板を係止する複数の係止片をそれぞれ設ける一方、前記各摩耗防止板の上辺部には前記複数の係止片と係合する複数の係止孔をそれぞれ設け、前記係止片は、段部を前記穀物貯留タンク内部に臨ませた段付ボルトとなす一方、前記摩耗防止板は、穀物の循環流動によって前記段付ボルトの頭部の摩耗を抑止するよう、前記摩耗防止板の上辺部を当該摩耗防止板の直上の摩耗防止板の下辺部で覆うように複数の摩耗防止板の各上下辺部を互いに一部重合させて上下方向に順次連設したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の穀物乾燥機における穀物貯留タンクによれば、該穀物貯留タンクの内壁面に設けた係止片に、摩耗防止板の上辺部に設けた係止孔を係合するだけで該摩耗防止板を該穀物貯留タンクの内壁面に添着することができるので、従来のボルト・ナットによる場合に比して、作業者一人であっても、短時間に、かつ、安全に前記摩耗防止板の交換作業等を行うことが可能となる。
【0010】
また、前記摩耗防止板は、該摩耗防止板の上辺部を当該摩耗防止板の直上の摩耗防止板の下辺部で覆うように複数の摩耗防止板を上下方向に連設することにより、摩耗防止板の上辺部のみの係合であっても、該摩耗防止板を穀物タンク内壁面に密着させることができるとともに穀粒の流下作用を妨げることなく、また、下側の摩耗防止板を係合させる段付ボルト等の係止片が上側の摩耗防止板の下辺部によって覆われるため、前記段付ボルト等の頭部が摩耗することがない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態による穀物乾燥機の正面図である。
図2】前記穀物乾燥機の穀物貯留タンクの斜視図と、該穀物貯留タンクを構成する2種類のタンクプレートを表す拡大斜視図である。
図3】摩耗防止板の正面図である。
図4】前記タンクプレートに設けた係止片を示す側面図である。
図5】前記タンクプレートに係止片を固着するための貫通孔を表す斜視図である。
図6】前記タンクプレートの係止片に係合させた摩耗防止板を示す斜視図である。
図7】特許文献1における突出部109を示す拡大側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
本発明の実施の形態による穀物乾燥機1は、穀物乾燥部5に載置して穀物貯留タンク6を設ける。前記穀物乾燥部5は、前面側に熱風発生装置(バーナー)を設ける一方、背面側に排風機(吸引ファン)を設け(いずれも図示せず)、これら熱風発生装置と排風機との間に熱風室2及び排風室3を設けるとともに、前記熱風室2及び排風室3で挟まれる空間を穀物乾燥室4となし、前記熱風発生装置で生成された熱風と外気との混合空気が前記熱風室2に流入し、前記穀物貯留タンク6から前記穀物乾燥室4内を流下する穀物層(籾米等)を通過して前記排風室3内に流入した後、前記排風機から機外へ排風される。前記穀物乾燥室4の下端から排出される穀物は、該穀物乾燥機1の前面側に立設される揚穀機(バケットエレベータ)7によって搬送されて前記穀物貯留タンク6内に還流され、所定の貯留時間経過後に、再度、前記穀物乾燥室4内を流下して乾燥作用を受け、以下、穀物が所定の水分値に乾燥するまで、前記同様に循環乾燥が行われる。
【0013】
次に、図2に基づいて前記穀物貯留タンク6について詳細に説明する。
前記穀物貯留タンク6は、前後の側面を構成する複数枚の第1タンクプレート6aと左右の側面を構成する複数枚の第2タンクプレート6b、及び複数の蓋プレート(図示せず)からなる。前記第1タンクプレート6a及び第2タンクプレート6b共に、上縁部を折曲して上辺フランジ7を、下縁部を折曲して下辺フランジ8を、右縁部を折曲して右辺フランジ9,11を、左縁部を折曲して左辺フランジ10,12を、それぞれ形成する。そして、互いに隣り合う前記タンクプレート6a,6bの4辺の前記各フランジ7~12どうしを嵌合することによって直角に接合し、箱形の穀物貯留タンク6となす。
また、前後・左右方向において互いに向かい合う前記第1タンクプレート6aどうし、及び前記第2タンクプレート6bどうしを連結する補強用のステー6cが縦横に横架される。
【0014】
図3は摩耗防止板16である。本実施形態における摩耗防止板16は、前記第1タンクプレート6a及び第2タンクプレート6bと同じ材質・厚さの鋼板からなり、その縦方向の寸法は前記第1タンクプレート6a及び第2タンクプレート6bの高さ方向の寸法よりもやや長く、該摩耗防止板16を穀物貯留タンク6の内壁面に取り付けた際、直下に取り付けられた他の摩耗防止板16の上辺部を覆う長さとする。該摩耗防止板16の横方向の寸法は適宜決定され得るが、該摩耗防止板16を穀物貯留タンク6内壁面に取付たり交換したりする際、穀物貯留タンク6内に格子状に横架したステー6cによって作業性が低下されないよう、前記ステー6cが水平方向に横架される間隔以下の寸法が望ましい。
【0015】
該摩耗防止板16の上辺部には、複数の係止孔17を設ける。本実施形態では3つの係止孔17となすとともに、該係止孔17はだるま穴とし、後述する係止片としての段付ボルト14の頭部14aが挿通可能な径大部と、該径大部の上部に、前記段付ボルト14の螺軸14cが挿通可能な径小部を形成する。
【0016】
図5は、前記穀物貯留タンク6の第1及び第2タンクプレート6a,6bの各内壁面を示し、前記各タンクプレート6a,6bには、係止片としての段付ボルト14を挿通するための貫通孔(バカ孔)13が所定位置に設けられる。すなわち、前記各タンクプレート6a,6bの上縁付近には前記摩耗防止板16に設けた3つの係止孔17と同間隔の貫通孔13を1セットとして、所定間隔ごとに、一列に、かつ、連続状に前記貫通孔13の複数セットが設けられる。前記1セットの貫通孔13と隣り合う1セットの貫通孔13との間隔は、前記各セット貫通孔13に係止片を設け、該係止片に前記摩耗防止板16の係止孔17を係合したとき、前記摩耗防止板16の左右両端部が互いに重ならないように横方向に連続状に添着されるような間隔とする。
【0017】
図4に示すように、前記各貫通孔13には、前記各タンクプレート6a,6bの内面側に頭部14aが臨むように段付ボルト14を挿通し、前記各タンクプレート6a,6bの外面側に突出した螺軸14cにナット15を螺入して螺着する。このとき、前記貫通孔13よりも径大な段部14bの存在により、前記タンクプレート6a,6bの内壁面と前記頭部14aとの間に前記段部14aと同一幅で間隙18が形成される。前記間隙18を利用して前記摩耗防止板16の係止孔17を係合させるので、前記間隙18の大きさ、すなわち、前記段部14bの幅寸法は、前記摩耗防止板16の厚さよりもやや大きい程度でよい。
【0018】
次に、図6に基づいて、前記摩耗防止板16を前記穀物貯留タンク6内壁面に添着する場合について説明する。
図6は、図5と同様に、前記穀物貯留タンク6の第1及び第2タンクプレート6a,bの各内壁面を示し、図5において前記各タンクプレート6a,6bに設けた各貫通孔13には段付ボルト14を挿通し、それぞれナット15によって螺着することによって係止片が形成されている。
前記係止片となる段付ボルト14は、前記貫通孔13と同一位置に、3つで1セットとして設けられるので、前記各セットの段付ボルト14に前記摩耗防止板16の3つの係止孔17を挿通させるとともに、前記だるま穴状の係止孔17の径小部と前記段付ボルト14の段部14bとを係合させることによって前記摩耗防止板16を第1及び第2タンクプレート6a,bの各内壁面に添着させる。
【0019】
前記摩耗防止板16の添着作業は、第1及び第2タンクプレート6a,bの下方側から行い、例えば直下の摩耗防止板16を添着する段付ボルト14の頭部14bが、例えばその直上の摩耗防止板16aの下辺部によって覆われるよう、上下の摩耗防止板16の各一部が互いに重合するよう順次、連続状に設けられる。こうして、摩耗防止板16を縦方向に1列ずつ添着し、穀物貯留タンク6の内壁全体に添着する。
一方、前記摩耗防止板16を交換する際は、作業者が、前記段付ボルト14と摩耗防止板16の係止孔17との係合状態を解除しながら、前記摩耗防止板16を上段から順に取り外した後、前記段付ボルト14の頭部14aに新たな摩耗防止板16の係止孔17を、下段側から順に挿通させることにより行う。
【0020】
前記したように、直下の摩耗防止板16bを添着する段付ボルト14の頭部14bが、直上の摩耗防止板16aの下辺部によって覆われるので、穀物の循環流動によって前記頭部14bが摩耗することがほとんどないので、前記摩耗防止板16の交換に際しても前記段付ボルト14はそのまま使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明は、特に、使用頻度の高い穀物乾燥施設の穀物乾燥機等において、穀物貯留タンクを安全かつ容易にメンテナンスできて有用である。
【符号の説明】
【0022】
1 穀物乾燥機
2 熱風室
3 排風室
4 穀物乾燥室
5 穀物乾燥部
6 穀物貯留タンク
7 揚穀機
8 下辺フランジ
9 右辺フランジ
10 左辺フランジ
11 右辺フランジ
12 左辺フランジ
13 貫通孔
14 段付ボルト
15 ナット
16 摩耗防止板
17 係止孔
18 間隙
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7