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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-06
(45)【発行日】2022-09-14
(54)【発明の名称】配向ポリエステルフィルム
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/00 20060101AFI20220907BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20220907BHJP
   C08L 23/26 20060101ALI20220907BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
C08L67/00
B32B27/36
C08L23/26
C08J5/18 CFD
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019031352
(22)【出願日】2019-02-25
(65)【公開番号】P2020132807
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-08-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊與 直希
(72)【発明者】
【氏名】矢野 真司
【審査官】中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-199017(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L1/00-101/14
C08K3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
性ポリオレフィンワックスと酸化防止剤とを含有する単一層の配向ポリエステルフィルムであって、
当該層に含まれる変性ポリオレフィンワックスの含有量が、組成物の重量を基準として、0.1重量%以上3.0重量%未満であって、
変性ポリオレフィンワックスは、酸価が1mgKOH/g以上50mgKOH/g未満であり、3重量%減量開始温度が300℃以上でかつ、その重量平均分子量が3,500~65,000の範囲にあり、
酸化防止剤の含有量が、組成物の重量を基準として、0.02重量%以上0.35重量%未満である配向ポリエステルフィルム。
【請求項2】
変性ポリオレフィンワックスと酸化防止剤とを含有する配向ポリエステルフィルムを表面層として少なくとも一方の面に備える、多層の配向ポリエステルフィルムであって、
前記表面層に含まれる変性ポリオレフィンワックスの含有量が、組成物の重量を基準として、0.1重量%以上3.0重量%未満であって、
変性ポリオレフィンワックスは、酸価が1mgKOH/g以上50mgKOH/g未満であり、3重量%減量開始温度が300℃以上でかつ、その重量平均分子量が3,500~65,000の範囲にあり、
前記表面層に含まれる酸化防止剤の含有量が、組成物の重量を基準として、0.02重量%以上0.35重量%未満である、配向ポリエステルフィルム。
【請求項3】
変性ポリオレフィンワックスが、酸変性ポリプロピレンワックス、酸変性ポリエチレンワックス、酸化ポリプロピレンワックス、酸化ポリエチレンワックスの群より選ばれる少なくとも一つを含む請求項1又は2に記載の配向ポリエステルフィルム。
【請求項4】
変性ポリオレフィンワックスが、フィルム中に層状に分散している請求項1~3のいずれか1項に記載の配向ポリエステルフィルム。
【請求項5】
請求項1~のいずれかに記載の配向ポリエステルフィルムと、その少なくとも片面に設けられた印刷層、ハードコート層、接着層および離形層からなる群より選ばれる少なくとも1種の機能層とを有する加飾積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装代替フィルムなどのベースフィルムに好適に用いることができる低摩擦係数とハードコート層、印刷層などの機能層との密着性に優れる配向ポリエステルフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の外装部品等(例えば、フェンダ、バンパ、ボンネット、ホイールキャップ等の樹脂成形品)の意匠性を向上させるために、スプレー塗装を用いることが一般的に行われていた。しかし、近年、このようなスプレー塗装を含む塗装工程においては、塗装と乾燥を繰り返して行うために大きな設備とスペースを要し、生産性が低下するため、塗装工程を合理化すること等を目的として、前記外装部品に加飾フィルム(以下、塗装代替フィルムという)を貼合して、製品の外観を向上させる方法が検討されている。
【0003】
この種の従来技術による塗装代替フィルム1は、例えば、特許文献1の図1に示すように、透明なフィルム(クリア層)11、着色層12および接着層13を順次積層して構成されている。
【0004】
ここで、クリア層11は、例えばポリウレタン、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、シリコン系樹脂、PVDF(ポリフッ化ビニルデン)又はこれらの混合物による透明性の高い樹脂材料を用いて形成され、着色層12の保護、艶出し等の機能を有する。
【0005】
また、特許文献2の図2に示すように、着色層は、前記クリア層11とほぼ同様の樹脂材料中にメタリック顔料を配合して形成され、これにより着色層は、スプレー塗装に近いメタリック色の外観を与えている。さらに、接着層5は、塗装代替フィルム1を自動車の外装部品等の表面に接着するものである。
【0006】
そして、この塗装代替フィルム1を前記外装部品等に接着するときには、予め塗装代替フィルム1を赤外線ランプ照射等により加温した後、この塗装代替フィルム1をインモールド成形、真空成形等により外装部品の表面形状に合わせて成形し、接着層5によって外装部品の表面に貼合する。ここで、塗装代替フィルム1を貼合する際に、金型や外装部品の輪郭に合わせて延伸され、外装部品に貼合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開昭63-123469号公報
【文献】特開平9-183136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように塗装代替フィルムなど、フィルムには過酷な成形を行うことから、摩擦係数などを低く抑えることが求められている。一方、ハードコート層や印刷層など種々の機能層と密着することが求められている。この低摩擦係数を発現する方法としては、潤滑剤と呼ばれるワックスを含有させる方法が良く知られている。しかしながら、ワックスを含有させるとハードコート層や印刷層など種々の機能層との密着性が損なわれ、この低摩擦係数と密着性とは2律背反の関係にあった。さらには、ポリエステルにワックス成分を添加する場合、ポリエステルフィルムを製造する際の加工温度が高いため、ワックスの劣化に伴う外観不良が発生することも問題となっていた。
【0009】
そのため、本発明の課題は、ポリエステルフィルムにする際の樹脂劣化や欠陥の発生による外観不良を起こすことなく、種々の部材に対して優れた密着力を発現でき、しかも、車両の外装部品などに成形するための成形性を発現できる低摩擦係数とを具備した配向ポリエステルフィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題を達成するために、ワックスの選定を研究した結果、特定のワックスを添加することで、ポリエステルフィルムにする際の樹脂劣化や欠陥の発生による外観不良を起こすことなく、低摩擦係数と密着性とを両立できることを見出した。
【0011】
かくして本発明によれば、下記1~4の配向ポリエステルフィルム、およびそれを用いた加飾フィルムが提供される。
1.少なくとも一方の表面層に変性ポリオレフィンワックスと酸化防止剤とを含有する配向ポリエステルフィルムであって、当該層に含まれる変性ポリオレフィンワックスの含有量が、組成物の重量を基準として、0.1重量%以上3.0重量%未満であって、変性ポリオレフィンワックスは、酸価が1mgKOH/g以上50mgKOH/g未満であり、3重量%減量開始温度が300℃以上でかつ、その重量平均分子量が3,500~65,000の範囲にあり、該酸化防止剤の含有量が、組成物の重量を基準として、0.02重量%以上0.35重量%未満である配向ポリエステルフィルム。
2.変性ポリオレフィンワックスが、酸変性ポリプロピレンワックス、酸変性ポリエチレンワックス、酸化ポリプロピレンワックス、酸化ポリエチレンワックスの群より選ばれる少なくとも一つを含む前記1に記載の配向ポリエステルフィルム。
3.変性ポリオレフィンワックスが、フィルム中に層状に分散している前記1または2に記載の配向ポリエステルフィルム。
4.前記1~3のいずれかに記載の配向ポリエステルフィルムと、その少なくとも片面に設けられた印刷層(着色層)、ハードコート層、接着層および離形層からなる群より選ばれる少なくとも1種の機能層とを有する加飾積層体。
【発明の効果】
【0012】
本発明の配向ポリエステルフィルムは、特定の変性ポリオレフィンワックスを選定していることから、変性によるポリエステルフィルムにする際の樹脂劣化や欠陥の発生による外観不良を起こすことなく、しかも摩擦係数は低減しながらも他の部材との密着性を高度に発現することができる。そのため、本発明の配向ポリエステルフィルムは、加飾フィルムなどに好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の配向ポリエステルフィルムは、表面自動車車体パネルなどに使用する可堯性のフィルムである。該フィルムは、その外観を見た場合に、ベース、コート/クリアー、コート塗装仕上げの外観を有する。該フィルムは、少なくとも一方の表面層に変性ポリオレフィンワックスと酸化防止剤とを含有する組成物から形成された配向ポリエステルフィルムであって、変性ポリオレフィンワックスが、カルボキシル基、ケトン基および水酸基からなる群より選ばれる官能基が導入されており、該変性ポリオレフィンワックスの含有量が、0.1重量%以上3.0重量%未満であって、3重量%減量開始温度が300℃以上でかつ、その重量平均分子量が3,500~65,000からなり、該酸化防止剤の含有量が、組成物の重量を基準として、0.02重量%以上0.35重量%未満である。
【0014】
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明の配向ポリエステルフィルムはポリエステルから主になる。ここで「主になる」とは、フィルム全体の重量を基準としてポリエステルが、好ましくは、80重量%以上、より好ましくは85重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上、よりさらに好ましくは95重量%以上であることを示す。
【0015】
本発明に於ける配向ポリエステルフィルムは、少なくとも一方の表面層に変性ポリオレフィンワックスを含有した層が必要であり、本発明の目的を阻害しない限りにおいて2層以上の積層構造であってもよい。
【0016】
(ポリエステル)
本発明において配向ポリエステルフィルムを構成するポリエステルには、ホモポリエステルまたは共重合ポリエステルを用いることができる。ホモポリエステルとしては融点が250℃を超え260℃以下のポリエステルを好ましく挙げることができ、特に好ましくはホモのポリエチレンテレフタレートが挙げられる。なお、ここでホモのポリエチレンテレフタレートとは、不可避的に含有されるジエチレングリコール成分を含有することを除外するものではない。共重合ポリエステルとしては、融点が210~250℃の共重合ポリエステルを好ましく挙げることができる。このようなポリエステルを採用することで、成形加工時の発熱に耐えることができ、融点が下限未満の場合、成形加工時の発熱によってフィルムが削れたり破れたりする傾向にある。また、融点が上限を越えた場合は、製膜が難しくなる。
【0017】
かかる共重合ポリエステルの共重合成分は、酸成分でもアルコール成分でも良い。酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸等の如き主たる酸成分以外の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の如き脂肪族ジカルボン酸等を挙げることができ、アルコール成分としては、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール等が挙げられ、ジエチレングリコール等ポリオキシアルキレングリコール等が挙げられる。また、1,6-ヘキサンジオールの如き脂肪族ジオール、1,4-ヘキサメチレンジメタノールの如き脂環族ジオール等を挙げることができる。これらは単独または2種以上を使用することができる。これらの中、イソフタル酸、セバシン酸が好ましく、特にイソフタル酸が好ましい。
【0018】
共重合成分の種類や割合は、前述の融点となるように通常調整すれば良い。
ポリエステルの固有粘度は0.4以上、0.8以下であることが好ましく、より好ましくは0.45以上、0.8以下、さらに好ましくは0.5以上、0.77以下の範囲である。固有粘度が下限未満の場合、フィルムの製膜性が低下して破断が多くなるだけでなく、フィルムを部品へ成形貼合わせする時にフィルムの破れが生じやすい。固有粘度が高いことは成形加工性の観点からは好ましいことであるが、上限を越えた場合は、成形貼合せ時に生じた残留応力によって経時の密着性が低下する。
【0019】
ここで、ポリエステルの固有粘度(IV)は、製膜したポリエステルフィルムをo-クロロフェノールに溶解後、遠心分離機により着色顔料等を取り除き35℃溶液にて測定して得られる値(IVa)を、下記(1)式に代入して樹脂分の重量換算値として求めた。
IV=IVa/(1-C) ---(1)
ここでいうCは各層の着色顔料濃度を指す。
【0020】
(変性ポリオレフィンワックス)
本発明における配向ポリエステルフィルムは、少なくとも一方の表面層にカルボキシル基、ケトン基および水酸基からなる群より選ばれる官能基が導入された変性ポリオレフィンワックスを含有している必要がある。ワックスが含有された表面層を部品と貼合せる面とは逆側に設けることで、成形時の金型との摩擦が低減され、さらには成形後の金型からの離形性が向上することで優れた表面外観を保つことができる。さらに、ワックスに上記の官能基が導入されていることで、ポリエステルフィルムに積層される印刷層、接着層、ハードコート層等の他の機能層との密着性が向上する。
【0021】
本発明における変性ポリオレフィンワックスとしては、好ましくは、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、イソブテン、イソブチレン、ブタジエン等の炭素数2~8のオレフィンモノマーの重合体またはその熱分解物に、140~180℃の溶融状態で空気を導入することで酸化反応による官能基導入を行った酸化ポリオレフィンワックスや、アクリル酸、メタクリル酸、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、マレイン酸モノメチルエステル等の炭素数3~8の不飽和カルボン酸、およびそれらの酸の全体または一部がナトリウム、カリウム、リチウム、亜鉛、マグネシウム、カルシウム等の1~2価の金属陽イオンで中和された金属塩、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、メタクリル酸n-プロピル、アクリル酸イソブチル、メタクリル酸イソブチル、アクリル酸n-ブチル、メタクリル酸n-ブチル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、マレイン酸モノメチルエステル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、酢酸ビニル、アクリルアミン、アクリルアミド等の官能基含有モノマーを共重合、ブロック重合またはグラフト重合させた酸変性ポリオレフィンワックス等が好ましく挙げられるが、中でも酸変性ポリエチレンワックス、酸変性ポリプロピレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、酸化ポリプロピレンワックス、またはそれらの混合物がより好ましい。酸変性としては、マレイン酸変性または無水マレイン酸変性が特に好ましい。また、酸化ワックスとしては、カルボキシル基、ケトン基および水酸基が導入されていることが好ましい。
【0022】
また、本発明における変性ポリオレフィンワックスの酸価は、1mgKOH/g以上50mgKOH/g未満である必要があり、好ましくは5mgKOH/g以上40mgKOH/g未満であり、より好ましくは8mgKOH/g以上35mgKOH/g未満であり、最も好ましくは12mgKOH/g以上28mgKOH/g未満である。例えば未変性のポリオレフィンワックスのように酸価が、下限未満の場合は、ポリエステルフィルムに積層される印刷層、接着層、ハードコート層等の他の機能層との密着性が低下する。酸価が、上限以上の場合は、ワックスの耐熱性が劣るだけでなく、効果的な潤滑作用が失われるため、成形時にキズが発生したり、金型からの離形不足が発生する。
【0023】
また、変性ポリオレフィンワックスはその重量平均分子量が3,500以上65,000未満である必要があり、好ましくは5,000以上60,000未満である。特に、ポリエチレンワックスの場合は、5,000以上20,000未満が好ましく、さらに好ましくは5,000以上18,000未満であり、ポリプロピレンワックスの場合は、10,000以上60,000未満が好ましい。分子量が下限未満の場合は、ワックスの凝集力が不足し、他の部材との密着力が低下する。分子量が上限を越える場合は、効果的な潤滑作用が失われるため、成形時のキズの発生や金型からの離形不足が発生する。
【0024】
さらに、変性ポリオレフィンワックスはその3重量%減量開始温度が300℃以上である必要がある。3重量%減量開始温度が下限未満の場合は、ポリエステルに添加して溶融押出しの後、適切な延伸工程を経てフィルムを製膜する際に、ワックスの熱劣化物による欠陥が発生して外観が悪化する。ここでいう3重量%減量開始温度は、熱重量分析装置(TAインストルメント製 TGA Q50)を用いて、サンプル8mgを窒素ガスフロー下(60ml/min)で10℃/minの速度で昇温し、重量減少率が3.0重量%となった地点の温度を3重量%減量開始温度とした。
【0025】
本発明における配向ポリエステルフィルムは、変性ポリオレフィンワックスの含有量が、ワックス含有層の組成物の重量を基準として0.1重量%以上3.0重量%未満であり、好ましくは0.2重量%以上2.5重量%未満の範囲であり、より好ましくは0.3重量%以上2.0重量%未満の範囲である。変性ポリオレフィンワックスの含有量が下限よりも少ない場合には、十分な摩擦係数の低下が得られず、また上限を越えた場合は、フィルム表面にワックスが析出してフィルム製膜工程を汚染したり、他部材との密着力を低下させる。
【0026】
本発明における変性ポリオレフィンワックスの滴点の好ましい範囲は、100~160であり、より好ましくは、110~150である。変性ポリオレフィンワックスの滴点が下限未満の場合は、フィルムを製膜する際にフィルム表面にワックスが析出して工程を汚染し好ましくない。また、上限を越えた場合は、効果的な潤滑作用が失われ、成形時のキズの発生や金型からの離形不足が発生しやすくなる。
【0027】
ポリエステルフィルムへのワックスの添加方法は特に限定されることはなく、フィルムを製膜する際にポリエステル樹脂ペレットと共に押出し機へ導入し、ワックスの分散とフィルムの成形を同時に行う方法や、あらかじめ混練押出し機を用いてポリエステル樹脂中にワックスを分散させたマスターペレットを、製膜時に他のポリエステル樹脂ペレットと混合して押出し機へ導入する方法等が挙げられるが、後者の方がワックスをより均一にポリエステルフィルム中に分散させることができるため好ましい。このような変性ポリオレフィンワックスとしては、酸変性ポリプロピレンワックスとしては、例えば、三洋化成製 ユーメックス5200、三洋化成製 ユーメックス5500、三洋化成製 ユーメックス1001、三洋化成製 ユーメックス1010、三洋化成製 ユーメックス100TS、三洋化成製 ユーメックス110TS、クラリアントケミカルズ製 Licocene PPMA6452、クラリアントケミカルズ製 Licocene PPMA7452、クラリアントケミカルズ製 Licocene PPMA1332、クラリアントケミカルズ製 Licocene PPMA6252、三井化学製 ハイワックスNP0555A、三井化学製 ハイワックスNP50605A、ハネウェル製 A-C597シリーズ、ハネウェル製 A-C907シリーズ、ハネウェル製 A-C950P、酸変性ポリエチレンワックスとしては、例えば、三井化学製 ハイワックス2203A、三井化学製 ハイワックス3202A、クラリアントケミカルズ製 Licocene PEMA4221、クラリアントケミカルズ製 Licocene PEMA4351、ハネウェル製 A-C573シリーズ、ハネウェル製 A-C575シリーズ、酸化ポリエチレンワックスとしては、例えば、三洋化成製 サンワックスE-310、三洋化成製 サンワックスE-330、三洋化成製 サンワックスE-250P、三洋化成製 サンワックスLEL-400P、クラリアントケミカルズ製 LicolubH12、クラリアントケミカルズ製 LicowaxPED521、クラリアントケミカルズ製 LicowaxPED522、クラリアントケミカルズ製 LicowaxPED121、クラリアントケミカルズ製 LicowaxPED153、クラリアントケミカルズ製 LicowaxPED191、クラリアントケミカルズ製 LicowaxPED192、三井化学製 ハイワックス310MP、三井化学製 ハイワックス320MP、三井化学製 ハイワックス405MP、三井化学製 ハイワックス4051E、三井化学製 ハイワックス4052E、三井化学製 ハイワックス4202E、三井化学製 ハイワックス4252Eハネウェル製 A-C670シリーズ、ハネウェル製 A-C673シリーズ、ハネウェル製 A-C316シリーズ、ハネウェル製 A-C325、ハネウェル製 A-C330、ハネウェル製 A-C392、ハネウェル製 A-C395シリーズが市販されており、所望の酸価や重量平均分子量および3重量%減量開始温度となるものを選択することができる。
【0028】
(変性ポリオレフィンワックスのフィルム中の分散性)
また、本発明に於ける配向ポリエステルフィルムは、好ましくは、変性ポリオレフィンワックスがフィルム中に層状に分散していることである。層状に分散することで比表面積が上昇し、より効率的に潤滑作用を示すと考えられる。ここでいう層状とは、配向フィルムをフィルムの厚さ方向に裁断したときの断面を走査型電子顕微鏡で倍率3000倍で観察したときの、ワックス分散体の最長辺(L)と厚み(D)との比(L/D)の10回平均値が5以上であることを意味する。ワックスを層状に分散させる方法としては、従来公知の製膜方法により先ず未延伸積層シートを作成し、次いで任意の方向に一回以上延伸すればよい。その際の好ましい延伸倍率は2.0~5.0倍であり、さらに好ましくは2.3~4.0倍であり、好ましい延伸回数は製膜方向に1回、製膜方向と直交する方向に1回である。
【0029】
こうして得られた配向ポリエステルフィルムは、成形時に適度な応力を有することでより均一な成形が可能となる。ここで言う均一な成形とは、成形時に集中的に厚みが薄くなる箇所がないことを意味する。
【0030】
(酸化防止剤)
本発明における酸化防止剤としては、生成したラジカルを捕捉して酸化を防止する一次酸化防止剤、あるいは生成したパーオキサイドを分解して酸化を防止する二次酸化防止剤のいずれであってもよく、一次酸化防止剤としてはフェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤があげられ、二次酸化防止剤としてはリン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤があげられる。
【0031】
フェノール系酸化防止剤の具体例としては、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール、2-t-ブチル-4-メトキシフェノール、3-t-ブチル-4-メトキシフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4-〔4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イルアミノ〕フェノール、n-オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート等のモノフェノール系酸化防止剤、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、N,N’-ビス〔3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジン、N、N’-ヘキサン-1,6-ジイルビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]、3,9-ビス〔1,1-ジメチル-2-〔β-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル〕2,4,8,10-テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン等のビスフェノール系酸化防止剤、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ペンタエリスリトールテトラキス〔3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、ビス〔3,3’-ビス-(4’-ヒドロキシ-3’-t-ブチルフェニル)ブチリックアシッド〕グリコールエステル、1,3,5-トリス(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシベンジル)-sec-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)トリオン、d-α-トコフェノール等の高分子型フェノール系酸化防止剤を好ましく挙げることができる。
【0032】
アミン系酸化防止剤の具体例としては、アルキル置換ジフェニルアミン等を挙げることができる。
【0033】
リン系酸化防止剤の具体例としては、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、4,4’-ブチリデン-ビス(3-メチル-6-t-ブチルフェニルジトリデシル)ホスファイト、オクタデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールジホスファイト、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド、10-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド、10-デシロキシ-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ホスファイト、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)オクチルホスファイト等を好ましく挙げることができる。
【0034】
硫黄系酸化防止剤の具体例としては、ジラウリル-3,3’-チオジプロピオネート、ジミリスチル-3,3’-チオジプロピオネート、ジステアリル-3,3’-チオジプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)、2-メルカプトベンズイミダゾール等を好ましく挙げることができる。
【0035】
以上のような酸化防止剤としては、市販品をそのまま用いることもできる。市販品としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス〔3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製:商品名IRGANOX1010)、N,N’-ビス〔3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製:商品名IRGANOX1024)、N,N’-ヘキサン-1,6-ジイルビス〔3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド〕(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製:商品名IRGANOX1098)等がより好ましく例示される。
【0036】
本発明の配向フィルムは、上記酸化防止剤を、組成物の重量を基準として0.02重量%以上0.35重量%未満含有している必要があり、好ましくは0.03重量%以上0.30重量%未満、さらに好ましくは0.04重量%以上0.25重量%未満、最も好ましくは0.04重量%以上0.2重量%未満含有している。含有量が0.02重量%未満の場合は、ワックスをポリエステルに添加して溶融押出しの後、適切な延伸工程を経てフィルムを製膜する際に、ワックスの熱劣化物による欠陥が発生して外観が悪化する。とりわけ連続してフィルムを製膜する際には、押出機で溶融されたポリエステル組成物がダイより吐出されるまでの間に熱劣化物が生成され、それが経時で蓄積し、フィルム内に混入するため、経時でのフィルム外観悪化が問題となる。含有量が0.35重量%以上の場合は、フィルム表面に酸化防止剤が多量に析出してフィルム製膜工程を汚染したり、他部材との密着力を低下させる。
【0037】
(フィルム厚み)
本発明の配向ポリエステルフィルムの厚みは、必要に応じて適宜変更できるが全体の厚みは、好ましくは10~200μmの範囲であり、より好ましくは、15~150μmの範囲であり、さらに好ましくは15~100μmの範囲である。厚みが上限を越えるものは過剰品質であって不経済である。また、下限未満の場合は、成形される際にシワが入りやすくなる。
【0038】
(他の添加剤)
本発明の配向ポリエステルフィルムは、本発明の目的を阻害しない範囲内で、必要に応じて他の添加物、例えば蛍光増白剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤等を添加することができる。
【0039】
また、製膜工程や成形工程におけるハンドリング性を向上させるため、不活性粒子を添加してもよい。含有させる不活性粒子としてはポリマー中で安定的に存在できるものであれば特に制限されず、それ自体公知のものを採用でき、例えばポリスチレン、ポリアクリル酸メチルエステル、ポリアクリル酸エチルエステル、ポリメタクリル酸メチルエステル、ポリメタクリル酸エチルエステル、およびジビニルベンゼンから選ばれた、各単量体の重合体、あるいは共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル、ベンゾグアナミン、シリコーン等の有機質、シリカ、カオリン、タルク、グラファイト等の無機質のいずれかを用いるのが好ましい。これらの不活性粒子の好ましい粒径は0.1~10μmであり、好ましい含有量は0.002~0.5重量%の範囲である。
【0040】
着色顔料を添加した配向ポリエステルフィルムは隠蔽層として機能し、その上に印刷層を積層させた加飾積層体を外装部品等の表面に貼り合わせた際に、外装部品等の外観の影響を受けることなく印刷層の意匠を表現することができるため有用である。着色顔料としては無機、有機系のいずれであってもよいが、無機系の方が好ましい。無機系顔料としては、アルミナ、二酸化チタン、アルミ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等が好ましく例示され、中でも平均粒子径が100~500nmである二酸化チタンが好ましい。該着色顔料の含有量は、組成物の重量を基準として5重量%を超え40重量%以下であることが好ましく、より好ましい含有量は10~30重量%の範囲である。着色顔料の含有量が下限以下の場合には隠蔽性に劣り、上限を超える場合には、フィルムが脆くなってフィルム延伸時にフィルム破断が生じやすくなる。
【0041】
(多層フィルム)
本発明の配向ポリエステルフィルムは多層構造でも良く、その場合には少なくとも一方の表面層(表層A)に変性ポリオレフィンワックスを、組成物の重量を基準として、0.1重量%以上3.0重量%未満含有し、該変性ポリオレフィンワックスは、酸価が1mgKOH/g以上50mgKOH/g未満であり、3重量%減量開始温度が300℃以上でかつ、その重量平均分子量が3,500~65,000の範囲にあり、さらに酸化防止剤を、組成物の重量を基準として、0.02重量%以上0.35重量%未満含有していることが必要である。
【0042】
配向ポリエステルフィルムに着色顔料を含有させる場合は、着色顔料を、組成物の重量を基準として5重量%以上30重量%未満含有した芯層Bの両側または片側に、着色顔料を、組成物の重量を基準として5重量%未満含有した表層Aを積層したA/B/AまたはA/Bの多層構造が好ましい。芯層Bのみの場合は、フィルム延伸時にクラックが入りやすく、破断の原因となり好ましくない。
【0043】
表層Aと芯層Bの厚み比(X/X:但し、Xは表層Aの厚みの合計、Xは表層Bの厚みの合計)は、適した表面潤滑性、隠蔽性のバランスの観点から、好ましくは0.10~0.60、より好ましくは0.15~0.55、さらに好ましくは0.20~0.45である。
【0044】
(製造方法)
以上に説明した本発明の配向ポリエステルフィルムの製造方法は特に限定されず、従来公知の製膜方法により先ず未延伸積層シートを作成し、次いで任意の方向に一回以上延伸すればよい。その際の好ましい延伸回数は製膜方向に1回、製膜方向と直交する方向に1回である。
【0045】
例えば、あらかじめ混練押出し機を用いてポリエステル樹脂ペレットと変性ポリオレフィンワックスとを混練したマスターペレットAと、ポリエステル樹脂ペレットと酸化防止剤とを混錬したマスターペレットBを作成し、次いでマスターペレットAおよびBと希釈用のポリエステル樹脂ペレットとをブレンダ―を用いて混合し、十分に乾燥させた後、融点~(融点+50)℃の温度で押出機内で溶融する。なお、ここで融点は用いたポリエステルの融点である。次いで溶融樹脂をダイよりシート状に成形し、得られた未延伸シートを逐次または同時二軸延伸し、熱固定する方法で製造することができる。逐次二軸延伸により製膜する場合、未延伸積層シートをロール加熱、赤外線加熱等で加熱して先ず縦方向に延伸し、次いでステンターにて横延伸する。この時、延伸温度をポリエステルのガラス転移点(Tg)より20~50℃高い温度とすることが好ましく、縦延伸倍率を、好ましくは2.0~5.0倍、より好ましくは2.2~4.0倍、さらに好ましくは2.4~3.5倍、横延伸倍率を好ましくは2.5~5.0倍、より好ましくは2.6~4.0倍、さらに好ましくは2.6~3.7倍の範囲とするとよい。熱固定の温度は、好ましくは150~240℃、より好ましくは150~230℃の範囲でポリエステルの融点に応じて、フィルム品質を調整するべく選択するのが好ましい。
【0046】
(加飾積層体)
本発明における加飾積層体とは、本発明における配向ポリエステルフィルムと、その少なくとも片面に設けられた印刷層、ハードコート層、接着層および離型層からなる群より選ばれる少なくとも1種の機能層とを有する加飾積層体が挙げられる。そして、印刷層、ハードコート層、接着層および離型層については、それ自体公知のものを採用でき、本発明では、特定の変性ポリオレフィンワックスを使用しているので密着性に優れる。
【実施例
【0047】
以下、実施例により本発明を詳述するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、各特性値は以下の方法で測定した。また、実施例中の部および%は、特に断らない限り、それぞれ重量部および重量%を意味する。
【0048】
(融点)
ポリエステルの融点測定はTA Instruments Q100 DSCを用い、昇温速度20℃/分で融解ピークを求める方法により行う。なおサンプルはフィルム各層から削り取ったポリエステル組成物を10mg用いる。
【0049】
(固有粘度)
フィルム各層から削り取ったポリエステル組成物をo-クロロフェノール25ml中に溶解後、一旦冷却させ、遠心分離機により着色顔料等を取り除き、その溶液をオストワルド式粘度管を用いて35℃の温度条件で測定した溶液粘度から検量線を作成し、算出する。
【0050】
(フィルム各層の厚み)
サンプルを長手方向2mm、幅方向2cmに切り出し、包埋カプセルに固定後、エポキシ樹脂にて包埋する。そして、包埋されたサンプルをミクロトーム(Reichert-Jung製 Supercut)で幅方向に垂直に切断、50μm厚の薄膜切片にする。走査型電子顕微鏡(日立 4300SE/N)を用いて、加速電圧20kVにて観察撮影し、写真から各層の厚みを測定し、5点の平均厚みを求める。
【0051】
(3重量%減量開始温度)
熱重量分析装置(TAインストルメント製 TGA Q50)を用いて、サンプル8mgを窒素ガスフロー下(60ml/min)で10℃/minの速度で昇温し、重量減少率が3.0重量%となった地点の温度を3重量%減量開始温度とする。
【0052】
(酸価)
JIS K5902に従って測定する。
【0053】
(着色顔料濃度)
着色顔料濃度は、フィルム各層から削り取ったポリエステル組成物約1~2gを、セラミック製の坩堝に入れ電気乾燥機内で600℃、6時間以上加熱した後、坩堝に残った灰分重量を、もとのポリエステル組成物の重量で除して求める。フィルム全体の着色顔料濃度は、製膜した2軸延伸ポリエステルフィルム1gを用いて同様の方法で算出する。
【0054】
(酸化防止剤濃度)
フィルムの表面層10mgを削り取り各成分を高速液体クロマトグラフィーを用いて分離し、酸化防止剤のピーク面積から、検量線を作成して濃度を算出する。
【0055】
(摩擦係数)
ASTM・D1894―63に準じ、東洋テスター社製のスリッパ―測定器を使用し、フィルムの表面と裏面(積層フィルムの場合は、ワックス含有層の面同士)を合わせ、静摩擦係数(μs)を測定する。但し、スレッド板はポリカーボネート板とし、荷重は200gとする。
◎:静摩擦係数が0.30未満
○:静摩擦係数が0.30以上0.40未満
×:静摩擦係数が0.40以上
【0056】
(密着性)
UVインキに対する密着性を評価する。
配向フィルムのワックス含有層面に、公知の紫外線硬化型印刷インキ(東洋インキ製 フラッシュドライFDカルトンP紅ロ)をRIテスター(明製作所製)により印刷した後、中圧水銀灯(80W/cm、一灯式;日本電池製)UVキュア装置でキュアリングを行い、厚み4μmのUVインキ層を形成する。このUVインキ層上にセロテープ(18mm幅;ニチバン製)を15cmの長さに貼り、この上を2Kgの手動式荷重ロールで一定の荷重を与え、フィルムを固定してセロハンテープの一端を90゜方向に剥離することにより剥離密着力を評価する。密着性は次の基準で評価する。
◎:インキ層が全く剥離しない(0%)
○:10%未満のインキ層が剥離する
×:10%以上のインキ層が剥離する
【0057】
(フィルム外観)
後述の各実施例の条件で溶融ポリエステルをダイより連続的に押出し、縦延伸および横延伸を行って配向フィルムを連続的に製膜する。押出開始から30分後と90分後のフィルムを観察し、500立方ミリメートル内に存在する直径100μm以上の欠陥の数をカウントし、欠陥頻度の1時間あたりの増加個数を算出し、次の基準で評価する。
◎:欠陥頻度の1時間あたりの増加個数が30個/500立方ミリメートル未満
○:欠陥頻度の1時間あたりの増加個数が50個/500立方ミリメートル未満
×:欠陥頻度の1時間あたりの増加個数が50個/500立方ミリメートル以上
【0058】
(使用原料)
ポリエステルA;希釈用ポリエステル、融点245℃、固有粘度0.75、ジエチレングリコールが2.5mol%含有した2mol%イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート
ポリエステルB;ポリエステルAと酸変性ポリプロピレンワックス(3%重量減少開始温度321℃、酸価26mgKOH/g、重量平均分子量45,000)との重量比95:5の組成物
ポリエステルC;ポリエステルAと酸変性ポリプロピレンワックス(3%重量減少開始温度321℃、酸価45mgKOH/g、重量平均分子量18,000)との重量比95:5の組成物
ポリエステルD;ポリエステルAと酸化ポリエチレンワックス(3%重量減少開始温度332℃、酸価15mgKOH/g、重量平均分子量12,000)との重量比95:5の組成物
ポリエステルE;希釈用ポリエステル、融点225℃、固有粘度0.66、ジエチレングリコールが1.0mol%含有した12mol%イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート
ポリエステルF;希釈用ポリエステル、融点252℃、固有粘度0.80、ジエチレングリコールが2.5mol%含有したポリエチレンテレフタレート
ポリエステルG;ポリエステルAと酸化ポリエチレンワックス(3%重量減少開始温度314℃、酸価22mgKOH/g、重量平均分子量8,800)との重量比95:5の組成物
ポリエステルH;ポリエステルAとポリエチレンワックス(3%重量減少開始温度395℃、酸価0mgKOH/g、重量平均分子量18,000)との重量比95:5の組成物
ポリエステルI;ポリエステルAとモンタンエステルワックス(3%重量減少開始温度281℃、酸価13mgKOH/g)との重量比95:5の組成物
ポリエステルJ;ポリエステルAと酸変性ポリプロピレンワックス(3%重量減少開始温度350℃、酸価11mgKOH/g、重量平均分子量70,000)との重量比95:5の組成物
ポリエステルK;ポリエステルAと酸変性ポリエチレンワックス(3%重量減少開始温度297℃、酸価30mgKOH/g、重量平均分子量2,700)との重量比95:5の組成物
ポリエステルL;ポリエステルAと酸変性ポリプロピレンワックス(3%重量減少開始温度274℃、酸価3.5mgKOH/g、重量平均分子量9,000)との重量比95:5の組成物
ポリエステルM;ポリエステルAとフェノール系酸化防止剤(2,4,6-トリス(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシベンジル)メシチレン)との重量比99:1の組成物
ポリエステルN;ポリエステルAとフェノール系酸化防止剤(ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート])との重量比99:1の組成物
ポリエステルO;ポリエステルAとホスフェート系酸化防止剤(亜りん酸トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル))との重量比99:1の組成物
【0059】
[実施例1~42、比較例1~15]
希釈用ポリエステル、ワックスマスター用ポリエステル、酸化防止剤用ポリエステルを表1に示す種類、配合比でブレンダ―を用いて混合・乾燥した後、280℃でダイより溶融押出しし、急冷固化して未延伸フィルムを得る。次いで、この未延伸フィルムを100℃で3.0倍に縦延伸した後、130℃で3.5倍に横延伸し、続いて180℃で熱固定して厚み50μmの配向ポリエステルフィルムを得る。得られた配向ポリエステルフィルムの評価結果を表2に示す。
【0060】
[実施例43]
2層積層ポリエステルフィルムを得るために、A層については実施例1と同様のポリエステル組成物を280℃で溶融し、B層についてはポリエステルAのみを280℃で別の押出機を用いて溶融後、2層フィードブロックによりA/Bの2層構成に積層し、隣接したダイより共押出し、急冷固化して未延伸積層フィルムを得た。次いで、この未延伸フィルムを実施例1と同様の条件で縦延伸、横延伸、熱固定して配向ポリエステルフィルムを得た。各層の厚みはそれぞれ20μm/30μmであった。得られた配向ポリエステルフィルムの評価結果は表2の実施例1と同様であった。
【0061】
[実施例44]
3層積層ポリエステルフィルムを得るために、A層については実施例19と同様のポリエステル組成物を280℃で溶融し、B層についてはポリエステルAに着色顔料としてルチル型酸化チタン(平均粒径0.5μm)を、組成物の重量を基準として20重量%添加したポリエステル組成物を280℃で別の押出機を用いて溶融後、3層フィードブロックによりA/B/Aの3層構成に積層し、隣接したダイより共押出し、急冷固化して未延伸積層フィルムを得た。次いで、この未延伸フィルムを実施例1と同様の条件で縦延伸、横延伸、熱固定して配向ポリエステルフィルムを得た。各層の厚みはそれぞれ3μm/19μm/3μmであり、配向フィルムの着色顔料濃度は15重量%であった。得られた配向ポリエステルフィルムの評価結果は表2の実施例19と同様であった。
【0062】
[比較例16]
実施例1と同様にして、ポリエステルAとポリエステルBおよびポリエステルMを表1の配合比にて280℃でダイより溶融押出しして急冷固化する際、吐出量を抑えて厚み50μmの未延伸フィルムを得た。得られたポリエステルフィルムは、配向しておらず、その評価結果を表2に示す。
【0063】
【表1A】
【0064】
【表1B】
【0065】
【表2A】
【0066】
【表2B】
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の配向ポリエステルフィルムは、変性によるポリエステルフィルムにする際の樹脂劣化や欠陥の発生による外観不良を起こすことなく、種々の部材に対して優れた密着力を発現し、かつ車両の外装部品などに成形するための成形性を発現できる低摩擦係数とを具備するため、例えば車両の外装・内装部品の表面に貼合される加飾フィルムとして好適に使用することができる。