(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-06
(45)【発行日】2022-09-14
(54)【発明の名称】エアシリンダの流体回路
(51)【国際特許分類】
F15B 11/06 20060101AFI20220907BHJP
F15B 11/02 20060101ALI20220907BHJP
F15B 11/024 20060101ALI20220907BHJP
F15B 11/044 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
F15B11/06 D
F15B11/02 V
F15B11/024 A
F15B11/044
(21)【出願番号】P 2018113156
(22)【出願日】2018-06-13
【審査請求日】2021-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000102511
【氏名又は名称】SMC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】妹尾 満
(72)【発明者】
【氏名】張 護平
(72)【発明者】
【氏名】藤原 勇登
【審査官】北村 一
(56)【参考文献】
【文献】実開昭55-055604(JP,U)
【文献】特開2018-054117(JP,A)
【文献】実開昭52-042506(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 11/00-11/22;21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストンによって区画される第1エア室と第2エア室とを有するエアシリンダと、
前記ピストンの駆動工程と復帰工程とで切り換わる切換弁と、
前記第1エア室と前記切換弁間の第1流路と、
前記第2エア室と前記切換弁間の第2流路と、
を有するエアシリンダの流体回路であって、
前記第2流路に、2つの速度制御弁が直列に設置されて
おり、
前記第1流路と前記第2流路との間に設けられたバイパス流路と、
前記バイパス流路と前記第1流路とが互いに接続された、前記第1流路の接続点から前記切換弁に向かうエアの流通を許容し、前記切換弁から前記第1流路の前記接続点に向かうエアの流通を阻止するチェック弁と、
を有する、エアシリンダの流体回路。
【請求項2】
請求項1記載のエアシリンダの流体回路において、
前記駆動工程では、一方の前記速度制御弁のチェック弁と、他方の前記速度制御弁の可変絞り弁が前記第2流路を構成し、
前記復帰工程では、一方の前記速度制御弁の可変絞り弁と、他方の前記速度制御弁のチェック弁が前記第2流路を構成する、エアシリンダの流体回路。
【請求項3】
請求項1又は2記載のエアシリンダの流体回路において、
前記第2流路から分岐され、前記切換弁に向かう第3流路と、
前記第3流路に設けられ、前記第2流路側を入力とする外側チェック弁とを有し、
前記第3流路は、前記駆動工程において、前記第2流路から一部供給されたエアを貯留し、
前記第3流路は、前記復帰工程において、前記切換弁を介して、前記第2流路と前記第1流路を連通する、エアシリンダの流体回路。
【請求項4】
請求項1又は2記載のエアシリンダの流体回路において
、
前記バイパス流路に介設される内側チェック弁及び内側パイロットチェック
弁を備え、
前記内側チェック弁は、前記第2エア室から前記第1エア室に向かうエアの流通を許容すると共に、前記第1エア室から前記第2エア室に向かうエアの流通を阻止し、前記内側パイロットチェック弁は、前記第1エア室から前記第2エア室に向かうエアの流通を許容すると共に、パイロット圧が作用しないときは前記第2エア室から前記第1エア室に向かうエアの流通を阻止する、エアシリンダの流体回路。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のエアシリンダの流体回路において、
前記第1流路のうち、前記第1エア室寄りにタンク部が設けられている、エアシリンダの流体回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアシリンダの流体回路に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1記載の流体回路は、排出圧力を再利用して流体圧シリンダを復帰させることで省エネルギー化を図りつつ、復帰に必要な時間を可及的に短縮することを課題としている。
【0003】
当該課題を解決するため、特許文献1記載の流体回路は、切換弁と、流体供給源と、排出口と、供給用チェック弁とを備え、前記切換弁の第1位置において、一方のシリンダ室が前記流体供給源に連通すると共に、他方のシリンダ室が少なくとも前記排出口に連通し、前記切換弁の第2位置において、前記一方のシリンダ室が前記供給用チェック弁を介して前記他方のシリンダ室に連通すると共に、前記一方のシリンダ室が少なくとも前記排出口に連通する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1記載の流体回路は、排気口の経路に絞り弁を設けるようにしている。そのため、エアシリンダからの排気流量のみを調整することが可能であるが、エアシリンダへの供給流量を調整することができないという問題がある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、エアシリンダへの供給流量とエアシリンダからの排気流量とをそれぞれ独立に調整することができると共に、構造の簡略化を図ることができるエアシリンダの流体回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1] 本発明に係るエアシリンダの流体回路は、ピストンによって区画される第1エア室と第2エア室とを有するエアシリンダと、前記ピストンの駆動工程と復帰工程とで切り換わる切換弁と、前記第1エア室と前記切換弁間の第1流路と、前記第2エア室と前記切換弁間の第2流路と、を有するエアシリンダの流体回路であって、前記第2流路に、2つの速度制御弁(可変絞り弁+チェック弁)が直列に設置されている。
【0008】
ピストンの駆動工程では、切換弁から第2エア室への供給流量を一方の速度制御弁の可変絞り弁で調整することができ、ピストンの復帰工程では、第2エア室から切換弁への排気流量を他方の速度制御弁の可変絞り弁で調整することができる。すなわち、エアシリンダへの供給流量とエアシリンダからの排気流量とをそれぞれ独立に調整することができる。これは流体回路の要求特性である駆動工程でのストローク時間の短縮化、復帰工程後での流体圧シリンダ内の圧力の増大化につながる。しかも、第2流路に、2つの速度制御弁を直列に設置するだけでよいため、構造の簡単化も図ることができる。
【0009】
[2] 本発明において、前記駆動工程では、一方の前記速度制御弁のチェック弁と、他方の前記速度制御弁の可変絞り弁が前記第2流路を構成し、前記復帰工程では、一方の前記速度制御弁の可変絞り弁と、他方の前記速度制御弁のチェック弁が前記第2流路を構成してもよい。
【0010】
駆動工程では、第2流路に供給されたエアが一方の速度制御弁のチェック弁と、他方の速度制御弁の可変絞り弁を流通し、エアシリンダの第2エア室に供給される。復帰工程では、エアシリンダの第2エア室から第2流路に排気されたエアが一方の速度制御弁の可変絞り弁と、他方の速度制御弁のチェック弁を流通し、切換弁を介して排気される。従って、ピストンの駆動工程では、切換弁から第2エア室への供給流量を一方の速度制御弁の可変絞り弁で調整することができ、ピストンの復帰工程では、第2エア室から切換弁への排気流量を他方の速度制御弁の可変絞り弁で調整することができる。
【0011】
[3] 本発明において、前記第2流路から分岐され、前記切換弁に向かう第3流路と、前記第3流路に設けられ、前記第2流路側を入力とする外側チェック弁とを有し、前記第3流路は、前記駆動工程において、前記第2流路から一部供給されたエアを貯留し、前記第3流路は、前記復帰工程において、前記切換弁を介して、前記第2流路と前記第1流路を連通してもよい。
【0012】
駆動工程では、第3流路に第2流路から一部のエアが供給されて、該エアが第3流路に貯留する。第3流路に貯留されたエアは、その後の復帰工程で、切換弁及び第1流路を介してエアシリンダの第1エア室に供給される。すなわち、第3流路に貯留されたエアをピストンの復帰用の圧力として活用させることができ、エアの消費を抑えることができる。
【0013】
[4] 本発明において、前記第1流路と前記第2流路との間に設けられたバイパス流路と、前記バイパス流路に介設される内側チェック弁及び内側パイロットチェック弁と、を備え、前記内側チェック弁は、前記第2エア室から前記第1エア室に向かうエアの流通を許容すると共に、前記第1エア室から前記第2エア室に向かうエアの流通を阻止し、前記内側パイロットチェック弁は、前記第1エア室から前記第2エア室に向かうエアの流通を許容すると共に、パイロット圧が作用しないときは前記第2エア室から前記第1エア室に向かうエアの流通を阻止してもよい。
【0014】
これにより、第2エア室に蓄積されたエアを第1エア室に向けて供給すると共に、外部に排出することが可能になる。このため、第1エア室の圧力が増加すると共に、第2エア室の圧力が急速に減少し、エアシリンダの復帰に必要な時間を可及的に短縮することができる。また、複雑な構造の回収弁を必要とせず、エアシリンダを復帰させるための流体回路を簡素化することができる。
【0015】
[5] 本発明において、前記第1流路のうち、前記第1エア室寄りにタンク部が設けられていてもよい。これにより、第2エア室から排出されるエアをタンク部に蓄積しておくことができ、エアシリンダの復帰工程時、第1エア室の容積が増大する際にその圧力が低下するのを可及的に抑えることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るエアシリンダの流体回路によれば、エアシリンダへの供給流量とエアシリンダからの排気流量とをそれぞれ独立に調整することができると共に、構造の簡略化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1Aは、第1の実施の形態に係るエアシリンダの流体回路(第1流体回路)の切換弁を第1状態とした場合の回路図であり、
図1Bは、第1流体回路の駆動工程の状態を示す説明図である。
【
図2】
図2Aは、第1流体回路の切換弁を第2状態とした場合の回路図であり、
図2Bは、第1流体回路の復帰工程の状態を示す説明図である。
【
図3】エアシリンダの外観の一例を示す斜視図である。
【
図5】
図5Aは、第2の実施の形態に係るエアシリンダの流体回路(第2流体回路)の切換弁を第1状態とした場合の回路図であり、
図5Bは、第2流体回路の駆動工程の状態を示す説明図である。
【
図6】
図6Aは、第2流体回路の切換弁を第2状態とした場合の回路図であり、
図6Bは、第2流体回路の復帰工程の状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るエアシリンダの流体回路について好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。
【0019】
先ず、第1の実施の形態に係るエアシリンダの流体回路(以下、第1流体回路10Aと記す)について、
図1A~
図4を参照しながら説明する。
【0020】
第1流体回路10Aは、
図1Aに示すように、第1エア流路12a、第2エア流路12b、切換弁16を含む。
【0021】
エアシリンダ30は
、図3に示すように、シリンダチューブ32、ヘッドカバー34、ロッドカバー36、
並びに図1Aに示すように、ピストン3
8、ピストンロッド40等から構成される。シリンダチューブ32の一端側はロッドカバー36によって閉塞され、シリンダチューブ32の他端側はヘッドカバー34によって閉塞される。シリンダチューブ32の内部にピストン38(
図1A参照)が往復移動自在に配設されている。シリンダチューブ32の内部空間は、例えば
図1Aに示すように、ピストン38とロッドカバー36との間に形成される第1エア室42aと、ピストン38とヘッドカバー34との間に形成される第2エア室42bとに区画される。
【0022】
ピストン38に連結されたピストンロッド40は第1エア室42aを縦断し、その端部がロッドカバー36を通って外部に延びる。エアシリンダ30は、ピストンロッド40の押し出し時(伸長時)に図示しないワークの位置決め等の仕事を行い、ピストンロッド40の引き込み時には仕事をしない。
【0023】
エアシリンダ30の第1エア室42aと切換弁16との間に第1エア流路12aが設けられ、エアシリンダ30の第2エア室42bと切換弁16との間に第2エア流路12bが設けられている。
【0024】
第2エア流路12bの途中には、2つの速度制御弁(第1速度制御弁50a及び第2速度制御弁50b)が介設されている。第1速度制御弁50aは、メータアウトと呼ばれる形式の可変絞り弁であり、第2エア室42bから排出されるエアの流量を手動により調整可能な制御弁である。一方、第2速度制御弁50bは、メータインと呼ばれる形式の可変絞り弁であり、第2エア室42bに供給されるエアの流量を手動により調整可能な制御弁である。第1速度制御弁50aを操作することによって、第2エア室42bに蓄積されたエアを第1エア室42aに向けて供給する量と外部に排出する量との割合を調整することができる。
【0025】
第1速度制御弁50aは、第1チェック弁52aと第1絞り弁54aとが並列に接続されて構成されている。第1チェック弁52aは、切換弁16を介してエアシリンダ30の第2エア室42bに向かうエアの流通を許容し、エアシリンダ30の第2エア室42bから切換弁16に向かうエアの流通を阻止する。第1絞り弁54aは、エアシリンダ30の第2エア室42bから切換弁16に向かうエアの流量を調整する。
【0026】
第2速度制御弁50bは、第2チェック弁52bと第2絞り弁54bとが並列に接続されて構成されている。第2チェック弁52bは、エアシリンダ30の第2エア室42bから切換弁16に向かうエアの流通を許容し、切換弁16を介してエアシリンダ30の第2エア室42bに向かうエアの流通を阻止する。第2絞り弁54bは、切換弁16を介してエアシリンダ30の第2エア室42bに向かうエアの流量を調整する。
【0027】
また、この第1流体回路10Aは、第2エア流路12bのうち、エアシリンダ30と第1速度制御弁50aとの間の任意のポイントに、第3チェック弁52cが接続されている。この第3チェック弁52cは、第2エア流路12bから切換弁16に向かうエアの流通を許容し、切換弁16から第2エア流路12bに向かうエアの流通を阻止する。
【0028】
一方、切換弁16は、第1ポート60a~第5ポート60eを有し、第1位置と第2位置との間で切り換え可能な5ポート2位置電磁弁として構成される。第1ポート60aは第1エア流路12aに繋がっており、第2ポート60bは第2エア流路12bに繋がっている。第3ポート60cはエア供給源62に繋がっている。第4ポート60dはサイレンサ63が付設された排気口64に繋がっており、第5ポート60eは上述した第3チェック弁52cに繋がっている。また、第1ポート60aと第4ポート60dが繋がり、且つ、第2ポート60bと第3ポート60cが繋がっている。第3チェック弁52cから切換弁16の第5ポート60eまでの第3エア流路12cは1つのエア貯留部として機能する。
【0029】
そして、
図1Aに示すように、切換弁16が第1位置にあるとき、第1ポート60aと第4ポート60dが繋がり、且つ、第2ポート60bと第3ポート60cが繋がる。一方、
図2Aに示すように、切換弁16が第2位置にあるときは、第1ポート60aと第5ポート60eが繋がり、且つ、第2ポート60bと第4ポート60dが繋がる。
【0030】
なお、切換弁16は、非通電時はばねの付勢力により第2位置に保持され、通電時に第2位置から第1位置に切り換わる。なお、切換弁16に対する通電又は非通電は、図示しない上位装置であるPLC(Programmable Logic Controller)から切換弁16への通電指令の出力(通電)又は通電停止指令の出力(非通電)によって行われる。
【0031】
ピストンロッド40が押し出されるエアシリンダ30の駆動工程では、切換弁16が第1位置とされ、ピストンロッド40が引き込まれるエアシリンダ30の復帰工程では切換弁16が第2位置とされる。
【0032】
第1エア流路12aの任意のポイントには、タンク部68が介設されている。タンク部68は、エアを蓄積するエアタンクとして作用するように容積を大きくとってある。
【0033】
なお、
図1A~
図2Bは、第1流体回路10Aを回路図によって概念的に示したもので、エアシリンダ30の内部に組み込まれる流路も、便宜上、エアシリンダ30の外側に配設されているかの如く描かれている。
【0034】
実際には、
図1Aの一点鎖線で囲まれた部分、すなわち、第3チェック弁52cを含む第2エア流路12bの一部及びタンク部68を含む第1エア流路12aの一部は、エアシリンダ30の内部に組み込まれている。
【0035】
また、例えば、
図1Aの一点鎖線で囲まれた領域の第1エア流路12aは、
図3に示すように、ロッドカバー36とシリンダチューブ32とヘッドカバー34とに亘って設けられ、そのうちシリンダチューブ32に設けられる部分がタンク部68となっている。タンク部68は、例えば、シリンダチューブ32を内側チューブと外側チューブからなる二重構造とし、両者の間に形成される空間によって構成してもよい。
【0036】
第1流体回路10Aは、基本的には以上のように構成されるものであり、以下、
図1A~
図2Bを参照しながら、その作用について説明する。なお、
図1Aに示すように、切換弁16が第1位置にあり、ピストンロッド40が最も引き込まれた状態を初期状態とする。
【0037】
先ず、
図1A及び
図1Bに示すように、駆動工程は、初期状態において、エア供給源62からのエアが第2エア流路12bを介して第2エア室42bに供給され、第1エア室42a内のエアが第1エア流路12aを介して排気口64から外部に排出されるようになる。このとき、第2速度制御弁50bでは、エアが第2絞り弁54bによって流量が調整され、第1速度制御弁50aでは、第1チェック弁52aを介して第2エア室42bに供給される。また、エア供給源62からのエアは、第2エア流路12bから第3チェック弁52cを介して第3エア流路12cに供給される。
【0038】
これにより、第2エア室42bの圧力が上昇し始めると共に、第1エア室42aの圧力が下降し始める。第2エア室42bの圧力がピストン38の静止摩擦抵抗に打ち勝つ分だけ第1エア室42aの圧力を上回ると、ピストンロッド40の押し出し方向への移動が始まる。そして、
図1Bに示すように、ピストンロッド40は最大位置まで伸長し、大きな推力でその位置に保持される。
【0039】
ピストンロッド40が伸長してワークの位置決め等の作業が行われた後、
図2A及び
図2Bに示すように、切換弁16が第1位置から第2位置に切り換えられる。すなわち、ピストンロッド40の復帰工程が開始される。
【0040】
この復帰工程では、第2エア室42bに蓄積されたエアの一部が第3チェック弁52cを通って第1エア室42aに向けて流通し、それと同時に、第2エア室42bに蓄積されたエアの他の一部が第1速度制御弁50a、第2速度制御弁50b及び切換弁16を介して排気口64から排出される。このとき、第1速度制御弁50aでは、エアが第1絞り弁54aによって流量が調整され、第2速度制御弁50bでは、第2チェック弁52bを介して切換弁16に向けて流通する。
【0041】
一方、第1エア室42aに向けて供給されるエアは、主にタンク部68に蓄積される。ピストンロッド40の引き込みが始まる前は、第1エア室42aと配管通路とを含めて第3チェック弁52cから第1エア室42aでの間にエアが存在し得る領域のうち、最も大きな空間を占めるのはタンク部68であるからである。
【0042】
その後、第2エア室42bのエア圧が減少し、第1エア室42aのエア圧が上昇して、第1エア室42aのエア圧が第2エア室42bのエア圧よりも所定以上大きくなると、ピストンロッド40の引き込みが始まる。そして、ピストンロッド40が最も引き込まれた初期状態に復帰する。
【0043】
第1流体回路10Aでは、第1エア流路12aにタンク部68を介設した例を示したが、第1エア流路12aの内径が十分に大きく、タンク部68の役割を果たす
場合、
図4の変形例に係る第1流体回路10Aaに示すように、タンク部68の介設を省略してもよい。
【0044】
次に、第2の実施の形態に係るエアシリンダの流体回路(以下、第2流体回路10Bと記す)について、
図5A~
図7を参照しながら説明する。
【0045】
第2流体回路10Bは、上述した第1流体回路10Aとほぼ同様の構成を有するが、第3エア流路12cに代えて、バイパス流路80を有する点で異なる。
【0046】
すなわち、第2流体回路10Bは、第1エア流路12aの途中からバイパス流路80が分岐し、該バイパス流路80は第2エア流路12bの途中に合流している。すなわち、第1エア流路12aの任意のポイントM1と第2エア流路12bの任意のポイントM2との間にバイパス流路80が設けられている。
【0047】
バイパス流路80には、第2エア流路12bの任意のポイントM2に近い側に第4チェック弁52dが介設され、第1エア流路12aの任意のポイントM1に近い側にパイロットチェック弁56が介設されている。第4チェック弁52dは、第2エア室42bから第1エア室42aに向かうエアの流通を許容し、第1エア室42aから第2エア室42bに向かうエアの流通を阻止する。
【0048】
パイロットチェック弁56は、第1エア室42aから第2エア室42bに向かうエアの流通を許容する。また、パイロットチェック弁56は、所定圧力以上のパイロット圧が作用していないときは、第2エア室42bから第1エア室42aに向かうエアの流通を阻止し、所定圧力以上のパイロット圧が作用しているときは、第2エア室42bから第1エア室42aに向かうエアの流通を許容する。換言すれば、パイロットチェック弁56は、パイロット圧が作用していないときは、第1エア室42aから第2エア室42bに向かうエアの流通を許容すると共に、第2エア室42bから第1エア室42aに向かうエアの流通を阻止する逆止弁として機能し、パイロット圧が作用しているときは、エアがいずれの方向にも流通可能となり、逆止弁として機能しない。
【0049】
第1エア流路12aの任意のポイントM1と切換弁16との間の第1エア流路12aに第5チェック弁52eが介設されている。第5チェック弁52eは、第1エア流路12aの任意のポイントM1から切換弁16に向かうエアの流通を許容し、切換弁16から第1エア流路12aの任意のポイントM1に向かうエアの流通を阻止する。第5チェック弁52eと切換弁16との間の第1エア流路12aから分岐してパイロットチェック弁56に至るパイロット流路58が設けられている。
【0050】
第2流体回路10Bの切換弁16も、第1ポート60a~第5ポート60eを有し、第1位置と第2位置との間で切り換え可能な5ポート2位置電磁弁として構成される。第1ポート60aは第1エア流路12aに繋がっており、第2ポート60bは第2エア流路12bに繋がっている。
【0051】
第3ポート60cは第1サイレンサ63aが付設された第1排気口64aに繋がっている。第4ポート60dはエア供給源62に繋がっており、第5ポート60eは第2サイレンサ63bが付設された第2排気口64bに繋がっている。
【0052】
なお、
図5Aの一点鎖線で囲まれた部分、すなわち、タンク部68、第4チェック弁52dとパイロットチェック弁56を含むバイパス流路80、パイロット流路58、第5チェック弁52eを含む第1エア流路12aの一部及び第2エア流路12bの一部は、エアシリンダ30の内部に組み込まれている。
【0053】
第2流体回路10Bは、基本的には以上のように構成されるものであり、以下、
図5A~
図6Bを参照しながら、その作用について説明する。なお、
図5Aに示すように、切換弁16が第1位置にあり、ピストンロッド40が最も引き込まれた状態を初期状態とする。
【0054】
先ず、
図5A及び
図5Bに示すように、駆動工程は、初期状態において、エア供給源62からのエアが第2エア流路12bを介して第2エア室42bに供給され、第1エア室42a内のエアが第1エア流路12aを介して第2排気口64bから外部に排出されるようになる。このとき、第2速度制御弁50bでは、エアが第2絞り弁54bによって流量が調整され、第1速度制御弁50aでは、第1チェック弁52aを介して第2エア室42bに供給される。
【0055】
これにより、第2エア室42bの圧力が上昇し始めると共に、第1エア室42aの圧力が下降し始める。第2エア室42bの圧力がピストン
38の静止摩擦抵抗に打ち勝つ分だけ第1エア室42aの圧力を上回ると、ピストンロッド40の押し出し方向への移動が始まる。そして、
図5Bに示すように、ピストンロッド40は最大位置まで伸長し、大きな推力でその位置に保持される。
【0056】
ピストンロッド40が伸長してワークの位置決め等の作業が行われた後、
図6Aに示すように、切換弁16が第1位置から第2位置に切り換えられる。すなわち、ピストンロッド40の復帰工程が開始される。
【0057】
復帰工程では、エア供給源62からのエアが第5チェック弁52eと切換弁16との間の第1エア流路12a内に流れ込み、第5チェック弁52eによって流れを阻まれた該第1エア流路12a内のエアの圧力が上昇する。そして、第1エア流路12aに接続されたパイロット流路58の圧力も所定以上になり、パイロットチェック弁56が逆止弁として機能しなくなる。
【0058】
パイロットチェック弁56が逆止弁としての機能を失うと、第2エア室42bに蓄積されたエアの一部は、第2エア流路12bの任意のポイントM2を経て、第4チェック弁52dとパイロットチェック弁56を含むバイパス流路80を通り、第1エア流路12aの任意のポイントM1から第1エア室42aに向けて供給される。それと共に、第2エア室42bに蓄積されたエアの他の一部は、第2エア流路12bを介して第1排気口64aから外部に排出される。このとき、第1速度制御弁50aでは、エアが第1絞り弁54aによって流量が調整され、第2速度制御弁50bでは、第2チェック弁52bを介して切換弁16に向けて流通する。これにより、第2エア室42bの圧力が下降し始めると共に、第1エア室42aの圧力が上昇し始める。このとき、第1エア室42aに向けて供給されるエアは、主にタンク部68に蓄積される。
【0059】
第2エア室42bの圧力が減少し、第1エア室42aの圧力が上昇して、第2エア室42bの圧力が第1エア室42aの圧力に等しくなると、第4チェック弁52dの作用により、第2エア室42bのエアが第1エア室42aに向けて供給されなくなり、第1エア室42aの圧力の上昇が止まる。一方、第2エア室42bの圧力は下降し続ける。そして、第1エア室42aの圧力がピストン38の静止摩擦抵抗に打ち勝つ分だけ第2エア室42bの圧力を上回ると、ピストンロッド40の引き込み方向への移動が始まる。
【0060】
ピストンロッド40が引き込み方向へ移動を始めると、第1エア室42aの容積が増加するため、第1エア室42aの圧力は下降するが、タンク部68の存在によって第1エア室42aの容積は実質的に大きなものとなっており、圧力が下降する割合は小さい。そして、第2エア室42bの圧力はそれより大きな割合で下降するので、第1エア室42aの圧力が第2エア室42bの圧力を上回る状態は継続する。また、一旦、移動を始めたピストン38の摺動抵抗は静止状態でのピストン38の摩擦抵抗よりも小さいので、ピストンロッド40の引き込み方向への移動は支障なく行われる。こうして、ピストンロッド40が最も引き込まれた初期状態に戻る。再び切換弁16が切り換えられるまでこの状態が維持される。
【0061】
第2流体回路10Bでは、第1エア流路12aにタンク部68を介設した例を示したが、第5チェック弁52eと第1エア室42aとの間の第1エア流路12aの内径が十分に大きく、タンク部68の役割を果たす
場合、
図7の変形例に係る第2流体回路10Baに示すように、タンク部68の介設を省略してもよい。
【0062】
このように、本実施の形態は、ピストン38によって区画される第1エア室42aと第2エア室42bとを有するエアシリンダ30と、ピストン38の駆動工程と復帰工程とで切り換わる切換弁16と、第1エア室42aと切換弁16間の第1エア流路12aと、第2エア室42bと切換弁16間の第2エア流路12bと、を有するエアシリンダの流体回路であって、第2エア流路12bに、2つの速度制御弁(第1速度制御弁50a及び第2速度制御弁50b)が直列に設置されている。
【0063】
ピストン38の駆動工程では、切換弁16から第2エア室42bへの供給流量を第2速度制御弁50bの第2絞り弁54bで調整することができ、ピストン38の復帰工程では、第2エア室42bから切換弁16への排気流量を第1速度制御弁50aの第1絞り弁54aで調整することができる。すなわち、エアシリンダ30への供給流量とエアシリンダ30からの排気流量とをそれぞれ独立に調整することができる。これは流体回路の要求特性である駆動工程でのストローク時間の短縮化、復帰工程後での流体圧シリンダ内の圧力の増大化につながる。しかも、第2エア流路12bに、2つの速度制御弁を直列に設置するだけでよいため、構造の簡単化も図ることができる。
【0064】
本実施の形態において、駆動工程では、第1速度制御弁50aの第1チェック弁52aと、第2速度制御弁50bの第2絞り弁54bが第2エア流路12bを構成し、復帰工程では、第1速度制御弁50aの第1絞り弁54aと、第2速度制御弁50bの第2チェック弁52bが第2エア流路12bを構成する。
【0065】
駆動工程では、第2エア流路12bに供給されたエアが第1速度制御弁50aの第1チェック弁52aと、第2速度制御弁50bの第2絞り弁54bを流通し、エアシリンダ30の第2エア室42bに供給される。復帰工程では、エアシリンダ30の第2エア室42bから第2エア流路12bに排気されたエアが第1速度制御弁50aの第1絞り弁54aと、第2速度制御弁50bの第2チェック弁52bを流通し、切換弁16を介して排気される。従って、ピストン38の駆動工程では、切換弁16から第2エア室42bへの供給流量を第2速度制御弁50bの第2絞り弁54bで調整することができ、ピストン38の復帰工程では、第2エア室42bから切換弁16への排気流量を第1速度制御弁50aの第1絞り弁54aで調整することができる。
【0066】
本実施の形態において、第2エア流路12bから分岐され、切換弁16に向かう第3エア流路12cと、第3エア流路12cに設けられ、第2エア流路12b側を入力とする第3チェック弁52c(外側チェック弁)とを有し、第3エア流路12cは、駆動工程において、第2エア流路12bから一部供給されたエアを貯留し、第3エア流路12cは、復帰工程において、切換弁16を介して、第2エア流路12bと第1エア流路12aを連通してもよい。
【0067】
駆動工程では、第3エア流路12cに第2エア流路12bから一部のエアが供給されて、該エアが第3エア流路12cに貯留する。第3エア流路12cに貯留されたエアは、その後の復帰工程で、切換弁16及び第1エア流路12aを介してエアシリンダ30の第1エア室42aに供給される。すなわち、第3エア流路12cに貯留されたエアをピストン38の復帰用の圧力として活用させることができ、エアの消費を抑えることができる。
【0068】
本実施の形態において、第1エア流路12aと第2エア流路12bとの間に設けられたバイパス流路80と、バイパス流路80に介設される第4チェック弁52d(内側チェック弁)及びパイロットチェック弁56(内側パイロットチェック弁)と、を備え、第4チェック弁52dは、第2エア室42bから第1エア室42aに向かうエアの流通を許容すると共に、第1エア室42aから第2エア室42bに向かうエアの流通を阻止し、パイロットチェック弁56は、第1エア室42aから第2エア室42bに向かうエアの流通を許容すると共に、パイロット圧が作用しないときは、第2エア室42bから第1エア室42aに向かうエアの流通を阻止してもよい。
【0069】
これにより、第2エア室42bに蓄積されたエアを第1エア室42aに向けて供給すると共に、外部に排出することが可能になる。このため、第1エア室42aの圧力が増加すると共に、第2エア室42bの圧力が急速に減少し、エアシリンダ30の復帰に必要な時間を可及的に短縮することができる。また、複雑な構造の回収弁を必要とせず、エアシリンダ30を復帰させるための流体回路を簡素化することができる。
【0070】
本実施の形態において、第1エア流路12aのうち、第1エア室42a寄りにタンク部68を設けてもよい。これにより、第2エア室42bから排出されるエアをタンク部68に蓄積しておくことができ、エアシリンダ30の復帰工程時、第1エア室42aの容積が増大する際に、その圧力が低下するのを可及的に抑えることができる。
【0071】
本発明に係るエアシリンダの流体回路は、上述の実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することのない範囲で、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0072】
10A…第1流体回路 10B…第2流体回路
12a…第1エア流路 12b…第2エア流路
12c…第3エア流路 16…切換弁
30…エアシリンダ 38…ピストン
40…ピストンロッド 42a…第1エア室
42b…第2エア室 50a…第1速度制御弁
50b…第2速度制御弁
52a~52e…第1チェック弁~第5チェック弁
54a…第1絞り弁 54b…第2絞り弁
56…パイロットチェック弁 58…パイロット流路
68…タンク部